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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】人力駆動車用制御装置
(51)【国際特許分類】
   B62M 6/45 20100101AFI20230314BHJP
【FI】
B62M6/45
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018180116
(22)【出願日】2018-09-26
(65)【公開番号】P2020050084
(43)【公開日】2020-04-02
【審査請求日】2021-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002439
【氏名又は名称】株式会社シマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】高山 仁志
(72)【発明者】
【氏名】謝花 聡
【審査官】中島 昭浩
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-080889(JP,A)
【文献】特開平10-059260(JP,A)
【文献】特開平09-207866(JP,A)
【文献】特開平11-029087(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62M 6/40- 6/75
B60L 1/00- 3/12, 7/00
-13/00,15/00-58/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクを有する人力駆動車の推進をアシストするモータを制御する制御部を含み、
前記制御部は、
前記クランクに入力される人力駆動力と、前記クランクの回転速度とに応じて、前記モータを制御し、
前記クランクに入力される前記人力駆動力が第1所定範囲内であり、かつ、前記クランクの回転速度が第2所定範囲内であり、さらに、前記人力駆動車が第1走行速度状態にある場合、前記クランクに入力される前記人力駆動力に対する前記モータの駆動力のアシスト比率および前記モータの駆動力の最大値の少なくとも一方が第1値になるように前記モータを制御し、
前記クランクに入力される前記人力駆動力が前記第1所定範囲内であり、かつ、前記クランクの回転速度が前記第2所定範囲内であり、さらに、前記人力駆動車が、前記第1走行速度状態とは異なる第2走行速度状態にある場合、前記アシスト比率および前記モータの駆動力の最大値の少なくとも一方が第2値になるように前記モータを制御し、
前記第1値は前記第2値とは異なり、
前記第1値は、前記第2値よりも大きく、
前記第1走行速度状態において、前記人力駆動車は第1速度範囲で走行し、
前記第2走行速度状態において、前記人力駆動車は第2速度範囲で走行し、
前記第1速度範囲の下限値は、前記第2速度範囲の上限値よりも大きい、人力駆動車用制御装置。
【請求項2】
前記第1走行速度状態において、前記人力駆動車は前記第1速度範囲で走行し、
前記第2走行速度状態において、前記人力駆動車は前記第2速度範囲で走行し、
前記第1速度範囲、および、前記第2速度範囲の少なくとも一方は変更可能である、請求項1に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項3】
前記第1速度範囲、および、前記第2速度範囲の少なくとも一方は、走行状況および走行抵抗の少なくとも一方に応じて変更される、請求項2に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項4】
クランクを有する人力駆動車の推進をアシストするモータを制御する制御部を含み、
前記制御部は、
前記クランクに入力される人力駆動力と、前記クランクの回転速度とに応じて、前記モータを制御し、
前記クランクに入力される前記人力駆動力が第1所定範囲内であり、かつ、前記クランクの回転速度が第2所定範囲内であり、さらに、前記人力駆動車が第1走行速度状態にある場合、前記クランクに入力される前記人力駆動力に対する前記モータの駆動力のアシスト比率および前記モータの駆動力の最大値の少なくとも一方が第1値になるように前記モータを制御し、
前記クランクに入力される前記人力駆動力が前記第1所定範囲内であり、かつ、前記クランクの回転速度が前記第2所定範囲内であり、さらに、前記人力駆動車が、前記第1走行速度状態とは異なる第2走行速度状態にある場合、前記アシスト比率および前記モータの駆動力の最大値の少なくとも一方が第2値になるように前記モータを制御し、
前記第1値は前記第2値とは異なり、
前記第1走行速度状態において、前記人力駆動車は第1速度範囲で走行し、
前記第2走行速度状態において、前記人力駆動車は第2速度範囲で走行し、
前記第1速度範囲、および、前記第2速度範囲の少なくとも一方は変更可能であり、
前記第1速度範囲、および、前記第2速度範囲の少なくとも一方は、走行状況および走行抵抗の少なくとも一方に応じて変更される、人力駆動車用制御装置。
【請求項5】
前記第1所定範囲は、10Nm以下の範囲である、請求項1から4のいずれか一項に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項6】
クランクを有する人力駆動車の推進をアシストするモータを制御する制御部を含み、
前記制御部は、
前記クランクに入力される人力駆動力と、前記クランクの回転速度とに応じて、前記モータを制御し、
前記クランクに入力される前記人力駆動力が第1所定範囲内であり、かつ、前記クランクの回転速度が第2所定範囲内であり、さらに、前記人力駆動車が第1走行速度状態にある場合、前記クランクに入力される前記人力駆動力に対する前記モータの駆動力のアシスト比率および前記モータの駆動力の最大値の少なくとも一方が第1値になるように前記モータを制御し、
前記クランクに入力される前記人力駆動力が前記第1所定範囲内であり、かつ、前記クランクの回転速度が前記第2所定範囲内であり、さらに、前記人力駆動車が、前記第1走行速度状態とは異なる第2走行速度状態にある場合、前記アシスト比率および前記モータの駆動力の最大値の少なくとも一方が第2値になるように前記モータを制御し、
前記第1値は前記第2値とは異なり、
前記第1所定範囲は、10Nm以下の範囲である、人力駆動車用制御装置。
【請求項7】
前記第1走行速度状態において、前記人力駆動車は第1速度範囲で走行し、
前記第2走行速度状態において、前記人力駆動車は第2速度範囲で走行し、
前記第1速度範囲の下限値は、前記第2速度範囲の上限値よりも大きい、請求項4または6に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項8】
前記第2所定範囲は、50rpm以下の範囲である、請求項1からのいずれか一項に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項9】
前記制御部は、前記人力駆動力が所定駆動力範囲に含まれている場合、前記人力駆動力の増加に応じて前記アシスト比率および前記モータの駆動力の最大値の少なくとも一方を大きくする、請求項1から8のいずれか一項に記載の人力駆動車用制御装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記人力駆動車が前記第1走行速度状態または前記第2走行速度状態にある場合、前記人力駆動力の増加に応じて前記アシスト比率および前記モータの駆動力の最大値の少なくとも一方を大きくする、請求項9に記載の人力駆動車用制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人力駆動車用制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に開示されている人力駆動車用制御装置は、人力駆動車両に入力される人力駆動力に対するモータの出力の比率が所定の比率になるようにモータを制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-59260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、モータを好適に制御できる人力駆動車両用制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1側面に従う人力駆動車用制御装置は、クランクを有する人力駆動車の推進をアシストするモータを制御する制御部を含み、前記制御部は、前記クランクに入力される人力駆動力と、前記クランクの回転速度とに応じて、前記モータを制御し、前記クランクに入力される前記人力駆動力が第1所定値であり、かつ、前記クランクの回転速度が第2所定値であり、さらに、前記人力駆動車が第1走行速度状態にある場合、前記クランクに入力される前記人力駆動力に対する前記モータの駆動力のアシスト比率および前記モータの駆動力の最大値の少なくとも一方が第1値になるように前記モータを制御し、前記クランクに入力される前記人力駆動力が前記第1所定値であり、かつ、前記クランクの回転速度が前記第2所定値であり、さらに、前記人力駆動車が、前記第1走行速度状態とは異なる第2走行速度状態にある場合、前記アシスト比率および前記モータの駆動力の最大値の少なくとも一方が第2値になるように前記モータを制御し、前記第1値は前記第2値とは異なる。
上記第1側面の人力駆動車用制御装置によれば、第1走行速度状態と第2走行速度状態のそれぞれの場合に応じてモータを好適に制御できる。
【0006】
前記第1側面に従う第2側面の人力駆動車用制御装置において、前記第1走行速度状態において、前記人力駆動車は第1速度で走行し、前記第2走行速度状態において、前記人力駆動車は第2速度で走行し、前記第1速度は、前記第2速度よりも大きい。
上記第2側面の人力駆動車用制御装置によれば、人力駆動車が第1速度で走行する場合と、第2速度で走行する場合のそれぞれに好適なモータの制御を行える。
【0007】
前記第1または第2側面に従う第3側面の人力駆動車用制御装置において、前記第1値は、前記第2値よりも大きい。
上記第3側面の人力駆動車用制御装置によれば、第1走行速度状態の場合の第1値を第2走行速度状態の場合の第2値よりも大きくできる。
【0008】
前記第1~第3側面のいずれか1つに従う第4側面の人力駆動車用制御装置において、前記第1走行速度状態において、前記人力駆動車は第1速度範囲で走行し、前記第2走行速度状態において、前記人力駆動車は第2速度範囲で走行し、前記第1速度範囲、および、前記第2速度範囲の少なくとも一方は変更可能である。
上記第4側面の人力駆動車用制御装置によれば、第1速度範囲および第2速度範囲の少なくとも一方を変更できる。
【0009】
前記第4側面に従う第5側面の人力駆動車用制御装置において、前記第1速度範囲、および、前記第2速度範囲の少なくとも一方は、走行状況および走行抵抗の少なくとも一方に応じて変更される。
上記第5側面の人力駆動車用制御装置によれば、走行状況および走行抵抗の少なくとも一方に適したモータの制御を行える。
【0010】
前記第1~第5側面のいずれか1つに従う第6側面の人力駆動車用制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動力が所定駆動力範囲に含まれている場合、前記人力駆動力の増加に応じて前記アシスト比率および前記モータの駆動力の最大値の少なくとも一方を大きくする。
上記第6側面の人力駆動車用制御装置によれば、人力駆動力が所定駆動力範囲に含まれている場合、人力駆動力が増加するとアシスト比率およびモータの駆動力の最大値の少なくとも一方を大きくできる。
【0011】
前記第6側面に従う第7側面の人力駆動車用制御装置において、前記制御部は、前記人力駆動車が前記第1走行速度状態または前記第2走行速度状態にある場合、前記人力駆動力の増加に応じて前記アシスト比率および前記モータの駆動力の最大値の少なくとも一方を大きくする。
上記第7側面の人力駆動車用制御装置によれば、人力駆動力が第1走行速度状態または第2走行速度状態にある場合、人力駆動力が増加するとアシスト比率およびモータの駆動力の最大値の少なくとも一方を大きくできる。
【0012】
前記第1~第7側面のいずれか1つに従う第8側面の人力駆動車用制御装置において、前記第1所定値は、10Nm以下の値である。
上記第8側面の人力駆動車用制御装置によれば、人力駆動力が10Nmの場合、第1走行速度状態と第2走行速度状態のそれぞれの場合に応じてモータを好適に制御できる。
【0013】
前記第1~第8側面のいずれか1つに従う第9側面の人力駆動車用制御装置において、前記第2所定値は、50rpm以下の値である。
上記第9側面の人力駆動車用制御装置によれば、クランクの回転速度が50rpmの場合、第1走行速度状態と第2走行速度状態のそれぞれの場合に応じてモータを好適に制御できる。
【発明の効果】
【0014】
本開示の人力駆動車両用制御装置は、モータを好適に制御できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態の人力駆動車用制御装置を含む人力駆動車の側面図。
図2】実施形態の人力駆動車用制御装置の電気的な構成を示すブロック図。
図3】実施形態において、クランクの回転速度が第2所定値の場合の人力駆動力とアシスト比率との関係を示すグラフ。
図4】実施形態において、人力駆動力が第1所定値の場合のクランクの回転速度とアシスト比率との関係を示すグラフ。
図5図2の制御部によって実行されるモータを制御する処理のフローチャート。
図6図2の制御部によって実行される速度範囲を変更する処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1図6を参照して、実施形態の人力駆動車用制御装置50について説明する。以後、人力駆動車用制御装置50を、単に制御装置50と記載する。制御装置50は、人力駆動車10に設けられる。人力駆動車10は、少なくとも人力駆動力Hによって駆動することができる車両である。人力駆動車10は、車輪の数が限定されず、例えば1輪車および3輪以上の車輪を有する車両も含む。人力駆動車10は、例えばマウンテンバイク、ロードバイク、シティバイク、カーゴバイク、および、リカンベントなど種々の種類の自転車を含む。自転車は、電気モータによって駆動力が与えられる電動自転車(E-bike)を含む。電動自転車は、電動モータによって車両の推進を補助する電動アシスト自転車を含む。電動自転車は、電気モータによって推進が補助される電動アシスト自転車を含む。以下、実施の形態において、人力駆動車10を、2つの車輪を有する自転車として説明する。
【0017】
人力駆動車10は、ホイール12、クランク14、および、車体16を有する。車体16は、フレーム18およびシートポスト20を含む。クランク14には、人力駆動力Hが入力される。クランク14は、フレーム18に対して回転可能なクランク軸14Aと、クランク軸14Aの軸方向の端部にそれぞれ設けられるクランクアーム14Bとを含む。各クランクアーム14Bには、一対のペダル22が個別に連結される。ホイール12は、従動輪12Aおよび駆動輪12Bを含む。駆動輪12Bは、クランク14が回転することによって駆動される。駆動輪12Bは、フレーム18に支持される。クランク14と駆動輪12Bとは、駆動機構24によって連結される。駆動機構24は、クランク軸14Aに結合される第1回転体26を含む。クランク軸14Aと第1回転体26とは、一体に回転するように結合されていてもよく、第1ワンウェイクラッチを介して結合されていてもよい。第1ワンウェイクラッチは、クランク14が前転した場合に、第1回転体26を前転させ、クランク14が後転した場合に、第1回転体26を後転させないように構成される。第1回転体26は、スプロケット、プーリ、または、ベベルギアを含む。駆動機構24は、第2回転体28と、連結部材30とをさらに含む。連結部材30は、第1回転体26の回転力を第2回転体28に伝達する。連結部材30は、例えば、チェーン、ベルト、または、シャフトを含む。
【0018】
第2回転体28は、駆動輪12Bに連結される。第2回転体28は、スプロケット、プーリ、または、ベベルギアを含む。第2回転体28と駆動輪12Bとの間には、第2ワンウェイクラッチが設けられていることが好ましい。第2ワンウェイクラッチは、第2回転体28が前転した場合に、駆動輪12Bを前転させ、第2回転体28が後転した場合に、駆動輪12Bを後転させないように構成される。人力駆動車10は、クランク軸14Aの回転速度に対する駆動輪12Bの回転速度の変速比率Bを変更するために用いられる変速機46を含んでいてもよい。変速機46は、例えばフロントディレイラ、リアディレイラおよび内装変速機の少なくとも1つを含む。変速機46は、フロントディレイラのみ、リアディレイラのみ、内装変速機のみ、または、フロントディレイラ、リアディレイラおよび内装変速機のうちの任意の組合せを含んでいてもよい。本実施形態では、第1回転体26および第2回転体28の少なくとも一方は、複数のスプロケットを含む。第1回転体26のみ、第2回転体28のみ、または、第1回転体26および第2回転体28の両方が、複数のスプロケットを含んでいてもよい。本実施形態では、第1回転体26は、1枚のスプロケットを含み、第2回転体28は、複数のスプロケットを含む。ディレイラは、第1回転体26が複数のフロントスプロケットを含む場合、フロントディレイラを含み、第2回転体28が複数のフロントスプロケットを含む場合、リアディレイラを含む。変速機46が内装変速機を含む場合、内装変速機は、例えば、駆動輪12Bのハブに設けられる。
【0019】
人力駆動車10は、前輪および後輪を含む。フレーム18には、フロントフォーク32を介して前輪が取り付けられている。フロントフォーク32にはハンドル部34が取り付けられている。ハンドル部34は、ステム36およびハンドルバー38を含む。フロントフォーク32には、ハンドルバー38がステム36を介して連結されている。以下の実施形態では、後輪を駆動輪12Bとして説明するが、前輪が駆動輪12Bであってもよい。
【0020】
シートポスト20は、シートポスト20の高さを変更可能に構成されることが好ましい。シートポスト20は、シートポスト20の高さを変更するための電動アクチュエータを含むことが好ましい。電動アクチュエータは、油圧または空気を用いて伸長する電動シートポストのバルブをコントロールしてもよい。電動アクチュエータは、電気モータおよびソレノイドの少なくとも一方を含む。シートポスト20は、機械式ケーブルまたはレバーによってシートポスト20の高さを変更可能に構成されてもよい。
【0021】
人力駆動車10は、サスペンション48を含むことが好ましい。サスペンション48は、リアサスペンション48Aおよびフロントサスペンション48Bの少なくとも一方を含む。サスペンション48は、車輪に加えられる衝撃を吸収する。
【0022】
リアサスペンション48Aは、人力駆動車10のフレーム18と後輪との間に設けられるように構成される。より具体的には、リアサスペンション48Aは、フレーム18と後輪を支持するスイングアームとの間に設けられる。リアサスペンション48Aは、後輪に加えられる衝撃を吸収する。リアサスペンション48Aは、油圧サスペンションであってもよく、エアサスペンションであってもよい。
【0023】
リアサスペンション48Aは、第1部分と、第1部分に嵌め込まれて第1部分と相対移動可能な第2部分とを含む。リアサスペンション48Aの動作状態は、第1部分と第2部分との相対移動が規制されるロック状態と、第1部分と第2部分との相対移動が許容されるロック解除状態とを含む。リアサスペンション48Aは、アクチュエータをさらに含むことが好ましい。アクチュエータは、例えば、電気モータを含む。アクチュエータは、リアサスペンション48Aの動作状態を切り替える。なお、リアサスペンション48Aのロック状態は、後輪に強い力が加えられた場合に、第1部分と第2部分とがわずかに相対移動する状態を含み得る。
【0024】
フロントサスペンション48Bは、人力駆動車10のフレーム18と前輪との間に設けられるように構成される。より具体的には、フロントサスペンション48Bは、フロントフォーク32に設けられる。フロントサスペンション48Bは、前輪に加えられる衝撃を吸収する。フロントサスペンション48Bは、油圧サスペンションであってもよく、エアサスペンションであってもよい。
【0025】
フロントサスペンション48Bは、第1部分と、第1部分に嵌め込まれて第1部分と相対移動可能な第2部分とを含む。フロントサスペンション48Bの動作状態は、第1部分と第2部分との相対移動が規制されるロック状態と、第1部分と第2部分との相対移動が許容されるロック解除状態とを含む。フロントサスペンション48Bは、アクチュエータをさらに含むことが好ましい。アクチュエータは、例えば、電気モータを含む。アクチュエータは、フロントサスペンション48Bの動作状態を切り替える。なお、フロントサスペンション48Bのロック状態は、前輪に強い力が加えられた場合に、第1部分と第2部分とがわずかに相対移動する状態を含み得る。
【0026】
人力駆動車10は、バッテリ40をさらに含む。バッテリ40は、1または複数のバッテリセルを含む。バッテリセルは、充電池を含む。バッテリ40は、人力駆動車10に設けられ、バッテリ40と電気的に接続されている他の電気部品、例えば、人力駆動車用制御装置50に電力を供給する。バッテリ40は、人力駆動車用制御装置50と有線または無線によって通信可能に接続されている。バッテリ40は、例えば電力線通信(PLC;power line communication)によって人力駆動車用制御装置50と通信可能である。バッテリ40は、フレーム18の外部に取り付けられてもよく、少なくとも一部がフレーム18の内部に収容されてもよい。
【0027】
人力駆動車10は、人力駆動車10の推進をアシストするように構成されるモータ42を含む。人力駆動車10は、駆動回路44をさらに含む。駆動回路44は、インバータ回路を含む。モータ42は、駆動回路と同一のハウジングに設けられることが好ましい。駆動回路44は、バッテリ40からモータ42に供給される電力を制御する。駆動回路44は、人力駆動車用制御装置50と有線または無線によって通信可能に接続されている。駆動回路44は、例えばシリアル通信によって人力駆動車用制御装置50の制御部52と通信可能である。駆動回路44は、人力駆動車用制御装置50に含まれていてもよい。駆動回路44は、制御部52からの制御信号に応じてモータ42を駆動させる。
【0028】
モータ42は、電気モータを含む。モータ42は、ペダル22から後輪までの人力駆動力Hの動力伝達経路、または、前輪に回転を伝達するように設けられる。モータ42は、人力駆動車10のフレーム18、後輪、または、前輪に設けられる。本実施形態では、モータ42は、クランク軸14Aから第1回転体26までの動力伝達経路に結合される。モータ42とクランク軸14Aとの間の動力伝達経路には、クランク軸14Aを人力駆動車10が前進する方向に回転させた場合にクランク14の回転力によってモータ42が回転しないようにワンウェイクラッチが設けられるのが好ましい。モータ42および駆動回路44が設けられるハウジングには、モータ42および駆動回路44以外の構成が設けられてもよく、例えばモータ42の回転を減速して出力する減速機が設けられてもよい。
【0029】
人力駆動車用制御装置50は、制御部52を含む。制御部52は、予め定められる制御プログラムを実行する演算処理装置を含む。演算処理装置は、例えばCPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)を含む。制御部52は、1または複数のマイクロコンピュータを含んでいてもよい。制御部52は、複数の場所に離れて配置される複数の演算処理装置を含んでいてもよい。人力駆動車用制御装置50は、記憶部54をさらに含む。記憶部54には、各種の制御プログラムおよび各種の制御処理に用いられる情報が記憶される。記憶部54は、例えば不揮発性メモリおよび揮発性メモリを含む。制御部52および記憶部54は、例えばモータ42が設けられるハウジングに設けられる。
【0030】
人力駆動車用制御装置50は、好ましくは、クランク回転センサ56、車速センサ58、および、トルクセンサ60をさらに含む。クランク回転センサ56、車速センサ58、および、トルクセンサ60は、モータ42が設けられるハウジングの内部に設けられてもよく、外部に設けられてもよい。クランク回転センサ56、車速センサ58、および、トルクセンサ60の少なくとも1つは、人力駆動車用制御装置50に含まれなくてもよい。
【0031】
クランク回転センサ56は、人力駆動車10のクランク14の回転速度Nを検出するために用いられる。クランク回転センサ56は、例えば人力駆動車10のフレーム18またはモータ42が設けられるハウジングに取り付けられる。クランク回転センサ56は、磁界の強度に応じた信号を出力する磁気センサを含んで構成される。周方向に磁界の強度が変化する環状の磁石が、クランク軸14Aまたはクランク軸14Aから第1回転体26までの間の動力伝達経路に設けられる。クランク回転センサ56は、制御部52と有線または無線によって通信可能に接続されている。クランク回転センサ56は、クランク14の回転速度Nに応じた信号を制御部52に出力する。クランク回転センサ56は、クランク軸14Aから第1回転体26までの人力駆動力Hの動力伝達経路において、クランク軸14Aと一体に回転する部材に設けられてもよい。例えば、クランク回転センサ56は、クランク軸14Aと第1回転体26との間に第1ワンウェイクラッチが設けられない場合、第1回転体26に設けられてもよい。クランク回転センサ56は、人力駆動車10の走行速度Vを検出するために用いられてもよい。この場合、制御部52は、クランク回転センサ56によって検出されるクランク14の回転速度Nと、変速比率Bとに応じて、駆動輪12Bの回転速度を演算して、人力駆動車10の走行速度Vを検出する。変速比率Bに関する情報は、記憶部54に予め記憶されている。
【0032】
人力駆動車10に変速比率Bを変更するための変速機46が設けられる場合、制御部52は、人力駆動車10の走行速度Vと、クランク14の回転速度Nとに応じて、変速比率Bを演算してもよい。この場合、駆動輪12Bの周長、駆動輪12Bの直径、または、駆動輪12Bの半径に関する情報が記憶部54に予め記憶されている。人力駆動車用制御装置50は、変速センサを含んでいてもよい。変速センサは、例えば、変速機46に設けられる。変速センサは、変速機46の現在の変速ステージを検出する。変速センサは、制御部52に電気的に接続されている。変速ステージと変速比率Bとの関係は、記憶部54に予め記憶されている。制御部52は、変速センサの検出結果から、現在の変速比率Bを検出することができる。制御部52は、駆動輪12Bの回転速度を変速比率Bで除算することによって、クランク14の回転速度Nを演算できる。この場合、車速センサ58および変速センサをクランク回転センサ56として用いてもよい。変速センサは、変速機46ではなく、変速操作部に設けられてもよく、変速ワイヤに設けられてもよい。
【0033】
車速センサ58は、ホイール12の回転速度を検出するために用いられる。車速センサ58は、有線または無線によって制御部52と電気的に接続されている。車速センサ58は、制御部52と有線または無線によって通信可能に接続されている。車速センサ58は、ホイール12の回転速度に応じた信号を制御部52に出力する。制御部52は、ホイール12の回転速度に基づいて人力駆動車10の走行速度Vを演算する。制御部52は、走行速度Vが所定値以上になると、モータ42を停止する。所定値は、例えば時速25Km、または、時速45Kmである。車速センサは、例えば、リードスイッチを構成する磁性体リード、または、ホール素子を含む。車速センサ58は、フレーム18のチェーンステイに取り付けられ、後輪に取り付けられる磁石を検出する構成としてもよく、フロントフォーク32に設けられ、前輪に取り付けられる磁石を検出する構成としてもよい。別の例では、車速センサ58は、GPS(Global Positioning System)受信部を含む。制御部52は、GPS受信部によって取得したGPS情報と、記憶部54に予め記録されている地図情報と、時間とに応じて、人力駆動車10の走行速度Vを検出してもよい。制御部52は、時間を計るためのタイマを含むことが好ましい。
【0034】
トルクセンサ60は、人力駆動力HのトルクTHを検出するために用いられる。トルクセンサ60は、例えば、モータ42が設けられるハウジングに設けられる。トルクセンサ60は、クランク14に入力される人力駆動力HのトルクTHを検出する。トルクセンサ60は、例えば、動力伝達経路に第1ワンウェイクラッチが設けられる場合、第1ワンウェイクラッチよりも上流側に設けられる。トルクセンサ60は、歪センサまたは磁歪センサなどを含む。歪センサは、歪ゲージを含む。トルクセンサ60が歪センサを含む場合、歪センサは、好ましくは、動力伝達経路に含まれる回転体の外周部に設けられる。トルクセンサ60は、無線または有線の通信部を含んでいてもよい。トルクセンサ60の通信部は、制御部52と通信可能に構成される。
【0035】
制御部52は、例えば、人力駆動力Hに対するモータ42の駆動力が所定のアシスト比率Aになるように、モータ42を制御する。制御部52は、例えば、人力駆動車10の人力駆動力HのトルクTHに対する、モータ42によるモータ42の駆動力の出力トルクTMが所定のアシスト比率Aになるように、モータ42を制御してもよい。制御部52は、例えば、人力駆動力Hに対するモータ42の駆動力のアシスト比率Aの異なる複数の制御モードから選択される1つの制御モードでモータ42を制御する。人力駆動車10の人力駆動力HのトルクTHに対するモータ42の出力トルクTMのトルク比率ATを、アシスト比率Aと記載する場合がある。制御部52は、例えば、人力駆動力Hの仕事率WH(ワット)に対して、モータ42の仕事率WX(ワット)が所定のアシスト比率Aになるように、モータ42を制御してもよい。人力駆動車10の人力駆動力Hの仕事率WHに対するモータ42の駆動力の仕事率WXの比率AWを、アシスト比率Aと記載する場合がある。人力駆動力Hの仕事率WHは、人力駆動力Hとクランク14の回転速度Nとの乗算によって算出される。モータ42の出力が減速機を介して人力駆動力Hの動力経路に入力される場合は、減速機の出力を、モータ42の駆動力とする。制御部52は、人力駆動力Hの仕事率WHまたはトルクTHに応じて、制御指令をモータ42の駆動回路44に出力する。制御指令は、例えばトルク指令値を含む。
【0036】
制御部52は、モータ42の駆動力の最大値が所定値以下になるようにモータ42を制御する。制御部52は、例えば、最大値の異なる複数の制御モードから選択される1つの制御モードでモータ42を制御する。モータ42の駆動力は、モータ42の出力トルクTMを含む。モータ42の駆動力は、モータ42の仕事率WXを含んでいてもよい。この場合、制御部52は、モータ42の仕事率WXの最大値が所定値WX1以下になるようにモータ42を制御する。所定値WX1は、一例では、500ワットである。所定値WX1は、別の例では、300ワットである。制御部52は、トルク比率ATが所定トルク比率AT1以下になるようにモータ42を制御してもよい。所定トルク比率AT1は、一例では、300%である。所定トルク比率AT1は、別例では、200%である。
【0037】
複数の制御モードのそれぞれにおいて、アシスト比率Aおよびモータ42の駆動力の最大値の少なくとも一方が異なっていてもよい。複数の制御モードのそれぞれにおいて、アシスト比率Aのみ、最大値のみ、または、アシスト比率Aおよび最大値の両方が異なっていてもよい。この場合、制御部52は、モータ42の駆動力が選択されているモータ42の制御モードにおいて規定されるアシスト比率A以下、かつ、最大値が所定値以下になるようにモータ42を制御する。
【0038】
制御装置50は、クランク14を有する人力駆動車10の推進をアシストするモータ42を制御する制御部52を含む。制御部52は、クランク14に入力される人力駆動力Hと、クランク14の回転速度Nに応じて、モータ42を制御する。制御部52は、クランク14に入力される人力駆動力Hが第1所定値HXであり、かつ、クランク14の回転速度Nが第2所定値NXであり、さらに、人力駆動車10が第1走行速度状態にある場合、クランク14に入力される人力駆動力Hに対するモータ42の駆動力のアシスト比率Aおよびモータ42の駆動力の最大値の少なくとも一方が第1値A1になるようにモータ42を制御する。制御部52は、クランク14に入力される人力駆動力Hが第1所定値HXであり、かつ、クランク14の回転速度Nが第2所定値NXであり、さらに、人力駆動車10が、第1走行速度状態とは異なる第2走行速度状態にある場合、アシスト比率Aおよびモータ42の駆動力の最大値の少なくとも一方が第2値A2になるようにモータ42を制御する。第1値A1は、第2値A2とは異なる。
【0039】
第1値A1は、第2値A2よりも大きいことが好ましい。一例では、第1値A1および第2値A2の両方は、制御モードごとに予め定められるアシスト比率Aまたはモータ42の駆動力の最大値とは異なる値である。第1走行速度状態ではなくかつ第2走行速度状態ではない場合、制御部52は、制御モードごとに予め定められるアシスト比率Aまたはモータ42の駆動力の最大値でモータ42を制御する。この場合、第1値A1および第2値A2の両方を、制御モードごとに定められるアシスト比率Aまたはモータ42の駆動力の最大値よりも小さくすることが好ましい。また、第1値A1は、制御モードごとに予め定められるアシスト比率Aまたはモータ42の駆動力の最大値よりも大きく、第2値A2は、制御モードごとに予め定められるアシスト比率Aまたはモータ42の駆動力の最大値よりも小さくしてもよい。別例では、第1値A1は、第2値A2と対応する制御モードよりも1段階大きい制御モードと対応するアシスト比率Aまたはモータ42の駆動力の最大値である。この場合、制御部52は、クランク14に入力される人力駆動力Hが第1所定値HXであり、かつ、クランク14の回転速度Nが第2所定値NXである場合、第1走行速度状態と第2走行速度状態とが切り替わると、制御モードを変更する。さらに別例では、第1値A1および第2値A2の一方は制御モードごとに予め定められるアシスト比率Aまたはモータ42の駆動力の最大値であり、第1値A1および第2値A2の他方は、制御モードごとに予め定められるアシスト比率Aまたはモータ42の駆動力の最大値とは異なる値である。この場合、制御部52は、クランク14に入力される人力駆動力Hが第1所定値HXであり、かつ、クランク14の回転速度Nが第2所定値NXである場合、第1走行速度状態と第2走行速度状態とが切り替わると、制御モードは変更せずに、アシスト比率Aまたはモータ42の駆動力の最大値を第1値A1と第2値A2との間で変更することが好ましい。
【0040】
第1所定値HXは、10Nm以下の値であることが好ましい。具体的には、第1所定値HXは、10Nm以下の全ての値であることが好ましい。第2所定値NXは、50rpm以下の値であることが好ましい。具体的には、第2所定値NXは、50rpm以下の全ての値であることが好ましい。制御部52は、人力駆動力Hが0Nm以上かつ10Nm以下であり、かつ、クランク14の回転速度Nが0rpm以上かつ50rpm以下であり、さらに、人力駆動車10が第1走行速度状態にある場合、アシスト比率Aおよびモータ42の駆動力の最大値の少なくとも一方が第1値A1になるようにモータ42を制御する。制御部52は、人力駆動力Hが0Nm以上かつ10Nm以下であり、かつ、クランク14の回転速度Nが0rpm以上かつ50rpm以下であり、さらに、人力駆動車10が第2走行速度状態にある場合、アシスト比率Aおよびモータ42の駆動力の最大値の少なくとも一方が第2値A2になるようにモータ42を制御する。
【0041】
一例では、第1走行速度状態において、人力駆動車10は第1速度V1で走行し、第2走行速度状態において、人力駆動車10は第2速度V2で走行し、第1速度V1は、第2速度V2よりも大きい。第1速度V1は、時速25km以下であることが好ましい。第1速度V1は、時速12km以下であることがより好ましい。第1速度V1は、8km以下であってもよく、5km以下であってもよい。第1走行速度状態において、人力駆動車10は第1速度範囲DV1で走行し、第2走行速度状態において、人力駆動車10は第2速度範囲DV2で走行する。第1速度V1は、第1速度範囲DV1の全ての値を含む。第2速度V2は、第2速度範囲DV2の全ての値を含む。第1速度範囲DV1と、第2速度範囲DV2とは重複しないことが好ましい。第1速度範囲DV1の下限値は、第2速度範囲DV2の上限値より大きい。第1速度範囲DV1は上限値を有しなくてもよい。第2速度範囲DV2は、下限値が0であるか、下限値を有しないことが好ましい。第1速度範囲DV1および第2速度範囲DV2が連続し、かつ、人力駆動車10の走行速度Vが第1速度範囲DV1および第2速度範囲DV2の一方に含まれる場合、人力駆動車10は、クランク14に入力される人力駆動力Hが第1所定値HXであり、かつ、クランク14の回転速度Nが第2所定値NXである場合、第1走行速度状態および第2走行速度状態の一方で走行する。
【0042】
図3は、クランク14の回転速度Nが第2所定値NXの場合の人力駆動力Hとアシスト比率Aとの関係を示す。クランク14の回転速度Nが第2所定値NXの場合の人力駆動力Hとモータ42の駆動力の最大値との関係は、図3のアシスト比率Aをモータ42の駆動力の最大値に置き換えた関係に相当する。
【0043】
制御部52は、人力駆動力Hに応じてアシスト比率Aおよびモータ42の駆動力の最大値の少なくとも一方を変更することが好ましい。制御部52は、人力駆動力Hが所定駆動力範囲DHに含まれている場合、人力駆動力Hの増加に応じてアシスト比率Aおよびモータ42の駆動力の最大値の少なくとも一方を大きくすることが好ましい。制御部52は、人力駆動車10が第1走行速度状態または第2走行速度状態にある場合、人力駆動力Hの増加に応じてアシスト比率Aおよびモータ42の駆動力の最大値の少なくとも一方を大きくすることが好ましい。図3の実線は、クランク14の回転速度Nが第2所定値NXの場合の、人力駆動力Hと第1値A1との関係を示す。図3の二点鎖線は、クランク14の回転速度Nが第2所定値NXの場合の、人力駆動力Hと第2値A2との関係を示す。制御部52は、人力駆動力Hが所定駆動力範囲DHにある場合、人力駆動力Hが大きくなるにつれて第1値A1が大きくなるようにモータ42を制御する。制御部52は、人力駆動力Hが所定駆動力範囲DHにある場合、人力駆動力Hが大きくなるにつれて第2値A2が大きくなるようにモータ42を制御する。
【0044】
制御部52は、例えば、記憶部54に記憶される人力駆動力H、クランク14の回転速度N、および、補正係数との関係を規定した情報に応じて第1値A1および第2値A2を算出することが好ましい。人力駆動力H、クランク14の回転速度N、および、補正係数との関係を規定した情報は、例えば、マップ、関係式、および、テーブルの少なくとも1つを含む。記憶部54は、例えば、人力駆動力Hと第1値A1を算出するための第1係数との関係とを規定した情報、および、クランク14の回転速度Nと第1値A1を算出するための第2係数との関係とを規定した情報を記憶する。制御部52は、例えば、第1走行速度状態にある場合、制御モードごとに定められるアシスト比率Aまたは最大値に第1の係数および第2の係数を乗算することによって、第1値A1を算出する。記憶部54は、例えば、人力駆動力Hと第2値A2を算出するための第3係数との関係とを規定した情報、および、クランク14の回転速度Nと第1値A1を算出するための第4係数との関係とを規定した情報を記憶する。制御部52は、例えば、第2走行速度状態にある場合、制御モードごとに定められるアシスト比率Aまたは最大値に第3の係数および第4の係数を乗算することによって、第2値A2を算出する。
【0045】
図4は、人力駆動力Hが第1所定値HXの場合のクランク14の回転速度Nとアシスト比率Aとの関係を示す。人力駆動力Hが第1所定値HXの場合のクランク14の回転速度Nとモータ42の駆動力の最大値との関係は、図4のアシスト比率Aをモータ42の駆動力の最大値に置き換えた関係に相当する。
【0046】
制御部52は、クランク14の回転速度Nに応じてアシスト比率Aおよびモータ42の駆動力の最大値の少なくとも一方を変更することが好ましい。制御部52は、クランク14の回転速度Nが所定回転速度範囲DNに含まれている場合、クランク14の回転速度Nの増加に応じてアシスト比率Aおよびモータ42の駆動力の最大値の少なくとも一方を小さくすることが好ましい。制御部52は、人力駆動車10が第1走行速度状態または第2走行速度状態にある場合、クランク14の回転速度Nの増加に応じてアシスト比率Aおよびモータ42の駆動力の最大値の少なくとも一方を小さくすることが好ましい。図4の実線は、人力駆動力Hが第1所定値HXの場合の、クランク14の回転速度Nと第1値A1との関係を示す。図4の二点鎖線は、人力駆動力Hが第1所定値HXの場合の、クランク14の回転速度Nと第2値A2との関係を示す。制御部52は、クランク14の回転速度Nが所定回転速度範囲DNにある場合、クランク14の回転速度Nが大きくなるにつれて第1値A1が小さくなるようにモータ42を制御する。制御部52は、クランク14の回転速度Nが所定回転速度範囲DNにある場合、クランク14の回転速度Nが大きくなるにつれて第2値A2が小さくなるようにモータ42を制御する。
【0047】
制御部52は、人力駆動力Hが第1所定値HXであり、かつ、クランク14の回転速度Nが第2所定値NXである場合、走行速度Vが第1速度範囲DV1に含まれる場合のアシスト比率Aおよびモータ42の駆動力の最大値の少なくとも一方よりも、第2速度範囲DV2に含まれる場合のアシスト比率Aおよびモータ42の駆動力の最大値の少なくとも一方を小さくする。このため、ライダが低速でゆっくり走りたい場合に、モータ42の駆動力が大きくなることを抑制できる。
【0048】
図5を参照して、モータ42を制御する処理について説明する。制御部52は、制御部52に電力が供給されると、処理を開始して図5に示すフローチャートのステップS11に移行する。制御部52は、図5のフローチャートが終了すると、電力の供給が停止されるまでは、所定周期後にステップS11からの処理を繰り返す。
【0049】
制御部52は、ステップS11において、人力駆動力Hが第1所定値HX、かつ、クランク14の回転速度Nが第2所定値NXか否かを判定する。制御部52は、人力駆動力Hが第1所定値HXではない場合、および、クランク14の回転速度Nが第2所定値NXではない場合、処理を終了する。制御部52は、人力駆動力Hが第1所定値HX、かつ、クランク14の回転速度Nが第2所定値NXの場合、ステップS12に移行する。
【0050】
制御部52は、ステップS12において、第1走行速度状態か否かを判定する。制御部52は、第1走行速度状態の場合、ステップS13に移行する。制御部52は、ステップS13において、アシスト比率Aおよびモータ42の駆動力の少なくとも一方が第1値A1になるようにモータ42を制御し、処理を終了する。
【0051】
制御部52は、ステップS12において、第1走行速度状態ではない場合、ステップS14に移行する。第2走行速度状態における第2速度範囲DV2が、第1走行速度状態における第1速度範囲DV1と重複しない場合、制御部52は、ステップS12において第2走行速度状態の場合、ステップS14に移行する。制御部52は、ステップS14において、アシスト比率Aおよびモータ42の駆動力の少なくとも一方が第2値A2になるようにモータ42を制御し、処理を終了する。
【0052】
制御部52は、ステップS11において、否定判定した場合、人力駆動力H、クランク14の回転速度N、および、他のパラメータの少なくとも1つに応じてモータ42を制御することが好ましい。制御部52は、第1値A1および第2値A2が、制御モードごとに設定されているアシスト比率Aおよびモータ42の駆動力の最大値ではない場合、ステップS11において、否定判定した場合、選択されている制御モードに設定されているアシスト比率Aおよびモータ42の駆動力の最大値になるようにモータ42を制御することが好ましい。
【0053】
第1走行速度状態において、人力駆動車10は第1速度範囲DV1で走行し、第2走行速度状態において、人力駆動車10は第2速度範囲DV2で走行し、第1速度範囲DV1、および、第2速度範囲DV2の少なくとも一方は変更可能であることが好ましい。第1速度範囲DV1が変更可能な場合、第1速度範囲DV1の上限値および下限値の少なくとも一方が変更可能であることが好ましい。第2速度範囲DV2が変更可能である場合、第2速度範囲DV2の上限値および下限値の少なくとも一方が変更可能であることが好ましい。第1速度範囲DV1および第2速度範囲DV2が連続している場合、第1速度範囲DV1の下限値と第2速度範囲DV2の上限値とは、同時に変更されることが好ましい。
【0054】
第1速度範囲DV1、および、第2速度範囲DV2の少なくとも一方は、走行状況および走行抵抗の少なくとも一方に応じて変更されることが好ましい。走行状況は、人力駆動車10の傾き、サスペンション48の状態、および、シートポスト20の状態の少なくとも1つを含む。人力駆動車10の傾きは、人力駆動車10のピッチ角度を含むことが好ましい。走行抵抗は、人力駆動車10の走行する走行路の路面抵抗、路面の勾配抵抗、および、風の少なくとも1つを含む。
【0055】
制御装置50は、走行状況に応じて第1速度範囲DV1および第2速度範囲DV2の少なくとも一方を変更する場合、走行状況を検出する第1検出部62を含むことが好ましい。
【0056】
走行状況が人力駆動車10の傾きを含む場合、第1検出部62は、例えば、傾斜センサを含む。傾斜センサは、車体16の傾斜角度を検出する。傾斜センサは、例えば、ジャイロセンサを含む。ジャイロセンサは、好ましくは、3軸ジャイロセンサを含む。ジャイロセンサは、好ましくは、車体16のヨー角度、車体16のロール角度、および、車体16のピッチ角度を検出可能に構成される。ジャイロセンサの3軸は、好ましくは、人力駆動車10を水平面に前輪および後輪を接地させて直立させた状態における人力駆動車10の前後方向、左右方向、および、上下方向に沿うように人力駆動車10に設けられる。ジャイロセンサは、1軸ジャイロセンサ、または2軸ジャイロセンサを含んでいてもよい。第1検出部62は、加速度センサを含んでいてもよい。加速度センサは、人力駆動車10を水平面に直立させた状態における人力駆動車10の前後方向、左右方向、および、上下方向の少なくとも1つの加速度を検出する。
【0057】
制御部52は、人力駆動車10の傾きに応じて第1速度範囲DV1および第2速度範囲DV2の少なくとも一方を変更する場合、例えば、人力駆動車10のピッチ角度が上り坂に対応する所定角度以上の場合、所定角度未満の場合よりも、第1速度範囲DV1の下限値を低くし、第2速度範囲DV2の上限値を低くする。この場合、所定角度以上の上り坂において、走行速度Vが低い場合にモータ42の駆動力が上がりにくいことを抑制できる。
【0058】
走行状況がサスペンション48の状態を含む場合、第1検出部62は、例えば、サスペンション48の動作状態およびストローク長の少なくとも一方を検出する。この場合、第1検出部62は、サスペンション48に設けられてサスペンション48の状態を検出してもよく、サスペンション48を操作する操作装置に設けられて操作装置の操作状態に応じてサスペンション48の状態を検出してもよい。
【0059】
制御部52は、サスペンション48の動作状態に応じて第1速度範囲DV1および第2速度範囲DV2の少なくとも一方を変更する場合、例えば、解除状態にある場合、ロック状態にある場合よりも第1速度範囲DV1の下限値を低くし、第2速度範囲DV2の上限値を低くする。この場合、サスペンション48の解除状態において、走行速度Vが低い場合にモータ42の駆動力が上がりにくいことを抑制できる。このため、サスペンション48を解除状態にして、凹凸の大きい路面を走行する場合に障害物を乗り越えやすくなる。
【0060】
制御部52は、サスペンション48のストローク長に応じて第1速度範囲DV1および第2速度範囲DV2の少なくとも一方を変更する場合、例えば、ストローク長の変動が大きい場合、ストローク長の変動が小さい場合よりも第1速度範囲DV1の下限値を低くし、第2速度範囲DV2の上限値を低くする。この場合、サスペンション48のストローク長の変動が大きいような凹凸の大きい路面において、走行速度Vが低い場合にモータ42の駆動力が上がりにくいことを抑制できる。このため、凹凸の大きい路面を走行する場合に障害物を乗り越えやすくなる。
【0061】
走行状況がシートポスト20の状態を含む場合、第1検出部62は、例えば、シートポスト20の高さを検出する。この場合、第1検出部62は、シートポスト20に設けられてシートポスト20の状態を検出してもよく、シートポスト20を操作する操作装置に設けられて操作装置の操作状態に応じてシートポスト20の状態を検出してもよい。
【0062】
制御部52は、シートポスト20の高さに応じて第1速度範囲DV1および第2速度範囲DV2の少なくとも一方を変更する場合、例えば、シートポスト20の高さが所定の高さ以下の場合、所定の高さよりも高い場合よりも第1速度範囲DV1の下限値を低くし、第2速度範囲DV2の上限値を低くする。この場合、ライダがシートポスト20を下げた状態において、走行速度Vが低い場合にモータ42が上がりにくいことを抑制できる。このため、ライダがシートポスト20を下げて立ち漕ぎで走行する場合、モータ42の駆動力が上がりにくいことを抑制できる。
【0063】
制御装置50は、走行抵抗に応じて第1速度範囲DV1および第2速度範囲DV2の少なくとも一方を変更する場合、走行抵抗を検出する第2検出部64を含むことが好ましい。
【0064】
走行抵抗が走行路の路面抵抗を含む場合、第2検出部64は、例えば、路面状態を検出するカメラ、路面の乾燥状態を検出する湿度計、および、路面の凹凸を検出する振動センサの少なくとも1つを含む。振動センサは、第1検出部62の傾斜センサと同様に構成される。第1検出部62の傾斜センサを振動センサとして用いることができるが、振動センサは、第1検出部62の傾斜センサと各別に構成されてもよい。
【0065】
制御部52は、人力駆動車10の走行路の路面抵抗に応じて第1速度範囲DV1および第2速度範囲DV2の少なくとも一方を変更する場合、例えば、路面抵抗が所定値以上の場合、所定値未満の場合よりも、第1速度範囲DV1の下限値を低くし、第2速度範囲DV2の上限値を低くする。この場合、路面抵抗が大きい状態において、走行速度Vが低い場合にモータ42の駆動力が上がりにくいことを抑制できる。
【0066】
走行抵抗が路面の勾配抵抗を含む場合、第2検出部64は、例えば、傾斜センサを含む。第2検出部64の傾斜センサは、第1検出部62の傾斜センサと同様に構成される。第1検出部62の傾斜センサを第2検出部64の傾斜センサとして用いることができるが、第2検出部64の傾斜センサは、第1検出部62の傾斜センサと各別に構成されてもよい。
【0067】
制御部52は、人力駆動車10の路面の勾配抵抗に応じて第1速度範囲DV1および第2速度範囲DV2の少なくとも一方を変更する場合、例えば、人力駆動車10のピッチ角度が上り坂に対応する所定角度以上の場合、所定角度未満の場合よりも、第1速度範囲DV1の下限値を低くし、第2速度範囲DV2の上限値を低くする。この場合、所定角度以上の上り坂において、走行速度Vが低い場合にモータ42の駆動力が上がりにくいことを抑制できる。
【0068】
走行抵抗が風を含む場合、第2検出部64は、例えば、風速および風圧の少なくとも一方を検出する風センサを含む。風センサは、風速センサおよび風圧センサの少なくとも一方を含む。風センサは、例えば、人力駆動車10のハンドルバー38に設けられる。風センサは、人力駆動車10が前方に走行する場合の向かい風および追い風の少なくとも一方を検出可能に構成されることが好ましい。
【0069】
制御部52は、人力駆動車10の風速および風圧の少なくとも一方に応じて第1速度範囲DV1および第2速度範囲DV2の少なくとも一方を変更する場合、例えば、人力駆動車10の風速および風圧の少なくとも一方が所定値以上の場合、所定値未満の場合よりも、第1速度範囲DV1の下限値を低くし、第2速度範囲DV2の上限値を低くする。この場合、風速および風圧の少なくとも一方が大きい状態において、走行速度Vが低い場合にモータ42の駆動力が上がりにくいことを抑制できる。
【0070】
図6を参照して、速度範囲を変更する処理について説明する。制御部52は、制御部52に電力が供給されると、処理を開始して図6に示すフローチャートのステップS21に移行する。制御部52は、図6のフローチャートが終了すると、電力の供給が停止されるまでは、所定周期後にステップS21からの処理を繰り返す。
【0071】
制御部52は、ステップS21において、速度範囲の変更条件が成立したか否かを判定する。制御部52は、人力駆動車10の走行状況および走行抵抗の変化に応じて速度範囲の変更条件が成立したと判定する。制御部52は、速度範囲の変更条件が成立していない場合、処理を終了する。制御部52は、速度範囲の変更条件が成立している場合、ステップS22に移行する。
【0072】
制御部52は、ステップS22において、速度範囲を変更し、処理を終了する。具体的には、制御部52は、第1速度範囲DV1および第2速度範囲DV2の少なくとも一方を、人力駆動車10の走行状況および走行抵抗の少なくとも一方に応じて変更する。
【0073】
(変形例)
実施形態に関する説明は、本発明に従う人力駆動車用制御装置が取り得る形態の例示であり、その形態を制限することを意図していない。本発明に従う人力駆動車用制御装置は、例えば以下に示される実施形態の変形例、および、相互に矛盾しない少なくとも2つの変形例が組み合わせられた形態を取り得る。以下の変形例において、実施形態の形態と共通する部分については、実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0074】
・操作装置で第1速度範囲DV1および第2速度範囲DV2の少なくとも一方を変更可能に構成してもよい。操作装置は、人力駆動車10に設けられてもよく、外部装置であってもよい。
【0075】
・第1走行速度状態と、第2走行速度状態とは、人力駆動力Hおよびクランク14の回転速度Nの少なくとも一方が異なっていてもよい。
【0076】
図5の処理において、ステップS11の処理を省略することもできる。この場合、人力駆動力Hおよびクランク14の回転速度Nに関わらず、制御部52は、第1走行速度状態にある場合、アシスト比率Aおよび最大値の少なくとも一方が第1値A1になるようにモータ42を制御し、第2走行速度状態にある場合、アシスト比率Aおよび最大値の少なくとも一方が第2値A2になるようにモータ42を制御する。この場合、例えば、人力駆動力Hおよびクランク14の回転速度Nと第1値A1を算出するための補正係数との関係を規定した情報と、人力駆動力Hおよびクランク14の回転速度Nと第2値A2を算出するための補正係数との関係を規定した情報と、を異ならせる。これによって、人力駆動力Hが第1所定値HXであり、かつ、クランク14の回転速度Nが第2所定値NXであり、さらに、人力駆動車10が第1走行速度状態にある場合、と、人力駆動力Hが第1所定値HXであり、かつ、クランク14の回転速度Nが第2所定値NXであり、さらに、人力駆動車10が第2走行速度状態にある場合、と、におけるアシスト比率Aと最大値の少なくとも一方を異ならせることができる。
【符号の説明】
【0077】
10…人力駆動車、14…クランク、42…モータ、50…人力駆動車用制御装置、52…制御部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6