(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】有機酸水溶液中の有機酸を結合回収する方法
(51)【国際特許分類】
C07C 51/46 20060101AFI20230314BHJP
C07C 53/02 20060101ALI20230314BHJP
C07C 53/08 20060101ALI20230314BHJP
C07C 51/48 20060101ALI20230314BHJP
C07C 53/122 20060101ALI20230314BHJP
C07C 53/124 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
C07C51/46
C07C53/02
C07C53/08
C07C51/48
C07C53/122
C07C53/124
(21)【出願番号】P 2021525359
(86)(22)【出願日】2019-09-26
(86)【国際出願番号】 CN2019108187
(87)【国際公開番号】W WO2020108066
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-01-15
(31)【優先権主張番号】201811418227.2
(32)【優先日】2018-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521023894
【氏名又は名称】広州楹鼎生物科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】張睿哲
(72)【発明者】
【氏名】劉運思
【審査官】高橋 直子
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102344353(CN,A)
【文献】特開2015-140342(JP,A)
【文献】特公昭48-013090(JP,B1)
【文献】特開平11-228486(JP,A)
【文献】特開2009-000686(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106397184(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第101792386(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 51/46
C07C 53/02
C07C 53/08
C07C 51/48
C07C 51/122
C07C 51/124
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機酸水溶液中の有機酸を結合回収する方法であって、
有機酸濃度が20wt%よりも低い溶液と抽出剤とを混合した後に向流抽出を行い、抽出相および抽残相を取得し、有機酸濃度が20~70wt%の溶液を、有機酸濃度が70wt%よりも
高い溶液になるまで抽出濃縮し、前記抽出相と前記有機酸濃度が70wt%よりも高い溶液とを共に共沸精留して有機酸を採取し、
前記有機酸はギ酸、プロピオン酸、または酪酸であり、
前記有機酸はギ酸である場合、前記抽出剤は、アミン系抽出剤および/または有機リン抽出剤および希釈剤を選択し、
前記有機酸はプロピオン酸である場合、前記抽出剤は、有機リン抽出剤、有機アミン抽出剤、エステル系抽出剤、またはケトン系抽出剤のうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを選択し、
前記有機酸は酪酸である場合、前記抽出剤は、有機リン抽出剤および/または有機アミン抽出剤および希釈剤を選択する、方法。
【請求項2】
前記有機酸濃度が20wt%よりも低い溶液と抽出剤との体積比は1:(0.5~5)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記向流抽出は常圧下で行われ、温度が20~70℃である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記抽出相は抽出剤、有機酸および水を含み、
前記抽残相は水、抽出剤および有機酸を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記有機酸濃度が70wt%よりも高い溶液と抽出相との体積比は1:(1~5)である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記抽出剤は、エステル系抽出剤、有機リン抽出剤、有機アミン抽出剤、またはケトン系抽出剤のうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせである、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記エステル系抽出剤は、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸tert-ブチル、n-吉草酸エチル、または酢酸グリセリルのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含み、
前記有機リン抽出剤は、トリオクチルホスフィンオキシドおよび/またはリン酸トリブチルを含み、
前記有機アミン抽出剤は、トリオクチルアミンを含み、前記ケトン系抽出剤はシクロヘキサノンである、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記有機酸はギ酸である場合、前記抽出剤は、リン酸トリブチルおよび希釈剤を含み、
前記有機酸はプロピオン酸である場合、前記抽出剤は、トリオクチルホスフィンオキシド、リン酸トリブチル、トリオクチルアミン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸tert-ブチル、n-吉草酸エチル、または酢酸グリセリルのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含み、
前記有機酸は酪酸である場合、前記抽出剤は、リン酸トリブチルおよび希釈剤を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記希釈剤はハロゲン化炭化水素である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記希釈剤はクロロホルムおよび/または1,1,2-トリクロロエタンである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
希釈剤を使用する場合、前記抽出剤と希釈剤との体積比は(1~10):1である、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記有機酸はプロピオン酸であり、前記抽出濃縮に使用される抽出剤は、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸tert-ブチル、n-吉草酸エチル、または酢酸グリセリルのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含む、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記有機酸はギ酸または酪酸であり、前記抽出濃縮に使用される抽出剤は前記向流抽出に使用される抽出剤と同じである、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
向流抽出の前に吸着剤を用いて有機酸水溶液を浄化処理する、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
固体吸着剤を用いて抽残相を吸着し、加熱脱着により抽残相中の有機酸を回収するとともに、吸着剤を再生させる、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
有機酸濃度が20wt%よりも低い溶液と抽出剤とを体積比1:(0.5~5)で混合し、常圧下で20~25℃にて向流抽出を行い、抽出相および抽残相を取得し、固体吸着剤を用いて抽残相を吸着し、加熱脱着により抽残相中の有機酸を回収するとともに、吸着剤を再生させ、前記抽出相と有機酸濃度が70wt%よりも高い溶液とを体積比(1~5):1で混合し、共沸精留して有機酸を採取する、請求項1~15のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、溶液処理の分野に属し、溶液中の有機酸を回収する方法に関し、例えば、有機酸水溶液中の有機酸を結合回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機酸は、重要な有機化学工業原料であり、基本的な有機合成、医薬、染料、香料、農薬等の業界に広く適用され、且つ、生産中または生産後に水-有機酸システムを形成し、水-有機酸システムは高度な非理想的なシステムであるとともに、有機酸が腐食性を有して設備への要求が高いため、今まで比較的理想的な有機酸回収方法は未だにない。
【0003】
低濃度の有機酸水溶液の場合、従来の製薬企業からの汚水中の有機酸は、濃度が一般的に20%よりも低く、また、水に溶解することが多く、精留法で回収すれば、水の含有量が高いため、精留過程において蒸気消費量は巨大であり、回収コストが高い。一部の従来のプロセスは中和方式で処理し、汚水内にアルカリを加えて中和し、形成される有機酸塩はほとんど回収されないため、廃水処理しか行えず、有機酸製品が得られない。少数の企業が回収しても、フローが複雑で、回収コストも高く、行わざるを得ないことが多い。しかし、分離の程度から見ると、膜分離方法の効果が良いが、膜の安定性および再生問題により、その大規模な工業生産が困難であり、回収コストが高い。吸着法はエネルギー消費が低いが、吸着容量が大きくなく、且つ後続処理が困難であり、工業的に適用されていない。エステル化法はプロセスが成熟し、生産能力が大きいが、プロセスが複雑で、廃硫酸を発生して二次汚染を生じる。従って、このような希有機酸に対し、現在、工業的には比較的良好な回収方法はほぼない。
【0004】
高濃度の有機酸水溶液の場合、有機酸の質量分率が80%よりも大きければ、共沸精留を直接行って回収してもよく、濃度が50%よりも低い有機酸水溶液の場合、抽出濃縮を予め行い、濃度を上げてから共沸精留を行う必要がある。しかし、共沸精留には1つの問題があり、精留時に水と共沸剤との共沸物を蒸発できるために、有機酸水溶液に共沸剤を加えて水と共沸剤を共沸物に形成させる必要があり、且つ、共沸剤を回収するとともに有機酸を採取することで、分離精製の目的を達成する。従って、共沸精留法は、共沸剤を回収するために共沸剤回収工程を追加する。
【0005】
CN102153458Aは、酢酸sec-ブチルの抽出-共沸精留により希有機酸を回収する方法を開示し、該方法における酢酸sec-ブチルは、抽出塔の抽出剤および共沸精留塔の共沸剤であり、一部の希有機酸を充填抽出塔の頂部に送り込み、共沸精留塔の塔頂での還流液の一部を抽出剤として抽出塔の底部に送り、希有機酸と常温向流接触抽出を行い、抽出塔の塔頂で酢酸sec-ブチル、有機酸および少量の水を含む抽出相を取得し、塔釜で得られた抽残相は微量の有機酸を含む水であり、抽残相が溶媒回収塔に入り、抽出塔の抽出相を共沸精留塔の上半部に送り込んで更に濃縮し、他の部分の酢酸sec-ブチルを共沸精留塔の塔頂に送り込む。本願は、分離効率が高いという特徴を有し、酢酸の回収率は95%よりも高く、廃水中の有機酸含有量は0.5%以下である。精留法を直接採用することによる還流比が大きく、エネルギー消費が高い等の欠点を克服し、希有機酸回収の生産能力を向上させることができる。しかし、該方法は、低濃度の有機酸溶液についてのみ、高濃度の有機酸水溶液については触れていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以下は、本明細書で詳細に説明する主題の概要である。本概要は、特許請求の範囲を制
限するものではない。
【0007】
本願の目的は有機酸水溶液中の有機酸を結合回収する方法を提供することを含み、前記方法は、単独の低濃度の有機酸水溶液の回収に対して方法が簡単で、エネルギー消費が低く、回収効果がよく、単独の高濃度の有機酸水溶液の回収に対して共沸剤を追加する必要がなく、コストを節約し、このような組合せ方式は、回収過程における試薬を十分に利用し、エネルギー消費を節約し、フローを簡略化することができる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本願は以下の技術案を講じる。
【0009】
本願は、
有機酸濃度が20wt%よりも低い溶液と抽出剤とを共に向流抽出し、抽出相および抽残相を取得し、前記抽出相と有機酸濃度が70wt%よりも高い溶液とを共に共沸精留して有機酸を採取する有機酸水溶液中の有機酸を結合回収する方法を提供する。
【0010】
ここで、有機酸濃度が20wt%よりも低い溶液中の有機酸濃度は、0.5wt%、1wt%、2wt%、5wt%、8wt%、10wt%、12wt%、15wt%、18wt%、または19wt%等であってもよく、有機酸濃度が70wt%よりも高い溶液中の有機酸濃度は、71wt%、72wt%、75wt%、78wt%、80wt%、82wt%、85wt%、88wt%、90wt%、92wt%、95wt%、98wt%、または99wt%等であってもよいが、列挙された数値に限定されるものではなく、上記各数値範囲内の列挙されていない他の数値は同様に適用される。
【0011】
本願の好ましい技術案として、有機酸濃度が20~70wt%の溶液を回収する時、前記溶液を、有機酸濃度が70wt%よりも大きくなるまで抽出濃縮する。
【0012】
本願の好ましい技術案として、前記抽出剤は、エステル系抽出剤、有機リン抽出剤、有機アミン抽出剤、またはケトン系抽出剤のうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせであり、前記組み合わせの典型的なインスタンスは、エステル系抽出剤と有機リン抽出剤との組み合わせ、有機リン抽出剤と有機アミン抽出剤との組み合わせ、有機アミン抽出剤とケトン系抽出剤との組み合わせ、ケトン系抽出剤と有機リン抽出剤との組み合わせ、有機リン抽出剤と有機アミン抽出剤とケトン系抽出剤との組み合わせ、またはエステル系抽出剤とケトン系抽出剤との組み合わせ等を有するが、これらに限定されない。
【0013】
好ましくは、前記エステル系抽出剤は、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸tert-ブチル、n-吉草酸エチル、または酢酸グリセリルのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含み、前記組み合わせの典型的なインスタンスは、酢酸エチルと酢酸n-プロピルとの組み合わせ、酢酸n-プロピルと酢酸イソプロピルとの組み合わせ、酢酸イソプロピルと酢酸n-ブチルとの組み合わせ、酢酸n-ブチルと酢酸sec-ブチルとの組み合わせ、酢酸sec-ブチルと酢酸tert-ブチルとの組み合わせ、酢酸tert-ブチルとn-吉草酸エチルとの組み合わせ、n-吉草酸エチルと酢酸グリセリルとの組み合わせ、または酢酸エチルと酢酸n-プロピルと酢酸sec-ブチルとの組み合わせ等を有するが、これらに限定されない。
【0014】
好ましくは、前記有機リン抽出剤は、トリオクチルホスフィンオキシドおよび/またはリン酸トリブチルを含む。
【0015】
好ましくは、前記有機アミン抽出剤は、トリオクチルアミン、第1級アミンN1923
、または第3級アミンN235のうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含み、前記組み合わせの典型的なインスタンスは、トリオクチルアミンと第1級アミンN1923との組み合わせ、第1級アミンN1923と第3級アミンN235との組み合わせ、第3級アミンN235とトリオクチルアミンとの組み合わせ、またはトリオクチルアミンと第1級アミンN1923と第3級アミンN235との組み合わせ等を有するが、これらに限定されない。
【0016】
好ましくは、前記ケトン系抽出剤はシクロヘキサノンである。
【0017】
本願の好ましい技術案として、前記有機酸がギ酸である場合、前記抽出剤は、アミン系抽出剤および/または有機リン抽出剤および希釈剤を選択する。
【0018】
好ましくは、前記有機酸がギ酸である場合、前記抽出剤は、第1級アミンN1923、第3級アミンN235、またはリン酸トリブチルのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせおよび希釈剤を含み、前記組み合わせの典型的なインスタンスは、第1級アミンN1923と第3級アミンN235との組み合わせ、第3級アミンN235とリン酸トリブチルとの組み合わせ、リン酸トリブチルと第1級アミンN1923との組み合わせ、または第1級アミンN1923と第3級アミンN235とリン酸トリブチルとの組み合わせ等を有するが、これらに限定されない。
【0019】
好ましくは、前記有機酸が酢酸またはプロピオン酸である場合、前記抽出剤は、有機リン抽出剤、有機アミン抽出剤、エステル系抽出剤、またはケトン系抽出剤のうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを選択し、前記組み合わせの典型的なインスタンスは、有機リン抽出剤と有機アミン抽出剤との組み合わせ、有機アミン抽出剤とケトン系抽出剤との組み合わせ、有機アミン抽出剤とエステル系抽出剤との組み合わせ、エステル系抽出剤とケトン系抽出剤との組み合わせ、ケトン系抽出剤と有機リン抽出剤との組み合わせ、または有機リン抽出剤と有機アミン抽出剤とケトン系抽出剤との組み合わせを有するが、これらに限定されない。
【0020】
好ましくは、前記有機酸が酢酸またはプロピオン酸である場合、前記抽出剤は、トリオクチルホスフィンオキシド、リン酸トリブチル、トリオクチルアミン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸tert-ブチル、n-吉草酸エチル、または酢酸グリセリルのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含み、前記組み合わせの典型的なインスタンスは、トリオクチルホスフィンオキシドとリン酸トリブチルとの組み合わせ、リン酸トリブチルとトリオクチルアミンとの組み合わせ、トリオクチルアミンとシクロヘキサノンとの組み合わせ、シクロヘキサノンと酢酸エチルとの組み合わせ、酢酸エチルと酢酸n-プロピルとの組み合わせ、酢酸n-プロピルと酢酸イソプロピルとの組み合わせ、酢酸イソプロピルと酢酸n-ブチルとの組み合わせ、酢酸n-ブチルと酢酸sec-ブチルとの組み合わせ、酢酸sec-ブチルと酢酸tert-ブチルとの組み合わせ、酢酸tert-ブチルとn-吉草酸エチルとの組み合わせ、n-吉草酸エチルと酢酸グリセリルとの組み合わせ、または酢酸エチルと酢酸n-プロピルと酢酸sec-ブチルとの組み合わせ等を有するが、これらに限定されない。
【0021】
好ましくは、前記有機酸が酪酸である場合、前記抽出剤は、有機リン抽出剤および/または有機アミン抽出剤および希釈剤を選択する。
【0022】
好ましくは、前記有機酸が酪酸である場合、前記抽出剤は、第1級アミンN1923および/またはリン酸トリブチルおよび希釈剤を含む。
【0023】
好ましくは、前記希釈剤はハロゲン化炭化水素であり、クロロホルムおよび/または1,1,2-トリクロロエタンが好ましい。
【0024】
好ましくは、前記抽出剤と希釈剤との体積比は(1~10):1であり、例えば、1:1、2:1、3:1、4:1、5:1、6:1、7:1、8:1、9:1、または10:1等であるが、列挙された数値に限定されるものではなく、該数値範囲内の他の列挙されていない数値は同様に適用される。
【0025】
本願の好ましい技術案として、前記有機酸濃度が20wt%よりも低い溶液と抽出剤との体積比は1:(0.5~5)であり、例えば、1:0.5、1:1、1:1.5、1:2、1:2.5、1:3、1:3.5、1:4、1:4.5、または1:5等であるが、列挙された数値に限定されるものではなく、該数値範囲内の他の列挙されていない数値は同様に適用される。
【0026】
本願において、前記有機酸がギ酸である場合、前記ギ酸濃度が20wt%よりも低い溶液と抽出剤との体積比は、1:4であることが好ましい。
【0027】
好ましくは、前記向流抽出は常圧下で行われ、温度が20~70℃であり、例えば、20℃、30℃、40℃、50℃、60℃、または70℃等であるが、列挙された数値に限定されるものではなく、該数値範囲内の他の列挙されていない数値は同様に適用される。
【0028】
本願に記載した向流抽出は、充填抽出塔で行うことができ、前記充填抽出塔の充填高さは20~30段の理論段高さに相当する。前記有機酸濃度が20wt%よりも低い溶液は充填抽出塔の頂部に入り、抽出剤は充填抽出塔の底部に入り、常温常圧下で向流抽出を行い、塔頂で抽出相を取得し、塔底で抽残相を取得する。
【0029】
好ましくは、前記抽出相は抽出剤、有機酸および水を含む。
【0030】
本願において、前記抽出相における有機酸の濃度は4~40wt%であり、例えば、7wt%、10wt%、15wt%、20wt%、25wt%、30wt%、35wt%、または40wt%等であるが、列挙された数値に限定されるものではなく、該数値範囲内の他の列挙されていない数値は同様に適用される。
【0031】
好ましくは、前記抽残相は水、抽出剤および有機酸を含む。
【0032】
本願において、前記抽残相における有機酸の濃度は0.01~2.0wt%であり、例えば、0.01wt%、0.05wt%、0.1wt%、0.2wt%、0.5wt%、0.8wt%、1.0wt%、1.5wt%、1.8wt%、または2.0wt%等であるが、列挙された数値に限定されるものではなく、該数値範囲内の他の列挙されていない数値は同様に適用される。
【0033】
本願の好ましい技術案として、前記有機酸濃度が70wt%よりも高い溶液と抽出相との体積比は1:(1~5)であり、例えば、1:1、1:1.5、1:2、1:2.5、1:3、1:3.5、1:4、1:4.5、または1:5等であるが、列挙された数値に限定されるものではなく、該数値範囲内の他の列挙されていない数値は同様に適用される。
【0034】
本願において、前記共沸精留は共沸精留塔で行うことができ、共沸精留塔における充填高さは45~55段の理論段数に相当し、前記向流抽出により得られた抽出相は、20~25段目の棚段から共沸精留塔に入り、前記有機酸濃度が70wt%よりも高い溶液は、
30~35段目の棚段から共沸精留塔に入り、共沸精留後に塔頂で抽出剤、水および少量の有機酸を留出し、塔釜で有機酸を得る。塔頂で得られた留分を分液すれば、抽出剤を得て循環使用することができる。
【0035】
本願の好ましい技術案として、前記有機酸が酢酸またはプロピオン酸である場合、前記抽出濃縮に使用される抽出剤は、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸sec-ブチル、酢酸tert-ブチル、n-吉草酸エチル、または酢酸グリセリルのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組み合わせを含み、前記組み合わせの典型的なインスタンスは、酢酸エチルと酢酸n-プロピルとの組み合わせ、酢酸n-プロピルと酢酸イソプロピルとの組み合わせ、酢酸イソプロピルと酢酸n-ブチルとの組み合わせ、酢酸n-ブチルと酢酸sec-ブチルとの組み合わせ、酢酸sec-ブチルと酢酸tert-ブチルとの組み合わせ、酢酸tert-ブチルとn-吉草酸エチルとの組み合わせ、n-吉草酸エチルと酢酸グリセリルとの組み合わせ、または酢酸エチルと酢酸n-プロピルと酢酸sec-ブチルとの組み合わせ等を有するが、これらに限定されない。
【0036】
本願の好ましい技術案として、前記有機酸がギ酸または酪酸である場合、前記抽出濃縮に使用される抽出剤は前記向流抽出に使用される抽出剤と同じである。
【0037】
本願の好ましい技術案として、向流抽出の前に固体吸着剤を用いて有機酸水溶液を浄化処理する。
【0038】
好ましくは、固体吸着剤を用いて抽残相を吸着し、加熱脱着により抽残相中の有機酸を回収するとともに、吸着剤を再生させる。
【0039】
本願に使用される固体吸着剤は、活性炭、陰イオン樹脂、またはモレキュラーシーブ(molecular sieve)等であってもよい。
【0040】
本願の好ましい技術案として、前記有機酸水溶液中の有機酸を結合回収する方法は以下のとおりである。
【0041】
有機酸濃度が20wt%よりも低い溶液と抽出剤とを体積比1:(1~3)で混合し、常圧下で20~25℃にて向流抽出を行い、抽出相および抽残相を取得し、固体吸着剤を用いて抽残相を吸着し、加熱脱着により抽残相中の有機酸を回収するとともに、吸着剤を再生させ、前記抽出相と有機酸濃度が70wt%よりも高い溶液とを体積比(1~5):1で混合し、共沸精留して有機酸を採取する。
【発明の効果】
【0042】
関連技術と比べ、本願は少なくとも以下の有益な効果を有する。
【0043】
本願は、有機酸水溶液中の有機酸を結合回収する方法を提供し、前記方法は、単独の低濃度の有機酸水溶液の回収に対して方法が簡単で、エネルギー消費が低く、回収効果がよく、単独の高濃度の有機酸水溶液の回収に対して共沸剤を追加する必要がなく、コストを節約し、このような組合せ方式は、回収過程における試薬を十分に利用し、エネルギー消費を節約し、フローを簡略化することができる。
【0044】
詳細な説明を閲読し理解することで、他の態様も理解できる。
【発明を実施するための形態】
【0045】
本願を理解しやすいために、本願は以下の実施例を挙げる。以下の実施例が本願を理解
するためのものに過ぎず、本願を具体的に制限するものではないことを当業者は理解すべきである。
【0046】
本願の具体的な実施形態は、充填高さが25段の理論段高さに相当する充填塔を用いて向流抽出を行い、条件は常圧、25℃であり、充填高さが50段の理論段数である共沸精留塔を用いて共沸精留を行い、前記向流抽出により得られた抽出相は、23段目の棚段から共沸精留塔に入り、前記有機酸濃度が70wt%よりも高い溶液は、32段目の棚段から共沸精留塔に入る。
【0047】
本願実施例1~5に係る有機酸濃度が20wt%よりも低い溶液と抽出剤との体積比は1:2であり、前記有機酸濃度が70wt%よりも高い溶液と抽出相との体積比は1:3であり、抽出剤はトリオクチルホスフィンオキシドを選択する。前記有機酸濃度が20wt%よりも低い溶液は低濃度の有機酸水溶液と略称され、前記濃度が70wt%よりも高い溶液は高濃度の有機酸水溶液と略称され、前記低濃度の有機酸水溶液および高濃度の有機酸水溶液中の有機酸の濃度は表1に示すとおりである。有機酸は酢酸である。
【0048】
【0049】
実施例6~10において、前記低濃度の有機酸水溶液と抽出剤との体積比(体積比Aと略称する)および前記高濃度の有機酸水溶液と抽出相との体積比(体積比Bと略称する)は実施例5と異なるほか、その他の条件はいずれも実施例4と同じであり、実施例6~10の体積比Aおよび体積比Bは表2に示すとおりである。
【0050】
【0051】
実施例11~15において、使用される抽出剤は実施例5と異なるほか、その他の条件はいずれも実施例5と同じであり、実施例11~15に使用される抽出剤は表3に示すとおりである。
【0052】
【0053】
実施例16~20において、高濃度の有機酸は有機酸濃度が20~70wt%の有機酸水溶液を抽出濃縮して得られたものであるほか、他の条件はいずれも実施例5と同じである。有機酸濃度および抽出濃縮に使用される抽出剤の選択は表4に示すとおりである。
【0054】
【0055】
実施例21~25において、有機酸はギ酸であり、抽出剤の選択および抽出濃縮に使用される抽出剤の選択に加え、それと同時に低濃度の有機酸を抽出する際に希釈剤を加えるほか、他の条件はいずれも対応して実施例16~20と同じである。ここで、抽出剤は抽出濃縮に使用される抽出剤と同じである。抽出剤および希釈剤の選択は表5に示すとおりである。
【0056】
【0057】
比較例1~5において、低濃度の有機酸水溶液中の有機酸の濃度が実施例5と異なるほか、その他の条件はいずれも実施例5と同じであり、比較例6~10において、高濃度の有機酸水溶液中の有機酸の濃度が実施例5と異なるほか、その他の条件はいずれも実施例4と同じであり、比較例11~15において、低濃度の有機酸水溶液および高濃度の有機酸水溶液中の有機酸の濃度が実施例5と異なるほか、その他の条件はいずれも実施例5と同じであり、比較例1~5において、低濃度の有機酸水溶液および高濃度の有機酸水溶液中の有機酸の濃度は表6に示すとおり、比較例6~10において、低濃度の有機酸水溶液および高濃度の有機酸水溶液中の有機酸の濃度は表7に示すとおり、比較例11~15において、低濃度の有機酸水溶液および高濃度の有機酸水溶液中の有機酸の濃度は表8に示すとおりである。
【0058】
【0059】
【0060】
【0061】
実施例1~20および比較例1~15において、有機酸は酢酸であり、実施例1~20および比較例1~15で得られた有機酸の純度および抽出率を表すと、結果は表9に示すとおりである。
【0062】
【0063】
実施例21~25で得られたギ酸の純度および抽出率を表すと、結果は表10に示すとおりである。
【0064】
【0065】
表1の試験結果により見られるように、低濃度の有機酸が20wt%よりも大きいおよび/または高濃度の有機酸の濃度が70wt%よりも小さい場合、有機酸溶液を直接抽出し、有機酸の抽出率および抽出された有機酸の純度はいずれも本願に係る方法で抽出された有機酸よりも低い。
【0066】
本願は、上記実施例により本願の詳細なプロセス装置およびプロセスフローを説明するが、本願は上記詳細なプロセス装置およびプロセスフローに限定されるものではなく、すなわち、本願は上記詳細なプロセス装置およびプロセスフローに依存して実施しなければならないことを意味するものではないことを、出願人より声明する。