(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】光波長変換部品
(51)【国際特許分類】
G02B 5/20 20060101AFI20230314BHJP
F21V 7/30 20180101ALI20230314BHJP
F21V 9/32 20180101ALI20230314BHJP
F21V 29/502 20150101ALI20230314BHJP
F21V 29/70 20150101ALI20230314BHJP
H01S 5/022 20210101ALI20230314BHJP
H01S 5/024 20060101ALI20230314BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20230314BHJP
【FI】
G02B5/20
F21V7/30
F21V9/32
F21V29/502 100
F21V29/70
H01S5/022
H01S5/024
F21Y115:30
(21)【出願番号】P 2019030541
(22)【出願日】2019-02-22
【審査請求日】2021-12-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】八谷 洋介
(72)【発明者】
【氏名】荒川 竜一
(72)【発明者】
【氏名】桜井 利之
(72)【発明者】
【氏名】田中 智雄
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼久 翔平
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 経之
(72)【発明者】
【氏名】勝 祐介
【審査官】渡邊 吉喜
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/065051(WO,A1)
【文献】特開2018-107064(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20
H01S 5/022
H01S 5/024
F21V 9/32
F21V 7/30
F21V 29/502
F21V 29/70
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射した光の波長を変換する光波長変換部を有する光波長変換部材と、
銅より低い熱膨張率を有する第1の放熱部材と、
前記光波長変換部材と前記第1の放熱部材との間に介在する金属からなる第1の接合部と、
を備え、
前記光波長変換部材は、前記光波長変換部よりも前記第1の放熱部材側に反射膜を備えており、
前記第1の放熱部材の表面の少なくとも一部に、前記第1の接合部によって前記光波長変換部材と接合されるととともに、前記第1の放熱部材よりも熱伝導率が高い金属からなる第1の金属層を備
え、
前記光波長変換部材との間に前記第1の放熱部材を挟む第2の放熱部材と、前記第1の放熱部材と前記第2の放熱部材とを直接的にまたは間接的に接合する金属からなる第2の接合部と、を備え、
前記第2の放熱部材の熱伝導率は、前記第1の放熱部材の熱伝導率より高く、
前記第1の放熱部材と前記第2の放熱部材とは、前記第2の接合部を介して積層されるように配置された板状の部材であって、
前記第1の放熱部材の厚みより前記第2の放熱部材の厚みが大である、
光波長変換部品。
【請求項2】
入射した光の波長を変換する光波長変換部を有する光波長変換部材と、
銅より低い熱膨張率を有する第1の放熱部材と、
前記光波長変換部材と前記第1の放熱部材との間に介在する金属からなる第1の接合部と、
を備え、
前記光波長変換部材は、前記光波長変換部よりも前記第1の放熱部材側に反射膜を備えており、
前記第1の放熱部材の表面の少なくとも一部に、前記第1の接合部によって前記光波長変換部材と接合されるととともに、前記第1の放熱部材よりも熱伝導率が高い金属からなる第1の金属層を備え、
前記光波長変換部材との間に前記第1の放熱部材を挟む第2の放熱部材と、前記第1の放熱部材と前記第2の放熱部材とを直接的にまたは間接的に接合する金属からなる第2の接合部と、を備え、
前記第2の放熱部材の熱伝導率は、前記第1の放熱部材の熱伝導率より高く、
前記第1の放熱部材と前記第2の放熱部材とは、前記第2の接合部を介して積層されるように配置された板状の部材であって、
前記第1の放熱部材と前記第2の放熱部材とを厚み方向から見た場合に、前記第1の放熱部材の面積より前記第2の放熱部材の面積が大である、
光波長変換部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、光の波長を変換することができる光波長変換部品に関する。
【背景技術】
【0002】
ヘッドランプ、各種照明機器、レーザープロジェクター等では、発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)や半導体レーザー(Laser Diode:LD)等の青色光を蛍光体によって波長変換することにより白色を得ている。
【0003】
この蛍光体としては、樹脂系やガラス系などが知られているが、レーザーを用いた光源の高出力化に対応するため、耐久性に優れたセラミックス蛍光体が光波長変換部品に使用されつつある。
【0004】
また、蛍光体は、光の照射によって発熱する。そして、蛍光体が発熱して高温となると、蛍光体が発する光の強度(即ち、発光強度:蛍光強度)等の蛍光機能が低下する温度消光が発生する。そのため、効率よく蛍光体を発光させるためには、蛍光体から外部への排熱が必要となる。
【0005】
そこで、蛍光体に熱伝導率の高いCuからなる放熱部材を接合した光波長変換部品が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2017/110031号
【文献】特開2016-192295号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、Cuの熱膨張率は、蛍光体成分であるセラミックス材料の熱膨張率に比べて高い。そのため、蛍光体と放熱部材との接合後に熱サイクルが加わると、蛍光体やそのコーティング層(例えば反射膜)に熱応力が加わり、場合によっては、蛍光体の割れやコーティング層の剥離等の破損が発生することがある。
【0008】
この対策として、放熱部材の材料として、Cuより熱膨張率が低い、Cu-Mo合金を始めとするCu合金を採用することが考えられている(特許文献2参照)。しかし、これらの材料は、Cuに比べて熱伝導率が低いため、放熱性が低く、結果として発光強度が低下することがあった。
【0009】
本開示の一局面は、熱応力による光波長変換部材の破損の発生を抑制するとともに、優れた放熱性を有する光波長変換部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(1)本開示の一態様は、入射した光の波長を変換する光波長変換部を有する光波長変換部材と、銅(Cu)より低い熱膨張率を有する第1の放熱部材と、光波長変換部材と第1の放熱部材との間に介在する金属からなる第1の接合部と、を備えた光波長変換部品である。
【0011】
この光波長変換部品では、光波長変換部材は、光波長変換部よりも第1の放熱部材側に反射膜を備えている。さらに、第1の放熱部材の表面の少なくとも一部に、第1の接合部によって光波長変換部材と接合されるととともに、第1の放熱部材よりも熱伝導率が高い金属からなる第1の金属層を備えている。
【0012】
このような構成によれば、光波長変換部品を使用する際に、熱サイクルが加わった場合でも、第1の放熱部材は光波長変換部品の使用温度範囲においてCuよりも低い熱膨張率を有しているので、第1の放熱部材がCuからなる場合に比べて、例えばセラミックス蛍光体からなる光波長変換部に割れが生じにくい。また、反射膜等のように光波長変換部の表面に設けたコーティング層に剥離が生じにくい。
【0013】
しかも、第1の放熱部材は、その表面の少なくとも一部に、第1の接合部によって光波長変換部材と接合されている第1の金属層を備えており、その第1の金属層は第1の放熱部材よりも熱伝導率が高いので、放熱性に優れている。よって、光波長変換部の温度上昇を抑制できるので、発光強度の低下(即ち温度消光)を抑制することができる。
【0014】
つまり、前記光波長変換部品は、熱応力による光波長変換部材の破損の発生を抑制できるとともに、優れた放熱性を有するという顕著な効果を奏する。
(2)本開示の一態様では、光波長変換部は、セラミックス蛍光体であってもよい。
【0015】
セラミックス蛍光体は、光源を高出力化した場合でも、優れた耐久性を有する。一方、その熱膨張率は例えばCuに比べて低い。
そのため、セラミックス蛍光体にCu製の放熱部材を接合すると、熱サイクルが加わった場合に、光波長変換部品の破損が生じる恐れがある。しかし、本開示では、上述した構成を有することにより、熱サイクルによる破損を抑制できるとともに、セラミックス蛍光体による優れた性能を発揮することができる。
【0016】
(3)本開示の一態様では、第1の放熱部材は、Mo-Cu合金、Cr-Cu合金、W-Cu合金のいずれか1種からなっていてもよい。
これらの合金は、Cuよりも熱膨張率が低いので、第1の放熱部材の材料として、これらの材料を採用することにより、熱サイクルに起因する光波長変換部品の破損を効果的に抑制することができる。
【0017】
(4)本開示の一態様では、第1の接合部は、Cu、Ag、Auのうち、少なくとも1種を含む焼結体からなっていてもよい。
これらの金属(従ってこれらの金属を含む焼結体)は、高い熱伝導率を有しているので、第1の接合部における(光波長変換部側から第1の放熱部材側への)熱伝達性能が高くなる。よって、光波長変換部品は高い放熱性を有している。
【0018】
また、上述した金属の焼結体は、通常、多数の気孔(例えば40%以下の気孔率)を有している。このような構成によれば、第1の接合部の伝熱性を維持しつつ、第1の放熱部材と光波長変換部材との間の熱膨張差が緩和されるので、熱衝撃による第1の接合部の破損を抑制することができる。
【0019】
なお、上述した金属の焼結体から構成された第1の接合部は、半田等の金属からなる第1の接合部に比べて、低温で形成できるという利点がある。つまり、金属の融点よりも焼結体とする焼成温度が低いという利点がある。(なお、下記の第2の接合部についても同様である。)
(5)本開示の一態様では、第1の金属層は、Cu、Ag、Auのうち、少なくとも1種からなっていてもよい。
【0020】
これらの金属は、高い熱伝導率を有しているので、第1の金属層における(光波長変換部側から第1の放熱部材側への)熱伝達性能が高くなる。よって、光波長変換部品は高い放熱性を有している。
【0021】
(6)本開示の一態様では、光波長変換部材との間に第1の放熱部材を挟む第2の放熱部材と、第1の放熱部材と第2の放熱部材とを直接的にまたは間接的に接合する金属からなる第2の接合部と、を備えている場合に、第2の放熱部材の熱伝導率は、第1の放熱部材の熱伝導率より高くてもよい。
【0022】
このような構成によれば、金属からなる第2の接合部によって第1の放熱部材と第2の放熱部材とが接合されるとともに、第2の放熱部材の熱伝導率は第1の放熱部材の熱伝導率より高いので、第1の放熱部材のみの場合に比べて、放熱性に優れている。よって、光波長変換部の温度上昇を一層抑制できるので、発光強度の低下を一層抑制することができる。
【0023】
(7)本開示の一態様では、第2の放熱部材は、Cu、Ag、Auのうち、少なくとも1種からなっていてもよい。
上述したように、これらの金属は、高い熱伝導率を有しているので、第2の放熱部材(従って光波長変換部品)は高い放熱性を有している。
【0024】
(8)本開示の一態様では、第2の接合部は、Cu、Ag、Auのうち、少なくとも1種を含む焼結体からなっていてもよい。
上述したように、これらの金属(従ってこれらの金属を含む焼結体)は、高い熱伝導率を有しているので、第2の接合部における熱伝達性能が高くなる。よって、光波長変換部品は高い放熱性を有している。
【0025】
また、上述したように、金属の焼結体は前記気孔を有している。よって、第1の放熱部材と第2の放熱部材との間の熱膨張差が緩和されるので、熱衝撃による第2の接合部の破損を抑制することができる。
【0026】
(9)本開示の一態様では、第2の放熱部材の表面の少なくとも一部に、第2の接合部と接触するととともに、Cu、Ag、Auのうち少なくとも1種からなる第2の金属層を備えていてもよい。
【0027】
上述したように、これらの金属は、高い熱伝導率を有しているので、第2の金属層における熱伝達性能が高くなる。よって、光波長変換部品は高い放熱性を有している。
(10)本開示の一態様では、第1の放熱部材と第2の放熱部材とは、第2の接合部を介して積層されるように配置された板状の部材である場合に、第1の放熱部材の厚みより第2の放熱部材の厚みが大であってもよい。
【0028】
第2の放熱部材は第1の放熱部材よりも厚いので、例えば厚み方向から見て同じ面積である場合には、第2の放熱部材は第1の放熱部材よりも熱容量が大きい。よって、第1の放熱部材からの熱引きがよいので、第1の放熱部材(従って光波長変換部材)の温度上昇を効果的に抑制できる。
【0029】
(11)本開示の一態様では、第1の放熱部材と第2の放熱部材とは、第2の接合部を介して積層されるように配置された板状の部材である場合に、第1の放熱部材と第2の放熱部材とを厚み方向から見たときに、第1の放熱部材の面積より第2の放熱部材の面積が大であってもよい。
【0030】
この構成では、第1の放熱部材の面積より第2の放熱部材の面積が大であるので、第2の放熱部材による熱引きがよく、よって、第1の放熱部材(従って光波長変換部材)の温度上昇を効果的に抑制できる。
【0031】
<本開示の各構成の説明>
・光波長変換部としては、セラミックス蛍光体に限らず、樹脂製等の各種の蛍光体を採用できる。ここで、セラミックス蛍光体とは、セラミックス単体またはセラミックスを主成分とする蛍光体である。なお、主成分とは最も成分量(例えば重量%)が多いものを示している。
【0032】
・第1の放熱部材、第2の放熱部材、第1の接合部、第2の接合部、第1の金属層、第2の金属層に用いられる材料としては、上述した金属の単体や合金等が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】第1実施形態の光波長変換部品の模式的な断面図である。
【
図2】第1実施形態の光波長変換部品を備えた光複合装置の模式的な断面図である。
【
図4】第2実施形態の光波長変換部品の模式的な断面図である。
【
図5】第3実施形態の光波長変換部品の模式的な断面図である。
【
図6】第4実施形態の光波長変換部品の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.光波長変換部品の構成]
図1に示すように、本第1実施形態の光波長変換部品1は、光波長変換部材3と、第1の接合部5と、第1の放熱部材7と、第1の金属層8と、第2の接合部9と、第2の放熱部材11とを備える。以下、各構成について説明する。
【0035】
<光波長変換部材>
光波長変換部材3は、入射した光の波長を変換する部材である。光波長変換部材3は、板状のセラミックス蛍光体13と、反射防止膜15と、層状の反射膜部17と、層状の中間膜部19とを有する。
【0036】
(セラミックス蛍光体)
セラミックス蛍光体13は、蛍光性を有する結晶粒子を主体とする蛍光相と、透光性を有する結晶粒子を主体とする透光相とを有するセラミックス焼結体である。
【0037】
「蛍光相」とは、蛍光性を有する結晶粒子を主体とする相であり、「透光相」とは、透光性を有する結晶粒子、詳しくは蛍光相の結晶粒子とは異なる組成の結晶粒子を主体とする相である。
【0038】
また、「主体」とは、各相において、最も多く存在する成分を意味する。例えば、蛍光相は、蛍光性を有する結晶粒子が50体積%以上、好ましくは90体積%以上含まれる。また、例えば、透光相には、透光性を有する結晶粒子が50体積%以上、好ましくは90体積%以上含まれる。
【0039】
セラミックス蛍光体13を構成するセラミックス焼結体の各結晶粒子やその粒界には、透光相及び透光相以外の不可避不純物が含まれていてもよい。セラミックス焼結体には、透光相及び透光相がセラミックス焼結体の50体積%以上、好ましくは90体積%以上含まれる。
【0040】
セラミックス蛍光体13の材質は特に限定されないが、例えば、透光相の結晶粒子が化学式(1)Al2O3で表される組成を有し、蛍光相の結晶粒子が化学式(2)A3B5O12:Ceで表される組成(つまりガーネット構造)を有するとよい。
【0041】
なお、「A3B5O12:Ce」とは、A3B5O12中にCeが固溶し、元素Aの一部がCeに置換されていることを示す。蛍光相の結晶粒子は、Ceの固溶により、蛍光特性を示す。
【0042】
化学式(1)中のA元素及び化学式(2)中のB元素は、それぞれ下記の元素群から選択される少なくとも1種の元素から構成されている。
A:Sc、Y、ランタノイド(但し、Ceは除く)
(但し、Aとして更にGdを含んでいてもよい)
B:Al(但し、Bとして更にGaを含んでいてもよい)
セラミックス蛍光体13として、上記セラミックス焼結体を使用することで、蛍光相と透光相との界面での光の散乱が起き、光の色の角度依存性を減らすことができる。その結果、色の均質性を向上できる。
【0043】
また、上記セラミックス焼結体は、熱伝導率が優れているため、レーザー光の照射によって発生した熱を第1の放熱部材7側に排しやすい。そのため、レーザーの高出力域でも蛍光機能を維持することができる。
【0044】
一方で、セラミックス蛍光体13が単一組成であると、光の散乱が起こらないため、光の色の角度依存性が大きくなり、光の色のムラが生じるおそれがある。また、蛍光体として樹脂を用いると、熱伝導率が低下し、放熱が十分にできずに温度消光が起きるおそれがある。
【0045】
セラミックス蛍光体13の平均厚み(つまり、上面から下面までの平均距離)としては、0.05mm以上0.5mm以下が好ましい。
(反射防止膜)
反射防止膜15は、セラミックス蛍光体13の上面(つまり、第1の放熱部材7とは反対側の面:
図1の上側の面)に配置されている。
【0046】
反射防止膜15は、セラミックス蛍光体13での光の反射を抑制するための反射防止コーティング(ARコーティング)である。反射防止膜15により、セラミックス蛍光体13に光を効率よく吸収させることができる。また、セラミックス蛍光体13の内部で発生する光を効率よく外部に取り出すことができる。その結果、光波長変換部材3の発光強度が向上する。
【0047】
反射防止膜15の材質としては、例えば、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化タンタル、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、フッ化マグネシウム等が採用できる。
【0048】
反射防止膜15の平均厚みとしては、0.01μm以上1μm以下が好ましい。反射防止膜15は、単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。
(反射膜部)
反射膜部17は、セラミックス蛍光体13の下面(つまり、第1の放熱部材7側の面:
図1の下側の面)に配置されている。
【0049】
反射膜部17は、セラミックス蛍光体13内部で発生する光を反射することで、この光を光波長変換部材3の外部(
図1の上方)に効率よく放射させる。これにより、光波長変換部材3の発光強度が向上する。
【0050】
反射膜部17の材質としては、例えば、金属アルミニウム、銀などの金属に加え、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化ランタン、酸化タンタル、酸化イットリウム、酸化ガドリニウム、酸化タングステン、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、窒化ケイ素等が採用できる。
【0051】
反射膜部17の平均厚みとしては、0.1μm以上2μm以下が好ましい。
反射膜部17は、単層構造であってもよいし、多層構造であってもよい。
多層構造の場合には、
図1に示すように、例えば、酸化チタン膜21及び酸化ケイ素膜23からなる増反射膜25と、銀又はアルミニウムからなる反射膜27との積層構造を採用できる。なお、反射膜27が主として光を反射する膜であり、増反射膜25は、反射した光を増幅させる膜である。
【0052】
(中間膜部)
中間膜部19は、反射膜部17の下面に配置されている。中間膜部19は、反射膜部17と後述する第1の接合部5との間に配置されている。なお、第1の接合部5は、光波長変換部材3のうち、中間膜部19と接合されており、中間膜部19により、第1の接合部5と光波長変換部材3との接合性が向上する。
【0053】
中間膜部19は、酸化物膜29と金属膜31との積層構造を有する。
酸化物膜29の材質としては、例えば、酸化アルミニウム、酸化チタン等が採用できる。
金属膜31の材質としては、例えば、金、銀、ニッケル等が採用でき、この金属膜31としては、例えば、内側金属膜(例えばニッケル膜)33と外側金属膜(例えば銀膜)35との積層構造を採用できる。
【0054】
中間膜部19の平均厚みとしては、0.01μm以上1μm以下が好ましい。
なお、酸化物膜29及び内側金属膜33は、反射膜27の酸化を防止するとともに、強度を向上させるための保護膜である。
【0055】
また、外側金属膜35は、第1の接合部5との接合性を向上させる膜であり、第1の接合部5の材質に合わせて材質が選択される。ここでは、例えば、第1の接合部5が銀の焼結体である場合に合せて、銀を用いることができる。
【0056】
<第1の放熱部材>
第1の放熱部材7は、セラミックス蛍光体13よりも放熱性に優れた部材(即ち熱伝導率が高い部材)である。この第1の放熱部材7の熱伝導率としては、50W/m・K以上400W/m・K以下の範囲を採用できる。
【0057】
第1の放熱部材7は、銅よりも低い熱膨張率を有する。詳しくは、光波長変換部品1の使用温度領域(例えば室温(例えば25℃)以上300℃以下の範囲)において、銅よりも低い熱膨張率を有する。なお、第1の放熱部材7の熱膨張率としては、6×10-6/K以上15×10-6/K以下の範囲を採用できる。
【0058】
第1の放熱部材7の材質としては、Mo-Cu合金、Cr-Cu合金、W-Cu合金等を採用できる。
第1の放熱部材7は、例えば板状に構成される。第1の放熱部材7の平均厚みとしては、200μm以上500μm以下が好ましい。なお、第1の放熱部材7が薄すぎる場合には、熱効力を緩和する性能が低く、また、厚すぎる場合には、放熱性能が低下するので、上述した厚み範囲が好適である。
【0059】
<第1の金属層>
第1の金属層8は、第1の放熱部材7の表面を覆うように形成された金属層であり、第1の接合部5を介して光波長変換部材3に接合されている。
【0060】
この第1の金属層8は、第1の放熱部材7の表面全体を覆うように形成されていることが好ましいが、第1の放熱部材7の一部を覆うように形成されていてもよい。但し、第1の金属層8は、第1の接合部5と接していること(即ち接合していること)が必要である。
【0061】
つまり、第1の接合部5の下面の全体が、第1の金属層8の上面の全体に接していること(即ち接合していること)が好ましいが、第1の金属層8の一部が第1の接合部5に接している構成であってもよい。
【0062】
第1の金属層8の平均厚みとしては、例えば0.5μm以上5μm以下の範囲を採用できる。
第1の金属層8は、第1の放熱部材7よりも放熱性に優れた金属層(即ち熱伝導率が高い金属層)である。この第1の金属層8としては、300W/m・K以上の熱伝導率を有するものを採用できる。第1の金属層8の材質としては、銅、銀、金等が採用できる。
【0063】
<第1の接合部>
第1の接合部5は、光波長変換部材3と第1の放熱部材7(詳しくは第1の放熱部材7の表面上の第1の金属層8)とを接合している。第1の接合部5の平均厚みとしては、10μm以上70μm以下が好ましい。
【0064】
第1の接合部5は、光波長変換部材3の中間膜部19の下面と、第1の金属層8の上面との間に配置され、これら2つの面を接合している。
第1の接合部5の融点は、300℃以上である。第1の接合部5の融点が300℃未満であると、レーザーの高出力域において、光波長変換部材3からの熱で第1の接合部5が溶融し、脱離、破損等の欠陥が発生する。なお、第1の接合部5の融点としては、500℃以上が好ましく、800℃以上がより好ましい。
【0065】
第1の接合部5の熱伝導率は、120W/m・K以上である。第1の接合部5の熱伝導率が120W/m・K未満であると、光波長変換部材3からの排熱をより効果的に行う点において不足が生じるおそれがあり、レーザーの高出力域で蛍光機能が低下するおそれがある。なお、第1の接合部5の熱伝導率としては、150W/m・K以上が好ましい。
【0066】
第1の接合部5の材質は、少なくとも第1の接合部5の融点が上記条件を満たすことができれば特に限定されない。ただし、第1の接合部5の融点及び熱伝導率が上記条件を満たすことがより好ましい。さらに、上記条件を満たすために、第1の接合部5は、金、銀、銅、又はこれらの組み合わせのみから構成されるとよい。
【0067】
第1の接合部5は、気孔を有するとよい。第1の接合部5が気孔を有することにより、第1の放熱部材7と光波長変換部材3との間の熱膨張差が緩和されるので、熱衝撃による第1の接合部5の破損を抑制することができる。
【0068】
気孔を有する第1の接合部5は、例えば、上述した金属のナノ粒子を焼結することで得られる。ここでいうナノ粒子とは、ナノサイズオーダーの粒子を含む、平均粒径が数ナノメートルから数マイクロメートルの粒子群である。そして、第1の接合部5としては、金属のナノ粒子の焼結体が好ましい。例えば、金、銀、銅のうち、少なくとも1種を含む焼結体を採用できる。
【0069】
この焼結体では、焼結により互いに結合したナノ粒子間の空隙によって気孔が構成される。なお、気孔の最大幅(つまり、最大気孔径)は、5μm以下が好ましい。
第1の接合部5の気孔率としては、1%以上40%以下が好ましい。気孔率が1%未満であると、第1の放熱部材7と光波長変換部材3との間の熱膨張差の緩和効果が得られないおそれがある。一方、気孔率が40%を超えると、第1の接合部5の伝熱性の低下に伴って、光波長変換部材3の排熱効率が低下するおそれがある。
【0070】
なお、「気孔率」は、例えば接合部4の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して得られる観察断面において、気孔の占める面積割合(つまり、気孔と材料層との合計面積に対する気孔の合計面積の割合)として求められる。
【0071】
また、第1の焼結体5が、金、銀、銅のうち、少なくとも1種を含む焼結体である場合には、前記中間膜部19の表面金属膜35の材質としては、金、銀、銅のうち、少なくとも1種を採用できる。なお、金属の種類を一致させることがより好ましい。
【0072】
<第2の放熱部材>
第2の放熱部材11は、セラミックス蛍光体13よりも放熱性に優れた部材(即ち熱伝導率が高い部材)である。
【0073】
この第2の放熱部材11の材質としては、第1の放熱部材7より高い熱伝導率を有する金属を採用できる。例えば、銅、銀、金等を採用できる。
第2の放熱部材11は、例えば板状に構成される。第2の放熱部材11の平均厚みとしては、0.5mm以上2mm以下が好ましい。
【0074】
なお、第2の放熱部材11としては、第1の放熱部材7よりも厚みが大きく、平面視(
図1の上下方向から見た場合)の面積が広い形状を採用できる。
<第2の接合部>
第2の接合部9は、第1の金属層8と第2の放熱部材11とを接合する層である。つまり、第1の金属層8の下面と第2の放熱部材11の上面との間に配置されて、第1の金属層8の下面と第2の放熱部材11の上面とを接合する層である。
【0075】
第2の接合部9の平均厚みとしては、10μm以上70μm以下の範囲を採用できる。
第2の接合部9としては、第1の接合部5と同様な構成(例えば材質や構造)を採用できる。例えば、金、銀、銅のうち、少なくとも1種を含む焼結体を採用できる。
【0076】
そして、上述した第1の金属層8及び第1の放熱部材7により、さらに、第2の金属層63及び第2の放熱部材11により、セラミックス蛍光体13においてレーザー光の照射によって生じた熱の排熱が促進される。これにより、高出力域でのセラミックス蛍光体13の蛍光機能が維持される。
【0077】
[1-2.光波長変換部品の製造方法]
次に、光波長変換部品1の製造方法について説明する。
(セラミックス蛍光体の作製)
セラミックス蛍光体13は、例えば下記の方法や公知の方法によって製造することができる。
【0078】
例えば、Al2O3(平均粒径0.2μm)、Y2O3(平均粒径1.2μm)、Gd2O3(平均粒径1.1μm)、及びCeO2(平均粒径1.5μm)の粒子を、A3B5O12:Ce量が焼結体全体の30体積%になるように秤量した。
【0079】
これらの粒子をエタノールと共にボールミル中に投入し、16時間粉砕混合を行った。得られたスラリーを乾燥及び造粒し、得られた造粒粉をプレス成形した。さらに、得られた成形体を大気雰囲気中で、焼成温度を1600℃、保持時間を10時間として焼成を行い、セラミックス蛍光体13を作製した。なお、得られたセラミックス蛍光体13の相対密度は99%以上で十分に緻密化されていた。
【0080】
(反射膜及び反射防止膜の形成)
得られたセラミックス蛍光体13を所定寸法(例えば16mm角の平均厚さ200μmの板状)に加工した。
【0081】
このセラミックス蛍光体13の上面に、公知の方法(例えばスパッタリングや蒸着等)で反射防止膜15を形成した。なお、反射防止膜15として、図示しないが、SiO2層とTa2O5層とからなる複層コーティングを形成した。
【0082】
また、セラミックス蛍光体13の下面に、公知の方法(例えばスパッタリングや蒸着等)で、例えば酸化チタン膜21及び酸化ケイ素膜23を順次形成した(即ち増反射膜25を形成した)。
【0083】
さらに、酸化ケイ素膜23の表面に、公知の方法(例えばスパッタリングや蒸着等)で、例えばAgからなる反射膜27を形成した。
さらに、反射膜27の表面に、公知の方法(例えばスパッタリングや蒸着等)で、例えば酸化アルミニウムからなる酸化物膜29を形成した。
【0084】
さらに、酸化物膜29の表面に、公知の方法(例えばスパッタリングや蒸着等)で、例えばニッケル膜33及び銀膜35を順次形成した(即ち金属膜31を形成した)。
これによって、光波長変換部材3を得た。なお、上記工程で得られた光波長変換部材3を所定寸法(例えば3.5mm角)に切断した。
【0085】
(第1の放熱部材と第2の放熱部材の作製)
例えばCu-Mo合金製の板材を所定寸法(例えば12mm角の平均厚さ2mmの板状)に切断し、第1の放熱部材7を作製した。
【0086】
そして、この第1の放熱部材7の表面に、例えばメッキによって、例えば銅からなる第1の金属層8を形成した。
また、銅製の板材を所定寸法(例えば20mm角の平均厚さ2mmの板状)に切断し、第2の放熱部材11を作製した。
【0087】
(光波長変換部材と第1、第2放熱部材との接合)
光波長変換部材3と(第1の金属層8で覆われた)第1の放熱部材7との間、および、(第1の金属層8で覆われた)第1の放熱部材7と第2の放熱部材11との間に、市販の銀ナノ粒子を含む材料(即ち塗布剤)をそれぞれ配置し、焼結することによって、それぞれ第1の接合部5と第2の接合部9を形成した。なお、銀ナノ粒子に代えて、銅ナノ粒子や、銀ナノ粒子と銅ナノ粒子との混合粒子を含む塗布剤を用いてもよい。
【0088】
これによって、光波長変換部材3と(第1の金属層8で覆われた)第1の放熱部材7と第2の放熱部材11とが、第1の接合部5と第2の接合部9とによって接合された光波長変換部品1を得た。
【0089】
[1-3.光複合装置]
次に、上述した光波長変換部品1を備えた光複合装置41について説明する。
図2に示すように、光複合装置41は、光波長変換部品1と、光波長変換部品1が収容されたパッケージ43とを備える。
【0090】
パッケージ43は、箱状の容器、又は板状の基板である。パッケージ43は、例えば、アルミナ等のセラミックスを主成分としている。なお、ここで「主成分」とは、例えば80質量%以上含まれている成分を意味する。パッケージ43には、LED、LD等の発光素子を搭載する発光素子搭載領域が設けられていてもよい。
【0091】
[1-4.光源ユニット]
次に、光複合装置41が用いられる光源ユニット51について説明する。
図3に示すように、光源ユニット51は、光複合装置41と、発光素子等を備えた周知の複数の青色レーザー発振器(つまり、第1青色レーザー発振器53及び第2青色レーザー発振器55)と、ダイクロイックミラー57と、レンズ59とを備えている。
【0092】
光源ユニット51では、第1青色レーザー発振器53から光波長変換部品1に対して、
図3の右方向に第1青色光B1が照射される。第1青色光B1は、光波長変換部品1にて波長変換されると共に反射され、黄色光Yとして、
図3の左方向に出力される。黄色光Yは、
図3の左右方向に対して45°傾斜したダイクロイックミラー57にて反射され、レンズ59に出力される。
【0093】
また、第2青色レーザー発振器55からレンズ59に向かって
図3の上方向に照射された第2青色光B2は、ダイクロイックミラー57を透過して、レンズ59にそのまま出力される。
【0094】
これにより、レンズ59において、第1青色光B1と黄色光Yとが混合され、白色光が生成される。その結果、光源ユニット51では、レンズ59から
図3の上方に向かって白色光が出力される。
【0095】
[1-5.効果]
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)本第1実施形態は、光波長変換部品1を使用する際に、熱サイクルが加わった場合でも、第1の放熱部材7は(光波長変換部品1の使用温度範囲において)Cuよりも低い熱膨張率を有しているので、第1の放熱部材7がCuからなる場合に比べて、セラミックス蛍光体13に割れが生じにくい。また、反射膜27等のようにセラミックス蛍光体13の厚み方向の表面側に設けたコーティング層に剥離が生じにくい。
【0096】
さらに、第1の放熱部材7は、第1の接合部5によって光波長変換部材と接合されている第1の金属層8を備えており、その第1の金属層8は第1の放熱部材7よりも熱伝導率が高いので、放熱性に優れている。
【0097】
その上、本第1実施形態では、金属からなる第2の接合部9によって第1の放熱部材7と第2の放熱部材11とが接合され、第2の放熱部材11の熱伝導率は第1の放熱部材7の熱伝導率より高い。そのため、第1の放熱部材7のみの場合に比べて、放熱性に優れている。
【0098】
よって、セラミックス蛍光体13の温度上昇を抑制できるので、発光強度の低下(即ち温度消光)を抑制することができる。
このように、本第1実施形態では、熱応力による光波長変換部材3の破損の発生を抑制するとともに、優れた放熱性を有する光波長変換部品1を提供することができるという顕著な効果を奏する。
【0099】
(1b)本第1実施形態では、第1の放熱部材7は、Mo-Cu合金、Cr-Cu合金、W-Cu合金のいずれか1種からなっている。
これらの合金は、Cuよりも熱膨張率が低いので、第1の放熱部材7の材料として、これらの材料を採用することにより、熱サイクルに起因する光波長変換部品1の破損を効果的に抑制することができる。
【0100】
(1c)本第1実施形態では、第1の接合部5は、例えば、Cu、Ag、Auのうち、少なくとも1種を含む焼結体からなっている。
これらの金属(従ってこれらの金属を含む焼結体)は、高い熱伝導率を有しているので、第1の接合部5における熱伝達性能が高くなる。よって、光波長変換部品1は高い放熱性を有している。
【0101】
また、上述した金属の焼結体を用いる場合には、第1の接合部5の伝熱性を維持しつつ、第1の放熱部材7と光波長変換部材3との間の熱膨張差が緩和されるので、熱衝撃による第1の接合部5の破損を抑制することができる。
【0102】
(1d)本第1実施形態では、第1の金属層8は、Cu、Ag、Auのうち、少なくとも1種からなっている。
これらの金属は、高い熱伝導率を有しているので、第1の金属層8における熱伝達性能が高くなる。よって、光波長変換部品1は高い放熱性を有している。
【0103】
(1e)本第1実施形態では、第2の放熱部材11は、Cu、Ag、Auのうち、少なくとも1種からなっている。
上述したように、これらの金属は、高い熱伝導率を有しているので、第2の放熱部材11(従って光波長変換部品1)は高い放熱性を有している。
【0104】
(1f)本第1実施形態は、第2の接合部9は、例えば、Cu、Ag、Auのうち、少なくとも1種を含む焼結体からなっている。
上述したように、これらの金属(従ってこれらの金属を含む焼結体)は、高い熱伝導率を有しているので、第2の接合部9における熱伝達性能が高くなる。よって、光波長変換部品1は高い放熱性を有している。
【0105】
また、上述したように、第2の接合部9によって、第1の放熱部材7と第2の放熱部材11との間の熱膨張差が緩和されるので、熱衝撃による第2の接合部9の破損を抑制することができる。
【0106】
(1g)本第1実施形態では、第2の放熱部材11は第1の放熱部材7よりも厚いので、第2の放熱部材11は第1の放熱部材7よりも熱容量が大きい。よって、第1の放熱部材7(従って光波長変換部材3)の温度上昇を効果的に抑制できる。
【0107】
(1h)本第1実施形態では、第2の放熱部材11は第1の放熱部材7よりも面積が広い。よって、第1の放熱部材7(従って光波長変換部材3)の温度上昇を効果的に抑制できる。
【0108】
[2.第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明するが、第1実施形態と同様な内容については、その説明は省略又は簡略化する。なお、第1実施形態と同様な構成には同様な番号を付す。
【0109】
図4に示すように、本第2実施形態の光波長変換部品61は、第1実施形態とほぼ同様な構成を有している。
つまり、光波長変換部品61は、第1実施形態と同様に、光波長変換部材3と、第1の接合部5と、第1の放熱部材7と、第1の金属層8と、第2の接合部9と、第2の放熱部材11とを備える。
【0110】
特に本第2実施形態では、第2の放熱部材11の表面に、第2の金属層63を備えている。
この第2の金属層63は、第2の放熱部材11の表面全体を覆うように形成されていることが好ましいが、第2の放熱部材11の一部を覆うように形成されていてもよい。但し、第2の金属層63は、第2の接合部9と接していること(即ち接合していること)が必要である。
【0111】
第2の金属層63の平均厚みとしては、例えば0.5μm以上5μm以下の範囲を採用できる。
第2の金属層63は、第2の放熱部材11よりも放熱性に優れた金属層(即ち熱伝導率が高い金属層)である。この第2の金属層63としては、300W/m・K以上の熱伝導率を有するものを採用できる。
【0112】
第2の金属層63の材質としては、銅、銀、金等が採用できる。なお、第2の金属層63は、第1の金属層8と同様な材質を採用できるが、異なっていてもよい。
本第2実施形態は、第1実施形態と同様な効果を奏する。さらに、第2実施形態では、第2の放熱部材11の表面に、第2の放熱部材11よりも熱伝導率の高い第2の金属層63を備えているので、第1実施形態よりも一層放熱性に優れているという利点がある。
【0113】
[3.第3実施形態]
次に、第3実施形態について説明するが、第1実施形態と同様な内容については、その説明は省略又は簡略化する。なお、第1実施形態と同様な構成には同様な番号を付す。
【0114】
図5に示すように、本第3実施形態の光波長変換部品71は、第1実施形態と同様に、光波長変換部材3と、第1の接合部5と、第1の放熱部材7と、第1の金属層8とを備える。但し、第2の接合部9と第2の放熱部材11とを備えていない。
【0115】
なお、第1の放熱部材7の寸法としては、第1実施形態よりも面積が広く且つ厚みが大きな部材(例えば第2の放熱部材11と同様な寸法の部材)を採用できる。
本第3実施形態は、第1実施形態と同様な効果を奏する。但し、第1実施形態は第2の放熱部材11を備えているので、その分、放熱性が高い。また、本第3実施形態は、第1実施形態よりも構成を簡易化できるという利点がある。
【0116】
[4.第4実施形態]
次に、第4実施形態について説明するが、第3実施形態と同様な内容については、その説明は省略又は簡略化する。なお、第1実施形態と同様な構成には同様な番号を付す。
【0117】
図6に示すように、本第4実施形態の光波長変換部品81は、第3実施形態と同様に、光波長変換部材3と、第1の接合部5と、第1の放熱部材7と、第1の金属層8とを備える。
【0118】
本第3実施形態では、第1の放熱部材7の上面にのみ第1の金属層8を備えたクラッド材83を用いている。つまり、Cu-Mo合金板の厚み方向の一方の表面にCu板が積層されたクラッド材83を用いている。なお、第1の放熱部材7の厚み方向の両側に第1の金属層8を備えたクラッド材を用いてもよい。
【0119】
従って、光波長変換部材3とクラッド材83の上面側の第1の金属層8とが、第1の接合部5で接合されている。
本第4実施形態は、第3実施形態と同様な効果を奏する。
【0120】
[5.実験例]
以下に、本開示の効果を確認するために行った実験の内容とその評価とについて説明する。
【0121】
<実験に使用する試料>
本実験に用いる試料を作製した。なお、各試料を作製する場合には、下記に示す内容及び表1に示す内容以外は、前記実施形態と同様である。
【0122】
なお、試料No.1~3、13が、本開示の範囲外の比較例の試料(表1にてNGで示す試料)であり、試料No.4~12、14、15が、本開示の範囲内の実施例の試料(表1にてOKで示す試料)である。
【0123】
セラミックス蛍光体としては、前記第1実施形態と同様なセラミックス蛍光体を作製した。なお、セラミックス蛍光体の室温(例えば25℃)以上300℃以下の温度範囲の熱膨張率は8×10-6/Kである。
【0124】
そして、セラミックス蛍光体に、第1実施形態と同様に、反射防止膜、反射膜部、中間膜部をコーティングして形成し、各試料の光波長変換部材を作製した。
なお、光波長変換部材の寸法は、直径が7mm×厚みが0.1mmの円板状である。
【0125】
次に、下記表1に示すように、試料として、光波長変換部材に第1の接合部によって第1の放熱部材を接合した試料(No.1~6)を作製した。このうち、試料No.1、2は、第1の放熱部材に第1の金属層をコーティングしない試料であり、試料No.3~5は、第1の放熱部材に第1の金属層をコーティングした試料である。
【0126】
なお、第1の放熱部材の寸法は、縦20mm×横20mmの正方形の板材である。
また、他の試料として、光波長変換部材に第1の接合部によって第1の放熱部材を接合するとともに、第2の接合部によって更に第2の放熱部材を接合した試料(No.7~15)を作製した。なお、この試料No.7~15は、第1の放熱部材に第1の金属層をコーティングした試料である。
【0127】
なお、試料No.7~15では、第1の放熱部材の寸法は、直径が7mmの円板状であり、第2の放熱部材の寸法は、縦20mm×横20mmの正方形の板材である。
また、表1において、材質を示す元素の前の数値は、重量%を示している。例えばCu70Moの場合は、Cu30重量%、Mo70重量%を示している。また、試料No.2~4、13~15の第1の接合部は、半田からなる接合部である。
【0128】
<放熱性確認試験>
次に、前記試料を用いて行った放熱性確認試験(即ち耐レーザー出力性能の試験)について説明する。
【0129】
各試料に対して、465nmの波長を有するレーザー光(つまり青色LD光)を、レンズで直径0.5mmまで集光して照射した。そして、各試料が消光するまでレーザー光を照射する出力を徐々に上げてゆき、消光した際の出力を求めた。
【0130】
その結果を下記表1に記すが、レーザー出力が直径0.5mmの面積において15W以上が好ましいと考えられる。
<熱サイクル試験>
次に、前記試料を用いて行った熱サイクル試験(即ち発光強度の試験)について説明する。
【0131】
各試料を電気炉に入れ、-50℃~150℃(30分保持)の工程を、1000サイクル実施し、試験前後(試験後/試験前)の発光強度の比を求めた。その結果を下記表1に記すが、発光強度比は95%以上が好ましいと考えられる。
【0132】
なお、試験前後において、発光強度をパワーメータで測定した。このときの発光強度は、5Wのレーザーを直径0.5mmまで集光して照射してから120秒経過したときに測定されるものである。
【0133】
【表1】
<考察>
表1に示すように、第1の放熱部材を備えたNo.5、6の試料、即ち、第1の放熱部材にCuよりも低い熱膨張係数の材料を適用し、第1の放熱部材の表面に第1の放熱部材より熱伝導率の高い第1の金属層を備え、第1の接合部がAg焼結体である試料は、耐レーザー出力性能が20W~22Wであり、且つ、発光強度比が98%~99%であるので、好適である。
【0134】
つまり、放熱性が高いので温度消光が発生しにくく、且つ、熱サイクルが加わった場合でも、応力が緩和され易く、よって、反射膜等のコーティング層の剥離が抑制され易いので、好適である。
【0135】
また、第1の放熱部材と第2の放熱部材とを備えたNo.7~12の試料、即ち、第1の放熱部材にCuよりも低い熱膨張係数の材料を適用し、第1の放熱部材の表面に第1の放熱部材より熱伝導率の高い第1の金属層を備え、更に、第1の放熱部材よりも高い熱伝導率を有する第2の放熱部材を備え、第1、第2の接合部がAg焼結体である試料は、耐レーザー出力性能が25W以上であり、且つ、発光強度比が97%以上であるので、好適である。
【0136】
つまり、試料5、6に比べて、一層放熱性が高いので一層に温度消光が発生しにくく、且つ、熱サイクルが加わった場合でも、応力が緩和され易く、よって、反射膜等のコーティング層の剥離が抑制され易いので、好適である。
【0137】
さらに、第1の放熱部材と第2の放熱部材とを備えたNo.14、15の試料、即ち、第1の放熱部材にCuよりも低い熱膨張係数の材料を適用し、第1の放熱部材の表面に第1の放熱部材より熱伝導率の高い第1の金属層を備え、更に、第1の放熱部材よりも高い熱伝導率を有する第2の放熱部材を備え、第1、第2の接合部がAg焼結体又は半田である試料は、耐レーザー出力性能が17W~20Wであり、且つ、発光強度比が96%であるので、好適である。
【0138】
また、第1の放熱部材を備えたNo.4の試料、即ち、第1の放熱部材にCuよりも低い熱膨張係数の材料を適用し、第1の放熱部材の表面に第1の放熱部材より熱伝導率の高い第1の金属層を備え、第1の接合部が半田である試料は、耐レーザー出力性能が15Wであり、且つ、発光強度比が97%であるので、好適である。
【0139】
一方、比較例のNo.1~3、13の試料は、本開示の構成を備えていないので、耐レーザー出力性能が13W以下と低いか、または、発光強度比が63%以下と小さいので好ましくない。
【0140】
[6.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0141】
(6a)上記実施形態の光波長変換部品において、光波長変換部材は、必ずしも反射防止膜や中間膜部を有しなくてもよい。
また、反射膜部のうち、増反射膜を有していなくともよい。中間膜部のうち金属膜を設けなくてもよい。
【0142】
(6b)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。
【符号の説明】
【0143】
1…光波長変換部品、3…光波長変換部材、5…第1の接合部、7…第1の放熱部材、8…第1の金属層、9…第2の接合部、11…第1の放熱部材、63…第2の金属層