(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】アミド反応用反応剤及びそれを用いたアミド化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07C 231/02 20060101AFI20230314BHJP
C07C 221/00 20060101ALI20230314BHJP
C07C 233/05 20060101ALI20230314BHJP
C07C 233/18 20060101ALI20230314BHJP
C07C 233/22 20060101ALI20230314BHJP
C07C 237/12 20060101ALI20230314BHJP
C07C 237/20 20060101ALI20230314BHJP
C07D 223/12 20060101ALI20230314BHJP
C07F 7/04 20060101ALI20230314BHJP
C07F 7/10 20060101ALI20230314BHJP
C07K 1/02 20060101ALI20230314BHJP
C07K 1/08 20060101ALI20230314BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20230314BHJP
【FI】
C07C231/02
C07C221/00
C07C233/05
C07C233/18
C07C233/22
C07C237/12
C07C237/20
C07D223/12 D
C07F7/04 H
C07F7/10 S
C07K1/02
C07K1/08
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2021553744
(86)(22)【出願日】2020-10-30
(86)【国際出願番号】 JP2020040960
(87)【国際公開番号】W WO2021085636
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-04-27
(31)【優先権主張番号】P 2019197786
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019197776
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2020059087
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500433225
【氏名又は名称】学校法人中部大学
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【氏名又は名称】関根 宣夫
(72)【発明者】
【氏名】山本 尚
(72)【発明者】
【氏名】村松 渉
(72)【発明者】
【氏名】服部 倫弘
【審査官】阿久津 江梨子
(56)【参考文献】
【文献】第5版 実験化学講座 16,丸善株式会社,2005年,pp. 259-260, 268-269
【文献】SCHMIDT, Michael A. et al.,Development of a Two-Step, Enantioselective Synthesis of an Amino Alcohol Drug Candidate,Organic Process Research & Development,2015年,Vol. 19, No. 9,pp. 1317-1322,ISSN 1083-6160
【文献】MURAMATSU, Wataru et al.,Substrate-Directed Lewis-Acid Catalysis for Peptide Synthesis,Journal of the American Chemical Society,2019年07月16日,Vol. 141, No. 31,pp. 12288-12295,ISSN 1520-5126
【文献】MURAMATSU, Wataru et al.,Peptide bond-forming reaction via amino acid silyl esters: New catalytic reactivity of an aminosilan,ACS Catalysis,2020年,Vol. 10, No. 16,pp. 9594-9603
【文献】TOZAWA, Takashi et al.,An efficient method for the preparation of carboxamides by dehydration condensation using tetrakis(1,Chemistry Letters,2005年,Vol. 34, No. 12,pp. 1586-1587,ISSN 0366-7022
【文献】TOZAWA, Takashi et al.,A convenient method for preparations of 1-acylimidazoles and carboxamides by using novel imidazolyls,Chemistry Letters,2005年,Vol. 34, No. 5,pp. 734-735,ISSN 0366-7022
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07D
C07F
C07K
C07B
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1-1)により示される化合物と、一般式(1-2)により示される化合物とから、一般式(1-3)により示されるアミド化合物を製造する方法であって、
一般式(A)により示される1種又は2種以上のシラン化合物の存在下、一般式(1-1)により示される化合物と、一般式(1-2)により示される化合物とを反応させる工程を含む、製造方法。
【化1】
(上記一般式(1-1)において、
R
11は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の炭化水素基若しくは複素環式基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい多価の炭化水素基若しくは複素環式基が複数、任意により連結基を介して、連結されてなる一価の基を表す。)
【化2】
(上記一般式(1-2)において、
R
12は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の炭化水素基若しくは複素環式基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい多価の炭化水素基若しくは複素環式基が複数、任意により連結基を介して、連結されてなる一価の基を表し、
R
13は、水素原子、カルボキシル基、水酸基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の炭化水素基若しくは複素環式基を表し、ここで、一価の炭化水素基又は複素環式基の場合は、連結基を介して窒素原子に結合していてもよく、
ここで、R
12とR
13とが互いに結合して、R
12及びR
13が結合する窒素原子と共に、1又は2以上の置換基を有していてもよい複素環を形成していてもよい。)
【化3】
(上記一般式(1-3)において、各符号はそれぞれ、上記一般式(1-1)及び(1-2)における定義と同様の定義を表す。)
【化4】
(上記一般式(A)において、
R
a1は、1又は2以上のハロゲン原子で置換された一価の炭化水素基を表し、
R
a2は、水素、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、環構成原子として1個以上の窒素原子を含む5~7員の複素環式基を表し、
xは、3を表し、ここで、x個のR
a1は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよく、
yは、1を表す。)
【請求項2】
一般式(2-1)により示される化合物から、一般式(2-2)により示されるアミド化合物を製造する方法であって、
一般式(A)により示される1種又は2種以上のシラン化合物の存在下、一般式(2-1)により示される化合物を分子内反応させる工程を含む、製造方法。
【化5】
(上記一般式(2-1)において、
R
21は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい二価の炭化水素基若しくは複素環式基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい多価の炭化水素基若しくは複素環式基が複数、任意により連結基を介して、連結されてなる二価の基を表し、
R
22は、水素原子、カルボキシル基、水酸基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の炭化水素基若しくは複素環式基を表し、ここで、一価の炭化水素基又は複素環式基の場合は、連結基を介して窒素原子に結合していてもよく、
ここで、R
21とR
22とが互いに結合して、R
21及びR
22が結合する窒素原子と共に、1又は2以上の置換基を有していてもよい複素環を形成していてもよい。)
【化6】
(上記一般式(2-2)において、各符号はそれぞれ、上記一般式(2-1)における定義と同様の定義を表す。)
【化7】
(上記一般式(A)において、
R
a1は、1又は2以上のハロゲン原子で置換された一価の炭化水素基を表し、
R
a2は、水素、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、環構成原子として1個以上の窒素原子を含む5~7員の複素環式基を表し、
xは、3を表し、ここで、x個のR
a1は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよく、
yは、1を表す。)
【請求項3】
一般式(3-1)により示される化合物と、一般式(3-2)により示される化合物とから、一般式(3-3)により示されるアミド化合物を製造する方法であって、
一般式(A)により示されるシラン化合物及び一般式(B)により示されるシラン化合物からなる群より選択される1種又は2種以上のシラン化合物の存在下、一般式(3-1)により示される化合物と、一般式(3-2)により示される化合物とを反応させる工程を含む、製造方法。
【化8】
(上記一般式(3-1)において、
R
31及びR
32は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の炭化水素基若しくは複素環式基を表し、ここで、一価の炭化水素基又は複素環式基の場合は、連結基を介して炭素原子に結合していてもよく、
R
33は、水素原子、カルボキシル基、水酸基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の炭化水素基若しくは複素環式基を表し、ここで、一価の炭化水素基又は複素環式基の場合は、連結基を介して窒素原子に結合していてもよく、
ここで、R
31とR
33とが互いに結合して、R
31が結合する炭素原子及びR
33が結合する窒素原子と共に、1又は2以上の置換基を有していてもよい複素環を形成していてもよく、
A
1及びA
2は、それぞれ独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい炭素数1~3の二価の脂肪族炭化水素基を表し、
T
1は、水素原子又は一価の置換基を表し、
p1及びp2は、それぞれ独立に、0又は1を表し、
mは、1以上の整数であり、かつ、[ ]内の構造で表される構成単位の数を表す。但し、mが2以上である場合は、[ ]内の構造で表される複数の構成単位は各々同一でもよく、異なっていてもよい。)
【化9】
(上記一般式(3-2)において、
R
34及びR
35は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の炭化水素基若しくは複素環式基を表し、ここで、一価の炭化水素基又は複素環式基の場合は、連結基を介して炭素原子に結合していてもよく、
R
36は、水素原子、カルボキシル基、水酸基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の炭化水素基若しくは複素環式基を表し、ここで、一価の炭化水素基又は複素環式基の場合は、連結基を介して窒素原子に結合していてもよく、
ここで、R
34とR
36とが互いに結合して、R
34が結合する炭素原子及びR
36が結合する窒素原子と共に、1又は2以上の置換基を有していてもよい複素環を形成していてもよく、
A
3及びA
4は、それぞれ独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい炭素数1~3の二価の脂肪族炭化水素基を表し、
T
2は、水素原子又は一価の置換基を表し、
p3及びp4は、それぞれ独立に、0又は1を表し、
nは、1以上の整数であり、かつ、[ ]内の構造で表される構成単位の数を表す。但し、nが2以上である場合は、[ ]内の構造で表される複数の構成単位は各々同一でもよく、異なっていてもよい。)
【化10】
(上記一般式(3-3)において、各符号はそれぞれ、上記一般式(3-1)及び(3-2)における定義と同様の定義を表す。)
【化11】
(上記一般式(A)において、
R
a1は、1又は2以上のハロゲン原子で置換された一価の炭化水素基を表し、
R
a2は、水素、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、環構成原子として1個以上の窒素原子を含む5~7員の複素環式基を表し、
xは、3を表し、ここで、x個のR
a1は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよく、
yは、1を表す。)
【化12】
(上記一般式(B)において、
R
b1及びR
b2は、それぞれ独立に、
1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、炭素数1~10のアルキル基
を表し、
Z
b1及びZ
b2は、それぞれ独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい
イミダゾール基を表す。)
【請求項4】
前記反応が、一般式(A)により示されるシラン化合物に加えて、当該シラン化合物とは異なる第2のシラン化合物の共存下で行われる、請求項1~3の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記第2のシラン化合物が、一般式(C1)~(C4)により示される化合物からなる群より選択される1種以上のシラン化合物である、請求項4に記載の製造方法。
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
(上記一般式(C1)~(C4)において、
R
c1~R
c3は、それぞれ独立に、水素原子、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、炭素数1~10の直鎖若しくは分枝鎖状のアルキル基若しくはアルコキシ基を表し、但しR
c1~R
c3のうち水素原子は0個又は1個であり、
R
c4及びR
c5は、それぞれ独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい、炭素数1~10の直鎖又は分枝鎖状のアルキル基又はアルコキシ基を表し、
Z
cは、1又は2以上の置換基を有していてもよい、環構成原子として1以上の窒素原子を含む5~10員の複素環式基を表し、
Y
cは、水素原子又はハロゲン基を表し、
R
c6は、1又は2以上の置換基を有していてもよい、炭素数1~10の直鎖又は分枝鎖状のアルキル基、アルコキシ基、又はアルキルカルボニル基を表し、
sは、1又は2を表す。但しsが2の場合、R
c6は存在しない。)
【請求項6】
前記反応が、アミノシラン触媒の存在下で行われる、請求項1~5の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記アミノシラン触媒が、一般式(D)により示される化合物からなる群より選択される1種以上のアミノシラン化合物である、請求項6に記載の製造方法。
【化17】
(上記一般式(D)において、
R
d1~R
d3は、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していてもよい直鎖若しくは分枝鎖状のアルキル基若しくはアルコキシ基を表す。但し、R
c1~R
c3のうち水素原子の数は0個又は1個である。
R
d4及びR
d5は、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していてもよい、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、若しくはアリールアルキル基を表す。但し、R
d4及びR
d5のうち水素原子の数は0個又は1個である。)
【請求項8】
前記反応が、ルイス酸触媒の存在下で行われる、請求項1~7の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記ルイス酸触媒が、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、及びニオブからなる群より選択される1種以上の金属を含む金属化合物である、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
前記反応が、リン化合物の存在下で行われる、請求項1~9の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記リン化合物が、ホスフィン化合物又はホスフェート化合物である、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
前記反応が、バッチ反応又はフロー反応である、請求項1~11の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
一般式(3-1)により示される化合物と、一般式(3-2)により示される化合物とから、一般式(3-3)により示されるアミド化合物を製造する方法であって、
一般式(B)により示される1種又は2種以上のシラン化合物の存在下、一般式(3-1)により示される化合物と、一般式(3-2)により示される化合物とを反応させる工程を含むと共に、
前記反応が、当該シラン化合物とは異なる第2のシラン化合物、アミノシラン触媒、ルイス酸触媒、及び/又は、リン化合物の共存下で行われる、製造方法。
【化18】
(上記一般式(3-1)において、
R
31
及びR
32
は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の炭化水素基若しくは複素環式基を表し、ここで、一価の炭化水素基又は複素環式基の場合は、連結基を介して炭素原子に結合していてもよく、
R
33
は、水素原子、カルボキシル基、水酸基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の炭化水素基若しくは複素環式基を表し、ここで、一価の炭化水素基又は複素環式基の場合は、連結基を介して窒素原子に結合していてもよく、
ここで、R
31
とR
33
とが互いに結合して、R
31
が結合する炭素原子及びR
33
が結合する窒素原子と共に、1又は2以上の置換基を有していてもよい複素環を形成していてもよく、
A
1
及びA
2
は、それぞれ独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい炭素数1~3の二価の脂肪族炭化水素基を表し、
T
1
は、水素原子又は一価の置換基を表し、
p1及びp2は、それぞれ独立に、0又は1を表し、
mは、1以上の整数であり、かつ、[ ]内の構造で表される構成単位の数を表す。但し、mが2以上である場合は、[ ]内の構造で表される複数の構成単位は各々同一でもよく、異なっていてもよい。)
【化19】
(上記一般式(3-2)において、
R
34
及びR
35
は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の炭化水素基若しくは複素環式基を表し、ここで、一価の炭化水素基又は複素環式基の場合は、連結基を介して炭素原子に結合していてもよく、
R
36
は、水素原子、カルボキシル基、水酸基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の炭化水素基若しくは複素環式基を表し、ここで、一価の炭化水素基又は複素環式基の場合は、連結基を介して窒素原子に結合していてもよく、
ここで、R
34
とR
36
とが互いに結合して、R
34
が結合する炭素原子及びR
36
が結合する窒素原子と共に、1又は2以上の置換基を有していてもよい複素環を形成していてもよく、
A
3
及びA
4
は、それぞれ独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい炭素数1~3の二価の脂肪族炭化水素基を表し、
T
2
は、水素原子又は一価の置換基を表し、
p3及びp4は、それぞれ独立に、0又は1を表し、
nは、1以上の整数であり、かつ、[ ]内の構造で表される構成単位の数を表す。但し、nが2以上である場合は、[ ]内の構造で表される複数の構成単位は各々同一でもよく、異なっていてもよい。)
【化20】
(上記一般式(3-3)において、各符号はそれぞれ、上記一般式(3-1)及び(3-2)における定義と同様の定義を表す。)
【化21】
(上記一般式(B)において、
R
b1
及びR
b2
は、それぞれ独立に、水素原子、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、炭素数1~10のアルキル基若しくはアルコキシ基、若しくは、炭素数6~12のアリール基、アラルキル基、アルキルアリール基、アリーロキシ基、アラルキロキシ基、若しくはアルキルアリーロキシ基を表し、
Z
b1
及びZ
b2
は、それぞれ独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい、環構成原子として1以上の窒素原子を含む5~7員の複素環式基を表す。)
【請求項14】
前記第2のシラン化合物が、一般式(C1)~(C4)により示される化合物からなる群より選択される1種以上のシラン化合物である、請求項13に記載の製造方法。
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
(上記一般式(C1)~(C4)において、
R
c1
~R
c3
は、それぞれ独立に、水素原子、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、炭素数1~10の直鎖若しくは分枝鎖状のアルキル基若しくはアルコキシ基を表し、但しR
c1
~R
c3
のうち水素原子は0個又は1個であり、
R
c4
及びR
c5
は、それぞれ独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい、炭素数1~10の直鎖又は分枝鎖状のアルキル基又はアルコキシ基を表し、
Z
c
は、1又は2以上の置換基を有していてもよい、環構成原子として1以上の窒素原子を含む5~10員の複素環式基を表し、
Y
c
は、水素原子又はハロゲン基を表し、
R
c6
は、1又は2以上の置換基を有していてもよい、炭素数1~10の直鎖又は分枝鎖状のアルキル基、アルコキシ基、又はアルキルカルボニル基を表し、
sは、1又は2を表す。但しsが2の場合、R
c6
は存在しない。)
【請求項15】
前記アミノシラン触媒が、一般式(D)により示される化合物からなる群より選択される1種以上のアミノシラン化合物である、請求項13又は14に記載の製造方法。
【化26】
(上記一般式(D)において、
R
d1
~R
d3
は、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していてもよい直鎖若しくは分枝鎖状のアルキル基若しくはアルコキシ基を表す。但し、R
c1
~R
c3
のうち水素原子の数は0個又は1個である。
R
d4
及びR
d5
は、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していてもよい、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、若しくはアリールアルキル基を表す。但し、R
d4
及びR
d5
のうち水素原子の数は0個又は1個である。)
【請求項16】
前記ルイス酸触媒が、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、及びニオブからなる群より選択される1種以上の金属を含む金属化合物である、請求項13~15の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項17】
前記リン化合物が、ホスフィン化合物又はホスフェート化合物である、請求項13~16の何れか一項に記載の製造方法。
【請求項18】
前記反応が、バッチ反応又はフロー反応である、請求項13~17の何れか一項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アミド反応用反応剤及びそれを用いたアミド化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ペプチドに代表されるアミド化合物は、医薬品、化粧品、機能性食品をはじめ、幅広い分野で利用されており、その合成法の開発は、合成化学における重要な研究課題として精力的に実施されてきた(非特許文献1~6)。しかし、そのペプチド合成に最も重要であるアミド化にはカルボン酸活性化剤の他には、真に有効な触媒や反応剤が殆ど存在していない。そのため、大量の副生成物を生ずる反応様式を用いざるを得ず、しかも多段階の反応を繰り返すペプチド合成はアトム・エコノミー(原子収率)の観点から極めて非効率な合成であり、副生成物は膨大な量となり、また、有効な精製手段も少ない。その結果、副生成物の廃棄と精製にかかるコストがペプチド合成の殆どの必要経費を占め、この分野の発展における最大障壁の一つとなっている。
【0003】
アミノ酸又はその誘導体を原料とするペプチド合成では、高立体選択的にアミド化を行うことが求められる。高立体選択的なアミド化としては、生体内での酵素反応が挙げられる。例えば、生体内では、酵素と水素結合を巧みに利用して、極めて高立体選択的にペプチドを合成している。しかしながら、酵素反応は、大量生産には不向きであり、合成化学に適用すると、膨大な金銭的・時間的なコストが必要となる。
【0004】
合成化学においても、触媒を用いたアミド化が検討されているが、従来の手法では、主にカルボン酸を活性化する手法によりアミド結合を形成しているため、ラセミ化の進行が早く、高立体選択的且つ効率的にアミド化合物を合成することは困難である。
【0005】
また、従来の方法では、複数のアミノ酸又はその誘導体が連結されてなるペプチドに、更にアミノ酸又はその誘導体をアミド結合によりライゲーション(Chemical Ligation)することや、二以上のペプチドをアミド結合によりライゲーションすることは、極めて困難である。斯かるペプチドに対するライゲーションのためのアミド化法としては、硫黄原子を有するアミノ酸を用い、硫黄原子の高い反応性を利用してライゲーションを行う方法(非特許文献7)や、アミノ酸のヒドロキシアミンを合成し、ヒドロキシアミンの高い反応性を利用してライゲーションを行う方法(非特許文献8)が知られているが、前者は硫黄原子を有するアミノ酸の合成が難しく、後者は数工程に亘るヒドロキシアミン合成が別途必要となるため、何れも時間・費用がかかり、効率性の面で難がある。
【0006】
本発明者等は、β位にヒドロキシ基を有するカルボン酸/エステル化合物を特定の金属触媒の存在下でアミド化する方法(特許文献1)、アミノ酸前駆体としてヒドロキシアミノ/イミノ化合物を用い、これを特定の金属触媒の存在下でアミド化した後、特定の金属触媒の存在下で還元する方法(特許文献2)、カルボン酸/エステル化合物を特定の金属触媒の存在下でアミド化する方法(特許文献3)等により、高化学選択的にアミド化合物を合成する技術を開発している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】国際公開第2017/204144号
【文献】国際公開第2018/199146号
【文献】国際公開第2018/199147号
【非特許文献】
【0008】
【文献】Annu. Rev. Biophys. Biomol. Struct., 2005, 34, 91-118
【文献】Tetrahedron, 2005, 6, 10827-10852
【文献】Chem. Rev., 2007, 107, 5759-5812
【文献】Chem. Rev., 2011, 111, 6557- 6602
【文献】Org. Process Res. Dev., 2016, 20(2), 140-177
【文献】Chem. Rev., 2016, 116, 12029-12122
【文献】Science, 1992, 256, 221-225
【文献】Angew. Chem. Int. Ed., 2006, 45, 1248-1252
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、カルボキシル基とアミノ基とを有する種々の基質に対して、高立体選択的及び/又は高効率的にアミド化反応を生じさせ、アミド化合物を製造することが可能な新たな方法の開発が望まれている。
【0010】
即ち、本発明の目的の一つは、カルボキシル基とアミノ基とを有する種々の基質に対して、高立体選択的及び/又は高効率的にアミド化反応を生じさせ、アミド化合物を製造することが可能な新たな手段を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは鋭意検討の結果、特定の構造を有するシラン化合物が、カルボキシル基とアミノ基とのアミド化反応を生じさせる作用を有すること、斯かるシラン化合物を反応剤として単独で、或いは任意により他の第2のシラン化合物、ルイス酸触媒、及び/又はリン化合物と組み合わせて用いることで、カルボキシル基とアミノ基とを有する種々の基質に対して、高立体選択的及び/又は高効率的にアミド化反応を生じさせ、アミド化合物を製造することが可能となることを見出し、本発明に到達した。
【0012】
すなわち、本発明の趣旨は、以下に存する。
・項[1]
カルボキシル基とアミノ基とのアミド反応の反応剤であって、一般式(A)により示されるシラン化合物及び一般式(B)により示されるシラン化合物からなる群より選択される1種又は2種以上のシラン化合物を含む反応剤。
【化1】
(上記一般式(A)において、
R
a1は、1又は2以上のハロゲン原子で置換された一価の炭化水素基を表し、
R
a2は、水素、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、環構成原子として1個以上の窒素原子含む5~7員の複素環式基を表し、
xは、3又は4の整数を表し、ここで、x個のR
a1は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよく、
yは、1又は0の整数を表し、但しx+y=4である。また、yが0の場合、R
a2は存在しない。)
【化2】
(上記一般式(B)において、
R
b1及びR
b2は、それぞれ独立に、水素原子、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、炭素数1~10のアルキル基若しくはアルコキシ基、若しくは、炭素数6~12のアリール基、アラルキル基、アルキルアリール基、アリーロキシ基、アラルキロキシ基、若しくはアルキルアリーロキシ基を表し、
Z
b1及びZ
b2は、それぞれ独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい、環構成原子として1以上の窒素原子を含む5~7員の複素環式基を表す。)
・項[2]
一般式(1-1)により示される化合物と、一般式(1-2)により示される化合物とから、一般式(1-3)により示されるアミド化合物を製造する方法であって、
項[1]に記載のシラン化合物の存在下、一般式(1-1)により示される化合物と、一般式(1-2)により示される化合物とを反応させる工程を含む、製造方法。
【化3】
(上記一般式(1-1)において、
R
11は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の炭化水素基若しくは複素環式基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい多価の炭化水素基若しくは複素環式基が複数、任意により連結基を介して、連結されてなる一価の基を表す。)
【化4】
(上記一般式(1-2)において、
R
12は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の炭化水素基若しくは複素環式基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい多価の炭化水素基若しくは複素環式基が複数、任意により連結基を介して、連結されてなる一価の基を表し、
R
13は、水素原子、カルボキシル基、水酸基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の炭化水素基若しくは複素環式基を表し、ここで、一価の炭化水素基又は複素環式基の場合は、連結基を介して窒素原子に結合していてもよく、
ここで、R
12とR
13とが互いに結合して、R
12及びR
13が結合する窒素原子と共に、1又は2以上の置換基を有していてもよい複素環を形成していてもよい。)
【化5】
(上記一般式(1-3)において、各符号はそれぞれ、上記一般式(1-1)及び(1-2)における定義と同様の定義を表す。)
・項[3]
一般式(2-1)により示される化合物から、一般式(2-2)により示されるアミド化合物を製造する方法であって、
項[1]に記載のシラン化合物の存在下、一般式(2-1)により示される化合物を分子内反応させる工程を含む、製造方法。
【化6】
(上記一般式(2-1)において、
R
21は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい二価の炭化水素基若しくは複素環式基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい多価の炭化水素基若しくは複素環式基が複数、任意により連結基を介して、連結されてなる二価の基を表し、
R
22は、水素原子、カルボキシル基、水酸基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の炭化水素基若しくは複素環式基を表し、ここで、一価の炭化水素基又は複素環式基の場合は、連結基を介して窒素原子に結合していてもよく、
ここで、R
21とR
22とが互いに結合して、R
21及びR
22が結合する窒素原子と共に、1又は2以上の置換基を有していてもよい複素環を形成していてもよい。)
【化7】
(上記一般式(2-2)において、各符号はそれぞれ、上記一般式(2-1)における定義と同様の定義を表す。)
・項[4]
一般式(3-1)により示される化合物と、一般式(3-2)により示される化合物とから、一般式(3-3)により示されるアミド化合物を製造する方法であって、
項[1]に記載のシラン化合物の存在下、一般式(3-1)により示される化合物と、一般式(3-2)により示される化合物とを反応させる工程を含む、製造方法。
【化8】
(上記一般式(3-1)において、
R
31及びR
32は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の炭化水素基若しくは複素環式基を表し、ここで、一価の炭化水素基又は複素環式基の場合は、連結基を介して炭素原子に結合していてもよく、
R
33は、水素原子、カルボキシル基、水酸基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の炭化水素基若しくは複素環式基を表し、ここで、一価の炭化水素基又は複素環式基の場合は、連結基を介して窒素原子に結合していてもよく、
ここで、R
31とR
33とが互いに結合して、R
31が結合する炭素原子及びR
33が結合する窒素原子と共に、1又は2以上の置換基を有していてもよい複素環を形成していてもよく、
A
1及びA
2は、それぞれ独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい炭素数1~3の二価の脂肪族炭化水素基を表し、
T
1は、水素原子又は一価の置換基を表し、
p1及びp2は、それぞれ独立に、0又は1を表し、
mは、1以上の整数であり、かつ、[ ]内の構造で表される構成単位の数を表す。但し、mが2以上である場合は、[ ]内の構造で表される複数の構成単位は各々同一でもよく、異なっていてもよい。)
【化9】
(上記一般式(3-2)において、
R
34及びR
35は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の炭化水素基若しくは複素環式基を表し、ここで、一価の炭化水素基又は複素環式基の場合は、連結基を介して炭素原子に結合していてもよく、
R
36は、水素原子、カルボキシル基、水酸基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の炭化水素基若しくは複素環式基を表し、ここで、一価の炭化水素基又は複素環式基の場合は、連結基を介して窒素原子に結合していてもよく、
ここで、R
34とR
36とが互いに結合して、R
34が結合する炭素原子及びR
36が結合する窒素原子と共に、1又は2以上の置換基を有していてもよい複素環を形成していてもよく、
A
3及びA
4は、それぞれ独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい炭素数1~3の二価の脂肪族炭化水素基を表し、
T
2は、水素原子又は一価の置換基を表し、
p3及びp4は、それぞれ独立に、0又は1を表し、
nは、1以上の整数であり、かつ、[ ]内の構造で表される構成単位の数を表す。但し、nが2以上である場合は、[ ]内の構造で表される複数の構成単位は各々同一でもよく、異なっていてもよい。)
【化10】
(上記一般式(3-3)において、各符号はそれぞれ、上記一般式(3-1)及び(3-2)における定義と同様の定義を表す。)
・項[5]
前記反応が、一般式(A)により示されるシラン化合物に加えて、当該シラン化合物とは異なる第2のシラン化合物の共存下で行われる、項[2]~[4]の何れか一項に記載の製造方法。
・項[6]
前記第2のシラン化合物が、一般式(C1)~(C4)により示される化合物からなる群より選択される1種以上のシラン化合物である、項[5]に記載の製造方法。
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
(上記一般式(C1)~(C4)において、
R
c1~R
c3は、それぞれ独立に、水素原子、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、炭素数1~10の直鎖若しくは分枝鎖状のアルキル基若しくはアルコキシ基を表し、但しR
c1~R
c3のうち水素原子は0個又は1個であり、
R
c4及びR
c5は、それぞれ独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい、炭素数1~10の直鎖又は分枝鎖状のアルキル基又はアルコキシ基を表し、
Z
cは、1又は2以上の置換基を有していてもよい、環構成原子として1以上の窒素原子を含む5~10員の複素環式基を表し、
Y
cは、水素原子又はハロゲン基を表し、
R
c6は、1又は2以上の置換基を有していてもよい、炭素数1~10の直鎖又は分枝鎖状のアルキル基、アルコキシ基、又はアルキルカルボニル基を表し、
sは、1又は2を表す。但しsが2の場合、R
c6は存在しない。)
・項[7]
前記反応が、アミノシラン触媒の存在下で行われる、項[4]~[6]の何れか一項に記載の製造方法。
・項[8]
前記アミノシラン触媒が、一般式(D)により示される化合物からなる群より選択される1種以上のアミノシラン化合物である、項[7]に記載の製造方法。
【化15】
(上記一般式(D)において、
R
d1~R
d3は、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していてもよい直鎖若しくは分枝鎖状のアルキル基若しくはアルコキシ基を表す。但し、R
c1~R
c3のうち水素原子の数は0個又は1個である。
R
d4及びR
d5は、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していてもよい、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、若しくはアリールアルキル基を表す。但し、R
d4及びR
d5のうち水素原子の数は0個又は1個である。)
・項[9]
前記反応が、ルイス酸触媒の存在下で行われる、項[2]~[8]の何れか一項に記載の製造方法。
・項[10]
前記ルイス酸触媒が、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、及びニオブからなる群より選択される1種以上の金属を含む金属化合物である、項[9]に記載の製造方法。
・項[11]
前記反応が、リン化合物の存在下で行われる、項[2]~[10]の何れか一項に記載の製造方法。
・項[12]
前記リン化合物が、ホスフィン化合物又はホスフェート化合物である、項[11]に記載の製造方法。
・項[13]
前記反応が、バッチ反応又はフロー反応である、項[2]~[12]の何れか一項に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の方法によれば、特定の構造を有するシラン化合物を、カルボキシル基とアミノ基とのアミド化反応を生じさせる反応剤として用いることで、カルボキシル基とアミノ基とを有する種々の基質に対して、高立体選択的及び/又は高効率的にアミド化反応を生じさせ、アミド化合物を製造することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を具体的な実施の形態に即して詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施の形態に束縛されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、任意の形態で実施することが可能である。
【0015】
なお、本開示で引用する特許公報、特許出願公開公報、及び非特許文献は、何れもその全体が援用により、あらゆる目的において本開示に組み込まれるものとする。
【0016】
・用語の定義:
本開示において「アミノ酸」とは、カルボキシル基及びアミノ基を有する化合物を意味する。別途明示しない限り、アミノ酸の種類は特に限定されない。例えば、光学異性の観点からは、D-アミノ酸でもL-アミノ酸でもよい。また、カルボキシル基とアミノ基との相対位置の観点からは、α-アミノ酸、β-アミノ酸、γ-アミノ酸、δ-アミノ酸、ω-アミノ酸等の何れであってもよい。アミノ酸の例としては、これらに限定されるものではないが、タンパク質を構成する天然アミノ酸等が挙げられ、具体例としては、バリン、ロイシン、イソロイシン、アラニン、アルギニン、グルタミン、リシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、プロリン、システイン、トレオニン、メチオニン、ヒスチジン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、アスパラギン、グリシン、セリン等が挙げられる。
【0017】
本開示において「ペプチド」とは、複数のアミノ酸がペプチド結合を介して連結された化合物を意味する。別途明示しない限り、ペプチドを構成する複数のアミノ酸単位は、互いに同じ種類のアミノ酸単位であってもよく、二種類以上の異なるアミノ酸単位であってもよい。ペプチドを構成するアミノ酸の数は、2以上であれば特に制限されない。例としては、2(「ジペプチド」ともいう)、3(「トリペプチド」ともいう)、4(「テトラペプチド」ともいう)、5(「ペンタペプチド」ともいう)、6、7、8、9、10、15、20、30、40、50、100、又はそれ以上が挙げられる。
【0018】
本開示において「ラクタム」とは、単一の分子が有するカルボキシル基とアミノ基とが分子内アミド化結合することにより環を形成した化合物を意味し、「環状ペプチド」とは、単一のペプチド分子内のカルボキシル基とアミノ基(例えば、これに限定されるものではないが、末端カルボキシル基と末端アミノ基)が分子内アミド化結合することにより環を形成したペプチドをいう。
【0019】
本開示において「アミノ基」とは、アンモニア、第一級アミン、又は第二級アミンから水素を除去して得られる、それぞれ式-NH2、-NRH、又は-NRR’(但しR及びR’はそれぞれ置換基を意味する。)で表される官能基を意味する。
【0020】
本開示において、別途明示しない限り、炭化水素基は、脂肪族でも芳香族でもよい。脂肪族炭化水素基は鎖状でも環状でもよい。鎖状炭化水素基は直鎖状でも分岐鎖状でもよい。環状炭化水素基は、単環式でも橋かけ環式でもスピロ環式でもよい。炭化水素基は、飽和でもよいが、不飽和でもよく、言い換えれば、一又は二以上の炭素-炭素二重結合及び/又は三重結合を含んでいてもよい。即ち、炭化水素基は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、シクロアルキニル基、アリール基等を含む概念である。なお、別途明示しない限り、炭化水素基の一又は二以上の水素原子が、任意の置換基で置換されていてもよく、炭化水素基の一又は二以上の炭素原子が、価数に応じた任意のヘテロ原子に置き換えられていてもよい。
【0021】
本開示において「炭化水素オキシ基」とは、前記定義の炭化水素基がオキシ基(-O-)の一方の結合手に連結された基を意味する。
【0022】
本開示において「炭化水素カルボニル基」とは、前記定義の炭化水素基がカルボニル基(-C(=O)-)の一方の結合手に連結された基を意味する。
【0023】
本開示において「炭化水素スルホニル基」とは、前記定義の炭化水素基がスルホニル基(-S(=O)2-)の一方の結合手に連結された基を意味する。
【0024】
本開示において、複素環式基は、飽和でもよいが、不飽和でもよく、言い換えれば、一又は二以上の炭素-炭素二重結合及び/又は三重結合を含んでいてもよい。また、複素環式基は単環式でも橋かけ環式でもスピロ環式でもよい。また、複素環式基の複素環構成原子に含まれるヘテロ原子は制限されないが、例としては窒素、酸素、硫黄、リン、ケイ素等が挙げられる。
【0025】
本開示において「複素環オキシ基」とは、前記定義の複素環式基がオキシ基(-O-)の一方の結合手に連結された基を意味する。
【0026】
本開示において「複素環カルボニル基」とは、前記定義の複素環式基がカルボニル基(-C(=O)-)の一方の結合手に連結された基を意味する。
【0027】
本開示において「複素環スルホニル基」とは、前記定義の複素環式基がスルホニル基(-S(=O)2-)の一方の結合手に連結された基を意味する。
【0028】
本開示において「置換基」とは、それぞれ独立に、別途明示しない限り、本発明の製造方法におけるアミド化工程が進行すれば特に制限されず、任意の置換基を意味する。例としては、これらに限定されるものではないが、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、チオール基、スルホン酸基、アミノ基、アミド基、イミノ基、イミド基、炭化水素基、複素環式基、炭化水素オキシ基、炭化水素カルボニル基(アシル基)、炭化水素オキシカルボニル基、炭化水素カルボニルオキシ基、炭化水素置換アミノ基、炭化水素置換アミノカルボニル基、炭化水素カルボニル置換アミノ基、炭化水素置換チオール基、炭化水素スルホニル基、炭化水素オキシスルホニル基、炭化水素スルホニルオキシ基、複素環オキシ基、複素環カルボニル基、複素環オキシカルボニル基、複素環カルボニルオキシ基、複素環アミノ基、複素環アミノカルボニル基、複素環カルボニル置換アミノ基、複素環置換チオール基、複素環スルホニル基、複素環オキシスルホニル基、複素環スルホニルオキシ基等が挙げられる。また、これらの官能基が、その価数及び物理化学的性質が許容する限りにおいて、更にこれらの官能基により置換された官能基も、本開示における「置換基」に含まれるものとする。なお、ある官能基が置換基を有する場合、その個数は、その価数及び物理化学的性質が許容する限りにおいて、特に限定されない。また、複数の置換基が存在する場合、これらの置換基は互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0029】
本開示において、Meはメチル基を表し、Etはエチル基を表し、Prはプロピル基を表し、i-Prはイソプロピル基を表し、Buはブチル基を表し、t-BuはTert-ブチル基を表す。
【0030】
本開示において、Acはアセチル基を表し、acacはアセチルアセトナートを表し、Cpはシクロペンタジエニルを表し、Tfはトリフルオロメタンスルホニルを表し、Trtはトリチル基を表し、THFはテトラヒドロフランを表し、DCMはジクロロメタンを表し、DMSOはジメチルスルホキシドを表す。
【0031】
本開示において、アミノ酸及びその残基は、当業者に周知の三文字略称で表す場合がある。主なアミノ酸の三文字略称を以下の表に示す。
【表A】
【0032】
本開示において、β-ホモアミノ酸及びその残基は、対応するα-アミノ酸の三文字略称の前に「Ho」を付して表す場合がある。
【0033】
本開示において、カルボキシル基とアミノ基とのアミド反応の「反応剤」とは、カルボキシル基とアミノ基との間にアミド反応を生じさせ、又はそのアミド反応を促進することが可能な剤を意味する。
【0034】
本開示において、化合物や置換基の名称の列記記載中、スラッシュ(「/」)で併記された文言は、別途明記する場合、及び、文脈から明らかに別のことを意味する場合を除き、それらの文言全てを単独で含む名称を全て列記することを意味する。例えば、「(2-/3-/4-)メチルイミダゾール基」という記載は、「2-メチルイミダゾール基、3-メチルイミダゾール基、及び4-メチルイミダゾール基」を意味し、「(モノ/ジ/トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ/ヘプタ/オクタ/ノナ)フルオロ(ブチル/ブトキシ)基」は、「モノフルオロブチル基、ジフルオロブチル基、トリフルオロブチル基、テトラフルオロブチル基、ペンタフルオロブチル基、ヘキサフルオロブチル基、ヘプタフルオロブチル基、オクタフルオロブチル基、ノナフルオロブチル基、モノフルオロブトキシ基、ジフルオロブトキシ基、トリフルオロブトキシ基、テトラフルオロブトキシ基、ペンタフルオロブトキシ基、ヘキサフルオロブトキシ基、ヘプタフルオロブトキシ基、オクタフルオロブトキシ基、及びノナフルオロブトキシ基」を意味する。
【0035】
・本発明の反応剤(シラン化合物(A)及び/又はシラン化合物(B)):
本発明の一側面は、カルボキシル基とアミノ基とのアミド反応の反応剤であって、一般式(A)により示されるシラン化合物(以降適宜「シラン化合物(A)」と称する。)及び一般式(B)により示されるシラン化合物(以降適宜「シラン化合物(B)」と称する。)から選択される1又は2以上のシラン化合物を含む反応剤(以降適宜「本発明の反応剤」と称する。)に関する。
【0036】
【0037】
一般式(A)における各符号の定義は以下の通りである。
【0038】
Ra1は、水素、又は、1又は2以上のハロゲン原子で置換された一価の炭化水素基を表す。炭化水素基は、脂肪族でも芳香族でもよく、これらの組合せであってもよい。脂肪族炭化水素基の場合には、飽和でも不飽和でもよく、また、環状でも鎖状でもよい。鎖状脂肪族炭化水素基の場合には、直鎖状でも分岐鎖状でもよい。炭化水素基の骨格炭素数は制限されないが、通常は1~10、中でも1~7、更には1~4であることが好ましい。
【0039】
Ra1の炭化水素基を置換するハロゲン原子の数も制限されず、1以上であればよいが、通常は1~20、中でも1~16、更には1~12、とりわけ1~8であることが好ましい。ハロゲン原子の種類も制限されないが、通常はフッ素、塩素、臭素、又はヨウ素から選択されることが好ましく、中でもフッ素、塩素、又は臭素から選択されることが好ましく、更にはフッ素又は塩素から選択されることが好ましい。ハロゲン原子の数が2以上の場合、これらは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0040】
Ra1のハロゲン置換炭化水素基の好ましい例としては、これに制限されるものではないが、一般組成式-CmXnH(2m+1-n)(ここでmは1以上の任意の整数を表し、nは1以上(2m+1)以下の任意の整数を表し、Xは任意のハロゲン原子を表す。但しnが2以上の場合、複数のXは同じでもよく、異なっていてもよい。)で表される(直鎖又は分岐鎖の)ハロアルキル基が挙げられる。斯かるハロアルキル基の具体例としては、これらに制限されるものではないが、1-フルオロエチル基、1-クロロエチル基、2-フルオロエチル基、2-クロロエチル基、1,1-ジフルオロエチル基、1,1-ジクロロエチル基、1,2-ジフルオロエチル基、1,2-ジクロロエチル基、2,2-ジフルオロエチル基、2,2-ジクロロエチル基、1,1,1-トリフルオロエチル基、1,1,1-トリクロロエチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、2,2,2-トリクロロエチル基、2,2,3,3-テトラフルオロn-プロピル基、2,2,3,3-テトラクロロn-プロピル基、3,2,2,3,3-ペンタフルオロn-プロピル基、3,2,2,3,3-ペンタクロロn-プロピル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロイソプロピル基等が挙げられる。
【0041】
Ra2は、水素原子、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、環構成原子として1個以上(好ましくは2~4個、更に好ましくは2個又は3個)の窒素原子を含む5~10員(好ましくは5員、6員、又は10員)の複素環式基を表す。なお、置換基を有する場合、その種類については先に記載したとおりであるが、中でもハロゲン原子が好ましく、塩素原子又はフッ素原子が好ましい。置換基の数の具体例は、例えば10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、又は0である。置換基の数が2以上の場合、これらは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0042】
Ra2が含窒素複素環式基である場合、その具体例としては、これらに制限されるものではないが、ピロール基、イミダゾール基、ピラゾール基、トリアゾール基(1,2,3-トリアゾール基、1,2,4-トリアゾール基)、ピペリジル基、ピリジニル基、ピペラジニル基、テトラゾール基、インドール基、ベンズイミダゾール基等が挙げられる。中でもイミダゾール基、ピラゾール基、トリアゾール基等が好ましい。
【0043】
xは、3又は4の整数を表し、yは、1又は0の整数を表す。但し、x+y=4である。即ち、Ra1のハロゲン置換炭化水素基の数は、3又は4である。中でも、Ra1のハロゲン置換炭化水素基の数は、3である(即ち、xが3であり、yが1である)ことが好ましい。なお、x個のRa1は、互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0044】
シラン化合物(A)の好ましい具体例としては、これらに制限されるものではないが、トリス(1-フルオロエトキシ)シラン、トリス(1-クロロエトキシ)シラン、トリス(2-フルオロエトキシ)シラン、トリス(2-クロロエトキシ)シラン、トリス(1,1-ジフルオロエトキシ)シラン、トリス(1,1-ジクロロエトキシ)シラン、トリス(1,2-ジフルオロエトキシ)シラン、トリス(1,2-ジクロロエトキシ)シラン、トリス(2,2-ジフルオロエトキシ)シラン、トリス(2,2-ジクロロエトキシ)シラン、トリス(1,1,1-トリフルオロエトキシ)シラン、トリス(1,1,1-トリクロロエトキシ)シラン、トリス(2,2,2-トリフルオロエトキシ)シラン、トリス(2,2,2-トリクロロエトキシ)シラン、トリス(2,2,3,3-テトラフルオロn-プロポキシ)シラン、トリス(2,2,3,3-テトラクロロn-プロポキシ)シラン、トリス(2,2,3,3,3-ペンタフルオロn-プロポキシ)シラン、トリス(2,2,3,3,3-ペンタクロロn-プロポキシ)シラン、トリス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロポキシ)シラン、トリス(1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロイソプロポキシ)シラン、テトラキス(1,1-ジフルオロエトキシ)シラン、テトラキス(1,1-ジクロロエトキシ)シラン、テトラキス(2,2-ジフルオロエトキシ)シラン、テトラキス(2,2-ジクロロエトキシ)シラン、テトラキス(1,1,1-トリフルオロエトキシ)シラン、テトラキス(1,1,1-トリクロロエトキシ)シラン、テトラキス(2,2,2-トリフルオロエトキシ)シラン、テトラキス(2,2,2-トリクロロエトキシ)シラン、テトラキス(2,2,3,3-テトラフルオロn-プロポキシ)シラン、テトラキス(2,2,3,3-テトラクロロn-プロポキシ)シラン、テトラキス(2,2,3,3,3-ペンタフルオロn-プロポキシ)シラン、テトラキス(2,2,3,3,3-ペンタクロロn-プロポキシ)シラン、テトラキス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロポキシ)シラン、テトラキス(1,1,1,3,3,3-ヘキサクロロイソプロポキシ)シラン等が挙げられる。
【0045】
中でも、シラン化合物(A)としては、トリス(2,2,2-トリクロロエトキシ)シラン、トリス(2,2,2-トリフルオロエトキシ)シラン、トリス(2,2,3,3-テトラフルオロn-プロポキシ)シラン、トリス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロポキシ)シラン等がより好ましく、トリス(2,2,2-トリフルオロエトキシ)シラン、トリス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロポキシ)シラン等がとりわけ好ましい。
【0046】
前記のシラン化合物(A)が、カルボキシル基及び/又はアミノ基を有する1又は2以上の基質化合物において、カルボキシル基とアミノ基との間にアミド化反応を生じさせる反応剤としての機能を有することは、従来知られていなかった新たな知見である。
【0047】
なお、前記シラン化合物(A)のうち、特にRa1のハロゲン置換炭化水素基を含むRa1-O基の数が3である(即ち、xが3であり、yが1である)化合物は、従来知られていなかった新規の化合物であり、斯かる新規な化合物も本発明の一側面の対象となる。新規なシラン化合物(A)の具体例としては、トリス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロポキシ)シラン、トリス(2,2,3,3-テトラフルオロn-プロポキシ)シラン、トリス(2,2,2-トリクロロエトキシ)シラン、トリス(2,2,2-トリフルオロエトキシ)シラン等が挙げられる。
【0048】
【0049】
一般式(B)における各符号の定義は以下の通りである。
【0050】
Rb1及びRb2は、それぞれ独立に、水素原子、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、炭素数1~10のアルキル基若しくはアルコキシ基、若しくは、炭素数6~12のアリール基、アラルキル基、アルキルアリール基、アリーロキシ基、アラルキロキシ基、若しくはアルキルアリーロキシ基を表す。なお、置換基を有する場合、その種類については先に記載したとおりであるが、中でもハロゲン原子が好ましく、塩素原子又はフッ素原子が好ましい。置換基の数の具体例は、例えば10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、又は0である。置換基の数が2以上の場合、これらは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0051】
Rb1及びRb2が置換基を有していてもよいアルキル基の場合、その好ましい具体例としては、これらに制限されるものではないが、メチル基、エチル基、プロピル基(n-プロピル基、イソプロピル基)、ブチル基(n-ブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、イソブチル基)、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等、更にはこれらのアルキル基が1又は2以上の塩素原子及び/又はフッ素原子等の置換基で置換された基等が挙げられる。Rb1及びRb2が置換基を有していてもよいアルコキシ基の具体例としては、これらに制限されるものではないが、前記の置換基を有していてもよいアルキル基の具体例とオキシ基(-O-)とを連結して得られる基等が挙げられる。
【0052】
Rb1及びRb2が置換基を有していてもよいアリール基、アラルキル基、又はアルキルアリール基の場合、その好ましい具体例としては、これらに制限されるものではないが、フェニル基、ベンジル基、トリル基、ナフチル基、キシリル基等、更にはこれらのアリール/アラルキル/アルキルアリール基が1又は2以上の塩素原子及び/又はフッ素原子等の置換基で置換された基等が挙げられる。Rb1及びRb2が置換基を有していてもよいアリーロキシ基、アラルキロキシ基、又はアルキルアリーロキシ基の具体例としては、これらに制限されるものではないが、前記の置換基を有していてもよいアリール/アラルキル/アルキルアリール基の具体例とオキシ基(-O-)とを連結して得られる基等が挙げられる。
【0053】
中でも、Rb1及びRb2としては、メチル/メトキシ基、エチル/エトキシ基、プロピル/プロポキシ基、ブチル/ブトキシ基、(モノ/ジ/トリ)フルオロ(メチル/メトキシ)基、(モノ/ジ/トリ)クロロ(メチル/メトキシ)基、(モノ/ジ/トリ/テトラ/ペンタ)フルオロ(エチル/エトキシ)基、(モノ/ジ/トリ/テトラ/ペンタ)クロロ(エチル/エトキシ)基、(モノ/ジ/トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ/ヘプタ)フルオロ(プロピル/プロポキシ)基、(モノ/ジ/トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ/ヘプタ)クロロ(プロピル/プロポキシ)基、(モノ/ジ/トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ/ヘプタ/オクタ/ノナ)フルオロ(ブチル/ブトキシ)基、(モノ/ジ/トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ/ヘプタ/オクタ/ノナ)クロロ(ブチル/ブトキシ)基、フェニル/フェノキシ基等が好ましい。
【0054】
Zb1及びZb2は、それぞれ独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい、環構成原子として1個以上(好ましくは2~4個、更に好ましくは2個又は3個)の窒素原子を含む5~10員(好ましくは5員、6員、又は10員)の複素環式基を表す。なお、置換基を有する場合、その種類については先に記載したとおりであるが、中でもアルキル基(例えば炭素数1~10個の直鎖又は分岐鎖のアルキル基。以下-Rと示す場合がある。)、アルコキシ基(-O-R)、アミノ基(-NH2)、アルキルアミノ基(-NHR)、ジアルキルアミノ基(-NR2:二つのアルキル基Rは同一でも、異なっていてもよい。)、チオアルキル基(-SR)、並びにこれらの基が1又は2以上のハロゲン原子(例えば臭素又は塩素原子)で置換された基等が好ましい。置換基の数の具体例は、例えば10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、又は0である。置換基の数が2以上の場合、これらは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0055】
Zb1及びZb2の含窒素複素環式基の具体例としては、これらに制限されるものではないが、ピロール基、イミダゾール基、ピラゾール基、トリアゾール基(1,2,3-トリアゾール基、1,2,4-トリアゾール基)、ピペリジル基、ピリジニル基、ピペラジニル基、、テトラゾール基、インドール基、ベンズイミダゾール基等、更にはこれらの基が前述の置換基で置換されて得られる基、例えば(2-/3-/4-/5-)メチルイミダゾール基、(2,3-/2,4-/2,5-)ジメチルイミダゾール基等が挙げられる。中でもイミダゾール基、ピラゾール基、トリアゾール基、2-メチルイミダゾール基等が好ましい。
【0056】
シラン化合物(B)の好ましい具体例としては、これらに制限されるものではないが、ジメチルジイミダゾールシラン、ジエチルジイミダゾールシラン、メチルエチルジイミダゾールシラン、ジプロピルジイミダゾールシラン、メチルプロピルジイミダゾールシラン、ジブチルジイミダゾールシラン、メチルブチルジイミダゾールシラン、ジメトキシジイミダゾールシラン、ジエトキシジイミダゾールシラン、ジメチルジピラゾールシラン、ジエチルジピラゾールシラン、ジメトキシジピラゾールシラン、ジメチルジトリアゾールシラン、ジエチルジトリアゾールシラン、ジメトキシジトリアゾールシラン等が挙げられる。中でも、ジメチルジイミダゾールシラン、ジメトキシジイミダゾールシラン等が好ましい。
【0057】
前記構造を有するシラン化合物(B)が、カルボキシル基及び/又はアミノ基を有する1又は2以上の基質化合物において、カルボキシル基とアミノ基との間にアミド化反応を生じさせる反応剤としての機能を有することも、従来知られていなかった新たな知見である。
【0058】
なお、本発明の製造方法では、反応剤として、1種又は2種以上のシラン化合物(A)のみを使用してもよく、1種又は2種以上のシラン化合物(B)のみを使用してもよく、1種又は2種以上のシラン化合物(A)と1種又は2種以上のシラン化合物(B)とを併用してもよい。更には、1種若しくは2種以上のシラン化合物(A)、及び/又は、1種若しくは2種以上のシラン化合物(B)を、後述の第2のシラン化合物と併用してもよい。即ち、反応剤としてのシラン化合物の選択及び組み合わせは何ら制限されるものではなく、任意の選択及び組み合わせで使用することが可能である。
【0059】
・本発明の製造方法:
本発明の一側面は、前記のシラン化合物(A)及び/又は(B)を反応剤として用い、カルボキシル基及び/又はアミノ基を有する1又は2以上の化合物を基質として、カルボキシル基とアミノ基との間にアミド化反応を生じさせることにより、アミド化合物を製造する方法(以降適宜「本発明の製造方法」と称する。)に関する。斯かる本発明の製造方法は、使用する基質化合物及びアミド化反応により製造される目的化合物の種類により、以下の態様に大別することが可能である。
【0060】
(1)前記のシラン化合物(A)及び/又は(B)の存在下、カルボキシル基を有する第1の化合物と、アミノ基を有する第2の化合物とを基質として用い、第1の化合物のカルボキシル基と第2の化合物のアミノ基との間に分子間アミド化反応を生じさせることにより、アミド結合を介してこれらの化合物が連結されてなる第3の化合物(アミド化合物)を製造する方法(以降適宜「態様(1)」と称する。)。
【0061】
(2)前記のシラン化合物(A)及び/又は(B)の存在下、カルボキシル基及びアミノ基を有する第1の化合物を基質として用い、第1の化合物のカルボキシル基とアミノ基との間に分子内アミド化反応(ラクタム化反応)を生じさせることにより、アミド結合を介して第1の化合物が環状化されてなる第2の化合物(ラクタム化合物)を製造する方法(以降適宜「態様(2)」と称する。)。
【0062】
また、態様(1)に含まれる態様ではあるが、特に興味深い態様として以下の態様が挙げられる。
【0063】
(3)前記のシラン化合物(A)及び/又は(B)の存在下、カルボキシル基を有する第1の化合物及びアミノ基を有する第2の化合物としてそれぞれアミノ酸又はペプチドを使用することにより、これらのアミノ酸及び/又はペプチドをアミド結合により連結して、第3の化合物としてペプチドを製造する方法(以降適宜「態様(3)」と称する。)。
【0064】
また、態様(2)に含まれる一態様として、第1の化合物がペプチドであり、第2の化合物(ラクタム化合物)が環状ペプチドである態様も挙げられる。
【0065】
以下、これらの態様(1)~(3)における基質化合物及び目的化合物の組み合わせについて、個別に説明する。
【0066】
・態様(1):
態様(1)は、前記のシラン化合物(A)及び/又は(B)の存在下、下記式(1-1)で示されるカルボキシル基を有する化合物(以降適宜「化合物(1-1)」と称する。)と、下記式(1-2)で示されるアミノ基を有する化合物(以降適宜「化合物(1-2)」と称する。)とを基質として用い、化合物(1-1)のカルボキシル基と化合物(1-2)のアミノ基との間に分子間アミド化反応を生じさせることにより、下記式(1-3)で示されるアミド化合物(以降適宜「化合物(1-3)」と称する。)を製造する方法である。
【0067】
【0068】
即ち、本態様では、異なる化合物(1-1)及び(1-2)が有するカルボキシル基とアミノ基とをアミド化反応させて両化合物(1-1)及び(1-2)を連結し、新たなアミド化合物(1-3)を製造する。
【0069】
上記一般式(1-1)、(1-2)、及び(1-3)において、各符号の定義は以下の通りである。
【0070】
R11及びR12は、各々独立に、(i)1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の炭化水素基若しくは複素環式基、又は、(ii)1若しくは2以上の置換基を有していてもよい多価の炭化水素基若しくは複素環式基が複数、任意により連結基を介して、連結されてなる一価の基を表す。なお、大まかにいえば、R11及び/又はR12が(i)である場合、化合物(1-1)及び/又は(1-2)は単量体又は低分子化合物となり、R11及び/又はR12が(ii)である場合、化合物(1-1)及び/又は(1-2)は重合体又は高分子化合物となる。
【0071】
まず、R11及びR12が、各々独立に、(i)1又は2以上の置換基を有していてもよい一価の炭化水素基又は複素環式基である場合、その概要は以下の通りである。
R11及び/又はR12が、1又は2以上の置換基を有していてもよい一価の炭化水素基である場合、炭化水素基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子数は、特に限定はされないが、上限が例えば40以下、30以下、20以下、16以下、又は12以下等である。下限は炭化水素基の種類によっても異なるが、アルキル基の場合は1以上、アルケニル基やアルキニル基の場合は2以上、シクロアルキル基の場合には3以上、例えば4以上、又は5以上である。当該原子数の具体例は、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、又は40等である。
【0072】
R11及び/又はR12が、1又は2以上の置換基を有していてもよい一価の複素環式基である場合、複素環式基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子及びヘテロ原子の合計数は、特に限定はされないが、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は複素環式構造の種類によっても異なるが、通常3以上、例えば4以上、又は5以上である。当該原子数の具体例は、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、22、24、26、28、30、32、34、36、38、又は40等である。
【0073】
中でも、R11及びR12としては、それぞれ独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい、アミノ基、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリーロキシ基、アシル基、複素環式基、若しくは複素環オキシ基等であることが好ましい。
【0074】
R11及びR12の具体例としては、これらに限定されるものではないが、例えば以下が挙げられる。
【0075】
・メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、デシル基、ノニル基等のアルキル基;
・シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、ビシクロオクチル基、スピロオクチル基等のシクロアルキル基;
・フェニル基、ベンジル基、トリル基、ナフチル基、アントラセニル基等のアリール基;
・フラニル基、チオフェニル基、ピラニル基、ピロリニル基、ピロリル基、2,3-ジヒドロ-1H-ピロリル基、ピぺリジニル基、ピペラジニル基、ホモピペラジニル基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、1,2,4,6-テトラヒドロピリジル基、ヘキサヒドロピリミジル基、ヘキサヒドロピリダジル基、1,2,4,6-テトラヒドロピリジル基、1,2,4,6-テトラヒドロピリダジル基、3,4-ジヒドロピリジル基、イミダゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、ピラゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾリル基、2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾリル基、オキサゾリル基、4,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、2,3-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、2,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、チアゾリル基、4,5-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、2,3-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、2,5-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、カルバゾリル基等の複素環式基;
・フラニルオキシ基、ピロリルオキシ基、インドリルオキシ基、キノリルオキシ基等の複素環オキシ基;等。
【0076】
なお、上記の基のうち、カルボキシル基を有する基は、保護基を有していてもよいが、いなくてもよい。反応に用いる化合物(1-1)と化合物(1-2)との反応性により異なるが、上記の基のうち、カルボキシル基を有する基が保護基を有する場合には、通常は化合物(1-1)の式中右側のカルボキシル基との反応選択性が、その他の置換基に存在するカルボキシル基との反応選択性よりも向上する。
【0077】
また、R11及びR12が、各々独立に、(ii)1又は2以上の置換基を有していてもよい多価の炭化水素基又は複素環式基が複数、任意により連結基を介して、連結されてなる一価の基である場合、その概要は以下の通りである。
【0078】
まず、多価の炭化水素基又は複素環式基としては、前述の一価の炭化水素基又は複素環式基から、更に1又は2以上の水素原子を取り除いて得られる多価(例えば、二価、三価、四価、五価、又はそれ以上)の炭化水素基又は複素環式基が挙げられる。これらの多価の炭化水素基又は複素環式基が複数個(例えば、2個、3個、4個、5個、又はそれ以上)連結される際には、直接結合により連結されていてもよいが、連結基が介在していてもよい。斯かる連結基は、限定されるものではないが、各々独立に、例えば以下に示す構造から選択される(なお、下記化学式中、Aは各々独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい、一価の炭化水素基又は複素環式基を表す。同一の基の中にAが二つ存在する場合、それらは互いに同一でもよく、異なっていてもよい。)。
【0079】
【0080】
なお、前述のように、R11及び/又はR12が(ii)1又は2以上の置換基を有していてもよい多価の炭化水素基又は複素環式基が複数、任意により連結基を介して、連結されてなる一価の基である場合、斯かる化合物(1-1)及び/又は(1-2)は概して、重合体又は高分子化合物となる。斯かる重合体・高分子化合物の例としては、これらに限定されるものではないが、例えば以下が挙げられる。
【0081】
・ペプチド・タンパク質(下記態様(3)において詳述する。);
・核酸(DNA(デオキシリボ核酸)、RNA(リボ核酸)等);
・多糖類(セルロース、アミロース、デンプン、キチン、キトサン等);
・複合多糖類(リポ多糖、糖タンパク質等);
・脂質類(単純脂質、リン脂質、糖脂質等);
・天然・合成樹脂(フェノール樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリ乳酸、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド(ナイロン等)、アクリル・メタクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、天然・合成ゴム等)。
【0082】
R13は、水素原子、カルボキシル基、若しくは水酸基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、一価の炭化水素基若しくは複素環式基を表す。なお、置換基を有する場合、その種類については先に記載したとおりである。置換基の数の具体例は、例えば5、4、3、2、1、又は0である。
【0083】
R13が、1又は2以上の置換基を有していてもよい、一価の炭化水素基又は複素環式基である場合は、斯かる炭化水素基又は複素環式基とそれが結合する窒素原子との間に、連結基が介在していてもよい。斯かる連結基は、限定されるものではないが、各々独立に、例えば以下に示す構造から選択される(なお、下記化学式中、Aは各々独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい、一価の炭化水素基又は複素環式基を表す。同一の基の中にAが二つ存在する場合、それらは互いに同一でもよく、異なっていてもよい。)。
【0084】
【0085】
炭化水素基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子数は、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は炭化水素基の種類によっても異なるが、アルキル基の場合は1以上、アルケニル基やアルキニル基の場合は2以上、シクロアルキル基の場合には3以上、例えば4以上、又は5以上である。当該原子数の具体例は、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20等である。
【0086】
複素環式基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子及びヘテロ原子の合計数は、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は複素環式構造の種類によっても異なるが、通常3以上、例えば4以上、又は5以上である。当該原子数の具体例は、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20等である。
【0087】
なお、R12とR13とが互いに結合して、R12が結合する炭素原子及びR13が結合する窒素原子と共に、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい複素環を形成していてもよい。置換基を有する場合、その種類については先に記載したとおりである。置換基の数の具体例は、例えば5、4、3、2、1、又は0である。
【0088】
複素環式基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子及びヘテロ原子の合計数は、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は複素環式構造の種類によっても異なるが、通常3以上、例えば4以上、又は5以上である。当該原子数の具体例は、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20等である。
【0089】
斯かる複素環の具体例としては、これらに限定されるものではないが、ピロリニル基、ピロリル基、2,3-ジヒドロ-1H-ピロリル基、ピぺリジニル基、ピペラジニル基、ホモピペラジニル基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、1,2,4,6-テトラヒドロピリジル基、ヘキサヒドロピリミジル基、ヘキサヒドロピリダジル基、1,2,4,6-テトラヒドロピリジル基、1,2,4,6-テトラヒドロピリダジル基、3,4-ジヒドロピリジル基、イミダゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、ピラゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾリル基、2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾリル基、オキサゾリル基、4,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、2,3-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、2,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、チアゾリル基、4,5-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、2,3-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、2,5-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基等が挙げられる。
【0090】
・態様(2):
態様(2)は、前記のシラン化合物(A)及び/又は(B)の存在下、下記式(2-1)で示されるカルボキシル基及びアミノ基を有する化合物(以降適宜「化合物(2-1)」と称する。)を基質として用い、化合物(2-1)のカルボキシル基とアミノ基との間に分子間アミド化反応(ラクタム化反応)を生じさせることにより、下記式(2-2)で示されるラクタム化合物(以降適宜「化合物(2-2)」と称する。)を製造する方法である。
【0091】
【0092】
即ち本態様では、同一の化合物(2-1)が有するカルボキシル基とアミノ基とを分子内アミド化反応(ラクタム化反応)させて本化合物(2-1)を環化し、新たなラクタム化合物(2-2)を製造する。
【0093】
上記一般式(2-1)及び(2-2)において、各符号の定義は以下の通りである。
【0094】
R21は、(i)1若しくは2以上の置換基を有していてもよい二価の炭化水素基若しくは複素環式基、又は、(ii)1若しくは2以上の置換基を有していてもよい多価の炭化水素基若しくは複素環式基が複数、任意により連結基を介して、連結されてなる二価の基を表す。なお、大まかにいえば、R21が(i)である場合、化合物(2-1)は単量体化合物となり、R21が(ii)である場合、化合物(2-1)は重合体又は高分子化合物となる。
【0095】
R21が、(i)1又は2以上の置換基を有していてもよい二価の炭化水素基又は複素環式基である場合、その例としては、前記式(1-1)のR11及び前記式(1-2)のR12について説明した一価の炭化水素基又は複素環式基から、任意の水素原子を除いて得られる二価の炭化水素基又は複素環式基が挙げられる。その他の詳細は、前記式(1-1)のR11及び前記式(1-2)のR12について先に説明した詳細と同様である。
【0096】
一方、R21が、(ii)1又は2以上の置換基を有していてもよい多価の炭化水素基又は複素環式基が複数、任意により連結基を介して、連結されてなる二価の基である場合、その例としては、前記式(1-1)のR11及び前記式(1-2)のR12について説明した多価の炭化水素基又は複素環式基が複数連結されてなる一価の基から、任意の水素原子を除いて得られる二価の基が挙げられる。その他の詳細は、前記式(1-1)のR11及び前記式(1-2)のR12について先に説明した詳細と同様である。
【0097】
R22は、水素原子、カルボキシル基、水酸基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の炭化水素基若しくは複素環式基を表す。R22の詳細は、前記式(1-2)のR13について先に説明した詳細と同様である。
【0098】
ここで、R21とR22とが互いに結合して、R21及びR22が結合する窒素原子と共に、1又は2以上の置換基を有していてもよい複素環を形成していてもよい。斯かる複素環の詳細は、前記式(1-2)のR12とR13とが互いに結合して形成される複素環について先に説明した詳細と同様である。
【0099】
・態様(3):
態様(3)は、前記のシラン化合物(A)及び/又は(B)の存在下、下記式(3-1)で示されるアミノ酸又はペプチド(以降適宜「化合物(3-1)」と称する。)と、下記式(3-2)で示されるアミノ酸又はペプチド(以降適宜「化合物(3-2)」と称する。)とを基質として用い、化合物(3-1)の末端カルボキシル基と化合物(3-2)の末端アミノ基との間に分子間アミド化反応を生じさせることにより、下記式(1-3)で示されるペプチド(以降適宜「化合物(3-3)」と称する。)を製造する方法である。
【0100】
【0101】
即ち本態様では、異なるアミノ酸又はペプチド(3-1)及び(3-2)が有するカルボキシル基とアミノ基とをアミド化反応させて、これらのアミノ酸又はペプチド(3-1)及び(3-2)を連結し、新たなペプチド(3-3)を製造する。
【0102】
上記一般式(3-1)、(3-2)、及び(3-3)において、各符号の定義は以下の通りである。
【0103】
R31、R32、R34、及びR36は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、若しくはチオール基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、一価の炭化水素基若しくは複素環式基を表す。なお、これらの基が置換基を有する場合、その種類については先に記載したとおりである。置換基の数の具体例は、例えば5、4、3、2、1、又は0である。
【0104】
また、R31、R32、R34、及び/又はR36が、1又は2以上の置換基を有していてもよい、一価の炭化水素基又は複素環式基である場合は、斯かる炭化水素基又は複素環式基とそれが結合する炭素原子との間に、連結基が介在していてもよい。斯かる連結基は、限定されるものではないが、各々独立に、例えば以下に示す構造から選択される(なお、下記化学式中、Aは各々独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい、一価の炭化水素基又は複素環式基を表す。同一の基の中にAが二つ存在する場合、それらは互いに同一でもよく、異なっていてもよい。)。
【0105】
【0106】
炭化水素基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子数は、特に限定はされないが、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は炭化水素基の種類によっても異なるが、アルキル基の場合は1以上、アルケニル基やアルキニル基の場合は2以上、シクロアルキル基の場合には3以上、例えば4以上、又は5以上である。当該原子数の具体例は、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20等である。
【0107】
複素環式基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子及びヘテロ原子の合計数は、特に限定はされないが、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は複素環式構造の種類によっても異なるが、通常3以上、例えば4以上、又は5以上である。当該原子数の具体例は、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20等である。
【0108】
中でも、R31、R32、R34、及びR36としては、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、チオール基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基、若しくはハロゲン原子、又は、1又は2以上の置換基を有していてもよい、アミノ基、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリーロキシ基、アシル基、複素環式基、若しくは複素環オキシ基等であることが好ましい。
【0109】
R31、R32、R34、及びR36の具体例としては、これらに限定されるものではないが、例えば以下が挙げられる。
【0110】
・水素原子、水酸基、チオール基、カルボキシル基、ニトロ基、シアノ基;
・フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;
・メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、デシル基、ノニル基等のアルキル基;
・エテニル基、プロペニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、へプテニル基、オクテニル基等のアルケニル基;
・プロパルギル基等のアルキニル基;
・シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、ビシクロオクチル基、スピロオクチル基等のシクロアルキル基;
・メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基等のアルコキシ基;
・フェニル基、ベンジル基、トリル基、ナフチル基、アントラセニル基等のアリール基;
・フェニロキシ基、ベンジロキシ基、ナフチロキシ基等のアリーロキシ基;
・アセチル基、プロピオニル基、ベンゾイル基、パラメトキシベンゾイル基、シンナモイル基等のアシル基;
・無置換のアミノ基、及び、ジメチルアミノ基、ベンジルアミノ基、トリフェニルメチルアミノ基等の置換アミノ基;
・フラニル基、チオフェニル基、ピラニル基、ピロリニル基、ピロリル基、2,3-ジヒドロ-1H-ピロリル基、ピぺリジニル基、ピペラジニル基、ホモピペラジニル基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、1,2,4,6-テトラヒドロピリジル基、ヘキサヒドロピリミジル基、ヘキサヒドロピリダジル基、1,2,4,6-テトラヒドロピリジル基、1,2,4,6-テトラヒドロピリダジル基、3,4-ジヒドロピリジル基、イミダゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、ピラゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾリル基、2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾリル基、オキサゾリル基、4,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、2,3-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、2,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、チアゾリル基、4,5-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、2,3-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、2,5-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、カルバゾリル基等の複素環式基;
・フラニルオキシ基、ピロリルオキシ基、インドリルオキシ基、キノリルオキシ基等の複素環オキシ基;等。
【0111】
なお、上記の基のうち、カルボキシル基を有する基は、保護基を有していてもよいが、いなくてもよい。反応に用いる化合物(3-1)と化合物(3-2)との反応性により異なるが、上記の基のうち、カルボキシル基を有する基が保護基を有する場合には、通常は化合物(3-1)の式中右側のカルボキシル基との反応選択性が、その他の置換基に存在するカルボキシル基との反応選択性よりも向上する。
【0112】
R33及びR36は、それぞれ独立に、水素原子、カルボキシル基、若しくは水酸基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい、一価の炭化水素基若しくは複素環式基を表す。なお、置換基を有する場合、その種類については先に記載したとおりである。置換基の数の具体例は、例えば5、4、3、2、1、又は0である。
【0113】
また、R33及び/又はR36が、1又は2以上の置換基を有していてもよい、一価の炭化水素基又は複素環式基である場合は、斯かる炭化水素基又は複素環式基とそれが結合する窒素原子との間に、連結基が介在していてもよい。斯かる連結基は、限定されるものではないが、各々独立に、例えば以下に示す構造から選択される(なお、下記化学式中、Aは各々独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい、一価の炭化水素基又は複素環式基を表す。同一の基の中にAが二つ存在する場合、それらは互いに同一でもよく、異なっていてもよい。)。
【0114】
【0115】
炭化水素基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子数は、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は炭化水素基の種類によっても異なるが、アルキル基の場合は1以上、アルケニル基やアルキニル基の場合は2以上、シクロアルキル基の場合には3以上、例えば4以上、又は5以上である。当該原子数の具体例は、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20等である。
【0116】
複素環式基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子及びヘテロ原子の合計数は、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は複素環式構造の種類によっても異なるが、通常3以上、例えば4以上、又は5以上である。当該原子数の具体例は、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20等である。
【0117】
中でも、R33及びR36としては、それぞれ独立に、水素原子、水酸基、若しくはカルボキシル基、又は、1又は2以上の置換基を有していてもよい、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリーロキシ基、アシル基、複素環式基、若しくは複素環オキシ基等であることが好ましい。
【0118】
R33及びR36の具体例としては、これらに限定されるものではないが、例えば以下が挙げられる。
【0119】
・水素原子、水酸基、カルボキシル基;
・メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、デシル基、ノニル基等のアルキル基;
・エテニル基、プロペニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、へプテニル基、オクテニル基等のアルケニル基;
・プロパルギル基等のアルキニル基;
・シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、ビシクロオクチル基、スピロオクチル基等のシクロアルキル基;
・フェニル基、ベンジル基、トリル基、ナフチル基、アントラセニル基等のアリール基;
・フラニル基、チオフェニル基、ピラニル基、ピロリニル基、ピロリル基、2,3-ジヒドロ-1H-ピロリル基、ピぺリジニル基、ピペラジニル基、ホモピペラジニル基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、1,2,4,6-テトラヒドロピリジル基、ヘキサヒドロピリミジル基、ヘキサヒドロピリダジル基、1,2,4,6-テトラヒドロピリジル基、1,2,4,6-テトラヒドロピリダジル基、3,4-ジヒドロピリジル基、イミダゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、ピラゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾリル基、2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾリル基、オキサゾリル基、4,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、2,3-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、2,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、チアゾリル基、4,5-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、2,3-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、2,5-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、カルバゾリル基等の複素環式基;等。
【0120】
なお、R31とR33とが互いに結合して、R31が結合する炭素原子及びR33が結合する窒素原子と共に、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい複素環を形成していてもよく、R34とR36とが互いに結合して、R34が結合する炭素原子及びR36が結合する窒素原子と共に、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい複素環を形成していてもよい。なお、置換基を有する場合、その種類については先に記載したとおりである。置換基の数の具体例は、例えば5、4、3、2、1、又は0である。
【0121】
複素環式基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子及びヘテロ原子の合計数は、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は複素環式構造の種類によっても異なるが、通常3以上、例えば4以上、又は5以上である。当該原子数の具体例は、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20等である。
【0122】
斯かる複素環の具体例としては、これらに限定されるものではないが、ピロリニル基、ピロリル基、2,3-ジヒドロ-1H-ピロリル基、ピぺリジニル基、ピペラジニル基、ホモピペラジニル基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、1,2,4,6-テトラヒドロピリジル基、ヘキサヒドロピリミジル基、ヘキサヒドロピリダジル基、1,2,4,6-テトラヒドロピリジル基、1,2,4,6-テトラヒドロピリダジル基、3,4-ジヒドロピリジル基、イミダゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、ピラゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾリル基、2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾリル基、オキサゾリル基、4,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、2,3-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、2,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、チアゾリル基、4,5-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、2,3-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、2,5-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基等が挙げられる。
【0123】
A1~A4は、それぞれ独立に、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい炭素数1~3の二価の脂肪族炭化水素基を表す。具体例としては、これらに限定されるものではないが、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、及びイソプロピレン基等、並びにこれらの基が1又は2以上の前記の置換基で置換された基が挙げられる。置換基の数の具体例は、例えば3、2、1、又は0である。
【0124】
p1~p4は、それぞれ独立に、0又は1を表す。
【0125】
m及びnは、それぞれ独立に、[ ]内の構造で表される構成単位の数を表す、1以上の整数である。即ち、mは、一般式(3-1)の[ ]内のアミノ酸単位の数を表す。mが1の場合、化合物(3-1)はアミノ酸となり、mが2以上の場合、化合物(3-1)はペプチドとなる。同様に、nは、一般式(3-2)の[ ]内のアミノ酸単位の数を表す。nが1の場合、化合物(3-2)はアミノ酸となり、nが2以上の場合、化合物(3-2)はペプチドとなる。m及びnの上限は、アミノ化工程が進行する限りにおいて特に制限されないが、例えば100以下、80以下、60以下、50以下、40以下、30以下、20以下、15以下、12以下、又は10以下等である。m及びnの具体例は、それぞれ独立に、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、60、70、80、90、100等である。
【0126】
なお、言うまでもないことであるが、mが2以上である場合は、[ ]内の構造を規定するR1、R2、R3、A1、A2、p1、p2は、複数のアミノ酸単位の間で同一であってもよく、異なっていてもよい。同様に、nが2以上である場合は、[ ]内の構造を規定するR4、R5、R5、A3、A4、p3、p4は、複数のアミノ酸単位の間で同一であってもよく、異なっていてもよい。即ち、化合物(3-1)及び/又は化合物(3-2)がペプチドの場合には、当該ペプチドを構成する複数のアミノ酸単位は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0127】
T1は、水素原子又は一価の置換基を表す。一価の置換基の場合、その種類は特に制限されるものではないが、R33及びR36として上述した各基の他、アミノ基の保護基(これを以下適宜PG1とする)が挙げられる。アミノ基の保護基PG1としては、アミド化工程において、当該アミノ基が反応しないように保護することができ、反応後にこれを脱保護してアミノ基に変換可能なものであれば、特に制限されない。
【0128】
アミノ基の保護基PG1としては、公知の多種多様のものが知られている。例としては、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の炭化水素基、又は、1若しくは2以上の置換基を有していてもよい一価の複素環式基等が挙げられる。中でも、1又は2以上の置換基を有していてもよい一価の炭化水素基が好ましい。但し、斯かる炭化水素基又は複素環式基と、それが保護するアミノ基の窒素原子(式(3-1)中PG1が結合する窒素原子)との間に、連結基が介在していてもよい。斯かる連結基は、限定されるものではないが、各々独立に、例えば以下に示す連結基から選択される(なお、下記化学式中、Aは各々独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい一価の炭化水素基又は複素環式基を表す。同一の基の中にAが二つ存在する場合、それらは互いに同一でもよく、異なっていてもよい。)。
【0129】
【0130】
保護基PG1の炭素数は、通常1以上、又は3以上、また、通常20以下、又は15以下が挙げられる。
【0131】
中でも、アミノ基の保護基PG1は、1又は2以上の置換基を有していてもよい、一価の炭化水素基、アシル基、炭化水素オキシカルボニル基、及び炭化水素スルホニル基、及びアミド基からなる群より選択される1種以上の基であることが好ましい。
【0132】
以下、アミノ基の保護基PG1の具体例を列記する。なお、アミノ基の保護基の名称としては、アミノ基の窒素原子に結合している官能基の名称の他、窒素原子をも含めた名称も存在しており、以下の名称においても両者が含まれている。
【0133】
非置換又は置換の炭化水素基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;エテニル基、プロペニル基、アリル基、等のアルケニル基;プロパルギル基等のアルキニル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、ベンジル基、パラメトキシベンジル基、トリル基、トリフェニルメチル基(トロック基)等のアリール基;シアノメチル基等の置換炭化水素基等が挙げられる。炭素数は、通常1以上、又は3以上、また、通常20以下、又は15以下が挙げられる。
【0134】
非置換又は置換のアシル基の具体例としては、ベンゾイル基(Bz)、オルトメトキシベンゾイル基、2,6-ジメトキシベンゾイル基、パラメトキシベンゾイル基(PMPCO)、シンナモイル基、フタロイル基(Phth)等が挙げられる。
【0135】
非置換又は置換の炭化水素オキシカルボニル基の具体例としては、tert-ブトキシカルボニル基(Boc)、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz又はZ)、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、2-トリメチルシリルエトキシカルボニル基、2-フェニルエトキシカルボニル基、1-(1-アダマンチル)-1-メチルエトキシカルボニル基、1-(3,5-ジ-t- ブチルフェニル)-1-メチルエトキシカルボニル基、ビニロキシカルボニル基、アリルオキシカルボニル基(Alloc)、N-ヒドロキシピペリジニルオキシカルボニル基、p-メトキシベンジルオキシカルボニル基、p-ニトロベンジルオキシカルボニル基、2-(1,3-ジチアニル)メトキシカルボニル、m-ニトロフェノキシカルボニル基、3,5-ジメトキシベンジルオキシカルボニル基、o-ニトロベンジルオキシカルボニル基、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基(Troc)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)等が挙げられる。
【0136】
非置換又は置換の炭化水素スルホニル基の具体例としては、メタンスルホニル基(Ms)、トルエンスルホニル基(Ts)、2-又は4-ニトロベンゼンスルホニル基(Ns)基等が挙げられる。
【0137】
非置換又は置換のアミド基の具体例としては、アセトアミド、o-(ベンゾイロキシメチル)ベンズアミド、2-[(t-ブチルジフェニルシロキシ)メチル]ベンズアミド、2-トルエンスルホンアミド、4-トルエンスルホンアミド、2-ニトロベンゼンスルホンアミド、4-ニトロベンゼンスルホンアミド、tert-ブチルスルフィニルアミド、4-トルエンスルホンアミド、2-(トリメチルシリル)エタンスルホンアミド、ベンジルスルホンアミド等が挙げられる。
【0138】
また、脱保護の手法の観点からは、水素化による脱保護、弱酸による脱保護、フッ素イオンによる脱保護、一電子酸化剤による脱保護、ヒドラジンによる脱保護、酸素による脱保護等のうち、少なくとも1種の手法により脱保護可能な保護基も、アミノ基の保護基PG1の例として挙げられる。
【0139】
アミノ基の保護基PG1の好ましい具体例としては、メシル基(Ms)、tert-ブトキシカルボニル基(Boc)、ベンジル基(Bn又はBzl)、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz)、ベンゾイル基(Bz)、パラメトキシベンジル基(PMB)、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基(Troc)、アリルオキシカルボニル基(Alloc)、2,4-ジニトロフェニル基(2,4-DNP)、フタロイル基(Phth)、パラメトキシベンゾイル基(PMPCO)、シンナモイル基、トルエンスルホニル基(Ts)、2又は4-ニトロベンゼンスルホニル基(Ns)、シアノメチル基、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)等が挙げられる。これらの保護基は、前記の通り、容易にアミノ基を保護でき、かつ比較的温和な条件で除去することができるためである。
【0140】
アミノ基の保護基PG1のより好ましい具体例としては、メシル基(Ms)、tert-ブトキシカルボニル基(Boc)、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz)、ベンジル基(Bn)、パラメトキシベンジル基(PMB)、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基(Troc)、アリルオキシカルボニル基(Alloc)、パラメトキシベンゾイル基(PMPCO)、ベンゾイル基(Bz)、シアノメチル基、シンナモイル基、2又は4-ニトロベンゼンスルホニル基(Ns)、トルエンスルホニル基(Ts)、フタロイル基(Phth)、2,4-ジニトロフェニル基(2,4-DNP)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル基(Fmoc)等が挙げられる。
【0141】
アミノ基の保護基PG1の更に好ましい具体例としては、メシル基(Ms)、tert-ブトキシカルボニル基(Boc)、ベンジルオキシカルボニル基(Cbz)、ベンジル基(Bn)、パラメトキシベンジル基(PMB)、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基(Troc)、アリルオキシカルボニル基(Alloc)、パラメトキシベンゾイル基(PMPCO)、ベンゾイル基(Bz)、シアノメチル基、シンナモイル基等が挙げられる。
【0142】
T2は、水素原子又は一価の置換基を表す。一価の置換基の場合、その種類は特に制限されるものではないが、R31、R32、R34、及びR36として上述した各基の他、カルボキシル基の保護基(これを以下適宜PG2とする)が挙げられる。カルボキシル基の保護基PG2としては、アミド化工程において、当該カルボキシル基が反応しないように保護することができ、反応後にこれを脱保護してカルボキシル基に変換可能なものであれば、特に制限されない。
【0143】
カルボキシル基の保護基PG2の例としては、1又は2以上の置換基を有していてもよい、一価の炭化水素基又は複素環式基等が挙げられる。なお、置換基を有する場合、その種類については先に記載したとおりである。置換基の数の具体例は、例えば5、4、3、2、1、又は0である。
【0144】
炭化水素基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子数は、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は炭化水素基の種類によっても異なるが、アルキル基の場合は1以上、アルケニル基やアルキニル基の場合は2以上、シクロアルキル基の場合には3以上、例えば4以上、又は5以上である。当該原子数の具体例は、例えば1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20等である。
【0145】
複素環式基の(置換基を有する場合はその置換基も含めた)炭素原子及びヘテロ原子の合計数は、上限が例えば20以下、15以下、10以下、8以下、又は6以下等である。下限は複素環式構造の種類によっても異なるが、通常3以上、例えば4以上、又は5以上である。当該原子数の具体例は、例えば3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20等である。
【0146】
カルボキシル基の保護基PG2の具体例としては、これらに限定されるものではないが、例えば以下が挙げられる。
【0147】
・メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、sec-ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基、デシル基、ノニル基等のアルキル基;
・エテニル基、プロペニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、へプテニル基、オクテニル基等のアルケニル基;
・プロパルギル基等のアルキニル基;
・シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロへプチル基、ビシクロオクチル基、スピロオクチル基等のシクロアルキル基;
・フェニル基、ベンジル基、トリル基、ナフチル基、アントラセニル基等のアリール基;
・フラニル基、チオフェニル基、ピラニル基、ピロリニル基、ピロリル基、2,3-ジヒドロ-1H-ピロリル基、ピぺリジニル基、ピペラジニル基、ホモピペラジニル基、モルホリノ基、チオモルホリノ基、1,2,4,6-テトラヒドロピリジル基、ヘキサヒドロピリミジル基、ヘキサヒドロピリダジル基、1,2,4,6-テトラヒドロピリジル基、1,2,4,6-テトラヒドロピリダジル基、3,4-ジヒドロピリジル基、イミダゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、2,3-ジヒドロ-1H-イミダゾリル基、ピラゾリル基、4,5-ジヒドロ-1H-ピラゾリル基、2,3-ジヒドロ-1H-ピラゾリル基、オキサゾリル基、4,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、2,3-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、2,5-ジヒドロ-1,3-オキサゾリル基、チアゾリル基、4,5-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、2,3-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、2,5-ジヒドロ-1,3-チアゾリル基、カルバゾリル基等の複素環式基;
トリメチルシリル(TMS)基、トリエチルシリル(TES)基、トリイソプロピルシリル(TIPS)基、トリtert-ブチルシリル(TBS)基、tert-ブチルジフェニルシリル(TBDPS)基等のケイ素系保護基;等。
【0148】
なお、態様(3)では、後述のように反応手順を調節し、(a)まず第一のアミノ酸又はペプチド(3-1)とシラン化合物(A)及び/又は(B)とを接触させ、(b)次に(任意により用いる場合には)第2のシラン化合物を接触させ、(c)続いて第二のアミノ酸又はペプチド(3-2)を接触させるという順序で反応させると、原料となる化合物(3-1)及び(3-2)中に存在する、アミド化反応の対象とすべきでないアミノ基(化合物(3-1)の式中左側のアミノ基)やカルボキシル基(化合物(3-2)の式中右側のカルボキシル基)を保護基PG1やPG2で保護しなくとも、化合物(3-1)の式中右側の末端カルボキシル基と化合物(3-2)の式中左側の末端アミノ基との間に選択的にアミド結合を形成して両者を連結することが可能である。よって、このような反応手順を採用する場合には、T1及びT2は、少なくとも何れか一方が水素原子であることが好ましく、両方が水素原子であることがより好ましい。
【0149】
なお、化合物(3-2)において、一般式(3-2)の式中左側のアミノ基は、他の酸と塩を形成していてもよい。この場合、他の酸としては、これらに限定されるものではないが、酢酸、プロピオン酸等の炭素数1~5の脂肪族カルボン酸;トリフルオロ酢酸、塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、ホウ酸、スルホン酸等が挙げられる。
【0150】
なお、態様(3)は、態様(1)の化合物(1-1)及び化合物(1-2)が共にアミノ酸又はペプチドであり、化合物(1-3)がペプチドである下位態様であると考えることもできる。ここで、態様(2)についても同様に、化合物(2-1)がアミノ酸又はペプチドであり、化合物(2-2)が環状ペプチドである下位態様を考えることもできる。こうした態様の詳細については、態様(2)及び(3)について前述した詳細を適宜勘案すれば、当業者には明らかであろう。
【0151】
また、何れの態様においても、基質となる化合物の一部又は全部が、何れかの置換基において基板や樹脂等の担体に連結・固定化されていてもよい。この場合、基板や樹脂等の担体の種類は限定されない。本発明の製造方法におけるアミド結合反応を実質的に阻害することなく、且つ、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、従来公知の任意の基板や樹脂等の担体を使用することが可能である。基質化合物と基板や樹脂等の担体との連結・固定化の態様も何ら限定されるものではないが、基質化合物が有する何れかの置換基と、基板や樹脂等の担体上に存在する置換基との間に、共有結合を形成することが好ましい。各置換基の種類や共有結合の形成方法についても何ら限定されない。本発明の製造方法におけるアミド結合反応を実質的に阻害することなく、且つ、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、従来公知の任意の種類の置換基及び共有結合の形成方法を使用することが可能である。なお、態様(3)等のように基質化合物がアミノ酸又はペプチドである場合、基質化合物が有する(アミド結合反応の形成対象となるカルボキシル基又はアミノ基以外の)カルボキシル基又はアミノ基を用いた共有結合により、基質化合物を基板や樹脂等の担体に連結・固定化してもよい。こうした態様は、基質化合物が有する(アミド結合反応の形成対象となるカルボキシル基又はアミノ基以外の)カルボキシル基又はアミノ基を、保護基を導入することにより保護した態様と同様に捉えることが可能である。
【0152】
・基質化合物の使用量:
本発明の製造方法に用いられる基質化合物の使用量は、本発明の製造方法の態様によって異なるが、以下の通りである。
【0153】
即ち、態様(1)の場合、化合物(1-1)と化合物(1-2)との量比は、特に制限されないが、化合物(1-1)1モルに対して、化合物(1-2)を通常0.1モル以上、例えば0.2モル以上、0.3モル以上、又は0.5モル以上、また、通常20モル以下、例えば10モル以下、8モル以下、6モル以下、5モル以下、又は2モル以下の範囲で用いることができる。また、化合物(1-1)を化合物(1-2)よりも多く用いることが、反応の効率が高くなる点で好ましい。具体的には、化合物(1-1)1モルに対して、化合物(1-2)のモル比が0.5以下となるように用いることができる。なお、当然ながら、製造対象となる化合物(1-3)の目標製造量に対し、基質となる化合物(1-1)及び化合物(1-2)をそれぞれ1モル以上用いる必要がある。
【0154】
態様(3)の場合も、化合物(3-1)と化合物(3-2)との量比は、態様(1)と同様である。即ち、特に制限されないが、化合物(3-1)1モルに対して、化合物(3-2)を通常0.1モル以上、例えば0.2モル以上、0.3モル以上、又は0.5モル以上、また、通常20モル以下、例えば10モル以下、8モル以下、6モル以下、5モル以下、又は2モル以下の範囲で用いることができる。また、化合物(3-1)を化合物(3-2)よりも多く用いることが、反応の効率が高くなる点で好ましい。具体的には、化合物(3-1)1モルに対して、化合物(3-2)のモル比が0.5以下となるように用いることができる。なお、当然ながら、製造対象となる化合物(3-3)の目標製造量に対し、基質となる化合物(3-1)及び化合物(3-2)をそれぞれ1モル以上用いる必要がある。
【0155】
一方、態様(2)の場合は、基質は一種類、即ち化合物(2-1)のみであるので、斯かる調整は不要である。なお、当然ながら、製造対象となる化合物(2-2)の目標製造量に対し、基質となる化合物(2-1)を1モル以上用いる必要がある。
【0156】
・シラン化合物(A)及び/又は(B)(本発明の反応剤)の使用量:
本発明の反応剤であるシラン化合物(A)及び/又は(B)の使用量は、本発明の製造方法の実施を通じて、所望のカルボキシル基とアミノ基とのアミド化反応を誘導しうる量であれば、特に制限されない。例えば、各基質化合物1モルに対して、シラン化合物(A)及び/又は(B)を通常0.1モル以上、例えば0.2モル以上、0.3モル以上、0.5モル以上、又は1モル以上用いることができる。一方、シラン化合物(A)及び/又は(B)の使用量の上限にも特に制限はないが、各基質化合物1モルに対して、シラン化合物(A)及び/又は(B)を通常20モル以下、例えば10モル以下、8モル以下、6モル以下、又は5モル以下の範囲で用いることができ、反応効率の面からは2モル以下用いることができる。なお、2種類以上のシラン化合物(A)及び/又は(B)を併用する場合には、2種類以上のシラン化合物(A)及び/又は(B)の合計量が前記範囲を満たすようにすればよい。
【0157】
・第2のシラン化合物:
本発明の製造方法では、前記の基質化合物及びシラン化合物(A)及び/又は(B)(本発明の反応剤)に加えて、第2のシラン化合物を使用してもよい。反応系に第2のシラン化合物を共存させて反応を実施することにより、種々の利点が得られる場合がある。例えば、前記態様(3)において、後述のように反応手順を調節し、(a)まず第一のアミノ酸又はペプチド(3-1)とシラン化合物(A)及び/又は(B)とを接触させ、(b)次に第2のシラン化合物、及び、第二のアミノ酸又はペプチド(3-2)を接触させるという順序で反応させると、原料となる化合物(3-1)及び(3-2)中に存在する、アミド化反応の対象とすべきでないアミノ基(化合物(3-1)の式中左側のアミノ基)やカルボキシル基(化合物(3-2)の式中右側のカルボキシル基)を保護基PG1やPG2で保護しなくとも、化合物(3-1)の式中右側の末端カルボキシル基と化合物(3-2)の式中左側の末端アミノ基との間に選択的にアミド結合を形成して両者を連結することが可能となる。
【0158】
本発明の製造方法に第2のシラン化合物を使用する場合、その種類は制限されないが、一般式(C1)~(C4)により示される化合物からなる群から選択される1種以上のシラン化合物(以降適宜「シラン化合物(C)」と称する。)を用いることが好ましい。
【0159】
【0160】
前記一般式(C1)~(C4)において、各符号の定義は以下の通りである。
【0161】
Rc1~Rc3は、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していてもよい、炭素数1~10(好ましくは炭素数1~5、中でも1~3)の直鎖若しくは分枝鎖状のアルキル基又はアルコキシ基を表す。但し、Rc1~Rc3のうち少なくとも2つは、置換基を有していてもよいアルキル基又はアルコキシ基である。言い換えれば、Rc1~Rc3のうち水素原子は0個又は1個である。
【0162】
Rc4及びRc5は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい、炭素数1~10(好ましくは炭素数1~5、中でも1~3)の直鎖又は分枝鎖状のアルキル基又はアルコキシ基を表す。
【0163】
なお、Rc1~Rc5が置換基を有するアルキル基又はアルコキシ基である場合、置換基の種類については先に記載したとおりであるが、中でもハロゲン原子が好ましい。置換基の数の具体例は、例えば5、4、3、2、1、又は0である。
【0164】
Zcは、1又は2以上の置換基を有していてもよい、環構成原子として1個以上(好ましくは2~4個、更に好ましくは2個又は3個)の窒素原子を含む5~10員(好ましくは5員、6員、又は10員)の複素環式基を表す。なお、複素環式基が置換基を有する場合、その種類については先に記載したとおりであるが、中でもアルキル基(例えば炭素数1~10個の直鎖又は分岐鎖のアルキル基。以下-Rと示す場合がある。)、アルコキシ基(-O-R)、アミノ基(-NH2)、アルキルアミノ基(-NHR)、ジアルキルアミノ基(-NR2:二つのアルキル基Rは同一でも、異なっていてもよい。)、チオアルキル基(-SR)、並びにこれらの基が1又は2以上のハロゲン原子(例えば臭素又は塩素原子)で置換された基等が好ましい。置換基の数の具体例は、例えば10、9、8、7、6、5、4、3、2、1、又は0である。置換基の数が2以上の場合、これらは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0165】
Zcの含窒素複素環式基の具体例としては、これらに制限されるものではないが、ピロール基、イミダゾール基、ピラゾール基、トリアゾール基(1,2,3-トリアゾール基、1,2,4-トリアゾール基)、ピペリジル基、ピリジニル基、ピペラジニル基、テトラゾール基、インドール基、ベンズイミダゾール基等、更にはこれらの基が前述の置換基で置換されて得られる基、例えば(2-/3-/4-/5-)メチルイミダゾール基、(2,3-/2,4-/2,5-)ジメチルイミダゾール基等が挙げられる。中でもイミダゾール基、ピラゾール基、トリアゾール基、2-メチルイミダゾール基等が好ましい。
【0166】
Ycは、水素原子、又は、塩素原子、臭素原子等のハロゲン基を表す。
【0167】
Rc6は、置換基を有していてもよい、炭素数1~10(好ましくは炭素数1~5、中でも1~3)の直鎖又は分枝鎖状のアルキル基、アルコキシ基、又はアルキルカルボニル基が挙げられる。なお、この基が置換基を有する場合、その種類については先に記載したとおりであるが、中でもハロゲン原子が好ましい。置換基の数の具体例は、例えば5、4、3、2、1、又は0である。
【0168】
sは、1又は2を表す。sが2の場合、Rc6は存在しない。
【0169】
一般式(C1)で示される化合物の例としては、1-(トリメチルシリル)イミダゾール(TMSIM)、ジメチルエチルシリルイミダゾール(DMESI)、ジメチルイソプロピルシリルイミダゾール(DMIPSI)、1-(tert-ブチルジメチルシリル)イミダゾール(TBSIM)、1-(トリメチルシリル)トリアゾール、1-(tert-ブチルジメチルシリル)トリアゾール、ジメチルシリルイミダゾール、ジメチルシリル(2-メチル)イミダゾール等が挙げられる。中でも、1-(トリメチルシリル)イミダゾール(TMSIM)、1-(tert-ブチルジメチルシリル)イミダゾール(TBSIM)等が好ましい。
【0170】
一般式(C2)で示される化合物の例としては、トリメチルブロモシラン(TMBS)、トリメチルクロロシラン(TMCS)等が挙げられる。中でも、トリメチルブロモシラン(TMBS)等が好ましい。
【0171】
一般式(C3)で示される化合物の例としては、N-メチル-Nトリメチルシリルトリフルオロアセタミド(MSTFA)、N,O-ビス(トリメチルシリル)トリフルオロアセタミド(BSTFA)、N,O-ビス(トリメチルシリル)アセタミド(BSA)等が挙げられる。中でも、N-メチル-N-トリメチルシリルトリフルオロアセタミド(MSTFA)等が好ましい。
【0172】
一般式(C4)で示される化合物の例としては、N-(トリメチルシリル)ジメチルアミン(TMSDMA)、N-(tert-ブチルジメチルシリル)-N-メチルトリフルオロアセトアミド(MTBSTFA)、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)等が挙げられる。中でも、N-(トリメチルシリル)ジメチルアミン(TMSDMA)、N-(tert-ブチルジメチルシリル)-N-メチルトリフルオロアセトアミド(MTBSTFA)等が好ましい。
【0173】
また、何れか1種類のシラン化合物(C)を単独で用いてもよく、2種類以上のシラン化合物(C)を任意の組み合わせで併用してもよい。
【0174】
第2のシラン化合物の使用量は、本発明の製造方法の実施を通じて、所望のカルボキシル基とアミノ基とのアミド化反応を誘導しうる量であれば、特に制限されない。例えば、各基質化合物1モルに対して、第2のシラン化合物を通常0.1モル以上、例えば0.2モル以上、0.3モル以上、0.5モル以上、又は1モル以上用いることができる。一方、第2のシラン化合物の使用量の上限にも特に制限はないが、各基質化合物1モルに対して、第2のシラン化合物を通常20モル以下、例えば10モル以下、8モル以下、6モル以下、又は5モル以下の範囲で用いることができ、反応効率の面からは例えば2モル以下用いることができる。なお、2種類以上の第2のシラン化合物を併用する場合には、2種類以上の第2のシラン化合物の合計量が前記範囲を満たすようにすればよい。
【0175】
・アミノシラン触媒:
本発明の製造方法では、前記の基質化合物及びシラン化合物(A)及び/又は(B)(本発明の反応剤)、並びに任意により用いられる第2のシラン化合物に加えて、特定の構造を有するアミノシラン化合物を触媒として加えてもよい。斯かるアミノシラン触媒を反応系に共存させて反応を実施することにより、反応速度の向上、基質化合物の使用量の低減、シラン化合物(A)及び/又は(B)(本発明の反応剤)の使用量の低減等、種々の利点が得られる場合がある。
【0176】
本発明の製造方法にアミノシラン化合物を触媒として使用する場合、その種類は制限されないが、以下の式(D)で表される構造を有する化合物が好ましい。
【化35】
【0177】
式(D)中、Rd1~Rd3は、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していてもよい直鎖若しくは分枝鎖状のアルキル基若しくはアルコキシ基を表す。但し、Rc1~Rc3のうち少なくとも2個(好ましくは3個)は、置換基を有していてもよいアルキル基又はアルコキシ基である。言い換えれば、Rd1~Rd3のうち水素原子は0個又は1個(好ましくは0個)である。Rd1~Rd3がアルキル基又はアルコキシ基の場合、その炭素数は制限されないが、通常は炭素数1~10、中でも炭素数1~7、更には炭素数1~5であることが好ましい。また、アルキル基であってもアルコキシ基であってもよいが、アルコキシ基であることが好ましい。斯かるアルキル基又はアルコキシ基は置換基を有していてもよく、いなくてもよいが、置換基を有していることが好ましい。置換基の種類は特に制限されず、上記の任意の置換基を有していてよいが、少なくともハロゲン原子を置換基として有することが好ましい。各アルキル基又はアルコキシ基がハロゲン原子を置換基として有する場合、ハロゲン原子の数も制限されず、1以上であればよいが、通常は1~20、中でも1~16、更には1~12、とりわけ1~8であることが好ましい。ハロゲン原子の種類も制限されないが、通常はフッ素、塩素、臭素、又はヨウ素から選択されることが好ましく、中でもフッ素、塩素、又は臭素から選択されることが好ましく、更にはフッ素又は塩素から選択されることが好ましい。ハロゲン原子の数が2以上の場合、これらは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。即ち、Rd1~Rd3としては、何れもハロアルコキシ基であることが好ましいが、これに制限されるものではない。
【0178】
式(D)中、Rd4及びRd5は、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基を有していてもよい、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、若しくはアリールアルキル基を表す。但し、Rd4及びRd5のうち少なくとも1個は、置換基を有していてもよい、アルキル基、アリール基、アルキルアリール基、又はアリールアルキル基である。言い換えれば、Rd4及びRd5のうち水素原子は0個又は1個である。Rd4及びRd5がアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、又はアリールアルキル基の場合、その炭素数は制限されないが、アルキル基の場合、通常は炭素数1~10、中でも炭素数1~7、更には炭素数1~5であることが好ましく、アリール基の場合、通常は炭素数6~12、中でも炭素数6~10であることが好ましく、アルキルアリール基又はアリールアルキル基の場合、通常は炭素数7~20、中でも炭素数7~16、更には炭素数7~13であることが好ましい。また、アルキルアリール基又はアリールアルキル基を構成するアルキル基及びアリール基の数は、それぞれ1個でも2個以上でもよい。アルキルアリール基又はアリールアルキル基が2個以上のアルキル基及び/又はアリール基を含む場合、それらは互いに同一でもよく、異なっていてもよい。斯かるアルキル基、アリール基、アルキルアリール基、又はアリールアルキル基は置換基を有していてもよく、いなくてもよい。置換基を有する場合、置換基の種類は特に制限されず、上記の任意の置換基を有していてよいが、少なくともハロゲン原子及び/又はアルコキシ基を置換基として有することが好ましい。前記のアルキル基・アリール基・アルキルアリール基・アリールアルキル基がハロゲン原子を置換基として有する場合、ハロゲン原子の数も制限されず、1以上であればよいが、通常は1~20、中でも1~16、更には1~12、とりわけ1~8であることが好ましい。ハロゲン原子の種類も制限されないが、通常はフッ素、塩素、臭素、又はヨウ素から選択されることが好ましく、中でもフッ素、塩素、又は臭素から選択されることが好ましく、更にはフッ素又は塩素から選択されることが好ましい。ハロゲン原子の数が2以上の場合、これらは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。前記のアルキル基・アリール基・アルキルアリール基・アリールアルキル基がアルコキシ基を置換基として有する場合、アルコキシ基の数も制限されず、1以上であればよいが、通常は1~10、中でも1~5、更には1~3であることが好ましい。アルコキシ基の種類も制限されないが、通常は炭素数1~10、中でも1~7、更には1~4のアルコキシ基が好ましい。アルコキシ基の数が2以上の場合、これらは互いに同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0179】
式(D)のアミノシラン化合物の具体例としては、これらに制限されるものではないが、後述の実施例群F及びGにおいて触媒として使用した各種のアミノシラン化合物、具体的には以下の表に示すアミノシラン化合物が挙げられる。
【0180】
【0181】
【0182】
【0183】
以上のアミノシラン触媒は、何れか1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0184】
前記アミノシラン触媒の使用量は、本発明の製造方法の実施を通じて、所望のカルボキシル基とアミノ基とのアミド化反応を誘導しうる量であれば、特に制限されない。例えば、各基質化合物の使用量を100mol%とした場合、通常0.1mol%以上、例えば0.2mol%以上、又は0.3mol%以上、また、通常30mol%以下、例えば20mol%以下、又は15mol%以下のアミノシラン触媒を用いることが好ましい。なお、2種類以上のアミノシラン触媒を併用する場合には、2種類以上のアミノシラン触媒の合計量が前記範囲を満たすようにすればよい。
【0185】
・ルイス酸触媒:
本発明の製造方法では、前記の基質化合物及びシラン化合物(A)及び/又は(B)(本発明の反応剤)、並びに任意により用いられる第2のシラン化合物及び/又はアミノシラン触媒に加えて、ルイス酸触媒を使用してもよい。反応系にルイス酸触媒を共存させて反応を実施することにより、反応収率の向上や立体選択性の向上等、種々の利点が得られる場合がある。但し一方で、ルイス酸触媒を使用した場合、反応生成物からルイス酸触媒を分離除去する作業が必要となる場合もある。よって、ルイス酸触媒の使用如何は、本発明の製造方法を使用する目的等を考慮して適宜決定することが好ましい。
【0186】
本発明の製造方法にルイス酸触媒を使用する場合、その種類は制限されないが、ルイス酸として機能する金属化合物であることが好ましい。
【0187】
金属化合物を構成する金属元素としては、元素周期律表の第2族から第15族に属する種々の金属が挙げられる。金属元素の具体例としては、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム、珪素、カルシウム、鉛、ビスマス、水銀、遷移金属、ランタノイ系元素等が挙げられる。遷移金属の具体例としては、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、スズ、銀、カドミウム、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスミウム、イリジウム、プラチナ、金、タリウム等が挙げられる。ランタノイ系元素の具体例としては、ランタン、セリウム、ネオジム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム、ホルミウム、エルビウム、ツリウム、イッテルビウム等が挙げられる。これらの中でも、優れた反応促進効果を発揮し、高立体選択的にアミド化合物を製造する観点からは、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、ニオブ、ホウ素、バナジウム、タングステン、ネオジム、鉄、鉛、コバルト、銅、銀、パラジウム、スズ、タリウム等から選択される1種又は2種以上が好ましく、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、タンタル、ニオブ等から選択される1種又は2種以上が好ましい。なお、金属化合物に含まれる金属元素は1つでも2つ以上でもよい。金属化合物が2つ以上の金属元素を含む場合、これらはそれぞれ同じ種類の元素でもよく、2種類以上の異なる金属元素であってもよい。
【0188】
金属化合物を構成する配位子としては、金属の種類に応じて適宜選択される。配位子の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、トリフルオロエトキシ基、トリクロロエトキシ基等の、置換又は非置換の炭素数が1~10の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子;炭素数1~10のアリロキシ基;アセチルアセトナート基(acac)、アセトキシ基(AcO)、トリフルオロメタンスルホナート基(TfO);置換又は非置換の炭素数が1~10の直鎖又は分枝鎖状のアルキル基;フェニル基、酸素原子、硫黄原子、基-SR(ここでRは置換基であり、置換基の例としては、置換又は非置換の炭素数が1~20程度の炭化水素基が挙げられる。)、基-NRR’(ここでR及びR’は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基であり、置換基の例としては、置換又は非置換の炭素数が1~20程度の炭化水素基が挙げられる。)、シクロペンタジエニル(Cp)基等が挙げられる。
【0189】
中でも、金属化合物としては、チタン化合物、ジルコニウム化合物、ハフニウム化合物、タンタル化合物、又はニオブ化合物が好ましい。以下、それぞれの具体例を挙げる。
【0190】
チタン化合物の具体例としては、TiX1
4(但し、4つのX1は、それぞれ独立に、前記で例示した配位子である。4つのX1は同一の配位子でもよく、互いに異なっていてもよい。)で表されるチタン化合物が挙げられる。X1がアルコキシ基の場合、好ましくは炭素数1~10の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基、中でも炭素数1~5の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基、更には炭素数1~4の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基等が挙げられる。X1がアリロキシ基の場合、好ましくは炭素数1~20のアリロキシ基、中でも炭素数1~15のアリロキシ基、更には炭素数1~10のアリロキシ基等が挙げられる。これらの配位子は更に置換基を有していてもよい。X1がハロゲン原子の場合、好ましくは塩素原子、臭素原子等が挙げられる。これらの中でも、例えばTi(OMe)4、Ti(OEt)4、Ti(OPr)4、Ti(Oi-Pr)4、Ti(OBu)4、Ti(Ot-Bu)4、Ti(OCH2CH(Et)Bu)4、CpTiCl3、Cp2TiCl2、Cp2Ti(OTf)2、(i-PrO)2TiCl2、(i-PrO)3TiCl等が好ましい。
【0191】
ジルコニウム化合物の具体例としては、ZrX2
4(但し、4つのX2は、それぞれ独立に、前記で例示した配位子である。4つのX2は同一の配位子でもよく、互いに異なっていてもよい。)で表されるジルコニウム化合物が挙げられる。X2がアルコキシ基の場合、好ましくは炭素数1~10の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基、中でも炭素数1~5の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基、更には炭素数1~4の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基等が挙げられる。X2がアリロキシ基の場合、好ましくは炭素数1~20のアリロキシ基、中でも炭素数1~15のアリロキシ基、更には炭素数1~10のアリロキシ基等が挙げられる。これらの配位子は更に置換基を有していてもよい。X2がハロゲン原子の場合、好ましくは塩素原子、臭素原子等が挙げられる。これらの中でも、例えばZr(OMe)4、Zr(OEt)4、Zr(OPr)4、Zr(Oi-Pr)4、Zr(OBu)4、Zr(Ot-Bu)4、Zr(OCH2CH(Et)Bu)4、CpZrCl3、Cp2ZrCl2、Cp2Zr(OTf)2、(i-PrO)2ZrCl2、(i-PrO)3ZrCl等が好ましい。
【0192】
ハフニウム化合物の具体例としては、HfX3
4(但し、4つのX3は、それぞれ独立に、前記で例示した配位子である。4つのX3は同一の配位子でもよく、互いに異なっていてもよい。)で表されるハフニウム化合物が挙げられる。X3がアルコキシ基の場合、好ましくは炭素数1~10の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基、中でも炭素数1~5の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基、更には炭素数1~4の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基等が挙げられる。X3がアリロキシ基の場合、好ましくは炭素数1~20のアリロキシ基、中でも炭素数1~15のアリロキシ基、更には炭素数1~10のアリロキシ基等が挙げられる。これらの配位子は更に置換基を有していてもよい。X3がハロゲン原子の場合、好ましくは塩素原子、臭素原子等が挙げられる。これらの中でも、例えばHfCp2Cl2、HfCpCl3、HfCl4等が好ましい。
【0193】
タンタル化合物の具体例としては、TaX4
5(但し、5つのX4は、それぞれ独立に、前記で例示した配位子である。5つのX4は同一の配位子でもよく、互いに異なっていてもよい。)で表されるタンタル化合物が挙げられる。X4がアルコキシ基の場合、好ましくは炭素数1~10の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基、中でも炭素数1~5の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基、更には炭素数1~3の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基等が挙げられる。X4がアリロキシ基の場合、好ましくは炭素数1~20のアリロキシ基、中でも炭素数1~15のアリロキシ基、更には炭素数1~10のアリロキシ基等が挙げられる。これらの配位子は更に置換基を有していてもよい。X4がハロゲン原子の場合、好ましくは塩素原子、臭素原子等が挙げられる。これらの中でも、タンタルアルコキシド化合物(例えばX4がアルコキシ基の化合物)等であることが好ましく、例えばTa(OMe)5、Ta(OEt)5、Ta(OBu)5、Ta(NMe2)5、Ta(acac)(OEt)4、TaCl5、TaCl4(THF)、TaBr5等が好ましい。また、X4が酸素である化合物、即ちTa2O5も使用することができる。
【0194】
ニオブ化合物の具体例としては、NbX5
5(但し、5つのX5は、それぞれ独立に、前記で例示した配位子である。5つのX5は同一の配位子でもよく、互いに異なっていてもよい。)で表されるニオブ化合物が挙げられる。X5がアルコキシ基の場合、好ましくは炭素数1~10の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基、中でも炭素数1~5の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基、更には炭素数1~3の直鎖又は分枝鎖状のアルコキシ基等が挙げられる。X5がアリロキシ基の場合、好ましくは炭素数1~20のアリロキシ基、中でも炭素数1~15のアリロキシ基、更には炭素数1~10のアリロキシ基等が挙げられる。これらの配位子は更に置換基を有していてもよい。X5がハロゲン原子の場合、好ましくは塩素原子、臭素原子等が挙げられる。これらの中でも、ニオブアルコキシド化合物(例えばX5がアルコキシ基の化合物)であることが好ましく、例えばNbCl4(THF)、NbCl5、Nb(OMe)5、Nb(OEt)5等が好ましい。また、X5が酸素である化合物、即ちNb2O5も使用することができる。
【0195】
なお、本発明の製造方法におけるルイス酸触媒として好ましい金属化合物は、基質化合物の種類によっても異なる。
【0196】
例えば、態様(3)において、化合物(3-1)及び化合物(3-2)が何れもアミノ酸の場合(即ち、m及びnが共に1の場合)、ルイス酸触媒としては、タンタル化合物又はニオブ化合物が好ましい。
【0197】
一方、態様(3)において、化合物(3-1)及び化合物(3-2)のうち一方又は両方がペプチドの場合(即ち、m及びnのうち一方又は両方が2以上の場合)、ルイス酸触媒としては、チタン化合物、ジルコニウム化合物、又はハフニウム化合物が好ましく、特にチタン化合物が好ましい。その理由は定かではないが、チタン触媒はチタン金属の原子半径が小さいため、ペプチド結合を起点官能基とする7員環での活性化に適しており、ペプチド鎖の立体障害にも影響が少ないためであると推測される。
【0198】
また、何れか1種類のルイス酸触媒を単独で用いてもよく、2種類以上のルイス酸触媒を任意の組み合わせで併用してもよい。
【0199】
ルイス酸触媒の使用量は、本発明の製造方法の実施を通じて、所望のカルボキシル基とアミノ基とのアミド化反応を誘導しうる量であれば、特に制限されない。例えば、各基質化合物の使用量を100mol%とした場合、通常0.1mol%以上、例えば0.2mol%以上、又は0.3mol%以上、また、通常30mol%以下、例えば20mol%以下、又は15mol%以下のルイス酸触媒を用いることができる。
【0200】
なお、ルイス酸触媒は、担体に担持されていてもよい。ルイス酸触媒を担持する担体としては、特に制限されず、公知のものが使用できる。また、ルイス酸触媒を担体に担持させる方法としても、公知の方法が採用できる。
【0201】
・リン化合物:
本発明の製造方法では、前記の基質化合物及びシラン化合物(A)及び/又は(B)(本発明の反応剤)、並びに任意により用いられる第2のシラン化合物及び/又はアミノシラン触媒及び/又はルイス酸触媒に加えて、リン化合物を使用してもよい。反応系にリン化合物を共存させて反応を実施することにより、反応収率の向上や立体選択性の向上等、種々の利点が得られる場合がある。
【0202】
本発明の製造方法にリン化合物を使用する場合、その種類は制限されないが、3価のリン化合物であることが好ましく、ホスフィン化合物又はホスフェート化合物であることがより好ましい。
【0203】
ホスフィン化合物としては、一般式R3P又は(RO)3Pで示される化合物等が好ましい(なお、Rは各々独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい脂肪族若しくは芳香族炭化水素基又は複素環式基を表す。好ましくは炭素数1~10のアルキル基、又は、炭素数6~12のアリール基である。置換基として好ましくは、各々独立に、炭素数1~5のアルキル基若しくはアルコキシ基、又は、ハロゲン原子である。)。斯かるホスフィン化合物の具体例としては、トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリメチロキシホスフィン、トリエチロキシホスフィン、トリプロピロキシホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリナフチルホスフィン、トリフェニロキシホスフィン等、及びこれらの化合物が1又は2以上の置換基、例えばメチル基、メトキシ基、フルオロ基等で置換された化合物、例えばトリス(4-メチルフェニル)ホスフィン、トリス(4-メトキシフェニル)ホスフィン、トリス(4-フルオロフェニル)ホスフィン、トリス(4-メチルフェニロキシ)ホスフィン、トリス(4-メトキシフェニロキシ)ホスフィン、トリス(4-フルオロフェニロキシ)ホスフィン等が挙げられる。
【0204】
ホスフェート化合物としては、一般式(RO)3POで示される化合物等が好ましい(なお、Rは各々独立に、1又は2以上の置換基を有していてもよい脂肪族若しくは芳香族炭化水素基又は複素環式基を表す。好ましくは炭素数1~10のアルキル基、又は、炭素数6~12のアリール基である。置換基として好ましくは、各々独立に、炭素数1~5のアルキル基若しくはアルコキシ基、又は、ハロゲン原子である。)。斯かるホスフィン化合物の具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリメチロキシホスフェート、トリエチロキシホスフェート、トリプロピロキシホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリナフチルホスフェート、トリフェニロキシホスフェート等、及びこれらの化合物が1又は2以上の置換基、例えばメチル基、メトキシ基、フルオロ基等で置換された化合物、例えばトリス(4-メチルフェニル)ホスフェート、トリス(4-メトキシフェニル)ホスフェート、トリス(4-フルオロフェニル)ホスフェート、トリス(4-メチルフェニロキシ)ホスフェート、トリス(4-メトキシフェニロキシ)ホスフェート、トリス(4-フルオロフェニロキシ)ホスフェート等が挙げられる。
【0205】
また、これらのホスフィン化合物又はホスフェート化合物が2分子以上連結されてなる多価ホスフィン化合物又は多価ホスフェート化合物を用いてもよい。斯かる多価ホスフィン化合物・多価ホスフェート化合物の具体例としては、2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル(BINAP)、5,5’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-4,4’-ビ-1,3-ベンゾジオキソール(SEGPHOS)等が挙げられる。
【0206】
本発明の製造方法にリン化合物を使用する場合、その使用量は特に制限されないが、各基質化合物を100mol%とした場合に、リン化合物の量を例えば0.1mol%以上、また、例えば20mol%以下、又は10mol%以下の範囲とすることができる。
【0207】
・その他の成分:
本発明の製造方法によりアミド化を実施する際には、前述の基質化合物(態様(1)では化合物(1-1)及び(1-2)、態様(2)では化合物(2-1)、態様(3)では化合物(3-1)及び(3-2))及びシラン化合物(A)及び/又は(B)、並びに任意により用いられる第2のシラン化合物、アミノシラン触媒、ルイス酸触媒、及び/又はリン化合物に加えて、他の成分を共存させてもよい。
【0208】
例えば、反応効率を高める観点から、アミド化反応の際に反応加速剤を共存させてもよい。反応加速剤としては、フッ化セシウムとイミダゾール又はその誘導体との組み合わせ剤や、各種の塩基、ホウ素化合物、トリエチルアミン、更にはPd、Rh、Co、Ni、Mg等の公知の各種金属触媒等を使用することができる。これらの反応加速剤はアミド化反応に必須ではないが、これらの反応加速剤をアミド化反応の際に共存させると、反応速度を顕著に加速できる場合がある。これらの反応加速剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の組み合わせ及び比率で併用してもよい。
【0209】
反応加速剤としてフッ化セシウムとイミダゾールとの組み合わせを使用する場合、イミダゾールの使用量としては、特に制限されないが、各基質化合物を100mol%とした場合、通常0.1mol%以上、例えば0.2mol%以上、又は0.3mol%以上、また、通常30mol%以下、例えば20mol%以下、又は15mol%以下のイミダゾールを用いることができる。フッ化セシウムの使用量としては、特に制限されないが、各基質化合物を100mol%とした場合、通常0.1mol%以上、例えば0.2mol%以上、又は0.3mol%以上、また、通常30mol%以下、例えば20mol%以下、又は15mol%以下のフッ化セシウムを用いることができる。なお、斯かるイミダゾール及びフッ化セシウムの共存による反応加速効果は、シラン化合物(A)を用いた反応でも、シラン化合物(B)を用いた反応でも有効であるが、特にシラン化合物(A)を用いた反応に有効である。
【0210】
反応加速剤として塩基を使用する場合、塩基の種類としては、特に制限されないが、例えば、トリエチルアミン(Et3N)、ジイソプロピルアミン(i-Pr2NH)、ジイソプロピルエチルアミン(i-Pr2EtN)等の炭素数1~10の直鎖又は分枝鎖状のアルキル基を1~3個有するアミンなどが挙げられる。塩基の使用量としては、特に制限されないが、各基質化合物を100mol%とした場合に、塩基の量を例えば0.1mol%以上、又は5mol%以上、また、例えば120mol%以下、又は100mol%以下の範囲とすることができる。
【0211】
反応加速剤としてホウ素化合物を使用する場合、ホウ素化合物の種類としては特に制限されないが、例としては、炭素数1~10の直鎖又は分枝鎖状のアルキル基や、斯かるアルキル基が1~20程度のハロゲン原子で置換されたハロアルキル基を、1~3個有するモノ/ジ/トリ{(フルオロ)アルキル}ボランなどが挙げられる。具体例としては、制限されるものではないが、トリスペンタフルオロボラン等が挙げられる。ホウ素化合物の使用量としては、特に制限されないが、各基質化合物を100mol%とした場合に、ホウ素化合物の量を例えば0.05mol%以上、又は0.1mol%以上、また、例えば10mol%以下、又は3mol%以下の範囲とすることができる。
【0212】
これらの反応加速剤の作用機序としては、理論に束縛されるものではないが、以下のように推測される。即ち、シラン化合物(A)及び/又は(B)、並びに任意により用いられる第2のシラン化合物が、反応系に共存する反応加速剤によって活性化され、結果としてアミド化反応の促進につながっている可能性がある。
【0213】
これらの反応加速剤の詳細については、種々の公知文献、例えばBlandez et al., Catalysis Science & Technology, 2015, Vol. 5, pp.2167-2173; Bonar-Law et al., Tetrahedron Letters, 1990, Vol.31, No.46, pp.6725-6728; Corru et al., Journal of Organometallic Chemistry, 1976, Vol.114, pp.135-144; Davis et al., Tetrahedron Letters, 1995, Vol.36, No.18, pp.3269-3272; Dunne et al., Journal of the American Chemical Society, 2011, Vol.133, No.42, pp.16782-16785;Horner et al., Journal of Organometallic Chemistry, 1985, Vol.282, pp.155-174等を参照することができる。
【0214】
・反応手順:
本発明の製造方法におけるアミド化は、前述の基質化合物及びシラン化合物(A)及び/又は(B)、並びに任意により用いられる第2のシラン化合物、アミノシラン触媒、ルイス酸触媒、リン化合物、及び/又は他の成分を接触させればよい。接触順は特に限定されず、全てを同時に混合してもよく、任意の順序で逐次混合してもよい。具体例としては、これらに限定されるものではないが、以下の手順が挙げられる。
【0215】
例えば、所望のアミド化反応の対象となるカルボキシル基及びアミノ基以外のその他のカルボキシル基やアミノ基、更にはその他の反応性基が存在しない場合や、斯かるその他のカルボキシル基やアミノ基、更にはその他の反応性基を保護基で保護する場合には、接触順は特に限定されないものの、前述の基質化合物及びシラン化合物(A)及び/又は(B)、並びに任意により用いられる第2のシラン化合物、アミノシラン触媒、ルイス酸触媒、リン化合物、及び/又は他の成分を同時に混合することが、反応効率の面からは好ましい。なお、その他のカルボキシル基やアミノ基等を保護基で保護する場合には、アミド化反応前に保護基を導入する保護工程を、アミド化反応後に保護基を除去する脱保護工程を、それぞれ実施する必要がある。
【0216】
一方、前記態様(3)のように、第一のアミノ酸又はペプチド(3-1)の末端カルボキシル基と、第二のアミノ酸又はペプチド(3-2)の末端アミノ基とを反応させる場合)、(a)まず第一のアミノ酸又はペプチド(3-1)とシラン化合物(A)及び/又は(B)とを接触させ、(b)次に任意により用いられる第2のシラン化合物を接触させ、(c)続いて第二のアミノ酸又はペプチド(3-2)を接触させる、という順序で反応させることが好ましい。斯かる手順により、各基質化合物が有するアミド化反応の対象としないカルボキシル基やアミノ基を保護しなくとも、第一のアミノ酸又はペプチド(3-1)の末端カルボキシル基と、第二のアミノ酸又はペプチド(3-2)の末端アミノ基との間に選択的にアミド化反応を生じさせることができる。斯かる反応手順によれば、アミド化反応前に保護基を導入する保護工程や、アミド化反応後に保護基を除去する脱保護工程が不要となるため、効率性の観点から極めて好ましい。なお、斯かる反応手順の場合、任意により用いられるアミノシラン触媒、ルイス酸触媒、リン化合物、及び/又は他の成分を加えるタイミングは特に制限されず、任意の段階で加えればよい。
【0217】
なお、シラン化合物(A)及び/又は(B)や、任意により用いられる第2のシラン化合物は、当該化合物を直接系内に加えてもよいが、当該化合物の原料となる化合物を系内で反応させることにより、当該化合物を系内発生させてもよい。例えば、第2のシラン化合物としてシリルイミダゾール系化合物(例えばジメチルシリル(2-メチル)イミダゾール)を用いる場合、対応するシリルハライド(例えばシリルクロイド)とイミダゾール化合物(例えば2-メチルイミダゾール)とをそれぞれ系内に添加して反応させることにより、所望のシリルイミダゾール系化合物を合成することができる。斯かる例の場合、シリルイミダゾール系化合物と当量のハロゲン化水素(例えば塩酸)が発生することになるため、シリルハライドに対して2当量以上のイミダゾール化合物を使用する必要がある。こうしたシラン化合物の系内合成法は、当業者であれば技術常識に基づき種々選択して実施することが可能である。
【0218】
なお、反応効率を高める観点からは、有機溶媒中でアミド化を行ってもよい。有機溶媒としては、特に制限されないが、例えば、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ペンタン、石油エーテル、1-メチルテトラヒドロフラン(1-MeTHF)、ジイソプロピルエーテル(i-Pr2O)、ジエチルエーテル(Et2O)、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)等のエーテル類、酢酸エチル(AcOEt)等のエステル類、酢酸等の有機酸などが挙げられる。有機溶媒は、1種類単独で使用してもよいし、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
【0219】
反応系中の各基質化合物の濃度としては、特に制限されないが、反応効率を高める観点からは、2体積%~70体積%とすることができる。
【0220】
・反応条件:
本発明の製造方法におけるアミド化反応の各条件は、反応が進行する限りにおいて制限されないが、反応手順毎に例示すると以下のとおりである。
【0221】
まず、前述の基質化合物及びシラン化合物(A)及び/又は(B)、並びに任意により用いられる第2のシラン化合物、アミノシラン触媒、ルイス酸触媒、リン化合物、及び/又は他の成分を同時に混合する場合、その反応条件は、反応が進行する限りにおいて制限されないが、例えば以下の通りである。
【0222】
反応温度は、反応が進行する限りにおいて制限されないが、通常0℃以上、中でも10℃以上、特に20℃以上であり、また、通常100℃以下、中でも80℃以下、特に60℃以下であることができる。特に、本発明の製造方法では、例えば60℃以下という穏和条件下でも十分にアミド化反応が進行する点で有利である。
【0223】
反応圧力も、反応が進行する限りにおいて制限されず、減圧下、常圧下、加圧下の何れで行ってもよいが、通常は常圧で実施することができる。
【0224】
反応雰囲気も、反応が進行する限りにおいて制限されないが、アルゴン、窒素等の不活性ガスの雰囲気下に行うことができる。
【0225】
反応時間も、反応が進行する限りにおいて制限されないが、反応を十分且つ効率的に進行させる観点からは、例えば10分間以上、中でも20分間以上、又は30分間以上、また、例えば80時間以内、中でも60時間以内、又は50時間以内とすることができる。なお、アミノシラン触媒を共存させた場合には、斯かる反応時間を顕著に低減することが可能となる。
【0226】
一方、態様(3)において保護工程・脱保護工程を不要とすべく、(a)まず第一のアミノ酸又はペプチド(3-1)とシラン化合物(A)及び/又は(B)とを接触させ、(b)次に任意により用いられる第2のシラン化合物を接触させ、(c)続いて第二のアミノ酸又はペプチド(3-2)を接触させる、という順序で反応させる場合、各工程(a)~(c)の反応条件は、反応が進行する限りにおいて制限されないが、例えば以下の通りである。
【0227】
まず、工程(a)の反応温度は、反応が進行する限りにおいて制限されないが、通常0℃以上、中でも10℃以上、特に20℃以上であり、また、通常100℃以下、中でも80℃以下、特に60℃以下とすることができる。
【0228】
工程(a)の反応時間も、反応が進行する限りにおいて制限されないが、反応を十分且つ効率的に進行させる観点からは、例えば10分間以上、中でも20分間以上、又は30分間以上、また、例えば10時間以内、中でも5時間以内、又は3時間以内とすることができる。なお、本工程においてアミノシラン触媒を共存させた場合には、斯かる反応時間を顕著に低減することが可能となる。
【0229】
次ぎに、工程(b)の反応温度は、反応が進行する限りにおいて制限されないが、通常0℃以上、中でも10℃以上、特に20℃以上であり、また、通常100℃以下、中でも80℃以下、特に60℃以下とすることができる。
【0230】
工程(b)の反応時間も、反応が進行する限りにおいて制限されないが、反応を十分且つ効率的に進行させる観点からは、例えば10分間以上、中でも20分間以上、又は30分間以上、また、例えば10時間以内、中でも5時間以内、又は3時間以内とすることができる。
【0231】
最後に、工程(c)の反応温度は、反応が進行する限りにおいて制限されないが、通常0℃以上、中でも10℃以上、特に20℃以上であり、また、通常100℃以下、中でも80℃以下、特に60℃以下とすることができる。
【0232】
工程(c)の反応時間も、反応が進行する限りにおいて制限されないが、反応を十分且つ効率的に進行させる観点からは、例えば10分間以上、中でも20分間以上、又は30分間以上、また、例えば80時間以内、中でも60時間以内、又は50時間以内とすることができる。なお、本工程以前においてアミノシラン触媒を共存させた場合には、斯かる反応時間を顕著に低減することが可能となる。
【0233】
なお、工程(a)~(c)の反応圧力及び反応雰囲気については、反応が進行する限りにおいて制限されないが、通常は常圧下に、且つ、アルゴンや窒素等の不活性ガスの雰囲気下に行うことができる。
【0234】
なお、何れの態様においても、本発明の製造方法(複数の工程を含む場合はその各工程)は、逐次法(バッチ法)にて実施してもよく、連続法(フロー法)にて実施してもよい。具体的な逐次法(バッチ法)及び連続法(フロー法)の実施手順の詳細は、本技術分野では公知である。
【0235】
・後処理等(精製・回収等):
本発明の製造方法は、アミド化反応により生成されたアミド化合物に対して、更に種々の後処理を施してもよい。
【0236】
例えば、生成されたアミド化合物を、カラムクロマトグラフィー、再結晶等の常法に従って単離・精製することができる。
【0237】
また、T1が保護基PG1である場合、及び/又は、T2が保護基PG2である場合には、生成されたアミド化合物に対して、任意により単離・精製を実施した後、前記PG1により保護されたアミノ基、及び/又は、前記PG2により保護されたカルボキシル基の脱保護を行うことができる。
【0238】
PG1により保護されたアミノ基を脱保護する方法としては、特に制限されず、保護基PG1の種類に応じて様々な方法を用いることができる。例としては、水素化による脱保護、弱酸による脱保護、フッ素イオンによる脱保護、一電子酸化剤による脱保護、ヒドラジンによる脱保護、酸素による脱保護などが挙げられる。水素化による脱保護の場合、(a)水素ガスの存在下に、還元触媒として、パラジウム、パラジウム-炭素、水酸化パラジウム、水酸化パラジウム-炭素等のなどの金属触媒を用いて還元して脱保護する方法、(b)パラジウム、パラジウム-炭素、水酸化パラジウム、水酸化パラジウム-炭素等のなどの金属触媒の存在下、水素化ホウ素ナトリウム、水素化アルミニウムリチウム、水素化ホウ素リチウム、ジボラン等の水素化還元剤を用いて還元して脱保護する方法等が挙げられる。
【0239】
PG2により保護されたカルボキシル基を脱保護する方法としては、特に制限されず、保護基PG2の種類に応じて様々な方法を用いることができる。例としては、水素化による脱保護、塩基による脱保護、弱酸による脱保護などが挙げられる。塩基による脱保護の場合、塩基として、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の強塩基を用いて脱保護する方法等が挙げられる。
【0240】
また、本発明の製造方法によるアミド化反応の実施後、得られたアミド化合物を(必要に応じて脱保護した上で)、新たに基質化合物として再び本発明の製造方法に供し、他の化合物とアミド結合により連結することができる。
【0241】
例えば、態様(3)の場合、本発明の製造方法によるアミド化反応によって得られたペプチドの末端カルボキシル基又はアミノ基と、その他のアミノ酸又はペプチドの末端アミノ基又はカルボキシル基とを、本発明の製造方法によるアミド化反応によって連結することにより、新たなペプチドを生成することができる。こうして本発明の製造方法を逐次繰り返すことにより、原理的には任意のアミノ酸配列のペプチドを合成することが可能となる。
【0242】
なお、別法として、本発明の製造方法によるアミド化の実施後、得られたペプチドに対して、他の方法を用いて、更に別のアミノ酸を結合することもできる。他の方法の例としては、本発明者等による国際公開第2018/199147号(前記の特許文献3)に記載の方法等が挙げられる。国際公開第2018/199147号に記載の方法は、特定のタンタル化合物やニオブ化合物等の金属触媒の存在下で、第1のアミノ酸又はペプチドのカルボキシル基と、第2のアミノ酸のアミノ基との間にアミド結合を形成する方法である。具体的には、態様(3)の場合、予め前記化合物(3-2)のカルボキシル基の保護基PG2を、国際公開第2018/199147号に記載の方法に使用される特定のタンタル化合物やニオブ化合物等の金属触媒の存在下で反応可能な保護基としておき、本発明の製造方法により化合物(3-3)を製造した上で、続いて国際公開第2018/199147号に記載の方法を用いて、この化合物(3-3)に別のアミノ酸を反応させ、アミド化により連結すればよい。
【実施例】
【0243】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は以下の実施例にも束縛されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、任意の形態で実施することが可能である。
【0244】
以下の各実施例欄に記載の方法に従って、本発明の製造方法によるアミド化合物の製造を行った。
【0245】
なお、以下の実施例において、別途記載なき限り、ジアステレオマー比又はエナンチオマー比は、1H-NMR分析(測定機器:日本電子社製JEOL 400SS、測定条件:400MHz、溶媒:CDCl3)により決定した。
【0246】
合成例群:トリアルコキシシラン(シラン化合物(A))の合成]
【0247】
【0248】
アルゴン雰囲気下、グローブボックス内にて加熱乾燥させた二口丸底フラスコに、撹拌子(サマリウム-コバルト)、還流冷却器、及び真空アダプターを装着した。フラスコを排気し、窒素(N2)ガスで3回再充填した後、乾燥ジクロロメタン(16mL)及びトリクロロシラン(HSiCl3、5.4g、40mmol)を入れ、氷浴で0℃に冷却した。次に、合成対象のトリアルコキシシランのアルコキシ基に対応するアルコール(ROH、3.3当量、132mmol)を滴下し、室温にて1時間撹拌した後、50℃に加熱して3時間還流した。反応完了後、溶媒及び未反応アルコールを除去し、減圧・窒素(N2)ガス雰囲気下で蒸留することにより(70~80℃/30mmHg)、所望のトリ(アルコキシシラン(HSiR3)を得た。
なお、上記反応式中、Rは、ハロゲン置換アルキコキシ基を表す。
【0249】
・合成例1:トリス(2,2,2-トリフルオロエトキシ)シランの合成
【化37】
【0250】
アルコールとして2,2,2-トリフルオロエタノール(CF3CH2OH)を用い、前記一般合成手順に従って、最後に70℃/30mmHgで蒸留することにより、表題化合物トリス(2,2,2-トリフルオロエトキシ)シラン((CF3CH2O)3SiH)を無色液体として単離した。収率は75%であった。
【0251】
1H NMR (400 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 4.48 (s, 1H), 4.14 (q, 6H, J = 8.3 Hz); 13C{1H} NMR (100 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 123.6 (q, 1J(C-F) = 276 Hz), 61.3 (q, 2J(C-F) = 37 Hz); 29Si NMR (80 MHz, CDCl3, 24 ℃): -59.0.
【0252】
・合成例2:トリス((1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2-イル)オキシ)シランの合成
【化38】
【0253】
アルコールとして1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロ-2-プロパノール((CF3)2CH2OH)を用い、前記一般合成手順に従って、最後に70℃/30mmHgで蒸留することにより、表題化合物トリス((1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン-2-イル)オキシ)シラン(((CF3)2CH2O)3SiH)を無色液体として単離した。収率は60%であった。
【0254】
1H NMR (400 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 4.76 (s, 1H), 4.63-4.60 (m, 3H); 13C{1H} NMR (100 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 120.6 (q, 1J(C-F) = 280 Hz), 70.3 (quin, 2J(C-F) = 35 Hz); 29Si NMR (80 MHz, CDCl3, 24 ℃): -62.8.
【0255】
・合成例3:トリス(2,2,2-トリクロロエトキシ)シランの合成
【化39】
【0256】
アルコールとして2,2,2-トリクロロエタノール(CCl3CH2OH)を用い、前記一般合成手順に従って、蒸留を行うことなく、表題化合物トリス(2,2,2-トリクロロエトキシ)シラン((CCl3CH2O)3SiH)を無色液体として単離した。収率は94%であった。
【0257】
1H NMR (400 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 4.80 (s, 1H), 4.42 (s, 6H); 13C{1H} NMR (100 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 97.6, 75.7; 29Si NMR (80 MHz, CDCl3, 24 ℃): -61.3.
【0258】
・合成例4:トリス(2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ)シランの合成
【化40】
【0259】
アルコールとして2,2,3,3-テトラフルオロ-1-プロパノール(CF2HCF2CH2OH)を用い、前記一般合成手順に従って、最後に120℃/30mmHgで蒸留することにより、表題化合物トリス(2,2,3,3-テトラフルオロプロポキシ)シラン((CF2HCF2CH2O)3SiH)を無色液体として単離した。収率は71%であった。
【0260】
1H NMR (400 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 6.02-5.75 (m, 3H), 4.44 (s, 1H), 4.20-4.13 (m, 6H); 13C{1H} NMR (100 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 114.7 (tt, 1J(C-F) = 248 Hz, 2J(C-F) = 26.7 Hz), 109.4 (tt, 1J(C-F) = 214 Hz, 2J(C-F) = 31.4 Hz), 60.5 (t, 2J(C-F) = 29.5 Hz); 29Si NMR (80 MHz, CDCl3, 24 ℃): -57.9.
【0261】
[実施例群A:シラン化合物(A)を用いたカルボン酸化合物とアミノ化合物とのアミド化反応]
【0262】
・実施例a1:N-(4-メトキシベンジル)プロピオンアミドの合成
【化41】
【0263】
アルゴン雰囲気下、グローブボックス内にて加熱乾燥させた5.0mLスクリューキャップバイアルに、撹拌子(サマリウム-コバルト)、プロパン酸(0.5mmol、1当量)、及び4-メトキシベンジルアミン(0.75mmol、1.5当量)を加えた。この混合物に、HSi[OCH(CF3)2]3(0.65mmol、1.3当量)を加え(水素ガスの発生が観察された。)、更に乾燥DCM(0.5mL、1M)を加えて溶解させ、バイアルを密封した。このバイアルをグローブボックスから取り出し、アルゴン雰囲気下、室温で6時間激しく撹拌した。TLC分析で反応の進行をモニターした。反応の完了後、反応混合物をCHCl3(3.0mL)で希釈し、ピペットでシリカゲルカラムに移し、使用したバイアル及びピペットをCHCl3(5.0mL)で洗浄した。得られた反応物を、ヘキサン中0~40%AcOEtを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製することにより、N-(4-メトキシベンジル)プロピオンアミドを白色固体として得た。収率は93%であった。
【0264】
・実施例a2:N-ベンジル-N-メチルプロピオンアミドの合成
【化42】
【0265】
実施例a1において、4-メトキシベンジルアミンの代わりにN-メチルベンジルアミン(0.75mmol、1.5当量)を用いたほかは同様の手順により、N-ベンジル-N-メチルプロピオンアミドを白色固体として得た。収率は91%であった。
【0266】
[実施例群B:シラン化合物(A)を用いたアミノカルボン酸化合物の分子内アミド化反応]
【0267】
・実施例b1:(S)-tert-ブチル(2-オキソアゼパン-3-イル)カルバメートの合成
【化43】
【0268】
アルゴン雰囲気下、グローブボックス内にて加熱乾燥させた5.0mLスクリューキャップバイアルに、撹拌子(サマリウム-コバルト)、Boc-Lys-OH(0.5mmol、1当量)、及びHSi(OCH2CF3)3(0.5mmol、1当量)を加え、更に乾燥DMSO(0.5mL、1M)を加えて溶解させ、バイアルを密封した。このバイアルをグローブボックスから取り出し、50℃に温められた油浴内に設置した後、24時間激しく撹拌した。TLC分析で反応の進行をモニターした。反応の完了後、反応混合物をCHCl3(3.0mL)で希釈し、ピペットでシリカゲルカラムに移し、使用済みのバイアルとピペットをCHCl3(5.0mL)で洗浄した。得られた反応物を、ヘキサン中の0~40%AcOEtを使用するフラッシュカラムクロマトグラフィーにより精製することにより、(S)-tert-ブチル(2-オキソアゼパン-3-イル)カルバメートを白色固体として得た。収率は95%であった。
【0269】
[実施例群C:シラン化合物(A)を用いた2つのアミノ酸化合物のアミド化反応(保護基なし)]
【0270】
・実施例c1:H-L-Phe-L-Ala-Ot-Buの合成(1)
【化44】
【0271】
アルゴン雰囲気下、グローブボックス内にて加熱乾燥させた5ミリリットル用スクリューバイアルに、撹拌子(サマリウム-コバルト)、L-フェニルアラニン(H-L-Phe-OH、82.6mg、0.5mmol)、トリスヘキサフルオロイソプロポキシシラン(HSi(OCH(CF3)2)3、530.2mg、1.0mmol)、クロロホルム(0.5mL)を加え、セプタム及びスクリューキャップで栓をした。この反応容器をグローブボックス外に取り出し、50℃に温められた油浴内に設置した後、1時間激しく撹拌した。スクリューキャップを外し、セプタムの上からマイクロシリンジを用いてN-tert-ブチルジメチルシリル-N-メチルトリフルオロアセトアミド(MTBSTFA、120.7mg、0.5mmol)を添加し、スクリューキャップで栓をした後、室温にて1時間激しく撹拌した。スクリューキャップを再度外し、セプタムの上からマイクロシリンジを用いてL-アラニン-tert-ブチルエステル(H-L-Ala-Ot-Bu、36.3mg、0.25mmol)を添加し、スクリューキャップで栓をした後、30℃に温められた油浴内にて21時間激しく撹拌した。反応容器を油浴から取り出し、室温まで冷ました後、反応物を1%メタノール/クロロホルム混合液(3.0mL)で希釈し、パスツールピペットを用いて先に準備しておいたシリカゲルカラム(1%メタノール/クロロホルム混合液)に移した。この作業をさらに三度繰り返し、使用したスクリューキャップ、セプタム、パスツールピペットを同混合液で洗浄した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(1~5%メタノール/クロロホルム混合液)にて反応物を精製し、所望のジペプチド(H-L-Phe-L-Ala-Ot-Bu、69.2mg、95%、>99:1dr)を白色固体として得た。
【0272】
・実施例c2:H-L-Phe-L-Ala-Ot-Buの合成(2)
【化45】
【0273】
アルゴン雰囲気下、グローブボックス内にて加熱乾燥させた5ミリリットル用スクリューバイアルに、撹拌子(サマリウム-コバルト)、L-フェニルアラニン(H-L-Phe-OH、41.3mg、0.25mmol)、トリスヘキサフルオロイソプロポキシシラン(HSi(OCH(CF3)2)3、265.1mg、0.5mmol)、クロロホルム(0.5mL)を加え、セプタム及びスクリューキャップで栓をした。この反応容器をグローブボックス外に取り出し、50℃に温められた油浴内に設置した後、1時間激しく撹拌した。スクリューキャップを外し、セプタムの上からマイクロシリンジを用いてN-tert-ブチルジメチルシリル-N-メチルトリフルオロアセトアミド(MTBSTFA、60.3mg、0.25mmol)を添加し、スクリューキャップで栓をした後、室温にて1時間激しく撹拌した。スクリューキャップを再度外し、セプタムの上からマイクロシリンジを用いてL-アラニン-tert-ブチルエステル(H-L-Ala-Ot-Bu、72.6mg、0.5mmol)を添加し、スクリューキャップで栓をした後、30℃に温められた油浴内にて21時間激しく撹拌した。反応容器を油浴から取り出し、室温まで冷ました後、反応物を1%メタノール/クロロホルム混合液(3.0mL)で希釈し、パスツールピペットを用いて先に準備しておいたシリカゲルカラム(1%メタノール/クロロホルム混合液)に移した。この作業をさらに三度繰り返し、使用したスクリューキャップ、セプタム、パスツールピペットを同混合液で洗浄した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(1~5%メタノール/クロロホルム混合液)にて反応物を精製し、所望のジペプチド(H-L-Phe-L-Ala-Ot-Bu、72.7mg、99%、>99:1dr)を白色固体として得た。
【0274】
・実施例c3:H-L-Phe-L-Ser(t-Bu)-Ot-Buの合成
【化46】
【0275】
アルゴン雰囲気下、グローブボックス内にて加熱乾燥させた5ミリリットル用スクリューバイアルに、撹拌子(サマリウム-コバルト)、L-フェニルアラニン(H-L-Phe-OH、82.6mg、0.5mmol)、トリスヘキサフルオロイソプロポキシシラン(HSi(OCH(CF3)2)3、530.2mg、1.0mmol)、クロロホルム(0.5mL)を加え、セプタム及びスクリューキャップで栓をした。この反応容器をグローブボックス外に取り出し、50℃に温められた油浴内に設置した後、1時間激しく撹拌した。スクリューキャップを外し、セプタムの上からマイクロシリンジを用いてN-tert-ブチルジメチルシリル-N-メチルトリフルオロアセトアミド(MTBSTFA、120.7mg、0.5mmol)を添加し、スクリューキャップで栓をした後、室温にて1時間激しく撹拌した。スクリューキャップを再度外し、セプタムの上からマイクロシリンジを用いてL-セリン-tert-ブチルエステル(H-L-Ser(t-Bu)-Ot-Bu、54.3mg、0.25mmol)を添加し、スクリューキャップで栓をした後、30℃に温められた油浴内にて21時間激しく撹拌した。反応容器を油浴から取り出し、室温まで冷ました後、反応物を1%メタノール/クロロホルム混合液(3.0mL)で希釈し、パスツールピペットを用いて先に準備しておいたシリカゲルカラム(1%メタノール/クロロホルム混合液)に移した。この作業をさらに三度繰り返し、使用したスクリューキャップ、セプタム、パスツールピペットを同混合液で洗浄した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(1~5%メタノール/クロロホルム混合液)にて反応物を精製し、所望のジペプチド(H-L-Phe-L-Ser(t-Bu)-Ot-Bu、73.6mg、81%、>99:1dr)を無色のガム状化合物として得た。
【0276】
・実施例c4:H-L-Phe-L-Val-Ot-Buの合成(1)
【化47】
【0277】
アルゴン雰囲気下、グローブボックス内にて加熱乾燥させた5ミリリットル用スクリューバイアルに、撹拌子(サマリウム-コバルト)、L-フェニルアラニン(H-L-Phe-OH、82.6mg、0.5mmol)、トリスヘキサフルオロイソプロポキシシラン(HSi(OCH(CF3)2)3、530.2mg、1.0mmol)、クロロホルム(0.5mL)を加え、セプタム及びスクリューキャップで栓をした。この反応容器をグローブボックス外に取り出し、50℃に温められた油浴内に設置した後、1時間激しく撹拌した。スクリューキャップを外し、セプタムの上からマイクロシリンジを用いてN-tert-ブチルジメチルシリル-N-メチルトリフルオロアセトアミド(MTBSTFA、120.7mg、0.5mmol)を添加し、スクリューキャップで栓をした後、室温にて1時間激しく撹拌した。スクリューキャップを再度外し、セプタムの上からマイクロシリンジを用いてL-バリン-tert-ブチルエステル(H-L-Val-Ot-Bu、43.3mg、0.25mmol)を添加し、スクリューキャップで栓をした後、30℃に温められた油浴内にて21時間激しく撹拌した。反応容器を油浴から取り出し、室温まで冷ました後、反応物を1%メタノール/クロロホルム混合液(3.0mL)で希釈し、パスツールピペットを用いて先に準備しておいたシリカゲルカラム(1%メタノール/クロロホルム混合液)に移した。この作業をさらに三度繰り返し、使用したスクリューキャップ、セプタム、パスツールピペットを同混合液で洗浄した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(1~5%メタノール/クロロホルム混合液)にて反応物を精製し、所望のジペプチド(H-L-Phe-L-Val-Ot-Bu、28.0mg、35%、>99:1dr)を無色のガム状化合物として得た。
【0278】
・実施例c5:H-L-Phe-L-Val-Ot-Buの合成(2)
【化48】
【0279】
アルゴン雰囲気下、グローブボックス内にて加熱乾燥させた5ミリリットル用スクリューバイアルに、撹拌子(サマリウム-コバルト)、L-フェニルアラニン(H-L-Phe-OH、41.3mg、0.25mmol)、トリスヘキサフルオロイソプロポキシシラン(HSi(OCH(CF3)2)3、265.1mg、0.5mmol)、クロロホルム(0.5mL)を加え、セプタム及びスクリューキャップで栓をした。この反応容器をグローブボックス外に取り出し、50℃に温められた油浴内に設置した後、1時間激しく撹拌した。スクリューキャップを外し、セプタムの上からマイクロシリンジを用いてN-tert-ブチルジメチルシリル-N-メチルトリフルオロアセトアミド(MTBSTFA、60.3mg、0.25mmol)を添加し、スクリューキャップで栓をした後、室温にて1時間激しく撹拌した。スクリューキャップを再度外し、セプタムの上からマイクロシリンジを用いてL-バリン-tert-ブチルエステル(H-L-Val-Ot-Bu、86.6mg、0.5mmol)を添加し、スクリューキャップで栓をした後、30℃に温められた油浴内にて21時間激しく撹拌した。反応容器を油浴から取り出し、室温まで冷ました後、反応物を1%メタノール/クロロホルム混合液(3.0mL)で希釈し、パスツールピペットを用いて先に準備しておいたシリカゲルカラム(1%メタノール/クロロホルム混合液)に移した。この作業をさらに三度繰り返し、使用したスクリューキャップ、セプタム、パスツールピペットを同混合液で洗浄した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(1~5%メタノール/クロロホルム混合液)にて反応物を精製し、所望のジペプチド(H-L-Phe-L-Val-Ot-Bu、69.3mg、87%、>99:1dr)を無色のガム状化合物として得た。
【0280】
・実施例c6:H-L-Ala-L-Ala-Ot-Buの合成(1)
【化49】
【0281】
アルゴン雰囲気下、グローブボックス内にて加熱乾燥させた5ミリリットル用スクリューバイアルに、撹拌子(サマリウム-コバルト)、L-アラニン(H-L-Ala-OH、44.5mg、0.5mmol)、トリスヘキサフルオロイソプロポキシシラン(HSi(OCH(CF3)2)3、265.1mg、0.5mmol)、クロロホルム(0.5mL)を加え、セプタム及びスクリューキャップで栓をした。この反応容器をグローブボックス外に取り出し、50℃に温められた油浴内に設置した後、1時間激しく撹拌した。スクリューキャップを外し、セプタムの上からマイクロシリンジを用いてN-tert-ブチルジメチルシリル-N-メチルトリフルオロアセトアミド(MTBSTFA、120.7mg、0.5mmol)を添加し、スクリューキャップで栓をした後、室温にて1時間激しく撹拌した。スクリューキャップを再度外し、セプタムの上からマイクロシリンジを用いてL-アラニン-tert-ブチルエステル(H-L-Ala-Ot-Bu、36.3mg、0.25mmol)を添加し、スクリューキャップで栓をした後、30℃に温められた油浴内にて21時間激しく撹拌した。反応容器を油浴から取り出し、室温まで冷ました後、反応物を1%メタノール/クロロホルム混合液(3.0mL)で希釈し、パスツールピペットを用いて先に準備しておいたシリカゲルカラム(1%メタノール/クロロホルム混合液)に移した。この作業をさらに三度繰り返し、使用したスクリューキャップ、セプタム、パスツールピペットを同混合液で洗浄した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(5~30%メタノール/クロロホルム混合液)にて反応物を精製し、所望のジペプチド(H-L-Ala-L-Ala-Ot-Bu、30.0mg、55%、>99:1dr)を無色のガム状化合物として得た。
【0282】
・実施例c7:H-L-Ala-L-Ala-Ot-Buの合成(2)
【化50】
【0283】
アルゴン雰囲気下、グローブボックス内にて加熱乾燥させた5ミリリットル用スクリューバイアルに、撹拌子(サマリウム-コバルト)、L-アラニン(H-L-Ala-OH、22.3mg、0.25mmol)、トリスヘキサフルオロイソプロポキシシラン(HSi(OCH(CF3)2)3、265.1mg、0.5mmol)を加え、セプタム及びスクリューキャップで栓をした。この反応容器をグローブボックス外に取り出し、50℃に温められた油浴内に設置した後、1時間激しく撹拌した。スクリューキャップを外し、セプタムの上からマイクロシリンジを用いてN-tert-ブチルジメチルシリル-N-メチルトリフルオロアセトアミド(MTBSTFA、60.3mg、0.25mmol)を添加し、スクリューキャップで栓をした後、室温にて1時間激しく撹拌した。スクリューキャップを再度外し、セプタムの上からマイクロシリンジを用いてL-アラニン-tert-ブチルエステル(H-L-Ala-Ot-Bu、54.5mg、0.375mmol)を添加し、スクリューキャップで栓をした後、30℃に温められた油浴内にて21時間激しく撹拌した。反応容器を油浴から取り出し、室温まで冷ました後、反応物を1%メタノール/クロロホルム混合液(3.0mL)で希釈し、パスツールピペットを用いて先に準備しておいたシリカゲルカラム(1%メタノール/クロロホルム混合液)に移した。この作業をさらに三度繰り返し、使用したスクリューキャップ、セプタム、パスツールピペットを同混合液で洗浄した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(5~30%メタノール/クロロホルム混合液)にて反応物を精製し、所望のジペプチド(H-L-Ala-L-Ala-Ot-Bu、42.1mg、78%、>99:1dr)を無色のガム状化合物として得た。
【0284】
・実施例c8:H-L-Ile-L-Ala-Ot-Buの合成
【化51】
【0285】
アルゴン雰囲気下、グローブボックス内にて加熱乾燥させた5ミリリットル用スクリューバイアルに、撹拌子(サマリウム-コバルト)、L-イソロイシン(H-L-Ile-OH、65.6mg、0.5mmol)、トリスヘキサフルオロイソプロポキシシラン(HSi(OCH(CF3)2)3、530.2mg、1.0mmol)、クロロホルム(0.5mL)を加え、セプタム及びスクリューキャップで栓をした。この反応容器をグローブボックス外に取り出し、50℃に温められた油浴内に設置した後、1時間激しく撹拌した。スクリューキャップを外し、セプタムの上からマイクロシリンジを用いてN-tert-ブチルジメチルシリル-N-メチルトリフルオロアセトアミド(MTBSTFA、120.7mg、0.5mmol)を添加し、スクリューキャップで栓をした後、室温にて1時間激しく撹拌した。スクリューキャップを再度外し、セプタムの上からマイクロシリンジを用いてL-アラニン-tert-ブチルエステル(H-L-Ala-Ot-Bu、36.3mg、0.25mmol)を添加し、スクリューキャップで栓をした後、30℃に温められた油浴内にて21時間激しく撹拌した。反応容器を油浴から取り出し、室温まで冷ました後、反応物を1%メタノール/クロロホルム混合液(3.0mL)で希釈し、パスツールピペットを用いて先に準備しておいたシリカゲルカラム(1%メタノール/クロロホルム混合液)に移した。この作業をさらに三度繰り返し、使用したスクリューキャップ、セプタム、パスツールピペットを同混合液で洗浄した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(1~10%メタノール/クロロホルム混合液)にて反応物を精製し、所望のジペプチド(H-L-Ile-L-Ala-Ot-Bu、23.0mg、36%、>99:1dr)を無色のガム状化合物として得た。
【0286】
・実施例c9:H-L-Phe-L-Ala-Ot-Buの合成
【化52】
【0287】
アルゴン雰囲気下、グローブボックス内にて加熱乾燥させた5ミリリットル用スクリューバイアルに、撹拌子(サマリウム-コバルト)、L-フェニルアラニン(H-L-Phe-OH、82.6mg、0.5mmol)、トリストリフルオロエトキシシラン(HSi(OCH2CF3)3、358.8mg、1.0mmol)、クロロホルム(0.5mL)を加え、セプタム及びスクリューキャップで栓をした。この反応容器をグローブボックス外に取り出し、50℃に温められた油浴内に設置した後、1時間激しく撹拌した.スクリューキャップを外し、セプタムの上からマイクロシリンジを用いてN-tert-ブチルジメチルシリル-N-メチルトリフルオロアセトアミド(MTBSTFA、120.7mg、0.5mmol)を添加し、スクリューキャップで栓をした後、50℃に温められた油浴内にて2時間激しく撹拌した.スクリューキャップを再度外し、セプタムの上からマイクロシリンジを用いてL-アラニン-tert-ブチルエステル(H-L-Ala-Ot-Bu、36.3mg、0.25mmol)を添加し、スクリューキャップで栓をした後、室温にて21時間激しく撹拌した。反応容器を油浴から取り出し、室温まで冷ました後、反応物を1%メタノール/クロロホルム混合液(3.0mL)で希釈し、パスツールピペットを用いて先に準備しておいたシリカゲルカラム(1%メタノール/クロロホルム混合液)に移した。この作業をさらに三度繰り返し、使用したスクリューキャップ、セプタム、パスツールピペットを同混合液で洗浄した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(1~5%メタノール/クロロホルム混合液)にて反応物を精製し、所望のジペプチド(H-L-Phe-L-Ala-Ot-Bu、26.2mg、36%、>99:1dr)を白色固体として得た。
【0288】
[実施例群D:シラン化合物(A)を用いた2つのアミノ酸化合物のアミド化反応(保護基あり)]
【0289】
【0290】
アルゴン雰囲気下、グローブボックス内にて加熱乾燥させた5.0mLスクリューキャップバイアルに、撹拌子(サマリウム-コバルト)、末端アミノ基が保護された第1のアミノ酸AA1(0.5mmol、1当量)、及び末端カルボキシル基がtert-ブチル化された第2のアミノ酸AA2(0.75mmol、1.5当量)を加えた。この混合物に、トリス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロポキシ)シラン(HSi[OCH(CF3)2]3、0.65mmol、1.3当量)を加え(水素ガスの発生が観察された。)、更に乾燥DCM(0.5mL、1M)を加えて溶解させ、バイアルを密封した。このバイアルをグローブボックスから取り出し、アルゴン雰囲気下、室温で6時間激しく撹拌した。TLC分析でモニターした反応の完了後、反応混合物をCHCl3(3.0mL)で希釈し、ピペットでシリカゲルカラムに移し、使用したバイアルとピペットをCHCl3(5.0mL)で洗浄した。反応混合物を、溶出液としてヘキサン中10~100%AcOEt又はCHCl3中0~10%MeOHを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製することにより、分析的に純粋な生成物を得た。
なお、上記反応式中、Raa1は、第1のアミノ酸AA1の側鎖を表し、Raa2は、第2のアミノ酸AA2の側鎖を表し、PGaaは、第1のアミノ酸AA1の末端アミノ基の保護基を表す。
【0291】
・実施例d1:Boc-L-Ala-L-Ala-OtBuの合成
【化54】
【0292】
第1のアミノ酸AA1としてBoc-L-Ala、第2のアミノ酸AA2としてL-Ala-OtBuを用い、前記一般合成手順に従って、表題化合物Boc-L-Ala-L-Ala-OtBuを無色液体として単離した。収率97%、ジアスレテオマー比dr>99:1であった。
Rf = 0.48 (ヘキサン中40%AcOEt); [α]D
25 = -20.0 (c 1.40, CHCl3).
【0293】
・実施例d2:Bzo-L-Ala-L-Ala-OtBuの合成
【化55】
【0294】
第1のアミノ酸AA1としてBzo-L-Ala、第2のアミノ酸AA2としてL-Ala-OtBuを用い、前記一般合成手順に従って、表題化合物Bzo-L-Ala-L-Ala-OtBuを白色固体として単離した。収率98%、ジアスレテオマー比dr>99:1であった。
Rf = 0.60 (ヘキサン中70%AcOEt).
【0295】
1H NMR (400 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 7.81-7.79 (m, 2H), 7.51-7.47 (m, 1H), 7.43-7.39 (m, 2H), 7.02 (br d, 1H, J = 6.9 Hz), 6.84 (br d, 1H, J = 5.9 Hz), 4.77 (quin, 1H, J = 7.1 Hz), 4.44 (quin, 1H, J = 7.1 Hz), 1.51 (d, 3H, J = 6.9 Hz), 1.47 (s, 9H), 1.37 (d, 3H, J = 7.1 Hz); 13C{1H} NMR (100 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 172.0, 171.8, 167.0, 133.9, 13.7, 128.6, 127.2, 82.0, 49.5, 48.9, 28.0, 19.2, 18.3.
【0296】
・実施例d3:Boc-Gly-L-Ala-OtBuの合成
【化56】
【0297】
第1のアミノ酸AA1としてBoc-Gly、第2のアミノ酸AA2としてL-Ala-OtBuを用い、前記一般合成手順に従って、表題化合物Boc-Gly-L-Ala-OtBuを無色液体として単離した。収率は99%、ジアスレテオマー比はer>99:1であった。
【0298】
・実施例d4:Boc-L-Val-L-Ala-OtBuの合成
【化57】
【0299】
第1のアミノ酸AA1としてBoc-L-Val、第2のアミノ酸AA2としてL-Ala-OtBuを用い、前記一般合成手順に従って、表題化合物Boc-L-Val-L-Ala-OtBuを白色固体として単離した。収率は80%、ジアスレテオマー比はdr>99:1であった。
Rf = 0.68 (ヘキサン中40%AcOEt); [α]D
25 = -12.8 (c 1.01, CHCl3).
【0300】
1H NMR (400 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 6.40 (br s, 1H), 7.66 (br d, 1H, J = 6.4 Hz), 4.44 (quin, 1H, J = 7.1 Hz), 3.92 (br t, 1H, J = 7.8 Hz), 2.16-2.09 (m, 1H), 1.45 (s, 9H), 1.43 (s, 9H), 1.36 (d, 3 H, J = 7.1 Hz), 0.96 (d, 3H, J = 6.8 Hz), 0.90 (d, 3H, J = 6.8 Hz); 13C{1H} NMR (100 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 172.0, 170.9, 155.9, 82.1, 79.9, 59.9, 48.7, 31.2, 28.4, 28.0, 19.3, 18.7, 17.7
【0301】
・実施例d5:Boc-L-Ile-L-Ala-OtBuの合成
【化58】
【0302】
第1のアミノ酸AA1としてBoc-L-Ile、第2のアミノ酸AA2としてL-Ala-OtBuを用い、前記一般合成手順に従って、表題化合物Boc-L-Ile-L-Ala-OtBuを白色固体として単離した。収率は77%、ジアスレテオマー比はdr>99:1であった。
Rf = 0.57 (ヘキサン中40%AcOEt); [α]D
25 = -12.6 (c 1.03, CHCl3).
【0303】
1H NMR (400 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 6.45 (br s, 1H), 5.08 (br s, 1H), 4.42 (quin, 1H, J = 7.1 Hz), 3.94 (br t, 1H, J = 7.1 Hz), 2.00-1.86 (m, 1H), 1.59-1.47 (m, 1H), 1.44 (s, 9H), 1.42 (s, 9H), 1.35 (d, 3H, J = 7.1 Hz), 1.17-1.06 (m, 1H), 0.92 (d, 3H, J = 6.8 Hz), 0.89 (t, 3H, J = 7.5 Hz); 13C{1H} NMR (100 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 171.9, 171.0, 155.8, 82.0, 79.9, 59.3, 48.7, 37.5, 28.4, 28.0, 24.8, 18.6, 15.6, 11.6.
【0304】
・実施例d6:Boc-L-Leu-L-Ala-OtBuの合成
【化59】
【0305】
第1のアミノ酸AA1としてBoc-L-Leu、第2のアミノ酸AA2としてL-Ala-OtBuを用い、前記一般合成手順に従って、表題化合物Boc-L-Leu-L-Ala-OtBuを白色固体として単離した。収率は79%、ジアスレテオマー比はdr>99:1であった。
Rf = 0.66 (ヘキサン中50%AcOEt); [α]D
25 = +92.4 (c 1.06, CHCl3).
【0306】
1H NMR (400 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 7.36-7.30 (m, 5H), 6.31 (br d, 1H, J = 6.6 Hz), 5.74 (br s, 1H), 5.12 (br s, 1H), 4.38 (quin, 1H, J = 7.1 Hz), 1.40 (s, 9H), 1.38 (s, 9H), 1.37 (d, 3H, J = 7.5 Hz); 13C{1H} NMR (100 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 171.5, 169.4, 155.2, 138.2, 129.1, 128.4, 27.3, 82.2, 80.1, 58.7, 49.1, 28.4, 27.9, 18.6.
【0307】
・実施例d7:Boc-L-Phe-L-Ala-OtBuの合成
【化60】
【0308】
第1のアミノ酸AA1としてBoc-L-Phe、第2のアミノ酸AA2としてL-Ala-OtBuを用い、前記一般合成手順に従って、表題化合物Boc-L-Phe-L-Ala-OtBuを白色固体として単離した。収率は96%、ジアスレテオマー比はdr>99:1であった。
Rf = 0.68 (ヘキサン中50%AcOEt); [α]D
25 = +17.7 (c 1.07, CHCl3).
【0309】
1H NMR (400 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 7.28-7.18 (m, 5H), 6.44 (br d, 1H, J = 6.4 Hz), 4.99 (br s, 1H), 4.40-4.33 (m, 2H), 3.11-3.02 (m, 2H), 1.43 (s, 9H), 1.40 (s, 9H), 1.31 (d, 3H, J = 7.1 Hz); 13C{1H} NMR (100 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 171.7, 170.6, 155.4, 136.6, 129.5, 128.7, 127.0, 82.1, 80.2, 55.7, 48.8, 38.6, 28.3, 28.0, 18.7.
【0310】
・実施例d8:Boc-L-Tyr(
t
Bu)-L-Ala-OtBuの合成
【化61】
【0311】
第1のアミノ酸AA1としてBoc-L-Tyr(tBu)、第2のアミノ酸AA2としてL-Ala-OtBuを用い、前記一般合成手順に従って、表題化合物Boc-L-Tyr(tBu)-L-Ala-OtBuを白色固体として単離した。収率は93%、ジアスレテオマー比はdr>99:1であった。
Rf = 0.65 (ヘキサン中40%AcOEt).
【0312】
1H NMR (400 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 7.08 (d, 2H, J = 8.5 Hz), 6.90 (d, 2H, J = 8.2 Hz), 6.44 (br d, 1H, J = 6.4 Hz), 4.95 (br s, 1H), 4.39-4.31 (m, 2H), 3.06-2.97 (m, 2H), 1.43 (s, 9H), 1.40 (s, 9H), 1.31 (s, 9H), 1.30 (d, 3H, J = 7.7 Hz); 13C{1H} NMR (100 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 171.7, 170.7, 155.4, 154.4, 131.4, 129.9, 124.3, 82.0, 80.1, 78.4, 55.7, 48.8, 37.8, 28.9, 28.3, 28.0, 18.6.
【0313】
・実施例d9:Boc-L-Ser(
t
Bu)-L-Ala-OtBuの合成
【化62】
第1のアミノ酸AA
1としてBoc-L-Ser(
tBu)、第2のアミノ酸AA
2としてL-Ala-OtBuを用い、前記一般合成手順に従って、表題化合物Boc-L-Ser(
tBu)-L-Ala-OtBuを白色固体として単離した。収率は99%、ジアスレテオマー比はdr>99:1であった。
R
f = 0.66 (ヘキサン中40%AcOEt).
【0314】
1H NMR (400 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 7.28 (br s, 1H), 5.43 (br s, 1H), 4.41 (quin, 1H, J = 7.1 Hz), 4.15 (br s, 1H), 3.78-3.76 (m, 1H), 3.38-3.34 (m, 1H), 1.45 (s, 9H), 1.45 (s, 9H), 1.35 (d, 3H, J = 7.1 Hz), 1.19 (s, 9H); 13C{1H} NMR (100 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 171.9, 170.1, 155.5, 81.8, 80.0, 74.0, 61.9, 54.3, 48.9, 28.4, 28.0, 27.4, 18.8.
【0315】
・実施例d10:Boc-L-Thr(
t
Bu)-L-Ala-OtBuの合成
【化63】
【0316】
第1のアミノ酸AA1としてBoc-L-Thr(tBu)、第2のアミノ酸AA2としてL-Ala-OtBuを用い、前記一般合成手順に従って、表題化合物Boc-L-Thr(tBu)-L-Ala-OtBuを白色固体として単離した。収率は88%、ジアスレテオマー比はdr>99:1であった。
Rf = 0.58 (ヘキサン中40%AcOEt).
【0317】
1H NMR (400 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 7.52 (br d, 1H, J = 6.0 Hz), 5.57 (br d, 1H, J = 5.5 Hz), 4.42-4.32 (m, 1H), 4.12-4.06 (m, 2H), 1.44 (s, 9H), 1.43 (s, 9H), 1.34 (d, 3H, J = 7.1 Hz), 1.23 (s, 9H), 1.08 (d, 3H, J = 6.2 Hz); 13C{1H} NMR (100 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 171.8, 169.7, 155.7, 81.8, 79.7, 75.1, 67.0, 58.6, 49.0, 28.46, 28.42, 28.0, 18.5, 17.7.
【0318】
・実施例d11:Boc-L-Cys(Bzl)-L-Ala-OtBuの合成
【化64】
【0319】
第1のアミノ酸AA1としてBoc-L-Cys(Bzl)、第2のアミノ酸AA2としてL-Ala-OtBuを用い、前記一般合成手順に従って、表題化合物Boc-L-Cys(Bzl)-L-Ala-OtBuを白色固体として単離した。収率は92%、ジアスレテオマー比はdr>99:1であった。
Rf = 0.64 (ヘキサン中40%AcOEt).
【0320】
1H NMR (400 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 7.35-7.21 (m, 5H), 6.91 (br d, 1H, J = 5.5 Hz), 5.36 (br s, 1H), 4.42 (quin, 1H, J = 7.1 Hz), 4.27 (br s, 1H), 3.74 (s, 2H), 2.87 (dd, 1H, J = 14.2, 5.8 Hz), 2.74 (dd, 1H, J = 14.0, 6.6 Hz), 1.45 (s, 18H), 1.37 (d, 3H, J = 7.1 Hz); 13C{1H} NMR (100 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 171.6, 170.0, 155.3, 137.9, 129.1, 128.6, 127.2, 82.1, 80.3, 53.7, 49.0, 36.5, 33.8, 28.3, 28.0, 18.6.
【0321】
・実施例d12:Boc-L-Met-L-Ala-OtBuの合成
【化65】
【0322】
第1のアミノ酸AA1としてBoc-L-Met、第2のアミノ酸AA2としてL-Ala-OtBuを用い、前記一般合成手順に従って、表題化合物Boc-L-Met-L-Ala-OtBuを白色固体として単離した。収率は93%、ジアスレテオマー比はdr>99:1であった。
Rf = 0.76 (ヘキサン中40%AcOEt).
【0323】
1H NMR (400 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 6.63 (br d, 1H, J = 7.3 Hz), 5.20 (br d, 1H, J = 7.1 Hz), 4.42 (quin, 1H, J = 7.1 Hz), 4.27 (q, 1H, J = 6.7 Hz), 2.58 (t, 2H, J = 7.3 Hz), 2.11 (s, 3H), 2.09-2.02 (m, 1H), 1.97-1.88 (m, 1H), 1.45 (s, 9H), 1.43 (s, 9H), 1.36 (d, 3H, J = 7.1 Hz); 13C{1H} NMR (100 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 171.8, 170.9, 155.5, 82.0, 80.0, 53.3, 48.8, 32.0, 30.1, 28.4, 28.0, 18.4, 15.2.
【0324】
・実施例d13:Boc-L-Asp(
t
Bu)-L-Ala-OtBuの合成
【化66】
【0325】
第1のアミノ酸AA1としてBoc-L-Asp(tBu)、第2のアミノ酸AA2としてL-Ala-OtBuを用い、前記一般合成手順に従って、表題化合物Boc-L-Asp(tBu)-L-Ala-OtBuを白色固体として単離した。収率は87%、ジアスレテオマー比はdr>99:1であった。
Rf = 0.60 (ヘキサン中40%AcOEt).
【0326】
1H NMR (400 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 7.02 (br d, 1H, J = 6.0 Hz), 5.67 (br d, 1H, J = 7.8 Hz), 4.43 (br s, 1H), 4.36 (quin, 1H, J = 7.1 Hz), 2.87-2.83 (m, 1H), 2.56 (dd, 1H, J = 17.0, 6.0 Hz), 1.427 (s, 9H), 1.423 (s, 9H), 1.41 (s, 9H), 1.32 (d, 3H, J = 7.1 Hz); 13C{1H} NMR (100 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 171.7, 171.3, 170.3, 155.5, 81.9, 81.7, 80.3, 50.7, 48.9, 37.5, 28.3, 28.1, 28.0, 18.5.
【0327】
・実施例d14:Boc-L-Glu(
t
Bu)-L-Ala-OtBuの合成
【化67】
【0328】
第1のアミノ酸AA1としてBoc-L-Glu(tBu)、第2のアミノ酸AA2としてL-Ala-OtBuを用い、前記一般合成手順に従って、表題化合物Boc-L-Glu(tBu)-L-Ala-OtBuを白色固体として単離した。収率は96%、ジアスレテオマー比はdr>99:1であった。
Rf = 0.40 (ヘキサン中40%AcOEt).
【0329】
1H NMR (400 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 6.81(br s, 1H), 5.35 (br d, 1H, J = 7.6 Hz), 4.37 (quin, 1H, J = 7.1 Hz), 4.12-4.06 (m, 1H), 2.39-2.25 (m, 2H), 2.07-1.99 (m, 1H), 1.90-1.80 (m, 1H), 1.41 (s, 9H), 1.40 (s, 9H), 1.38 (s, 9H), 1.30 (d, 3H, J = 7.3 Hz); 13C{1H} NMR (100 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 172.7, 171.8, 171.1, 155.6, 81.9, 80.8, 79.9, 53.8, 48.8, 31.8, 28.3, 28.1, 28.07, 28.00, 18.4.
【0330】
・実施例d15:Boc-L-Asn(trt)-L-Ala-OtBuの合成
【化68】
【0331】
第1のアミノ酸AA1としてBoc-L-Asn(trt)、第2のアミノ酸AA2としてL-Ala-OtBuを用い、前記一般合成手順に従って、表題化合物Boc-L-Asn(trt)-L-Ala-OtBuを白色固体として単離した。収率は74%、ジアスレテオマー比はdr>99:1であった。
Rf = 0.55 (ヘキサン中40%AcOEt).
【0332】
1H NMR (400 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 7.28-7.16 (m, 15H), 6.91 (br s, 1H), 6.19 (br d, 1H, J = 7.3 Hz), 4.46-4.44 (m, 1H), 4.33 (quin, 1H, J = 7.1 Hz), 3.09 (d, 1H, J = 16.1 Hz), 2.69 (dd, 1H, J = 15.5, 4.8 Hz), 1.45 (s, 9H), 1.43 (s, 9H), 1.27 (d, 3H, J = 7.1 Hz); 13C{1H} NMR (100 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 171.5, 170.8, 170.6, 155.8, 144.4, 128.7, 128.0, 127.1, 81.8, 80.2, 70.8, 51.3, 49.1, 38.0, 28.4, 28.0, 18.3.
【0333】
・実施例d16:Boc-L-Gln(trt)-L-Ala-OtBuの合成
【化69】
【0334】
第1のアミノ酸AA1としてBoc-L-Gln(trt)、第2のアミノ酸AA2としてL-Ala-OtBuを用い、前記一般合成手順に従って、表題化合物Boc-L-Gln(trt)-L-Ala-OtBuを白色固体として単離した。収率は77%、ジアスレテオマー比はdr>99:1であった。
Rf = 0.23 (ヘキサン中40%AcOEt).
【0335】
1H NMR (400 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 7.31-7.22 (m, 15H), 6.56 (br d, 1H, J = 7.3 Hz), 5.42 (br d, 1H, J = 5.7 Hz), 4.32 (quin, 1H, J = 7.3 Hz), 4.02 (q, 1H, J = 7.1 Hz), 2.48 (t, 2H, J = 6.2 Hz), 2.06-1.91 (m, 2H), 1.43 (s, 18H), 1.28 (d, 3H, J = 7.1 Hz); 13C{1H} NMR (100 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 171.9, 171.1, 155.8, 144.7, 128.8, 128.0, 127.0, 81.9, 79.9, 70.6, 53.4, 48.8, 33.6, 29.8, 28.4, 28.0, 18.0.
【0336】
・実施例d17:Boc-L-Lys(Z)-L-Ala-OtBuの合成
【化70】
【0337】
第1のアミノ酸AA1としてBoc-L-Lys(Z)、第2のアミノ酸AA2としてL-Ala-OtBuを用い、前記一般合成手順に従って、表題化合物Boc-L-Lys(Z)-L-Ala-OtBuを白色固体として単離した。収率は93%、ジアスレテオマー比はdr>99:1であった。
Rf = 0.31 (ヘキサン中40%AcOEt).
【0338】
1H NMR (400 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 7.34-7.28 (m, 5H), 6.57 (br s, 1H), 5.18 (br s, 1H), 5.08 (s, 2H), 5.01 (br s, 1H), 4.41 (quin, 1H, J = 7.1 Hz), 4.13-4.07 (m, 1H), 3.17 (t, 2H, J = 6.0 Hz), 1.84-1.79 (m, 1H), 1.66-1.56 (m, 1H), 1.54-1.48 (m, 2H), 1.43 (s, 9H), 1.42 (s, 9H), 1.38-1.36 (m, 2H), 1.34 (d, 3H, J = 7.1 Hz); 13C{1H} NMR (100 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 172.0, 171.5, 156.7, 136.7, 128.6, 128.2, 128.1, 82.1, 80.0, 66.7, 54.2, 48.7, 40.5, 32.2, 29.4, 28.4, 28.0, 22.4, 18.5.
【0339】
・実施例d18:Boc-L-Arg(Z)
2
-L-Ala-OtBuの合成
【化71】
【0340】
第1のアミノ酸AA1としてBoc-L-Arg(Z)2、第2のアミノ酸AA2としてL-Ala-OtBuを用い、前記一般合成手順に従って、表題化合物Boc-L-Arg(Z)2-L-Ala-OtBuを白色固体として単離した。収率は69%、ジアスレテオマー比はdr>99:1であった。
Rf = 0.42 (ヘキサン中40%AcOEt).
【0341】
1H NMR (400 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 9.43 (br s, 1H), 9.27 (br s, 1H), 7.41-7.26 (m, 10H), 6.76 (br d, 1H, J = 7.1 Hz), 5.48 (br d, 1H, J = 8.0 Hz), 5.24 (s, 2H), 5.02-5.09 (m, 2H), 4.33 (quin, 1H, J = 7.1 Hz), 4.24-4.22 (m, 1H), 4.09-4.02 (m, 1H), 3.94-3.88 (m, 1H), 1.81-1.57 (m, 4H), 1.42 (s, 18H), 1.19 (d, 3H, J = 7.1 Hz); 13C{1H} NMR (100 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 171.7, 171.4, 163.8, 160.8, 155.9, 155.6, 136.9, 134.7, 128.98, 128.94, 128.5, 128.4, 127.94, 127.90, 81.7, 79.8, 69.0, 67.0, 53.9, 48.7, 44.2, 28.4, 28.0, 24.8, 18.1.
【0342】
・実施例d19:Boc-L-His(Bzl)-L-Ala-OtBuの合成
【化72】
【0343】
第1のアミノ酸AA1としてBoc-L-His(Bzl)、第2のアミノ酸AA2としてL-Ala-OtBuを用い、前記一般合成手順に従って、表題化合物Boc-L-His(Bzl)-L-Ala-OtBuを白色固体として単離した。収率は91%、ジアスレテオマー比はdr>99:1であった。
Rf = 0.42 (ヘキサン中40%AcOEt).
【0344】
1H NMR (400 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 7.42 (br s, 1H), 7.36-7.28 (m, 3H), 7.17-7.12 (m, 3H), 6.71 (s, 1H), 6.18 (br s, 1H), 5.06-4.97 (m, 2H), 4.37-4.32 (m, 2H), 3.08 (d, 1H, J = 12.1 Hz), 2.90 (dd, 1H, J = 14.6, 6.0 Hz), 1.43 (s, 9H), 1.42 (s, 9H), 1.27 (d, 3H, J = 7.1 Hz); 13C{1H} NMR (100 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 171.9, 171.1, 155.8, 138.6, 136.7, 136.0, 129.1, 128.4, 127.5, 117.3, 81.7, 79.8, 54.7, 51.0, 48.7, 30.3, 28.4, 28.0, 18.5.
【0345】
・実施例d20:Boc-L-Trp-L-Ala-OtBuの合成
【化73】
【0346】
第1のアミノ酸AA1としてBoc-L-Trp、第2のアミノ酸AA2としてL-Ala-OtBuを用い、前記一般合成手順に従って、表題化合物Boc-L-Trp-L-Ala-OtBuを白色固体として単離した。収率は99%、ジアスレテオマー比はdr>99:1であった。
Rf = 0.46 (ヘキサン中40%AcOEt).
【0347】
1H NMR (400 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 8.30 (br d, 1H, J = 17.1 Hz), 7.34 (d, 1H, J = 7.8 Hz), 7.19-7.15 (m, 1H), 7.12-7.08 (m, 1H), 7.05 (br s, 1H), 6.45 (br s, 1H), 5.15 (br s, 1H), 4.44 (br s, 1H), 4.34-4.30 (m, 1H), 3.30 (br s, 1H), 3.18 (dd, 1H, J = 14.4, 6.8 Hz), 1.40 (s, 18H), 1.24 (d, 3H, J = 7.1 Hz); 13C{1H} NMR (100 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 171.7, 171.1, 155.5, 136.3, 127.6, 123.3, 122.3, 119.7, 119.0, 111.2, 110.6, 82.0, 80.1, 55.2, 48.8, 28.3, 28.0, 18.6.
【0348】
・実施例d21:Boc-L-Pro-L-Ala-OtBuの合成
【化74】
【0349】
第1のアミノ酸AA1としてBoc-L-Pro、第2のアミノ酸AA2としてL-Ala-OtBuを用い、前記一般合成手順に従って、表題化合物Boc-L-Pro-L-Ala-OtBuを白色固体として単離した。収率は99%、ジアスレテオマー比はdr>99:1であった。
Rf = 0.33 (ヘキサン中40%AcOEt).
【0350】
・実施例d22:Boc-L-Ala-L-Gly-OtBuの合成
【化75】
【0351】
第1のアミノ酸AA1としてBoc-L-Ala、第2のアミノ酸AA2としてL-Gly-OtBuを用い、前記一般合成手順に従って、表題化合物Boc-L-Ala-L-Gly-OtBuを白色固体として単離した。収率は86%、ジアスレテオマー比はer>99:1であった。
Rf = 0.21 (ヘキサン中40%AcOEt).
【0352】
・実施例d23:Boc-L-Ala-L-Val-OtBuの合成
【化76】
【0353】
第1のアミノ酸AA1としてBoc-L-Ala、第2のアミノ酸AA2としてL-Val-OtBuを用い、前記一般合成手順に従って、表題化合物Boc-L-Ala-L-Val-OtBuを白色固体として単離した。収率は86%、ジアスレテオマー比はer>99:1であった。
Rf = 0.65 (ヘキサン中40%AcOEt).
【0354】
1H NMR (400 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 6.55 (br d, 1H, J = 8.0 Hz), 5.00 (br s, 1H), 4.42-3.39 (m, 1H), 4.18-4.16 (m, 1H), 2.17-2.13 (m, 1H), 1.47 (s, 9H), 1.43 (s, 9 H), 1.35 (d, 3H, J = 7.2 Hz), 0.91 (d, 3 H, J = 6.8 Hz), 0.89 (d, 3 H, J = 6.8 Hz); 13C{1H} NMR (100 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 172.5, 170.9, 155.5, 82.0, 80.1, 57.4, 50.2, 31.5, 28.4, 28.1, 18.9, 18.0, 17.5.
【0355】
・実施例d24:Boc-L-Ala-L-Ile-OtBuの合成
【化77】
【0356】
第1のアミノ酸AA1としてBoc-L-Ala、第2のアミノ酸AA2としてL-Ile-OtBuを用い、前記一般合成手順に従って、表題化合物Boc-L-Ala-L-Ile-OtBuを白色固体として単離した。収率は98%、ジアスレテオマー比はdr>99:1であった。
Rf = 0.62 (ヘキサン中40%AcOEt).
【0357】
1H NMR (400 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 6.58 (br d, 1H, J = 7.7 Hz), 5.0 (br d, 1H, J = 7.3 Hz), 4.44 (dd, 1H, J = 8.6, 4.7 Hz), 4.16-4.08 (m, 1H), 1.91-1.81 (m, 1H), 1.45 (s, 9H), 1.43 (s, 9 H), 1.34 (d, 3H, J = 7.1 Hz), 1.29-1.36 (m, 2 H), 0.93-0.97 (m, 6 H); 13C{1H} NMR (100 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 172.2, 170.8, 155.5, 81.9, 80.0, 56.8, 50.1, 38.2, 28.4, 28.1, 25.2, 18.1, 15.4, 11.8.
【0358】
・実施例d25:Boc-L-Ala-L-Leu-OtBuの合成
【化78】
【0359】
第1のアミノ酸AA1としてBoc-L-Ala、第2のアミノ酸AA2としてL-Leu-OtBuを用い、前記一般合成手順に従って、表題化合物Boc-L-Ala-L-Leu-OtBuを白色固体として単離した。収率は99%、ジアスレテオマー比はdr>99:1であった。
Rf = 0.57 (ヘキサン中40%AcOEt).
【0360】
1H NMR (400 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 6.55 (br s, 1H), 5.13 (br d, 1H, J = 6.2 Hz), 4.46-4.41 (m, 1H), 4.16-4.5 (m, 1H), 1.60-1.44 (m, 3H), 1.42 (s, 9H), 1.40 (s, 9 H), 1.32 (d, 3H, J = 7.1 Hz), 0.89 (d, 6 H, J = 6.1 Hz); 13C{1H} NMR (100 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 172.3, 172.0, 155.5, 81.8, 80.0, 51.4, 49.9, 41.8, 28.3, 28.0, 24.9, 22.9, 22.0, 18.3.
【0361】
・実施例d26:Boc-L-Ala-L-Phg-OtBuの合成
【化79】
【0362】
第1のアミノ酸AA1としてBoc-L-Ala、第2のアミノ酸AA2としてL-Phg-OtBuを用い、前記一般合成手順に従って、表題化合物Boc-L-Ala-L-Phg-OtBuを白色固体として単離した。収率は95%、ジアスレテオマー比はdr=93.1:6.9であった。
Rf = 0.63 (ヘキサン中40%AcOEt).
【0363】
1H NMR (400 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 7.32-7.27 (m, 5 H), 7.18 (br s, 1H), 5.41 (d, 1H, J = 7.3 Hz), 5.00 (br s, 1H), 4.22 (br s, 1H), 1.41 (s, 9H), 1.38 (s, 9H), 1.34 (d, 3 H, J = 7.1 Hz); 13C{1H} NMR (100 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 171.8, 169.7, 155.5, 137.2, 128.8, 128.2, 127.0, 82.7, 80.2, 57.0, 50.0, 28.3, 27.9, 18.1.
【0364】
・実施例d27:Boc-L-Ala-L-Phe-OtBuの合成
【化80】
【0365】
第1のアミノ酸AA1としてBoc-L-Ala、第2のアミノ酸AA2としてL-Phe-OtBuを用い、前記一般合成手順に従って、表題化合物Boc-L-Ala-L-Phe-OtBuを白色固体として単離した。収率は99%、ジアスレテオマー比はdr>99:1であった。
Rf = 0.48 (ヘキサン中40%AcOEt).
【0366】
・実施例d28:Boc-L-Ala-L-Tyr(
t
Bu)-OtBuの合成
【化81】
【0367】
第1のアミノ酸AA1としてBoc-L-Ala、第2のアミノ酸AA2としてL-Tyr(tBu)-OtBuを用い、前記一般合成手順に従って、表題化合物Boc-L-Ala-L-Tyr(tBu)-OtBuを白色固体として単離した。収率は94%、ジアスレテオマー比はdr>99:1であった。
Rf = 0.48 (ヘキサン中40%AcOEt).
【0368】
・実施例d29:Boc-L-Ala-L-Ser(
t
Bu)-OtBuの合成
【化82】
【0369】
第1のアミノ酸AA1としてBoc-L-Ala、第2のアミノ酸AA2としてL-Ser(tBu)-OtBuを用い、前記一般合成手順に従って、表題化合物Boc-L-Ala-L-Ser(tBu)-OtBuを白色固体として単離した。収率は97%、ジアスレテオマー比はdr>99:1であった。
Rf = 0.57 (ヘキサン中40%AcOEt).
【0370】
1H NMR (400 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 6.60 (br d, 1 H, J = 6.4 Hz), 5.11 (br s, 1H), 4.54-4.52 (m, 1H), 4.19 (br s, 1H), 3.76 (dd, 1H, J = 8.7, 3.0 Hz), 3.50 (dd, 1H, J = 8.7, 2.7 Hz), 1.44 (s, 9H), 1.42 (s, 9 H), 1.37 (d, 3 H, J = 7.0 Hz), 1.12 (s, 9 H); 13C{1H} NMR (100 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 172.3, 169.3, 155.2, 81.9, 79.8, 73.1, 62.1, 53.2, 50.1, 28.4, 28.1, 27.4, 19.1.
【0371】
・実施例d30:Boc-L-Ala-L-Thr(
t
Bu)-OtBuの合成
【化83】
【0372】
第1のアミノ酸AA1としてBoc-L-Ala、第2のアミノ酸AA2としてL-Thr(tBu)-OtBuを用い、前記一般合成手順に従って、表題化合物Boc-L-Ala-L-Thr(tBu)-OtBuを白色固体として単離した。収率は95%、ジアスレテオマー比はdr>99:1であった。
Rf = 0.63 (ヘキサン中40%AcOEt).
【0373】
・実施例d31:Boc-L-Ala-L-Cys(trt)-OtBuの合成
【化84】
【0374】
第1のアミノ酸AA1としてBoc-L-Ala、第2のアミノ酸AA2としてL-Cys(trt)-OtBuを用い、前記一般合成手順に従って、表題化合物Boc-L-Ala-L-Cys(trt)-OtBuを白色固体として単離した。収率は99%、ジアスレテオマー比はdr>99:1であった。
Rf = 0.77 (ヘキサン中40%AcOEt).
【0375】
1H NMR (400 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 7.39-7.36 (m, 6H, J = 6.4 Hz), 7.28-7.24 (m, 6H), 7.22-7.18 (m, 3H), 6.45 (br d, 1H, J = 6.1 Hz), 5.02 (br s, 1H), 4.45-4.41 (m, 1H), 4.13-4.05 (m, 1H), 2.60 (dd, 1H, J = 12.1, 5.5 Hz), 2.53 (dd, 1H, J = 12.0, 4.5 Hz), 1.43 (s, 9H), 1.41 (s, 9 H), 1.33 (d, 3 H, J = 7.1 Hz); 13C{1H} NMR (100 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 172.1, 169.1, 155.3, 144.4, 129.6, 128.1, 126.9, 82.7, 80.1, 66.6, 51.7, 50.1, 34.0, 28.4, 28.0, 18.8.
【0376】
・実施例d32:Boc-L-Ala-L-Met-OtBuの合成
【化85】
【0377】
第1のアミノ酸AA1としてBoc-L-Ala、第2のアミノ酸AA2としてL-Met-OtBuを用い、前記一般合成手順に従って、表題化合物Boc-L-Ala-L-Met-OtBuを白色固体として単離した。収率は99%、ジアスレテオマー比はdr>99:1であった。
Rf = 0.54 (ヘキサン中40%AcOEt).
【0378】
1H NMR (400 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 6.70 (br d, 1H, J = 7.8 Hz), 5.00 (br s, 1H), 4.57-4.52 (m, 1H), 4.15-4.08 (m, 1H), 2.54-2.41 (m, 2H), 2.16-2.09 (m, 1H), 2.08 (s, 3H), 2.03-1.89 (m, 1H), 1.45 (s, 9H), 1.43 (s, 9H), 1.35 (d, 3H, J = 7.1 Hz); 13C{1H} NMR (100 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 172.4, 170.8, 155.5, 82.5, 80.2, 52.2, 50.2, 32.1, 29.9, 28.4, 28.1, 18.3, 155.5.
【0379】
・実施例d33:Boc-L-Ala-L-Asp(
t
Bu)-OtBuの合成
【化86】
【0380】
第1のアミノ酸AA1としてBoc-L-Ala、第2のアミノ酸AA2としてL-Asp(tBu)-OtBuを用い、前記一般合成手順に従って、表題化合物Boc-L-Ala-L-Asp(tBu)-OtBuを白色固体として単離した。収率は96%、ジアスレテオマー比はdr>99:1であった。
Rf = 0.75 (ヘキサン中40%AcOEt).
【0381】
1H NMR (400 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 6.83 (br d, 1H, J = 8.0 Hz), 5.08 (br s, 1H), 4.65 (q, 1H, J = 4.1 Hz), 4.17 (br s, 1H), 2.88 (dd, 1H, J = 17.1, 4.3 Hz), 2.69 (dd, 1H, J = 17.1, 4.3 Hz), 1.44 (s, 9H), 1.434 (s, 9H), 1.431 (s, 9H), 1.37 (d, 3H, J = 7.1 Hz); 13C{1H} NMR (100 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 172.4, 170.4, 169.6, 155.2, 82.4, 81.7, 80.0, 50.2, 49.1, 37.4, 28.4, 28.1, 28.0, 19.1.
【0382】
・実施例d34:Boc-L-Ala-L-Glu(
t
Bu)-OtBuの合成
【化87】
【0383】
第1のアミノ酸AA1としてBoc-L-Ala、第2のアミノ酸AA2としてL-Glu(tBu)-OtBuを用い、前記一般合成手順に従って、表題化合物Boc-L-Ala-L-Glu(tBu)-OtBuを白色固体として単離した。収率は99%、ジアスレテオマー比はdr>99:1であった。
Rf = 0.67 (ヘキサン中40%AcOEt).
【0384】
1H NMR (400 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 6.84 (br s, 1H), 5.24 (br d, 1H, J = 6.0 Hz), 4.38 (td, 1H, J = 8.2, 4.8 Hz), 4.12 (br s, 1H), 2.37-2.13 (m, 2H), 2.08-1.96 (m, 1H), 1.86-1.76 (m, 1H), 1.38 (s, 9H), 1.35 (s, 9H), 1.35 (s, 9H), 1.28 (d, 3H, J = 7.1 Hz); 13C{1H} NMR (100 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 172.5, 172.1, 170.8, 155.4, 82.1, 80.6, 79.8, 52.1, 50.0, 31.3, 28.3, 28.0, 27.9, 27.5, 18.4.
【0385】
・実施例d35:Boc-L-Ala-L-Asn-OtBuの合成
【化88】
【0386】
第1のアミノ酸AA1としてBoc-L-Ala、第2のアミノ酸AA2としてL-Asn-OtBuを用い、前記一般合成手順に従って、表題化合物Boc-L-Ala-L-Asn-OtBuを白色固体として単離した。収率は99%、ジアスレテオマー比はdr>99:1であった。
Rf = 0.25 (CHCl3中5%MeOH).
【0387】
・実施例d36:Boc-L-Ala-L-Lys(Z)-OtBuの合成
【化89】
【0388】
第1のアミノ酸AA1としてBoc-L-Ala、第2のアミノ酸AA2としてL-Lys(Z)-OtBuを用い、前記一般合成手順に従って、表題化合物Boc-L-Ala-L-Lys(Z)-OtBuを白色固体として単離した。収率は96%、ジアスレテオマー比はdr>99:1であった。
Rf = 0.72 (ヘキサン中70%AcOEt).
【0389】
1H NMR (400 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 7.34-7.28 (m, 5H), 6.69 (br s, 1H), 5.11 (br s, 1H), 5.08 (s, 2H), 4.46-4.41 (m, 1H), 4.16-4.10 (m, 1H), 3.22-3.15 (m, 2H), 1.86-1.78 (m, 1H), 1.65-1.55 (m, 1H), 1.51-1.48 (m, 2H), 1.44 (s, 9H), 1.43 (s, 9H), 1.38-1.24 (m, 5H); 13C{1H} NMR (100 MHz, CDCl3, 24 ℃): δ 172.8, 171.2, 156.6, 155.6, 136.6, 128.5, 128.2, 128.1, 127.9, 82.0, 80.0, 66.6, 52.4, 50.0, 40.6, 32.0, 29.1, 28.4, 28.0, 22.1, 18.3.
【0390】
[実施例群E:シラン化合物(A)を用いたアミド化反応によるBoc-L-Ala-L-Asn-OtBuの合成]
【0391】
【0392】
アルゴン雰囲気下、グローブボックス内にて加熱乾燥させた5.0mLスクリューキャップバイアルに、撹拌子(サマリウム-コバルト)、Boc-L-Ala(0.5mmol、1当量)、L-Ala-OtBuを加えた。この混合物に、シラン化合物(0.5mmol、1当量)を加え(水素ガスの発生が観察された。)、更に乾燥DCM(0.5mL、1M)を加えて溶解させ、バイアルを密封した。このバイアルをグローブボックスから取り出し、アルゴン雰囲気下、室温で24時間激しく撹拌した。TLC分析でモニターした反応の完了後、反応混合物をCHCl3(3.0mL)で希釈し、ピペットでシリカゲルカラムに移し、使用したバイアルとピペットをCHCl3(5.0mL)で洗浄した。反応混合物を、溶出液としてヘキサン中10~100%AcOEt又はCHCl3中0~10%MeOHを用いたフラッシュカラムクロマトグラフィーで精製することにより、表題化合物Boc-L-Ala-L-Ala-OtBuを得た。
【0393】
・実施例e1:Si[OCH
2
CF
3
]
4
を用いた合成
前記一般合成手順において、L-Ala-OtBuを1当量(0.5mmol)用い、シラン化合物としてトリス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロポキシ)シラン(HSi[OCH(CF3)2]3)を用いた他は、同様の手順により、表題化合物Boc-L-Ala-L-Ala-OtBuを得た。収率78%、ジアスレテオマー比dr>99:1であった。
【0394】
・実施例e2:HSi[OCH
2
CF
2
CHF
2
]
3
を用いた合成
前記一般合成手順において、L-Ala-OtBuを1当量(0.5mmol)用い、シラン化合物としてトリス(3,3,2,2-テトラフルオロn-プロポキシ)シラン(HSi[OCH2CF2CHF2]3)を用いた他は、同様の手順により、表題化合物Boc-L-Ala-L-Ala-OtBuを得た。収率53%、ジアスレテオマー比dr>99:1であった。
【0395】
・実施例e3:HSi[OCH
2
CCl
3
]
3
を用いた合成
前記一般合成手順において、L-Ala-OtBuを1当量(0.5mmol)用い、シラン化合物としてトリス(2,2,2-トリクロロエトキシ)シラン(HSi[OCH2CCl3]3)を用いた他は、同様の手順により、表題化合物Boc-L-Ala-L-Ala-OtBuを得た。収率53%、ジアスレテオマー比dr>99:1であった。
【0396】
・実施例e4:HSi[OCH
2
CF
3
]
3
を用いた合成
前記一般合成手順において、L-Ala-OtBuを2当量(0.5mmol)用い、シラン化合物としてトリス(2,2,2-トリフルオロエトキシ)シラン(HSi[OCH2CF3]3)を用いた他は、同様の手順により、表題化合物Boc-L-Ala-L-Ala-OtBuを得た。収率53%、ジアスレテオマー比dr>99:1であった。
【0397】
・実施例e5:Si[OCH
2
CF
3
]
4
を用いた合成
前記一般合成手順において、L-Ala-OtBuを2当量(0.5mmol)用い、シラン化合物としてテトラキス(2,2,2-トリフルオロエトキシ)シラン(Si[OCH2CF3]4)を用いた他は、同様の手順により、表題化合物Boc-L-Ala-L-Ala-OtBuを得た。収率66%、ジアスレテオマー比dr>99:1であった。
【0398】
・実施例e6:Si[OCH(CF
3
)
2
]
4
を用いた合成
前記一般合成手順において、L-Ala-OtBuを2当量(0.5mmol)用い、シラン化合物としてテトラキス(1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロポキシ)シラン(Si[OCH(CF3)2]4)を用いた他は、同様の手順により、表題化合物Boc-L-Ala-L-Ala-OtBuを得た。収率85%、ジアスレテオマー比dr>99:1であった。
【0399】
[実施例群F:シラン化合物(A)を用いたトリス(ハロアルコキシ)アミノシラン触媒併用下でのアミド化反応1]
【0400】
・実施例f1:アミド化反応によるBoc-L-Ala-L-Ala-OtBuの合成1
【化91】
【0401】
グローブボックス内で、加熱乾燥した5.0mL容スクリューキャップバイアルに磁気攪拌棒(Sm-Co)、ベンジルアミン(53.6mg、0.50mmol)、DCM(0.50mL)、及びHSi[OCH(CF3)2]3(265.1mg、0.50mmol)を入れ、バイアルを密閉してグローブボックスから取り出した。得られた混合物をアルゴン雰囲気下、室温で4時間激しく撹拌することにより、BnNHSi[OCH(CF3)2]3を含む触媒溶液を調製した。グローブボックス内で、火炎乾燥した5.0mLスクリューキャップバイアルに、前記BnNHSi[OCH(CF3)2]3を含む触媒溶液(0.015mL、0.015mmol)、Boc-L-Ala-OH(94.6mg、0.50mmol)、DCM(0.50mL)、HSi[OCH(CF3)2]3(265.1mg、0.50mmol)、及びL-Ala-OtBu(72.6mg、0.50mmol)の混合物を入れ、バイアルを密閉してグローブボックスから取り出した。得られた混合物をアルゴン雰囲気下、室温で6時間激しく撹拌した後、反応混合物をCHCl3(3.0mL)で希釈し、ピペットでSiO2カラムに移し、使用したバイアルとピペットをCHCl3(12mL)で洗浄した。反応混合物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中20~100%AcOEt)で精製することにより、Boc-L-Ala-L-Ala-OtBuを無色の液体として単離した。収率は99%(156.9mg)、ジアスレテオマー比はdr>99:1であった。
【0402】
・実施例f2:アミド化反応によるBoc-L-Ala-L-Ala-OtBuの合成2
【化92】
【0403】
グローブボックス内で、加熱乾燥した5.0mL容スクリューキャップバイアルに磁気攪拌棒(Sm-Co)、ベンジルアミン(53.6mg、0.50mmol)、DCM (0.50mL)、及びHSi[OCH(CF3)2]3(265.1mg、0.50mmol)を入れ、バイアルを密閉してグローブボックスから取り出した。得られた混合物をアルゴン雰囲気下、室温で4時間激しく撹拌することにより、BnNHSi[OCH(CF3)2]3を含む触媒溶液を調製した。火炎乾燥した5.0mLスクリューキャップバイアルに、ETFEセプター、磁気攪拌バー(Sm-Co)、Boc-L-Ala-OH(94.6mg、0.50mmol)を入れた。バイアル内の空気を窒素で置き換えた後、L-Ala-OtBu (72.6mg、0.50mmol)、DCM(0.50mL)、HSi[OCH(CF3)2]3(265.1mg、0.50mmol)、及び前記BnNHSi[OCH(CF3)2]3を含む触媒溶液(0.015mL、0.015mmol)を、マイクロシリンジを使ってバイアルに入れ、をスクリューキャップで密封した。得られた混合物を窒素雰囲気下、室温で6時間激しく撹拌した後、反応混合物をCHCl3(3.0mL)で希釈し、ピペットでSiO2カラムに移し、使用したバイアルとピペットをCHCl3(12mL)で洗浄した。反応混合物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中20~100%AcOEt)で精製することにより、表題化合物Boc-L-Ala-L-Ala-OtBuを無色液体として得た。収率は98%(155.0mg)、ジアスレテオマー比はdr>99:1であった。
【0404】
・実施例f3:アミド化反応によるBoc-L-Met-L-Ala-OtBuの合成
【化93】
【0405】
実施例f1の手順において、Boc-L-Ala-OHの代わりにBoc-L-Met-OH(124.7mg、0.50mmol)を用い、反応液の混合条件を40℃で12hに変更した他は、同様の手順によりBoc-L-Met-L-Ala-OtBuを無色液体として得た。収率は94%(176.5mg)、ジアスレテオマー比はdr>99:1であった。
【0406】
・実施例f4:アミド化反応によるBoc-L-Val-L-Ala-OtBuの合成
【化94】
【0407】
実施例f1の手順において、Boc-L-Ala-OHの代わりにBoc-L-Val-OH(108.6mg、0.50mmol)を用い、DCMの使用量を1.0mLに変更し、反応液の混合条件を40℃で12hに変更した他は、同様の手順によりBoc-L-Val-L-Ala-OtBuを白色固体として得た。収率は80%(137.1mg)、ジアスレテオマー比はdr>99:1であった。
【0408】
・実施例f5:アミド化反応によるFmoc-L-Ser(tBu)-L-Lys(Boc)-OBnの合成
【化95】
【0409】
実施例f1の手順において、Boc-L-Ala-OHの代わりにFmoc-L-Ser(tBu)-OH(191.7mg、0.50mmol)を用い、DCMの使用量を1.0mLに変更し、L-Ala-OtBuの代わりにL-Lys(Boc)-OBn(168.2mg、0.50mmol)を用い、反応液の混合を40℃で12hに変更した他は、同様の手順によりFmoc-L-Ser(tBu)-L-Lys(Boc)-OBnを白色固体として得た。収率は84%(295.8mg)、ジアスレテオマー比はdr>99:1であった。
【0410】
・実施例f6:アミド化反応によるBoc-L-Ala-L-Val-OtBuの合成
【化96】
【0411】
実施例f1の手順において、L-Ala-OtBuの代わりにL-Val-OtBu(86.6mg、0.50mmol)を用い、反応液の混合を40℃で12hに変更した他は、同様の手順によりBoc-L-Ala-L-Val-OtBuを白色固体として得た。収率は94%(162.2mg)、ジアスレテオマー比はdr>99:1であった。
【0412】
・実施例f7:アミド化反応によるFmoc-L-Arg(Boc)
2
-L-Thr(tBu)-OtBuの合成
【化97】
【0413】
実施例f1の手順において、Boc-L-Ala-OHの代わりにFmoc-L-Arg(Boc)2-OH(298.3mg(HPLC純度92.4%)、約0.47mmol。主な副生物はFmoc-L-Arg(Boc)-OH。渡辺化学工業(株)から購入。)を用い、DCMの使用量を1.0mLに変更し、L-Ala-OtBuの代わりにL-Thr(tBu)-OtBu(115.7mg、0.50mmol)を用い、反応液の混合を40℃で12hに変更した他は、同様の手順によりFmoc-L-Arg(Boc)2-L-Thr(tBu)-OtBuを白色固体として得た。収率は約81%(307.7mg)、ジアスレテオマー比はdr>99:1であった。
【0414】
[実施例群G:シラン化合物(A)を用いたトリス(ハロアルコキシ)アミノシラン触媒併用下でのアミド化反応2]
【化98】
【0415】
グローブボックス内で、火炎乾燥した5.0mLスクリューキャップバイアルに、下記表1~表3に示す各種アミノシラン触媒(上記反応式及び下記表1~表3中「Catalyst」と表記)の1MDCM溶液(0.015mL、0.015mmol)、HSi[OCH(CF3)2]3(265.1mg、0.50mmol)、Boc-L-Val-OH(108.6mg、0.50mmol)、L-Val-OtBu(86.6mg、0.50mmol)、及びDCM(1.0mL)の混合物を入れ、バイアルを密閉してグローブボックスから取り出した。得られた混合物をアルゴン雰囲気下、室温で6時間激しく撹拌した後、反応混合物をCHCl3(3.0mL)で希釈し、ピペットでSiO2カラムに移し、使用したバイアルとピペットをCHCl3(12mL)で洗浄した。反応混合物をフラッシュカラムクロマトグラフィー(ヘキサン中20~100%AcOEt)で精製することにより、目的化合物Boc-L-Val-L-Val-OtBuを得た。使用した各種アミノシラン触媒毎に得られた目的化合物の収率及びジアスレテオマー比を下記表1~表3に示す。
【0416】
【0417】
【0418】
【0419】
[実施例群H:シラン化合物(A)とフッ化セシウム及びイミダゾールの併用下でのアミド化反応(保護基なし)]
【0420】
・実施例h1:H-L-Phe-L-Ala-OtBuの合成(フッ化セシウム及びイミダゾールの共存下)
【化99】
【0421】
アルゴン雰囲気下、グローブボックス内にて加熱乾燥させた5ミリリットル用スクリューバイアルに、撹拌子(サマリウム-コバルト)、L-フェニルアラニン(H-L-Phe-OH、165.2mg、1.0mmol)、トリスヘキサフルオロイソプロポキシシラン(HSi(OCH(CF3)2)3、530.2mg、1.0mmol)、フッ化セシウム(CsF、10mol%)、イミダゾール(10mol%)、及びクロロホルム(0.5mL)を加え、セプタム及びスクリューキャップで栓をした。この反応容器をグローブボックス外に取り出し、30℃に温められた油浴内に設置した後、1時間激しく撹拌した。スクリューキャップを外し、セプタムの上からマイクロシリンジを用いてN-tert-ブチルジメチルシリル-N-メチルトリフルオロアセトアミド(MTBSTFA、120.7mg、0.5mmol)を添加し、スクリューキャップで栓をした後、30℃に温められた油浴内にて1時間激しく撹拌した。スクリューキャップを再度外し、セプタムの上からマイクロシリンジを用いてL-アラニン-tert-ブチルエステル(H-L-Ala-Ot-Bu、145.2mg、1.0mmol)を添加し、スクリューキャップで栓をした後、30℃に温められた油浴内にて6時間激しく撹拌した。反応容器を油浴から取り出し、室温まで冷ました後、反応物を1%メタノール/クロロホルム混合液(3.0mL)で希釈し、パスツールピペットを用いて先に準備しておいたシリカゲルカラム(1%メタノール/クロロホルム混合液)に移した。この作業をさらに三度繰り返し、使用したスクリューキャップ、セプタム、パスツールピペットを同混合液で洗浄した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(1~5%メタノール/クロロホルム混合液)にて反応物を精製し、所望のジペプチド(H-L-Phe-L-Ala-Ot-Bu、97%、>99:1dr)を白色固体として得た。
【0422】
・参考例h1:H-L-Phe-L-Ala-OtBuの合成(フッ化セシウム及びイミダゾールの不在下)
【化100】
【0423】
実施例h1において、フッ化セシウム及びイミダゾールを使用せず、また、H-L-Ala-Ot-Bu添加後の撹拌下加温時間を6時間から12時間に変更した他は、同様の手順で合成を行い、所望のジペプチド(H-L-Phe-L-Ala-Ot-Bu、99%、>99:1dr)を白色固体として得た。
【0424】
・実施例h2:H-L-Leu-L-Ala-OtBuの合成(フッ化セシウム及びイミダゾールの共存下)
【化101】
【0425】
実施例h1において、L-フェニルアラニンの代わりにL-ロイシン(H-L-Leu-OH、1.0mmol)を使用した他は同様の手順で合成を行い、所望のジペプチド(H-L-Leu-L-Ala-OtBu、95%、>99:1dr)を白色固体として得た。
【0426】
・参考例h2:H-L-Leu-L-Ala-OtBuの合成(フッ化セシウム及びイミダゾールの不在下)
【化102】
【0427】
実施例h2において、フッ化セシウム及びイミダゾールを使用せず、また、H-L-Ala-Ot-Bu添加後の撹拌下加温時間を6時間から12時間に変更した他は、同様の手順で合成を行い、所望のジペプチド(H-L-Leu-L-Ala-Ot-Bu、99%、>99:1dr)を白色固体として得た。
【0428】
・実施例h3:H-L-Ala-L-Ala-OtBuの合成(フッ化セシウム及びイミダゾールの共存下)
【化103】
【0429】
実施例h1において、L-フェニルアラニンの代わりにL-アラニン(H-L-Ala-OH、1.0mmol)を使用し、初回1時間攪拌下加温温度を30℃から50℃に変更し、また、H-L-Ala-Ot-Bu添加後の撹拌下加温時間を6時間から12時間に変更した他は、同様の手順で合成を行い、所望のジペプチド(H-L-Ala-L-Ala-OtBu、99%、>99:1dr)を白色固体として得た。
【0430】
・実施例h4:H-L-Met-L-Ala-OtBuの合成(フッ化セシウム及びイミダゾールの共存下)
【化104】
【0431】
実施例h1において、L-フェニルアラニンの代わりにL-メチオニン(H-L-Met-OH、1.0mmol)を使用し、また、H-L-Ala-Ot-Bu添加後の撹拌下加温時間を6時間から12時間に変更した他は、同様の手順で合成を行い、所望のジペプチド(H-L-Met-L-Ala-OtBu、99%、>99:1dr)を白色固体として得た。
【0432】
[実施例群I:シラン化合物(B)を用いたアミド化反応(1)]
以下の各実施例欄に記載の方法に従って、本発明の製造方法によるアミド化合物の製造を行った。
【0433】
なお、以下の実施例において、別途記載なき限り、ジアステレオマー比又はエナンチオマー比は、1H-NMR分析(測定機器:日本電子社製JEOL 400SS、測定条件:400MHz、溶媒:CDCl3)により決定した。
【0434】
・実施例i1:H-Phe-Ala-Ot-Buの合成1
【化105】
【0435】
内容量12mLの試験管中、フェニルアラニン(H-Phe-OH、0.25mmol、41.3mg)、ジメチルシリルジイミダゾール(DMSDIM、0.275mmol、52.8mg)をグローブボックス内でジクロロメタン(DCM、1mL)に懸濁し、アルゴン雰囲気下、室温で攪拌した。1時間後、グローブボックス内でTa(OMe)5(12.5μmol、4.2mg)、トリメチルシリルイミダゾール(TMSIM、0.50mmol、73.4μL)及びアラニンtert-ブチルエステル(0.75mmol、108.8mg)を添加し、室温で24時間攪拌した。クロロホルム(5mL)で希釈後、シリカゲルクロマトグラフィー(CHCl3:MeOH=100:1)で精製することにより、表題ジペプチドH-Phe-Ala-Ot-Buを得た。収量は67.2mg、収率は92%、ジアステレオマー比はdr>99:1であった。なお、ごく微量のトリペプチドH-Phe-Phe-Ala-Ot-Buの副生が見られた。
【0436】
1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.78 (br d, J =7.6 Hz, 1H, NH), 7.33-7.21 (m, 5H, PhH), 4.50-4.42 (quin, J =7.4 Hz, 1H, CHCH3), 3.62 (dd, J =3.9 Hz, 9.2 Hz, 1H, CH2PH), 3.22 (dd, J =3.9 Hz, 9.2 Hz, 1H, CH2PH), 2.72 (m, 1H, CHCH2), 1.59 (br s, 2H, NH2CHPh), 1.45 (s, 9H, C(CH3)3), 1.36 (d, J =7.1 Hz, 3H, CHCH3). 13C NMR (100 MHz, CDCl3): δ 173.8, 172.2, 137.7, 129.3, 128.6, 126.7, 81.8, 56.2, 48.2, 40.9, 27.9, 18.6.
【0437】
・実施例i2:H-Phe-Ala-Ot-Buの合成2
【化106】
【0438】
内容量12mLの試験管中、フェニルアラニン(H-Phe-OH、0.50mmol、82.6mg)、ジメチルシリルジイミダゾール(DMSDIM、0.55mmol、105.6mg)をグローブボックス内でジクロロメタン(DCM、1mL)に懸濁し、アルゴン雰囲気下、室温で攪拌した。1時間後、グローブボックス内で2,2’-ビピリジン-6,6’-ジオール(25μmol、4.7mg)、トリメチルシリルイミダゾール(TMSIM、0.50mmol、73.4μL)及びアラニンtert-ブチルエステル(H-Ala-OtBu、0.25mmol、36.3mg)を添加し、室温で24時間攪拌した。クロロホルム(5mL)で希釈後、シリカゲルクロマトグラフィー(CHCl3:MeOH=100:1)で精製することにより、表題ジペプチドH-Phe-Ala-Ot-Buを得た。収量は62.8mg、収率は86%、ジアステレオマー比はdr96:4であった。なお、ごく微量のトリペプチドH-Phe-Phe-Ala-Ot-Buの副生が見られた。
【0439】
・実施例i3:H-Phe-Ala-Ot-Buの合成3
【化107】
【0440】
内容量5mLのバイヤル瓶中、フェニルアラニン(H-Phe-OH、0.50mmol、82.6mg)、ジメチルシリルジイミダゾール(DMSDIM、0.55mmol、105.6mg)及びtert-ブチルジメチルシラン(tBuMe2SiH、0.50mmol、82.1μL)をグローブボックス内でジクロロメタン(DCM、0.1mL)に懸濁し、アルゴン雰囲気下、室温で攪拌した。1時間後、グローブボックス内でアラニンtert-ブチルエステル(H-Ala-OtBu、0.25mmol、36.3mg)を添加し、室温で24時間攪拌した。クロロホルム(5mL)で希釈後、シリカゲルクロマトグラフィー(CHCl3:MeOH=100:1)で精製することにより、表題ジペプチドH-Phe-Ala-Ot-Buを得た。収量は54.1mg、収率は74%、ジアステレオマー比はdr>99:1であった。なお、ごく微量のトリペプチドH-Phe-Phe-Ala-Ot-Buの副生が見られた。
【0441】
・実施例i4:H-Phe-Ala-Ot-Buの合成4
【化108】
【0442】
内容量5mLのバイヤル瓶中、フェニルアラニン(H-Phe-OH、0.50mmol、82.6mg)、ジメチルシリルジイミダゾール(DMSDIM、0.55mmol、105.6mg)及びtert-ブチルジメチルシラン(tBuMe2SiH、0.50mmol、82.1μL)をグローブボックス内でジクロロメタン(DCM、0.1mL)に懸濁し、アルゴン雰囲気下、室温で攪拌した。1時間後、グローブボックス内で2,2’-ビス(ジフェニルホスフィノ)-1,1’-ビナフチル(BINAP、12.5μmol、7.8mg)及びアラニンtert-ブチルエステル(H-Ala-OtBu、0.25mmol、36.3mg)を添加し、室温で24時間攪拌した。クロロホルム(5mL)で希釈後、シリカゲルクロマトグラフィー(CHCl3:MeOH=100:1)で精製することにより、表題ジペプチドH-Phe-Ala-Ot-Buを得た。収量は52.6mg、収率は72%、ジアステレオマー比はdr>99:1であった。なお、ごく微量のトリペプチドH-Phe-Phe-Ala-Ot-Buの副生が見られた。
【0443】
[実施例群J:シラン化合物(B)を用いたアミド化反応(2)]
・一般合成手順:
【化109】
【0444】
内容量12mLの試験管中、第1のアミノ酸AA1(0.5mmol、1当量)及びジメチルシリルジイミダゾール(DMSDIM、0.5mmol、1当量)をグローブボックス内でジクロロメタン(DCM、1mL)に懸濁し、アルゴン雰囲気下、室温で攪拌した。1時間後、グローブボックス内でTa(OEt)5(10mol%)、トリメチルシリルイミダゾール(TMSIM、1.0mmol、2当量)、及びL-Ala-OtBu(1.0mmol、2.0当量)を添加し、室温で24時間攪拌した。クロロホルム(5mL)で希釈後、シリカゲルクロマトグラフィー(CHCl3:MeOH=100:1)で精製することにより、分析的に純粋な生成物を得た。なお、上記反応式中、R1は、第1のアミノ酸AA1の側鎖を表す。
【0445】
・実施例j1:L-Phe-L-Ala-OtBuの合成
前記一般合成手順において、第1のアミノ酸AA
1としてL-フェニルアラニン(L-Phe)を用いた他は、同様の手順により、表題化合物L-Phe-L-Ala-OtBuを得た。収率95%、ジアスレテオマー比dr>20:1であった。
【化110】
【0446】
・実施例j2:L-Val-L-Ala-OtBuの合成
前記一般合成手順において、第1のアミノ酸AA
1としてL-バリン(L-Val)を用い、反応温度を50℃として実施した他は、同様の手順により、表題化合物L-Val-L-Ala-OtBuを得た。収率72%、ジアスレテオマー比dr>20:1であった。
【化111】
【0447】
・実施例j3:L-Ile-L-Ala-OtBuの合成
前記一般合成手順において、第1のアミノ酸AA
1としてL-イソロイシン(L-Ile)を用い、反応温度を50℃として実施した他は、同様の手順により、表題化合物L-Ile-L-Ala-OtBuを得た。収率78%、ジアスレテオマー比dr>20:1であった。
【化112】
【0448】
・実施例j4:L-Leu-L-Ala-OtBuの合成
前記一般合成手順において、第1のアミノ酸AA
1としてL-ロイシン(L-Leu)を用い、反応温度を50℃として実施した他は、同様の手順により、表題化合物L-Leu-L-Ala-OtBuを得た。収率89%、ジアスレテオマー比dr>20:1であった。
【化113】
【0449】
・実施例j5:L-Met-L-Ala-OtBuの合成
前記一般合成手順において、第1のアミノ酸AA
1としてL-メチオニン(L-Met)を用いた他は、同様の手順により、表題化合物L-Met-L-Ala-OtBuを得た。収率86%、ジアスレテオマー比dr>20:1であった。
【化114】
【0450】
・実施例j6:Bn-L-Cys-L-Ala-OtBuの合成
前記一般合成手順において、第1のアミノ酸AA
1としてベンジル-L-システイン(Bn-L-Cys)を用いた他は、同様の手順により、表題化合物Bn-L-Cys-L-Ala-OtBuを得た。収率56%、ジアスレテオマー比dr>20:1であった。
【化115】
【0451】
・実施例j7:Boc-L-Trp-L-Ala-OtBuの合成
前記一般合成手順において、第1のアミノ酸AA
1として側鎖のアミノ基がBoc基で保護されたL-トリプトファン(Boc-L-Trp)を用いた他は、同様の手順により、表題化合物Boc-L-Trp-L-Ala-OtBuを得た。収率91%、ジアスレテオマー比dr>20:1であった。
【化116】
【0452】
・実施例j8:tBuO-L-Tyr-L-Ala-OtBuの合成
前記一般合成手順において、第1のアミノ酸AA
1として側鎖の水酸基がt-ブチル基で保護されたL-チロシン(tBuO-L-Tyr)を用いた他は、同様の手順により、表題化合物tBuO-L-Tyr-L-Ala-OtBuを得た。収率90%、ジアスレテオマー比dr>20:1であった。
【化117】
【0453】
・実施例j9:tBuO-L-Ser-L-Ala-OtBuの合成
前記一般合成手順において、第1のアミノ酸AA
1として側鎖の水酸基がt-ブチル基で保護されたL-セリン(tBuO-L-Ser)を用いた他は、同様の手順により、表題化合物tBuO-L-Ser-L-Ala-OtBuを得た。収率71%、ジアスレテオマー比dr>20:1であった。
【化118】
【0454】
・実施例j10:tBuO-L-Thr-L-Ala-OtBuの合成
前記一般合成手順において、第1のアミノ酸AA
1として側鎖の水酸基がt-ブチル基で保護されたL-スレオニン(tBuO-L-Thr)を用いた他は、同様の手順により、表題化合物tBuO-L-Thr-L-Ala-OtBuを得た。収率95%、ジアスレテオマー比dr>20:1であった。
【化119】
【0455】
・実施例j11:PG-L-Lys-L-Ala-OtBuの合成
前記一般合成手順において、第1のアミノ酸AA
1として側鎖のアミノ基が保護基PGで保護されたL-リシン(PG-L-Lys)を用いた他は、同様の手順により、表題化合物PG-L-Phe-L-Ala-OtBuを得た。なお、保護基PGとしては、Boc基、Cbz基、及びTrt基を用いた。Boc-L-Phe-L-Ala-OtBuは、収率53%、ジアスレテオマー比dr>20:1、Cbz-L-Phe-L-Ala-OtBuは、収率55%、ジアスレテオマー比dr>20:1、Trt-L-Phe-L-Ala-OtBuは、収率71%、ジアスレテオマー比dr>20:1であった。
【化120】
【0456】
・実施例j12:tBuO-L-Glu-L-Ala-OtBuの合成
前記一般合成手順において、第1のアミノ酸AA
1として側鎖のカルボン酸基がt-ブチル基で保護されたL-グルタミン酸(tBuO-L-Glu)を用いた他は、同様の手順により、表題化合物tBuO-L-Glu-L-Ala-OtBuを得た。収率88%、ジアスレテオマー比dr>20:1であった。
【化121】
【0457】
・実施例j13:tBuO-L-Asp-L-Ala-OtBuの合成
前記一般合成手順において、第1のアミノ酸AA
1として側鎖のカルボン酸基がt-ブチル基で保護されたL-アスパラギン酸(tBuO-L-Asp)を用いた他は、同様の手順により、表題化合物tBuO-L-Asp-L-Ala-OtBuを得た。収率90%、ジアスレテオマー比dr>20:1であった。
【化122】
【0458】
・実施例j14:β-Ala-L-Ala-OtBuの合成
前記一般合成手順において、第1のアミノ酸AA
1としてβ-アラニン(β-Ala)を用いた他は、同様の手順により、表題化合物β-Ala-L-Ala-OtBuを得た。収率53%であった。
【化123】
【産業上の利用可能性】
【0459】
本発明は、種々の産業分野におけるアミド化合物の合成に広く利用でき、その利用価値は高い。