(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】シャボン玉液組成物
(51)【国際特許分類】
A63H 33/28 20060101AFI20230314BHJP
【FI】
A63H33/28 Z
(21)【出願番号】P 2019029881
(22)【出願日】2019-02-21
【審査請求日】2021-12-07
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成30年3月16日~平成30年3月18日 第18回JAPANドラッグストアショー、幕張メッセ(千葉県千葉市美浜区中瀬2丁目1)において、シャボン玉液組成物、シャボン玉の供給方法、演出方法及び演出具を公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】古高 佑季
【審査官】宮本 昭彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-090655(JP,A)
【文献】特開2009-091396(JP,A)
【文献】シャボン玉実験のやり方は千差万別.奥の深さに感動しつつ,童心に帰って楽しもう.,子供の科学,第68巻第4号通巻828号,日本,株式会社誠文堂新光社,2005年04月01日,第64~67頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 1/00 - 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(a)成分を0.05質量%以上1.00質量%未満、下記(b)成分を0.01質量%以上0.5質量%以下、及び下記(c)成分を
10質量%以上50質量%以下含有し、
該(c)成分として少なくとも多価アルコールを含み、粘度が0.9mPa・s以上
9.3mPa・s以下である、シャボン玉液組成物。
(a)成分:陰イオン界面活性剤
(b)成分:ベタイン型界面活性剤
(c)成分:多価アルコール、糖類及び水溶性高分子から選択される1種以上の成分
【請求項2】
前記(b)成分が、スルホベタイン型界面活性剤である、請求項1に記載のシャボン玉液組成物。
【請求項3】
前記(a)成分が、炭素数8~21の炭化水素基と、硫酸エステル塩基又はスルホン酸塩基とを有する陰イオン界面活性剤である、請求項1又は2に記載のシャボン玉液組成物。
【請求項4】
前記(a)成分が、炭素数8~18のアルキル基を有するアルキル硫酸エステル塩、炭素数8~18のアルキル基を有し炭素数2~3のオキシアルキレン基の平均付加モル数が0.1~6であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、炭素数8~15のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩、並びに炭素数10~15のアルカンスルホン酸塩から選ばれる陰イオン界面活性剤である、請求項1~3の何れか1項に記載のシャボン玉液組成物。
【請求項5】
前記(a)成分が、下記(a-1)成分及び(a-2)成分から選ばれる1種以上の陰イオン界面活性剤である、請求項1~4の何れか1項に記載のシャボン玉液組成物。
〔(a-1)成分〕
下記一般式(a1)で表される陰イオン界面活性剤
R
11a-O-(PO)
n1-SO
3M
2 (a1)
〔式中、R
11aは、炭素数8~18のアルキル基であり、POは、プロピレンオキシ基であり、n1はPOの平均付加モル数であり0≦n1≦6の数である。M
2は陽イオンである。〕
〔(a-2)成分〕
下記一般式(a2)で表される陰イオン界面活性剤
R
21a-O-(PO)
n-(EO)
m-SO
3M
3 (a2)
〔式中、R
21aは炭素数8~18のアルキル基であり、POはプロピレンオキシ基であり、EOはエチレンオキシ基であり、nはPOの平均付加モル数及びmはEOの平均付加モル数であり、それぞれ0<n<1、0<m≦3の数である。M
3は陽イオンである。〕
【請求項6】
請求項1~5の何れか1項に記載のシャボン玉液組成物を用いてシャボン玉を形成し、該シャボン玉を表面に繊維体を有する受け体に供給する、シャボン玉の供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャボン玉の生成に用いられるシャボン玉液組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シャボン玉は子供の玩具として広く親しまれており、該シャボン玉の生成に用いられるシャボン玉液組成物が単品で、又はストロー等の吹き具とセットで流通している。シャボン玉の生成を容易にする観点、又は形状の揃ったシャボン玉を連続的に生成する観点等、種々の観点からシャボン玉液組成物の組成について検討がなされている。例えば、特許文献1には、所定の陰イオン界面活性剤及び非イオン界面活性剤、並びに両性界面活性剤を含有するシャボン玉液組成物が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、アルキルエーテルサルフェート型陰イオン界面活性剤、アルカノールアミド型非イオン界面活性剤、アミドベタイン型又はアルキルベタイン型両性界面活性剤、非イオン性高分子、単糖類又は二糖類、及び所定の重合度を有するポリグリセリンをそれぞれ所定量含有し、且つ所定の粘度を有するシャボン玉液組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2009-91396号公報
【文献】特開2013-90655号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1及び2によれば、割れ難くて、持続性に優れたシャボン玉を生成することができるとしているが、シャボン玉の持続性はそれほど長くなく、該持続性の効果が不十分であった。また、特許文献1及び2に記載のシャボン玉液組成物では、シャボン玉が割れたときに、該シャボン玉液組成物が広く飛散して、周囲を広く汚染することがある。
【0006】
本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る演出方法及びそれに用いられる演出具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記(a)成分を0.05質量%以上1.00質量%未満、下記(b)成分を0.01質量%以上0.5質量%以下、及び下記(c)成分を0.5質量%以上50質量%以下含有し、粘度が0.9mPa・s以上100mPa・s以下である、シャボン玉液組成物を提供するものである。
(a)成分:陰イオン界面活性剤
(b)成分:ベタイン型界面活性剤
(c)成分:多価アルコール、糖類、及び水溶性高分子から選択される1種以上の成分
【0008】
また、本発明は、前記シャボン玉液組成物を用いてシャボン玉を形成し、該シャボン玉を表面に繊維体を有する受け体に供給する、シャボン玉の供給方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明のシャボン玉液組成物によれば、シャボン膜の強度が高く、シャボン膜の持続性に優れており、且つシャボン玉が割れたときに周囲が広く汚染され難い。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、実施例におけるシャボン玉の接触回数の測定方法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づいて説明する。一般的なシャボン玉液組成物には、界面活性剤が配合されているが、本発明のシャボン玉液組成物は、界面活性剤として(a)成分、(b)成分及び(c)成分を含有する。
【0012】
(a)成分は、陰イオン界面活性剤であり、シャボン玉を形成するときのシャボン膜の形成に寄与する。シャボン膜は、シャボン玉を形成する膜である。シャボン玉液組成物は、(a)成分を0.05質量%以上1.00質量%未満含有する。
【0013】
(a)成分としての陰イオン界面活性剤は、特に限定されず、任意のものを用いることができる。陰イオン界面活性剤としては、例えば、炭化水素基を有する硫酸エステル塩、炭化水素基を有するスルホン酸塩、脂肪酸塩、脂肪酸エステル塩、炭化水素基を有するリン酸エステル塩及びアミノ酸塩が挙げられる。具体的には、アルキル硫酸エステル塩、アルケニル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸エステル塩等の炭化水素基を有する硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルカンスルホン酸塩等の炭化水素基を有するスルホン酸塩、α-スルホ脂肪酸塩等の炭化水素基を有する脂肪酸塩、α-スルホ脂肪酸エステル塩等の炭化水素基を有する脂肪酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル塩等の炭化水素基を有するリン酸エステル塩、アシルグルタミン酸塩、アラニン誘導体、グリシン誘導体、アルギニン誘導体等の炭化水素基を有するアミノ酸塩等が挙げられる。
【0014】
シャボン玉液組成物は、(b)成分を0.01質量%以上0.5質量%以下含有する。
(b)成分は、ベタイン型界面活性剤であり、シャボン膜の形成に寄与する。ベタイン型界面活性剤は、両性界面活性剤に分類される界面活性剤であり、アルキルベタイン型界面活性剤、アミドプロピルベタイン型界面活性剤、スルホベタイン型界面活性剤、イミドゾリニウムベタイン型界面活性剤、カルボベタイン型界面活性剤、リン酸エステル型両性界面活性剤等が挙げられる。
【0015】
本発明のシャボン玉液組成物は、(c)成分として、多価アルコール、糖類、水溶性高分子から選択される1種以上の成分を0.5質量%以上50質量%以下含有している。(c)成分は、形成後のシャボン膜の破壊を抑制する。
シャボン膜の強度を向上させる共に、シャボン玉が割れた痕跡をより残存し難くする観点から、本発明のシャボン玉液組成物における、(c)成分の含有量は、0.5質量%以上50質量%以下であるが、好ましくは4.0質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、また好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下であり、また好ましくは4.0質量%以上45質量%以下、より好ましくは10質量%以上40質量%以下である。シャボン玉液組成物が(c)成分を複数成分含有する場合、それら複数成分の合計含有量が上記の範囲内であることが好ましい。
【0016】
多価アルコールは、炭化水素の水素原子をヒドロキシ基(-OH)で置き換えた物質である。多価アルコールとしては、2価以上のアルコールを特に制限なく用いることができる。例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ペンチレングリコール、1,3-ペンチレングリコール、1,4-ペンチレングリコール、1,5-ペンチレングリコール、ヘキシレングリコール等のアルキレングリコールや、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール等のジアルキレングリコール等の2価アルコール、グリセリン等の3価アルコール、ペンタエリスリトール等の4価アルコール等が挙げられる。また、多価アルコールは、ジグリセリン、トリグリセリン等のポリグリセリンであってもよい。上述した多価アルコールは、3価以上のアルコールであることが好ましく、中でもグリセリン、ペンタエリスリトールがより好ましい。
【0017】
糖類は、非環状構造において、アルデヒド基(-CHO)又はケトン基(>C=O)を有するものであり、糖類の具体例としてグルコース、フルクトース、スクロース、プルラン等の糖や、マンニトール、ソルビトール等の糖アルコールが挙げられる。上述した糖類は、マンニトール、ソルビトール等の糖アルコールであることが好ましい。
【0018】
水溶性高分子としては、天然多糖類、セルロース系高分子及びデンプン系高分子等の半合成高分子、ビニル系高分子及びポリアルキレングリコール系高分子等の合成高分子等が挙げられる。セルロース系高分子としては、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。デンプン系高分子としては、デキストリン等が挙げられる。ビニル系高分子としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリビニルブチラール等が挙げられる。ポリアルキレングリコール系高分子としては、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。上述した水溶性高分子は、前記合成高分子であることが好ましく、中でもポリビニルアルコール(PVA)、及びポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)から選択される1種以上であることがより好ましい。ポリエチレングリコール(PEG)は、該PEGを標準としたときのゲルパーミエーションクロマトグラフィーによって求められた重量平均分子量が200~200,000であることが好ましく、200~20,000であることがより好ましい。ポリビニルピロリドンとしては、K-15、K-30、K-60又はK-90のグレードのポリビニルピロリドンを用いることが好ましい。
【0019】
(c)成分は、多価アルコール、糖類、及び水溶性高分子から選択される2種以上の成分を組み合わせて用いてもよい。シャボン膜の膜強度の観点から、(c)成分として、多価アルコールと水溶性高分子との組み合わせ、又は糖類と多価アルコールとの組み合わせが好ましく、多価アルコールと水溶性高分子との組み合わせがより好ましい。多価アルコールと水溶性高分子との組み合わせは、多価アルコールとしてグリセリン、及び該水溶性高分子としてポリビニルアルコールの組み合わせ、又はグリセリンとポリビニルピロリドンとの組み合わせが好ましい。
【0020】
シャボン玉液組成物において、(c)成分は、多価アルコール、糖類、及び水溶性高分子から選択される1種以上の成分の含有量、又は2種以上の成分の含有量が、前述した範囲内であることとする。
【0021】
シャボン膜の強度を向上させる観点から、本発明のシャボン玉液組成物の20℃における粘度は、0.9mPa・s以上100mPa・s以下であるが、好ましくは1.0mPa・s以上、より好ましくは1.1mPa・s以上、また好ましくは90mPa・s以下、より好ましくは80mPa・s以下、さらに好ましくは60mPa・s以下であり、また好ましくは1.0mPa・s以上90mPa・s以下、より好ましくは1.1mPa・s以上80mPa・s以下、さらに好ましくは1.1mPa・s以上60mPa・s以下である。前記粘度は(c)成分や、ブチルジグリコール、エタノール、プロピレングリコール等の溶剤等で調整することができる。また、前記粘度は、音叉型振動式粘度計(例えば、VIBRO VISCOMETER SV-10、株式会社A&D製)により測定することができる。
【0022】
本発明のシャボン玉液組成物は、ストロー等の吹き具の先端側の開口や、公知のシャボン玉生成装置のシャボン玉吐出口の開口と接触させることで、これら開口にシャボン膜を形成する。このシャボン膜に呼気や空気等の気体を吹き込んで、該シャボン膜を膨らませて、シャボン玉を形成する。
本発明のシャボン玉液組成物は、前述した(a)成分、(b)成分及び(c)成分を所定量含有するとともに、粘度を所定範囲とすることによって、シャボン膜の強度を高くすることができる。具体的には、吹き具やシャボン玉生成装置における前記開口に形成されたシャボン膜や、シャボン玉を形成した後のシャボン膜の強度を高くすることができる。このシャボン膜の強度は、例えば、後述する実施例のように、繊維体で表面が覆われた手や道具等で、浮遊中のシャボン玉を繰り返しはね返して接触させても、該シャボン玉が破裂し難い程の強度である。このような強度を有するため、本発明のシャボン玉液組成物では、シャボン玉が物に接触しても割れ難い上、シャボン玉の持続性に優れる。本発明のシャボン玉液組成物によれば、前述のシャボン膜の強度及び優れた持続性を有するため、シャボン玉を接触可能に利用することができ、シャボン玉を玩具として、又はイベント等の演出に用いたときに、シャボン玉の娯楽性を高めることができる。
なお、上述したシャボン膜の持続性及びシャボン膜の膜強度は、例えば、後述する実施例の〔シャボン膜の持続時間の測定〕及び〔シャボン玉の接触回数の測定〕にて評価することができる。
【0023】
また、本発明のシャボン玉液組成物は、界面活性剤として(a)成分及び(b)成分を前述の含有量で含有し、且つ(c)成分を前述の含有量で含有しているため、シャボン玉が割れたときに周囲が広く汚染され難い。ここで「汚染」とは、シャボン玉が割れたときに、周囲にシャボン玉液組成物が飛散することである。即ち、「汚染され難い」とは、シャボン玉液組成物が飛沫となって広がった領域が狭いことを意味する。また、「汚染され難い」効果をシャボン玉破裂時の汚染性防止効果ともいう。さらに、本発明のシャボン玉液組成物は、界面活性剤の濃度が低いため、シャボン玉が割れた痕跡が残り難く、シャボン玉液組成物を使用した後の後片付け等を容易に行うことができる。
【0024】
シャボン膜の強度をより向上させる観点から、(a)成分は、炭素数8~21の炭化水素基と、硫酸エステル塩基又はスルホン酸塩基とを有する陰イオン界面活性剤であることが好ましい。上記と同様の観点から、(a)成分は、炭素数が、好ましくは8以上、また好ましくは18以下、より好ましくは15以下であり、また好ましくは8~18、より好ましくは8~15のアルキル基を有する硫酸エステル塩基、該硫酸エステル塩基であって炭素数2~3のオキシアルキレン基の平均付加モル数が好ましくは0.1以上、より好ましくは0.3以上、さらに好ましくは0.4以上であり、また好ましくは6以下、より好ましくは3以下、さらに好ましくは1.5以下であり、また好ましくは0.1~6、より好ましくは0.3~3、さらに好ましくは0.4~1.5であるポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、炭素数8~15のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸塩、及び炭素数8~15のアルカンスルホン酸塩から選ばれる1種以上の陰イオン界面活性剤が好適である。塩としてはナトリウム塩、カリウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩等の無機塩、モノエタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等の有機アミン塩が挙げられる。
【0025】
シャボン膜の膜強度を向上させる観点から、(a)成分が、下記(a-1)成分であることが好ましい。
〔(a-1)成分〕
(a-1)成分は、(a1)で表される陰イオン界面活性剤である。
R11a-O-(PO)n1-SO3M2 (a1)
〔式中、R11aは、炭素数が8以上、好ましくは10以上であり、また18以下、好ましくは14以下であり、また8~18、好ましくは8~14のアルキル基であり、POは、プロピレンオキシ基であり、n1はPOの平均付加モル数であり、0以上、好ましくは0.1以上であり、また6以下、好ましくは2以下であり、また0≦n1≦6、好ましくは0.1≦n1≦2の数である。M2は陽イオンである。〕
【0026】
シャボン膜の膜強度を向上させる観点から、n1は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.3以上、さらに好ましくは0.4以上であり、また好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下、さらに好ましくは1.0以下、さらに好ましくは0.8以下であり、また好ましくは0.1~2、より好ましくは0.2~1.5、さらに好ましくは0.3~1.0、さらに好ましくは0.4~0.8である。
【0027】
前記一般式(a1)において、n1が0の場合には、R11aが分岐構造を有するアルキル基を含む化合物であることが好ましい。n1が0である場合、一般式(a1)の化合物は、分岐率が好ましくは15モル%以上、より好ましくは40モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上であり、また好ましくは100モル%以下であり、また好ましくは15モル%以上100モル%以下、より好ましくは40モル%以上100モル%以下、さらに好ましくは70モル%以上100モル%以下の化合物が好適である。前記分岐率は、一般式(a1)における化合物の総モル数に対する、分岐鎖アルキル基を有する化合物の総モル数の割合である。
【0028】
前記一般式(a1)中のM2としては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、マグネシウムイオン、アンモニウムイオン等の無機陽イオン、モノエタノールアンモニウムイオン、ジエタノールアンモニウムイオン、トリエタノールアンモニウムイオン等の有機陽イオンが挙げられるが、好ましくはナトリウムイオン、カリウムイオン、又はマグネシウムイオンである。
【0029】
前記一般式(a1)の化合物の調製方法としては、特に限定されず、任意の方法を用いることができる。前記一般式(a1)の化合物は、例えばR11a-OHで示される脂肪アルコールに、目的に応じてプロピレンオキシドを所定量付加させた後、液体又は気体の三酸化硫黄、三酸化硫黄含有ガス、発煙硫酸、及びクロルスルホン酸から選ばれる硫酸化剤で硫酸エステル化し、所定のアルカリ剤で中和して製造される。プロピレンオキシドの付加反応は触媒が必要である。前記触媒としては、NaOH、KOHなどの水酸化アルカリ、また、特開平8-323200号公報に記載の酸化マグネシウムを主成分とするものを用いることができる。前者は付加モル数分布が比較的広いポリオキシプロピレンアルキルエーテルを得ることができ、後者は比較的狭い付加モル数分布を有する化合物を得ることができる。また、特開平10-158384号公報に開示されているようにアルカリ触媒と金属酸化物触媒を併用することにより付加モル数分布を制御することも可能である。
【0030】
前記一般式(a1)において、n1が0である場合であって、好適なR11aが分岐構造を有するアルキル基を含む化合物であり、該化合物を得る場合、原料であるR11a-OHで示されるアルコールとして、炭素数8~14の1-アルケンをヒドロホルミル化して得られたアルコール(OH基に対してβ位にメチル基が分岐したアルキル基が15~70モル%含まれる)、炭素数4~8のアルデヒドを縮合させた後、還元して得られるゲルベ型アルコール(OH基に対してβ位に炭素数3~6のアルキル基が分岐した構造のものが100モル%含まれる)、イソブテンの2量体をヒドロホルミル化して得られる3,5,5-トリメチルヘキサノール、イソブテンの3量体をヒドロホルミル化して得られる多分岐トリデカノール(分岐率は100モル%である)、石油、石炭を原料とした合成アルコール(分岐率が約20~100モル%のアルキル基である)等を挙げることができる。
【0031】
シャボン膜の膜強度を向上させる観点から、(a)成分が、下記(a-2)成分であることが好ましい。
〔(a-2)成分〕
(a-2)成分は、下記一般式(a2)で表される陰イオン界面活性剤である。
R21a-O-(PO)n-(EO)m-SO3M3 (a2)
〔式中、R21aは炭素数8~18のアルキル基であり、POはプロピレンオキシ基であり、EOはエチレンオキシ基であり、nはPOの平均付加モル数及びmはEOの平均付加モル数であり、それぞれ0<n<1、0<m≦3の数である。M3は陽イオンである。〕
【0032】
前記一般式(a2)において、nで示されるプロピレンオキシドの平均付加モル数の下限値は、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.15以上、より好ましくは0.2以上、より好ましくは0.3以上である一方、nの上限値は、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.8以下、より好ましくは0.7以下、より好ましくは0.6以下である。
【0033】
(a-2)成分は、R21a-OHで表される化合物に、プロピレンオキシド(以下POともいう。)を付加させた後、次にエチレンオキシド(以下EOともいう。)を付加して得た化合物を硫酸化した後、中和して得ることができる。ここで、EOの平均付加モル数mは好ましくは0.5以上、より好ましくは0.9以上、さらに好ましくは1以上、さらに好ましくは1.3以上であり、また好ましくは2.5以下、より好ましくは2.3以下、さらに好ましくは2.0以下である。
【0034】
前記一般式(a2)中のM3としては、塩を形成する陽イオン基であり、アルカリ金属イオン、-N+H4(アンモニウムイオン)、及びモノエタノールアンモニウム基等のアルカノールアンモニウム基等が挙げられる。アルカリ金属としてはナトリウム、カリウム、リチウム等が挙げられるが、これらの中でナトリウム、又はカリウムであることが好ましい。また、アルカリ土類金属イオンが、対イオンとなっていてもよい。アルカリ土類金属イオンとしては、マグネシウム、カルシウム等が挙げられるが、これらの中でマグネシウムが好ましい。
【0035】
なお、本発明では、(a-2)成分に係る質量に関する記述(質量%や質量比)は、(a-2)成分の一般式(a2)中のM3を水素原子と仮定したときの質量(酸換算での比率)に基づくものとする。
【0036】
(a-2)成分は次のようにして製造することができる。
工程(I):直鎖1級アルコールにプロピレンオキサイドを付加させる工程
工程(II):上記工程(I)で得られたプロピレンオキサイド付加物にエチレンオキサイドを付加させる工程
工程(III):上記工程(II)で得られたアルコキシレートを硫酸化し、次いで中和する工程
【0037】
前記工程(I)、(II)を実施する方法としては、従来公知の方法を使用することができる。例えば、オートクレーブに、アルコールと該アルコールに対し0.5~1モル%のKOHを触媒として仕込み、昇温・脱水し、約120~160℃の温度で、それぞれ所定量のプロピレンオキサイド及びエチレンオキサイドを付加反応させる方法が挙げられる。この場合、付加形態はブロック付加であり、かつプロピレンオキサイド付加〔工程(I)〕、エチレンオキサイド付加〔工程(II)〕の順に行う。使用するオートクレーブは、攪拌装置、温度制御装置、自動導入装置を備えていることが好ましい。
【0038】
前記工程(III)は、前記工程(II)で得られたアルコキシレートを硫酸化し、次いで中和させる工程である。硫酸化の方法としては、液体又は気体の三酸化硫黄、三酸化硫黄含有ガス、発煙硫酸、クロルスルホン酸等を用いる方法が挙げられるが、特に、廃硫酸及び廃塩酸等の発生を防止する観点から、三酸化硫黄をアルコキシレートと同時にガス状又は液状で連続的に供給する方法が好ましい。
【0039】
硫酸化物の中和方法は、特に制限されず、任意の方法を採用することができる。前記中和方法としては、所定量の中和剤へ硫酸化物を添加・攪拌しながら中和を行うバッチ式と、硫酸化物と中和剤を配管内へ連続的に供給し、攪拌混合機にて中和を行うループ式等が挙げられる。中和方法に使用される中和剤としては、アルカリ金属化合物の水溶液、アンモニア水、トリエタノールアミン、アルカリ土類金属化合物の水溶液等が挙げられるが、これらの中でもアルカリ金属化合物の水溶液が好ましく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの水溶液がより好ましい。
【0040】
シャボン玉の膜強度を向上させる観点から、(b)成分は、スルホベタイン型界面活性剤であることが好ましい。スルホベタイン型界面活性剤としては、アルキル基の炭素数が10~18のN-アルキル-N,N-ジメチル-N-スルホプロピルアンモニウムスルホベタイン、N-アルキル-N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシスルホプロピル)アンモニウムスルホベタイン、アルカノイル基の炭素数が10~18のN-アルカノイルアミノプロピル-N,N-ジメチル-N-スルホプロピルアンモニウムスルホベタイン、N-アルカノイルアミノプロピル-N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシスルホプロピル)アンモニウムスルホベタインが好適である。
【0041】
シャボン膜の強度を確保しつつ、シャボン玉破裂時の汚染性防止効果を向上させる観点から、シャボン玉液組成物における陰イオン界面活性剤、即ち(a)成分の含有量は、0.05質量%以上1.00質量%未満であるが、好ましくは0.1質量%以上、より好ましくは0.2質量%以上であり、また好ましくは0.9質量%以下、より好ましくは0.7質量%以下であり、また好ましくは0.1質量%以上0.9質量%以下、より好ましくは0.2質量%以上0.7質量%以下である。
【0042】
上記と同様の観点から、シャボン玉液組成物におけるベタイン型界面活性剤、即ち(b)成分の含有量は、0.01質量%以上0.5質量%以下であるが、好ましくは0.02質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上であり、また好ましくは0.3質量%以下、より好ましくは0.15質量%以下であり、また好ましくは0.02質量%以上0.3質量%以下、より好ましくは0.05質量%以上0.15質量%以下である。
【0043】
シャボン玉の膜強度を向上させる観点から、シャボン玉液組成物における(a)成分及び(b)成分の合計含有量に対する、(a)成分の含有量の割合、即ち(a)成分の含有量/〔(a)成分の含有量+(b)成分の含有量〕は、好ましくは0.5以上、より好ましくは0.75以上であり、また好ましくは1.0以下、より好ましくは0.9以下であり、また好ましくは0.5以上1.0以下、より好ましくは0.75以上0.9以下である。
【0044】
また、貯蔵安定性や、膜強度を向上させる観点から、膜強度を損ねない範囲内で、本発明のシャボン玉液組成物は、(d)成分を含有することが好ましい。(d)成分は、非イオン界面活性剤である。非イオン界面活性剤としては、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ラウリルグリコシド等のアルキルグリコシド等が挙げられる。中でも、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル及び/又はアルキルグリコシドが好適である。但し、(d)成分は、後述する(f)成分であるアルキルグリセリルエーテルを除く。
【0045】
シャボン玉液組成物において(d)成分の含有量は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上であり、また好ましくは2.0質量%以下、好ましくは1.5質量%以下、さらに好ましくは1.0質量%以下であり、また好ましくは0.01質量%以上2.0質量%以下、より好ましくは0.03質量%以上1.5質量%以下、さらに好ましくは0.05質量%以上1.0質量%以下である。
【0046】
また、シャボン膜の膜強度を向上させて、シャボン玉を割れ難くする観点から、本発明のシャボン玉液組成物は、(e)成分を含有することが好ましい。(e)成分は、アミンオキシド型界面活性剤である。アミンオキシド型界面活性剤としては、N-アルカノイルアミノプロピル-N,N-ジメチルアミンオキシド(アルカノイルとしてはラウロイル又はミリスチロイル)、N-アルキル-N,N-ジメチルアミンオキシド(アルキル基としてはラウリル基又はミリスチル基)を挙げることができる。
【0047】
シャボン玉液組成物において(e)成分の含有量は、好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上であり、また好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.5質量%以下であり、また好ましくは0.01質量%以上2.0質量%以下、より好ましくは0.03質量%以上1.5質量%以下である。
【0048】
シャボン膜の膜強度を向上させる観点から、本発明のシャボン玉液組成物は、(f)成分を含有することが好ましい。(f)成分は、アルキルグリセリルエーテルである。アルキルグリセリルエーテルは非イオン界面活性剤に分類されるが、当該アルキルグリセリルエーテルと、他の非イオン界面活性剤とは区別するものとする。(f)成分は、アルキル基の炭素数が、好ましくは6~18、より好ましくは8~12であり、また好ましくは6以上、より好ましくは8以上であり、また好ましくは18以下、より好ましくは12以下である。具体的には下記一般式(1)の化合物が好適である。
R5-O-(Gly)r-H (1)
〔式中、R5は炭素数6~18のアルキル基を示し、Glyはグリセリンから2つの水素原子を除いた残基を示し、rは平均付加モル数で1~4の数を示す。〕
一般式(1)において、R5は炭素数6~18、好ましくは7~12、より好ましくは8~10、また、炭素数6以上、更に7以上、更に8以上、そして、18以下、更に12以下、更に10以下のアルキル基であり、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などの直鎖アルキル基を用いることができるが、本発明では膜強度向上の観点から、分岐構造を有する化合物が好適であり、R5の分岐構造を有する具体的なアルキル基として、2-エチルヘキシル基、sec-オクチル基、イソノニル基及びイソデシル基から選ばれる基がより好ましく、2-エチルヘキシル基又はイソデシル基が更に好ましく、2-エチルヘキシル基がより更に好ましい。一般式(3)において、rは1~3が好ましく、1~2がより好ましく、r=1の化合物が更に好ましい。より更に好ましい化合物は、R5が2-エチルヘキシル基で、かつ、r=1の化合物である。
【0049】
Glyで示される構造はグリセリンの1位と3位のヒドロキシ基が結合している-CH2CH(OH)CH2-で示される構造か、又はグリセリンの1位と2位のヒドロキシ基が結合している-CH(CH2OH)CH2-で示される構造であり、触媒や反応条件によって異なる。
一般式(1)の化合物を得るには、例えば炭素数6~10のアルコールとしてR5-OHで示されるアルキルアルコールを用い、エピハロヒドリンやグリシドールなどのエポキシ化合物とを、BF3などの酸触媒、あるいはアルミニウム触媒を用いて反応させて製造する方法を用いることができる。例えば、2-エチルヘキサノールを用いて製造する場合、得られる2-エチルヘキシルモノグリセリルエーテルは、特開2005-272750号公報に記載されているように複数の生成物を含み得る混合物である。
シャボン玉液組成物において(f)成分の含有量は、好ましくは0.01質量%以上2.0質量%以下、より好ましくは0.03質量%以上1.0質量%以下、更に好ましくは0.05質量%以上0.5質量%以下であり、また好ましくは0.01質量%以上、より好ましくは0.03質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上であり、また好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.0質量%以下、更に好ましくは0.5質量%以下である。
【0050】
本発明のシャボン玉液組成物は、前述した成分以外に、他の成分を含有することができる。他の成分としては、前記の(a)成分、(b)成分、(d)成分、(e)成分、及び(f)成分以外の界面活性剤や、含マグネシウム化合物等の無機化合物、脂肪酸、脂肪酸塩、溶剤、香料、染料、顔料、pH調整剤、水混和性有機溶剤、有機酸、香料前駆体、着色剤、天然物等のエキス、蛍光剤、酸化防止剤、防腐剤等が挙げられる。上述した一又は二の効果をより確実に奏させる観点から、シャボン玉液組成物における前記他の成分の含有量は、好ましくは0.0001質量%以上、より好ましくは0.0003質量%以上、さらに好ましくは0.0005質量%以上であり、また好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%以下であり、また好ましくは0.0001質量%以上1.0質量%以下、より好ましくは0.0003質量%以上0.5質量%以下、さらに好ましくは0.0005質量%以上0.3質量%以下である。
前記他の成分を複数種類用いる場合は、それらの合計含有量が上述の範囲内であることが好ましい。
【0051】
本発明のシャボン玉液組成物は、上述した成分を水に溶解/分散/乳化させた液体組成物の形態が好ましく、水溶液がより好ましい。用いる水は脱イオン水や蒸留水、或いは次亜塩素酸を0.5~10ppm程度溶解させた次亜塩素酸滅菌水などを使用することができる。シャボン玉破裂時の汚染性防止効果を向上させると共に、シャボン玉が割れた痕跡をより残存し難くする観点から、シャボン玉液組成物における水の含有量は、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上であり、また好ましくは99質量%以下、より好ましくは85質量%以下、さらに好ましくは80質量%以下であり、また好ましくは40質量%以上99質量%以下、より好ましくは50質量%以上85質量%以下、さらに好ましくは60質量%以上80質量%以下である。
【0052】
液の低温安定性とシャボン膜の安定性の観点から、本発明のシャボン玉液組成物の25℃におけるpHは、好ましくは4以上10以下、より好ましくは5以上8以下である。pHの調整は、硫酸、塩酸、リン酸から選ばれる無機酸、クエン酸、りんご酸、マレイン酸、フマール酸、コハク酸から選ばれる有機酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどの無機アルカリ剤を用いて行われる。中でも上記有機酸、好ましくはクエン酸と、無機アルカリ剤とを併用することが好適である。有機酸はナトリウム塩やカリウム塩の形態で組成物に配合しても差し支えない。なお、pH調整のために用いた化合物のうち、水酸化マグネシウム等の無機物は、上述した他の成分に該当するため、該他の成分として取り扱うものとする。
【0053】
本発明のシャボン玉液組成物は、前述のように、繰り返しはね返して接触させても、破裂し難い程の強度を有するシャボン玉の生成に好適に用いられる。シャボン玉の膜強度をより確実に確保する観点から、本発明のシャボン玉生成物を用いて生成される、シャボン玉の直径は、好ましくは20mm以上500mm以下である。
【0054】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は上述した実施形態に制限されず適宜変更可能である。
また、本発明のシャボン玉液組成物では、内部に呼気等の気体を封入したシャボン玉を生成することができるが、これに代えて微小液滴を含む気体を封入したシャボン玉を生成してもよい。微小液滴を含む気体は、該微小液滴が可視光を散乱することにより、半透明又は不透明となっているため、視認可能である。微小液滴を含む気体は、気体と微小液滴とを混合させて、生成することができる。微小液滴の生成方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば微小液滴の原料となる液体や固体を加熱によって揮散させる方法や、超音波振動によって霧化させる方法等が挙げられる。
【0055】
前記微小液滴の原料としては、例えばプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール等のグリコール類、グリセリン等の有機溶媒等が挙げられ、これらの中から選ばれる1種又は2種以上を用いることができる。微小液滴は、前述したように加熱や超音波振動によって揮散又は霧化させて、気体と混合される。微小液滴を含む気体を有色にする場合、微小液滴の前記原料と共に、着色料を加熱や超音波振動によって揮散又は霧化させる。着色料は、水溶性色素又は難水溶性色素を特に制限なく用いることができる。着色料としては、例えば、赤色2号(CI Acid Red 27)、赤色3号(CI Acid Red 51)、赤色225号(CI Solv. Red 23)、赤色102号(CI Acid Red 18)、赤色104号(CI Acid Red 92)、赤色105号(CI Acid Red 94)、赤色106号(CI Acid Red 52)、赤色201号(CI Pig. Red 57-1)、赤色213号(CI Basic Violet 10)、赤色226号(CI Vat Red 1)、赤色227号(CI Acid Red 33)、赤色230号(CI Acid Red 87)、赤色401号(CI Acid Violet 9)、赤色504号(CI Food Red 1)、黄色4号(CI Acid Yellow 23)、黄色5号(CI Food Yellow 3)、黄色202号(CI Acid Yellow 73)、黄色203号(CI Acid Yellow 3)等が挙げられる。
【0056】
また、揮発性の香気成分を含む気体を封入したシャボン玉を生成してもよい。この場合、該香気成分は、加熱や超音波等の公知の方法を用いて香料を気化又は霧化(微粒子化)して、気体や微小液滴を含む気体と混合された後、該気体と共にシャボン玉の内部に封入される。香料を気化又は霧化する際、必要に応じて香料をエタノール等の溶媒に溶解させる。
【0057】
本発明のシャボン玉液組成物により形成されたシャボン膜は、前述したように手や道具等で、繰り返しはね返して接触させても、該シャボン玉が破裂し難い程の強度を有している。そのため、本発明のシャボン玉液組成物により形成されたシャボン玉は、道具等を用いて下方から受け止めることができる。以下、シャボン玉を下方から受け止める部材を「受け体」ともいう。受け体は、シャボン玉Bを下方等から受け止める部材であり、シャボン玉を受けてその移動を止め得る狭義の受け止め部材の他、シャボン玉Bを跳ね返すことができる部材等も含まれる。即ち、本発明のシャボン玉液組成物により形成されたシャボン玉を受け体に供給した後、該シャボン玉を受け体上で受け止めた状態を眺めたり、あるいはお手玉の如く、該シャボン玉を受け体を用いて繰り返し跳ね返すことで、該シャボン玉を楽しむことができる。受け体としては、載置部材、装着物品、及び道具等が挙げられる。前記載置部材は、シャボン玉の載置場所を有する部材であり、載置場所及び載置されたシャボン玉の背景部分を有するものが好ましい。載置部材としては、例えばテーブル、椅子、台座、スクリーンパネル、カーペット、床材、カーテン、ベッド、寝具、車内シート、壁材、モニター等の表示装置等が挙げられる。前記装着物品としては、人の手等の身体の一部に装着されるものである。装着物品としては、手袋、靴、靴下、帽子等の装身具、シャツ、コート、パーカー、スカート、ジャンパー、カーディガン、ワンピース、ジャケット、パンツ、スウェット、和装等の衣類等が挙げられる。前記道具としては、テニス、卓球等のラケットを模した道具や、野球のバッドを模した棒状のもの、団扇等が挙げられる。
【0058】
シャボン玉の破裂を効果的に抑制する観点から、該シャボン玉を載置したり、該シャボン玉と繰り返し接触させる受け体は、その表面に繊維体を有していることが好ましい。斯かる受け体としては、少なくともシャボン玉と接触させる部位が繊維体からなる載置部材、装着物品、道具等が挙げられる。
繊維体としては、不織布、織布、編物、抄紙又はこれらの積層体等や、獣類の毛皮や皮革等の繊維状物質を用いることができる。不織布としては、例えば、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、スパンレース不織布、メルトブローン不織布、レジンボンド不織布、ニードルパンチ不織布などが挙げられ、これらの不織布を2種以上組み合わせた積層体や、これらの不織布とフィルム等とを組み合わせた積層体を用いることもできる。繊維体の繊維材料としては、天然繊維、再生繊維、半合成繊維、合成繊維等を使用することができる。天然繊維には、植物繊維と動物繊維とがある。植物繊維としては、綿、カポック等の種子繊維、リネン、ラミー、ヘンプ、ジュート等の靱皮繊維、マニラ麻、サイザル麻、ニュージーランド麻、ロープーマ等の葉脈繊維、やし等の果実繊維等の天然セルロース繊維を使用することができる。動物繊維としては、ケラチンを含む繊維を使用することができ、例えば、アルパカ、アンゴラ、カシミヤ、モヘアなどの獣毛繊維、絹等の繭繊維、ダウン、フェザー等の羽毛繊維等が挙げられる。再生繊維としては、天然繊維からのものと、再生繊維としては、レーヨン、キュプラ、テンセル、リヨセル等のセルロース系の繊維、カゼイン繊維、落花生タンパク繊維、トウモロコシタンパク繊維、大豆タンパク繊維、再生絹糸等のタンパク質系の繊維や、アルギン繊維、キチン繊維、マンナン繊維、ゴム繊維等が挙げられる。半合成繊維としては、アセテート、トリアセテート、酸化アセテート等のセルロース系の繊維、プロミックス等のタンパク質系の繊維、塩化ゴム、塩酸ゴム等が挙げられる。合成繊維としては、ナイロン、ナイロン6、ナイロン66、芳香族ナイロン、アラミド等のポリアミド繊維、ビニロン等のポリビニルアルコール繊維、ビニリデン等のポリ塩化ビニリデン繊維、ポリ塩化ビニル繊維、ポリエステル繊維、ポリアクリロニトリル繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン繊維、レクセ、サクセス等のポリエーテルエステル繊維、ポリウレタン繊維等や、ポリクラールを使用することができる。前記の繊維材料は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【実施例】
【0059】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、本発明は斯かる実施例に限定されるものではない。
【0060】
〔実施例1~21、比較例1~13〕
表1~4に示すシャボン玉液組成物を調製した。各実施例及び各比較例で用いた成分は以下の通りである。
【0061】
〔実施例1~21、比較例1~11で用いた成分〕
(a)成分 陰イオン界面活性剤:(a10)成分*1(花王株式会社製)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム*2(花王株式会社製:エマール 20C)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム*3(花王株式会社製:エマール 270J)、ラウリル硫酸ナトリウム*4(花王株式会社製:エマール 2F-30)
上記(a10)成分は、アルキル(C8‐12)エーテル硫酸エステルナトリウム(プロピレンオキサイド付加モル数0.6)(花王株式会社製)である。
(b)成分 ベタイン型界面活性剤:N-ラウリル-N,N-ジメチル-N-(2-ヒドロキシスルホプロピル)アンモニウムスルホベタイン(花王株式会社製:アンヒトール20HD)
表1~4中、前記の(b)成分を(b10)成分と表示する。
(c)成分 多価アルコール:グリセリン(花王株式会社製:化粧品用濃グリセリン)、ペンタエリスリトール(東京化成工業株式会社製:試薬 ペンタエリスリトール)
(c)成分 水溶性高分子:ポリビニルアルコール(日本酢ビ・ポバール株式会社製:商品名「JP-24」、)、ポリエチレングリコール(和光純薬工業社製:PEG Mw20000)、ポリビニルピロリドン*1(東京化成工業株式会社:試薬 ポリビニルピロリドン K 30 (平均分子量40000))、ポリビニルピロリドン*2(東京化成工業株式会社:試薬 ポリビニルピロリドン K 90 (平均分子量360000))
(c)成分 糖類:マンニトール(富士フイルム和光純薬株式会社製:試薬 D(-)-マンニトール)、ソルビトール(花王株式会社製:ソルビトール 花王)
【0062】
また、比較例12及び13では、下記の成分を用いた。比較例12及び13は、特許文献2に記載の実施例1及び2に相当する例である。グリセリンは、前記したものと同じものを用いた。
(a)成分 陰イオン界面活性剤:ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム*5(花王株式会社製:エマール E-27C)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸トリエタノールアミン*6(花王株式会社製:エマール 20T)
(c)成分 水溶性高分子:ヒドロキシエチルセルロース(ダウ・ケミカル日本社製:セロサイズQP-4400H)
(c)成分 糖類:グルコース(富士フイルム和光純薬株式会社製:試薬 D(+)-グルコース)、スクロース(富士フイルム和光純薬株式会社製:試薬 スクロース)
他成分 両性界面活性剤:アルキルアルカノールアミド(花王株式会社製:アミノーン PK-02S)、ヤシ酸アミドプロピルベタイン(花王株式会社製:アンヒトール 55AB)
【0063】
表1~表4に示す各シャボン玉液組成物について、下記に示す方法により、粘度及びシャボン膜の持続時間を計測した。また、シャボン玉の膜強度に関し、下記に示す方法により、シャボン玉の接触回数を測定した。さらに、シャボン玉が割れたときの周囲への汚染の程度、即ちシャボン玉破裂時の汚染性を評価した。
【0064】
〔シャボン玉液組成物の粘度の測定〕
シャボン玉液組成物を調製後、1日以上20℃静置し、その後、各シャボン玉液組成物の20℃における粘度(mPa・s)を音叉型振動式粘度計(VIBRO VISCOMETER SV-10、株式会社A&D製)を用いて測定した。測定開始から3分間連続測定を行い(データ更新間隔:5秒)、その平均値をシャボン玉液組成物の粘度とした。なお、20℃でのシャボン玉液組成物の密度は1.0g/cm3とした。測定結果を表1~4に示す。なお、実施例1、2、9、14~17におけるシャボン玉液組成物の粘度は、表中に表示していないが、何れも0.9mPa・s以上100mPa・s以下の範囲内であり、他の実施例と同等であった。
【0065】
〔シャボン膜の持続時間の測定〕
表1~表4に示す各シャボン玉液組成物に、直径150mmの開口を有するリング状の器具を含浸させて、該リング状の器具の開口にシャボン膜を形成し、該シャボン膜が形成してから破裂するまでの時間を測定した。具体的には、リング状の器具全体をシャボン玉液組成物に含浸させた後、該シャボン玉液組成物からリング状の器具を引き上げる操作を行い、該リング状の器具を引き上げてから、開口に形成されたシャボン膜が破裂するまでの時間を測定した。測定結果を表1~4に示す。
【0066】
〔シャボン玉の接触回数の測定〕
一般的に、シャボン膜の強度が高いほど、シャボン玉と繰り返し接触しても、該シャボン玉が破裂し難い。そこで、本実施例及び比較例では、シャボン膜の強度の指標として、以下に示すシャボン玉の接触回数を測定した。
表1~表4に示す各シャボン玉液組成物を用いてシャボン玉に、内径24.5mm、長さ100mmのシャボン玉ストローの先端部を浸し、該先端部とは反対側の端部から呼気を吹き込んで、直径約80mmのシャボン玉を生成した。次いで、軍手(商品名カラーのびのび手袋、アーテック社製)を装着した片方の手の掌にシャボン玉を載せた状態から、該シャボン玉を鉛直方向の上方に投げた。次いで、落下するシャボン玉を、再び軍手を装着した手の掌又は手の甲ではね返す動作(
図1参照)をシャボン玉が破裂するまで繰り返し、そのはね返す動作の回数をカウントした。
図1では、シャボン玉に符号Bを付してある。前記動作の際、シャボン玉を鉛直方向の上方に投げる高さ、及びシャボン玉をはね返す高さがそれぞれ、軍手を装着した手の掌又は手の甲から概ね20cmの離間距離となるように行った。このような操作を各シャボン玉液組成物につき5回繰り返し、これらの平均値をシャボン玉の接触回数(回)とした。下記表1~4において、軍手を装着した手の掌にシャボン玉を載せた状態から、該シャボン玉を上方に投げた後、軍手を装着した手の掌又は手の甲に落下する前に該シャボン玉が破裂した場合を接触回数「0」とした。測定結果を表1~4に示す。
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
表1~4に示す結果から明らかなように、実施例1~21では、シャボン膜の持続時間が少なくとも117秒以上であり、シャボン玉の接触回数が少なくとも19回以上であった。これに対し比較例1~13では、シャボン膜の持続時間が0秒のものがあり、シャボン玉の接触回数が0回のものもあった。即ち、実施例1~21におけるシャボン玉液組成物によれば、シャボン膜の持続性に優れ、且つシャボン玉の膜強度に優れることが示された。
【0072】
シャボン玉が破裂した時の汚染性について、以下の〔破裂したシャボン玉の飛散面積の評価〕及び〔破裂したシャボン玉の目視評価〕にて評価した。
【0073】
〔破裂したシャボン玉の飛散面積の測定〕
実施例8、比較例12及び比較例13におけるシャボン玉液組成物をそれぞれ用いて、前述の〔シャボン膜の接触回数の測定〕と同様の方法によって、シャボン玉を生成した。このシャボン玉を縦33cm、横24cmの台紙(商品名「たっぷりの液で書いても破れにくい半紙 LA3-5」、呉竹株式会社製)と接触させ、シャボン玉を破裂させた。次いで、前記台紙上に飛散したシャボン玉液組成物の面積(以下、飛散面積ともいう)を、定規を使用することによって測定した。この測定を、各シャボン玉液組成物につき2回繰り返し、これらの平均値を、飛散面積とした。測定結果を表5に示す。
【0074】
〔破裂したシャボン玉の目視評価〕
前述の〔破裂したシャボン玉の飛散面積の評価〕にて、台紙上に飛散したシャボン玉液組成物をパネラー3名が目視し、台紙上のシャボン玉液組成物の残存物について、下記の評価基準に基づき評価した。そして、パネラーが出した評価点の平均値を評価結果とした。評価結果を表5に示す。
5点:残存物を目視できず、全く気にならない。
4点:残存物を目視し難く、ほとんど気にならない。
3点:残存物を目視でき、少し気にならない。
2点:残存物が目立ち、やや気になる。
1点:残存物がかなり目立ち、非常に気になる。
【0075】
【0076】
表5の結果から明らかなように、実施例8では何れも、比較例12及び13に比して、シャボン玉破裂時の汚染性が抑制されていることが示された。具体的には、実施例8では、残存物が全く気にならないという結果であった。これは、破裂したシャボン玉の飛散面積が小さかったことに起因する。即ち、実施例8のシャボン玉液組成物によれば、シャボン玉が割れたときに周囲が広く汚染され難い。
【符号の説明】
【0077】
B シャボン玉