(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】モルタル充填式鉄筋継手のモルタル未充填容積測定装置
(51)【国際特許分類】
G01F 17/00 20060101AFI20230314BHJP
【FI】
G01F17/00 C
(21)【出願番号】P 2022188965
(22)【出願日】2022-11-28
【審査請求日】2022-11-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】390005186
【氏名又は名称】日本スプライススリーブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113321
【氏名又は名称】熊田 武司
(74)【代理人】
【識別番号】100108327
【氏名又は名称】石井 良和
(72)【発明者】
【氏名】佐久田 朝男
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 祐介
(72)【発明者】
【氏名】清水 亮
【審査官】岡田 卓弥
(56)【参考文献】
【文献】特表平4-502270(JP,A)
【文献】特開昭62-265530(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103727992(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G0F17/00-22/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力計を備えた圧力容器にエアホースが接続され、このエアホース端部に開閉弁を介してモルタル充填式鉄筋継手のモルタル排出口に挿入固定される中心に貫通穴を有する栓体が設けてあって圧力容器内の圧縮空気をモルタル充填式鉄筋継手内部に送気可能としてある携帯型モルタル充填式鉄筋継手内部のモルタル未充填容積の測定装置。
【請求項2】
請求項1において、圧力容器には逆止弁を介して圧力容器内に圧縮空気を送り込む手動式ポンプまたは電動ポンプが設けてある携帯型モルタル充填式鉄筋継手内部のモルタル未充填容積の測定装置。
【請求項3】
請求項1または2において、圧力容器内の初期圧力値と圧力容器をモルタル充填式鉄筋継手内部に連通した後の圧力値から、ボイルの法則に基づいてモルタル充填式鉄筋継手内部のモルタル未充填容積を計算して表示する装置を具備する携帯型モルタル充填式鉄筋継手内部のモルタル未充填容積の測定装置。
【請求項4】
請求項1または2において、開閉弁はエアダスターガンを利用したものであって、開閉レバーが開閉弁の開閉作動をおこない、銃身相当部を圧縮空気の流路とした携帯型モルタル充填式鉄筋継手内部のモルタル未充填容積の測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモルタル充填式鉄筋継手にモルタルを充填する際、外部からは直接見ることができない充填式鉄筋継手内部におけるモルタル未充填部分の容積を測定することによって充填可能なモルタル量を確認できるようにして適量のモルタルが継手内部に充填されるようにし、必要量のモルタルがモルタル充填式鉄筋継手内部に注入されたかどうかを確認できるようにすることによってモルタル充填式鉄筋継手性能が確保されていることを現場で客観的に評価できるようにしたモルタル未充填容積測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
モルタル充填式鉄筋継手は、プレキャスト鉄筋コンクリート部材等の内部に配設されるコンクリート部材の補強材の鉄筋継手として開発されたものであって、その適用対象はプレキャスト鉄筋コンクリートに限らず、場所打ち鉄筋コンクリートにも広く適用されるようになってきている。
【0003】
本発明は、モルタル充填式鉄筋継手へのモルタル充填作業において、モルタルを充填する現場においてモルタル未充填部の容積の測定を簡易におこなえるようにし、従来、現場作業員の経験に基づく勘に頼るしかなかったモルタル未充填部の容積を簡易に、かつ、正確に測定できるようにしてモルタル未充填部に必要量が充填されたことを確認し、設計通りの継手強度が確実に得られるようにすることを目的とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、モルタル充填式鉄筋継手におけるモルタル未充填空間の容積を正確に把握し、このモルタル未充填空間に補充モルタルを充填してモルタル未充填空間を解消し、モルタル充填式鉄筋継手内部をモルタルで充満させてモルタル充填式鉄筋継手が所定の強度を発揮できるようにするものであって、外部からは見ることのできないモルタル充填式鉄筋継手内部のモルタル未充填空間に充填するモルタルの必要量を正確に求めることによってモルタル未充填空間をモルタルで充満させることを目的とするものである。
【0006】
また、モルタル充填式鉄筋継手のモルタル充填作業が正常に完了した後、なんらかの原因で注入口からモルタルが漏出してモルタル充填式鉄筋継手内部にモルタル未充填空間が生ずることがあり、継手として100%の強度が期待できない状態となることがある。このような場合においても、モルタル未充填空間の容積を正確に測定して必要量のモルタルをモルタル充填式鉄筋継手内部に補充できるようにすることを目的とするものである。
【0007】
更に、モルタル充填式鉄筋継手の施工現場において作業員がモルタル未充填空間容積を把握するための装置を携帯可能とすることによって身軽に現場を移動でき、加えて、モルタル充填式鉄筋継手のモルタル未充填空間を正確かつ迅速に測定できるようにすることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
圧力計を備えた圧力容器にエアホースが接続され、このエアホース端部に開閉弁を介してモルタル充填式鉄筋継手のモルタル排出口に挿入固定される中心に貫通穴を有する栓体が設けてあって圧力容器内の圧縮空気をモルタル充填式鉄筋継手内部に送気可能としてある携帯型モルタル充填式鉄筋継手内部のモルタル未充填容積の測定装置である。
【発明の効果】
【0009】
モルタル充填式鉄筋継手にグラウトの充填が不十分な場合や、また、グラウトの充填作業の完了後、何らかの理由で注入口からグラウトが漏出した場合など、モルタルの充填が不十分であってモルタル充填式鉄筋継手の内部にグラウト未充填空間が生じてしまい、鉄筋継手としての機能が100%発揮されない状態となることがあるが、このような不測の場合において、モルタル未充填空間の容積を正確に測定して把握し、未充填空間を埋めるに必要なモルタルをモルタル充填式鉄筋継手内部に補充できるようにすることを目的とするものである。
【0010】
加えて、モルタル未充填空間の容積を正確に把握し、その分だけのモルタルを追加充填することによって過剰なモルタルを注入してモルタル充填式鉄筋継手からモルタルが溢れ出て建築物表面に付着して汚れとなることを防止できるようにするものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明のモルタル充填式鉄筋継手におけるモルタル未充填空間の容積を測定する測定装置の概念を示す概略構成図である。
【
図2】本発明のモルタル充填式鉄筋継手におけるモルタル未充填空間の容積を測定するために圧縮空気をモルタル充填式鉄筋継手内部に送り込むための切替弁として利用するエアダスターガンの一例の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の概念図であり、圧縮空気を貯留する圧力容器1に逆止弁2を介して手動式または電動式のエアポンプ4が接続してあり、エアポンプ4によって圧力容器1の内部に圧縮空気を送りこみ、圧力容器1内に所定の圧力の圧縮空気を貯留する。圧力容器1には、圧力計3が取り付けてあって圧力容器1内の圧力が表示される。
圧力容器1をモルタル充填式鉄筋継手11の排出口15に接続し、予めエアポンプ4で圧力空気をモルタル充填式鉄筋継手のモルタル未充填空間に送り、圧力容器内部の圧力の変化を読み取ってモルタル未充填式継手内部の空洞の容積を求めるものであり、計算を自動的に行わせるために圧力値はデジタルデータとして取り出して演算器に送られるようにするのが好ましい。
【0013】
手動エアポンプの場合、自転車の携帯型空気ポンプ程度の能力で十分であり、最大圧力1~2MPa、容積500cc程度、圧力計は最大300KPaが計測可能であればよく、作動時の圧力は概略30~50KPaである。
【0014】
手動エアポンプ4と圧力容器の間に介在させた逆止弁2は、手動エアポンプ4によって圧力容器1内に圧縮空気を送り込み、圧力容器内を一定圧以上に保持するものであり、圧力容器1に貯留された圧縮空気が逆流して漏出しないようにするためのものである。
【0015】
圧力容器1の容積は、現場において持ち運びが容易であって、狭隘な施工現場において移動の邪魔にならないように50cc~1000ccの間の適宜の容積とするのが好ましい。エアポンプ4は手動式、もしくは電動式から選択することができる。自由に移動することに重点をおけば、電源を必要としない手動ポンプとするのが電源を用意できない箇所でも使用することができ、また、電源である電池切れによって作業途中で計測不能となることがないので好ましい。
【0016】
圧力容器1にはカップラーを介してエアホース5が接続可能としてあり、圧力容器1内の圧縮空気をエアホース5を通じてモルタル充填式鉄筋継手11内部に供給可能である。エアホース5の先端には圧力容器1内の貯留された圧縮空気を通過・停止させる切替弁50が設けてある。切替弁50の先のエアホース5の先端には貫通穴を有する円錐台形の栓体6が設けてあり、圧縮空気は栓体6を通過してモルタル充填式鉄筋継手11の内部に送り込まれ、モルタル未充填空間12に送り込まれる。
栓体6はモルタル充填式鉄筋継手11のモルタル排出口15に挿入固定してあり、圧力容器1内の圧縮空気はエアホース5を通じてモルタル注入を終了したモルタル充填式鉄筋継手11の内部のモルタル未充填空間に充填される。
ここで、圧力容器1の当初の圧力計3が示す値と、圧縮空気をモルタル充填式鉄筋継手11のモルタル未充填部12に送り込んだ後の圧力容器1内の圧力計3の読みからモルタル充填式鉄筋継手11内部のモルタル未充填部12の容積を求めることができる。
【0017】
モルタル充填式鉄筋継手11の内部にモルタルが充填された後、モルタル充填式鉄筋継手内部のモルタル未充填部分12の有無の確認及び未充填部分12の容積を以下の手順で求める。
まず、手動または電動エアポンプ4を使用して圧力容器1の内部に圧縮空気を充填し、圧力容器1に装備してある圧力計3の示す圧力の読みが5~1000kPaとなるまで上昇させる。
【0018】
次にエアダスターガン50の先端部に取り付けてある栓体6をモルタル充填式鉄筋継手11の排出口15に差し込んで気密に固定し、エアダスターガン50のレバー51を引いてエアダスターガン50の開閉弁を開き、圧力容器1内の圧縮空気をモルタル充填式鉄筋継手11の内部のモルタル未充填領域12に送り込む。取り付けた栓体6は、モルタル充填式鉄筋継手11に取り付けた塩化ビニル製等の排出口15に差し込まれて固定された状態であり、モルタル未充填空間12に圧力空気を充満させる。
【0019】
圧力容器1とモルタル充填式鉄筋継手の未充填空間12の合計の容積の圧力が平衡状態となるまで圧力容器1からモルタル充填式鉄筋継手11の未充填空間12に圧力空気が移動する。
圧力容器1の内部の初期圧力P0、圧力容器1の容積をV0とし、モルタル充填式鉄筋継手11の内部のモルタル未充填空間の容積をVa、圧力容器1内部の圧縮空気がモルタル未充填空間12に移動して平衡に達したときの圧力容器1に付属する圧力計3の圧力値Pを読み取り、ボイルの法則に従ってモルタル未充填空間12の容積Vaを以下の式によって求めることができる。
【0020】
【0021】
モルタル充填式鉄筋継手11の排出口15に挿入固定してある栓体6を取り外し、求めた容積Vaのモルタル量をモルタル充填式鉄筋継手11の排出口15から充填することによってモルタル充填式鉄筋継手11のモルタル未充填空間12はモルタルで充たされ、モルタル充填式鉄筋継手11内部のモルタル未充填空間12を解消でき、モルタル充填式鉄筋継手11は十分な強度を発揮することができることとなる。
また、モルタル充填式鉄筋継手11のモルタル未充填空間の容量に等しいモルタルがモルタル充填式鉄筋継手11内に注入されるので過剰にモルタルが注入されることがなく、注入したモルタルがモルタル充填式鉄筋継手11から溢れ出て現場周囲を汚染するということがない。
【0022】
モルタル充填式鉄筋継手11内部に圧力空気を圧入するにあたり、手際よく作業をおこなうためには、圧縮空気を噴射することによってゴミ等を吹き飛ばして清掃する器具である
図2に示すエアダスターガンを改良して切替弁として使用することがコスト的に好ましいが、同等の性能を有する装置であればよく、この形態に限定されるものでない。
一般的な切替弁はコックを回して弁の開閉がおこなわれているが、圧縮空気を噴出させて粉塵等を吹き飛ばして部品等の清掃をおこなうことを目的とするエアダスターガンを開閉弁として利用すると未充填空間に圧縮空気を送りだすことが容易に行うことができるので、狭い施工現場の空間で圧縮空気の切替弁の開閉を簡単におこなうことができ、モルタル未充填空間の容積の測定を素早く短時間でおこなうことが可能となる。
【0023】
エアダスターガン50の一例は、
図2に示すように作業員が手で保持することでき、レバー51を引くと内部に設けた圧縮空気回路の開閉弁が開き、エアダスターガン50の先端から圧力空気が噴出するものであって、先端部から噴出する空気流によって粉塵等を吹き飛ばして清掃の用に供するものである。
【0024】
このエアダスターガン50を本発明の切替弁として使用するために改良したものを
図2に示す。エアダスターガン50の圧縮空気接続口52に圧力容器1に接続された圧力ホース5が接続され、エアダスターガン50の圧縮空気噴出先端部の噴出口の先端部に円錐台形で中心に圧縮空気の通過孔を有するゴム製の栓体6が固定してある。エアダスターガン50のグリップ53の下側にはレバー51が設けてあり、グリップ53を握り、レバー51を引くことによってエアダスターガン50の開閉弁が開き、圧縮空気が先端から噴出するので、片手で作業ができ、効率よく充填式鉄筋継手内部のモルタル未充填部分の容積測定を行うことが可能である。
【0025】
エアダスターガン50の圧縮空気噴出口に取り付けてある栓体6をモルタル未充填部分の有無を検査するモルタル充填式鉄筋継手11の排出口15に差し込んで固定し、エアダスターガン50のグリップ53を握って保持し、レバー51を引くことによって圧力容器1内の圧縮空気はモルタル充填を完了したモルタル充填式鉄筋継手11の排出口15からモルタル充填式鉄筋継手11に送り込まれる。圧縮空気をモルタル充填式鉄筋継手11内部に送り込む前後の圧力を圧力計3の読みから求め、ボイルの法則に基づいてモルタル未充填空間12の容積を求めるものである。
【0026】
以上に述べたように、本発明のモルタル充填式鉄筋継手のモルタル未充填容積測定装置は、持ち運びが容易であり、多数の鉄筋が配筋してある狭い場所であっても持ち運びと測定作業の邪魔にならず、また、正確なモルタル充填式鉄筋継手のモルタル未充填空間の容積を短時間で求めることができ、求めた空所の容積に応じたモルタルを未充填空間に充填することが可能となる。
空所の容積を超えた余剰モルタルが継手内に注入されることはなく、従って、注入モルタルが外部に溢れ出し、構築物の表面を汚染するということがないので余剰モルタルを除去清掃するという余計な作業をすることも解消され、モルタル充填式鉄筋継手工事を円滑に予定通りに進めることが可能となる。
【符号の説明】
【0027】
1 圧力容器
2 逆止弁
3 圧力計
4 エアポンプ
5 エアホース
6 栓体
10 鉄筋
11 モルタル充填式鉄筋継手
12 未充填空間
13 充填モルタル
14 モルタル注入口
15 モルタル排出口
50 エアダスターガン(切替弁)
51 レバー
53 グリップ
【要約】
【課題】
モルタル充填式鉄筋継手内部のモルタル未充填空間の容積を施工現場で簡易に測定できるようにし、モルタル未充填空間を充たすのに必要なモルタル量を正確に求めることができるようし、モルタル充填式鉄筋継手の性能が十分に発揮できるようにすると共に、モルタル未充填空間の容積を超える過剰なモルタルの注入によってモルタルが鉄筋継手外部に溢れだして構築物表面を汚染することがないようにする。
【解決手段】
圧力計と圧力容器及び圧力容器に圧力空気を供給するポンプを具備し、エアホースが圧力容器に接続され、エアホース先端に開閉弁を有しモルタル充填式鉄筋継手のモルタル排出口に挿入固定可能な栓体が設けてあり、この栓体を貫通して空気噴出装置が設けてある携帯型モルタル充填式鉄筋継手内部のモルタル未充填容積の測定装置。
【選択図】
図1