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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】尖った針の軸方向リエントリデバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/3207 20060101AFI20230314BHJP
   A61M 25/01 20060101ALI20230314BHJP
   A61M 25/06 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
A61B17/3207
A61M25/01 510
A61M25/06
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020568280
(86)(22)【出願日】2018-07-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-05-25
(86)【国際出願番号】 IB2018055460
(87)【国際公開番号】W WO2019234482
(87)【国際公開日】2019-12-12
【審査請求日】2021-06-25
(73)【特許権者】
【識別番号】520474473
【氏名又は名称】アップストリーム ペリフェラル テクノロジーズ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】UPSTREAM PERIPHERAL TECHNOLOGIES LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】ロッテンベルグ,ダン
(72)【発明者】
【氏名】ぺシス,ヨッシ
(72)【発明者】
【氏名】マッツキン,アブラハム
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/003757(WO,A2)
【文献】特表2002-509754(JP,A)
【文献】特表2008-538190(JP,A)
【文献】特表2018-509232(JP,A)
【文献】特表2006-520663(JP,A)
【文献】国際公開第2017/053161(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0188149(US,A1)
【文献】特表2012-525181(JP,A)
【文献】特表2002-507458(JP,A)
【文献】特表2017-523880(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0019311(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/3207
A61B 17/32
A61M 25/00
A61M 25/01
A61M 25/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルデバイス(1)であって、
遠位部分(20)を含むカテーテルシャフト(10)と、
前記カテーテルシャフト(10)の近位部分に結合されたハンドル(30)と、
前記カテーテルシャフト(10)および前記遠位部分(20)の管腔を通過する針(40)とを具え、
前記針(40)は、前記ハンドル(30)に結合された第1の直線部分(41)と、前記第1の直線部分(41)から遠位に延びる予成形された湾曲部分(42)と、前記湾曲部分(42)から遠位に延びる第2の直線部分(43)と、前記針(40)の最遠位端にある鋭い先端(44)とを具えており、
前記針は、前記カテーテルシャフト(10)内に引き抜かれるときに強制的に真っ直ぐになり、前記針(40)は、前記カテーテルの前記遠位部分(20)の遠位端から直接、軸方向外向きに突出するようにするように、前記針を前記遠位部分(20)から遠位前方に押すことによって展開されると、予成形されたその湾曲した形状に戻ることを特徴とするカテーテルデバイス。
【請求項2】
請求項1に記載のカテーテルデバイス(1)において、前記第1の直線部分(41)が前記第2の直線部分(43)よりも長いことを特徴とするカテーテルデバイス。
【請求項3】
請求項1に記載のカテーテルデバイス(1)において、前記カテーテルシャフト(10)の前記遠位部分(20)が、前記遠位部分(20)の外側にあるときよりも前記遠位部分(20)の内側にあるときに、前記湾曲部分(42)をより湾曲が少なくなるように変形させるのに十分な剛性を有しており、前記針(40)の前記先端(44)は、前記カテーテルシャフト(10)の前記遠位部分(20)の遠位端から出ることを特徴とするカテーテルデバイス。
【請求項4】
請求項1に記載のカテーテルデバイス(1)において、前記管腔が近位の偏心部分(21)と非円形の遠位部分(22)とを有することを特徴とするカテーテルデバイス。
【請求項5】
請求項4に記載のカテーテルデバイス(1)において、前記非円形の遠位部分(22)が楕円形であることを特徴とするカテーテルデバイス。
【請求項6】
請求項1に記載のカテーテルデバイス(1)において、前記管腔(51)および前記針(40)が非円形であることを特徴とするカテーテルデバイス。
【請求項7】
請求項1に記載のカテーテルデバイス(1)において、前記管腔(51)および前記針(40)が楕円形であることを特徴とするカテーテルデバイス。
【請求項8】
請求項1に記載のカテーテルデバイス(1)において、前記遠位部分(60)および前記針(70)が、前記針(70)の角度方向を規定するためのキー付き構成を形成することを特徴とするカテーテルデバイス。
【請求項9】
請求項8に記載のカテーテルデバイス(1)において、
前記カテーテルシャフトの一部に長手方向スロットが形成され、前記針は、前記長手方向スロット内でスライドするように配置された突起部を含み、又は、
前記針に前記長手方向スロットが形成され、前記カテーテルシャフトの一部が前記突起部を含むことを特徴とするカテーテルデバイス。
【請求項10】
請求項1に記載のカテーテルデバイス(1)において、前記遠位部分(90)が、前記遠位部分(90)と前記カテーテルシャフト(10)との間に自由な回転又は関節運動があるように、前記カテーテルシャフト(10)の遠位端にベアリング部材(92)で結合されていることを特徴とするカテーテルデバイス。
【請求項11】
請求項1に記載のカテーテルデバイス(1)において、さらに、前記カテーテルシャフト(10)または前記遠位部分(20)上に回転配向マーカ(24、65、67)を具えることを特徴とするカテーテルデバイス。
【請求項12】
請求項1に記載のカテーテルデバイス(1)において、さらに、前記針(40)上に直接的に回転配向マーカ(24、65、67)を具えることを特徴とするカテーテルデバイス。
【請求項13】
請求項1に記載のカテーテルデバイス(1)において、針の前記第1の直線部分(41は、前記回転配向マーカ(24、65、67)が配置された前記第1の直線部分の遠位部分を除いて、摩擦低減層によって覆われていることを特徴とするカテーテルデバイス。
【請求項14】
請求項1に記載のカテーテルデバイス(1)において、前記湾曲部分(42)が30°~120°の範囲の角度をなすことを特徴とするカテーテルデバイス。
【請求項15】
請求項1に記載のカテーテルデバイス(1)において、
前記ハンドルの一部に沿って移動するように配置された針の軸方向スライダであって、前記針の軸方向スライダは前記針に結合され、前記スライダの遠位方向への移動により、前記針の前記鋭い先端が前記カテーテルシャフトから遠位方向に突出する、軸方向スライダと、
前記針(40)に結合され、前記針の軸方向スライダの移動によって、前記針(40)が前記カテーテルシャフト(10)から突出する量を制限するよう構成された針突出リミッタ(32)を具え
前記針突出リミッタは、前記針がそこを通り過ぎるのを防止する複数の選択可能な位置を有することを特徴とするカテーテルデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、血管内の完全な閉塞を貫通させるための貫通デバイスおよび方法、および/または血管の管腔外または内膜下の空間から血管の真腔へのリエントリなどであるがこれに限定されない、ある管腔から別の管腔へのリエントリに関する。
【背景技術】
【0002】
慢性完全閉塞(CTO)は、血流を妨げる動脈血管閉塞(通常はプラーク)である。CTOは冠状動脈と末梢動脈の両方で発生する可能性があり、一般的に同じ根本的な原因であるアテローム性動脈硬化症に起因する。
【0003】
完全閉塞を通過する際の主な問題の1つは、ガイドワイヤを閉塞に向けて操作するまで、臨床医がプラークの硬さを正確に知らないことである。閉塞が比較的新しい場合、プラークは十分に柔らかくなり、ガイドワイヤがプラークを貫通する可能性がある。しかしながら、数週間または数ヶ月後、閉塞は線維化して石灰化し、プラークははるかに硬くなり、ガイドワイヤによる閉塞の貫通は不可能ではないにしても困難になる。障害物を越えられないことが、CTOの再疎通の主要な失敗の状態となっている。
【0004】
もう1つの問題は、造影剤が動脈を通って閉塞を通過するのをCTOがブロックし、ガイドワイヤをガイドするためのX線透視法の使用を妨げることである。これにより、血管に穴を開けたり切断したりするリスクが高まり、心臓や末梢器官の周りの動脈から血液が漏れるタンポナーデのリスクが高まる可能性がある。部分的に閉塞した血管、特に長い閉塞および/または湾曲した閉塞を横切ることでさえ、困難で時間がかかる可能性がある。
【0005】
しかしながら、管腔を通して挿入されたガイドワイヤをサポートする単一の管腔チューブであるSPECTRANETICS QUICK-CROSSカテーテルのような単純なサポートカテーテルと、カテーテルの遠位先端から突き出ることができる真っすぐな針先を含むREALFLOW WINGMANカテーテルから始まって、硬い完全閉塞を貫通させる技術が開発されている。他の貫通器具は、例えば、SPECTRANETICS TURBO-ELITEカテーテルのようなレーザエネルギに基づくカテーテル、または、ガイドワイヤがプラークを通過するのをサポートするための超音波振動に基づくBARDCROSSERカテーテルである。BSCTRUEPASSやMEDTRONICJETSTREAMなどの他の機械的貫通デバイスは、プラークの機械的穿孔に基づいている。
【0006】
ほとんどの貫通デバイスは、カテーテルに対して軸方向に直接前進し、必要に応じてガイドワイヤの方向を変えることはできない。
【0007】
解剖学でよく知られているように、動脈には一般に3つの膜または層がある。内部または内皮膜(Kollikerの内膜)、中間膜または筋膜(中膜)、及び外部または結合組織の膜(外膜)である。2つの内膜は一緒になって外側の外膜から容易に分離され、2つの内側膜は、時として、中間層及び内側層ではなく、内膜層として一緒に呼ばれることがある。当技術分野では、ガイドワイヤで閉塞を通過させようとする際に、ガイドワイヤが閉塞を貫通しようとするときに、血管の内膜層と外膜層との間の内膜下腔に不注意に侵入することがあることが知られている。内膜下腔に入ると、閉塞を超えてガイドワイヤを血管の真腔に戻すことは非常に困難であり、多くの場合不可能である。
【0008】
しかしながら、意図的に内膜下腔に入れ、閉塞後に真腔に再び入れるための技術が開発されてきた。このいわゆる内膜下再疎通は、特に薬剤溶出ステントを使用する場合に有用な処置であり、広く使用されている。内膜下再疎通の利点の1つは、内膜下腔の切開が、石灰化したプラークを切り開くことによって形成される内腔よりも、滑らかな内腔と改善された血流を生成する可能性が高いことである。しかしながら、技術的な失敗が、経皮的な意図的な管腔外再疎通を受けている患者の約20%で発生しており、これは多くの場合、遠位の真腔に再び入ることができないためである。
【0009】
経皮的管腔外再疎通中に、ガイドワイヤ操作で真腔に再び入ることができない場合は、真腔リエントリデバイスを使用する必要がある。現在のところ、市場には特別に設計された4つのリエントリデバイスがある。
【0010】
PIONEERリエントリカテーテル(米国カリフォルニア州サンタローザのMEDTRONIC、その後VOLCANOが所有)は、閉塞を超えて切開に配置される7Fr.(フレンチ)の血管内超音波(IVUS)デバイスである。IVUS画像は、血管壁の画像を提供する。カテーテルは、0.014インチのワイヤを介してデバイスを送達するためのモノレール管腔と、遠位端近くでカテーテルに引っ込めることができる湾曲したニチノール針を終端とする、カテーテルの端を通る第2のワイヤ管腔とで構成される。この針は、IVUSトランスデューサの直近にあるカテーテルの側にある遠位側ポートからスライドさせることによって配置される。IVUSデバイスは、湾曲した針を超音波でガイドし、回転させ、操作して、真腔にリエントリするための正しい半径方向に到達するために使用される。
【0011】
OUTBACKリエントリカテーテル(CORDIS、マイアミレイクス、米国フロリダ州)は、遠位端に格納式のニチノール湾曲針を備えた6Fr.(フレンチ)のカテーテルである。カテーテルで引き抜くと、この針は真っすぐになる。前方に押すと、針はカテーテルの遠位先端の直近にあるカテーテルの側にあるサイドポートからスライドさせることによって配置される。前方に押すと、針はその湾曲した形状に戻り、中間層と内膜層を貫通して真腔に再び入ることができる。針の配置の回転方向は、カテーテル上のX線透視L字型およびT字型のガイドマーカによって提供される。
【0012】
OFF-ROADリエントリデバイス(BOSTON SCIENTIFIC、米国)は、内側の柔軟な金属製直針を備えた6Fr.(フレンチ)のバルーンカテーテルである。バルーンは、遠位方向に平らな基部を有する円錐形のバルーンである。内膜層と外膜層の間の剛性の違いにより、バルーンは膨張すると真腔に向かう傾向がある。次に、柔軟な針を曲げたバルーンカテーテルから前方に押し出して、真腔の中に穿刺する。
【0013】
ENTEERTMリエントリシステム(EV3 Inc. US)は、カテーテルとガイドワイヤとで構成されており、医師は内膜下チャネルから真腔をターゲットにすることができる。カテーテルは、内膜下腔で膨らむ独特の平らな形状の自己配向バルーンを含み、事前に曲げられた特別なガイドワイヤの真腔の中へのリエントリを可能にするのに役立つ。ワイヤはバルーンのサイドポートから出る。
【0014】
本発明は、以下でより詳細に説明するように、1つのデバイスにおいて、完全な閉塞の貫通および管腔リエントリの双方のための新規なデバイスの提供に努める。
【発明の概要】
【0015】
本発明の貫通カテーテルは、カテーテルの遠位端に格納式のニチノール湾曲針を使用する。カテーテル内で引き抜くと、針は強制的に真っ直ぐになる。針は、(遠位先端の従来技術のバルーンとは対照的に)遠位の剛性先端から遠位前方に押すことによって展開され、針またはワイヤが側面から出る従来技術であるのとは対照的に、針は遠位先端から直接、軸方向外向きに突出する。わずかに突き出た後、針の遠位部分は真っ直ぐまたはほぼ真っ直ぐになる。しかしながら、さらに押し出されると、針は予成形された曲線になり始め、閉塞および/または真腔のリエントリにおける将来のガイドワイヤ操作を可能にする。
【0016】
本発明のカテーテルは、針の方向を規定するためのサイドポートを使用しない。むしろ、以下のような他のいくつかのメカニズムを使用することができる。1)楕円形の遠位のカテーテル先端の管腔セクションを使用して、丸い湾曲した針を特定の半径方向に向ける。2)楕円形のカテーテルの遠位先端の内側にある楕円形の湾曲した針。および/または3)(針を特定の方向に向けるため)適切な溝またはスリットを備えた丸い中空管の内側に膨らみまたはスプラインを備えた丸い湾曲した針。
【0017】
代替的に、強制的に特定の半径方向にするためのメカニズムは使用されず、以下でさらに説明するように、針はカテーテルシャフト内で自由に回転する。
【0018】
前方に押すと、針は軸方向に数ミリメートル前進し、その後、針はその湾曲した形状を回復し始め、閉塞を横切るため、または中膜と内膜層を貫通して真腔に再び入るために、ある角度でプラークを貫通することができる。針展開の回転方向は、カテーテル先端上またはその内部、あるいは針遠位部に直接あるX線透視ガイドマーカに従って、カテーテル全体を回転させること、および/または針のみを回転させることによって提供され得る。
【0019】
本発明は、ハードオクルージョンクロッシング、ハードカーブまたはツイストオクルージョンクロッシング、フラッシュオクルージョンクロッシング、ステント内再狭窄クロッシング、ステントグラフトを穿刺して側血管血流を開く、PTA(経皮経管血管形成術)、PTCA(経皮経管冠動脈形成術)における真腔リエントリ、および血管、動脈、軟組織、または他のヒト組織の2つの隣接する層の間のカテーテルのその他の経皮的または非経皮的配置などの多くの用途を有するが、これらに限定されない。
【0020】
本発明の一実施形態では、血管の管腔外または内膜下の空間から血管の真腔中にリエントリするための装置が提供される。
【0021】
本発明は、臨床医(例えば、心臓専門医、放射線科医、血管外科医、または血管形成術の手順に従事する他の医師)が完全閉塞を治療するのを支援し、新しくて柔らかいプラークおよび古くて硬いプラークの双方に貫通させるために使用できる。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、単一管腔カテーテルおよびその単一カテーテル管腔内の長い可撓性針を含む貫通および管腔リエントリデバイスが提供される。カテーテルの遠位端は、予め湾曲した針をまっ直ぐに保持するのに十分な剛性がある。カテーテルの遠位端から前方に押し出された場合にのみ、湾曲した針はその湾曲した形状を取り戻すことができる。
【0023】
本発明の非限定的な実施形態では、ニチノール針がカテーテル管腔に配置され、ガイドワイヤが針の内部空洞を通過する。針の遠位端は、プラークまたは少なくとも1つの層を貫通して体の内腔に入るように適合されており、ランセットの鋭い先端などの形状をしている。
【0024】
針は、偏心した丸い穴の中の硬いカテーテルの遠位先端に入る可能性があり、この穴は、予め湾曲した針を特定の半径方向にカテーテルから突き出すように強制する大きな楕円形の穴に拡張する。医師は、カテーテルの先端にある放射線不透過性マーカを使用してカテーテルを回転させ、閉塞の内側または血管の真腔に向かって針の突出部を向けることができる。
【0025】
代替的に、針は、剛性のカテーテルの遠位端のスロットまたは溝の内側を摺動する針に隆起部または膨らみを伴って、剛性のカテーテル遠位先端に入る。この設計では、放射線不透過性マーカは、カテーテルの遠位部分に配置することも、針の遠位部分に直接配置することもできる。
【0026】
代替的に、針は、針とカテーテルの遠位先端の双方が円形ではなく楕円形である状態で、剛性のカテーテル遠位先端に入る。楕円形の一致する形状は、予めに湾曲した針を特定の半径方向にカテーテルから突き出す。
【0027】
代替的に、針とカテーテルには半径方向の配向機構がなく、ハンドルのノブを回転させるなどして、針をカテーテルシャフト内で自由に回転させることができる。湾曲した針先の近位にある針遠位部の放射線不透過性マーカを使用して、針の湾曲の半径方向を示す。カテーテルの遠位先端と、遠位先端の内側で真っ直ぐに強制される湾曲した針との間の摩擦を低減するために、遠位先端は、カテーテルシャフトに対して針と一緒に回転することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明は、以下の図面と併せて、以下の詳細な説明からより完全に理解および認識されるであろう。
図1図1は、本発明の一実施形態に従って構成され、動作する貫通カテーテルデバイスの簡略図である。
図2図2Aおよび2Bは、カテーテルの湾曲した針の図である。
図3図3は、湾曲した針先のみがカテーテル先端から真っ直ぐ突き出ている貫通カテーテルデバイスの図である。
図4図4は、湾曲した針がカテーテルの遠位端から完全に突き出ている貫通カテーテルデバイスの図である。
図5図5Aは、真腔から距離を置いた完全に突き出た針の図であり、図5Bは、針が完全に突き出た状態でカテーテル全体が前方に押された後に真腔に到達する針の先端を示す。
図6図6は、遠位の剛性先端に配置された可撓性針の簡略化された部分断面図であり、針は、円形から楕円形に変化する管腔を通過する。
図7図7は、近位側から見た、管腔リエントリカテーテルの遠位剛性先端の簡略化された部分断面図であり、近位の偏心針穴を示している。
図8図8は、その遠位側から見た、管腔リエントリカテーテルの遠位剛性先端の簡略化された部分断面図であり、遠位の楕円形の針出口穴を示している。
図9図9は、放射線不透過性マーカおよび予め湾曲した針が遠位先端から突き出ている、管腔リエントリカテーテルの遠位部分の簡略図である。
図10図10Aは、カテーテルの遠位先端または針の遠位部分上の放射線不透過性マーカの図であり、図10B、10C、および10Dは、異なる回転角でのマーカの様々な血管造影図である。
図11図11は、楕円形の針を備えたカテーテルの楕円形の遠位先端の断面図である。
図12図12は、剛性の遠位先端に溝またはスロットがあり、針に膨らみまたは隆起部がある貫通カテーテルの遠位部分の図である。
図13図13は、旋回または関節式遠位部分を有するカテーテル先端の図である。
図14図14は、半分の長さの位置に針突出長セレクタを備えたカテーテルハンドルの図である。
図15図15は、最大針長位置に針突出長セレクタを備えたカテーテルハンドルの図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
ここで、本発明の実施形態に従って構成され且つ動作可能な貫通カテーテル及び管腔リエントリカテーテルデバイス1を示す図1を参照する。カテーテルデバイス1は、剛性の遠位部分20を有するカテーテルシャフト10とシャフト10の近位部分に結合されたハンドル30とを含む。カテーテルシャフト10は、長くて柔軟な予形成された針40を通過させる管腔で形成される(図1には示していないが、図2A、2Bおよび他の図に見られる)。
【0030】
カテーテルシャフト10は、ポリイミド、ポリウレタン、PEBAX(ポリエーテルブロックアミド)、ナイロン、または当技術分野で知られている他のポリマーから製造することができる。シャフト10は、好適には、貫通またはリエントリカテーテルの半径方向の配向に必要な良好なトルク能力を達成するために、当技術分野で知られているように、編組金属ワイヤで強化されるか、もしくはそれから作られ、又は、金属ワイヤ編組またはばねで強化されたポリマーである。
【0031】
限定されないが、リエントリ装置1の長さは100~180cmであり、そのシャフトおよび遠位先端の直径は、好ましくは、2.0mm(6Fr)以下である。
【0032】
ここで、湾曲した予形成された針40を示す図2Aを参照する。針40は、ニチノールといった形状記憶合金から構成することができ、中空であってもなくてもよい。針40は、(図2は示さないが図1に示す)ハンドル30の中に配置されたルアー(luer)33に結合され得る長い直線(好ましくは、しかし必ずしもそうではないが中空の)部分41を含む。予形成された湾曲部分42は、直線部分41から遠位に延びる。湾曲部分42の曲率半径は、限定されないが、5から15mmの間である。湾曲部分42は、限定されないが、30~120°の範囲、より好ましくは30~90°の範囲、さらにより好ましくは60~90°の範囲の角度をなす。短い遠位の直線部分43は、湾曲部42から遠位に延びており、部分43は、2から4mmの長さを有するが、これに限定されない。針40の最遠位先端44は、ランセット(lancet)先端44である。代替的に、図2Bに見られるように、針40は、直線部43を含まず、湾曲部42は、針のランセット先端44を終端とする。
【0033】
ここで、カテーテルシャフト10の遠位部分20から突き出し始めたときの遠位の直線部分43を示す、図3を参照する。ここに見られるように、最初に数ミリメートルといった分だけ遠位に進められた(前方に押された)とき、直線部分43および遠位先端44は、遠位剛性部分20から真っ直ぐに(軸方向に)突出する。直線部分43を有さない図2Bの実施形態では、針40は、遠位先端44が最初に遠位剛性先端20から突出し始めるときに、その湾曲形状を取り戻し始める。
【0034】
図3に見られるように、放射線透過性または放射線不透過性のガイドマーカ24が、遠位先端20またはカテーテルシャフト10の他の部分に配置され得る。例えば、マーカ24は、白金、白金イリジウム、タンタル、またはタンタルタングステン、または放射線不透過性の類似の合金でできていている。
【0035】
剛性を有する遠位先端20は、好適には、剛性を有する生体適合性材料、例えば、ステンレス鋼などの金属から作製される。この材料は、針が先端20から突出しないとき、予め湾曲した可撓性の針40の遠位部分42を真っ直ぐに維持するよう十分に強い。
【0036】
ここで、図4および5Aを参照する。図4および5Aは、カテーテルシャフト10の遠位部分20からの完全またはほぼ完全な展開(突出)における針40を示している。この配向では、針40はその湾曲した形状に復元され、閉塞を横切るために、または中膜および内膜層を貫通して侵入し、その後血管3の真腔2に再び入るために、ある角度でプラークを貫通することができる(図5A)。横切るために、針40は、ガイドワイヤを必要な方向に向けるために必要な量だけ押し出されるが、これは、閉塞曲率および剛性先端20に対する位置に依存する。真腔に再進入するために、湾曲した針40を最大前方に押すことができ、針が真腔を通過した場合、針の遠位先端が真腔に配置されるまで、近位にゆっくりと引き戻すことができる。
【0037】
ここで、図5Bを参照する。針先44が、完全に突出していても、血管壁が厚いか、カテーテルシャフト10と真腔2との間に多くの石灰沈着空間があるために、真腔2に到達しない場合、本発明の装置1は、他のすべてのリエントリ装置とは異なり、完全にまたは部分的に突出した状態で、ユーザが針40に沿ってカテーテルシャフト10を遠位に前進させることを可能にする。次に、突出した針を備えたカテーテルは、湾曲した針42の方向に従って、それが真腔2を貫通して再び入るまで、遠位および半径方向に再び前進させることができる。
【0038】
針の展開の回転方向は、カテーテル先端20上のガイドマーカ24に従ってカテーテルを回転させることによって提供される。針40の最終的な位置決めの後、ガイドワイヤを針先44から前方に押して、手順を続行することができる。
【0039】
ここで、図6~8を参照する。遠位先端20は、偏心穴21で形成され得る(図6及び7)。偏心穴21は、先端20の遠位端の開放端までの軸方向全長に沿って一定の均一なサイズ(例えば、楕円形の穴また丸い円形の穴)を有し得る。代替的に、偏心穴21は、その近位端で比較的小さいサイズを有し(例えば、円形または楕円形)、その遠位端で比較的大きいサイズを有する。例えば、偏心穴21は、先端20の遠位端の開放端で、その形状を楕円形のより大きな穴22(図8)に変えることができる。楕円形の穴22は、カテーテルシャフト10および剛性の遠位先端20の直径に近い長軸、および丸い針40の直径に近い短軸を有する。
【0040】
ここで、図9を参照する。予め湾曲した針40が偏心穴21(図7)から楕円形の穴22の中に前方に押されると、針の第1の真っ直ぐなセグメント43が真っ直ぐ前方に(遠位に)突出し、次に湾曲部分42が、楕円形の穴22が可能な限り湾曲し始め、次に、さらに前方に押されると、湾曲部分42は、偏心穴21の方向とは反対方向(シャフト10の中心軸の反対側にある点で反対方向)である、楕円形の穴22によって強制される方向に曲がる。
【0041】
上記のように、湾曲した針40は、所望のガイドワイヤ貫通方向に、または、内膜下腔から血管の真腔の中に向けられる必要がある。医師は、針の突出を開始する前に、カテーテルを回転させて、針40が閉塞に向かって、または真腔の半径方向に向かって必要な半径方向を指すように向ける必要がある。剛性を有する先端20またはシャフト10上のマーカ24は、医師が針を適切に向けるのを助ける。当技術分野で知られているように、異なるマーカ、例えば、I、L、および/またはT型のマーカを使用することができる。
【0042】
図10A~10Dは、針の半径方向の配向に使用され得る血管造影マーカ24の例を示す。図10Aでは、マーカは、中央ビーム67によって結合された2つのリング65を含む。マーカは、血管造影的に、文字U(水平に見た場合)または文字C(垂直に見た場合)[図10B]、文字H(水平に見た場合)または文字I(垂直に見た場合)[図10C]、または反転文字U(水平方向に表示した場合)または反転文字C(垂直方向に表示した場合)として[図10D]として見ることができる。湾曲した針の曲げ方向は、例えば、文字Cの開口部と整列するように設定することができる。
【0043】
ここで、代替的な剛性の先端50を示す図11を参照する。剛性先端50は、楕円形の管腔51で形成され、針は、外側輪郭が楕円形の管腔51の内側輪郭に類似する楕円形を有する遠位部分80を有する。このようにして、予め湾曲した針40は、楕円形の方向で剛性の先端50から押し出される。
【0044】
ここで、図12を参照する。これは、針70(針40と同様)と一緒になって、針70の角度方向を規定するためのキー付き構成を形成する代替的な剛性先端60を示す。例えば、剛性先端60またはシャフト10は長手方向スロット61で形成される一方、針70は、スロット61内でスライドするように配置された突起部71を含み得る。代替的に、スロット61は針70上にあり、突起部71は先端60またはシャフト10上にある。マーカ24は、カテーテル先端60または針70、例えば、針の湾曲部分42の近位に配置することができる。
【0045】
シャフト10の代わりに針40上にマーカ24を設けることは、カテーテルの最大の外径を減少させるという利点を提供し得る。マーカ24を補強または編組シャフトチューブに取り付けると、シャフトの外径が大きくなる。針の真っ直ぐな部分41は通常、摩擦を減らすためにPTFE収縮で覆われているので、針に設けられたとき、それは直径を増加させない。クロスオーバーアプローチ(もう一方の脚からターゲットの脚に到達する最も一般的な手法)を使用する場合、摩擦は通常、腸骨アーチ領域で最大になることに留意されたい。真っ直ぐな針の遠位端41の近くのPTFE収縮の小さなセグメントを除去することは、デバイスの総外径を増加させることなく、マーカ24のための十分なスペースを提供し、より小さな血管の治療に適している。
【0046】
ここで、図13を参照する。これは、針40およびカテーテル装置1またはカテーテルシャフト10が半径方向の配向機構を持たない、針出口91を備えた代替的な剛性先端90を示す。代わりに、針40は、好ましくはハンドル30上の適切なノブまたは他のアクチュエータを回転または作動させることによって、カテーテルシャフト10内で自由に回転することができる。放射線不透過性マーカ24は、針の遠位部分、例えば、針の湾曲部分42の近位の直線部分41の遠位端の近くに配置され得る。マーカ24は、針の残りがシャフト10の内側にあるため、針の湾曲部分42の角度配向のみを示すために使用される。デバイス1のこの構造では、針突出配向機構は必要ない。他の実施形態に対するこの実施形態の利点は、この実施形態では、針40がシャフト10の内側で完全に回転することであり、これは、カテーテルシャフト10と血管壁および/または狭窄した血管部分との間の潜在的な摩擦の問題がないことを意味し、他の実施形態では、シャフト10の回転を防止または阻止することができる。部分42が遠位先端の内側で真っ直ぐに強制されるため、唯一の摩擦は、カテーテルの遠位先端90と針の湾曲部分42との間にある。この摩擦は、遠位先端90をシャフト10の遠位端にベアリング部材92で結合することによって劇的に低減させることができ、その結果、遠位先端90とシャフト10との間に自由回転または関節運動が存在する。ベアリング部材92は、シャフト10の遠位端に固定され得る。ベアリング部材92のために、シャフト10内の針40の回転に対する抵抗はほとんどまたは全くない。
【0047】
ここで、図14を参照する。ハンドル30は、シャフト10に接続されている。ハンドル30は、針の軸方向スライダ31および針の突出長セレクタ32を含む。スライダ31は、針40の近位端に結合され得る。前方(遠位)にスライダ31を移動させることで、針40の鋭い先端がカテーテルの硬い先端から突出する。スライダ31を後方に動かすと、予め湾曲した針40が剛性のある先端の内側に引き戻される。
【0048】
セレクタ32は針の突出リミッタとして使用される。セレクタ32の第1の位置では、針はロックされており、カテーテルの硬い先端から突き出ることができない。セレクタは、小さな真っ直ぐまたはほぼ真っ直ぐな針の部分43のみが突出することを可能にする第2の任意の位置、(図14に見られるように)湾曲した針部分の半分が突き出るようにする第3の位置、(図15に見られるように)完全に湾曲した針の遠位部分の突出を可能にするための第4のまたは最終位置を含む、いくつかの追加の位置を有する。
【0049】
セレクタ32を使用すると、ユーザは、硬いプラークを貫通させるのに十分な大きな力を使用して、デバイスから突き出ている針の湾曲部分の長さをすばやく簡単に選択できる一方で、同時に、針を遠くに動かして近くの組織または臓器に損傷を与えることを防ぐ。
【0050】
ハンドル30は、ガイドワイヤ挿入のためのルアーポート33、および任意選択的にカテーテル内腔を洗い流すためのルアー34を含む。ルアー33は、針40の近位端に結合され、針40と共に前後に移動する。
【0051】
本発明のカテーテル装置1を貫通カテーテルとして使用する場合、針ランセット先端44によって真っ直ぐまたはほぼ真っ直ぐなプラーク穿刺が必要とされる場合、針40はわずかに前方に突出する。閉塞が曲がったりねじれたりするときなど、プラークの穿刺がカテーテルの軸方向に対してある角度である場合、またはカテーテルの角度位置が正しくない場合、針が正しい角度で突き出るまで、針40をさらに前方に押すことができ、ガイドワイヤを正しい方向に前方に押すことができる。
【0052】
本発明のカテーテル装置1をリエントリカテーテルとして使用する場合、ガイドワイヤは通常、内膜下腔に既に配置されている。リエントリカテーテルは、針が剛性の先端(20または50または60または90)の内側に配置された状態で、好ましいリエントリ位置に到達するまでガイドワイヤを超えて挿入される。その後、ガイドワイヤが数センチメートル引き戻される。
【0053】
次に、カテーテル(または針)を回転させて、放射線不透過性マーカが血管造影で正しい方向、すなわち針の屈曲方向にあり、血管の真腔を指すようになるまで回転させる。次に、(例えば、ハンドルのスライダを使用して)針が前方に押され、湾曲した針の遠位部分が血管壁を貫通し、真腔に入る。
【0054】
図5Aおよび5Bを参照して上記のように、真腔が遠すぎる場合、カテーテル全体が完全に突出した針でさらに前方に押し出され、真腔に入るまでカテーテルの遠位部を湾曲した針の経路および方向を辿るようにすることができる。次に、ガイドワイヤが真腔に押し込まれる。ガイドワイヤが真腔にあることを確認した後、湾曲した針の遠位部を硬い遠位先端に引き戻し、リエントリカテーテルを患者から引き出す。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図10C
図10D
図11
図12
図13
図14
図15