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  • 特許-カメラ視野移動機構 図1
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  • 特許-カメラ視野移動機構 図6
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】カメラ視野移動機構
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/04 20060101AFI20230314BHJP
   B25J 5/00 20060101ALN20230314BHJP
【FI】
B25J19/04
B25J5/00 B
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019219449
(22)【出願日】2019-12-04
(65)【公開番号】P2021088027
(43)【公開日】2021-06-10
【審査請求日】2021-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】518126144
【氏名又は名称】株式会社三井E&Sマシナリー
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】味野 真生
【審査官】神山 貴行
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-011264(JP,A)
【文献】米国特許第05940645(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0034347(US,A1)
【文献】特開平04-030981(JP,A)
【文献】特表2018-501684(JP,A)
【文献】特開2010-149279(JP,A)
【文献】特開2018-120253(JP,A)
【文献】特開昭61-074011(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0052139(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00-21/02
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔作業用ロボットに付帯されるカメラの移動機構であって、
前記カメラの近傍に位置してカメラの向きを変化させる第1可動部と、
前記第1可動部を支承するアームと、
前記アームの基端側に配置されて前記アームを動作させる第2可動部と、
前記第1可動部と前記第2可動部とに操作信号を出力する操作手段と、
前記第2可動部を支持すると共に、前記操作手段からの前記操作信号を受けて前記第1可動部及び前記第2可動部を動作させる制御手段を備えたベースと、を有し、
前記アームは、当該アームを起伏させる際の動作に寄与する平行リンクにより構成し、
前記第2可動部は、前記アームを上下方向に動かすための起伏軸と、左右方向に動かすための旋回軸を備えており、前記ベースは、前記遠隔作業用ロボットに対する取付部を担うことを特徴とするカメラ視野移動機構。
【請求項2】
前記第1可動部は、少なくとも2つの可動軸を有することを特徴とする請求項1に記載のカメラ視野移動機構。
【請求項3】
前記第1可動部には、前記遠隔作業用ロボットにおける作業手段を視野に入れるための動作を成す自動追尾信号が入力され、
前記第2可動部には、遠隔操作手段からの操作信号が入力される構成としたことを特徴とする請求項1または2に記載のカメラ視野移動機構。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔作業用ロボットに係り、特にロボットの遠隔操作を行う際の視野を確保するために付帯されるカメラの移動機構に関する。
【背景技術】
【0002】
遠隔作業用のロボットは主に、特許文献1に開示されているような固定型の作業用ロボットと、特許文献2に開示されているような移動型の作業用ロボットに分類されることが知られている。
【0003】
特許文献1に開示されているような固定型の作業用ロボットでは、作業の手元となるロボットアームの先端付近の他、作業空間内の所定位置(例えば壁面など)にカメラ等の状況把握手段を設置し、様々な角度からアームの動き、アームによる作業状況を把握する事ができるように構成されている。
【0004】
一方、特許文献2に開示されているような移動型の作業用ロボットでは、ロボット本体にカメラを搭載し、このカメラの向きを上下左右に動かす事で、アームによる作業範囲や、移動方向の視野を確保するように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】WO2017/033351号公報
【文献】特開2016-196064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献に開示されているように、固定型の作業用ロボットの場合は、複数の状況把握手段(カメラ等)で、アームの周囲全体に視野を設けることができるのに対し、移動型の作業用ロボットでは、カメラを設置できる場所に制限が多く基本的にはロボット本体に定点カメラを設け、このカメラの向きを上下左右に動かすことで視野を確保することとなる。
【0007】
このため、移動型の作業用ロボットでは、障害物や回り込みなど、定点カメラの視野を遮るものが存在する場合、アームの作業範囲を把握することが困難になる場合が少なくないというのが実状である。
【0008】
そこで本発明では、移動型の作業用ロボットにおいて、障害物等が存在する場合であっても良好な視野を確保することのできるカメラ視野移動機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明に係るカメラ視野移動機構は、遠隔作業用ロボットに付帯されるカメラの移動機構であって、前記カメラの近傍に位置してカメラの向きを変化させる第1可動部と、前記第1可動部を支承するアームと、前記アームの基端側に配置されて前記アームを動作させる第2可動部と、前記第1可動部と前記第2可動部とに操作信号を出力する操作手段と、を有し、前記アームは、当該アームを起伏させる際の動作に寄与する平行リンクにより構成したことを特徴とする。
【0010】
また、上記のような特徴を有するカメラ視野移動機構において、前記第1可動部と前記第2可動部は、それぞれ複数の可動軸を有するようにすると良い。このような特徴を有する事によれば、カメラ視野の自由度を高めることができる。
【0011】
さらに、上記のような特徴を有するカメラ視野移動機構において前記第1可動部には、前記遠隔作業用ロボットにおける作業手段を視野に入れるための動作を成す自動追尾信号が入力され、前記第2可動部には、遠隔操作手段からの操作信号が入力される構成とすると良い。このような特徴を有することによれば、カメラ視野を操作する操作者の操作負担を軽減することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
上記のような特徴を有する事によれば、移動型の作業用ロボットにおいて、障害物等が存在する場合であっても良好な視野を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態に係るカメラ視野移動機構を作業用ロボットに取り付ける場合の例を示す図である。
図2】実施形態に係るカメラ視野移動機構の動作、構成を説明するための図である。
図3】実施形態に係るカメラ視野移動機構においてアームを起伏させた際の第1可動部の状態を示す図である。
図4】実施形態に係るカメラ視野移動機構における制御系統を示すブロック図である。
図5】実施形態に係るカメラ視野移動機構の使用状態(アーム水平位置)を示す図である。
図6】実施形態に係るカメラ視野移動機構の使用状態(アーム立上げ位置)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明のカメラ視野移動機構に係る実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
本実施形態に係るカメラ視野移動機構は、図1に二点鎖線で示すような遠隔操作型の作業用ロボット30に付帯して用いられる要素である。よって、付帯される作業用ロボット30の形態や機能に関しては、特に限定するものでは無い。
【0015】
[カメラ視野移動機構]
本実施形態に係るカメラ視野移動機構10は、カメラ12と、第1可動部14、アーム16、第2可動部18、ベース20、及び操作手段22(図4参照)を有する。カメラ12は、作業用ロボット30の視覚としての映像を取得するための視野を確保するための手段である。カメラ12の具体的な構成、構造は問わないが、小型で、画角が広いものが好ましい。また、防塵性や、防滴性などの特性を備えていることが好ましい。
【0016】
カメラ12を小型なものとすることで、取り付け形態に自由度を持たせることができる。また、画角が広いものとする事で、視野を広くすることができる。さらに、防塵性や防滴性などを持たせる事により、作業現場の環境が過酷な環境であっても対応することが可能となる。また、カメラ12には、図示しない投光器(ライト)などを付帯させるようにしても良い。暗所での遠隔作業となる場合であっても、視野を確保することが可能となるからである。
【0017】
第1可動部14は、上述したカメラ12を載置するための雲台であって、少なくともカメラ12の光軸を上下方向、及び左右方向に向けるための2つの可動軸を有するようにする。上下方向の可動軸(チルト軸14a)と、左右方向の可動軸(パン軸14b)には、それぞれステッピングモータ等のアクチュエータ(チルト軸アクチュエータ14a1、パン軸アクチュエータ14b1:図4参照)が備えられている。各アクチュエータに対して詳細を後述する操作手段22からの信号、あるいは自動追尾信号が入力されることにより、カメラ12の光軸を所望する方向に向けることが可能となる。なお、光軸周りにカメラ12を回動させる回転軸(捻じれ方向)を備えても良いが、作業用ロボット30を操作するための視野の確保には特段必要が無い。
【0018】
アーム16は、第1可動部14を支承する起伏部材である。すなわち、アーム16の一方の端部(先端)に第1可動部14を配置し、他方の端部(基端)にアーム16を起伏させる方向への力が加えられることで、第1可動部14に配置されたカメラ12を上下方向に移動させることが可能となる。ここで、本実施形態では、アーム16を平行リンクにより構成している。このような構成とすることで、図3に示すように、一方の端部に配置した第1可動部14に制御機構を設ける事なく、第1可動部14の傾きを一定に保つ(例えば水平位置)ことが可能となる。よって、アーム16を上下に起伏させた場合であっても、第1可動部14におけるチルト軸14aの可動角度(水平軸に対する可動角度)を一定に保つことができる。
【0019】
第2可動部18は、アーム16を支持すると共に動作させるための要素である。第2可動部18は、第1可動部14と同様に、アーム16を上下方向に動かすための可動軸(起伏軸16a)と、左右方向に旋回させるための可動軸(旋回軸16b)の2つの可動軸を有する。起伏軸16aと旋回軸16bには、それぞれアクチュエータ(起伏軸アクチュエータ16a1、旋回軸アクチュエータ16b1:図4参照)が備えられているが、図1から図3に示す例では、旋回軸16bのアクチュエータ(旋回軸アクチュエータ16b1)は、ベース20に埋め込まれた構造とされている。
【0020】
ベース20は、第2可動部18を支持すると共に、作業用ロボット30への取り付け部となる要素である。また、ベース20には、詳細を後述する操作手段22からの制御信号を受け、これを出力すると共に、自動追尾信号を生成、出力するための制御手段24(図4参照)が備えられている。
【0021】
ここで、自動追尾とは、作業用ロボット30の作業範囲にカメラの視野を合わせ続ける動作を言う。自動追尾信号の生成は、自動追尾の方式によって異なるが、例えばカメラ12によって取得された映像に基づく自動追尾であれば、作業用ロボット30のアーム(作業アーム32)を形状認識し、この作業アーム32が常に画角内に収まるように、パン軸アクチュエータ14b1、及びチルト軸アクチュエータ14a1を動作させる制御信号を生成すれば良い。
【0022】
操作手段22は、主に、アーム16を動作させる起伏軸アクチュエータ16a1と旋回軸アクチュエータ16b1を操作するための要素である。ボタンやスティックなどの操作に起因して、起伏軸アクチュエータ16a1、および旋回軸アクチュエータ16b1に対する制御信号を出力する構成とすれば良い。また、自動追尾と手動操作の切り替えボタン(不図示)などを設け、パン軸14b、チルト軸14aについての操作系統も併せ持つようにしても良い。なお、操作手段22の具体的形態については、限定するものでは無い。
【0023】
また、操作手段22とベース20との間の制御信号、並びに図示しないモニタへの映像の送受信は、有線によるものであっても、無線によるものであっても良いが、電波障害が生じやすい建屋内での作業を行う場合には、有線とすることが望ましい。制御信号や映像の安定化を図るためである。
【0024】
[作用、効果]
図5に示すように、作業用ロボット30の本体高さに位置するカメラ12の視野では、その光軸よりも上部に位置する梁40の上面の状態や、奥行きなどを知る事は難しい。なお、図5中斜線でハッチングされている部分が、カメラ12の死角となる。
【0025】
これに対し、図6に示すようにアームを持ち上げ、カメラ12の配置位置を高くすることで、梁40の上面を視野に捉えることができ、その奥行を知る事もできるようになる。なお、図6においても、斜線でハッチングされている部分がカメラ12の死角となる。
【0026】
また、第1可動部のアクチュエータ(チルト軸アクチュエータ14a1、パン軸アクチュエータ14b1)に対する制御を自動追尾とすることで、動作可能な4軸のうち2軸を自動制御とすることができる。よって、モニタ操作(視野確保)のための操作者の操作負担を減らすことができ、操作性の向上を図ることもできる。
【符号の説明】
【0027】
10………カメラ視野移動機構、12………カメラ、14………第1可動部、14a………チルト軸、14a1………チルト軸アクチュエータ、14b………パン軸、14b1………パン軸アクチュエータ、16………アーム、16a………起伏軸、16a1………起伏軸アクチュエータ、16b………旋回軸、16b1………旋回軸アクチュエータ、18………第2可動部、20………ベース、22………操作手段、24………制御手段、30………作業用ロボット、32………作業アーム、40………梁。
図1
図2
図3
図4
図5
図6