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特許7244209無停電電源システム、無停電電源用劣化判断装置、無停電電源用劣化判断プログラムおよび無停電電源劣化判断方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】無停電電源システム、無停電電源用劣化判断装置、無停電電源用劣化判断プログラムおよび無停電電源劣化判断方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 9/06 20060101AFI20230314BHJP
   H02H 5/00 20060101ALI20230314BHJP
   H02H 5/04 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
H02J9/06 120
H02H5/00
H02H5/04
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2018048966
(22)【出願日】2018-03-16
(65)【公開番号】P2019161969
(43)【公開日】2019-09-19
【審査請求日】2021-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(74)【代理人】
【識別番号】100081961
【弁理士】
【氏名又は名称】木内 光春
(72)【発明者】
【氏名】宮本 陽
(72)【発明者】
【氏名】小松 哲也
(72)【発明者】
【氏名】須藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】鹿仁島 康裕
(72)【発明者】
【氏名】柳橋 宏行
(72)【発明者】
【氏名】玉城 将樹
(72)【発明者】
【氏名】峯野 勝也
【審査官】山本 香奈絵
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-156746(JP,A)
【文献】特開2014-053987(JP,A)
【文献】特開昭59-129543(JP,A)
【文献】国際公開第2010/109587(WO,A1)
【文献】特開昭63-054566(JP,A)
【文献】特開平03-269221(JP,A)
【文献】特開2005-004675(JP,A)
【文献】特開2002-032152(JP,A)
【文献】特開2016-197358(JP,A)
【文献】特開2015-156744(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 9/06
H02H 5/00
H02H 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷却部の劣化を示す冷却部劣化情報を送信する無停電電源装置と、
前記無停電電源装置から前記冷却部劣化情報を受信し、
受信した前記冷却部劣化情報に基づき前記無停電電源装置の冷却部の劣化状態を段階的に判断する判断部と、
を備え、
前記判断部は、
前記無停電電源装置の前記冷却部の劣化状態が軽度であると判断した場合に、前記冷却部の動作を継続するように前記無停電電源装置を制御し、
前記無停電電源装置の前記冷却部の劣化状態が軽度であると判断した後、前記無停電電源装置の温度が所定の温度以上であると当該無停電電源装置の状態を判断した場合、
前記無停電電源装置の前記冷却部の劣化状態が軽度であると判断した後、前記無停電電源装置の出力電力が所定の電力以上であると当該無停電電源装置の状態を判断した場合、
あるいは前記無停電電源装置の前記冷却部の劣化状態が重度であると判断した場合に、
前記冷却部を停止し、負荷への電力供給を停止するように前記無停電電源装置を制御し、
さらに、上記の判断を一定時間ごとに繰り返し継続的に行う、
無停電電源システム。
【請求項2】
前記判断部は、
重大な事故を引き起こすリスクがなければ劣化状態は軽度であり、重大な事故を引き起こすリスクがあれば劣化状態は重度であると判断する、
請求項1に記載の無停電電源システム。
【請求項3】
前記判断部は、
前記無停電電源装置に負荷への電力供給を停止する前記制御を行うときに、前記無停電電源装置の外部に設けられた電源を動作させ前記負荷への電力供給を行う制御を行う、
請求項1または2に記載の無停電電源システム。
【請求項4】
前記冷却部劣化情報は、冷却部の発生音、振動、消費電流、AE(アコースティックエミッション)のうちの少なくとも一つに関する情報である、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の無停電電源システム。
【請求項5】
前記無停電電源装置から送信された前記冷却部劣化情報は、コンピュータクラウドに蓄積記憶される、
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の無停電電源システム。
【請求項6】
無停電電源装置から冷却部劣化情報を受信し、
受信した前記冷却部劣化情報に基づき前記無停電電源装置の冷却部の劣化状態を段階的に判断する判断部を備え、
前記判断部は、
前記無停電電源装置の前記冷却部の劣化状態が軽度であると判断した場合に、前記冷却部の動作を継続するように前記無停電電源装置を制御し、
前記無停電電源装置の前記冷却部の劣化状態が軽度であると判断した後、前記無停電電源装置の温度が所定の温度以上であると当該無停電電源装置の状態を判断した場合、
前記無停電電源装置の前記冷却部の劣化状態が軽度であると判断した後、前記無停電電源装置の出力電力が所定の電力以上であると当該無停電電源装置の状態を判断した場合、
あるいは前記無停電電源装置の前記冷却部の劣化状態が重度であると判断した場合に、
前記冷却部を停止し、負荷への電力供給を停止するように前記無停電電源装置を制御し、
さらに、上記の判断を一定時間ごとに繰り返し継続的に行う、
無停電電源用劣化判断装置。
【請求項7】
無停電電源装置から冷却部劣化情報を受信するステップと、
受信した前記冷却部劣化情報に基づき前記無停電電源装置の冷却部の劣化状態を段階的に判断するステップと、をコンピュータに行わせる無停電電源用劣化判断プログラムであって、
前記判断するステップでは、
前記無停電電源装置の前記冷却部の劣化状態が軽度であると判断した場合に、前記冷却部の動作を継続するように前記無停電電源装置を制御し、
前記無停電電源装置の前記冷却部の劣化状態が軽度であると判断した後、前記無停電電源装置の温度が所定の温度以上であると当該無停電電源装置の状態を判断した場合、
前記無停電電源装置の前記冷却部の劣化状態が軽度であると判断した後、前記無停電電源装置の出力電力が所定の電力以上であると当該無停電電源装置の状態を判断した場合、
あるいは前記無停電電源装置の前記冷却部の劣化状態が重度であると判断した場合に、
前記冷却部を停止し、負荷への電力供給を停止するように前記無停電電源装置を制御し、
さらに、上記の判断を一定時間ごとに繰り返し継続的に行う、
ことをコンピュータに行わせる無停電電源用劣化判断プログラム。
【請求項8】
無停電電源装置から冷却部劣化情報を受信する手順と、
受信した前記冷却部劣化情報に基づき前記無停電電源装置の冷却部の劣化状態を段階的に判断する手順と、を有する無停電電源用劣化判断方法であって、
前記判断する手順では、
前記無停電電源装置の前記冷却部の劣化状態が軽度であると判断した場合に、前記冷却部の動作を継続するように前記無停電電源装置を制御し、
前記無停電電源装置の前記冷却部の劣化状態が軽度であると判断した後、前記無停電電源装置の温度が所定の温度以上であると当該無停電電源装置の状態を判断した場合、
前記無停電電源装置の前記冷却部の劣化状態が軽度であると判断した後、前記無停電電源装置の出力電力が所定の電力以上であると当該無停電電源装置の状態を判断した場合、
あるいは前記無停電電源装置の前記冷却部の劣化状態が重度であると判断した場合に、
前記冷却部を停止し、負荷への電力供給を停止するように前記無停電電源装置を制御し、
さらに、上記の判断を一定時間ごとに繰り返し継続的に行う、
無停電電源用劣化判断方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、電力系統の停電時に電力の供給を行う無停電電源システム、無停電電源用劣化判断装置、無停電電源用劣化判断プログラムおよび無停電電源劣化判断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インターネットデータセンター、銀行、証券会社のオンラインシステムなどの負荷設備には、電源として、定電圧、定周波数の電力が継続して供給されることが必要とされる。近年、情報インフラの重要性が高まり、無停電にて動作させる負荷設備が数多く普及している。このため、負荷設備に無停電にて電源供給を行う無停電電源システムの需要が高まっている。
【0003】
商用電源にかかる電力が停止した場合、無停電電源システムは、蓄電池が放電した直流電力を交流電力に変換し、交流電力を無瞬断で負荷設備に供給する。このような無停電電源システムは、供給された交流電力を交流直流変換する交流直流変換部と、交流直流変換部から供給された直流電力により充電される蓄電池と、蓄電池から放電された直流電力を直流交流変換し交流電力を出力する直流交流変換部を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-222982号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような無停電電源システムは、供給された交流電力を交流直流変換する交流直流変換部と、直流電力を直流交流変換し交流電力を出力する直流交流変換部を有する。交流直流変換部および直流交流変換部は、半導体からなるスイッチング回路により構成され、熱を発する。無停電電源システムは、交流直流変換部および直流交流変換部を冷却する冷却部を有する。
【0006】
しかしながら、冷却部は、冷却ファン等の可動部を有する部材により構成されているため、経年劣化する。冷却部の経年劣化の程度は、無停電電源システムの設置環境、使用状況、冷却部の個体ごとに異なる。冷却部は定期的にメンテナンスされるが、メンテナンス前に冷却部が動作不良を起こす可能性もある。
【0007】
冷却部が動作不良を起こした場合、無停電電源システムの交流直流変換部および直流交流変換部が高温となり、無停電電源システムを構成する各部を破損する恐れがある。無停電電源システムを構成する各部の破損は、負荷設備に安定した電力の供給を行うことができなくなるため不都合である。従って、可動部を有する冷却部の劣化を事前に予測し、事前に無停電電源システムの破損を防止することが望ましい。
【0008】
無停電電源システムの冷却部の劣化は、冷却部の発生音等を抽出することにより推定することができる。しかしながら、冷却部が劣化したと判断されても、部品の手配等に時間を要し、迅速に無停電電源システムの修理を行うことができない場合がある。このような場合、修理までの時間、冷却部の劣化の程度に応じ、無停電電源システムの運転を継続することが望ましい場合があった。
【0009】
本実施形態は、冷却部の劣化の程度を段階的に判断することができる無停電電源システム、無停電電源用劣化判断装置、無停電電源用劣化判断プログラムおよび無停電電源劣化判断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本実施形態の無停電電源システムは、次のような構成を有することを特徴とする。
(1)冷却部の劣化を示す冷却部劣化情報を送信する無停電電源装置。
(2)前記無停電電源装置から前記冷却部劣化情報を受信し、受信した前記冷却部劣化情報に基づき前記無停電電源装置の冷却部の劣化状態を段階的に判断する判断部。
(3)前記判断部は、前記無停電電源装置の前記冷却部の劣化状態が軽度であると判断した場合に、前記冷却部の動作を継続するように前記無停電電源装置を制御し、前記無停電電源装置の前記冷却部の劣化状態が軽度であると判断した後、前記無停電電源装置の温度が所定の温度以上であると当該無停電電源装置の状態を判断した場合、前記無停電電源装置の前記冷却部の劣化状態が軽度であると判断した後、前記無停電電源装置の出力電力が所定の電力以上であると当該無停電電源装置の状態を判断した場合、あるいは前記無停電電源装置の前記冷却部の劣化状態が重度であると判断した場合に、前記冷却部を停止し、負荷への電力供給を停止するように前記無停電電源装置を制御し、さらに、上記の判断を一定時間ごとに繰り返し継続的に行う。
【0011】
また、上記の特徴を有する無停電電源用劣化判断装置、無停電電源用劣化判断プログラムおよび無停電電源劣化判断方法も本実施形態に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】第1実施形態にかかる無停電電源システムを示す図
図2】第1実施形態にかかる無停電電源装置の構成を示す図
図3】第1実施形態にかかる判断部の構成を示す図
図4】第1実施形態にかかる判断部の劣化曲線作成処理にかかるプログラムフローを示す図
図5】第1実施形態にかかる判断部の劣化判断処理にかかるプログラムフローを示す図
図6】第1実施形態にかかる判断部の軽度劣化処理にかかるプログラムフローを示す図
図7】第1実施形態にかかる判断部の重度劣化処理にかかるプログラムフローを示す図
図8】第1実施形態にかかる無停電電源装置の制御部のプログラムフローを示す図
図9】第1実施形態にかかる劣化曲線Fを示す図
図10】他の実施形態にかかる無停電電源システムを示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1~3を参照して本実施形態の一例としての無停電電源システム1について説明する。
【0014】
(1)無停電電源システム1の全体構成
本無停電電源システム1は、複数の無停電電源装置2、判断部5を有する。本実施形態において、本無停電電源システム1が、任意の台数n台の無停電電源装置2a、2b~2nを有する場合について説明する。無停電電源装置2は、電力供給線91に配置される。電力供給線91は、電力系統9の一部を構成し需要家内に電力を供給する。電力系統9は、商用電源92に接続される。無停電電源装置2から出力された交流電力は、負荷8に供給される。
【0015】
本実施形態において、同一構成の装置や部材が複数ある場合にはそれらについて同一の番号を付して説明を行い、また、同一構成の個々の装置や部材についてそれぞれを説明する場合に、共通する番号にアルファベットの添え字を付けることで区別する。本実施形態における、n台の無停電電源装置2a、2b~2nは同じ構成を有する。
【0016】
本無停電電源システム1において、以下の信号、データが作成、記憶または送受信される。
信号データA:電源部20の動作音にかかる信号データ
信号データB:冷却部28の劣化に関する信号データ
(冷却部劣化情報B1:冷却部28の劣化を示す情報)
(使用環境情報B2:無停電電源装置2の使用された環境を示す情報)
(使用経過情報B3:無停電電源装置2の使用の経過を示す情報)
動作コマンドC
(動作コマンドC1:交流直流変換部21の動作を指定する動作コマンド)
(動作コマンドC2:直流交流変換部23の動作を指定する動作コマンド)
(動作コマンドC3:冷却部28の動作を指定する動作コマンド)
停止コマンドD
(停止コマンドD1:交流直流変換部21の動作停止を指示する停止コマンド)
(停止コマンドD2:直流交流変換部23の動作停止を指示する停止コマンド)
(停止コマンドD3:冷却部28の動作停止を指示する停止コマンド)
劣化曲線F:冷却部28の劣化曲線
警報信号J
電力供給コマンドH
【0017】
本無停電電源システム1において、信号データB(冷却部28の劣化に関する信号データ)の一つである冷却部劣化情報B1が、冷却部28の発生音である場合について説明する。冷却部劣化情報B1は、冷却部28の発生音、振動、消費電流、電源部20のAE(アコースチィックエミッション:材料の変形または破損が発生する前に放出される音波、弾性波)のうちの少なくとも一つに関する情報であってもよい。
【0018】
(2)無停電電源装置2の構成
無停電電源装置2は、電力供給線91から供給された交流電力を直流電力に変換し蓄電池を充電し、蓄電池から放電された直流電力を交流電力に変換し、負荷8に出力する電源装置である。無停電電源装置2は、電源部20、制御部3、検出部4、測定部6を有する。無停電電源装置2は、電力需要家の配電室等に設置される。
【0019】
(2-1)電源部20の構成
電源部20は、交流直流変換部21、蓄電池22、直流交流変換部23、バイパス回路24、入力端子25、補助入力端子26、出力端子27、冷却部28を有する。
【0020】
電源部20の入力端子25は、電力供給線91に接続され、交流電力が供給される。電源部20の出力端子27は、負荷8が接続され、負荷8には、電源部20から交流電力が供給される。電源部20の補助入力端子26は、バックアップ用の無停電電源装置(図中不示)が接続される端子であり、バックアップ用の交流電力が供給される。本実施形態において、電源部20の補助入力端子26は、未接続である。
【0021】
(交流直流変換部21)
交流直流変換部21は、交流電力を直流電力に変換するコンバータにより構成される。交流直流変換部21を構成するコンバータは、トランジスタ等のスイッチング素子を有し、このスイッチング素子をスイッチングすることにより、交流電力を直流電力に変換する。
【0022】
交流直流変換部21は、蓄電池22の近傍に設置される。交流直流変換部21は、交流側が入力端子25を介し電力供給線91に、直流側が蓄電池22および直流交流変換部23に接続される。
【0023】
交流直流変換部21は、入力端子25を介し電力供給線91から供給された交流電力を直流電力に変換し、直流電力を蓄電池22、直流交流変換部23に供給する。
【0024】
(蓄電池22)
蓄電池22は、供給された直流電力にかかる電荷を充電し、充電した電荷を直流電力として放電する充電可能な蓄電装置である。蓄電池22は、リチウム2次電池のような充電可能な電池が複数組合され構成される。蓄電池22は、交流直流変換部21および直流交流変換部23の近傍に設置される。蓄電池22は、交流直流変換部21および直流交流変換部23に接続される。
【0025】
蓄電池22は、交流直流変換部21により交流直流変換された直流電力により充電される。また、蓄電池22から放電された直流電力は、直流交流変換部23により直流交流変換され、交流電力として出力端子27から出力され、負荷8に供給される。
【0026】
(直流交流変換部23)
直流交流変換部23は、直流電力を交流電力に変換するインバータにより構成される。直流交流変換部23を構成するインバータは、トランジスタ等のスイッチング素子を有し、このスイッチング素子をスイッチングすることにより、直流電力を交流電力に変換する。
【0027】
直流交流変換部23は、蓄電池22の近傍に設置される。直流交流変換部23は、交流側が出力端子27に、直流側が蓄電池22および交流直流変換部21に接続される。直流交流変換部23は、蓄電池22から放電された直流電力を交流電力に変換し、交流電力を出力端子27に出力する。出力端子27に出力された交流電力は負荷8に供給される。
【0028】
(バイパス回路24)
バイパス回路24は、電流の開閉を行うコンタクタ、リレーまたはパワーエレクトロニクス半導体素子のような開閉素子により構成される。バイパス回路24は、無停電電源装置2を構成する筐体の内部に配置される。バイパス回路24は、一方が補助入力端子26に、他方が出力端子27に接続される。
【0029】
バイパス回路24は、制御部3により開路閉路を制御される。バイパス回路24は、補助入力端子26から供給された交流電力を、閉路状態時に出力端子27に供給する。出力端子27に供給された交流電力は、負荷8に供給される。
【0030】
(冷却部28)
冷却部28は、電動機により駆動される冷却ファンにより構成される。冷却部28は、無停電電源装置2を構成する筐体の内部であり、交流直流変換部21および直流交流変換部23の近傍に設置される。冷却部28は、冷却ファンを回転させ、空気を流動させることにより交流直流変換部21および直流交流変換部23を冷却する。
【0031】
(2-2)検出部4の構成
検出部4は、音を検出するマイクとアナログデジタル変換器が組み合わされた装置により構成される。検出部4は、複数のマイクを有することが望ましい。検出部4は、無停電電源装置2を構成する筐体の内部であり、冷却部28の近傍に設置される。
【0032】
検出部4は、電源部20の動作音を検出しアナログデジタル変換し、アナログデジタル変換された、電源部20の動作音にかかる信号データを信号データAとして制御部3に出力する。信号データAには、電源部20の冷却部28の発生音、交流直流変換部21、直流交流変換部23の動作音、環境音のうち少なくとも一つにかかる信号データが含まれる。
【0033】
(2-3)測定部6の構成
測定部6は、測温抵抗体や熱電対等の温度センサ、湿度センサ、気圧センサ、電気量測定器とアナログデジタル変換器およびタイマが組み合わされた装置により構成される。測定部6は、無停電電源装置2を構成する筐体の内部であり、交流直流変換部21、蓄電池22、直流交流変換部23の近傍に設置される。測定部6は、制御部3の入力部31に接続される。
【0034】
測定部6は、無停電電源装置2が稼動を開始してから現在までの、温度、湿度、気圧、サージ受電量を、無停電電源装置2の使用された環境を示す情報である使用環境情報B2として制御部3の入力部31に出力する。また、測定部6は、無停電電源装置2が稼動を開始してから現在までの、稼動時間、出力電力を、無停電電源装置2の使用の経過を示す情報である使用経過情報B3として制御部3の入力部31に出力する。稼動時間とは、無停電電源装置2が実際に動作を行った実動時間をいう。また、稼動時間は、製品が完成してから現在までの、実動していない時間を含む経過時間であってもよい。
【0035】
(2-3)制御部3の構成
制御部3は、マイクロコンピュータ、DSP(ディジタルシグナルプロセッサ)等により構成される。制御部3は、無停電電源装置2を構成する筐体内に配置される。制御部3は、電源部20の動作音から冷却部28の発生音を抽出するための制御を行う。制御部3により抽出された冷却部28の発生音にかかるデータである冷却部劣化情報B1を含む信号データB(冷却部28の劣化に関する信号データ)が、判断部5に送信される。
【0036】
また、制御部3は、電源部20の交流直流変換部21、直流交流変換部23、冷却部28、バイパス回路24の制御を行う。制御部3は、入力部31、出力部32、送受信部33、演算部34を有する。
【0037】
(入力部31)
入力部31は、マイクロコンピュータのポート等からなる電文受信回路により構成される。入力部31は、入力側が検出部4および測定部6に、出力側が演算部34に接続される。入力部31は、検出部4から出力された信号データA(電源部20の動作音にかかる信号データ)および測定部6から出力された使用環境情報B2、使用経過情報B3を受信し、演算部34に出力する。
【0038】
(出力部32)
出力部32は、マイクロコンピュータのポート等からなる電文送信回路により構成される。出力部32は、入力側が演算部34に、出力側が電源部20の交流直流変換部21、直流交流変換部23、冷却部28、バイパス回路24に接続される。
【0039】
出力部32は、演算部34に制御され、交流直流変換部21、直流交流変換部23、冷却部28に、動作を指示する動作コマンドCおよび停止を指示する停止コマンドDを送信する。
【0040】
(送受信部33)
送受信部33は、マイクロコンピュータのポート等からなる電文送受信回路により構成される。送受信部33は、入力側が演算部34に、出力側が判断部5に接続される。送受信部33は、演算部34にて作成された、冷却部劣化情報B1、使用環境情報B2、使用経過情報B3を含む信号データB(冷却部28の劣化に関する信号データ)を、判断部5に送信する。また、送受信部33は、判断部5から交流直流変換部21、直流交流変換部23、冷却部28の動作を指示する動作コマンドCおよび停止を指示する停止コマンドDを受信する。
【0041】
(演算部34)
演算部34は、マイクロコンピュータまたはDSP(ディジタルシグナルプロセッサ)のCPU等により構成される。演算部34は、後述するコンピュータプログラムを内蔵する。演算部34は、入力部31、出力部32、送受信部33に接続される。演算部34は、以下の演算および制御を行う。
【0042】
(イ)入力部31に対する制御
演算部34は、入力部31を制御し、検出部4から信号データA(電源部20の動作音にかかる信号データ)を、測定部6から使用環境情報B2、使用経過情報B3を受信する。
【0043】
(ロ)出力部32に対する制御
演算部34は、出力部32を制御し、交流直流変換部21、直流交流変換部23、冷却部28に、動作を指示する動作コマンドCおよび停止を指示する停止コマンドDを送信する。
【0044】
(ハ)送受信部33に対する制御
演算部34は、送受信部33を制御し、冷却部劣化情報B1、使用環境情報B2、使用経過情報B3を含む信号データB(冷却部28の劣化に関する信号データ)を、判断部5に送信する。演算部34は、検出部4から受信した信号データA(電源部20の動作音にかかる信号データ)に基づき演算を行い、冷却部劣化情報B1を作成する。また、演算部34は、送受信部33を制御し、判断部5から交流直流変換部21、直流交流変換部23、冷却部28の動作を指示する動作コマンドCおよび停止を指示する停止コマンドDを受信する。
【0045】
(3)判断部5の構成
判断部5の構成を図3に示す。判断部5は、無停電電源装置2の冷却部28の劣化の判断を行う装置である。判断部5は、パーソナルコンピュータ等により構成される。判断部5は、送受信部51、記憶部52、表示部53、警報出力部54、送受信部55、演算部56を有する。判断部5は、電力需要家の電力管理室等に設置される。判断部5を請求項中において無停電電源用劣化判断装置と呼ぶ場合がある。
【0046】
(送受信部51)
送受信部51は、パーソナルコンピュータの通信ポート等により構成される。送受信部51は、複数の無停電電源装置2(2a、2b~2n)の制御部3(3a、3b~3n)の送受信部33(33a、33b~33n)に接続される。送受信部51は、ローカル通信線を介し制御部3の送受信部33から、冷却部劣化情報B1、使用環境情報B2、使用経過情報B3を含む信号データB(冷却部28の劣化に関する信号データ)を受信する。また、送受信部51は、無停電電源装置2に交流直流変換部21、直流交流変換部23、冷却部28の動作を指示する動作コマンドCおよび停止を指示する停止コマンドDを送信する。送受信部51の送受信動作は、演算部56により制御される。
【0047】
(記憶部52)
記憶部52は、判断部5を構成するパーソナルコンピュータのハード演算部56により制御される。記憶部52は、複数の無停電電源装置2ごとの冷却部劣化情報B1、使用環境情報B2、使用経過情報B3を含む信号データB(冷却部28の劣化に関する信号データ)および冷却部28の劣化の判断の基準となる劣化曲線Fを記憶する。
【0048】
(表示部53)
表示部53は、液晶パネルのような表示装置にて構成される。表示部53は、複数の無停電電源装置2の冷却部28の劣化の状態を表示する。表示部53は、演算部56により、表示が制御される。
【0049】
(警報出力部54)
警報出力部54は、警報音、警報表示による警報信号を出力する警報装置により構成される。演算部56は、複数の無停電電源装置2から受信した使用経過情報B3に基づき、経過に対する、冷却部28の劣化を示す劣化曲線Fを作成する。冷却部劣化情報B1に基づいた冷却部の劣化は、複数の無停電電源装置2から受信した冷却部劣化情報B1に基づく。劣化曲線Fは、使用環境情報B2に基づいた使用環境ごとに、作成される。
【0050】
演算部56は、劣化状態の判断の対象となる無停電電源装置2の冷却部劣化情報B1が、作成した劣化曲線Fに対し、所定の数値以内にない場合に、冷却部28が劣化したものと判断する。劣化の判断は、劣化状態の判断の対象となる無停電電源装置2が使用された使用環境情報B2に合致する劣化曲線Fに基づき行われる。
【0051】
演算部56により、冷却部28が劣化したものと判断された場合、劣化の程度に応じた警報信号Jが警報出力部54に対し出力される。警報出力部54は、演算部56から送信された警報信号Jに基づき、警報音、警報表示により警報を出力する。
【0052】
(送受信部55)
送受信部55は、パーソナルコンピュータの通信ポート等により構成される。送受信部55は、インターネット等の通信回線(図中不示)に接続される。送受信部55は、通信回線を介し他のコンピュータ等の機器と通信を行う。送受信部55は、他のコンピュータ等の機器から送信されるリクエスト信号に応じ、複数の無停電電源装置2の冷却部28の劣化の状態を送信する。送受信部55の送受信動作は、演算部56により制御される。
【0053】
(演算部56)
演算部56は、判断部5を構成するパーソナルコンピュータのCPU等により構成される。演算部56は、後述するコンピュータプログラムを内蔵する。演算部56は、送受信部51、記憶部52、表示部53、警報出力部54、送受信部55に接続される。演算部56は、以下の演算および制御を行う。
【0054】
(イ)送受信部51に対する制御
演算部56は、送受信部51を制御し、ローカル通信線を介し複数の無停電電源装置2の制御部3の送受信部33から、冷却部劣化情報B1、使用環境情報B2、使用経過情報B3を含む信号データB(冷却部28の劣化に関する信号データ)を受信する。また、演算部56は、送受信部51を制御し、無停電電源装置2に、交流直流変換部21、直流交流変換部23、冷却部28の動作を指示する動作コマンドCおよび停止を指示する停止コマンドDを送信する。
【0055】
(ロ)記憶部52に対する制御
演算部56は、記憶部52を制御し、複数の無停電電源装置2ごとの冷却部劣化情報B1、使用環境情報B2、使用経過情報B3を含む信号データB(冷却部28の劣化に関する信号データ)および冷却部28の劣化の判断の基準となる劣化曲線Fを記憶させ、呼び出す。
【0056】
(ハ)表示部53に対する制御
演算部56は、表示部53を制御し、複数の無停電電源装置2の冷却部28の劣化の状態を表示させる。
【0057】
(ニ)警報出力部54に対する制御
演算部56は、警報出力部54を制御し、冷却部28が劣化したものと判断した場合、劣化の程度に応じた警報信号Jを警報出力部54に対し出力する。警報出力部54は、警報信号Jに基づき、警報音、警報表示により警報を出力する。
【0058】
(ホ)送受信部55に対する制御
演算部56は、送受信部55を制御し、通信回線を介し接続された他のコンピュータ等の機器との通信を行う。演算部56は、送受信部55を制御し、他のコンピュータ等の機器から送信されたリクエスト信号を受信する。このリクエスト信号に応じ、演算部56は、送受信部55を制御し、複数の無停電電源装置2の冷却部28の劣化の状態を送信する。
【0059】
[1-2.作用]
次に、本実施形態の無停電電源システム1の動作の概要を、図1~9に基づき説明する。
【0060】
[A.判断部5の動作]
判断部5は、劣化曲線作成処理により無停電電源装置2の冷却部28の劣化を表す劣化曲線Fを作成する。劣化曲線Fは、使用環境情報B2に基づき使用環境ごとに作成される。
【0061】
また、判断部5は、作成された劣化曲線Fに基づき、劣化判断処理により複数の無停電電源装置2の冷却部28の劣化状態を段階的に判断する。判断部5は、劣化判断処理により判断された劣化状態の段階に応じ、軽度劣化処理または重度劣化処理を行う。
【0062】
判断部5の演算部56は、以下の処理を実行する。判断部5の演算部56は、図4~7に示すプログラムに従って動作を行う。図4~7に示すプログラムは、判断部5の演算部56に内蔵される。図4~7に示す各プログラムは、判断部5の演算部56により、一定周期ごとに繰り返し継続的に実行される。
【0063】
(イ、劣化曲線作成処理)
演算部56により、実行される劣化曲線作成処理にかかるプログラムを、図4に示す。劣化曲線作成処理にかかるプログラムは、判断部5の演算部56により、一定周期ごとに繰り返し継続的に実行される。
【0064】
(ステップS01:無停電電源装置2から信号データBを受信する)
演算部56は、送受信部51を介し、複数の無停電電源装置2により送信された冷却部劣化情報B1、使用環境情報B2、使用経過情報B3を含む信号データB(冷却部28の劣化に関する信号データ)を受信する。受信した冷却部劣化情報B1、使用環境情報B2、使用経過情報B3を含む信号データB(冷却部28の劣化に関する信号データ)は、複数の無停電電源装置2(2a、2b~2n)ごとに記憶部52に蓄積して記憶される。劣化曲線作成処理にかかるプログラムは、判断部5の演算部56により、一定周期ごとに繰り返し継続的に実行されるので、冷却部劣化情報B1、使用環境情報B2、使用経過情報B3を含む信号データB(冷却部28の劣化に関する信号データ)は、記憶部52に蓄積して記憶される。
【0065】
冷却部劣化情報B1は、無停電電源装置2の冷却部28の劣化を示す情報である。本実施形態において冷却部劣化情報B1は、冷却部28の発生音に関するデータである。冷却部劣化情報B1は、冷却部28の発生音、振動、消費電流、電源部20のAE(アコースチィックエミッション:材料の変形または破損が発生する前に放出される音波、弾性波)のうちの少なくとも一つに関する情報であってもよい。
【0066】
使用環境情報B2は、無停電電源装置2の使用された環境を示す情報である。使用環境情報B2は、無停電電源装置2が稼動を開始してから現在までの、温度、湿度、気圧、サージ受電量のうちの少なくとも一つに関する情報である。使用環境情報B2は、冷却部劣化情報B1とともに信号データBとして、複数の無停電電源装置2から送信される。
【0067】
使用経過情報B3は、無停電電源装置2の使用の経過を示す情報である。使用経過情報B3は、無停電電源装置2が稼動を開始してから現在までの、無停電電源装置が稼動を開始してから現在までの、稼動時間、出力電力量のうちの少なくとも一つに関する情報である。使用経過情報B3は、冷却部劣化情報B1とともに信号データBとして、複数の無停電電源装置2から送信される。
【0068】
(ステップS02:使用環境情報B2に基づき冷却部劣化情報B1を分類する)
次に演算部56は、記憶部52に記憶された使用環境情報B2に基づき、複数の無停電電源装置2の冷却部劣化情報B1を分類する。例えば演算部56は、複数の無停電電源装置2ごとの平均使用温度を使用環境情報B2に基づき算出する。例えば、使用環境情報B2に基づき、平均温度T1=0℃~10℃、T2=10℃~20℃、T3=20℃~30℃、T4=30℃~40℃、T5=40℃~50℃に、複数の無停電電源装置2から送信された冷却部劣化情報B1が分類される。各冷却部劣化情報B1には使用環境情報B2が付される。
【0069】
(ステップS03:冷却部劣化情報B1に基づき劣化曲線Fを作成する)
次に演算部56は、ステップS02で分類した冷却部劣化情報B1に基づき劣化曲線Fを作成する。劣化曲線Fの例を図9に示す。劣化曲線Fは、ステップS02にて分類した使用環境情報B2ごとに作成される。例えば、劣化曲線Fは、平均温度T1=0℃~10℃、T2=10℃~20℃、T3=20℃~30℃、T4=30℃~40℃、T5=40℃~50℃ごとに、作成される。
【0070】
劣化曲線Fは、使用経過情報B3に対する冷却部劣化情報B1を表す、無停電電源装置2の冷却部28の過去の劣化の経緯を示すグラフである。例えば劣化曲線Fは、無停電電源装置2の冷却部28の稼動時間に対する、冷却部28の発生音が表されたグラフである。無停電電源装置2の冷却部28の稼動時間が使用経過情報B3に相当し、冷却部28の発生音が、冷却部劣化情報B1に相当する。複数の無停電電源装置2の冷却部28の冷却部劣化情報B1の平均値が、劣化曲線Fに用いられる。作成された劣化曲線Fは記憶部52に記憶される。
【0071】
動作開始初期時には、複数の無停電電源装置2(2a、2b~2n)ごとの個体、または相当する機種の平均的な音データが記憶部52に記憶される。信号データB(冷却部28の劣化に関する信号データ)にかかる冷却部劣化情報B1(冷却部28の劣化を示す情報)は、例えば、音量や周波数変換後の対数スペクトルである。冷却部劣化情報B1(冷却部28の劣化を示す情報)にかかる、動作開始初期時のデータと現時点のデータとの差分が「劣化レベル」として算出される。
【0072】
一例として、冷却部劣化情報B1(冷却部28の劣化を示す情報)が音量である場合の、「劣化レベル」を表す劣化曲線Fを図9に示す。また、動作開始初期時の音データをオートエンコーダで事前学習し、現時点での音データをオートエンコーダに入力し、動作開始初期時と現時点における冷却部劣化情報B1(冷却部28の劣化を示す情報)の差分を、「劣化レベル」として算出するようにしてもよい。また、事前に採取した複数のデータから二乗誤差最小化により多次元多項式関数にモデリングして劣化曲線Fを作成するようにしてもよい。
【0073】
以上が、判断部5により実行される劣化曲線作成処理である。劣化曲線作成処理により、無停電電源装置2a、2b~2nの各冷却部28a、28b~28nの、平均的な劣化情報を示す劣化曲線Fが作成される。
【0074】
(ロ、劣化判断処理)
演算部56により、実行される劣化判断処理にかかるプログラムを図5に示す。劣化判断処理にかかるプログラムは、判断部5の演算部56により、一定周期ごとに繰り返し継続的に実行される。演算部56は、劣化判断処理により劣化状態の判断の対象となる無停電電源装置2の冷却部28の、劣化の程度を判断する。以下に無停電電源装置2aが劣化状態の判断の対象となる場合について説明する。
【0075】
(ステップS11:無停電電源装置2から信号データBを受信する)
演算部56は、送受信部51を介し劣化状態の判断の対象となる無停電電源装置2aから冷却部劣化情報B1、使用環境情報B2、使用経過情報B3を含む信号データB(冷却部28の劣化に関する信号データ)を受信する。
【0076】
(ステップS12:劣化曲線Fを選択する)
次に演算部56は、ステップS11にて受信した劣化状態の判断の対象となる無停電電源装置2aの使用環境情報B2に相当する劣化曲線Fを選択する。劣化曲線Fは、劣化曲線作成処理により、例えば平均温度T1=0℃~10℃、T2=10℃~20℃、T3=20℃~30℃、T4=30℃~40℃、T5=40℃~50℃ごとに作成されている。
【0077】
演算部56は、劣化状態の判断の対象となる無停電電源装置2aの使用環境情報B2に基づき、無停電電源装置2aが使用された使用温度を把握し、使用温度に対応した劣化曲線Fを選択する。例えば、無停電電源装置2aが使用された使用温度が、25℃である場合、T3=20℃~30℃にかかる劣化曲線Fが選択される。
【0078】
(ステップS13:冷却部28の劣化の程度を判断する)
次に演算部56は、ステップS11にて受信した冷却部劣化情報B1とステップS12にて選択した劣化曲線Fに基づき、劣化状態の判断の対象となる無停電電源装置2aの冷却部28の劣化の程度を判断する。演算部56は、ステップS12にて選択した劣化曲線F上に、ステップS11にて受信した劣化状態の判断の対象となる無停電電源装置2aの冷却部劣化情報B1にかかる劣化のレベルL1をプロットし、冷却部劣化情報B1と劣化曲線Fとを対比する。冷却部劣化情報B1にかかる劣化のレベルL1は、例えば、劣化状態の判断の対象となる無停電電源装置2aの冷却部28の発生音にかかる音量レベルである。
【0079】
冷却部劣化情報B1にかかる劣化のレベルL1が、劣化曲線Fにおける閾値m1未満である場合、演算部56は、冷却部28の劣化が許容劣化範囲内であると判断する。
【0080】
冷却部劣化情報B1にかかる劣化のレベルL1が、劣化曲線Fにおける閾値m1以上、m2未満である場合、演算部56は、冷却部28の劣化が軽度の劣化であると判断する。
【0081】
冷却部劣化情報B1にかかる劣化のレベルL1が、劣化曲線Fにおける閾値m2以上である場合、演算部56は、冷却部28の劣化が重度の劣化であると判断する。
【0082】
以上が、判断部5により実行される劣化判断処理である。劣化判断処理により、無停電電源装置2aの冷却部28の劣化が、軽度の劣化であるか、重度の劣化であるか、または許容劣化範囲内であるか、判断される。無停電電源装置2aの冷却部28が、軽度の劣化と判断された場合には軽度劣化処理が、重度の劣化と判断された場合には重度劣化処理が、判断部5により実行される。許容劣化範囲内であると判断された場合には、無停電電源装置2aの冷却部28は、通常運転にかかる動作を継続する。
【0083】
(ハ、軽度劣化処理)
劣化判断処理により、無停電電源装置2aの冷却部28の劣化が軽度の劣化であると判断された場合、演算部56は、軽度劣化処理として以下の処理を行う。
【0084】
(ステップS21:冷却部28の動作を継続させる制御を行う)
演算部56は、劣化状態の判断の対象となる無停電電源装置2aの冷却部28の動作を継続させる制御を行う。演算部56は、送受信部51を介し無停電電源装置2aに、冷却部28の動作継続を指示する動作コマンドC3(冷却部28の動作を指定する動作コマンド)を送信する。無停電電源装置2aの制御部3は、冷却部28の動作継続を指示する動作コマンドC3を受信し、冷却部28を動作させる。
【0085】
なお、すでに冷却部28が動作している場合、動作コマンドC3を送信することなく、冷却部28の動作を継続させるようにしてもよい。
【0086】
(ステップS22:表示部53に軽度劣化であることを表示させる)
次に演算部56は、無停電電源装置2aの冷却部28は軽度劣化であることを表示部53に表示させる。また、演算部56は、無停電電源装置2aの冷却部28は動作していることを表示部53に表示させる。
【0087】
(ステップS23:無停電電源装置2a内部の温度が温度T1以上になったか判断する)
次に演算部56は、無停電電源装置2aの内部の温度が予め設定された温度T1以上になったかの判断を行う。演算部56は、使用環境情報B2(無停電電源装置2の使用された環境を示す情報)に含まれる無停電電源装置2aの内部の温度に関するデータをステップS11にて受信する。演算部56は、使用環境情報B2(無停電電源装置2の使用された環境を示す情報)に含まれる無停電電源装置2aの内部の温度に関するデータに基づき、無停電電源装置2aの内部の温度が予め設定された温度T1以上になったかの判断を行う。
【0088】
図4~7に示す各プログラムは、一定時間ごとに繰り返し継続的に実行されるので、周期的に無停電電源装置2aの内部の温度が予め設定された温度T1以上になったかの判断が行われる。予め設定された温度T1は、使用を継続した場合、無停電電源装置2aが故障となる温度である。温度T1は、無停電電源装置2aの運転開始前に予め、演算部34に設定される。
【0089】
温度T1以上になったと判断した場合(ステップS23のYES)、ステップS25に移行する。温度T1以上になったと判断しない場合(ステップS23のNO)、ステップS24に移行する。
【0090】
(ステップS24:無停電電源装置2aの出力電力が電力W1以上になったか判断する)
次に演算部56は、無停電電源装置2aの出力電力が電力W1以上になったかの判断を行う。演算部56は、使用経過情報B3(無停電電源装置2の使用の経過を示す情報)に含まれる無停電電源装置2aの出力電力に関するデータをステップS11にて受信する。演算部56は、使用環境情報B3に含まれる無停電電源装置2aの出力電力に関するデータに基づき、無停電電源装置2aの出力電力が予め設定された電力W1以上になったかの判断を行う。
【0091】
図4~7に示す各プログラムは、一定時間ごとに繰り返し継続的に実行されるので、周期的に無停電電源装置2aの出力電力が予め設定された電力W1以上になったかの判断が行われる。予め設定された電力W1は、使用を継続した場合、温度上昇により無停電電源装置2aが故障となる電力である。電力W1は、無停電電源装置2aの運転開始前に予め、演算部34に設定される。
【0092】
電力W1以上になったと判断した場合(ステップS24のYES)、ステップS25に移行する。電力W1以上になったと判断しない場合(ステップS24のNO)、軽度劣化処理にかかる一連のプログラムを終了する。
【0093】
(ステップS25:無停電電源装置2aの動作を停止させる制御を行う)
ステップS23にて無停電電源装置2aの内部の温度が予め設定された温度T1以上になったと判断された場合、またはステップS24にて無停電電源装置2aの出力電力が予め設定された電力W1以上になったと判断された場合、演算部56は、無停電電源装置2aの動作を停止させる制御を行う。
【0094】
演算部56は、送受信部51を介し無停電電源装置2aに、停止コマンドD1(交流直流変換部21の動作停止を指示する停止コマンド)、停止コマンドD2(直流交流変換部23の動作停止を指示する停止コマンド)、停止コマンドD3(冷却部28の動作停止を指示する停止コマンド)を含む停止コマンドDを送信する。
【0095】
無停電電源装置2aの制御部3は、停止コマンドDを受信する。制御部3は、停止コマンドD1を受信し交流直流変換部21の動作を停止させ、停止コマンドD2を受信し直流交流変換部23の動作を停止させる。また、制御部3は、停止コマンドD3を受信し冷却部28の動作を停止させる。
【0096】
(ステップS26:無停電電源装置2bを動作させる制御を行う)
次に、演算部56は、無停電電源装置2bを動作させる制御を行う。演算部56は、送受信部51を介し無停電電源装置2bに、電力供給コマンドHを送信する。
【0097】
無停電電源装置2bの制御部3は、電力供給コマンドHを受信する。制御部3は、電力供給コマンドHを受信し、交流直流変換部21、直流交流変換部23、冷却部28を動作させる。これにより負荷8aには、無停電電源装置2bから電力が供給される。
【0098】
(ステップS27:警報出力部54から警報を出力する)
次に演算部56は、警報信号Jを警報出力部54に送信する。警報出力部54は、無停電電源装置2aの動作が停止していることを示す警報を警報音、警報表示により出力する。その後、演算部56は、一連のプログラムを終了する。
【0099】
以上が、軽度劣化処理にかかる判断部5の動作である。上記のように判断部5により、軽度劣化処理が実行される。
【0100】
(ニ、重度劣化処理)
劣化判断処理により、無停電電源装置2aの冷却部28の劣化が重度の劣化であると判断された場合、演算部56は、重度劣化処理として以下の処理を行う。
【0101】
(ステップS31:無停電電源装置2aの動作を停止させる制御を行う)
劣化判断処理により、無停電電源装置2aの冷却部28の劣化が重度の劣化であると判断された場合、演算部56は、無停電電源装置2aの動作を停止させる制御を行う。
【0102】
演算部56は、送受信部51を介し無停電電源装置2aに、停止コマンドD1(交流直流変換部21の動作停止を指示する停止コマンド)、停止コマンドD2(直流交流変換部23の動作停止を指示する停止コマンド)、停止コマンドD3(冷却部28の動作停止を指示する停止コマンド)を含む停止コマンドDを送信する。
【0103】
無停電電源装置2aの制御部3は、停止コマンドDを受信する。制御部3は、停止コマンドD1を受信し交流直流変換部21の動作を停止させ、停止コマンドD2を受信し直流交流変換部23の動作を停止させる。また、制御部3は、停止コマンドD3を受信し冷却部28の動作を停止させる。
【0104】
(ステップS32:無停電電源装置2bを動作させる制御を行う)
次に、演算部56は、無停電電源装置2bを動作させる制御を行う。演算部56は、送受信部51を介し無停電電源装置2bに、電力供給コマンドHを送信する。
【0105】
無停電電源装置2bの制御部3は、電力供給コマンドHを受信する。制御部3は、電力供給コマンドHを受信し、交流直流変換部21、直流交流変換部23、冷却部28を動作させる。これにより負荷8aには、無停電電源装置2bから電力が供給される。
【0106】
(ステップS33:警報出力部54から警報を出力する)
次に演算部56は、警報信号Jを警報出力部54に送信する。警報出力部54は、無停電電源装置2aの動作が停止していることを示す警報を警報音、警報表示により出力する。その後、演算部56は、一連のプログラムを終了する。
【0107】
以上が、重度劣化処理にかかる判断部5の動作である。上記のように判断部5により、重度劣化処理が実行される。
【0108】
[B.無停電電源装置2の制御部3の動作]
無停電電源装置2の制御部3は、無停電電源装置2の冷却部28の発生音を抽出し、信号データB(冷却部の発生音にかかる信号データ)中の冷却部劣化情報B1として判断部5に送信する。また、無停電電源装置2の制御部3は、信号データB(冷却部の発生音にかかる信号データ)中に使用環境情報B2、使用経過情報B3を含め判断部5に送信する。
【0109】
また、無停電電源装置2の制御部3は、判断部5により判断された劣化状態の段階に応じ無停電電源装置2の交流直流変換部21、直流交流変換部23、冷却部28の動作を制御する。
【0110】
無停電電源装置2の制御部3の演算部34は、以下の処理を実行する。制御部3の演算部34は、図8に示すプログラムに従って動作を行う。図8に示すプログラムは、制御部3の演算部34に内蔵される。図8に示すプログラムは、制御部3の演算部34により、一定周期ごとに繰り返し実行される。
【0111】
(ステップR01:検出部4から信号データAを受信する)
最初に演算部34は、入力部31を介し検出部4から信号データA(電源部20の動作音にかかる信号データ)を受信する。検出部4は、常時、電源部20の動作音を検出しアナログデジタル変換し、電源部20の動作音にかかる信号データを信号データAとして出力する。信号データAには、電源部20の冷却部28の発生音、交流直流変換部21、直流交流変換部23の動作音、環境音にかかる信号データが含まれる。信号データA(電源部20の動作音にかかる信号データ)は、常時検出部4から出力される。
【0112】
(ステップR02:冷却部28の発生音を抽出し冷却部劣化情報B1を作成する)
次に演算部34は、ステップR01で受信した信号データA(電源部20の動作音にかかる信号データ)に基づき、冷却部28の発生音を抽出する。前述のように信号データA(電源部20の動作音にかかる信号データ)は、冷却部28の発生音、交流直流変換部21、直流交流変換部23の動作音を含む。
【0113】
演算部34は、ステップR01で受信した信号データA(電源部20の動作音にかかる信号データ)を、高速フーリエ変換等を用いフィルタリングし、冷却部28の発生音を抽出する。あるいは検出部4が複数のマイクを有する場合、演算部34は、冷却部28方向への指向性を高めたビームフォーミング処理、独立成分分析(ICA、Independent Component Analysis)や独立ベクトル分析(IVA、Indepndent Vector Analysis)などに基づく音源分離処理等の処理を行い、信号データAから電源部20の動作音を除去し、冷却部28の発生音を抽出する。抽出された送信された冷却部28の発生音にかかるデータは、冷却部劣化情報B1として作成される。
【0114】
(ステップR03:使用環境情報B2、使用経過情報B3を受信する)
次に演算部34は、入力部31を介し測定部6から使用環境情報B2、使用経過情報B3を受信する。測定部6は、無停電電源装置2が稼動を開始してから現在までの、温度、湿度、気圧、サージ受電量を、無停電電源装置2の使用された環境を示す情報である使用環境情報B2として制御部3の入力部31に出力する。
【0115】
また、測定部6は、無停電電源装置2が稼動を開始してから現在までの、稼動時間、出力電力を、無停電電源装置2の使用の経過を示す情報である使用経過情報B3として制御部3の入力部31に出力する。
【0116】
(ステップR04:信号データBを送信する)
次に演算部34は、ステップR02で作成した冷却部劣化情報B1およびステップR03で受信した使用環境情報B2、使用経過情報B3を信号データB(冷却部28の劣化に関する信号データ)に含め、送信部33を介し信号データBを判断部5に送信する。
【0117】
(ステップR05:動作コマンドCまたは停止コマンドDを受信したかの判断を行う)
次に演算部34は、送受信部33を介し判断部5から動作コマンドCまたは停止コマンドDを受信したかの判断を行う。
【0118】
動作コマンドCまたは停止コマンドDを受信したと判断した場合(ステップR05のYES)、ステップR06に移行する。動作コマンドCまたは停止コマンドDを受信したと判断しない場合(ステップR05のNO)、一連のプログラムを終了する。
【0119】
(ステップR06:コマンドに従い各部の制御を行う)
ステップR05にて動作コマンドCまたは停止コマンドDを受信したと判断した場合、演算部34は、判断部5から送信された動作コマンドCまたは停止コマンドDに従い交流直流変換部21、直流交流変換部23、冷却部28の動作を制御する。
【0120】
例えば、冷却部28の動作継続を指示する動作コマンドC3を受信した場合、制御部3の演算部34は、冷却部28を継続して動作させる制御を行う。
【0121】
また、交流直流変換部21の動作停止を指示する停止コマンドD1を受信した場合、制御部3の演算部34は、交流直流変換部21の動作を停止させる制御を行う。直流交流変換部23の動作停止を指示する停止コマンドD2を受信した場合、制御部3の演算部34は、直流交流変換部23の動作を停止させる制御を行う。冷却部28の動作停止を指示する停止コマンドD3を受信した場合、制御部3の演算部34は、冷却部28の動作を停止させる制御を行う。
【0122】
以上が、制御部3の演算部34の動作である。上記のように信号データA(電源部20の動作音にかかる信号データ)に基づき、冷却部28の発生音が抽出され、冷却部劣化情報B1、使用環境情報B2、使用経過情報B3を含む信号データB(冷却部28の劣化に関する信号データ)が判断部5に送信される。また、無停電電源装置2の制御部3は、判断部5により判断された劣化状態の段階に応じ無停電電源装置2の交流直流変換部21、直流交流変換部23、冷却部28の動作を制御する。
【0123】
[1-3.効果]
(1)本実施形態によれば、無停電電源システム1は、冷却部28の劣化を示す冷却部劣化情報を送信する無停電電源装置2と、無停電電源装置2から冷却部劣化情報を受信し、受信した冷却部劣化情報に基づき無停電電源装置2の冷却部28の劣化状態を段階的に判断する判断部5とを備えるので、冷却部28の劣化の程度を段階的に判断することができる無停電電源システム1を提供することができる。
【0124】
無停電電源システム1によれば、無停電電源装置2の冷却部28の劣化状態を段階的に判断することができるので、作業者は、故障に至る前に無停電電源システム1の劣化の状況を把握することができ、故障に至る前に無停電電源システム1のメンテナンスを行うことができる。
【0125】
(2)本実施形態によれば、無停電電源システム1の判断部5は、無停電電源装置2の冷却部28の劣化状態が軽度であると判断した場合に、冷却部28の動作を継続するように無停電電源装置2を制御するので、無停電電源装置2の冷却部28の劣化が検出されても、負荷8への電力供給を継続することができる。
【0126】
無停電電源装置2の冷却部28が劣化したと判断されても、部品の手配等に時間を要し、迅速に無停電電源システムの修理を行うことができない場合がある。このような場合、修理までの時間、無停電電源システム2の運転が継続され、負荷8に電力が供給される。
【0127】
(3)本実施形態によれば、無停電電源システム1の判断部5は、無停電電源装置2の温度が所定の温度以上である場合に、冷却部28を停止し、負荷8への電力供給を停止するように無停電電源装置2を制御するので、無停電電源装置2の冷却部28が劣化した場合であっても、火災等の重大な事故を引き起こすリスクを軽減することができる。
【0128】
(4)本実施形態によれば、無停電電源システム1の判断部5は、無停電電源装置2の出力電力が所定の電力以上である場合に、冷却部28を停止し、負荷8への電力供給を停止するように無停電電源装置2を制御するので、無停電電源装置2の冷却部28が劣化した場合であっても、火災等の重大な事故を引き起こすリスクを軽減することができる。
【0129】
(5)本実施形態によれば、無停電電源システム1の判断部5は、無停電電源装置2の冷却部28の劣化状態が重度であると判断した場合に、冷却部28を停止し、負荷8への電力供給を停止するように無停電電源装置2を制御するので、無停電電源装置2の冷却部28が劣化した場合であっても、火災等の重大な事故を引き起こすリスクを軽減することができる。
【0130】
(6)本実施形態によれば、無停電電源システム1の判断部5は、無停電電源装置2に負荷8への電力供給を停止する制御を行うときに、無停電電源装置2の外部に設けられた電源を動作させ負荷8への電力供給を行う制御を行うので、無停電電源装置2の動作を停止した場合でも、負荷8への電力の供給が継続される。
【0131】
(7)本実施形態によれば、無停電電源システム1の劣化曲線作成処理により作成される劣化曲線Fは、冷却部劣化情報B1に基づいて作成され、冷却部劣化情報B1は、無停電電源装置2の冷却部28の発生音、振動、消費電流、AE(アコースティックエミッション)のうちの少なくとも一つに関する情報であるので、細かな情報に基づき冷却部28の劣化の判断を行うことができ、冷却部28の劣化の判断を、より精度よく行うことができる。
【0132】
(8)本実施形態によれば、無停電電源システム1の劣化曲線作成処理により作成される劣化曲線Fは、複数の無停電電源装置2から送信された冷却部劣化情報B1に基づき作成され、冷却部劣化情報B1は、コンピュータクラウドに蓄積記憶されるので、より多くの無停電電源装置2から送信された冷却部劣化情報B1に基づき劣化曲線Fが作成され、冷却部28の劣化の判断を、より精度よく行うことができる。
【0133】
[2.他の実施形態]
変形例を含めた実施形態を説明したが、これらの実施形態は例として提示したものであって、発明の範囲を限定することを意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略や置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。以下は、その一例である。
【0134】
(1)上記実施形態では、無停電電源システム1は、無停電電源装置2a、2b~2nを有しnは任意の数量であるものとした。無停電電源システム1に含まれる無停電電源装置2は複数であってもよいし単数であってもよい。
【0135】
劣化曲線Fは、無停電電源装置2a、2b~2nにかかる信号データBに基づき作成されるものとしたが、無停電電源装置2a、2b~2nを有する需要家以外に設置された無停電電源装置2の信号データBに基づき作成されるようにしてもよい。
【0136】
(2)上記実施形態では、無停電電源装置2から送信された冷却部劣化情報B1、使用環境情報B2、使用経過情報B3を含む信号データB(冷却部28の劣化に関する信号データ)は、判断部5の送受信部51に送信されるものとしたが、一旦コンピュータクラウドに送信され蓄積して記憶されるようにしてもよい。
【0137】
コンピュータクラウドに蓄積して記憶された、無停電電源装置2から送信された冷却部劣化情報B1、使用環境情報B2、使用経過情報B3を含む信号データBは、インターネット等の通信回線を介し、送受信部51により受信される。このように構成することにより、当該需要家の無停電電源装置2にかかる信号データBが、他所に設置された無停電電源システム1にも利用されやすくなる。
【0138】
(3)上記実施形態では、判断部5は、無停電電源装置2の外部に設けられるものとしたが、判断部5は、無停電電源装置2の内部に設けられるようにしてもよい。
【0139】
(4)上記実施形態では、交流直流変換部21は、交流電力を直流電力に変換するコンバータにより構成されるものとしたが、交流直流変換部21の構成はこれに限られない。交流直流変換部21は、交流電力を直流電力に、直流電力を交流電力に変換する双方向のインバータ・コンバータにより構成されるようにしてもよい。交流直流変換部21のインバータとしての動作時に、蓄電池22から放電された直流電力が、交流電力に変換され、入力端子25を介し電力供給線91に出力されるようにしてもよい。このように構成することにより、蓄電池22の電力が省エネルギーに活用される。
【0140】
(5)上記実施形態では、冷却部28は、電動機により駆動される冷却ファンにより構成されるものとしたが冷却部28の構成は、これに限られない。冷却部28は、圧縮機により構成されるものであってもよい。
【0141】
(6)上記実施形態では、警報出力部54から出力される警報は、警報音、警報表示により出力されるものとしたが、警報出力部54から出力される警報は、これに限られない。警報出力部54から出力される警報は、例えば有線、無線通信による電文により出力されるものであってもよい。
【0142】
(7)上記実施形態では、各無停電電源装置2の検出部4により、電源部20の動作音が検出され、この動作音に基づき判断部5により劣化曲線作成処理、劣化推定処理が行われるようにした。しかしながら、各無停電電源装置2の検出部4により、電源部20の振動、冷却部28の消費電流、電源部20のAE(アコースティックエミッション:材料の変形または破損が発生する前に放出される音波、弾性波)が検出され、これらに基づき、判断部5により劣化曲線作成処理、劣化推定処理が行われるようにしてもよい。
【0143】
(8)上記実施形態では、劣化曲線Fは、複数の無停電電源装置2から送信された信号データBに基づき、過去の劣化を示すグラフとして作成された。しかしながら劣化曲線Fは、未来の劣化の予測を含むものであってもよい。この場合、劣化曲線Fは、一つの無停電電源装置2の稼働時間に対応した劣化レベルを示すデータ群に基づき、多次元多項式関数などによりモデリングし、機械学習等にかかる二乗誤差最小化により関数を求めることにより作成される。劣化曲線Fの未来分については、作成された劣化曲線Fの関数に基づき、外挿することにより予測計算が行われ算出される。
【0144】
(9)上記実施形態における劣化判断処理では、劣化曲線Fに基づき複数の無停電電源装置2の冷却部28の劣化状態を判断するものとした。しかしながら劣化判断処理における劣化状態の判断は、他の複数の無停電電源装置2から送信された使用環境情報B2、使用経過情報B3のデータが類似する冷却部劣化情報B1との比較により、行われるようにしてもよい。
【0145】
他の複数の無停電電源装置2から送信された使用環境情報B2、使用経過情報B3に対し予め定められた一定の数値内に、劣化状態の判断の対象となる無停電電源装置2の使用環境情報B2、使用経過情報B3がある場合、冷却部劣化情報B1の比較が行われ、他の複数の無停電電源装置2から送信された冷却部劣化情報B1に対し予め定められた一定の数値内に、劣化状態の判断の対象となる無停電電源装置2の冷却部劣化情報B1が無い場合、劣化があると判断され、警報が発せられる。
【0146】
(10)上記実施形態では、使用環境情報B2は、無停電電源装置2が稼動を開始してから現在までの、温度、湿度、気圧、サージ受電量のうちの少なくとも一つに関する情報であるものとしたが、使用環境情報B2は、無停電電源装置2の現在の、温度、湿度、気圧、サージ受電量のうちの少なくとも一つに関する情報であってもよい。この場合、記憶部52に蓄積して記憶された使用環境情報B2が、演算部56により編集され、無停電電源装置2ごとの使用環境情報B2として新たに記憶部52に記憶される。このように構成することにより無停電電源装置2から送信されるデータの量を削減することができる。
【0147】
(11)上記実施形態では、判断部5により実行される劣化判断処理により、軽度の劣化、重度の劣化、許容劣化範囲内であるかが判断されるものとしたが、劣化判断処理により判断される劣化の分類はこれに限られない。例えば劣化判断処理により、判断される劣化の分類は、劣化の軽度重度によらず、劣化の性質によりレベル1、レベル2、レベル3としもよい。また、劣化の分類に応じ実行される処理はこれに限られない。各劣化の分類にて実行される処理は、上記の軽度劣化処理、重度劣化処理にて行われる任意の処理であってもよい。
【0148】
(12)上記実施形態において送信される動作コマンドC、停止コマンドDは電文によるものであってもよいし、オンオフを指示するステータス信号等、他の制御信号であってもよい。
【0149】
(13)上記実施形態では、ステップS26、S32にて、無停電電源装置2aに並列接続された無停電電源装置2bが動作し、負荷8aに電力が供給されるものとしたが、図10に示すように、無停電電源装置2aの補助入力端子26aに接続された無停電電源装置2bにより、負荷8aに電力が供給されるようにしてもよい。この場合、ステップS26、S32にて無停電電源装置2aの制御部3は、バイパス回路24を閉路状態とする制御を行う。これにより無停電電源装置2bから出力された電力が、無停電電源装置2aのバイパス回路24を介し負荷8aに供給される
【0150】
また上記実施形態では、ステップS26、S32にて、無停電電源装置2bが動作し負荷8aに電力が供給されるものとしたが、無停電電源装置2bに代替し、他の電源から電力が供給されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0151】
1・・・無停電電源システム
2,2a,2b,2n・・・無停電電源装置
3・・・制御部
4・・・検出部
5・・・判断部
6・・・測定部
8,8a,8b,8n・・・負荷
9・・・電力系統
20・・・電源部
21・・・交流直流変換部
22・・・蓄電池
23・・・直流交流変換部
24・・・バイパス回路
25・・・入力端子
26・・・補助入力端子
27・・・出力端子
28・・・冷却部
31・・・入力部
32・・・出力部
33・・・送受信部
34・・・演算部
51・・・送受信部
52・・・記憶部
53・・・表示部
54・・・警報出力部
55・・・送受信部
56・・・演算部
91・・・電力供給線
92・・・商用電源

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10