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特許7244147土壌改質材及びその製造方法、並びにそれを用いた土壌の改良方法
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  • 特許-土壌改質材及びその製造方法、並びにそれを用いた土壌の改良方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】土壌改質材及びその製造方法、並びにそれを用いた土壌の改良方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 17/32 20060101AFI20230314BHJP
   A01G 24/22 20180101ALI20230314BHJP
   A01G 24/42 20180101ALI20230314BHJP
【FI】
C09K17/32 H ZAB
C09K17/32 ZBP
A01G24/22
A01G24/42
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2022130172
(22)【出願日】2022-08-17
(62)【分割の表示】P 2022077519の分割
【原出願日】2022-05-10
【審査請求日】2022-11-15
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000001.000083355.html [刊行物等] https://www.kenja.tv/president/detjx4zb.html [刊行物等] https://hedge.guide/news/cresava-fundinno-252.html [刊行物等] https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000083355.html [刊行物等] https://japan-indepth.jp/?p=62887 [刊行物等] https://www.sankei.com/article/20211204-ZTMBGOHYXZM35L3I7CJSAQ62VQ/ [刊行物等] https://weekly-economist.mainichi.jp/articles/20211221/se1/00m/020/065000c [刊行物等] https://forbesjapan.com/articles/detail/45473 [刊行物等] https://dime.jp/genre/1371292/ [刊行物等] https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000003.000083355.html [刊行物等] https://japan.cnet.com/article/35179150/ [刊行物等] https://www.youtube.com/watch?v=GkSZgq2pF9g [刊行物等] https://www.youtube.com/watch?v=9udIU5tNCzk [刊行物等] https://www3.nhk.or.jp/nhkworld/en/ondemand/video/2074129/ [刊行物等] https://www.youtube.com/watch?v=EQAn-TZHSCY [刊行物等] https://www.youtube.com/watch?v=Xo-JrD2KHG0
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520201905
【氏名又は名称】クレサヴァ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170874
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 和哉
(74)【代理人】
【識別番号】100160543
【弁理士】
【氏名又は名称】河野上 正晴
(72)【発明者】
【氏名】園部 皓志
【審査官】長部 喜幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-146727(JP,A)
【文献】特開2002-300813(JP,A)
【文献】特開2022-038386(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0043133(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 17/32
A01G 24/22
A01G 24/42
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生分解性製品を破砕する工程、及び前記破砕した生分解性製品をペレタイザーによってペレット化する工程を含み、前記生分解性製品が、親水性の生分解性繊維を80質量%以上で含む、土壌改質材の製造方法。
【請求項2】
前記生分解性製品が、衣服である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記生分解性製品を酵素と混合する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記生分解性製品を糞尿と混合して前記糞尿を堆肥化する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法によって生産された土壌改質材を用いて改良された土壌で生産することを含む、農作物の生産方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法によって製造された土壌改質材を、土壌に配置又は混合する工程を含む、土壌の改良方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土壌改質材及びその製造方法、並びにそれを用いた土壌の改良方法に関する。
【背景技術】
【0002】
持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals : SDGs)の1つとして、「つくる責任つかう責任(Responsible Consumption and Production)」が掲げられており、大量消費社会のあり方が見直されている。
【0003】
それに対して、例えばファッション業界では、トレンドを先読みし、売れるとわかったものしか作らないマーチャンダイズプランを掲げており、これにより、ひたすらサンプルを作り続け、トレンドが過ぎたものは棄てるといった、大量生産・大量消費・大量廃棄が発生している。
【0004】
実際に、日本における衣服の廃棄量は年間100万トンを超えるとされており、世界で見ると年間1億トンに近い衣服が廃棄されている。その約7割は生産する企業側が生み出しており、トレンドに応じた売れる衣服を大量生産するために作られる多くのサンプル及び過剰な在庫品が廃棄されている。製造された衣服は、大量に消費者の元へ届き、消費されるものの、不要となる衣服は大量に生まれ、結果として廃棄物となっている。
【0005】
このような状況の下、様々な製品のリサイクル技術が開発されている。例えば、特許文献1は、有機廃棄物を成型、焼成等を行って土壌改良材として利用する技術を開示している。繊維のリサイクル技術を開示している。
【0006】
特許文献2は、いわゆる紙コップをパルプ土壌として再利用する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2002-248442号公報
【文献】特開2016-93772号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、循環型社会を構成することができる、新規な土壌改質材及びその製造方法、並びにそれを用いた土壌の改良方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、以下の態様を有する本発明により、上記課題を解決できることを見出した。
《態様1》
生分解性製品を破砕する工程、前記破砕した生分解性製品をペレット化する工程を含み、前記生分解性製品が、親水性の生分解性工業製品である、土壌改質材の製造方法。
《態様2》
前記生分解性製品が、衣服である、態様1に記載の方法。
《態様3》
前記衣服が、生分解性繊維を80質量%以上で含む、態様2に記載の方法。
《態様4》
前記生分解性繊維が、和紙である、態様3に記載の方法。
《態様5》
前記生分解性製品を酵素と混合する工程をさらに含む、態様1~4のいずれか一項に記載の方法。
《態様6》
前記生分解性製品を糞尿と混合して前記糞尿を堆肥化する工程をさらに含む、態様1~5のいずれか一項に記載の方法。
《態様7》
態様1~6のいずれか一項に記載の方法によって改良された土壌で生産することを含む、農作物の生産方法。
《態様8》
態様1~6のいずれか一項に記載の方法によって製造された土壌改質材を、土壌に配置又は混合する工程を含む、土壌の改良方法。
《態様9》
親水性の生分解性繊維を80質量%以上含む、ペレット状の土壌改質材又は人工土壌。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、工業製品を土壌改質材に転換することができ、この土壌改質材で土壌の改質をして野菜等を生産することができる。これにより、循環型社会を構成することができるため本発明の方法は、非常に有益である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施例において製造された土壌改質材の実際の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
《土壌改質材の製造方法》
本発明の土壌改質材の製造方法は、生分解性製品を破砕する工程、前記破砕した生分解性製品をペレット化する工程を含む。ここで、生分解性製品とは、親水性の生分解性工業製品である。
【0013】
このようにして製造された土壌改質材を土壌に配置又は混合すると、一定期間後に分解されて土壌に還る。したがって、本発明の方法によって用いられる工業製品は、大量に生産されたとしても、土壌で分解されるため廃棄物とはならない。ここで、本発明で用いられる工業製品は親水性で水を含むことができるため、土壌に配置又は混合された場合には、土壌の含水率を向上及び又は維持することができ、野菜の生産をするために有効に利用することができる。また、本発明の方法によって得られた土壌改質材は、ペレット化されていることで、トラクターによって大量に農地に散布することができる。本発明者らの検討によれば、1反(約1000m)の農地当たり、1~2ヶ月で、1トンもの生分解性製品を分解させることができた。
【0014】
〈生分解性製品〉
本発明で用いられる生分解性製品は、親水性の生分解性工業製品である。親水性の生分解性工業製品とは、親水性の生分解性材料のみで実質的に構成された工業製品をいうが、野菜等の農作物の生育に悪影響を与えないのであれば、その一部が親水性である必要はなく、また生分解性材料でなくてもよい。
【0015】
例えば、生分解性製品は、生分解性材料のみから構成されていることが好ましいが、その大部分が生分解性材料で構成されていればよい。例えば、生分解性製品は、上記のような生分解性材料を80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、95質量%以上、98質量%以上、又は99質量%以上含むことが好ましい。生分解性製品のうち、生分解性材料ではない部分については、農作物を栽培する土壌に悪影響を与えない材料であることが好ましい。
【0016】
工業製品としては、親水性の生分解性の材料で工業的に製造されうる全ての製品であってよく、例えば、衣服、食器、容器、家具、建材、玩具、本等を挙げることができる。
【0017】
生分解性材料としては、自然環境下で土壌の微生物によって分解される材料であれば特に限定されない。例えば、生分解性材料としては、合成系生分解性ポリマー及び天然系生分解性ポリマーの両方を挙げることができる。
【0018】
本明細書において、親水性とは、その製品が水を蓄えることができる性質をいい、材質自体が吸水性である場合だけではなく、材質が撥水性であってもその材質が多孔質で水を保持できる場合を含む。例えば、親水性とは、土壌に混合された際に、その製品が混合されていない状態の土壌と比較して、土壌の含水率を少しでも長く維持できる性質であってもよい。ただし、生分解性製品は、撥水性ではなく、吸水性であることが好ましい。
【0019】
工業製品としては、親水性の生分解性の材料で工業的に製造されうる全ての製品であってよく、例えば、衣服、食器、容器、家具、建材、玩具、本等を挙げることができる。
【0020】
特に、本発明の方法で用いられる生分解性製品は、衣服である。流行のファッション性を考慮する消費者は、流行に応じて新しい衣服を購入して、流行が過ぎた衣服を処分することが一般的である。しかしながら、このような消費者が、環境面を考慮して、流行遅れの衣服を着用し続けることもファッション業界の意図と反してしまう。それに対して、本発明の方法は、消費者が短期間に新しい衣服を購入し続けても、地球環境保護をすることができ、短期間で新しい衣服を購入してもらえるファッション業界としても有益となる。
【0021】
生分解性材料としては、自然環境下で土壌の微生物によって分解される材料であれば特に限定されない。例えば、生分解性材料としては、合成系生分解性ポリマー及び天然系生分解性ポリマーの両方を挙げることができる。
【0022】
合成系生分解性ポリマーとしては、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリブチレンサクシネート、ポリエチレンサクシネート、ポリビニルアルコール、ポリグリコール酸、ポリ(カプロラクトン/ブチレンサクシネート)、ポリ(ブチレンサクシネート/アジペート)、ポリ(エチレンテレフタレート/サクシネート)、ポリ(テトラメチレンアジペート/テレフタレート)等を挙げることができる。
【0023】
天然系生分解性ポリマーとしては、セルロース系材料、澱粉系材料等の炭水化物系化合物、ポリペプチド、タンパク質等のアミノ酸系化合物を挙げることができる。
【0024】
生分解性材料としては、特に天然繊維を挙げることができ、例えば綿、麻、絹、ウール、又はこれらに由来する材料を挙げることができる。本発明者は、これらの中でも特に綿及び麻、特に和紙として用いられる繊維が特に土壌における生分解性に優れており、かつ非常に吸水性が高いため、特に好適に用いられることを見出した。
【0025】
ここで、和紙とは、こうぞ、みつまた、麻類、針葉樹、笹等の和紙に適した原料植物から得られる繊維からなる和紙原料を漉いて作られる紙をいう。特に、生分解性製品が衣服である場合、近年、マニラ麻を原料とした和紙が衣服用として知られており、この生分解性及び吸水性は非常に高いため好適である。
【0026】
〈破砕工程〉
本発明の方法において、生分解性製品を破砕する工程は、生分解性製品を土壌に配置又は混合しやすいような大きさにする工程である。破砕工程は、単に切断するだけであってもよく、又は粒状に粉砕する工程であってもよい。好ましくは、破砕工程は、小さく切断した後に、粒状に粉砕する工程である。
【0027】
破砕に使用する機械は、破砕する製品に応じて変更することができる。例えば、破砕工程は、シュレッダー、ロータリーカッター、又はスリッターカッター等の裁断機を使用することができ、またカッターミル、ハンマーミル、ピンミル等の衝撃式粉砕機を使用することができる。また、破砕工程は、一軸式又は二軸式のせん断式粉砕機を用いることができる。また、破砕工程は、一次的な粗破砕工程を上記のように行った後に、二次的な微破砕工程を行うことができる。
【0028】
特に、破砕する生分解性製品が比較的硬質である場合には、破砕機として、媒体式粉砕機を用いてもよい。媒体式粉砕機には容器駆動式粉砕機と媒体攪拌式粉砕機とがある。容器駆動式粉砕機としては、転動ミル、振動ミル、遊星ミル、遠心流動ミル等を挙げることができ、媒体攪拌式粉砕機としては、タワーミル等の塔型粉砕機;アトライター、アクアマイザー、サンドグラインダー等の攪拌槽型粉砕機;ビスコミル、パールミル等の流通槽型粉砕機;流通管型粉砕機;コボールミル等のアニュラー型粉砕機;連続式のダイナミック型粉砕機等を挙げることができる。
【0029】
破砕工程は、後に破砕した生分解性製品をペレット化する場合、そのまま土壌に配置又は混合する場合の作業性等に応じて、適宜、最終的に得られる粒径を選択することができる。例えば、一次的な破砕工程によって、20mm~300mm程度の大きさに破砕した後に、二次的な破砕工程によって2~20mm程度の大きさにしてもよい。
【0030】
〈ペレット化工程〉
本発明の方法において、破砕した生分解性製品をペレット化する工程を含むことができる。破砕した生分解性製品をペレット化することによって、土壌に配置又は混合する工程を非常に効率的かつ機械的に大規模に行うことができる。また、ペレット化された生分解性製品は、均一な量で、かつ大量に、土壌に配置又は混合させることができるため、土壌の水分保持をするために、ペレット化工程を行うことは非常に有効である。
【0031】
ペレット化は、破砕した生分解性製品を溶融混練した後にペレット化することができる。また、ペレタイザーは、破砕工程で用いられる破砕機と一体型となっていてもよい。
【0032】
溶融混練装置としては、単軸押出機、二軸押出機、ニーダー、バンバリーミキサーなどが挙げられる。また、生分解性製品が水分等の揮発成分を含む場合には、溶融混練装置に脱揮装置を取り付けることが好ましい。
【0033】
溶融混練時の温度は、生分解性製品の溶融温度に応じて適宜設定され、例えば、90~300℃の範囲内でとすることができる。
【0034】
生分解性製品は、各種のペレタイザーにて直径1mm~30mm又は5mm~20mmの粒状のペレットに裁断される。ペレタイザーとしては特に限定されず、公知の方法が適用できる。具体的には混練装置のダイスから直接水中に押出してカットするアンダーウォーターペレタイザー、ダイスから棒状のストランドとして押出し、互着しない温度まで水冷または空冷で冷却した後に回転刃でカットするストランドペレタイザー、ダイスから空気中に押出しすぐカットするホットカットペレタイザー等のペレタイザーをいずれも好適に用いることができる。ペレタイザーの形式によりペレットは円柱状、レンズ状、球状など各種の形状を取るが、いずれも好適に用いることができる。
【0035】
ペレット化をする際に又はペレット化した後に、生分解性製品に結着剤を添加してもよい。生分解性製品の種類によっては、加熱してペレット化してもペレットの形成が難しい場合があり又は散布の際にペレットの形が崩れ、機械による大量の散布が難しくなる場合があるが、結着剤を用いることによってこのような課題を解決することができる。結着剤としては、生分解性又は揮発性であることが好ましく、例えば水、植物性油脂又は動物性油脂等の油脂、ゼラチン等であってもよい。
【0036】
〈酵素混合工程〉
本発明の方法は、生分解性製品に酵素を含有させる工程を含むことができる。これにより、土壌に配置又は混合される生分解性製品は、農作物の生育に非常に高い効果を提供できることができ、かつ生分解性製品の分解性も高くなるため、生分解性製品を短期間に土壌で消費できることがわかった。また、このような酵素は、土壌微生物の働きを活性化させ、有用菌を増やし、有害菌の繁殖を抑えて土壌微生物のバランスを保ち、それにより有害ガスの発生を防ぎ、土壌に活力を与えることができる。
【0037】
酵素混合工程は、典型的には、生分解性製品を酵素含有液、特に酵素含有水溶液に浸漬することによって行うことができる。
【0038】
酵素混合工程は、配置又は混合工程の前であれば、どの段階で行ってもよいが、例えば破砕工程の前に、生分解性製品をそのまま酵素含有液に浸漬させてもよく、又は破砕工程の後に、破砕された生分解性製品を酵素含有液に浸漬させてもよい。
【0039】
破砕工程の前に生分解性製品を酵素含有液に浸漬する場合、生分解製品を液に濡らした状態で破砕することができ、破砕時の熱で生分解性製品を乾燥させることができる。例えば、衣服を酵素含有液に浸漬して裁断機等で一次的に粗粉砕した後、カッターミル等で二次的に微粉砕する場合、一次的破砕時には、液が60質量%程度喪失しており、二次破砕時には、液が80質量%以上喪失させることができる。これにより、乾燥工程を実質的に省略させることができる。一方で、必要に応じて、乾燥工程を行って、酵素含有水溶液の水分を乾燥させてもよい。
【0040】
用いられる酵素としては、農作物を生育するのに適した酵素であれば特に限定されないが、農業用酵素であることが好ましい。農業用酵素は、農薬、除草剤、化学肥料等で処理された土壌を無害化することで、農作物の収穫量と品質を向上できると考えられている。
【0041】
農業用酵素の製造に使用される微生物は、砂糖、デンプン、大豆、トウモロコシなどの栄養分を含む密閉されたタンク中で成長させることができ、バイオベースの薬品であることから、化学肥料よりも安全性が高いと考えられているため、本発明の方法とも親和性が高いといえる。
【0042】
用いられる酵素としては、酵素としては、ホスファターゼ、デヒドロゲナーゼ、スルファターゼ、プロテアーゼ等を挙げることができるが、竹から抽出された液、あるいは各種の農作物に発酵作用を加えて得られたもの、たとえば万田酵素(商標)、大石酵素(商標)等であってもよい。これらの酵素は市販されており、当業者は、適宜、用途に応じて酵素を選択することができる。
【0043】
同様にして、酵素に加えて又は酵素に替えて、農作物生育用の液体肥料を生分解性製品に混合してもよい。液体肥料は、栄養成分を含む水溶液であり、農作物に栄養成分を供給する役割を果たす。液体肥料は、かかる役割を果たす限り特に限定する必要はなく、種々の栄養成分を含んだ液肥を用いることができる。このような栄養素として、例えば、窒素、カリウム、リンなどが挙げられる。
【0044】
〈堆肥化する工程〉
本発明の方法は、破砕した生分解性製品、特に破砕してペレット化した生分解性製品を糞尿と混合して糞尿を堆肥化する工程をさらに含むことができる。本発明で用いられる生分解性製品は、親水性であるため糞尿とよく馴染ませることができ、その後、糞尿が堆肥となって得られた生分解性製品は、土壌の水分を好適に保持することができる有機肥料として用いることができる。
【0045】
糞尿と混合して糞尿を堆肥化する工程は、例えば、牛舎、豚舎、厩舎等の畜舎において、破砕した生分解性製品を数日~数週の間、敷料として用いて、これを回収し、必要に応じてさらに堆肥のための熟成期間を設けることによって行うことができる。畜舎等では、敷料が、動物の糞尿などの汚物と混合するため、所定の期間ごとにこれを交換して、堆肥と混合した生分解性製品を得ることができる。また、糞尿と混合して糞尿を堆肥化する工程は、動物の糞尿と単に混合して、それを数日~数週の間、放置することでこの工程を行うことができる。
【0046】
本発明の方法は、さらに、上記のような生分解性製品を配置又は混合した土壌で農作物を生産する方法に関する。上記のようにして改良された土壌は、水分保持性が高く、このような土壌では、農作物の生産が容易となる。
【0047】
農作物としては、米、小麦等の穀物、野菜、果物、花等を挙げることができるが、これらに限定されない。生分解性製品を多く消費させる観点からは、農作物は、1年草であってもよい。
【0048】
《土壌の改良方法》
本発明の土壌の改良方法は、生分解性製品を破砕する工程、及び前記破砕した生分解性製品を土壌に配置又は混合する工程を含む。本明細書において、土壌とは、農作物及び微生物を生育できる土をいい、このような土は、微生物によって上記のような生分解性製品を分解することができる。
【0049】
〈配置又は混合工程〉
本発明の方法において、生分解性製品を土壌に配置又は混合する工程は、単に土壌の表面上に生分解性製品を配置するだけであってもよく、土壌に生分解性製品を埋めるだけであってもよいが、土壌と積極的に混合する工程であることが好ましい。混合は、人力で行ってもよく、機械的に行うこともできる。
【0050】
本発明の方法で用いられる土壌改質材は、ペレット化されていることによって、機械的に大量に土壌に散布できる。例えば、肥料散布機付きのトラクターによって、土壌改質材を大量に散布させることができる。
【0051】
《土壌改質材又は人工土壌》
本発明は、上記のような方法で用いることができる土壌改質材又は人工土壌にも関する。本発明の土壌改質材又は人工土壌の構成は、上記の方法に関する破砕された生分解性製品についての記載を参照することができる。
【0052】
例えば、本発明の土壌改質材又は人工土壌は、親水性の生分解性繊維を80質量%以上含み、ペレット状である。このペレット状の土壌改質材又は人工土壌は、上記のような農業用酵素も含むことができ、このような土壌改質材又は人工土壌は、綿、麻、和紙等の親水性の生分解性繊維から製造された衣服を酵素含有液に浸漬した後、裁断して粉砕し、ペレタイザーによってペレット化することによって得ることができる。
【0053】
土壌改質剤又は人工土壌は、土壌に混合又は配置されて用いることができるが、土壌に混合せずに、鉢植え等の土の代わりにそのまま使用することができる。ベランダ菜園では、栽培後の土の処理に悩まされることがあるが、この土壌改質剤又は人工土壌は、燃えるゴミとして捨てることができるため、非常に処理が容易である。
【0054】
本発明を以下の実施例でさらに具体的に説明をするが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【実施例
【0055】
マニラ麻を原料とした和紙100質量%で構成された衣服を、農業用酵素(万田アミノアルファ、万田発酵株式会社)を含む酵素含有液に数時間浸漬した。
【0056】
酵素含有液から取り出した衣服を脱水して、破砕機によって100mm~10mm程度に粗粉砕をして、さらに粉砕機(DASEシリーズ、西邦エンジニアリング株式会社)によって微粉砕した。これにより、10mm以下に破砕された生分解性繊維を得た。
【0057】
その生分解性繊維を、ペレタイザーによってペレット化して、和紙と酵素を含む、ペレット状の土壌改質材を得た。その写真を図1に示す。
【0058】
このようにして得られた土壌改質材を、肥料散布機付きのトラクターで1トン/反(約1000m)程度の量で土壌に散布して、ナス、大根、白菜等の野菜を製造したところ、いずれも非常に美味しい野菜が収穫できた。また、上記の土壌改質材は、1.5ヶ月~2ヶ月で消失した。なお、綿100%で構成された衣服によって同様にして製造した土壌改質材は、2~4ヶ月で消失した。
【0059】
また、上記のペレット状の土壌改質材を畜舎に1ヶ月間敷料として用いて、これを回収して、土壌に混合した。
【要約】
【課題】 本発明は、循環型社会を構成することができる、新規な土壌改質材の製造方法及び土壌改質材を提供する。
【解決手段】 本発明は、生分解性製品を破砕する工程、前記破砕した生分解性製品をペレット化する工程を含み、前記生分解性製品が、親水性の生分解性工業製品である、土壌改質材の製造方法に関する。また、本発明は、親水性の生分解性繊維を80質量%以上含む、土壌改質材に関する。
【選択図】 図1
図1