(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】アキュムレータ
(51)【国際特許分類】
F04C 29/12 20060101AFI20230314BHJP
F25B 43/00 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
F04C29/12 C
F25B43/00 E
(21)【出願番号】P 2020056169
(22)【出願日】2020-03-26
【審査請求日】2021-03-25
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】惠良 修二
【合議体】
【審判長】窪田 治彦
【審判官】田合 弘幸
【審判官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-138484(JP,A)
【文献】特開平2-67473(JP,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0382995(KR,Y1)
【文献】国際公開第2019/142408(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 29/12
F25B 43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1圧縮部(31a)及び第2圧縮部(31b)を有するロータリー圧縮機(30)の吸入側に配置されるアキュムレータ(10)であって、
上部胴体部(16)と、下部胴体部(18)とを有する、本体ケーシング(15)と、
前記本体ケーシングから前記下部胴体部を貫通して前記第1圧縮部及び前記第2圧縮部それぞれに向けて延びる第1出口管(14a)及び第2出口管(14b)と、
前記本体ケーシングにおいて、前記第1出口管の上端(14a1)及び前記第2出口管の上端(14b1)に接続される接続部(13)と、
を備え、
前記接続部には、前記第1出口管及び前記第2出口管を流れてくる冷媒を合流させる合流部(13a)と、前記合流部から上に延びる筒状の延長部(13b)とが形成されており、
前記第1出口管、前記第2出口管、及び前記延長部は、それぞれ、円管であり、
前記延長部の内径は、前記第1出口管、及び前記第2出口管の内径よりも広
く、
前記延長部の高さ寸法(D1)が、前記第1出口管の内径より大きく、且つ、前記第2出口管の内径よりも大きい、
アキュムレータ(10)。
【請求項2】
前記接続部は、T字状の継手又はY字状の継手である、
請求項
1に記載のアキュムレータ(10)。
【請求項3】
前記延長部の中心は、仮想円(CR)の内側に位置し、
前記仮想円は、前記第1出口管及び前記第2出口管それぞれの前記上端の平面視中心(C1,C2)を結ぶ線である第1線(LI)の中点(C3)を中心とし、前記第1線の長さを直径とする、
請求項
1または2に記載のアキュムレータ(10)。
【請求項4】
前記第1線の前記中点と、前記延長部の中心とが一致する、
請求項
3に記載のアキュムレータ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
アキュムレータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1(特開2005-54741号公報)に開示されるように、ツインロータリー圧縮機用アキュムレータの出口管は、逆U字の形状であり、上部で折り曲げられ、2本の下部が圧縮機の各吸入管に接続される。出口管の上部は、アキュムレータの内部空間に収納される、折り曲げられている部分において、冷媒を吸い込むためにカットされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
通常、アキュムレータの出口管を通る冷媒は、上部の開口から圧縮機に向かって下向きに流れる。しかし、圧縮機や冷媒回路の状態によって、圧縮機から2本の出口管を冷媒が逆流してくることがある。このとき、冷媒は、出口管の2本の下部を上向きに流れ、出口管の上部で合流し、カットされた開口からアキュムレータの内部空間に吐出される。この吐出される冷媒によって、アキュムレータが大きく加振されるという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1観点のアキュムレータは、第1圧縮部及び第2圧縮部を有するロータリー圧縮機の吸入側に配置されるアキュムレータである。アキュムレータは、本体ケーシングと、第1出口管及び第2出口管と、接続部とを備えている。本体ケーシングは、上部胴体部と、下部胴体部とを有する。第1出口管及び第2出口管は、本体ケーシングから下部胴体部を貫通して第1圧縮部及び第2圧縮部それぞれに向けて延びる。接続部は、本体ケーシングにおいて、第1出口管の上端及び第2出口管の上端に接続される。接続部には、合流部と、延長部とが形成されている。合流部は、第1出口管及び第2出口管を上向きに流れてくる冷媒を合流させる。延長部は、合流部から上に延びる筒状の形状をしている。
【0005】
第1観点のアキュムレータでは、第1出口管及び第2出口管を冷媒が上向きに流れてくる現象が生じた場合にも、冷媒は、合流部で合流し、延長部を通過して、延長部の上端からアキュムレータの内部空間に吐出される。そのため、冷媒は、延長部を通過する過程で整流される。その結果、アキュムレータは、大きく加振されなくなる。
【0006】
第2観点のアキュムレータは、第1観点のアキュムレータであって、第1出口管及び第2出口管は、それぞれ、円管である。延長部の高さ寸法は、第1出口管の内径より大きく、且つ、第2出口管の内径よりも大きい。
【0007】
第2観点のアキュムレータでは、延長部の高さ寸法は、第1出口管の内径より大きく、且つ、第2出口管の内径よりも大きい。これにより、延長部の高さ寸法が、ある程度確保される。その結果、第1出口管及び第2出口管を上向きに流れてくる冷媒は、延長部において、より整流されることになる。
【0008】
第3観点のアキュムレータは、第1観点又は第2観点のアキュムレータであって、接続部は、T字状の継手又はY字状の継手である。
【0009】
第3観点のアキュムレータでは、接続部をT字状の継手又はY字状の継手とする。これにより、汎用的な部品を接続部に用いることができる。
【0010】
第4観点のアキュムレータは、第1観点から第3観点のいずれかのアキュムレータであって、延長部の中心は、仮想円の内側に位置する。仮想円は、第1出口管及び第2出口管それぞれの上端の平面視中心を結ぶ線である第1線の中点を中心とし、第1線の長さを直径とする。
【0011】
第4観点のアキュムレータでは、延長部の中心が仮想円の内側に位置する。これにより、第1出口管及び第2出口管を上向きに逆流し、延長部の上端から吐出される冷媒は、アキュムレータの中心軸の近くで吐出されることになる。その結果、アキュムレータはより加振されにくくなる。
【0012】
第5観点のアキュムレータは、第4観点のアキュムレータであって、第1線の中点と、延長部の中心とが一致する。
【0013】
第5観点のアキュムレータでは、第1線の中点と、延長部の中心とが一致する。これにより、第1出口管及び第2出口管を上向きに逆流し、延長部の上端から吐出される冷媒は、アキュムレータの中心軸上で吐出されることになる。その結果、アキュムレータはより加振されにくくなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2B】アキュムレータの接続部付近の縦断面図である。
【
図4】アキュムレータ及び従来のアキュムレータの寸法を説明するための図である。
【
図5A】アキュムレータに作用する圧力の分布を示す図である。
【
図5B】従来のアキュムレータに作用する圧力の分布を示す図である。
【
図6A】アキュムレータの振動の様子を示す図である。
【
図6B】従来のアキュムレータの振動の様子を示す図である。
【
図7】本開示の効果を検証する際の評価点を示す図である。
【
図8】アキュムレータ及び従来のアキュムレータの加速度レベルを示す図である。
【
図9】アキュムレータ及び従来のアキュムレータの騒音レベルを示す図である。
【
図10】アキュムレータの延長部の上面図及び断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図2Aに、アキュムレータ10の縦断面図を示す。以下、アキュムレータ10における方向や配置を説明するため、「上」、「下」等の表現を用いる場合があるが、特に断りの無い場合、
図2を基準に「上」、「下」等の表現を用いる。
【0016】
(1)全体構成
アキュムレータ10は、冷媒を循環させる冷凍サイクルを備える冷凍装置において、気液二相状態の冷媒を、ガス冷媒と液冷媒とに分離する機器である。
図1に示すように、アキュムレータ10は、冷凍装置としての空気調和装置の室外機において、第1圧縮部31a及び第2圧縮部31bを有する圧縮機30の吸入側に配置される。アキュムレータ10は、空気調和装置の冷媒回路の一部を構成している。実線の矢印は、冷凍サイクルにおける冷媒の流れを示している。
【0017】
圧縮機30は、いわゆるツインロータリー圧縮機であって、主として、第1圧縮部31a、第2圧縮部31b、第1吸入管32a、第2吸入管32b、第1シリンダ33a、第2シリンダ33b、第1ピストン34a、第2ピストン34b、ケーシング35、モータ36、吐出管37及びクランク軸38を有している。
【0018】
冷凍サイクルによって、アキュムレータ10の第1出口管14a及び第2出口管14bから流れてきた冷媒は、第1吸入管32a及び第2吸入管32bを通り、第1圧縮部31a及び第2圧縮部31bに吸入される。第1圧縮部31aは、第1シリンダ33aと第1ピストン34aによって形成される。第2圧縮部31bは、第2シリンダ33bと第2ピストン34bによって形成される。モータ36が駆動すると、クランク軸38が回転する。クランク軸38が回転すると、第1シリンダ33a及び第2シリンダ33bの内部で、第1ピストン34a及び第2ピストン34bが回転運動を行う。第1ピストン34a及び第2ピストン34bが回転運動を行うと、第1シリンダ33aと第1ピストン34aとの隙間、及び、第2シリンダ33bと第2ピストン34bとの隙間に充満している冷媒が圧縮される。圧縮された冷媒は、ケーシング35の内部空間を上向きに流れ、吐出管37から吐出される。
【0019】
アキュムレータ10は、主として、本体ケーシング15、第1出口管14a、第2出口管14b及び接続部13を有している。
【0020】
(2)詳細構成
(2-1)本体ケーシング
図2Aに示すように、本体ケーシング15は、上部胴体部16と、下部胴体部18とを有する。
【0021】
(2-2)吸入管
図2Aに示すように、吸入管11は、上部胴体部16の上面を貫通する管である。アキュムレータ10の内部空間にある吸入管11の端部は、下方に向かって開口している。アキュムレータ10の外部にある吸入管11の端部は、冷媒回路に接続されている。
【0022】
(2-3)バッフル
吸入管11を通過して本体ケーシング15の内部空間に流入する冷媒は、気液二相状態の冷媒である。
図2Aに示すように、バッフル12は、気液二相状態の冷媒に含まれる液冷媒が、第1出口管14a及び第2出口管14bに流入することを防止するための部材である。これにより、アキュムレータ10は、圧縮機30の第1圧縮部31a及び第2圧縮部31bに、液冷媒が吸入されることを防止する。
【0023】
具体的には、吸入管11を通り、本体ケーシング15の内部空間に流入した気液二相状態の冷媒は、バッフル12に衝突する。バッフル12の表面には、気液二相状態の冷媒に含まれる液冷媒が付着する。バッフル12に付着した液冷媒は、バッフル12の表面を外縁部に向かって流れ、本体ケーシング15の内部空間を落下して、本体ケーシング15の底部に貯留される。一方、気液二相状態の冷媒に含まれるガス冷媒は、本体ケーシング15の内部空間から、接続部13を経由して、第1出口管14a及び第2出口管14bに流入する。
【0024】
(2-4)第1出口管及び第2出口管
図2Aに示すように、第1出口管14a及び第2出口管14bは、本体ケーシング15から下部胴体部18の下面を貫通して、第1圧縮部31a及び第2圧縮部31bに向けて延びる管である。
【0025】
第1出口管14aは、上端14a1、鉛直部14a2、湾曲部14a3、水平部14a4を有している。第2出口管14bは、上端14b1、鉛直部14b2、湾曲部14b3、水平部14b4を有している。第1出口管14a及び第2出口管14bは、それぞれの上端14a1及び上端14b1において、接続部13の合流部13aと接続される。また、第1出口管14a及び第2出口管14bは、それぞれの水平部14a4及び水平部14b4の左端において、圧縮機30の第1吸入管32a及び第2吸入管32bと接続される。
【0026】
第1出口管14a及び第2出口管14bは、汎用性のある円管であることが好ましい。
【0027】
冷凍サイクルにおいて、第1出口管14a及び第2出口管14bに流入した冷媒は、圧縮機30の第1圧縮部31a及び第2圧縮部31bに吸入される。しかし、圧縮機30や冷媒回路の状態により、圧縮機30から、冷媒が逆流する場合がある。このとき、冷媒は、第1出口管14a及び第2出口管14bを上向きに流れることになる。
図2Aの破線の矢印は、逆流する冷媒の流れを示している。
【0028】
(2-5)接続部
図2Aに示すように、接続部13は、本体ケーシング15において、第1出口管14aの上端14a1及び第2出口管14bの上端14b1に接続される。接続部13は、合流部13aと延長部13bとを有している。
【0029】
接続部13は、
図2Aに示す形状の部材の代わりに、T字状の継手又はY字状の継手でもよい。
【0030】
(2-5-1)合流部
図2Aに示すように、合流部13aは、第1出口管14a及び第2出口管14bを上向きに流れてくる冷媒を合流させる部分である。
【0031】
図2Bに示すように、合流部13aは、合流空間13a1、合流前空間13a2及び空間形成部13a3を有している。合流空間13a1及び合流前空間13a2は、空間形成部13a3によって形成される。
【0032】
第1出口管14a及び第2出口管14bを上向きに流れてくる冷媒は、それぞれの合流前空間13a2を通過し、合流空間13a1において合流する。
【0033】
(2-5-2)延長部
図2Aに示すように、延長部13bは、合流部13aから上に延びる筒状の形状をしている。
【0034】
図2Bに示すように、延長部13bは、整流空間13b1と空間形成部13b2とを有している。整流空間13b1は、空間形成部13b2によって形成される。
【0035】
第1出口管14a及び第2出口管14bを上向きに流れ、合流空間13a1で合流した冷媒は、整流空間13b1を通過する過程で整流される。
【0036】
ここでは、第1出口管14a及び第2出口管14bが円管であり、延長部13bの高さ寸法D1は、第1出口管14aの内径より大きく、且つ、第2出口管14bの内径よりも大きい。
【0037】
(3)特徴
(3-1)
図3に示すように、従来のツインロータリー圧縮機用のアキュムレータ20の出口管は、逆U字の形状をしている。当該出口管は、上部で折り曲げられる。当該出口管の2本の下部である第1出口管24a及び第2出口管24bは、それぞれ圧縮機30の第1吸入管32a、第2吸入管32bに接続される。出口管の上部は、アキュムレータ20の内部空間に収納される、折り曲げられている部分において、冷媒を吸い込むためにカットされている。圧縮機30から逆流してくる冷媒は、第1出口管24a及び第2出口管24bを上向きに流れ、当該カット部23から吐出される。
【0038】
第1出口管24a及び第2出口管24bを上向きに流れる冷媒が、カット部23に到達するタイミングは、第1出口管24aと第2出口管24bとのそれぞれで異なる。そのため、
図3の破線矢印で示すように、冷媒は、カット部21から斜め上方に吐出されることになる。その結果、アキュムレータ20の周方向の音響モードを励起して、アキュムレータ20は半径方向に大きく加振されることになる。ここで、半径方向とは、圧縮機30とアキュムレータ20の平面視中心を結ぶ方向である。
【0039】
本実施形態のアキュムレータ10では、
図2Bに示すように、第1出口管14a及び第2出口管14bを上向きに流れる冷媒が合流部13aの合流空間13a1に到達するタイミング、が異なっても、延長部13bの整流空間13b1において、冷媒は整流される。そのため、
図2Bの破線矢印で示すように、延長部13bの上端から吐出する冷媒は、概ね上向きとなる。その結果、アキュムレータ10の周方向の音響モードは殆ど励起されず、アキュムレータ10は半径方向に大きく加振されなくなる。
【0040】
(3-2)
アキュムレータ10の第1出口管14a及び第2出口管14bは、円管である。そして、延長部13bの高さ寸法D1は、第1出口管14aの内径より大きく、且つ、第2出口管14bの内径よりも大きい。これにより、延長部13bの高さ寸法D1は、ある程度確保されることになる。その結果、第1出口管14a及び第2出口管14bを上向きに流れてくる冷媒は、延長部13bの整流空間13b1において、より整流されることになる。
【0041】
(3-3)
アキュムレータ10の接続部13は、
図2Aに示す形状の部材に代えて、汎用性のあるT字状の継手又はY字状の継手を用いてもよい。これにより、汎用的な部品を接続部13に用いることができ、アキュムレータ10のコストダウンを図ることができる。
【0042】
(4)検証結果
本検証では、本実施形態のアキュムレータ10と、従来のアキュムレータ20との加速度レベル及び騒音レベルを比較する。アキュムレータ10とアキュムレータ20との違いは、基本的には出口管の上端部の構造のみである。
【0043】
(4-1)アキュムレータの寸法
図4を用いて、本検証で使用したアキュムレータ10及びアキュムレータ20の寸法について説明する。本検証で使用したアキュムレータ10及びアキュムレータ20の出口管は、円管である。本検証では、最小で、胴体外径D2がΦ75、出口管外径D3がΦ9.5、出口管距離D4が21mmのアキュムレータ10及びアキュムレータ20を使用した。また、最大で、胴体外径D2がΦ89.1、出口管外径D3がΦ16、出口管距離D4が33mmのアキュムレータ10及びアキュムレータ20を使用した。なお、
図4では、接続部13、バッフル12、カット部21等を省略している。
【0044】
(4-2)アキュムレータに作用する圧力の分布
図5A及び
図5Bは、冷媒が周期的に逆流することに起因して、アキュムレータ10及びアキュムレータ20に作用する圧力の分布を示している。
図5A及び
図5B内のスケールは、振幅の値を示す。どちらの圧力脈動も、周波数は、約1630Hzである。
【0045】
図5Aは、アキュムレータ10に作用する圧力の分布を示している。プラス方向の振幅は、アキュムレータ10の上部及び下部に集中している。一方で、マイナス方向の振幅は、アキュムレータ10の中央部に集中している。そのため、アキュムレータ10は、全体として半径方向には加振されない。
【0046】
図5Bは、アキュムレータ20に作用する圧力の分布を示している。プラス方向の振幅は、アキュムレータ20の左上部及び右下部に集中している。一方で、マイナス方向の振幅は、アキュムレータ20の右上部及び左下部に集中している。そのため、アキュムレータ20は、全体として半径方向に加振される。
【0047】
(4-3)アキュムレータの半径方向の固有振動数
アキュムレータ10,20の半径方向の固有振動数は、主として、アキュムレータ10,20の重さ、アキュムレータ10,20を圧縮機30に接続する箇所の構造、及び、アキュムレータ10,20自体を固定する箇所の構造に依存する。アキュムレータ10とアキュムレータ20との違いは、基本的には2本の出口管の上端部の構造のみである。その結果、アキュムレータ10及びアキュムレータ20の半径方向の固有振動数は、ほぼ同じになる。
【0048】
検証の結果、アキュムレータ10及びアキュムレータ20の半径方向の固有振動数には、約1630Hzが含まれることが判明した。
【0049】
(4-4)まとめ
(4-2)において示したように、冷媒が周期的に逆流することにより、アキュムレータ20には、約1630Hzの周方向の圧力脈動が生じる。アキュムレータ10にも約1630Hzの圧力脈動が生じるが、周方向の圧力脈動ではない。
【0050】
一方で、(4-3)において示したように、アキュムレータ10及びアキュムレータ20の半径方向の固有振動数には、約1630Hzが含まれる。
【0051】
その結果、アキュムレータ20は、周方向の音響モードが励起され、半径方向に大きく加振されて大きく振動する。一方で、アキュムレータ10は、周方向の音響モードが励起されず、半径方向に大きく加振されず、大きく振動することがない。
【0052】
図6A及び
図6Bは、同じ条件下におけるアキュムレータ10及びアキュムレータ20の振動の様子を示している。明らかに、
図6Bに示す従来のアキュムレータ20の方が、大きく振動していることがわかる。
【0053】
図8は、アキュムレータ10及びアキュムレータ20の加速度レベルを示している。縦軸が加速度レベル、横軸が周波数[Hz]である。加速度レベルの評価点は、
図7に示すように、本体ケーシング15の圧縮機30と反対側の下部の点P1である。
図8に示すように、約1630Hzにおいて、アキュムレータ10の加速度ピークレベルは、アキュムレータ20の加速度ピークレベルに比べ、大幅に減少していることがわかる。
【0054】
図9は、アキュムレータ10及びアキュムレータ20の騒音レベルを示している。縦軸が騒音レベル[dB]、横軸が周波数[Hz]である。騒音レベルの評価点は、
図7に示すように、本体ケーシング15の高さ方向の中心から、圧縮機30と反対方向に30cm離れた点P2である。
図9に示すように、約1630Hzにおいて、アキュムレータ10の騒音ピークレベルは、アキュムレータ20の騒音ピークレベルよりも約25dB減少していることがわかる。
【0055】
(5)変形例
(5-1)変形例1A
本実施形態では、アキュムレータ10の延長部13bの位置について、特に言及しなかった。しかし、アキュムレータ10の延長部13bの中心は、
図10に示す仮想円CRの内側に位置していることが好ましい。ここで、仮想円CRとは、第1出口管14a及び第2出口管14bそれぞれの上端14a1,14b1の平面視中心C1,C2を結ぶ線である第1線LIの中点C3を中心とし、第1線LIの長さを直径とする円である。
【0056】
これにより、第1出口管14a及び第2出口管14bを上向きに逆流し、延長部13bの上端から吐出される冷媒は、アキュムレータ10の中心軸の近くで吐出されることになる。その結果、アキュムレータ10は、半径方向に加振されにくくなる。
【0057】
なお、ここでは、アキュムレータ10の中心軸と第1線LIの中点C3とが一致するように、第1出口管14a及び第2出口管14bを配置している。言い換えると、第1線LIの中点C3と、延長部13bの中心とを一致させている。これにより、第1出口管14a及び第2出口管14bを上向きに逆流し、延長部13bの上端から吐出される冷媒は、アキュムレータ10の中心軸上で吐出されることになる。その結果、アキュムレータ10は、より半径方向に加振されにくくなる。
【0058】
(5-2)
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0059】
10 アキュムレータ
13 接続部
13a 合流部
13b 延長部
14a 第1出口管
14b 第2出口管
15 本体ケーシング
16 上部胴体部
18 下部胴体部
30 圧縮機
31a 第1圧縮部
31b 第2圧縮部
D1 延長部の高さ寸法
【先行技術文献】
【特許文献】
【0060】