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▶ ブリティッシュ アメリカン タバコ (インヴェストメンツ) リミテッドの特許一覧 ▶ タバコ リサーチ アンド ディベロップメント インスティテュート (プロプリエタリー) リミテッドの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】繊維を収集する方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   A24D 3/02 20060101AFI20230314BHJP
【FI】
A24D3/02
【請求項の数】 33
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021015837
(22)【出願日】2021-02-03
(62)【分割の表示】P 2019511696の分割
【原出願日】2017-09-18
(65)【公開番号】P2021078508
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2021-03-03
(31)【優先権主張番号】1616932.8
(32)【優先日】2016-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】500252844
【氏名又は名称】ブリティッシュ アメリカン タバコ (インヴェストメンツ) リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BRITISH AMERICAN TOBACCO (INVESTMENTS) LIMITED
(73)【特許権者】
【識別番号】512001371
【氏名又は名称】タバコ リサーチ アンド ディベロップメント インスティテュート (プロプリエタリー) リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ファロン, ゲイリー
(72)【発明者】
【氏名】リチャードソン, ジョン
(72)【発明者】
【氏名】キング, イアン
(72)【発明者】
【氏名】ル ルー, ジェラルド マリン
(72)【発明者】
【氏名】ヘルホルト, アーノルド レスリー
【審査官】八木 敬太
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-502377(JP,A)
【文献】特開昭63-275765(JP,A)
【文献】特表平09-506681(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24D 3/02
D01D 1/00-13/02
D04H 1/00-18/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス流に同伴された繊維を収集する装置であって、
同伴された繊維を搬送するガス流を通して内部に導くことができる導入口を有するエンクロージャと、
コンベヤであって、同伴された繊維が前記エンクロージャ内で前記コンベヤ上に堆積される、コンベヤと、
前記コンベヤ上で収集された繊維を前記エンクロージャから引き出すことができる繊維導出口と、
前記エンクロージャから外へガスが通過できる排気導出口と、
を備え、
前記エンクロージャが、前記繊維が前記導入口から前記繊維導出口まで前記エンクロージャを流通するための通路を設けるように、前記ガス流中の余剰ガスを前記同伴された繊維から分離するように、及び前記余剰ガスを前記排気導出口に導くように、構成されており、前記繊維導出口が、前記コンベヤ上に堆積された前記収集された繊維の移動の方向に延びる開放チャネル内に排出する導出口オリフィスを備え、前記導出口オリフィスから導出された余剰ガスを前記繊維の前記移動の方向から離れる方向かつ前記コンベヤから離れる方向に導いて前記コンベヤ上の前記収集された繊維の上方の領域内の圧力を低減させるように、バッフルが、前記収集された繊維及び前記コンベヤの上方の位置に配置された前記導出口オリフィスに配置されている、装置。
【請求項2】
前記エンクロージャが、ガス及び繊維を前記導入口に導き、余剰ガスを前記エンクロージャの外側に導くように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記繊維を収集してウェブにするように構成された、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記繊維を前記通路の一部分に沿って移動させるように構成された移送システムを備える、請求項1~3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記移送システムがコンベヤを備える、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記移送システムが、前記ガスから同伴された繊維を集めるために前記導入口と位置合わせされて配置されている上流部分であって、堆積された繊維を前記エンクロージャから前記繊維導出口に向けて移動させるように構成されている上流部分を有する、請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記移送システムが、前記ガス流の方向と異なる方向に前記繊維を移動させるように構成されている、請求項5又は6に記載の装置。
【請求項8】
前記導入口が、前記移送システムの移動の方向と直角の方向に前記ガス流を受け入れるように構成されている、請求項5~7のいずれか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記移送システムが、繊維を支持しながら前記ガス流からのガスを通過させるように構成されたコンベヤを備える、請求項5~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
前記エンクロージャが、前記エンクロージャ内の実質的にすべての前記余剰ガスを前記排気導出口に導くように構成されている、請求項1~9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記エンクロージャが、前記エンクロージャ内のわずかな比率の前記余剰ガスを前記繊維導出口に、前記排気導出口に導くように構成されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の装置。
【請求項12】
前記エンクロージャが、前記余剰ガスを前記ガス流から離れる方向に導くように前記通路内に配置された一つ以上のバッフルを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記通路の一部分に沿って前記繊維を移動させるように構成された移送面と、
前記ガス流中の前記繊維を前記移送面に導き、前記ガス流中の前記余剰ガスを前記移送面から離れる方向に導くように配置された少なくとも一つのバッフルと、
を更に備える、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記エンクロージャが、前記ガス流の前記通路内に配置されているバッフルであって、前記ガス流からの前記繊維を主通路に導き、前記ガス流からの前記余剰ガスを前記主通路とは別個の補助通路に導くように配置されているバッフルを備える、請求項1~13のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
前記主通路が、前記繊維を受け入れるように構成された前記導入口に隣り合う入口と、前記繊維を前記エンクロージャ内の第1の領域に導くように配置された出口とを有し、
前記補助通路が、前記主通路の横に並設されており、前記補助通路が、前記導入口に隣り合う入口であって、前記ガス流の周辺からガスを受け入れるように配置されている入口と、前記第1の領域の一方の側に向けられている出口とを有する、請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記主通路の横幅が前記第1の領域に向かって減少する、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記補助通路の横幅が第2の領域に向かって増大する、請求項15又は16に記載の装置。
【請求項18】
少なくとも一つのバッフルがルーバを備える、請求項14~17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記エンクロージャは、繊維が前記繊維導出口に向かって流通することができる実質的に均一な断面形状の細長い区域を有する導管を備える、請求項1~18のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
前記エンクロージャが、繊維が流通して前記導管に流入することができるガイドを更に備え、前記ガイドは、前記導管の前記細長い区域に向かって徐々に小さくなる断面を有する、請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記エンクロージャが、前記余剰ガスを受け入れるように構成された排気チャンバを含み、ガス導出口が前記排気チャンバと連通して配置されている、請求項1~20のいずれか一項に記載の装置。
【請求項22】
ガス流に同伴されたプラスチック材料の繊維を生成するための、前記ガス流を前記エンクロージャ内に導くように構成されたメルトブロー装置を更に備える、請求項1~21のいずれか一項に記載の装置。
【請求項23】
移送面から繊維のウェブを受け入れるように且つ前記ウェブを連続ロッドに形成するように構成されたロッド形成装置を更に備える、請求項1~22のいずれか一項に記載の装置。
【請求項24】
請求項1~23のいずれか一項に記載の装置に使用するためのエンクロージャであって、
同伴された繊維を搬送するガス流を当該エンクロージャ内に導くことができる導入口と、
収集された繊維を当該エンクロージャから引き出すことができる繊維導出口と、
当該エンクロージャから外へガスが通過できる排気導出口と、
を画定し、
当該エンクロージャは、前記繊維が前記導入口から前記繊維導出口まで流通するための通路が設けられており、前記ガス流中の余剰ガスを前記同伴された繊維から離れる方向に導くように構成されている、エンクロージャ。
【請求項25】
収集された繊維の集合体を形成する方法であって、
ガス流に繊維を同伴させるステップと、
ガス及び同伴された繊維の流れを全体的又は部分的に囲まれた空間に導くステップと、
前記囲まれた空間内に前記繊維を収集するステップであって、前記同伴された繊維はコンベヤ上に堆積される、ステップと、
前記コンベヤ上で前記囲まれた空間から導出口オリフィスを通して前記収集された繊維を引き出すステップと、
前記導出口オリフィスにおいて前記囲まれた空間から前記ガスを排出するステップと、
を含み、前記導出口オリフィスにおいて余剰ガスが前記ガス流から分離され前記収集された繊維の移動の方向から離れる方向かつ前記コンベヤから離れる方向に導いて前記コンベヤ上の前記収集された繊維の上方の領域内の圧力を低減させる、方法。
【請求項26】
前記同伴された繊維が前記囲まれた空間に導かれ、余剰ガスが前記囲まれた空間の外側に導かれる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記余剰ガスが前記ガス流の周辺から逸らされる、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
前記ガス流が、前記コンベヤに近づくときに、小断面積の領域内へとその流れの方向において収束して流れ込み、前記ガス流の周辺の余剰ガスが流れの方向から横方向に逸らされる、請求項25~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記逸らされた余剰ガスが前記導出口オリフィスにおけるウェブの上方の圧力低減によって除去される、請求項27又は28に記載の方法。
【請求項30】
前記繊維が前記囲まれた空間内で収集されてウェブを形成する、請求項25~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記収集された繊維に沿う余剰空気がウェブの進路から逸らされて、収集されたウェブが前記コンベヤから分離しやすくなる、請求項25~30のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記繊維がメルトブロープロセスによってガスの流れに同伴される、請求項25~31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
請求項25~32のいずれか一項に記載の方法によって繊維のウェブを形成するステップと、前記ウェブを連続ロッドになるように更に形成するステップとを含む、繊維のロッドを形成する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、繊維ウェブ、かせ又はロッド、特にフィルタトウ、フィルタロッド及びシガレットフィルタのウェブやかせ等の集合体を形成するための繊維を収集する方法及び装置である。
【背景技術】
【0002】
繊維状材料から形成される多くの製品(例えば、糸、ウェブ、かせ、ロービング、マット、又はロッド)が、繊維を集合体に収集することによって製造され得る。このような集合体は、例えば繊維を互いにその接触点で接着させるように加熱することによって、又は接着剤若しくは可塑剤を加えることよって、結合力のある統一体として繊維を保持するように処理することができる。例えば、シガレットフィルタは、セルロースアセテート繊維等のフィルタ材料の繊維から、その繊維を収集してフィルタトウと呼ばれることが多い絡み合った繊維のストランド又はかせを形成し、次にそのストランドを転がし引っ張ることにより圧縮して高密度のロッド(これは後で巻き取り、シガレットに合体するのに適切な個々の短い長さに切断できる)を形成することによって作ることができる。
【0003】
繊維を収集するプロセス及び装置では、集合体の繊維密度のばらつきを減らすことが望ましい。その理由は、このようなばらつきは最終製品の品質に悪影響を及ぼすおそれがあるからである。
【発明の概要】
【0004】
本特許明細書は、ガス流に同伴された繊維を収集する装置であって、同伴繊維を搬送するガス流を内部に導くことができる導入口を有するエンクロージャ(囲い)と、収集繊維をエンクロージャから引き出すことができる繊維導出口と、エンクロージャから外へガスが通過できる排気導出口とを備え、繊維が導入口から繊維導出口までエンクロージャを流通するための通路を設けるように、ガス流中の余剰ガスを同伴繊維から分離するように、及び余剰ガスを排気導出口に導くように構成されている装置を開示する。
【0005】
本特許明細書はまた、ガス流に同伴された繊維を収集する装置に使用するためのエンクロージャであって、同伴繊維を搬送するガス流をエンクロージャ内に導くことができる導入口と、収集繊維をエンクロージャから引き出すことができる繊維導出口と、エンクロージャから外へガスを流出させることができる排気導出口とを画定し、繊維が導入口から繊維導出口まで流通するための通路を設けており、ガス流中の余剰ガスを同伴繊維から離れる方向に導くように構成されているエンクロージャも開示する。
【0006】
一実施形態では、エンクロージャは、ガス及び繊維を導入口に導き、余剰ガスをエンクロージャの外側に導くように構成されている。代替的に又は追加的に、エンクロージャは、繊維からの余剰ガスの分離がエンクロージャ内の一つ以上の位置で行われるように構成されてもよい。
【0007】
余剰ガスを繊維から分離することは、繊維がエンクロージャを流通するときの繊維の乱流を低減するのに効果的であり得るとともに、より均一な集合体になるように繊維を収集しやすくなり得る。
【0008】
エンクロージャは、繊維が導入口から繊維導出口までエンクロージャを流通するための通路を全体的又は部分的に被覆、又は取り囲むように構成されることができる。
【0009】
装置又はエンクロージャは、ガス流及び同伴繊維に対応するためのいくつかの異なるゾーンを画定することができる。例えば、装置の一つの実施形態では、エンクロージャは、ガス流を導入口から導くことができる受入れゾーンと、繊維が繊維出口に向かって流通できる受入れゾーンの下流の安定化ゾーンと、余剰ガスを排気導出口に導くことができる排気ゾーンとを備える。
【0010】
繊維は、適切なプロセス、例えばメルトブロープロセスによって、ガスの流れに同伴させることができる。したがって、一つの実施形態では、繊維収集装置は、ガス流に同伴されるプラスチック材料の繊維を生成するための、ガス流をエンクロージャ内に導くように構成されたメルトブロー装置を更に備えることができる。
【0011】
典型的なメルトブロープロセスでは、繊維形成ポリマーが一つ以上のオリフィスから、高温ガス(例えば空気、又は場合により不活性ガス)の収束流の中に押し出される。ガスは、オリフィスから出てくるポリマーを溶融ポリマーの細流になるように吹き飛ばし、この細流は固化して小さい径の繊維を形成する。繊維はガスの流れに同伴され、例えばガス及び繊維の流れを収集面に導くことによって集めることができる。結果として得られる、絡み合った繊維から成る集合体は、例えば加熱することによって、繊維をその接触点で融合して不織繊維集合体を形成することができる。
【0012】
本明細書はまた、収集繊維の集合体を形成する方法であって、ガスの流れに繊維を同伴させるステップと、ガス及び同伴繊維の流れを全体的又は部分的に囲まれた空間に導くステップと、囲まれた空間に繊維を収集するステップと、囲まれた空間から収集繊維を引き出すステップと、囲まれた空間からガスを排出するステップとを含み、余剰ガスがガス流から分離され収集繊維の進路から逸らされて、収集繊維中の乱流が低減する方法も開示する。
【0013】
ガス流からの余剰ガスの分離は、一つ以上の段階で行われてよい。一つの段階では、同伴繊維は囲まれた空間に導くことができ、余剰ガスは囲まれた空間に導くことができる。別法として、又は別の段階では、ガス流及び同伴繊維からの余剰ガスの分離は、囲まれた空間内で行われてもよい。別の代替方法では、余剰ガスはガス流から、複数の連続する段階で、囲まれた空間内で分離することができる。
【0014】
本明細書に開示された方法及び装置は、繊維集合体、特に、ウェブ、マット、糸、かせ、ロービング、ロッド、フィルタトウ、及びフィルタロッドを形成するために使用することができる。例えば、繊維のロッドは、本明細書に開示された方法によって、又は本明細書に開示された装置を用いて、繊維のウェブを形成し、このウェブを、例えば知られているロッド作製機械を使用して、連続ロッド又はフィルタロッドになるように更に形成することによって形成することができる。
【0015】
本装置は、ガス流に同伴された繊維を収集してウェブを形成するように構成することができる。この目的のために、収集器をエンクロージャ内に、より詳細にはその受入れゾーン内に設けることができる。収集器は、導入口と位置合わせされた、またガス流に同伴された繊維を収集するように配置された、収集面を有することができる。
【0016】
したがって、本方法の一実施形態では、繊維は、ガス及び同伴繊維の流れを収集面に導き、収集面とガス流の間に相対運動を発生させることによって集められる。
【0017】
収集器は、収集繊維を通路の少なくとも一部分に沿って移動させエンクロージャを通過させる移送システムと一体化することができる。例えば、移送システムは上流部を有することができ、この上流部は受入れゾーンに設置し、同伴繊維をガスから集めるように導入口と位置合わせして配置し、堆積された繊維をチャンバから繊維導出口に導いて移動させるように構成することができる。
【0018】
一実施形態では、ガス流に同伴された繊維を収集する装置は、堆積された繊維を受入れゾーンから安定化ゾーンまで移動させる移送面と、移送面を少なくとも部分的に覆っているエンクロージャであって、受入れゾーンから安定化ゾーンまで延びるチャンバを画定するエンクロージャと、ガス流に同伴された繊維をチャンバ内に、及び移送面に導くことができる導入口と、移送面上の繊維をウェブとしてエンクロージャから引き出すことができる繊維導出口と、繊維導出口から離して配置されたガスの導出口とを備え、エンクロージャは、ガス流中の余剰ガスを繊維から分離するように、また余剰ガスを導出口に導くように構成される。
【0019】
移送システムは、ガス流の方向とは異なる方向に繊維を移動させるように構成することができる。例えば、繊維と余剰ガスは概ね直交するように、すなわち互いに直角に向けることができる。同様に、導入口は、移送システムの移動方向に対して概ね直角の、すなわち概ね垂直の方向にガス流を受け入れるように構成することができる。
【0020】
移送システムは、例えば、エンドレスコンベヤベルト又は回転収集器ドラム等のコンベヤの形にすることができる。別法として、移送システムは摺動面を含むこともでき、この摺動面の上で繊維は、重力及び又はガス流の影響を受けて、或いは繊維をチャンバから又はチャンバの外に引き出すローラの影響を受けて、導入口から繊維導出口まで進むことができる。
【0021】
コンベヤは、繊維を支持しながらガス流からのガスを通過させるように構成することができる。例えばコンベヤは、可撓性材料の穴あき又は多孔性のシート又はベルト、或いはガスがコンベヤを通過できるように隣り合うリンクの間隔があいているリンクチェーンを備えることができる。
【0022】
一実施形態では、エンクロージャは、エンクロージャ内の実質的にすべての余剰ガスを排気導出口に導くように構成される。別の実施形態では、エンクロージャは、エンクロージャ内のわずかな比率の余剰ガスを繊維導出口に導いて、繊維と一緒にチャンバから出るように構成される。
【0023】
本方法の一実施形態では、余剰ガスが、ガス流の周辺、例えば繊維収集面の上流から進路を逸らされる。
【0024】
本装置の一実施形態では、ガス流は、収集面に近づくときに、その流れの方向に、小さい断面積の領域内へと収束するように流すことができ、周辺の余剰ガスが流れの方向から横方向に逸らされる。
【0025】
装置の一つの実施形態では、一つ以上のバッフルをエンクロージャ内に、ガス流中の余剰ガスを同伴繊維から分離するように、及び/又は余剰ガスをガス流から離れる方向に導くように設けることができる。一つ以上のバッフルをまた、余剰ガスを排気導出口に導き、以て、繊維がエンクロージャを通過するときの繊維中の乱流を低減させるように設けることができる。
【0026】
一つ以上のバッフルをまた、ガス流中の繊維をコンベヤ又は移送面に導き、ガス流中の余剰ガスを移送面から離れる方向に導くように設けることもできる。
【0027】
本装置の一実施形態では、少なくとも一つのバッフルが一つ以上のルーバを備えることができる。このルーバは、例えば、ガスがバッフルを通り抜けてどちらの方向にも流れることを可能にしながら、バッフルの一方の繊維をバッフルから離れる方向に導くように配置することができる。各ルーバは、例えば、使用中にバッフルの表面を覆うガスの流れの方向に横向きに配置された直線又は弓形のスロットの形で、バッフルに開口を備える。ルーバは、バッフルを覆うガスの流れの方向に応じて、任意の効果的な構成で配置することができる。例えば、ルーバは、細長い平行スロットの単一の縦列の形にすること、又は一つ以上の横列に複数の縦列があるスロットのアレイとすることができる。
【0028】
一実施形態では、バッフルが、ガス流の通路内に配置され、またガス流からの繊維を主通路に導き、ガス流からの余剰ガスを主通路とは別個の補助通路に導くように配置される。
【0029】
主通路は管状とすることができるが、任意の所望の断面形状、例えば円形、長方形、六角形、又は別の多角形でもよい。補助通路は、第1の通路を例えば環状構造で取り囲むことができる。別法として、主通路及び補助通路は、互いに横に並べること、又は別々に置くことができる。このような配置では、追加の補助通路を設けることができる。例えば、長方形の主通路では、四つまでの補助通路を使用することができ、一つが主通路の四つの壁のうちの対応する一つに隣り合う。主通路と副通路の共有壁は、ガス流の周辺からの余剰ガスを繊維から副通路の中へ逸らすためのバッフルを備えることができ、主ガス流中の繊維及びガスは主通路内に導かれる。
【0030】
装置の一実施形態では、主通路は、繊維を受け入れるように配置されている導入口に隣り合う入口と、繊維をエンクロージャ内の第1の領域に導くように配置されている導出口とを有し、補助通路は、主通路の横に並設されており、ガス流の周辺からガスを受け入れるように配置されている入口と、余剰ガスをエンクロージャ内の第2の領域に導くように配置されている導出口とを有する。
【0031】
第1の領域は、例えば、ガス流に同伴された繊維を収集してウェブを形成するように構成された収集器、又は繊維を通路の一部分に沿って移動させるように配置されたコンベヤを含むことができ、第2の領域は、収集器又はコンベヤの一方の側にあってもよい。
【0032】
このような配置では、主通路の横幅は、第1の領域に向かって減少し得る。補助通路の横幅は、第2の領域に向かって増大し得る。
【0033】
繊維を所望の幅及び厚さのウェブになるように形成するために、エンクロージャは、例えば繊維オリフィスの上流に設置された導管を備えてもよく、この導管は、その全長に沿って実質的に均一な断面形状の、繊維が繊維導出口に向かって流通することができる細長い区域を有する。
【0034】
本装置の一実施形態では、繊維が通り抜けて導管に入ることができるガイドがエンクロージャに備えられ、このガイドは、導管の細長い区域に向かって徐々に小さくなる断面を有する。
【0035】
本方法の一実施形態では、収集繊維に沿う余剰空気は、収集繊維から進路を逸らされて、収集面から収集ウェブが分離しやすくなる。この目的のために、繊維導出口は、収集繊維の移動の方向に延びる開放チャネルの中に排出する導出口オリフィスを備えてもよい。バッフルが、オリフィスから出てくるガスを繊維の移動方向から離れる方向に導くように構成される。
【0036】
本方法の一実施形態では、逸れた余剰空気は圧力低減によって除去される。別法として、装置は、余剰空気がそれ自体の圧力によって装置から排出されるように構成することもできる。
【0037】
本装置の一実施形態では、エンクロージャは、余剰ガスを受け入れるように構成された排気チャンバを含み、ガス導出口が排気チャンバと連通して配置され、それによって余剰ガスを、例えば真空ポンプを用いる圧力低減によって装置から引き出すことができる。
【0038】
本装置の一実施形態では、ガス流に同伴された繊維を収集する装置は、分離チャンバ及び排気チャンバを画定するエンクロージャと、同伴繊維を搬送するガス流を分離チャンバ内に導くことができる導入口と、ガス流中の余剰ガスを同伴繊維から分離し、以て同伴繊維が分離チャンバを通過するときに繊維中の乱流を低減するように、且つ余剰ガスを排気チャンバに導くように、分離チャンバ内に配置されたバッフルと、ガスが排気チャンバから外へ通過できる排気導出口と、収集繊維を分離チャンバから引き出すことができる繊維導出口と、繊維を収集して分離ゾーン中を移動させるように配置された、分離チャンバと排気チャンバの間の移送システムとを備え、移送システムは、分離チャンバから排気チャンバへガスが通過できるように構成される。
【0039】
本明細書に開示された、繊維を収集する装置はまた、繊維導出口から繊維のウェブを受け入れて、そのウェブを連続ロッドに形成するように構成されたロッド形成装置と一緒に使用することもできる。
【0040】
次に、装置及び方法の実施形態について、単なる例として添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】ガス流に同伴された繊維を収集し、この収集繊維を、シガレットフィルタに使用される種類の連続ロッドに形成する装置の第1の実施形態の、上方及び一方の側面から下流方向の斜視図である。
図2図1の線A-Aに沿った、図1の装置の一部分の概略垂直断面図である。
図2A図1及び図2の装置の一部分を形成するエンクロージャの上方及び一方の側面からの斜視図である。
図3図1及び図2の装置の、図2の線B-Bに沿った概略垂直断面図である。
図4図1及び図3に示されたものの代替構造を有する、図1及び図2の装置の一部分を形成するのに適しているエンクロージャの第2の実施形態の、上方及び一方の側面からの斜視図である。
図4A図4のエンクロージャの、図4の線C-Cに沿った概略垂直断面図である。
図4B図4のエンクロージャの上方からの平面図である。
図4C図4のエンクロージャに使用できる、図に示されたバッフルの一代替形態としてのバッフルの上方及び一方の側面からの斜視図である。
図4D図1図3に示された装置の下流方向及び上方からの部分概略斜視図である。
図5図1及び図3、並びに図4図4A及び図4Bに関して示されたものの代替構造を有する、図1及び図3の装置の一部分を形成するのに適しているエンクロージャの第3の実施形態の、上方及び下流端部からの斜視図である。
図5A図5のエンクロージャの、下方及び上流端部からの斜視図である。
図5B図5のエンクロージャの、図4の線D-Dに沿った概略垂直断面図である。
図6A図1の装置に組み込まれる円錐体の上方及び一方の側面からの斜視図である。
図6B図6Aの円錐体の、線6Bに沿った垂直断面図である。
図7A図1の装置に組み込まれるトランスポータジェットの端面図である。
図7B図7Aのトランスポータジェットの、線7Bに沿った断面図である。
図8A図1の装置に組み込まれるスタッファジェットの、上方からの斜視図である。
図8B図8Aのスタッファジェットの、線8Bに沿った断面図である。
図9A図1の装置に組み込まれる蒸気ブロックの分解組立図である。
図9B図9Aの蒸気ブロックの、線9Bに沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図では、参照しやすいように、別々の実施形態の同様の部分又は構成要素に同様の参照番号が付与されている。
【0043】
図1及び図2を参照すると、図示された本発明の実施形態は、シガレットフィルタとして使用するのに適しているフィルタ材料のロッドを形成する装置である。装置はモジュラー構造であり、三つのモジュール、すなわち、ガス流に同伴されたプラスチック材料の繊維を生成するためのメルトブローモジュール1と、メルトブローモジュール1からの繊維を収集し、この繊維からウェブ38を形成するための繊維収集モジュール2と、ウェブを連続ロッド81に形成するためのロッド形成モジュール3とを備える。
【0044】
メルトブローモジュール
メルトブローモジュール1は従来の構造とすることができ、図1の上方部分に概略的に示されている。メルトブローモジュールの基本的な特徴部はダイヘッド14であり、このダイヘッド14には矢印Pで示された溶融ポリマー材料が送り込まれ、またこのダイヘッド14から溶融ポリマーが噴射口16のアレイ(配列)を通じて流体として流出する。ガス通路がダイヘッドの噴出口のすぐ近くに形成されている。矢印A,Aで示された、空気等の高温ガスがダイヘッドに送り込まれ、二つの収束高速ガス流としてガス通路から流出する。高温ガスの流れは、噴出口16のアレイから流出するポリマーを溶融ポリマー17の細流になるように吹き飛ばし、この溶融ポリマーは噴出口16から数センチ以内で固化して、径が小さい連続した多数の繊維12を形成する。繊維12はガス流に同伴されることになり、高速で流れるガス流に同伴された絡み合った繊維の複雑なパターンを形成する。
【0045】
繊維収集モジュール
繊維収集モジュール2は、メルトブローモジュール1の垂直下方に、モジュールからの空気流に同伴された繊維を受けるように配置されている。メルトブローモジュールと繊維収集モジュールの間の垂直距離は、分かりやすくするために図1では誇張されている。
【0046】
繊維収集モジュール2は、中空ケーシング24を支持する剛性フレーム22を備え、この中空ケーシングは、溶接又はボルト留めされ支持フレーム22に固定された金属板から形成されている。ケーシング24は、平面においては概ね長方形であり、その主軸線は上流端部25から下流端部26への長手方向に水平に延びており、ケーシングの内部を二つのチャンバに分割する取外し可能な仕切り27がある類似形状の二つのボックスユニット24a及び24b(図2)を備える。仕切り27は、取り外して二つのチャンバを互いに連通させることができる。
【0047】
図2に明示されるように、コンベヤ28がケーシング24に取り付けられており、経路30(その外囲が図2に破線で示されている)に沿ったメルトブローモジュール1の通路部分から、繊維収集モジュール2を通ってロッド形成モジュール3まで繊維を移動させるための移送システムを形成している。コンベヤ28は、ケーシング24の横方向に延びる水平軸線を中心にして回転するように、ケーシングの上流端部に固定された軸受に取り付けられている比較的大きい直径のテンションローラ32を備える。ケーシング24の下流端部26に、それぞれの直径がテンションローラよりも小さいアイドラローラ34及び駆動ローラ35が、テンションローラ32の水平軸線と平行な水平軸線を中心にして回転するようにケーシング24に固定された軸受に取り付けられ、アイドラローラ34は、駆動ローラ35の上方且つ上流に取り付けられる。図2に示されるように駆動ローラ35をその軸線を中心にして反時計方向に回転させるために、電動モータがケーシング24の下流端部26に取り付けられている。
【0048】
三つのローラ30、32及び34は、上側走路を有するエンドレス構造のコンベヤベルト37を支持し、このコンベヤベルトはケーシング24の長手方向に、テンションローラ32からケーシング24の上面に沿ってアイドラローラ34まで延び、下方に向き、駆動ローラ35を回り、次にテンションローラ32まで上側走路と平行な下側走路として戻る。アイドラローラ34及びテンションローラ32は、上側走路をケーシング24の上面と正確に位置合わせするように、またコンベヤベルトに十分な張力を与えるように、その軸受で調整することができる。
【0049】
ガスに同伴された繊維材料が絡み合った繊維のウェブ38としてコンベヤの表面に堆積及び保持される間、ガスがベルトを通過できるよう、コンベヤベルト37は構成される。例えば、コンベヤベルト37、又はその少なくとも一部分、特にベルトの全長に及ぶ中央領域は、その表面に繊維状材料を支持しながらガスを通過させるように、穴、スロット若しくは開口を備え、或いはまた多孔性となっている。この目的のために、コンベヤベルトは、例えば、所望のガス流が圧力によって十分に通り抜けられる密度に織られた繊維材料とすることができる。
【0050】
ケーシング24の上流ボックスユニット24b及び下流ボックスユニット24aの上面はそれぞれ、コンベヤベルト37の上側走路の下にある開口又はスロットを備え、ガスがコンベヤベルトを通り抜けてボックスユニットの内部に入ることができるようになっている。開口又はスロットをじかに取り囲む上面の部分は、ベルト37の上側走路を支持する。
【0051】
ボックスユニット24a及び24bは、ケーシング24の一方の側面の排気ガス導出口41a(図1)と連通する排気チャンバ40を形成し、この排気ガス導出口を通ってガスが排気チャンバの外へ排出される。排気導出口41aは、ガスを排気チャンバ40から引き出すことができるように真空ポンプ(図示せず)に接続することができる。仕切り27を取り外すと、両方のボックスユニットの内部が同じ圧力になるまで排気される。仕切りが適所にあると、上流ボックスユニット24bの内部は、下流ボックスユニット24aとは別個に排気することができる。別の排気導出口41b(図1に閉鎖して示されている)が、下流のボックスユニット24a内の排気チャンバの部分を別個に排気できるように、下流ボックスユニット24aの一方の側面に設けられている。
【0052】
図2Aに詳細に示されている、鋼、アルミニウム又は耐熱プラスチック材料等のシート材料から製造されたエンクロージャ50がケーシング24の上に取り付けられ、コンベヤ28を覆ってチャンバ10を画定し、このチャンバ内では、メルトブローモジュール1からの繊維を余剰ガスと一緒に収集し、余剰ガスと分離することができる。
【0053】
エンクロージャ50は、コンベヤベルト37の上側走路と共にダイヘッド14とコンベヤ28の間の繊維通路を取り囲み、部分的に封鎖する。エンクロージャは直立端壁51によって形成され、直立端壁51は略長方形であり、斜角を付けた上側角部がある。端壁51は、ケーシング24の長手方向に並べられた二つの直立側壁52、52に連結される。各側壁52は、略長方形の下流部分52aと、上流部分よりもアスペクト比が小さい略長方形の上流部分52bとを含み、それにより、各側壁52の上流部分は下流部分よりも高い。上流部分と下流部分の輪郭は、弓形連結部分52cによって互いに滑らかに融合している。
【0054】
側壁52の下縁部は、内側に曲げられたフランジ43、43を有し(図2A)、これらのフランジはその間に、エンクロージャのベースにおける長手方向間隙を画定し、この間隙は、繊維38のウェブを搬送するコンベヤベルト37の中央領域の上に重なるよう十分に広いみまである。フランジ43はそれぞれ、ケーシング24の上面の対応する開口の上に重なる、長手方向に延びる三つの開口44、44を備え、エンクロージャ50の内部から排気チャンバ40の中にガスが流入可能となるようにしている。
【0055】
側壁の下流部分52aの水平な上縁部はエプロン53によって連結されており、このエプロンは、各側壁の弓形連結部分51cを互いに連結する湾曲上流部分54を有し、これによって、エンクロージャ50の下流端部壁をエンクロージャの上流端部の端壁51の反対側に形成する。
【0056】
エンクロージャ50の下流端部の繊維導出口58は、エプロン53の下流端部から延びる中央長手方向突起によって形成される。この突起は、コンベヤベルト37の中央領域の上に重なる、逆U形横断面の開放端トンネル部分62の形をしており、コンベヤの上の高さがエプロン53の下流端部と同じである。トンネル部分の最上部がエプロン53と一体化しており、トンネルの側壁は、以下で説明するバッフル板65、65の延長部によって形成される。
【0057】
二つの垂直端板63,63は、トンネル部分62の側面から横方向に延び、側壁52、52の下流端部に連結され、それにより繊維導出口58は、相対的に限定された長方形開口をコンベヤの周囲に画定する。
【0058】
図1図2及び図2Aに明示されるように、端壁51の上縁部、側壁の上流部分52b及びエプロン53は、エンクロージャ50及びエンクロージャ内のチャンバ10への長方形の導入口57を形成する。この導入口は、過剰なガスがダイヘッド14から、繊維の通路に対して横方向に、エンクロージャの外側に逃げることができるように、ダイヘッド14から間隔を置いて配置される。導入口57は、同伴繊維12を搬送するガス流をダイヘッドから受け入れるように、また繊維を通路30に沿って下方に、チャンバ10の中に、更にコンベヤ28の上に、コンベヤの上側走路の移動方向に垂直の方向に導くように、ヘッド14と位置合わせされている。それに対応してコンベヤ28は、繊維を概ね直角の方向に、すなわちガス流の方向に直角に動かすように配置される。
【0059】
図2に全体的に示されているように、エンクロージャ50の中で、チャンバ10は受入れゾーンRと、コンベヤの上流部分が導入口57と位置合わせされて収容されているエプロン53の上流と、コンベヤの下流部分を収容している下流安定化ゾーンSとを有し、コンベヤは、その上に堆積された繊維を繊維導出口58までチャンバ10を通して移動させる。受入れゾーンRと安定化ゾーンSは、側壁の弓形連結部分52cと、エプロン53の湾曲上流端部分54と、コンベヤ28の上側走路とによって形成された通風筒55を介して連通している。通風筒55は、繊維12が通り抜けて安定化ゾーンSに入るための、断面積が減少するテーパ付きすなわち収束ガイドを形成する。
【0060】
受入れゾーンRは、側壁のフランジ44の開口44、多孔性を有するコンベヤ28の上側走路、及び上流ボックスユニット42bの上面の開口を介して、排気チャンバ40と連通している。したがって、チャンバ10に入るガスは排気チャンバ40の中へ進み、排気導出口41から装置を出る。
【0061】
図2Aに見られるように、二つのバッフル65、65は、それぞれが側壁52の一方と対向してチャンバ10の受入れゾーンに配置される。各バッフルは平板からなり、その下流の下端部から延びる細長い舌状部66がケーシング24の長手方向に配置されている。各バッフルは、平坦な端壁51に固定された上流縁部と、側壁52の下縁部のフランジ43の一方に固定された下縁部67と、湾曲エプロン52に固定され合致する湾曲された下流上縁部とを有する。細長い舌状部66の上縁部は、エプロン53の平坦な下流部分の内面と接触した状態にあり、トンネル部分62、57の側壁を形成する。
【0062】
バッフルは、コンベヤによって形成された移送面にガス流中の繊維を導くように導入口57に配置されている。これに関して、バッフル65、エプロン53及び端壁51は、導入口の中央すなわち主通路48の側面を形成する。バッフルの上部は湾曲しているが約10~20°垂線から離れており、それにより、主通路は下向きにコンベヤ28に向かって収束する。バッフルの下縁部67は、コンベヤ37の移送面に向けられている出口すなわち導出口を形成する。
【0063】
バッフル65及びその舌状部66、コンベヤ28、通風筒52、エプロン53、及び側壁52の下流部分52bは、繊維が通路30に沿ってエンクロージャを通るための、断面積が導入口57から繊維導出口58まで減少する導管56を形成する。
【0064】
図3を参照すると、側壁52のそれぞれの上流部分52b、対向するバッフル65、端壁51及びエプロン53は、中央通路48の横にある二つの周辺通路すなわち垂直補助通路49a、49bを形成し、それぞれに、コンベヤの一方の側部に向けられている出口すなわち導出口がある。バッフルの傾斜ないしは湾曲の結果として、補助通路は下向きにコンベヤ28に向かって広がっている。補助通路からコンベヤ37の各側部に放出するガスは、コンベヤベルト及びケーシング24の上面の開口を通過して排気チャンバ40に入る。こうしてバッフル65は、余剰ガスをコンベヤの移送面から離れる方向に導くように通路内に配置され、これによって、より詳細に以下で説明するように、繊維12間での乱流が低減する。
【0065】
導管56を備える安定化ゾーンSの下流部分は、その全長に沿って、実質的に均一な略長方形の垂直断面の細長い区間を有しており、ダイヘッド14から受入れゾーンRを経由して通風筒55を通り連続して延びる繊維12を受けるように配置されている。導管56は、エンクロージャの側壁52の下側下流部分52a、エプロン53の連結部分及びトンネル部分62によって画定され、コンベヤ28の下流端部の上にある繊維導出口58で終端し、この導出口から繊維12は、略長方形の断面の収集ウェブ38としてチャンバから引き出すことができる。
【0066】
ロッド形成モジュール
ロッド形成モジュール3(図1)は、ロッド形成装置のいくつかの構成要素80~86を支持する剛性フレーム70と、装置の制御パネル72とを備える。ロッド形成用の構成要素は、繊維収集モジュール2を貫通する繊維の経路と位置合わせされているフレーム70に固定されたレール71に、調整可能に取り付けられている。構成要素のレールに沿った相対的な長手方向位置は、装置の一般的な動作条件に適合させるために要望通りに調整することができる。
【0067】
ロッド形成装置は形成用の円錐体74を備え、これは、他のロッド形成構成要素を保持するレール71と位置合わせされたフレーム70に取り付けられている。形成用円錐体74は、それぞれ平面では略三角形で外側平坦面及び内側凹面を有する、上部外殻74a及び下部外殻74b(図6A及び図6B)から構成され、これらの外殻は協働して、略長方形の上流導入口75から円形の下流導出口76まで下流方向に延びるテーパ付き中央通路を画定する。導入口75は、収集繊維12を平らなマットないしはウェブ38の形で、繊維収集モジュールの繊維導出口58から直接受けるように配置されている。断面積が減少するテーパ付き中央通路は、繊維を案内し、繊維が導出口76に向かって移動するにつれて円柱状に圧縮するように構成されている。
【0068】
トランスポータジェット80(図7A及び図7B)が、円柱状に形成された繊維を形成用円錐体74から直接受け入れるようにレール71に取り付けられている。形成用円錐体とトランスポータジェットは、トランスポータジェット80からのガスを環境に放出することを可能にするために、レール71に沿って短い距離で軸線方向に間隔を置くことができる。
【0069】
トランスポータジェット80は、外管801及び環状インサート806を備える。外管は、その下流端部の導出口804と連通する中央円筒形通路802、及び外管801の上流端部のソケット803を画定し、このソケットは、中央通路802よりも大きい内径及び外径を有する。管状インサート806は、その下流端部に外径が中央円筒形通路802よりもわずかに小さい差込み口807と、その上流端部にソケット808とを有し、このソケットは、トランスポータジェットへの通風筒状の導入口を画定する。インサート806は、外管801の上流端部に、インサートの差込み口807が外管801の円筒形通路の上流端部の中に受け入れられるように取り付けられて、これらの間に狭い環状ガス通路が画定される。インサートのソケット808は、外管801のソケット803の中に受け入れられる。内管と外管は、軸線方向に延びるボルト809(これはインサートのソケット808の外面のフランジを貫通して外管のソケット803の壁の軸線方向ねじ山付きボルト孔の中に延びる)によって互いに固定される。インサートのソケットの外面の周溝に受け入れられるガスケット805は、外管のソケットの内壁との気密封止部を形成する。
【0070】
インサート806と外管801は軸線方向に間隔を置いて配置され、それにより環状チャンバ95が、インサートのソケットと管のソケットの間に形成される。圧縮空気を、外管のソケットの外面に取り付けられた二つのガス導入口連結部96からチャンバ95の中に導入することができる。使用中、圧力を受けたガスがチャンバから高速で、インサートと外管の間のガス通路を経由して流出され、トランスポータジェット80を通る下流空気流を生成する。これによって、円柱状に形成された繊維をトランスポータジェット80の中に引き込み下流に移送するのに十分な減圧が作り出される。インサート806のソケット808の口は、直径が形成用円錐体の導出口76と等しいのに対して、外管801の導出口804は直径が小さく、それにより繊維は、トランスポータジェットを通過するときに更に収集されて、より小さい直径のロッドになる。
【0071】
トランスポータジェット80のすぐ下流に、これと軸線方向に位置合わせされた別のトランスポータジェット、すなわちスタッファ(緊密化)ジェット180(図8A及び図8B)が、トランスポータジェット80と軸線方向に位置合わせされたレール71に、トランスポータジェットから出てくる円柱状に形成された繊維を受け入れるように取り付けられている。スタッファジェット180は構造がトランスポータジェット80と類似しており、ベンチュリ効果を用いて下流方向に繊維を引き出し、更に収集繊維を圧縮していっそう小さい直径のロッドを形成する同様の機能を果たす。トランスポータジェットとスタッファジェットは、トランスポータジェット80からの過剰空気を環境に逃すことを可能にするために、軸線方向に短い距離で間隔を置くことができる。
【0072】
スタッファジェット180は、その下流端部の導出口184と連通する中央円筒形通路182がある管181、及び上流端部のソケット183を備える。ソケット183は、その開放端部の、直径が中央通路182より大きい円筒形内面と、ソケットの開放端部から中央通路182に向かってテーパが付いている円錐形内面とを有する。
【0073】
管状インサート186がソケット183内に取り付けられる。インサート186は、その上流端部に円筒形カラーを有し、このカラーは、直径がトランスポータジェット80の導出口804と同じである、スタッファジェットへの通風筒状導入口を画定する。カラーは、管181のソケット183に入るインサート186の動きを制限するフランジ185を備える。インサートは、ソケット183の壁の径方向ねじ穴の中にあるグラブねじによってソケット内に保持される。カラーから軸線方向下流に延びる円錐形差込み口187は、中央通路182に向かってテーパが付いており、外径が中央円筒形通路182の径よりも小さい。
【0074】
インサート186は、ソケット183の中に軸線方向に配置され、それにより、円錐形差込み口187と円筒形通路182の上流端部とが、これらの間に狭い環状ガス通路を画定する。環状ガスケットをカラーとインサート186のソケット183の内面との間に設けて、気密封止部を形成することができる。
【0075】
インサート186と差込み口187との互いに対向する円錐面は、それらの間に環状チャンバ195を画定するように径方向に間隔を置いて配置される。圧縮空気を、管181のソケットの外面に取り付けられた二つのガス導入口連結部96からチャンバ195の中に導入することができる。使用中、圧力を受けたガスがチャンバから高速で、管181とインサート186の間のガス通路を経由して出てきて、スタッファジェット180を通る下流空気流を生成する。これによって、圧縮繊維をスタッファジェット10の中に引き込むのに、また繊維を下流に移送するのに十分な減圧が作り出される。
【0076】
薄壁円錐台状ノズル188が、管181の下流最端部分に取り付けられている。ノズルは管の中心軸線と軸線方向に位置合わせされて取り付けられ、管の下流導出口よりも直径が大きいノズルの上流端部から、中央通路182と直径が同じであるノズルの下流端部まで、徐々に小さくなる直径を有する。ノズルは、過剰なガスがノズルの大きい上流端部から環境に放出することを可能にしながら、管から導出される繊維を下流方向に導く。同じ目的のために、穴がノズルの壁に設けられている。
【0077】
予備形成用のブロック82が、圧縮繊維を受け入れるためにトランスポータジェット180のすぐ下流のレール71に配置されている。予備形成用ブロック82は、レール71に予備形成用ブロックを固定できる取付ブラケット902を備えた、中空立方形ハウジング901を備える。ブロックの上流面及び下流面は、円筒形のダイ904を支持するための開口903を備える。ダイ904は中空環状構造の形状であり、その壁は、ダイの内部を外部環境と連通させる穴を備える。ダイの上流端部は、内面がフィルタロッドの所望の直径に等しい直径まで下流方向にテーパが付いた円錐の形であるソケット905を保持する。ダイは、ダイの下流端部906がハウジングの下流面の開口から突出するように、また差込み口が上流面の開口903に封止的な係合するように、ハウジングに取り付けることができる。封止板907は、ハウジングにボルト留めし、ハウジングに対しOリングで封止することができる。
【0078】
ハウジング901の側方の面は、蒸気をハウジングの中に導入できる蒸気連結器(図示せず)を受け入れるための開口908を備える。使用中、蒸気はダイ904の穴を通過し、繊維と接触してロッドの柔軟性を増し、所望のサイズのロッドを形成しやすくする。
【0079】
蒸気ブロック84は、予備形成されたロッドを受け入れるために、予備形成用ブロック82のすぐ下流のレール71に配置される。蒸気ブロックは予備形成用ブロックと同様の構造であり、過熱蒸気がロッドに侵入し、繊維が相互に接合する温度までロッドを加熱するように蒸気ブロックに導入されることを可能にする。
【0080】
予備形成用ブロック及び蒸気ブロックと同様の構造の空気ブロック86が、蒸気ブロックからのロッドを受け入れるために、蒸気ブロック84のすぐ下流のレール71に配置される。過剰な水がもしあればロッドから放逐するために、空気が空気ブロックに導入される。
【0081】
場合により、いくらかの繊維が装置を通り抜けるときに破断することがあるが、空気ブロック86から出てくるロッド中のほとんどの、又は実質的にすべての繊維が破断していない繊維として、空気ブロックから通路30全体に沿って、ダイヘッド41まで延びる。空気ブロック内での処理の後、完成ロッドはフィルタプラグ製造機(図示せず)に供給することができ、ここで、上述の装置で製造された連続ロッドが個々のセグメントに切断される。
【0082】
エンクロージャ
図4図4A図4B及び図4Cは、図1図3を参照して説明した種類の装置に使用するための代替のエンクロージャを示す。図4図4A及び図4Bのエンクロージャは、図1及び図2のエンクロージャと構造が類似しており、同様に構成されて後壁51、側壁及びエプロン53を含み、これらは、導入口を画定し取り囲み、ダイヘッドとコンベヤ28の間の繊維の通路を部分的に囲む。このエンクロージャは二つの変更部、すなわち、変更されたバッフル65a、65bと、安定化ゾーンSの下流部分の変更された繊維導出口58とを含む。これらの機能のどちらも一緒に、又は他方と別々に、装置に組み込むことができる。
【0083】
図4図4A及び図4Bの実施形態では、図1の実施形態の二つのバッフル65が、変更バッフル65a、65bに置き換えられており、これらの両方がルーバ68を備える。ルーバのそれぞれが、バッフルの一連の開口を、収集チャンバ10内のバッフルの表面を覆うガス流の方向に横向きに延びる平行な細長い長方形スロットの形で備え、バッフルのどちらかの側の優勢な圧力状態に応じてどちらの方向にもガスがスロットを通って流れることを可能にしながら、バッフルの一方の側から近づく繊維又は他の材料をバッフルから逸らすように配置される。図4に示されたバッフルでは、スロットのそれぞれにその上縁部に沿ったカバー(cowl)69が設けられ、このカバーは、ガス流中で下向きに動く繊維をスロットから離して中央通路48の中部に向けて偏向させるために、中央通路48の中へ内向きに突出している。
【0084】
図4Cは、図4のエンクロージャに使用できる代替のバッフル65cを示す。このバッフルは、規則的に間隔をあけた行及び列の形に並べて一緒に配置されたルーバ68aの長方形アレイを組み込んでいる。各ルーバは、図4のものより短いスロット68bと、付随するカバー69aとを備える。比較的短いルーバのアレイは、バッフル上を通過するガス流の均等な分布をもたらす。バッフルの流れ特性は、異なる寸法又は形状のルーバをより少なく、又はより多く設けることによって変更することができる。二つのこのような、互いに鏡像であるバッフルが変更エンクロージャに使用され、それにより、バッフルがエンクロージャ内に取り付けられると、カバー69aが主通路の両側で内向きに向かい合う。
【0085】
次に図4及び図4Dを参照すると、エンクロージャの安定化ゾーンSの下流部分の導管56は、繊維導出口58の領域の部分で変更されている。この実施形態では、繊維導出口58は、チャネル64に排出する放出オリフィス59になり、導管の下流端部に中央凹部を形成する。チャネル64は、バッフルから下流に延びる細長い舌状部66によって形成されエプロン53の下のコンベヤの各側部に配置された壁と各側面で接する。チャネルはエンクロージャの外部に開いており、収集繊維が移動する下流方向に延びる。
【0086】
チャネル64は、単純な長方形開口と比較して、ハウジングの内部からの制御されたガスの放出を行い、チャネルの側壁がコンベヤ上方の雰囲気の乱流を減らす。チャネルの効果は、その長手方向の長さの影響を受け、ガス流速、ガス温度、内部ガス圧、コンベヤ速度、ダイヘッド14とコンベヤ28の間の垂直距離、及びダイヘッドからポリマーが供給される速度等の、装置の動作条件に適合するように選択することができる。通常、チャネルは導管の長さの10%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、65%又は70%まで、例えば導管の長さLの25~65%、又は40~60%まで延ばすことができる。図示の実施形態では、チャネルは導管の長さの約30%で延びている。
【0087】
図4Dは、導出口オリフィスから出てくる収集繊維のウェブ38を、それがコンベヤによってチャネル64を通過して搬送されているものとして示す。エンクロージャから出る下流方向の繊維束の移動には、余剰ガスの流れが伴う。流出されるガス流は、繊維束よりも速く流れるとともに、チャネル64の側面及びコンベヤ28によって制約される。導出口オリフィスの下流のガス流速はまた、エンクロージャ内のガスの流れよりも速い。ガスがオリフィスからチャネルに沿って流出するときのガスの、結果として得られる流体力学は、繊維束をチャネルの側面に接触させずに保持する助けになり、また繊維がロッド形成モジュール3に近づくときに繊維をコンベヤ表面から離す助けになる。
【0088】
図5図5A及び図5Bは、図1図3を参照して説明した種類の装置に使用するための別の代替的なエンクロージャを示す。このエンクロージャもまた、図1及び図2のものと構造が類似しているが、二つの別の変更部、すなわち変更されたバッフルの配置及び変更された繊維導出口58を含む。これらの機能のどちらも一緒に、又は他方と別々に、装置に組み込むことができる。
【0089】
図5及び図5Aに示されたエンクロージャは、同様に構成されて端壁51、側壁52、52及びエプロン53を含み、これらは、ガス及び同伴繊維の導入口を画定し、ダイヘッドからコンベヤ28までハウジングを貫通する繊維の通路を部分的に取り囲む。端壁51の上縁部及びエプロン53の上流端部には、図2及び図3に示された対応する構成要素とは反対の意味の斜角が付けられている、すなわち傾斜している。この場合、各縁部の水平中央区域には、上向きに延び中央区域から離れた斜角付き縁部が各側部に位置する。二つのバッフル65c、65dがエンクロージャ内に、図1のものと同様の向きで配置される。バッフルは、図3に示されたバッフルと同じように傾斜させることができるが、この場合にはバッフルは、互いに平行な、且つ隣り合う側壁52に平行な垂直面内にある。したがって、バッフル、端壁51及びエプロン53は、断面が一定の主通路48を形成する。
【0090】
それぞれの側で、バッフルの上縁部、端壁51及びエプロン53の間で画定される長方形領域は、偏向パネル61、61によって閉じられて、側壁52の上縁部から下向き及び内向きに中央通路に向かって傾斜する外面を形成する。各側壁52及びその付随する下部フランジ43は、その付随する偏向パネル61及びバッフル65c、65dと一体化して、例えばプレスしたものとして形成される。側壁の下部フランジ44もまた、フランジの全長に沿って延びると共にチャネル64の側壁を形成する、垂直の内側返し壁46を含む。返し壁46の各上縁部は、バッフル板65c、65dの下縁部から垂直方向及び横方向に間隔を置いて配置され、チャンバ10の全長に沿った細長い間隙66を残し、この間隙は、ガスが主通路48の導出口から横向きに、隣り合う補助通路49a、49bに流れ込むことを可能にする。側壁52、偏向パネル61及びバッフル65c、65dは、繊維を主通路48の中に、また余剰ガスをハウジングの外部に導くことができるガス流のバッフルとして働く。
【0091】
図5のエンクロージャでは、繊維導出口58は、開放チャネル64に導出する導出口オリフィス59を含み、この開放チャネルは、図4に示されたものと同様に、導管の下流端部に中央凹部を形成する。この実施形態では、チャネルは導管の長さの約50%に沿って延びる。繊維導出口58は、導出口オリフィス59に隣り合い、バッフル90が、オリフィスから上向きに出てくるガスを、コンベヤの表面に収集された繊維の移動方向から偏向するように取り付けられているという点で、変更されている。バッフルは二つのバッフル板91、92からなり、これらは、チャネルを横切って横方向に延びており、各バッフル板の上流縁部がチャネルの中へ突出するように、エプロン53の下流部分の平面に対してある角度で取り付けられている。バッフル板は固定することができ、又は別法として、バッフルの傾き角度を調整できるようにするために、チャネルを横切って延びる軸のまわりで枢動するように取り付けることができる。各バッフルは、同時に調整することができるように一組として相互に連結することができる。
【0092】
装置及び装置の作用
図1図3の装置は以下のように動作する。メルトブローモジュール1では、ダイヘッド14には溶融ポリマー及び高温ガスが供給される。溶融ポリマーは、液体としてジェット16のアレイから出てくると高温空気によって吹き飛ばされて細流になり、これが固化して小径の繊維12を形成し、ガス流に同伴されることになる。
【0093】
ダイヘッドは、単一ポリマー材料から単一成分繊維を製造するように、又は第1のポリマーから形成されたコアが別のポリマーから形成されたシースに入れられる二成分繊維を製造するように構成することができる。フィルタロッドの製造では、単一成分繊維を例えば、ポリエステル、ポリアミド、エチルビニルアセテート、ポリビニルアルコール又はセルロースアセテートから、ポリマーの特性を変更するための他の材料、例えばトリアセチン等の可塑剤を任意選択で混合して形成することができる。二成分繊維は、前述のポリマーの任意の組み合わせから形成することができ、例えば、ポリプロピレンのコア及びセルロースアセテートのシースを有し、任意選択でトリアセチン可塑剤を混合する。
【0094】
ブローガスとして空気を使用する場合、ダイヘッドは通常、コンベヤベルト37の上側走路の上方25~26cmに配置され、250~350℃、例えば300~320℃の空気温度、毎分500~600立方フィートすなわち14,000~17,000リットルの流速、及びジェット孔当たり毎分0.3~0.5グラムのポリマースループットで動作する。結果として得られる繊維は通常、直径が5~10マイクロメートル、例えば約7マイクロメートルであり、収集して周囲長が約24mm、及び重量がロッドの10cmの長さ当たり約550mgであるフィルタロッドを形成することができる。
【0095】
ガス及び同伴繊維12の流れは、エンクロージャの導入口57から収集チャンバ10の中に、更にエンクロージャ50の受入れゾーンR内のコンベヤ28の上流部分に向けられる。繊維12は、コンベヤベルト37の上部走路の上に絡み合ったマットとして集合する。コンベヤ28は、図2で見て時計回りにベルトを動かすように動作して、繊維を、それがベルト上に集合すると、ガス流の方向に対して、ガス流の中から外へ、下流の繊維導出口58に向けて移動させる。
【0096】
ロッド形成モジュール3のトランスポータジェット80は、収集繊維のウェブをチャンバ10から、繊維12を案内し円柱状のロッド81になるように圧縮する形成用円錐体74に通して引き出す。次にロッドは予備形成用ブロック82を通過し、この予備形成用ブロックにはロッドを柔軟にするために蒸気が導入される。次に、ロッドは、予備形成用ブロック82から蒸気ブロックの中へ進み、ここでロッドは、例えば1~3バール、通常は約1.5バールの圧力のもとで、例えば150~200℃の範囲の温度まで蒸気を加熱することによって生成された過熱蒸気と接触する。この処理によりロッド中の繊維は、その接触点で相互に接合する。次いで、ロッドは、ロッドから過剰な水を除去する空気ブロック86へ進む。次に、形成されたロッド81は、別の処理装置、例えばロッドを所望の長さの連続セグメントに切断する切断機から引き出すことができる。
【0097】
メルトブロー法によって繊維を形成するのに必要なガスの量及び圧力は、メルトブローモジュール14から出てくるガス流が乱流であるようにするものであり、また、繊維と、繊維をかせ、ウェブ若しくはマット、又は他の収集配列に形成するためのプロセスとを乱す又は妨害することができるようなものである。特に、乱流余剰ガスは、収集繊維のマットを通路の一部分に沿って持ち上げて、マットがコンベヤ表面から分離するときにマットの無秩序な動きを作り出し、これによりマット中の繊維の不均一な分布がもたらされ、製造プロセスが中断するおそれがある。プロセスのこのような分離のしやすさは、装置から繊維が供給される速さと共に増大する。
【0098】
ガス流による製造プロセスへの妨害を減らすために、ガス及び同伴繊維がエンクロージャ50内を通路30に沿って進むときに、ガスがガス流中の繊維12から分離される。余剰ガスをガス流から分離し収集繊維から逸らすことによって、収集繊維中の乱流が低減され、繊維12が安定化される。したがって、繊維密度がより均一でばらつきのない収集製品の製造を実現することができる。
【0099】
図面に示された実施形態では、余剰ガスの分離は一連の段階で行われる。図3に示されるように、繊維12は、エンクロージャ50の主通路すなわち中央通路48に引き込まれ、コンベヤの方向に収束するバッフル65、65によってコンベヤの上側走路37に導かれる。ガス流からの余剰ガスと繊維の一次分離は、コンベヤ28の上流で、側壁52、端壁51及びエプロン53を含むエンクロージャの外壁によって行われる。これらの壁は、図3に矢印D、Dで示されているように、ガス流の周辺の外側ゾーンからの余剰ガスを繊維から離れる方向に導き、周辺ガスがエンクロージャ50の壁の外側を進むように、また周囲の環境に排出するようにする。流れから余剰ガスを分離するこの主段階には、乱流の過剰ガスがハウジング内の繊維から十分に分離されるので、繊維に対する安定化効果がある。
【0100】
余剰ガスの二次分離は、コンベヤの上流でバッフル65、65によって行われ、バッフルは、図3に矢印E、Eで示されているように、エンクロージャ内の余剰ガスをガス流の内側ゾーンから、周辺ゾーンの内向きに、バッフルとハウジングの側壁52の隣り合う部分との間の補助通路49a、49bに導く。偏向されたガスは、図3の矢印H、Hで示されるように、エンクロージャ50から排気チャンバ40に入り、コンベヤ28の上方領域に隣り合うケーシング24の上面の開口から排出される。この二次段階で分離されたガスは、繊維から離れて排気チャンバ40に導かれ、そこから導出口41を通り抜けて環境に至る。したがって、ハウジング内の繊維の乱流は更に低減され、繊維は安定した条件のもとで収集されてウェブになる。
【0101】
通常は内側ゾーンの内側にあるガス流の、中央ゾーンのガス及び同伴繊維は、矢印F、Fで示されるように中央通路48の中に、更に、コンベヤ28の方向に収束するバッフル65、65によって、コンベヤ28の上に向けられる。コンベヤベルト37の表面の多孔性構造により、ガス流中の繊維12はコンベヤの上側走路に集まり、余剰ガスは、図3の矢印G、Gで示されるように、エンクロージャ50からコンベヤを通り抜けるように導かれ、エンクロージャの下の排気チャンバ40の中へ排出され、この排気チャンバから、排気導出口41を通り抜けて排気される。コンベアとガス流の間の相対運動により、繊維が連続ウェブに形成され、この連続ウェブはガス流から外れて、それに直角に下流へ移動する。中央通路のガス流からの余剰ガスは、繊維を乱すことなくコンベヤを通り抜けて排気チャンバに入り、これによって、ハウジング内の乱流が低減し、コンベヤ上の繊維のウェブが安定化する。
【0102】
三次分離段階では、繊維のウェブが、受入れゾーンRから通風筒55を経由して安定化ゾーンSの導管56の中へ搬送され、この安定化ゾーンは、その全長に沿って、コンベヤ上のウェブの望ましい略長方形の断面と合致する横断面を有し、比較的小さい空気間隙がウェブの上方にある。導管は、望ましいウェブの幅よりも10%から25%又は50%以上幅広くすることができ、また10:1から10:5までの範囲、例えば10:1、10:2又は10:3のアスペクト比(幅:高さの比)を有することができる。導管に入る余剰ガスは、低乱流又は実質的に非乱流の流路に沿って、実質的に層流の形でウェブの近くに制限され、したがって、ウェブが導管を通して搬送されるときにウェブを安定化させる。
【0103】
この実施形態では、余剰ガスのほとんどが排気チャンバ40に、更に排気導出口に導かれ、わずかな比率の余剰ガスが繊維導出口58に導かれて、繊維と一緒にチャンバ10から出る。
【0104】
図1図3を参照して説明した装置が、図4を参照して説明した変更されたエンクロージャと共に使用される場合、ハウジングを通る空気及びガスの流れのパターンは、図4Aに示されたようになる。
【0105】
図4Aを参照すると、ガス流及び繊維からの余剰ガスの一次分離は、図3の実施形態のように、側壁52、端壁51及びエプロン53によって行われ、これらは、矢印D、Dで示されているように、ガス流の周辺の外側ゾーンの余剰ガスを繊維から離してエンクロージャ外側の周囲の環境中に導く。余剰ガスの二次分離は、エンクロージャ内でバッフル65、65によって行われ、バッフルは、余剰ガスをガス流の内側ゾーンから、補助通路49a、49bの中に、それから、矢印H、Hで示されるように排気チャンバに導く。この段階で分離されたガスは、繊維12の乱流を引き起こすおそれがなく、繊維は安定した条件のもとで収集されてウェブ38を形成する。再び、図3Aの実施形態におけるように、ガス流の中央ゾーン中のガス及び同伴繊維は、中央通路48の中に、更に、バッフル65、65によってコンベヤ28の上に向けられる。ガス流中の繊維12はコンベヤの上側走路に集まり、余剰ガスは、図3の矢印G、Gで示されるように、エンクロージャ50からコンベヤを通り抜けるように導かれ、エンクロージャの下の排気チャンバ40内に排出される。
【0106】
バッフル65a、65bのルーバ68は、ガスを繊維から分離するための代替経路を形成する。中央通路48に入るガス流は、通路を通るその流れに対する、コンベヤベルト37により生じる抵抗を受ける。コンベヤは、ケーシングによって示される、補助通路を通るガスの下向きの流れに対する抵抗よりも高い抵抗を、中央通路内のガスの下向きの流れに対して示す。その結果、補助通路内よりも高いガス圧が中央の主通路48に生じ得る。この実施形態では、ルーバは、ガスが中央通路から補助通路へと矢印J-Jの方向に流れ得る通路を形成し、以て、中央通路の高い圧力が解放され、ガスからの繊維の分離が改善され、ハウジング内の乱流が更に低減し、コンベヤ上の繊維の安定性が改善される。
【0107】
図4Cを参照して説明したハウジングを通り抜けるガス及び繊維の流れは、図4Aに示されたものと類似しているが、バッフルを覆って通り抜けるガス及び繊維の流れの特性は、ルーバのパターン及び構成によって変わる。
【0108】
図5図5A及び図5Bを参照すると、ガス流及び繊維からの余剰ガスの一次分離は、側壁52の上縁部及び偏向パネル61によって行われ、これらは、矢印M、Mで示されるように、ガス流の周辺の余剰ガスを繊維12から離してエンクロージャ外側の周囲環境中に導く。ガス流の内側ゾーンからの繊維及びガスは、矢印N、N、Nで示されるように、中央の主通路48に導かれる。中央通路48は、コンベヤ28と垂直方向に位置合わせされ、コンベヤは、ガス流によってコンベヤまで送出された繊維を集める。繊維を同伴するガスの一部は、矢印G、Gで示されるように、コンベヤを通過して排気チャンバ40に入る。繊維からのガスの二次分離は、エンクロージャ内で、バッフル板とハウジングの側壁52、52との間の細長い間隙46によって行われ、この間隙は、矢印Q、Qで示されるように、ガスが中央通路48下方への繊維の移動方向から離れて横方向に流れ、それから、矢印P、Pで示されるように、排気チャンバ40に入ることを可能にする。このように、余剰ガスは繊維から離れる方向に導かれて、乱流がほとんど生じず、繊維が収集されてコンベヤ上で規則的で均一なウェブになることが可能になる。
【0109】
別の分離の段階が導出口オリフィス59で行われ、この場合、バッフル板91、92は、空気及び繊維のウェブが出てきて開放チャネル64に入るときに、空気を繊維のウェブから離して上方に導く。その結果生じるウェブ上方の圧力の低下により、ウェブ38上方の圧力が低減し、ウェブをコンベヤから形成用円錐体74の中へ移送する助けになる。
【0110】
上述の実施形態によるエンクロージャを使用することの効果は、このエンクロージャを組み込んでいる装置の動作を、図1と類似しているがエンクロージャ50がない装置の動作と比較することによって実証可能である。
【0111】
エンクロージャの不在下では、メルトブローモジュール1からの余剰ガスが、コンベヤ28の上での繊維のウェブの形成を混乱させる傾向があることが分かっている。装置8を覆う余剰ガスのランダムな変動により、ウェブがコンベヤに沿って下流方向に進むときにウェブの厚さ及び密度のばらつきが生じ、またウェブが脱出すること、又はコンベヤの表面から離脱することにもなり得る。これらの影響は、メルトブローヘッドからの繊維の送出速度、又はコンベヤ28の走行速度が増大するにつれて大きくなる。その結果、エンクロージャ53の不在下では、装置は、収集繊維中の繊維の分布の混乱と、形成された繊維材料の密度のばらつき、及びこの繊維材料から形成された製品の特性の不一致とを回避するために、比較的低いウェブの生産速度で動作しなければならない。
【0112】
例として、エンクロージャ53を備えると、直径が5~10マイクロメートルの繊維を150~200m/分以上の生産速度で生産するように成功裏に動作させることができるのに対し、エンクロージャのない同様の装置は、コンベヤからの繊維ウェブの脱出を回避するために、遅い生産速度、通常は30~50メートル/分にする必要がある。
【0113】
様々な課題に対処し、技術を進歩させるため、本開示はその全体にわたって様々な実施形態を例証及び例示によって示している。これらの実施形態において、特許請求された発明を実施することが可能である。これらの実施形態は、吸引可能媒体を生成するために構成された装置を提供する。本開示の利点及び特徴は、実施形態のうち代表的な例のものにすぎず、すべての利点や特徴を網羅したものでもなければ、他の利点や特徴を排除するものでもない。これらは、特許請求の範囲等に開示される特徴の理解と教示を助けるためだけに提示されている。本開示の利点、実施形態、例、機能、特徴、構造、及び/又は他の側面は、特許請求の範囲によって規定されたとおりに本開示を限定するもの、或いは特許請求の範囲の均等物を制限するものと考えるべきではなく、本開示の範囲及び/又は趣旨から逸脱することなく他の実施形態を利用し、変形を施すことができることを理解されたい。様々な実施形態が、開示された要素、構成、特徴、部品、ステップ、手段等の様々な組合せを適切に備え、それらのみから構成され、或いは実質的にそれらから構成されてもよい。本開示は、特許請求の範囲に現在は記載されていないが将来記載される可能性のある他の発明を含む可能性がある。
【符号の説明】
【0114】
12…繊維、41…排気導出口、50…エンクロージャ、57…導入口、58…繊維導出口。

図1
図2
図2A
図3
図4
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B