(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】カプセルを含有する液状化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/04 20060101AFI20230314BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20230314BHJP
A61K 8/11 20060101ALI20230314BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20230314BHJP
A61K 8/73 20060101ALI20230314BHJP
A61K 8/81 20060101ALI20230314BHJP
A61K 8/92 20060101ALI20230314BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
A61K8/04
A61K8/02
A61K8/11
A61K8/34
A61K8/73
A61K8/81
A61K8/92
A61Q19/00
(21)【出願番号】P 2020521537
(86)(22)【出願日】2017-12-18
(86)【国際出願番号】 EP2017083323
(87)【国際公開番号】W WO2019120473
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-10-06
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502189579
【氏名又は名称】エルブイエムエイチ レシェルシェ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(74)【代理人】
【識別番号】100189452
【氏名又は名称】吉住 和之
(72)【発明者】
【氏名】菊池 真弘
(72)【発明者】
【氏名】小澤 舞
(72)【発明者】
【氏名】迫田 剛嘉
【審査官】松元 麻紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-284607(JP,A)
【文献】特開2003-238351(JP,A)
【文献】特表2000-502677(JP,A)
【文献】特開平05-310529(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/04
A61K 8/02
A61K 8/11
A61K 8/34
A61K 8/73
A61K 8/81
A61K 8/92
A61Q 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
油性成分を封入した、全体が寒天からなっている寒天外殻を含むカプセルと、
分子量(Mw)が500以下の低分子ポリオールと、(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸アルキル共重合体又はその塩、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸アルキル共重合体の誘導体又はその塩、これらの共重合体の架橋型及び多糖類からなる群より選ばれる少なくとも一種のポリマーと、を含む水性媒体と、を含有する、水性媒体中にカプセルを含有する液状化粧料であって、
前記低分子ポリオールの含有量は、前記液状化粧料全量を基準として、7質量%以上であり、
前記カプセルは、前記水性媒体とは異なる比重を有し、容器に収容されたときに前記カプセルは前記水性媒体から分離し、前記容器を振盪することにより、化粧料が施用されるまで前記カプセルが前記水性媒体中に分散状態にする
、
液状化粧料。
【請求項2】
前記油性成分は、色素を含有する、請求項1記載の液状化粧料。
【請求項3】
請求項1
又は2に記載の液状化粧料を備える容器を取り上げて手に保持するステップと、
前記水性媒体中に前記カプセルを分散状態にするために、前記容器を手で振盪するステップと、
前記液状化粧料を容器からくみ出すステップと、
前記化粧料を手で肌に施用してすり込み、前記カプセルの外殻の崩壊の後に前記油性成分が肌に漏出するようにするステップと、を含む、肌の水分補給及びナリシング方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液状化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
肌を保湿し、及び肌荒れ等の問題に役立つために、化粧水、乳液、美容液の形態で化粧料が使用されてきた。最近の化粧料材料には、美容成分を含むカプセル又はゲル状の粒子が分散されたものがある。特許文献1には、光輝性粉体を包含するハイドロゲル粒子を含有する化粧料が開示されている。開示されているハイドロゲル粒子は、それらの沈降又は浮遊を抑制するゲル中に分散されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【0004】
水性媒体に分散されたカプセルを有する従来の化粧料は、通常、時間の経過と共に濁り、化粧料の外観に悪影響を与えるのみならず、その均一性も損ない、その後肌に施用されると、本来の保湿力又はエモリエント効果を十分に発揮できない。
【0005】
本発明者らは、従来のカプセル含有水性化粧料が、衝撃又は経時的変化により損傷を受け、カプセルの内容物が漏出することを見出した。さらに、水性媒体中に低分子ポリオールのような成分が存在する場合、それらは、カプセルの内容物(油性成分を含む)を水性媒体中に抽出させる。結果として、そのような化粧料は濁る傾向がある。
【0006】
本発明の目的は、本来のスキンケア効果を長期間にわたって維持しながら、経時的に生じる濁りが少ない、水性媒体中にカプセルを含有する液状化粧料(カプセル含有液状化粧料)を提供することにある。
【0007】
具体的には、本発明は、油性成分を封入した寒天外殻を含むカプセルと、低分子ポリオールと、(メタ)アクリルポリマー及び多糖類からなる群より選ばれる少なくとも一種のポリマーと、を含む水性媒体と、を含有する、水性媒体中にカプセルを含有する液状化粧料を提供する。
【0008】
本発明の液状化粧料は、水性媒体中の低分子ポリオールと組み合わせて、(メタ)アクリルポリマー及び多糖類からなる群より選ばれる少なくとも一種を更に添加していることに加えて、カプセルに寒天外殻を使用している。これにより、衝撃による損傷が驚くほど減少し、また、低分子ポリオールによるカプセルからの油性成分の漏出が少なくなり、そのため、油性成分により引き起こされる経時的な濁り(特に低温での濁り)が低下する。また、この化粧料は経時的に高い安定性を維持するため、本来の効果が長期間にわたり持続する。
【0009】
この液状化粧料はまた、カプセルの外殻に寒天を含み、寒天自身の水分保持能力が、保湿剤として機能し得る低分子ポリオールと共に機能し、これにより肌への保湿効果が高まり持続するのに役立つ。さらに、カプセルに封入された油性成分は、肌に対して保湿効果、ナリシング効果、及びエモリエント効果をもたらすことができる。
【0010】
カプセル中に色素を含むことにより化粧料の美観が向上するため、油性成分が色素を含有していてもよい。しかしながら、従来のカプセル含有水性化粧料では、添加された色素はカプセルの内容物と共に水性媒体中に漏出する傾向があり、これは美観を向上させる(カプセルに色素を添加する目的)よりもむしろ製品の不安定さを顕著にする傾向があるため、そのようなカプセルに色素を添加することは実現可能でなかった。しかし、本発明の液状化粧料では、色素はカプセル中に長期間安定してとどまり、外殻を形成する寒天の透明性により、高い美観を維持しながら化粧料本来の効果が奏される。
【0011】
カプセルは、水性媒体とは異なる比重を有してもよい。容器に充填された場合、カプセルは水性媒体の上部又は下部のいずれかにとどまる。これにより、液状化粧料にカプセルを含む層と水性媒体を含む層の二層の分離層が形成され、上記の機能に加えて、優れた美観が提供される。
【0012】
カプセルの比重が水性媒体の比重と異なる液状化粧料では、容器に収容されたカプセルは水性媒体から分離して存在する傾向がある。しかしながら、容器の振盪により、化粧料が施用されるまでの間、カプセルが水性媒体中に分散した状態に保つことができる。
【0013】
このタイプの液状化粧料を振盪したとき、カプセルを含む層と水性媒体を含む層に直ちに分離することなく、水性媒体中にカプセルが分散した状態を一定期間維持することができるため、カプセルが分散した状態で液状化粧料をより容易に使用でき、化粧料の機能をより容易かつ確実に発揮させることができる。
【0014】
本発明によれば、本来のスキンケア効果を長期間にわたって維持しながら、経時的に生じる濁りが少ない、水性媒体中にカプセルを含有する液状化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0016】
好ましい実施形態に係る液状化粧料(カプセル含有液状化粧料)は、水性媒体中に、油性成分を封入したカプセルを含有する。
【0017】
ここで、「カプセル」とは、寒天外殻と内容物から構成され、内容物は外殻に封入されている。カプセルの形状は、例えば、球状、紡錘形状であってよい。
【0018】
「寒天外殻」とは、寒天を含有する外殻をいい、全体が寒天からなっていてもよく、寒天以外の他の成分を一部含有してもよい。そのような他の成分は、アルギン酸塩、カラギーナン等が挙げられ、アルギン酸塩は、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、リチウム塩などの無機塩が含まれる。寒天は肌からの水分を保持しやすいため、カプセルの外殻に寒天が存在することにより、液状化粧料の肌に対する保湿効果を高めることができるとともに、保湿効果の持続時間も長くすることができる。その耐久性を高めるためには、外殻は好ましくは寒天のみからなる。
【0019】
カプセル中の油性成分には以下のものが含まれる:(1)油分、(2)油溶性又は油分散性成分、そして(3)これらを組み合わせた成分。油性成分が(1)~(3)を含有すれば、油性成分は本発明の効果を阻害しない範囲で他の成分を含有してもよい。
【0020】
油分には、炭化水素油、油脂、ロウ、硬化油、エステル油、脂肪酸、シリコーン油、フッ素系油等が含まれる。カプセルに油分が封入されることにより、液状化粧料は、肌に対して高いナリシング効果を与えることができる。
【0021】
炭化水素油には、流動パラフィン、軽質流動イソパラフィン、ドデカン、イソドデカン、テトラデカン、イソテトラデカン、ヘキサデカン、イソヘキサデカン、スクワラン、植物性スクワラン、ワセリン、ポリイソブチレン、ポリブテン等が含まれる。
【0022】
油脂には、モクロウ、オリーブ油、ヒマシ油、ミンク油、マカデミアンナッツ油、カメリア油、ローズピップ油、アボカド油等が含まれる。
【0023】
ロウには、ミツロウ、ラノリン、カルナウバワックス、キャンデリラワックス、ゲイロウ等が含まれる。
【0024】
エステル油には、ホホバ油、セチルイソオクタネート、トリ(カプリル酸/カプリン酸)グリセリル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、トリオクタン酸グリセリル(トリエチルヘキサノイン)、ジイソステアリン酸ポリグリセリル、トリイソステアリン酸ジグリセリル、トリベヘン酸グリセリル、リンゴ酸ジイソステアリル、ジオクタン酸ネオペンチルグリコール、コレステロール脂肪酸エステル等が含まれる。
【0025】
脂肪酸には、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸等が含まれる。
【0026】
シリコーン油には、ポリジメチルシロキサン(ジメチコン)、ポリメチルフェニルシロキサン(ジフェニルジメチコン)、フェニルトリメチコン、ジフェニルシロキシフェニルトリメチコン、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、カルボキシ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等が含まれる。
【0027】
フッ素系油には、パーフルオロポリエーテル、パーフルオロデカリン、パーフルオロオクタンが含まれる。
【0028】
油溶性又は油分散性成分は、色素、有効成分、又は酸化剤等の他の補助剤であってよい。
【0029】
油分の含有量は、油性成分(カプセルの内容物)全量を基準として、0~100質量%であってよく、好ましくは50~100質量%である。油分の含有量が0質量%の場合は、油溶性又は油分散性成分が含まれる。
【0030】
油性成分中に含まれ得る色素には、油溶性色素、油分散性色素が含まれる。油溶性色素を使用する場合、色素は油のみに可溶であるか、油とアルコールの両方に可溶であるかのいずれかであり得る。油のみに溶解する色素の例は、マリーゴールド色素(マリーゴールド顔料)である。青色403号(スダンブルーB)は、油及びアルコールに溶解する色素の例である。油分散性色素を使用する場合、色素は油に分散可能なものであってよく、水溶性色素として分類されるものであってよい。赤色103号-(1)、黄色4号、青色1号は油分散性色素の例である。
【0031】
色素の含有量は、油性成分(カプセルの内容物)全量を基準として、0~20質量%であってよい。
【0032】
油性成分に添加し得る有効成分としては、肌荒れ、しわに対抗する効果を含む、肌への美容効果を有するものが挙げられる。このような有効成分の例には、脂溶性ビタミン、具体的には、レチノール、パルミチン酸レチノール、酢酸レチノール等のビタミンA、エルゴカルシフェロール又はコレカルシフェロール等のビタミンD、トコフェロール、トコトリエノール等のビタミンE等が挙げられる。有効成分は、アスタキサンチン、リコピン又はフコキサンチン等のカロチノイドの場合と同様に、色素としても機能してよい。
【0033】
有効成分の含有量は、油性成分(カプセルの内容物)全量を基準として0~100質量%であってよく、好ましくは0~50質量%である。
【0034】
カプセルの平均粒径は、好ましくは0.1mm以上であり、より好ましくは0.3mm以上であり、更に好ましくは0.5mm以上であり、また、好ましくは8mm以下であり、より好ましくは6mm以下であり、更に好ましくは4mm以下である。これにより、外殻の厚さを十分に確保でき、優れた外観を呈しつつ、油性成分を完全に封入できる。カプセルの平均粒径は、少なくとも10個の粒子を含む液状化粧料の領域を画像化して、それらの画像から粒径の平均を算出することにより計算できる。
【0035】
カプセルの外殻の厚さは、好ましくはカプセルの平均粒径の2~90%であり、この割合はより好ましくは5~80%である。外殻の厚さをこの範囲内にすることにより、それらの中の油性成分の漏出をより効果的に抑制でき、衝撃による損傷を低減できる。
【0036】
カプセルの比重は、水性媒体の比重とは異なっていてよい。すなわち、カプセルの比重は、水性媒体の比重より大きくても小さくてもよい。これにより、液状化粧料を静置したときにカプセルが水性媒体中に沈降又は浮遊するため、二層の外観を有する液状化粧料が提供される。カプセルの比重は、水性媒体の比重よりも小さいことが好ましい。
【0037】
カプセルの比重が水性媒体の比重と異なる場合、容器に収容されたカプセルは水性媒体と分離した状態になるが、容器を手で振盪することにより、化粧料が施用されるまでカプセルを水性媒体中に分散した状態に保つことができる。例えば、容量が10~500mLの容器を3~5回振盪することで、水性媒体中のカプセルの分散状態を1分間~12時間維持することができる。1分間~12時間のカプセルの分散は、化粧料を肌等に施用するのに十分な時間である。カプセルの比重は、水性媒体の比重の±20%以内が好ましく、それらの間の差が小さいほど、より長い分散時間となる。
【0038】
液状化粧料の保湿効果をより高めるためには、カプセルの含有量は、液状化粧料全量を基準として、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、更に好ましくは15質量%以上である。カプセルの寒天外殻の崩壊をより効果的に抑制し、優れた外観の液状化粧料を得るために、カプセルの含有量は、液状化粧料全量を基準として、好ましくは65質量%以下、より好ましくは60質量%以下、更に好ましくは55質量%以下であり、また、20質量%~50質量%であることが好ましい。
【0039】
本実施形態の水性媒体は、水と、(メタ)アクリルポリマー及び多糖類からなる群より選ばれる少なくとも一種と、低分子ポリオールと、を含む。「(メタ)アクリル」との用語は、アクリル又はメタクリルを指し、同様のことが他の類似の骨格にも当てはまる。
【0040】
使用する水は、蒸留水、精製水、温泉水、深層水、又は、ラベンダー水、ローズ水、オレンジフラワー水等の植物由来の水蒸気蒸留水であってよい。水の含有量は、液状化粧料全量を基準として、20質量%以上、23質量%以上、又は25質量%以上であってよく、80質量%以下、75質量%以下、又は70質量%以下であってよい。
【0041】
(メタ)アクリルポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキル共重合体、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸アルキル共重合体又はその塩、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸アルキル共重合体の誘導体又はその塩であってよい。上記の共重合体は、それらの架橋型も含む。
【0042】
いくつかの使用可能な共重合体は、アクリル酸アルキル共重合体:アキュリン33(ローム・アンド・ハース社);アクリル酸-メタクリル酸アルキル共重合体(架橋型を含む):ペムレンTR-1、ペムレンTR-2、カーボポールETD2020、カーボポール1382、カーボポール1342、ウルトレッツ20ポリマー、ウルトレッツ21ポリマー(Lubrizol Advanced Materials社);アクペックHV-501ER、アクペックSER W-300C、アクペックSER W-150C(住友精化(株));そして、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸アルキル共重合体にポリオキシエチレンアルキルエーテルがエステル結合した、アクリル酸-メタクリル酸-アクリル酸アルキル-メタクリル酸アルキル-メタクリル酸のポリオキシエチレンアルキルエーテルエステル共重合体(例えば、アクリル酸アルキル-メタクリル酸アルキル-ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル共重合体(アキュリン22、ローム・アンド・ハース社)のような、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸アルキル共重合体の誘導体又はその塩が含まれる。
【0043】
好ましい(メタ)アクリルポリマーは、アクリレーツ/C10-30アルキルアクリレート又はアクリレーツ/C10-30アルキルアクリレートクロスポリマーである。具体的には、好ましい共重合体は、(a)アルキル基の炭素数が10~30の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、(メタ)アクリル酸とをモノマー単位として含む共重合体、(b)アルキル基の炭素数が10~30の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、(メタ)アクリル酸と、ペンタエリスリトールアリルエーテルとをモノマー単位として含む架橋型共重合体、(c)アルキル基の炭素数が10~30の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、(メタ)アクリル酸と、スクロースアリルエーテルと、をモノマー単位として含む架橋型共重合体、及び(d)アルキル基の炭素数が10~30の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、(メタ)アクリル酸と、ペンタエリスリトールアリルエーテルと、スクロースアリルエーテルとをモノマー単位として含む架橋型共重合体、からなる群より選ばれる一つ以上である。上述した、ペムレンTR-1、ペムレンTR-2、カーボポールETD2020、カーボポール1342、カーボポール1382、ウルトレッツ20ポリマー、ウルトレッツ21ポリマー、アクペックSERW-300C、アクペックSER W-150Cは、このような共重合体の例である。
【0044】
(メタ)アクリルポリマーの含有量は、液状化粧料全量を基準として、好ましくは0.005質量%以上であり、より好ましくは0.007質量%以上であり、更に好ましくは0.01質量%以上であり、また、好ましくは0.20質量%以下であり、より好ましくは0.10質量%以下であり、更に好ましくは0.05質量%以下である。
【0045】
多糖類は、例えば、キサンタンガム、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸ナトリウム、アセチル化ヒアルロン酸であってよく、生物由来であってよい。生物由来の多糖類には、グルクロン酸、マンノース及びキシロースを構成単糖に有する、シロキクラゲ多糖体(シロキクラゲから抽出される)(例えば、商品名 Tremoist TP、日本精化(株))が含まれる。
【0046】
多糖類の含有量は、液状化粧料全量を基準として、好ましくは0.003質量%以上であり、より好ましくは0.005質量%以上であり、更に好ましくは0.007質量%以上であり、また、好ましくは0.5質量%以下であり、より好ましくは0.3質量%以下であり、更に好ましくは0.2質量%以下である。この範囲によれば、寒天外殻の崩壊又はカプセルからの油性成分の漏出を更に低減することができる。
【0047】
液状化粧料が(メタ)アクリルポリマー及び多糖類からなる群より選ばれる少なくとも一種を含有する場合、寒天外殻の崩壊及び水性媒体への油性成分の漏出又は分散が少なくなり、したがって、液状化粧料の濁りが抑制される。(メタ)アクリルポリマー及び多糖類は、水性媒体の粘度を増加させる効果を有し、これにより、カプセルが浮上又は沈降した後に液状化粧料を振盪したときに、水性媒体中のカプセルの分散状態を一定時間維持することができる。
【0048】
カプセルに封入される油性成分が、油のみに可溶であるか、油とアルコールの両方に可溶油溶性色素(アルコール溶解性色素)である油溶性色素を含有する場合、(メタ)アクリルポリマー及び多糖類を併用してもよい。
【0049】
「低分子ポリオール」は、その分子量(Mw)が8000以下、好ましくは1500以下、更に好ましくは500以下のものとして定義される。低分子ポリオールは、1,3-プロパンジオール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ジプロピレングリコール、PEG-8のようなポリエチレングリコール等のグリコール、グリセリン、ジグリセリン、ポリグリセリン等のグリセロール、ソルビトール等の糖アルコールであってよい。低分子ポリオールは一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0050】
低分子ポリオールの含有量は、液状化粧料全量を基準として、好ましくは3質量%以上であり、より好ましくは5質量%以上であり、更に好ましくは7質量%以上である。これにより、液状化粧料の保湿効果を更に高めることができ、液状化粧料の腐敗を防ぎ長期間保存することができる。低分子ポリオールの含有量は、液状化粧料全量を基準として、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは25質量%以下であり、更に好ましくは20質量%以下である。
【0051】
本実施形態の液状化粧料は、上記の各種原料の他、一価アルコール、pH調整剤、電解質、香料、乳化剤、可溶化剤、酸化防止剤、退色防止剤、安定化剤等を適宜含有してもよい。
【0052】
電解質は、液状化粧料を安定化させると共に、保湿効果、又は肌への美白、抗炎症効果といった美容効果も発揮できる。電解質の例としては、エデト酸、クエン酸、乳酸、グリコール酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、グリチルリチン酸及びこれらの塩が挙げられる。電解質は、一種のみを用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0053】
一価アルコールは防腐剤として作用し、例えば、フェノキシエタノールが用いられ得る。pH調整剤が使用される場合、例えば水酸化ナトリウムであってよい。
【0054】
液状化粧料の粘度は、以下の条件で回転レオメーターRheolab QCを使用して測定した場合、20mPas以上、30mPas以上、又は50mPas以上であってよく、また、1200mPas以下、800mPas以下、又は600mPas以下であってよい(スピンドル:CC27;回転速度:200rpm;測定時間:3分間)。
【0055】
液状化粧料は、水と、必要に応じて一価アルコールとを混合し、混合物に(メタ)アクリルポリマー及び/又は多糖類を添加して膨潤させ、次に中和のために必要に応じてpH調整剤を加え、その後他の原料を追加し混合することにより調製できる。
【0056】
上記の各実施形態の液状化粧料は、ローション(化粧水)及び美容液としての使用に特に適している。
【実施例】
【0057】
次に、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されることを意味するものではない。
【0058】
<実施例1~4、比較例1~3>
表1に記載された組成で、水性媒体中にカプセルを含有する液状化粧料を調製した。まず、(メタ)アクリルポリマー(欄「b」)及び/又は多糖類(欄「c」)を、水とフェノキシエタノール(欄「a」)の水溶液に添加して、(メタ)アクリルポリマー及び/又は多糖類を膨潤させた。その後、水酸化ナトリウム水溶液又は水(欄「d」)を添加し、更に低分子ポリオール(欄「e」)及び油性成分を封入した寒天外殻のカプセル(欄「f」)を添加した後、これらの成分を混合して液状化粧料を作製した。成分の含有量(質量%)は表1に示すとおりである。
【0059】
<安定性評価>
(1)50℃で1か月
各化粧料を透明容器に収容し蓋で密閉して、その後50℃で1か月間保管した。保管期間後、媒体の濁り又はカプセルからの油性成分の漏出がないか、各化粧料を観察した。媒体の濁りがなく、カプセルからの油性成分の漏出も観察されなかったものを「A」、濁りが発生したものを「B」、そして、油性成分の漏出があったものを「C」と評価した。結果を表1に示す。
【0060】
(2)-18℃での凍結試験
各化粧料を透明容器に収容し蓋で密閉して、その後-18℃で1週間保管した。媒体の濁りがなく、カプセルからの油性成分の漏出も観察されなかったものを「A」、濁りが発生したものを「B」、そして、油性成分の漏出があったものを「C」と評価した。結果を表1に示す。
【0061】
<官能評価>
実施例1~4及び比較例1~3の液状化粧料の保湿効果は、本発明者らが所属する組織の化粧品専門評価パネルにより、肌への単回使用試験において評価され、評価は以下の基準でなされた。結果を表1に示す。
A:強い効果
B:中程度の効果
C:効果なし
【0062】
<分散状態の維持>
実施例1~4の液状化粧料では、カプセルが水性媒体の上層に分離して存在していた。実施例1~4の液状化粧料を、30mLの容器に入れ、手で上下に3回振ると、いずれの実施例においても、1~300分間カプセルが水性媒体中に分散状態で保たれたことが観察された。この時間は、化粧料を肌等に施用するのに十分であった。
【0063】