(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】基地局選択装置と基地局選択方法
(51)【国際特許分類】
H04W 36/32 20090101AFI20230314BHJP
H04W 16/18 20090101ALI20230314BHJP
H04W 36/30 20090101ALI20230314BHJP
H04W 48/16 20090101ALI20230314BHJP
【FI】
H04W36/32
H04W16/18 110
H04W36/30
H04W48/16 134
(21)【出願番号】P 2019027066
(22)【出願日】2019-02-19
【審査請求日】2021-12-16
(73)【特許権者】
【識別番号】500302552
【氏名又は名称】株式会社IHIエアロスペース
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100097515
【氏名又は名称】堀田 実
(74)【代理人】
【識別番号】100136700
【氏名又は名称】野村 俊博
(72)【発明者】
【氏名】生川 俊則
【審査官】深津 始
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-148297(JP,A)
【文献】特開2013-192245(JP,A)
【文献】特表2011-509031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24 -H04B 7/26
H04W 4/00 -H04W 99/00
3GPP TSG RAN WG1-4
SA WG1-4
CT WG1、4
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動局が通信する基地局を複数の基地局から選択する基地局選択装置であって、
前記基地局毎に、前記移動局と当該基地局との通信品質を計測する品質計測部と、
前記通信品質に影響を与える1つ又は複数のパラメータの値を計測するパラメータ計測装置と、
前記品質計測部が同時に計測した各前記基地局の前記通信品質のうち、最大となった前記通信品質の前記基地局を選択すべき基地局として、当該選択すべき基地局を示す情報と、当該選択すべき基地局の当該通信品質の計測時に前記パラメータ計測装置が計測した前記1つ又は複数のパラメータの値とに基づいて、前記1つ又は複数のパラメータの値と選択すべき基地局との関係を機械学習する機械学習装置と、
機械学習された前記関係と、基地局選択時に計測された前記1つ又は複数のパラメータの値とに基づいて、前記移動局が通信する前記基地局を選択する選択部と、を備え
、
前記通信品質は、前記移動局の移動局アンテナが前記基地局の基地局アンテナから受信した電波の強度であり、または、前記基地局から送信されたパケット数に対する、前記移動局アンテナが受信したパケット数の比率であり、
前記1つ又は複数のパラメータは、
前記基地局アンテナと前記移動局アンテナとを結ぶ三次元的な線分の長さを示す第1のパラメータと、
前記基地局アンテナと前記移動局アンテナと電波障害物との幾何学的関係を表わす第2のパラメータと、
前記移動局アンテナから見た前記基地局アンテナの向きを表わす第3のパラメータと、
前記移動局アンテナの位置を表わす第4のパラメータとのうち、
いずれか1つ又は複数を含む、基地局選択装置。
【請求項2】
前記第2のパラメータとして、
前記基地局毎に計測され、当該基地局の前記基地局アンテナと前記移動局アンテナとの、
前記電波障害物を回避した最短距離を示すパラメータ、および、
前記基地局毎に計測され、当該基地局の前記基地局アンテナと前記移動局アンテナとの、
前記電波障害物を回避した最短経路上の各点から、当該基地局アンテナと前記移動局アンテナとを結ぶ線分へ降ろした垂線の長さのうち、最大となる長さを示すパラメータ
の一方又は両方が用いられる、請求項
1に記載の基地局選択装置。
【請求項3】
前記移動局アンテナは、移動装置に設けられ、
前記第3のパラメータの値に応じて、前記移動局アンテナと前記基地局アンテナを結ぶ線分上に前記移動装置上の積載物又は構造物が位置するようになる、請求項
1又は2に記載の基地局選択装置。
【請求項4】
前記1つ又は複数のパラメータは、各前記基地局アンテナに関する、前記移動局アンテナの速度を示す第5のパラメータを含み、
各前記基地局アンテナに関する前記速度は、前記移動局アンテナが当該基地局アンテナに近づいている場合には、正の値であり、前記移動局アンテナが当該基地局アンテナから遠ざかっている場合には、負の値である、請求項
1~3のいずれか一項に記載の基地局選択装置。
【請求項5】
前記移動局は、コンテナ置場へコンテナを搬送し又はコンテナ置場のコンテナを別の位置へ搬送する移動装置に設けられ、
前記コンテナ置場の状態は、前記コンテナ置場の各領域に積まれているコンテナの数に応じて、とり得る複数のコンテナ載置状態のいずれかに変化し、
前記機械学習装置は、各前記コンテナ載置状態に対して、前記1つ又は複数のパラメータの値と選択すべき基地局との前記関係を機械学習し、
前記選択部は、最新の前記コンテナ載置状態を表わす情報を受け、当該最新のコンテナ載置状態に対する前記関係と、計測された前記1つ又は複数のパラメータの値とに基づいて、前記移動局が通信する前記基地局を選択する、請求項1~
4のいずれか一項に記載の基地局選択装置。
【請求項6】
移動局が通信する基地局を複数の基地局から選択する基地局選択方法であって、
(A)前記基地局毎に、前記移動局と当該基地局との通信品質を計測し、
(B)
前記通信品質に影響を与える1つ又は複数のパラメータの値を計測し、
(C)
前記(A)で同時に計測した各前記基地局の前記通信品質のうち、最大となった前記通信品質の前記基地局を選択すべき基地局として、当該選択すべき基地局を示す情報と、当該選択すべき基地局の当該通信品質の計測時に前記(B)で計測した前記1つ又は複数のパラメータの値とに基づいて、前記1つ又は複数のパラメータの値と選択すべき基地局との関係を機械学習し、
(D)機械学習された前記関係と、基地局選択時に計測された前記1つ又は複数のパラメータの値とに基づいて、前記移動局が通信する前記基地局を選択
し、
前記通信品質は、前記移動局の移動局アンテナが前記基地局の基地局アンテナから受信した電波の強度であり、または、前記基地局から送信されたパケット数に対する、前記移動局アンテナが受信したパケット数の比率であり、
前記1つ又は複数のパラメータは、
前記基地局アンテナと前記移動局アンテナとを結ぶ三次元的な線分の長さを示す第1のパラメータと、
前記基地局アンテナと前記移動局アンテナと電波障害物との幾何学的関係を表わす第2のパラメータと、
前記移動局アンテナから見た前記基地局アンテナの向きを表わす第3のパラメータと、
第4のパラメータは、前記移動局アンテナの位置を表わすパラメータとのうち、
いずれか1つ又は複数を含む、基地局選択方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動局と通信する基地局を複数の基地局から選択する基地局選択装置と基地局選択方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動局は、移動装置(例えば車両)に設けられる。移動局は、移動装置の外部における基地局と無線通信を行う。基地局は複数設けられ、複数の基地局にそれぞれ備えられた複数の基地局アンテナは、間隔をおいて配置されている。移動局は、これらの基地局のうちのいずれかと通信する。
【0003】
移動局と基地局との通信品質に基づいて、移動局が通信する基地局を切り換える技術が開発されている(例えば特許文献1)。例えば、基地局と移動局との通信品質を計測し、計測した通信品質の値が閾値以下になったら、移動局が通信する基地局は、他の基地局に切り替えられる。なお、通信品質は、例えば、移動局のアンテナ(以下で移動局アンテナという)が基地局のアンテナ(以下で基地局アンテナという)から受信する電波の強度である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように閾値に基づいて基地局を切り替える方法は、一見、合理的で有効であるように見える。しかし、この方法において、実際には、基地局がスムーズに切り替わらない場合がある。移動局アンテナと基地局アンテナとの通信環境が刻々と変化するからである。例えば、基地局アンテナからの電波が、電波障害物などで反射することにより、複数の電波として移動局アンテナに異なる時刻で到達し、その結果、これらの電波が互いに干渉し合うことで、受信電波の強度が変動する。このような電波の干渉状態は刻々と変化するので、通信品質が閾値以下であるかどうかの判断だけでは、スムーズにアンテナが切り替わらない。実例では、移動局アンテナが、ある基地局アンテナと通信している状態で、別の基地局アンテナに近づいたが、当該別の基地局アンテナへスムーズに切り換わらず、通信途絶が生じ、その後、当該別の基地局アンテナに切り替わった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、移動局が通信する基地局を、移動局と基地局との通信環境の変化を考慮して選択できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述の目的を達成するため、本発明による基地局選択装置は、移動局が通信する基地局を複数の基地局から選択する装置であって、
前記基地局毎に、前記移動局と当該基地局との通信品質を計測する品質計測部と、
前記移動局と前記基地局との通信環境の変化に応じて値が変動する1つ又は複数のパラメータの値を計測するパラメータ計測装置と、
前記品質計測部と前記パラメータ計測装置による計測結果に基づいて、前記1つ又は複数のパラメータの値と選択すべき基地局との関係を機械学習する機械学習装置と、
機械学習された前記関係と、基地局選択時に計測された前記1つ又は複数のパラメータの値とに基づいて、前記移動局が通信する前記基地局を選択する選択部と、を備える。
【0008】
また、上述の目的を達成するため、本発明による基地局選択方法は、移動局が通信する基地局を複数の基地局から選択する方法であって、
(A)前記基地局毎に、前記移動局と当該基地局との通信品質を計測し、
(B)前記移動局と前記基地局との通信環境の変化に応じて値が変動する1つ又は複数のパラメータの値を計測し、
(C)前記(A)と前記(B)での計測結果に基づいて、前記1つ又は複数のパラメータの値と選択すべき基地局との関係を機械学習し、
(D)機械学習された前記関係と、基地局選択時に計測された前記1つ又は複数のパラメータの値とに基づいて、前記移動局が通信する前記基地局を選択する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、通信環境の変化を考慮した基地局の選択が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態による基地局選択装置が適用された通信システムの一例を示す概略平面図である。
【
図2】本発明の実施形態による基地局選択装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】パラメータを説明するための別の平面図である。
【
図5】機械学習に用いられる訓練データを表わす二次元の座標系を示す。
【
図6】本発明の実施形態による基地局選択方法を示すフローチャートである。
【
図7】コンテナターミナルの概略を示す平面図である。
【
図8】移動装置の一例である自動搬送車両の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0012】
(通信システムの構成)
図1は、本発明の実施形態による基地局選択装置10が適用された通信システム100の一例を示す概略平面図である。通信システム100は、移動局1と、指令装置3と、複数の基地局5,7を備える。
【0013】
移動局1は、移動装置20に設けられ、基地局5,7を介して指令装置3からの指令信号を受信する。移動局1は、移動局アンテナ1aと信号入力部1bとを備える。移動局アンテナ1aは、基地局5又は7から電波として送信された指令信号を受信する。信号入力部1bは、移動局アンテナ1aが受信した指令信号を、移動装置20に設けられた制御部9へ入力する。制御部9は、入力された当該指令信号に基づいて、移動装置20が所定のエリアA内を移動して作業を行うように移動装置20を制御する。移動装置20は、車両(例えば無人車両)であってもよいし、ロボットであってもよい。
【0014】
移動局1は、移動装置20に関する状態を基地局5,7へ送信する。基地局5,7は、受信した当該状態を指令装置3へ送信する。移動装置20に関する状態は、例えば、移動装置20に設けた適宜のセンサにより検出され、移動装置20の位置、及び、移動装置が行っている作業の進行状態の少なくともいずれかを含む。
【0015】
指令信号に基づいて移動装置20が行う作業は、対象物を搬送元から搬送先へ搬送する作業であってよい。第1例では、移動装置20が搬送元に位置する状態で、対象物を把持した把持装置(例えば後述のクレーン23)から当該対象物が移動装置20(例えば移動装置20上の台)に置かれ、移動装置20が搬送先へ移動し、搬送先において、移動装置20に置かれた対象物が把持装置(例えば後述のクレーン25)に把持されて当該把持装置に引き渡される。第2例では、移動装置20が搬送元に位置する状態で、移動装置20に設けられた把持装置が、搬送元の対象物を把持して引き取り、移動装置20が搬送先へ移動し、搬送先において、当該把持装置が把持している対象物を解放して搬送先へ引き渡す。
【0016】
指令装置3は、上述の指令信号を生成する。例えば、指令装置3は、移動局1からの移動装置20に関する状態(例えば上記作業の進行状態)と、予め自身に記憶されている作業計画とに基づいて、指令信号を生成する。指令装置3は、生成した指令信号を複数の基地局5,7へ送信する。指令装置3は、移動装置20の外部であって、基地局5,7から離れた位置に配置される。指令装置3からの当該指令信号は複数の基地局5,7から電波として送信される。移動局アンテナ1aは、複数の基地局5,7のうち、後述するように基地局選択装置10により選択された基地局5又は7から送信された指令信号を受信する。この指令信号は、移動装置20が移動すべき位置を示す指令位置情報を含んでよい。この場合、移動局1が指令信号を受けたら、制御部9の制御により、移動装置20は、当該指令信号に含まれる指令位置情報が示す位置へ移動する。上述の第1例と第2例のいずれに場合においても、指令信号は指令位置情報を含んでよく、当該指令位置情報は、上述の搬送元又は搬送先の位置を示す。この場合、第2例では、指令信号は指令位置情報と動作指令を含み、制御部9の制御により、移動装置20は、当該指令位置情報が示す搬送元又は搬送先の位置へ移動し、当該動作指令に従って、移動装置20の上記把持装置が、搬送元又は搬送先で、対象物を把持又は解放する動作を行ってよい。
【0017】
各基地局5,7は、指令装置3からの指令信号を受信できる位置に設けられる。各基地局5,7は、指令装置3からの指令信号を受信する。各基地局5,7は、基地局アンテナ5a,7aと送信回路5b,7bとを備える。各基地局5,7において、送信回路5b,7bは、受信された指令信号を基地局アンテナ5a,7aが電波で送信するように、基地局アンテナ5a,7aに電力を供給する。なお、基地局の数は、2つ以上であればよい。
【0018】
複数の基地局5,7がそれぞれ有する複数の基地局アンテナ5a,7aは、所定のエリアA内の移動局アンテナ1aと通信を行えるように互いに間隔をおいて配置されている。各基地局5,7は、当該基地局5,7の通信可能領域内に位置する移動局アンテナ1aと通信可能である。各基地局5,7の通信可能領域は、エリアA内の電波障害物2や他の要因に影響される。各基地局アンテナ5a,7aの通信可能領域は、互いに部分的に重複していてよい。なお、本願において、電波障害物は、電波の進行方向を変え(例えば電波を反射し)又は電波を吸収するものである。
【0019】
各基地局5,7には、通信用の周波数が設定されており、この周波数(以下で設定周波数という)は、基地局5,7毎に異なっていてよい。この場合、複数の基地局5,7は、それぞれ互いに異なる設定周波数の電波で上述の指令信号を、その基地局アンテナ5a,7aから送信する。移動局1において、移動局アンテナ1aは、複数の基地局アンテナ5a,7aからそれぞれ送信された電波を受信し、信号入力部1bは、移動局アンテナ1aが受信した複数の電波のうち、後述の基地局選択装置10により選択された基地局5又は7の設定周波数と同じ周波数の電波の指令信号を抽出し、抽出した指令信号を制御部9へ出力する。
【0020】
(基地局選択装置の構成)
図2は、本発明の実施形態による基地局選択装置10の構成を示すブロック図である。基地局選択装置10は、移動局1が通信する基地局を複数の基地局5,7から選択する。基地局選択装置10は、品質計測部11と、パラメータ計測装置13と、機械学習装置15と、選択部17を備える。
【0021】
品質計測部11は、基地局5,7毎に、移動局アンテナ1aと当該基地局との通信品質を計測する。この通信品質は、一例では、移動局アンテナ1aが基地局5,7(すなわち基地局アンテナ5a,7a)から受信した電波の強度であるが、これに限定されない。例えば、通信品質は、確達率(すなわち、対象とする基地局から送信されたパケット数に対する、移動局アンテナ1aが受信したパケット数の比率)であってもよい。この場合、基地局から送信されたパケット数は、既知であり、品質計測部11に記憶されていてよい。品質計測部11は、複数の基地局5,7からそれぞれ送信され移動局アンテナ1aにより受信された複数の電波の強度を互いに区別して計測する。上述のように基地局5,7毎に設定周波数が異なっている場合には、品質計測部11は、各基地局5,7の設定周波数に基づいて、複数の基地局アンテナ5a,7aからそれぞれ送信され移動局アンテナ1aにより受信された複数の電波の強度を互いに区別して計測する。このような電波強度の計測が繰り返し可能になるように、各基地局5,7は、例えば同じタイミングで当該基地局5,7の設定周波数の電波を基地局アンテナ5a,7aから送信することを繰り返してよい。
【0022】
パラメータ計測装置13は、移動局1と基地局5,7との通信環境の変化に応じて値が変動し通信品質に影響を与える1つ又は複数のパラメータの値を計測する。当該1つ又は複数のパラメータを、以下において、単に計測パラメータという。計測パラメータは、以下で述べる第1~第4のパラメータのうち、少なくともいずれか1つ又は複数(すなわち、1つ、2つ、3つ又は全て)を含む。
【0023】
第1のパラメータは、基地局アンテナ5a,7aと移動局アンテナ1aとの幾何学的関係を表わすパラメータである。
第2のパラメータは、基地局アンテナ5a,7aと移動局アンテナ1aと電波障害物2との幾何学的関係を表わすパラメータである。
第3のパラメータは、移動局アンテナ1aから見た基地局アンテナ5a,7aの向きを表わすパラメータである。
第4のパラメータは、移動局アンテナ1aの位置を表わすパラメータである。
【0024】
計測パラメータは、第1~第4のパラメータの少なくともいずれか(すなわち、1つ、2つ、3つ又は全て)を含む。すなわち、計測パラメータは、第1~第4のパラメータから選択される1つ、2つ、3つ又は全ての可能な選択肢のうちいずれであってもよい。なお、計測パラメータは、第1~第3のパラメータのうち、少なくともいずれか1つ又は複数(例えば全て)を含み、第4のパラメータを含まなくてもよい。
【0025】
図3と
図4は、パラメータを説明するための図であり、
図1に相当する平面図である。以下、第1~第4のパラメータの具体例を説明する。
【0026】
<第1のパラメータ>
第1のパラメータは、基地局アンテナ5a,7aと移動局アンテナ1aとを結ぶ三次元的な線分の長さを示すパラメータD
nであってよい。第1のパラメータD
nは、基地局5,7毎にパラメータ計測装置13により計測される。ここで、D
nの添え字nは、基地局5,7の識別番号である。
図3において、例えば、一方の基地局5についての第1のパラメータD
1は、基地局アンテナ5aと移動局アンテナ1aとを結ぶ線分の長さであり、他方の基地局7についての第1のパラメータD
2は、基地局アンテナ7aと移動局アンテナ1aとを結ぶ線分の長さである。
【0027】
第1のパラメータDnを計測するために、パラメータ計測装置13は、移動局アンテナ1aの位置を計測する位置計測器13aと、各基地局アンテナ5a,7aの既知の位置(三次元位置)を記憶したアンテナ記憶部13bと、演算部13cを有する。
【0028】
位置計測器13aは、GNSS(Global Navigation Satellite System)を利用したものであってよい。すなわち、位置計測器13aは、複数の人工衛星から測位信号を受信し、各測位信号に含まれる当該信号の送信時刻と当該人工衛星の位置情報、および各測位信号の受信時刻に基づいて、必要に応じて、更に、移動装置20における位置計測器13aと移動局アンテナ1aとの既知の位置関係に基づいて、移動局アンテナ1aの位置を算出する。代わりに、位置計測器13aは、移動装置20の移動速度(速さと移動方向を表わすベクトル)を計測し、計測した速度と移動装置20の既知の初期位置とに基づいて、移動局アンテナ1aの位置を算出してもよい。或いは、測位信号を用いる方法と移動装置20の移動速度を用いる方法の両方を使用して、位置計測器13aは、移動局アンテナ1aの位置を算出してもよい。演算部13cは、位置計測器13aが計測した移動局アンテナ1aの位置と、アンテナ記憶部13bに記憶された各基地局アンテナ5a,7aの位置とに基づいて、基地局5,7毎に第1のパラメータDnを算出する。
【0029】
<第2のパラメータ>
第2のパラメータは、パラメータLnとパラメータHnの一方又は両方を含んでよい。パラメータLnは、基地局アンテナ5a,7aから移動局アンテナ1aへ至る三次元的な経路のうち、電波障害物2を回避した最短経路の長さを示す。
【0030】
ここで、電波障害物2は、移動装置20の外部に存在する電波障害物であってよい。また、パラメータL
nは、基地局5,7毎に計測される。ここで、L
nの添え字nは、基地局5,7の識別番号である。
図3において、一方の基地局5についてのパラメータL
1は、基地局アンテナ5aと電波障害物2の角Paを結ぶ三次元的な線分の長さと、角Paと移動局アンテナ1aとを結ぶ三次元的な線分の長さとの和である。ここで、角Paは、
図3の角Paにおいて上記最短経路が通過する鉛直方向位置を意味する。
図3において、他方の基地局7についてのパラメータL
2は、基地局アンテナ7aと電波障害物2との間に電波障害物2が無いので、基地局アンテナ7aと移動局アンテナ1aとを結ぶ線分の長さである。したがって、
図3においてL
2はD
2に等しい。
【0031】
パラメータLnを計測するために、パラメータ計測装置13は、更に、既知の電波障害物データを記憶した電波障害物記憶部13dを備える。電波障害物データは、各基地局アンテナ5a,7aと移動局アンテナ1aとの間に存在し得る電波障害物2が空間において占める範囲(すなわち電波障害物2の位置、形状、及び寸法)を表わす。演算部13cは、位置計測器13aが計測した移動局アンテナ1aの位置と、アンテナ記憶部13bに記憶された各基地局アンテナ5a,7aの位置と、電波障害物記憶部13dに記憶された電波障害物データに基づいて、基地局5,7毎にパラメータLnを算出する。
【0032】
パラメータHnは、基地局アンテナ5a,7aと移動局アンテナ1aとの、電波障害物2を回避した三次元的な最短経路上の各点から、当該基地局アンテナ5a,7aと移動局アンテナ1aとを結ぶ三次元的な線分へ降ろした垂線の長さのうち、最大となる長さを示す。
【0033】
また、パラメータH
nは、基地局5,7毎に計測される。ここで、H
nの添え字nは、基地局5,7の識別番号である。
図3において、一方の基地局5についてのパラメータH
1は、角Paから、基地局アンテナ5aと移動局アンテナ1aとを結ぶ線分へ降ろした垂線の長さである。すなわち、パラメータH
1は、角Paから当該垂線の足Pbまでの長さである。
図3において、他方の基地局7についてのパラメータH
2の値は、ゼロである。
【0034】
演算部13cは、位置計測器13aが計測した移動局アンテナ1aの位置と、アンテナ記憶部13bに記憶された各基地局アンテナ5a,7aの位置と、電波障害物記憶部13dに記憶された電波障害物データに基づいて、基地局5,7毎にパラメータHnを算出する。
【0035】
<第3のパラメータ>
第3のパラメータは、移動局アンテナ1aから見た基地局アンテナ5a,7aの向きを表わすパラメータθ
nであってよい。
図4は、第3のパラメータを説明するための図であり、
図1に相当する平面図である。第3のパラメータθ
nは、基地局5,7毎に計測される。ここで、θ
nの添え字nは、基地局5,7の識別番号である。
【0036】
第3のパラメータθ
nは、例えば、
図4のように、移動局アンテナ1a上の基準点Pcと基地局アンテナ5a,7a上の基準点Pdとを含む鉛直面S
nと、移動局アンテナ1a上の基準点Pcを含む基準鉛直面S
rとのなす角度であってよい。鉛直面S
nの添え字nは、どの基地局5,7に関する鉛直面であるかを示す識別番号である。基準鉛直面S
rは、基準点Pcを含む鉛直線を水平方向一端とする鉛直面であり、移動装置20に固定されている。
【0037】
一例では、移動局アンテナ1aから見て基準鉛直面Srよりも左側に鉛直面Snが存在する場合には、パラメータθnは正の値をとり、移動局アンテナ1aから見て基準鉛直面Srよりも右側に鉛直面Snが存在する場合には、パラメータθnは負の値をとってよい。この場合、パラメータθnは、-180度から+180度までの値をとる。
【0038】
図4において、一方の基地局5について、パラメータθ
1は、鉛直面S
1と基準鉛直面S
rとのなす角度であり、他方の基地局7について、パラメータθ
2は、鉛直面S
2と基準鉛直面S
rとのなす角度である。
【0039】
パラメータθnを計測するために、パラメータ計測装置13は、移動装置20の向きを計測する向きセンサ13eを備える。ここで、移動装置20の向きは、例えば、エリアA内において移動装置20が移動する路面に固定された座標系における向き(例えば当該座標系の水平座標軸に対する向き)であってよい。この向きは、鉛直軸回りの向きであってよい。向きセンサ13eは、例えば、移動装置20のヨー軸(鉛直軸)回りの移動装置20の角速度を計測するジャイロセンサと、計測された当該角速度を時間で積分することにより移動装置20の向きを求める算出部とを有してよい。この場合、移動装置20の向き(角度)の初期値は既知であるとする。
【0040】
演算部13cは、位置計測器13aが計測した移動局アンテナ1aの位置と、アンテナ記憶部13bに記憶された各基地局アンテナ5a,7aの位置と、向きセンサ13eが計測した移動装置20の向きとに基づいて、基地局5,7毎にパラメータθnを算出する。
【0041】
なお、移動装置20の位置と向きが特定の範囲内にある場合に、移動局アンテナ1aと基地局アンテナ5a,7aを結ぶ三次元的な線分上に、移動局アンテナ1aと当該基地局アンテナ5a,7aを互いに遮るように移動装置20上の積載物(例えば後述のコンテナ19)又は構造物が位置することになる場合に、第3のパラメータは有効である。この場合、第3のパラメータθnの値は、当該三次元的な線分上に移動装置20上の積載物又は構造物が位置するかどうかを示す。
【0042】
<第4のパラメータ>
第4のパラメータは、移動局アンテナ1aの位置を表わすパラメータであってよい。ここで、移動局アンテナ1aの位置は、互いに直交するx軸、y軸、及びz軸を有する座標系における位置として表わされてよい。この座標系は、上述したエリアA内の位置を表わすための座標系であってよい。第4のパラメータは、このような座標系においてx軸座標の値であるパラメータと、y軸座標の値であるパラメータと、z軸座標の値であるパラメータとを含んでよい。このような各パラメータは、位置計測器13aにより計測されてよい。
【0043】
なお、移動装置20がエリアA内で水平面上を移動し、鉛直方向には移動しない場合には、第4パラメータとして、移動局アンテナ1aの鉛直方向の位置を示すパラメータは存在しなくてよい。例えば、上述のx軸とy軸が水平方向を向く座標軸である場合には、第4パラメータとして、x軸座標の値であるパラメータと、y軸座標の値であるパラメータとが存在するが、z軸座標の値であるパラメータは存在しなくてよい。
【0044】
<第5のパラメータ>
上述の計測パラメータは、上述した第1~第4のパラメータの少なくともいずれかに加えて、第5のパラメータを含んでいてもよい。第5のパラメータは、各基地局アンテナ5a,7aに関する、移動局アンテナ1aの速度を示すパラメータVnである。Vnは、基地局毎に計測される。ここで、各基地局アンテナ5a,7aに関するVnは、移動局アンテナ1aが当該基地局アンテナ5a,7aに近づいている場合には、正の値であり、移動局アンテナ1aが当該基地局アンテナ5a,7aから遠ざかっている場合には、負の値である。
【0045】
一例では、パラメータVnは、計測された移動装置20の移動速度Vaと同じ絶対値を有しており、移動装置20が基地局アンテナ5a,7aに近づいている場合には、Vnの符号は正となり、移動装置20が基地局アンテナ5a,7aから遠ざかっている場合には、Vnの符号は負となる。
【0046】
速度パラメータVnを計測するために、パラメータ計測装置13は、移動装置20の速度を計測する速度センサ13fを備える。ここで、移動装置20が、車両である場合には、例えば、速度センサ13fは、当該車両の車輪の回転速度を計測し、計測した回転速度に基づいて、移動装置20の移動速度Vaを求める。更に、演算部13cは、上述の位置計測器13aが計測した移動局アンテナ1aの位置と、上述のアンテナ記憶部13bに記憶された基地局アンテナ5a,7aの位置と、上述の向きセンサ13eが計測した移動装置20の向きと、移動速度Vaの符号(移動装置20が前進しているか後進しているか)に基づいて、速度センサ13fが計測したパラメータVnの符号を定める。
【0047】
別の例では、速度パラメータVnは、基地局アンテナ5a,7aに対する移動局アンテナ1aの速度であってよい。すなわち、移動装置20の移動速度を表わすベクトルをVとした場合に、移動局アンテナ1aから基地局アンテナ5a,7aへ向かう方向の、Vの成分が、Vnであってもよい。この場合、移動装置20が基地局アンテナ5a,7aに近づいている場合には、Vnの値は正となり、移動装置20が基地局アンテナ5a,7aから遠ざかっている場合には、Vnの値は負となる。また、この場合、演算部13cは、上述の位置計測器13aが計測した移動局アンテナ1aの位置と、上述のアンテナ記憶部13bに記憶された基地局アンテナ5a,7aの位置と、上述の向きセンサ13eが計測した移動装置20の向きと、速度センサ13fが計測した移動装置20の移動速度Vaに基づいて、パラメータVnを求めてよい。
【0048】
機械学習装置15は、品質計測部11とパラメータ計測装置13による計測結果に基づいて、計測パラメータの値と、選択すべき基地局5,7との関係を機械学習する。機械学習装置15は、入力処理部15aと記憶部15bと学習部15cを有する。
【0049】
入力処理部15aには、品質計測部11とパラメータ計測装置13による計測結果が入力される。入力処理部15aは、当該計測結果が入力される度に、当該計測結果に基づく訓練データを生成する。品質計測部11が同時に計測した各基地局5,7の通信品質のうち、最大となった通信品質の基地局5又は7を、選択すべき基地局(以下で単に選択基地局ともいう)として、訓練データは、選択基地局を示す情報と、選択基地局の当該通信品質の計測時にパラメータ計測装置13が計測した計測パラメータ(各パラメータ)の値とからなる。入力処理部15aは、生成した各訓練データを記憶部15bに記憶させる。
【0050】
学習部15cは、取得した多数の訓練データに基づいて、計測パラメータの値と選択基地局との関係を機械学習する。本実施形態では、学習部15cは、データの分類に用いられるサポートベクターマシーン(以下でSVM(Support Vector Machine)という)を用いて、計測パラメータの値と選択基地局との関係を機械学習する。なお、学習部15cは、他の方法(例えばディープラーニング)により計測パラメータの値と選択基地局との関係を機械学習してもよい。
【0051】
<パラメータ数が2つの場合>
SVMによる機械学習を、説明を分かり易くするために、計測パラメータとして2つのパラメータα、βが存在し、
図1のように2つの基地局5,7が存在する場合について説明する。
図5(A)は、取得された多数の訓練データを表わす二次元の座標系を示す。
図5(A)において、横軸は、一方のパラメータαの値を示し、縦軸は、他方のパラメータβの値を示す。
図5(A)において、各黒丸は、選択基地局が一方の基地局5である訓練データ(以下で第1データという)を示し、各白丸は、選択基地局が他方の基地局7である訓練データ(以下で第2データという)を示す。
【0052】
学習部15cは、
図5(A)のような二次元座標系において、第1データの集まりと第2データの集まりとを互いに区切る境界を表わす様々な識別関数Fのうち、後述のマージンMが最大となる識別関数F
maxを求める。各識別関数Fは、パラメータαの各値に対するパラメータβの値を定める関数(すなわち、β=F(α))である。また、各識別関数Fは、当該識別関数Fが表わす境界から当該境界に最も近い第1データ(
図5(A)の黒丸)までの距離が、当該境界から当該境界に最も近い第2データ(
図5(A)の白丸)までの距離と同じになるように定められる。また、当該各距離が上記マージンMである。識別関数Fは、
図5(A)のように、計測パラメータの数が2つである場合、1次元の境界を表わす。識別関数Fは、
図5(A)のように線形関数であってもよいし、他の種類の関数であってもよい。
【0053】
図5(A)において、マージンMが最大となる識別関数F
maxを示す。
図5(B)は、マージンMが最大となっていない識別関数Fiを示す。すなわち、
図5(B)において、
図5(A)の場合と同じ第1データの集まり及び第2データの集まりに対する識別関数F
iを示している。
図5(B)における識別関数F
iの場合のマージンMは、
図5(A)のマージンMより小さい。
【0054】
図5(A)の座標空間において、識別関数F
maxが表わす境界によって区分された2つの領域は、それぞれ、一方の基地局5が選択基地局となる第1領域R1と、他方の基地局7が選択基地局となる第2領域R2である。学習部15cは、このような識別関数F
maxを、計測パラメータの値と選択基地局との関係として機械学習し、当該識別関数F
maxを記憶部15bに記憶する。
【0055】
学習部15cは、新たな訓練データが記憶部15bに記憶される度に、新たな識別関数Fmaxを求めてよい。あるいは、学習部15cは、前回において識別関数Fmaxを求めた時から新たに記憶部15bに記憶された訓練データの数が所定数に達したら、記憶部15bに記憶されている各訓練データに基づいて、新たな識別関数Fmaxを求めてよい。
【0056】
<パラメータ数が3以上の場合>
訓練データに含まれる計測パラメータの数がn(nは3以上の整数)である場合には、学習部15cは、互いに異なるパラメータを示すn個の座標軸を有するn次元の座標系において識別関数Fmaxを求める。この識別関数Fmaxは、(n-1)次元の境界を表わす。この境界は、n次元の座標空間を、上述したような第1領域R1と第2領域R2に区分する。このような識別関数Fmaxに、n個のパラメータのうち(n-1)個のパラメータの値を識別関数Fmaxに適用すると、残りのパラメータの値が定まる。なお、例えば、パラメータが、上述したD1、D2、L1、L2、H1、H2、θ1、θ2、V1、V2からなる場合には、n=10であり、10次元の座標系において識別関数Fmaxを求める。
【0057】
選択部17は、機械学習された上記関係(識別関数Fmax)と、パラメータ計測装置13により計測された各パラメータの値とに基づいて、移動局1が通信する基地局5又は7を選択する。本実施形態では、選択部17は、計測された複数のパラメータの値の組み合わせと、上記関係である識別関数Fmaxとに基づいて、移動局1が通信する基地局5又は7を選択する。すなわち、選択部17は、計測された複数のパラメータの値の組み合わせが、識別関数Fmaxが表わす境界で区切られる2つの領域(第1領域R1と第2領域R2)のいずれに属するかを判断し、当該組み合わせが属する領域に対応する基地局5又は7を、移動局1が通信する基地局として選択する。例えば、計測された複数のパラメータの値の組み合わせが、第1領域R1に属する場合には、選択部17は、移動局1が通信する基地局として一方の基地局5を選択する。計測された複数のパラメータの値の組み合わせが、第2領域R2に属する場合には、選択部17は、移動局1が通信する基地局として他方の基地局7を選択する。
【0058】
<基地局の数が3つ以上の場合>
基地局の数がm(mは3以上の整数)である場合の一例を説明する。学習部15cは、m個の基地局から選ばれる2つの基地局の全ての組について、上述した識別関数Fmaxを求める。各組についての識別関数Fmaxは、当該組を構成する2つの基地局しか存在しないと仮定して、選択基地局が一方の基地局である訓練データの集まりと、選択基地局が他方の基地局である訓練データの集まりとを、互いに対して区切る境界を表す。なお、当該識別関数Fmaxの他の点は上述と同じである。
【0059】
選択部17は、各組について機械学習された識別関数Fmaxと、パラメータ計測装置13により計測された各パラメータの値とに基づいて、移動局1が通信する基地局を選択する。すなわち、選択部17は、各組について、計測された複数のパラメータの値の組み合わせと、当該組の識別関数Fmaxとに基づいて、移動局1が通信する基地局を暫定的に選択する。その結果、最も多く選択された基地局を、最終的に、移動局1が通信する基地局として選択する。
【0060】
(基地局選択方法)
図6は、本発明の実施形態による基地局選択方法を示すフローチャートである。この方法は、上述した基地局選択装置10を用いて行われる。基地局選択方法は、機械学習処理と選択処理を含む。機械学習処理は、ステップS1,S2を含み、選択処理は、ステップS3,S4を含む。
【0061】
ステップS1において、品質計測部11は、基地局5,7毎に、移動局アンテナ1aと当該基地局との通信品質を計測すると同時に、パラメータ計測装置13は、計測パラメータの値を計測する。
【0062】
ステップS2において、機械学習装置15は、ステップS1での計測結果に基づいて、計測パラメータの値と、選択基地局との関係(識別関数Fmax)を求める。
【0063】
一例では、ステップS1が繰り返し行われることにより、多数の計測結果が得られたら、ステップS2において、当該多数の計測結果に基づいて(例えば当該多数の計測結果に基づく多数の上記訓練データに基づいて)、機械学習装置15は、計測パラメータの値と、選択基地局との関係(識別関数Fmax)を求める。
【0064】
別の例では、ステップS1とステップS2が繰り返される。2回目以降のステップS2では、機械学習装置15は、既に行われた各回のステップS1での計測結果に基づいて(例えば当該多数の計測結果に基づく多数の上記訓練データに基づいて)上記関係(識別関数Fmax)を求める。
【0065】
なお、ステップS1又はステップS1、S2を繰り返し行うために、複数の基地局5,7からは、ステップS1で品質計測部11によって強度が計測される電波が、(例えば所定の周期で)繰り返し送信される。
【0066】
ステップS3において、パラメータ計測装置13は、計測パラメータの値を計測する。なお、ステップS3で計測されるパラメータの組み合わせは、ステップS1で計測されるパラメータの組み合わせと同じである。
【0067】
ステップS4において、ステップS3で計測された計測パラメータの値と、ステップS2で求められた最新の上記関係(識別関数Fmax)とに基づいて、選択部17は、移動局1が通信する基地局5又は7を選択する。
【0068】
ステップS5において、移動局1が現在通信している基地局5又は7がステップS4で選択した基地局と異なるかどうかを判断する。この判断の結果が肯定である場合には、ステップS6へ進み、そうでない場合には、ステップS7へ進む。
【0069】
ステップS6では、選択部17は、移動局1が通信する基地局を、現在通信している基地局5又は7からステップS4で選択された基地局に切り替える。例えば、各基地局5,7には、通信用の周波数が設定されており、この周波数(設定周波数)が基地局毎に異なっている場合には、選択部17は、移動局1が通信に使用する電波の周波数を、ステップS4で選択された基地局5又は7の設定周波数に切り替える。これにより、例えば、移動局1において、信号入力部1bは、移動局アンテナ1aが受信した電波のうち、ステップS4で選択された基地局の設定周波数と同じ周波数の電波の指令信号を抽出し、抽出した指令信号を制御部9へ出力する。
一方、ステップS7では、移動局1は、現在通信している基地局5又は7との通信を継続する。
【0070】
このような選択処理S3~S7は、移動装置20の移動中に繰り返し行われる。この場合、ステップS3が行われる時に、ステップS8が行われてもよい。ステップS8では、品質計測部11は、基地局5,7毎に、移動局アンテナ1aと当該基地局との通信品質を計測する。このステップS3で計測された計測パラメータの値と、このステップS8で計測された基地局5,7毎の通信品質とを計測結果として、当該計測結果に基づいて、機械学習装置15は、上述のステップS2を行う。このステップS2では、既に得られている多数の計測結果と、今回のステップS3、S8で得られた計測結果とに基づいて、機械学習装置15は、計測パラメータの値と、選択基地局との関係(識別関数Fmax)を求める。
【0071】
[実施例]
基地局選択装置10を、コンテナターミナルの所定のエリアA内を走行する移動装置20に適用した場合について説明する。
図7は、コンテナターミナルの概略を示す平面図である。
図7において一点鎖線は、移動装置20が移動する経路を示す。
【0072】
移動装置20は、コンテナ置場B1,B2,B3へコンテナ19を搬送し又はコンテナ置場B1,B2,B3からコンテナ19を受け取って別の位置(例えば
図7の位置P1)へ搬送する。コンテナ置場B1,B2,B3の状態は、コンテナ置場B1,B2,B3の各領域に積まれているコンテナ19の数に応じて(すなわち、どの領域にいくつのコンテナ19が積まれているかに応じて)、とり得る複数(例えば多数)のコンテナ載置状態のいずれかに変化する。コンテナ載置状態は、コンテナ置場B1,B2,B3の各領域に積まれているコンテナ19の数を表わす。
図7の例では、コンテナ置場として、破線で示す3つのブロックB1,B2,B3がある。各ブロックB1,B2,B3には、破線で区画されているように多数のコンテナ積載領域が存在し、各コンテナ積載領域には、複数のコンテナ19が鉛直方向に複数段に積み重ねられるようになっている。
【0073】
図8は、
図7における移動装置20の一例である自動搬送車両の側面図である。
図8において、自動搬送車両は、例えば、牽引車20aと該牽引車20aに牽引されるトレーラ20bとを有する車両である。
図8では、トレーラ20b上に電波障害物となるコンテナ19が置かれている。上述した第3のパラメータθ
nの値に応じて、移動局アンテナ1aと各基地局5,7の基地局アンテナ5a,7aを結ぶ三次元の線分上に、移動装置20上の積載物であるコンテナ19が位置したり位置しなかったりする。なお、
図8の例では、移動局アンテナ1aの上端は、トレーラ20bに置かれたコンテナ19の上端よりも低い位置にある。
【0074】
図7の例では、移動装置20は、コンテナ搬送作業を行う。すなわち、移動装置20は、コンテナ船21の位置とコンテナ置場B1,B2,B3との間で移動し、コンテナ船21からのコンテナ19をコンテナ置場B1,B2,B3へ搬送し、或いは、コンテナ置場B1,B2,B3のコンテナ19をコンテナ船21へ搬送する。コンテナ船21に対して、把持装置(クレーン)23が設けられている。把持装置23は、把持装置23の位置P1へ移動してきた移動装置20上に、コンテナ船21のコンテナ19を把持して置く。あるいは、把持装置23は、把持装置23の位置P1へ移動してきた移動装置20上のコンテナ19を把持して、コンテナ船21に置く。
【0075】
コンテナ置場である各ブロックB1,B2,B3には、コンテナ19を把持して、当該ブロックB1,B2,B3のいずれかのコンテナ積載領域に置く把持装置(クレーン)25が設けられている。移動装置20が、コンテナ置場B1,B2,B3へコンテナ19を搬送する時には、移動装置20は、コンテナ置場B1,B2,B3における把持装置25の位置(例えば
図7におけるブロックB1,B2又はB3の位置P2)へ移動し、移動装置20が当該位置にいる状態で、把持装置25は、移動装置20上のコンテナ19を把持して、対応するブロックB1,B2又はB3におけるいずれかのコンテナ積載領域に置く。移動装置20が、コンテナ置場B1,B2,B3からコンテナ19を搬送する時には、移動装置20は、いずれかのコンテナ置場B1,B2又はB3における把持装置25の位置(例えば
図7の位置P2)へ移動し、移動装置20が当該位置にいる状態で、把持装置25は、当該ブロックB1,B2又はB3におけるいずれかのコンテナ積載領域のコンテナ19を把持して移動装置20上(例えばトレーラ20b上)に置く。なお、各把持装置25は、自身に設けられた駆動装置により
図7の縦方向に移動可能である。
【0076】
指令装置3は、コンテナ船21からコンテナ置場B1,B2,B3へ又はコンテナ置場B1,B2,B3からコンテナ船21へ多数のコンテナ19を搬送するためのコンテナ搬送制御を行う。すなわち、指令装置3は、例えば予め定められたコンテナ搬送計画に従って、コンテナ船21からコンテナ置場B1,B2,B3へ又はコンテナ置場B1,B2,B3からコンテナ船21へコンテナ19が搬送されるように、移動装置20および各把持装置23,25を制御する。コンテナ搬送計画は、コンテナ19が運び出されるブロックB1,B2,B3及びそのコンテナ積載領域の順番を定めたものであり、或いは、コンテナ19が搬送されて来るブロックB1,B2,B3及びそのコンテナ積載領域の順番を定めたものである。コンテナ搬送制御において、指令装置3からの指令信号は、基地局5,7から電波で移動局1へ送信される。これにより、移動装置20は、選択部17に選択されている基地局5又は7から受信した指令信号に従ってコンテナ搬送作業を行う。また、指令装置3は、コンテナ搬送制御において、各把持装置23,25の動作を制御する。
【0077】
また、コンテナ搬送制御において、指令装置3は、コンテナ搬送計画に基づいてコンテナ置場B1,B2,B3のコンテナ載置状態の変化を把握して、コンテナ載置状態が変化する度に、最新のコンテナ載置状態を表わす情報(以下でコンテナ載置情報という)を、移動局1へ基地局5,7を介して送信する。或いは、各コンテナ積載領域には、当該領域に積み重ねられているコンテナ19の数を検出するセンサが設けられており、これらのセンサの検出結果に基づいて、指令装置3は、コンテナ置場B1,B2,B3のコンテナ載置状態の変化を把握して、コンテナ載置状態が変化する度に、最新のコンテナ載置情報を、移動局1へ基地局5,7を介して送信する。これにより、移動局1は、選択部17に選択されている基地局5又は7から受信した最新のコンテナ載置情報を受信する。選択部17は、最新のコンテナ載置情報を移動局1から受けて記憶する。
【0078】
機械学習装置15は、各コンテナ載置状態に対して、上述の機械学習処理を繰り返し行うことにより、上記関係(識別関数Fmax)を機械学習しておく。このように機械学習された上記関係は、コンテナ載置状態毎に記憶部15bに記憶される。この機械学習処理は、例えば、指令装置3が上述のコンテナ搬送制御を行うことにより、各把持装置23,25と移動装置20を動作させながら行われてよい。
【0079】
その後、上述の選択処理を行う。すなわち、移動装置20がコンテナ搬送作業を行っている時に、選択部17は、移動局1から受けた最新のコンテナ載置情報に基づいて、当該コンテナ載置情報に対する上記関係と、計測パラメータの値とに基づいて、移動局アンテナ1aが通信する基地局5又は7を選択する。なお、移動装置20がコンテナ搬送作業を行っている時に、移動局1が受信した最新のコンテナ載置情報に対して上述の機械学習処理が繰り返し行われてよい。
【0080】
また、コンテナ置場B1,B2,B3におけるコンテナ19は電波障害物2(
図1)となるので、パラメータ計測装置13は、上述の機械学習処理と選択処理において、移動局1が受信した最新のコンテナ載置情報に基づいて、電波障害物記憶部13dに記憶された電波障害物データを更新し、更新された最新の電波障害物データを用いて、第2のパラメータL
n、H
nを求める。
【0081】
上述した実施形態によると、各基地局5,7と移動局1との通信品質が計測されるとともに、移動局1と基地局5,7との通信環境の変化に応じて値が変動する計測パラメータが計測され、その計測結果に基づいて、計測パラメータの値と選択基地局との関係が機械学習される。このように、通信環境の変化に応じて値が変動するパラメータに基づいて機械学習された上記関係と、パラメータの計測値に基づいて、基地局5又は7を選択する。したがって、通信環境の変化を考慮した基地局の選択が可能になる。
【0082】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の技術的思想の範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、本発明の実施形態による基地局選択装置10は、上述した複数の事項の全て有していなくてもよく、上述した複数の事項のうち一部のみを有していてもよい。
【符号の説明】
【0083】
1 移動局、1a 移動局アンテナ、1b 信号入力部、2 電波障害物、3 指令装置、5 基地局、5a 基地局アンテナ、5b 送信回路、7 基地局、7a 基地局アンテナ、7b 送信回路、9 制御部、10 基地局選択装置、11 品質計測部、13 パラメータ計測装置、13a 位置計測器、13b アンテナ記憶部、13c 演算部、13d 電波障害物記憶部、13e 向きセンサ、13f 速度センサ、15 機械学習装置、15a 入力処理部、15b 記憶部、15c 学習部、17 選択部、19 コンテナ、20 移動装置、20a 牽引車、20b トレーラ、21 コンテナ船、23 把持装置(クレーン)、25 把持装置(クレーン)、100 通信システム、A エリア、B1,B2,B3 コンテナ置場(ブロック)、P1 コンテナ船の位置、P2 コンテナ置場の位置