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特許7244277光源用蛍光体材料および同材料を流動化させるための方法
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  • 特許-光源用蛍光体材料および同材料を流動化させるための方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】光源用蛍光体材料および同材料を流動化させるための方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20230314BHJP
   C09K 11/61 20060101ALI20230314BHJP
   C01D 3/02 20060101ALI20230314BHJP
   C08K 3/01 20180101ALI20230314BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20230314BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20230314BHJP
   H01L 33/50 20100101ALI20230314BHJP
   C08J 3/22 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
G02B5/20
C09K11/61
C01D3/02
C08K3/01
C08K3/34
C08L101/00
H01L33/50
C08J3/22 CER
C08J3/22 CEZ
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018557420
(86)(22)【出願日】2017-04-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-09-12
(86)【国際出願番号】 US2017029534
(87)【国際公開番号】W WO2017192322
(87)【国際公開日】2017-11-09
【審査請求日】2020-05-14
(31)【優先権主張番号】62/330,401
(32)【優先日】2016-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/374,087
(32)【優先日】2016-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】507114761
【氏名又は名称】カレント・ライティング・ソルーションズ,エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【弁理士】
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】ビアーズ,ウィリアム・ワインダー
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ,ファンミン
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン,クラーク・デイヴィッド
【審査官】小久保 州洋
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/141851(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/102876(WO,A1)
【文献】特開2013-211250(JP,A)
【文献】特表2015-515118(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
C09K 11/61
C01D 3/02
C08K 3/01
C08K 3/34
C08L 101/00
H01L 33/50
C08J 3/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘキサフルオロケイ酸カリウムベースの粉末(200)と、
金属酸化物の流動化材料(202)であって、金属酸化物の流動化材料の総重量が、ヘ キサフルオロケイ酸カリウムベースの粉末の重量の0.1%以下のものと、
樹脂性材料(300)と
から形成される蛍光体本体であって、
前記蛍光体本体が、前記ヘキサフルオロケイ酸カリウムベースの粉末(200)および前記樹脂性材料(300)を含むが前記金属酸化物の流動化材料(202)は含まない蛍光体ブレンド物から形成された別の蛍光体本体に比べて、高いゆるみ密度および粉末の測定エラー範囲内で一定または実質的に一定の量子効率を有する、蛍光体本体。
【請求項6】
前記樹脂性材料(300)が、シリコーンを含む、請求項記載の蛍光体本体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源用蛍光体材料および同材料を流動化させるための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一部の光源は、その光源に配設された、またはその光源の近くに配設された蛍光体本体を含んでいる。これらの蛍光体本体、または蛍光体は、光源によって生成された光の少なくとも一部分を受ける。受けた光によって、蛍光体が光を発する。例えば一部の発光ダイオード(LED)は、LEDによって生成された光を受けて光を発する赤色発光蛍光体を含んでいる。
【0003】
蛍光体を作り出すために、ヘキサフルオロケイ酸カリウム(PFS)ベースの材料を、シリコーンとブレンドすることができる。次いで、このブレンドされた混合物をLED上に置き、硬化させて蛍光体が形成される。PFSベースの材料をシリコーンとブレンドする際に生じ得る1つの問題は、PFSベースの材料の凝集が大きい塊になることである。例えばPFSベースの材料は粉末状であることがあり、これがシリコーンと混合される。PFSベースの粉末をシリコーンに混合している間に、粉末が凝集して大きい塊になることがある。PFSベースの粉末のこのような凝集は、静電力によって生じることがある。
【0004】
これらの塊によって、蛍光体に、および蛍光体の形成に問題が生じる恐れがある。PFSベースの粉末の塊は、大きい塊の外側表面積だけが光を受けることができ、塊の内部は光を受けることができないので、光源からの光を受けるPFS材料の量を減らすことがある。その結果、PFS材料を含む蛍光体から発する光を生成するためにPFS材料が受ける光の量は、(塊のない、またはPFS材料の凝集が少ない蛍光体に比べて)低減する。蛍光体を形成している間に、PFSとシリコーンのブレンド物は、比較的小さい開口部を有するノズルまたは他のデバイスを通して供給されてもよい。ブレンド物内のPFS材料の塊または他の凝集は、ノズルを通ってLED上に出るブレンド物の流れを詰まらせ、または他の態様で妨害する恐れがあり、それにより蛍光体の形成が妨げられる。それに加えて、PFSベースの粉末の大きい塊は、(塊のない、または塊の小さい蛍光体に比べて)蛍光体の熱を放散する性能を低下させ、蛍光体の有用寿命期間を短くする恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許出願公開第2011/0001151号明細書
【発明の概要】
【0006】
一実施形態では、方法は、ヘキサフルオロケイ酸カリウム(PFS)ベースの粉末を得るステップと、流動化材料を得るステップと、PFSベースの混合物を形成するために、PFSベースの粉末を流動化材料と混合するステップとを含む。PFSベースの混合物は、光源上に置かれて光源上で蛍光体を形成するように構成された流動性蛍光体ブレンド物を形成するために、樹脂性材料と混合されるように構成される。
【0007】
別の実施形態では、方法は、ヘキサフルオロケイ酸カリウム(PFS)ベースの粉末を得るステップと、金属酸化物の流動化材料を得るステップと、PFSベースの混合物を形成するために、PFSベースの粉末を金属酸化物の流動化材料と混合するステップとを含む。PFSベースの混合物は、光源の蛍光体を形成するように構成された蛍光体ブレンド物を形成するために、樹脂性材料と混合されるように構成される。
【0008】
一実施形態では、ヘキサフルオロケイ酸カリウム(PFS)ベースの粉末、金属酸化物の流動化材料、および樹脂性材料から形成された蛍光体本体が提供される。
【0009】
本明細書に記述される主題は、添付図面を参照しながら非限定的な実施形態の以下の記述を読むことによって、よりよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】蛍光体材料を流動化させるための方法、および任意選択で、流動化された蛍光体材料を使用して蛍光体を作り出すための方法の一実施形態のフローチャートである。
図2】一実施形態による、流動化されたPFSベースの混合物を形成するために、PFSベースの材料を流動化材料と混合するステップを示す図である。
図3】一実施形態による、図2に示された流動化されたPFSベースの混合物を、樹脂性材料と混合するステップを示す図である。
図4】一実施形態による、図3に示された蛍光体ブレンド物を、光源上に置くステップを示す図である。
図5図2に示されているPFSベースの混合物のゆるみ密度、およびPFSベースの混合物の内部量子収率または量子効率(QY)を、PFSベースの混合物における流動化材料の異なる重量パーセンテージについて示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、蛍光体材料を流動化させるための方法100、および任意選択で、流動化された蛍光体材料を使用して蛍光体を作り出すための方法の一実施形態のフローチャートを示している。102において、PFSベースの粉末が得られる。PFSベースの粉末は、四価マンガン(Mn4+)をドープされたヘキサフルオロケイ酸カリウムとすることができる。あるいは、別のタイプの蛍光体材料が得られてもよい。PFSベースの材料のより大きい固体本体を崩壊させることによって、例えばより大きい固体本体を粉砕または破砕することなどによって、PFSベースの材料が得られるとき、PFSベースの材料は、粉末の形状であってもよい。一実施形態では、PFSベースの材料が、10分の1ミリメートル以下である最大外側非円形寸法もしくは直径の平均値または中間値を有するとき、PFSベースの材料は、粉末の形状であってもよい。
【0012】
104において、流動化材料が得られる。流動化材料は、一実施形態において酸化金属粉末を含む。例えば流動化材料は、酸化アルミニウムを含んでもよい。あるいは流動化材料は、別の金属酸化物粉末、またはシリカもしくはフュームドシリカなどの材料を含んでもよい。流動化材料の粒子が、1ミクロン未満である最大外側非円形寸法もしくは直径の平均値または中間値など、非常に小さいサイズを有するとき、流動化材料は、粉末の形状で提供されてもよい。
【0013】
106において、PFSベースの混合物を形成するために、流動化材料がPFSベースの粉末と混合される。図2は、一実施形態による、流動化されたPFSベースの混合物204を形成するために、PFSベースの材料200を流動化材料202と混合するステップを示している。PFSベースの材料200に混合される流動化材料202の量は、比較的少量であってもよい。例えば、PFSベースの材料200と混合される流動化材料202の総重量は、PFSベースの材料200の重量の0.1%以下であってもよい。あるいは、PFSベースの材料200と混合される流動化材料202の総重量は、PFSベースの材料200の重量の0.08%以下、0.06%以下、0.05%以下、0.04%以下、0.03%以下、または0.02%以下であってもよい。
【0014】
方法100は、任意選択で、流動化されたPFSベースの混合物204を、樹脂性材料と混合するステップを108において含む。図3は、一実施形態による、図2に示された流動化されたPFSベースの混合物204を、樹脂性材料300と混合するステップを示している。流動化された混合物204および樹脂性材料300は組み合わされて、流動性蛍光体ブレンド物302が形成される。ブレンド物302は、ブレンド物302が硬化して固体本体になるまでは少なくとも部分的に流動体であることによって、流動することができる。一実施形態では、樹脂性材料300は、ポリジメチルシロキサンなどのシリコーンである。あるいは、別の硬化可能な樹脂性材料が使用されてもよい。
【0015】
方法100は、任意選択で、蛍光体ブレンド物を光源上に置くステップを110において含む。図4は、一実施形態による、蛍光体ブレンド物302を光源400上に置くステップを示している。蛍光体ブレンド物302は、リザーバ402からノズル404を通って光源400上にブレンド物302を注入することによって、半導体ベースの光源(例えばLED)などの光源400上に注入されてもよい。任意選択で、ブレンド物302は、ノズル404から噴射されてもよく、または他の態様で供給されてもよい。図4に示されるように、ブレンド物302は、少なくとも部分的に光源400を封入してもよい。次いでブレンド物302は硬化されて、光源400上で、またはそれを覆って固まってもよい。硬化されたブレンド物302は、光源400によって生成された光を受けたことに応答して光を発する光源400上の蛍光体または蛍光体本体を形成する。
【0016】
ノズル404は、ブレンド物302がそこを通ってノズル404から出る比較的小さい出口またはオリフィスを有してもよい。出口は、70ミクロン以下の直径を有してもよい。PFSベースの材料200に流動化材料202を加えなければ、ブレンド物302内のPFSベースの材料200の粒子がノズル404の出口を詰まらせ、ノズル404からさらなるブレンド物302が供給されなくなる恐れがある。流動化材料202をPFSベースの材料200に加えることによって、この詰まりの発生が防止される。
【0017】
比較的少量の流動化材料202であっても、流動化材料202をPFSベースの材料200に加えることによって、流動化されたPFSベースの混合物204のゆるみ密度またはかさ密度を増大させることができる。図5は、PFSベースの混合物204におけるPFSベースの材料200のゆるみ密度500、およびPFSベースの混合物204の内部量子収率または量子効率(QY)502を、混合物204における流動化材料202の異なる重量パーセンテージについて示している。内部量子収率または効率は、PFSベースの混合物の試料によって吸収される光子の数に対する、その試料から出る光子の数の比を表すことができる。内部量子収率または効率は、Edinburgh Instrumentsにより生産された積分球を有するFS5分光蛍光計によって測定することができる。図5に示されている例では、PFSベースの材料200は、四価マンガンをドープされたヘキサフルオロケイ酸カリウムであり、流動化材料202は、酸化アルミニウムである。
【0018】
ゆるみ密度500および量子収率502は、混合物204における酸化アルミニウムの異なる重量パーセンテージを表す水平方向軸504に沿って、ならびに、異なるゆるみ密度を表す第1の垂直方向軸506および異なる内部量子収率または効率を表す第2の垂直方向軸508に沿って、示されている。
【0019】
図5に示されているように、比較的少量(例えば0.005%の重量パーセンテージ)であっても、流動化材料202をPFSベースの材料200に加えることによって、PFSベースの材料200のゆるみ密度500が増大している。PFSベースの混合物204に加えられる流動化材料202の量が(例えば0.03%から0.07%の重量パーセンテージ量へ)増えると、ゆるみ密度500は一定または実質的に一定になり、PFSベースの材料200に流動化材料202が加えられていないゆるみ密度500よりも約20%高くなっている。この範囲にわたるPFSベースの混合物204の量子効率502は、粉末の測定エラー範囲内で一定または実質的に一定である。
【0020】
別段に定義されないかぎり、本明細書において使用される技術的または科学的な用語は、この開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有する。「第1の」、「第2の」などの用語は、本明細書において使用されるとき、任意の順番、量、または重要性を示すものではなく、むしろ1つの要素を別の要素から区別するために使用される。また、「a」および「an」という用語は、数の限定を示すものではなく、むしろ参照された項目のうちの少なくとも1つが存在することを示すものである。「含む(including)」、「備える(comprising)」、または「有する(having)」、およびそれらの変形形態の本明細書における使用は、それ以降に列挙された項目およびそれらの等価物とともに、追加的な項目も包含されるとが意図される。「連結された(connected)」および「結合された(coupled)」という用語は、物理的または機械的な連結もしくは結合に制限されず、直接的であれ間接的であれ電気的または光学的な連結もしくは結合を含むことができる。
【0021】
さらに当業者であれば、異なる実施形態からの様々な特徴が交換可能であることを認識するであろう。記述された様々な特徴、およびそれぞれの特徴に対する他の知られている等価物は、本開示の原理に従って追加的なシステムおよび技法を構築するために、当業者によって混合および適合されてもよい。
【0022】
特許請求される装置の代替的な実施形態を記述する際に、わかりやすくするために特定の用語が使用される。しかし本発明は、そのように選択された特定の用語に限定されることは意図されていない。したがって、それぞれの特定の要素は、同様の機能を実現するために同様のやり方で動作するすべての技術的等価物を含むことが、理解されるべきである。
【0023】
本明細書において記述および特許請求される様々な非限定的な実施形態は、別々に、組み合わされて、または選択的に組み合わされて、特定の用途のために使用されてもよい。
【0024】
さらに、上述した非限定的な実施形態の様々な特徴の一部は、他の記述された特徴をそれに対応して使用することなく、有利に使用されてもよい。したがって上の記述は、本発明の原理、教示、および例示的な実施形態の単なる例証であり、それらを限定するものではないと考えられるべきである。
【0025】
以下の請求項の限定は、ミーンズプラスファンクション形式で書かれたものではなく、したがってそのような請求項の限定が、明示的に「のための手段」という語句を使用し、その後にさらに構造を述べずに機能を述べている場合を除き、米国特許法第112条(f)に基づいて解釈されることは意図されていない。
【符号の説明】
【0026】
200 PFSベースの材料
202 流動化材料
204 PFSベースの混合物
300 樹脂性材料
302 蛍光体ブレンド物
400 光源
402 リザーバ
404 ノズル
500 ゆるみ密度
502 量子効率
504 水平方向軸
506 第1の垂直方向軸
508 第2の垂直方向軸
図1
図2
図3
図4
図5