(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】用水管理装置
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/06 20120101AFI20230314BHJP
G06Q 50/02 20120101ALI20230314BHJP
【FI】
G06Q50/06
G06Q50/02
(21)【出願番号】P 2022003342
(22)【出願日】2022-01-12
(62)【分割の表示】P 2020084011の分割
【原出願日】2015-12-15
【審査請求日】2022-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】300072462
【氏名又は名称】株式会社ほくつう
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【氏名又は名称】山口 洋
(72)【発明者】
【氏名】谷口 輝行
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 誠
(72)【発明者】
【氏名】田中 正
(72)【発明者】
【氏名】奥野 秀明
(72)【発明者】
【氏名】荒木 建国
【審査官】新里 太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-161192(JP,A)
【文献】特開2003-254245(JP,A)
【文献】特開2005-245462(JP,A)
【文献】特開2011-188775(JP,A)
【文献】特開2013-215115(JP,A)
【文献】特開平11-187776(JP,A)
【文献】特開2009-213374(JP,A)
【文献】中国実用新案第203872713(CN,U)
【文献】上川流域協議会 座長 塩原 俊,豪雨時における水田貯留による流出抑制の提言書,日本,[online],2006年03月24日,[令和3年10月4日検索],インターネット,<URL:https://www.pref.nagano.lg.jp/suwaken/shisaku/kyogikai/kamikawa/documents/suidentyoryu_teigen.pdf>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
用水供給源から流水経路を経由して供給された用水を圃場に供給するように設けられる給水栓と、圃場から用水を排出するように設けられる排水栓と、ネットワークと接続される用水管理サーバとを備える用水管理システムであって、
前記流水経路に用水を供給するポンプと、
前記流水経路に流れる用水の流量を検出するように設けられ、通信機能を備えた用水センサと、
前記流水経路または前記ポンプに設けられる給水開始検出部と、
を備え、
前記給水栓および排水栓は、電源部と、ネットワーク通信部とを備え、
前記給水開始検出部は、前記用水供給源からの給水が開始されたか否かを検出し、検出結果を、前記用水管理サーバに送信可能に構成され、
前記圃場において設置される水位計を備え、
前記水位計は、計測結果を、前記水位計が備える通信機能により、または、前記給水栓が中継する通信を介して前記用水管理サーバに送信し、
前記用水管理サーバは、前記用水供給源の識別子と前記給水栓の識別子とを対応付けて記憶し、
用水管理サーバは給水栓を開状態とするように制御可能に構成され、
前記用水管理サーバは、集中豪雨の生じることが予測される時間よりも前の時間において前記排水栓を開状態として前記圃場から用水を排出させた後、前記排水栓を閉状態とするように制御する
用水管理システム。
【請求項2】
用水供給源から流水経路を経由して供給された用水を圃場に供給するように設けられる給水栓と、圃場から用水を排出するように設けられる排水栓と、ネットワークと接続される用水管理サーバとを備える用水管理システムであって、
前記流水経路に用水を供給するポンプと、
前記流水経路または前記ポンプに設けられる給水開始検出部と、
を備え、
前記給水栓および排水栓は、電源部と、ネットワーク通信部とを備え、
前記給水開始検出部は、前記用水供給源からの給水が開始されたか否かを検出し、検出結果を、前記用水管理サーバに送信可能に構成され、
前記用水管理サーバは、前記用水管理サーバが提供するウェブサイトにアクセスした圃場主端末により入力された水位の情報に基づく水位に関連の情報を圃場主端末に送信し、
前記圃場主端末は、送信された水位に関連の情報を視覚的に把握可能な態様で表示し、
前記送信された水位に関連の情報を、前記圃場主端末に対して行われる操作に応じて編集可能とされ、編集された水位に関連の情報を前記用水管理サーバに記憶させることが可能とされる
用水管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用水管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大規模農場において、気象情報や土壌情報を取得し、記憶する複数のデータロガーを設置し、データロガーに記憶された情報を、ルータ経由でサーバが収集できるようにしたモニタリングシステムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
圃場(農場)に用水供給などをはじめとした用水管理に関する設備を提供する用水管理者が、圃場を使用する圃場主から用水管理に関する業務を請け負い、その対価を圃場主から用水管理者に支払うというビジネスモデルを構築することが考えられる。
この場合、例えば圃場主の間で不公平感が生じることなどがないように、適切な料金設定が行われることが求められる。
しかし、引用文献1において、データロガーに記憶された情報は、大学や研究機関が設置するサーバに集約され、研究などに用いられる。このため、引用文献1の構成により適切な料金設定が行われるようにすることは困難である。
そこで、本発明は上記の課題を考慮して、圃場の用水管理業務に関連して圃場主が支払う料金を適切に設定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本発明の一態様は、用水を圃場に供給するように設けられる給水栓に流れる水量についての検出値を取得する水量取得部と、取得された前記検出値に基づく用水利用量を前記給水栓が備えられる圃場の圃場主に対応付けて用水管理情報として記憶部に記憶させる用水管理情報管理部と、用水利用料金に対応する処理として少なくとも前記用水管理情報に基づいて圃場主の用水利用料金を算出する料金対応処理部とを備える用水管理装置である。
【0006】
また、本発明の一態様は、上記の用水管理装置であって、前記圃場において水位を測定するように設置される水位目盛板を撮像するように設置されるカメラから送信された画像データを、水位画像データとして時間に対応付けて記憶し、記憶された水位画像データを利用して過去の一定期間における水位を表す報告書を作成し、作成した報告書を、圃場主が利用する圃場主端末に送信するように構成された水位・水温報告関連処理部をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0007】
以上説明したように、本発明によれば、圃場の用水管理業務に関連して圃場主が支払う料金を適切に設定することが可能になるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態における用水管理システムの全体的な構成例を示す図である。
【
図2】第1実施形態における用水センサの構成例を示す図である。
【
図3】第1実施形態における用水管理サーバの構成例を示す図である。
【
図4】第1実施形態における用水管理情報の内容例を示す図である。
【
図5】第1実施形態における用水管理サーバが用水管理情報の管理のために実行する処理手順例を示すフローチャートである。
【
図6】第1実施形態における用水管理サーバが1の圃場主に対応して用水利用料金を算出するための処理手順例を示すフローチャートである。
【
図7】第2実施形態における用水管理情報の内容例を示す図である。
【
図8】第2実施形態における用水管理サーバが、圃場ごとの水位と水温のデータを収集するために実行する処理手順例を示すフローチャートである。
【
図9】第2実施形態における用水管理サーバが、収集された水位画像データと水温の情報とを利用して圃場主に水位及び水温を報告するための処理手順例を示すフローチャートである。
【
図10】第3実施形態における給水栓の構成例を示す図である。
【
図11】第3実施形態における給水栓の構成例を示す図である。
【
図12】第3実施形態における給水栓管理情報の内容例を示す図である。
【
図13】第3実施形態における用水管理サーバが、エアハンマーの防止に関連して実行する処理手順例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態による用水管理システムについて図面を参照して説明する。
<第1実施形態>
図1は、本実施形態における用水管理システムの全体的な構成例を示している。本実施形態の用水管理システムは、複数の圃場における給排水を管理する。
【0010】
まず、同図を参照して、用水管理システムが対応する圃場の給排水系について説明する。同図では、用水管理システムが、2つの圃場FM-1、FM-2を管理対象とした例が示されている。本実施形態における圃場FM-1、FM-2は、例えば水田であり、稲作の時期に応じて、適切な水位となるように灌漑、排水(給排水)が行われる。
なお、以降の説明にあたり、圃場FM-1、FM-2について特に区別しない場合には、圃場FMと記載する。なお、本実施形態の用水管理システムが管理対象とする圃場FMの数は特に限定されるものではない。
【0011】
圃場FM-1には給水栓100-1が設けられている。給水栓100-1は、パイプラインPLを経由してファームポンドFP(用水供給源)から送られた用水を圃場FM-1に供給する設備である。給水栓100-1は、ファームポンドFPから送られた用水を圃場FM-1に吐出するまでの流水経路において開閉する栓部(弁)を備えることで、ファームポンドFPから送られた用水を圃場FM-1に供給する量が調節可能なようにされている。
また、圃場FM-1には排水栓200-1が設けられている。排水栓200-1は、圃場FM-1に貯まっている水を排出させるための設備である。排水栓200-1は、圃場FM-1から引き揚げた水を例えばパイプラインに出すまでの流水経路において開閉する栓部(弁)を備えることで、排水量が調節可能なようにされている。
【0012】
圃場FM-2は、圃場FM-1より広い面積を有している。そこで、圃場FM-2においては、2つの給水栓100-2A、100-2Bと、2つの排水栓200-2A、200-2Bとが備えられる。
【0013】
なお、以降の説明にあたり、圃場FM-2の給水栓100-2A、100-2Bについて特に区別しない場合には、給水栓100-2と記載する。また、給水栓100-1、100-2A、100-2Bについて特に区別しない場合には、給水栓100と記載する。
また、以降の説明にあたり、圃場FM-2の排水栓200-2A、200-2Bについて特に区別しない場合には、排水栓200-2と記載する。また、排水栓200-1、200-2A、200-2Bについて特に区別しない場合には、排水栓200と記載する。
【0014】
ここで、本実施形態の用水管理システムは、圃場FM-1、FM-2をカバーするエリアを通信距離とする無線LAN(Local Area Network)ルータRTを備える。無線LANルータRTは、ネットワークNTと接続されており、ネットワークNTには用水管理サーバ500(用水管理装置の一例)が接続されている。
【0015】
本実施形態における各圃場FMの給水栓100と排水栓200は、それぞれ無線LANに対応したネットワーク通信機能を有している。これにより、各圃場FMの給水栓100と排水栓200は、それぞれ、無線LANルータRTからネットワークNTを経由して用水管理サーバ500と通信を行うことができる。
【0016】
圃場FMのそれぞれは、以下のように給水(灌漑)が行われる。圃場FMに供給される用水は、まず、例えば河川RVからパイプラインを経由してファームポンドFPに引かれ、ファームポンドFPにて貯留される。ファームポンドFPは、灌漑のための用水を貯留する池である。
ファームポンドFPに貯留された用水は、ポンプ(図示せず)によって汲み上げられ、圧力が加えられることによりパイプラインPLに供給される。同図の場合、パイプラインPLは3つの経路に分岐され、それぞれ、圃場FM-1、FM-2に設けられた給水栓100-1、100-2A、100-2Bと接続されている。これにより、ファームポンドFPからパイプラインPLを経由して送られた用水は、給水栓100-1、100-2A、100-2Bにまで到達する。この際、給水栓100-1、100-2A、100-2Bの栓部が開状態であれば、給水栓100-1、100-2A、100-2Bから圃場FM-1、FM-2のそれぞれに対して用水が供給され、灌漑が行われる。
【0017】
また、本実施形態の用水管理システムにおいては、用水センサ300-1、300-2A及び300-2Bと、用水センサ350とが備えられる。
【0018】
まず、用水センサ350は、ファームポンドFPからパイプラインPLに流れる用水を検出する。一具体例として、用水センサ350は、パイプラインPLにおけるファームポンドFPに近い部分のパイプラインPLに流れる水の量(流量)を検出するように設けられる流量センサである。このように設けられた用水センサ350は、ファームポンドFPから用水が供給されることに応じて、ファームポンドFPからパイプラインPLに流入する用水の量を検出することができる。
また、用水センサ350は、無線LANに対応したネットワーク通信機能を有している。このため、用水センサ350は、無線LANルータRTからネットワークNTを経由して用水管理サーバ500と通信を行うことが可能である。
なお、第1実施形態において、用水センサ350は省略されてよい。
【0019】
用水センサ300-1は、給水栓100-1に対応して設けられ、給水栓100-1に流れる用水を検出する。一具体例として、用水センサ300-1は、給水栓100-1と接続されたパイプラインPLにおいて、給水栓100-1に近い部分に流れる水の量(流量)を検出するように設けられる。
例えば給水栓100-1が閉状態にあって給水栓100-1に用水が流れない状態では、給水栓100-1に近い部分のパイプラインPLにおいても用水の流れは生じない。従って、この場合の用水センサ300-1は、流量がゼロであると検出する。
これに対して、給水栓100-1が開状態にあって給水栓100-1に用水が流れている状態では、給水栓100-1に近い部分のパイプラインPLにおいても用水の流れが生じる。従って、この場合の用水センサ300-1は、給水栓100-1において流れている用水の量に応じた流量を検出する。
このように、用水センサ300-1は、給水栓100-1に流れる用水を検出することができる。
また、用水センサ300-1と給水栓100-1とは比較的近接して設置される。そこで、用水センサ300-1と給水栓100-1とは、近距離無線通信により通信可能に構成される。これにより、用水センサ300-1は、検出された結果を示す検出情報を給水栓100-1に送信し、給水栓100-1は受信された検出情報を、無線LANルータRTからネットワークNTを経由して用水管理サーバ500に送信することができる。このように、用水管理サーバ500は、通信を介して用水センサ300-1の検出情報を取得することができる。
【0020】
なお、用水センサ300-1と給水栓100-1との間の近距離無線通信の方式としては特に限定されるものではないが、例えば、Bluetooth(登録商標)、ZigBee(登録商標)などを採用することができる。
このような近距離無線通信は、消費電力が少ないことから、例えば用水センサ300-1については、バッテリーを電源として長期間にわたって動作させることが可能であり、メンテナンスの省力化が図られる。また、例えば太陽電池により日中において発生した電力を充電して電源として使用する場合にも、小容量の太陽電池や充電池で済ませることができる。
【0021】
用水センサ300-2Aは、給水栓100-2Aに対応して設けられ、給水栓100-2Aに流れる用水を検出する。例えば用水センサ300-2Aも、給水栓100-2Aに近い部分のパイプラインPLに流れる水の量(流量)を検出するように設けられる。
また、用水センサ300-2Aと給水栓100-2Aとは、近距離無線通信により通信可能とされている。これにより、用水管理サーバ500は、通信を介して給水栓100-2Aから用水センサ300-2Aの検出情報を取得することができる。
【0022】
用水センサ300-2Bは、給水栓100-2Bに対応して設けられ、給水栓100-2Bに流れる用水を検出する。例えば用水センサ300-2Bも、給水栓100-2Bに近い部分のパイプラインPLに流れる水の量(流量)を検出するように設けられる。
また、用水センサ300-2Bと給水栓100-2Bとは、近距離無線通信により通信可能とされている。これにより、用水管理サーバ500は、通信を介して給水栓100-2Bから用水センサ300-2Bの検出情報を取得することができる。
【0023】
なお、以降の説明にあたり、圃場FM-2における給水栓100-2A、100-2Bに対応する用水センサ300-2A、300-2Bについて特に区別しない場合には、用水センサ300-2と記載する。また、圃場FM-1の給水栓100-1に対応する用水センサ300-1と、用水センサ300-2とについて特に区別しない場合には、用水センサ300と記載する。
【0024】
また、圃場FM-1においては、水位目盛板700-1とカメラ800-1とが設置される。水位目盛板700-1は、圃場FM-1の水位を計測可能なように設置される目盛板である。例えば、水位目盛板700-1は、圃場FM-1における土壌の表面の高さに「0」の目盛が位置するようにして土壌に差し込まれるようにして設置される。
カメラ800-1は、水位目盛板700-1の目盛の部分を撮像するように設けられる。従って、カメラ800-1により撮像された画像を人が見ることによっては、圃場FM-1における水位を確認することができる。なお、本実施形態におけるカメラ800-1は、静止画を撮像可能であればよいが、動画を撮像可能であってもよい。以降においては、カメラ800-1が静止画を撮像する場合について説明する。
【0025】
カメラ800-1は、近距離無線通信により同じ圃場FM-1に設置された給水栓100-1と通信可能とされている。これにより、カメラ800-1は、水位目盛板700-1を撮像して得られた画像データ(以下、水位画像データともいう)を給水栓100-1に送信することができる。また、給水栓100-1は、カメラ800-1から受信した水位画像データを無線LANルータRTからネットワークNTを経由して用水管理サーバ500に送信することができる。つまり、カメラ800-1は、撮像によって得られた水位画像データを、給水栓100-1が中継する通信を介して用水管理サーバ500に送信することができる。
なお、水位目盛板700-1とカメラ800-1とに代えて、例えば静電容量などを利用したリニアな水位センサを圃場FMに設けてもよい。そして、水位センサにより測定された水位の情報を、給水栓100-1が中継する通信を介して用水管理サーバ500に送信するように構成してもよい。
【0026】
また、圃場FM-1には、圃場FM-1に張られた水の温度を計測するように水温計900-1が設けられる。
水温計900-1も、近距離無線通信により同じ圃場FM-1に設置された給水栓100-1と通信可能とされている。これにより、水温計900-1は、水温を計測して得られた水温データを給水栓100-1に送信することができる。また、給水栓100-1は、水温計900-1から受信した水温データを無線LANルータRTからネットワークNTを経由して用水管理サーバ500に送信することができる。つまり、水温計900-1は、測定によって得られた水温データを、給水栓100-1が中継する通信を介して用水管理サーバ500に送信することができる。
【0027】
同様に、圃場FM-2においては、水位目盛板700-2とカメラ800-2と水温計900-2とが設置される。これにより、カメラ800-2は、撮像により得られた水位画像データを、給水栓100-2の中継を介して用水管理サーバ500に送信することができる。また、水温計900-2は、測定した水温を示す水温データを、給水栓100-2の中継を介して用水管理サーバ500に送信することができる。
【0028】
なお、以降の説明にあたり、水位目盛板700-1、700-2について特に区別しない場合には、水位目盛板700と記載する。また、カメラ800-1、800-2について特に区別しない場合には、カメラ800と記載する。また、水温計900-1、900-2について特に区別しない場合には、水温計900と記載する。
【0029】
本実施形態においては、圃場FMに用水を供給する業務を運営する用水提供業者に対して、圃場主が自己の圃場の用水の供給を受けた対価として用水利用料金を支払うようにされている。そこで、本実施形態における用水管理サーバ500は、給水栓100のそれぞれに対応する用水センサ300によって検出される流量に基づいて、圃場主ごとの用水利用料金を算出するように構成される。用水提供業者は、算出された用水利用料金を圃場主に請求する。
【0030】
圃場主端末600-1は、圃場FM-1の圃場主(農家)が利用するネットワーク端末装置である。圃場主端末600-1は、例えば圃場FM-1の圃場主が所有するパーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレット端末などである。同様に、圃場主端末600-2は、圃場FM-2の圃場主が利用するネットワーク端末装置である。なお、以降の説明にあたり、圃場主端末600-1、600-2について特に区別しない場合には、圃場主端末600と記載する。
【0031】
図2を参照して、用水センサ300の構成例について説明する。同図に示されるように、用水センサ300は、通信部301と流量センサ302とを備える。
通信部301は、近距離無線通信により通信距離の範囲内に位置する給水栓100と通信を行う。
流量センサ302は、当該流量センサ302が取り付けられた部位における水の流量を検出する。流量センサ302により検出された流量の情報は、通信部301によって通信相手の給水栓100に送信される。
なお、用水センサ350も、
図4と同様の構成であればよい。
【0032】
図3を参照して、用水管理サーバ500の構成例について説明する。同図の用水管理サーバ500は、通信部501、制御部502及び記憶部503を備える。
【0033】
通信部501は、ネットワークNTに対応する通信を実行する。通信部501を備えることにより、用水管理サーバ500は、用水センサ350、各圃場FMの給水栓100及び排水栓200と、ネットワークNTから無線LANルータRTを経由して通信を行うことができる。
【0034】
制御部502は、用水管理サーバ500における各種制御を実行する。制御部502としての機能は、例えば用水管理サーバ500が備えるCPU(Central Processing Unit)がプログラムを実行することによって実現される。
本実施形態における制御部502は、圃場主の用水利用に応じた料金設定に関連する機能部として、水量取得部521と、用水管理情報管理部522と、料金対応処理部523とを備える。
なお、水位・水温報告関連処理部524は、後述の第2実施形態に関連する機能部であることから、ここでの説明は省略する。また、給水開始検出部525と給水栓制御部526とは後述の第3実施形態に関連する機能部であることから、ここでの説明は省略する。本実施形態において、水位・水温報告関連処理部524、給水開始検出部525及び給水栓制御部526については省略されてよい。
【0035】
水量取得部521は、用水を圃場に供給するように設けられる給水栓100に流れる水量についての検出値(流量値)を取得する。
用水管理情報管理部522は、用水管理情報記憶部532が記憶する用水管理情報を管理する。用水管理情報管理部522は、取得された水量についての検出値に基づく用水利用量を、給水栓100が設置される圃場FMの圃場主に対応付けて用水管理情報として記憶部503に記憶させる。
料金対応処理部523は、用水利用料金に対応する処理として少なくとも用水管理情報に基づいて圃場主の用水利用料金を算出する。
【0036】
また、記憶部503は、制御部502が利用する各種の情報を記憶する。本実施形態における記憶部503は、圃場主情報記憶部531と用水管理情報記憶部532とを備える。なお、給水栓管理情報記憶部533は、後述の第3実施形態に関連する部位であることからここでの説明は省略する。本実施形態において給水栓管理情報記憶部533は省略されてもよい。
圃場主情報記憶部531は、圃場主情報を記憶する。圃場主情報は、図示は省略するが、圃場主を一意に示す圃場主ID(ユーザID)ごとに、圃場主に関する所定の情報を対応付けた情報である。圃場主に関する所定の情報としては、圃場主の氏名、連絡先(住所、電話番号、メールアドレスなど)である。さらに、圃場主の個人情報についてのセキュリティのために、例えば圃場主IDに対応付けられたパスワードを圃場主情報に含めてよい。
また、圃場主が圃場FMにて作業していることに応じて、圃場主端末600が圃場FMの現場に存在している場合には、圃場主端末600は、給水栓100の通信を介して用水管理サーバ500と通信を行うことができる。この際、通信可能に接続される圃場主端末600と給水栓100とは、対応の圃場FMの圃場主のものであることが要求される場合がある。このような場合には、例えば、上記のユーザIDとパスワードとを認証キーとして用いて、給水栓100と圃場主端末600とがペアリングを行うように構成すればよい。
【0037】
用水管理情報記憶部532は、用水管理情報を記憶する。
図4は、用水管理情報の一例を示している。
同図の用水管理情報は、1レコードが1の圃場主に対応する。用水管理情報の1レコードは、圃場主IDごとに、給水栓IDと用水利用履歴情報との各領域を対応付けた構造を有する。
圃場主IDの領域には、用水提供業者と契約して用水供給を受ける圃場主の圃場主IDが格納される。同図における「FM0001」の圃場主IDは、
図1に示した圃場FM-1の圃場主を示し、「FM0002」の圃場主IDは圃場FM-2の圃場主を示す。
【0038】
給水栓IDには、同じレコードに含まれる圃場主IDが示す圃場主の圃場FMにおいて設置される給水栓100を一意に示す給水栓IDが格納される。具体的に、同図において「FM0001」の圃場主IDに対応付けられる「F0001」の給水栓IDは、
図1の圃場FM-1に設置される給水栓100-1を示す。また、「FM0002」の圃場主IDには、「F0011」と「F0012」との2つの給水栓IDが格納されている。「F0011」の給水栓IDは、
図1の圃場FM-2に設置される給水栓100-2Aを示し、「F0012」の給水栓IDは、
図1の圃場FM-2に設置される給水栓100-2Bを示す。
【0039】
同図の用水利用履歴情報は、給水栓IDごとに対応付けられている。つまり、用水利用履歴情報は、対応の1つの給水栓100から吐出された水量を時間軸に対応させて示す情報を含む。このような用水利用履歴情報は、過去において給水栓100から圃場に供給された水量を示す。つまり、過去において圃場主が自分の圃場FMのために利用した用水の量(用水利用量)を給水栓100ごとに対応して示す。
同図において、「F0001」の給水栓IDに対応しては、「log0001」とのファイル名の用水利用履歴情報が格納されている。また、「F0011」の給水栓IDに対応しては、「log0011」とのファイル名の用水利用履歴情報が格納されている。また、「F0012」の給水栓IDに対応しては、「log0012」とのファイル名の用水利用履歴情報が格納されている。
なお、「FM0002」の圃場主IDの場合のように、複数の給水栓IDが格納される場合において、用水利用履歴情報は、複数の給水栓IDに対して1つの用水利用履歴情報が対応付けられるようにしてもよい。複数の給水栓IDに対して1つの用水利用履歴情報を対応付けた場合、用水利用履歴情報においては、複数の給水栓IDに対応する複数の給水栓100のそれぞれから吐出された水量が合算されたうえで時間軸に対応させて示されるようにすればよい。
【0040】
図5のフローチャートを参照して、本実施形態の用水管理サーバ500が用水管理情報の管理のために実行する処理手順例について説明する。ここでの用水管理情報の管理とは、用水管理サーバ500が受信する用水センサ300の検出情報が示す流量値に基づいて、用水利用履歴情報を更新していく処理である。
【0041】
図1において給水栓100ごとに対応する用水センサ300により検出される流量は、それぞれ、前述のように、対応の給水栓100から吐出される水の流量を示す。そして、各用水センサ300は、検出した流量値を示す検出情報を一定時間ごとに用水管理サーバ500に対して送信する。用水センサ300は、検出情報の送信にあたり、自己に対応する給水栓100を示す給水栓IDを検出情報に含める。
そこで、用水管理サーバ500の水量取得部521は、用水センサ300のうちのいずれかから送信された検出情報が受信されるのを待機する(ステップS101-NO)。
【0042】
用水センサ300のうちのいずれかから検出情報が受信されると(ステップS101-YES)、水量取得部521は、受信された検出情報から、給水栓IDと流量値とを取得する(ステップS102)。
そして、用水管理情報管理部522は、用水管理情報記憶部532からステップS102にて取得された給水栓IDに対応付けられた用水利用履歴情報を検索し、検索した用水利用履歴情報に対して、同じステップS102にて取得された流量値を現在日時と対応付けて新規に格納する(ステップS103)。このようにして用水管理情報管理部522により用水利用履歴情報が更新される。用水管理サーバ500は、定常的に上記の処理を実行することで、給水栓100ごとに対応する用水利用量履歴情報を含む用水管理情報を管理する。
【0043】
続いて、
図6のフローチャートを参照して、本実施形態の用水管理サーバ500が1の圃場主に対応して用水利用料金を算出するための処理手順例について説明する。
1の料金算出対象の圃場主について予め定められた用水利用料金算出タイミングに至ると、用水管理サーバ500における料金対応処理部523は、料金算出対象の圃場主の圃場主IDに対応付けられた用水利用履歴情報から、今回の料金算出対象期間に対応する日時範囲に含まれる用水利用履歴情報を取得する(ステップS201)。
なお、
図1の圃場FM-2のように、1つの圃場に複数の給水栓100が設けられている場合、
図4における「FM0002」の圃場主IDに対応する用水管理情報のように、複数の給水栓100ごとに応じた複数の用水利用履歴情報が格納される。このような場合、ステップS201では、複数の用水利用履歴情報のそれぞれから、今回の料金算出対象期間に該当する日時範囲に含まれる用水利用履歴情報を取得する。
【0044】
次に、料金対応処理部523は、ステップS201により取得された今回の料金算出対象期間の用水利用履歴情報を利用して、今回の料金算出対象期間における用水利用量を算出する(ステップS202)。
用水利用履歴情報においては、日時に流量値が対応付けられている。そこで、料金対応処理部523は、用水利用履歴情報においてゼロより大きい有意な流量値が得られている単位時間ごとの流量値を積算することで、今回の料金算出対象の圃場主の圃場FMに設置される給水栓100から圃場に供給された水量を算出する。このように算出される水量が、圃場主が自分の圃場FMの作物の栽培のために利用した用水の量、即ち、用水利用量である。なお、1つの圃場に複数の給水栓100が設けられている場合には、料金対応処理部523は、複数の給水栓100ごとに取得された用水利用履歴情報から算出した水量を合算することで用水利用量を算出する。
【0045】
続いて、料金対応処理部523は、ステップS202により算出された用水利用量に基づいて、用水利用料金を算出する(ステップS203)。即ち、本実施形態においては、用水利用料金について、用水利用量に応じて変動する従量制が採られている。なお、用水利用量に応じた従量制による料金設定としては、一例として、基本料金と、単位水量に応じた単価と用水利用量とを乗算した金額とを加算するようにしたものを例に挙げることができる。しかし、従量制による料金設定に関しては多様に考えられるものであり、本実施形態において特に限定されるものではない。
【0046】
また、料金対応処理部523は、ステップS203により算出された用水利用料金の圃場主に対する請求に関連する処理(請求関連処理)を行う(ステップS204)。
請求関連処理として、料金対応処理部523は、例えば料金の請求先の圃場主の圃場主端末600に対して、用水利用料金(請求金額)を通知することができる。通知にあたっては、例えば圃場主情報記憶部531が記憶する圃場主情報に登録されているメールアドレスを宛先とする用水利用料金(請求金額)の通知の電子メールを作成し、作成された電子メールを送信するという態様を採ることができる。あるいは、圃場主端末600に、用水提供業者が提供する用水管理用アプリケーションがインストールされている場合には、圃場主情報に登録されている圃場主IDがユーザアカウントとして登録された用水管理用アプリケーションに通知を送信するようにしてもよい。
【0047】
これまでに説明したように、本実施形態の用水管理サーバ500は、圃場FMにおける給水栓100のそれぞれから吐出される水量を時間に対応させた用水利用履歴情報を含む用水管理情報を、圃場主ごとに対応させて管理するようにされている。
そのうえで、用水管理サーバ500は、用水利用履歴情報に基づいて用水利用料金を算出するようにされている。このように、圃場主の用水利用料金が圃場主ごとの用水利用量に基づいて算出されることで、圃場の用水管理業務に関連して圃場主が支払う料金を適切に設定することが可能になる。
【0048】
なお、用水利用料金については、一本のパイプラインPL上の複数の給水栓100におけるそれぞれのバルブ開度とバルブ開時間の積分による料金の重量制とすることも可能である。この場合、パイプラインPLの下流側と上流側では圧力差があり、下流側に接続される給水栓100ほど、同じ開度でも多くの水を排出できる。そこで、上記のような従量制とする場合において、例えば一本のパイプラインPLの上流から下流にかけて、順次、給水栓100が接続されているような場合には、下流から上流にかけて順に流量に応じた重み付けを行って用水利用料金を設定することができる。
【0049】
<第2実施形態>
続いて、第2実施形態について説明する。圃場主にとって、圃場FMにおける水位や水温の情報は、作物を良好に成長させていくうえで重要である。このため、圃場主としては、例えば稲作であれは田植えから収穫までの栽培期間における水位と水温を定期的に把握しておくことが好ましい。しかし、このような作業を圃場主自らが行うことは相当の負担になる。
そこで、本実施形態においては、用水提供業者が、圃場FMにおける水位と水温とを報告するサービス(水位・水温報告サービス)を圃場主に提供する。そして、このような水位・水温報告サービスを提供するにあたり、水位と水温との情報の収集については、
図1にて説明したように圃場FMに設置したカメラ800と水温計900との通信を利用して、用水管理サーバ500が行う。そして、圃場主への水位と水温の情報の報告については、用水管理サーバ500が報告書を作成し、圃場主端末600に送信する。これにより、圃場FMにおける水位と水温とを圃場主が把握するにあたっての省力化が図られる。
以下、上記のような水位・水温報告サービスを実現するための構成について説明する。
【0050】
本実施形態に対応する用水管理システムの全体的な構成としては、
図1と同様でよい。
【0051】
また、本実施形態における用水管理サーバ500の構成例について再度
図3を参照して説明する。本実施形態における用水管理サーバ500における制御部502は、例えば先の第1実施形態の水量取得部521、用水管理情報管理部522及び料金対応処理部523を備える構成に対して、さらに水位・水温報告関連処理部524を備える。
なお、本実施形態においては、必ずしも第1実施形態の用水提供に応じた料金の徴収を行わなくともよく、この場合には、水量取得部521、用水管理情報管理部522及び料金対応処理部523は省略されてよい。
【0052】
また、本実施形態における用水管理情報記憶部532が記憶する用水管理情報は、例えば
図7に示す内容を有する。同図の用水管理情報は、圃場主IDごとに対応して、
図4に示した給水栓ID、用水利用履歴情報に加えて、さらにカメラIDと水温計IDとの領域を含む。
カメラIDの領域は、同じレコードに含まれる圃場主IDが示す圃場主に対応する圃場FMに設置されたカメラ800を一意に示すカメラIDが格納される。同図の例では、
図1の圃場FM-1に設置されるカメラ800-1のカメラIDとして「C0001」が格納され、圃場FM-2に設置されるカメラ800-2のカメラIDとして「C0002」が格納されている例が示されている。
また、水温計IDの領域は、同じレコードに含まれる圃場主IDが示す圃場主に対応する圃場FMに設置された水温計900を一意に示すカメラIDが格納される。同図の例では、
図1の圃場FM-1に設置される水温計900-1を示す水温計IDとして「WT0001」が格納され、圃場FM-2に設置される水温計900-2を示す水温計IDとして「WT0002」が格納されている例が示されている。
【0053】
続いて、
図8のフローチャートを参照して、本実施形態における用水管理サーバ500が、圃場FMごとの水位と水温のデータとを収集するために実行する処理手順例について説明する。
本実施形態において、圃場FMに設置されたカメラ800は、予め定められた日時(例えば1日の所定時刻ごと)により、定期的に水位目盛板700を撮像し、撮像により得られた水位画像データを給水栓100からネットワークNT経由で用水管理サーバ500に送信してくる。
また、圃場FMに設置された水温計900も、予め定められた日時により、定期的に水温を測定し、測定された水温を示す水温情報を給水栓100からネットワークNT経由で用水管理サーバ500に送信してくる。
【0054】
そこで、用水管理サーバ500における水位・水温報告関連処理部524は、カメラ800のいずれかから送信された水位画像データが受信されるのを待機する(ステップS301-NO)。また水温計900のうちのいずれかから送信された水温情報が受信されるのを待機する(ステップS303-NO)。
【0055】
水位画像データが受信された場合(ステップS301-YES)、水位・水温報告関連処理部524は、受信された水位画像データを用水利用履歴情報に格納する(ステップS302)。この際、水位・水温報告関連処理部524は、受信された水位画像データに付加されていたカメラIDを取得する。水位画像データに付加されるカメラIDは、水位画像データの送信元のカメラ800を示す。
水位・水温報告関連処理部524は、取得したカメラIDを格納するレコードを用水管理情報記憶部532から検索し、検索されたレコードに含まれる用水利用履歴情報に、ステップS301にて受信された水位画像データを現在日時と対応付けて新規に格納する。このようにして水位画像データの送信元のカメラ800が設置された圃場FMの圃場主に対応して、水位画像データが取得される。
【0056】
また、水温情報が受信された場合(ステップS303-YES)、水位・水温報告関連処理部524は、受信された水温情報が示す水温を用水利用履歴情報に格納する(ステップS304)。この際、水位・水温報告関連処理部524は、受信された水温情報に水温を示すデータとともに含まれていた水温計IDを取得する。水温情報に含まれる水温計IDは、水温情報の送信元の水温計900を示す。
水位・水温報告関連処理部524は、取得した水温計IDを格納するレコードを用水管理情報記憶部532から検索し、検索されたレコードに含まれる用水利用履歴情報に、ステップS303にて受信された水温情報が示す水温を現在日時と対応付けて新規に格納する。このようにして、水温情報の送信元の水温計900が設置された圃場FMの圃場主に対応して水温の情報が取得される。ステップS304の処理の後は、ステップS301に処理が戻される。
同図の処理が定常的に実行されることにより、各圃場FMにおけるカメラ800により撮像された水位画像データと水温計900により測定された水温とが、圃場主ごとに対応して、時間と対応付けられるようにして収集される。
【0057】
続いて、
図9のフローチャートを参照して、用水管理サーバ500が上記のように収集した水位画像データと水温の情報とを利用して、圃場主に水位及び水温を報告するための処理手順例について説明する。同図の処理は、1の圃場主に対応して水位及び水温の履歴を報告するための処理となる。
水位・水温報告関連処理部524は、1の圃場主について設定された報告書配信日時に基づいて報告書配信タイミングに至るのを待機している(ステップS401-NO)。
ここで、報告書配信日時については、圃場主からの希望に応じて設定されるようにしてよい。圃場主は、例えば週ごとの決まった曜日における所定時刻を報告書配信日時として指定することができる。このような報告書配信日時の指定は、例えば圃場主が圃場主端末600を操作して、用水管理サーバ500が提供する報告書配信日時指定用のウェブサイトにアクセスし、このウェブサイト上で設定できるようにすればよい。このように指定された報告書配信日時は、例えば圃場主情報に含められるようにして格納される。報告書配信タイミングは、例えば指定された報告書配信日時の所定時間前として設定されればよい。
【0058】
報告書配信タイミングに至ったことが判定されると(ステップS401-YES)、水位・水温報告関連処理部524は、配信対象の圃場主に対応するレコードに含まれる用水利用履歴情報のうちから、過去の一定期間において収集された水位画像データと水温の情報とを取得する(ステップS402)。
ここで、ステップS402において水位画像データと水温の情報とを取得する対象となる一定期間は、例えば指定された報告書配信日時に応じて異なる。具体例として、指定された報告書配信日時が、週ごとの月曜日を指定しており、1日の所定時刻ごとに水位画像データと水温の情報とが収集される場合には、例えば、先週の月曜日から前日の日曜日までの期間において取得された水位画像データと水温の情報とが取得される。
【0059】
次に、水位・水温報告関連処理部524は、ステップS402により取得された一定期間の水位画像データと水温の情報とを利用して報告書を作成する(ステップS403)。報告書は、例えば、一定期間における水位画像データを時間との対応が分かるようにレイアウトした内容と、水温をグラフや表などによって日時の経過に応じて示したような内容とを含む。なお、水位については、水位画像データについて画像解析を行って水位を特定し、特定された水位をグラフや表などによって日時の経過に応じて示してもよい。
また、報告書は、圃場主端末600にて表示させることが可能な所定のファイル形式によるファイルとして作成されればよい。
【0060】
次に、水位・水温報告関連処理部524は、ステップS403により作成された報告書を、報告対象の圃場主の圃場主端末600に送信する(ステップS404)。一例として、報告書を電子メールで送信する場合には、水位・水温報告関連処理部524は、報告対象の圃場主の圃場主情報に連絡先として格納されたメールアドレスを宛先とする報告書の電子メールを送信すればよい。報告書は、電子メールの本文に記述されてもよいし、添付ファイルとされてもよい。あるいは、圃場主端末600にインストールされた用水管理用のアプリケーション上で報告書を閲覧するようにされている場合には、圃場主情報に登録されている圃場主IDでユーザアカウントが登録されたアプリケーションに報告書を送信するようにしてもよい。
圃場主は、圃場主端末600により受信された報告書を、圃場主端末600の表示部に表示させて見ることができる。これにより、圃場主は、自分の圃場の過去の一定期間における水位を水位画像データの画像を見て確認し、水温については、グラフまたは表を見て確認することができる。
【0061】
ここで、水位の報告にあたっては、例えば圃場FMに水位を測定する水位測定器を配置し、水位測定器により測定された水位を用水管理サーバ500が収集し、収集された水位を報告書に反映させてもよい。しかし、水位測定器の水位の測定結果については例えば誤差などが大きく信頼性の低い場合がある。これに対して、水位画像データであれば、水位目盛と実際の水位とが画像として得られていることから、正確な水位を常に把握することが可能になる。
【0062】
そして、本実施形態における用水提供業者は、上記のように実現される水位・水温報告サービスを提供する代わりに、その対価としての料金を圃場主から受けることができる。この場合、用水管理サーバ500における料金対応処理部523は、例えば、第1実施形態において算出した用水利用料金に、水位・水温報告サービスの提供に対する対価としての料金を加えて請求関連処理を実行するようにしてもよい。また、水位・水温報告サービスについては、希望者である圃場主のみが享受できるオプションのサービスとされてもよい。この場合、圃場主情報記憶部531が記憶する圃場主情報には、水位・水温報告サービスの利用者であるか否かを示す情報も格納される。また、水位・水温報告サービスの申し込みあるいは停止などの申請についても、例えば用水管理サーバ500が提供するウェブサイトに圃場主端末600によりアクセスして行えるようにすればよい。
【0063】
なお、本実施形態における報告書は、例えば水位と水温との少なくともいずれか一方について報告するものであってもよい。
【0064】
<第3実施形態>
続いて、第3実施形態について説明する。
図1に示したように、圃場FMへの用水の供給は、ファームポンドFPからパイプラインPLを介して供給される用水を給水栓100から吐出させることによって行われる。
ここで、ファームポンドFPからの用水の供給が開始されて以降において給水栓100の栓部が閉状態のままであると、パイプラインPL内に残留していた空気が圧縮されて給水栓100に過大な圧力を加えるエアハンマーと呼ばれる現象が発生する場合がある。エアハンマーが発生した場合には、その過大な圧力によって給水栓が破損する可能性がある。
【0065】
そこで、本実施形態においては、用水管理サーバ500がファームポンドFPからの用水の供給の開始に応じたタイミングで給水栓100を開状態とするように制御可能に構成される。このような制御が行われることで、ファームポンドFPからの用水の供給の開始に際して、パイプラインPLに残留していた空気が給水栓100における流水経路を介して外部に吐出される。この結果、エアハンマーの発生が防止され、給水栓の破損も防止される。
また、エアハンマーの発生防止のための給水栓100の開栓は、用水管理サーバ500の制御によって人的作業を伴うことなく行われる。これにより、本実施形態においては、エアハンマーの発生防止に関して省力化が図られる。
【0066】
そして、本実施形態における用水提供業者は、上記のようなエアハンマー防止に関連する給水栓の開閉を行うサービス(エアハンマー防止サービス)を圃場主に提供する。以下、エアハンマー防止サービスを実現するための構成について説明する。
【0067】
まず、本実施形態において開閉制御の対象となる給水栓100の構成例について、
図10及び
図11を参照して説明する。各図においては、給水栓100の構造に関して、給水栓100を側方からみた断面図により示している。
給水栓100において給水管101は、パイプラインPLから用水が供給される管である。給水管101の下端部側は、図示するように、パイプラインPLの端部と連結されている。これにより、
図10において矢印αで示すように、パイプラインPLから送られてきた用水が給水管101における中空部101aに供給される。
【0068】
給水管101の上端部には吐出管102が取り付けられている。吐出管102の中空部102aは、給水管101の中空部101aと連通するようにされている。そのうえで、給水管101と吐出管102との連結部分において、給水管101の中空部101aの径は、止水栓ボール104よりも大きくなっており、吐出管102の中空部102aの径は止水栓ボール104よりも小さくなっている。また、吐出管102の中空部102aにおける中空部101a側の開口部は図示するようにテーパー状となっていることで、止水栓ボール104が中空部102aの開口にまで浮上してきたときには、図示するように、中空部102aを止水栓ボール104が塞ぐことができる位置に納まるようにしている。
本実施形態においては、止水栓ボール104と中空部102aの下側の開口部とにより栓部が形成される。
【0069】
また、吐出管102の上側にはカップ103が被せられるように設けられる。カップ103の内側と吐出管102との間には、中空部103aが形成されている。中空部103aは、吐出管102の中空部102aから排出された用水が外部に吐出されるまでの経路となる。
【0070】
止水栓ボール104は、浮力を有する球状の部材である。止水栓ボール104は、図示するように、中空部101a内に設けられる。
また、軸部105は、カップ103と吐出管102の中空部102aを貫通するように設けられる。軸部105は、栓駆動部111により
図10の矢印Aで示すように一定の可動範囲で上下方向に移動可能とされている。
【0071】
図10に示される軸部105は、例えば可動範囲において最も上に位置している状態である。この状態においては、パイプラインPLから給水管101に供給された用水の圧力によって浮力体である止水栓ボール104が同図の状態にまで浮上するため、中空部102aの開口部が止水栓ボール104によって塞がれる状態(閉状態)となる。このように閉状態となることにより、パイプラインPLから給水管101に供給された用水が給水栓100の外部に吐出されることはない。
【0072】
一方、
図11に示される軸部105は、
図10の状態から
図11の矢印Bで示すように下方向に移動され、可動範囲において最も下に位置している状態である。この状態においては、同図のように止水栓ボール104が軸部105によって押し下げられる。このため、止水栓ボール104は、中空部101aにおいて、中空部102aよりも下側に位置する状態(開状態)となる。
このように開状態となることにより、パイプラインPLから給水管101に供給された用水は、同図の破線で示す矢印βとして示すように、中空部101a、中空部102a及び中空部103aによる流水経路を通って、給水栓100の外部に吐出される。このようにして用水が給水栓100から圃場FMに供給される。この際、吐出管102の上にはカップ103が設けられていることで、中空部102aから吐出される用水の圧力が高い状態であっても、上に吹き出すことなく、中空部103aを通して下側に流すことができる。
【0073】
また、
図10及び
図11の各図に示されるように、例えばカップ103の上には、ケース110が設けられる。ケース110の中には、栓駆動部111、制御部112、センサ対応通信部113、サーバ対応通信部114及び電源部115が備えられる。
栓駆動部111は、栓部の開閉駆動を行う。つまり、栓駆動部111は、軸部105を上下方向に移動させることで、止水栓ボール104が中空部102aの開口部を塞ぐ閉状態と止水栓ボール104が中空部102aの開口部よりも下側に位置する開状態との間で状態を変化させる。
なお、栓駆動部111は、開状態において軸部105の上下方向における位置を変化させることで、中空部102aの開口部と止水栓ボール104との間の隙間を調節することができる。これにより、給水栓100から吐出される用水の量が調節可能とされる。
【0074】
栓駆動部111は、例えば、モータと、モータの回転に応じて軸部105を上下方向に移動させる機構部とを備えて構成される。例えば軸部105を上下方向に移動させる機構部は、軸部105が給水栓100における所定箇所と螺合されていることで回転により上下方向に移動可能とされたうえで、軸部105をモータの回転に応じて回転させるようにされた構造により構成することができる。なお、軸部105を上下方向に移動させる機構部としては他の構造も採り得るものであり、上記の例に限定されない。
【0075】
制御部112は、栓駆動部111の動作を制御する。このために制御部112は、例えば栓駆動部111のモータを回転させるためのモータ制御信号を栓駆動部111に出力する。
また、制御部112は、センサ対応通信部113を介して、センサ対応通信部113の通信距離にある用水センサ300、カメラ800及び水温計900と情報の送受信を行う。また、制御部112は、サーバ対応通信部114を介してネットワークNT経由で用水管理サーバ500と情報の送受信を行う。
【0076】
センサ対応通信部113は、近距離無線通信により通信距離の範囲内に位置する用水センサ300、カメラ800及び水温計900と通信を行う。
サーバ対応通信部114は、ネットワークNT経由で用水管理サーバ500と通信を行う。
【0077】
電源部115は、栓駆動部111、制御部112、センサ対応通信部113及びサーバ対応通信部114に電源を供給する。電源部115は、例えば太陽電池と蓄電池とを備え、日中において太陽電池により発電された電力を蓄電池に蓄積する。そして、電源部115は、蓄電池に蓄積された電力を電源として供給するように構成される。
あるいは、電源部115は、2次電池または1次電池などの所定の規格の電池により電源を供給するようにされたうえで、電池の残量が少なくなった場合には電池を交換するように使用される構成であってもよい。
【0078】
なお、本実施形態における給水栓100の構造としては、
図10及び
図11により例示したものに限定されるものではなく、他の構造が採られていてもよい。
【0079】
次に、本実施形態における用水管理サーバ500の構成例について再度
図3を参照して説明する。本実施形態における用水管理サーバ500は、例えば先の第1実施形態または第2実施形態の構成に対して、給水開始検出部525、給水栓制御部526をさらに備える。また、本実施形態における記憶部503は、給水栓管理情報記憶部533をさらに備える。
なお、第1実施形態の用水提供に応じた料金の徴収を行わないのであれば、水量取得部521、用水管理情報管理部522及び料金対応処理部523は省略されてよい。また、第2実施形態に対応する水位・水温報告サービスを行わなければ、水位・水温報告関連処理部524は省略されてよい。
【0080】
給水開始検出部525は、給水栓100に流れる流量を検出する用水センサ350の検出結果に基づいてファームポンドFPから給水栓100への用水の供給が開始されたことを検出する。具体的に、給水開始検出部525は、ファームポンドFPに対応して設置された用水センサ350から一定時間(例えば1秒前後から数秒程度)ごとに送信される流量検出情報を受信し、受信された流量検出情報が示す流量を監視する。
【0081】
ファームポンドFPから給水栓100への給水が行われていない状態では、用水センサ350が検出するファームポンドFPの近傍のパイプラインPLにおいて水の流れは発生していない。この際、用水センサ350は流量がゼロであると検出する。
そして、ファームポンドFPからパイプラインPLに用水を送り出すためのポンプ(図示せず)が作動され、ファームポンドFPから給水栓100への給水が開始されると、圧力が加わることによってファームポンドFPの近傍のパイプラインPLにおいて水の流れが生じる。この際、用水センサ350はゼロより大きい流量値を検出する。即ち、用水センサ350は流量有りと検出する。
そこで、給水開始検出部525は、監視している流量がゼロであった状態から流量有り(ゼロより大きい流量値)の状態に変化した場合に、ファームポンドFPからの給水が開始されたことを検出する。
【0082】
給水栓制御部526は、給水開始検出部525により用水の供給が開始されたことが検出されたことに応じて、給水栓100における栓駆動部111が栓部を開状態とするように開栓制御を行う。
即ち、給水栓制御部526は、給水開始検出部525により用水の供給が開始されたことが検出されると、各圃場FMにおける全ての給水栓100-1、100-2A、100-2B(即ち、ファームポンドFPからの用水の供給を受ける全ての給水栓100)に対して栓部を開状態とするための開栓制御信号を送信する。
【0083】
上記のように給水栓制御部526が開栓制御を行うことにより、ファームポンドFPからの用水の供給を受ける全ての給水栓100は、ファームポンドFPからの用水の供給の開始に応じたタイミングで栓部を開状態とする。
このように、ファームポンドFPからの用水の供給の開始に応じたタイミングで給水栓100が開状態なることで、エアハンマーの発生が防止される。
【0084】
ただし、上記のように開栓制御を行った給水栓100のうちには、本来は圃場FMへの給水に使用していないものも含まれている場合がある。例えば、土壌の条件や作物の生長などは圃場FMごとに異なる。また、作物を育てるにあたっての考え方も圃場主によって異なる。あるいは、休耕地となっている圃場FMである場合にも、用水の供給を行う必要がない。このため、同じ時期においても、或る圃場FMでは給水をすべきであるが、他の圃場FMでは給水はすべきでないというように圃場FMごとに給水の要否が異なってくる。
このため、ファームポンドFPからの用水の供給の開始に応じてエアハンマーの発生を防止するために全ての給水栓100を開状態としたままとしておくことによっては、以下のような不具合が生じる可能性がある。
つまり、上記のように開栓制御を行った場合には、現在において給水を行うべきでない給水栓100があれば、その給水栓100からも用水が圃場FMに供給されることになる。この場合には、無駄な用水利用料金が発生してしまうことにもなる。このような不具合が生じた場合において、圃場主が給水栓100にまで赴いて手動で給水栓100を閉状態とすることは面倒であり省力化の点で好ましくない。
そこで、本実施形態のエアハンマー防止サービスにおいては、給水の停止が設定された給水栓100については、先の開栓制御により開状態としてエアハンマーの発生が回避された後において、さらに、用水管理サーバ500の制御によって閉状態に戻すことが行われる。これにより、無駄な用水利用量が発生してしまうことが防がれる。
【0085】
そこで、給水栓制御部526は、開栓制御を行ったことにより給水栓100から用水が吐出された状態となった後において、使用停止が設定された給水栓100が閉栓されるように以下の制御を行う。
つまり、給水栓制御部526は、開栓制御の対象とされた給水栓100のうち、圃場FMへの給水に使用しないことが予め定められた給水栓100について栓駆動部111が栓部を閉状態とするように閉栓制御を行う。
具体的に、給水栓制御部526は、前述の開栓制御を行った後において、開栓制御の対象とされた給水栓100のそれぞれにおいて、ファームポンドFPから供給された用水が吐出されるのを待機する。ファームポンドFPと給水栓100との間のパイプラインPLは物理的に或る程度の長さを有していることから、ファームポンドFPからの用水の供給が開始されたことに応じて給水栓100から用水が吐出されるようになるまでには或る程度の時間を要する。
【0086】
この際、給水栓制御部526は、開栓制御の対象とされた全ての給水栓100(100-1、100-2A、100-2B)のそれぞれに対応する用水センサ300(300-1、300-2A、300-2B)から一定時間ごとに送信される流量検出情報を受信し、受信された流量検出情報が示す流量を監視する。
未だ給水栓100から用水が吐出されていない状態では、用水センサ300が設けられた給水栓100の近傍のパイプラインPLにおいても水の流れが生じていない。この際、用水センサ300は流量がゼロであると検出する。
そして、給水栓100から用水が吐出される状態となっているときには、用水センサ300が設けられた給水栓100の近傍のパイプラインPLにおいても水の流れが生じる。この際、用水センサ300はゼロより大きい流量値を検出する。即ち、用水センサ300は流量有りと検出する。
そこで、給水栓制御部526は、各用水センサ300のそれぞれが検出する各流量の全てがゼロから流量有りに変化したことを以て、開栓制御の対象とされた給水栓100の全てにおいて用水が吐出された状態になったと判定する。
【0087】
次に、給水栓制御部526は、開栓制御の対象とされた給水栓100のうちで、給水に使用しないことが定められた給水栓100を特定する。このために、給水栓制御部526は、記憶部503に記憶される給水栓管理情報記憶部533が記憶する給水栓管理情報を利用する。
【0088】
図12は、給水栓管理情報の内容例を示している。同図の給水栓管理情報は、用水管理サーバ500が、
図1に示した圃場FM-1、FM-2における給排水管理の他に、もう1つの異なるファームポンドからの用水の供給を受けるようにされた2つの圃場の給排水管理を行っている場合に対応する。
図12の給水栓管理情報は、ファームポンドIDと給水栓IDと使用フラグと圃場主IDとが対応付けられた構造である。
ファームポンドIDは、ファームポンドFPごとに割り当てられた識別子である。
給水栓IDは、給水栓100を一意に示す識別子である。例えば同図においては、ファームポンドID[P0001]に、3つの給水栓ID[F0001]、[F0011]、[F0012]が対応付けられている。これは、ファームポンドID[P0001]のファームポンドから用水の供給を受ける給水栓が、それぞれ、給水栓ID[F0001]により示される給水栓、給水栓ID[F0011]により示される給水栓、給水栓ID[F0012]の給水栓により示される3つであることを示す。
同図のファームポンドID[P0001]は、
図1におけるファームポンドFPを示し、給水栓ID[F0001]、[F0011]、[F0012]は、それぞれ、同じ
図1における給水栓100-1、100-2A、100-2Bを示す。
【0089】
また、
図12の給水栓管理情報において、ファームポンドID[P0002]は、
図1のファームポンドFP以外であって、用水管理サーバ500による給排水対象の圃場に用水を供給する他のファームポンドを示す。また、
図12の給水栓管理情報によっては、給水栓ID[F0021]、[F0022]がそれぞれ付与された2つの給水栓がファームポンドID[P0002]により示されるファームポンドから用水の供給を受けることが示される。
【0090】
使用フラグは、対応付けされている給水栓IDが示す給水栓について、圃場への給水のための使用が許可されているか否かを示すフラグである。ここでは、使用フラグが「1」である場合には圃場FMへの給水のための使用が許可されていることを示し、使用フラグが「0」である場合には圃場FMへの給水のための使用が禁止されていることを示す。
同図の例では、
図1の給水栓100-1(給水栓ID[F0001])と、給水栓100-2A(給水栓ID=[F0011])については圃場FMへの給水のための使用が許可されているが、給水栓100-2B(給水栓ID=[F0012])については、圃場FMへの給水のための使用が禁止されていることが示されている。即ち、給水栓100-2Bは、給水に使用しないことが定められた給水栓である。
また、給水栓ID[F0021]の給水栓と、給水栓ID[F0022]の給水栓とについては、いずれも圃場への給水のための使用が許可されていることが示されている。
【0091】
給水栓管理情報における使用フラグの設定は、圃場主端末600から行うことができる。例えば圃場主は、自己が所有する圃場主端末600を操作して、圃場主端末600を用水管理サーバ500が提供する給水栓に関する設定用のウェブサイトにアクセスさせる。そして、圃場主は、アクセスされたウェブサイトに対して圃場主端末600から操作を行って、自己が所有する圃場FMにおける給水栓100の使用の許可、禁止についての設定を行うことができる。このようにウェブサイトに対して設定された内容が給水栓管理情報に反映される。
【0092】
また、圃場主IDは、対応の給水栓IDが示す給水栓100が設置される圃場の圃場主を示す。
同図において、圃場FM-1に設置される給水栓100-1を示す給水栓ID[F0001]には、同じ圃場FM-1の圃場主を示す圃場主ID[FM0001]が対応付けられている。
また、圃場FM-2に設置される給水栓100-2Aを示す給水栓ID[F0011]には、圃場FM-2の圃場主を示す圃場主ID[FM0002]が対応付けられている。同様に、同じ圃場FM-2に設置される給水栓100-2Bを示す給水栓ID[F0012]には、圃場FM-2の圃場主を示す圃場主ID[FM0002]が対応付けられている。
また、
図1に示されていないファームポンドから用水の供給を受ける圃場の2つの給水栓に対応する給水栓ID[F0021]、[F0022]には、それぞれ、圃場FM-1、FM-2と異なる圃場の圃場主の圃場主ID[FM0003]、[FM0004]が対応付けられている。
【0093】
給水栓制御部526は、給水栓管理情報を参照して、開栓制御を行った給水栓100のうちで、使用フラグが「0」の給水栓100を特定する。そして、給水栓制御部526は、特定された給水栓100に対して、閉状態とするための閉栓制御信号を送信する。
閉栓制御信号を受信した給水栓100の制御部112は、栓駆動部111を制御して栓部を閉状態とする。この結果、開栓制御が行われた後において、給水栓管理情報により給水が許可されている給水栓100からはそのまま圃場FMへの給水が継続される。一方、給水栓管理情報により給水が禁止されている給水栓100について圃場FMへの給水が停止される。このように、給水栓制御部526は、用水センサ300の検出結果に基づいて給水栓100から用水が吐出された状態となったことを判定した場合に閉栓制御を行うように構成される。
【0094】
続いて、
図13のフローチャートを参照して、本実施形態における用水管理サーバ500が、エアハンマーの防止に関連して実行する処理手順例について説明する。なお、同図に示される処理は、用水管理サーバ500が用水供給開始の監視対象とするファームポンド(即ち、給水栓管理情報にファームポンドIDが格納されているファームポンド)のうち、1つのファームポンドを対象として行われる処理である。従って、用水管理サーバ500は、同図の処理を、給水栓管理情報にファームポンドIDが格納されているファームポンドごとに並行して実行する。
ここでは、同図の処理が
図1に示したファームポンドFPを対象として行われる処理である場合を例に挙げて説明する。
【0095】
図1のファームポンドFPに対応する用水センサ350は、ファームポンドFPの近傍のパイプラインPLにおける水の流量を検出する。そして、用水センサ350は、検出した流量値を示す検出情報を一定時間ごとに用水管理サーバ500に対して送信する。また、用水センサ350は、検出情報の送信にあたり、用水センサ350が対応するファームポンドFPを示すファームポンドID[P0001]を検出情報に含める。
【0096】
そこで、用水管理サーバ500の給水開始検出部525は、給水開始の監視対象のファームポンドFPを示すファームポンドID[P0001]を含む検出情報(即ち、
図1の用水センサ350が送信する検出情報)が受信されるのを待機する(ステップS501-NO)。
なお、用水センサ350から送信される検出情報には、例えばファームポンドIDに代えて、用水センサ350を一意に示す用水センサIDを含めてもよい。この場合、用水管理サーバ500は、ファームポンドFPのファームポンドIDと用水センサ350の用水センサIDとを対応付けて管理することで、用水センサ350が流量検出対象とするファームポンドFPを一意に特定することが可能である。
ファームポンドFPを示すファームポンドID[P0001]を含む検出情報が受信されると(ステップS501-YES)、給水開始検出部525は、受信された検出情報において含まれる流量値を取得する(ステップS502)。
【0097】
次に、給水開始検出部525は、今回のステップS502により取得された流量値と、今回より前のステップS502により取得された流量値とに基づいて、対応のファームポンドFPからの用水の供給が開始されたか否かについて判定する(ステップS503)。
ステップS503の判定にあたって、例えば給水開始検出部525は、前回までのステップS502により取得された流量値がゼロであった状態からゼロより大きくなるように変化したか否かについて判定すればよい。つまり、この場合には、ファームポンドFPからの用水の流量が検出されたことに応じて即座に給水栓100を開状態とする制御が行われるようにしている。
なお、流量値がゼロであった状態から、所定のマージン値に応じたゼロより大きい所定値に変化したか否かについて判定するようにしてもよい。なお、例えば流量値がゼロであった状態から、ゼロより大きい所定以上の流量値が連続して一定回数にわたって取得された場合に、ファームポンドFPからの用水の供給が開始されたと判定してもよい。上記2つの構成の場合には、何らかの原因により生じた一時的なパイプラインPL内の水の流れの発生を、ファームポンドFPからの用水の供給開始であると誤判定することが避けられ、判定結果についての信頼性を向上させることが可能になる。
【0098】
ファームポンドFPからの用水の供給が開始されていないと判定された場合(ステップS503-NO)、給水開始検出部525は、ステップS501に処理を戻す。
これに対して、ファームポンドFPからの用水の供給が開始されたことが判定された場合(ステップS503-YES)、給水栓制御部526が以下の処理を実行する。
【0099】
つまり、給水栓制御部526は、監視対象のファームポンドFPから用水の供給を受ける全ての給水栓100を対象とする開栓制御を行う(ステップS504)。ステップS504の開栓制御は、以下のように行われる。
まず、給水栓制御部526は、開栓制御の対象としての給水栓を特定する。このために、給水栓制御部526は、用水供給開始の監視対象のファームポンドFPのファームポンドIDに対応付けられている給水栓IDを、給水栓管理情報記憶部533が記憶する給水栓管理情報から取得する。
具体的に、この場合における用水供給開始の監視対象のファームポンドFPのファームポンドIDは、[P0001]である。そこで、この場合の給水栓制御部526は、給水栓管理情報から、ファームポンドID[P0001]に対応付けられている3つの給水栓ID[F0001]、[F0011]、[F0012]を取得する。このように給水栓IDを取得することにより、開栓制御の対象としての給水栓が、給水栓100-1、100-2A、100-2Bであることが特定される。このように特定された給水栓100-1、100-2A、100-2Bは、監視対象のファームポンドFPから用水の供給を受ける全ての給水栓100である。
そして、給水栓制御部526は、上記のように開栓制御の対象として特定した給水栓100-1、100-2A、100-2Bに対して、開栓制御信号を送信する。このようにして、ステップS504における開栓制御が行われる。
上記のように開栓制御が行われることに応じて、給水栓100-1、100-2A、100-2Bにおける各制御部112は、栓部が開状態となるように栓駆動部111を制御する。これにより、開栓制御の対象の給水栓100の全てが開状態となる。
ここで、ステップS504の開栓制御による給水栓100の開状態としては、全開(100%の開度)とすればよい。給水栓100を全開の状態とすることにより止水栓ボール104のストローク距離ができるかぎり小さくなるので、エアハンマーの現象による破壊もさらに生じにくくなる。
【0100】
前述のように、パイプラインPLが物理的な長さを有することで、ファームポンドFP側での用水供給開始のタイミングから、供給された用水が実際に給水栓100から吐出されるまでには或る程度の時間を要する。
そこで、上記のように開栓制御の対象の給水栓100の全てを開状態とした後において、給水栓制御部526は、用水が給水栓100から吐出される状態となることを待機する。このために、給水栓制御部526は、以下のようにステップS505及びS506の処理を行う。
つまり、給水栓制御部526は、全ての給水栓100のそれぞれに対応する用水センサ300-1が検出する流量を監視する(ステップS505)。
用水センサ300-1、300-2A、300-2Bは、それぞれ、給水栓100-1、100-2A、100-2Bの近傍のパイプラインPLにおける流量を検出し、検出した流量を示す流量値を含む検出情報を、用水センサ300-1、300-2A、300-2Bを経由して用水管理サーバ500に対して一定時間ごとに送信する。
また、用水センサ300-1、300-2A、300-2Bが送信する検出情報には、対応の給水栓を示す情報として、それぞれ、給水栓100-1、100-2A、100-2Bの給水栓IDが含まれる。
【0101】
そこで、給水栓制御部526は、ステップS505の処理として、用水センサ300-1、300-2A、300-2Bのいずれかから検出情報が受信されることに応じて、受信された検出情報に含まれる流量値を、同じ検出情報に含まれる給水栓IDと対応付けて取得する。このようにして、ステップS505により、開栓制御対象の給水栓100ごとに対応する用水センサ300が検出した流量の監視が行われる。
【0102】
上記のようにステップS505による流量の監視を行いながら、給水栓制御部526は、開栓制御対象の全ての給水栓100から用水が吐出された状態となったか否かについて判定する(ステップS506)。
このために、給水栓制御部526は、用水センサ300のそれぞれにて検出された流量の全てが、ゼロの状態からゼロより大きい状態に変化したか否かについて判定すればよい。用水センサ300により検出された流量の全てがゼロより大きい状態に変化したということは、開栓制御対象とされて開状態にある全ての給水栓100において、ファームポンドFPから供給された用水が吐出されているということである。
【0103】
開栓制御対象の給水栓100のうちの少なくとも1つにおいて未だ用水が吐出されていないことが判定された場合(ステップS506-NO)、給水栓制御部526は、ステップS505に処理を戻す。即ち、給水栓制御部526は、開栓制御対象である全ての給水栓100について用水が吐出されたことを判定するまで、ステップS505による流量の監視を継続する。
一方、開栓制御対象の全ての給水栓100から用水が吐出された状態となったことを判定した場合(ステップS506-YES)、給水栓制御部526は、以下の制御に移行する。つまり、給水栓制御部526は、開栓制御対象とされた給水栓100のうちで、給水のための使用が禁止されている給水栓100については閉状態とするための制御に移行する。
そこで、給水栓制御部526は、まず、開栓制御対象とされた給水栓100のうちで、給水のための使用が禁止されている給水栓100を特定する(ステップS507)。このため、給水栓制御部526は、給水栓管理情報において格納される開栓制御対象の給水栓100の給水栓IDのうち、対応付けされている使用フラグが「0」の給水栓IDを特定する。このようにして給水栓IDの特定が行われることにより、給水のための使用が禁止されている給水栓100の特定が行われる。
図12の給水栓管理情報の例では、給水栓ID[F0001]、[F0002]、[F0003]のうち、給水栓ID[F0003]に対応付けられた使用フラグが「0」となっている。従って、この場合には、給水栓ID[F0003]により示される給水栓100-2Aが給水のための使用が禁止されている給水栓として特定される。
【0104】
そして、給水栓制御部526は、ステップS507により給水使用禁止が設定されているものと特定された給水栓100を対象として閉栓制御を行う(ステップS508)。つまり、給水栓制御部526は、ステップS507により給水のための使用が禁止されているものと特定された給水栓100を送信先として、閉栓制御信号を送信する。
ステップS504の開栓制御により開栓状態とされていた給水栓100のうち、ステップS507により特定された給水栓100は、閉栓制御信号を受信する。閉栓制御信号を受信した給水栓100は、これまで開状態とされていた栓部が閉状態となるように栓駆動部111を制御する。
これにより、開栓制御の対象とされた給水栓100のうち、給水のための使用が許可されている給水栓100は開状態が維持され、給水のための使用が禁止されている給水栓100が閉状態となる。この結果、給水の必要のある圃場FMには給水が行われ、その一方で、給水の必要がない圃場FMには給水が行われないこととなり、給水栓管理情報の設定に従って適正な給水管理が可能となる。
【0105】
なお、上記の説明では、エアハンマーの防止にあたり、1つのファームポンドFPに対応する全ての給水栓100を開状態とするように制御した例を挙げている。
しかしながら、エアハンマーの防止にあたり、1つのファームポンドFPに対応する給水栓100のうちの一部を開状態とするように制御し、残りの給水栓100については閉状態のままとしてもよい。この場合においては、空気の圧力が給水栓100の間でできるだけ偏らないように、一定数おき(例えば1つおき、2つおき)の給水栓100を開状態の制御対象とするとよい。
このようにファームポンドFPに対応する一部の給水栓100を開状態としても、閉状態にある給水栓100にかかる空気の圧力は十分に低減させることができるため、エアハンマーによる破壊が防止される。このようにファームポンドFPに対応する給水栓100のうち開状態とする給水栓100を一部に制限することによっては、開状態の制御対象とされない給水栓100については栓駆動部111が動作しなくともよいため、例えば電源部115における2次電池あるいは1次電池の容量を節約することができる。
【0106】
そして、本実施形態における用水提供業者は、上記のように実現されるエアハンマー防止サービスを提供する代わりに、その対価としての料金を圃場主から受けることができる。この場合、用水管理サーバ500における料金対応処理部523は、例えば、第1実施形態において算出した用水利用料金(及び第2実施形態に対応する水位・水温報告サービスの料金)に、エアハンマー防止サービスの提供に対する対価としての料金を加えて請求関連処理を実行するようにしてもよい。
エアハンマー防止サービスについては、希望者である圃場者のみが享受できるオプションのサービスとされてもよい。この場合、圃場主情報記憶部531が記憶する圃場主情報には、エアハンマー防止サービスの利用者であるか否かを示す情報も格納される。また、エアハンマー防止サービスの申し込みあるいは停止などの申請についても、例えば用水管理サーバ500が提供するウェブサイトに圃場主端末600によりアクセスして行えるようにすればよい。
【0107】
なお、上記第3実施形態の説明では、用水センサ350にてファームポンドFPからパイプラインPLに流れる用水の流量を検出し、用水管理サーバ500における給水開始検出部525が、用水センサ350により検出された流量に基づいて、ファームポンドFPからの給水が開始されたか否かを検出するように構成されている。
しかしながら、本実施形態においては、例えば、用水センサ350について、流量を検出するとともに、検出した流量に基づいてファームポンドFPからの給水が開始されたか否かを検出可能なように構成してもよい。即ち、給水開始検出部525は、用水センサ350に備えられてもよい。この場合、用水センサ350の給水開始検出部525は、ファームポンドFPからの給水が開始されたことを検出すると、その旨を示す給水開始通知を用水管理サーバ500に送信する。用水管理サーバ500における給水栓制御部526は、給水開始通知が受信されたことに応じて開栓制御を行うようにされればよい。
また、給水開始検出部525は、例えばファームポンドFPからパイプラインPLに用水を送り出すためのポンプの動作状態を監視し、ポンプが停止している状態から動作を開始した状態となったことに応じて、給水が開始されたことを検出するようにしてもよい。あるいは、ポンプに給水開始検出部525を設けてもよい。つまり、この場合には、ポンプ自体が、自己の動作を開始したことに応じて給水が開始されたことを検出し、作開始通知を用水管理サーバ500に送信するように構成すればよい。
【0108】
また、上記第3実施形態においては、閉栓制御の対象は、用水管理サーバ500が記憶する給水栓管理情報において、「0」の使用フラグが設定されている給水栓とされていた。しかし、例えば給水開始検出部525は、開栓制御を行った際の圃場FMの水位を取得し、取得された水位が圃場主により予め指定されている水位以上である場合には、この圃場FMに対応して設けられている給水栓についても閉栓制御を行うようにしてよい。なお、水位の取得にあたっては、例えば、前述の水位画像データを対応の圃場FMのカメラ50から取得し、取得された水位画像データの画像解析によって水位を特定することができる。
あるいは、圃場ごとに通信機能を備える水位計を設置し、水位計から送信された水位の情報を取得するようにしてもよい。この際には、1つの圃場FMにおいて複数の水位計を備え、複数の水位計により測定された水位を平均するなどしてもよい。これにより、水位計により水位の情報を得る場合における水位の測定結果についての信頼性を高めることができる。
【0109】
また、本実施形態の用水管理システムは、上記のようなエアハンマー防止サービスのほかに以下のようなサービスを提供することができる。
例えば、本実施形態の用水管理システムは、圃場決壊通知サービスを行うことができる。つまり、用水管理サーバ500は、給水栓100による給水量と圃場FMにおける水位の状態とを取得し、給水量に応じた水位の上昇が得られているか否かについて判定する。用水管理サーバ500は、給水量に応じた水位の上昇が得られていないことを判定した場合に、圃場FMにおいて決壊が生じていることを圃場主端末600に送信することができる。
また、本実施形態の用水管理システムは、高水温対策給水サービスを行うことができる。つまり、圃場FMにおいて水温計を設け、圃場FMに供給されている用水の温度についての計測結果が、例えば給水栓100経由で用水管理サーバ500にて取得されるようにする。そのうえで、用水管理サーバ500は、取得された水温を監視し、水温が所定以上となった場合に、水温が異常に上昇したとして、例えば一定時間、あるいは水温が所定以下に低下するまで給水栓100を開状態として給水を行わせる。
このような高水温対策給水サービスにあたっては、例えば測定される水位が上限値を越えたとしても、一定時間の給水または水温が所定以下に低下するまでの給水を継続させてよい。また、高水温対策給水サービスのもとでは、高水温に対する対策を段階的に行うことができる。例えば1次対策として、用水管理サーバ500は、水温が1次設定温度にまで上昇した場合に、圃場主端末600に対して水温の上昇を通知する水温上昇通知を送信する。そして、水温が1次設定温度よりも高い2次設定温度となったことに応じて、用水管理サーバ500は、2次対策として上記のように圃場FMへの給水を行う。
また、本実施形態の用水管理システムは、集中豪雨対策サービスを行うことができる。つまり、用水管理サーバ500は、天気予報に基づいて集中豪雨が発生するか否かを予測する。用水管理サーバ500は、集中豪雨が発生すると予測した場合、集中豪雨の生じることが予測される時間よりも前の時間において、事前に排水栓200を開状態として圃場FMから用水を排出させ、排出が完了したら排水栓200を閉状態とする。この状態から集中豪雨が発生すると、圃場FMには雨水が入ることとなり、圃場FMにおける保水が保たれる。このような制御を行うことで、集中豪雨が生じた際に圃場FMからの排水が集中することがなくなるので、例えば河川などの氾濫を防ぐことが可能になる。
また、本実施形態の用水管理システムは、圃場主の位置管理サービスを行うことができり。つまり、圃場主端末600にGPS(Global Positioning System)などに対応した測位機能を有させる。そして、圃場主端末600は、測位機能により測位して得られた自己の位置を示す位置情報を用水管理サーバ500に送信する。用水管理サーバ500は、送信された位置情報を、例えば位置情報の送信元の圃場主端末600の所有者である圃場主に対応させて記憶する。このように記憶された圃場主の位置情報は、例えば、農業日誌に記録される圃場主の行動履歴に含め、作業効率の検討に用いるなど、多様な用途に用いることができる。
【0110】
<第4実施形態>
続いて、第4実施形態について説明する。本実施形態においては、用水管理サーバ500は、例えば稲作であれば田植えから収穫までの耕作期間における水位の情報を時間に対応付けて、圃場主ごとに管理するように構成される。この場合、水位の情報は、前述のようにカメラ800から受信した水位画像データを画像解析することによって得るようにしてもよいし、例えば圃場主が圃場主端末600により用水管理サーバ500が提供するウェブサイトにアクセスすることにより入力するようにされてもよいし、例えば圃場FMに通信機能を有する水位計を備え、水位計により計測された水位の情報を用水管理サーバ500が通信経由で取得するようにされてもよい。
【0111】
そして、本実施形態における用水管理サーバ500は、例えば過去における耕作期間の水位の管理結果(水位実績情報)を、圃場主端末600の用水管理用アプリケーションに送信することができる。例えば、圃場主は、作付け時などにおいて、過去の水位実績情報を参考にしたいような場合に、水位実績情報を要求する操作を行うことができる。用水管理サーバ500は、例えば過去における複数の年度ごとの耕作期間の水位実績情報を記憶しているので、水位実績情報を要求する際には、水位実績情報の年度を指定することもできる。
圃場主端末600は、用水管理用アプリケーション上で、要求に応答して用水管理サーバ500から送信された水位実績情報を視覚的に把握可能な態様で表示する。水位実績情報の表示としては、例えば横軸に日付が示され、縦軸に水位が示されるグラフにより、年間における水位の変化が表されるようにした態様とすることができる。
【0112】
圃場主は、上記のように表示される水位実績情報を見ることで、例えば今年の耕作における圃場の灌漑の参考とすることができる。
さらに、本実施形態においては、用水管理用アプリケーション上で表示された水位実績情報について、圃場主が操作を行って水位及び水位の維持期間などを変更するように編集を行うことができる。このような水位実績情報の編集機能は、例えば、圃場主が今年度の圃場の水位管理のプランを建てるにあたっての支援ツールとして利用することができる。
例えば、圃場主は、今年度において予測される天候や圃場の状況に近かったと思われる過去の年度の水位実績情報を指定して用水管理用アプリケーション上で表示させる。そして、表示された水位実績情報を参考にしつつ、かつ、今年度の状況を考慮しながら、水位とその維持期間について適宜変更を行う。
上記のように編集された水位実績情報は、例えば今年度の水位管理プランとして用水管理サーバ500に記憶させておき、圃場主が必要に応じて呼び出して圃場主端末600の用水管理用アプリケーション上で表示させて確認、修正などを行うことができる。
このように本実施形態において、用水提供業者は、例えば過去の水位実績情報を圃場主に提供する水位実績提供サービスを行うことができる。そして、本実施形態の用水管理サーバ500は、水位実績提供サービスに対応した料金についての請求関連処理を実行することができる。
【0113】
なお、用水管理用アプリケーションによる水位実績情報は、用水管理用アプリケーションまたは農業日誌としての機能を有する農業日誌アプリケーションにより記録された農業日誌情報と連携して表示されるようにしてもよい。農業日誌情報には、日ごとにおける気温、水温、日照時間などが示されている。用水管理用アプリケーションが、このような農業日誌情報における気温、水温、日照時間などの情報を水位実績情報と併せて提示することで、水管理のノウハウの蓄積を有効に支援できる。
また、或る圃場主により蓄積された水管理のノウハウの情報を、有料もしくは無料で第三者に提供できるようにしてもよい。このような水管理のノウハウの情報を新規就農者に向けて提供することにより、新規就農者のノウハウの蓄積を促すことが可能になる。
【0114】
なお、上記各実施形態のサービスとサービスの提供に応じた料金の徴収は、各実施形態のサービスのうちの少なくとも2つを組み合わせて行われてもよいし、いずれか1つが単独で行われてもよい。
また、上記各実施形態のサービスは、同じ業者が行ってもよいし、それぞれ異なる業者が行ってもよい。
【0115】
なお、上述の用水管理サーバ500や給水栓100などの機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述の用水管理サーバ500や給水栓100の処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、インターネットやWAN、LAN、専用回線等の通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。このように、プログラムを記憶した記録媒体は、CD-ROM等の非一過性の記録媒体であってもよい。また、記録媒体には、当該プログラムを配信するために配信サーバからアクセス可能な内部または外部に設けられた記録媒体も含まれる。配信サーバの記録媒体に記憶されるプログラムのコードは、端末装置で実行可能な形式のプログラムのコードと異なるものでもよい。すなわち、配信サーバからダウンロードされて端末装置で実行可能な形でインストールができるものであれば、配信サーバで記憶される形式は問わない。なお、プログラムを複数に分割し、それぞれ異なるタイミングでダウンロードした後に端末装置で合体される構成や、分割されたプログラムのそれぞれを配信する配信サーバが異なっていてもよい。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、ネットワークを介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また、上記プログラムは、上述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、上述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【符号の説明】
【0116】
100(100-1、100-2A、100-2B) 給水栓、200(200-1、200-2A、200-2B) 排水栓、300(300-1、300-2A、300-2B),350 用水センサ、500 用水管理サーバ、501 通信部、502 制御部、503 記憶部、521 水量取得部、522 用水管理情報管理部、523 料金対応処理部、524 水位・水温報告関連処理部、525 給水開始検出部、526 給水栓制御部、531 圃場主情報記憶部、532 用水管理情報記憶部、533 給水栓管理情報記憶部、600(600-1,600-2) 圃場主端末、700(700-1,700-2) 水位目盛板、800(800-1,800-2) カメラ、900(900-1,900-2) 水温計