(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】空気電池セル、空気電池セルアセンブリ、充電器付き空気電池パック及び充電器
(51)【国際特許分類】
H01M 12/08 20060101AFI20230314BHJP
H01M 12/06 20060101ALI20230314BHJP
H01M 50/284 20210101ALI20230314BHJP
H01M 50/296 20210101ALI20230314BHJP
【FI】
H01M12/08 K
H01M12/06 B
H01M12/06 F
H01M50/284
H01M50/296
(21)【出願番号】P 2022207776
(22)【出願日】2022-12-26
【審査請求日】2022-12-26
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522471456
【氏名又は名称】株式会社GKIジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西村 正男
(72)【発明者】
【氏名】チョン ジンウ
【審査官】小森 重樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-038770(JP,A)
【文献】国際公開第2020/213549(WO,A1)
【文献】特表2015-506079(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0036288(US,A1)
【文献】米国特許第05318861(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 12/08
H01M 12/06
H01M 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素導入面を有し、正極活物質としての空気中の酸素を導入するための酸素導入層と、
前記酸素導入層の前記酸素導入面と逆の面に積層された電解質層と、
前記電解質層に積層され、負極活物質としての金属を含む金属層と、
前記酸素導入面よりも積層方向
であって前記電解質層から離れる方向に突出するポスト部と、
前記ポスト部の突出端に設けられ、前記酸素導入面の少なくとも一部を前記積層方向に露出させる複数の開口を有するトップ部と、
を有し、前記電解質層及び前記金属層を密封するカバー部と、
前記トップ部と前記酸素導入面との間のトップ空間層と、
を具備
し、
前記カバー部に含まれる前記ポスト部及び前記トップ部は、一体に形成され、
前記ポスト部は、前記酸素導入面に接触する先端部と、前記先端部を除く本体部とを有し、
前記ポスト部の前記先端部の前記酸素導入面に対する接触面積は、前記本体部を前記積層方向に直交する平面で切断した前記本体部の断面積より、小さい
空気電池セル。
【請求項2】
酸素導入面を有し、正極活物質としての空気中の酸素を導入するための酸素導入層と、
前記酸素導入層の前記酸素導入面と逆の面に積層された電解質層と、
前記電解質層に積層され、負極活物質としての金属を含む金属層と、
前記酸素導入面よりも積層方向であって前記電解質層から離れる方向に突出するポスト部と、
前記ポスト部の突出端に設けられ、前記酸素導入面の少なくとも一部を前記積層方向に露出させる複数の開口を有するトップ部と、
を有し、前記電解質層及び前記金属層を密封するカバー部と、
前記トップ部と前記酸素導入面との間のトップ空間層と、
を具備し、
前記カバー部に含まれる前記ポスト部及び前記トップ部は、一体に形成され、
前記ポスト部は、前記酸素導入面に接触する先端部と、前記先端部を除く本体部とを有し、
前記ポスト部は、前記酸素導入面上に格子構造に設けられ、
前記トップ空間層は、前記格子構造の前記ポスト部に区画された空間である複数の格子空間室により構成され、
前記トップ部の各開口は、各格子空間室に対応し、各格子空間室に前記積層方向に対向する
空気電池セル。
【請求項3】
酸素導入面を有し、正極活物質としての空気中の酸素を導入するための酸素導入層と、
前記酸素導入層の前記酸素導入面と逆の面に積層された電解質層と、
前記電解質層に積層され、負極活物質としての金属を含む金属層と、
前記酸素導入面よりも積層方向であって前記電解質層から離れる方向に突出するポスト部と、
前記ポスト部の突出端に設けられ、前記酸素導入面の少なくとも一部を前記積層方向に露出させる複数の開口を有するトップ部と、
を有し、前記電解質層及び前記金属層を密封するカバー部と、
前記トップ部と前記酸素導入面との間のトップ空間層と、
を具備し、
前記カバー部に含まれる前記ポスト部及び前記トップ部は、一体に形成され、
前記ポスト部は、前記酸素導入面に接触する先端部と、前記先端部を除く本体部とを有し、
前記トップ部は、前記ポスト部から、前記積層方向に直交する平面上の少なくとも1方向に片持ち梁状に突出し、
前記ポスト部の前記1方向の幅より、前記トップ部が前記ポスト部の前記1方向の端部から突出する突出長さの方が、短い
空気電池セル。
【請求項4】
酸素導入面を有し、正極活物質としての空気中の酸素を導入するための酸素導入層と、
前記酸素導入層の前記酸素導入面と逆の面に積層された電解質層と、
前記電解質層に積層され、負極活物質としての金属を含む金属層と、
前記酸素導入面よりも積層方向であって前記電解質層から離れる方向に突出するポスト部と、
前記ポスト部の突出端に設けられ、前記酸素導入面の少なくとも一部を前記積層方向に露出させる複数の開口を有するトップ部と、
を有し、前記電解質層及び前記金属層を密封するカバー部と、
前記トップ部と前記酸素導入面との間のトップ空間層と、
を具備する空気電池セルであって、
前記カバー部に含まれる前記ポスト部及び前記トップ部は、一体に形成され、
前記ポスト部は、前記酸素導入面に接触する先端部と、前記先端部を除く本体部とを有し、
前記カバー部は、
前記トップ部の前記酸素導入層と対向する面と逆のトップ面に設けられ、前記積層方向に突出する第1のトップピンと、
前記トップ面に設けられ、前記第1のトップピンと係合可能な形状を有し、前記積層方向に突出する第2のトップピンと、
を有し、
1個の前記空気電池セルの前記酸素導入層と他の前記空気電池セルの前記酸素導入層とが対向するように2個の前記空気電池セルが前記積層方向に積層されるとき、1個の前記空気電池セルの前記第1のトップピンと他の前記空気電池セルの前記第2のトップピンが係合するように、前記第1のトップピン及び前記第2のトップピンが前記トップ面に配置される
空気電池セル。
【請求項5】
請求項2に記載の空気電池セルであって、
前記カバー部は、
前記金属層と前記積層方向に対向するボトム部と、
前記ボトム部の前記金属層と対向する面と逆のボトム面に設けられ、前記積層方向に突出する複数のフィンと、
を有し、
前記複数のフィンにより区画された空間であるボトム空間層
をさらに具備する空気電池セル。
【請求項6】
請求項
5に記載の空気電池セルであって、
前記ボトム空間層は、前記積層方向に直交する方向である平面方向に連通する
空気電池セル。
【請求項7】
請求項
5又は6に記載の空気電池セルであって、
各フィンは、中央部と、前記中央部から前記積層方向に直交する複数方向に放射状に突出する複数のブレードとを有する
空気電池セル。
【請求項8】
請求項
7に記載の空気電池セルであって、
各フィンは、前記中央部から放射状に突出する4個のブレードを有し、
各フィンの前記中央部と、前記ポスト部の前記格子構造の交点とは、前記積層方向に対向し、
各フィンの前記4個のブレードと、前記格子構造の前記ポスト部とは、前記積層方向に対向する
空気電池セル。
【請求項9】
請求項
5又は6に記載の空気電池セルであって、
前記カバー部は、
前記ボトム部の前記ボトム面に設けられ、前記積層方向に突出する第1のボトムピンと、
前記ボトム面に設けられ、前記第1のボトムピンと係合可能な形状を有し、前記積層方向に突出する第2のボトムピンと、
を有し、
1個の前記空気電池セルの前記金属層と他の前記空気電池セルの前記金属層とが対向するように2個の前記空気電池セルが前記積層方向に積層されるとき、1個の前記空気電池セルの前記第1のボトムピンと他の前記空気電池セルの前記第2のボトムピンが係合するように、前記第1のボトムピン及び前記第2のボトムピンが前記ボトム面に配置される
空気電池セル。
【請求項10】
複数の
請求項1乃至4の何れか一項に記載の空気電池セルを具備し、
前記複数の空気電池セルが前記積層方向に積層される
空気電池アセンブリ。
【請求項11】
複数の
請求項1乃至4の何れか一項に記載の空気電池セルを有し、前記複数の空気電池セルが前記積層方向に積層される空気電池アセンブリと、
電子機器に接続可能な充電用出力端子を有し、前記空気電池アセンブリからの電圧を出力して前記電子機器を充電するための充電器と、
前記空気電池アセンブリ及び前記充電器を収容し、前記充電用出力端子を露出させる筐体と、
を具備
し、
前記充電器は、前記筐体の一面から突出せず且つ露出し、前記空気電池アセンブリと前記充電器との電気的接続を可逆的にオンオフ可能なスイッチを有する
充電器付き空気電池パック。
【請求項12】
複数の請求項1乃至4の何れか一項に記載の空気電池セルを有し、前記複数の空気電池セルが前記積層方向に積層される空気電池アセンブリと、
電子機器に接続可能な充電用出力端子を有し、前記空気電池アセンブリからの電圧を出力して前記電子機器を充電するための充電器と、
前記空気電池アセンブリ及び前記充電器を収容し、前記充電用出力端子を露出させる筐体と、
隣接する前記複数の空気電池セルの各境界に対して、前記積層方向に直交する方向である平面方向にそれぞれ対向する、前記筐体に設けられた1以上の吸気口と、
前記1以上の吸気口に対して前記平面方向に対向する、前記筐体に設けられた排気口と、
前記筐体に収容され前記排気口に隣接するファンと、
前記空気電池アセンブリと前記ファンとの間の排気空間室と
を具備する充電器付き空気電池パック。
【請求項13】
請求項
11に記載の充電器付き空気電池パックであって、
前記充電器は、
前記空気電池アセンブリの公称電圧未満の出力電圧であり、前記電子機器に接続可能であり前記空気電池アセンブリからの電圧を出力して前記電子機器を充電するための充電用出力端子と、前記充電用出力端子に接続される前記電子機器との充電規格を有する充電用集積回路とを有する充電コントローラ回路と、
前記空気電池アセンブリに接続されるVIN端子及び前記充電用出力端子に接続されるVOUT端子を有し、前記VIN端子への入力上限電圧が前記公称電圧未満であり、前記空気電池アセンブリからの電圧が前記VIN端子へ入力され、前記VOUT端子から前記充電用出力端子に電圧を出力するDC-DCコンバータ用集積回路を有し、前記VIN端子の前記入力上限電圧を前記公称電圧以上に変換して前記空気電池アセンブリからの電圧を前記VIN端子に入力可能とし、前記出力電圧を前記VOUT端子から出力するように、電圧を変換するDC-DCコンバータ回路と、
を有する
充電器付き空気電池パック。
【請求項14】
請求項12に記載の充電器付き空気電池パックであって、
前記充電器は、
前記空気電池アセンブリの公称電圧未満の出力電圧であり、前記電子機器に接続可能であり前記空気電池アセンブリからの電圧を出力して前記電子機器を充電するための充電用出力端子と、前記充電用出力端子に接続される前記電子機器との充電規格を有する充電用集積回路とを有する充電コントローラ回路と、
前記空気電池アセンブリに接続されるVIN端子及び前記充電用出力端子に接続されるVOUT端子を有し、前記VIN端子への入力上限電圧が前記公称電圧未満であり、前記空気電池アセンブリからの電圧が前記VIN端子へ入力され、前記VOUT端子から前記充電用出力端子に電圧を出力するDC-DCコンバータ用集積回路を有し、前記VIN端子の前記入力上限電圧を前記公称電圧以上に変換して前記空気電池アセンブリからの電圧を前記VIN端子に入力可能とし、前記出力電圧を前記VOUT端子から出力するように、電圧を変換するDC-DCコンバータ回路と、
を有する
充電器付き空気電池パック。
【請求項15】
請求項
13に記載の充電器付き空気電池パックであって、
前記DC-DCコンバータ回路は、前記充電用出力端子の出力電流値が最大出力電流値を超えたときに前記空気電池アセンブリの電圧が低下し前記VIN端子への入力電圧が入力下限電圧未満になり前記DC-DCコンバータ回路がシャットダウンするのを防ぐために、前記充電用出力端子の出力電流値を前記最大出力電流値以下とする
充電器付き空気電池パック。
【請求項16】
請求項14に記載の充電器付き空気電池パックであって、
前記DC-DCコンバータ回路は、前記充電用出力端子の出力電流値が最大出力電流値を超えたときに前記空気電池アセンブリの電圧が低下し前記VIN端子への入力電圧が入力下限電圧未満になり前記DC-DCコンバータ回路がシャットダウンするのを防ぐために、前記充電用出力端子の出力電流値を前記最大出力電流値以下とする
充電器付き空気電池パック。
【請求項17】
複数の請求項1乃至4の何れか一項に記載の空気電池セルを有し、前記複数の空気電池セルが前記積層方向に積層される空気電池アセンブリと、
電子機器に接続可能な充電用出力端子を有し、前記空気電池アセンブリからの電圧を出力して前記電子機器を充電するための充電器と、
前記空気電池アセンブリ及び前記充電器を収容し、前記充電用出力端子を露出させる筐体と、
を具備し、
前記充電器は、前記筐体の一面から突出せず且つ露出し、前記空気電池アセンブリと前記充電器との電気的接続を可逆的にオンオフ可能なスイッチを有する
充電器付き空気電池パック
に含まれ得る充電器。
【請求項18】
複数の請求項1乃至4の何れか一項に記載の空気電池セルを有し、前記複数の空気電池セルが前記積層方向に積層される空気電池アセンブリと、
電子機器に接続可能な充電用出力端子を有し、前記空気電池アセンブリからの電圧を出力して前記電子機器を充電するための充電器と、
前記空気電池アセンブリ及び前記充電器を収容し、前記充電用出力端子を露出させる筐体と、
隣接する前記複数の空気電池セルの各境界に対して、前記積層方向に直交する方向である平面方向にそれぞれ対向する、前記筐体に設けられた1以上の吸気口と、
前記1以上の吸気口に対して前記平面方向に対向する、前記筐体に設けられた排気口と、
前記筐体に収容され前記排気口に隣接するファンと、
前記空気電池アセンブリと前記ファンとの間の排気空間室と
を具備する充電器付き空気電池パック
に含まれ得る充電器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気電池セルと、複数の空気電池セルを有する空気電池アセンブリと、空気電池アセンブリから電子機器を充電するための充電器と、空気電池アセンブリ及び充電器を有する充電器付き空気電池パックと、に関する。
【背景技術】
【0002】
USB端子を有するモバイル電子機器(スマートフォン、パーソナルコンピュータ、タブレットコンピュータ、ウェアラブルデバイス、小型LEDランプ、懐中電灯等。以下同じ)に充電する場合、外部電源から給電された充電器を設置して、モバイル電子機器のバッテリを充電させることが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、災害等で外部電源が使用できない場合、充電器からモバイル電子機器への給電はできなくなる。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、特に災害時での電子機器の充電に適した充電器付き空気電池パックと、その充電器付き空気電池パックに適した空気電池セル、空気電池セルアセンブリ及び充電器とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一形態に係る空気電池セルは、
酸素導入面を有し、正極活物質としての空気中の酸素を導入するための酸素導入層と、
前記酸素導入層の前記酸素導入面と逆の面に積層された電解質層と、
前記電解質層に積層され、負極活物質としての金属を含む金属層と、
前記酸素導入面よりも積層方向に突出するポスト部と、
前記ポスト部の突出端に設けられ、前記酸素導入面の少なくとも一部を前記積層方向に露出させる複数の開口を有するトップ部と、
を有し、前記電解質層及び前記金属層を密封するカバー部と、
前記トップ部と前記酸素導入面との間のトップ空間層と、
を具備する。
【0007】
本発明の一形態に係る空気電池アセンブリは、
複数の上記空気電池セルを具備し、
前記複数の空気電池セルが前記積層方向に積層される。
【0008】
本発明の一形態に係る充電器付き空気電池パックは、
複数の上記空気電池セルを有し、前記複数の空気電池セルが前記積層方向に積層される空気電池アセンブリと、
電子機器に接続可能な充電用出力端子を有し、前記空気電池アセンブリからの電圧を出力して前記電子機器を充電するための充電器と、
前記空気電池アセンブリ及び前記充電器を収容し、前記充電用出力端子を露出させる筐体と、
を具備する。
【0009】
本発明の一形態に係る充電器は、
複数の上記空気電池セルを有し、前記複数の空気電池セルが前記積層方向に積層される空気電池アセンブリからの電圧を出力して電子機器を充電するための充電器であって、
前記空気電池アセンブリの公称電圧未満の出力電圧であり、電子機器に接続可能であり前記空気電池アセンブリからの電圧を出力して前記電子機器を充電するための充電用出力端子と、前記充電用出力端子に接続される前記電子機器との充電規格を有する充電用集積回路とを有する充電コントローラ回路と、
前記空気電池アセンブリに接続されるVIN端子及び前記充電用出力端子に接続されるVOUT端子を有し、前記VIN端子への入力上限電圧が前記公称電圧未満であり、前記空気電池アセンブリからの電圧が前記VIN端子へ入力され、前記VOUT端子から前記充電用出力端子に電圧を出力するDC-DCコンバータ用集積回路を有し、前記VIN端子の前記入力上限電圧を前記公称電圧以上に変換して前記空気電池アセンブリからの電圧を前記VIN端子に入力可能とし、前記出力電圧を前記VOUT端子から出力するように、電圧を変換するDC-DCコンバータ回路と、
を具備する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、特に災害時での電子機器の充電に適した充電器付き空気電池パックと、その充電器付き空気電池パックに適した空気電池セル、空気電池セルアセンブリ及び充電器とを提供することができる。
【0011】
なお、ここに記載された効果は必ずしも限定されるものではなく、本開示中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態に係る空気電池セルの上面図である。
【
図3】
図1の空気電池セルのA-A線断面図である。
【
図4】
図1の空気電池セル(上面図)の部分拡大図(A)及び比較例(B)である。
【
図5】
図3の空気電池セル(断面図)の部分拡大図(A)及び比較例(B)である。
【
図6】
図1の空気電池セルのA-A線に相当する、ボトムカバーの断面図である。
【
図7】
図1の空気電池セルのA-A線に相当する、本発明の一実施形態に係る空気電池アセンブリの断面図である。
【
図9】DC-DCコンバータ回路の部品配置を示す。
【
図11】充電器付き空気電池パックのブロック図である。
【
図12】充電器付き空気電池パックの斜視図である。
【
図13】充電器付き空気電池パックの内部構造を模式的に示す。
【
図16】充電器付き空気電池パックの保存袋を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0014】
1.空気電池セル
【0015】
1-1.空気電池セルの概要
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る空気電池セルの上面図である。
図2は、空気電池セルの下面図である。
図3は、
図1の空気電池セルのA-A線断面図である。
【0017】
空気電池セル100は、例えば、負荷電圧DC1.1Vかつ公称電圧(開放電圧)DC1.4Vである。空気電池セル100は、一次電池である空気電池101(金属空気電池とも呼ばれる)を、カバー部140により一部を密封した状態でカバーしたものである。
【0018】
空気電池セル100は、酸素導入層110と、電解質層120と、金属層130と、カバー部140と、トップ空間層170と、ボトム空間層180と、を有する。を有する。酸素導入層110と、電解質層120と、金属層130とは、空気電池101を構成する。空気電池セル100は、空気電池101(即ち、酸素導入層110と、電解質層120と、金属層130)を、カバー部140により一部を密封した状態でカバーすることにより構成される。カバー部140は、トップカバー150及びボトムカバー160を有する。トップ空間層170及びボトム空間層180は、それぞれ、カバー部140の一部により区画された空間であり、空気流路を構成する。具体的には、トップ空間層170はトップカバー150の一部により区画され、ボトム空間層180はボトムカバー160の一部により区画される。
【0019】
酸素導入層110は、空気に露出されることが可能な酸素導入面111を有し、正極活物質としての空気中の酸素を導入する。具体的には、酸素導入層110は、MEA(Membrane Electrode Assembly)であり、触媒層、電解質膜及びガス拡散層が積層された燃料電池用膜電極接合体である。酸素導入層110は、シーリングをさらに有してもよい。酸素導入層110は、酸素導入面111から導入した酸素をカーボン集電体に供給し、酸素と電解質層120の電解質との反応を最大限に活性化させることで最大の電池性能を確保する。
【0020】
電解質層120は、酸素導入層110の酸素導入面111と逆の面に積層される。電解質層120は、正極として機能する酸素導入層110と、負極として機能する金属層130との間でキャリアを輸送する電解質を含む。電解質層120は、電解質として、典型的には水酸化カリウムを含むが、塩化アンモニウム又は水酸化ナトリウム等を含んでもよい。
【0021】
金属層130は、電解質層120に積層され、負極活物質としての金属を含む。金属層130は、メッシュ状でよい。金属層130は、金属として、典型的には亜鉛を含むが、錫、アルミニウム、マグネシウム又はリチウム等を含んでもよい。
【0022】
カバー部140は、例えば、ABS樹脂からなる。カバー部140は、電解質層120及び金属層130を密封し、酸素導入層110の酸素導入面111を露出させる。
【0023】
以下、酸素導入層110、電解質層120及び金属層130との積層方向を、Z方向と称する。Z方向に直交する平面をXY平面と称する。XY平面上の方向、即ち、Z方向に直交する何れかの方向をXY平面方向と称する。空気電池セル100のXY平面形状は、例えば1辺が数cm~十数cmの正方形又は長方形(4隅にRがあっても無くてもよい)である(
図1及び
図2、本例では正方形)。空気電池セル100の側面の外周形状は、長方形であり、Z方向の長さ(即ち、空気電池セル100の厚み)は数mm~数cmである(
図3)。空気電池セル100は、Z方向に厚みを有する薄いプレート状の直方体状である。空気電池セル100の平面形状である正方形又は長方形の2辺の方向をX方向及びY方向と称する。
【0024】
1-2.トップカバー
【0025】
図4は、
図1の空気電池セル(上面図)の部分拡大図(A)及び比較例(B)である。
図5は、
図3の空気電池セル(断面図)の部分拡大図(A)及び比較例(B)である。
【0026】
トップカバー150は、トップカバー側壁部154(
図1)と、ポスト部151と、トップ部152と、第1のトップピン158と、第2のトップピン159とを有する。
【0027】
トップカバー側壁部154は、少なくとも酸素導入層110及び電解質層120の側面に周回して対向し、少なくとも酸素導入層110及び電解質層120の側面を周回してカバーする。トップカバー側壁部154は、さらに、金属層130の側面に周回して対向し、金属層130の側面を周回してカバーしてもよい。
【0028】
ポスト部151は、酸素導入層110の酸素導入面111よりもZ方向に突出する。ポスト部151は、酸素導入面111上にX方向及びY方向に直交して(90度で)交差する格子構造に設けられる。ポスト部151は、先端部151Aと、本体部151Bとを有する。先端部151Aは、酸素導入面111に対して典型的には接触する。本体部151Bは、先端部151Aを除く部分である。先端部151Aの酸素導入面111に対する接触面積は、本体部151BをXY平面で切断した本体部151Bの断面積より、小さい。例えば、先端部151Aは、X方向又はY方向から見ると、先端に向かうにつれて狭まるラウンド形状である。トップカバー側壁部154の酸素導入面111よりもZ方向に突出する部分も、ポスト部151として機能する。ポスト部151の格子構造の交点155は、X方向及びY方向の両方向に等間隔であり、等しい個数であり、トップカバー側壁部154からの距離が等しい。従って、空気電池セル100のXY平面形状が正方形である場合、ポスト部151の格子構造は、X方向及びY方向の両方向に等間隔であり、等しい個数であり、トップカバー側壁部154からの距離が等しく、長方形の格子構造ではなく正方形の格子構造である。
【0029】
トップ部152は、ポスト部151の突出端(Z方向の先端)に設けられる。具体的には、トップ部152は、ポスト部151から、Z方向に直交するXY平面上の少なくとも1方向(本例ではX方向及びY方向の両方)に片持ち梁状に突出する。ポスト部151のX方向及びY方向の幅L1より、トップ部152がポスト部151の1方向の端部からX方向及びY方向に突出する突出長さL2の方が、短い。言い換えれば、トップ部152は、格子構造のポスト部151の突出端状に設けられた、X方向及びY方向においてわずかに幅広の格子構造を有する。トップ部152は、格子構造に区画された複数の開口153を有する。トップ部152が格子構造を有するため、各開口153は、例えば円形ではなく、正方形又は長方形(4隅にRがあっても無くてもよい)である。複数の開口153は、それぞれ、酸素導入面111の少なくとも一部をZ方向に露出させる。トップ部152のトップ面156(酸素導入層110と対向する外面)は、XY平面と平行である。トップ部152は、複数の空気電池セル100を接続するための配線窓157(
図1)を有する。
【0030】
第1のトップピン158及び第2のトップピン159は、トップ部152のトップ面156に設けられ、Z方向に突出する。第1のトップピン158及び第2のトップピン159は、互いに係合可能な形状を有する。例えば、第1のトップピン158は、中空の円柱形の雌ピンである。第2のトップピン159は、第1のトップピン158の中空部分に挿入可能な形状及び長さを有する雄ピンである。第1のトップピン158及び第2のトップピン159は、1個の空気電池セル100の酸素導入層110と他の空気電池セル100の酸素導入層110とが対向するように2個の空気電池セル100がZ方向に積層されるとき、1個の空気電池セル100の第1のトップピン158と他の空気電池セル100の第2のトップピン159が係合するように、トップ面156に配置される。
図1の例では、トップ面156をX方向に延びる直線A-Aを境に半分に分けたとき、配線窓157を有する領域に8個の第1のトップピン158が設けられる。一方、配線窓157を有しない領域に、直線A-Aを対称軸として8個の第1のトップピン158に対して線対称に、8個の第2のトップピン159が設けられる。これにより、2個の空気電池セル100を、直線A-Aを対称軸として配線窓157が線対称に位置するように、酸素導入層110が対向するように関奏したとき、1個の空気電池セル100の第1のトップピン158及び第2のトップピン159と、他の空気電池セル100の第1のトップピン158及び第2のトップピン159とが係合する。
【0031】
格子構造のポスト部151に区画された空間は、複数の格子空間室171である。各格子空間室171は、格子構造のポスト部151と、ポスト部151の突出端状に設けられた幅広の格子構造を有するトップ部152とにより区画される構造であるから直方体状である。トップ部152の各開口153は、各格子空間室171に対応し、各格子空間室171にZ方向に対向する。このため、トップ部152の各開口153から各格子空間室171に空気が導入される。複数の格子空間室171により構成される、トップ部152と酸素導入面111との間の領域は、トップ空間層170として機能する。
【0032】
酸素導入面111上での各格子空間室171の面積に対する、各開口153の面積である開口面積の割合は、例えば、70%以上である。
図4の(A)を参照して説明すると、1個の格子空間室171のX辺及びY辺の長さをL3、1個の開口153のX辺及びY辺の長さをL4とする。この場合、1辺の長さがL4の正方形又は長方形(4隅にRがあっても無くてもよい)の面積は、1辺の長さがL3の正方形又は長方形(4隅にRがあっても無くてもよい)の面積の70%以上である。このため、(B)の比較例のように開口が円形の場合に比べて、酸素導入面111上での各格子空間室171の面積に対する、各開口153の面積である開口面積の割合が大きく、(B)の比較例の約3~4倍の大きさである。
【0033】
この構成によれば、酸素導入面111上での各格子空間室171の面積に対する、各開口153の面積である開口面積の割合は、例えば、70%以上である。これにより、空気が効果的に各格子空間室171に導入される。また、ポスト部151のX方向及びY方向の幅L1より、トップ部152がポスト部151の1方向の端部からX方向及びY方向に突出する突出長さL2の方が、短い。さらに、ポスト部151の先端部151Aの酸素導入面111に対する接触面積は、本体部151Bの断面積より小さい。これにより、
図5の(A)に示す様に、トップピン空間層173(
図7を参照して後述)から格子空間室171に導入された空気流F1が、
図5の(B)の比較例の空気流F2のように各格子空間室171内の酸素導入面111上の中心部だけでなく、各格子空間室171内の酸素導入面111上の広範囲に接触する。さらに、格子空間室171に導入された空気が、トップ部152の下172に入り込んで格子空間室171の周縁で停滞せずに、格子空間室171内を流通して開口153から効果的に流入及び流出することができる。空気が格子空間室171に対して効果的に流入及び流出することで、空気電池101の化学反応のための酸素の量を酸素導入面111上に十分供給でき、同時に、格子空間室171内の反応熱冷却性能が向上し、温度上昇が抑制される。
【0034】
1-3.ボトムカバー
【0035】
図6は、
図1の空気電池セルのA-A線に相当する、ボトムカバーの断面図である。
【0036】
ボトムカバー160は、ボトムカバー側壁部161と、ボトム部162と、複数のフィン163と、を有する。
【0037】
ボトムカバー側壁部161は、トップカバー150のトップカバー側壁部154の外面に周回して対向し、トップカバー側壁部154の外面に周回して密着する。ボトム部162は、平板状であり、金属層130とZ方向に対向する。これにより、ボトムカバー160は、トップカバー150と協働して、電解質層120及び金属層130を密封する。
【0038】
複数のフィン163は、ボトム部162のボトム面164に設けられ、Z方向に突出する。ボトム面164は、ボトム部162が金属層130と対向する面(内面)とは逆の面(外面)である。各フィン163は、効率的に放熱するため表面積が広い形状を有する。具体的には、各フィン163は、中央部165と、中央部165からZ方向に直交する複数方向に放射状に突出する複数のブレード166とを有する。具体的には、各フィン163は、中央部165から放射状に突出する4個のブレード166を有する。4個のブレード166は、中央部165から直交する4方向(X方向及びY方向)に等間隔(90度間隔)に突出する。各フィン163の中央部165と、ポスト部151の格子構造の交点155とは、Z方向に対向し、各フィン163の4個のブレード166と、格子構造のポスト部151とは、Z方向に対向する。複数のフィン163の個数と、ポスト部151の格子構造の交点155の個数とは、等しい。複数のフィン163は、ボトム面164の周縁168には設けられず、ボトム面164の周縁の内側にのみ設けられる。
【0039】
複数のフィン163の中央部165は、X方向及びY方向の両方向に等間隔である。複数のフィン163は、X方向及びY方向の両方向に等しい個数であり、ボトム部162の周縁からの距離が等しい。複数のフィン163の先端167は、XY平面上に位置し、Z方向のばらつきは無い。
【0040】
ボトム空間層180は、複数のフィン163により区画された空間である。ボトム空間層180は、XY平面方向に相互に連通する1個の空間である。
【0041】
ボトムカバー160は、さらに、第1のボトムピン169A及び第2のボトムピン169Bを有してもよい。第1のボトムピン169A及び第2のボトムピン169Bは、ボトム部162のボトム面164に設けられ、Z方向に突出する。第1のボトムピン169A及び第2のボトムピン169Bは、例えば第1のトップピン158及び第2のトップピン159と同様に、互いに係合可能な形状を有する。例えば、第1のボトムピン169Aは、中空の円柱形の雌ピンであり、Z方向の長さはフィン163のZ方向の長さ以下である。第2のボトムピン169Bは、第1のボトムピン169Aの中空部分に挿入可能な形状及び長さを有する雄ピンであり、Z方向の長さはフィン163のZ方向の長さより大きい。第1のボトムピン169A及び第2のボトムピン169Bは、1個の空気電池セル100の金属層130と他の空気電池セル100の金属層130とが対向するように2個の空気電池セル100がZ方向に積層されるとき、1個の空気電池セル100の第1のボトムピン169Aと他の空気電池セル100の第2のボトムピン169Bが係合するように、ボトム面164に配置される。
【0042】
2.空気電池アセンブリ
【0043】
図7は、
図1の空気電池セルのA-A線に相当する、本発明の一実施形態に係る空気電池アセンブリの断面図である。
【0044】
空気電池アセンブリ200は、複数(本例では4個)の空気電池セル100を有する。4個の空気電池セル100は、直列に接続される。空気電池セル100の負荷電圧がDC1.1Vかつ公称電圧(開放電圧)がDC1.4Vである場合、空気電池アセンブリ200の負荷電圧はDC4.4Vかつ公称電圧(開放電圧)はDC5.6Vである。
【0045】
空気電池アセンブリ200において、複数(本例では4個)の空気電池セル100がZ方向に積層される。具体的には、1個の空気電池セル100の酸素導入層110と他の空気電池セル100の酸素導入層110とが対向し、第1のトップピン158及び第2のトップピン159が係合するように2個の空気電池セル100がZ方向に積層され、空気電池セルペア105又は106をそれぞれ構成する。1個の空気電池セルペア105に含まれる1個の空気電池セル100の金属層130と、他の空気電池セルペア106に含まれる1個の空気電池セル100の金属層130とが対向し、第1のボトムピン169A及び第2のボトムピン169Bが係合するように2個の空気電池セルペア105、106がZ方向に積層される。これにより、4個の空気電池セル100がZ方向に積層された空気電池アセンブリ200となる。第1のトップピン158及び第2のトップピン159の係合と、第1のボトムピン169A及び第2のボトムピン169Bの係合により、空気電池アセンブリ200はZ方向に高い堅牢性及び物理的安定性を有する。複数の空気電池セル100の間にスペーサ等は設けられない。
【0046】
上述のように、空気電池セル100は、例えば1辺が数cm~十数cmの正方形又は長方形であり、Z方向の長さ(即ち、空気電池セル100の厚み)が数mm~数cmの、薄いプレート状の直方体状である。このため、空気電池アセンブリ200は、例えば1辺が数cm~十数cmの直方体状である。
【0047】
上述のように、1個の空気電池セル100において、ボトムカバー160の各フィン163の中央部165と、トップカバー150のポスト部151の格子構造の交点155とは、Z方向に対向し、また、複数のフィン163の4個のブレード166と、格子構造のポスト部151とは、Z方向に対向する。複数のフィン163の個数と、ポスト部151の格子構造の交点155の個数とは、等しい。また、トップ部152のトップ面156と、複数のフィン163の先端167とは、XY平面と平行である。
【0048】
このため、隣接する1個の空気電池セルペア105に含まれる空気電池セル100の複数のフィン163の4個のブレード166と、他の空気電池セルペア106に含まれる空気電池セル100の格子構造のポスト部151とがZ方向に重なり合う。これにより、複数(本例では4個)の空気電池セル100を密接するように積層したときにZ方向に連結する多数の柱が構成されるため、空気電池アセンブリ200はZ方向に高い堅牢性及び物理的安定性を有する。
【0049】
さらに、1個の空気電池セルペア105又は106内において隣接する2個の空気電池セル100、100の間では、第1のトップピン158及び第2のトップピン159が互いに係合する。言い換えれば、1個の空気電池セルペア105内において隣接する2個の空気電池セル100の空気電池101、101のトップ面156、156は、互いに係合する第1のトップピン158及び第2のトップピン159を介してZ方向に対向する。このトップ面156、156の間にトップピン空間層173が形成される。このため、1個の空気電池セルペア105又は106内の2個の空気電池セル100の空気電池101、101の間に形成されたトップピン空間層173に対してXY平面方向に流入した空気が、トップ空間層170の複数の格子空間室171にZ方向に流入し、複数の格子空間室171をX方向及びY方向に流通して、トップピン空間層173にZ方向に再度流入し、トップピン空間層173内をXY平面方向に流通する。
【0050】
さらに、互いに隣接する1個の空気電池セルペア105に含まれる1個の空気電池セル100の複数のフィン163により区画されたボトム空間層180と、他の空気電池セルペア106に含まれる1個の空気電池セル100の複数のフィン163により区画されたボトム空間層180とが、XYZ方向に互いに連通する。このため、2個の空気電池セルペア105、106のXY平面上の境界102において、ボトム空間層180(XY平面方向に相互に連通する1個の空間)に対してXY平面方向に流入した空気が、ボトム空間層180内をXY平面方向に効果的に流通する。
【0051】
これにより、複数の空気電池セル100をZ方向に密接して積層した状態であるにも拘らず、隣接する空気電池セル100、100に含まれる空気電池101、101の間に存在するトップピン空間層173及びトップ空間層170内と、ボトム空間層180内とに空気を効果的に流通させることができる。トップピン空間層173及びトップ空間層170内の空気の流通により、空気電池101の化学反応のための酸素の量を酸素導入面111上に十分供給でき、同時に、複数の空気電池セル100の格子空間室171内の冷却性能が向上し、温度上昇が抑制される。また、ボトム空間層180内の空気の流通により、複数のフィン163が冷却され、複数のフィン163の複数のブレード166から空気電池101が発生した熱が放熱されるため、空気電池セル100の冷却性能が向上し、温度上昇が抑制される。複数の空気電池セル100の間にスペーサ等を設ける必要が無く、複数の空気電池セル100をZ方向に密接して積層しているため、空気電池アセンブリ200が小型化でき、空気電池アセンブリ200はZ方向に高い堅牢性及び物理的安定性を有する。
【0052】
3.充電器
【0053】
【0054】
充電器300は、電子機器(不図示)に接続可能な充電用出力端子311を有し、空気電池アセンブリ200からの電圧を出力して電子機器(不図示)を充電することが可能である。電子機器(不図示)は、例えば、スマートフォン、パーソナルコンピュータ、タブレットコンピュータ、ウェアラブルデバイス、小型LEDランプ、懐中電灯等のモバイル電子機器ある。
【0055】
本例では、空気電池セル100の公称電圧がDC1.4Vであり、4個の空気電池セル100が直列で接続された空気電池アセンブリ200の公称電圧はDC5.6V(=DC1.4V×4セル)である。また、空気電池アセンブリ200の使用経過によって電圧が下がると、空気電池アセンブリ200の電圧はDC3V付近まで低下する。空気電池アセンブリ200の電圧がDC3Vであっても電子機器(不図示)を充電する必要がある。
【0056】
充電器300は、空気電池アセンブリ200に接続される。充電器300は、回路基板パイロットランプに搭載された、充電コントローラ回路310と、DC-DCコンバータ回路320と、電源スイッチS1とを有する。空気電池アセンブリ200には、パイロットランプLED(後述)及びファン400(後述)のモータMも接続される。空気電池アセンブリ200には、懐中電灯としての1又は複数のLEDライト502及びオンオフスイッチ503(
図13)がさらに接続される(不図示)。懐中電灯としてのLEDライト及びオンオフスイッチは、パイロットランプLED及びモータMと並列に接続すればよい。
【0057】
電源スイッチS1は、空気電池アセンブリ200と充電器300との電気的接続を可逆的にオンオフ可能である。
【0058】
充電コントローラ回路310は、充電用出力端子311と、充電コントローラ回路310と、を有する。
【0059】
充電用出力端子311は、例えば、USB-Aコネクタである。充電用出力端子311は、空気電池アセンブリ200の公称電圧(5.6V)未満の出力電圧(5V)である。充電用出力端子311は、電子機器(不図示)に接続可能であり空気電池アセンブリ200からの電圧を出力して電子機器(不図示)を充電することが可能である。
【0060】
DC-DCコンバータ回路320は、DC-DCコンバータ用集積回路U1を有する。
【0061】
DC-DCコンバータ用集積回路U1は、VIN端子及びVOUT端子を有する。VIN端子は、空気電池アセンブリ200の正極(+極)に接続される。空気電池アセンブリ200からの電圧(3V~5.6V)は、VIN端子へ入力される。VOUT端子は、充電コントローラ回路310を介して充電用出力端子311に接続される。DC-DCコンバータ用集積回路U1は、VOUT端子から充電コントローラ回路310を介して充電用出力端子311に電圧を出力する。
【0062】
DC-DCコンバータ用集積回路U1は、リチウムイオン電池対応の汎用のDC-DCコンバータ用集積回路でよい。リチウムイオン電池の公称電圧は3.7Vであるため、DC-DCコンバータ用集積回路U1のVIN端子への入力電圧範囲は、約3V~4.25Vである。従って、DC-DCコンバータ用集積回路U1のVIN端子への入力上限電圧(4.25V)は、空気電池アセンブリ200の公称電圧(5.6V)未満である。このため、DC-DCコンバータ回路320は、VIN端子の入力上限電圧(4.25V)を公称電圧(5.6V)以上に変換して空気電池アセンブリ200からの電圧(3V~5.6V)をVIN端子に入力可能とし、出力電圧(5V)をVOUT端子から出力するように、電圧を変換する。ダイオードD1の設置とキャパシタC1の時定数により、VIN端子(入力上限電圧4.25V)に空気電池アセンブリ200からの電圧(5.6V)が入力されても、DC-DCコンバータ用集積回路U1がシャットアウトせずに作動することが可能となる。
【0063】
充電用出力端子311の最大出力電流値が2A以上になると、空気電池アセンブリ200の出力能力範囲を超えて、空気電池アセンブリ200の電圧が急激に下がり、DC-DCコンバータ用集積回路U1のVIN端子への入力下限電圧である3Vより低くなり、DC-DCコンバータ用集積回路U1がシャットダウンするおそれがある。このため、DC-DCコンバータ回路320のVOUT端子から出力される電流値は、2Aに制限する必要がある。このため、DC-DCコンバータ回路320は、充電用出力端子311の出力電流値が最大出力電流値(2A)を超えたときに空気電池アセンブリ200の電圧が低下しVIN端子への入力電圧が入力下限電圧(3V)未満になりDC-DCコンバータ回路320がシャットダウンするのを防ぐために、充電用出力端子311の出力電流値を最大出力電流値(2A)以下とする。キャパシタC2及びC3の時定数及び設置個数により、充電用出力端子311の出力電流値(2A)を調節することが可能となる。
【0064】
典型的に、多種多様なスマートモバイル電子機器の充電電圧はDC5~5.5Vである。充電用出力端子311(USB端子)の出力電圧は、多種多様なスマートモバイル電子機器から要求されている充電電圧DC5~5.5Vの範囲内で調節しなければ、多種多様なスマートモバイル電子機器の充電が不可能となる。DC-DCコンバータ回路320を設けることにより、充電電圧を一定に出力するようにし、空気電池アセンブリ200の電圧がDC3V付近まで低下しても充電電圧をそのまま維持する定電圧機能を実現し、空気電池アセンブリ200に残っている電力を最大限利用できる。充電用出力端子311(USB端子)の出力電圧範囲の安定化のためには、空気電池アセンブリ200の出力特性に基づいて、ダイオードD1からの信号と、抵抗R1及びR2の時定数及びその比率が総合的な信号を起こして、DC-DCコンバータ用集積回路U1のフィードバック端子FBに入力する。これにより、DC-DCコンバータ用集積回路U1のVOUT端子から、充電用出力端子311に適合する出力電圧(DC5V)を、充電用出力端子311に供給できる。
【0065】
充電コントローラ回路310は、充電用集積回路U2を有する。充電用集積回路U2は、充電用出力端子311(USB-Aコネクタ)に接続される電子機器(不図示)との充電規格(BC1.2等の多様な規格)を有する。充電コントローラ回路310は、例えば、iOS(登録商標)及びAndroid(登録商標)等の種々のファームウェアに対応するインターフェースが可能とした回路を有する。充電コントローラ回路310は、様々な製品である電子機器(不図示)とインターフェースを通じてハンドシェイクを行い、充電を開始する。例えば、充電コントローラ回路310は、充電用出力端子311(USB-Aコネクタ)に様々な種類(Lightning、Micro-B、Type-C等)の接続ケーブルを介して接続された電子機器(不図示)を認識し、充電を開始する。充電器300内の充電コントローラ回路310自体が種々のファームウェアに対応するインターフェースが可能であるため、別体のインターフェースモジュールを要することなく、充電器300に様々な製品である電子機器を直接接続し、直接充電することが可能である。
【0066】
図9は、DC-DCコンバータ回路の部品配置を示す。
【0067】
DC-DCコンバータ用集積回路U1は、DC-DCコンバータ回路320の機能的中心であり、高い周波数でスイッチングする半導体である。DC-DCコンバータ用集積回路U1と近隣の部品配置や回路が不適合だと、ノイズが発生する。DC-DCコンバータ用集積回路U1は、ノイズによって動作が不安定になり、変換効率が逓減する。例えば、DC-DCコンバータ用集積回路U1と近隣の部品との距離が大きいと、ノイズが発生する。このため、インダクタンスL1、抵抗R1及びR2、キャパシタC1、C2及びC3は、DC-DCコンバータ用集積回路U1と可能な限り近くに(0.5mm~1.0mm程度の距離に)配置するのがよい。回路基板301(PCB:printed circuit board)は、VOUT及びGNDのエリアを有し、VOUT及びGNDにより、回路から出る有害周波数の抑制が可能となる。
【0068】
【0069】
充電器300に空気電池アセンブリ200及び電子機器を接続し、電子機器を充電した。空気電池アセンブリ200の最大出力電圧には限界があり、空気電池アセンブリ200の最大出力電圧の範囲で最速な充電を可能とするため、バッテリの充電率が80%付近までは、DC5V、2Aの仕様条件で充電できる。これにより、災害が発生した時、電子機器を高速に充電することができる。
【0070】
4.充電器付き空気電池パック
【0071】
4-1.充電器付き空気電池パックの内部構造
【0072】
図11は、充電器付き空気電池パックのブロック図である。
図12は、充電器付き空気電池パックの斜視図である。
図13は、充電器付き空気電池パックの内部構造を模式的に示す。
【0073】
充電器付き空気電池パック10は、空気電池アセンブリ200と、充電器300(
図8)と、空気電池アセンブリ200及び充電器300とを収容する筐体500と、を有する。充電器付き空気電池パック10は、さらに、1以上の吸気口511(
図13)と、排気口512と、ファン400と、排気空間室513と、を有する。
【0074】
筐体500は、1辺が数cm~十数cm程度の直方体状である。1以上(本例では複数)の吸気口511及び排気口512は、XY平面方向の1方向(本例ではX方向)に対向する筐体500の2面514、515にそれぞれ設けられる。
【0075】
1以上(本例では複数)の吸気口511は、筐体500に収容された、隣接する複数の空気電池セル100の各境界102に対して、Z方向に直交する方向であるXY平面方向の1方向(本例ではX方向)にそれぞれ対向する。さらに、吸気口511は、最上段の空気電池セル100と筐体500の内面との境界103と、最下段の空気電池セル100と筐体500の内面との境界104とに対して、Z方向に直交する方向であるXY平面方向の1方向(本例ではX方向)にそれぞれ対向する。
【0076】
排気口512は、1以上の吸気口511それぞれに対してXY平面方向(本例ではX方向)に対向する。
【0077】
ファン400は、筐体500に収容され排気口512に隣接する。
【0078】
排気空間室513は、空気電池アセンブリ200とファン400との間の空間である。排気空間室513のX方向の幅、即ち、空気電池アセンブリ200とファン400との距離は、例えば、10mm以上である。ファン400の作動により排気空間室513に負圧が形成され、1以上の吸気口511から流入する空気が円滑に排気空間室513内に流入し、ファン400を経て排気口512から排出される。
【0079】
電源スイッチS1がオンになるとモータMが動作しファン400が回転する。これにより、空気は、複数の吸気口511から流入し(矢印)、複数の吸気口511に対向する複数の空気電池セル100の各境界102に流入し、各空気電池セル100のトップ空間層170及びボトム空間層180を流通し、各空気電池セル100から排気空間室513に流入し、ファン400により排気口512を介して筐体500から排出される。これにより、空気が、空気電池アセンブリ200内を効果的に流通するので、空気電池101の化学反応のための酸素の量を酸素導入面111上に十分供給でき、同時に、複数の空気電池セル100の格子空間室171内の反応熱冷却性能が向上し、温度上昇が抑制される。
【0080】
特に、複数の吸気口511は、隣接する複数の空気電池セル100の各境界102に対してそれぞれ対向する。これにより、各吸気口511から、隣接する空気電池セル100、100に含まれる空気電池101、101の間に存在するトップ空間層170及びボトム空間層180内に空気を効果的に流通させることができる。このため、空気電池101の化学反応のための酸素の量を酸素導入面111上に十分供給でき、同時に、複数の空気電池セル100の格子空間室171内の反応熱冷却性能が向上し、温度上昇が抑制される。
【0081】
空気電池セル100は、内部の物質の化学反応によって発電するので熱が発生する。この熱が適切な範囲を超え、熱暴走すると空気電池セル100の性能は急激に劣化する。特に夏場に外部気温が高いと、空気電池セル100の内部は熱が暴走して空気電池101の性能の低下に大きな影響を及ぼす。本実施形態の構造によれば、これを抑制するために空気電池セル100を効果的に冷却し、同時に、充電器300に対する高温の影響を抑制することができる。
【0082】
なお、空気電池アセンブリ200は、吸湿布(不図示)が巻かれている。空気電池セル100の電解質層120(強アルカリ性の水酸化カリウム等)の液体が漏れた場合に、液体を吸収するためである。
【0083】
4-2.充電器付き空気電池パックの外部構造
【0084】
筐体500は、プラグインスイッチ330、充電用出力端子311、パイロットランプLED、懐中電灯としてのLEDライト502及び懐中電灯のオンオフスイッチ503を露出させる。
【0085】
【0086】
プラグインスイッチ330は、充電器300の回路基板301上の電源スイッチS1に接続される。プラグインスイッチ330は、筐体500の一面501から突出せず且つ露出するDCジャック331と、付属のプラグインブリッジ332とを有する。DCジャック331は、筐体500に内蔵され、外部への突出が抑制される。プラグインブリッジ332の内部は、正極と負極とがショートされている。
【0087】
使用者が手作業でプラグインブリッジ332をDCジャック331に挿入すると、内部の回路が接続され、電源スイッチS1がオンになる。これより、パイロットランプLEDが点灯し、空気電池アセンブリ200からの電源が充電器300に印加され、充電器300は動作を開始する。一方、使用者が手作業でプラグインブリッジ332を抜くと、電源スイッチS1がオフになり、パイロットランプLEDが消灯し、充電器300の動作が停止する。使用者が手作業でプラグインブリッジ332をDCジャック331に挿抜することで、不意に電源スイッチS1がオンオフする誤作動が無く、安全で確実に電源スイッチS1をオンオフできる。
【0088】
これに対して、仮に、筐体からつまみ等が突出する可動的なスイッチを採用すると、充電器付き電池パックを移動又は取り扱う過程でスイッチの誤作動で電源が接続されて電池が放電するおそれがある。また、つまみが破損しないような構造の包装を用意し、つまみが破損しないように包装する必要があり、安全性に懸念があり、煩雑である。
【0089】
プラグインスイッチ330をオンした後、スライド式のオンオフスイッチ503をオンにすると、懐中電灯としてのLEDライト502(例えば、1個の大容量の又は複数の砲弾型LEDランプ)が点灯する。充電器付き空気電池パック10は、災害及び非常用の携帯電源として利用することが想定され、懐中電灯としてのLEDライト502は災害及び非常用には大変有用である。
【0090】
また、出荷時には、DCジャック331の挿入部にシールテープ(不図示)を貼り付けることで、使用、未使用を確認できる。
【0091】
【0092】
充電用出力端子311(USB-Aコネクタ)は、回路基板301(PCB)に挿入されている。回路基板301は、筐体500の内側に収容されている。このため、充電用出力端子311は、筐体500の内側から押し出して組み立てる必要がある。一方、充電用出力端子311の頭部312(14.45mm×7.00mm)は、本体部313(13.27mm×5.65mm)に比べて大きい。一方、筐体500に加工された穴であるコネクタ挿入口504(13.6mm×6.00mm)は、充電用出力端子311の本体部313に合わせたサイズである。このため、充電用出力端子311の頭部312は、筐体500のコネクタ挿入口504よりサイズが大きいため、干渉なく挿入することができない。このため、長方形のコネクタ挿入口504の4か所の頂点から放射状に約3mmの切断線505を形成する。これにより、充電用出力端子311の頭部312を、筐体500の内側からコネクタ挿入口504に押し出し、頭部312が筐体500の外側に露出するように組み立てることができる。
【0093】
5.充電器付き空気電池パックの保存袋
【0094】
図16は、充電器付き空気電池パックの保存袋を示す。
【0095】
保存袋600は、充電器付き空気電池パック10(
図12)を密封し、長期間補完するのに使用される。充電器付き空気電池パック10は、保存袋600内に密封された状態で出荷される。
【0096】
保存袋600は、袋本体601と、バルブ602と、密封チャック603と、開封用切り欠き604とを有する。袋本体601の材質は、アルミニウム箔を多層に接合した多層構造ラミネートである。これにより、外部の空気が袋本体601の内部に浸透することを抑制できる。バルブ602は、微小圧力バルブであり、空気電池アセンブリ200の内部に未反応物質が長期間にわたって反応したときに発生するガスを外部に排出し、且つ、外部の空気の流入を遮断する。バルブ602の作動開始圧力は3~9mbarであり、遮断圧力は0.5mbar以上である。保存袋600を最初に開封するときは、入口接合部の開封用切り欠き604に沿って切断する。充電器付き空気電池パック10を保存袋600から取り出して使用し、充電器付き空気電池パック10を使用後に再度保管するときは、充電器付き空気電池パック10を保存袋600に入れて密封チャック603でロックする。
【0097】
充電器付き空気電池パック10は、非常用電源として使用する事が期待されているので、長期保管及び長期備蓄できる事が必要とされる。空気電池アセンブリ200は空気電池セル100で構成され、空気電池セル100にある金属層130と空気中の酸素との化学反応で電気を生成するメカニズムをもつので、長期保管及び長期備蓄中の自然放電を防ぐ必要がある。充電器付き空気電池パック10を、バルブ602を備えた多層構造のアルミラミネート袋である保存袋600に密閉することで、空気電池セル100に空気中の酸素が流入する事を抑止することができる。
【0098】
充電器付き空気電池パック10の使用時は、保存袋600に収納した充電器付き空気電池パック10を取り出す事で、空気中の酸素と化学反応し電気を生成して電子機器に充電できる。また使用後は充電器付き空気電池パック10を再び保存袋600に収納することで空気電池セル100の自然放電を抑制でき、空気電池セル100の電気容量がある限り(金属層130が劣化しない限り)、充電器付き空気電池パック10を何度も繰り返し使用可能となる。
【0099】
6.結語
【0100】
本実施形態によれば、長期保管及び長期備蓄が可能な空気電池セル100を4個パックとして、外部電源としての空気電池アセンブリ200を実現する。筐体500内に、外部電源としての空気電池アセンブリ200と、USB形式の充電用出力端子311を含む充電器300とを一体的に収容し、コンパクトな充電器付き空気電池パック10を実現することで、外部電源と充電器機能とを一体として構成する。これにより、災害時に非常用電源として充電器付き空気電池パック10を携帯でき、より容易で簡便でユーザフレンドリーにモバイル電子機器のバッテリを充電させることができる。
【0101】
一般的に、空気電池は理論エネルギー密度が470Wh/Kgであり、リチウムイオン電池の250Wh/Kgに比べて2倍近く高く、小型軽量化が可能なので非常時に活用が容易である。空気電池セル100は、金属と空気中の酸素との化学反応で電力を生成するメカニズムをもつ。充電器付き空気電池パック10は圧力用のバルブ602を備えた多層構造のアルミラミネート袋である保存袋600に密閉することで、空気中の酸素との接触を防ぐことが可能となり、自然放電を防ぎ長期保管及び長期備蓄を可能とする。このため、災害時の非常用電源としてモバイル電子機器のバッテリを充電させることができる。発火時に消火しにくいリチウムイオン電池に比べて、一次電池である空気電池101は発火の危険性が全く無いため、本実施形態に係る充電器付き空気電池パック10は、災害現場で使用時の二次災害の懸念が全く無い。
【0102】
市販されている空気電池製品は、超小型の補聴器用ボタンタイプか、DC12Vを出力してインバータを介した家電製品に使用する製品である。このため、これらをスマートフォンなどの小型モバイル電子機器(充電電圧DC5~5.5V)に使用するためには他の変換装置を準備し接続しなければならない。このため、誰にとっても作業容易で簡便でわかりやすく、必要なときに即座に充電を開始する必要のある災害時には、不適である。これに対して、本実施形態によれば、DC-DCコンバータ回路320を設けることにより、充電電圧を一定に出力するようにし、空気電池アセンブリ200の電圧がDC3V付近まで低下しても充電電圧をそのまま維持する定電圧機能を実現し、空気電池アセンブリ200に残っている電力を最大限利用できる。また、充電器300内の充電コントローラ回路310自体が種々のファームウェアに対応するインターフェースが可能であるため、別体のインターフェースモジュールを要することなく、充電器300に様々な製品である電子機器を直接接続し、直接充電することが可能である。このため、特に災害時に、どのような一般ユーザにとっても作業容易で簡便でわかりやすく、必要なときに即座に充電を開始することができる。
【0103】
空気電池セル100は放電時に内部の化学作用により熱が発生するが、特に夏場に外部気温が高いとセル内部は熱が暴走して性能低下に大きな影響を及ぼすので、空気電池セル100の内部の冷却が十分になるように構成する必要がある。本実施形態によれば、個々の空気電池セル100の表裏のトップ空間層170及びボトム空間層180の構造、隣接する空気電池セル100、100の境界102に存在するトップ空間層170及びボトム空間層180中の空気流路、隣接する空気電池セル100、100の境界102に対向する複数の吸気口511、空気電池アセンブリ200とファン400との間の排気空間室513等の構造により、空気電池セル100の内部を効率的に冷却し同時に化学反応のための酸素を効率的に供給することが可能となる。
【0104】
本実施形態の構造によれば、空気電池セル100を効果的に冷却することで、充電器300に対する高温の影響も抑制することができる。災害時の非常用電源のため、長期保存及び長期備蓄に適した充電器付き空気電池パック10は、小型であることが望ましい。特に、筐体500(1辺が数cm~十数cm程度の直方体状)に、空気電池アセンブリ200(1辺が数cm~十数cmの直方体状)及び充電器300を収容するため、空気電池アセンブリ200と充電器300とが極めて近い位置にある。このため、充電器300は空気電池アセンブリ200の発熱の影響を受けざるを得ない。本実施形態によれば、空気電池セル100を効果的に冷却することで、充電器300に対する高温の影響をできる限り抑制し、充電器300の故障を防ぐことを図れる。これにより、空気電池アセンブリ200の寿命短縮の抑制と共に充電器300の寿命短縮の抑制も期待でき、災害時の非常用電源のため、長期保存及び長期備蓄に適した充電器付き空気電池パック10を実現することが可能となる。
【0105】
本技術の各実施形態及び各変形例について上に説明したが、本技術は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく、本技術の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0106】
10 充電器付き空気電池パック
100 空気電池セル
101 空気電池
102 境界
110 酸素導入層
111 酸素導入面
120 電解質層
130 金属層
140 カバー部
150 トップカバー
151 ポスト部
152 トップ部
153 開口
154 トップカバー側壁部
155 交点
156 トップ面
157 配線窓
160 ボトムカバー
161 ボトムカバー側壁部
162 ボトム部
163 フィン
164 ボトム面
165 中央部
166 ブレード
167 先端
170 トップ空間層
171 格子空間室
180 ボトム空間層
200 空気電池アセンブリ
300 充電器
301 回路基板
310 充電コントローラ回路
311 充電用出力端子
320 回路
330 電源スイッチ
400 ファン
500 筐体
511 吸気口
512 排気口
513 排気空間室
【要約】
【課題】特に災害時での電子機器の充電に適した充電器付き空気電池パックと、その充電器付き空気電池パックに適した空気電池セル、空気電池セルアセンブリ及び充電器とを提供する。
【解決手段】空気電池セルは、酸素導入面を有し、正極活物質としての空気中の酸素を導入するための酸素導入層と、前記酸素導入層の前記酸素導入面と逆の面に積層された電解質層と、前記電解質層に積層され、負極活物質としての金属を含む金属層と、前記酸素導入面よりも積層方向に突出するポスト部と、前記ポスト部の突出端に設けられ、前記酸素導入面の少なくとも一部を前記積層方向に露出させる複数の開口を有するトップ部と、を有し、前記電解質層及び前記金属層を密封するカバー部と、前記トップ部と前記酸素導入面との間のトップ空間層と、を具備する。
【選択図】
図13