(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】電解液製造装置及び電解液の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 8/18 20060101AFI20230314BHJP
H01M 8/02 20160101ALI20230314BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20230314BHJP
H01M 8/04791 20160101ALI20230314BHJP
H01M 8/06 20160101ALI20230314BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20230314BHJP
C25B 9/00 20210101ALI20230314BHJP
C25B 9/13 20210101ALI20230314BHJP
C25B 9/23 20210101ALI20230314BHJP
C25B 15/08 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
H01M8/18
H01M8/02
H01M8/04746
H01M8/04791
H01M8/06
H01M8/04 J
C25B9/00 A
C25B9/13
C25B9/23
C25B15/08 302
(21)【出願番号】P 2019018747
(22)【出願日】2019-02-05
【審査請求日】2022-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】512160210
【氏名又は名称】LEシステム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100183955
【氏名又は名称】齋藤 悟郎
(74)【代理人】
【識別番号】100169753
【氏名又は名称】竹内 幸子
(74)【代理人】
【識別番号】100180334
【氏名又は名称】山本 洋美
(74)【代理人】
【識別番号】100177149
【氏名又は名称】佐藤 浩義
(72)【発明者】
【氏名】松村 幸夫
【審査官】守安 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-519814(JP,A)
【文献】特開2016-162524(JP,A)
【文献】特開平07-211346(JP,A)
【文献】特開2019-003750(JP,A)
【文献】国際公開第2018/168863(WO,A1)
【文献】中国実用新案第205069768(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/18
C25B 1/00
C25B 9/00
C25B 15/08
C01G 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽極を配置される陽極室と、陰極を配置される陰極室と、前記陽極室と前記陰極室を隔てる隔膜とを有する電解セルと、
陽極液として、硫酸水溶液を前記陽極室に循環させ、陰極液として、4価以上のバナジウムを含む硫酸水溶液を前記陰極室に循環させる循環部と、
前記陽極と前記陰極に電気的に接続され、電流を供給する電源部と、を備え、
前記陰極は、前記隔膜に対向する面に炭素繊維層を有し、
前記電解セルは、前記陽極と前記隔膜との間に配置される網目状の陽極ネットと、前記陰極と前記隔膜との間に配置される網目状の陰極ネットと、を有し、
前記循環部は、前記陽極液の流量を、前記陰極液の流量よりも大きく、前記陽極室において0℃で単位時間当たりに生じる気体酸素の体積の2倍以上の流量により循環させる、
電解液製造装置。
【請求項2】
前記陰極液の流量に対する前記陽極液の流量の比が、1.25以上3.4以下である、
請求項1に記載の電解液製造装置。
【請求項3】
前記炭素繊維層の充填率が、70%以上120%以下である、
請求項1又は2に記載の電解液製造装置。
【請求項4】
前記循環部は、前記陰極液を、化学量論的流量の6倍以上の流量により循環させる、
請求項1から3のいずれか1項に記載の電解液製造装置。
【請求項5】
前記4価以上のバナジウムを含む硫酸水溶液における、前記4価以上のバナジウムの濃度が1.0mol/L以上3.0mol/L以下である、
請求項1から4のいずれか1項に記載の電解液製造装置。
【請求項6】
前記陰極ネットの厚さは、前記陽極ネットの厚さよりも薄い、
請求項1から5のいずれか1項に記載の電解液製造装置。
【請求項7】
陽極液として、硫酸水溶液を、隔膜により隔てられ、陽極と前記陽極と前記隔膜との間に配置された網目状の陽極ネットとを配置された陽極室に循環させ、陰極液として、4価以上のバナジウムを含む硫酸水溶液を、前記隔膜により隔てられ、前記隔膜に対向する面に炭素繊維層を有する陰極と前記陰極と前記隔膜との間に配置された網目状の陰極ネットとを配置された陰極室に循環させる循環工程と、
前記陽極と前記陰極との間に電流を供給して、前記陰極室の前記4価以上のバナジウムを電解還元する還元工程と、を含み、
前記循環工程では、前記陽極液の流量を、前記陰極液の流量よりも大きく、前記陽極室において0℃で単位時間当たりに生じる気体酸素の体積の2倍以上の流量により循環させる、
電解液の製造方法。
【請求項8】
前記循環工程では、前記陽極液を、前記陰極液に比べて流量比で1.25倍以上3.4倍以下循環させる、
請求項7に記載の電解液の製造方法。
【請求項9】
前記循環工程では、前記陰極液を、化学量論的流量の6倍以上の流量により循環させる、
請求項7又は8に記載の電解液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解液製造装置及び電解液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
大容量の蓄電池として、レドックスフロー電池が知られている。レドックスフロー電池は、正極電極と負極電極との間にイオン交換膜を設けた電池セルに、正極電解液と負極電解液とを供給して充放電を行う。酸化還元反応により価数が変化する金属を含有する溶液が、正極電解液と負極電解液として使用され、バナジウムを含有する電解液が広く使用されている。バナジウムを含有する電解液は、メタバナジン酸アンモニウム(NH4VO3)、五酸化バナジウム(V2O5)、硫酸バナジル(VOSO4)等から製造される。
【0003】
例えば、特許文献1は、陰極電解液として硫酸バナジルを含む硫酸溶液を、陽極電解液として硫酸溶液を用い、酸化還元反応を行うことにより、3価のバナジウムイオンを含む電解液を製造する電解液製造装置を開示している。具体的には、特許文献1の電解液製造装置は、陽極電解液と陰極電解液を隔てるイオン交換膜と、イオン交換膜から1mm以上隔離した位置に配置された陽極と、酸化還元反応時における陰極近傍における陰極電解液中の電流密度が50mA/cm2以上600mA/cm2以下となるよう電流を供給する電源機構と、陰極近傍における陰極電解液の陰極単位面積当たりの流速が0.1mL/分・cm2以上2.5mL/分・cm2以下となるよう電解液を循環させる陰極側循環機構と、陽極近傍における陽極電解液の流速が0.1mL/分・cm2以上2.5mL/分・cm2以下となるよう陽極電解液を循環させる陽極側循環機構と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の電解液製造装置は、セル抵抗が高く、エネルギー効率が低い。また、発熱量が多くなるので、電解液製造装置を冷却する大きな冷却装置が必要となり、設備コストも高くなる。
【0006】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、セル抵抗が小さく、還元における電流効率が高く、電解液の循環の圧力損失が小さい電解液製造装置及び電解液の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係る電解液製造装置は、
陽極を配置される陽極室と、陰極を配置される陰極室と、前記陽極室と前記陰極室を隔てる隔膜とを有する電解セルと、
陽極液として、硫酸水溶液を前記陽極室に循環させ、陰極液として、4価以上のバナジウムを含む硫酸水溶液を前記陰極室に循環させる循環部と、
前記陽極と前記陰極に電気的に接続され、電流を供給する電源部と、を備え、
前記陰極は、前記隔膜に対向する面に炭素繊維層を有し、
前記電解セルは、前記陽極と前記隔膜との間に配置される網目状の陽極ネットと、前記陰極と前記隔膜との間に配置される網目状の陰極ネットと、を有し、
前記循環部は、前記陽極液の流量を、前記陰極液の流量よりも大きく、前記陽極室において0℃で単位時間当たりに生じる気体酸素の体積の2倍以上の流量により循環させる。
【0008】
本発明の第2の観点に係る電解液の製造方法は、
陽極液として、硫酸水溶液を、隔膜により隔てられ、陽極と前記陽極と前記隔膜との間に配置された網目状の陽極ネットとを配置された陽極室に循環させ、陰極液として、4価以上のバナジウムを含む硫酸水溶液を、前記隔膜により隔てられ、前記隔膜に対向する面に炭素繊維層を有する陰極と前記陰極と前記隔膜との間に配置された網目状の陰極ネットとを配置された陰極室に循環させる循環工程と、
前記陽極と前記陰極との間に電流を供給して、前記陰極室の前記4価以上のバナジウムを電解還元する還元工程と、を含み、
前記循環工程では、前記陽極液の流量を、前記陰極液の流量よりも大きく、前記陽極室において0℃で単位時間当たりに生じる気体酸素の体積の2倍以上の流量により循環させる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、セル抵抗が小さく、還元における電流効率が高く、電解液の循環の圧力損失が小さい電解液製造装置及び電解液の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態に係る電解液製造装置を示す模式図である。
【
図2】本発明の実施の形態に係る電解セルの断面図である。
【
図3】本発明の実施の形態に係る陽極ネットの網目を示す模式図である。
【
図4】本発明の実施の形態に係る陰極ネットの網目を示す模式図である。
【
図5】本発明の実施の形態に係る電解液の製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1~
図4を参照して、本発明の実施の形態に係る電解液製造装置10を説明する。
【0012】
電解液製造装置10は、陽極液として、硫酸水溶液を陽極室105aに循環させ、陰極液として、4価以上のバナジウムを含む硫酸水溶液を陰極室105cに循環させ、4価以上のバナジウムを電解還元して、3価のバナジウムを含む電解液を製造する。本実施の形態では、4価以上のバナジウムを含む硫酸水溶液における4価以上のバナジウムの濃度は、例えば、1.0mol/L以上3.0mol/L以下である。また、陽極液としての硫酸水溶液は、陰極液のオスモル(osmol)濃度以上のオスモル濃度を有することが好ましい。本明細書において、5価のバナジウムは、バナジウムの価数が5価であるバナジウム化合物イオン(例えば、メタバナジン酸イオン(VO3
-)、ペルバナジルイオン(VO2
+))又はバナジウムイオンを意味する。4価のバナジウムは、バナジウムの価数が4価であるバナジウム化合物イオン(例えば、バナジルイオン(VO2+))又はバナジウムイオンを意味する。3価のバナジウムは、バナジウムの価数が3価であるバナジウム化合物イオン又はバナジウムイオンを意味する。
【0013】
電解液製造装置10は、
図1に示すように、隔膜110により隔てられた陽極室105aと陰極室105cとを有する電解セル100と、陽極液を陽極室105a循環させる陽極液循環部300aと陰極液を陰極室105cに循環させる陰極液循環部300cとを有する循環部300と、陰極室105c内で還元反応を生じさせる電流を供給する電源部500と、を備える。さらに、電解液製造装置10は、陽極液を貯留する陽極液貯留槽610aと、陰極液を貯留する陰極液貯留槽610cとを備える。
【0014】
また、電解セル100は、陽極室105a内に配置される陽極145aと、陰極室105c内に配置され隔膜110に対向する面に炭素繊維層148cを有する陰極145cと、陽極145aと隔膜110との間に配置される陽極ネット154aと、陰極145cと隔膜110との間に配置される陰極ネット154cと、を有する。
循環部300の陽極液循環部300aは、陽極液を、陽極室105aと陽極液貯留槽610aとの間を循環させる陽極ポンプ310aと、陽極液を陽極室105aに供給する陽極液供給管312aと、陽極液を陽極室105aから回収する陽極液回収管314aとを有する。循環部300の陰極液循環部300cは、陰極液を、陰極室105cと陰極液貯留槽610cとの間を循環させる陰極ポンプ310cと、陰極液を陰極室105cに供給する陰極液供給管312cと、陰極液を陰極室105cから回収する陰極液回収管314cとを有する。
【0015】
まず、電解セル100の具体的構成を説明する。
図2に示すように、電解セル100は、陽極枠体120aと、陽極145aを有する陽極部140aと、陽極ネット154aを有する陽極ネット部150aと、隔膜110と、陰極ネット154cを有する陰極ネット部150cと、陰極145cを有する陰極部140cと、陰極枠体120cとを、この順に積層して構成されている。なお、理解を容易にするために、
図2における紙面の上方向を上方向、紙面の下方向を下方向として説明する。
【0016】
電解セル100の陽極枠体120aは、電解セル100の外形を構成し、陰極枠体120cと共に、陽極部140aと陽極ネット部150aと隔膜110と陰極ネット部150cと陰極部140cとを挟持する。陽極枠体120aは、合成樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル)から平板状に形成される。
【0017】
陽極枠体120aは、下方向の端部に、陽極液循環部300aの陽極液供給管312aに接続する流入口122aと複数の排出口(図示せず)とを有する流路(図示せず)を備える。また、陽極枠体120aは、上方向の端部に、陽極液循環部300aの陽極液回収管314aに接続する排出口124aと複数の流入口(図示せず)とを有する流路(図示せず)を備える。陽極枠体120aの下方向の流路は、陽極部140aの下方向の複数の貫通孔(図示せず)に接続して、陽極液を陽極室105aに供給するマニホールドを形成している。陽極枠体120aの上方の流路は、陽極部140aの上方の複数の貫通孔(図示せず)に接続して、陽極液を陽極室105aから回収するマニホールドを形成している。
【0018】
電解セル100の陽極部140aは、陽極ベース板142aと陽極145aとを有する。陽極ベース板142aは、例えば熱可塑性エラストマー、合成ゴム、ポリ塩化ビニル等から、凹部143aを有する板状に形成される。本実施の形態では、陽極ベース板142aと陽極ネット部150aの枠部152aと隔膜110が、陽極室105aを形成している。陽極部140aの凹部143aには、陽極145aが嵌め込まれる。陽極145aは、例えば、チタン(Ti)から板状に形成され白金(pt)で被覆された白金コート電極である。陽極145aは、陽極ベース板142aの凹部143aに面一になるように、嵌め込まれている。陽極145aは、電源部500に電気的に接続する。陽極145aでは、陽極液(硫酸水溶液)に含まれるイオンから電子が陽極145aに取り込まれ、酸素が生じる。陽極145aにおいて生じた酸素を容易に排出するために、陽極145aと隔膜110との間隔D1は2mm以上5mm以下であることが好ましい。陽極145aと隔膜110との間隔D1は、後述するように、陽極ネット154aにより確保される。
【0019】
陽極部140aの下方向の端部には、陽極ベース板142aと陽極145aとを貫通する複数の貫通孔が設けられ、陽極枠体120aの下方向の流路に接続している。また、陽極部140aの上方向の端部には、陽極ベース板142aと陽極145aとを貫通する複数の貫通孔が設けられ、陽極枠体120aの上方向の流路に接続している。
【0020】
陽極ネット部150aは、枠部152aと網目状の陽極ネット154aとを有する。枠部152aは、合成樹脂(例えば、ポリプロピレン)から枠状に形成される。陽極ネット部150aの枠部152aは陽極ネット154aを支持し、陽極ベース板142aと隔膜110と共に陽極室105aを形成している。
【0021】
陽極ネット部150aの陽極ネット154aは、網目を有する網目状のネットである。陽極ネット154aは、陽極145aと隔膜110との間に配置され、陽極145aと隔膜110との間隔D1を確保する。本実施の形態では、陽極ネット154aが陽極145aと隔膜110との間隔D1を確保するので、陽極室105aにおいて生じる酸素を容易に排出でき、セル抵抗を小さくできる。陽極ネット154aは、陽極室105aにおいて生じる酸素を容易に排出するために、陽極145aと隔膜110との間隔D1に対して、50%~150%の厚みを有することが望ましい。例えば、陽極ネット154aとして、ポリエチレンから形成され、
図3に示すような、格子ピッチ:p1=p2=4.5mm、糸156aの径:0.9mm、糸156aの交点157aでの厚み:1.7mmを有する、亀甲型の網目のネットを使用できる。
【0022】
図2に戻り、電解セル100の隔膜110は、イオン交換膜であり、陽極室105aと陰極室105cを隔てて所定のイオンを透過させる。隔膜110の厚さは、陽極室105aから陰極室105cへの水の移動量、陰極室105cから陽極室105aへのバナジウム化合物イオンの移動損失の低減等の観点から、100μm以上であることが好ましい。
【0023】
電解セル100の陰極枠体120cは、陽極枠体120aと同様に、電解セル100の外形を構成する。陰極枠体120cは、陽極枠体120aと共に、陽極部140aと陽極ネット部150aと隔膜110と陰極ネット部150cと陰極部140cとを挟持する。陰極枠体120cは、陽極枠体120aと同様に、合成樹脂(例えば、ポリ塩化ビニル)から平板状に形成される。
【0024】
陰極枠体120cは、下方向の端部に、陰極液循環部300cの陰極液供給管312cに接続する流入口122cと複数の排出口(図示せず)とを有する流路(図示せず)を備える。また、陰極枠体120cは、上方向の端部に、陰極液循環部300cの陰極液回収管314cに接続する排出口124cと複数の流入口(図示せず)とを有する流路(図示せず)を備える。下方向の流路は、陰極部140cの下方向の複数の貫通孔(図示せず)に接続して、陰極液を陰極室105cに供給するマニホールドを形成し、上方の流路は、陰極部140cの上方の複数の貫通孔(図示せず)に接続して、陰極液を陰極室105cから回収するマニホールドを形成している。
【0025】
電解セル100の陰極部140cは、陰極ベース板142cとベース陰極146cと炭素繊維層148cとを有する。ベース陰極146cと炭素繊維層148cが陰極145cを構成している。陰極145cでは、陰極液(4価以上のバナジウムを含む硫酸水溶液)に含まれる4価以上のバナジウムが電解還元されて、3価のバナジウムが生じる。
【0026】
陰極部140cの陰極ベース板142cは、陽極ベース板142aと同様に、例えば熱可塑性エラストマー、合成ゴム、ポリ塩化ビニル等から、凹部143cを有する板状に形成される。本実施の形態では、陰極ベース板142cと陰極ネット部150cの枠部152cと隔膜110が、陰極室105cを形成している。陰極ベース板142cの凹部143aには、ベース陰極146cが嵌め込まれる。
【0027】
陰極部140cのベース陰極146cは、例えば、鉛(Pb)又は鉛合金から板状に形成される。ベース陰極146cは、陰極ベース板142cの凹部143cに面一になるように、嵌め込まれている。ベース陰極146cは電源部500に電気的に接続する。
【0028】
陰極部140cの炭素繊維層148cは、炭素繊維を不識布状、フェルト状、織物状、シート状等に加工した層であり、例えば、カーボンフェルトである。炭素繊維層148cは、隔膜110に対向してベース陰極146cの上に密着して設けられ、陰極液が炭素繊維層148c内を流れる。陰極液が炭素繊維層148c内を流れることにより、水素を生じる副反応を抑制でき、還元における電流効率(以下、還元電流効率と記載)を高めることができる。本実施の形態では、陰極液を炭素繊維層148c内に十分に流れ込ませるために、炭素繊維層148cの充填率が70%以上120%以下となるように、隔膜110とベース陰極146cとの間隔D2と炭素繊維層148cの電解セル100に組み込まれる前の厚さが調整されることが好ましい。ここで、炭素繊維層148cの充填率は、隔膜110とベース陰極146cとの間隔D2に対する炭素繊維層148cの電解セル100に組み込まれる前の厚さの割合を指す。
【0029】
また、陰極部140cには、炭素繊維層148cよりも下方向に、陰極液を陰極室105cに供給するマニホールドを構成する複数の貫通孔が設けられ、炭素繊維層148cよりも上方向に、陰極液を陰極室105cから回収するマニホールドを構成する複数の貫通孔が設けられている。これらにより、陰極液が炭素繊維層148c内に流れ込み易くなっている。
【0030】
電解セル100の陰極ネット部150cは、枠部152cと網目状の陰極ネット154cとを有する。枠部152cは、陽極ネット部150aの枠部152aと同様に、合成樹脂(例えば、ポリプロピレン)から枠状に形成される。陰極ネット部150cの枠部152cは陰極ネット154cを支持し、陰極ベース板142cと隔膜110と共に陰極室105cを形成している。
【0031】
陰極ネット部150cの陰極ネット154cは、陽極ネット154aと同様に、網目を有する網目状のネットである。陰極ネット154cは、陰極部140cの炭素繊維層148cと隔膜110との間に配置され、炭素繊維層148cと隔膜110との隙間(間隔)を確保する。これにより、陰極液は、陰極部140cの炭素繊維層148c内と、陰極ネット154cにより確保された炭素繊維層148cと隔膜110との隙間とを流れる。陰極液が、陰極ネット154cにより確保された炭素繊維層148cと隔膜110との隙間を流れることにより、還元電流効率を高めつつ、陰極液の循環の圧力損失を小さくできる。
【0032】
陰極ネット154cは、炭素繊維層148cによる高い還元電流効率を維持しつつ、陰極液の循環の圧力損失を小さくするために、網目が大きく、薄いネット(例えば、厚さ0.4mm~1.0mm)が好ましい。具体的には、陰極ネット154cは、陽極ネット154aよりも格子ピッチが大きく、糸の交点での厚みが薄いネットが好ましい。例えば、陰極ネット154cとして、ポリエチレンから形成され、
図4に示すような、格子ピッチ:p1=7.0mm,p2=2.9mm、糸156cの径:0.25mm、糸156cの交点157cでの厚み:0.63mmを有する、変形した菱目のネットを使用できる。
【0033】
次に、電解液製造装置10の循環部300について説明する。循環部300は、
図1に示すように、陽極液循環部300aと陰極液循環部300cとを有する。
【0034】
循環部300の陽極液循環部300aは、陽極液を陽極室105a循環させる。陽極液循環部300aは、0℃、1気圧における陽極室105aの気泡率(気泡率:陽極室105a内への陽極液の供給量に対する陽極室105a内において生じる気体酸素の体積の割合)が50%以下となるように、陽極液を循環させる。すなわち、陽極液循環部300aは、陽極室において0℃、1気圧で単位時間当たりに生じる気体酸素の体積の2倍以上の流量により、陽極液を循環させる。これにより、気体酸素による陽極145a-陰極145c間の電圧の上昇を抑え、セル抵抗を小さくできる。
なお、電源部500が供給する電流値をI(アンペア)、気体定数をR(L・atm/K/mol)、ファラデー定数をF(c/mol)、単位時間を1(sec)とすると、0℃(273.15(K))、1気圧、単位時間当たりに生じる気体酸素の体積V(L/sec)は、V=(I×R×273.15)/(4×F)となる。
【0035】
さらに、陽極液循環部300aは、陽極液の流量を、陰極液循環部300cが循環させる陰極液の流量よりも大きく循環させる。これにより、陽極室105a内の圧力が陰極室105c内の圧力より高くなり、陰極室105cの体積が狭くなるので、陰極液の流れの均一性が高くなり、還元電流効率を高くできる。陰極液の流量に対する陽極液の流量の比は1.25以上3.4以下であることが好ましい。陰極液の流量に対する陽極液の流量の比が1.25より小さい場合、陰極液の流れの均一化の効果が小さく、陰極液の流量に対する陽極液の流量の比が3.4より大きい場合、陰極室105cの体積が狭くなり過ぎ、陰極液の循環の圧力損失が大きくなる。なお、陰極液の流量については、後述する。
【0036】
陽極液循環部300aは、陽極ポンプ310aと陽極液供給管312aと陽極液回収管314aとを有する。陽極ポンプ310aは陽極液貯留槽610aと陽極液供給管312aに接続し、陽極液供給管312aは電解セル100の陽極枠体120aの流入口122aに接続している。また、陽極液回収管314aは、電解セル100の陽極枠体120aの排出口124aと陽極液貯留槽610aに接続している。
【0037】
循環部300の陰極液循環部300cは、陰極液を陰極室105cに循環させる。陰極液循環部300cは、陰極液を、化学量論的流量(SFR:Specific Flow Rate)の6倍以上の流量(SFR:6以上)により循環させることが好ましい。これにより、陰極液に含まれる4価以上のバナジウムが陰極室105cに十分に供給され、陰極室105cにおける水素を生じる副反応を抑制でき、還元電流効率を高くできる。陰極液の流量は、圧力損失の増加、運転コスト等の観点から、化学量論的流量の30倍以下であることが好ましい。
なお、化学量論的流量は、供給される電流に対して、理論上必要とされる電解液の最低流量を意味する。電源部500が供給する電流の電流値をI(アンペア)、4価以上のバナジウムの濃度をC(mol/L)、ファラデー定数をF(c/mol)、単位時間を1(sec)とすると、化学量論的流量SFR(L/sec)は、SFR=I/(C×F)となる。
【0038】
陰極液循環部300cは、陰極ポンプ310cと陰極液供給管312cと陰極液回収管314cとを有する。陰極ポンプ310cは陰極液貯留槽610cと陰極液供給管312cに接続し、陰極液供給管312cは電解セル100の陰極枠体120cの流入口122cに接続している。また、陰極液回収管314cは、電解セル100の陰極枠体120cの排出口124cと陰極液貯留槽610cに接続している。
【0039】
電解液製造装置10の電源部500は、
図1に示すように、陽極145aと陰極145cのベース陰極146cに電気的に接続し、電流を供給する。電源部500が供給する電流により、陽極室105a内で酸化反応が生じ、陰極室105c内で還元反応が生じる。本実施の形態では、電源部500は、例えば50アンペアの直流電流を供給する。
【0040】
電解液製造装置10の陽極液貯留槽610aは陽極液を貯留する。陽極液貯留槽610aは、
図1に示すように、陽極液循環部300aの陽極ポンプ310aと陽極液回収管314aに接続している。電解液製造装置10の陰極液貯留槽610cは陰極液を貯留する。陰極液貯留槽610cは、陰極液循環部300cの陰極ポンプ310cと陰極液回収管314cに接続している。
【0041】
次に、電解液の製造方法を説明する。
図5は電解液の製造方法を示すフローチャートである。電解液の製造方法は、電解セル100の陽極室105aに、陽極液として硫酸水溶液を循環させ、電解セル100の陰極室105cに、陰極液として4価以上のバナジウムを含む硫酸水溶液を循環させる循環工程(ステップS10)と、電解セル100の陽極145aと陰極145cとの間に電流を供給して、電解セル100の陰極室105cの4価以上のバナジウムを電解還元する還元工程(ステップS20)と、を含む。
図2に示すように、電解セル100の隔膜110に隔てられた陽極室105aには、陽極145aと、陽極145aと隔膜110との間に配置された網目状の陽極ネット154aとが配置されている。また、電解セル100の隔膜110に隔てられた陰極室105cには、隔膜110に対向する面に炭素繊維層148cを有する陰極145cと、陰極145cと隔膜110との間に配置された網目状の陰極ネット154cとが配置されている。
【0042】
図5に戻り、循環工程(ステップS10)では、まず、陽極液として硫酸水溶液を準備し、陰極液として4価以上のバナジウムを含む硫酸水溶液を準備する。陽極液としての硫酸水溶液は、硫酸を純水に添加して、所定の濃度に調整される(陰極液のオスモル濃度以上のオスモル濃度)。陰極液としての4価以上のバナジウムを含む硫酸水溶液は、例えば、硫酸バナジル水和物を純水に添加して、所定の濃度に調整される(1.0mol/L~3.0mol/L)。そして、調整された陽極液を、
図1に示す陽極液貯留槽610aに供給し、調整された陰極液を陰極液貯留槽610cに供給する。
【0043】
循環工程(ステップS10)では、次に、陽極液貯留槽610aに貯留された陽極液と陰極液貯留槽610cに貯留された陰極液のそれぞれを、
図1に示す循環部300によって、陽極室105aと陰極室105cのそれぞれに循環させる。この場合、陽極液の流量を陰極液の流量よりも大きく、陽極液の流量を、陽極室105aにおいて0℃、1気圧で単位時間当たりに生じる気体酸素の体積の2倍以上の流量により循環させる。
本実施の形態では、陽極液の流量を陰極液の流量よりも大きくすることにより、陽極室105a内の圧力が陰極室105c内の圧力より高くなり、陰極室105cの体積が狭くなるので、陰極液の流れの均一性が高くなり、還元電流効率を高くできる。陽極液を、陽極室105aにおいて0℃、1気圧で単位時間当たりに生じる気体酸素の体積の2倍以上の流量により循環させることによって、気体酸素による陽極145a-陰極145c間の電圧の上昇を抑え、セル抵抗を小さくできる。また、陽極ネット154aが陽極145aと隔膜110との間隔D1を確保するので、陽極室105aにおいて生じる酸素を容易に排出でき、セル抵抗を小さくできる。さらに、陰極液が、陰極部140cの炭素繊維層148c内と、陰極ネット154cにより確保された炭素繊維層148cと隔膜110との隙間とを流れるので、炭素繊維層148cによる高い還元電流効率を維持しつつ、陰極液の循環の圧力損失を小さくできる。
【0044】
図5に戻り、還元工程(ステップS20)では、陽極145aと陰極145cとの間に電流を供給することにより、陰極室105c内の陰極液に含まれる4価以上のバナジウムを電解還元して、3価のバナジウムを生じさせる。陰極液に含まれる4価のバナジウムと3価のバナジウムが略当量になると、還元工程(ステップS20)を終了する。以上により、電解液を製造できる。
【0045】
以上のように、電解液製造装置10では、電解セル100が陽極145aと隔膜110との間に陽極ネット154aを有するので、陽極室105aにおいて生じる酸素を容易に排出でき、セル抵抗を小さくできる。また、電解セル100が、隔膜110に対向する炭素繊維層148cを有する陰極145cと隔膜110との間に陰極ネット154cを有するので、陰極液が炭素繊維層148c内と陰極ネット154cにより確保された炭素繊維層148cと隔膜110との隙間とを流れ、電解液製造装置10は炭素繊維層148cによる高い還元電流効率を維持しつつ、陰極液の循環の圧力損失を小さくできる。
【0046】
さらに、電解液製造装置10では、循環部300が陽極液の流量を陰極液の流量よりも大きくすることにより、陰極室105cの体積が狭くなるので、陰極液の流れの均一性が高くなり、還元電流効率を高くできる。また、循環部300が、陽極液を、陽極室105aにおいて0℃、1気圧で単位時間当たりに生じる気体酸素の体積の2倍以上の流量により循環させるので、気体酸素による陽極145a-陰極145c間の電圧の上昇を抑え、セル抵抗を小さくできる。
【0047】
以上、本発明における複数の実施の形態を説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0048】
例えば、陽極145aは、白金コートチタン電極に限られず、イリジューム(Ir)コートチタン電極、白金・イリジュームコートチタン電極等であってもよい。ベース陰極146cは、鉛電極に限られず、白金コートチタン電極、イリジュームコートチタン電極等であってもよい。なお、陽極145aと陰極145c(ベース陰極146c、148c)の形状としては、流量分布の均一化の観点から、陽極液又は陰極液の流路の長さ方向(上下方向)の長さが陽極液又は陰極液の流路の幅方向の長さよりも長い、直方体が好ましい。
【0049】
また、炭素繊維層148cは、カーボンフェルトに限られず、炭素繊維の集合体であればよい。
【0050】
陽極ネット154aと陰極ネット154cは、ポリエチレンに限られず、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル、ポリフッ化ビニリデン等から形成されてもよい。また、陽極ネット154aと陰極ネット154cの網目は、亀甲型又は変形した菱目に限られず、菱目、角目等であってもよい。
【0051】
陽極液循環部300aは、電解セル100の耐圧性、運転コスト等の観点から、0℃、1気圧における陽極室105aの気泡率が5%以上となるように、すなわち、陽極室において0℃、1気圧で単位時間当たりに生じる気体酸素の体積の20倍以下の流量により、陽極液を循環させることが好ましい。
【0052】
電解液製造装置10は、複数の電解セル100を有してもよい。複数の電解セル100は、それぞれの陽極室105aを直列に接続され、それぞれの陰極室105cを直列に接続されてもよい。また、複数の電解セル100は、陽極液循環部300aの陽極液供給管312aと陽極液回収管314aと、陰極液循環部300cの陰極液供給管312cと陰極液回収管314cに、並列に接続されてもよい。
【実施例】
【0053】
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【0054】
実施例においては、電解液製造装置10の陽極液として、4価以上のバナジウムの濃度が1.8mol/Lの硫酸水溶液を用い、電解液製造装置10の陰極液として、硫酸の濃度が4.0mol/Lの硫酸水溶液を用いた。電解セル100の隔膜110として、AGC株式会社製のセレミオン(登録商標)CMFを使用した。また、陽極145aと隔膜110との間隔D1を3.0mmとし、陽極145aと隔膜110との間に、
図3に示す、格子ピッチ:p1=p2=4.5mm、糸156aの径:0.9mm、糸156aの交点157aでの厚み:1.7mmを有する亀甲型の網目の陰極ネット154cを配置した。さらに、陰極145cの炭素繊維層148cとして、東洋紡株式会社製のカーボンフェルトAAF304ZS(電解セル10に組み込まれる前の厚さ:4.3mm)を使用した。陰極145cと隔膜110との間に、
図4に示す、格子ピッチ:p1=7.0mm,p2=2.9mm、糸156cの径:0.25mm、糸156cの交点157cでの厚み:0.63mmを有する変形した菱目の陰極ネット154cを配置した。陽極145aと陰極145cの有効面積は100cm
2である。
【0055】
実施例では、電源部500から50アンペアの電流を供給して、電解セル100における極間電圧と陰極電位と膜電位(液膜電位)を測定した。また、圧力損失の指標として、電解セル100の陰極枠体120cの流入口122cにおける入り口圧力を測定した。なお、電位は飽和カロメル電極を基準としている。
【0056】
比較例として、実施例の電解セル100から陰極ネット154cを除いた電解セルを有する電解液製造装置を準備し、実施例と同様の測定を行った。
【0057】
(実施例1)
実施例1では、炭素繊維層148cの充填率((炭素繊維層148cの電解セル100に組み込まれる前の厚さ/隔膜110とベース陰極146cとの間隔D2)×100)を86%とした。また、陽極液の流量を陽極室において0℃、1気圧で単位時間当たりに生じる気体酸素の体積の4.55倍とし、陰極液の流量を化学量論的流量の20倍とした(陽極液の流量/陰極液の流量=2.27)。
以下では、理解を容易にするために、陽極液の流量における、陽極室において0℃、1気圧で単位時間当たりに生じる気体酸素の体積のX倍を、気体比:Xのように記載する。また、陰極液の流量における、化学量論的流量のY倍をSFR:Yのように記載する。陽極液の流量/陰極液の流量を流量比と記載する。本実施例では、炭素繊維層148cの充填率は86%、陽極液の流量は気体比:4.55、陰極液の流量はSFR:20、流量比は2.27となる。
【0058】
(実施例2)
実施例2では、炭素繊維層148cの充填率を86%とした。また、陽極液の流量を気体比:4.55、陰極液の流量をSFR:6、流量比を7.69とした。
【0059】
(比較例1)
比較例1では、炭素繊維層148cの充填率を86%とし、陽極液の流量を気体比:4.55、陰極液の流量をSFR:20、流量比を2.27とした。
【0060】
(比較例2)
比較例2では、炭素繊維層148cの充填率を74%とし、陽極液の流量を気体比:4.55、陰極液の流量をSFR:15、流量比を2.86とした。
【0061】
(比較例3)
比較例3では、炭素繊維層148cの充填率を172%とし、陽極液の流量を気体比:4.55、陰極液の流量をSFR:20、流量比を2.13とした。
【0062】
(比較例4)
比較例4では、炭素繊維層148cの充填率を86%とし、陽極液の流量を気体比:1.25、陰極液の流量をSFR:8、流量比を1.52とした。
【0063】
実施例1と実施例2と比較例1~比較例4での測定結果を表1に示す。
【0064】
【0065】
実施例1と実施例2では、セル抵抗を表す膜電位と極間電圧が小さく、実施例1と実施例2の電解液製造装置10では、セル抵抗が小さくなっている。また、陰極電位が小さいことから、実施例1と実施例2の電解液製造装置10では、還元電流効率が高くなっている。さらに、実施例1は、比較例1に比べて入り口圧力が小さく、陰極145cと隔膜110との間に陰極ネット154cを配置することにより、圧力損失が小さくなっている。なお、比較例4では、陽極145aと隔膜110との間に酸素のガス溜まりが観察された。
【0066】
以上のように、実施例1と実施例2の電解液製造装置10は、セル抵抗が小さく、還元における電流効率が高く、電解液の循環の圧力損失が小さくなっている。
【符号の説明】
【0067】
10 電解液製造装置
100 電解セル
105a 陽極室
105c 陰極室
110 隔膜
120a 陽極枠体
120c 陰極枠体
122a,122c 流入口
124a,124c 排出口
140a 陽極部
142a 陽極ベース板
143a 凹部
145a 陽極
140c 陰極部
142c 陰極ベース板
143c 凹部
145c 陰極
146c ベース陰極
148c 炭素繊維層
150a 陽極ネット部
152a 枠部
154a 陽極ネット
156a,156c 糸
157a,157c 交点
150c 陰極ネット部
152c 枠部
154c 陰極ネット
300 循環部
300a 陽極液循環部
310a 陽極ポンプ
312a 陽極液供給管
314a 陽極液回収管
300c 陰極液循環部
310c 陰極ポンプ
312c 陰極液供給管
314c 陰極液回収管
500 電源部
610a 陽極液貯留槽
610c 陰極液貯留槽
D1 陽極と隔膜との間隔
D2 隔膜とベース陰極との間隔
p1,p2 ピッチ