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特許7244124生体高分子薬を送達するための組成物及び方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】生体高分子薬を送達するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/24 20060101AFI20230314BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20230314BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20230314BHJP
   A61K 39/00 20060101ALI20230314BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20230314BHJP
   A61K 39/39 20060101ALI20230314BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230314BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230314BHJP
   C07K 17/04 20060101ALN20230314BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20230314BHJP
   C12N 15/88 20060101ALN20230314BHJP
【FI】
A61K47/24
A61K47/42
A61K9/51
A61K39/00 H
A61K31/713
A61K39/39
A61P35/00 ZNA
A61P37/04
C07K17/04
C12N15/12
C12N15/88 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021131737
(22)【出願日】2021-08-12
(62)【分割の表示】P 2020002708の分割
【原出願日】2016-03-25
(65)【公開番号】P2021181484
(43)【公開日】2021-11-25
【審査請求日】2021-09-10
(31)【優先権主張番号】62/138,186
(32)【優先日】2015-03-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/248,908
(32)【優先日】2015-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507238218
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミシガン
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ナム,ジュタエク
(72)【発明者】
【氏名】ムーン,ジェイムズ ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】クアイ,ルイ
(72)【発明者】
【氏名】シュヴェンデマン,アンナ エイ.
【審査官】山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-528371(JP,A)
【文献】特表2002-500165(JP,A)
【文献】特表2013-540106(JP,A)
【文献】国際公開第2014/096179(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/00
A61K 9/00
A61K 39/00
A61K 31/00
A61P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
sHDLナノ粒子を含む組成物であって、
前記sHDLナノ粒子は、
(i)1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)およびジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)から選択されるリン脂質、
(ii)チオール反応性リン脂質、および、
(iii)配列PVLDLFRELLNELLEALKQKLK(配列番号4)を有するアポリポタンパク質模倣物、を含む、組成物。
【請求項2】
1つ以上の抗原をさらに含み、
前記1つ以上の抗原は前記ナノ粒子の外面上の前記チオール反応性リン脂質と複合化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
1つ以上の核酸をさらに含み、
前記1つ以上の核酸は前記ナノ粒子の外面上の前記チオール反応性リン脂質と複合化されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記1つ以上の核酸がsiRNAである、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
アジュバントをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記アジュバントが、CpG免疫刺激オリゴヌクレオチド、polyIC、poly-ICLC、イミキモド、レシキモド、ガルジコモド、イミダゾキノリンおよびテルラトリモドからなる群から選択される、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記リン脂質がDMPCである、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
前記リン脂質がDPPCである、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記チオール反応性リン脂質が、ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート](DOPE-PDP)、1,2-ジ(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[4-(p-マレイミドフェニル)ブチルアミド]、1,2-ジヘキサデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[4-(p-マレイミドフェニル)ブチルアミド]、1,2-ジヘキサデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[4-(p-マレイミドメチル)シクロヘキサン-カルボキサミド]、および、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[4-(p-マレイミドメチル)シクロヘキサン-カルボキサミド]から選択される、請求項1に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本発明は、2015年3月25日に出願された米国仮特許出願第62/138,186号及び2015年10月30日に出願された米国仮特許出願第62/248,908号の優先権を主張し、これらは、全体として参照により組み込まれる。
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
本発明は、米国国立衛生研究所により授与されたAI097291に基づく政府の支援によりなされた。政府は、本発明に特定の権利を有する。
【0002】
本発明は、種々のタイプの障害を、処置、予防、または改善するために構成された生体高分子薬と複合化されたナノ粒子、及びその合成方法に関する。特に、本発明は、生体高分子薬(例えば、核酸、ペプチド、糖脂質など)を担持するナノ粒子(例えば、合成高密度リポタンパク質(sHDL))を含む組成物、このようなナノ粒子を合成するための方法、ならびに(例えば、診断及び/または治療環境において)このようなナノ粒子を利用するシステム及び方法、に関する。
【背景技術】
【0003】
ペプチド及び核酸ベースの薬物は、次世代の治療薬として大きな可能性を有する。可能性が大きいにもかかわらず、その臨床的解釈は、部分的には、インビボでの酵素分解に対してカーゴ材料を保護しながら、薬物を作用部位に効率的に送達することができる薬物送達プラットフォームがないために困難であった。1つの主要な例は、癌ワクチンの領域である。多数の臨床試験は、規定された腫瘍関連抗原ペプチドを使用して実施されているが、可溶性ペプチドが、作用部位(例えば、リンパ組織)に十分に到達せずに、強い免疫応答を生じないので、それらは、臨床的有効性を実証することができない。
【0004】
生体高分子(例えば、ペプチド、核酸、糖脂質)の安定で標的化された送達(例えば、インビトロまたはインビボ)のための組成物及び技術の改善が必要とされる。
【発明の概要】
【0005】
ペプチドベースの癌ワクチンの大きい可能性にもかかわらず、それらの有効性はヒトに限られている。腫瘍エクソームシークエンシングにおける最近の技術革新は、患者特異的ネオアンチゲンを用いた「個別化」免疫療法の新しい時代を示している(例えば、Yadav,M.et al.Nature 515,572-576(2014);Kreiter,S.etal.Nature 520,692-696(2015);Schumacher,T.N.& Schreiber,R.D.Science 348,69-74(2015)を参照のこと)が、強力なCD8α+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答を刺激するための一般的な方法論は依然としてない。本発明に対する実施形態を開発する過程で行われた実験は、予め形成された高密度リポタンパク質模倣ナノディスクが、抗原(Ag)ペプチド及びアジュバントと容易に結合して、Ag/アジュバントのリンパ器官への同時送達を著しく改善する安定な超小型ナノ粒子を生じ、樹状細胞上の持続的なAg提示を達成することができることを実証した。驚くべきことに、これらのナノディスクは、可溶性ワクチンよりも最大41倍高い頻度のCTL、さらに、臨床試験においておそらく最も強いアジュバント(すなわち、Montanide中のCpG)よりも9倍高い頻度のCTLを誘発したことが示された(例えば、Speiser,D.E.et
al.J.Clin.Invest.115,739-746(2005);Fourcade,J.et al.J.Immunother.31,781-791(2008)を参照のこと)。さらに、ナノディスクプラットフォームは、ネオアンチゲンに容易に適合することができ、強力な抗腫瘍免疫を生じることが示された。このような結果は、癌免疫療法のための新しい強力なアプローチであり、より概括的は、個別化ナノ医薬品に対する一般的な方策を示唆する。
【0006】
確立された製造手順及びヒトの優れた安全性プロファイルを有するこれらのナノディスクが、抗原及びアジュバントのLNへの同時送達を大幅に改善し、DC上の抗原提示を維持し、強力な抗腫瘍効果を有するT細胞応答を引き起こすことができるので、このような結果は、著しい臨床的重要性を有する。腫瘍変異の大部分が、各患者に固有であるので、癌ワクチンは、個別化されたアプローチを必要とするであろう(例えば、Yadav,M.et al.Nature 515,572-576(2014);Kreiter,S.et al.Nature 520,692-696(2015);Schumacher,T.N.& Schreiber,R.D.Science 348,69-74(2015)を参照のこと)。ネオアンチゲンスクリーニングにおける最近の技術革新と相まって、このアプローチは、各患者のためにデザインされた癌ワクチンを製造するための強力でより容易な方策を提供する。さらに、このプラットフォーム技術は一般に、広範囲の生物活性分子及びイメージング薬を用いた個別化治療薬に適用可能である。
【0007】
したがって、特定の実施形態では、本発明は、新生物を有すると診断された対象に対する個別化新生物ワクチンを作製するための方法を提供する。本発明は、新生物を有すると診断された対象のための個別化新生物ワクチンを作製するための特定の方法に限定されない。一部の実施形態では、このような方法は、対象由来の新生物の生体サンプルを得ることと;新生物における複数の変異を同定することと;ネオアンチゲン性ペプチドをコードすると予測される1つ以上のネオアンチゲン性変異を同定するために複数の変異を解析することであって、ネオアンチゲン性変異が、ミスセンス変異、neoORF変異、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、解析することと;個別化新生物ワクチンを製造することであって、個別化新生物ワクチンが、ネオアンチゲン性ペプチドをコードすると予測される解析及び同定されたネオアンチゲン性変異に特異的な1つ以上のネオアンチゲン性ペプチドと複合化されたマイクロ粒子またはナノ粒子を含む、製造することと、を含む。一部の実施形態では、ナノ粒子は、アジュバントとさらに複合化または混合される。一部の実施形態では、同定は、新生物のゲノム、トランスクリプトーム、またはプロテオームをシークエンスすることをさらに含む。
【0008】
一部の実施形態では、マイクロ粒子のサイズは、0.5ミクロン~100ミクロンである。
【0009】
一部の実施形態では、1つ以上のネオアンチゲン性ペプチドは、長さが約5~約50アミノ酸の範囲である。一部の実施形態では、1つ以上のネオアンチゲン性変異ペプチドは、長さが約15~約35アミノ酸の範囲である。一部の実施形態では、1つ以上のネオアンチゲン性ペプチドは、長さが約18~約30アミノ酸の範囲である。一部の実施形態では、1つ以上のネオアンチゲン性ペプチドは、長さが約6~約15アミノ酸の範囲である。
【0010】
一部の実施形態では、アジュバントは、CPG、polyIC、poly-ICLC、1018 ISS、アルミニウム塩、Amplivax、AS15、BCG、CP-870,893、CpG7909、CyaA、dSLIM、GM-CSF、IC30、IC31、Imiquimod、ImuFact IMP321、IS Patch、ISS、ISCOMATRIX、Juvlmmune、LipoVac、MF59、モノホスホリル脂質A、Montanide IMS 1312、Montanide ISA 206、Montanide ISA 50V、Montanide ISA-51、OK-432、OM-174、OM-197-MP-EC、ONTAK、PepTel.RTM、ベクターシステム、PLGAマイクロ粒子、イミキモド、レシキモド、ガルジコモド、3M-052、SRL172、ビロソーム及び他のウイルス様粒子、YF-17D、VEGFトラップ、β-グルカン、Pam3Cys、AquilaのQS21 Stimulon、バジメザン、ならびにAsA404(DMXAA)からなる群から選択される。一部の実施形態では、アジュバントは、アジュバントの任意の誘導体(例えば、コレステロール改変CpG)である。
【0011】
本方法は、特定のナノ粒子に限定されない。一部の実施形態では、ナノ粒子の平均サイズは、6~500nmである。一部の実施形態では、ナノ粒子は、sHDLナノ粒子である。一部の実施形態では、sHDLナノ粒子は、少なくとも1つのリン脂質及び少なくとも1つのHDLアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物の混合物を含む。一部の実施形態では、ナノ粒子の平均サイズは、6~500nmである。一部の実施形態では、sHDLナノ粒子の平均粒子サイズは、6~70nmである。
【0012】
一部の実施形態では、リン脂質は、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート](DOPE-PDP)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホチオエタノール、1,2-ジ(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[4-(p-マレイミドフェニル)ブチルアミド]、1,2-ジヘキサデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[4-(p-マレイミドフェニル)ブチルアミド]、1,2-ジヘキサデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[4-(p-マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキサミド]、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[4-(P-マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキサミド]、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0013】
一部の実施形態では、HDLアポリポタンパク質は、アポリポタンパク質A-I(ApoA-I)、アポリポタンパク質A-II(ApoA-II)、アポリポタンパク質A4(ApoA4)、アポリポタンパク質Cs(ApoCs)、及びアポリポタンパク質E(ApoE)からなる群から選択される。一部の実施形態では、HDLアポリポタンパク質模倣物は、ApoA-I模倣物である。一部の実施形態では、ApoA-I模倣物は、配列番号1~336のいずれかにより記載される。
【0014】
特定の実施形態では、本発明は、個別化新生物ワクチンで、新生物を有すると診断された対象を処置するための方法を提供する。本発明は、個別化新生物ワクチンで、新生物を有すると診断された対象を処置するための特定の方法に限定されない。一部の実施形態では、このような方法は、対象由来の新生物の生体サンプルを得ることと;新生物における1つ以上の変異を同定することと;発現されたネオアンチゲン性ペプチドをコードすると予測される1つ以上のネオアンチゲン性変異を同定するために、複数の変異を解析することであって、ネオアンチゲン性変異が、ミスセンス変異、neoORF変異、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、解析することと;個別化新生物ワクチンを製造することであって、個別化新生物ワクチンは、ネオアンチゲン性ペプチドをコードすると予測される解析及び同定されたネオアンチゲン性変異に特異的な1つ以上のネオアンチゲン性ペプチドと複合化されたマイクロ粒子またはナノ粒子を含む、製造することと;対象に、個別化新生物ワクチンを投与し、それにより、新生物を処置することと、を含む。一部の実施形態では、個別化新生物ワクチンは、アジュバントと同時投与される。一部の実施形態では、ナノ粒子は、アジュバントとさらに複合化または混合される。一部の実施形態では、同定は、新生物のゲノム、トランスクリプトーム、またはプロテオームをシークエンスすることをさらに含む。
【0015】
一部の実施形態では、1つ以上のネオアンチゲン性ペプチドは、長さが約5~約50アミノ酸の範囲である。一部の実施形態では、1つ以上のネオアンチゲン性変異ペプチドは、長さが約15~約35アミノ酸の範囲である。一部の実施形態では、1つ以上のネオアンチゲン性ペプチドは、長さが約18~約30アミノ酸の範囲である。一部の実施形態では、1つ以上のネオアンチゲン性ペプチドは、長さが約6~約15アミノ酸の範囲である。
【0016】
一部の実施形態では、アジュバントは、CPG、polyIC、poly-ICLC、1018 ISS、アルミニウム塩、Amplivax、AS15、BCG、CP-870,893、CpG7909、CyaA、dSLIM、GM-CSF、IC30、IC31、Imiquimod、ImuFact IMP321、IS Patch、ISS、ISCOMATRIX、Juvlmmune、LipoVac、MF59、モノホスホリル脂質A、Montanide IMS 1312、Montanide ISA 206、Montanide ISA 50V、Montanide ISA-51、OK-432、OM-174、OM-197-MP-EC、ONTAK、PepTel.RTM、ベクターシステム、PLGAマイクロ粒子、イミキモド、レシキモド、ガルジコモド、3M-052、SRL172、ビロソーム及び他のウイルス様粒子、YF-17D、VEGFトラップ、β-グルカン、Pam3Cys、AquilaのQS21 Stimulon、バジメザン、ならびにAsA404(DMXAA)からなる群から選択される。一部の実施形態では、アジュバントは、アジュバントの任意の誘導体(例えば、コレステロール改変CpG)である。
【0017】
本方法は、特定のナノ粒子に限定されない。一部の実施形態では、ナノ粒子の平均サイズは、6~500nmである。一部の実施形態では、ナノ粒子は、sHDLナノ粒子である。一部の実施形態では、sHDLナノ粒子は、少なくとも1つのリン脂質及び少なくとも1つのHDLアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物の混合物を含む。一部の実施形態では、sHDLナノ粒子の平均粒子サイズは、6~70nmである。
【0018】
一部の実施形態では、リン脂質は、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート](DOPE-PDP)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホチオエタノール、1,2-ジ(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[4-(p-マレイミドフェニル)ブチルアミド]、1,2-ジヘキサデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[4-(p-マレイミドフェニル)ブチルアミド]、1,2-ジヘキサデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[4-(p-マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキサミド]、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[4-(P-マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキサミド]、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0019】
一部の実施形態では、HDLアポリポタンパク質は、アポリポタンパク質A-I(ApoA-I)、アポリポタンパク質A-II(ApoA-II)、アポリポタンパク質A4(ApoA4)、アポリポタンパク質Cs(ApoCs)、及びアポリポタンパク質E(ApoE)からなる群から選択される。一部の実施形態では、HDLアポリポタンパク質模倣物は、ApoA-I模倣物である。一部の実施形態では、ApoA-I模倣物は、配列番号1~336のいずれかにより記載される。
【0020】
一部の実施形態では、個別化新生物ワクチンは、抗免疫抑制薬または免疫刺激薬と同時投与される。一部の実施形態では、抗免疫抑制薬または免疫刺激薬は、抗CTLA抗体、抗PD-1、抗PD-Ll、抗TIM-3、抗BTLA、抗VISTA、抗LAG3、抗CD25、抗CD27、抗CD28、抗CD137、抗OX40、抗GITR、抗ICOS、抗TIGIT、及びIDOの阻害薬からなる群から選択される。
【0021】
特定の実施形態では、本発明は、1つ以上のネオアンチゲン性ペプチドと複合化されたマイクロ粒子またはナノ粒子を含む組成物を提供し、1つ以上のネオアンチゲン性ペプチドのそれぞれは、対象から得られた新生物生体サンプルから同定されたネオアンチゲン性変異に特異的である。一部の実施形態では、対象は、ヒトである。
【0022】
一部の実施形態では、マイクロ粒子のサイズは、0.5ミクロン~100ミクロンである。一部の実施形態では、ナノ粒子の平均サイズは、6~500nmである。
【0023】
一部の実施形態では、1つ以上のネオアンチゲン性ペプチドは、長さが約5~約50アミノ酸の範囲である。一部の実施形態では、1つ以上のネオアンチゲン性ペプチドは、長さが約15~約35アミノ酸の範囲である。一部の実施形態では、1つ以上のネオアンチゲン性ペプチドは、長さが約18~約30アミノ酸の範囲である。一部の実施形態では、1つ以上のネオアンチゲン性ペプチドは、長さが約6~約15アミノ酸の範囲である。
【0024】
一部の実施形態では、ナノ粒子は、アジュバントとさらに複合化または混合される。一部の実施形態では、アジュバントは、CPG、polyIC、poly-ICLC、1018 ISS、アルミニウム塩、Amplivax、AS15、BCG、CP-870,893、CpG7909、CyaA、dSLIM、GM-CSF、IC30、IC31、Imiquimod、ImuFact IMP321、IS Patch、ISS、ISCOMATRIX、Juvlmmune、LipoVac、MF59、モノホスホリル脂質A、Montanide IMS 1312、Montanide ISA 206、Montanide ISA 50V、Montanide ISA-51、OK-432、OM-174、OM-197-MP-EC、ONTAK、PepTel.RTM、ベクターシステム、PLGAマイクロ粒子、イミキモド、レシキモド、ガルジコモド、3M-052、SRL172、ビロソーム及び他のウイルス様粒子、YF-17D、VEGFトラップ、β-グルカン、Pam3Cys、AquilaのQS21 Stimulon、バジメザン、ならびにAsA404(DMXAA)からなる群から選択される。一部の実施形態では、アジュバントは、アジュバントの任意の誘導体(例えば、コレステロール改変CpG)である。
【0025】
一部の実施形態では、ナノ粒子は、sHDLナノ粒子である。一部の実施形態では、sHDLナノ粒子は、少なくとも1つのリン脂質及び少なくとも1つのHDLアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物の混合物を含む。一部の実施形態では、HDLアポリポタンパク質は、アポリポタンパク質A-I(ApoA-I)、アポリポタンパク質A-II(ApoA-II)、アポリポタンパク質A4(ApoA4)、アポリポタンパク質Cs(ApoCs)、及びアポリポタンパク質E(ApoE)からなる群から選択される。一部の実施形態では、リン脂質は、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート](DOPE-PDP)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホチオエタノール、1,2-ジ(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[4-(p-マレイミドフェニル)ブチルアミド]、1,2-ジヘキサデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[4-(p-マレイミドフェニル)ブチルアミド]、1,2-ジヘキサデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[4-(p-マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキサミド]、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[4-(P-マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキサミド]、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。一部の実施形態では、HDLアポリポタンパク質模倣物は、ApoA-I模倣物である。一部の実施形態では、ApoA-I模倣物は、配列番号1~336のいずれかにより記載される。一部の実施形態では、sHDLナノ粒子の平均粒子サイズは、6~70nmである。
【0026】
さらに、本発明は、種々のタイプの障害を、処置、予防、または改善するために構成された生体高分子薬と複合化されたナノ粒子、及びその合成方法に関する。特に、本発明は、生体高分子薬(例えば、核酸、ペプチド、糖脂質など)を担持する合成高密度リポタンパク質(sHDL)ナノ粒子を含む組成物、このようなsHDLナノ粒子を合成するための方法、ならびに(例えば、診断及び/または治療環境において)このようなsHDLナノ粒子を利用するシステム及び方法、に関する。
【0027】
したがって、特定の実施形態では、本発明は、細胞内の標的遺伝子を阻害するための方法を提供し、本方法は、sHDLナノ粒子内に封入されたsiRNAを含む組成物を細胞に導入することを含み、siRNAは、RNA干渉により標的遺伝子を阻害することができ、siRNAは、互いに相補的な2つのRNA鎖を含む。一部の実施形態では、siRNAは、3’センス鎖でコレステロールにより修飾される。一部の実施形態では、細胞は、インビボ、インビトロ、またはエクスビボである。一部の実施形態では、細胞は、ヒト内にある。一部の実施形態では、イメージング薬が、sHDLナノ粒子内に封入されている。
【0028】
特定の実施形態では、本発明は、患者の血清LDL-Cレベルを低減させるための方法を提供し、本方法は、ナノ粒子内に封入されたPCSK9 siRNAを含む治療的有効量の医薬組成物を患者に投与することを含み、PCSK9 siRNAは、RNA干渉により、PCSK9遺伝子を阻害することができ、PCSK9 siRNAは、互いに相補的な2つのRNA鎖を含み、PCSK9遺伝子の阻害は、患者の血清LDL-Cレベルの低減をもたらす。一部の実施形態では、患者は、ヒト患者である。一部の実施形態では、PCSK9 siRNAは、3’センス鎖でコレステロールにより修飾される。一部の実施形態では、イメージング薬は、ナノ粒子内に封入されている。一部の実施形態では、ナノ粒子は、sHDLナノ粒子、フラーレン、金属内包フラーレン、バッキーボール、三金属窒化物鋳型金属内包フラーレン、単層及び多層カーボンナノチューブ、分枝状及び樹枝状カーボンナノチューブ、金ナノロッド、銀ナノロッド、単層及び多層ホウ素/窒化物ナノチューブ、カーボンナノチューブピーポッド、カーボンナノホーン、カーボンナノホーンピーポッド、リポソーム、ナノシェル、デンドリマー、マイクロ粒子、量子ドット、超常磁性ナノ粒子、ナノロッド、セルロースナノ粒子、ガラス及びポリマーマイクロスフィア及びナノスフィア、生分解性PLGAマイクロスフィア及びナノスフィア、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、カーボンナノ粒子、鉄ナノ粒子、修飾ミセル、からなる群から選択される。一部の実施形態では、ナノ粒子は、sHDLナノ粒子である。
【0029】
特定の実施形態では、本発明は、患者の血清LDL-Cレベルを低減させることにより、患者の冠状動脈性心臓病を処置するための方法を提供し、本方法は、ナノ粒子内に封入されたPCSK9 siRNAを含む治療的有効量の医薬組成物を患者に投与することを含み、PCSK9 siRNAは、RNA干渉により、PCSK9遺伝子を阻害することができ、PCSK9 siRNAは、互いに相補的な2つのRNA鎖を含み、PCSK9遺伝子の阻害は、血清LDL-Cレベルの低減をもたらす。一部の実施形態では、患者は、ヒト患者である。一部の実施形態では、PCSK9 siRNAは、3’センス鎖でコレステロールにより修飾される。一部の実施形態では、イメージング薬は、ナノ粒子内に封入されている。一部の実施形態では、ナノ粒子は、sHDLナノ粒子、フラーレン、金属内包フラーレン、バッキーボール、三金属窒化物鋳型金属内包フラーレン、単層及び多層カーボンナノチューブ、分枝状及び樹枝状カーボンナノチューブ、金ナノロッド、銀ナノロッド、単層及び多層ホウ素/窒化物ナノチューブ、カーボンナノチューブピーポッド、カーボンナノホーン、カーボンナノホーンピーポッド、リポソーム、ナノシェル、デンドリマー、マイクロ粒子、量子ドット、超常磁性ナノ粒子、ナノロッド、セルロースナノ粒子、ガラス及びポリマーマイクロスフィア及びナノスフィア、生分解性PLGAマイクロスフィア及びナノスフィア、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、カーボンナノ粒子、鉄ナノ粒子、修飾ミセル、からなる群から選択される。一部の実施形態では、ナノ粒子は、sHDLナノ粒子である。一部の実施形態では、sHDLナノ粒子は、少なくとも1つのリン脂質及び少なくとも1つのHDLアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物の混合物を含む。
【0030】
特定の実施形態では、本発明は、細胞のナチュラルキラーT細胞媒介性免疫応答を誘導するための方法を提供し、本方法は、ナノ粒子内に封入されたαGalCer糖脂質を含む組成物に細胞を曝露することを含み、このような曝露は、ナチュラルキラーT細胞媒介性免疫応答の誘導をもたらす。一部の実施形態では、細胞は、インビボ細胞、エクスビボ細胞、またはインビトロ細胞である。一部の実施形態では、ナノ粒子は、sHDLナノ粒子、フラーレン、金属内包フラーレン、バッキーボール、三金属窒化物鋳型金属内包フラーレン、単層及び多層カーボンナノチューブ、分枝状及び樹枝状カーボンナノチューブ、金ナノロッド、銀ナノロッド、単層及び多層ホウ素/窒化物ナノチューブ、カーボンナノチューブピーポッド、カーボンナノホーン、カーボンナノホーンピーポッド、リポソーム、ナノシェル、デンドリマー、マイクロ粒子、量子ドット、超常磁性ナノ粒子、ナノロッド、セルロースナノ粒子、ガラス及びポリマーマイクロスフィア及びナノスフィア、生分解性PLGAマイクロスフィア及びナノスフィア、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、カーボンナノ粒子、鉄ナノ粒子、修飾ミセル、からなる群から選択される。一部の実施形態では、ナノ粒子は、sHDLナノ粒子である。
【0031】
特定の実施形態では、本発明は、抗原に対する免疫応答を誘導するための方法を提供し、本方法は、ナノ粒子を含む有効量の組成物を、必要とする対象に投与することを含み、抗原は、ナノ粒子と複合化され、アジュバントは、ナノ粒子と複合化または混合される。
【0032】
一部の実施形態では、抗原は、PCSK9に対するものである。一部の実施形態では、抗原は、gp100メラノーマに対するものである。一部の実施形態では、抗原は、ペプチドベースの抗原、タンパク質ベースの抗原、多糖ベースの抗原、糖ベースの抗原、脂質ベースの抗原、糖脂質ベースの抗原、核酸ベースの抗原、不活性化生体ベースの抗原、弱毒化生体ベースの抗原、ウイルス抗原、細菌抗原、寄生虫抗原、アレルゲンに由来する抗原、及び腫瘍抗原からなる群から選択される。一部の実施形態では、抗原は、α-アクチニン-4、Bcr-Abl融合タンパク質、Casp-8、β-カテニン、cdc27、cdk4、cdkn2a、coa-1、dek-can融合タンパク質、EF2、ETV6-AML1融合タンパク質、LDLR-フコシルトランスフェラーゼAS融合タンパク質、HLA-A2、HLA-A11、hsp70-2、KIAAO205、Mart2、Mum-1、Mum-2、及びMum-3、neo-PAP、ミオシンクラスI、OS-9、pml-RARα融合タンパク質、PTPRK、K-ras、N-ras、トリオースリン酸イソメラーゼ、Bage-1、Gage3、Gage4、Gage5、Gage6、Gage7、GnTV、Herv-K-mel、Lage-1、Mage-A1、Mage-A2、Mage-A3、Mage-A4、Mage-A6、Mage-A10、Mage-A12、Mage-C2、NA-88、NY-Eso-1/Lage-2、SP17、SSX-2、及びTRP2-Int2、MelanA(MART-I)、gp100(Pmel17)、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、MAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、p15(58)、CEA、RAGE、NY-ESO(LAGS)、SCP-1、Hom/Mel-40、PRAME、p53、H-Ras、HER-2/neu、BCR-ABL、E2A-PRL、H4-RET、IGH-IGK、MYL-RAR、エプスタインバーウイルス抗原、EBNA、ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原E6及びE7、TSP-180、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、p185erbB2、p180erbB-3、c-met、nm-23H1、PSA、TAG-72-4、CA19-9、CA72-4、CAM17.1、NuMa、K-ras、β-カテニン、CDK4、Mum-1、p16、TAGE、PSMA、PSCA、CT7、テロメラーゼ、43-9F、5T4、791Tgp72、α-フェトプロテイン、13HCG、BCA225、BTAA、CA125、CA15-3(CA27.29\BCAA)、CA195、CA242、CA-50、CAM43、CD68\KP1、CO-029、FGF-5、G250、Ga733(EpCAM)、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV18、NB\70K、NY-CO-1、RCAS1、SDCCAG16、TA-90(Mac-2結合タンパク質\シクロフィリンC関連タンパク質)、TAAL6、TAG72、TLP、ならびにTPSからなる群から選択される腫瘍抗原である。
【0033】
一部の実施形態では、アジュバントは、樹状細胞標的分子である。一部の実施形態では、アジュバントは、CpGである。特定の実施形態では、本発明は、抗原に対する免疫応答を誘導するための方法を提供し、本方法は、ナノ粒子を含む有効量の組成物を、必要とする対象に投与することを含み、抗原は、ナノ粒子と複合化される。一部の実施形態では、抗原は、PCSK9に対するものである。一部の実施形態では、ナノ粒子は、アジュバントとさらに複合化または混合される。一部の実施形態では、ナノ粒子は、アジュバントと同時投与される。
【0034】
一部の実施形態では、ナノ粒子は、sHDLナノ粒子、フラーレン、金属内包フラーレン、バッキーボール、三金属窒化物鋳型金属内包フラーレン、単層及び多層カーボンナノチューブ、分枝状及び樹枝状カーボンナノチューブ、金ナノロッド、銀ナノロッド、単層及び多層ホウ素/窒化物ナノチューブ、カーボンナノチューブピーポッド、カーボンナノホーン、カーボンナノホーンピーポッド、リポソーム、ナノシェル、デンドリマー、マイクロ粒子、量子ドット、超常磁性ナノ粒子、ナノロッド、セルロースナノ粒子、ガラス及びポリマーマイクロスフィア及びナノスフィア、生分解性PLGAマイクロスフィア及びナノスフィア、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、カーボンナノ粒子、鉄ナノ粒子、修飾ミセル、からなる群から選択される。一部の実施形態では、ナノ粒子は、sHDLナノ粒子である。
【0035】
一部の実施形態では、アジュバントは、樹状細胞標的分子である。一部の実施形態では、アジュバントは、CpGである。一部の実施形態では、アジュバントは、CPG、polyIC、poly-ICLC、1018 ISS、アルミニウム塩、Amplivax、AS15、BCG、CP-870,893、CpG7909、CyaA、dSLIM、GM-CSF、IC30、IC31、Imiquimod、ImuFact IMP321、IS Patch、ISS、ISCOMATRIX、Juvlmmune、LipoVac、MF59、モノホスホリル脂質A、Montanide IMS 1312、Montanide ISA 206、Montanide ISA 50V、Montanide ISA-51、OK-432、OM-174、OM-197-MP-EC、ONTAK、PepTel.RTM、ベクターシステム、PLGAマイクロ粒子、イミキモド、レシキモド、ガルジコモド、3M-052、SRL172、ビロソーム及び他のウイルス様粒子、YF-17D、VEGFトラップ、β-グルカン、Pam3Cys、AquilaのQS21 Stimulon、バジメザン、ならびにAsA404(DMXAA)からなる群から選択される。一部の実施形態では、アジュバントは、アジュバントの任意の誘導体(例えば、コレステロール改変CpG)である。
【0036】
一部の実施形態では、抗原は、ナノ粒子の外面にコンジュゲートされる。一部の実施形態では、アジュバントは、ナノ粒子の外面にコンジュゲートされる。一部の実施形態では、アジュバントは、ナノ粒子内に封入されている。
【0037】
一部の実施形態では、組成物は、化学療法薬と同時投与される。一部の実施形態では、化学療法薬は、次の:アルデスロイキン、アルトレタミン、アミホスチン、アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クラドリビン、シサプリド、シスプラチン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ドロナビノール、エポエチンα、エトポシド、フィルグラスチム、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、グラニセトロン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イホスファミド、インターフェロンα、イリノテカン、ランソプラゾール、レバミゾール、ロイコボリン、メゲストロール、メスナ、メトトレキサート、メトクロプラミド、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、オメプラゾール、オンダンセトロン、パクリタキセル(タキソール(登録商標))、ピロカルピン、プロクロロペラジン(prochloroperazine)、リツキシマブ、タモキシフェン、タキソール、塩酸トポテカン、トラスツズマブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、及び酒石酸ビノレルビンのうちの1つ以上である。
【0038】
特定の実施形態では、本発明は、ナノ粒子を含む組成物を提供し、抗原は、ナノ粒子と複合化されている。一部の実施形態では、ナノ粒子は、アジュバントとさらに複合化または混合される。
【0039】
一部の実施形態では、抗原は、自己抗原に由来する。
【0040】
一部の実施形態では、抗原は、PCSK9に対するものである。一部の実施形態では、抗原は、gp100メラノーマに対するものである。一部の実施形態では、抗原は、ペプチドベースの抗原、タンパク質ベースの抗原、多糖ベースの抗原、糖ベースの抗原、脂質ベースの抗原、糖脂質ベースの抗原、核酸ベースの抗原、不活性化生体ベースの抗原、弱毒化生体ベースの抗原、ウイルス抗原、細菌抗原、寄生虫抗原、アレルゲンに由来する抗原、及び腫瘍抗原からなる群から選択される。一部の実施形態では、抗原は、α-アクチニン-4、Bcr-Abl融合タンパク質、Casp-8、β-カテニン、cdc27、cdk4、cdkn2a、coa-1、dek-can融合タンパク質、EF2、ETV6-AML1融合タンパク質、LDLR-フコシルトランスフェラーゼAS融合タンパク質、HLA-A2、HLA-A11、hsp70-2、KIAAO205、Mart2、Mum-1、Mum-2、及びMum-3、neo-PAP、ミオシンクラスI、OS-9、pml-RARα融合タンパク質、PTPRK、K-ras、N-ras、トリオースリン酸イソメラーゼ、Bage-1、Gage3、Gage4、Gage5、Gage6、Gage7、GnTV、Herv-K-mel、Lage-1、Mage-A1、Mage-A2、Mage-A3、Mage-A4、Mage-A6、Mage-A10、Mage-A12、Mage-C2、NA-88、NY-Eso-1/Lage-2、SP17、SSX-2、及びTRP2-Int2、MelanA(MART-I)、gp100(Pmel17)、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、MAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、p15(58)、CEA、RAGE、NY-ESO(LAGS)、SCP-1、Hom/Mel-40、PRAME、p53、H-Ras、HER-2/neu、BCR-ABL、E2A-PRL、H4-RET、IGH-IGK、MYL-RAR、エプスタインバーウイルス抗原、EBNA、ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原E6及びE7、TSP-180、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、p185erbB2、p180erbB-3、c-met、nm-23H1、PSA、TAG-72-4、CA19-9、CA72-4、CAM17.1、NuMa、K-ras、β-カテニン、CDK4、Mum-1、p16、TAGE、PSMA、PSCA、CT7、テロメラーゼ、43-9F、5T4、791Tgp72、α-フェトプロテイン、13HCG、BCA225、BTAA、CA125、CA15-3(CA27.29\BCAA)、CA195、CA242、CA-50、CAM43、CD68\KP1、CO-029、FGF-5、G250、Ga733(EpCAM)、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV18、NB\70K、NY-CO-1、RCAS1、SDCCAG16、TA-90(Mac-2結合タンパク質\シクロフィリンC関連タンパク質)、TAAL6、TAG72、TLP、ならびにTPSからなる群から選択される腫瘍抗原である。
【0041】
一部の実施形態では、アジュバントは、樹状細胞標的分子である。一部の実施形態では、アジュバントは、樹状細胞を活性化する免疫刺激薬である。一部の実施形態では、アジュバントは、CpGである。一部の実施形態では、アジュバントは、CPG、polyIC、poly-ICLC、1018 ISS、アルミニウム塩、Amplivax、AS15、BCG、CP-870,893、CpG7909、CyaA、dSLIM、GM-CSF、IC30、IC31、Imiquimod、ImuFact IMP321、IS Patch、ISS、ISCOMATRIX、Juvlmmune、LipoVac、MF59、モノホスホリル脂質A、Montanide IMS 1312、Montanide ISA 206、Montanide ISA 50V、Montanide ISA-51、OK-432、OM-174、OM-197-MP-EC、ONTAK、PepTel.RTM、ベクターシステム、PLGAマイクロ粒子、イミキモド、レシキモド、ガルジコモド、3M-052、SRL172、ビロソーム及び他のウイルス様粒子、YF-17D、VEGFトラップ、β-グルカン、Pam3Cys、AquilaのQS21 Stimulon、バジメザン、ならびにAsA404(DMXAA)からなる群から選択される。一部の実施形態では、アジュバントは、アジュバントの任意の誘導体(例えば、コレステロール改変CpG)である。
【0042】
一部の実施形態では、抗原は、ナノ粒子の外面にコンジュゲートされる。一部の実施形態では、アジュバントは、ナノ粒子の外面にコンジュゲートされる。一部の実施形態では、アジュバントは、ナノ粒子内に封入されている。
【0043】
一部の実施形態では、ナノ粒子は、sHDLナノ粒子、フラーレン、金属内包フラーレン、バッキーボール、三金属窒化物鋳型金属内包フラーレン、単層及び多層カーボンナノチューブ、分枝状及び樹枝状カーボンナノチューブ、金ナノロッド、銀ナノロッド、単層及び多層ホウ素/窒化物ナノチューブ、カーボンナノチューブピーポッド、カーボンナノホーン、カーボンナノホーンピーポッド、リポソーム、ナノシェル、デンドリマー、マイクロ粒子、量子ドット、超常磁性ナノ粒子、ナノロッド、セルロースナノ粒子、ガラス及びポリマーマイクロスフィア及びナノスフィア、生分解性PLGAマイクロスフィア及びナノスフィア、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、カーボンナノ粒子、鉄ナノ粒子、修飾ミセル、からなる群から選択される。一部の実施形態では、ナノ粒子は、sHDLナノ粒子である。
【0044】
特定の実施形態では、本発明は、ナノ粒子内に封入されたsiRNAを含む組成物を提供し、siRNAは、RNA干渉により標的遺伝子を阻害することができ、siRNAは、互いに相補的な2つのRNA鎖を含む。一部の実施形態では、siRNAは、3’センス鎖でコレステロールにより修飾される。一部の実施形態では、イメージング薬は、ナノ粒子内に封入されている。
【0045】
一部の実施形態では、ナノ粒子は、sHDLナノ粒子、フラーレン、金属内包フラーレン、バッキーボール、三金属窒化物鋳型金属内包フラーレン、単層及び多層カーボンナノチューブ、分枝状及び樹枝状カーボンナノチューブ、金ナノロッド、銀ナノロッド、単層及び多層ホウ素/窒化物ナノチューブ、カーボンナノチューブピーポッド、カーボンナノホーン、カーボンナノホーンピーポッド、リポソーム、ナノシェル、デンドリマー、マイクロ粒子、量子ドット、超常磁性ナノ粒子、ナノロッド、セルロースナノ粒子、ガラス及びポリマーマイクロスフィア及びナノスフィア、生分解性PLGAマイクロスフィア及びナノスフィア、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、カーボンナノ粒子、鉄ナノ粒子、修飾ミセル、からなる群から選択される。一部の実施形態では、ナノ粒子は、sHDLナノ粒子である。
【0046】
特定の実施形態では、本発明は、ナノ粒子内に封入されたPCSK9 siRNAを含む医薬組成物を提供し、PCSK9 siRNAは、RNA干渉によりPCSK9遺伝子を阻害することができ、PCSK9 siRNAは、互いに相補的な2つのRNA鎖を含む。一部の実施形態では、PCSK9 siRNAは、3’センス鎖でコレステロールにより修飾される。一部の実施形態では、イメージング薬は、ナノ粒子内に封入されている。
【0047】
一部の実施形態では、ナノ粒子の平均サイズは、6~500nmの間である。
【0048】
一部の実施形態では、ナノ粒子は、sHDLナノ粒子、フラーレン、金属内包フラーレン、バッキーボール、三金属窒化物鋳型金属内包フラーレン、単層及び多層カーボンナノチューブ、分枝状及び樹枝状カーボンナノチューブ、金ナノロッド、銀ナノロッド、単層及び多層ホウ素/窒化物ナノチューブ、カーボンナノチューブピーポッド、カーボンナノホーン、カーボンナノホーンピーポッド、リポソーム、ナノシェル、デンドリマー、マイクロ粒子、量子ドット、超常磁性ナノ粒子、ナノロッド、セルロースナノ粒子、ガラス及びポリマーマイクロスフィア及びナノスフィア、生分解性PLGAマイクロスフィア及びナノスフィア、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、カーボンナノ粒子、鉄ナノ粒子、修飾ミセル、からなる群から選択される。一部の実施形態では、ナノ粒子は、sHDLナノ粒子である。
【0049】
特定の実施形態では、本発明は、ナノ粒子内に封入されたαGalCer糖脂質を含む組成物を提供する。
【0050】
このような方法及び組成物は、ナノ粒子の特定のサイズ、タイプ、または種類に限定されない。一部の実施形態では、ナノ粒子は、sHDLナノ粒子、フラーレン、金属内包フラーレン、バッキーボール、三金属窒化物鋳型金属内包フラーレン、単層及び多層カーボンナノチューブ、分枝状及び樹枝状カーボンナノチューブ、金ナノロッド、銀ナノロッド、単層及び多層ホウ素/窒化物ナノチューブ、カーボンナノチューブピーポッド、カーボンナノホーン、カーボンナノホーンピーポッド、リポソーム、ナノシェル、デンドリマー、マイクロ粒子、量子ドット、超常磁性ナノ粒子、ナノロッド、セルロースナノ粒子、ガラス及びポリマーマイクロスフィア及びナノスフィア、生分解性PLGAマイクロスフィア及びナノスフィア、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、カーボンナノ粒子、鉄ナノ粒子、修飾ミセル、からなる群から選択される。
【0051】
一部の実施形態では、ナノ粒子は、sHDLナノ粒子である。一部の実施形態では、sHDLナノ粒子は、少なくとも1つのリン脂質及び少なくとも1つのHDLアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物の混合物を含む。
【0052】
一部の実施形態では、HDLアポリポタンパク質は、アポリポタンパク質A-I(ApoA-I)、アポリポタンパク質A-II(ApoA-II)、アポリポタンパク質A4(ApoA4)、アポリポタンパク質Cs(ApoCs)、及びアポリポタンパク質E(ApoE)からなる群から選択される。一部の実施形態では、HDLアポリポタンパク質は、preproApoA-I、proApoA-I、ApoA-I、preproApoA-II、proApoA-II、ApoA-II、preproApoA-lV、proApoA-lV、ApoA-IV、ApoA-V、preproApoE、proApoE、ApoE、preproApoA-lMilano、proApoA-IMilano、ApoA-lMilano、preproApoA-IParis、proApoA-IParis、及びApoA-IParis、ならびに、これらのタンパク質のペプチド模倣物、ならびに、それらの混合物から選択される。
【0053】
一部の実施形態では、リン脂質は、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート](DOPE-PDP)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホチオエタノール、1,2-ジ(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[4-(p-マレイミドフェニル)ブチルアミド]、1,2-ジヘキサデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[4-(p-マレイミドフェニル)ブチルアミド]、1,2-ジヘキサデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[4-(p-マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキサミド]、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[4-(P-マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキサミド]、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0054】
一部の実施形態では、HDLアポリポタンパク質模倣物は、ApoA-I模倣物である。一部の実施形態では、ApoA-I模倣物は、配列番号1~336のいずれかにより記載される。一部の実施形態では、sHDLナノ粒子の平均粒子サイズは、6~70nmの間である。
【0055】
特定の実施形態では、本発明は、1つ以上の抗原に対する免疫応答を誘導するための方法を提供し、本方法は、ナノ粒子を含む有効量の組成物を、必要とする対象に投与することを含み、1つ以上の抗原は、ナノ粒子と複合化され、アジュバントは、ナノ粒子と複合化される。特定の実施形態では、本発明は、ナノ粒子を含む組成物を提供し、1つ以上の抗原は、ナノ粒子と複合化され、アジュバントは、ナノ粒子と複合化される。一部の実施形態では、ナノ粒子の平均サイズは、6~500nmの間である。
【0056】
一部の実施形態では、1つ以上の抗原は、PCSK9、M30、M27、Adpgk、及びASMTNMELMに対するものである。一部の実施形態では、1つ以上の抗原は、ナノ粒子の外面にコンジュゲートされる。
【0057】
一部の実施形態では、アジュバントは、CPG、polyIC、poly-ICLC、1018 ISS、アルミニウム塩、Amplivax、AS15、BCG、CP-870,893、CpG7909、CyaA、dSLIM、GM-CSF、IC30、IC31、Imiquimod、ImuFact IMP321、IS Patch、ISS、ISCOMATRIX、Juvlmmune、LipoVac、MF59、モノホスホリル脂質A、Montanide IMS 1312、Montanide ISA 206、Montanide ISA 50V、Montanide ISA-51、OK-432、OM-174、OM-197-MP-EC、ONTAK、PepTel.RTM、ベクターシステム、PLGAマイクロ粒子、イミキモド、レシキモド、ガルジコモド、3M-052、SRL172、ビロソーム及び他のウイルス様粒子、YF-17D、VEGFトラップ、β-グルカン、Pam3Cys、AquilaのQS21 Stimulon、バジメザン、ならびにAsA404(DMXAA)からなる群から選択される。一部の実施形態では、アジュバントは、アジュバントの任意の誘導体(例えば、コレステロール改変CpG)である。一部の実施形態では、アジュバントは、ナノ粒子の外面にコンジュゲートされる。一部の実施形態では、アジュバントは、ナノ粒子内に封入されている。
【0058】
一部の実施形態では、ナノ粒子は、sHDLナノ粒子、フラーレン、金属内包フラーレン、バッキーボール、三金属窒化物鋳型金属内包フラーレン、単層及び多層カーボンナノチューブ、分枝状及び樹枝状カーボンナノチューブ、金ナノロッド、銀ナノロッド、単層及び多層ホウ素/窒化物ナノチューブ、カーボンナノチューブピーポッド、カーボンナノホーン、カーボンナノホーンピーポッド、リポソーム、ナノシェル、デンドリマー、マイクロ粒子、量子ドット、超常磁性ナノ粒子、ナノロッド、セルロースナノ粒子、ガラス及びポリマーマイクロスフィア及びナノスフィア、生分解性PLGAマイクロスフィア及びナノスフィア、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、カーボンナノ粒子、鉄ナノ粒子、修飾ミセル、からなる群から選択される。
【0059】
一部の実施形態では、ナノ粒子は、sHDLナノ粒子である。一部の実施形態では、ナノ粒子は、sHDLであり、sHDLナノ粒子は、少なくとも1つのリン脂質及び少なくとも1つのHDLアポリポタンパク質またはアポリポタンパク質模倣物の混合物を含む。
【0060】
一部の実施形態では、HDLアポリポタンパク質は、アポリポタンパク質A-I(ApoA-I)、アポリポタンパク質A-II(ApoA-II)、アポリポタンパク質A4(ApoA4)、アポリポタンパク質Cs(ApoCs)、及びアポリポタンパク質E(ApoE)からなる群から選択される。リン脂質は、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート](DOPE-PDP)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホチオエタノール、1,2-ジ(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[4-(p-マレイミドフェニル)ブチルアミド]、1,2-ジヘキサデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[4-(p-マレイミドフェニル)ブチルアミド]、1,2-ジヘキサデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[4-(p-マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキサミド]、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[4-(P-マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキサミド]、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0061】
一部の実施形態では、HDLアポリポタンパク質模倣物は、ApoA-I模倣物であり、チオール反応性リン脂質は、ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート](DOPE-PDP)である。一部の実施形態では、ApoA-I模倣物は、配列番号1~336のいずれかにより記載される。
【0062】
本明細書に含まれる教示に基づくさらなる実施形態は、当業者らには明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1A】sHDLのTEM写真及びサイズ分布を示す。
図1B】マウスにおけるDiR標識sHDLの生体内分布を示す。
図1C】SR-BI陰性または陽性細胞による、過剰なブランクsHDLを伴わないまたは伴うDiO-sHDLの細胞取り込みを示す。
図1D】HDL-siRNAの概略図である。
図1E】異なる濃度のPCSK9 siRNAが充填されたsHDLのGPCアッセイを示す。
図1F】ウェスタンブロットにより、PCSK9 siRNA-sHDLは、HepG2細胞中の遊離PCSK9 Cho-siRNAよりも良好にPCSK9をノックダウンできることを示した。
図2】(図2A)抗原及びアジュバント充填sHDLの概略図である。(図2B)sHDLを含有する機能性脂質への抗原の添加は、HPLCで測定されるように、脂質-抗原コンジュゲートの形成をもたらした。(図2C)Cho-CpGは、GPCで測定されるように、sHDLに定量的に組み込むことができた。(図2D)sHDLによる抗原(Ag)及びアジュバント(CpG)の共局在送達は、Montanide中の抗原及びアジュバントの混合物よりも強力な細胞応答をもたらした。
図3】sHDL-CSSSIINFEK(FITC)L/CpGの合成の概略図を示す。
図4】cryoEM及び動的光散乱で分析されるように、sHDL-Ag/CpGの均質な粒径を示す。
図5A】遊離抗原形態と比較して、sHDLによる抗原送達は、樹状細胞による抗原提示を有意に長期化させることを示す。
図5B】遊離抗原形態と比較して、sHDLによる抗原送達は、樹状細胞による抗原提示を有意に長期化させることを示す。
図6】sHDL-Ag/CpGは、従来のアジュバントと混合した遊離抗原を用いたワクチン接種と比較して、抗原特異的CD8+T細胞の誘発を有意に増強することを示す。
図7】sHDL-Ag/CpGワクチン接種は、担腫瘍マウスで強いCD8+T細胞応答を誘発し、腫瘍成長を低減させることを示す。
図8】遊離可溶形態と比較して、sHDLを介して送達されたα-GalCerは、抗原提示細胞のCD1d提示を有意に増強したことを示す。
図9】α-GalCerが充填されたsHDLの大規模合成の便利な方法を、凍結乾燥が提供することを示す。
図10】封入されたsiRNAを含むsHDLの迅速な調製のための凍結乾燥方法の概略図を示す。
図11】sHDLを使用してLDL-C管理のためのPCSK9を制御する概略図を示す。示されるように、(A)LDLは、エンドサイトーシスを介して、LDLRによりクリアされ;(B)PCSK9のLDLRへの結合は、リソソーム中のLDLRの分解をもたらし、LDLRのリサイクリングを防止し、(C)PCSK9のノックダウンは、LDLRを上方制御し、LDL-Cを低減することができ、(D)PCSK9ワクチンにより誘導されたPCSK9抗体は、PCSK9とLDLRとの間の相互作用を遮断し、それにより、LDLRを上方制御し、LDL-Cを低減させることができる。
図12】「個別化」癌ワクチンのためのsHDLナノディスクプラットフォームのデザインを示す。(a)リン脂質及びアポリポタンパク質-1模倣ペプチド(22A)から構成されたsHDLナノディスクを、抗原(Ag)ペプチド及びアジュバントの同時送達のために操作した。4mol%のDOPE-PDP(インサート)を提示する予め形成されたsHDLナノディスクを、腫瘍エクソームDNAシークエンシングにより同定された腫瘍関連抗原(TAA)及び腫瘍特異的変異型ネオアンチゲンを含むシステイン修飾Agペプチドと混合し、次いでコレステロール修飾免疫刺激分子(Cho-CpG)と共にインキュベーションを行い、Ag及びCpG(sHDL-Ag/CpG)が同時充填されたsHDLナノディスクの形成をもたらす。(b)投与時、sHDLナノディスクは、Ag及びCpGの流入領域リンパ節への同時送達を効率的に行い、樹状細胞(DC)による強く、持続的なAg提示を促進し(シグナル1)、DC成熟を誘導して(シグナル2)、強力なAg特異的CD8α+細胞傷害性Tリンパ球(CTL)応答の誘発をもたらす。活性化されたCTLは、末梢組織中の標的癌細胞を認識して死滅させ、強い抗腫瘍効果を発揮する。
図13】22A多様体及び脂質のsHDLナノディスクの形成への影響を示す。(a)DMPC(4モル%のDOPE-PDPを含有する)及び異なる22A変異体を使用して、sHDLを調製した。本発明者らがこの試験を通して使用している22Aに加えて、Dアミノ酸からなる22Aを含む他のいくつかの22A多様体は、4℃で1ヶ月まで安定のままであった(動的光散乱で分析されるように)均質なsHDLナノディスクを形成した。N.D.は凝集のために測定しなかったことを示す。(b)sHDLの合成は、高い転移温度(Tm)及びApoA模倣ペプチドを有するリン脂質を必要とする。POPCまたはDOPC(それぞれTm=-2℃及び-17℃)ではなく、DPPC及びDMPC(それぞれ、Tm=41℃及び24℃)は、22A及び4mol%のDOPEの存在下で均質なsHDLを形成した。
図14】機能性脂質DOPE-PDPの合成を示す。(a)DOPE、SPDP(スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート)、及びトリエチルアミン(1:1:1.5モル比)を、クロロホルムに溶解させ、5時間撹拌しながら暗所で反応させた。(b)展開溶媒として、次の混合物:クロロホルム/メタノール/水=65/25/4(体積比)を使用して、反応の進行を薄層クロマトグラフィー(TLC)でモニターした。(c~d)シリカゲルカラムを使用して、反応混合物を精製し、実施例VIに記載の条件を使用して、(c)TLCで、(d)HPLCで純度を評価した。
図15】sHDL-CSSSIINFEKL/CpG、sHDL-gp100/CpG、及びsHDL-Adpgk/CpGの調製及び特性決定を示す。CSSSIinFEKL、CSS-gp100、またはCSS-Adpgkを、sHDL-PDPと共にインキュベートし、続いて、Cho-CpGをsHDL-CSSSIINFEKL、sHDLgp100、またはsHDL-Adpgkに挿入した。(a)CSSSIINFEKLのsHDL-PDPとのコンジュゲーション、(c)gp100のsHDL-PDPとのコンジュゲーション、または(e)AdpgkのsHDL-PDPとのコンジュゲーションを確認するHPLCクロマトグラムを示す。(b)sHDL-CSSSIINFEKL/CpGのGPC、(d)sHDL-gp100/CpGのGPC、(f)sHDL-Adpgk/CpGのGPCが、全ての製剤の均質性及びCho-CpGのsHDLナノディスクへの効率的な充填を示した。充填充填
図16】sHDLナノディスクにより媒介された強く持続的なAg提示を示す。(a)動的光散乱分析、(b)透過型電子顕微鏡イメージングが、ナノディスク様モルホロジーを有する均一なsHDL-Ag/CpG(10.5nm±0.5平均直径)を示した。(c)無菌濾過(0.22μm)、-20℃での長期保存(8週間)、続く37℃での解凍の後、ナノディスクの均質性を維持した。BMDCを、(d)24時間、(e)示された時間にわたってワクチン製剤と共にインキュベートし、SIINFEKL-H-2K複合体を認識する25D1.16 mAbで染色されたDCのフローサイトメトリー分析により、Ag提示を定量した。f~g.JAWSII細胞(未成熟DC)の共焦点顕微鏡イメージを示す。f.JAWSII細胞を24時間、遊離Ag+CpGまたはsHDL-Ag/CpGと共にインキュベートし、25-D1.16 mAbで染色した。スケールバー=20μm。g.JAWSII細胞を、6時間、24時間、または48時間、遊離CSSSIINFEK(FITC)L+CpGまたはsHDL-CSSSIINFEK(FITC)L/CpGと共にインキュベートし、続いて、Hochest及びLysotrackerで染色した。スケールバー=10μm。h.BMDCを、示された製剤の異なる濃度でインキュベートした:低用量=20nMのSIINFEKL及び3nMのCpG;中用量=100nMのSIINFEKL及び15nMのCpG;ならびに高用量=500nMのSIINFEKL及び75nMでのCpG。24時間または48時間のインキュベーション後、BMDCを、さらに24時間、SIINFEKL特異的B3Z T細胞ハイブリドーマと共培養し、続いて、T細胞活性化を評価した。データは、2~4回の独立した実験からの代表的な実験(n=3)からの平均値±標準偏差を示す。****p<0.0001、TukeyのHSD事後検定を用いた二元配置ANOVAにより解析した。
図17】sHDL-Ag/CpGにより媒介された強く持続的なAg提示を示す。BMDCを、(a及びb)24時間、または(c)示された時間にわたってワクチン製剤と共にインキュベートし、SIINFEKL-H-2Kb複合体を認識する25D1.16 mAbで染色されたDCのフローサイトメトリー分析により、Ag提示を定量した。aには24時間の時点での抗原提示BMDCのパーセント、bには代表的なヒストグラム、cには48時間を超える抗原提示BMDCのパーセントを示す。データは、2~4回の独立した実験からの代表的な実験(n=3)からの平均値±標準偏差を示す。****p<0.0001、TukeyのHSD事後検定を用いた二元配置ANOVAにより解析した。
図18】sHDL-Ag/CpGにより媒介されたAg送達及び提示(広い視野)を示す。JAWSII細胞を、6時間、24時間、または48時間、遊離CSSSIINFEK(FITC)L+CpGまたはsHDL-CSSSIINFEK(FITC)L/CpGと共にインキュベートし、Hochest及びLysotrackerで染色した。スケールバー=50μm。
図19】sHDLの細胞内送達(広い視野)を示す。JAWSII細胞を、ローダミン標識DOPE(DOPE-Rhod)またはTexas Red標識22Aのいずれかを含有するsHDLと共に24時間インキュベートし、Hochest及びLysotrackerで染色した。スケールバー=50μm。
図20】CpG含有製剤による骨髄由来樹状細胞(BMDC)の刺激を示す。BMDCを、24時間、ブランクsHDLまたは75nMのCpG製剤と共にインキュベートした。対応するフルオロフォア標識抗体で染色した後、CD40、CD80、及びCD86の発現レベルをフローサイトメトリーで測定した。データは、3回の独立した実験からの代表的な実験(n=3)からの平均値±標準偏差を示す。
図21】Ag及びアジュバントのLN標的化、ならびにCTL応答の誘発のためのワクチンナノディスクを示す。C57BL/6マウスに、(a)31nmolのFITCタグ化Ag(CSSSIINFEK(FITC)L)、または(b)遊離可溶形態もしくはsHDL形態の2.3nmolのCho-CpG(Cy5により20%標識された)を尾の付け根で皮下投与し、流入領域鼠径LNにおける蛍光シグナルを、24時間後にIVISを用いて定量した。(c~f)C57BL/6マウスに、0日目、21日目、及び42日目に、示された製剤(15.5nmolのAgペプチド及び2.3nmolのCpG)で免疫した。(c)末梢血中のSIINFEKL特異的CD8α+T細胞の頻度を、テトラマー+CD8α+T細胞のフローサイトメトリー分析で、各免疫化の7日後に測定した。(d)49日目の代表的な散布図を示す。(e~f)50日目に、ワクチン接種前の動物に、2×10個のB16OVA細胞を皮下側腹部注射により投与した。(e)腫瘍成長、(f)全生存期間を示す。(g~h)C57BL/6マウスに、隔週で示された製剤で免疫した。gにはPBMC中のSIINFEKL特異的CD8α+T細胞のパーセント、hには42日目のSIINFEKLによるエクスビボでの再刺激後の脾細胞間のIFN-γスポット形成細胞のELISPOT分析を示す。データは、2~3回の独立した実験からの代表的な実験(n=4~5)からの平均値±標準偏差を示す。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、及び****p<0.0001、(a~b)対応のないStudentの両側t検定、(c、d、e)TukeyのHSD事後検定を用いた二元配置ANOVA、または(f)ログランク(Mantel-Cox)検定で分析した。パネルeのアスタリスクは、sHDL-Ag/CpGとSIINFEKL+CpG+Montanideとの間の統計的な有意差を示す。
図22】皮下投与後のdLNにおける抗原ペプチド及びsHDLの共局在化を示す。Cy5標識22Aが組み込まれたsHDL-CSSSIINFEK(FITC)Lナノディスクを、C57BL/6マウスの尾の付け根に皮下注射した(31nmolの抗原ペプチド/マウス)。24時間後、流入領域鼠径リンパ節を採取し、凍結切片を共焦点顕微鏡検査のために調製した。共焦点イメージは、抗原ペプチドを示し、22Aは、リンパ節に共局在した(白矢印で示す)。スケールバー=50μm。
図23】sHDL-Ag/CpGワクチン接種によるCTL応答の誘発。C57BL/6マウスは、隔週で示された製剤で免疫した。CD44及びCD62L染色により分析された、35日目のPBMC中のSIINFEKL特異的CD8+T細胞及びそれらのエフェクターCD8+T細胞表現型の代表的な散布図を示す。
図24】sHDL-Ag/CpGを用いるメラノーマに対する治療ワクチン接種を示す。C57BL/6マウス(n=5)に、2×105個のB16OVA細胞を皮下接種し、4日目及び11日目に、示された製剤(15.5nmolのAgペプチド及び2.3nmolのCpGに相当する)をワクチン接種した。(a)テトラマー染色で測定されたPBMC中のSIINFEKL特異的CD8α+T細胞の頻度、(b)17日目のそれらの代表的な散布図、(c)B16OVA腫瘍成長、(d)動物の生存率を示す。データは、2~3回の独立した実験からの代表的な実験(n=5)からの平均値±標準偏差を示す。p<0.05、及び****p<0.0001、(a、c)TukeyのHSD事後検定を用いた二元配置ANOVA、または(d)ログランク(Mantel-Cox)検定で分析した。パネルcのアスタリスクは、sHDL-Ag/CpGと他の全ての群との間の統計的な有意差を示す。
図25】メラノーマ及び結腸腺癌の処置のための、腫瘍関連抗原及び腫瘍特異的ネオアンチゲンを用いたナノディスクワクチン接種を示す。(a~c)C57BL/6マウスに、2×10個の非免疫原性B16F10メラノーマ細胞を皮下接種し、4日目及び11日目に、示された製剤(15.5nmolのAgペプチド及び2.3nmolのCpGに相当する)をワクチン接種した。(a)PBMC中のgp100特異的CD8α+T細胞の頻度、(b)B16F10腫瘍成長、(c)動物の生存率を示す。(d)AdpgkのcDNAをシークエンスすることにより、MC-38ネズミ結腸腺癌細胞におけるAdpgkの変異を確認した。(e~h)C57BL/6マウスに、10個のMC-38腫瘍細胞を皮下接種し、10日目、17日目、及び24日目に、示された製剤(15.5nmolの変異Adpgkペプチド及び2.3nmolのCpGに相当する)をワクチン接種した。(e)23日のPBMC中のAdpgk特異的CD8α+T細胞の頻度、及びAdpgk-テトラマー+CD8α+T細胞の代表的な散布図、(f)変異Adpgk Agを用いたエクスビボ再刺激後の30日目のPBMC中の細胞内IFN-γ、TNF-α、及びIFN-γTNF-αCD8α+T細胞のパーセンテージならびにそれらの代表的な散布図、(g)MC-38腫瘍塊の成長、(h)動物の生存率を示す。データは、2~3回の独立した実験からの代表的な実験(n=5~8)からの平均値±標準偏差を示す。p<0.05、**p<0.01、***p<0.001、及び****p<0.0001、(a、b、e、g)TukeyのHSD事後検定を用いた二元配置ANOVA、(c、h)ログランク(Mantel-Cox)検定で分析した。(b、g)アスタリスクは、sHDL-Ag/CpGと他の全ての群との間の統計的な有意差を示す。
図26】sHDLAg/CpGを用いるメラノーマに対する治療ワクチン接種を示す。C57BL/6マウスに、2×10個のB16F10細胞を皮下接種し、4日目及び11日目に、示された製剤(15.5nmolのAgペプチド及び2.3nmolのCpGに相当する)をワクチン接種した。17日目のB16F10担腫瘍マウスにおけるPBMC中のgp100特異的CD8α+T細胞の代表的な散布図を示す。
図27】変異AdpgkネオアンチゲンについてのMC-38細胞のcDNAシークエンシング。2つの異なるセットのプライマーを使用することにより、ネオアンチゲンAdpgk mRNA(アミノ酸配列ASMTNMELM)に対する2つの異なる長さ(485bp及び250bp)のcDNAを調製した。cDNAの配列をDNAシークエンシングで分析した。(A)アガロースゲル上の2つの異なる長さのcDNAバンド、(B)485bpのcDNAに対するSangerのDNAシークエンシング法の結果、(C)250bpのcDNAに対するSangerのDNAシークエンシング法の結果を示す。矢印は、G→Tの変異を示す。
図28】多価ネオアンチゲンペプチドを用いたナノディスクベースのワクチン接種は、強力なCD4+及びCD8+T細胞応答を誘発した。(a)sHDL-M30/M27/CpGをワクチン接種されたマウス由来のPBMCは、M30ペプチドを用いた再刺激時に、CD4+T細胞からの強いIFNγ分泌を示した。(b)sHDL-M30/M27/CpGをワクチン接種されたマウス由来のPBMCは、M27ペプチドを用いた再刺激時に、CD8+T細胞からの強いIFNγ分泌を示した。データは,平均値±標準偏差(n=3~4)を表す。
図29】ナノ粒子製剤は、CD8+T細胞応答、及びネオアンチゲンペプチドワクチン接種の治療効果を改善する。C57BL/6マウスに、0日目の皮下注射により、右脇腹に、腫瘍細胞(マウス1匹につき1×10個のMC38細胞)を接種した。マウスに、可溶性形態またはリポソーム形態のいずれかの15.5nmolのASMTNMELM及び2.3nmolのCpGを、10日目及び17日目にワクチン接種した。AuNP(金ナノ粒子)グループを、10日目に免疫し、11日目にレーザーに曝露し、または曝露せず、続いて、17日目にテトラマー染色した。(a)最後のワクチン接種後7日目の異なる製剤により誘発されたPBMC中の抗原特異的CD8+T細胞のパーセントを示す。(b)示された製剤に対する腫瘍成長曲線を示す。データは,平均値±標準偏差(n=3~5)を表す。定義 本発明の理解を容易にするために、いくつかの用語及び語句を以下に定義する。
【0064】
本明細書で使用される場合、用語「脂質」は、水に不溶性であり、脂肪、油、ワックス、及び関連化合物を含む脂肪物質を指す。それらは、血液中で作られるか(内因性)、または食事で摂取される(外因性)かのいずれかであってよい。脂質は、正常体機能に不可欠であり、外因性または内因性供給源から生成されるかどうかに関わらず、輸送され、次に、細胞に使用されるために放出されなければならない。細胞に使用されるために脂質の産生、輸送、及び放出は、脂質代謝と称される。いくつかのクラスの脂質があるが、2つの主要なクラスは、コレステロール及びトリグリセリドである。コレステロールは、食事で摂取され、体内のほとんどの器官及び組織、主に、肝臓の細胞により製造されることがある。コレステロールは、その遊離形態で見出し、または、多くの場合コレステロールエステルと呼ばれるものとしての脂肪酸と組み合わせることができる。
【0065】
本明細書で使用される場合、用語「リポタンパク質」は、水不溶性脂質が部分的に水溶性外殻に含まれるように構造化された球状化合物を指す。リポタンパク質のタイプに応じて、含有量は、様々な量の遊離及びエステル化コレステロール、トリグリセリド、及びアポタンパク質またはアポリポタンパク質を含む。機能ならびに脂質及びアポタンパク質含有量が異なり、濃度の増加に応じて分類される、5つの主要なタイプのリポタンパク質がある:(I)カイロミクロン及びカイロミクロンレムナント、(ii)超低密度リポタンパク質(「VLDL」)、(iii)中間密度リポタンパク質(「IDL」)、(iv)低密度リポタンパク質(「LDL」)、及び(v)高密度リポタンパク質(「HDL」)。コレステロールは、リポタンパク質と会合した粒子として血流中を循環する。
【0066】
本明細書中で使用される場合、用語「HDL」または「高密度リポタンパク質」は、高密度リポタンパク質を指す。HDLは、血液中のコレステロールのトランスポーターとして機能する、ほぼ等しい量の脂質及びタンパク質の複合体を含む。HDLは、肝臓及び小腸の上皮細胞で主に合成され、これらから分泌される。分泌の直後に、HDLは、主要成分としてアポリポタンパク質A-I(ApoA-Iとも呼ばれる)及びリン脂質を含有する円盤状粒子の形態であり、新生HDLとも呼ばれる。この新生HDLは、血中で、末梢細胞の細胞膜からの遊離コレステロールを受け取り、または他のリポタンパク質の加水分解過程で産生され、その疎水性中心に、LCAT(レシチンコレステロールアシルトランスフェラーゼ)の作用により該コレステロールから転化されたコレステロールエステルを保持しながら、成熟球状HDLを形成する。HDLは、「コレステロール逆輸送」と呼ばれる脂質代謝プロセスにおいて極めて重要な役割を果たし、血液中に末梢組織からコレステロールを取り込み、肝臓に輸送する。コレステロール逆輸送は、アテローム性動脈硬化症に対するHDLの予防作用の主要な機序の1つと考えられているので、高レベルのHDLは、アテローム性動脈硬化症及び冠状動脈性心臓病(CHD)のリスク低下と関連している。
【0067】
本明細書中で使用される場合、用語「合成HDL」、「sHDL」、「再構成HDL」、または「rHDL」は、HDLの少なくとも1つのタンパク質と会合する脂質(複数可)、好ましくは、ApoA-Iまたはその模倣物で構成された、天然HDLに構造的に類似した粒子を指し、これらは、HDLの既知の生理学的機能全てを示す。通常、sHDLの構成成分は、血液に由来し、または組換え技術により産生されてもよい。
【0068】
本明細書中で使用される場合、用語「複合化された」は、最も広い意味で使用される。複合化の例としては、化学的コンジュゲーション、表面吸着、内部充填、ならびに抗原とアジュバント分子との物理的混合物が含まれるが、これらに限定されない。
【0069】
本明細書中で使用される場合、用語「生物学的生体高分子」または「生体高分子」は、生体または細胞培養物、例えば真核生物(例えば、哺乳類)細胞培養物または原核生物(例えば、細菌)細胞培養物から単離することができる1kDaを超える分子量の分子を指す。一部の実施形態では、用語の使用は、ポリマー、例えば、生体高分子、例えば、核酸(DNA、RNAなど)、ポリペプチド(タンパク質など)、炭水化物、及び脂質、を指す。一部の実施形態では、用語「生体高分子」は、タンパク質を指す。一部の実施形態では、用語「生体高分子」は、組換えタンパク質または融合タンパク質を指す。一部の実施形態では、タンパク質は可溶性である。一部の実施形態では、生体高分子は、抗体、例えばモノクローナル抗体、である。
【0070】
本明細書で使用される場合、用語「抗原」は、本明細書において、細胞の抗原特異的免疫応答及び/または体液性抗体応答を得るために宿主免疫系を刺激することになる1つ以上のエピトープを含有する分子として定義される。抗原は、ペプチド、タンパク質、多糖類、糖類、脂質、核酸、及びそれらの組み合わせとすることができる。抗原は、ウイルス、細菌、寄生虫、植物、原生動物、真菌、組織、または癌もしくは白血病細胞などの形質転換細胞に由来する可能性があり、細胞全体またはその免疫構成要素、例えば、細胞壁構成要素、とすることができる。抗原は、抗原を発現するオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドであってよい。抗原は、天然または合成の抗原、例えば、ハプテン、ポリエピトープ、隣接(flanking)エピトープ、及び他の組換えまたは合成由来の抗原とすることができる(例えば、Bergmann,et al.,Eur.J.Immunol.,23:2777-2781(1993);Bergmann,et al.,J.Immunol.,157:3242-3249(1996);Suhrbier,Immunol.and Cell Biol.,75:402-408(1997)を参照のこと)。
【0071】
本明細書で使用される場合、用語「ネオアンチゲン」または「ネオアンチゲン性」は、ゲノムコードタンパク質のアミノ酸配列を変更する腫瘍特異的変異(複数可)から生じる腫瘍抗原のクラスを意味する。
【0072】
本明細書で使用する場合、用語「腫瘍特異抗原」は本明細書では、腫瘍細胞に固有であり、体内の他の細胞内またはこれら上には発生しない抗原として定義される。
【0073】
本明細書で使用する場合、用語「腫瘍関連抗原」は本明細書では、腫瘍細胞に固有ではなく、抗原に対する免疫応答を誘導することができない条件下で、正常細胞内またはこれら上にも発現される抗原として定義される。
【0074】
本明細書で使用される場合、用語「アジュバント」は本明細書では、他の抗原と共に投与される時、他の抗原に対する免疫応答を増加させる物質として定義される。アジュバントは本明細書では「免疫増強薬」及び「免疫調節薬」とも称される。
【0075】
本明細書中で使用される場合、用語「抗原提示細胞」は本明細書では、抗原をプロセシングすることができ、リンパ球活性化に必要とされる分子と共に、細胞表面上にペプチドフラグメントを提示する高度に特化された細胞として定義される。T細胞に対する主要な抗原提示細胞は、樹状細胞、マクロファージ、及びB細胞である。B細胞に対する主要な抗原提示細胞は、濾胞性樹状細胞である。
【0076】
本明細書で使用される場合、用語「交差提示」は本明細書では、抗原提示細胞が、細胞外抗原を取り込み、プロセシングし、CD8 T細胞(細胞傷害性T細胞)に対し、MHCクラスI分子で提示する能力として定義される。このプロセスは、ほとんどの腫瘍及び抗原提示細胞に感染しないウイルスに対する細胞性免疫を誘導する。交差提示はまた、タンパク質抗原を用いたワクチン接種、例えば、腫瘍ワクチン接種における、細胞傷害性免疫の誘導に必要である。
【0077】
本明細書中で使用される場合、用語「免疫性」、「免疫学的」、または「免疫」応答は、抗原に対する体液性応答及び/または細胞応答の発生である。
【0078】
本明細書で使用する場合、用語「キット」は、材料を送達するための任意の送達システムを指す。本明細書に記載されるようなsHDLナノ粒子(例えば、siRNAを封入するsHDLナノ粒子を含む組成物)(例えば、免疫応答を活性化するように構成されたsHDLナノ粒子を含む組成物)との関連で、このような送達システムは、このような組成物及び/または補助材(例えば、材料を使用するための書面による使用説明書など)を、ある場所から別の場所へ、保管、輸送、または送達することを可能にするシステムを含む。例えば、キットは、必要な薬剤及び/または補助材を含有する1つ以上のエンクロージャ(例えば、ボックス)を含む。本明細書中で使用される場合、用語「断片化キット」は、それぞれが、全キット構成要素の一部分を含有する2つ以上の別々の容器を含む送達システムを指す。容器は、共にまたは別々に、対象のレシピエントに送達されてもよい。例えば、第1の容器は、sHDLナノ粒子を含む組成物またはこのようなsHDLナノ粒子を合成するのに必要な成分を含有してもよいが、第2の容器は第2の薬剤(例えば、siRNA、抗原、アジュバント)(例えば、抗生物質またはスプレーアプリケータ)を含有する。実際には、それぞれが全体のキット構成要素の一部分を含有する2つ以上の別々の容器を含む任意の送達システムは、用語「断片化キット」に含まれる。対照的に、「組み合わせキット」は、(例えば、所望の構成要素のそれぞれを収容する単一ボックスに)記載されているようなsHDLナノ粒子のいずれかを合成及び利用するために必要な構成要素の全てを含有する送達システムを指す。用語「キット」は、断片化キット及び組み合わせキットの両方を含む。
【0079】
本明細書で使用される場合、用語「対象」は、特定の処置のレシピエントとすべき、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類などを含むがこれらに限定されない任意の動物(例えば、哺乳動物)を指す。通常、用語「対象」及び「患者」は本明細書では、ヒト対象に関して同じ意味で使用される。
【0080】
本明細書で使用される場合、用語「サンプル」は、最も広い意味で使用される。ある意味では、任意の供給源から得られた標本または培養物、ならびに生体サンプル及び環境サンプルを含むことを意味する。生体サンプルは、動物(ヒトを含む)から得られてもよく、流体、固体、組織、及び気体を包含する。生体サンプルは、血液製剤、例えば、血漿、血清などを含む。環境サンプルは、表面物質、土、水、水晶、及び工業用サンプルなどの環境物質を含む。しかし、このような例は、本発明に適用可能なサンプルの種類を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0081】
本明細書で使用される場合、用語「インビトロ」は、人工環境、及び人工環境内で生じるプロセスまたは反応を指す。インビトロ環境は、試験管及び細胞培養からなることができるが、これに限定されない。用語「インビボ」は、自然環境(例えば、動物または細胞)及び自然環境内で生じるプロセスまたは反応を指す。
【0082】
本明細書で使用する場合、用語「薬物」または「治療薬」は、医療イメージング、監視、避妊、化粧、栄養補助食、医薬品、及び予防の用途を含む診断または治療目的のために生体に投与される任意の分子、分子複合体、または物質を含むことを意味する。用語「薬物」は、化学的に修飾されかつ/または生物学的なもしくは生体適合性の構造に機能的に結合された任意のこのような分子、分子複合体、または物質をさらに含むことを意味する。
【0083】
本明細書で使用される場合、用語「溶媒」は、反応が行われる媒体を指す。溶媒は、液体であってもよいが、液体形態に限定されない。溶媒カテゴリーは、非極性、極性、プロトン性、及び非プロトン性が含まれるが、これらに限定されない。
【発明を実施するための形態】
【0084】
本発明は、種々のタイプの障害を、処置、予防、または改善するために構成された生体高分子薬と複合化されたナノ粒子、及びその合成方法に関する。特に、本発明は、生体高分子薬(例えば、核酸、ペプチド、糖脂質など)を担持するナノ粒子(例えば、合成高密度リポタンパク質(sHDL))を含む組成物、このようなナノ粒子を合成するための方法、ならびに(例えば、診断及び/または治療環境において)このようなナノ粒子を利用するシステム及び方法、に関する。
ナノ粒子
本発明は、種々のタイプの障害を、処置、予防、または改善するために構成された生体高分子薬と複合化するための具体的なタイプまたは種類のナノ粒子に限定されない。
【0085】
ナノ粒子の例としては、フラーレン(別名C60、C70、C76、C80、C84としても知られる)、フラーレンケージ内にさらなる原子、イオン、またはクラスターを含有する金属内包フラーレン、(EMIの)バッキーボール)、三金属窒化物鋳型金属内包フラーレン(TNT EME、炭素ケージ内の三金属窒化物鋳型中に形成された高対称四原子分子クラスター内包)、単層及び多層カーボンナノチューブ、分岐状及び樹枝状カーボンナノチューブ、金ナノロッド、銀ナノロッド、単層及び多層ホウ素/窒化物ナノチューブ、カーボンナノチューブピーポッド(内部メタロフラーレン及び/または他の内部の化学構造を有するカーボンナノチューブ)、カーボンナノホーン、カーボンナノホーンピーポッド、リポソーム、ナノシェル、デンドリマー、量子ドット、超常磁性ナノ粒子、ナノロッド、及びセルロースナノ粒子が挙げられるが、これらに限定されない。粒子の実施形態は、有効性または選択性を高める能力を有するマイクロ粒子を含むこともできる。他の非限定的な例示的ナノ粒子は、ガラス及びポリマーマイクロスフィア及びナナノスフィア、生分解性PLGAミクロスフィア及びナノスフィア、金、銀、炭素、及び鉄ナノ粒子を含む。
【0086】
一部の実施形態では、ナノ粒子は、修飾ミセルである。これらの実施形態では、修飾ミセルは、疎水性ポリマーブロックを含有するように修飾されたポリオールポリマーを含む。本開示で使用される用語「疎水性ポリマーブロック」は、それ自体で疎水性となるポリマーのセグメントを示す。本明細書で使用される用語「ミセル」は、液体中に分散された分子のアグリゲートを指す。水溶液の代表的なミセルは、周囲の溶媒と接触した親水性「頭部」領域を有するアグリゲートを形成して、疎水性の単一尾部領域をミセルの中心に隔離する。一部の実施形態では、ヘッド領域は、例えば、ポリオールポリマーの表面領域であってもよいが、テール領域は、例えば、ポリオールポリマーの疎水性ポリマーブロック領域であってもよい。
【0087】
本発明は、ナノメートルスケールに加えて、マイクロメートルスケールでの粒子の使用をさらに包含する。マイクロ粒子が使用される場合、それらは、比較的小さい、約1~50マイクロメートルであることが好ましい。考察を容易にするために、本明細書での「ナノ粒子」の使用は、真のナノ粒子(約1nm~約1000nmのサイズ)、マイクロ粒子(例えば、約1マイクロメートル~約50マイクロメートル)、またはその両方を包含する。
【0088】
ナノ粒子の例としては、一例として、限定ではなく、常磁性ナノ粒子、超常磁性ナノ粒子、金属ナノ粒子、フラーレン様材料、無機ナノチューブ、共有結合した金属キレートを有するデンドリマー、ナノファイバー、ナノホーン、ナノオニオン、ナノロッド、ナノロープ、及び量子ドットが挙げられる。一部の実施形態では、ナノ粒子は、金属ナノ粒子(例えば、金、パラジウム、白金、銀、銅、ニッケル、コバルト、イリジウム、またはそれらのうちの2つ以上の合金のナノ粒子)である。ナノ粒子は、コア、またはコア-シェルナノ粒子のようなコア及びシェルを含むことができる。
【0089】
一部の実施形態では、ナノ粒子は、sHDLナノ粒子である。一般に、sHDLナノ粒子は、HDLアポリポタンパク質及び両親媒性脂質の混合物からなる。
【0090】
本発明は、特定のタイプまたは種類のHDLアポリポタンパク質の使用に限定されない。HDLアポリポタンパク質は、例えば、アポリポタンパク質AI(ApoA-I)、アポリポタンパク質A-II(ApoA-II)、アポリポタンパク質A4(ApoA4)、アポリポタンパク質Cs(ApoCs)及びアポリポタンパク質E(ApoE)を含む。一部の実施形態では、HDLアポリポタンパク質は、preproApoA-I、proApoA-I、ApoA-I、preproApoA-II、proApoA-II、ApoA-II、preproApoA-lV、proApoA-lV、ApoA-IV、ApoA-V、preproApoE、proApoE、ApoE、preproApoA-lMilano、proApoA-IMilano、ApoA-lMilano、preproApoA-IParis、proApoA-IParis、及びApoA-IParis、ならびにこれらのタンパク質のペプチド模倣物、ならびに、それらの混合物から選択される。好ましくは、担体粒子は、ApoA-IまたはApoA-IIから構成されるが、アポリポタンパク質A4、アポリポタンパク質Cs、またはアポリポタンパク質Eを含む他のリポタンパク質の使用は、治療薬の送達のための担体粒子混合物を製剤化するために単独でまたは組み合わせて使用されてもよい。一部の実施形態では、このようなHDLアポリポタンパク質の模倣物が使用される。
【0091】
ApoA-Iは、迅速に分解されて243個のアミノ酸残基を有する成熟ポリペプチドを生成するプロタンパク質として分泌されるプレプロアポリポタンパク質として、肝臓及び小腸により合成される。ApoA-Iは、主に、プロリンであるリンカー部分により隔てられた6~8個の異なる22アミノ酸反復からなり、一部の場合では、いくつかの残基から構成されたストレッチからなる。ApoA-Iは、脂質との3つのタイプの安定な複合体を形成する:プレ-β-1HDLと称される小さい脂質の少ない複合体;プレ-β-2HDLと称される極性脂質(リン脂質及びコレステロール)を含有する平坦化された円盤状粒子;ならびに、球状または成熟HDL(HDL3及びHDL2)と称される極性及び非極性の両方の脂質を含む球状粒子。循環集団のほとんどのHDLは、ApoA-I及びApoA-II(第2の主要なHDLタンパク質)の両方を含有する。
【0092】
一部の実施形態では、ApoA-Iアゴニストまたは模倣物が提供される。一部の実施形態では、このようなApoA-I模倣物は、ApoA-Iの活性を模倣する両親媒性αヘリックスを形成することができ、天然の分子のものに接近し、またはこれを超える特定の活性を有する。一部の実施形態では、ApoA-I模倣物は、ペプチドまたはペプチドアナログである。これらは、(脂質の存在下で)両親媒性ヘリックスを形成し、脂質に結合し、プレβ様またはHDL様複合体を形成し、レシチン-コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)を活性化し、HDL画分の血清レベルを増加させ、コレステロール排出を促進する。
【0093】
本発明は、特定のApoA-I模倣物の使用に限定されない。一部の実施形態では、Srinivasa,et al.,2014 Curr.Opinion Lipidology Vol.25(4):304-308に記載のApoA-I模倣物のいずれかが利用される。一部の実施形態では、米国特許出願公開番号20110046056及び同第20130231459号に記載されているApoA-I模倣物のいずれかが利用される。
【0094】
一部の実施形態では、「22A」ApoA-I模倣物が使用される(PVLDLFRELLNELLEALKQKLK)(配列番号4)(実施例I~IVを参照のこと)(例えば、米国特許第7,566,695号を参照のこと)。一部の実施形態では、米国特許第7,566,695号に記載されているような、表1に示す次のApoA-I模倣物のいずれかが利用される:
【0095】
【表1】
【0096】
*は、N末端アセチル化及びC末端アミド化されたペプチドを示し;N末端がダンシル化されているペプチドを示し;spは、実験条件下で溶解度の問題を示したペプチドを示し;Xは、Aibであり;Zは、Nalであり;Oは、Ornであり;He(%)は、パーセントヘリシティを示し;micsは、ミセルを示し;~は、欠失したアミノ酸を示す。
【0097】
一部の実施形態では、米国特許第6,743,778号に記載されるような次の配列を有するApoA-I模倣物が利用される:Asp Trp Leu Lys Ala Phe Tyr Asp Lys Val Ala Glu Lys Leu Lys Glu Ala Phe(配列番号255)。
【0098】
一部の実施形態では、米国特許出願公開第2003/0171277号に記載されるような表2に示される次のApoA-I模倣物のいずれかが利用される:
【0099】
【表2】
【0100】
一部の実施形態では、米国特許出願公開第2006/0069030号に記載されるような以下の配列を有するApoA-I模倣物が利用される:F-A-E-K-F-K-E-A-V-K-D-Y-F-A-K-F-W-D(配列番号333)。
【0101】
一部の実施形態では、米国特許出願公開第2009/0081293号に記載されるような次の配列を有するApoA-I模倣物が利用される:DWFKAFYDKVAEKFKEAF(配列番号334);DWLKAFYDKVAEKLKEAF(配列番号335);PALEDLRQGLLPVLESFKVFLSALEEYTKKLNTQ(配列番号336)。
【0102】
両親媒性脂質は、例えば、疎水性部分及び親水性部分の両方を有する任意の脂質分子を含む。例としては、リン脂質または糖脂質が挙げられる。sHDL-TAナノ粒子に使用され得るリン脂質の例としては、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート](DOPE-PDP)、1,2-ジパルミトイル-sn-グリセロ-3-ホスホチオエタノール、1,2-ジ(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[4-(p-マレイミドフェニル)ブチルアミド]、1,2-ジヘキサデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[4-(p-マレイミドフェニル)ブチルアミド]、1,2-ジヘキサデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[4-(p-マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキサミド]、1,2-ジ-(9Z-オクタデセノイル)-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[4-(P-マレイミドメチル)シクロヘキサンカルボキサミド]、ホスファチジルコリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、及びそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、リン脂質は、イメージング薬(例えば、ローダミン(Rhod)標識DOPE(DOPE-Rhod))と複合化される。一部の実施形態では、リン脂質は、例えば、ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート](DOPE-PDP)、1,2-ジヘキサデカノイル-sn-グリセロ-3-ホスホチオエタノール、またはN-4-(p-マレイミドフェニル)ブチリル)ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(MPB-DPPE))などのチオール反応性リン脂質である。
【0103】
一部の実施形態では、例示的なリン脂質としては、小さいアルキル鎖リン脂質、卵ホスファチジルコリン、大豆ホスファチジルコリン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、ジミリストイルホスファチジルコリン、ジステアロイルホスファチジルコリン、1-ミリストイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン、1-パルミトイル-2-ミリストイルホスファチジルコリン、1-パルミトイル-2-ステアロイルホスファチジルコリン、1-ステアロイル-2-パルミトイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルコリンジオレフォスファチジルエタノールアミン、ジラウロイルホスファチジルグリセロールホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジルグリセロールなどのジホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール、ジステアロイルホスファチジルグリセロール、ジオレオイルホスファチジルグリセロール、ジミリストイルホスファチジン酸、ジパルミトイルホスファチジン酸、ジミリストイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジミリストイルホスファチジルセリン、ジパルミトイルホスファチジルセリン、脳ホスファチジルセリン、脳スフィンゴミエリン、卵スフィンゴミエリン、ミルクスフィンゴミエリン、パルミトイルスフィンゴミエリン、フィトスフィンゴミエリン、ジパルミトイルスフィンゴミエリン、ジステアロイルスフィンゴミエリン、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール塩、ホスファチジン酸、ガラクトセレブロシド、ガングリオシド、セレブロシド、ジラウリルホスファチジルコリン、(1,3)-D-マンノシル-(1,3)ジグリセリド、アミノフェニルグリコシド、3-コレステリル-6′-(グリコシルチオ)ヘキシルエーテル糖脂質、ならびにコレステロール及びその誘導体が挙げられるが、これらに限定されない。SM及びパルミトイルスフィンゴミエリンを含むリン脂質画分は、少量の任意のタイプの脂質を任意に含むことができ、これらは、リゾリン脂質、パルミトイルスフィンゴミエリン以外のスフィンゴミエリン、ガラクトセレブロシド、ガングリオシド、セレブロシド、グリセリド、トリグリセリド、ならびにコレステロール及びその誘導体を含むが、これらに限定されない。
【0104】
一部の実施形態では、sHDLナノ粒子は、リン脂質/HDLアポリポタンパク質のモル比が2~250(例えば、10~200、20~100、20~50、30~40)である。
【0105】
一般に、そのように形成されたsHDLナノ粒子は、球状であり、約5nm~約20nm(例えば、4~75nm、4~60nm、4~50nm、4~22nm、6~18nm、8~15nm、8~10nmなど)の直径を有する。一部の実施形態では、sHDLナノ粒子をサイズ排除クロマトグラフィーにかけて、より均質な調製物を得る。
【0106】
本発明は、生体高分子(例えば、ペプチド、核酸、糖脂質)の改善された安定で標的化された送達(例えば、インビトロまたはインビボ)の必要性に対処する。実際に、本発明は、ペプチド、核酸、及び糖脂質を含む生体高分子の安定で標的化された送達のための合成高密度リポタンパク質(sHDL)ナノ粒子を提供することにより、このような必要性に対処する。
【0107】
従来のナノ粒子ビヒクルを含む他の方策と比較して、sHDLナノ粒子は、魅力的な生体適合性及びカーゴ充填能力を有する。例えば、超小型であるが調整可能なサイズ(例えば、10~20nm)は、sHDLナノ粒子がリンパ節に効率的に排出し、カーゴペプチド抗原及び核酸ベースのアジュバントをリンパ節に存在する樹状細胞に送達することを可能にし、それにより、腫瘍免疫療法のための抗原及びアジュバントの同時送達のための効率的なプラットフォームとしてそれらを配置する。加えて、本発明に対する実施形態を開発する過程で行われた実験は、(1)siRNAの、内因性HDLの天然標的細胞である肝細胞への標的化送達すること、及び(2)免疫刺激性グリコリド(α-ガラクトシルセラミド)を、抗原提示細胞に標的化すること、により、広範囲のsHDLベースのアプローチを実証した。
【0108】
このような実験は、リン脂質及びアポリポタンパク質A-I模倣ペプチドで調製され、かつ生体高分子薬物が充填されたsHDLナノ粒子を操作することをさらに実証した。ペプチド薬物をHDLナノディスクに充填するために、HDLナノディスクの表面上のペプチドの還元感受性連結を可能にする合成チオール反応性リン脂質が利用された。核酸(CpGモチーフ及びsiRNAを含む)を充填するために、核酸は、核酸のsHDLナノ粒子への容易な挿入を可能にすることが明らかになったコレステリル部分により修飾された。糖脂質をHDLに充填するために、糖脂質とHDLとの間の疎水性相互作用が利用された。このような実験は、インビトロ及びインビボでのこのようなカーゴの標的組織への安定した送達をさらに実証した。
RNA干渉
特定の実施形態では、sHDLナノ粒子は、RNA干渉の方法及びシステム内で使用される。
【0109】
RNA干渉は、二本鎖RNA(dsRNA)により誘発された高度に保存された機序であり、dsRNAと相同の遺伝子の転写を下方制御することができる。dsRNAは最初に、Dicerにより、短鎖干渉RNA(siRNA)と呼ばれる21~23ntの短鎖二本鎖にプロセシングされる。RNA誘導性サイレンシング複合体(RISC)に取り込まれて、それらは標的mRNAの切断により遺伝子サイレンシングを媒介することができる。「siRNA」または「小干渉性リボ核酸」は、生理学的条件下で、相補的領域に沿ってハイブリダイゼーションするリボヌクレオチドの2つの鎖を指す。siRNA分子は、標的遺伝子のmRNAの領域と実質的に同一な二本鎖領域を含む。標的遺伝子の対応する配列と100%同一性を有する領域が好適である。この状態は、「完全に相補的」と称される。しかし、領域は、標的とされるmRNAの領域の長さに応じて、標的遺伝子の対応する領域と比較して、1つ、2つ、または3つのミスマッチを含有することもあり、したがって、完全に相補的でないことがある。特定の標的配列の発現を効果的に阻害するために十分な配列同一性を有するsiRNAを分析及び同定する方法は、当該技術分野で既知である。好適なmRNA標的領域は、コード領域である。さらに、5’-UTR、3’-UTR、及びスプライス部位などの非翻訳領域は、領域が、mRNA標的に固有のものであり、mRNAのポリA尾部に関するものでない限り、好適である。
【0110】
一部の実施形態では、sHDLナノ粒子内に封入されたsiRNAは、RNA干渉を含む方法及びシステムを実施するのに利用される。
【0111】
このような実施形態は、特定のサイズまたはタイプのsiRNA分子に限定されない。例えば、標的に相補的なsiRNAの領域の長さは、15~100ヌクレオチド、18~25ヌクレオチド、20~23ヌクレオチド、または15、16、17、もしくは18を超えるヌクレオチドであってよい。対応する標的領域とのミスマッチがある場合、相補領域の長さは一般に、幾分長くする必要がある。
【0112】
特定の実施形態では、本明細書に開示される(例えば、siRNAのsHDLナノ粒子内での封入による)sHDLナノ粒子を使用するsiRNA送達アプローチは、目的の任意の遺伝子を阻害することができると考えられる。
【0113】
本発明は、封入されたsiRNA分子を含むsHDLナノ粒子を生成するための特定の方法に限定されない。例えば、一部の実施形態では、凍結乾燥法は、均質なsHDLの調製のために使用される。一部の実施形態では、リン脂質及びApoA模倣ペプチドは、氷酢酸に溶解させ、凍結乾燥させる。一部の実施形態では、siRNA分子のsHDLナノ粒子への充填は、siRNA分子のコレステロール修飾により容易になる。例えば、siRNAは、3’センス鎖でコレステロールにより修飾され(例えば、Kuwahara,H.;et al.,Molecular Therapy 2011,19(12),2213-2221)、中間レベルの化学修飾は、サイレンシング効果を著しく損なうことなく、血清中でsiRNAを安定化させるために使用されることになる(例えば、Behlke,M.A.,Oligonucleotides 2008,18(4),305-319を参照のこと)。一部の実施形態では、凍結乾燥リン脂質及びApoA模倣ペプチドは、水和され(例えば、PBS中で水和され(pH7.4))、リン脂質の転移温度(Tm)を上回る温度及び下回る温度で熱サイクルされて、ブランクsHDLを形成し、次に、これらは室温で最適時間(例えば、5分、10分、20分、25分、30分、35分、50分、80分、120分、360分)、コレステロール修飾siRNAと共にインキュベートされて、封入されたsiRNAを含むsHDLを形成する。図10は、封入されたsiRNAを含むsHDLの迅速な調製のための凍結乾燥法の概略図を示す。
【0114】
このような実施形態は、封入されたsiRNAを含むsHDLを特性決定する特定の手法に限定されない。一部の実施形態では、sHDLのモルホロジーは、TEMにより観察される。一部の実施形態では、sHDLのサイズ分布は、Malvern Nanosizer instrument及びGPCアッセイを使用した動的光散乱法(DLS)により分析される。
【0115】
このような実施形態は、インビトロ及びインビボでのsiRNAの送達プロファイルを評価する特定の手法に限定されない。一部の実施形態では、イメージング薬(例えば、蛍光色素Cy3)でsiRNA分子を標識することにより、siRNA分子の器官レベルでの生体内分布、さらに細胞内送達プロファイルの視覚化が可能になる。一部の実施形態では、RT-PCR及びウェスタンブロットは、mRNAレベル及びタンパク質レベルでそれぞれ標的タンパク質を分析するために使用される。
【0116】
したがって、特定の実施形態では、本発明は、細胞内の標的遺伝子を阻害するための方法を提供し、本方法は、RNA干渉により標的遺伝子を阻害することができるsiRNAを細胞に誘導することを含み、siRNAは、互いに相補的な2つのRNA鎖を含み、siRNAは、sHDLナノ粒子内に封入されている。一部の実施形態では、siRNAは、3’センス鎖でコレステロールにより修飾される。一部の実施形態では、細胞は、ヒト内にある。
【0117】
特定の実施形態では、プロタンパク質転換酵素サブチリシン/ケクシン9(PCSK9)に特異的なsiRNAがsHDLナノ粒子内に封入されているsHDLナノ粒子が提供される。有力な証拠は、低密度リポタンパク質コレステロール(LDL-C)の血漿レベルの上昇が、冠状動脈性心疾患(CHD)の主要なリスク因子であることを示している(例えば、Law,M.R.;etal.,British Medical Journal 2003,326(7404),1423-1427;Boekholdt,S.M.;et al.,Jama-Journal of the American Medical Association 2012,307(12),1302-1309;Sniderman,A.D.;et al.,Circulation-Cardiovascular Quality and Outcomes 2011,4(3),337-U144を参照のこと)。肝臓で合成されたPCSK9は、LDL-Cの制御において重要な役割を果たし、PCSK9は、肝細胞上のLDL受容体(LDLR)に結合し、LDLRのリソソームから細胞表面へのリサイクリングを防止することができ、これは順次、LDLRの下方制御及びLDL-Cのレベルの増加をもたらす(例えば、Maxwell,K.N.;et al.,Proceedings of the National Academy of Sciences of the United
States of America 2004,101(18),7100-7105;Dadu,R.T.;et al.,Nature Reviews Cardiology 2014,11(10),563-575;Horton,J.D.;et al.,Trends in Biochemical Sciences 2007,32(2),71-77を参照のこと)。それ故、PCSK9阻害は、LDL-Cを潜在的に減少させる可能性がある(例えば、Shen,L.;et al.,Pharmacological Research 2013,73,27-34を参照のこと)。インビボでのPCSK9阻害のために開発中の治療的アプローチは、PCSK9のsiRNA媒介性ノックダウン及びPCSK9に対するワクチン接種を含む(例えば、Fitzgerald,K.;et al.,Lancet 2014,383(9911),60-68;Galabova,G.;et al.,Circulation 2013,128(22)を参照のこと)が、両方の方策は、各方策のインビボでの効能を最大化するために、いかに治療薬を標的細胞に、すなわち、それぞれ肝細胞及び免疫細胞に効果的に送達するかという主要な課題に直面する。
【0118】
予め、PCSK9 siRNAは、脂質ナノ粒子(例えば、Frank-Kamenetsky,M.;et al.,Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 2008,105(33),11915-11920を参照のこと)により、またはsiRNAをN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)リガンドにコンジュゲートすること(例えば、Akinc,A.;et al.,Molecular Therapy 2010,18(7),1357-1364を参照のこと)により、肝細胞に送達されており、これらは、siRNAが、肝細胞に受動的にまたは肝細胞上のアシアロ糖タンパク質受容体(ASGPR)の認識により標的化されることを可能にする。しかし、これらの従来の送達方策は、siRNA分子を細胞内エンドソーム/リソソーム経路に曝すことができ、siRNAカーゴは、分解して、PCSK9の次善のノックダウンをもたらす可能性がある。それ故、肝細胞を標的すること及びエンドソーム/リソソーム経路をバイパスすることの両方ができる方策を開発することが急務である。
【0119】
封入されたPCSK9 siRNA分子を含むsHDLナノ粒子を使用すると、このような限界が克服される。実際に、sHDLナノ粒子は、内因性HDLと同様の性質を有し、これらは、静脈内注入後に本質的に肝細胞を標的とすることができ、それにより、細胞内エンドソーム/リソソーム経路を進むことなく、siRNAカーゴの肝細胞のサイトゾルへの直接送達及びPCSK9のノックダウンが可能になる。
【0120】
特定の実施形態では、封入されたPCSK9 siRNA分子を含むsHDLは、サイトゾルに送達され、それらは、RNA誘導性サイレンシング複合体(RISC)と結合して、SR-BI発現肝細胞内で、PCSK9タンパク質(例えば、Chendrimada,T.P.;etal.,Nature 2005,436(7051),740-744;Matranga,C.;et al.,Cell 2005,123(4),607-620を参照のこと)をノックダウンすることができる(例えば、Goldstein,J.L.;Brown,M.S.,Arteriosclerosis Thrombosis and Vascular Biology 2009,29(4),431-438;Wolfrum,C.;et al.,Nature Biotechnology 2007,25(10),1149-1157を参照のこと)。
【0121】
図11は、sHDLを使用してLDL-C管理のためのPCSK9を制御する概略図を示す。
【0122】
本発明は、特定のPCSK9 siRNA配列の使用に限定されない。一部の実施形態では、PCSK9 siRNA配列は、マウス、ラット、非ヒト霊長類、及びヒトPCSK9 mRNAに対して交差反応性である(例えば、Frank-Kamenetsky,et al.,Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America 2008,105(33),11915-11920を参照のこと)。
【0123】
特定の実施形態では、本発明は、細胞内のPCSK9遺伝子を阻害するための方法を提供し、本方法は、RNA干渉によりPCSK9遺伝子を阻害することができるPCSK9
siRNAを細胞に導入することを含み、PCSK9 siRNAは、互いに相補的な2つのRNA鎖を含み、PCSK9 siRNAは、sHDLナノ粒子内に封入されている。一部の実施形態では、PCSK9 siRNAは、3’センス鎖でコレステロールにより修飾される。一部の実施形態では、細胞は、ヒト内にある。
【0124】
特定の実施形態では、本発明は、患者(例えば、ヒト患者)の血清LDL-Cレベルを低減させる方法を提供し、本方法は、sHDLナノ粒子内に封入されたPCSK9 siRNAを含む治療的有効量の医薬組成物を患者に投与することを含み、PCSK9 siRNAは、RNA干渉により、PCSK9遺伝子を阻害することができ、PCSK9 siRNAは、互いに相補的な2つのRNA鎖を含み、PCSK9遺伝子の阻害は、血清LDL-Cレベルの低減をもたらす。
【0125】
特定の実施形態では、本発明は、患者の血清LDL-Cレベルを低減させることにより、患者の冠状動脈性心臓病を処置するための方法を提供し、本方法は、sHDLナノ粒子内に封入されたPCSK9 siRNAを含む治療的有効量の医薬組成物を患者に投与することを含み、PCSK9 siRNAは、RNA干渉により、PCSK9遺伝子を阻害することができ、PCSK9 siRNAは、互いに相補的な2つのRNA鎖を含み、PCSK9遺伝子の阻害は、血清LDL-Cレベルの低減をもたらす。
【0126】
特定の実施形態では、sHDLナノ粒子は、免疫応答を活性化するために使用される。このような実施形態は、免疫応答を活性化する特定の手法に限定されない。
免疫応答刺激
免疫系は、2つの機能的サブシステム:自然免疫系及び獲得免疫系に分類することができる。自然免疫系は、感染に対する防御の最前線であり、ほとんどの潜在的な病原体は、例えば、顕著な感染を引き起こし得る前に、この系により急速に無力化される。獲得免疫系は、侵入生体の、抗原と称される分子構造に反応する。獲得免疫反応の2つのタイプ:体液性免疫反応及び細胞性免疫反応がある。体液性免疫反応では、体液にB細胞により分泌された抗体は、病原体由来の抗原に結合して、様々な機序、例えば、補体媒介性の溶解により病原体の排除をもたらす。細胞媒介性免疫反応では、他の細胞を破壊することができるT細胞が活性化される。例えば、疾患に関連するタンパク質は、細胞中に存在する場合、細胞内でペプチドにタンパク質分解的に断片化される。次に、特定の細胞タンパク質は、このように形成された抗原またはペプチドに自らを付着させ、細胞の表面に輸送され、身体の分子防御機構、特に、T細胞に提示される。細胞傷害性T細胞は、これらの抗原を認識し、抗原を保有する細胞を死滅させる。
【0127】
細胞表面上にペプチドを輸送して提示する分子は、主要組織適合遺伝子複合体(MHC)のタンパク質と称される。MHCタンパク質は、MHCクラスI及びMHCクラスIIと称される2つのタイプに分類される。2つのMHCクラスのタンパク質の構造は、非常に類似している。しかし、それらは、非常に異なる機能を有する。MHCクラスIのタンパク質は、ほとんどの腫瘍細胞を含む、身体のほぼ全ての細胞の表面に存在する。MHCクラスIタンパク質は、通常、内因性タンパク質に由来し、または細胞内に存在する病原体に由来する抗原が充填され、次に、ナイーブTリンパ球または細胞傷害性Tリンパ球(CTL)に提示される。MHCクラスIIタンパク質は、樹状細胞、Bリンパ球、マクロファージ、及び他の抗原提示細胞上に存在する。それらは主に、外部抗原源、すなわち、細胞外からプロセシングされるペプチドを、Tヘルパー(Th)細胞に提示する。MHCクラスIタンパク質により結合されたペプチドのほとんどは、生体自体の健康な宿主細胞で産生される細胞質タンパク質に由来し、通常は免疫反応を刺激しない。したがって、クラスIのこのような自己ペプチド提示MHC分子を認識する細胞傷害性Tリンパ球は、胸腺で欠損し(中枢性免疫寛容)、または胸腺から放出された後に欠損もしくは不活性化、すなわち、免疫寛容化される(末梢性免疫寛容)。MHC分子は、ペプチドを非寛容化Tリンパ球に提示する場合、免疫反応を刺激することができる。細胞傷害性Tリンパ球は、表面上にT細胞受容体(TCR)及びCD8分子の両方を有する。T細胞受容体は、MHCクラスIの分子と複合化されたペプチドを認識し、結合することができる。各細胞傷害性Tリンパ球は、特異的MHC/ペプチド複合体に結合することができるユニークなT細胞受容体を発現する。
【0128】
ペプチド抗原は、細胞表面上に提示される前に、小胞体内で競合親和性結合によりMHCクラスIの分子に自らを付着させる。ここで、個々のペプチド抗原の親和性は、そのアミノ酸配列、及び特定の結合モチーフのアミノ酸配列内の規定された位置での存在に直接関連する。このようなペプチドの配列が既知である場合、例えばペプチドワクチンを使用して疾患細胞に対する免疫系を操作することが可能である。
【0129】
ペプチドベースの癌ワクチンは、良好な安全性プロファイルならびに製造及び品質管理の容易さのために広範囲で調査されている。しかし、臨床試験におけるそれらの抗腫瘍効果は、期待外れのものであり、現象は、Agペプチド及びアジュバントの流入領域リンパ節(dLN)への非効率的な同時送達、ならびにその後の免疫寛容及びCTLフラトリサイド(fratricide)に起因する(例えば、Toes,R.E.,et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.93,7855-7860(1996);Su,M.W.,etal.,J.Immunol.151,658-667(1993);Melief,C.J.& van der Burg,S.H.Nat.Rev.Cancer 8,351-360(2008)を参照のこと)。デポー形成油中水型アジュバント系は、免疫原性を改善することができ(例えば、Speiser,D.E.et al.J.Clin.Invest.115,739-746(2005);Fourcade,J.et al.J.Immunother.31,781-791(2008)を参照のこと)、ブースター免疫化は、ワクチン部位でのT細胞の隔離を引き起こして、T細胞枯渇及び欠損を引き起こす可能性がある(例えば、Rezvani,K. et al.Haematologica 96,432-440(2011);Hailemichael,Y.et al.Nat.Med.19,465-472(2013)を参照のこと)。これらの問題に対処するために、種々のナノ粒子ベースのワクチン系は、動物モデルで評価されている(例えば、Reddy,S.T.et al.Nat.Biotechnol.25,1159-1164(2007);Li,A.V.et al.Sci.Transl.Med.5,204ra130(2013);Jeanbart,L.et al.Cancer.Immunol.Res.2,436-447(2014);Xu,Z.,et al.,ACS Nano 8,3636-3645(2014);Liu,H. et al.Nature 507,519-522(2014);Fan,Y.& Moon,J.J.Vaccines(Basel)3,662-685(2015)を参照のこと)。しかし、特に、患者特異的ネオアンチゲンを用いた個別化治療薬に適した手法における、潜在的な安全性の懸念及びナノ粒子のスケールアップ製造は依然として、主要な課題である。
【0130】
本発明に対する実施形態を開発する過程で行われた実験は、代替の簡単な方策を開発し、確立された臨床的製造手順及びヒトにおける優れた安全性プロファイルを有する予備形成されたナノ粒子を、Agペプチド及びアジュバントと混合して、「個別化」癌ワクチンを製造した(図12)。本方策は、リン脂質及びアポリポタンパク質A1(ApoAI)模倣ペプチドからなる合成高密度リポタンパク質(sHDL)ナノディスクに基づいていた。ヒト血漿から精製され、または組換え的に産生された243アミノ酸ApoA-Iを含有する他のHDL(例えば、Wolfrum,C.et al.Nat.Biotechnol.25,1149-1157(2007);Diditchenko,S.et
al.Arterioscler.Thromb.Vasc.Biol.33,2202-2211(2013);Fischer,N.O.et al.J.Am.Chem.Soc.135,2044-2047(2013);Tardy,C.et al.Atherosclerosis 232,110-118(2014);Duivenvoorden,R.et al.Nat.Commun.5,3065(2014)を参照のこと)と比較して、内因性ApoA-Iと配列相同性がないApoA1のリピートαヘリックスドメインに由来する22merのペプチド(22A)を有するsHDLナノディスクを合成した(例えば、米国特許第6,734,169号;米国特許第8,378,068号;Li,D.,Gordon,S.,Schwendeman,A.& Remaley,A.T.Apolipoprotein mimetic peptides
for stimulating cholesterol efflux.in Apolipoprotein Mimetics in the Management
of Human Disease(eds.Anantharamaiah,G.M.& Goldberg,D.)29-42(Springer,Switzerland,2015)を参照のこと)。それにより、自己免疫の潜在的誘発を回避した。重要なことに、sHDLは以前に、臨床試験用に製造されており、ヒトでは約2.2g/mの最大許容用量で安全であることが証明されており(例えば、Khan,M.,et al.,Circulation 108(Suppl IV),563-564(2003);Miles,J.,et al.Proceedings of Arteriosclerosis Thrombosis and Vascular Biology
24,E19-E19(2004)を参照のこと)、値は、臨床試験における大部分の高分子または無機ナノ粒子より1~2桁大きい(例えば、Alexis,F.,et al.,Mol.Pharm.5,505-515(2008);Anselmo,A.C.& Mitragotri,S.A,AAPS J 17,1041-1054(2015)を参照のこと)。
【0131】
本発明に対する実施形態を開発する過程で行われた実験は、ネオアンチゲンワクチン接種のためのナノディスクベースのプラットフォームを開発した(図12)。コレステロールに対するナノ粒子としてのHDLの内在的役割を利用して、強力なToll様受容体-9アゴニストである免疫刺激薬CpGは、インビボでの輸送を増強するために、コレステロール(Cho-CpG)により修飾された。予め形成されたsHDLナノディスクは、腫瘍DNAシークエンシングにより同定されたネオアンチゲンを含むコレステリル-CpG及び腫瘍Agペプチドと単に混合して、室温(RT)で2時間未満で均質かつ安定した超小型ナノディスクを製造することができることが示された。ナノディスクは、Ag/CpGのdLNへの同時送達を効率的に促進し、抗原提示細胞(APC)上のAg提示を長期化させ、抗腫瘍効果を有する顕著なレベルのCTL応答を誘発した。容易な製造プロセス、強力な治療効果、及び臨床的安全性が以前に実証されていたため(例えば、Khan,M., et al.,Circulation 108(Suppl IV),563-564(2003);Miles,J.,et al.Proceedings of Arteriosclerosis Thrombosis and Vascular Biology 24,E19-E19(2004)を参照のこと)、このアプローチは、患者に合わせた癌ワクチン及び他の生物活性の治療薬のための魅力的なプラットフォーム技術を提供する。
【0132】
したがって、特定の実施形態では、抗原とコンジュゲートされたナノ粒子(例えば、sHDLナノ粒子)は、免疫応答を誘導するために使用される。一部の実施形態では、ナノ粒子は、アジュバント(例えば、樹状細胞標的分子(DC))とさらに複合化または混合される。一部の実施形態では、ナノ粒子は、アジュバントと同時投与される。
【0133】
このような実施形態は、特定の抗原に限定されない。実際に、抗原は、ペプチド、タンパク質、多糖類、糖類、脂質、糖脂質、核酸、またはそれらの組み合わせとすることができる。抗原は、ウイルス、細菌、寄生虫、植物、原生動物、真菌、組織、または癌もしくは白血病細胞などの形質転換細胞を含むが、これらに限定されない任意の供給源に由来する可能性があり、細胞全体またはその免疫構成要素、例えば、細胞壁構成要素もしくはその分子構成要素、とすることができる。
【0134】
一部の実施形態では、抗原は、当該技術分野で知られており、商用、政府、及び科学的供給源から入手可能である。一部の実施形態では、抗原は、完全に不活性化または弱毒化生体である。これらの生体は、ウイルス、寄生虫、及び細菌などの感染性生体であってよい。これらの生体は、腫瘍細胞であることもある。抗原は、腫瘍もしくはウイルスまたは細菌源に由来する、精製または部分的に精製されたポリペプチドであってよい。有効な抗原ペプチド(例えば、免疫応答を誘発することができる最小限のペプチド配列)を同定及び選択するための基準は、当該技術分野において見出すことができる。抗原は、異種発現系においてポリペプチド抗原をコードするDNAを発現させることにより産生された組換えポリペプチドとすることができる。抗原は、抗原タンパク質の全部または一部をコードするDNAとすることができる。DNAは、プラスミドDNAなどのベクターDNAの形態であってよい。
【0135】
抗原は、単一の抗原として提供されてもよく、または組み合わせて提供されてもよい。抗原は、ポリペプチドまたは核酸の複合混合物として提供されることもある。
【0136】
一部の実施形態では、抗原は自己抗原である。本明細書で使用される場合、用語「自己抗原」は、哺乳動物に固有で、かつ自己免疫疾患の病因に関与し得る免疫原性抗原またはエピトープを指す。
【0137】
一部の実施形態では、抗原は、ウイルス抗原である。ウイルス抗原は、次のウイルスファミリー:アレナウイルス科、アルテルウイルス、アストロウイルス科、バキュロウイルス科、バドナウイルス、バルナウイルス科、ビルナウイルス科、ブロモウイルス科、ブニヤウイルス科、カリシウイルス科、カピロウイルス、カルラウイルス、カリモウイルス、サーコウイルス科、クロステロウイルス、コモウイルス科、コロナウイルス科(例えば、重症急性呼吸器症候群(SARS)ウイルスなどのコロナウイルス)、コルチコウイルス科、シストウイルス科、デルタウイルス、ダイアンソウイルス、エナモウイルス、フィロウイルス科(例えば、マールブルグウイルス及びエボラウイルス(例えば、ザイール、レストン、象牙海岸、またはスーダン株))、フラビウイルス科(例えば、C型肝炎ウイルス、デングウイルス1、デングウイルス2、デングウイルス3、及びデングウイルス4)、ヘパドナウイルス科、ヘルペスウイルス科(例えば、ヒトヘルペスウイルス1、ヒトヘルペスウイルス3、ヒトヘルペスウイルス4、ヒトヘルペスウイルス5、及びヒトヘルペスウイルス6、ならびにサイトメガロウイルス)、ヒポウイルス科、イリドウイルス科、レビウイルス科、リポスリクスウイルス科、ミクロウイルス科、オルトミクソウイルス科(例えば、インフルエンザウイルスA及びインフルエンザウイルスB及びインフルエンザウイルスC)、パポバウイルス科、パラミクソウイルス科(例えば、麻疹、おたふく風邪、及びヒト呼吸器合胞体ウイルス)、パルボウイルス科、ピコルナウイルス科(例えば、ポリオウイルス、ライノウイルス、ヘパトウイルス、及びアフトウイルス)、ポックスウイルス科(例えば、ワクシニア及び天然痘ウイルス)、レオウイルス科(例えば、ロタウイルス)、レトロウイルス科(例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)-1及びHIV-2などのレンチウイルス)、ラブドウイルス科(例えば、狂犬病ウイルス、麻疹ウイルス、呼吸器合胞体ウイルスなど)、トガウイルス科(例えば、風疹ウイルス、デングウイルスなど)、ならびにトティウイルス科のいずれかに由来するウイルスを含むが、これらに限定されない任意のウイルスから単離することができる。好適なウイルス抗原は、デングウタンパク質M、デングウタンパク質E、デング熱D1NS1、デング熱D1NS2及びデング熱D1NS3の全部または一部も含む。
【0138】
ウイルス抗原は、パピローマウイルス、ヘルペスウイルス、すなわち、単純ヘルペス1及び単純ヘルペス2;肝炎ウイルス、例えば、A型肝炎ウイルス(HAV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、デルタ型肝炎ウイルス(HDV)、E型肝炎ウイルス(HEV)及びG型肝炎ウイルス(HGV)、ダニ媒介性脳炎ウイルス;パラインフルエンザ、水痘帯状疱疹、サイトメガロウイルス、エプスタイン-バール、ロタウイルス、ライノウイルス、アデノウイルス、コクサッキーウイルス、ウマ脳炎、日本脳炎、黄熱病、リフトバレー熱、及びリンパ球性脈絡髄炎などの特定の株に由来することがある。
【0139】
一部の実施形態では、抗原は、細菌抗原である。細菌抗原は、Actinomyces、Anabaena、Bacillus、Bacteroides、Bdellovibrio、Bordetella、Borrelia、Campylobacter、Caulobacter、Chlamydia、Chlorobium、Chromatium、Clostridium、Corynebacterium、Cytophaga、Deinococcus、Escherichia、Francisella、Halobacterium、Heliobacter、Haemophilus、ヘモフィルスインフルエンザB型(HIB)、Hyphomicrobium、Legionella、Leptspirosis、Listeria、Meningococcus A、Meningococcus B、及びMeningococcus C、Methanobacterium、Micrococcus、Myobacterium、Mycoplasma、Myxococcus、Neisseria、Nitrobacter、Oscillatoria、Prochloron、Proteus、Pseudomonas、Phodospirillum、Rickettsia、Salmonella、Shigella、Spirillum、Spirochaeta、Staphylococcus、Streptococcus、Streptomyces、Sulfolobus、Thermoplasma、Thiobacillus、ならびにTreponema、Vibrio、及びYersiniaを含むが、これらに限定されない任意の細菌から生じる可能性がある。
【0140】
一部の実施形態では、抗原は、寄生虫抗原である。寄生虫抗原は、寄生虫、例えば、限定されないが、Cryptococcus neoformans、Histoplasma capsulatum、Candida albicans、Candida tropicalis、Nocardia asteroides、Rickettsia
ricketsii、Rickettsia typhi、Mycoplasma pneumoniae、Chlamydial psittaci、Chlamydial
trachomatis、Plasmodium falciparum、Trypanosoma brucei、Entamoeba histolytica、Toxoplasma gondii、Trichomonas vaginalis、及びSchistosoma mansoniに由来する抗原から得ることができる。これらは、胞子虫抗原、プラスモディアン(Plasmodian)抗原、例えば、マラリア原虫スポロゾイト表面タンパク質、スポロゾイト表面タンパク質、肝臓ステージ抗原、頂端膜会合タンパク質、またはメロゾイト表面タンパク質の全部または一部を含む。
【0141】
一部の実施形態では、抗原は、アレルゲン及び環境抗原、例えば、限定されないが、天然アレルゲンに由来する抗原、例えば、花粉アレルゲン(樹木花粉アレルゲン、ハーブ花粉アレルゲン、雑草花粉アレルゲン、及び草花粉アレルゲン)、昆虫アレルゲン(吸入アレルゲン、唾液アレルゲン、及び毒アレルゲン)、動物の毛アレルゲン及びふけアレルゲン、ならびに食物アレルゲン、である。樹木、草、ハーブ由来の重要な花粉アレルゲンは、分類学的上のブナ目、モクセイ目、マツ目、及びスズカケノキ目(とりわけ、カバノキ(Betula)、ハンノキ(Alnus)、ハシバミ(Corylus)、クマシデ(Carpinus)及びオリーブ(Olea)、スギ(Cryptomeria及びJuniperus)、スズカケ(Platanus)を含む)、イネ目(すなわち、Lolium属、Phleum属、Poa属、Cynodon属、Dactylis属、Holcus属、Phalaris属、Secale属、及びSorghum属の草を含む)、キク目及びイラクサ目(とりわけ、Ambrosia属、Artemisia属、及びParietaria属のハーブを含む)から生じる。使用され得る他のアレルゲン抗原は、Dermatophagoides属及びEuroglyphus属のチリダニ、コナダニ(例えば、Lepidoglyphys、Glycyphagus、及びTyrophagus)、ゴキブリ、アブ、及びノミ由来のもの(例えば、Blatella、Periplaneta、Chironomus、及びCtenocepphalides)、ネコ、イヌ、及びウマ、トリなどの哺乳類由来のもの、ミツバチ(Apidae上科)、スズメバチ(Vespidae上科)、及びアリ(Formicidae上科)、スズメバチ(Vespidae上科)を含む分類学上Hymenoptera目に由来するものなどの刺咬昆虫から生じるようなものを含む毒アレルゲン由来のアレルゲンを含む。使用され得るさらに他のアレルゲン抗原は、Alternaria属及びCladosporium属などの真菌由来の吸入アレルゲンを含む。
【0142】
一部の実施形態では、抗原は、腫瘍抗原である。抗原は、α-アクチニン-4、Bcr-Abl融合タンパク質、Casp-8、β-カテニン、cdc27、cdk4、cdkn2a、coa-1、dek-can融合タンパク質、EF2、ETV6-AML1融合タンパク質、LDLR-フコシルトランスフェラーゼAS融合タンパク質、HLA-A2、HLA-A11、hsp70-2、KIAAO205、Mart2、Mum-1、Mum-2、及びMum-3、neo-PAP、ミオシンクラスI、OS-9、pml-RARα融合タンパク質、PTPRK、K-ras、N-ras、トリオースリン酸イソメラーゼ、Bage-1、Gage3、Gage4、Gage5、Gage6、Gage7、GnTV、Herv-K-mel、Lage-1、Mage-A1、Mage-A2、Mage-A3、Mage-A4、Mage-A6、Mage-A10、Mage-A12、Mage-C2、NA-88、NY-Eso-1/Lage-2、SP17、SSX-2、及びTRP2-Int2、MelanA(MART-I)、gp100(Pmel17)、チロシナーゼ、TRP-1、TRP-2、MAGE-1、MAGE-3、BAGE、GAGE-1、GAGE-2、p15(58)、CEA、RAGE、NY-ESO(LAGS)、SCP-1、Hom/Mel-40、PRAME、p53、H-Ras、HER-2/neu、BCR-ABL、E2A-PRL、H4-RET、IGH-IGK、MYL-RAR、エプスタインバーウイルス抗原、EBNA、ヒトパピローマウイルス(HPV)抗原E6及びE7、TSP-180、MAGE-4、MAGE-5、MAGE-6、p185erbB2、p180erbB-3、c-met、nm-23H1、PSA、TAG-72-4、CA19-9、CA72-4、CAM17.1、NuMa、K-ras、β-カテニン、CDK4、Mum-1、p16、TAGE、PSMA、PSCA、CT7、テロメラーゼ、43-9F、5T4、791Tgp72、α-フェトプロテイン、13HCG、BCA225、BTAA、CA125、CA15-3(CA27.29\BCAA)、CA195、CA242、CA-50、CAM43、CD68\KP1、CO-029、FGF-5、G250、Ga733(EpCAM)、HTgp-175、M344、MA-50、MG7-Ag、MOV18、NB\70K、NY-CO-1、RCAS1、SDCCAG16、TA-90(Mac-2結合タンパク質\シクロフィリンC関連タンパク質)、TAAL6、TAG72、TLP、ならびにTPSなどであるがこれらに限定されない、腫瘍関連抗原または腫瘍特異抗原を含む腫瘍抗原とすることができる。
【0143】
治癒及び腫瘍特異的免疫療法の開発に関する重大な障壁の1つは、自己免疫を回避するための非常に特異的で制限された腫瘍抗原の同定及び選択である。悪性細胞内での遺伝的変化(例えば、逆位、転座、欠失、ミスセンス変異、スプライス部位変異など)の結果として生じる腫瘍ネオアンチゲンは、最も腫瘍特異的な抗原クラスである。
【0144】
一部の実施形態では、抗原は、ネオアンチゲンである。用語ネオアンチゲンは本明細書では、任意の新たに発現された抗原決定基を定義するために使用される。ネオアンチゲンは、(特に、形質転換細胞もしくは感染細胞の表面上に)新たに発現された決定基として、1つ以上の分子の複合体形成の結果として、または結果として新しい抗原決定基の提示を伴う分子の切断の結果として、タンパク質の構造変化時に生じることがある。したがって、本明細書中で使用される場合、用語ネオアンチゲンは、感染(例えば、ウイルス感染、原虫感染、または細菌感染)時、プリオン媒介性疾患、細胞形質転換(癌)で発現される抗原を包含し、後者の場合に、ネオアンチゲンは腫瘍関連抗原と称されることがある。
【0145】
本発明は、ネオアンチゲンを同定する特定の手法に限定されない。一部の実施形態では、ネオアンチゲンの同定は、各患者由来の適合した生殖細胞サンプルに対する腫瘍の全ゲノムシークエンシング、全エクソーム(例えば、捕捉されたエキソンのみ)シークエンシング、または腫瘍のRNAシークエンシングを使用して、DNAレベルでの新生物/腫瘍内の全て、またはほぼ全ての変異を同定することを含む。一部の実施形態では、ネオアンチゲンの同定は、新生物/腫瘍内で発現され、患者HLA対立遺伝子に結合し得る複数の候補ネオアンチゲンT細胞エピトープを生成するための1つ以上のペプチド-MHC結合予測アルゴリズムで、同定された変異を分析することを含む。一部の実施形態では、ネオアンチゲンの同定は、癌ワクチンに使用される全てのネオオープンリーディングフレームペプチド及び予測結合ペプチドのセットから選択される複数の候補ネオアンチゲンペプチドを合成することを含む。
【0146】
このように、本発明は少なくとも部分的に、全てまたはほぼ全ての新生物/腫瘍内の変異(例えば、転座、逆位、大小の欠失、及び挿入、ミスセンス変異、スプライス部位変異など)を同定する能力に基づく。特に、これらの変異は、対象の新生物/腫瘍細胞のゲノムに存在するが、対象由来の正常組織には存在しない。このような変異は、患者の新生物/腫瘍(例えば、ネオアンチゲン)に固有の変更されたアミノ酸配列を有するタンパク質を生じる変化をもたらす場合、特定の目的のものである。例えば、有用な変異は、(1)タンパク質中の異なるアミノ酸をもたらす非同義変異;(2)終止コドンが改変または欠失されて、C末端に新規腫瘍特異的配列を有する、より長いタンパク質の翻訳をもたらすリードスルー変異;(3)成熟mRNA中にイントロンを含み、それにより、ユニークな腫瘍特異的タンパク質配列をもたらすスプライス部位変異;(4)2つのタンパク質の接合部に腫瘍特異的配列を有するキメラタンパク質を生じる染色体再編成(すなわち、遺伝子融合);(5)新規の腫瘍特異的タンパク質配列を有する新しいオープンリーディングフレームをもたらすフレームシフト変異または欠失;などを含むことがある。例えば、腫瘍細胞におけるスプライス部位、フレームシフト、リードスルー、または遺伝子融合変異から生じる変異または変異ポリペプチドを有するペプチドは、正常細胞に対する腫瘍のDNA、RNA、またはタンパク質をシークエンスすることにより同定されてもよい。
【0147】
共通の腫瘍ドライバー遺伝子に由来する個別化ネオアンチゲンペプチドは、本発明の範囲内でもあり、さらに、以前に同定された腫瘍特異的変異を含んでもよい。
【0148】
好ましくは、任意の好適な合成時解読(sequencing-by-synthesis)プラットフォームは、変異を同定するために使用することができる。4つの主要な合成時解読プラットフォームが現在、利用可能である:Roche/454 Life Sciences製Genome Sequencers、Applied BioSystems製SOLiDシステム、及びHelicos Biosciences製Heliscopeシステム。合成時解読プラットフォームは、Pacific Biosciences及びVisiGen Biotechnologiesによっても記載されている。これらのプラットフォームのそれぞれは、本発明の方法で使用することができる。一部の実施形態では、シークエンスされる複数の核酸分子は、支持体(例えば、固体支持体)に結合される。核酸を支持体上に固定化するために、捕捉配列/ユニバーサルプライミング部位を鋳型の3’及び/または5’末端に付加することができる。核酸は、捕捉配列を、支持体に共有結合した相補的配列にハイブリダイゼーションさせることにより、支持体に結合させてもよい。捕捉配列(ユニバーサル捕捉配列とも呼ばれる)は、ユニバーサルプライマーとして二重に役立ち得る支持体に結合した配列に相補的な核酸配列である。
【0149】
捕捉配列の代わりに、カップリング対のメンバー(例えば、米国特許出願第2006/0252077号に記載されているような、例えば、抗体/抗原、受容体/リガンド、またはアビジン-ビオチン対など)は、その結合対のそれぞれの第2のメンバーで被覆された表面上に捕捉されるべき各フラグメントに連結されてもよい。捕捉に続いて、配列は、例えば、実施例及び米国特許第7,283,337号に記載されているような、鋳型依存性合成によるシークエンシングを含む、例えば、単一分子検出/シークエンシングにより分析されてもよい。合成時解読法では、表面結合分子は、ポリメラーゼの存在下で複数の標識ヌクレオチド三リン酸に曝露される。鋳型の配列は、成長する鎖の3’末端に組み込まれた標識ヌクレオチドの順序により決定される。これは、リアルタイムまたはステップアンドリピートモードで行うことができる。リアルタイム分析のために、各ヌクレオチドに対する異なる光学的標識が取り込まれ、取り込まれたヌクレオチドの刺激のために複数のレーザーが利用されてもよい。
【0150】
任意の細胞型または組織は、本明細書に記載されるシークエンシング方法に使用される核酸サンプルを得るために利用されてもよい。一部の実施形態では、DNAまたはRNAサンプルは、既知の技術(例えば、静脈穿刺)または唾液により得られた新生物/腫瘍または体液、例えば、血液から得られる。あるいは、核酸試験は、乾燥サンプル(例えば、毛髪または皮膚)上で実施することができる。
【0151】
様々な方法が、個体のDNAまたはRNAにおける特定の変異または対立遺伝子の存在を検出するために利用可能である。この分野の進歩により、正確で容易で安価な大規模SNPジェノタイピングが提供されている。ごく最近では、例えば、動的対立遺伝子特異的ハイブリダイゼーション(DASH)、マイクロプレートアレイ対角ゲル電気泳動(MADGE)、パイロシークエンシング、オリゴヌクレオチド特異的ライゲーション、TaqManシステム及びAffymetrix SNPチップなどの種々のDNA「チップ」技術を含むいくつかの新しい技術が説明されている。これらの方法は、通常はPCRによる、標的遺伝子領域の増幅を必要とする。侵襲的切断、続いて、質量分析または固定化パドロックプローブによる小シグナル分子の生成及びローリングサークル型増幅に基づく、さらに他の新たに開発された方法は最終的に、PCRを必要としないことがある。特定の一塩基多型を検出するための当該技術分野で既知の方法のうちのいくつかは、以下にまとめられる。本発明の方法は、利用可能な方法全てを含むと理解される。
【0152】
PCRに基づく検出手段は、複数のマーカーの多重増幅を同時に含んでもよい。例えば、それは、サイズが重複せず、かつ同時に分析することができるPCR産物を生成するためにPCRプライマーを選択することは、当該技術分野において周知である。
【0153】
あるいは、異なって標識され、したがって、それぞれ差異検出することができるプライマーを用いて異なるマーカーを増幅することが可能である。当然、ハイブリダイゼーションベースの検出手段は、サンプル中の複数のPCR産物の差異検出を可能にする。複数のマーカーの多重分析を可能にする他の技術は、当該技術分野で知られている。
【0154】
ゲノムDNAまたは細胞RNAにおける一塩基多型の分析を容易にするためのいくつかの方法が開発されている。一実施形態では、一塩基多型は、例えば、米国特許第4,656,127号に開示されているような特殊化されたエキソヌクレアーゼ耐性ヌクレオチドを使用することにより検出することができる。方法によれば、多型部位のすぐ3’側の対立遺伝子配列に相補的なプライマーは、特定の動物またはヒトから得た標的分子にハイブリダイゼーションすることが可能になる。標的分子上の多型部位が、存在する特定のエキソヌクレアーゼ耐性ヌクレオチド誘導体に相補的なヌクレオチドを含有する場合、その誘導体は、ハイブリダイゼーションされたプライマーの末端に取り込まれることになる。このような組み込みは、プライマーにエキソヌクレアーゼに対する耐性を与え、それによりその検出を可能にする。サンプルのエキソヌクレアーゼ耐性誘導体の同一性が分かっているので、プライマーがエキソヌクレアーゼに対して耐性になるという知見は、標的分子の多型部位に存在するヌクレオチドが、反応に使用されるヌクレオチド誘導体のヌクレオチドに相補的であることを示す。この方法は、大量の無関係な配列データの判定を必要としないという利点を有する。
【0155】
本発明の別の実施形態では、溶液ベースの方法は、多型部位のヌクレオチドの同一性を判定するために使用される(例えば、フランス特許第2,650,840号;PCT出願番号WO1991/02087を参照のこと)。米国特許第4,656,127号の方法のように、多型部位のすぐ3’側の対立遺伝子配列に相補的なプライマーが用いられてもよい。本方法は、多型部位のヌクレオチドに相補的であれば、プライマーの末端に取り込まれることになる標識されたジデオキシヌクレオチド誘導体を使用してその部位のヌクレオチドの同一性を判定する。
【0156】
遺伝ビット分析(Genetic Bit Analysis)またはGBA(登録商標)として知られている代替方法は、国際公開特許第WO1992/15712号に記載されている)。GBA(登録商標)は、標識ターミネーター及び多型部位の3’側の配列に相補的なプライマーの混合物を使用する。したがって、組み込まれている標識ターミネーターは、評価される標的分子の多型部位に存在するヌクレオチドにより決定され、これに相補的である。Cohenらの方法(フランス特許第2,650,840号;国際特許出願番第W01991/02087号)と対照的に、GBA(登録商標)法は、好ましくは、プライマーまたは標的分子が固相に固定されている異種相アッセイである。最近、DNAの多型部位をアッセイするためのいくつかのプライマー誘導ヌクレオチド組み込み手順が記載されている(例えば、Komher,J.S.et al.,Nucl.Acids.Res.17:7779-7784(1989);Sokolov,B.P.,Nucl.AcidsRes.18:3671(1990);Syvanen,A.-C,et al.,Genomics 8:684-692(1990);Kuppuswamy,M.N.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(U.S.A.)88:1143-1147(1991);Prezant,T.R.et al.,Hum.Mutat.1:159-164(1992);Ugozzoli,L.et al.,GATA 9:107-112(1992);Nyren,P.et al.,Anal.Biochem.208:171-175(1993)を参照のこと)。これらの方法は、多型部位の塩基の間を識別するための標識されたデオキシヌクレオチドの組み込みに全て依存しているという点で、GBA(登録商標)とは異なる。このような形式では、シグナルが、取り込まれたデオキシヌクレオチドの数に比例するので、同じヌクレオチドのランで生じる多型は、ランの長さに比例するシグナルをもたらすことができる(例えば、Syvanen,A.-C,et al.,Amer.J.Hum.Genet.52:46-59(1993)を参照のこと)。
【0157】
腫瘍特異的ネオアンチゲンを同定するための代替方法は、直接的なタンパク質のシークエンシングである。タンデム質量分析(MS/MS)を含む多次元MS技術(MSn)を使用した酵素消化物のタンパク質のシークエンシングは、本発明のネオアンチゲンを同定するために使用することもできる。このようなプロテオームアプローチは、迅速で高度に自動化された分析を可能にする(例えば、K.Gevaert and J.Vandekerckhove,Electrophoresis 21:1145-1154(2000)を参照のこと)。未知のタンパク質のデノボシークエンシングのためのハイスループット法が、患者の腫瘍のプロテオームを分析して、発現されたネオアンチゲンを同定するために使用され得ることは、本発明の範囲内にあるとさらに考えられる。例えば、メタショットガンタンパク質シークエンシングは、発現されたネオアンチゲンを同定するために使用されてもよい(例えば、Guthals et al.(2012)Shotgun Protein Sequencing with Meta-contig Assembly,Molecular and Cellular Proteomics 11(10):1084-96を参照のこと)。
【0158】
腫瘍特異的ネオアンチゲンは、ネオアンチゲン特異的T細胞応答を同定するためにMHC多量体を使用して同定されることもある。例えば、患者サンプルのネオアンチゲン特異的T細胞応答のハイスループット解析は、MHCテトラマーベースのスクリーニング技術を使用して実施されてもよい(例えば、Hombrink et al.(2011)High-Throughput Identification of Potential Minor Histocompatibility Antigens by MHC Tetramer-Based Screening: Feasibility and Limitations 6(8):1-11;Hadrup et al.(2009)Parallel detection of antigen-specific T-cell responses by multidimensional encoding of MHC multimers,Nature Methods,6(7):520-26;van Rooij et al.(2013)Tumor exome analysis reveals neoantigen-specific T-cell reactivity in an Ipilimumab-responsive melanoma,Journal of Clinical Oncology,31:1-4;及びHeemskerk et al.(2013)The cancer antigenome,EMBO Journal,32(2):194-203を参照のこと)。このようなテトラマーベースのスクリーニング技術が、腫瘍特異的ネオアンチゲンの初期同定のために、あるいは患者が既に曝露されている可能性があるネオアンチゲンを評価して、それにより、本発明のワクチンのための候補ネオアンチゲンの選択を容易にする二次スクリーニングプロトコールとして、使用され得ることは、本発明の範囲内にあると考えられる。
【0159】
本発明は、単離されたペプチド(例えば、記載された方法で同定された腫瘍特異的変異を含有するネオアンチゲン性ペプチド、既知の腫瘍特異的変異を含むペプチド、及び記載された方法で同定された変異体ポリペプチドまたはそのフラグメント)をさらに含む。これらのペプチド及びポリペプチドは本明細書では、「ネオアンチゲン性ペプチド」または「ネオアンチゲン性ポリペプチド」と称される。ポリペプチドまたはペプチドは、様々な長さのものとすることができ、患者のHLA分子(「エピトープ」)に結合すると予測される小領域、ならびにN末端及びC末端の両方で伸長するさらなる隣接アミノ酸を最小限含むことになる。ポリペプチドまたはペプチドは、中性(非荷電)形態または塩である形態のいずれかであり、グリコシル化、側鎖酸化、もしくはリン酸化などの修飾を含まないか、またはこれらの修飾を含有するかのいずれかであることができ、修飾が本明細書に記載されるようなポリペプチドの生物学的活性を破壊しないという条件に従う。
【0160】
特定の実施形態では、少なくとも1つのネオアンチゲン性ペプチド分子のサイズは、約8、約9、約10、約11、約12、約13、約14、約15、約16、約17、約18、約19、約20、約21、約22、約23、約24、約25、約26、約27、約28、約29、約30、約31、約32、約33、約34、約35、約36、約37、約38、約39、約40、約41、約42、約43、約44、約45、約46、約47、約48、約49、約50、約60、約70、約80、約90、約100、約110、約120またはそれ以上のアミノ分子残基、及びその中に誘導可能な任意の範囲を含んでもよいが、これらに限定されない。具体的な実施形態では、ネオアンチゲン性ペプチド分子は、50以下のアミノ酸である。好ましい実施形態では、ネオアンチゲン性ペプチド分子は、約20~約30アミノ酸に等しい。
【0161】
このように、本発明は、1つ以上のネオアンチゲン性ペプチドと複合化されたナノ粒子(例えば、sHDLナノ粒子)を提供する。一部の実施形態では、ナノ粒子(例えば、sHDLナノ粒子)は、1つのネオアンチゲン性ペプチドと複合化される。一部の実施形態では、ナノ粒子(例えば、sHDLナノ粒子)は、2つのネオアンチゲン性ペプチドと複合化される。一部の実施形態では、ナノ粒子(例えば、sHDLナノ粒子)は、少なくとも5つ以上のネオアンチゲン性ペプチドと複合化される。一部の実施形態では、ナノ粒子(例えば、sHDLナノ粒子)は、少なくとも約6、約8、約10、約12、約14、約16、約18、または約20の異なるペプチドと複合化される。一部の実施形態では、ナノ粒子(例えば、sHDLナノ粒子)は、少なくとも20以上の異なるペプチドと複合化される。
【0162】
ネオアンチゲン性ペプチド、ポリペプチド、及びアナログは、通常はタンパク質の一部ではない追加の化学的部分を含有するようにさらに修飾することができる。それらの誘導体化された部分は、溶解度、生物学的半減期、タンパク質の吸収、または結合親和性を改善することができる。この部分は、タンパク質などの所望の任意の副作用を低減または排除することもできる。これらの部分の概要は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,20th ed.,Mack Publishing Co.,Easton,PA(2000)に見出すことができる。例えば、所望の活性を有するネオアンチゲン性ペプチド及びポリペプチドは、未修飾ペプチドが所望のMHC分子に結合して、適切なT細胞を活性化させる生物学的活性の実質的に全てを増加させ、または少なくとも保持しながら、特定の所望の属性、例えば、改善された薬理学的特性を提供するために、必要に応じて修飾されてもよい。例えば、ネオアンチゲン性ペプチド及びポリペプチドは、保存的または非保存的のいずれかの置換などの種々の変化を受けてもよく、このような変化は、改善されたMHC結合などの使用における特定の利点を提供してもよい。このような保存的置換は、あるアミノ酸残基を生物学的かつ/または化学的に類似する別のアミノ酸残基と、例えば、ある疎水性残基を別の疎水性残基またはある極性残基を別の極性残基と交換することを包含してもよい。単一アミノ酸置換の効果は、D-アミノ酸を使用して調査されることもある。このような修飾は、例えば、Merrifield,Science 232:341-347(1986),Barany & Merrifield,The Peptides,Gross & Meienhofer,eds.(N.Y.,Academic Press),pp.1-284(1979);及びStewart & Young,Solid Phase Peptide Synthesis,(Rockford,III.,Pierce),2d Ed.(1984)に記載されるように、周知のペプチド合成手順を使用して行われてもよい。
【0163】
一部の実施形態では、ネオアンチゲン性ペプチド及びポリペプチドは、ナノ粒子(例えば、sHDLナノ粒子)との複合化を促進する目的とした連結薬により修飾されてもよい。本発明は、特定のタイプまたは種類の連結薬に限定されない。一部の実施形態では、連結薬は、システイン-セリン-セリン(CSS)分子である。
【0164】
ナノ粒子がsHDLであり、かつネオアンチゲン性ペプチドまたはポリペプチドがCSSにより修飾されている一部の実施形態では、sHDLは、ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート](DOPE-PDP)によりさらに修飾され、混合する時、DOPE-PDP及びCSSが関与し、それにより、CSS-AgのsHDLとの複合化(連結)がもたらされる。
【0165】
ネオアンチゲン性ペプチド及びポリペプチドは、化合物のアミノ酸配列を伸長または減少させることにより、例えば、アミノ酸の付加または欠失により、修飾されることもある。ネオアンチゲン性ペプチド、ポリペプチド、またはアナログは、特定の残基の順序または組成を変更することにより修飾することもできる。生物学的活性に必須の特定のアミノ酸残基、例えば、重要な接触部位の残基または保存された残基は一般に、生物学的活性に対する有害な影響なしに、変更されることはないことが、当業者に理解されるであろう。重要でないアミノ酸は、L-a-アミノ酸またはそのD-異性体などのタンパク質中に天然に存在するアミノ酸に限定される必要はないが、同様に、β-γ-δ-アミノ酸などの非天然アミノ酸、ならびにL-a-アミノ酸の多くの誘導体を含んでもよい。
【0166】
通常は、ネオアンチゲンポリペプチドまたはペプチドは、MHC結合の静電荷、疎水性などの効果を判定するために、単一のアミノ酸置換を有する一連のペプチドを使用することにより最適化されてもよい。例えば、一連の正電荷を有するアミノ酸(例えば、LysまたはArg)または負電荷を有するアミノ酸(例えば、Glu)の置換は、ペプチドの長さに沿って行われてもよく、種々のMHC分子及びT細胞受容体に対する異なるパターンの感度を明らかにする。加えて、Ala、Gly、Proなどの小さい、比較的中性の部分を使用する複数の置換または類似の残基が用いられてもよい。置換は、ホモオリゴマーまたはヘテロオリゴマーであってよい。置換または付加される残基の数及び種類は、不可欠な接触点と求められる特定の機能的属性(例えば、疎水性対親水性)との間に必要な間隔に依存する。MHC分子またはT細胞受容体に対する結合親和性の増加は、親ペプチドの親和性と比較して、このような置換により達成されることもある。いずれにせよ、このような置換は、例えば、結合を破壊し得る立体障害及び電荷干渉を防止するように選択されたアミノ酸残基または他の分子フラグメントを用いるべきである。アミノ酸置換は通常、単一残基のものである。置換、欠失、挿入、またはそれらの任意の組み合わせは、最終ペプチドに到達するために組み合わされてもよい。
【0167】
当業者は、このような腫瘍特異的ネオアンチゲンを産生するための様々な方法があることを理解するであろう。一般に、このような腫瘍特異的ネオアンチゲンは、インビトロまたはインビボのいずれかで産生されてもよい。腫瘍特異的ネオアンチゲンは、ペプチドまたはポリペプチドとしてインビトロで産生されてもよく、次に、これらは、個別化新生物ワクチンに製剤化され、対象に投与されてもよい。このようなインビトロ産生は、例えば、ペプチド合成または様々な細菌、真核生物、もしくはウイルス組換え発現系のうちのいずれかのDNAもしくはRNA分子由来のペプチド/ポリペプチドの発現、続く、発現されたペプチド/ポリペプチドの精製などの、当業者に知られている様々な方法により生じることがある。
【0168】
あるいは、腫瘍特異的ネオアンチゲンは、腫瘍特異的ネオアンチゲンをコードする分子(例えば、DNA、RNA、ウイルス発現系など)を対象に導入することにより、インビボで産生されてもよく、その際、コードされた腫瘍特異的ネオアンチゲンが発現される。
【0169】
タンパク質またはペプチドは、標準的な分子生物学的技術による、タンパク質、ポリペプチド、もしくはペプチドの発現、タンパク質もしくはペプチドの天然源からの単離、またはタンパク質もしくはペプチドの化学合成を含む、当業者らに既知の任意の技術で作製されてもよい。種々の遺伝子に対応するヌクレオチド及びタンパク質、ポリペプチド及びペプチド配列は、以前に開示されており、当業者らに既知のコンピュータデータベースに見出されてもよい。このような1つのデータベースは、National Institutes of HealthのウェブサイトにあるNational Center for Biotechnology InformationのGenbank及びGenPeptデータベースである。既知遺伝子のコード領域は、本明細書に開示される、または当業者らに知られている技術を使用して、増幅及び/または発現されてもよい。あるいは、タンパク質、ポリペプチド、及びペプチドの種々の市販の調製物が、当業者らに知られている。
【0170】
ペプチドは、細菌または動物物質を汚染しない試薬を利用して化学的に容易に合成することができる(Merrifield RB:Solid phase peptide
synthesis.I.The synthesis of a tetrapeptide.J.Am.Chem.Soc.85:2149-54,1963)。
【0171】
本発明のさらなる態様は、本発明のネオアンチゲン性ペプチドをコードする核酸(例えば、ポリヌクレオチド)を提供し、これは、インビトロでネオアンチゲン性ペプチドを産生するために使用されてもよい。ポリヌクレオチドは、例えば、一本鎖及び/もしくは二本鎖のいずれかのDNA、cDNA、PNA、CNA、RNA、または天然形態もしくは安定化形態のポリヌクレオチド、例えば、ホスホロチオエート骨格を有するポリヌクレオチドなど、あるいはそれらの組み合わせであってよく、それは、ペプチドをコードする限り、イントロンを含有してもしなくてもよい。本発明のさらなる態様は、本発明によるポリペプチドを発現することができる発現ベクターを提供する。異なる細胞型の発現ベクターは、当該技術分野において周知であり、過度な実験を行うことなく選択することができる。一般に、DNAは、発現のための適切な向き及び正しいリーディングフレームで、プラスミドなどの発現ベクターに挿入される。必要に応じて、DNAは、所望の宿主(例えば、細菌)により認識される適切な転写及び翻訳制御対照ヌクレオチド配列に連結されてもよいが、このような対照は一般に発現ベクターで利用可能である。次に、標準的な技術を使用してクローニングするためのベクターが宿主細菌に導入される(例えば、Sambrook et al.(1989)Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.を参照のこと)。
【0172】
本発明は、本明細書に記載の同定された腫瘍特異的ネオアンチゲンと実質的に相同である多様体及び等価物をさらに包含する。これらは、例えば、保存的置換変異、すなわち、1つ以上のアミノ酸の類似アミノ酸による置換を含有することができる。例えば、保存的置換は、アミノ酸を同じ一般的なクラス内の別のアミノ酸と置換すること、例えば、1つの酸性アミノ酸を別の酸性アミノ酸と置換すること、1つの塩基性アミノ酸を別の塩基性アミノ酸と置換すること、または1つの中性アミノ酸を別の中性アミノ酸と置換することなどを指す。保存的アミノ酸置換により意図されるものは、当該技術分野において周知である。
【0173】
本発明は、単離ポリヌクレオチドを含む発現ベクター、及び発現ベクターを含有する宿主細胞も含む。ネオアンチゲン性ペプチドが、所望のネオアンチゲン性ペプチドをコードするRNAまたはcDNA分子の形態で提供され得ることも、本発明の範囲内であると考えられる。本発明は、本発明の1つ以上のネオアンチゲン性ペプチドが単一発現ベクターによりコードされ得ることも提示する。本発明は、本発明の1つ以上のネオアンチゲン性ペプチドが、ウイルスベースの系(例えば、アデノウイルス系)を使用してインビボでコードされて発現され得ることも提示する。
【0174】
用語「ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド」は、ポリペプチドのコード配列のみを含むポリヌクレオチド、ならびにさらなるコード配列及び/または非コード配列を含むポリヌクレオチド、を包含する。本発明のポリヌクレオチドは、RNAの形態またはDNAの形態をとることができる。DNAは、cDNA、ゲノムDNA、及び合成DNAを含み、二本鎖または一本鎖とすることができ、一本鎖である場合、コード鎖または非コード(アンチセンス)鎖とすることができる。
【0175】
実施形態では、ポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドと同じリーディングフレームで融合された腫瘍特異的ネオアンチゲン性ペプチドに対するコード配列を含んでもよく、これは、例えば、宿主細胞からのポリペプチドの発現及び/または分泌を助ける(例えば、ポリペプチドの細胞からの輸送を制御するための分泌配列として機能するリーダー配列)。リーダー配列を有するポリペプチドは、プレタンパク質であり、宿主細胞により切断されてポリペプチドの成熟形態を形成するリーダー配列を有することができる。
【0176】
一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、マーカー配列と同じリーディングフレームで融合された腫瘍特異的ネオアンチゲン性ペプチドに対するコード配列を含むことができ、これは、例えば、コードされたポリペプチドの精製を可能にし、次に、これは、個別化新生物ワクチンに取り込まれることがある。例えば、マーカー配列は、細菌宿主の場合にマーカーに融合された成熟ポリペプチドの精製を提供するために、pQE-9ベクターにより供給されたヘキサ-ヒスチジンタグとすることができ、またはマーカー配列は、哺乳動物宿主(例えば、COS-7細胞)が使用される場合、インフルエンザ赤血球凝集素タンパク質に由来の赤血球凝集素(HA)タグとすることができる。さらなるタグは、カルモジュリンタグ、FLAGタグ、Mycタグ、Sタグ、SBPタグ、Softag1、Softag3、V5タグ、Xpressタグ、Isopeptag、SpyTag、ビオチンカルボキシルキャリアタンパク質(BCCP)タグ、GSTタグ、蛍光タンパク質タグ(例えば、緑色蛍光タンパク質タグ)、マルトース結合タンパク質タグ、Nusタグ、Strepタグ、チオレドキシンタグ、TCタグ、Tyタグなどを含むが、これらに限定されない。一部の実施形態では、ポリヌクレオチドは、複数のネオアンチゲン性ペプチドを産生することができる単一のコンカテマー化ネオアンチゲン性ペプチド構築物を作製するために、同じリーディングフレームに融合された腫瘍特異的ネオアンチゲン性ペプチドのうちの1つ以上に対するコード配列を含んでもよい。
【0177】
一部の実施形態では、本発明は、本発明の腫瘍特異的ネオアンチゲン性ペプチドをコードするポリヌクレオチドと、少なくとも60%の同一である、少なくとも65%の同一である、少なくとも70%の同一である、少なくとも75%の同一である、少なくとも80%の同一である、少なくとも85%の同一である、少なくとも90%同一、少なくとも95%同一、または少なくとも96%、97%、98%、もしくは99%同一であるヌクレオチド配列を有する単離核酸分子を提供する。
【0178】
参照ヌクレオチド配列と少なくとも、例えば、95%「同一である」のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドとは、ポリヌクレオチド配列が、参照ヌクレオチド配列のそれぞれ100ヌクレオチド毎に、最大5つの点変異を含むことができることを除いて、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が、参照配列と同一であることが意図される。換言すれば、参照ヌクレオチド配列と少なくとも95%同一であるヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを得るために、参照配列中のヌクレオチドのうち最大5%は、欠失させ、もしくは別のヌクレオチドで置換させることができ、または参照配列中の全ヌクレオチドの最大5%のヌクレオチドは、参照配列に挿入することができる。参照配列のこれらの変異は、参照ヌクレオチド配列のアミノ末端もしくはカルボキシ末端の位置で、またはそれらの末端位置の間のいずれかで、生じることができ、参照配列中のヌクレオチドの間に別々に、または参照配列内の1つ以上の隣接するグループのいずれかに散在する。
【0179】
実際問題として、任意の特定の核酸分子が、参照配列と、少なくとも80%同一、少なくとも85%同一、少なくとも90%同一、一部の実施形態では、少なくとも95%、96%、97%、98%、または99%同一であるかどうかは、既知のコンピュータプログラム、例えば、Bestfitプログラム(Wisconsin Sequence Analysis Package, Version 8 for Unix,Genetics Computer Group,University Research Park,575 Science Drive,Madison,WI 53711)を使用して、従来通りに判定することができる。Bestfitは、2つの配列間の相同性の最良のセグメントを見出すために、Smith and Waterman,Advances in Applied Mathematics 2:482-489(1981)の局所的ホモロジーアルゴリズムを使用する。特定の配列が、本発明による参照配列と、例えば、95%同一であるかどうかを判定するために、Bestfitまたは他の任意の配列アライメントプログラムを使用する場合、パラメータは、同一性のパーセンテージが、完全長の参照ヌクレオチド配列全体で計算され、及び参照配列中のヌクレオチドの総数の最大5%の相同性のギャップが許容されるように、設定される。
【0180】
本明細書に記載の単離腫瘍特異的ネオアンチゲン性ペプチドは、当該技術分野で既知の任意の好適な方法によりインビトロで(例えば、実験室で)産生することができる。このような方法は、直接タンパク質合成法から、単離ポリペプチド配列をコードするDNA配列を構築し、好適な形質転換宿主中でそれらの配列を発現することにまで及ぶ。一部の実施形態では、目的の野生型タンパク質をコードするDNA配列を単離または合成することにより、組換え技術を使用してDNA配列を構築する。任意に、配列は、その機能的アナログを提供するために、部位特異的変異誘発により、変異誘発させることができる。例えば、Zoeller et al.,Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA
81:5662-5066(1984)及び米国特許第4,588,585号を参照のこと。
【0181】
実施形態では、目的のポリペプチドをコードするDNA配列は、オリゴヌクレオチド合成機を使用した化学合成により構築される。このようなオリゴヌクレオチドは、所望のポリペプチドのアミノ酸配列に基づいて設計し、目的の組換えポリペプチドが産生されるべき宿主細胞中で好まれるコドンを選択することができる。標準的な方法は、目的の単離ポリペプチドをコードする単離ポリヌクレオチド配列を合成するために、適用することができる。例えば、完全なアミノ酸配列は、逆翻訳遺伝子を構築するために、使用することができる。さらに、特定の単離ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含有するDNAオリゴマーは、合成することができる。例えば、所望のポリペプチドの部分をコードするいくつかの小さなオリゴヌクレオチドを合成し、次に、ライゲーションすることができる。個々のオリゴヌクレオチドは通常、相補的なアセンブリのために5’または3’オーバーハングを含有する。
【0182】
(例えば、合成、部位特異的変異誘発、または別の方法により)組み立てられると、目的の特定の単離ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列は、発現ベクターに挿入され、任意に、所望の宿主中でのタンパク質の発現に適した発現制御配列に作動可能に連結されることになる。適切なアセンブリは、ヌクレオチドシークエンシング、制限マッピング、及び好適な宿主中での生物学的に活性なポリペプチドの発現により確認することができる。当該技術分野で周知のように、宿主中にトランスフェクションされた遺伝子を高発現レベルで得るために、遺伝子は、選択された発現宿主において機能的な転写及び翻訳発現制御配列に作動可能に連結することができる。組換え発現ベクターは、腫瘍特異的ネオアンチゲン性ペプチドをコードするDNAを増幅及び発現させるために使用されてもよい。組換え発現ベクターは、哺乳類、微生物、ウイルス、または昆虫遺伝子に由来する好適な転写または翻訳制御要素に作動可能に連結された腫瘍特異的ネオアンチゲン性ペプチドまたは生物学的同等アナログをコードする合成またはcDNA由来のDNAフラグメントを有する複製可能なDNA構築物である。転写ユニットは一般に、以下に詳細に記載されるように、(1)遺伝子要素または遺伝子発現において制御的役割を有する要素、例えば、転写プロモーターまたはエンハンサー、(2)mRNAに転写され、タンパク質に翻訳される構造またはコード配列、ならびに(3)適切な転写及び翻訳開始及び終結配列、のアセンブリを含む。このような制御要素は、転写を制御するオペレーター配列を含むことができる。通常は複製起点により与えられる宿主中で複製する能力、及び形質転換体の認識を容易にする選択遺伝子をさらに組み込むことができる。DNA領域は、互いに機能的に関連している場合、作動可能に連結される。例えば、シグナルペプチド(分泌リーダー)のDNAは、ポリペプチドの分泌に関与する前駆体として発現される場合、ポリペプチドのDNAに作動可能に連結され;プロモーターは、配列の転写を制御する場合、コード配列に作動可能に連結され;またはリボソーム結合部位は、翻訳を可能にするために配置される場合、コード配列に作動可能に連結される。一般に、作動可能に連結されていることは、隣接していることを意味し、分泌リーダーの場合、隣接していること、かつリーディングフレーム内にあることを意味する。酵母発現系での使用を意図される構造要素は、宿主細胞による翻訳されたタンパク質の細胞外分泌を可能にするリーダー配列を含む。あるいは、組換えタンパク質がリーダー配列または輸送配列なしで発現される場合、それは、N末端メチオニン残基を含む可能性がある。この残基は任意に、最終生成物を提供するために、発現された組換えタンパク質から、その後切断することができる。
【0183】
発現制御配列及び発現ベクターの選択は、宿主の選択に依存することになる。多種多様な発現宿主/ベクターの組み合わせを用いることができる。真核宿主に有用な発現ベクターは、例えば、SV40、ウシ乳頭腫ウイルス、アデノウイルス、及びサイトメガロウイルス由来の発現制御配列を含むベクターを含む。細菌宿主に有用な発現ベクターは、pCR1、pBR322、pMB9、及びそれらの誘導体を含む、Escherichia coli由来のプラスミドなどの既知の細菌プラスミド、M13及び糸状一本鎖DNAファージなどの広宿主域のプラスミドを含む。
【0184】
ポリペプチドの発現に適した宿主細胞は、適切なプロモーターの制御下での、原核生物、酵母、昆虫、または高等真核細胞を含む。原核生物は、グラム陰性菌またはグラム陽性菌、例えば、E. coliまたはbacilli、を含む。より高等な真核細胞は、哺乳動物由来の樹立細胞株を含む。無細胞翻訳系を用いることもできる。細菌、真菌、酵母、及び哺乳類の細胞宿主と使用される適切なクローニング及び発現ベクターは、当該技術分野において周知である(Pouwels et al.,Cloning Vectors:A Laboratory Manual, Elsevier,N.Y.,1985を参照のこと)。
【0185】
種々の哺乳動物または昆虫の細胞培養系はまた、組換えタンパク質を発現させるために有利に用いられる。このようなタンパク質は一般に正しくフォールディングされ、適切に修飾され、完全に機能するので、哺乳動物細胞における組換えタンパク質の発現は実施することができる。好適な哺乳類宿主細胞株の例としては、Gluzman(Cell23:175,1981)により記載されたサル腎臓細胞のCOS-7系統、ならびに例えばL細胞、C127、3T3、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、HeLa、及びBHK細胞株を含む適切なベクターを発現することができる他の細胞株が挙げられる。哺乳動物発現ベクターは、非転写要素、例えば、複製起点、発現されるべき遺伝子に連結された好適なプロモーター及びエンハンサー、ならびに他の5’または3’フランキング非転写配列、ならびに必要なリボソーム結合部位、ポリアデニル化部位、スプライスドナー部位及びアクセプター部位などの5’または3’非翻訳配列、ならびに転写終結配列を含むことができる。昆虫細胞における異種タンパク質の産生のためのバキュロウイルス系は、Luckow and Summers,Bio/Technology 6:47(1988)により概説される。
【0186】
形質転換された宿主により産生されたタンパク質は、任意の好適な方法に従って精製することができる。このような標準的な方法は、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロマトグラフィー、及びサイジングカラムクロマトグラフィーなど)、遠心分離、示差溶解度、またはタンパク質精製のための他の任意の標準技術を含む。アフィニティタグ、例えば、ヘキサヒスチジン、マルトース結合ドメイン、インフルエンザコート配列、グルタチオン-S-トランスフェラーゼなどは、タンパク質に結合させることができ、適切なアフィニティカラムを通過させることにより容易な精製が可能になる。単離タンパク質は、タンパク質分解、核磁気共鳴及びX線結晶学のような技術を使用して、物理的に特性決定することもできる。
【0187】
例えば、組換えタンパク質を培養培地に分泌する系からの上清は、市販のタンパク質濃縮フィルター、例えば、AmiconまたはMillipore Pellicon限外濾過ユニット、を使用して最初に濃縮することができる。濃縮工程の後、濃縮物は、好適な精製マトリックスに適用することができる。あるいは、陰イオン交換樹脂、例えば、ペンダントジエチルアミノエチル(DEAE)基を有するマトリックスまたは基質を用いることができる。マトリックスは、アクリルアミド、アガロース、デキストラン、セルロース、またはタンパク質精製に一般に用いられる他のタイプとすることができる。あるいは、陽イオン交換工程を用いることができる。好適なカチオン交換体は、スルホプロピルまたはカルボキシメチル基を含む種々の不溶性マトリックスを含む。最終的に、疎水性RP-HPLC培地、例えば、ペンダントメチルまたは他の脂肪族基を有するシリカゲル、を用いる1つ以上の逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)工程は、癌幹細胞タンパク質-Fc組成物をさらに精製するために用いることができる。種々の組み合わせの上述の精製工程の一部または全ては、均質な組換えタンパク質を提供するために、用いることもできる。細菌培養で産生された組換えタンパク質は、例えば、細胞ペレットからの最初の抽出、続く、1つ以上の濃縮、塩析、水性イオン交換またはサイズ排除クロマトグラフィー工程により単離することができる。高速液体クロマトグラフィー(HPLC)は、最終精製工程に用いることができる。組換えタンパク質の発現に用いられる微生物細胞は、凍結融解サイクル、超音波処理、機械的破壊、または細胞溶解薬の使用を含む任意の簡便な方法により破壊することができる。
【0188】
このように、特定の実施形態では、本発明は、対象(例えば、ヒトなどの哺乳動物)に、1つ以上の新生物/腫瘍特異的ネオアンチゲンと複合化された治療有効量のsHDL分子(例えば、具体的なT細胞応答を生じさせることができるワクチン組成物)を投与することによる、障害(例えば、新生物)、より詳細には、腫瘍の処置のための個別化方策に関連する。実際に、特定の実施形態では、全ゲノム/エクソームシークエンシングは、個々の患者の新生物/腫瘍にユニークに存在する全てまたはほぼ全ての変異ネオアンチゲンを同定するために使用されてもよく、変異ネオアンチゲンのこの収集物は、患者の新生物/腫瘍の処置のための個別化癌ワクチンとして使用されるネオアンチゲンの特定の最適化されたサブセットを同定するために分析されてもよい。例えば、一部の実施形態では、新生物/腫瘍特異的ネオアンチゲンの集団は、腫瘍特異的変異を同定するために各患者の新生物/腫瘍及び正常なDNAをシークエンスし、患者のHLAアロタイプを決定することにより同定されてもよい。次に、新生物/腫瘍特異的ネオアンチゲン及びその同族の天然抗原の集団に対して、どの腫瘍特異的変異が、患者のHLAアロタイプに結合することができるエピトープを生成するか、特に、どの腫瘍特異的変異が、同族の天然抗原よりも効果的に患者のHLAアロタイプに結合することができるエピトープを生成するかについて予測する検証されたアルゴリズムを使用した生物情報科学分析を行ってもよい。この分析に基づいて、これらの変異のサブセットに対応する1つ以上のペプチドは、各患者のために設計及び合成され、患者を免疫する時に癌ワクチンとして使用するために一緒にプールされてもよい。ネオアンチゲンペプチドは、別の抗新生物薬と組み合わされてもよい。一部の実施態様では、このようなネオアンチゲンは、(例えば、正常な自己抗原の標的化を回避することにより)自己免疫の可能性を低減させながら、中枢性胸腺免疫寛容をバイパスする(それにより、強い抗腫瘍T細胞応答を可能にする)と予想される。
【0189】
本発明は、対象の新生物/腫瘍特異的免疫応答を誘導し、新生物/腫瘍に対してワクチン接種し、本発明のネオアンチゲン性ペプチドまたはワクチン組成物を対象に投与することにより、対象の癌の症状を処置及び/または緩和する方法をさらに提供する。
【0190】
本発明によれば、上記癌ワクチンは、癌を有する、または癌を発症するリスクがあると診断されている患者に使用されてもよい。一実施形態では、患者は、固形腫瘍、例えば、乳房、卵巣、前立腺、肺、腎臓、胃、結腸、精巣、頭頚部、膵臓、脳、メラノーマ、及び組織器官の他の腫瘍ならびに血液腫瘍、例えば、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、慢性リンパ球性白血病、T細胞リンパ球性白血病、及びB細胞リンパ腫を含むリンパ腫及び白血病、を有することがある。
【0191】
本発明のペプチドまたは組成物は、CTL応答を誘導するのに十分な量で投与される。本発明のネオアンチゲン性ペプチド、ポリペプチド、またはワクチン組成物は、単独でまたは他の治療薬と組み合わせて投与することができる。治療薬は、例えば、化学療法薬もしくは生物学的治療薬、放射線、または免疫療法である。特定の癌に対する任意の好適な治療的処置が施されてもよい。化学療法薬及び生物学的治療薬の例としては、アルデスロイキン、アルトレタミン、アミホスチン、アスパラギナーゼ、ブレオマイシン、カペシタビン、カルボプラチン、カルムスチン、クラドリビン、シサプリド、シスプラチン、シクロホスファミド、シタラビン、ダカルバジン(DTIC)、ダクチノマイシン、ドセタキセル、ドキソルビシン、ドロナビノール、エポエチンα、エトポシド、フィルグラスチム、フルダラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、グラニセトロン、ヒドロキシウレア、イダルビシン、イホスファミド、インターフェロンα、イリノテカン、ランソプラゾール、レバミゾール、ロイコボリン、メゲストロール、メスナ、メトトレキサート、メトクロプラミド、マイトマイシン、ミトタン、ミトキサントロン、オメプラゾール、オンダンセトロン、パクリタキセル(タキソール(登録商標))、ピロカルピン、プロクロロペラジン、リツキシマブ、タモキシフェン、タキソール、塩酸トポテカン、トラスツズマブ、ビンブラスチン、ビンクリスチン、及び酒石酸ビノレルビンが挙げられるが、これらに限定されない。前立腺癌処置のために、抗CTLA-4を組み合わせることができる好ましい化学療法薬は、パクリタキセル(Taxol(登録商標))である。
【0192】
加えて、対象は、抗免疫抑制薬または免疫刺激薬をさらに投与されてもよい。例えば、対象は、抗CTLA抗体、抗PD-1、抗PD-Ll、抗TIM-3、抗BTLA、抗VISTA、抗LAG3、抗CD25、抗CD27、抗CD28、抗CD137、抗OX40、抗GITR、抗ICOS、抗TIGIT、及びIDOの阻害薬をさらに投与される。CTLA-4またはPD-1/PD-L1の抗体による遮断は、患者の癌性細胞に対する免疫応答を増強することができる。特に、CTLA-4遮断は、ワクチン接種プロトコールに従う場合に有効であることが示されている。
【0193】
ワクチン組成物中に含まれるべき各ペプチドの最適な量及び最適な投薬レジメンは、過度の実験を行うことなく当業者が決定することができる。例えば、ペプチドまたはその多様体は、静脈内(i.v.)注射、皮下(s.c.)注射、皮内(i.d.)注射、腹腔内(i.p.)注射、筋肉内(i.m.)注射用に調製されてもよい。ペプチド注射の好ましい方法は、s.c、i.d.、i.p.、i.m.、及びi.v.を含む。DNA注射の好ましい方法は、i.d.、i.m.、s.c、i.p.、及びi.v.を含む。例えば、ペプチドまたはDNAの1~500mg、50μg~1.5mg、好ましくは、10μg~500μgの用量が、投与されてもよく、各ペプチドまたはDNAに依存することになる。この範囲の用量は、以前の治験でうまく使用された(Brunsvig P F,et al.,Cancer Immunol Immunother.2006;55(12):1553-1564;M.Staehler,et al.,ASCO meeting 2007;Abstract No 3017)。ワクチン組成物の他の投与方法は、当業者らに既知である。
【0194】
本発明のワクチンは、組成物中に存在するペプチドの選択、数、及び/または量が、組織、癌、及び/または患者特異的であるように作られてもよい。例えば、ペプチドの正確な選択は、所与の組織における親タンパク質の発現パターンにより誘導され、副作用を回避することができる。選択は、特定のタイプの癌、疾患の状態、早期処置レジメン、患者の免疫状態、及び当然、患者のHLA-ハプロタイプに依存することがある。さらに、本発明によるワクチンは、特定の患者の個人的な必要に応じて、個別的構成成分を含有することができる。例としては、特定の患者における関連するネオアンチゲンの発現、個人的なアレルギーまたは他の治療による望ましくない副作用、及び第1ラウンドまたはスキームの処置の後の二次処置のための調整に従い、ペプチドの量を変更することが挙げられる。
【0195】
このようなワクチンは、既に癌に罹患している個体に投与されてもよい。治療用途では、このようなワクチンは、腫瘍抗原に対する有効なCTL応答を誘発する、かつ、少なくとも症状及び/または合併症を治癒または部分的に停止させる十分な量で患者に投与される。これを達成するのに十分な量は、「治療に有効な用量」と定義される。この使用に有効な量は、例えば、ペプチド組成物、投与様式、処置される疾患の病期及び重症度、患者の体重及び一般的な健康状態、ならびに処方医師の判断に依存することになるが、一般に、患者の応答及び状態に応じて、かつ場合により、患者の血液中の特定のCTL活性を測定することにより、数週間から数ヶ月にわたって、70kgの患者に対し、(治療または予防投与のためのである)初期免疫化の場合、約1.0μg~約50,000μgのペプチド、続いて、ブースト投薬量、またはブーストレジメンに従った約1.0μg~約10,000μgのペプチドの範囲である。本発明のペプチド及び組成物は一般に、特に癌が転移している場合に、重篤な疾患状態で、つまり、生命を脅かすまたは潜在的に生命を脅かす状況で用いられ得ることに留意すべきである。治療的使用では、投与は、腫瘍の検出または外科的除去後にできるだけ早く開始すべきである。これに続いて、少なくとも症状が実質的に寛解するまで、かつ、その後の期間に、用量を増やす。治療的処置のための医薬組成物(例えば、ワクチン組成物)は、非経口投与、局所投与、経鼻投与、経口投与、または局所投与のためのものである。好ましくは、医薬組成物は、非経口投与、例えば、静脈内投与、皮下投与、皮内投与、または筋肉内投与される。組成物は、腫瘍への局所免疫応答を誘導するために外科的切除部位に投与されてもよい。
【0196】
このような実施形態は、特定のタイプのアジュバントに限定されない。一般に、アジュバントは、ワクチン組成物への混合が変異体ペプチドに対する免疫応答を増加させる、またはさもなければ変更する任意の物質である。担体は、足場構造体、例えば、ポリペプチドまたは多糖類であり、抗原性ペプチド(例えば、ネオアンチゲン性ペプチド)は、これらに会合することができる。任意に、アジュバントは、本発明のペプチドまたはポリペプチドに共有結合または非共有結合的にコンジュゲートされる。
【0197】
アジュバントが抗原に対する免疫応答を増加させる能力は通常、免疫介在反応の有意な増加または疾患症状の低減により明らかにされる。例えば、体液性免疫の増加は通常、抗原に惹起された抗体の力価の有意な増加により明らかにされ、T細胞活性の増加は通常、細胞増殖または細胞傷害性またはサイトカイン分泌の増加に現れる。アジュバントは、例えば、主に体液性またはTh2応答を、主に細胞性応答またはTh1応答に変化させることにより、免疫応答を変更することもある。
【0198】
好適なアジュバントとしては、1018 ISS、アルミニウム塩、Amplivax、AS15、BCG、CP-870,893、CpG7909、CyaA、dSLIM、GM-CSF、IC30、IC31、Imiquimod、ImuFact IMP321、IS Patch、ISS、ISCOMATRIX、Juvlmmune、LipoVac、MF59、モノホスホリル脂質A、Montanide IMS 1312、Montanide ISA 206、Montanide ISA 50V、Montanide ISA-51、OK-432、OM-174、OM-197-MP-EC、ONTAK、PepTel.RTM、ベクターシステム、PLGマイクロ粒子、レシキモド、SRL172、ビロソーム及び他のウイルス様粒子、YF-17D、VEGFトラップ、R848、β-グルカン、Pam3Cys、サポニンに由来するAquilaのQS21 Stimulon物(Aquila Biotech、米国マサチューセッツ州ウスター)、マイコバクテリア抽出物及び合成細菌細胞壁模倣物、ならびにRibi’s Detox. QuilまたはSuperfosなどの他の登録商標を持つアジュバントが挙げられるが、これらに限定されない。樹状細胞に特異的ないくつかの免疫学的アジュバント(例えば、MF59)及びそれらの調製は以前に、記載されている(Dupuis M,et al.,Cell Immunol.1998;186(1):18-27;Allison A C;Dev Biol Stand.1998;92:3-11)。また、サイトカインが、使用されてもよい。いくつかのサイトカインは、リンパ組織への樹状細胞の遊走に影響を及ぼすこと(例えば、TNF-α)、樹状細胞のTリンパ球に対する有効な抗原提示細胞への成熟を促進すること(例えば、GM-CSF、IL-1、及びIL-4)(特に全体として参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,849,589号)、及び免疫アジュバントとして作用すること(例えば、IL-12)(Gabrilovich D I,et al.,J Immunother Emphasis Tumor Immunol.1996(6):414-418)と直接的関連している。Toll様受容体(TLR)は、アジュバントとして使用することもあり、「病原体関連分子パターン」(PAMPS)と呼ばれる、多くの微生物により共有される保存モチーフを認識するパターン認識受容体(PRR)のファミリーの重要なメンバーである。
【0199】
これらの「危険シグナル」の認識は、天然免疫系及び適応免疫系の複数の要素を活性化する。TLRは、樹状細胞(DC)、マクロファージ、T細胞及びB細胞、肥満細胞、ならびに顆粒球などの天然免疫系及び適応免疫系の細胞により発現され、原形質膜、リソソーム、エンドソーム、及びエンドリソソームなどの異なる細胞区画に局在する。異なるTLRは、別のPAMPSを認識する。例えば、TLR4は、細菌細胞壁に含有されるLPSにより活性化され、TLR9は、非メチル化細菌またはウイルスのCpG DNAにより活性化され、TLR3は、二本鎖RNAにより活性化される。TLRリガンド結合は、1つ以上の細胞内シグナル伝達経路の活性化をもたらして、最終的に炎症及び免疫(特に、転写因子NF-κB及びI型インターフェロン)に関連する多くの重要な分子の産生をもたらす。TLR媒介性DC活性化は、DC活性化、食作用、活性化ならびにCD80、CD83、及びCD86などの共刺激マーカーの上方制御、DCのリンパ節リンパ節への遊走を可能にし、かつT細胞への抗原提示を促進するCCR7の発現の増強、ならびにI型インターフェロン、IL-12、及びIL-6などのサイトカインの分泌の増加をもたらす。これらの下流事象は全て、適応性免疫応答の誘導にとって重要である。
【0200】
標的化され得る他の受容体は、トール様受容体(TLR)を含む。TLRは、病原体関連分子パターン(PAMP)を認識し、これに結合する。PAMPは、樹状細胞の表面上のTLRを標的とし、内部でシグナル伝達し、それにより、DC抗原取り込み、成熟、及びT細胞刺激能を潜在的に増大させる。粒子表面にコンジュゲートまたは共封入されたPAMPは、非メチル化CpG DNA(細菌性)、二本鎖RNA(ウイルス性)、リポ多糖(細菌性)、ペプチドグリカン(細菌性)、リポアラビノマンナン(細菌性)、ザイモサン(酵母性)、MALP-2などのマイコプラズマリポタンパク質(細菌性)、フラジェリン(細菌性)、ポリ(イノシン-シチジル)酸(細菌性)、リポテイコ酸(細菌性)、またはイミダゾキノリン(合成)を含む。
【0201】
現在臨床開発中の最も有望な癌ワクチンアジュバントの中には、TLR9アゴニストCpG及び合成二本鎖RNA(dsRNA)TLR3リガンドpolyICLCがある。前臨床試験では、poly-ICLCは、DCにおける炎症促進性サイトカインの誘導及びIL-10の刺激の欠如、ならびに高レベルの共刺激分子の維持により、LPS及びCpGと比較した場合に、最も強力なTLRアジュバントであるようにみえる。さらに、ポリ-ICLCは最近、ヒトパピローマウイルス(HPV)16キャプソマーからなるタンパク質ワクチンのアジュバントとして、非ヒト霊長類(アカゲザル)のCpGと直接比較された(Stahl-Hennig C,Eisenblatter M, Jasny E,et al.Synthetic double-stranded RNAs are adjuvants for the induction of T helper 1 and humoral immune responses to human papillomavirus in rhesus macaques. PLoS pathogens.Apr 2009;5(4))。
【0202】
一部の実施形態では、アジュバントは、樹状細胞標的分子(DC)である。DCは強力であり、抗原特異的免疫応答の開始に関与している。DCの1つの生物学的特徴は、抗原に遭遇する条件を感知して、「DC成熟」のプロセスを開始する能力である。種々の微生物及び炎症性の産物に対する受容体を使用すると、DCは遭遇する病原体(ウイルス、細菌、原生動物)の性質に応じて異なる手法で抗原曝露に応答する。この情報は、リンパ節における抗原提示時のサイトカイン放出パターンの変更により、T細胞に伝達され、誘発されたT細胞応答のタイプを変更する。したがって、DCの標的化は、一般に抗原の送達及び抗原応答を定量的に増強するだけでなく、所望のワクチン接種結果に応じて免疫応答の性質を定性的に制御する機会を提供する。
【0203】
樹状細胞は、結合抗原のエンドサイトーシスを媒介することができる複数の細胞表面受容体を発現する。全身分布した抗原提示細胞上の表面分子を内在化する外因性抗原を標的とすることは、抗原の取り込みを容易にし、したがって、免疫化、したがって、ワクチン接種における主要な律速段階を克服する。
【0204】
樹状細胞標的分子は、樹状細胞の表面上に提示されるエピトープを認識してそれに結合するモノクローナル抗体もしくはポリクローナル抗体またはそのフラグメントを含む。樹状細胞標的分子は、樹状細胞上の細胞表面受容体に結合するリガンドも含む。このような受容体の1つであるレクチンDEC-205は、体液性応答(抗体ベースの)及び細胞性応答(CD8 T細胞)の両方を2~4桁増加させるためにインビトロ及びマウスにおいて使用されている(例えば、Hawiger,et al.,J.Exp.Med.,194(6):769-79(2001);Bonifaz,et al.,J.Exp.Med.,196(12):1627-38 (2002);Bonifaz,et al.,J.Exp.Med.,199(6):815-24(2004)を参照のこと)。
【0205】
マンノース特異的レクチン(マンノース受容体)及びIgGFc受容体を含む他の様々なエンドサイトーシス受容体は、抗原提示効率の同様の増強を伴ってこのように標的化されている。標的化され得る他の好適な受容体としては、DC-SIGN、33D1、SIGLEC-H、DCIR、CD11c、熱ショックタンパク質受容体、及びスカベンジャー受容体が挙げられるが、これらに限定されない。
【0206】
一部の実施形態では、アジュバントは、CpGである。CpG免疫刺激オリゴヌクレオチドは、ワクチン環境におけるアジュバントの効果を増強することも報告されている。理論に束縛されるものではないが、CpGオリゴヌクレオチドは、Toll様受容体(TLR)、主にTLR9を介して天然(非適応)免疫系を活性化することにより作用する。CpG誘発性TLR9活性化は、ペプチド抗原またはプロテイン抗原、生存ウイルスまたは死滅ウイルス、樹状細胞ワクチン、自己細胞性ワクチンならびに予防的及び治療的ワクチンの両方における多糖コンジュゲートを含む多種多様な抗原に対する抗原特異的体液性応答及び細胞応答を増強する。さらに重要なことに、それは、樹状細胞の成熟及び分化を増強して、CD4T細胞がない時でさえ、Th1細胞の活性化の増強及び強力な細胞傷害性Tリンパ球(CTL)の生成をもたらす。TLR9刺激により誘導されるTh1バイアスは、通常Th2バイアスを促進するミョウバンまたは不完全フロイントアジュバント(IFA)などのワクチンアジュバントの存在下でさえ維持される。CpGオリゴヌクレオチドは、抗原が比較的弱い場合に強い応答を誘導するために特に必要である、他のアジュバントと、またはマイクロ粒子、ナノ粒子、脂質エマルジョン、もしくは類似の製剤などの製剤中で、製剤化または同時投与される場合、より大きなアジュバント活性をさらに示す。それらは、免疫応答も増進し、いくつかの実験においてCpGを含まない総用量のワクチンへの同等の抗体応答を伴って、抗原用量を約2桁低減させることができた(Arthur M.Krieg,Nature Reviews,Drug Discovery,5,Jun.2006,471-484)。米国特許第6,406,705B1号は、抗原特異的免疫応答を誘導するための、CpGオリゴヌクレオチド、非核酸アジュバント、及び抗原の併用について記載している。市販のCpG TLR9アンタゴニストは、本発明の医薬組成物の好ましい構成成分であるMologen(独国ベルリン)のdSLIM(二重ステムループ免疫調節薬)である。RNA結合性TLR7、TLR8、及び/またはTLR9などの他のTLR結合分子が、使用されることもある。
【0207】
例えば、(5,6-ジメチルキサンテノン-4-酢酸(DMXAA)としても知られている)VadimezanまたはAsA404などのキサンテノン誘導体は、本発明の実施形態によるアジュバントとして使用されることもある。あるいは、このような誘導体は、腫瘍部位での免疫を刺激するために、例えば、全身送達または腫瘍内送達を介して、本発明のワクチンと並行して投与されることもある。理論に束縛されるものではないが、このようなキサンテン誘導体が、IFN遺伝子(ISTING)受容体の刺激因子を介して、インターフェロン(IFN)産生を刺激することにより作用すると考えられている(例えば、Conlon et al.(2013)Mouse,but not Human STING,Binds and Signals in Response to
the Vascular Disrupting Agent 5,6-Dimethylxanthenone-4-Acetic Acid,Journal of Immunology,190:5216-25及びKim et al.(2013)Anticancer Flavonoids are Mouse-Selective
STING Agonists,8:1396-1401を参照のこと)。有用なアジュバントの他の例としては、化学的に修飾されたCpG(例えばCpR、Idera)、Poly(I:C)(例えばpolyi:CI2U)、非CpG細菌のDNAまたはRNA、ならびに免疫活性小分子ならびにシクロホスファミド、スニチニブ、ベバシズマブ、セレブレックス、NCX-4016、シルデナフィル、タダラフィル、バルデナフィル、ソラフィニブ、XL-999、CP-547632、パゾパニブ、ZD2171、AZD2171、イピリムマブ、トレメリムマブ、及びSC58175などの抗体が挙げられるが、これらに限定されず、これらは、治療的にかつ/またはアジュバントとして作用することがある。本発明の文脈において有用なアジュバント及び添加剤の量及び濃度は、過度の実験を行うことなく当業者が容易に決定することができる。さらなるアジュバントは、コロニー刺激因子、例えば、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF、サルラモスチム)を含む。
【0208】
Poly-ICLCは、約5000ヌクレオチドの平均長のpolyl鎖及びpolyC鎖からなる合成的に調製された二本鎖RNAであり、これは、ポリリシン及びカルボキシメチルセルロースの添加により血清ヌクレアーゼによる熱変性及び加水分解に対して安定化されている。この化合物は、PAMPファミリーのメンバーであるMDA5のTLR3及びRNAヘリカーゼドメインを活性化して、DC及びナチュラルキラー(NK)細胞の活性化及びI型インターフェロン、サイトカイン、及びケモカインの「天然混合物」の産生をもたらす。さらに、poly-ICLCは、より直接的で広範な宿主標的化抗感染性、おそらくは2つのIFN誘導性核酵素系2’-5’-OAS及びPl/eIF2aキナーゼ(PKR(4-6)としても知られている)ならびにRIG-Iヘリカーゼ及びMDA5により媒介される抗腫瘍効果を発揮する。
【0209】
このような方法は、抗原及びアジュバント(例えば、樹状細胞標的分子)とコンジュゲートされたsHDLナノ粒子を生成することに限定されない。一部の実施形態では、抗原及びアジュバントは、sHDLナノ粒子の外面にコンジュゲートされる。
【0210】
一部の実施形態では、sHDLナノ粒子は、抗原及び/またはアジュバントの還元感受性連結を可能にするチオール反応性リン脂質と合成される。一部の実施形態では、DCのsHDLナノ粒子内充填は、DC分子のコレステロール修飾により促進される。一部の実施形態では、凍結乾燥法は、均質なsHDLの調製に使用される。一部の実施形態では、リン脂質及びApoA模倣ペプチドは、氷酢酸に溶解させ、凍結乾燥させる。一部の実施形態では、抗原ペプチドは、抗原ペプチドのコンジュゲーションを可能にするために、(例えば、室温で3時間)緩衝液(例えば、リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.4))中で、sHDLと共にインキュベートされる。一部の実施形態では、コンジュゲートされない抗原ペプチドは、脱塩カラム(MWCO=7000Da)を使用して除去される。一部の実施形態では、コレステロール修飾DC(Cho-DC)のsHDLへの組み込みは、室温で約30分間のsHDLと共にインキュベートすることを含む。
【0211】
このような実施形態は、抗原及びDCとコンジュゲートされたsHDLを特性決定する特定の手法に限定されない。一部の実施形態では、sHDLのモルホロジーは、TEMにより観察される。一部の実施形態では、sHDLのサイズ分布は、Malven Nanosizer instrument及びGPCアッセイを使用した動的光散乱法(DLS)により分析される。
【0212】
免疫応答を活性化するように構成されたsHDLナノ粒子(例えば、sHDL-αGalCer)(例えば、Ag/DC-sHDL)は、予防的及び治療的適用のために対象においてT細胞を活性化するために有用である。T細胞のナノ粒子ワクチン組成物による活性化は、それらの増殖、サイトカイン産生、分化、エフェクター機能、及び/または生存を増加させる。これらを測定する方法は、当業者らに周知である。ナノ粒子ワクチン組成物により活性化されるT細胞は、α/β及びγ/δT細胞受容体を含むT細胞受容体を発現する任意の細胞とすることができる。T細胞は、CD4及びCD8も発現するT細胞サブセットを含む、CD3を発現する全ての細胞を含む。T細胞は、ナイーブ細胞及びメモリー細胞の両方ならびにCTLなどのエフェクター細胞を含む。T細胞は、Th1、Tc1、Th2、Tc2、Th3、Treg、及びTr1細胞などの制御細胞も含む。T細胞は、NKT細胞及び類似のユニークなクラスのT細胞系統も含む。一部の実施形態では、活性化されるT細胞は、CD8T細胞である。
【0213】
一般に、免疫応答を活性化するように構成されたsHDLナノ粒子(例えば、sHDL-αGalCer)(例えば、Ag/DC-sHDL)を含む組成物は、対象の免疫系が、免疫応答を開始する任意の疾患または障害を有する、またはこれに罹患しやすい対象を処置するのに有用である。組成物は、予防ワクチンとして有用であり、これらは、感染性因子へのその後の曝露に対して、対象に耐性を与える。組成物は、癌を有する対象の腫瘍抗原またはウイルスに感染した対象のウイルス抗原などの既存抗原に対する対象の免疫応答を開始または増強するために使用することができる治療ワクチンとしても有用である。組成物は、アレルゲンなどの環境抗原に対して個体を「免疫寛容化する」ように機能する脱感作ワクチンとしても有用である。
【0214】
これらの組成物を樹状細胞などのプロフェッショナル抗原提示細胞に標的化する能力、及び抗原の交差提示を引き起こすことによりこれらの組成物がT細胞媒介性免疫応答を誘発する能力は、これらの組成物が、疾患を攻撃するために、疾患関連抗原に対し細胞媒介性応答を誘発するのに特に有用になる。したがって、一部の実施形態では、処置または予防されるべき疾患のタイプは、細菌、ウイルス、原生動物、蠕虫、または細胞内に侵入して、すなわち、細胞傷害性Tリンパ球により攻撃される他の微生物病原体により引き起こされる悪性腫瘍または慢性感染症である。
【0215】
予防的な、治療的な、または脱感作された免疫応答の望ましい結果は、当該分野で周知の原理に従って、疾患に応じて変化することがある。例えば、感染性因子に対する免疫応答は、感染性因子のコロニー形成及び複製を完全に防止して、「無菌免疫」及び何らかの疾患症状がないこと、に影響を及すことがある。しかし、感染性因子に対するワクチンは、症状の数、重症度、または持続時間を低減させる場合;症状を有する集団中の個体数を低減させ;または感染性因子の伝達を低減させる場合、効果的であると考えられてもよい。同様に、癌、アレルゲン、または感染性因子に対する免疫応答は、疾患を完全に処置することがあり、症状を緩和することがあり、または疾患に対する全体的な治療的介入において1つの側面であることがある。例えば、癌に対する免疫応答の刺激は、処置に影響を及ぼすために、外科的、化学療法的、放射線学的、ホルモン的、及び他の免疫学的アプローチと組み合わされてもよい。
【0216】
感染性因子を有し、またはこれらに曝露された対象は、本明細書に開示されるような免疫応答を活性化するように構成されたsHDLナノ粒子(例えば、sHDL-αGalCer)(例えば、Ag/DC-sHDL)で治療的または予防的に処置することができる。感染性因子は、細菌、ウイルス、及び寄生虫を含む。一部の場合では、対象は、例えば、感染性因子から疾患を発症するリスクがあり得る場合、予防的に処置することができる。特有の感染症がある地域を旅行する、またはそこに住む個人は、リスクがあり、かつ危険にさらされていると考えられ、特定の感染性因子に対するワクチン接種の候補であると考えられることがある。予防的処置は、特定の疾患と、地理的場所または職場環境などの特定の危険因子との間に既知の関係がある任意の数の疾患に適用することができる。
【0217】
悪性腫瘍を有し、またはこれらを発症するリスクのある対象は、本明細書に開示されるような免疫応答を活性化するように構成されたsHDLナノ粒子(例えば、sHDL-αGalCer)(例えば、Ag/DC-sHDL)で治療的または予防的に処置することができる。成熟した動物は、ほとんどの器官及び組織において細胞の再生及び細胞死の間のバランスが通常、維持される。体内の種々のタイプの成熟細胞は、所与の寿命を有する:これらの細胞が死ぬ時に、新しい細胞が、種々のタイプの幹細胞の増殖及び分化により生成される。通常の状況下では、新しい細胞の産生は制御されているので、任意の特定のタイプの細胞の数は一定に留まる。しかし、場合により、正常な成長制御機序にもはや応答しない細胞が生じる。これらの細胞は、かなりの大きさに拡大して、腫瘍または新生物を産生することができる細胞のクローンを生じる。無限に成長することができず、広範囲に健康な周囲組織に浸潤しない腫瘍は、良性である。成長を続けて徐々に浸潤性になる腫瘍は、悪性である。癌という用語は、特に悪性腫瘍を指す。制御不能な成長に加えて、悪性腫瘍は、転移を示す。このプロセスでは、癌細胞の小さなクラスターは、腫瘍から出て、血液またはリンパ管に浸潤し、他の組織に運ばれ、そこで、増殖し続ける。このようにして、1つの部位における原発性腫瘍は、別の部位で二次性腫瘍を生じさせることができる。本明細書に開示されるような免疫応答(例えば、sHDL-αGalCer)(例えば、Ag/DC-sHDL)を活性化するように構成されたsHDLナノ粒子は、悪性腫瘍を有する対象を処置するために有用である。
【0218】
処置され得る悪性腫瘍は、腫瘍が由来する組織の胚起源に従って本明細書では分類される。癌腫は、皮膚または内臓及び腺の上皮内層などの内胚葉または外胚葉組織から生じる腫瘍である。メラノーマは、本発明が特に有用な皮膚の癌腫の一種である。あまり頻繁には発生しない肉腫は、骨、脂肪、及び軟骨などの中胚葉結合組織に由来する。白血病及びリンパ腫は、骨髄の造血細胞の悪性腫瘍である。白血病は、単一細胞として増殖するが、リンパ腫は、腫瘍塊として成長する傾向がある。悪性腫瘍は、癌を確立するために身体の多数の器官または組織に現れることがある。
【0219】
免疫応答を活性化するように構成された提供されたsHDLナノ粒子(例えば、sHDL-αGalCer)(例えば、Ag/DC-sHDL)で処置することができる癌のタイプとしては、次の:膀胱、脳、乳房、子宮頸部、結腸直腸、食道、腎臓、肝臓、肺、鼻咽頭、膵臓、前立腺、皮膚、胃、子宮などが挙げられるが、これらに限定されない。投与は、既存の腫瘍または感染症の処置に限定されず、個体におけるこのような疾患の発症リスクを予防または低下させるために、すなわち、予防的使用のために、使用することもできる。予防的ワクチン接種の潜在的な候補は、癌を発症するリスクが高い、すなわち、特定のタイプの癌の個人歴または家族歴を有する、個体を含む。
【0220】
アレルゲンを有する、またはこれらへの曝露のリスクのある対象は、本明細書に開示されるような免疫応答を活性化するように構成されたsHDLナノ粒子(例えば、sHDL-αGalCer)(例えば、Ag/DC-sHDL)で治療的または予防的に処置することができる。このようなsHDLナノ粒子は、アナフィラキシーにつながるアレルギー反応などのアレルギー反応を予防及び/または軽減する目的で対象に投与されてもよい。アレルギー反応は、IgE抗体の存在をもたらす抗原に対するT2応答で特性決定されてもよい。T1免疫応答の刺激及びIgG抗体の産生は、アレルギー性疾患を緩和することがある。したがって、本明細書に開示されるような免疫応答(例えば、sHDL-αGalCer)(例えば、Ag/DC-sHDL)を活性化するように構成されたsHDLナノ粒子は、アレルゲンに曝露された対象におけるアレルギー反応を予防及び/または軽減する抗体の産生に有用である。
【0221】
免疫抑制状態を有し、またはこれらのリスクのある対象は、本明細書に開示されるような免疫応答を活性化するように構成されたsHDLナノ粒子(例えば、sHDL-αGalCer)(例えば、Ag/DC-sHDL)で治療的または予防的に処置することができる。本明細書に開示されるsHDLナノ粒子ワクチンは、AIDSまたはAIDS関連複合体、特発性免疫抑制、薬物誘発性免疫抑制、他のウイルス性または環境誘発性の状態、及び特定の先天性免疫不全を含むがこれらに限定されない免疫抑制を特徴とする病状の処置のために使用することができる。このようなsHDLナノ粒子ワクチン組成物は、免疫抑制薬(例えば、特定の化学療法薬)の放射線療法の使用により損なわれている免疫機能を増加させるために用いることもでき、したがって、このような薬物または放射線療法と共に使用される場合に、特に有用である可能性がある。
【0222】
冠状動脈性心疾患及び/またはLDL-Cレベルの上昇を有し、またはこれらへの曝露のリスクのある対象は、本明細書に開示されるような免疫応答を活性化するように構成されたsHDLナノ粒子で治療的または予防的に処置することができる。PCSK9に対するmAb療法の有効性は確立されているが(例えば、Banerjee,Y.;et al.,New England Journal of Medicine 2012,366(25),2425-2426;Stein,E.A.;et al.,Circulation 2013,128(19),2113-2120を参照のこと)、より持続的なPCSK9ワクチンの開発が必要とされている。加えて、PCSK9ワクチンの課題の1つは、PCSK9ペプチドなどの自己抗原が、抗原及び免疫刺激分子を免疫細胞に効率的に同時送達することができるワクチン/アジュバント系に結合されない限り、免疫原性でないことである(例えば、Krishnamachari,Y.;et al.,Advanced Drug Delivery Reviews 2009,61(3),205-217;Hamdy,S.;et al.,Advanced Drug
Delivery Reviews 2011,63(10-11),943-955を参照のこと)。
【0223】
sHDLナノ粒子が、PCSK9抗原及びCpGアジュバントとコンジュゲートされている本発明の実施形態(PCSK9-Ag/CpG-sHDL)は、このような必要性に対処する。実際に、PCSK9-Ag/CpG-sHDLの実施形態によるPCSK9に対するワクチン接種は、高価なmAbの反復注射の必要性を回避しながら、PCSK9及びLDLRの間の相互作用を効果的に阻害する(例えば、Fattori,E.;et al.,Journal of Lipid Research 2012,53(8),1654-1661;Gergana Galabova,et al.,PLOS ONE 2014,9(12)を参照のこと)。さらに、このようなPCSK9-Ag/CpG-sHDLナノ粒子は、より大きな粒子と比較してリンパ節への効率的な排出を可能にするのに十分に小さいサイズ(例えば、10~45nm)を有する(例えば、Bachmann,M.F.;et al.,Nature Reviews Immunology 2010,10(11),787-796を参照のこと)。
【0224】
一般に、本明細書に開示されるようなワクチン(例えば、免疫応答を活性化するように構成されたsHDLナノ粒子(例えば、sHDL-αGalCer)(例えば、Ag/DC-sHDL))を投与する方法は、当該技術分野において周知である。当業者に既知の任意の許容される方法は、対象に製剤を投与するために使用されてもよい。投与は、局所投与(すなわち、特定の領域、生理学的システム、組織、器官、もしくは細胞型)または全身投与であってよい。ワクチンは、経口、吸入(経鼻または経肺)、静脈内、腹腔内、筋肉内、経皮、皮下、局所、舌下、または経直腸手段を含むが、これらに限定されない多数の経路により投与することができる。注射は、例えば、静脈内、皮内、皮下、筋肉内、または腹腔内注射とすることができる。一部の実施形態では、注射は複数の場所で行うことができる。
【0225】
製剤の投与は、有効量のワクチンが標的に到達することを可能にする任意の許容される方法により達成されることがある。選択される特定の様式は、特定の製剤、処置される対象の状態の重症度、及び有効な免疫応答を誘導するために必要とされる投薬量などの因子に依存することになる。本明細書で一般に使用されるように、「有効量」は、処置された対象において免疫応答を誘導することができる量である。ワクチンの実際の有効量は、利用される特定の抗原またはその組み合わせ、製剤化される特定の組成物、投与様式、及びワクチン接種される個体の年齢、体重、状態、ならびに投与経路及び疾患または障害に応じて変動する可能性がある。
【0226】
特定の実施形態では、sHDLナノ粒子内に封入された糖脂質は、ナチュラルキラーT細胞媒介性免疫応答の刺激因子として使用される。
【0227】
ナチュラルキラーT(NKT)細胞は、T細胞及びナチュラルキラー細胞の両方の性質を共有する異種群のT細胞である。これらの細胞の多くは、非多型CD1d分子、自己及び外来の脂質及び糖脂質に結合する抗原提示分子を認識する。NKT細胞は、全末梢血T細胞の約0.1%しか構成しない。NKT細胞は、αβT細胞受容体を同時発現するT細胞のサブセットであるが、NK1.1などのNK細胞に通常関連する様々な分子マーカーも発現する。最もよく知られているNKT細胞は、T細胞受容体の多様性がはるかに限定されているという点で、従来のαβT細胞とは異なる(『不変』または『1型』NKT)。それら及び他のCD1d拘束性T細胞(『2型』NKT)は、ペプチド主要組織適合遺伝子複合体(MHC)の代わりに、抗原提示分子のCD1ファミリーのメンバーであるCD1d分子により提示される脂質及び糖脂質を認識する。NKT細胞は、NK1.1及びNK1.1の両方ならびにCD4、CD4、CD8、及びCD8細胞を含む。
【0228】
一部の実施形態では、糖脂質は、合成糖脂質α-ガラクトシルセラミド(αGalCer)である。CD1dとの関連で抗原を提示する樹状細胞は、ナチュラルキラーT細胞(NKT細胞)によるインターフェロン及びIL-4などのサイトカインの迅速な天然の産生及び産生の長期化をもたらすことができる。CD1dは、糖脂質抗原をNKT細胞のサブセットに提示する主要組織適合遺伝子複合体クラスI様分子である。有利なことに、αGalCerは、ヒトに対し毒性がなく、抗原特異的CD4+及びCD8+T細胞応答の両方をプライミングするアジュバントとして作用することが示されている。例えば、マラリアワクチンと併用したαGalCerは、感染細胞に対する細胞傷害性応答をもたらす可能性があることが示されており、これは、感染症に対するワクチンの理想的なシナリオである。αGalCerに加えて、NKT細胞媒介性免疫応答を活性化するためのアジュバントとして機能する他の糖脂質を使用することができる。
【0229】
本発明は、封入されたαGalCerを有するsHDLナノ粒子を生成するための特定の方法に限定されない。例えば、一部の実施形態では、凍結乾燥法は、均質なsHDLの調製のために使用される。一部の実施形態では、リン脂質及びApoA模倣ペプチドは、氷酢酸に溶解させ、凍結乾燥させる。一部の実施形態では、αGalCerのsHDLナノ粒子への充填は、αGalCerとsHDLとの間の疎水性相互作用により促進される。一部の実施形態では、凍結乾燥リン脂質及びApoA模倣ペプチドは、水和され(例えば、PBS(pH7.4)中で水和され)、リン脂質がブランクsHDLを形成する転移温度(Tm)を上回る温度及び下回る温度で熱サイクルされ、次に、室温で最適時間(例えば、5分、10分、20分、25分、30分、35分、50分、80分、120分、360分)、αGalCerと共にインキュベートされて、封入されたαGalCerを含むsHDLを形成する。
【0230】
このような実施形態は、封入されたαGalCerを含むsHDLを特性決定する特定の様式に限定されない。一部の実施形態では、sHDL-αGalCerのモルホロジーは、TEMにより観察される。一部の実施形態では、sHDL-αGalCerのサイズ分布は、Malven Nanosizer instrument及びGPCアッセイを使用した動的光散乱(DLS)により分析される。
【0231】
このような実施形態は、インビトロ及びインビボでのαGalCerの送達プロファイルを評価する特定の手法に限定されない。一部の実施形態では、イメージング薬(例えば、蛍光色素Cy3)で分子を標識することにより、器官レベルでのαGalCer分子の生体内分布、さらに、細胞内送達プロファイルの視覚化が可能になる。
【0232】
特定の実施形態では、本発明は、細胞のナチュラルキラーT細胞媒介性免疫応答を誘導する方法を提供し、本方法は、sHDLナノ粒子内に封入されたαGalCer糖脂質を含む組成物に細胞を曝露することを含み、このような曝露は、キラーT細胞媒介性免疫応答の誘導をもたらす。一部の実施形態では、細胞は、インビボ細胞である。一部の実施形態では、細胞は、インビトロ細胞である。一部の実施形態では、細胞は、エクスビボ細胞である。
【0233】
特定の実施形態では、本発明は、対象(例えば、ヒト患者)のナチュラルキラーT細胞媒介性免疫応答を誘導するための方法を提供し、本方法は、sHDLナノ粒子内に封入されたαGalCer糖脂質を含む医薬組成物を患者に投与することを含み、このような投与は、ナチュラルキラーT細胞媒介性免疫応答の誘導をもたらす。
さらなる実施形態
特定の実施形態では、本明細書に記載されるような(例えば、RNA干渉のために構成された)(例えば、免疫応答を活性化するように構成された)sHDLナノ粒子は、1つ以上の治療薬を封入する。このような実施形態は、特定のタイプまたは種類の治療薬に限定されない。
【0234】
一部の実施形態では、治療薬は、癌を処置及び/または予防するために構成される。このような治療薬の例としては、化学療法薬、抗発癌薬、抗血管新生薬、腫瘍抑制薬、抗菌薬などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0235】
一部の実施形態では、治療薬は、自己免疫障害及び/または炎症性障害を処置及び/または予防するために構成される。このような治療薬の例としては、疾患改変抗リウマチ薬(例えば、レフルノミド、メトトレキセート、スルファサラジン、ヒドロキシクロロキン)、生物学的薬剤(例えば、リツキシマブ、インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、ゴリムマブ)、非ステロイド抗炎症薬(例えば、イブプロフェン、セレコキシブ、ケトプロフェン、ナプロキセン、ピロキシカム、ジクロフェナク)、鎮痛薬(例えば、アセトアミノフェン、トラマドール)、免疫調節薬(例えば、アナキンラ、アバタセプト)、グルココルチコイド(例えば、プレドニゾン、メチルプレドニゾン)、TNF-α阻害薬(例えば、アダリムマブ、セツリズマブ・ペゴル、エタネルセプト、ゴリムマブ、インフリキシマブ)、IL-1阻害薬、及びメタロプロテアーゼ阻害薬が挙げられる。一部の実施形態では、治療薬は、インフリキシマブ、アダリムマブ、エタネルセプト、非経口金、または経口金が含まれるが、これらに限定されない。
【0236】
一部の実施形態では、治療薬は、心血管関連障害(例えば、アテローム性動脈硬化症、心不全、不整脈、心房細動、高血圧、冠状動脈疾患、狭心症など)を処置及び/または予防するために構成される。心臓血管関連障害を処置及び/または予防するのに有用であることが知られている治療薬の例としては、アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬(例えば、ベナゼプリル、エナラプリル、リシノプリル、ペリンドプリル、ラミプリル)、アデノシン、α遮断薬(αアドレナリンアンタゴニスト薬剤)(例えば、クロニジン、グアナベンズ、ラベタロール、フェノキシベンザミン、テラゾシン、ドキサゾシン、グアンファシン、メチルドーパ、プラゾシン)、アンギオテンシンII受容体遮断薬(ARB)(例えば、カンデサルタン、イルベサルタン、オルメサルタンメドキソミル、テルミサルタン、エプロサルタン、ロサルタン、タソサルタン、バルサルタン)抗凝固薬(例えば、ヘパリンフォンダパリヌクス、ワルファリン、アルデパリン、エノキサパリン、レビパリン、ダルテパリン、ナドロパリン、チンザパリン)、抗血小板薬(例えば、アブシキシマブ、クロピドグレル、エプチフィバチド、チクロピジン、シロスタゾール、ジピリダモール、スルフィンピラゾン、チロフィバン)、β遮断薬(例えば、アセブトロール、ベタキソロール、カルテオロール、メトプロロール、ペンブトロール、プロプラノロール、アテノロール、ビソプロロール、エスモロール、ナドロール、ピンドロール、チモロール)、カルシウムチャネル遮断薬(例えば、アムロピジン(amlopidine)、フェロジピン、イスラジピン、ニフェジピン、ベラパミル、ジルチアゼム、ニカルジピン、ニモジピン、ニソルジピン)、利尿薬、アルドステロン遮断薬、ループ利尿薬(例えば、ブメタニド、フロセミド、エタクリン酸、トラセミド)カリウム保持性利尿薬、チアジド利尿薬(例えば、クロロチアジド、クロルタリドン、ヒドロクロロチアジド、ヒドロフルメアジド、メチクロチアジド、メトラゾン、ポリチアジド、キナタゾン、トリクロルメチアジド)、強心薬、胆汁酸捕捉薬(例えば、コレスチラミン、コレチポール(coletipol)、コレセベラム)、フィブラート(例えば、クロフィブラート、ゲムフィブロジル、フェノフィブラート)スタチン(例えば、アトルバスタチン(atorvastatinm)、ロバスタチン、シンバスタチン、フルバスタチン、プラバスタチン)、選択的コレステロール吸収阻害薬(例えば、エゼチマイブ)、カリウムチャネル遮断薬(例えば、アミダロン(amidarone)、イブチリド、ドフェチリド)、ナトリウムチャネル遮断薬(例えば、ジソピラミド、メキシレチン、プロカインアミド、キニジン、フレカイニド、モリシジン、プロパフェノン)、血栓溶解薬(例えば、アルテプラーゼ、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、アニストレプラーゼ、ストレプトキナーゼ、ウロキナーゼ)、血管収縮薬、血管拡張薬(例えば、ヒドララジン、ミノキシジル、メカミルアミン、イソルビドジントレート(isorbide dintrate)、イソルビドモノニトラート(isorbide mononitrate)、ニトログリセリン)が挙げられる。
【0237】
一般に、そのように形成されたsHDLナノ粒子は、球状であり、約5nm~約20nm(例えば、4~75nm、4~60nm、4~50nm、4~22nm、6~18nm、8~15nm、8~10nmなど)の直径を有する。一部の実施形態では、sHDLナノ粒子にサイズ排除クロマトグラフィーを行い、より均質な調製物を得る。
【0238】
一部の実施形態では、sHDLナノ粒子は、投与された粒子の場所を決定するのに有用な薬剤をさらに封入する。この目的に有用な薬剤は、蛍光タグ、放射性核種、及び造影薬を含む。
【0239】
好適なイメージング薬としては、Molecular Probes(Handbook of fluorescent probes and research products)に記載されているような蛍光分子、例えば、ローダミン、フルオレセイン、Texas red、アクリジンオレンジ、Alexa Fluor(各種)、アロフィコシアニン、7-アミノアクチノマイシンD、BOBO-1、BODIPY(各種)、Calcien、Calcium Crimson、Calcium green、Calcium Orange、6-カルボキシローダミン6G、Cascade blue、Cascade yellow、DAPI,DiA,DID,Di1,DiO,DiR,ELF 97,Eosin,ER Tracker Blue-White,EthD-1、臭化エチジウム、Fluo-3、Fluo4、FM1-43、FM4-64、Fura-2、Fura Red、Hoechst 33258、Hoechst 33342、7-ヒドロキシ-4-メチルクマリン、Indo-1、JC-1、JC-9、JOE dye、リサミンローダミンB、ルシファーイエローCH、LysoSensor Blue DND-167、LysoSensor Green、LysoSensor Yellow/Blu、Lysotracker Green FM、Magnesium
Green、Marina Blue、Mitotracker Green FM、Mitotracker Orange CMTMRos、MitoTracker Red CMXRos、Monobromobimane、NBD amines、NeruoTrace 500/525 green、Nile red、Oregon Green、Pacific Blue、POP-1、Propidium iodide、ローダミン110、ローダミンレッド、R-フィコシアニン、Resorfin、RH414、Rhod-2、ローダミングリーン、ローダミン123、ROX dye、Sodium Green、SYTO blue(各種)、SYTO green(各種)、SYTO orange(各種)、SYTOX blue、SYTOX green、SYTOX orange、テトラメチルローダミンB、TOT-1、TOT-3、X-rhod-1、YOYO-1、YOYO-3が挙げられるが、これらに限定されない。一部の実施形態では、セラミドは、イメージング薬として提供される。一部の実施形態では、S1Pアゴニストは、イメージング薬として提供される。
【0240】
さらに、放射性核種は、イメージング薬として使用することができる。好適な放射性核種は、Fe(III)、Fe(II)、Cu(II)、Mg(II)、Ca(II)、及びZn(II)、インジウム、ガリウム及びテクネチウムの放射性種が挙げられるが、これらに限定されない。他の好適な造影薬としては、常磁性T1型MIR造影薬におけるキレート化に一般に使用される金属イオンが挙げられ、銅、クロム、鉄、ガドリニウム、マンガン、エルビウム、ユーロピウム、ジスプロシウム、及びホルミウムなどの二価及び三価カチオンが挙げられる。放射性核種イメージングするためにキレート化及び使用することができる金属イオンは、ガリウム、ゲルマニウム、コバルト、カルシウム、インジウム、イリジウム、ルビジウム、イットリウム、ルテニウム、イットリウム、テクネチウム、レニウム、白金、タリウム、及びサマリウムなどの金属を含むが、これらに限定されない。さらに、中性子捕捉放射線療法に有用であることが知られている金属イオンは、ホウ素及び大きな核断面を有する他の金属を含む。さらに、超音波造影及びX線造影組成物に有用な金属イオンも好適である。
【0241】
他の好適な造影薬の例としては、放射線不透過性の気体または気体放出化合物が挙げられる。
【0242】
一部の実施形態では、sHDLナノ粒子は、標的化薬をさらに封入する。一部の実施形態では、標的化薬は、sHDL-TAナノ粒子の所望の身体領域(例えば、心臓血管関連障害により影響を受ける身体領域)への送達を助けるために使用される。標的化薬の例としては、抗体、受容体リガンド、ホルモン、ビタミン、及び抗原が挙げられるが、これらに限定されず、本発明は、標的化薬の性質に限定されない。一部の実施形態では、抗体は、疾患特異的抗原に特異的である。一部の実施形態では、受容体リガンドは、CFTR、EGFR、エストロゲン受容体、FGR2、葉酸受容体、IL-2受容体、糖タンパク質、及びVEGFRに対するリガンドを含むが、これらに限定されない。一部の実施形態では、受容体リガンドは、葉酸である。
【0243】
一部の実施形態では、本発明のsHDLナノ粒子は、医療デバイスにより患者の局所部位に送達されてもよい。本発明での使用に適した医療デバイスは、治療薬の局所送達のための既知のデバイスを含む。このようなデバイスは、カテーテル、例えば、注射カテーテル、バルーンカテーテル、二重バルーンカテーテル、微孔性バルーンカテーテル、チャネルバルーンカテーテル、注入カテーテル、灌流カテーテル(これらは、例えば、治療薬でコーティングされ、または、これらを介して、薬剤が投与される);皮下注射針及び針注射カテーテルなどの針注射デバイス;ジェットインジェクターなどの無針注射デバイス;被覆ステント、分岐ステント、人工血管、ステントグラフトなど;ならびにワイヤコイルなどの血管閉塞デバイスなどを含むが、これらに限定されない。
【0244】
例示的なデバイスは、米国特許第5,935,114号;同第5,908,413号;同第5,792,105号;同第5,693,014号;同第5,674,192号;同第5,876,445号;同第5,913,894号;同第5,868,719号;同第5,851,228号;同第5,843,089号;同第5,800,519号;同第5,800,508号;同第5,800,391号;同第5,354,308号;同第5,755,722号;同第5,733,303号;同第5,866,561号;同第5,857,998号;同第5,843,003号;及び同第5,933,145号に記載され、この内容全体は、参照により本明細書に組み込まれる。市販されており、本出願で使用され得る例示的なステントは、RADIUS(SCIMED LIFE SYSTEMS,Inc.)、the SYMPHONY(Boston Scientific Corporation)、the Wallstent(Schneider Inc.)、the PRECEDENT II(Boston Scientific Corporation)、及びNIR(Medinol Inc.)が挙げられる。このようなデバイスは、既知の技術により、体内の標的場所に送達及び/または移植される。
【0245】
一部の実施形態では、本発明は、本明細書に記載のsHDLナノ粒子を含むキットも提供する。一部の実施形態では、本キットは、sHDLナノ粒子を生成するために必要な試薬及びツールのうちの1つ以上、ならびにこのようなsHDLナノ粒子を使用する方法を含む。
【0246】
本発明のsHDLナノ粒子は、任意の好適な分析技術により、サイズ及び均一性を特性決定されてもよい。これらは、原子間力顕微鏡法(AFM)、エレクトロスプレーイオン化質量分析、MALDI-TOF質量分析、13C核磁気共鳴分光法、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)(マルチアングルレーザー光散乱、デュアルUV、及び屈折率検出器が装着されている)、キャピラリー電気泳動、ならびにゲル電気泳動を含むが、これらに限定されない。これらの分析方法は、sHDLナノ粒子集団の均一性を確保し、インビボ用途での最終的な使用のための製造品質管理において重要である。
【0247】
一部の実施形態では、sHDLナノ粒子をリポソーム及び遊離ApoA-I模倣ペプチドから分離することができるゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)は、sHDL-TAナノ粒子を分析するために使用される。一部の実施形態では、サイズ分布及びゼータ電位は、例えば、Malven Nanosizer instrumentを使用した動的光散乱(DLS)により測定される。
【0248】
臨床用途が企図される場合、本発明の一部の実施形態では、sHDLナノ粒子は、意図される用途に適した形態の医薬組成物の一部として調製される。一般に、これは、発熱物質を本質的に含まない組成物、ならびにヒトまたは動物に有害である可能性がある他の不純物を調製することを必要とする。しかし、本発明の一部の実施形態では、ストレートのsHDLナノ粒子製剤は、本明細書に記載の経路の1つ以上を使用して投与されてもよい。
【0249】
好ましい実施形態では、sHDLナノ粒子は、標的細胞による取り込みを可能にする安定な様式の組成物の送達をもたらすために、適切な塩及び緩衝液と共に使用される。緩衝液はまた、sHDLナノ粒子が患者に導入される場合に用いられる。水性組成物は、薬学的に許容される担体または水性媒体中に分散された、細胞に対する有効量のsHDLナノ粒子を含む。このような組成物は、接種物とも呼ばれる。語句「医薬的にまたは薬理学的に許容される」は、動物またはヒトに投与される場合に、有害な、アレルギー性の、または他の有害な反応を生じない分子実体及び組成物を指す。本明細書で使用される場合、「薬学的に許容される担体」は、任意の及び全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌薬及び抗真菌薬、等張剤及び吸収遅延薬などを含む。任意の従来の培地または薬剤が、本発明のベクターまたは細胞と適合しない場合を除いて、治療組成物における使用が検討される。補助活性成分が、組成物に組み込まれることもある。
【0250】
本発明の一部の実施形態では、活性組成物は、古典的な医薬製剤を含む。本発明によるこれらの組成物の投与は、標的組織がその経路を介して利用可能である限り、任意の一般的経路を介する。これは、経口、経鼻、頬側、経直腸、膣内、または局所を含む。あるいは、投与は、同所注射、皮内注射、皮下注射、筋肉内注射、腹腔内注射、または静脈内注射によるものであってよい。
【0251】
活性sHDLナノ粒子は、非経口投与もしくは腹腔内投与または腫瘍内投与されることもある。遊離塩基または薬理学的に許容される塩としての活性化合物の溶液は、ヒドロキシプロピルセルロースなどの界面活性剤と適切に混合された水中で調製される。分散液は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びそれらの混合物中、かつ油中で調製することもできる。通常の保存及び使用条件下では、これらの調製物は、微生物の成長を防止するための保存薬を含有する。
【0252】
注射使用に適した医薬形態は、滅菌水溶液または分散液、及び滅菌注射用溶液または分散液の即時調製用の滅菌粉剤を含む。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、それらの好適な混合物、ならびに植物油を含有する溶媒または分散媒であってよい。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散液の場合には必要とされる粒子サイズの維持、及び界面活性剤の使用により維持することができる。微生物の作用の予防は、種々の抗菌薬及び抗真菌薬、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどにより行うことができる。多くの場合、等張剤、例えば、糖または塩化ナトリウム、を含むことが好ましいことがある。注射用組成物の吸収の長期化は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチン、の組成物中での使用により、もたらされる可能性がある。
【0253】
滅菌注射溶液は、必要に応じて、上に列挙された多様な他の成分と適切な溶媒中で必要量の活性sHDLナノ粒子を組み込み、続いて、濾過滅菌することにより、調製される。一般に、分散液は、種々の滅菌された活性成分を、基本的な分散媒及び上に列挙されたものからの必要とされる他の成分を含有する滅菌ビヒクル中に組み込むことにより調製される。滅菌注射溶液の調製のための滅菌粉剤の場合、好ましい調製方法は、予め滅菌濾過したその溶液から有効成分及び任意の追加の所望の成分の粉剤を生じる真空乾燥及び凍結乾燥技術である。
【0254】
製剤化する時、sHDLナノ粒子は、投薬製剤と適合する様式で、かつ治療的に有効であるような量で投与される。製剤は、様々な剤形、例えば、注射液、薬物放出カプセル剤などで容易に投与される。水溶液中の非経口投与のために、例えば、溶液は、適切に緩衝され、必要に応じて、液体希釈剤は最初に、十分な生理食塩水またはグルコースで等張にされる。これらの特定の水溶液は特に、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、及び腹腔内投与に適する。例えば、1つの投薬量は、1mlの等張NaCl溶液に溶解し、1000mlの皮下注入液に添加するか、または提案された注入部位に注射するかのいずれかとすることができる(例えば、“Remington’s Pharmaceutical Sciences”15th Edition,pages 1035-1038 and 1570-1580を参照のこと)。本発明の一部の実施形態では、活性粒子または薬剤は、治療混合物内に1用量毎に約0.0001~1.0ミリグラム、または約0.001~0.1ミリグラム、または約0.1~1.0、あるいは約10ミリグラム程度を含むように製剤化される。複数用量が、投与されてもよい。
【0255】
他の投与様式に適するさらなる製剤は、膣坐剤及びペッサリーを含む。直腸ペッサリーまたは坐剤が、使用されることもある。坐剤は、直腸、膣、または尿道への挿入のために、通常投薬される種々の重量及び形状の固体剤形である。挿入後、坐剤は軟化し、溶融し、または体腔液に溶解する。一般に、坐薬の場合、従来の結合剤及び担体は、例えば、ポリアルキレングリコールまたはトリグリセリドを含んでもよく、このような坐剤は、0.5%~10%、好ましくは、1%~2%の範囲の有効成分を含有する混合物から形成されてもよい。膣坐薬またはペッサリーは通常、球状または卵形であり、それぞれ約5gの重量である。膣内投薬は、様々な物理的形態、例えば、クリーム、ゲル、または液剤、で利用可能であり、これらは、坐剤の古典的概念から逸脱する。sHDLナノ粒子はまた、吸入剤として製剤化されてもよい。
【0256】
本発明は、本明細書に記載のsHDLナノ粒子の、1つ以上のさらなる活性薬との同時投与を含む方法も含む。実際に、本発明のsHDLナノ粒子を同時投与することにより、先行技術の治療法及び/または医薬組成物を増強する方法を提供することが、本発明のさらなる態様である。同時投与手順では、薬剤は、同時にまたは逐次的に投与されてもよい。一部の実施形態では、本明細書に記載のsHDLナノ粒子は、他の活性薬(複数可)の前に投与される。同時投与されるべき薬剤(複数可)は、処置される状態のタイプに依存する。
【0257】
本開示は、本明細書に記載されるようなsHDLナノ粒子を含む組成物または本明細書に記載されるようなsHDLナノ粒子を合成するために必要な成分を含むキットをさらに提供する。一部の実施形態では、本キットは、このようなsHDLナノ粒子を投与するために必要、十分または有用な構成成分の全てを含む。
【実施例
【0258】
次の実施例は、特定の好ましい実施形態及び本発明の態様を実証し、さらに例示するために提供され、その範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
実施例1.
本実施例は、生体高分子が充填されたsHDLの合成のための材料及び方法について記載する。
材料
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、及びローダミン(RHOD)標識DOPE(DOPE-RHOD)を全て、Avanti Polar Lipids(アラバマ州アラバスター)から購入した。ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート](DOPE-PDP)を、さらに合成した。使用されるHDL模倣ペプチド(22A;配列番号4)、SIINFEKL(配列番号341)、CSSSIINFEKL(配列番号342)、及びFITC標識CSSSIINFEK(FITC)Lを含む全てのペプチドを、Gen Scriptでカスタマイズした。オリゴデオキシヌクレオチドTLR9リガンドCpG1826(5’-tccatgacgttcctgacgtt-3’、小文字は、ホスホロチオエート骨格を表す)(配列番号343)及びコレステロール修飾CpG1826(5’-tccatgacgttcctgacgtt-3’-TEG-コレステロール)を、Intregrated DNA Technologiesに注文した。メタノール及びアセトニトリルなどのHPLCグレードの溶媒を、fisher scientificから購入した。ウシ胎児血清(FBS)、ペニシリン-ストレプトマイシン、β-メルカプトエタノール、及びACK溶解緩衝液を、Life Technologies(ニューヨーク州グランドアイランド)から購入した。顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)は、PeproTech(ニュージャージー州ロッキーヒル)の製品であった。ラット抗マウスCD16/32、CD86-PE、CD40-APC、SIINFEKL H-2K-PE及びMHCクラスII-FITCを、eBioscience(カルフォルニア州サンディエゴ)から入手した。ラット抗マウスCD8-APC、ハムスター抗マウスCD11c-PE、及びストレプトアビジン-Cy7を、BD Bioscience(カルフォルニア州サンノゼ)から入手した。iTAg tetramer/PE-H-2Kb OVA(SIINFEKL)を、Beckman Coulter(カルフォルニア州ブレア)から購入した。
ペプチド、核酸、または糖脂質が充填されたsHDLナノ粒子の調製。
【0259】
DMPC及びDOPE-PDP(重量比=4:0.25)を、クロロホルムに溶解した。混合物を、窒素気流で5分間乾燥し、次に、真空オーブン中に1時間置いた。得られた脂質フィルムを、10mMのリン酸ナトリウム緩衝液(0.3117g/LのNaHPO4・O及び2.0747g/LのNaHPO4・7HO)中で水和し、10分間、バスソニケーターで超音波処理し、続いて、さらに2.5分間プローブ音波処理した。エンドトキシンフリー水に溶解させた22Aのペプチドは、上記混合物(22A:脂質=1:2、重量比)に添加し、次に、これを、3分間加熱(50℃)して、3分間冷却し(氷水)、これを合計3サイクル行い、sHDLを得た。
【0260】
sHDLに腫瘍抗原ペプチドを充填するために、エンドトキシンフリー水に溶解させたシステイン末端腫瘍抗原ペプチドを、上記sHDLに添加し(抗原ペプチド:DOPE-PDP=2.5:1、モル比)、3時間オービタルシェーカーで穏やかに振盪しながら、室温でインキュベートした。未反応の腫瘍抗原ペプチドを、製造者の使用説明書に従って、MWCO=7000Daカットオフを有するZeba Spin Desaltingカラム(Pierce)を使用することにより除去した。腫瘍抗原ペプチドのコンジュゲーション効率を、HPLCで測定されたDOPE-PDPの減少に基づいて計算した。要約すると、200μlのsHDL製剤を、凍結乾燥させ、300μlのメタノール中で再構成した。この混合物を、220nmのPTFEフィルターで濾過した後、20μlを、Vydac 219TPジフェニルカラム(4.6mm×250mm内径)が装着されたShimadzu HPLCシステムに注入した。HPLC分析に使用した2つの溶媒は、水:トリフルオロ酢酸=100:0.5(移動相A)及びメタノール:アセトニトリル:トリフルオロ酢酸=50:50:0.05(移動相B)からなっていた。溶媒系の勾配プログラムでは、25%の移動相Bが、75分かけて直線的に100%のBに直線的に増加し、80分で25%のBまで直線的に減少し、次の分析の前に平衡化のために80~90分の間に25%に維持した。流速は、1mL/分であり、検出波長は、220nmであった。1%のTriton X-100含有PBS中で製剤を溶解した後、FITC標識ペプチドを使用し、Ex=490nm及びEm=520nmでsHDL製剤の蛍光強度を測定することにより、腫瘍抗原ペプチドの充填効率も決定した。
【0261】
CpGをsHDLに充填するために、異なる濃度のコレステロール修飾CpG(Cho-CpG)を、30分間オービタルシェーカー上で穏やかに振盪しながら、室温でsHDLと共にインキュベートした。sHDLに取り込まれたCpG及び遊離CpGの量を、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により分析した。要約すると、sHDL製剤を、PBSで0.5mg/mLの22Aペプチド濃度に希釈した。製剤を220nmフィルターで濾過した後、40μlのサンプルを、TSKgel G2000SWxlカラム(7.8mmID×30cm、Tosoh Bioscience LLC)が装着されたShimadzu HPLCシステムに注入した。移動相PBS(pH7.4)の流速を、0.7mL/分に設定し、検出波長を、CpGについて260nmに設定した。
【0262】
sHDLにα-ガラクトシルセラミド(aGC)を充填するために、sHDLを生成する凍結乾燥に基づく方法を開発した。要約すると、リン脂質、aGC、及びApoA模倣ペプチドを、氷酢酸に溶解させ、凍結乾燥させた。得られた粉末を、PBS(pH7.4)中で水和し、リン脂質の転移温度(Tm)を上回る温度及び下回る温度でサイクルし、aGC-sHDLを形成した。siRNAをsHDLに充填するための類似したプロトコールを利用した。コレステロール修飾PCSK9 siRNAを、室温で30分間ブランクsHDLと共にインキュベートして、PCSK9 siRNA-sHDLを形成した。sHDLのモルホロジー及びサイズの測定
sHDL製剤を、PBSで0.5mg/mLの22Aに希釈し、サイズを、動的光散乱(DLS、Zetasizer Nano ZSP、Malvern、英国)で測定した。元のサンプルを適切に希釈した後、透過型電子顕微鏡(TEM)により、sHDLのモルホロジーを観察した。
骨髄由来樹状細胞(BMDC)の調製
BMDCを、調製した。要約すると、マウスの大腿骨及び脛骨を、BMDC培養培地(10%のFBS、1%のペニシリン-ストレプトマイシン、50μMのβ-メルカプトエタノール、及び20ng/mlのGM-CSFを補充したRPMI 1640)で採取し、洗浄し、粉砕した。細胞懸濁液を細胞ストレーナ(メッシュサイズ=40μm)に通し、続いて、遠心分離することにより、細胞を収集した。細胞を、2×10細胞/mlの密度で、非組織培養物で処理したペトリ皿に播種し、37℃で5%のCOで培養した。培養培地を、3日目、6日目、及び8日目にリフレッシュし、BMDCを、8日目~12日目に使用した。
BMDC上の活性化マーカーの上方制御
未成熟BMDCを、使用の24時間前に、12ウェルプレートに、1×10細胞/ウェルで播種した。古い培地を、吸引し、24時間37℃で、0.5μg/mLの異なるCpG含有製剤または0.5μg/mLのLPS(陽性対照)と共にインキュベートする前に、BMDCをPBSで1回洗浄した。BMDCを採取し、FACS緩衝液(PBS中1%のBSA)で1回洗浄し、室温で10分間、抗CD16/32と共にインキュベートし、次に、室温で30分間、CD11c、CD40、CD80、CD86、及びMHCクラスIIに対する蛍光プローブ標識抗体で染色した。最終的に、細胞を、FACS緩衝液で2回洗浄し、2μg/mlのDAPI溶液に再懸濁し、フローサイトメトリー(Cyan
5、Beckman Coulter、米国)で分析した。
BMDCによる抗原提示
未成熟BMDCを、使用の24時間前に、12ウェルプレートに、1×10細胞/ウェルで播種した。古い培地を吸引し、BMDCをPBSで1回洗浄した後、異なる時間(2時間、6時間、24時間、及び48時間)、37℃、完全培地中で、0.5μg/mLのCpG及び/または0.5μg/mLの抗原ペプチド含有製剤と共にインキュベートした。BMDCを採取し、FACS緩衝液で1回洗浄し、室温で10分間抗CD16/32と共にインキュベートし、次に、室温で30分間、PEタグ化抗マウスSIINFEKLH-2Kモノクローナル抗体25-D1.16で染色した。最終的に、細胞を、FACS緩衝液で2回洗浄し、2μg/mlのDAPI溶液に再懸濁し、フローサイトメトリー(Cyan 5、Beckman Coulter、米国)で分析した。
CLSMを用いた、sHDLベースのペプチドワクチンの細胞内送達のイメージング
2mLの完全培地中の1×10細胞のJAWSII細胞を、同じ培地で予め平衡化している35mmのペトリ皿(MatTek)に播種し、一晩を沈殿させた。sHDL自体の細胞内送達プロファイルを知るため、DOPE-Rhodを使用して、sHDLの脂質を標識し、Texas Red(登録商標)-X、スクシンイミジルエステル(Life
Technologies)と共にsHDLをインキュベートすることにより、sHDLの22Aペプチドを標識し、続いて、未反応の染料を除去するために脱塩カラムを通過させた。これらの標識sHDLを、37℃で24時間、JAWSII細胞と共にインキュベートした。インキュベーション後、細胞をPBSで3回洗浄し、30分間37℃で、フェノール及び500nMのLysoTracker(登録商標)Green DND-26(Life Technologies)を含有する無血清培地及び2ug/mLのHoechstと共にインキュベートして、リソソーム及び核をそれぞれ染色し、その後、共焦点顕微鏡(Nikon A1)を使用してイメージングした。抗原ペプチドの細胞内送達プロファイルを知るために、遊離CSSSIINFEK(FITC)L+CpGまたはsHDL-CSSSIINFEK(FITC)L/CpGを、異なる時間(6時間、24時間、及び48時間)、JAWSII細胞と共にインキュベートした。インキュベーション後、細胞をPBSで3回洗浄し、30分間37℃で、フェノール及び50nMのLysoTracker(登録商標)Red DND-99(Life Technologies)を含有する無血清培地及び2ug/mLのHoechstと共にインキュベートして、リソソーム及び核をそれぞれ染色し、その後、共焦点顕微鏡(Nikon A1)を使用してイメージングした。
インビトロでのB3Z T細胞活性化
BMDCを、U底96ウェルプレートに、5×10細胞/ウェルで播種し、一晩成長させた。古い培地を吸引し、BMDCを、PBSで1回洗浄し、その後、37℃で、24時間または48時間、製剤を含有する異なる濃度(0.02、0.1、及び0.5μg/mL)のSIINFEKL及びCpGと共にインキュベートした。インキュベーション後、細胞をPBSで3回注意深く洗浄し、10×10個のB3Z T細胞/ウェルを添加し、10%のFBS、2mMのL-グルタミン、55μMのβ-メルカプトエタノール、1mMのピルベート、ならびに100U/mLのペニシリン及び100μg/mLのストレプトマイシンを補充したRPMI 1640中でさらに24時間共培養した。次に、細胞を遠心分離(1500rcf、7分)によりペレット化した。培地を注意深く吸引し、150μLのCPRG/溶解緩衝液(0.15mMのクロロフェノールレッドβ-D-ガラクトピラノシド(CPRG)、0.1%のTriton-X100、9mMのMgCl2、100uMのメルカプトエタノールを含むPBS)を添加した。プレートを、37℃、暗所で90分間インキュベートし、この後、プレートリーダーを使用して、放出されたクロロフェノールレッドの吸光度を570nmで測定した。
抗原ペプチドのリンパ節排出
sHDL-CSSSIINFEK(FITC)Lを、上記のように調製した。6~8週齢の雌C57BL/6マウスを、Harlan Laboratoriesから購入した。C57BL/6マウスに、フリーCSSSIINFEK(FITC)LまたはsHDL-CSSSIINFEK(FITC)Lを皮下注射した。注射の24時間後、マウスを二酸化炭素吸入により安楽死させ、腋窩リンパ節及び鼠径リンパ節を採取し、IVIS光学イメージングシステム(Caliper Lifesciences)でイメージングした。
インビボワクチン接種及びメラノーマ腫瘍成長の予防及び治療環境における細胞傷害性T細胞応答の分析
C57BL/6マウスに、所定のスケジュールに従って、尾の付け根で皮下注射によりSIINFEKL(15μg/マウス)及びCpG(15μg/マウス)を含有する異なる製剤を免疫した。腫瘍抗原特異的CD8+T細胞のパーセントを、テトラマー染色アッセイで、各ワクチン接種の7日後に測定した。簡単に言うと、100μlの血液を各マウスから採血することになり、血液サンプルを、ACK溶解緩衝液で溶解させ、続いて、遠心分離してペレットを収集し、次に、これらを、FACS緩衝液で1回洗浄し、CD16/32遮断抗体でブロッキングし、室温で30分間、PE標識SIINFEKLテトラマーをインキュベートした。次に、サンプルを、氷上で20分間、抗CD8-APCと共にインキュベートした。細胞を、フローサイトメトリー(Cyan 5、Beckman Coulter、米国)で分析するために、FACS緩衝液で2回洗浄し、2μg/mlのDAPI溶液に再懸濁した。T細胞応答の腫瘍成長に対する影響を検討するために、最後のテトラマー染色の1日後に、右脇腹に20万個のB16.OVA/マウスを皮下注射することにより、マウスに投与した。腫瘍の発達を1日おきにモニターし、腫瘍体積を、次式により計算した:腫瘍体積=長さ×幅×0.52。sHDLワクチン接種の、確立された腫瘍に対する影響を検討するために、C57BL/6マウスの右脇腹に、0日目に皮下注射により、20万個のB16.OVA/マウスを接種した。4日目及び11日目に、マウスに、腫瘍抗原ペプチド(15μg/マウス)及びCpG(15μg/マウス)を含有する異なる製剤を免疫した。腫瘍抗原特異的CD8+T細胞のパーセントを、上記のようにテトラマー染色アッセイで、10日目及び17日目に測定した。腫瘍堆積を、1日おきにモニターした。
aGC-CD1d提示アッセイ
JAWSII細胞を、12ウェルプレートに20万個/ウェルの密度で播種した。48時間後、2000ng/mLのaGCの異なる製剤を含有する新しい培地と、培地を交換した。製剤との20~24時間のインキュベーション後、トリプシン処理により細胞をFACSチューブに採取し、FACS緩衝液で2回洗浄し、次に、10分間室温で、CD16/32遮断試薬と共にインキュベートした。次に、細胞を、30分間室温で、抗マウスaGC-CD1d-PEと共にインキュベートし、FACS緩衝液で2回洗浄し、フローサイトメトリーのために、DAPIを含有する0.3mLのFACS緩衝液に懸濁した。PCSK9 siRNA充填sHDLの特性決定
sHDLに充填されるPCSK9 siRNA分子の量を定量化するために、種々の濃度のPCSK9 siRNAを、sHDLと共にインキュベートした。遊離形態に対する、sHDLと会合するPCSK9 siRNAの濃度は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を使用して260nmで測定されることになる。
HepG2細胞におけるPCSK9ノックダウン
PCSK9 siRNAの異なる製剤を、48時間、HepG2細胞と共にインキュベートした。インキュベーション後、細胞をPBSで2回洗浄し、細胞溶解物を調製した。PCSK9タンパク質レベルを、ウェスタンブロットアッセイで分析した。
sHDLの生体内分布
sHDLの生体内分布を試験するために、DiD充填sHDLを、C57BL/6マウスに静脈注射した。注射の24時間後に、マウスを、安楽死させ、IVIS光学イメージングシステムを使用して、主要器官(心臓、肝臓、脾臓、肺、及び腎臓)におけるsHDLの分布を分析した。
実施例II.
本実施例は、sHDLに組み込まれたPCSK9 siRNAが、肝臓に効率的に蓄積し、そのカーゴをSR-BI陽性細胞に送達し、HepG2細胞中のPCSK9をノックダウンすることができることを実証する。均質なsHDLナノ粒子の調製のための迅速で安価な凍結乾燥方法を実施した。sHDLの均質性を、透過型電子顕微鏡(TEM)、動的レーザー散乱(DLS)、及びゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で確認した(図1A)。sHDLを蛍光色素DiRで標識し、マウスに静脈内注射し、DiRシグナルの大部分を肝臓で検出し、他の器官では、シグナルをほとんどまたは全く検出しなかった(図1B)。sHDLはまた、蛍光色素DiOを、SR-BI陰性細胞(BHK-ベクター)でなく、SR-BI陽性細胞(BHK-SR-BI)に効率的に送達し、SR-BI陽性細胞による取り込みは、過剰なブランクsHDLにより遮断された(図1C)。さらに、予備データは、コレステロール修飾PCSK9 siRNA(PCSK9 Cho-siRNA)が、sHDLに定量的に取り込むことができることを示した。フリーPCSK9 Cho-siRNAが、コレステロールコンジュゲーションにより誘導されたsiRNAの取り込みの増加に起因して、HepG2細胞のPCSK9をノックダウンすることができるが、PCSK9 siRNA-sHDLは依然として十分に、インビトロでHepG2細胞のPCSK9タンパク質をノックダウンすることができる(図1D~F)。
実施例III.
本実施例は、抗原及びアジュバントのsHDLによる共局在送達が、強力な免疫応答をもたらすことを実証する。図4Aは、抗原及びアジュバント充填sHDLの概略図を示す。MHCクラスI抗原ペプチド(卵白アルブミン由来するCD8+T細胞エピトープペプチドSIINFEKL)を、機能性脂質含有sHDLと共にインキュベートした場合、機能性脂質の消失及び脂質-ペプチドコンジュゲートの出現により見ることができるように、抗原ペプチドを、sHDLの機能性脂質に定量的にコンジュゲートした(図2B)。コレステロール修飾CpG(Cho-CpG)が、sHDLに定量的に組み込まれることも示された(図2C)。1回の一次投与及び2回のブースター投与後、抗原及びCpG充填sHDL(sHDL-Ag/CpG)は、Montanide中の抗原とCpGとの混合物よりも強力な免疫応答を誘発した(CpG+Montanideは、臨床評価を受けている現在最も強力な実験的アジュバントの1つである)(図2D)。
【0263】
図3は、sHDL-CSSSIINFEK(FITC)L/CpGの合成の概略図を示す。
【0264】
図4は、cryoEM及び動的光散乱で分析したsHDL-Ag/CpGの均質な粒径を示す。
【0265】
図5A及び5Bは、遊離抗原形態と比較して、sHDLによる抗原送達が、樹状細胞による抗原提示を有意に長期化させることを示す。
【0266】
図6は、sHDL-Ag/CpGが、従来のアジュバントと混合した遊離抗原を用いたワクチン接種と比較して、抗原特異的CD8+T細胞の誘発を有意に増強することを示す。
【0267】
図7は、sHDL-Ag/CpGワクチン接種が、担腫瘍マウスにおいて強いCD8+T細胞応答を誘発し、腫瘍成長を低減させることを示す。
実施例IV.
本実施例は、sHDLが、CD1-dに対する糖脂質リガンドであるα-ガラクトシルセラミドを送達して、ナチュラルキラーT細胞の誘導を活性化することを実証する。
【0268】
図8は、遊離可溶性形態と比較して、sHDLを介して送達されたα-GalCerが、抗原提示細胞上のCD1d提示を有意に増強したことを示す。
【0269】
図9は、凍結乾燥が、α-GalCerが充填されたsHDLの大規模合成の便利な方法を提供することを示す。
実施例V.
本実施例は、予め形成された高密度リポタンパク質模倣ナノディスクが抗原(Ag)ペプチド及びアジュバントと容易に結合し、リンパ器官へのAg/アジュバントの同時送達を顕著に改善し、樹状細胞上で持続したAg提示を達成する安定な超小型ナノ粒子を産生することができることを実証する。
【0270】
ナノディスク形成を引き起こす脂質及びペプチドを、最初に同定した。DMPC脂質膜を水和し、一連のApoA-I模倣ペプチドを添加し、続いて、50℃~4℃で熱サイクルした。4℃で保存した場合1ヶ月間安定である透明なsHDL懸濁液を生成した22A及び22AのD-アミノ酸を含むペプチドのサブセットを同定した(図13a)。加えて、転移温度(Tm)がRTより低いリン脂質(例えば、それぞれ、Tm=-2℃及び-17℃のPOPC及びDOPC)の使用により、濁ったリポソーム懸濁液を生成したが、Tmが高い脂質(例えば、それぞれ、Tm=41℃及び24℃のDPPC及びDMPC)は、22Aの存在下で透明なsHDL懸濁液を形成して(図13b)、材料デザインにおける柔軟性を示した。それらのサイズ、均質性、及び長期安定性に基づいて、ナノディスクワクチンの主要構成成分である22A及びDMPCを、さらなる調査のために選択した。
【0271】
sHDL上でAgの還元感受性コンジュゲーションを介してAPC内でAgの細胞内放出を達成するために、ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート](PDP、図14)を合成し、sHDL(4mol%)にPDPを組み込んだ。システイン-セリン-セリン(CSS)リンカーにより修飾されたAgペプチドと共に、30分間室温でインキュベートした場合(例えば、Hirosue,S.,et al.,Vaccine 28,7897-7906(2010)を参照のこと)、sHDLナノディスクを、種々のAgペプチド(例えば、OVA257-264、オボアルブミンのモデルCD8α+T細胞エピトープAg;gp10025-33、メラノーマ関連Ag;及びAdgpk、MC-38中のネオアンチゲン)で効率的に表面修飾し、続いて30分間室温でCho-CpGとインキュベートして、CpGのsHDLへのほぼ完全な(約98%)の挿入をもたらし、Ag及びCpGが同時充填されたナノディスクを生成した(sHDL-Ag/CpGと呼ばれ、1ナノディスク毎に約6.5のAgペプチド及び約1のCpG分子を有する、図15;表3)。sHDL-Ag/CpGは、平均直径10.5±0.5nm及び多分散指数0.20±0.02を有する均一な円盤状モルホロジーを示した(図16a及び16b)。重要なことに、sHDL-Ag/CpGは、容易に無菌濾過し、均質性に悪影響を及ぼさずに、-20℃で少なくとも8週間凍結保存した後に37℃で解凍することができた(図16c)。
【0272】
【表3】
【0273】
次に、ナノディスクのAg提示への影響を検討した。24時間、sHDL-CSSSIINFEKL/CpGをパルスした骨髄由来樹状細胞(BMDC)は、SIINFEKL-H-2K複合体に対する25-D1.16 mAbでDCを染色することにより測定される場合、CpGまたはsHDL-CSSSIINFEKLと混合された遊離Agペプチドで処置されたBMDCよりも効率的にOVA257-264SIINFEKLを提示した(図16d;17a及び17b)。興味深いことに、遊離SIINFEKL+CpGをパルスされたDCは、インキュベーションの最初の6時間でAgを効率的に提示したが、Ag提示は6時間を過ぎて急激に減少し(図16e及び16f;図17c)、MHC-I分子への初期の直接的なAg結合、続く、急速なAgの分解または解離が示唆される。対照的に、遊離SIINFEKL+CpGと比較して、sHDL-Ag/CpGを用いたAg提示は、経時的に徐々に増加し、24時間において約9倍高いレベルを達成し、48時間においても約4倍高いレベルを維持した。
【0274】
Ag提示の長期化を狙って、CSS-SIINFEK(FITC)Lを使用したナノディスクの取り込み及びAgの局在のプロセスを調査した;リシン残基のε-アミノ基がFITCにより修飾されたSIINFEKLは、H-2K分子への結合能力を保持することが知られている(例えば、Saini,S.K.et al.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.110,15383-15388(2013)を参照のこと)。遊離Ag(FITC)+CpGと共にインキュベートしたJAWSII細胞(不死化未成熟DC)は、6時間で原形質膜に弱い蛍光シグナルを示し、暗い蛍光のみが24時間までに観察された(図16g;図18)。著しく対照的に、sHDL-Ag(FITC)/CpG処置は、6時間までにエンドソーム/リソソームと共に共局在した強いFITCシグナルをもたらし、強力なAg(FITC)シグナルを、24時間までに細胞膜上で検出し、48時間まで持続した。加えて、Rh-PEまたはTexas Red-labeled-22Aを含有するナノディスクを、エンドソーム/リソソーム内で主に検出して、インタクトなナノディスク全体の細胞取り込みを示した(図19)。Ag提示の長期化のT細胞クロスプライミングへの影響を評価するために、BMDCを、24時間または48時間、遊離Agペプチド+CpGまたはsHDL-Ag/CpGで処置し、次に、SIINFEKL特異的なH-2K拘束性B3Z T細胞ハイブリドーマを添加した。sHDL-Ag/CpGがパルスされたBMDCは、48時間のインキュベーション後であっても強いB3Z T細胞活性化を促進したが、遊離Agペプチド+CpGは、24時間の期間を超えて、最小のB3Z T細胞活性化を誘導した(図16h)。さらに、sHDL-Ag/CpGは、DC成熟を強力に刺激した(図20)。全体として、遊離Agペプチドが、急速に充填されて、細胞膜上のMHC-I分子から解離したが、ナノディスクは、Ag/CpGの細胞内送達を促進し、エンドソーム/リソソーム内の持続放出を媒介し、それにより、持続的なAg提示、APCの成熟、及びインビトロでのCD8α+T-cellsのクロスプライミングを促進した。
【0275】
次に、ナノディスクの、インビボでのAg/CpGのリンパ送達及びCTL応答の誘導に対する影響(例えば、Reddy,S.T.et al.Nat.Biotechnol.25,1159-1164(2007)を参照のこと)を調査した。31nmolの遊離CSS-SIINFEK(FITC)Lを尾の付け根で皮下注射したC57BL/6マウスは、小さなMWのAgペプチドの全身播種、または注射部位での非APC上の直接的なAg結合に潜在的に起因して(例えば、Melief,C.J.& van der
Burg,S.H.Nat.Rev.Cancer 8,351-360(2008))を参照のこと)、1日後の鼠径dLNにおいて最小のFITCシグナルを有した(例えば、図21aを参照のこと)。対照的に、sHDL-Ag群は、dLNにおいてFITCシグナルの顕著な増加を示し(p<0.01、図21a)、Ag(FITC)及びCy5-タグ化22Aは、dLN内に共局在した(図22)。同様に、2.3nmolのCy5タグ化Cho-CpGのsHDLへの注射は、遊離可溶形態の注射と比較して、LN蓄積を増加させた(p<0.01、図21b)。これらの結果は、sHDLナノディスクが、Ag及びCpGのdLNへの同時送達を促進することを示した。次に、C57BL/6マウスに、15.5nmolのAg及び2.3nmolのCpG(非フルオロフォアタグ化)を免疫し、末梢血単核細胞(PBMC)を、SIINFEKL-MHC-Iテトラマー+CD8α+T細胞の頻度について分析した。遊離Agペプチド(SIINFEKLまたはCSS-SIINFEKL)とCpGとの混合物は、3回目の免疫化後に、1~3%のAg特異的CTLを誘導した(図21c及び21d)。ベンチマークとして、油中水型Montanide中に乳化した等価用量のAg及びCpGを有する動物にもワクチン接種した(例えば、Speiser,D.E.et al.J.Clin.Invest.115,739-746(2005);Fourcade,J.et al.J.Immunother.31,781-791(2008)を参照のこと)。Ag+CpG+Montanideは、プライミング後に、約2%のAg特異的CTLを誘発したが、3回目の免疫化後であっても、さらなるT細胞拡大は観察されず、デポー形成油中水型アジュバントでの反復免疫化後の高アビディティーT細胞の機能不全及び欠損を報告した最近の試験と一致していた(例えば、Rezvani,K.et al.Haematologica 96,432-440(2011);Hailemichael,Y.et al.Nat.Med.19,465-472(2013)を参照のこと)。著しく対照的に、sHDL-Ag/CpG群は、3回目のワクチン接種後に、ピーク頻度の約21%のAg特異的CD8α+T細胞を誘発した(可溶性SIINFEKL+CpGよりも29倍大きく、Ag+CpG+Montanideよりも9倍大きい、P<0.0001、図21c及び21d)。2×10個のB16OVA細胞を投与した場合、sHDL-Ag/CpGを免疫したマウスは、28日までは検出可能な腫瘍塊を有さず、動物の40%が200日を超えて生き残ったが、遊離Agペプチド+CpGまたはAg+CpG+Montanideを免疫したマウスは全て、腫瘍で死亡し、延命効果は最低であった(図21e及び2f)。重要なことに、このような実験を通じて、sHDL-Ag/CpGを複数回免疫した動物において毒性または自己免疫の兆候は観察されなかった。
【0276】
インビボでsHDL-Ag/CpGから解離したCSS修飾ペプチドまたはCho-CpGが強力なCTL応答に関与していた可能性を除外するために実験を行った。CSSリンカーをSIINFEKLに導入し、遊離CpGを遊離可溶性形態のCho-CpGと交換することは、最小のT細胞応答をもたらし、Agと、CpGと、sHDLとの物理的混合物は、弱いCTL応答も誘発した(図21g)。対照的に、sHDL-Ag/CpGナノディスクは、CTL応答を大幅に改善して、CSSSINFEKL+Cho-CpG群よりも顕著な41倍大きい頻度のAg特異的CD8α+T細胞を誘発し(35日目、p<0.0001、図21g)、CTLは主に、CD44highCD62Llowエフェクター表現型及び強力なIFN-γELISPOT応答を示した(図21h;図23)。
【0277】
担腫瘍マウスにおけるsHDLの抗腫瘍効果を評価した。B16OVAメラノーマを持つマウスにおける治療的sHDLワクチン接種は、強力なAg特異的CTL応答をもたらし、腫瘍成長が著しく減速し、かつ動物の生存が延長された(図24)。次に、より臨床的に関連性の高いモデルとして非免疫原性B16F10メラノーマを使用して、ナノディスクワクチンを試験した。gp10025-33をCho-CpGと共にナノディスクに組み込むことを確認した後(図15;表3)、マウスを、B16F10細胞の皮下接種の4日後及び11日後に、15.5nmolのAg及び2.3nmolのCpGで処置した。sHDL-gp100/CpGを用いるワクチン接種は、強力なCTL応答を誘発し、遊離gp100+CpGよりも22倍高い頻度のgp100特異的CTLを生じ(17日目、p<0.0001、図25a;図26)、効果のない遊離gp100+CpG群と比較して、腫瘍成長の有意な遅延及び動物の生存の長期化をもたらした(図25b及び25c)。
【0278】
最終的に、ネオアンチゲンに対するワクチン接種のためのプラットフォーム技術の有用性を実証するために、最近Adpgkタンパク質内に単一エピトープ変異
【0279】
【化1】
【0280】
を有することが報告されたマウスMC-38結腸癌腫モデルを用い、ネオエピトープが、MHC-I H-2D分子に提示された(例えば、Yadav,M.et al.Nature 515,572-576(2014)を参照のこと)。MC-38細胞におけるAdpgkネオアンチゲン変異を、cDNAシークエンシングで確認し(図25d;図27)、CSS-リンカー及びCho-CpGにより修飾されたネオエピトープとナノディスクとを混合することによりsHDL-Adpgk/CpGを合成した。C57BL/6マウスに、10個のMC-38細胞を皮下接種し、15.5nmolのAdpgk変異ペプチド及び2.3nmolのCpGで処置した。遊離Adpgk Ag+CpGで処置したマウスは、非免疫化MC-38保有マウスと同様のレベルのAdpgk特異的CD8α+T細胞を有したが、sHDL-Adpgk/CpGはCTL応答を著しく増強した(23日目、p<0.001、図25e)。加えて、sHDL-Adpgk/CpGは、多官能性IFN-γ及びIFN-γTNF-αAdpgk特異的CD8α+T細胞を誘導した(それぞれ遊離Adpgk+CpG群よりも2.5倍及び7倍大きく、p<0.05及びp<0.001、図25f)。重要なことに、sHDL-Adpgk/CpGでの治療処置は、腫瘍成長または生存に統計学的に有意な効果を及ぼさない従来の可溶性Adpgk+CpGワクチンとは対照的に、MC-38腫瘍成長を実質的に減速させ、動物の生存を延長させた(中央生存率:それぞれ、54日対33日、p<0.01、図25g及び図25h)。
実施例VI.
本実施例は、実施例Vの材料及び方法に関する。
材料
1,2-ジミリストイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DMPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、及びローダミン(RHOD)標識DOPE(DOPE-RHOD)を、Avanti Polar Lipids(アラバマ州アラバスター)から購入した。ApoA1模倣ペプチド(22A)、OVA257-264 SIINFEKL、CSSSIINFEKL、CSSSIINFEK(FITC)L、hgp10025-33KVPRNQDWL、CSSSKVPRNQDWL、及びAdpgk変異体ペプチドASMTNMELMは、GenScript Corp.(ニュージャージー州ピスカタウェイ)により合成された。CSSASMENMELMは、AnaSpec(カリフォルニア州フリーモント)により合成された。オリゴデオキシヌクレオチドTLR9リガンドCpG 1826(5’-tccatgacgttcctgacgtt-3’、小文字は、ホスホロチオエート骨格を表す)、3’末端でコレステロールにより修飾されたCpG1826(Cho-CpG)、及びCy5修飾Cho-CpGは、Integrated DNA Technologies(アイオワ州コーラルビル)により合成された。HPLCグレードのメタノール及びアセトニトリルを、Fisher Scientific(ペンシルベニア州ピッツバーグ)から購入した。ウシ胎児血清(FBS)、ペニシリン-ストレプトマイシン、β-メルカプトエタノール、及びACK溶解緩衝液を、Life Technologies(ニューヨーク州グランドアイランド)から購入した。顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)は、GenScript Corp.(ニュージャージー州ピスカタウェイ)から入手した。抗マウスCD16/32、CD86-PE、CD40-APC、CD62L-PECy7、及びSIINFEKL/H-2Kに対する25-D1.16 mAb-PEは、eBioscience(カルフォルニア州サンディエゴ)から入手した。抗マウスCD8α-APC、CD44-FITC、TNF-α-FITC、IFN-γ-PE、及びCD11c-PECy7は、BD Bioscience(カルフォルニア州サンノゼ)から入手した。Tetramer H-2K-SIINFEKL-PE及びTetramer H-2D-KVPRNQDWL-PEを、Beckman Coulter(カルフォルニア州ブレア)から購入した。テトラマー/H-2D-ASMTNMELM-PEは、NIH Tetramer Core Facility(ジョージア州アトランタ)により厚意で提供された。B3Z CD8α+T細胞ハイブリドーマをN.Shastri博士(University of California, Berkeley)から、B16OVAをKenneth Rock博士(University of Massachusetts、マサチューセッツ州アマースト)から;MC-38細胞を、Weiping Zou博士(University of Michigan、ミシガン州アナーバー)から入手した。
方法
DOPE-PDPの合成及び特性決定
ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-N-[3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート](DOPE-PDP)を、わずかに改変して以前に報告されたように合成した(例えば、Kuai,R.,et al.Mol.Pharm.7,1816-1826(2010)を参照のこと)。要約すると、DOPE、SPDP(スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート)及びトリエチルアミン(1:1:1.5モル比)をクロロホルムに溶解した。混合物を暗所で5時間反応させた。反応の進行は、展開溶媒として次の混合物を使用した薄層クロマトグラフィー(TLC)でモニターした:クロロホルム/メタノール/水=65/25/4(体積比)。TLCが、出発物質の消失及びより速いランニングスポットの出現を示した後、反応混合物をロータリーエバポレーションで乾燥させ、シリカゲルカラムで精製した。
抗原ペプチド及びCpGが同時充填されたsHDLの合成
DMPCとDOPE-PDP(モル比=96:4)をクロロホルムに溶解させた。混合物を窒素気流で乾燥させ、少なくとも1時間真空下に定置した。得られた脂質フィルムを、10mMのリン酸ナトリウム緩衝液(0.3117g/LのNaHPO4・O及び2.0747g/LのNaHPO4・7HO、pH7.4)で水和し、10分間、バスソニケーター中で超音波処理し、続いて、さらに2.5分間プローブ音波処理した。エンドトキシンフリー水に溶解させたApoA1模倣ペプチド22Aは、上記混合物(22A:脂質=1:7.5、モル比)に添加し、次に、これを、3分間加熱して(50℃)、3分間冷却(氷水)し、これを合計3サイクル行い、sHDLを得た。
【0281】
腫瘍抗原ペプチドをsHDLにコンジュゲートするために、エンドトキシンフリー水に溶解させたシステイン末端腫瘍抗原ペプチドを、上記sHDLに添加し(抗原ペプチド:DOPE-PDP=2.5:1、モル比)、オービタルシェーカーで穏やかに振盪しながら、室温でインキュベートした。未反応の腫瘍抗原ペプチドを、製造者の使用説明書に従って、Zeba Spin Desaltingカラム(Pierce)を使用することにより除去した。腫瘍抗原ペプチドのコンジュゲーション効率は、HPLCで測定した場合、DOPE-PDPに関連する吸光度シグナルの減少に基づいて計算した。要約すると、200μlのsHDL製剤を、凍結乾燥させ、300μlのメタノール中で再構成した。混合物は、0.22μmのPTFEフィルターで濾過し、Vydac 219TPジフェニルカラム(4.6mm×250mm ID)を使用したShimadzu HPLCシステムで分析した。HPLC分析に使用した2つの溶媒は、水:トリフルオロ酢酸=100:0.5(移動相A)及びメタノール:アセトニトリル:トリフルオロ酢酸=50:50:0.05(移動相B)(0~75分、15~100%)からなっていた。流速は、0.4mL/分であり、検出波長は、220nmであった。1%Triton X-100含有PBS中で製剤を溶解した後、FITC標識ペプチドを使用し、Ex=490nm及びEm=520nmでsHDL製剤の蛍光強度を測定することにより、sHDLにおける腫瘍抗原ペプチドの充填効率を確認した。
【0282】
sHDLにCpGを充填するために、異なる濃度(0~200μg/mL)のコレステロール修飾CpG(Cho-CpG)を、オービタルシェーカーで穏やかに振盪しながら、室温でsHDLと共にインキュベートした。sHDLに取り込まれたCpG及び遊離CpGの量を、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により分析した。要約すると、sHDL製剤をPBS中で0.5mg/mLの22Aペプチド濃度に希釈した。製剤は、0.22μmのフィルターを通して濾過し、TSKgel G2000SWxlカラム(7.8mm内径×30cm、Tosoh Bioscience LLC)が装着されたShimadzu HPLCシステムで分析した。移動相PBS(pH7.4)の流速は、0.7mL/分に設定し、検出波長は、CpGの場合、260nmに設定した。
ペプチド/CpG充填sHDL製剤の特性決定
sHDL製剤を、PBSで0.5mg/mLの22Aに希釈し、粒径を、動的光散乱(DLS、Zetasizer Nano ZSP、Malvern、英国)で測定した。元のサンプルを適切に希釈した後、透過型電子顕微鏡(TEM)により、sHDLのモルホロジーを観察した。要約すると、3μLのサンプル溶液を、カーボンフィルムで被覆された400メッシュ銅グリッド(Electron Microscopy Sciences)上に堆積させ、1分間乾燥させた。次に、サンプルを、1%酢酸ウラニル溶液5滴を用いて陰性染色し、グリッド上の過剰な溶液を拭い、グリッドをTEM観察の前に乾燥させた。全てのイメージを、AMT XR-60デジタルカメラ(Advanced Microscopy Techniques Corp.、マサチューセッツ州ウォーバーン)が装着されたJEM 1200EX電子顕微鏡(JEOL USA、マサチューセッツ州ウォーバーン)で取得した。
BMDCの調製
BMDCを、以前に記載したように調製した(例えば、Lutz,M.B.,et al.J.Immunol.Methods 223,77-92(1999)を参照のこと)。要約すると、大腿骨及び脛骨をC57BL/6マウスから無菌採取し、BMDC培地(10%のFBS、100U/mLのペニシリン、100μg/mlのストレプトマイシン、50μMのβ-メルカプトエタノール、及び20ng/mlのGM-CSFを補充したRPMI 1640)を装填した5mLの注射器(26G針)を使用して、骨髄をペトリ皿に洗い流した。細胞懸濁液を細胞ストレーナ(メッシュサイズ=40μm)に通し、続いて、遠心分離することにより、細胞を収集した。細胞を、2×10細胞/mlの密度で、非組織培養物で処理したペトリ皿に播種し、37℃、5%のCOで培養した。培地を、3日目、6日目、8日目、及び10日目にリフレッシュし、BMDCを、8~12日目の次のアッセイに使用した。
BMDCの活性化
未成熟BMDCを、12ウェルプレートに、1×10細胞/ウェルで播種した。24時間後、BMDCをPBSで1回洗浄し、24時間37℃、5%COで、異なる処方の75nMのCpGまたは0.5μg/mLのLPS(陽性対照)と共にインキュベートした。BMDCを採取し、FACS緩衝液(PBS中1%BSA)で洗浄し、室温で少なくとも10分間、抗CD16/32と共にインキュベートし、次に、室温で30分間、CD11c、CD40、CD80、及びCD86に対するフルオロフォア標識抗体で染色した。最終的に、細胞を、FACS緩衝液で2回洗浄し、2μg/mlのDAPI溶液に再懸濁し、フローサイトメトリー(Cyan 5、Beckman Coulter、米国)で分析した。
BMDC上の抗原提示
未成熟BMDCを、使用の24時間前に、12ウェルプレートに、1×10細胞/ウェルで播種した。BMDCを、PBSで洗浄し、完全培地中で異なる時間(2時間、6時間、24時間、及び48時間)、種々の処方の75nMのCpG及び/または500nMの抗原ペプチドと共にインキュベートした。次に、BMDCを採取し、FACS緩衝液で洗浄し、室温で少なくとも10分間、抗CD16/32と共にインキュベートし、室温で30分間、PEコンジュゲート抗マウスSIINFEKL/H-2K mAb 25-D1.16で染色した。次に、細胞を洗浄し、2μg/mlのDAPI溶液に再懸濁し、フローサイトメトリー(Cyan 5、Beckman Coulter、米国)で分析した。
sHDLの細胞内輸送の共焦点顕微鏡イメージング
JAWSII細胞(ATCC、バージニア州マナッサス)を、完全細胞培地で予め平衡化されている35mmのペトリ皿(MatTek Corp.、マサチューセッツ州アシュランド)に1×10細胞で播種し、一晩培養した。抗原ペプチドの細胞内送達プロファイルを調査するために、JAWSII細胞を、異なる時間(6時間、24時間、及び48時間)、遊離CSSSIINFEK(FITC)LとCpGまたはsHDL-CSSSIINFEK(FITC)L/CpGとの物理的混合物と共にインキュベートした。次に、細胞をPBSで3回洗浄し、フェノール/無血清培地中で、50nMのLysoTracker(登録商標)Red DND-99(Invitrogen)及び2μg/mLのHoechstと共に30分間37℃でインキュベートして、それぞれ、リソソーム及び核を染色した。並行して、sHDLの構造構成要素の細胞内送達プロファイルを試験するために、0.5モル%のDOPE-Rhodを最初の脂質フィルムに添加することにより、sHDLの脂質層をDOPE-Rhod共に組み込む一方、予め形成したsHDLをTexas Red(登録商標)-Xスクシンイミジルエステル(Life Technologies)と共にインキュベートし、Texas Red標識sHDLを脱塩カラムに通過させて、未反応染料を除去することにより、sHDLの22Aペプチドを標識した。得られたフルオロフォアタグ化sHDL製剤を、37℃、5%COで、JAWSII細胞と共にインキュベートした。24時間のインキュベーション後、細胞をPBSで3回洗浄し、次に、フェノール/無血清培地中で、500nMのLysoTracker(登録商標)Green DND-26(Invitrogen)及び2μg/mLのHoechstと共に30分間37℃でインキュベートして、それぞれ、リソソーム及び核を染色した。次に、共焦点顕微鏡(Nikon A1)を使用して、JAWSII細胞をイメージングした。
B3Z CD8+Tハイブリドーマ細胞のsHDLを用いた活性化
BMDCを、U底96ウェルプレートに5×10細胞/ウェルで播種した。一晩培養後、BMDCをPBSで洗浄し、24時間または48時間37℃で、異なる処方のSIINFEKL(20、100、及び500nM)ならびにCpG(3、15、及び75nM)と共にインキュベートした。次に、細胞を、PBSで3回注意深く洗浄し、10個のB3Z CD8+Tハイブリドーマ細胞/ウェルを、10%のFBS、2mMのL-グルタミン、55μMのβ-メルカプトエタノール、1mMのピルベート、ならびに100U/mLのペニシリン及び100μg/mLのストレプトマイシンを補充したRPMI 1640に添加した。24時間のインキュベーション後、細胞を遠心分離でペレット化し(1500rcf、7分)、培地を注意深く吸引し、150μLのCPRG/溶解緩衝液(0.15mMのクロロフェノールレッドβ-D-ガラクトピラノシド(CPRG)、0.1%のTriton-X100、9mMのMgCl2、100uMのメルカプトエタノールのPBS)を添加した。プレートを、37℃、暗所で90分間、インキュベートし、この後、マイクロプレートリーダーを使用して、放出されたクロロフェノールレッドの吸光度を、570nmで測定した。
インビボ免疫試験
動物は、連邦、州、及びローカルのガイドラインに従いケアした。動物に実施した全ての試験は、University of Michigan,Ann ArborでのUniversity Committee on Use and Care of Animals(UCUCA)に従い、承認された。6~8週齢の雌C57BL/6マウス(Harlan Laboratories)に、抗原ペプチド(15.5nmol/マウス)及びCpG(2.3nmol/マウス)を含有する100μlの容量の異なる製剤を、示された時点で尾の付け根に皮下注射することにより、免疫した。一部の試験では、Montanide中で乳化された抗原ペプチド及びCpGは、陽性対照として役立った(例えば、Speiser,D.E.,et al.J.Clin.Invest.115,739-746(2005);Fourcade,J.,et al.J.Immunother.31,781-791(2008);Karbach,J.,et al.Int.J.Cancer 126,909-918(2010)を参照のこと)。要約すると、抗原ペプチド(155nmol)及びCpG(23nmol)の0.5mLのPBSを、混合物が均質になるまで、0.5mLのMontanide中で完全に乳化させた。
【0283】
リンパ節排出試験では、C57BL/6マウスに、遊離CSSSIINFEK(FITC)L、sHDL-CSSSIINFEK(FITC)L、遊離Cho-CpG(Cy5)、またはsHDL-Cho-CpG(Cy5)を注射した。24時間後、鼠径リンパ節を採取し、FITCまたはCy5蛍光シグナルを、IVIS光学イメージングシステム(Caliper Life Sciences)で測定した。
【0284】
予防的腫瘍投与試験では、ワクチン接種した動物に、最後の免疫化後8日目に、右脇腹で2×10個のB16OVA細胞/マウスを皮下注射することにより、投与した。腫瘍成長を1日おきにモニターし、この試験を通して、腫瘍体積を、次式で計算した(例えば、Gorrin-Rivas,M.J.,et al.Clin.Cancer Res.6,1647-1654(2000)を参照のこと):腫瘍体積=長さ×幅×0.52。腫瘍塊が直径1.5cmに到達した時、または動物が重度の体重減少もしくは潰瘍で瀕死状態になった時、動物を安楽死させた。
【0285】
治療腫瘍ワクチン接種試験では、C57BL/6マウスに、0日目の皮下注射により、右脇腹に、腫瘍細胞(マウス1匹につき2×10個のB16OVA細胞、2×10個のB16F10細胞、または1×10個のMC38細胞)を接種した。B16OVA及びB16F10試験では、マウスに、15.5nmolの腫瘍抗原ペプチド(それぞれ、SIINFEKL及びhgp100)ならびに2.3nmolのCpGを含有する異なる製剤を、4日目及び11日目にワクチン接種した。MC-38試験では、マウスに、sHDL形態または遊離可溶性形態のいずれかの15.5nmolのASMTNMELM及び2.3nmolのCpGを、10日目、17日目、及び24日目にワクチン接種した。腫瘍成長を、上記のようにモニターした。
ペプチド-MHCテトラマーアッセイ
免疫化マウスを、以前に記載したように(例えば、Ochyl,L.J.& Moon,J.J.J.Vis.Exp.e52771(2015)を参照のこと)、テトラマー染色アッセイを使用して、末梢血単核細胞(PBMC)の中の腫瘍抗原特異的CD8α+T細胞のパーセンテージについて分析した。簡単に言うと、100μlの血液を、顎下出血により示された時点で各マウスから採血し、赤血球をACK溶解緩衝液で溶解させた。次に、PBMCをFACS緩衝液で洗浄し、抗CD16/32抗体でブロックし、30分間室温で、PEでタグ化したペプチド-MHCテトラマー(例えば、H-2K拘束性SIINFEKL、H-2D拘束性KVPRNQDWL、またはH-2D拘束性ASMTNMELM)と共にインキュベートした。次に、サンプルを、20分間氷上で抗CD8α-APCと共にインキュベートした。細胞を、フローサイトメトリー(Cyan 5、Beckman Coulter、米国)で分析するために、FACS緩衝液で2回洗浄し、2μg/mlのDAPI溶液に再懸濁した。
ELISPOT及び細胞内サイトカイン染色アッセイ
ELISPOTアッセイのために、免疫化マウス由来の脾臓を無菌採取し、各マウスのための単一細胞懸濁液に加工し、IFN-γコーティングAb(R&D Systems)と共に一晩プレインキュベートした96ウェルPVDFプレート(EMD Millipore)に1ウェル毎に3×10個の脾細胞で播種した。脾細胞を、24時間、抗原ペプチド(2.5μg/ml)または対照と共にインキュベートした。ビオチン化二次Ab、ストレプトアビジン-アルカリホスファターゼ(Sigma Chemical)、及びNBT/BCIP基質(Surmodics)を用いた連続インキュベーションを使用して、アッセイを完了した。AID iSpot Reader(Autoimmun
Diagnostika GmbH、独国)を使用して、発現したスポットの数を数えた。細胞内サイトカイン染色(ICS)アッセイでは、ワクチン接種したマウスから収集した100~150μL末梢血を、ACK溶解緩衝液で溶解し、PBSで洗浄し、96ウェルU底プレート中の50μLのT細胞培地(10%のFBS、2mMのL-グルタミン、55μMのβ-メルカプトエタノール、1mMのピルベート、ならびに100U/mLのペニシリン及び100μg/mLストレプトマイシン、HEPES、ならびに非必須アミノ酸を補充したRPMI 1640)に、約1000万細胞/mLで播種した。細胞に、10μg/mLの抗原ペプチドを6時間パルスし、タンパク質輸送阻害薬ブレフェルジンA(BD Biosciences)を最後の4時間のインキュベーション中に添加した。次に、細胞を氷冷FACS緩衝液(PBS中1%のBSA)で2回洗浄し、続いて、氷上で、少なくとも10分間、抗CD16/32と共に、かつ氷上で、20分間、抗CD8αと共にインキュベートした。次に、細胞を氷上で20分間固定/透過処理し、次に、氷上で30分間、抗IFN-γ-PE及び抗TNF-α-FITCで染色した。広範に洗浄した後、細胞をフローサイトメトリーで分析した。
MC-38細胞におけるネオエピトープ(Adpgk)のcDNAシークエンシング
全RNAを、製造者の使用説明書に従って、RNeasy(登録商標)mini Kit(QIAGEN)でMC-38細胞から抽出した。1μgの全RNAを使用して、第1鎖cDNAを、SuperScript(商標)III First-Strand Synthesis SuperMix Kit(Invitrogen)で合成した。次の2セットの配列特異的プライマーを使用して、長さが250bp及び485bpのAdpgk cDNAを、選択的に増幅した。プライマー1:TGCCAACCGCTTCATCTTCT(フォワードプライマー)及びGGTAGACCAGCGTGTGGAAA(リバースプライマー)。プライマー2:CTCCAACGGGGCCATGAATA(フォワードプライマー)及びCGTGGGAAAGACCTGCTGAT(リバースプライマー)。SuperScript One Step RT-PCR System(Invitrogen)を使用して、増幅を実施した。最終cDNA産物を、臭化エチジウムを含む1.5%のアガロースゲルで可視化し、PureLink(登録商標)Quick Gel Extraction及びPCR Purification Combo Kit(Invitrogen)を使用して、AdpgkのcDNAバンドを切断及び精製した。精製されたcDNAを、University of Michigan DNA Sequencing Coreで、Sangerシークエンシング法(例えば、Sanger,F.,Nicklen,S.& Coulson,A.R.DNA sequencing with chain-terminating inhibitors.Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.74,5463-5467(1977)を参照のこと)によりシークエンスした。
実施例VII.
本実施例は、sHDL、リポソーム、及び金ナノ粒子を含む他のナノ粒子を使用したネオアンチゲンワクチン接種(図29)、ならびに複数のネオアンチゲンペプチドを使用した多価ネオアンチゲンワクチン接種の生成(図28)について記載する。
多価ネオアンチゲンが充填されたsHDLの調製
ナノディスクベースの多価ペプチドワクチンを調製するために、N末端でCSSリンカーにより修飾された複数のネオアンチゲンペプチド(M30及びM27)を、室温で3時間、ジメチルホルムアミド中でDOPE-PDPにコンジュゲートし、続いて、10×水で希釈し、凍結乾燥して、脂質-ペプチドコンジュゲートを得た。コンジュゲートを、酢酸中のDMPC及び22Aと混合し、凍結乾燥した。次に、得られた粉末を、3分間加熱し(50℃)、3分間冷却し(氷水)、これを合計3サイクル行い、異なるネオアンチゲンが充填されたsHDL(sHDL-M30/M27)を得た。あるいは、コンジュゲートを、DMSOに溶解し、予め形成されたsHDLと共にインキュベートして、異なるネオアンチゲンが充填されたsHDL(sHDL-M30/M27)を得た。脱塩カラムを通過させることにより、あらゆる取り込まれていないネオアンチゲンペプチドを除去した。充填効率をHPLCで分析した。コレステロール-CpGを、室温で30分間上記sHDLと共にインキュベートして、ナノディスクベースの多価ペプチドワクチン(sHDL-M30/M27/CpG)を得た。
ネオアンチゲンが充填されたリポソームの調製
リポソームベースのネオアンチゲンワクチンを調製するために、DMPC及びDOPE-PDP(モル比=92:8)をクロロホルムに溶解した。混合物を、窒素気流で乾燥させ、真空下に少なくとも1時間定置した。得られた脂質フィルムを、10mMのリン酸ナトリウム緩衝液(0.3117g/LのNaH2PO4.H2O及び2.0747g/LのNa2HPO4.7H2O、pH7.4)中で水和し、10分間、バスソニケーター中で超音波処理し、続いて、さらに2.5分間プローブ音波処理して、リポソームを得た。CSS修飾AdpgkペプチドをPDP提示リポソームと共にインキュベートし、続いて、コンジュゲートされないペプチドの脱塩カラムに基づく分離を行った後、ネオアンチゲンペプチドAdpgkを、リポソームにコンジュゲートした。コンジュゲーション効率をHPLCで分析した。コレステロール-CpGを、室温で30分間上記リポソームと共にインキュベートして、リポソームベースのネオアンチゲンペプチドワクチン(lip-Adpgk/CpG)を得た。
スパイク状金ナノ粒子ベースのネオアンチゲンペプチドワクチンの調製
スパイク状金ナノ粒子(AuNP)を得るために、シトラート金ナノ粒子を、まず、HAuCl水溶液をクエン酸ナトリウムと沸騰させることにより調製した。それらを、激しく撹拌しながら、室温で、HAuCl、HCl、AgNO、及びアスコルビン酸と共に順次添加して、種核成長法によりAuNPを形成した。合成したままのAuNPを精製し、0.01%のSDSを用いた遠心分離で濃縮した。ネオアンチゲンペプチドのAuNP上でのチオール媒介製表面装飾、続く、静電複合化によるpolyIC及びCpG層の充填により、AuNPベースのペプチドワクチンを調製した。要約すると、AuNPをCSS修飾されたネオアンチゲンペプチドであるCSS-ASMTNMELMと共に一晩インキュベートすることにより、ペプチドワクチンを、AuNPに表面コンジュゲートさせた。あらゆる未反応ペプチドを、遠心分離によりAuNPコンジュゲートから除去した。静電相互作用により、polyIC及びCpGを充填するために、ポリエチレングリコール(平均Mn6,000)修飾ポリエチレンイミン(分枝状、平均Mw約25,000)(PEG-PEI)を用いた。ペプチドコンジュゲートAuNPsを、10分間、PEG-PEIと混合し、遠心分離により過剰なPEG-PEGから精製し、10mMのNaCl中のpolyIC及びCpG混合溶液に添加した。5分後、混合物を10mMのNaClのPEG-PEI溶液に移し、塩濃度を、5分毎に50mMの増分で、150mMのNaClまで段階的に増加させた。最終的に、粗混合物溶液を、0.01%のtween20を用いて遠心分離して、あらゆる結合していないpolyIC及びCpGを除去した。
細胞内サイトカイン染色
0日目、7日目、及び14日目に、C57BL/6マウスに、ナノディスクベースの多価ネオアンチゲンペプチドワクチン(sHDL-M30/M27/CpG)をワクチン接種した。最後のワクチン接種の7日後、ワクチン接種したマウスから収集した100~150μLの末梢血を、ACK溶解緩衝液で溶解し、PBSで洗浄し、96ウェルU底プレート中の50μLのT細胞培地(10%のFBS、2mMのL-グルタミン、55μMのβ-メルカプトエタノール、1mMのピルベート、ならびに100U/mLのペニシリン及び100μg/mLストレプトマイシン、HEPES、ならびに非必須アミノ酸を補充したRPMI 1640)に、約1000万細胞/mLで播種した。細胞を、50000のBMDC/ウェルと共培養し、細胞に、6時間、20μg/mLのM30またはM27ペプチドをパルスし、タンパク質輸送阻害薬ブレフェルジンA(BD Biosciences)を、最後の4時間のインキュベーション中に添加した。次に、細胞を氷冷FACS緩衝液(PBS中1%のBSA)で2回洗浄し、続いて、氷上で、少なくとも10分間、抗CD16/32と共に、かつ氷上で、20分間、抗CD8α及び抗CD4と共にインキュベートした。次に、細胞を氷上で20分間固定/透過処理し、次に、氷上で30分間、抗IFN-γ-PEで染色した。広範に洗浄した後、細胞をフローサイトメトリーで分析した。図28に示す結果は、sHDL-M30/M27/CpGが、ネオアンチゲンM30に対する高頻度のCD4+T細胞(図28A)及びネオアンチゲンM27に対するCD8+T細胞(図28B)を生成したことを示している。
治療学的試験
治療腫瘍ワクチン接種試験では、C57BL/6マウスに、0日目の皮下注射により、右脇腹に、腫瘍細胞(マウス1匹につき1×10個のMC38細胞)を接種した。マウスに、リポソーム形態または可溶性形態のいずれかで製剤化した15.5nmolのASMTNMELM及び2.3nmolのCpG(または15μgのpolyIC/マウス)を、10及び17日目にワクチン接種した。AuNPを免疫したマウス群について、Adpgk及びアジュバントにより修飾したAuNPの腫瘍内投与を、マウス1匹につき、12nmolのASMTNMELM、5.2nmolのCpG、及び83μgのpolyICと共に、10日目(レーザーありの群及びなしの群の両方)及び16日目(レーザーなしの群のみ)に実施した。808nmのCWダイオードレーザーを使用して、レーザーを、1.2W/cmで5分間、腫瘍組織に直接照射した。
【0286】
示された時点で、PBMCを収集し、テトラマー染色、続いて、サイトメトリー分析で、PBMC中のAdpgk特異的CD8+T細胞について染色した。PBMCのテトラマー染色は、Adpgk含有リポソーム及びAuNP全てが、可溶性ペプチド及びアジュバントを用いたワクチン接種と比較して、より強いネオアンチゲン特異的CD8+T細胞応答を生成したことを示した(図29A)。加えて、腫瘍成長を1日おきにモニターし、本試験を通して腫瘍体積を次式で計算した:腫瘍体積=長さ×幅×0.52。腫瘍塊が直径1.5cmに到達した時、または動物が重度の体重減少もしくは潰瘍で瀕死状態になった時、動物を安楽死させた。結果は、リポソーム及びAuNPを含むAdpgk含有ナノ粒子が、可溶性ペプチド及びCpGを用いたワクチン接種と比較して、腫瘍の進行を遅らせることを示した(図29B)。
参照による組み込み
本明細書で参照された各特許文献及び科学論文の開示全体は、あらゆる目的のために参照により組み込まれる。
均等物
本発明は、その趣旨または本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で具体化されてもよい。それ故、上述の実施形態は、本明細書に記載の本発明を限定するものよりもむしろ、あらゆる点で例示的なものであると考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は、上述の明細書よりはむしろ添付の特許請求の範囲により示され、特許請求の範囲の均等物の意味及び範囲内に入る全ての変更がその中に含まれるものとする。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6
図7
図8
図8-1】
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図15-1】
図16
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図17
図18
図19
図20
図21
図21-1】
図22
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図25-1】
図26
図27
図28
図29
【配列表】
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