(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】円形刃用のホルダ
(51)【国際特許分類】
B26D 1/14 20060101AFI20230314BHJP
B26D 7/26 20060101ALI20230314BHJP
B26D 3/00 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
B26D1/14 A
B26D7/26
B26D3/00 601B
(21)【出願番号】P 2022156509
(22)【出願日】2022-09-29
【審査請求日】2022-10-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390024132
【氏名又は名称】オルファ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091904
【氏名又は名称】成瀬 重雄
(72)【発明者】
【氏名】岡田 真一
【審査官】豊島 唯
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-164955(JP,A)
【文献】特開2003-180787(JP,A)
【文献】国際公開第2009/107672(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 1/00 - 7/26
B26D 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に移動するフィルムを、回転せずに切断するための円形刃を保持するホルダであって、
前記円形刃が着脱可能なように取り付けられ、かつ前記円形刃と共に回転可能とされた支持体
(22)を有するクリック機構と、
前記支持体の回転を阻止するストッパ機構とを備えており、
前記クリック機構は、前記支持体を、前記一方向とは逆方向に所定角度ずつ回転させることができるとともに、前記支持体の前記一方向への回転を阻止する構成となっており、
前記ストッパ機構は、
前記支持体(22)の回転時に固定状態となっているストッパ本体(31)と、前記支持体と一体に回転する係合突起(33)とを備えており、
前記ストッパ本体は、前記支持体の回転方向に周期的に形成された溝(311)を有しており、
前記係合突起は、前記溝に係合することによって前記支持体の両方向への回転を一時的に阻止
し、前記溝との係合を解除することによってこの一時的な阻止を解除する構成となっており、これにより、前記ストッパ機構は、前記フィルムの切断時及び前記円形刃の交換時においては前記支持体の両方向への回転を阻止し、前記円形刃を前記所定角度で回転させる時には前記支持体の前記逆方向への回転を許容することができるようになっている
ことを特徴とする円形刃用のホルダ。
【請求項2】
前記クリック機構は、前記支持体と一体に回転するダイヤル(24)を有しており、
前記ストッパ機構は、
前記ダイヤルに回動可能なように取り付けられ、かつ前記ダイヤルと共に回転するつまみ部材(32)を有しており、
前記係合突起(33)は、前記つまみ部材(32)に設けられており、
前記つまみ部材を前記ダイヤルに対して回動させることにより前記係合突起と前記溝との係合を解除しつつ、前記つまみ部材を介して前記ダイヤルを回転させることができる構成となっている
請求項1に記載の円形刃用のホルダ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円形刃用のホルダに関するものである。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載のように、円形刃を用いてフィルムを切断するためのスリッタが知られている。このスリッタでは、フィルムを所定量切断するごとに円形刃を一方向に間欠的に回転させることにより、円形刃上の別の位置で切断を行う。これにより円形刃によるフィルム切断能力の維持を図っている。
【0003】
この技術では、円形刃を一方向に間欠的に回転させるためのラチェット機構あるいはワンウエイクラッチを有するホルダを用いている。この従来のホルダでは、フィルムの進行方向には円形刃を回転させない一方で、この進行方向と逆方向(すなわち一方向)には円形刃を所定角度ずつ自由に回転可能としている。
【0004】
ところで、回転刃に対するフィルムの進行方向は、スリッタ機種およびホルダ取付方法により異なっている。このため、この従来の技術では、フィルムの進行方向に応じて、回転可能な方向が異なるホルダを用意する必要がある。
【0005】
また、実際のスリッタの運転時には、動作調整などのためにフィルムを逆方向に搬送する場合がある。この場合、従来のホルダでは円形刃が自由に回転してしまい、ホルダに対する円形刃の相対的な回転角度を管理できなくなるという不都合を生じる。
【0006】
さらに、スリッタに取り付けた円形刃を交換する際、ホルダに対して円形刃が一方向に回転してしまうことがある。この場合も円形刃の回転角度が維持できなくなる。このため、円形刃の交換作業の効率が悪くなるという問題もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、前記した状況に鑑みてなされたものである。本発明の主な目的は、一つのホルダにより正逆両方向のフィルム移動に対応できる技術を提供することである。さらに、本発明の他の目的は、ホルダに取り付けた円形刃の交換作業が容易になる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の項目に記載の発明として表現することができる。
【0010】
(項目1)
一方向に移動するフィルムを、回転せずに切断するための円形刃を保持するホルダであって、
前記円形刃が着脱可能なように取り付けられ、かつ前記円形刃と共に回転可能とされた支持体を有するクリック機構と、
前記支持体の回転を阻止するストッパ機構とを備えており、
前記クリック機構は、前記支持体を、前記一方向とは逆方向に所定角度ずつ回転させることができるとともに、前記支持体の前記一方向への回転を阻止する構成となっており、
前記ストッパ機構は、前記支持体の両方向への回転を一時的に阻止する構成となっており、これにより、前記ストッパ機構は、前記フィルムの切断時及び前記円形刃の交換時においては前記支持体の両方向への回転を阻止し、前記円形刃を前記所定角度で回転させる時には前記支持体の前記逆方向への回転を許容することができるようになっている
ことを特徴とする円形刃用のホルダ。
【0011】
(項目2)
前記ストッパ機構は、前記クリック機構により前記支持体が所定角度回転するごとに、回転後の位置において前記支持体の両方向への回転を一時的に阻止する構成となっている
項目1に記載の円形刃用のホルダ。
【発明の効果】
【0012】
本発明の技術によれば、一つのホルダにより正逆両方向のフィルム移動に対応することが可能になる。さらに、本発明によれば、ホルダに取り付けた円形刃の交換作業を容易とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る円形刃用ホルダの要部断面図(ストッパ機構の動作状態)である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る円形刃用ホルダの要部断面図(ストッパ機構の解除状態)である。
【
図4】
図1の円形刃用ホルダを上方から見た斜視図である。
【
図5】
図4の円形刃用ホルダを反対側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態に係る円形刃用ホルダ(以下単に「ホルダ」と称することがある)1を、添付の図面を参照しながら説明する。このホルダ1は、一方向に移動するフィルム(図示せず)を、回転せずに切断するための円形刃4(後述)を保持するものである。
【0015】
ホルダ1は、円形刃4が着脱可能なように取り付けられ、かつ円形刃4と共に回転可能とされた内側支持体(支持体)22を有するクリック機構2と、内側支持体22の回転を阻止するストッパ機構3とを主要な構成として有している(
図1~
図3参照)。
【0016】
(クリック機構)
クリック機構2は、内側支持体22を、フィルムの移動方向(一方向)とは逆方向に所定角度ずつ回転させることができるとともに、内側支持体22の一方向への回転を阻止する構成となっている。
【0017】
より具体的には、本実施形態のクリック機構2は、メインプレート21と、内側支持体22と、外側支持体23と、ダイヤル24と、フック25とを主要な構成として有している。
【0018】
メインプレート21とブロック5はネジで固定一体化され、スリッタ装置(図示せず)側に適宜なねじ等を用いて固定されている。メインプレート21には、ストッパ機構3のストッパ本体31(後述)などを取り付けるための貫通孔211(
図3参照)が形成されており、貫通孔211の周縁には二つの切り欠き212が形成されている。
【0019】
内側支持体22は円盤状に形成されており、同じく円盤状に形成された外側支持体23との間に円形刃4を挟み込んで保持することができるようになっている(
図1及び
図3参照)。内側支持体22と外側支持体23との間に挟み込まれた状態では、円形刃4の外周部における刃部が外部に露出するようになっている。ここで円形刃4は、外周に刃部を有する円形刃本体41の表裏両面に、補強のための樹脂板42が取り付けられた構造となっている。
【0020】
内側支持体22には、その外周に沿って多数の歯221が形成されている。これらの歯221は、いわゆるラチェット構造を構成するように一様に傾斜した形状となっている(
図3参照)。
【0021】
ダイヤル24は、内側支持体22に適宜な止めねじなどを用いて固定されている。これにより、ダイヤル24を回転させると、内側支持体22及びそれに固定された円形刃4が、フィルム搬送方向とは逆方向に所定角度ずつ回転できるようになっている。ダイヤル24の表面には、ダイヤル24(すなわち円形刃4)の回転角度を示すための目盛りが形成されている(
図4及び
図6参照)。
【0022】
フック25は、リベット251によりメインプレート21に回転可能なように取り付けられている。フック25の一端(
図3において左端)は、ばね26により、内側支持体22の歯221に向けて押し付けられている。これにより、内側支持体22は、一方向(
図3中時計方向)には回転できるが、逆方向には、フック25が歯221に係合するために回転できない構造となっている。ばね26の一端は、フック25の他端に取り付けられており、ばね26の他端は、マウント27を介してメインプレート21側に取り付けられている。これにより、フック25の一端は、ばね26の引張り力を用いて内側支持体22の歯221に押し付けられるようになっている。
【0023】
(ストッパ機構)
ストッパ機構3は、支持体22の両方向への回転を一時的に阻止する構成となっている。これにより、ストッパ機構3は、フィルムの切断時及び円形刃4の交換時においては支持体22の両方向への回転を阻止し、円形刃4を所定角度で回転させる時には支持体22の逆方向への回転を許容することができるようになっている。さらに、本実施形態のストッパ機構3は、クリック機構2により支持体22が所定角度回転するごとに、回転後の位置において支持体22の両方向への回転を一時的に阻止する構成となっている。
【0024】
より具体的には、本実施形態のストッパ機構3は、ストッパ本体31と、二つのつまみ部材32とを主要な構成として有している。
【0025】
ストッパ本体31は、環状に構成されており、その一面側(ダイヤル24に対向する側)に、円周方向に沿って多数の溝311(
図3参照)が形成されている。これらの溝311は、ストッパ本体31の全周にわたって同じ周期で形成されている。
【0026】
ストッパ本体31の外周部には、外側方向に突出する二つの突起312が180°の位相で形成されており、これらの突起312をメインプレート21の切り欠き212に通過させて、ストッパ本体31をメインプレート21に取り付けるようになっている。この取付状態では、ストッパ本体31はメインプレート21に対して相対移動しない。
【0027】
二つのつまみ部材32は、それぞれ、ダイヤル24に固定されたシャフト35(
図3参照)を介して回転可能なように、ダイヤル24に取り付けられている。二つのつまみ部材32の先端には、ストッパ本体31の溝311に係合する係合突起33がそれぞれ形成されている(
図3参照)。二つのつまみ部材32の間には、これらのつまみ部材を外側方向に付勢するばね(圧縮ばね)34が取り付けられており、常時は、つまみ部材32が外側方向に付勢されて、係合突起33が溝311に噛み合うようになっている。また、二つのつまみ部材32どうしがばね34の弾発力に抗して接近するように指で挟むことにより、二つのつまみ部材32を、シャフト35を中心に回動させて、係合突起33と溝311との係合を解消できるようになっている。
【0028】
本実施形態のホルダ1はさらにボルト6を有しており、このボルト6は、ダイヤル24、ストッパ本体31、内側支持体22、円形刃4、外側支持体23の中央をそれぞれ貫通するように配置される。ボルト6のねじ部には、ナット7(
図3参照)が取り付けられて、ボルト6の脱落を防止するとともに、これらの部材を所定位置に保持できるようになっている。ナット7の表面側にはナット抑え8が配置される。このナット抑え8は外側支持体23により保持される。
【0029】
(ホルダの動作)
つぎに、前記のように構成された本実施形態のホルダの動作を説明する。
【0030】
(円形刃調整時)
まず、円形刃による切削位置を調整する場合の動作を説明する。初期状態は
図1の状態であるとする。
【0031】
この場合、つまみ部材32の端部を指でつまんで、ばね34の弾発力に抗しつつ接近させる(
図2参照)。これにより、つまみ部材32がシャフト35を中心に回動し、係合突起33とストッパ本体31の溝311との噛み合いが解除される。この状態を維持しつつダイヤル24を回転させることにより、円形刃4を回転させることができる。所定量だけ回転させたらつまみ部材32を元に戻す。これにより、初期状態と同様に、係合突起33を溝311に係合させることができる。この状態では、正逆いずれの方向においても、係合突起33と溝311との噛み合いにより、円形刃4の回転は阻止される。なお本実施形態では、後述するように、内側支持体22の歯221とフック25の係合によって、フィルム搬送方向と同じ方向(一方向)への円形刃4の回転は阻止されるのであるが、ストッパ本体31によってもその方向への回転が阻止される。
【0032】
ダイヤル24の回転位置や回転量は、ダイヤル24の目盛りにより管理することができる。例えば円形刃4の摩耗が想定されるタイミングで、ダイヤル24を所定量だけ回転させることにより、円形刃4の切断性能を維持することができる。例えば円形刃4を6度ずつ回転させることとすれば、円形刃4の60個所において切断することができる。このようにすると1枚の円形刃4を長期間使用することができ、円形刃4の交換コストを低く抑えることができる。円形刃の交換頻度が下がることにより、取り扱い時の人体への負傷や円形刃の欠損の確率も低く抑えられる。
【0033】
(スリッタ動作時)
スリッタ動作時には、フィルム(図示せず)を一方向に搬送しつつ、円形刃4の所定個所(円形刃の軸心位置やフィルム搬送機構などによって決まる位置)においてフィルムを円形刃4に接触させて切断することができる。この状態では、前記したように内側支持体22の歯221とフック25の係合によって、スリットと同じ方向(一方向)への円形刃4の回転は阻止されており、円形刃4が回転することなくフィルムを切断することができる。
【0034】
(フィルム搬送方向変更時)
ここで、スリッタによっては、例えば円形刃4の設置時やフィルム交換時などに、フィルムの搬送方向を反転させることがある。この場合、単にクリック機構2のみであると、逆方向に搬送されるフィルムによって円形刃4が回転してしまい、円形刃4の回転量が管理できなくなるという不都合がある。これに対して本実施形態のホルダでは、ストッパ機構3によって円形刃4の回転を両方向において常時阻止できるので、フィルムを逆方向に搬送させる場合であっても円形刃4の回転量を示す目盛り位置を動かさず、維持することができる。これにより円形刃4の管理を容易とすることができる。
【0035】
また、本実施形態のホルダでは、通常のフィルム搬送方向がそもそも逆方向であっても、上記の動作により、同じ構造のホルダを使用することが可能になるという利点もある。したがって本実施形態によれば、フィルム搬送方向に応じて異なる構造のホルダを製造する必要がなく、製造コストを低く抑えることも可能になる。
【0036】
(円形刃交換時)
円形刃4の交換時には、ストッパ機構3により円形刃4の回転を阻止したまま、ナット7と一体化した外側支持体23をボルト6から外すことにより、円形刃4を交換できる。その後、外側支持体23を元の状態に戻す。ここで、円形刃4の交換作業においては、円形刃4や内外の支持体22、23に対して正方向や逆方向への力が不意に加わることがある。このため、クリック機構2のみであるとダイヤル24が連動して逆方向に不意に回転してしまい、円形刃4の位置を示す目盛りがずれてしまう恐れがある。これに対して本実施形態のホルダでは、ストッパ機構3を設けたことにより、円形刃4の交換時においても、円形刃4やダイヤル24が不意に動くことがなく、ダイヤル24の位置ずれを防止できる。
【0037】
(スリッタ停止時)
スリッタ停止時には、円形刃4の管理のため、スリッタからホルダ1を取り外して保管することがある。この場合、従来のホルダでは円形刃4がホルダ1に対して回転してしまい、円形刃4の回転角度が管理できなくなるおそれがある。これに対して本実施形態のホルダによれば、ホルダ1に対する円形刃4の両方向の移動を阻止できるので、このような不都合を抑制して管理を容易とすることができるという利点がある。
【0038】
なお、前記実施形態の記載は単なる一例に過ぎず、本発明に必須の構成を示したものではない。各部の構成は、本発明の趣旨を達成できるものであれば、上記に限らない。
【符号の説明】
【0039】
1 ホルダ
2 クリック機構
21 メインプレート
211 貫通孔
212 切り欠き
22 内側支持体(支持体)
221 歯
23 外側支持体
24 ダイヤル
25 フック
251 リベット
26 ばね
27 マウント
3 ストッパ機構
31 ストッパ本体
311 溝
312 突起
32 つまみ部材
33 係合突起
34 ばね
35 シャフト
4 円形刃
41 円形刃本体
42 樹脂板
5 ブロック
6 ボルト
7 ナット
8 ナット抑え
【要約】
【課題】一つのホルダにより正逆両方向のフィルム移動に対応できる。また、ホルダに取り付けた円形刃の交換作業が容易になる。
【解決手段】円形刃4が着脱可能なように取り付けられ、かつ円形刃4と共に回転可能とされた支持体22を有するクリック機構2と、支持体22の回転を阻止するストッパ機構3とを備える。クリック機構2は、支持体22を、逆方向に所定角度ずつ回転させることができるとともに、支持体22の一方向への回転を阻止する。ストッパ機構3は、支持体22の両方向への回転を一時的に阻止する。ストッパ機構3は、フィルムの切断時及び円形刃4の交換時においては支持体22の両方向への回転を阻止し、円形刃4を所定角度で回転させる時には支持体22の逆方向への回転を許容することができるようになっている。
【選択図】
図1