(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】刷版交換システム
(51)【国際特許分類】
B41F 13/00 20060101AFI20230314BHJP
B41F 27/12 20060101ALI20230314BHJP
B65H 5/08 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
B41F13/00 514
B41F27/12 D
B41F27/12 E
B65H5/08 Z
(21)【出願番号】P 2021164019
(22)【出願日】2021-10-05
【審査請求日】2022-12-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】518153346
【氏名又は名称】株式会社ウエーブ
(74)【代理人】
【識別番号】110001597
【氏名又は名称】弁理士法人アローレインターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】白子 善久
(72)【発明者】
【氏名】白子 なおみ
【審査官】高松 大治
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-167079(JP,A)
【文献】特開2015-20310(JP,A)
【文献】特開平6-8402(JP,A)
【文献】特開2018-89933(JP,A)
【文献】特開平4-363246(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41F 13/00
B41F 27/12
B65H 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
旧刷版を排出位置に排出して供給位置に供給された新刷版を取り込むことができる印刷ユニットが一列に複数配置された印刷機に対して、複数の前記印刷ユニットにおける刷版の交換を順次行う刷版交換システムであって、
旧刷版および新刷版をそれぞれ収容する旧版収容部および新版収容部を備える収容部材と、
前記収容部材を、前記旧版収容部および新版収容部に対する旧刷版の搬出および新刷版の搬入が行われる下降位置から上昇させる昇降装置と、
前記印刷ユニットの整列方向に沿って延びるガイドレールに沿って駆動され、前記昇降装置の作動により上昇した前記収容部材を前記各印刷ユニットの近傍に搬送する移動体とを備え、
前記移動体は、前記各印刷ユニットの近傍において、前記排出位置に排出された旧刷版を保持して前記旧版収容部に収容すると共に、前記新版収容部に収容されている新刷版を保持して前記供給位置に供給する多関節ロボットからなる交換装置を備える刷版交換システム。
【請求項2】
前記昇降装置は、前記収容部材を吊り下げて昇降させるように構成されており、前記移動体に取り付けられている請求項1に記載の刷版交換システム。
【請求項3】
前記交換装置は、旧刷版を挟持により保持する挟持部と、新刷版を吸着により保持する吸着部とを備える請求項1または2に記載の刷版交換システム。
【請求項4】
前記移動体は、前記供給位置に供給された新刷版を押圧する押圧装置を更に備える請求項1から3のいずれかに記載の刷版交換システム。
【請求項5】
前面開口および上面開口を有し前記収容部材を収容可能な筐体を更に備え、
前記筐体内の前記下降位置に配置された前記収容部材に対して、前記前面開口から旧刷版の搬出および新刷版の搬入を行うことができると共に、前記上面開口を介して前記筐体の外部に前記収容部材を上昇させることができる請求項1から4のいずれかに記載の刷版交換システム。
【請求項6】
前記筐体に新刷版を搬送するための新版搬入用台車を更に備え、
前記新版搬入用台車は、前記筐体内の前記収容部材と係合して位置合わせを行う係合部と、起立状態の新刷版の下縁部を前記収容部材に案内する縁部ガイド部材と、起立状態の新刷版の面部を前記収容部材に案内する面部ガイド部材とを備える請求項5に記載の刷版交換システム。
【請求項7】
前記面部ガイド部材は、上下に複数配置されて、単一のレバー部材の操作により、それぞれ新刷版の押圧方向に突出するように構成されており、
上方の前記面部ガイド部材の突出量が、下方の前記面部ガイド部材の突出量よりも多い請求項6に記載の刷版交換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刷版交換システムに関し、より詳しくは、複数の印刷ユニットに対する刷版の交換を順次行うことができる刷版交換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の印刷機として、特許文献1には、複数の印刷ユニットが一列に配置され、各印刷ユニットにそれぞれ版交換装置およびロボットアームが設けられた構成が開示されている。
【0003】
版交換装置は、版胴に巻回された刷版を印刷ユニットの裏面側に排出すると共に、印刷ユニットの裏面側にセットされた新たな刷版を版胴に引き込むことができる。また、ロボットアームは、種々のツールを着脱可能に装着することができ、版交換用ツールを装着した場合には、印刷ユニットから排出された刷版を版交換用ツールで把持して所定位置まで移動させると共に、所定位置に配置された新たな刷版を版交換用ツールで把持して印刷ユニットにセットすることができる。
【0004】
一般的な印刷機は、オペレータが排紙部で印刷物の印刷状態を確認しているときに、オペレータが印刷部に移動してインキを混ぜ合わせる作業をする又は給紙部で発生した被印刷物のつまり解消作業を行うと、印刷状態の確認ができない。また、オペレータが排紙部での印刷物の印刷状態の確認をするために印刷物を排紙部のストック部まで移動して抜き出す作業を行うと、印刷状態の確認をただちに行うことができない。その結果、印刷物の印刷状態が不良である場合に、印刷をただちに停止することができず、損紙が増えてしまうという不都合があり、早期改善が要望されている。特許文献1の発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、給紙部及び印刷部のうちの少なくとも一方での作業の自動化を図ることによって、オペレータが排紙部での作業に集中することができる印刷機を提供すること、としている。そして、この課題を解決できる範囲の自動化として、複数の印刷ユニットに対して各ユニット単位で刷版交換の自動化が図られている。しかしそもそもの自動化の目的が、オペレータが印刷作業中の作業負担を排紙部分に集中させることに限定されている。したがって、印刷中に行われない使用済みの刷版の回収や各ユニットへの新版の供給は、自動化されていず、ユニット単位で別途手動などの方法で、時間をかけて行う必要がある。すなわち、特許文献1の印刷機は、単に作業者の注意を印刷の質に集中されることを目的としたものにとどまり、高度な省人化やエンドレス印刷やスマート工場を目的に設計されたものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のとおり、特許文献1に開示された印刷機は、複数の印刷ユニットに対する刷版交換の自動化が図られているが、使用済みの刷版の回収や新たな刷版の供給は印刷ユニットごとに行う必要があるため、作業負担を軽減する観点から更に改良の余地があった。
【0007】
そこで、本発明は、複数の印刷ユニットに対する刷版の交換を迅速且つ効率良く行うことができる刷版交換システムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の前記目的は、旧刷版を排出位置に排出して供給位置に供給された新刷版を取り込むことができる印刷ユニットが一列に複数配置された印刷機に対して、複数の前記印刷ユニットにおける刷版の交換を順次行う刷版交換システムであって、旧刷版および新刷版をそれぞれ収容する旧版収容部および新版収容部を備える収容部材と、前記収容部材を、前記旧版収容部および新版収容部に対する旧刷版の搬出および新刷版の搬入が行われる下降位置から上昇させる昇降装置と、前記印刷ユニットの整列方向に沿って延びるガイドレールに沿って駆動され、前記昇降装置の作動により上昇した前記収容部材を前記各印刷ユニットの近傍に搬送する移動体とを備え、前記移動体は、前記各印刷ユニットの近傍において、前記排出位置に排出された旧刷版を保持して前記旧版収容部に収容すると共に、前記新版収容部に収容されている新刷版を保持して前記供給位置に供給する多関節ロボットからなる交換装置を備える刷版交換システムにより達成される。
【0009】
この刷版交換システムにおいて、前記昇降装置は、前記収容部材を吊り下げて昇降させるように構成されることが好ましく、前記移動体に取り付けることができる。
【0010】
前記交換装置は、旧刷版を挟持により保持する挟持部と、新刷版を吸着により保持する吸着部とを備えることが好ましい。
【0011】
前記移動体は、前記供給位置に供給された新刷版を押圧する押圧装置を更に備えることが好ましい。
【0012】
前面開口および上面開口を有し前記収容部材を収容可能な筐体を更に備えることが好ましく、前記筐体内の前記下降位置に配置された前記収容部材に対して、前記前面開口から旧刷版の搬出および新刷版の搬入を行うことができると共に、前記上面開口を介して前記筐体の外部に前記収容部材を上昇させることができる。この構成において、前記筐体に新刷版を搬送するための新版搬入用台車を更に備えることが好ましく、前記新版搬入用台車は、前記筐体内の前記収容部材と係合して位置合わせを行う係合部と、起立状態の新刷版の下縁部を前記収容部材に案内する縁部ガイド部材と、起立状態の新刷版の面部を前記収容部材に案内する面部ガイド部材とを備えることが好ましい。前記面部ガイド部材は、上下に複数配置されて、単一のレバー部材の操作により、それぞれ新刷版の押圧方向に突出するように構成されることが好ましく、上方の前記面部ガイド部材の突出量が、下方の前記面部ガイド部材の突出量よりも多いことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の印刷ユニットに対する刷版の交換を迅速且つ効率良く行うことができる刷版交換システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る刷版交換システムの斜視図である。
【
図5】刷版交換システムが備える収容部材の斜視図である。
【
図6】刷版交換システムが備える新版搬入用台車の正面図である。
【
図11】刷版交換システムの作動を説明するための要部斜視図である。
【
図13】旧刷版を保持した状態を示す側面図である。
【
図14】新刷版を保持した状態を示す側面図である。
【
図16】刷版交換システムの作動を説明するための要部斜視図である。
【
図17】刷版交換システムの作動を説明するための要部正面図である。
【
図18】複数の刷版交換システムの配置例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
図1は、 本発明の一実施形態に係る刷版交換システムの斜視図である。また、
図2および
図3は、
図1に示す刷版交換システムの平面図および正面図である。
図1から
図3に示すように、本実施形態の刷版交換システム1は、複数(例えば8台)の印刷ユニット110が一列に配置された印刷機100に対して、複数の印刷ユニット110における刷版の交換を順次行うものである。各印刷ユニット110は、使用済みの刷版である旧刷版を排出位置に排出して、供給位置に新たに供給された刷版である新刷版を取り込むことができるように構成されている。このような機能を有する印刷機100としては、例えば、リョービMHIグラフィックテクノロジー株式会社の「RMGT970PF」を好ましく例示することができる。刷版交換システム1は、印刷機100とは独立して設けられるため、上記のような既存の印刷機100に対しても、容易に後付けすることができる。
【0016】
刷版交換システム1は、旧刷版および新刷版をそれぞれ収容する旧版収容部11および新版収容部12を備える収容部材10と、収容部材10を昇降させる昇降装置20と、複数の印刷ユニット110の上方を整列方向に沿って延びるガイドレール90,91に沿って駆動される移動体30と、収容部材10に対する旧刷版の搬出および新刷版の搬入に使用する筐体60と、筐体60に新刷版を搬送するための新版搬入用台車80と、刷版交換システム1に対する操作や作動状態等の表示を行うタッチパネルディスプレイ71を有する情報表示装置70とを備えている。昇降装置20、移動体30および情報表示装置70の作動は、制御装置2により制御される。
【0017】
図4は、
図1の要部拡大図である。
図1および
図4に示すように、筐体60は、矩形状の前面開口61および上面開口62を有しており、印刷ユニット110の整列方向の一端側に配置されて、収容部材10を内部の下降位置に収容することができる。前面開口61は開閉扉63により開閉自在とされており、開閉扉63を開いて、前面開口61から収容部材10に対する旧刷版の搬出および新刷版の搬入を行うことができる。筐体60内の四隅にはそれぞれガイド支柱64が設けられている。各ガイド支柱64の下端は、床にアンカー固定されている。
【0018】
図5は、収容部材10の斜視図である。
図5に示すように、収容部材10は、旧版収容部11および新版収容部12が、矩形状の底板13の上方に左右に並列して設けられている。旧版収容部11および新版収容部12は、傾斜面を有する隔壁14,15によって区画されており、旧刷版200aおよび新刷版200bが、それぞれ隔壁14,15の傾斜面141,151に沿って傾斜状態で起立する。旧版収容部11および新版収容部12には、それぞれ複数の旧刷版200aおよび新刷版200bを収容することができる。旧版収容部11および新版収容部12の下部には、旧刷版200aおよび新刷版200bの下縁と接する位置に、コロコンローラ等のガイド部材を備えており、旧刷版200aの搬出および新刷版200bの搬入をスムーズに行うことができる。
【0019】
隔壁14,15の前後方向の両側には、位置ずれ防止ガイド16,17が前後で一体的に回動するように設けられており、旧刷版200aおよび新刷版200bを収容した後に、位置ずれ防止ガイド16,17を水平になるように回動させて、収容部材10内での旧刷版200aおよび新刷版200bの位置決めを行うことができる。
【0020】
収容部材10の中央には、底板13から上方に延びる支柱の上端に取付部18が設けられており、
図4に示す電動チェーンブロックからなる昇降装置20のチェーンに連結された
索条体21が、取付部18に取り付けられている。これにより、収容部材10は、昇降装置20により筐体60内で昇降可能に吊り下げ支持されている。収容部材10は、底板13の各角部の近傍にキャスター131を備えており、キャスター131が筐体60の各ガイド支柱64に接することで、収容部材10が筐体60内をスムーズに昇降する。また、収容部材10は、底板13の隔壁15と対向する縁部に落下防止ガイド132を備えている。
【0021】
昇降装置20は、移動体30に取り付けられており、移動体30が原点位置にある状態で、上記のとおり筐体60内の収容部材10を吊り下げ支持し、下降位置にある収容部材10を、上部開口62を介して筐体60外の上昇位置まで上昇させることができる。収容部材10の上昇位置は、昇降装置20に設けられた位置決めピンが収容部材10と接触する一定の高さ位置に設定されている。昇降装置20は、必ずしも吊下式に限定されるものではなく、例えば、押上式の構成として筐体60内に配置し、上昇位置で収容部材10を移動体30に係合させることもできる。
【0022】
図6は、新版搬入用台車80を前方から見た正面図である。
図6に示すように、新版搬入用台車80は、底板81の下面に複数のキャスター82が取り付けられており、底板81の後部にハンドル83およびストッパ86が設けられている。底板81の上面側には、前後に延びる支持ブロック84が設けられており、支持ブロック84の傾斜面に沿って、新刷版を傾斜状態で起立させることができる。支持ブロック84の前後方向の両側には、位置ずれ防止ガイド85が前後で一体的に回動するように設けられており、新刷版を収容した後に、位置ずれ防止ガイド85を破線で示す位置から水平になるように回動させて、新刷版の位置決めを行うことができる。
【0023】
また、新版搬入用台車80は、底板81の前面に形成された凹状の係合部801と、起立状態で収容される新刷版の下縁部を前方に案内する縁部ガイド部材802とを備えている。
図7に拡大図で示すように、縁部ガイド部材802は、例えばコロコンローラからなり、新刷版200bの下縁を接触させることで、新刷版200bの前方への移動をスムーズに行うことができる。縁部ガイド部材802は、例えば、直径50~80mm程度、長さ50mm程度のローラを、前後方向の全体にわたって配置することで、新版搬入用台車80により最大200枚程度の新刷版200bを運搬することができる。
【0024】
図8(a)に示すように、新版搬入用台車80は、起立状態の新刷版200bの面部と接触して、新刷版200bを搬送方向に案内する面部ガイド部材803,804を備えることができる。面部ガイド部材803,804は、縁部ガイド部材802と同様にコロコンローラ等から構成することができ、支持ブロック84の傾斜面に沿って複数を上下に配置することができる。面部ガイド部材803,804は、例えば、直径25mm程度、長さ15mm程度のローラを、前後方向の全体にわたって配置することができる。
【0025】
面部ガイド部材803,804は、単一のレバー部材805の操作により入力軸806を矢示方向に回動させることで、
図8(b)に示すように、それぞれが新刷版200bの押圧方向に突出するように構成されている。入力軸806は遊星ギヤ807を介して出力軸808に連結されており、入力軸806および出力軸808は、それぞれリンク機構809,810を介して面部ガイド部材803,804に連結されている。上方に配置された面部ガイド部材803の突出量が、下方に配置された面部ガイド部材804の突出量よりも多くなるように(例えば、前者が約10mm、後者が約5mm)、遊星ギヤ807の減速比を適宜設定することで、傾斜状態で起立する新刷版200bに対して面部ガイド部材803,804を確実にフィットさせて、新刷版200bの移動をよりスムーズに行うことができる。2つの面部ガイド部材803,804の突出量の調整は、入力軸806に取り付けた2種類のカムを利用する等、他の公知の機構を介して行ってもよい。また、面部ガイド部材803,804と同様の構成は、収容部材10の隔壁15に設けることもできる。
【0026】
図9は、新版搬入用台車80に収容した新刷版200bを、
図4に示す筐体60内の下降位置にある収容部材10に搬入する状態を示す側面図である。まず、
図10に示すように、新版搬入用台車80の係合部801を収容部材10に形成された凸部133に係合させて、
図9に示すように、新版搬入用台車80と新版収容部12との位置合わせを行った後、ストッパ86を作動させて新版搬入用台車80を床面に固定する。ついで、新版搬入用台車80に収容された新刷版200bを矢示方向に移動させて、新刷版200bの前縁を収容部材10のストッパ134に当接させ、新版搬入用台車80の新刷版200bを新版収容部12に収容する。この後、位置ずれ防止ガイド17(
図5参照)を水平に回動させて、新刷版200bの前後縁部を保持する。こうして、多数の新刷版200bを損傷させることなく新版収容部12に確実に移動させることができる。
【0027】
図4に示すように、移動体30は、収容部材10と共に印刷ユニット110の整列方向に沿って移動する。移動体30が各印刷ユニット110の近傍に移動したことは、ガイドレール91に各印刷ユニット110に対応して設けられた光電センサ92により検出される。また、移動中の移動体30の位置は、レーザ式の距離センサ93によりリアルタイムで検知することができる。
【0028】
図11は、刷版の交換を行う最初の印刷ユニット110の近傍まで移動体30が移動した状態を示す斜視図であり、
図12は、
図11の正面図である。
図11および
図12に示すように、移動体30は、収容部材10と印刷ユニット110との間で旧刷版200aと新刷版200bとの交換を行う交換装置40と、印刷ユニット110への新刷版200bの供給時に使用する押圧装置50と、交換装置40および押圧装置50の作動を制御する制御部31と、ガイドレール90,91に係合する電動式サドル32と、これらを支持するI形鋼からなる支持体33とを備えている。移動体30は、移動中の安全を確保するために、
図3に示すライトカーテン3や人感センサ4等の安全設備を更に備えている。
【0029】
交換装置40は、複数のアームが関節を介して回動自在に連結された多軸(例えば4軸から7軸)構造を有する多関節ロボットにより構成されている。多関節ロボットのアーム先端の回転機構部には、保持部41が設けられている。
【0030】
押圧装置50は、交換装置40と同様に多関節ロボットにより構成されている。多関節ロボットのアーム先端の回転機構部には、押圧部51が設けられている。
【0031】
図13に側面図で示すように、交換装置の保持部41は、旧刷版200aを挟持により保持する挟持部42と、新刷版200bを吸着により保持する吸着部43とを備えている。挟持部42は、挟持用シリンダ423の作動により、一対の挟持片421,422の間に旧刷版200aの上縁部を挟持することができる。
【0032】
図14および
図15にそれぞれ側面図および正面図で示すように、吸着部43は、新刷版200bの上縁に沿って面部に吸着可能な複数の吸着パッド431を備えており、新刷版200bを真空吸着することができる。
【0033】
上記の構成を備える刷版交換システム1は、印刷機100の各印刷ユニット110の刷版交換時において、まず、
図4に示すように、筐体60内の収容部材10の新版収容部12に対して、新刷版200bの搬入作業を行う。この作業は、新版搬入用台車80を利用することで迅速に行うことが可能であり、印刷機100のアイドル時間やカラーマッチングの時間等を利用することで、余分な時間を要することなく効率よく行うことができる。また、収容部材10の旧版収容部11に旧刷版200aが収容されている場合には、通常の台車210を利用する等して、旧刷版200aの搬出作業を行う。このような搬入作業および搬出作業は、印刷機100の作動とは独立して行うことができるため、次回以降のジョブにおいてはロス時間を実質的にゼロにすることができる。
【0034】
この後、昇降装置20の作動により収容部材10を下降位置から上昇位置まで上昇させ、移動体30を原点位置からガイドレール90,91に沿って移動させることにより、収容部材10を印刷ユニット110に向けて搬送する。移動体30は、印刷ユニット110の近傍まで移動すると一時停止して、交換装置40により刷版の交換を行う。
【0035】
図16に示すように、刷版を交換する際には、まず、印刷ユニット110の排出位置P1に排出された旧刷版200aを交換装置40の把持部42に把持した後、交換装置40の作動により収容部材10の旧版収容部11に収容する。ついで、収容部材10の新版収容部12に収容されている最表面の新刷版200bを交換装置40の吸着部43に吸着して、交換装置40の作動により供給位置P2に移動させる。これにより、刷版の交換を迅速に行いつつ、新刷版200bの損傷を確実に防止することができる。
【0036】
図17に示すように、供給位置P2への新刷版200bの供給は、押圧装置の押圧部51を併用して行うことができる。押圧部51は、支持ロッド52と、支持ロッド52の先端部から略直角に屈曲するクッション材53と、支持ロッド52の先端部に設けられた押圧シリンダ54とを備えている。印刷ユニット110における供給位置P2の近傍には、新刷版200bの受入部112と、受入部112の開放ボタン111と、受入部112に受け入れられた新刷版200bの下縁部を真空吸着する吸着部113とを備えている。
【0037】
押圧部51は、新刷版200bが供給位置P2の近傍に搬送されると、押圧シリンダ54の作動により開放ボタン111を押圧して、受入部112の受入スペースを広げる。ついで、吸着部43に吸着された新刷版200bを受入部112に上方から挿入し、新刷版200bの下縁を破線で示す位置まで降下させた後、押圧部51の作動によりクッション材53で新刷版200bを吸着部53に押し付ける。こうして、新刷版200bを供給位置P2に確実に供給することができる。
【0038】
印刷ユニット110に対する刷版の交換が完了した後は、移動体30を再び移動させて、収容部材10を次の印刷ユニット110の近傍まで搬送し、交換装置40により刷版の交換を行う。こうして、各印刷ユニット110に対する刷版の交換を順次行うことができる。このように、従来は手作業で行われることで作業者の負担になっていた多数の印刷ユニット110に対する旧版の取り出しや搬出等の作業、および、新版の搬入や供給等の作業が、全自動で行われるため、真の省力化を実現することができる。
【0039】
最後の印刷ユニット110に対する刷版の交換が完了した後は、移動体30が原点位置まで戻る。原点位置においては、必要に応じて収容部材10を筐体60内の下降位置に降下させることで、収容部材10に対する旧刷版の搬出および新刷版の搬入を行うことが可能であり、再び最初の印刷ユニット110から順に刷版の交換を開始することができる。このように、各印刷ユニット110に対する刷版の交換を自動的に繰り返し行うことができるので、エンドレス印刷に容易に対応させることができ、これによってスマート工場の実現を図ることができる。
【0040】
刷版交換システム1の移動体30の原点位置は、特に制約はなく、例えば、印刷機100の給紙側または排紙側のいずれに設定してもよく、オペレータ側またはドライブ側のいずれに設定してもよい。このため、コンパクトで自由度の高い刷版交換システム1の設置が可能である。例えば、
図18に示すように、複数の印刷機100が互いに平行に配置されている場合には、隣接する2つの印刷機100の間で刷版交換システム1同士を対向させると共に、それぞれの原点位置となる筐体60を、印刷ユニット110の整列方向に沿って互いに逆方向に配置することで、新版搬入用台車80の通行やメンテナンスに必要最小限のスペースを確保しつつ、刷版交換システム1の設置に伴うデッドスペースを極力抑制して、空間を有効活用することができる。
【0041】
本発明は、複数の印刷ユニットに対する刷版の交換において、従来は人手でなされていた使用済み版の運び出しだけでなく回収まで、そして新版の印刷機への供給だけでなく運び込みから、人手を使わず自動で、人手による作業よりはるかに迅速に正確に行い、この自動版交換作業中に作業者が次の印刷用紙積み作業や印刷の調整作業や本番印刷作業を行うという効率の良い作業様式で、版交換のために別途かかる時間を極端に短縮できることにより、スマート工場を見据えた、エンドレス印刷のためのシステムを提供することができる。しかも、本システムは、複数の刷版交換システムにおける版の昇降装置を互い違いに配置することにより、版昇降装置の突出による無駄なスペースを複数生み出すことなく、刷版交換システム間の距離を新版搬入用台車さえ通過するスペースだけにまで極限まで少なくして、吊り下げ形式の採用とともに、スペースを最大限に有効活用することができる。また、自動版交換システムと印刷機とが一体化していないため、どの印刷機に対してもすでに設置が済んでいる印刷機に対しても、設置・使用が可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 刷版交換システム
10 収容部材
11 旧版収容部
12 新版収容部
20 昇降装置
30 移動体
40 交換装置
41 保持部
42 挟持部
43 吸着部
50 押圧装置
60 筐体
61 前面開口
62 上面開口
80 新版搬入用台車
801 係合部
802 縁部ガイド部材
803,804 面部ガイド部材
805 レバー部材
90,91 ガイドレール
100 印刷機
110 印刷ユニット
200a 旧刷版
200b 新刷版
P1 排出位置
P2 供給位置
【要約】
【課題】 複数の印刷ユニットに対する刷版の交換を迅速且つ効率良く行うことができる刷版交換システムを提供する。
【解決手段】 旧刷版および新刷版をそれぞれ収容する旧版収容部11および新版収容部12を備える収容部材10と、収容部材10を、旧刷版の搬出および新刷版の搬入が行われる下降位置から上昇させる昇降装置20と、印刷ユニット110の整列方向に沿って延びるガイドレール90,91に沿って駆動され、昇降装置20の作動により上昇した収容部材10を各印刷ユニット110の近傍に搬送する移動体30とを備え、移動体30は、各印刷ユニット110の近傍において、排出位置に排出された旧刷版を保持して旧版収容部11に収容すると共に、新版収容部12に収容されている新刷版を保持して供給位置に供給する多関節ロボットからなる交換装置40を備える。
【選択図】
図1