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特許7244313ニードル位置ずれ検出と遮断機構とを有する、体外血液導管システムの緊急遮断のための安全装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】ニードル位置ずれ検出と遮断機構とを有する、体外血液導管システムの緊急遮断のための安全装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/36 20060101AFI20230314BHJP
【FI】
A61M1/36 145
【請求項の数】 7
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019048238
(22)【出願日】2019-03-15
(65)【公開番号】P2019193775
(43)【公開日】2019-11-07
【審査請求日】2022-03-14
(31)【優先権主張番号】10 2018 106 094.7
(32)【優先日】2018-03-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517289480
【氏名又は名称】ベー・ブラウン・アヴィトゥム・アー・ゲー
【氏名又は名称原語表記】B. BRAUN AVITUM AG
【住所又は居所原語表記】SCHWARZENBERGER WEG 73‐79, 34212 MELSUNGEN, BUNDESREPUBLIK DEUTSCHLAND
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】カイ‐ウーヴェ・リッター
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-214293(JP,A)
【文献】特開2011-055882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニードル位置ずれ時に、体外血液導管システムの緊急遮断をトリガするための、体外血液処理装置用の体外血液導管システムの安全装置であって、
前記体外血液処理装置の導管を通る血流を減少又は遮断するように構成された遮断機構と、
―前記体外血液導管システムの静脈患者アクセス/接続と動脈患者アクセス/接続との互いに対する所定相対スタート位置を監視し、前記静脈患者アクセス/接続と前記動脈患者アクセス/接続が互いに対する前記所定相対スタート位置を有するか、又は互いに対する前記所定相対スタート位置に調節されており、
―前記静脈患者アクセス/接続と前記動脈患者アクセス/接続が前記所定相対スタート位置から互いに対して移動し又は移動されたか否かを判定し、かつ、
―前記静脈患者アクセス/接続と前記動脈患者アクセス/接続が前記所定相対スタート位置から互いに対して少なくとも所定の変化量を移動した時に前記遮断機構を作動させる/トリガする、
ように構成された作動/トリガユニットと、
を備え
前記作動/トリガユニットは、接続部と少なくとも1つの作動/トリガ部とを有し、前記作動/トリガ部は、前記静脈患者アクセス/接続および/又は前記動脈患者アクセス/接続に配置された前記遮断機構に連結されているか又は連結可能であり、前記遮断機構を作動させる/トリガするように構成されている安全装置。
【請求項2】
前記遮断機構は、前記作動/トリガ部が当該遮断機構に連結された時に開放位置にあり、前記作動/トリガ部が当該遮断機構から接続解除された時に遮断位置にある請求項に記載の安全装置。
【請求項3】
前記作動/トリガユニットの前記少なくとも1つの作動/トリガ部が前記接続部の長手軸心に沿って変位かつ固定可能であるか、若しくは、複数の作動/トリガ部が前記接続部に沿って配置されている請求項2に記載の安全装置。
【請求項4】
前記遮断機構は、互いから別々に作動/トリガ可能な、互いから分離した複数の部分遮断機構を有し、
動脈部分遮断機構が前記動脈患者アクセス/接続に配設され、静脈部分遮断機構が前記静脈患者アクセス/接続に配設されている請求項1からのいずれか一項に記載の安全装置。
【請求項5】
前記作動/トリガユニットは第1作動/トリガユニットであり、前記遮断機構は第2作動/トリガユニットを更に有し、
前記第1作動/トリガユニットは、前記静脈部分遮断機構に連結されているか又は連結可能であり、かつ、前記静脈部分遮断機構を作動させる/トリガするように構成され、更に、前記動脈患者アクセス/接続および/又は前記動脈部分遮断機構に接続され、
前記第2作動/トリガユニットは、前記動脈部分遮断機構に連結されているか又は連結可能であり、かつ、前記動脈部分遮断機構を作動させる/トリガするように構成され、更に、前記静脈患者アクセス/接続および/又は前記静脈部分遮断機構に接続されている請求項に記載の安全装置。
【請求項6】
前記作動/トリガユニットは、前記静脈患者アクセス/接続と前記動脈患者アクセス/接続との互いに対する前記所定相対スタート位置を、センサによってモニタリングする、および/又は、前記遮断機構を電子的に制御するように構成されている請求項1に記載の安全装置。
【請求項7】
前記遮断機構は、前記体外血液処理装置の前記導管をクランプするための、バネ部材によってリセットされるように構成された導管クランプ部材、又は、ストップバルブを有する請求項1からのいずれか一項に記載の安全装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの患者アクセス部、特に、アクセスカニューレの、所定の相対スタート位置からの相対移動に基づき、体外血液処理装置の(血液)導管を通る血流を遮断又は減少させるべく遮断機構を作動させる又はトリガ(起動)する、体外血液処理装置、特に透析装置の、遮断装置である。換言すると、本発明は、安全システム/安全装置(ニードル位置ずれ検出ユニット、特に、相対位置/位置検出ユニットと、遮断装置とを有する)を含む、体外血液処理装置用の、又は体外血液処理装置の、体外血液導管システムに関する。前記安全システム/安全装置は、前記体外血液導管システムの静脈および動脈患者アクセス/接続(これらは血液導管システムに本来備えられている患者接続部である)間の相対位置の変化に応答する。所定の又は予め決定可能な(検出される)量の前記体外血液導管システムの前記相対位置の変化によって、安全システム/安全装置は、体外血液導管システムの流断面を少なくとも部分的に(少なくとも1つの位置において)遮断又は減少させる。
【背景技術】
【0002】
透析、特に、血液透析、血液濾過および血液透析濾過は、腎不全における最も一般的な治療を構成し、これは病院で、そして、患者自身によって家庭で行うことが可能な患者のための頻繁で規則的な治療を必要とする。
【0003】
透析治療においては、患者を透析装置に接続するべく、動脈アクセスカニューレ(体外血液導管システムの動脈接続部)を使用して動脈アクセスが配置され、静脈アクセスカニューレ(体外血液導管システムの静脈接続部)を使用して静脈アクセスが配置される。この目的のために、静脈ドエルカニューレ/留置静脈カニューレ/長期カニューレ又はカテーテルが使用され、ここで、プラスチックチューブ又はドエルチューブが金属カニューレ/注射ニードルを介して、患者の静脈に挿入され、前記金属カニューレ/注射ニードルの除去後、(患者)アクセスとして患者の静脈内に留まる。前記静脈ドエルカニューレは従来技術から十分に知られている。
【0004】
もしも透析治療中に、前記静脈患者アクセス、又はより正確には、静脈内に留まる前記プラスチックチューブが、患者の血管/静脈から外れるか、部分的又は完全に抜け出すことを、静脈ニードル位置ずれ(VND)という。これは重大な問題であり、患者にとってのリスクである。そのようなケースにおいて、透析装置を通って流れた血液は患者の循環系に戻らず、特に、治療装置の血液ポンプによって、環境に送り込まれる。VNDの場合、平均的な患者は、5分間以内にその総血液量の50%まで失うかもしれず、患者のバイタルサインが重大に損なわれるまでに2分間でも既に十分である。従って、VNDを可能な限り迅速に検出することが絶対に必要である。その反応時間に応じて、その結果は、比較的に少ない血液損失か、感染リスクの増大、不可逆的脳損傷から死までの範囲にわたる。患者にとっての肉体的および精神的影響に加えて、必要な血液およびフォローアップ治療による高いコストがかかる。特に家庭での透析と夜間治療において、患者が通常睡眠中である間は、患者自身がVNDに気づいて時間内に対応し注意を向けることができないので、VNDは危険である。
【0005】
VNDはほとんどいかなる時にでも起こり得ることが特に問題である。患者の落ち着きの無さあるいは精神障害や、治療中の筋痙攣の発生等といったいくつかのリスクファクタが知られているが、VNDは理想的な条件下でも起こり従って予測することはほとんどできない。
【0006】
VNDのリスクを低減するために、アクセスを設置し固定するやり方についての指図が存在する。更に、VNDの発生を検出し、アラームをトリガし、可能であれば血液処理装置の血液ポンプを閉じることができ、体外血液導管システムの流断面を減少させることが可能な解決手段が存在する。
【0007】
原則として、そのような解決手段は、例えば、透析装置において標準として提供されるFrescenius Medical Care、によるVAMシステムによって、静脈導管、特に、静脈アクセスにおける圧力のモニタリングを提供する。しかしながら、静脈圧曲線のモニタリングは、とりわけ、その圧力が複数の要因に応じて大きく変動しうることから、不正確であることで有名である。従って、VNDは、遅延とともに部分的に検出されるにすぎず、これが患者がアラームがトリガされるまでに既に多量の血液を失ってしまっている理由である。更に、例えば、前記ニードル又はその固定具における流れ抵抗により、ニードルが不完全に取り外された時、その圧力低下が余りにも小さく、それがVHDとして検出されずアラームが全くトリガされないことも起こり得る。
【0008】
別の解決手段は、アクセスでの漏れを、アクセスに配置された、環境への血液の損失をモニターする漏れ又は水分センサによって検出するというものであり、これは、例えば、ニードルに固着され、既存の少量の漏れ流体を検出する使い捨て式センサパッドを有する、Fresennius Medical Care社のVenAcc、およびRedsence Medical社のRedsenceを用いて行われる。しかしながら、これらの装置は、この目的のためには高価な補助装置と使い捨て品が必要とされるために部分的にかなりの追加費用を伴い、ヒューマンエラーを排除することができないものである。
【0009】
従って、公知の解決手段は、VNDの100%安全な検出を可能にするものではない。更に、誤使用、または故障或いは狭すぎる限界値によるフォルスアラームの可能性が高いので、静脈アラームは単純に切られてしまい、その結果、アラームが鳴っているにも拘らず、VNDが適時に検出されないかもしれない。更に、前記公知のシステムは、その信号が透析装置に内蔵されるコントローラによって処理されるセンサを配置する必要があるため極めて複雑であり、それによって、装置、特に、前記体外血液導管システムは、使い捨て式システムとしてより高価なものとなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の課題は、特に、既存のシステム/安全装置の上述した問題点を解消し、特に、例えばVNDを確実かつ迅速に検出することを可能にし、血流が可能な限り迅速に断絶/低減されることを可能にする、特にVNDのケースにおける安全装置(システムに内蔵)を有する、体外血液導管システムを利用可能にすることにある。更に、前記体外血液導管システム、特に、その血液損失を防止する前記安全装置は、可能な限り単純でコスト的に有利なものでなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この課題は、請求項1の特徴を有する、体外血液導管システムの安全装置、特に、体外血液処理装置の、又は、体外血液処理装置用の、体外血液導管システムによって達成される。本発明の好適な構成は従属請求項の発明である。
【0012】
より良い理解のために、このコンテクストにおいて、以後、常に、血流との関連で考慮されるべき、「上流側」と「下流側」という用語が使用されることが指摘される。
【0013】
前記課題は特に、好ましくは透析装置である体外血液処理装置用の、又は当該体外血液処理装置の、本発明による体外血液導管システムのニードル位置ずれ検出及び遮断機構を有する安全装置であって、ニードル位置ずれ(特にVDN)の場合に、体外血液処理装置の体外血液導管システムの緊急遮断をトリガするための安全装置、によって達成される。前記安全装置は、前記体外血液処理装置の、又は、当該体外血液処理装置用の、前記体外血液導管システムの導管を通る血流を低減又は遮断するように適合(構成)された遮断機構(たとえば、チューブクランプ又は閉止バルブ)を有する。更に、前記安全装置は、互いに対して所定のスタート位置をとるか、もしくは、その位置にセットされる、前記体外血液導管システムの、好ましくはアクセスカニューレである静脈患者アクセス/接続と、好ましくはアクセスカニューレである動脈患者アクセス/接続とが、前記所定相対スタート位置から(所定の又は予め決定可能な量)移動した場合に、前記遮断機構を(自動的/自作動式に)作動させる/トリガするように適合(構成)された(もっぱら機械的に作動/機能する)起動/トリガユニット(ニードル位置ずれ検出ユニットとも称される)を有する。
【0014】
このように本発明による前記安全装置の前記起動/トリガユニットは、基本的に2つの作用を採る。即ち、前記体外血液導管システムの前記2つの患者アクセス間の、元に設定された/現在の相対位置の変化を検出する(それに応答する)ことと、決定された/予め決定可能な量の変化に達した/又はそれを超過した時に、前記少なくとも1つの遮断機構をトリガすることである。
【0015】
本発明による前記安全装置は、そのために、少なくとも2つの患者アクセス/接続、好ましくは、アクセスカニューレ、が必要とされる、それぞれの体外血液処理、特に、血液透析、血液濾過および血液透析濾過、のために使用することができる。
【0016】
公知のシステムとの比較におけるこのタイプの新しい安全装置の利点は、そこから間接的にニードル位置ずれを断定することが可能な体外血液導管システム内の圧力損失/圧力変動をもはや検出する必要がなく、体外血液導管システムの2つの(静脈及び動脈)患者接続部の位置の変化または相対位置を直接検出することができ、これにより即座に前記体外血液導管システムの緊急遮断を迅速且つ確実に行うことが可能であることにある。
【0017】
基本的に、本発明による前記安全装置の2つのバリエーション、即ち、
一方において、それによって前記遮断機構をトリガすることが可能となる前記2つの患者アクセスの機械的接続と、
他方において、センサによる前記2つの患者アクセスの相対位置のモニタリング、及び前記遮断機構の電子制御と、を区別することができる。
【0018】
これら2つのバリエーションはそれぞれ別に構成又は改変することが可能である。前記バリエーションといくつかの実施例とについて以下より詳細に説明する。
【0019】
本発明は、体外血液処理のために、複数の、特に2つの患者アクセスが、体外血液処理装置(体外血液導管システム)を血液循環系に、具体的には患者の血管に接続するために設置され、前記アクセスが、皮膚等の患者の表面に対して固定、好ましくは接着され、従って、患者に対して、かつ、互いに対して、位置固定され、これによってそれらの相対スタート位置に設定されるという技術的必要性を利用するものである。その結果、前記患者アクセスの一方のニードル位置ずれの場合に、個別の患者アクセス、又は、これら患者アクセスの両方が移動するので、これら2つの患者アクセスの互いに対する相対変位が発生し、この変位を検出することが可能である。従って、本発明に依れば、前記遮断機構は、前記相対位置に応じて、トリガ/作動される。
【0020】
更に、標準として体外血液処理装置(体外血液導管システム)に組み込まれている前記圧力モニタリングシステムを、本発明による前記検出ユニットによってトリガすることができ、それによって、前記装置に既存の遮断機構を作動させ、および/又は、本発明による安全装置は、(体外血液処理装置に既存の遮断機構に加えて)それ自身の遮断機構を有する。前記体外血液導管システムの静脈側、即ち、例えば透析装置の透析フィルタの下流側の各導管を通る血流を、前記体外血液処理装置又は前記安全装置に既存の前記遮断機構を通じて、特に静脈患者アクセスにおいて遮断することによって、血流が遮断される位置の上流側の血圧が増大する。前記体外血液導管システムの動脈側、即ち、例えば透析装置の透析フィルタの上流側の各導管を通る血流を、前記体外血液処理装置又は前記安全装置に既存の前記遮断機構よって、特に動脈患者アクセスにおいて遮断することによって、血流が遮断される位置の下流側の血圧が低下する。いずれの場合においても、前記遮断によって、体外血液処理装置の血液ポンプが患者の血管から血液を環境へと送り出すことが防止される。
【0021】
上述した圧力変動が急に発生して十分に大きい場合、前記処理システム、特に、前記透析システム内に標準装備されている前記圧力モニタリングシステムによって安全に検出される。これにより、前記血液処理装置の応答を開始することが可能となる。即ち、即座にアラームを出力することが可能となり、必要な場合には、血液ポンプを停止することができる。この点において、たとえアラームを手動によって停止させることが可能であったとしても、血流の遮断又は減少が継続することによって、アラームを再び即座に発することが可能であることが特に有利である。基本的に、前記安全装置の前記遮断機構は、前記体外血液導管システムのいかなる位置に設けることも可能であって、前記静脈又は動脈アクセスに限定されるものではない。
【0022】
前記安全装置の前記遮断機構は、互いに空間的に離間された単数又は複数のサブアセンブリ(たとえば、バルブ、チューブクランプ、等)から構成することができる。サブアセンブリは、更に、特に、所定位置において、前記体外血液導管システムを通る血流を遮断又は減少させるように構成することが可能であり、或いは、複数の所定位置の1つにおいて血流を遮断又は減少させるように構成することも可能である。
【0023】
本発明の好適態様に依れば、前記静脈患者アクセス/接続と前記動脈患者アクセス/接続の前記所定相対スタート位置は、前記検出ユニット、特に、作動/トリガユニットによって機械的に調節され、特にセットされ、または、これらユニットによって調節され、特にセットされる。換言すると、本発明のこの態様による前記静脈患者アクセスおよび前記動脈患者アクセスは、体外血液処理中にそれらの相対スタート位置において互いに(たとえば、前記検出ユニットを形成する接続ロッド又はジョイント機構を介して)機械的に連結される。これが、本発明による前記検出ユニットの上述した基本バリエーションの1つ目に対応する。
【0024】
従って、ダブルニードル患者接続部、好ましくは、ダブルニードル透析による体外血液処理は、前記2つの患者アクセスが例えば患者の動脈血管と静脈血管とに挿入されることが基本と見なされる。このように、前記2つの接続部/ニードル/カニューレは、互いに近接して配置されるとともに、更に、血管に沿って配置され、その対応位置においてその延出部分が広義に直線状又は平行であると想定される。従って、前記両患者アクセスも又、それらの相対スタート位置において互いにほぼ直線的にまたは平行に配置されると想定することができる。これにより、例えば接続ロッド/複数の接続ロッドの配置によって機械的連結を確立することが可能になるか、少なくとも容易になる。
【0025】
有利なことに、本発明のこの態様による検出ユニットでは、例えば射出成形によって低コストで製造することができる非常に単純な構成部品を使用することが可能である。検出ユニットの単純な構成によって、その操作が簡単になり医療スタッフによる誤操作の可能性が低くなる。さらに、前記機械的連結により、2つの患者アクセスが相互の張力緩和をもたらし、その結果、前記連結なしではニードルの位置ずれを伴う可能性があるわずかな張力またはジャークの場合に、患者アクセスが滑り落ちることが防止される。
【0026】
本発明の別の好ましい態様によれば、前記検出ユニット、特に、前記作動/トリガユニットは、好ましくはロッド形状の接続部と、少なくとも1つの好ましくはピン形状の作動/トリガ部とを含む。前記作動/トリガ部は、好ましくは静脈患者アクセス/接続および/又は好ましくは動脈患者アクセス/接続に配置される、前記安全装置の前記遮断機構に連結されているかまたは連結可能である。さらに、前記作動/トリガ部は、前記遮断機構を作動させる/トリガするように構成されている。
【0027】
前記静脈および/または動脈患者アクセスにおける前記遮断機構の好ましい配置は、前記好適構成における前記遮断機構または遮断機構の一部が、各患者アクセスおいて直接に配置されるか、もしくは、対応の患者アクセスに接続された、前記患者アクセスに直接隣接する前記(血液)導管に接続されるか、或いは、前記患者アクセスと前記導管との間の接続部分として提供される、ようなものを意味している。
【0028】
基本的に、検出ユニットの機械的接続部は、任意の適切な形状、例えば曲線状または板状の接続をとることができる。同様に、前記安全装置の前記作動/トリガ部も、前記安全装置の前記遮断機構を作動させるまたはトリガするように構成される任意の形状をとることができる。好ましくは、前記少なくとも1つの作動/トリガ部は、(すでに前述したように)ピン形状であり、前記遮断機構を作動させるために、具体的には、各導管を通る血液を解放するために、当該遮断機構の挿入穴またはアイに挿入されるように構成される。前記ピンの長さは、一方ではピンが遮断機構内に安全に挿入され、容易に抜け落ちることができないように十分に長く、他方では、一方の患者アクセスにおけるニードル位置ずれ時に、前記接続部を介して伝達された引張力によって他方の患者のアクセスも患者の血管から滑り出る前にピンが前記遮断機構から外れるように十分短い。
【0029】
前記接続部は、わずかに弾性変形可能であることが好ましい。これにより、互いに対する患者アクセスの位置のわずかな偏差を補償することが可能である。しかしながら、ニードル位置ずれの場合には、単に連結部が変形するだけで、遮断機構と作動/トリガユニットとの間の連結が外れない程度に弾性はそれほど高くてはならない。
【0030】
本発明の別の好ましい態様によれば、例えば閉鎖方向にばね付勢されたチューブクランプの形態の遮断機構(図に概略的にのみ示されている)は、前記好ましくはピン式の作動/トリガ部が前記遮断機構に接続された時に開放位置に維持され、前記作動/トリガ部が前記遮断機構から切り離された時に遮断位置に移動する。したがって、患者の血液が体外血液導管システムを通って流れることができるのは、前記作動/トリガユニットが遮断機構に接続されているときにだけとなるように保証される。したがって、前記作動/トリガユニットが遮断機構に配置されずに、すなわち遮断装置が作動することなく、体外血液処理を開始することは不可能である。
【0031】
本発明の別の好ましい態様によれば、前記作動/トリガユニットの前記少なくとも1つの作動/トリガ部は、前記検出ユニットの前記接続部の長手軸に沿って、変位、固定可能である。この変位能力は、例えば接続部に沿ったレールによって、保証することができ、前記少なくとも1つの作動/トリガ部は、例えばクランプまたはねじを介して接続部に沿った位置に固定することができる。これは、前記作動/トリガ部の互いに対する間隔が無限に可変であるという利点を提供する。
【0032】
代替的または追加的に、複数の作動/トリガ部が、前記接続部に沿って好ましくは互いに等間隔で配置される。もしも前記接続部を棒状とし、前記作動/トリガ部をピン形状とするならば、前記作動/トリガユニットは櫛形状となる。後者は特に低コストで製造可能であり、変位可能な作動/トリガ部を有する前述の構成とは対照的に、それを固定し遮断装置を機能させるために追加の操作を必要としない。その結果、誤操作の可能性が最小限に抑えられる。
【0033】
本発明の別の好ましい態様によれば、前記遮断機構は、互いに別々に作動/トリガ可能な、互いに別々の複数の部分遮断機構を含む。動脈部分遮断機構が、前記動脈患者アクセス/接続に配置され、好ましくは、動脈患者アクセス/接続と一体的に製造される。さらに、静脈部分遮断機構が静脈患者アクセス/接続上に配置され、好ましくは静脈患者アクセス/接続と一体的に製造される。
【0034】
換言すると、2つの部分遮断機構のそれぞれは、それぞれの導管を通る血流を遮断または減少させるように適合(構成)することができる。 2つの部分遮断機構のどちらが血流の遮断または減少を引き起こすかは決定されていない。これは、2つの部分遮断機構のうちのどちらで作動装置が最初に取り外され、したがって対応する部分遮断機構による遮断を引き起こすかという問題にのみ依存する。前記作動/トリガユニットは、両方の部分遮断機構に等しく連結することができるルースな構成要素である。さらに、2つの患者アクセスは実質的に同等に構成された構成要素であり、各患者アクセスは好ましくは一方の部分遮断機構と一体的に形成されている。これは製造されるべき部品の数を増加させ、従って製造コストを減少させる。
【0035】
本発明の別の好ましい態様によれば、前記作動/トリガユニット(検出ユニット)は、静脈部分遮断機構を作動させる/トリガするように適合(構成)されている第1作動/トリガユニットを形成している。この目的のために、前記第1作動/トリガユニットは、前記静脈部分遮断機構に機械的に連結されているか、または連結可能であり、且つ前記動脈患者アクセス/接続または前記動脈部分遮断機構に関節式にまたは固定的に接続され、好ましくは動脈患者アクセス/接続または動脈部分遮断機構と一体的に形成さている。さらに、本発明による前記作動/トリガユニット(検出ユニット)は、前記動脈部分遮断機構を作動/トリガするように適合(構成)された第2作動/トリガユニットを形成する。この目的のために、第2作動/トリガユニットは前記動脈部分遮断機構に機械的に連結されているかまたは連結可能であり、且つ前記静脈患者アクセス/接続または前記静脈部分遮断機構に関節式にまたは固定的に接続され、好ましくは静脈患者アクセス/接続または静脈部分遮断機構と一体的に形成される。すなわちこの好適ケースにおいて、2本のロッドまたは複数のロッドの配置が互いに平行に配置され、2つの遮断機構のうちのそれぞれの1つをトリガする。
【0036】
例えば体外血液導管システムの静脈側でのニードル位置ずれの場合、前記静脈患者アクセスは、前記静脈部分遮断機構と共に、前記動脈患者アクセスと、それに配置された前記動脈部分遮断機構とに対して移動する。これは、例えば、前記静脈部分遮断機構から前記第1作動/トリガユニットを切り離し、それによって静脈部分遮断機構をトリガ/作動させ、静脈部分遮断機構に関連する導管を通る血流を遮断させるのに役立つ。同時に、場合によっては、前記第2作動/トリガユニットも前記動脈部分遮断機構から切り離され、したがって、動脈部分遮断機構がトリガ/作動され、動脈部分遮断機構に関連する導管を通る血流を遮断させ、逆もまた同様である。
【0037】
1つの部分遮断機構のみがトリガされることですでに十分であることが指摘される。これまでのところ、基本的には2つの患者接続/患者アクセスのうちの1つのみに適切な遮断機構を設けることで十分であろう。他方、前記作動/トリガユニットは、(遮断機構を持たない)他方の患者接続/患者アクセスに間接接続/装着されるだけである。
【0038】
前記第1作動/トリガユニットは、例えば、前記動脈部分遮断機構または前記動脈患者アクセス部に保持されるかまたはそれらに固定的に接続される。同様に、前記第2作動/トリガユニットは、例えば、前記静脈部分遮断機構または前記静脈患者アクセス部に保持されるか、またはそれらに固定的に接続される。各患者アクセスまたはそれに配置された前記部分遮断機構において、例えば、アイ又は溝を設け、これに前記作動/トリガユニットのいずれか1つを吊るすか、又はクリップすることができる。作動/トリガユニットは、好ましくは櫛状または歯付きラック状である。この場合、前記作動/トリガユニットをそれぞれの部分遮断手段に連結するときの操作が容易となる。単に、前記接続部の剛性が2つの患者接続部間の空間を実質的に決定するのに役立つようにすることが保証されなければならない。或いは、前記作動/トリガ部分は、対応する患者アクセスおよび/またはその上に配置された前記部分的遮断機構に接続されるか、それと一体的に射出成形されてもよい。この場合、前記遮断装置の製造をより容易かつ安価とすることが可能となる。従って、両部分遮断機構は、場合によっては関連の患者アクセスと併せられる同等のコンポーネントまたはサブアセンブリであり、製造されるピースの数を増加させることができる。更に、この場合の前記遮断装置は、紛失したり落下する可能性のある別体のルースパーツをなんら持たないものとなる。
【0039】
基本的に、前記システムは、上述したように患者アクセスの一方に接続され、且つ患者アクセスの他方に設けられた前記遮断機構のみを作動させる1つの作動/トリガユニットのみが(既に示したように)設けられるように改造することも可能である。
【0040】
本発明の別の好ましい態様によれば、前記作動/トリガユニットは、前記静脈患者アクセス/接続および前記動脈患者アクセス/接続の互いに対するスタート位置を、センサによって、または光学的に、モニタリングするように適合(構成)されている。さらに、前記作動/トリガユニットは、前記遮断機構を、電子的に、好ましくは無線で、制御するように適合(構成)されている。
【0041】
これが、本発明による前記遮断装置の前述の基本的なバリエーションのうちの第2のバリエーションに対応する。
【0042】
前記第1バリエーションと同様に、第2のバリエーションによる遮断機構は、前記遮断装置、具体的には、前記作動/トリガユニットが、例えば、押しボタン又はスイッチによって作動されない限り、各導管を通る血流を手段又は減少させるように構成することができる。これによって、遮断装置が使用準備完了になることなく体外血液処理を開始することが出来ないことが保証される。
【0043】
本発明のこの態様によれば、前記体外血液処理装置の血液ポンプのすぐ上流等の体外血液導管システムの各適切な位置に遮断機構を取り付けることを可能することが有利である。これにより、構造設計の自由度が増し、アクセスカニューレがより軽量になる。同様に、機械的連結部を有する前記バリエーションとの比較で、前記作動/トリガユニットに引っかかることによって誤って遮断をトリガすることは不可能である。
【0044】
前記データ通信は、例えば無線、ブルートゥースまたはケーブルを介して提供することができる。前記データ処理モジュールは、別個の装置として提供されてもよく、体外血液処理装置自体に組み込まれてもよく、または任意の適切な場所に提供されてもよい。位置モニタリングのために、マーカーまたはセンサーを前記患者アクセスに取り付けることができる。さらに、位置モニタリングのために、基本的に、赤外線センサまたは誘導センサなどの、それぞれの適切な位置および/または距離センサを使用することができる。さらなる具体例は、GPSモニタリング、超音波もしくはレーザーセンサ、またはカメラによる位置検出およびそれらに関連する画像処理である。
【0045】
基本的に、本発明のこの態様による安全装置は、例えば様々な患者の腕に取り付けられた患者のアクセスのために、必要な場合には、遮断をトリガする患者のアームの移動を防止するために、さらなる基準点/マーカーを、対応のアクセスの隣の患者の皮膚にセットしなければならない、すべての患者アクセスの構成用に想定されている。このことから、本発明のこの態様による前記遮断装置は、薬剤が例えばニードル位置ずれ時に漏れ出すことを本発明による遮断装置によって防止することができる輸血等、1つの患者アクセスのみが配設される様々な用途のために適していることが明白である。
【0046】
本発明の別の好ましい態様によれば、前記遮断機構は、バネ部材によってリセット可能な、前記体外血液処理装置の導管をクランプするための導管クランプ部材、又は、ストップバルブを含む。
【0047】
前記ストップバルブは、例えば、電磁、電気または機械式に駆動されるバルブとすることができる。例えば、本発明の前述の態様のうちのいずれか1つによる作動部分によって、前記遮断機構内で電気コンタクトが形成される機械式駆動可能なもの、或いは、電気制御可能なものである。
【0048】
以下、本発明を好ましい実施形態を用いて説明するが、そこでは異なる実施形態の特徴を互いに交換し、かつ/または互いに組み合わせることができる。記載される好ましい実施形態の詳細はそれ自体本発明を限定するものではなく、様々な変更、修正および/または均等物が当業者にとって明白であり、それらすべてがそれ自体、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲内に含まれる。更に、場合によっては一度だけ記載されるが、開示される実施例のそれぞれに提供可能な対応の特徴構成に対して類似の参照符号が使用される。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】体外血液処理中の本発明の第1実施形態による本発明の安全装置を図示している。
図2】前記第1実施形態による前記安全装置の接続部材の側面図と上面図を示している。
図3】第1の実施形態に記載の本発明による安全装置を備える患者アクセス/接続の詳細図である。
図4】前記第1実施形態による安全装置の種々の配置、具体的には、前記安全装置の、患者アクセス/接続の相対スタート位置を示している。
図5】本発明の第2の実施形態に記載の本発明による安全装置を図示している。
図6】体外血液処理中の本発明の第3実施形態による本発明の安全装置の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図1は、以下に記載の配置を必要とするダブルニードル透析から開始される体外血液処理中の患者の腕1を例示している。患者の静脈2と患者の動脈3がシャント4によって接続されている。太い矢印は患者の静脈2を通る血流5の方向を示している。前記シャント4は、体外血液処理装置Dが十分に大きい流速を有する大容量の患者血管、特に患者の静脈2に接続可能となることを保証する。以下の図および実施形態では、前記体外血液処理装置Dは別途描かれていないが、それは、ここに記載される各実施形態で提供されること理解される。
【0051】
前記シャント4の下流側で、前記血流方向5において、動脈アクセスカニューレ6が、動脈患者アクセス/接続として、患者の血管2に挿入されている。患者の血管2からの血液が前記動脈アクセスカニューレ6を介して前記体外血液処理装置に導かれるように、前記アクセスカニューレ6は、前記体外血液処理装置(図示せず)の体外血液導管システム7、9の動脈(血液)導管7に流体接続されている。
【0052】
前記動脈導管7には、(全体の)遮断機構8の一部である動脈部分遮断機構8aが前記動脈アクセスカニューレ6の直近に配置され(又は、動脈アクセスカニューレ6に直接に配置され)、特に、動脈導管7と動脈アクセスカニューレ6との間の、これら2つが互いに流体接続されている接続部に配置されている。前記動脈部分遮断機構8aは、作動又はトリガされた時に、前記動脈導管7を通る血流を遮断又は減少させるように構成されている。
【0053】
患者の血管2から逸脱した血液は、前記体外血液処理装置、具体的には、フィルタ(詳細には図示せず)を通過し、前記体外血液導管システムの静脈(血液)導管9と、当該静脈導管9に流体接続された静脈アクセスカニューレ10、とを介して前記患者の血管2内へと戻される。前記静脈アクセスカニューレ10は、前記血流方向5において前記動脈アクセスカニューレ6の下流側で前記患者の血管2に挿入され、静脈患者アクセス/接続として機能する。
【0054】
(全体の)遮断機構8の一部である静脈部分遮断機構8bが、前記静脈アクセスカニューレ10の直近の静脈導管9に配置され(又は、静脈アクセスカニューレ10に直接に配置され)、特に、静脈導管9と静脈アクセスカニューレ10との間の、これら2つが互いに流体接続されている接続部/接合箇所に配置されている。前記静脈部分遮断機構8bは、作動又はトリガされた時に、前記静脈導管8を通る血流を断絶又は減少させるように、構成されている。前記動脈および静脈部分遮断機構8a、8bとは共同で前記遮断機構8を構成する。
【0055】
前記2つのアクセスカニューレ6、10は、互いに対して所定のスタート位置に配置され、これら2つのアクセスカニューレ6、10の間隔は、後で詳細に説明する所定の最大間隔を超えない。前記動脈アクセスカニューレ6および静脈アクセスカニューレ10のそれぞれは、その相対的なスタート位置で、患者の表面、特に患者の皮膚に接着固定されるのが好ましい。
【0056】
前記2つのアクセスカニューレ(接続部)6、10が互いに対して所定のスタート位置をとる図1に示す状態では、前記動脈アクセスカニューレ6、具体的には前記動脈導管7が、
-前記動脈部分遮断機構8a、
-くし型、格子型または歯付きラック形状に形成された作動/トリガユニット(検出ユニット)11、そして
-前記静脈部分遮断機構8b
を介して、前記静脈アクセスカニューレ10、具体的には、前記静脈導管9に機械的に連結されている。
【0057】
前記作動/トリガユニット11は、前記2つの部分遮断機構8a、8bと相互作用し、それにより、一方では、部分遮断機構8a、8bは、それらが前記作動/トリガユニット11に連結された時に開放位置とされ(に維持され)、その結果、各関連する導管7、9を通る血流が放出され、他方、部分遮断機構8a、8bは、それらが前記作動/トリガユニット11に連結されない限り前記導管7、9を通る血流が遮断又は減少される遮断位置とされる(に維持される)。つまり、例えば、前記動脈部分遮断機構8aと前記作動/トリガユニット11とが離脱する時には、前記動脈部分遮断機構8aは開放位置から遮断位置へとスイッチングされ、それによって前記動脈導管7を通る血流を遮断又は減少させる。これは前記静脈部分遮断機構8bの作動モードにもそのまま当てはまる。
【0058】
この点に関して、例えば、前記作動/トリガユニット11が、一端部において前記1つの部分遮断機構に連結され、他端部では、他方のアクセスカニューレに直接に取り付けられるという、前記安全装置の適切な作動のためには1つの部分遮断機構だけの配置で十分であるという事実が特に銘記される。2つの作動/トリガユニットを、そのそれぞれが前記2つの部分遮断機構を(互いに対して独立的に)作動する図示のロッドの形態で構成することも可能である。
【0059】
前記作動/トリガユニット11とその作用について以下、図2および図3を参照して詳細に説明する。
【0060】
図2は、第1の実施形態による作動/トリガユニット11を示しており、このユニットは、櫛状の、特に、軸方向に間隔を置いた接合部を有する接続レールまたはロッドの形態である。具体的なケースの前記作動/トリガユニット11は、その端部が実質的に常に等間隔で互いに離間しているように、剛性またはその長手方向にのみ限定された程度で弾性的に変形可能/伸縮可能である、実質的にロッド形状の接続部(直線状ロッド)12を有する。前記接続部12の長さは、前記2つの部分遮断機構8a、8b、ひいては前記2つのアクセスカニューレ6、10が、互いに対する前記所定のスタート位置にある時において、互いに対して持つことが許される最大距離を規定する。前記接続部12に沿って、好ましくは円形の断面のピン/突起13が作動/トリガ部として等距離に配置され、作動/トリガ部は同一平面に位置するとともに、好ましくは、射出成形パーツとして、前記接続部12と一体に形成されている。
【0061】
図3は、前記動脈アクセスカニューレ6と、それに接続された前記動脈導管7と、そして、前記第1実施例に記載した本発明による前記安全装置の一部、より正確には、前記作動/トリガユニット11に連結された前記動脈部分遮断機構8a、の詳細図を例示している。前記接続は、前記ピン/突起13の1つが前記動脈部分遮断機構8aに設けられた挿入孔に挿入されて、それによって前記動脈部分遮断機構8aを開放位置へと移動させ又は開放位置に維持させるという事実によって保証される。例えば、前記ピン13は、当該ピン13によって横に付勢されない場合には前記導管7をピンチオフして当該導管7を通る血流を大幅に低減させる前記挿入孔内に突出するレバー又はスタッドを、復帰力又はバネ力に抗して押し付ける。
【0062】
図4は、前記第1実施例に記載された前記遮断装置に基づく、様々な例示的な配置、特に前記2つのアクセスカニューレ6、10の互いに対するスタート位置を図示している。
【0063】
第1の構成(上段)では、前記2つのアクセスカニューレ6、10は、互いに対して実質的に平行に配列され、第2の配置(中段)では、それらは実質的に互いに対して反対方向に、又は、対向して配列され、第3の配置(下段)では、前記2つのアクセスカニューレ6、10間の距離は大幅に減少されて、前記作動/トリガユニット11が前記部分遮断装置8a、8bのいずれか一方から大きく突出している。このようにフレキシブルな配置は、前記ピン13の円形断面と、前記接続部12に沿って分布するピン13の数とによって可能になっている。従って、前記作動/トリガユニット11は、前記部分遮断機構8a、8bのそれぞれに対して、対応の部分遮断機構8a、8bに挿入された前記ピン13の長手軸心周りで回転可能である。更に、前記作動/トリガユニット11の任意の2つのピン13を、前記部分遮断機構8a、8bに挿入することができ、それによって、前記作動/トリガユニット11が、前記部分遮断機構8a、8bの距離、ひいては、互いに対するその前記諸隊スタート位置、に適合することを可能にする。
【0064】
前記ピンの互いに対する距離は固定されているので、体外血液処理での使用中に、前記部分遮断機構8a、8b、従って、前記アクチュエータカニューレの互いに対する距離も、部分遮断機構が取り付け/形成された距離に固定される。例えば、前記静脈導管9が引っ張られることによって、静脈ニードル位置ずれが生じると、それによって前記静脈アクセスカニューレ10が少なくとも部分的に患者の静脈2からすり抜け、関連する静脈部分遮断機構8bの移動も引き起こされる。このことは、前記2つのアクセスカニューレ6、10と対応の部分遮断機構8a、8bとが、前記作動/トリガユニット11によって予め決定された/予め決定可能な、それらの相対スタート位置から互いに対して変位し、それらの互いに対する前記距離も変わる、ということを意味する。しかしながら、前記作動/トリガユニット11の前記接続部12は実質的に剛性であるか、もしくは、限定された程度にのみ弾性変形可能であるので、最大許容可能量の位置変化が到達/超過される(後者は特に、接続部12の弾性、及び、ピンと挿入孔との間の遊びによって規定される)と、前記両部分遮断機構8a、8bの少なくとも一方において、その挿入孔に挿入されたピン13がスリップして、それによって各部分遮断機構8a、8bが作動されて前記遮断位置へとスイッチングされることで、前記遮断機構8が作動される。好ましくは、前記ピンの長さは、前記静脈アクセスカニューレ10から前記作動/トリガユニット11を介して前記動脈アクセスカニューレ6に伝達されるジャークによって動脈ニードル位置ずれが発生しうる前に、前記両部分遮断機構8a、8bのいずれか一方からこれらピンが安全にすり抜けるように、構成される。
【0065】
この点に関して、前記作動/トリガユニット11は、検出ユニットとも称することが可能である。なぜなら、前記2つのアクセスカニューレの相対位置の変化に応答して、作動/トリガユニット11が少なくとも1つの部分遮断機構をトリガし、それによって、前記体外血液導管システム全体の緊急遮断を行うからである。
【0066】
図5は、第2実施例に記載の本発明による安全装置を概略図示している。安全装置は第1作動/トリガユニット11aを有し、第1作動/トリガユニット11aは、前記動脈部分遮断機構8a(黒色のブロックとして略示)に固く接続されるか、又は、動脈部分遮断機構8aと共に射出成形されるとともに、前記静脈部分遮断機構8bに連結され、必要な場合に静脈部分遮断機構8bを作動させる。更に、適当な第2作動/トリガユニット11bが設けられ、これは前記静脈部分遮断機構8bに固く接続されるか、又は、静脈部分遮断機構8bと共に射出成形されるとともに、前記動脈部分遮断機構8aに連結されて、必要な場合に動脈部分遮断機構8aを作動させる。従って、それに配置又は固定された前記安全装置の前記コンポーネントを含む前記患者アクセスは、同じパーツとして構成することが可能である。
【0067】
図6は、体外血液処理中の、第3実施例に記載の本発明による安全装置を概略図示している。実質的に、この安全装置の前記第1実施例との相違は、前記2つの部分遮断機構8a、8bが前記作動/トリガユニット11に機械的に連結されておらず、遮断機構8、具体的には部分遮断機構8a、8bが電気的に作動/トリガ可能であることにある。第3実施例の前記作動/トリガユニット11は、作動/トリガ部としてのデータ処理モジュール14を有し、ここで、体外血液処理中に、データ通信15が、前記データ処理モジュール14と前記部分遮断機構8a、8bとの間の接続部として確立される。前記部分遮断機構8a、8bにおいて、例えば、マーカ又はセンサを配置することができ、これらによって、前記データ処理モジュール14は、前記両部分遮断機構8a、8bの互いに対する位置をモニタリングし、体外血液処理中に所定のスタート位置からのその移動を検出することができる。前記データ処理モジュール14は、もしもそのような移動が検出された場合に、前記遮断機構8、具体的には、前記部分遮断機構8a、8bを前記データ通信15を介して制御してこれら機構を開放位置から遮断位置へとスイッチングするように構成されている。
【符号の説明】
【0068】
D 透析装置
1 患者の腕
2 患者の静脈
3 患者の動脈
4 シャント
5 血流の検出
6 動脈患者アクセス/接続(動脈アクセスカニューレ)
7 動脈(血液)導管
8 遮断機構
8a 動脈部分遮断機構
8b 静脈部分遮断機構
9 静脈(血液)導管
10 静脈患者アクセス/接続(静脈アクセスカニューレ)
11 作動/トリガユニット/検出ユニット
11a 第1作動/トリガユニット/検出ユニット
11b 第2作動/トリガユニット/検出ユニット
12 接続部
13 作動/トリガ部(ピン)
14 作動/トリガ部(データ処理モジュール)
15 接続部(データ通信)
図1
図2
図3
図4
図5
図6