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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】採血容器
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/48 20060101AFI20230314BHJP
【FI】
G01N33/48 J
G01N33/48 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020527440
(86)(22)【出願日】2019-06-19
(86)【国際出願番号】 JP2019024292
(87)【国際公開番号】W WO2020004174
(87)【国際公開日】2020-01-02
【審査請求日】2021-12-28
(31)【優先権主張番号】P 2018120854
(32)【優先日】2018-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390037327
【氏名又は名称】積水メディカル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000224949
【氏名又は名称】徳山積水工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】丹生谷 雅敏
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第06329031(US,B1)
【文献】特開平10-010121(JP,A)
【文献】中国実用新案第2448284(CN,Y)
【文献】米国特許出願公開第2015/0023939(US,A1)
【文献】特表2010-517523(JP,A)
【文献】特開2001-269328(JP,A)
【文献】特開昭59-093330(JP,A)
【文献】国際公開第1998/055529(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0256589(US,A1)
【文献】特開2008-099990(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48
A61B 5/15
A61B 5/154
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Scopus
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口端と側面部と底面部とを有する採血容器本体と、前記開口端に挿入された栓体とを備え、
前記側面部の平均厚みに対する前記底面部の先端の厚みの比が、1.25以上1.75以下であり、
前記採血容器本体の材料が、固有粘度が0.75dL/g以上0.79dL/g以下であるポリエチレンテレフタレートを含み、
前記採血容器本体の材料100重量%中、前記固有粘度が0.75dL/g以上0.79dL/g以下であるポリエチレンテレフタレートの含有量が、95重量%以上である、採血容器。
【請求項2】
前記底面部の先端の厚みが、1.25mm以上1.75mm以下である、請求項1に記載の採血容器。
【請求項3】
血清または血漿分離用組成物を備え、
前記血清または血漿分離用組成物が、前記採血容器本体に収容されている、請求項1又は2に記載の採血容器。
【請求項4】
血餅剥離剤を備え、
前記血餅剥離剤が、前記採血容器本体の内壁面に付着している、請求項1~3のいずれか1項に記載の採血容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】

本発明は、採血容器に関する。
【背景技術】
【0002】

臨床検査において、血液を採取するために採血管等の採血容器が広く用いられている。また、血清または血漿分離用組成物が内部に収容されている採血容器を用いることで、採取した血液(全血)から血清又は血漿を分離することができる。
【0003】

採血容器の一例として、下記の特許文献1には、開口された第1端を有する管本体と、上記管本体の第1端に接合されて上記開口を閉塞するシートと、弾性変形により管本体の長手方向に対して開口可能な止血弁とを備える採血容器が開示されている。上記止血弁は、上記管本体内において、当該管本体の長手方向に対して上記第1端側と反対側とを区画するように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】

【文献】特開2010-154909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】

採血後の採血容器は、血液から血清又は血漿を分離するために遠心分離された後、該採血容器の上部にドライアイス等を載せることにより、低温環境下(例えば-20℃以下)で保管又は輸送されることがある。この場合には、ドライアイス等の影響により、採血容器の上方に位置する血清又は血漿等の血液由来サンプルから凍結が始まる。
【0006】

血清及び血漿等の血液由来サンプルは水分を多く含むため、上記血液由来サンプルを凍結すると、凍結前と比べて体積が増加する。このため、上記の方法で採血容器を保管等すると、採血容器の上方に位置する血液由来サンプルが先に凍結することによって、採血容器の下方に位置する血液由来サンプルの凍結膨張が抑えられ、採血容器の底面部に力が加わる。
【0007】

特許文献1に記載のような従来の採血容器では、採血容器本体の底面部の強度が低く、上記の方法で凍結した場合に、血液由来サンプルの凍結膨張に起因して、該底面部にひび又は割れが生じることがある。
【0008】

本発明の目的は、採血後の採血容器が低温環境下に晒された場合でも、底面部のひび又は割れを防ぐことができる採血容器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】

本発明の広い局面によれば、開口端と側面部と底面部とを有する前記採血容器本体と、前記開口端に挿入された栓体とを備え、前記側面部の平均厚みに対する前記底面部の先端の厚みの比が、1.25以上1.75以下であり、採血容器本体の材料が、固有粘度が0.75dL/g以上0.79dL/g以下であるポリエチレンテレフタレートを含む、採血容器が提供される。
【0010】

本発明に係る採血容器のある特定の局面では、前記底面部の先端の厚みが、1.25mm以上1.75mm以下である。
【0011】

本発明に係る採血容器の他の特定の局面では、血清または血漿分離用組成物を備え、前記血清または血漿分離用組成物が、前記採血容器本体に収容されている。
【0012】

本発明に係る採血容器のさらに他の特定の局面では、血餅剥離剤を備え、前記血餅剥離剤が、前記採血容器本体の内壁面に付着している。
【発明の効果】
【0013】

本発明に係る採血容器は、開口端と側面部と底面部とを有する採血容器本体と、上記開口端に挿入された栓体とを備える。本発明に係る採血容器では、上記側面部の平均厚みに対する上記底面部の先端の厚みの比が、1.25以上1.75以下である。本発明に係る採血容器では、上記採血容器本体の材料が、固有粘度が0.75dL/g以上0.79dL/g以下であるポリエチレンテレフタレートを含む。本発明に係る採血容器では、上記の構成が備えられているので、採血後の採血容器が低温環境下に晒された場合でも、底面部のひび又は割れを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】

図1図1は、本発明の一実施形態に係る採血容器本体の正面断面図である。
図2図2(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係る栓体の正面図及び正面断面図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係る採血容器の正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】

以下、本発明を詳細に説明する。
【0016】

本発明に係る採血容器は、開口端と側面部と底面部とを有する採血容器本体と、上記開口端に挿入された栓体とを備える。本発明に係る採血容器では、上記側面部の平均厚みに対する上記底面部の先端の厚みの比が、1.25以上1.75以下である。本発明に係る採血容器では、上記採血容器本体の材料が、固有粘度が0.75dL/g以上0.79dL/g以下であるポリエチレンテレフタレートを含む。
【0017】

本発明に係る採血容器では、上記の構成が備えられているので、採血後の採血容器が低温環境下に晒された場合でも、底面部のひび又は割れを防ぐことができる。
【0018】

また、本発明に係る採血容器では、側面部のひび又は割れも防ぐことができる。
【0019】

一般に、採血容器本体の底面部は、丸みを有する。例えば、採血容器の底面部の外形は、採血容器本体を正面視したときに、円弧状又は楕円弧状である。従来の採血容器では、採血容器本体の成形性を高めるために、採血容器本体の材料として固有粘度の小さい樹脂(例えば、固有粘度が0.6dL/g程度のポリエチレンテレフタレート)が用いられている。また、従来の採血容器では、採血容器本体の側面部の厚みと底面部の厚みとはほぼ同一である。このため、従来の採血容器では、採血容器本体の底面部の強度が低く、血液由来サンプルの凍結膨張に起因して、該底面部にひび又は割れが生じることがある。
【0020】

これに対して、本発明に係る採血容器では、採血容器本体の材料として、特定の固有粘度を有するポリエチレンテレフタレートを含む材料が用いられており、かつ採血容器本体が特定の形状を有するので、底面部の強度を高めることができる。そのため、血液から血清又は血漿を分離するために遠心分離された採血容器の上部にドライアイス等を載せるなどして採血容器が低温環境下(例えば-20℃以下)に晒された場合でも、底面部のひび又は割れを防ぐことができる。
【0021】

本発明では、採血容器本体の底面部の強度を高めるために、採血容器本体全体の厚み(側面部の厚みと底面部の厚み)を大きくするのではなく、底面部の厚みを側面部の厚みと比べて相対的に大きくしている。そのため、一般に用いられている自動分析装置の搬送装置に用いることができ、また、採血容器本体全体の厚みを大きくする採血容器に比べて製造コストを抑えることができる。
【0022】

以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態を説明する。
【0023】

図1は、本発明の一実施形態に係る採血容器本体の正面断面図である。
【0024】

採血容器本体1は、開口端1aと、側面部1bと、底面部1cとを有する。採血容器本体1の一端は開口しており、該一端とは反対の他端は閉じられている。側面部1bと底面部1cとは、連なっている。採血容器本体1は、一端に開口端1aを有し、他端に底面部1cの先端11cを有する。
【0025】

底面部1cは、丸みを有する。底面部1cの外形は、採血容器本体1を正面視したときに、円弧状又は楕円弧状である。側面部1bの外形は、採血容器本体1を正面視したときに、円弧状及び楕円弧状ではない。底面部の外形形状と側面部の外形形状とを観察することにより、底面部と側面部とを区別することができる。
【0026】

採血容器本体1の側面部1bの平均厚みに対する底面部1cの先端11cの厚みの比(底面部1cの先端11cの厚み/側面部1bの平均厚み)は、1.25以上1.75以下である。上記比(底面部1cの先端11cの厚み/側面部1bの平均厚み)が1.25未満であると、底面部の強度が劣ることがあり、採血後の採血容器が低温環境下に晒された場合に、底面部のひび又は割れが発生することがある。上記比(底面部1cの先端11cの厚み/側面部1bの平均厚み)が1.75を超えると、成形時にヒケが発生することがある。
【0027】

側面部1bの平均厚みに対する底面部1cの先端11cの厚みの比(底面部1cの先端11cの厚み/側面部1bの平均厚み)は、好ましくは1.3以上、好ましくは1.6以下である。上記比(底面部1cの先端11cの厚み/側面部1bの平均厚み)が上記下限以上であると、底面部の強度をより一層高めることができ、採血後の採血容器が低温環境下に晒された場合でも、底面部のひび又は割れをより一層効果的に防ぐことができる。上記比(底面部1cの先端11cの厚み/側面部1bの平均厚み)が上記上限以下であると、成形不良を減らすことができる。
【0028】

上記側面部の平均厚みは、採血容器本体の開口端から底面部に向けて10mm下がった位置より10mm間隔で選択した5以上の地点の側面部の厚みを求め、各地点の厚みを平均することにより求められる。
【0029】

側面部1bの平均厚みは、好ましくは0.8mm以上、より好ましくは0.9mm以上、好ましくは1.5mm以下、より好ましくは1.3mm以下である。側面部1bの平均厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、採血容器本体の強度をより一層高めることができる。
【0030】

底面部1cの先端11cの厚みは、好ましくは1.25mm以上、より好ましくは1.3mm以上、好ましくは1.75mm以下、より好ましくは1.6mm以下である。底面部1cの先端11cの厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、底面部の強度をより一層高めることができ、採血後の採血容器が低温環境下に晒された場合でも、底面部のひび又は割れをより一層効果的に防ぐことができる。
【0031】

側面部1bは、開口端側から底面部側にかけて、内側に傾斜していてもよく、傾斜していなくてもよい。
【0032】

採血容器本体1の材料は、固有粘度が0.75dL/g以上0.79dL/g以下であるポリエチレンテレフタレートを含む。上記固有粘度が0.75dL/g未満又は0.79dL/gを超えると、採血容器本体の成形性に劣り、特定の形状を有する底面部を成形できないことがある。なお、採血容器本体1の材料は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0033】

上記ポリエチレンテレフタレートの固有粘度は、好ましくは0.76dL/g以上、より好ましくは0.78dL/g以下である。上記ポリエチレンテレフタレートの固有粘度が上記下限以上及び上記上限以下であると、成形性をより一層高めることができ、底面部をより一層良好に成形することができる。
【0034】

上記固有粘度は、JIS K7390:2003に準拠して求められる。
【0035】

採血容器本体1の材料は、例えば、上記固有粘度が0.75dL/g以上0.79dL/g以下であるポリエチレンテレフタレート以外のポリエステル等を含んでいてもよい。
【0036】

採血容器本体の材料100重量%中、上記固有粘度が0.75dL/g以上0.79dL/g以下であるポリエチレンテレフタレートの含有量は、好ましくは85重量%以上、より好ましくは90重量%以上、更に好ましくは95重量%以上、特に好ましくは99重量%以上、最も好ましくは100重量%(全量)である。したがって、採血容器本体の材料は、上記固有粘度が0.75dL/g以上0.79dL/g以下であるポリエチレンテレフタレートであることが最も好ましい。
【0037】

図2(a)は、本発明の一実施形態に係る栓体の正面図である。図2(b)は、本発明の一実施形態に係る栓体の正面断面図である。
【0038】

栓体2は、キャップ部材21と栓本体22とを備える。キャップ部材21が栓本体22の外表面を覆うように外装されている。栓本体22の外表面とキャップ部材21の内表面とが、接している。
【0039】

キャップ部材21は、キャップ部材の径方向外側に突出した複数のリブ21aを有する。キャップ部材はリブを備えていてもよく、備えなくていなくてもよい。血液採取後に栓体を採血容器本体から取り外し易くしたり、キャップ部材、栓体、及び採血容器の転がりを防止する等、キャップ部材、栓体、及び採血容器の取り扱い性を高める観点からは、キャップ部材はリブを備えることが好ましい。
【0040】

栓本体22は、上端側に大径部を有し、下端側に小径部を有する。栓本体22は、大径部と小径部とにより、段差が形成されている。
【0041】

栓本体22の材料は、エラストマーであることが好ましい。上記栓本体22の材料は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0042】

上記エラストマーとしては、熱硬化性エラストマー、及び熱可塑性エラストマー等が挙げられる。上記熱硬化性エラストマーとしては、イソプレンゴム、ブチルゴム、ブタジエンゴム、及びスチレン-ブタジエン共重合ゴム等が挙げられる。上記熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系エラストマー等が挙げられる。
【0043】

栓本体22の材料が上記エラストマーである場合、上記栓本体22はゴム栓である。上記栓本体22はゴム栓であることが好ましい。栓本体がゴム栓であると、栓本体が良好に変形できるので、栓本体のキャップ部材からの抜けを効果的に抑えることができる。
【0044】

採血容器のサイズによらずにキャップ部材を使用できるようにする観点からは、キャップ部材21の最大内径は、好ましくは12mm以上、より好ましくは13mm以上、好ましくは18mm以下、より好ましくは17mm以下である。
【0045】

キャップ部材の取り扱い性を良好にする観点からは、キャップ部材21の長さは、好ましくは11mm以上、より好ましくは15mm以上、好ましくは25mm以下、より好ましくは20mm以下である。
【0046】

図3は、本発明の一実施形態に係る採血容器の正面断面図である。
【0047】

採血容器4は、図1に示す採血容器本体1と、図2に示す栓体2と、血清または血漿分離用組成物3とを備える。栓体2は、採血容器本体1の開口端1aに挿入されている。栓本体22の小径部が、採血容器本体1に挿入されている。栓本体22の上記段差部分が採血容器本体1の上端と接している。血清または血漿分離用組成物3は、採血容器本体1に収容されている。
【0048】

本発明に係る採血容器は、血清または血漿分離用組成物を備えることが好ましい。
【0049】

上記血清または血漿分離用組成物は、血液から血清又は血漿を分離する目的で用いられる。
【0050】

血液から血清を分離する際には、血清または血漿分離用組成物が収容されている採血容器の内部に血液を採取した後、遠心分離装置により遠心分離を行う。遠心分離により、血液中の細胞成分及び血液凝固成分等が下方に沈降し(血餅)、上澄みに血清が分離される。このとき、上記血清または血漿分離用組成物は、これらの中間層に位置して、血餅と血清とを隔離する隔壁を形成する。
【0051】

上記血清または血漿分離用組成物として、従来公知の血清または血漿分離用組成物を用いることができる。上記血清または血漿分離用組成物としては、例えば、WO2011/105151A1等に記載の血清または血漿分離用組成物が挙げられる。
【0052】

本発明に係る採血容器は、血餅剥離剤を備えることが好ましい。採血容器4が、血餅剥離剤を備える場合に、該血餅剥離剤は、採血容器本体1の内壁面に付着していることが好ましい。採血容器4が、上記血餅剥離剤を備えることにより、血液が凝固した後に、血餅の採血容器本体1の内壁面への付着を防止することができ、血餅と血清とを良好に分離することができる。
【0053】

上記血餅剥離剤として、従来公知の血餅剥離剤を用いることができる。上記血餅剥離剤としては、例えば、特開2008-304207号公報及び特公平5-10095号公報等に記載の血餅剥離剤が挙げられる。
【0054】

以下、上記採血容器のその他の詳細を説明する。
【0055】

上記採血容器の内圧は特に限定されない。上記採血容器は、内部が排気された上で、上記栓体によって密閉された真空採血容器(真空採血管)であってもよい。上記採血容器が真空採血管である場合、採血者の技術差によらず一定量の血液採取を簡便に行うことができる。
【0056】

細菌感染を防止する観点から、上記採血容器の内部はISO、及びJISに記載の基準に則って滅菌されていることが好ましい。
【0057】

上記採血容器は、血液凝固促進剤、又は血液抗凝固等の目的に応じて、シリカ及びトロンビン等の血液凝固促進剤、並びにヘパリン、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)及びクエン酸等の抗凝固剤等の公知の薬剤をさらに備えていてもよい。例えば、上記採血容器本体の内壁に、上記薬剤を付着させていてもよい。
【0058】

採血容器本体は、該採血容器本体の形状に対応した金型に、採血容器本体の材料を注入し、成形することにより作製することができる。必要に応じて、血餅剥離剤を得られた採血容器本体の内壁面に付着させ、また、得られた採血容器本体に、血清または血漿分離用組成物を収容し、採血容器本体の開口端に栓体を挿入して、採血容器を作製することができる。
【0059】

上記採血容器内に血液を採取する際には、上記採血容器と、血液採取針を備える採血用ホルダーとを用意し、以下の工程1)-3)を行う。工程1)血液採取針の一端の針先を血管に挿入する。工程2)血液採取針の他端の針先が採血容器の栓体を貫通するように、採血容器を採血用ホルダーに挿入する。工程3)採血容器内部の圧力は減圧されているので、血液が血液採取針を介して採血容器内に吸引される。
【0060】

以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明する。本発明は以下の実施例のみに限定されない。
【0061】

以下の栓体を用意した。
【0062】

図2に示す形状を有する栓体

栓本体:ゴム栓(材料:ブチルゴム)

キャップ部材:長さ20mm、最大内径14mm、材料:ポリエチレン
【0063】

以下ようにして血清または血漿分離用組成物を調製した。
【0064】

シクロペンタジエン系オリゴマー(エクソンモービル社製、商品名:ESCOREZ5690)と、トリメリット酸エステル(大日本インキ化学工業社製、商品名:モノサイザーW700)とを130℃で溶解し、液状樹脂成分を調製した。この液状樹脂成分に、ポリアルキレングリコールとして、ポリプロピレングリコール(日油社製、商品名:ユニオールD700)を溶解させ、約30℃まで冷却した。次に、無機粉末として、親水性微粉末シリカ(日本アエロジル社製、商品名:アエロジル200CF)及び疎水性微粉末シリカ(日本アエロジル社製、商品名:アエロジルR974)を液状樹脂成分中に添加し、プラネタリーミキサーで攪拌しつつ、分散させた。このようにして、血清または血漿分離用組成物を調製した。なお、各成分の配合割合は、得られる血清または血漿分離用組成物100重量%に対して、シクロペンタジエン系オリゴマー52.3重量%、トリメリット酸エステル44.2重量%、ポリプロピレングリコール0.8重量%、親水性微粉末シリカ1.0重量%、疎水性微粉末シリカ1.7重量%とした。得られた血清または血漿分離用組成物の25℃における比重は1.05であった。なお、比重は、浮沈法により測定した。
【0065】

以下ようにしてシリカ(凝固促進剤)を含有する血餅剥離剤を調製した。
【0066】

メチルアルコール中に、ポリジメチルシロキサンに水酸基を導入したカルビノール変性シリコーンオイルと、ポリビニルピロリドンと、微粉末シリカ(平均粒径40μm、アマニ油吸油量30ml/100g、BET比表面積12000cm/g、比抵抗値26Ω・cm)とを添加した。このようにして、シリカを含有する血餅剥離剤を調製した。なお、各成分の配合割合は、得られるシリカを含有する血餅剥離剤100重量%に対して、カルビノール変性シリコーンオイル0.1重量%、ポリビニルピロリドン0.1重量%、微粉末シリカ1.0重量%とした。
【0067】

(実施例1)

採血容器本体の作製:

採血容器本体の材料として、固有粘度0.77dL/gのポリエチレンテレフタレートを用意した。上記ポリエチレンテレフタレートを金型に注入し、加熱温度300℃で成形し、図1に示す形状の採血容器本体を作製した。得られた採血容器本体の寸法を以下に示す。なお、ポリエチレンテレフタレートの固有粘度は、JIS K7390:2003に準拠して求めた。また、側面部の平均厚みは、採血容器本体の開口端から底面部に向けて10mm下がった位置より10mm間隔で選択した5以上の地点の側面部の厚みを求め、各地点の厚みを平均することにより求めた。また、得られた採血容器本体では、底面部の先端以外の部分の厚みも、側面部の平均厚みよりも厚くなっている。
【0068】

側面部の平均厚み:1.0mm、側面部の長さ:93mm

底面部の先端の厚み:1.25mm、底面部の長さ:7mm

開口端の内径:11mm

採血容器本体の長さ:100mm
【0069】

採血容器の作製:

得られたシリカを含有する血餅剥離剤を採血容器本体の内壁面にスプレーし、風乾した。次いで、得られた血清または血漿分離用組成物0.9gを採血容器本体内に収容し、採血容器内部を12kPaに減圧し、栓体により密封して採血容器を作製した。なお、採血容器を10本作製した。
【0070】

(実施例2)

金型寸法を変更し、採血容器本体の底面部の先端の厚みを1.5mmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、採血容器本体及び採血容器を作製した。
【0071】

(実施例3)

金型寸法を変更し、採血容器本体の底面部の先端の厚みを1.75mmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、採血容器本体及び採血容器を作製した。
【0072】

(比較例1)

採血容器本体の材料として、固有粘度0.61dL/gのポリエチレンテレフタレートを用いたこと、金型寸法を変更し、採血容器本体の底面部の先端の厚みを1.0mmとしたこと以外は、実施例1と同様にして、採血容器本体及び採血容器を作製した。なお、得られた採血容器本体では、底面部の先端以外の部分の厚みも、側面部の平均厚みと同一である。
【0073】

(評価)

<低温環境下における底面部のひび又は割れ>

得られた採血容器の内部に、25℃における比重を1.080に調製した食塩水0.9gを注入した後、1700Gで5分間の遠心操作を行った。遠心操作を行うことにより、血清または血漿分離用組成物(25℃における比重1.05)が上方に、食塩水が下方に位置するように、血清または血漿分離用組成物と食塩水とを分離した。次いで、25℃における比重が1.000である注射用水2.5mLを注入した。このようにして、採血容器の底面部側から開口端側に向かって、食塩水、血清または血漿分離用組成物、注射用水がこの順に配置された採血容器を作製した。
【0074】

次に、この採血容器を、採血容器本体の底面部が下方となるように試験管立てに立て、採血容器の上端(栓体)上にドライアイスを載せ、発泡スチロール箱内に収納した。発泡スチロール箱内の温度を-40℃以下に保った状態で24時間静置した。
【0075】

静置後、採血容器を室温に放置し、解凍した。その後、採血容器本体の底面部を目視にて観察した。採血容器10本中、底面部にひび又は割れが生じた本数を求めた。
【0076】

採血容器の構成及び結果を下記の表1に示す。
【0077】

【表1】
【符号の説明】
【0078】

1…採血容器本体

1a…開口端

1b…側面部

1c…底面部

2…栓体

3…血清または血漿分離用組成物

4…採血容器

11c…先端

21…キャップ部材

21a…リブ

22…栓本体
図1
図2
図3