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特許7244232脊椎経皮的内視鏡下手術用の内レトラクター器具
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  • 特許-脊椎経皮的内視鏡下手術用の内レトラクター器具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】脊椎経皮的内視鏡下手術用の内レトラクター器具
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/94 20060101AFI20230314BHJP
【FI】
A61B17/94
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018147423
(22)【出願日】2018-08-06
(65)【公開番号】P2020022553
(43)【公開日】2020-02-13
【審査請求日】2021-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】505273648
【氏名又は名称】中村 周
(72)【発明者】
【氏名】中村 周
【審査官】北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0200480(US,A1)
【文献】国際公開第2015/133432(WO,A1)
【文献】特開2008-173472(JP,A)
【文献】特開平10-174689(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0296847(US,A1)
【文献】米国特許第05293863(US,A)
【文献】米国特許第05645519(US,A)
【文献】国際公開第01/078581(WO,A1)
【文献】特表2016-517320(JP,A)
【文献】特開2010-51823(JP,A)
【文献】特表2017-533012(JP,A)
【文献】米国特許第6485466(US,B2)
【文献】米国特許出願公開第2018/0193042(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
椎経皮的内視鏡を貫通する円柱空間である作業用内腔の内径よりも約0.1mm小さい外径の円筒であって,その円筒は作業用内腔に挿入可能であり,
前記円筒は鉗子を挿入可能な内腔を有し,
先端側は前記円筒が欠成されていて,その軸断面が4分の1円程の円弧形となったヘラ状になっており,
手元側には前記円筒の外方へ突出した突起又は円盤形状のハンドル部を有することを特徴とする脊椎経皮的内視鏡下手術用レトラクター
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、頸椎椎間板ヘルニアに対する脊椎経皮的内視鏡下手術において使用する手術器具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
脊椎経皮的内視鏡1とは図1図3のように体内に挿入する部分である本体部分1aは外径約6mm弱から7mm弱程の細長い円柱で,そのなかは鏡筒1a1と光源路1a2と潅流水路1a3と作業用内腔1a4が一体となったもので,カメラ接続部1bにカメラを接続し,内視鏡先の状況を拡大してモニターに写し,微細な部分まで視認しながら,作業用内腔1a4に挿入した鉗子3(図1,2,5)やドリル等の器具にて操作する手術器具である.鉗子3の基本形状は,円筒状の作業用内腔1a4に挿入できる円柱形である.脊椎経皮的内視鏡の本体部分1aの外径よりわずかに大きな内径で外径が7mmから8mm程の円筒形の外筒2を小皮膚切開から脊椎へ挿入し,そのなかに脊椎経皮的内視鏡1の本体部分1aを挿入し,外筒2の先端部により脊椎経皮的内視鏡先の空間を確保しながら作業を行う.皮膚切開も長さ6~7mmと小さく,表皮から脊椎に至る経路の侵襲も最小限にできる.
【0003】
図4に後方進入頸椎椎間板ヘルニア切除術における進入経路Pを示す.背側から表皮Sを切開し,皮下や筋層を貫き,椎弓骨Vを部分的に切除し脊柱管(椎弓骨Vや椎間板Dや椎体に囲まれた管腔で,内部に硬膜管Cや神経根R等が通る所)に到達する.脊柱管内の黄色靭帯を一部切除すると硬膜管C(硬膜に囲まれた管腔で内部に脊髄や髄液が通る)や神経根Rが現れ,さらにそれより深部に椎間板Dや椎間板ヘルニアHがある.
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Richard Wolf社製品カタログ「VERTEBRIS Lumbar-Thoracic Full-endoscopic Spinal Instrumentation」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
脊椎経皮的内視鏡は小径であり,それよりさらに小径の作業用内腔に挿入できる器具は一本に限られ,作業空間は外筒で確保し一本の器具で操作している.しかし頸椎では脊柱管内は脊髄や神経根Rでほぼ隙間なく占められており外筒2を安全に挿入できる空間的余裕がなく,外筒2はその手前の椎弓骨Vまでの挿入となる.そのため椎間板D上まで外筒2を挿入できない.後方から見ると神経根Rや膜組織が椎間板ヘルニアHの手前にあり,それらが視野の妨げとなるため椎間板ヘルニアHを鉗子3で掴む操作が盲目的となり危険な操作となってしまう.安全のためには神経を確実によけながら椎間板ヘルニアを掴む必要があるが,現状では挿入できる器具は一本に限られるため,それができない.
【0006】
そこで経皮的内視鏡下頸椎椎間板ヘルニア切除術においても作業用内腔にレトラクター(作業対象を視認するため障害となる物をよけるための器具)と鉗子の二本を挿入することを可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明の脊椎経皮的内視鏡下手術用器具の内レトラクター器具は脊椎経皮的内視鏡の作業用内腔の内径よりわずかに小さな外径の円筒で,経皮的的内視鏡より全長が長い.その先端部は4分の1円に欠成されて細いヘラ状となっており4分の3円は開放部分となっている.手元側のハンドル部には前記円筒より外径が太くなって把持し易くなっている.全体は硬性金属製である.
【0008】
ハンドル部は棒状突起とかの形状も考えられる.
【発明の効果】
【0009】
内レトラクター器具は,脊椎経皮的内視鏡の作業用内腔に挿入され,小径でさらに先端が4分の1円になっていることで小さな空間にも挿入できる.先端部を脊柱管内の神経の間のわずかな空間に挿入し神経をよけながらも,その開放部分を脊椎経皮的内視鏡の鏡筒先レンズ側に向けることで視野が確保される.そして内レトラクター器具の内腔は円柱貫通内腔となっており,既存の鉗子を挿入できる.内レトラクター器具で神経をよけながら椎間板ヘルニアを鉗子で掴み摘出することが可能となる.つまり脊椎経皮的内視鏡においてレトラクターと鉗子の二本を作業用内腔に挿入して,頸椎脊柱管内という狭い空間ながらも神経よけて椎間板ヘルニアを摘み取ることが可能となる.
【0010】
例えば先端部分だけでなく全長を4分の1円にする形態も考えられるが,幅がわずか数ミリで長さがその百倍となるため構造上強度が不足し容易にしなってしまい,神経をよけるための剛性が足りない.当発明器具は全体にしなることがなくレトラクターとしての機能を果たしながらもその内腔に既存の鉗子を挿入でき,鉗子とレトラクターの二本の操作が可能となっている.
【0011】
従来からある外筒の先端形状は様々あり,ヘラ状になっているものもあるが,それらを含め全ての外筒はその中に脊椎経皮的内視鏡を挿入する目的のもので,当発明とは別の目的の器具で,当然だが当発明のよう脊椎経皮的内視鏡の作業用内腔に挿入できるものではない.また,外筒では径が大きすぎるため当器具のような小さな範囲で使用できるものはない.仮に外筒で当発明と同様の働きをさせようとすると,外筒は大きいので外筒先端部を8分の1円以下の細いヘラ形状にすることが考えられるが,このような外筒では,レトラクターとして働く部分がわずかであり,本来の役割である椎弓骨までの筋組織をよける働きが失われてしまう.神経根Rをよけるのは手術の最終段階のみであり,その時だけ使える器具であることが望ましいので,本発明の器具が理想的である.
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】既存の脊椎経皮的内視鏡と外筒と鉗子の全体図(挿入前)。
図2】既存の脊椎経皮的内視鏡用鉗子の先端図。
図3】既存の脊椎経皮的内視鏡本体部分の断面図。
図4】頸椎断面の解剖図
図5】既存の脊椎経皮的内視鏡本体部分の鉗子挿入時の断面図。
図6】既存の脊椎経皮的内視鏡本体部分の本発明の器具と鉗子の挿入時の軸断図。
図7】本発明の実施形態1の側面図。
図8】本発明の実施形態1の軸断図。
図9】使用時における本発明の器具と脊椎経皮的内視鏡と外筒と鉗子の先端斜視図。
図10】本発明の実施形態2の側面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態1を図6~9を用いて説明する。脊椎経皮的内視鏡1の作業用内腔1a4の内径が4.1mmとすると,本発明の内レトラクター器具4の円筒部401の外径はそれよりわずかに小さい4mmの外径の円筒で,脊椎経皮的内視鏡1の全長が260mmとすると内レトラクター器具4の全長はそれよりも長い300mm程である.先端部402は長さ20mm程にわたり4分の1円に欠成され,細いヘラ状となっている.円筒部401の手元側にはハンドル部403があり,その外径が15mm程と円筒部401の外径より大きくなっていて把持しやすくなっている.
【0014】
本発明の実施形態2を図10にて説明する.ハンドル部404が棒状突起となっており,その他は実施形態1と同様である.
【0015】
図6図9のようにそれぞれの位置関係は,外側から外筒2,脊椎経皮的内視鏡本体部分1a,内レトラクター器具4,鉗子3となる.従来では,その位置関係は図5のように作業用内腔1a4内に入るものは鉗子3の一本のみであるが,本発明の場合は内レトラクター器具4と鉗子3を作業用内腔1a4内に挿入する.内レトラクター器具4の厚みの分だけ挿入できる鉗子3の外径は小さいものとなるが頸椎椎間板ヘルニアは小さくて柔らかいため既存の小径の鉗子で十分である.
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10