(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】テラヘルツ波を検出するための性能因子が独立的な一体型電界効果トランジスタ-アンテナ融合素子
(51)【国際特許分類】
H01L 21/336 20060101AFI20230314BHJP
H01L 29/78 20060101ALI20230314BHJP
H01Q 23/00 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
H01L29/78 301H
H01L29/78 301G
H01L29/78 301S
H01Q23/00
(21)【出願番号】P 2022023787
(22)【出願日】2022-02-18
【審査請求日】2022-02-18
(31)【優先権主張番号】10-2021-0082531
(32)【優先日】2021-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515351884
【氏名又は名称】ユニスト(ウルサン ナショナル インスティテュート オブ サイエンス アンド テクノロジー)
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】キム ギョン ロク
(72)【発明者】
【氏名】リュ ミン ウ
(72)【発明者】
【氏名】チャン イ サン
(72)【発明者】
【氏名】パテル ラメシュ
(72)【発明者】
【氏名】アン サン ヒョ
【審査官】岩本 勉
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0080010(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2016-0091008(KR,A)
【文献】特表2018-500772(JP,A)
【文献】特表2018-509004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 29/78
H01Q 23/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲートをアンテナとして活用するテラヘルツ波検出用電界効果トランジスタであって、
ソース及び前記ソースを取り囲む形態のチャネル領域の外側に形成されたドレインを含むシリコン基板と、
前記シリコン基板の表面上に形成される誘電層の上段において、前記シリコン基板と離隔して前記チャネル領域に対応して形成されているゲートと、
を含み、
前記ドレインは、前記電界効果トランジスタのテラヘルツ波の受信率に関する第1性能因子に基づいて決定された幅を有し、
前記チャネル領域は、前記電界効果トランジスタによって受信されるテラヘルツ波の検出に関する第2性能因子に基づいて決定された幅を有する、電界効果トランジスタ。
【請求項2】
前記シリコン基板に垂直な方向から見るとき、前記ソースは円形であり、前記チャネル領域はリング状であり、前記ドレインはリング状である、請求項1に記載の電界効果トランジスタ。
【請求項3】
前記ゲートは、前記シリコン基板に垂直な方向から見るとき、前記チャネル領域を取り囲むように形成されている、請求項1に記載の電界効果トランジスタ。
【請求項4】
前記ソースの中心と前記チャネル領域の中心は互いに離隔している、請求項1に記載の電界効果トランジスタ。
【請求項5】
前記チャネル領域の幅は、前記ソースから前記ドレインまでの最短距離と同じ長さである、請求項1に記載の電界効果トランジスタ。
【請求項6】
前記ドレインの幅は、前記電界効果トランジスタのターゲットテラヘルツ波に対応するターゲット波長、前記ターゲット波長の1/2、及び前記ターゲット波長の1/4のうち1つに対応する長さである、請求項1に記載の電界効果トランジスタ。
【請求項7】
前記チャネル領域の幅は、前記ソースの幅及び前記ゲートの幅に基づいて決定される、請求項1に記載の電界効果トランジスタ。
【請求項8】
前記チャネル領域の幅は、前記電界効果トランジスタに対するテラヘルツ波の印加に応答して生成される電荷密度分布の長さを超過する長さである、請求項1に記載の電界効果トランジスタ。
【請求項9】
前記ドレインの幅は、前記第1性能因子に基づいて決定され、
前記チャネル領域の幅は、前記第1性能因子とは独立的に前記第2性能因子のみによって決定される、請求項1に記載の電界効果トランジスタ。
【請求項10】
前記ゲートは、前記シリコン基板に垂直な方向から見るとき、前記ソースと一部オーバーラップされる、請求項1に記載の電界効果トランジスタ。
【請求項11】
前記ゲートは、前記シリコン基板に垂直な方向から見るとき、前記ドレインと一部オーバーラップされる、請求項1に記載の電界効果トランジスタ。
【請求項12】
ゲートをアンテナとして活用するテラヘルツ波検出用電界効果トランジスタの製造方法であって、
シリコン基板の一部をドーピングしてソースを形成し、前記ソースを取り囲む形態のチャネル領域の外側をドーピングしてドレインを、前記電界効果トランジスタのテラヘルツ波の受信率に関する第1性能因子に基づいて決定された幅で形成するステップと、
前記シリコン基板の表面上に形成される誘電層の上段で、前記シリコン基板と離隔して前記チャネル領域に対応するゲートを形成するステップと、
を含み、
前記チャネル領域は、前記電界効果トランジスタによって受信されるテラヘルツ波の検出に関する第2性能因子に基づいて決定されている幅を有する、電界効果トランジスタ製造方法。
【請求項13】
前記シリコン基板に垂直な方向から見るとき、前記ソースは円形であり、前記チャネル領域はリング状であり、前記ドレインはリング状である、請求項12に記載の電界効果トランジスタ製造方法。
【請求項14】
前記ゲートを形成するステップは、前記シリコン基板に垂直な方向から見るとき、前記チャネル領域を取り囲むように前記ゲートを形成するステップを含む、請求項12に記載の電界効果トランジスタ製造方法。
【請求項15】
前記ドレインを形成するステップは、前記ソースの中心と前記チャネル領域の中心は互いに離隔するよう形成しているステップを含む、請求項12に記載の電界効果トランジスタ製造方法。
【請求項16】
前記チャネル領域の幅は、前記ソースから前記ドレインまでの最短距離と同じ長さである、請求項12に記載の電界効果トランジスタ製造方法。
【請求項17】
ドレインの幅は、前記電界効果トランジスタのターゲットテラヘルツ波に対応するターゲット波長、前記ターゲット波長の1/2、及び前記ターゲット波長の1/4のうち1つに対応する長さである、請求項12に記載の電界効果トランジスタ製造方法。
【請求項18】
前記チャネル領域の幅は、前記ソースの幅及び前記ゲートの幅に基づいて決定される、請求項12に記載の電界効果トランジスタ製造方法。
【請求項19】
前記チャネル領域の幅は、前記電界効果トランジスタに対するテラヘルツ波の印加に応答して生成される電荷密度分布の長さを超過する長さである、請求項12に記載の電界効果トランジスタ製造方法。
【請求項20】
前記ドレインの幅は、前記第1性能因子に基づいて決定され、
前記チャネル領域の幅は、前記第1性能因子とは独立的に前記第2性能因子のみによって決定されている、請求項12に記載の電界効果トランジスタ製造方法。
【請求項21】
前記ゲートを形成するステップは、前記シリコン基板に垂直な方向から見るとき、前記ゲートを前記ソースと一部オーバーラップされるように形成するステップを含む、請求項12に記載の電界効果トランジスタ製造方法。
【請求項22】
前記ゲートを形成するステップは、前記シリコン基板に垂直な方向から見るとき、前記ゲートを前記ドレインと一部オーバーラップされるように形成するステップを含む、請求項12に記載の電界効果トランジスタ製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
以下の開示は、独立的な性能因子を有するテラヘルツ波を検出するための一体型電界効果トランジスタ-アンテナ融合素子に関する。
【背景技術】
【0002】
テラヘルツ波(terahertz waves)のミリメートル(sub-millimeter)波長に比べて極めて小さい電界効果トランジスタのチャネル面積により、テラヘルツ波を受信するための入力端に相対的に大きいサイズのアンテナが求められる。このような場合、電界効果トランジスタとアンテナとのサイズの差による特性差が発生することから、電界効果トランジスタとアンテナの構造考案が求められている。
【0003】
電界効果トランジスタ基盤のテラヘルツ(THz)検出器の場合、電界効果トランジスタの3つの接続端子(ソース、ドレイン、ゲート)のうちゲートにおいて交流信号であるテラヘルツ波を受信する。また、電界効果トランジスタ基盤テラヘルツ検出器は、ソースとドレインとの間の下部半導体チャネル領域(channel region)に電荷の非対称を誘導し、非対称的な電荷分布によって出力端子であるドレインの直流電圧に基づいてテラヘルツ波の信号を検出することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、独立的な性能因子を有するテラヘルツ波を検出するための一体型電界効果トランジスタ-アンテナ融合素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態に係るゲートをアンテナとして活用するテラヘルツ波検出用電界効果トランジスタは、ソース及び前記ソースを取り囲む形態のチャネル領域の外側に形成されたドレインを含むシリコン基板と、前記シリコン基板の表面上に形成される誘電層の上段において、前記シリコン基板と離隔して前記チャネル領域に対応して形成されているゲートとを含み、前記ドレインは、前記電界効果トランジスタのテラヘルツ波の受信率に関する第1性能因子に基づいて決定された幅を有し、前記チャネル領域は、前記電界効果トランジスタによって受信されるテラヘルツ波の検出に関する第2性能因子に基づいて決定された幅を有する。
【0006】
前記シリコン基板に垂直な方向から見るとき、前記ソースは円形であり、前記チャネル領域はリング状であり、前記ドレインはリング状であってもよい。
前記ゲートは、前記シリコン基板に垂直な方向から見るとき、前記チャネル領域を取り囲むように形成されることができる。
【0007】
前記ソースの中心と前記チャネル領域の中心は互いに離隔してもよい。
前記チャネル領域の幅は、前記ソースから前記ドレインまでの最短距離と同じ長さであってもよい。
【0008】
前記ドレインの幅は、前記電界効果トランジスタのターゲットテラヘルツ波に対応するターゲット波長、前記ターゲット波長の1/2、及び前記ターゲット波長の1/4のうち1つに対応する長さであってもよい。
【0009】
前記チャネル領域の幅は、前記ソースの幅及び前記ゲートの幅に基づいて決定されることができる。
前記チャネル領域の幅は、前記電界効果トランジスタに対するテラヘルツ波の印加に応答して生成される電荷密度分布の長さを超過する長さであってもよい。
【0010】
前記ドレインの幅は、前記第1性能因子に基づいて決定され、前記チャネル領域の幅は、前記第1性能因子とは独立的に前記第2性能因子のみによって決定されることができる。
【0011】
前記ゲートは、前記シリコン基板に垂直な方向から見るとき、前記ソースと一部オーバーラップされることができる。
前記ゲートは、前記シリコン基板に垂直な方向から見るとき、前記ドレインと一部オーバーラップされることができる。
【0012】
ゲートをアンテナとして活用するテラヘルツ波検出用電界効果トランジスタの製造方法は、シリコン基板の一部をドーピングしてソースを形成し、前記ソースを取り囲む形態のチャネル領域の外側をドーピングしてドレインを、前記電界効果トランジスタのテラヘルツ波の受信率に関する第1性能因子に基づいて決定された幅で形成するステップと、前記シリコン基板の表面上に形成される誘電層の上段で、前記シリコン基板と離隔して前記チャネル領域に対応するゲートを形成するステップとを含み、前記チャネル領域は、前記電界効果トランジスタによって受信されるテラヘルツ波の検出に関する第2性能因子に基づいて決定されている幅を有する。
【0013】
前記シリコン基板に垂直な方向から見るとき、前記ソースは円形であり、前記チャネル領域はリング状であり、前記ドレインはリング状であってもよい。
前記ゲートを形成するステップは、前記シリコン基板に垂直な方向から見るとき、前記チャネル領域を取り囲むように前記ゲートを形成するステップを含むことができる。
【0014】
前記ドレインを形成するステップは、前記ソースの中心と前記チャネル領域の中心は互いに離隔するよう形成しているステップを含むことができる。
前記チャネル領域の幅は、前記ソースから前記ドレインまでの最短距離と同じ長さであってもよい。
【0015】
ドレインの幅は、前記電界効果トランジスタのターゲットテラヘルツ波に対応するターゲット波長、前記ターゲット波長の1/2、及び前記ターゲット波長の1/4のうち1つに対応する長さであってもよい。
【0016】
前記チャネル領域の幅は、前記ソースの幅及び前記ゲートの幅に基づいて決定されることができる。
前記チャネル領域の幅は、前記電界効果トランジスタに対するテラヘルツ波の印加に応答して生成される電荷密度分布の長さを超過する長さであってもよい。
【0017】
前記ドレインの幅は、前記第1性能因子に基づいて決定され、前記チャネル領域の幅は、前記第1性能因子とは独立的に前記第2性能因子のみによって決定されることができる。
【0018】
前記ゲートを形成するステップは、前記シリコン基板に垂直な方向から見るとき、前記ゲートを前記ソースと一部オーバーラップされるように形成するステップを含むことができる。
【0019】
前記ゲートを形成するステップは、前記シリコン基板に垂直な方向から見るとき、前記ゲートを前記ドレインと一部オーバーラップされるように形成するステップを含むことができる。
sの幅が第1性能因子に基づいて決定され、チャネル領域の幅は、第1性能因子とは独立的に第2性能因子のみによって決定されることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】一実施形態に係るメタルゲートをアンテナとして活用するテラヘルツ波検出用電界効果トランジスタの側面図である。
【
図2】一実施形態に係る電界効果トランジスタの側面図である。
【
図3】一実施形態に係る電界効果トランジスタの平面図である。
【
図4】一実施形態に係る電界効果トランジスタが入射されるテラヘルツ波を直流電圧で検出する過程を説明する。
【
図5】一実施形態に係る電界効果トランジスタを製造する方法に関して説明する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
実施形態に対する特定な構造的又は機能的な説明は単なる例示のための目的として開示されたものであって、様々な形態に変更されることができる。したがって、実施形態は特定な開示形態に限定されるものではなく、本明細書の範囲は技術的な思想に含まれる変更、均等物ないし代替物を含む。
【0022】
第1又は第2などの用語を複数の構成要素を説明するために用いることがあるが、このような用語は1つの構成要素を他の構成要素から区別する目的としてのみ解釈されなければならない。例えば、第1構成要素は第2構成要素と命名することができ、同様に、第2構成要素は第1構成要素にも命名することができる。
【0023】
いずれかの構成要素が他の構成要素に「連結」されているか「接続」されていると言及されたときには、その他の構成要素に直接的に連結されているか又は接続されているが、中間に他の構成要素が存在し得るものと理解されなければならない。
【0024】
単数の表現は、文脈上、明白に異なる意味をもたない限り複数の表現を含む。本明細書において、「含む」又は「有する」等の用語は、明細書上に記載した特徴、数字、ステップ、動作、構成要素、部品又はこれらを組み合わせたものが存在することを示すものであって、1つ又はそれ以上の他の特徴や数字、ステップ、動作、構成要素、部品、又はこれを組み合わせたものなどの存在又は付加の可能性を予め排除しないものとして理解しなければならない。
【0025】
異なるように定義さがれない限り、技術的又は科学的な用語を含んで、ここで用いる全ての用語は、本実施形態が属する技術分野で通常の知識を有する者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。一般的に用いられる予め定義された用語は、関連技術の文脈上で有する意味と一致する意味を有するものと解釈されなければならず、本明細書で明白に定義しない限り、理想的又は過度に形式的な意味として解釈されることはない。
【0026】
また、図面を参照して説明する際に、図面符号に拘わらず同じ構成要素は同じ参照符号を付与し、これに対する重複する説明は省略する。実施形態の説明において関連する公知技術に対する具体的な説明が本発明の要旨を不要に曖昧にすると判断される場合、その詳細な説明は省略する。
【0027】
電界効果トランジスタ基盤のテラヘルツ波検出器は、チャネル内の比較的に低い電子の移動度に応じて非共振モードとして動作する。このような動作原理は、ソースとドレインの電圧差を通したテラヘルツ波の検出のために、ソースとドレインの非対称環境を必要とする。
【0028】
従来における方法として、付加的な回路レベルのデザインを用いた非対称環境でソースとドレインとの間の電位差による出力電圧を用いてテラヘルツ波を検出した。しかし、従来における方法は、付加構成の要素によるテラヘルツ波検出器システム全体の総ノイズ増加を引き起こす。従来における方法は、テラヘルツ波検出器の性能指標であるRvとNEPの向上のためには適していない。下記の数式(1)及び(2)において、テラヘルツ波検出器の性能指標RvとNEPを示す。
【0029】
Rv=ドレインの出力電圧/吸収されるテラヘルツ波の電力 (1)
NEP=テラヘルツ波検出器の全体ノイズ/Rv (2)
即ち、NEPを低くするためにRvを高めるための方法を使用されながらも、検出器全体のノイズは保持又は減少させなければならない。テラヘルツ波の感度増加のためには、テラヘルツ波を効率よく吸収するためのアンテナ構造と共に、ゲート電界効果によりチャネルの電荷を2次元の形態に集めなければならないが、このような特性のためには、テラヘルツ波を検出するためのソースとドレインの非対称環境が必要である。従来において、ソースとドレインの非対称環境のために電界効果トランジスタ内の構造的な非対称が考案されていたが、高い反応度のために集積されるアンテナの動作効率のための電界効果トランジスタとのマッチングが問題になった。
【0030】
従来におけるテラヘルツ波検出器は、アンテナ、電界効果トランジスタ、及び増幅器が結合され、電界効果トランジスタがマイクロメーター以下のサイズで製作されることから、テラヘルツ波の波長に比べて極めて小さい電界効果トランジスタのチャンネル面積により、相対的に大きなサイズのアンテナが必要であった。結局、従来において、大きなサイズのアンテナによる低いインピーダンスのアンテナと、小さなサイズの電界効果トランジスタによる高いインピーダンスの電界効果トランジスタとの間のインピーダンスの不整合により、テラヘルツ波の電力伝達損失が必然的に発生した。これによって、出力電圧がマイクロボルト(μV)又はミリボルト(mV)のレベルで極めて小さく発生することから、微小出力電圧を増幅するための数十dBの大きな利得を有する増幅器回路をテラヘルツ波検出器が必ず含まれることで、検出器システム全体のノイズが増加するという問題が発生した。
【0031】
しかし、一実施形態に係るゲートをアンテナとして活用するテラヘルツ波検出用電界効果トランジスタは、テラヘルツ波を直流出力電圧に変換する電界効果トランジスタとテラヘルツ波を受信するアンテナを一体に融合した構造を有する。一実施形態に係る電界効果トランジスタは、出力電圧を最大化するためのソースとドレインの非対称構造と、ターゲットテラヘルツ波の波長に適切なアンテナ構造を同時に有することができる。ここで、ターゲットテラヘルツ波とは、電界効果トランジスタが検出しようとする波長帯の範囲のテラヘルツ波を示す。一実施形態に係る電界効果トランジスタにおいて、ドレインの幅に応じてテラヘルツ波の受信率に関する第1性能因子が変更され、チャネル領域の幅に応じてテラヘルツ波の検出に関する第2性能因子が変更される。これによって、一実施形態に係る電界効果トランジスタでは、第1性能因子に基づいて決定された幅を有するドレインでターゲットテラヘルツ波に対する受信率を高めることができる。また、電界効果トランジスタでは、第1性能因子とは独立的に第2性能因子に基づいて決定された幅を有するチャネル領域により、テラヘルツ波を検出するための出力電圧を最大化することができる。以下は、一実施形態に係るゲートをアンテナとして活用するテラヘルツ波検出用電界効果トランジスタについて詳細に説明する。
【0032】
図1は、一実施形態に係るメタルゲートをアンテナとして活用するテラヘルツ波検出用電界効果トランジスタの側面図である。
一実施形態に係るゲートをアンテナとして活用するテラヘルツ波検出用電界効果トランジスタ100(以下、「電界効果トランジスタ」)は、シリコン基板110に形成されているソース120、チャネル領域130、ドレイン140、及びシリコン基板110と離隔して形成されるゲート150を含む。参考として、チャネル領域130は、ドレインとソースとの間に電荷が移動する通路であるチャネルが形成される領域を示す。
【0033】
より具体的に、一実施形態に係る電界効果トランジスタ100は、シリコン基板110の一部がドーピングされて生成されたソース120を含む。電界効果トランジスタ100をシリコン基板110に垂直な方向から見るとき、ソース120は円形であってもよい。
【0034】
電界効果トランジスタ100は、ソース120を取り囲む形態のチャネル領域130を含む。電界効果トランジスタ100をシリコン基板110に垂直な方向から見るとき、チャネル領域130は、リング状(ring form)であってもよい。チャネル領域は、電界効果トランジスタ100が受信したテラヘルツ波の検出に関する第2性能因子に基づいて決定された幅を有してもよい。
【0035】
電界効果トランジスタ100は、チャネル領域130の外側がドーピングされて生成されたドレイン140を含む。電界効果トランジスタ100をシリコン基板110に垂直な方向から見るとき、ドレイン140はリング状であってもよい。ドレイン140は、電界効果トランジスタ100のテラヘルツ波の受信率に関する第1性能因子に基づいて決定された幅を有してもよい。
【0036】
電界効果トランジスタ100は、ソース120、チャネル領域130、及びドレイン140の上段に形成された誘電層(図示せず)を含んでもよい。
電界効果トランジスタ100は、シリコン基板110の表面上に形成されている誘電層の上段で、シリコン基板110と離隔しチャネル領域130に対応して配置されているゲート150を含む。ゲート150は、シリコン基板110に垂直な方向から見るとき、チャネル領域130を取り囲むよう形成されてもよい。さらに、シリコン基板110に垂直な方向から見るとき、ゲート150は、ソース120と一部オーバーラップされるように形成されてもよく、ドレイン140の一部とオーバーラップされるように形成されてもよい。
【0037】
一実施形態に係る電界効果トランジスタ100は、テラヘルツ電磁波160をゲート150を介して受信する。電界効果トランジスタ100のソース120とドレイン140との間で発生する電流及び電圧でテラヘルツ電磁波160の信号を検出することができる。テラヘルツ電磁波信号は、0.1テラヘルツ(THz)~10テラヘルツの間の周波数を有する電磁波信号として、テラヘルツ波とも示すことができる。
【0038】
図2は、一実施形態に係る電界効果トランジスタの側面図である。
電界効果トランジスタ200は、シリコン基板210、シリコン基板210でドーピングにより形成されるソース220、ソースを取り囲む形態のチャネル領域230、チャネル領域230の外側でドーピングにより形成されるドレイン240、シリコン基板210の表面上に形成される誘電層260、誘電層260の上段でチャネル領域230に対応して形成されるゲート250を含む。
【0039】
図3は、一実施形態に係る電界効果トランジスタの平面図である。
図3は、
図1に示された電界効果トランジスタ100をシリコン基板に垂直な方向から見た平面図である。
図1を参照すると、電界効果トランジスタ300は、ソース320とソース320を取り囲むチャネル領域330、及びチャネル領域330の外側に形成されているドレイン340を含んで構成されている。電界効果トランジスタ300は、シリコン基板に垂直な方向から見るとき、チャネル領域330を取り囲むよう形成されたゲート(図示せず)をさらに含んで構成してもよい。
【0040】
シリコン基板に垂直な方向から見るとき、ソース320は円形であってもよく、チャネル領域330、ゲート(図示せず)、ドレイン340は環状であってもよい。シリコン基板に垂直な方向から見るとき、チャネル領域330及びゲートの周縁は円形であってもよく、ドレイン340の周縁も円形であってもよい。
【0041】
一実施形態に係る電界効果トランジスタ300において、ソース320の中心321とチャネル領域330の中心は偏心(eccentric)になり得る。言い換えれば、シリコン基板に垂直な方向から見るとき、電界効果トランジスタ300でソース320の中心321とチャネル領域330の中心331は互いに離隔してもよい。電界効果トランジスタ300は、ソース320の中心321とチャネル領域330の中心331が互いに離隔することで、ソースとドレインの非対称性が最大化される。ここで、チャネル領域330の中心331とは、チャネル領域330の周縁に対応する円の中心を示す。
【0042】
図3を参照すると、一実施形態に係る電界効果トランジスタ300において、ソース320の幅d
sはソース320の周縁に対応する円の直径d
sを示す。同様に、ゲートの幅はゲートの周縁に対応する円の直径であるd
gを示す。ドレイン340の幅は、ドレインの周縁に対応する円の直径であるd
dを示す。電界効果トランジスタ300において、チャネル領域330の幅はソース320からドレイン340までの最短距離と同じ長さL
gを示す。例えば、ソース320からドレイン340までの最長距離をLとすれば、d
gはd
s、L
g、Lを合わせた値と同一である。
【0043】
一実施形態に係る電界効果トランジスタ300は、ゲートをアンテナとして活用してテラヘルツ波を受信するため、別途のアンテナ構造がなくても電界効果トランジスタの自主的にアンテナの効果を期待することができる。また、一実施形態に係る電界効果トランジスタ300は、ソース320とドレイン340の非対称構造を用いて、ソース320とドレイン340との間の電位差による出力電圧に基づいて受信されたテラヘルツ波を検出することができる。一実施形態に係る電界効果トランジスタ300のドレイン340は、電界効果トランジスタ300のテラヘルツ波の受信率に関する第1性能因子に基づいて決定された幅を有し、チャネル領域330は、電界効果トランジスタ300によって受信されるテラヘルツ波の検出に関する第2性能因子に基づいて決定された幅をそれぞれ有することができる。
【0044】
先ず、第1性能因子は、電界効果トランジスタ300のテラヘルツ波の受信率に関するアンテナ性能因子である。一実施形態に係る電界効果トランジスタ300のドレイン340の幅は、第1性能因子によって決定されてもよい。電界効果トランジスタ300が検出しようとするターゲットテラヘルツ波に対する受信率は、第1性能因子と関連しており、第1性能因子が高いほど電界効果トランジスタ300が検出をターゲットにするテラヘルツ波に対する受信率が高い。一実施形態によれば、ドレイン340の幅ddは、電界効果トランジスタのターゲットテラヘルツ波に対応するターゲット波長(target wavelength)、ターゲット波長の1/2、及びターゲット波長の1/4のうち1つに対応する長さであってもよい。テラヘルツ波は0.1THz~10THzの周波数範囲の電磁波を示し、これは3mm~30μmの波長帯の範囲を示す。一実施形態に係る電界効果トランジスタ300は、ドレイン340の幅によりターゲットテラヘルツ波の受信率が変わり、ターゲットテラヘルツ波に対応するターゲット波長がドレイン340の幅長と整数倍の関係(例えば、1倍、2倍、4倍など)にある場合は、ターゲットテラヘルツ波に対する受信率が高い。さらに、一実施形態に係る電界効果トランジスタ300において、ドレイン340の幅はテラヘルツ波の受信率に関する第1性能因子に基づいて決定され、チャネル領域の幅Lgは、テラヘルツ波の受信率とは独立的である。
【0045】
これは、テラヘルツ波の比較的に大きい波長でよりゲートとソースはアンテナ性能に微々たる影響を有し、テラヘルツ波が印加されれば、ゲート、ソース、及びドレインが1つに一体化された構造として動作することから、アンテナの性能因子である第1性能因子によりドレインの幅が決定され、チャネル領域の幅は、アンテナの性能に及ぼす影響がほとんどない。
【0046】
第2性能因子は、電界効果トランジスタ300によって受信されるテラヘルツ波の検出に関する電界効果トランジスタ300自体の性能因子である。一実施形態に係る電界効果トランジスタ300のチャネル領域330の幅Lgは、第2性能因子によって決定されてもよい。第2性能因子が高いほど、ターゲットテラヘルツ波に対する検出敏感度が高い。一実施形態に係る電界効果トランジスタ300において、チャネル領域の幅Lgは、ソースの幅ds及びゲートの幅dgに基づいて決定されてもよい。例えば、電界効果トランジスタ300において、ソース320の中心321とチャネル領域330の中心331との間の距離及びゲートの幅dgが予め決定されている状態において、ソースの幅dsが減少するほどチャネル領域の幅Lgは増加する。異なる例として、ソース320の中心321とチャネル領域330の中心331との間の距離及びソースの幅dsが予め決定されている状態において、ゲートの幅dgが増加するほどチャネル領域の幅Lgは増加する。言い換えれば、一実施形態に係る電界効果トランジスタ300においては、テラヘルツ波の検出に関する電界効果トランジスタ300自体の性能因子である第2性能因子によりチャネル領域の幅Lgが決定され、チャネル領域の幅Lgは、ソースの幅ds及びゲートの幅dgに基づいて決定されることができる。一実施形態に係る電界効果トランジスタ300において、チャネル領域330の幅は、テラヘルツ波の検出に関する第2性能因子に基づいて決定され、ドレイン340の幅ddは、テラヘルツ波を検出するための出力電圧とは独立的である。以下では、一実施形態に係る電界効果トランジスタが受信されたテラヘルツ波を直流電圧で検出する過程をより詳細に説明する。
【0047】
図4は、一実施形態に係る電界効果トランジスタ400が入射されるテラヘルツ波を直流電圧で検出する過程を説明する。
一実施形態に係る電界効果トランジスタ400は、シリコン基板410、ソース420、チャネル領域430、ドレイン440、ゲート450を含み、テラヘルツ波460がゲート450に印加されてもよい。
【0048】
電界効果トランジスタ400に入射される交流信号であるテラヘルツ波460を直流電圧で検出するために、電界効果トランジスタ400のチャネル領域430内に2次元形態の電荷非対称が必要である。テラヘルツ波460が入射されるゲート450から見たソース420とドレイン440の非対称条件のために、ソース420とドレイン440との間の構造的な非対称条件が求められる。一実施形態に係る電界効果トランジスタ400において、チャネル領域430の幅Lgを介してソース420とドレイン440との間の非対称効果を最大化することができる。
【0049】
図3を再度参照すると、電界効果トランジスタ300において、シリコン基板に垂直な方向から見るとき、ソース320の仮想の中心321とチャネル領域330の仮想の中心331が互いに離隔し、ソース320とドレイン340との間の構造的な非対称条件が満足される。電界効果トランジスタ300において、Lの値とL
gの値が互いに異なってもよい。即ち、電界効果トランジスタ300は、ソース320からドレイン340に向かう電荷の到達距離がL
gからLまで変わる非対称性の構造を有し、このような非対称性により電界効果トランジスタ300のゲートとソース320との間の電界が強化される。言い換えれば、電界効果トランジスタ300は、ソース320の仮想の中心321とチャネル領域330の仮想の中心が偏心されるソース320及びドレイン340の非対称性の構造を通じて、テラヘルツ波を直流電圧で検出することができる。
【0050】
より具体的に、
図4を再度参照すると、テラヘルツ波460が電界効果トランジスタ400に印加される場合、電荷がチャネル領域430に発生し、ソース420と隣接している部分に電荷が重点的に分布される。ここで、ソース420と隣接している部分にテラヘルツ波460により電荷が重点的に分布し、ドレイン440に隣接している部分では電荷が相対的に少なく分布しているため、ソース420とドレイン440との間の電荷非対称が発生する。このような電荷非対称を通じて電界効果トランジスタ400は、ソース420とドレイン440との間の電圧差によるテラヘルツ波460の検出が可能になる。ここで、電界効果トランジスタ400において、電荷非対称を実現するためには、チャネル領域430の幅が、電荷の分布している領域に対応する電荷密度分布の長さ431を超過しなければならない。言い換えれば、チャネル領域430の幅は、電界効果トランジスタ400に対するテラヘルツ波460の印加に応答して生成される電荷密度分布の長さ431を超過する長さである。チャネル領域の幅L
gが電荷密度分布の長さ431を超過することは、電界効果トランジスタ400がソース420とドレイン440との間の電位差によりテラヘルツ波460を検出するための境界条件である。しかし、チャネル領域の幅が大きくなるほど、電界効果トランジスタ400のチャネル領域の抵抗が増加することから、チャネル領域は適切な幅を有しなければならない。
【0051】
まとめると、電界効果トランジスタ400において、ドレインの幅は、電界効果トランジスタ400のテラヘルツ波460の受信率に関する第1性能因子に基づいて決定され、チャネル領域430の幅は、第1性能因子とは独立的に、電界効果トランジスタ400によって受信されるテラヘルツ波460の検出に関する第2性能因子のみによって決定されることができる。
【0052】
一実施形態に係る電界効果トランジスタは、信号受信部及び増幅器などの追加的な性能改善のための周辺回路部品との集積が可能であり、リアルタイム/大面積のための多重ピクセル構成においても簡単なトランジスタ-アンテナの一体型構造を提供することで、低コスト及び商用級性能のテラヘルツイメージングシステムを可能にする。
【0053】
図5は、一実施形態に係る電界効果トランジスタを製造する方法に関して説明する。
ステップS510において、一実施形態に係るゲートをアンテナとして活用するテラヘルツ波検出用電界効果トランジスタの製造方法(以下、「電界効果トランジスタの製造方法」)は、シリコン基板の一部をドーピングしてソースを形成する。
【0054】
ステップS520において、電界効果トランジスタの製造方法は、ソースを取り囲む形態のチャネル領域の外側をドーピングしてドレインを、電界効果トランジスタのテラヘルツ波の受信率に関する第1性能因子に基づいて決定された幅に形成する。ここで、チャネル領域は、電界効果トランジスタによって受信されるテラヘルツ波の検出に関する第2性能因子に基づいて決定された幅を有してもよい。ここで、ソースの中心とチャネル領域の中心が互いに離隔するようドレインを形成してもよい。ここで、ドレインの幅は第1性能因子に基づいて決定され、チャネル領域の幅は第1性能因子とは独立的に、第2性能因子のみによって決定されてもよい。
【0055】
ステップS530において、電界効果トランジスタの製造方法は、シリコン基板の表面上に形成される誘電層の上段において、シリコン基板と離隔してチャネル領域に対応するゲートを形成する。シリコン基板に垂直な方向から見るとき、チャネル領域を取り囲むようにゲートを形成してもよい。また、シリコン基板に垂直な方向から見るとき、ゲートをソース及びドレインと一部オーバーラップされるように形成してもよい。
【0056】
さらに、一実施形態に係る電界効果トランジスタの製造方法は、ドレインの幅が電界効果トランジスタのターゲットテラヘルツ波に対応するターゲット波長、ターゲット波長の1/2、及びターゲット波長の1/4のうち1つに対応する長さになるようドレインをドーピングしてもよい。一実施形態に係る他の電界効果トランジスタの製造方法は、チャネル領域の幅が電界効果トランジスタに対するテラヘルツ波の印加に応答して生成される電荷密度分布の長さを超過する長さになるようドレインをドーピングすることができる。