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特許7244315土層調査装置、土層調査装置の制御装置、土層調査装置の制御方法、及び土層調査方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】土層調査装置、土層調査装置の制御装置、土層調査装置の制御方法、及び土層調査方法
(51)【国際特許分類】
   E02D 1/04 20060101AFI20230314BHJP
【FI】
E02D1/04
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019051762
(22)【出願日】2019-03-19
(65)【公開番号】P2020153129
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-02-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(73)【特許権者】
【識別番号】899000079
【氏名又は名称】慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】100127384
【弁理士】
【氏名又は名称】坊野 康博
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】上田 尚輝
(72)【発明者】
【氏名】山田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】野崎 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】大西 公平
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-150882(JP,A)
【文献】特開2003-301445(JP,A)
【文献】特開平09-324413(JP,A)
【文献】特許第6382203(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
土層を掘削するための作業部材と、
前記作業部材を回転させる回転駆動部と、
前記作業部材に推力を与える推進駆動部と、
前記回転駆動部による前記作業部材の回転速度を目標回転速度に制御する回転制御部と、
前記推進駆動部による前記作業部材の推力を目標推力に制御する推進制御部と、
前記目標回転速度で回転され、かつ、前記目標推力で推進されている前記作業部材に土層から入力する反力に関する情報を取得する測定結果取得部と、
を備え
前記回転制御部は、
前記作業部材の回転方向における回転位置に関する情報を取得する回転位置取得部と、
前記目標回転速度及び前記作業部材の回転方向における現在の回転位置に基づいて、前記作業部材の回転の制御における位置及び力の領域への制御エネルギーの変換を行う第1変換部と、
前記第1変換部の変換結果に基づいて、位置の領域における演算を行う第1位置領域演算部と、
前記作業部材が前記目標回転速度で回転するための力の領域における値を算出する第1力領域演算部と、
前記第1位置領域演算部及び前記第1力領域演算部の演算結果に基づいて、前記回転駆動部の入力への変換を行う第1逆変換部と、
を備えることを特徴とする土層調査装置。
【請求項2】
土層を掘削するための作業部材と、
前記作業部材を回転させる回転駆動部と、
前記作業部材に推力を与える推進駆動部と、
前記回転駆動部による前記作業部材の回転速度を目標回転速度に制御する回転制御部と、
前記推進駆動部による前記作業部材の推力を目標推力に制御する推進制御部と、
前記目標回転速度で回転され、かつ、前記目標推力で推進されている前記作業部材に土層から入力する反力に関する情報を取得する測定結果取得部と、
を備え、
前記推進制御部は、
前記作業部材の掘削方向における推進位置に関する情報を取得する推進位置取得部と、
前記目標推力及び前記作業部材の掘削方向における現在の位置に基づいて、前記作業部材の推進の制御における位置及び力の領域への制御エネルギーの変換を行う第2変換部と、
前記第2変換部の変換結果に基づいて、力の領域における演算を行う第2力領域演算部と、
前記作業部材が前記目標推力で推進するための位置の領域における値を算出する第2位置領域演算部と、
前記第2力領域演算部及び前記第2位置領域演算部の演算結果に基づいて、前記推進駆動部の入力への変換を行う第2逆変換部と、
を備えることを特徴とする土層調査装置。
【請求項3】
前記測定結果取得部によって取得された前記反力に関する情報に基づいて、土層の状態に変化があるか否かを判定する状態判定部をさらに備え、
前記回転制御部は、前記状態判定部によって土層の状態に変化があると判定された場合に、前記作業部材の目標回転速度を周期変化する回転速度に設定することを特徴とする請求項1または2に記載の土層調査装置。
【請求項4】
前記作業部材は、一端に回転抵抗体を有する軸線方向に延びるロッドを有し、
前記回転駆動部は、前記ロッドに軸線周りのトルクを与え、前記推進駆動部は、前記回転抵抗体を前記土層に押し付ける前記推力を前記ロッドに与えることを特徴とする請求項1乃至のいずれか1項に記載の土層調査装置。
【請求項5】
前記回転抵抗体は、円柱状の基体部を有していることを特徴とする請求項に記載の土層調査装置。
【請求項6】
前記回転抵抗体は、前記ロッドの回転方向に面する面を有する羽根部を少なくとも1つ有していることを特徴とする請求項4または5に記載の土層調査装置。
【請求項7】
土層を掘削するための作業部材と、前記作業部材を回転させる回転駆動部と、前記作業部材に推力を与える推進駆動部とを有する土層調査装置の制御装置であって、
前記制御装置は、
前記回転駆動部による前記作業部材の回転速度を目標回転速度に制御する回転制御部と、
前記推進駆動部による前記作業部材の推力を目標推力に制御する推進制御部と、
前記目標回転速度で回転され、かつ、前記目標推力で推進されている前記作業部材に土層から入力する反力に関する情報を取得する測定結果取得部と、を備え
前記回転制御部は、
前記作業部材の回転方向における回転位置に関する情報を取得する回転位置取得部と、
前記目標回転速度及び前記作業部材の回転方向における現在の回転位置に基づいて、前記作業部材の回転の制御における位置及び力の領域への制御エネルギーの変換を行う第1変換部と、
前記第1変換部の変換結果に基づいて、位置の領域における演算を行う第1位置領域演算部と、
前記作業部材が前記目標回転速度で回転するための力の領域における値を算出する第1力領域演算部と、
前記第1位置領域演算部及び前記第1力領域演算部の演算結果に基づいて、前記回転駆動部の入力への変換を行う第1逆変換部と、
を備えることを特徴とする土層調査装置の制御装置。
【請求項8】
土層を掘削するための作業部材と、前記作業部材を回転させる回転駆動部と、前記作業部材に推力を与える推進駆動部とを有する土層調査装置の制御装置であって、
前記制御装置は、
前記回転駆動部による前記作業部材の回転速度を目標回転速度に制御する回転制御部と、
前記推進駆動部による前記作業部材の推力を目標推力に制御する推進制御部と、
前記目標回転速度で回転され、かつ、前記目標推力で推進されている前記作業部材に土層から入力する反力に関する情報を取得する測定結果取得部と、を備え、
前記推進制御部は、
前記作業部材の掘削方向における推進位置に関する情報を取得する推進位置取得部と、
前記目標推力及び前記作業部材の掘削方向における現在の位置に基づいて、前記作業部材の推進の制御における位置及び力の領域への制御エネルギーの変換を行う第2変換部と、
前記第2変換部の変換結果に基づいて、力の領域における演算を行う第2力領域演算部と、
前記作業部材が前記目標推力で推進するための位置の領域における値を算出する第2位置領域演算部と、
前記第2力領域演算部及び前記第2位置領域演算部の演算結果に基づいて、前記推進駆動部の入力への変換を行う第2逆変換部と、
を備えることを特徴とする土層調査装置の制御装置。
【請求項9】
土層を掘削するための作業部材と、前記作業部材を回転させる回転駆動部と、前記作業部材に推力を与える推進駆動部と、回転制御部と、推進制御部と、測定結果取得部とを備える土層調査装置の制御方法であって、
前記回転制御部によって、前記回転駆動部による前記作業部材の回転速度を目標回転速度に制御させるステップと、
前記推進制御部によって、前記推進駆動部による前記作業部材の推力を目標推力に制御させるステップと、
前記測定結果取得部によって、前記目標回転速度で回転され、かつ、前記目標推力で推進されている前記作業部材に土層から入力する反力に関する情報を取得させるステップと、
を含み、
前記作業部材の回転速度を目標回転速度に制御させるステップは、
前記作業部材の回転方向における回転位置に関する情報を取得する回転位置取得ステップと、
前記目標回転速度及び前記作業部材の回転方向における現在の回転位置に基づいて、前記作業部材の回転の制御における位置及び力の領域への制御エネルギーの変換を行う第1変換ステップと、
前記第1変換ステップの変換結果に基づいて、位置の領域における演算を行う第1位置領域演算ステップと、
前記作業部材が前記目標回転速度で回転するための力の領域における値を算出する第1力領域演算ステップと、
前記第1位置領域演算ステップ及び前記第1力領域演算ステップにおける演算結果に基づいて、前記回転駆動部の入力への変換を行う第1逆変換ステップと、
を含むことを特徴とする土層調査装置の制御方法。
【請求項10】
土層を掘削するための作業部材と、前記作業部材を回転させる回転駆動部と、前記作業部材に推力を与える推進駆動部と、回転制御部と、推進制御部と、測定結果取得部とを備える土層調査装置の制御方法であって、
前記回転制御部によって、前記回転駆動部による前記作業部材の回転速度を目標回転速度に制御させるステップと、
前記推進制御部によって、前記推進駆動部による前記作業部材の推力を目標推力に制御させるステップと、
前記測定結果取得部によって、前記目標回転速度で回転され、かつ、前記目標推力で推進されている前記作業部材に土層から入力する反力に関する情報を取得させるステップと、
を含み、
前記作業部材の推力を目標推力に制御させるステップは、
前記作業部材の掘削方向における推進位置に関する情報を取得する推進位置取得ステップと、
前記目標推力及び前記作業部材の掘削方向における現在の位置に基づいて、前記作業部材の推進の制御における位置及び力の領域への制御エネルギーの変換を行う第2変換ステップと、
前記第2変換ステップの変換結果に基づいて、力の領域における演算を行う第2力領域演算ステップと、
前記作業部材が前記目標推力で推進するための位置の領域における値を算出する第2位置領域演算ステップと、
前記第2力領域演算ステップ及び前記第2位置領域演算ステップにおける演算結果に基づいて、前記推進駆動部の入力への変換を行う第2逆変換ステップと、
を含むことを特徴とする土層調査装置の制御方法。
【請求項11】
土層を掘削するための作業部材と、前記作業部材を回転させる回転駆動部と、前記作業部材に推力を与える推進駆動部と、回転制御部と、推進制御部と、測定結果取得部とを備える土層調査装置によって実行される土層調査方法であって、
前記回転制御部によって、前記回転駆動部による前記作業部材の回転速度を目標回転速度に制御し、
前記推進制御部によって、前記推進駆動部による前記作業部材の推力を目標推力に制御し、
前記測定結果取得部によって、前記目標回転速度で回転され、かつ、前記目標推力で推進されている前記作業部材に土層から入力する反力に関する情報を取得し、
前記回転制御部が前記作業部材の回転速度を目標回転速度に制御するステップにおいて、
前記作業部材の回転方向における回転位置に関する情報を取得し、
前記目標回転速度及び前記作業部材の回転方向における現在の回転位置に基づいて、前記作業部材の回転の制御における位置及び力の領域への制御エネルギーの変換である第1変換を行い、
前記第1変換の変換結果に基づいて、位置の領域における演算である第1位置領域演算を行い、
前記作業部材が前記目標回転速度で回転するための力の領域における値を算出する演算である第1力領域演算を行い、
前記第1位置領域演算及び前記第1力領域演算における演算結果に基づいて、前記回転駆動部の入力への変換である第1逆変換を行うことを特徴とする土層調査方法。
【請求項12】
土層を掘削するための作業部材と、前記作業部材を回転させる回転駆動部と、前記作業部材に推力を与える推進駆動部と、回転制御部と、推進制御部と、測定結果取得部とを備える土層調査装置によって実行される土層調査方法であって、
前記回転制御部によって、前記回転駆動部による前記作業部材の回転速度を目標回転速度に制御し、
前記推進制御部によって、前記推進駆動部による前記作業部材の推力を目標推力に制御し、
前記測定結果取得部によって、前記目標回転速度で回転され、かつ、前記目標推力で推進されている前記作業部材に土層から入力する反力に関する情報を取得し、
前記推進制御部が前記作業部材の推力を目標推力に制御するステップにおいて、
前記作業部材の掘削方向における推進位置に関する情報を取得し、
前記目標推力及び前記作業部材の掘削方向における現在の位置に基づいて、前記作業部材の推進の制御における位置及び力の領域への制御エネルギーの変換である第2変換を行い、
前記第2変換の変換結果に基づいて、力の領域における演算である第2力領域演算を行い、
前記作業部材が前記目標推力で推進するための位置の領域における値を算出する演算である第2位置領域演算を行い、
前記第2力領域演算及び前記第2位置領域演算における演算結果に基づいて、前記推進駆動部の入力への変換である第2逆変換を行うことを特徴とする土層調査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土層調査装置、土層調査装置の制御装置、土層調査装置の制御方法、及び土層調査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の地盤の評価等のために、従来から土層の調査が行われている。土層の調査には、標準貫入試験が行なわれることがある(例えば、非特許文献1参照。)。標準貫入試験は、土層の強度や土層の成分の調査のための試験であり、所定の深さまで地盤を掘削して形成した試験孔の底の土層を調査するものである。具体的には、決められた質量(63.5kg±0.5kg)のハンマーを76cm±1cmの高さから自由落下させることによる打撃により試験孔底の土層にサンプラーを貫入し、規定貫入量である30cmの深さまでサンプラーを打ち込むのに要する打撃回数(=N値)を求める(例えば、特許文献1参照。)。このN値は、土層の強度や固さを評価する指標として広く用いられている。
【0003】
また、サンプラーには、土層採取用の孔が形成されており、標準貫入試験において試験孔底の土層にサンプラーが貫入される際に、このサンプラーの土層採取用の孔に土層が入り込み、サンプラーに試料として土層が採取される。土層の成分を判別するためには、採取された土層に対して、粒度分布測定や含水比測定等が行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2017-166230号公報
【非特許文献】
【0005】
【文献】日本工業規格、「標準貫入試験方法(JIS A 1219)」、[online]、[平成28年2月15日検索]、インターネット、<URL:http://www.jiban.or.jp/file/organi/bu/kijyunbu/jis_a_1219.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、サンプラーによって採取された土層を解析する場合、土中に存在する状態の土層の性質を直接測定してはいないため、土層を必ずしも正確に測定できない場合がある。
【0007】
本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、土層をより正確に測定することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一態様の土層調査装置は、
土層を掘削するための作業部材と、
前記作業部材を回転させる回転駆動部と、
前記作業部材に推力を与える推進駆動部と、
前記回転駆動部による前記作業部材の回転速度を目標回転速度に制御する回転制御部と、
前記推進駆動部による前記作業部材の推力を目標推力に制御する推進制御部と、
前記目標回転速度で回転され、かつ、前記目標推力で推進されている前記作業部材に土層から入力する反力に関する情報を取得する測定結果取得部と、
を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、土層をより正確に測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の第1の実施の形態に係る土層調査装置の構成を概略的に示す図である。
図2】本発明の第1の実施の形態に係る土層調査装置の機能的構成を示すブロック図である。
図3】回転制御部の詳細な機能的構成を示すブロック図である。
図4】推進制御部の詳細な機能的構成を示すブロック図である。
図5】本発明の第1の実施の形態に係る土層調査装置の制御装置が実行する土層調査処理の流れを示すフローチャートである。
図6】本発明の実施の形態に係る土層調査方法によって得られる回転速度と回転トルクとの間の関係を例示すための図である。
図7】本発明の実施の形態に係る土層調査方法によって得られる推力と回転トルクとの間の関係を例示すための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
[本発明の基本的概念]
本発明に係る土層調査装置においては、土層を掘削するための回転抵抗体をロッドの先端に設置し、ロッドを回転軸として回転抵抗体を回転させながら、土層に対する推力を与えることで、土層の掘削において回転抵抗体が土層から受ける反力(回転トルク)を取得する。
このとき、速度または位置のエネルギーと力のエネルギーとを独立に取り扱うことが可能な位置・力制御方法(例えば、特許第6382203号公報に記載された位置・力制御方法)を応用し、回転抵抗体の回転(回転速度等)及び推力(土層に対する押圧力等)を制御することで、土層からの反力が加わる状況においても、回転抵抗体の回転及び推力の正確な制御を図っている。
【0012】
そのため、本発明に係る土層調査装置においては、土層の掘削時に回転抵抗体が土層から受ける反力をより正確に取得できることから、取得された反力を解析することで、土層の性質をより正確に把握することができる。
即ち、本発明に係る土層調査装置によれば、土層をより正確に測定することが可能となる。
なお、位置と速度(または加速度)あるいは角度と角速度(または角加速度)は、微積分演算により置換可能なパラメータであるため、位置あるいは角度に関する処理を行う場合、適宜、速度あるいは角速度等に置換することが可能である。また、土層の測定を行うために、回転抵抗体が受ける反力(回転トルク)を取得することの他、土層の性質を把握できる他のパラメータ(例えば、角速度あるいは角加速度等)を取得することとしてもよい。
【0013】
[位置・力制御方法]
上述したように、本発明に係る土層調査装置においては、速度または位置のエネルギーと力のエネルギーとを独立に取り扱うことが可能な位置・力制御方法を用いて、土層の測定を行う。
以下、本発明で用いる位置・力制御方法について、具体的に説明する。
【0014】
本発明で用いる位置・力制御方法については、例えば、特許第6382203号公報に記載された以下の座標変換に基づいて、その具体的な意義を説明することができる。
即ち、本発明で用いる位置・力制御方法の基本となる座標変換として、制御対象システムの機能の基準となる値(基準値)と、制御されるアクチュエータの現在位置とを入力とする座標変換を定義することができる。この座標変換は、一般に、基準値及び現在速度(位置)を要素とする入力ベクトルを速度(位置)の制御目標値を算出するための速度(位置)からなる出力ベクトルに変換するとともに、基準値及び現在の力を要素とする入力ベクトルを力の制御目標値を算出するための力からなる出力ベクトルに変換するものである。具体的には、本発明で用いる位置・力制御方法の基本となる座標変換は、次式(1)及び(2)のように一般化して表される。
【0015】
【数1】
【0016】
ただし、式(1)において、x’1~x’n(nは1以上の整数)は速度の状態値を導出するための速度ベクトルであり、x’a~x’m(mは1以上の整数)は、基準値及びアクチュエータの作用に基づく速度(アクチュエータの移動子の速度またはアクチュエータが移動させる対象物の速度)を要素とするベクトル、h1a~hnmは機能を表す変換行列の要素である。また、式(2)において、f’’1~f’’n(nは1以上の整数)は力の状態値を導出するための力ベクトルであり、f’’a~f’’m(mは1以上の整数)は、基準値及びアクチュエータの作用に基づく力(アクチュエータの移動子の力またはアクチュエータが移動させる対象物の力)を要素とするベクトルである。
【0017】
さらに、式(1)及び(2)で表される位置・力制御のための座標変換をマスタ・スレーブ間のバイラテラル制御に用いる場合、式(3)及び(4)で表される座標変換として表すことができる。なお、本発明は、マスタ装置とスレーブ装置とを必要とするものではないが、ここでは説明の便宜のために、マスタ・スレーブ間のバイラテラル制御を想定するものとする。
【0018】
【数2】
【0019】
ただし、式(3)において、x’pは速度(位置)の状態値を導出するための速度、x’fは力の状態値に関する速度である。また、x’masterは基準値(マスタ装置からの入力)の速度(マスタ装置の現在位置の微分値)、x’slaveはスレーブ装置の現在の速度(現在位置の微分値)である。また、式(4)において、fpは速度(位置)の状態値に関する力、ffは力の状態値を導出するための力である。また、fmasterは基準値(マスタ装置からの入力)の力、fslaveはスレーブ装置の現在の力である。
【0020】
本発明に係る土層調査装置において、回転抵抗体(ロッド)の回転速度が設定値(例えば、一定速度あるいは周期変化する速度等)となるように制御する場合、式(3)及び(4)で表される座標変換を応用することにより、より正確な回転速度の制御を行うことができる。
具体的には、式(3)及び(4)において、速度の制御に関する行列の要素を有効とし、力の制御に関する行列の要素を無効とする(例えば0とする)ことにより、回転速度の制御を実現することができる。そして、基準値として回転速度の設定値を表す位置の情報(マスタの角速度θ’)を入力することで、回転抵抗体(ロッド)の回転速度(スレーブの角速度θ’)を設定値に制御することができる。
この場合、回転速度の制御を行うための座標変換は、例えば、次式(5)として表すことができる。
【0021】
【数3】
【0022】
同様に、本発明に係る土層調査装置において、回転抵抗体(ロッド)の推力が設定値(例えば、一定の推力等)となるように制御する場合、式(3)及び(4)で表される座標変換を応用することにより、より正確な推力(押圧力)の制御を行うことができる。
具体的には、式(3)及び(4)において、力の制御に関する行列の要素を有効とし、速度の制御に関する行列の要素を無効とする(例えば0とする)ことにより、力の制御を実現することができる。そして、基準値として推力の設定値を表す力の情報(便宜的に想定されるマスタのトルクτ)を入力することで、回転抵抗体(ロッド)の推力(便宜的に想定されるスレーブのトルクτ)を設定値に制御することができる。
この場合、推力の制御を行うための座標変換は、例えば、次式(6)として表すことができる。
【0023】
【数4】
【0024】
即ち、式(5)及び(6)に基づいて、回転抵抗体の回転及び推力を制御することにより、土層から受ける反力の影響を抑制しつつ、回転抵抗体の回転速度及び推力を正確に制御することが可能となる。
そして、このように制御された回転抵抗体に土層から入力される反力(回転に対する抵抗力)を取得することで、土層の性質(粒度や粘度等)を適確に反映したパラメータを取得することができる。
即ち、取得されたパラメータを解析することで、土層の性質をより正確に測定することが可能となる。
以下、本発明に係る土層調査装置の具体的な実施形態について説明する。
【0025】
[第1実施形態]
[土層調査装置の構成]
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る土層調査装置1の構成を概略的に示す図である。また、図2は、土層調査装置1の機能的構成を示すブロック図である。なお、図2においては、土層調査装置1の機能的構成のうち、本発明に関連する主要な機能構成を示している。
【0026】
図1,2に示すように、本発明の第1の実施の形態に係る土層調査装置1は、土層を掘削するための作業部材11と、作業部材11を駆動する作業部材駆動部12とを有し、作業部材11を動かして調査対象の土層に対する作業を行う作業部10と、作業部材11の位置を検出する位置検出部20と、操作情報を有する操作部30とを備えている。また、土層調査装置1は、土層調査装置1の各部を制御する制御装置50を有している。
【0027】
作業部材駆動部12は、作業部材11を回転させる回転駆動部としてのトルク発生部13と、作業部材11に推力を与える推進駆動部としての推力発生部14とを有している。トルク発生部13は、電動モータ等のアクチュエータを有しており、作業部材11に軸線x周りのトルクを与える。推力発生部14は、電動モータ等のアクチュエータを有しており、作業部材11に軸線x方向の推力を与える。
【0028】
操作部30は、操作情報を有する。操作情報は、作業部10の作業を指定するための情報や作業部材11の動きを規定するための情報である。具体的に、操作情報は、後述する回転抵抗体16の目標推力の情報と、回転抵抗体16の目標回転速度の情報とを含む。
【0029】
操作部30は、制御装置50に通信可能に接続されており、制御装置50との間で信号の送受信を行うことが可能になっている。また、操作部30は、操作情報等の情報の入力が可能になっており、調査者は操作部30の操作によって操作部30に操作情報や値等の情報を入力することができる。
【0030】
土層調査装置1においては、操作情報に対応した回転速度で作業部材11が回転し、また、操作情報に対応した推力で作業部材11が押し付けられるようになっている。操作部30は、例えば調査者が操作可能な端末であり、より具体的にはパーソナルコンピューター等である。例えば、調査者が操作部30を操作して操作情報を入力することにより、操作部30と接続された制御装置50に、作業部材11の推力の目標値と作業部材11の回転速度の目標値が設定される。
【0031】
作業部10は、図1に示すように、軸線x方向に往復移動可能に、また、軸線x周りに回動可能に構成された作業部材11を有しており、作業部材11は、例えば、一端に回転抵抗体16を有する軸線x方向に延びるロッド15を有している。ロッド15は、軸線x周りに回転可能になっており、例えば、直線状に延びる棒状の部材である。回転抵抗体16は、例えば、図1に示すように、円柱状の基体部16aを有しており、基体部16aはロッド15の先端15aに接続されており、基体部16aのロッド15との接続部分とは反対の側に、ロッド15(回転抵抗体16)の回転方向に面する面を有する羽根部16bを少なくとも1つ有している。このように、回転抵抗体16が土層に押し付けられてロッド15が回転させられると、羽根部16bが土層を掻き分けるように土層内を回転して移動し、回転抵抗体16が回転に対して抵抗となり抵抗力(トルク)が発生するようになっている。ロッド15の構造は、上述の構造に限られず、軸線x周りに回転可能となるものであればよい。また、回転抵抗体16も、上述の構造に限られず、ロッド15の回転に対して土層から抵抗を受けるものであればよい。例えば回転抵抗体16は、羽根部16bを有していなくてもよい。
【0032】
トルク発生部13は、電動モータ等のアクチュエータを有しており、制御装置50からの制御値の入力に応じて、ロッド15に軸線x周りのトルクを与え、ロッド15を軸線x周りに回動可能にしている。トルク発生部13は、例えば、推力発生部14の後述する可動部材14aに設けられ、その出力軸13aが接続部材13bを介してロッド15の後端15bに接続されている。接続部材13bは、例えばソケットであり、トルク発生部13の出力軸13aの先端とロッド15の後端15bとを接続する部材であり、トルク発生部13の出力軸13aとロッド15とを相対回動不能に接続する。トルク発生部13は、ロッド15の後端15bにトルクを伝達する。また、推力発生部14は、電動モータ等のアクチュエータを有しており、制御装置50からの制御値の入力に応じて、ロッド15にその延び方向(軸線x方向において後端15bから先端15aに向かう方向)の力(推力)を与え、ロッド15を軸線xに沿って往復移動可能にしている。推力発生部14は、例えば図1に示すように、軸線xに沿って往復移動する可動部材14aとアクチュエータ14bとを有している。推力発生部14において、可動部材14aは、アクチュエータ14bの動力を受けて軸線x方向に往復移動するようになっている。アクチュエータ14bは、例えばリニアモータアクチュエータであり、可動部材14aに固定された可動子14cと、後述する保持部材17に固定された軸線x方向に延びる軸14dとを有している。アクチュエータ14bにおいて、可動子14cは、制御装置50からの制御値の入力に応じて軸14dに沿って移動する。この可動子14cの駆動により、可動部材14aが軸線x方向に移動する。アクチュエータ14bは、リニアモータアクチュエータに限られず、他のアクチュエータであってもよい。
【0033】
また、作業部10は、図1に示すように、作業部材11及び作業部材駆動部12(トルク発生部13及び推力発生部14)を保持する保持部材17を有している。保持部材17は、平面(接地面)に設置可能になっており、接地面に対して軸線xが垂直又は略垂直となるように、作業部材11及び作業部材駆動部12を保持するように形成されている。また、保持部材17において推力発生部14は、回転抵抗体16が接地面に接触する位置よりも更に下方に回転抵抗体16を移動できるように保持されている。なお、下方とは、軸線x方向において、ロッド15の後端15bから先端15aに向かう方向である。また、保持部材17は、推力発生部14によって回転抵抗体16が接地面に押し付けられた際に、反力によって推力発生部14が上方に移動しないようになっている。保持部材17は、例えば、図1に示すように、アクチュエータ14bを保護するためのカバー17aを有しており、アクチュエータ14bはカバー17aによって覆われている。カバー17aの左右の側面には、可動部材14aの移動を案内する貫通孔17bが形成されている。なお、可動部材14aは、背面、左右の側面及び前面を構成する部材によって筒状に形成され、前面にトルク発生部13が設置されている。可動部材14aの背面は、左右の貫通孔17bを通ってカバー17aを貫通し、可動部材14aの左右の側面及び前面と共に、カバー17aの奥行方向における前面側を囲んでいる。また、可動部材14aの背面には、アクチュエータ14bの可動子14cが固定されている。即ち、可動部材14aはカバー17aの前面側を囲い込む構造となっており、アクチュエータ14bの可動子14cの駆動により、可動部材14aがカバー17aの前面側の形状に案内されながら軸線x方向に移動する。これにより、可動部材14aとカバー17aとの間でがたつきが発生することを抑制できるため、可動部材14aの軸線x方向における移動を安定させ、トルク発生部13の動作(ロッド15の回動)により可動部材14aに生じる反動を抑制することができる。
【0034】
図2に示すように、土層調査装置1は、位置検出部20を有しており、位置検出部20は、作業部材11の軸線x方向における位置を検出する推進位置検出部21と、作業部材11の軸線x周りの位置(回転位置)を検出する回転位置検出部22とを有している。具体的には、推進位置検出部21は、位置センサであり、ロッド15又は回転抵抗体16の軸線x方向における位置を検出する。推進位置検出部21は、例えば、回転抵抗体16の軸線x方向における位置を検出する位置センサであり、所定の基準位置に対する位置を検出可能にする。また、回転位置検出部22は、具体的には、位置センサであり、ロッド15又は回転抵抗体16の軸線x周りの位置を検出する。回転位置検出部22は、例えば、軸線xを中心とする回転方向における回転抵抗体16の回転位置を検出する回転位置センサであり、所定の基準回転位置に対する回転位置(回転角度)を検出可能にする。推進位置検出部21は、作業部10に取り付けられていてもよく、作業部10に取り付けられていなくてもよい。同様に、回転位置検出部22は、作業部10に取り付けられていてもよく、作業部10に取り付けられていなくてもよい。
【0035】
制御装置50は、図2に示すように、作業部材駆動部12及び位置検出部20に通信可能に接続されており、図1に示すように、作業部10に取り付けられている。制御装置50は、作業部10に取り付けられていなくてもよく、操作部30に組み込まれていてもよく、また、作業部10及び操作部30とは別体として構成されていてもよい。制御装置50は、作業部10、位置検出部20、及び操作部30に通信可能に接続されていればよい。
【0036】
制御装置50には、調査者による操作部30に対する入力操作によって設定された操作情報と、位置検出部20によって検出された情報とが入力される。また、制御装置50には、土層の状態が変化したか否かの判定基準等の情報が入力されてもよい。
【0037】
[機能的構成]
次に、土層調査装置1の機能的構成について説明する。
図2に示すように、土層調査装置1は、制御装置50において、回転目標設定部100と、推進目標設定部200と、回転制御部300と、推進制御部400と、測定結果取得部500と、状態判定部600と、を備えている。これらの機能ブロックは、例えば、上述した制御装置50を構成するマイクロコントローラ、コントローラ、およびモータドライバ等のハードウェア資源と、当該マイクロコントローラおよびコントローラ等に記憶されているプログラム(ソフトウェア資源)とが協働することによって実現される。
【0038】
回転目標設定部100は、調査者の入力操作に従って、回転抵抗体16の目標回転速度を設定する。回転抵抗体16の目標回転速度は、回転制御部300が式(5)に基づく制御を実行する場合に、基準値として用いられる回転速度の設定値である。本実施形態においては、回転抵抗体16を一定速度で回転させる場合の速度及び回転抵抗体16の速度を周期変化させる場合の速度のそれぞれが目標回転速度として設定される。なお、回転抵抗体16の目標回転速度は、調査者の入力操作に従って設定することができる他、目標回転速度が記述された設定ファイルを読み込むこと等によっても設定することができる。
【0039】
推進目標設定部200は、調査者の入力操作に従って、回転抵抗体16の目標推力を設定する。回転抵抗体16の目標推力は、推進制御部400が式(6)に基づく制御を実行する場合に、基準値として用いられる推力の設定値である。本実施形態においては、回転抵抗体16を一定の推力で推進させる場合の推力が目標推力として設定される。なお、回転抵抗体16の目標推力は、調査者の入力操作に従って設定することができる他、目標推力が記述された設定ファイルを読み込むこと等によっても設定することができる。
【0040】
回転制御部300は、回転目標設定部100によって設定された目標回転速度及び回転抵抗体16の現在の角度(位置)を入力として、式(5)に基づく座標変換を行い、回転抵抗体16の角度及び回転トルクを逐次算出することにより、回転抵抗体16の回転動作を制御する。本実施形態において、回転制御部300は、土層の測定を行う際の標準の制御においては、回転抵抗体16の回転速度を一定とし、状態判定部600から回転抵抗体16の回転速度を周期変化させるための指示信号が入力された場合には、回転抵抗体16の回転速度を一時的に周期変化させる(例えば、一定時間あるいは一定の推進距離の間だけ周期変化させる。)。なお、回転制御部300の詳細な機能的構成については後述する。
【0041】
推進制御部400は、推進目標設定部200によって設定された目標推力及び回転抵抗体16の現在の推力(アクチュエータの現在の出力トルク)を入力として、式(5)に基づく座標変換を行い、回転抵抗体16の位置(掘削方向の位置)及び推力(アクチュエータの出力)を逐次算出することにより、回転抵抗体16の推進動作を制御する。なお、推進制御部400の詳細な機能的構成については後述する。
【0042】
測定結果取得部500は、回転抵抗体16が土層から受ける反力(または土層の性質を把握できる他のパラメータ)を取得し、取得した反力を半導体メモリ等からなる記憶部に記憶する。また、測定結果取得部500は、記憶した反力に基づいて、土層の性質を表す各種パラメータ(粘度、水分特性等)を算出し、算出したパラメータを記憶部に記憶する。このように算出されたパラメータは、土層の測定結果を表すものとなる。
【0043】
状態判定部600は、測定結果取得部500によって取得された反力(または算出されたパラメータ)に基づいて、土層の状態に変化があるか否かを判定する。そして、状態判定部600は、土層の状態に変化があると判定した場合、回転制御部300に対し、目標回転速度を周期変化する回転速度に変更するための指示信号を出力する。なお、土層に含まれる砂や砂利の粒度が大きく変化する等、土層の状態が変化した場合には、回転抵抗体16の回転速度を一定として土層を測定しても、適切な測定結果が得られ難い。そこで、本実施形態においては、回転抵抗体16の回転速度を周期的に変化させることで、土層のより適切な測定を図ることとしている。
【0044】
[回転制御部300の機能的構成]
次に、回転制御部300の詳細な機能的構成について説明する。
図3は、回転制御部300の詳細な機能的構成を示すブロック図である。
図3に示すように、回転制御部300は、回転位置取得部301と、第1座標変換部302と、第1力領域演算部303と、第1位置領域演算部304と、第1逆変換部305と、回転用アクチュエータ制御部306と、を備えている。
【0045】
回転位置取得部301は、回転抵抗体16の回転位置に関する情報を逐次取得する。回転抵抗体16の回転位置に関する情報としては、回転方向における現在の角度を取得することができる他、回転方向における現在の角速度、現在の角加速度等を取得することとしてもよい。
第1座標変換部302は、回転目標設定部100によって設定された目標回転速度及び回転抵抗体16の回転方向における現在の角度(位置)を入力として、式(5)に基づく座標変換を実行する。
【0046】
第1力領域演算部303は、第1座標変換部302における座標変換の結果に基づいて、力の領域における演算を実行する。本実施形態において、回転抵抗体16の回転動作は、設定された回転速度と一致するよう制御されるため、回転トルクについては、システムが許容する範囲内で、回転速度を目標回転速度と一致させるための任意の値が算出される。
第1位置領域演算部304は、第1座標変換部302における座標変換の結果に基づいて、位置の領域における演算を実行する。本実施形態において、第1位置領域演算部304は、式(5)で座標変換された位置領域の状態値が、制御目標値(ここではゼロ)となるための位置の領域の値を算出する。即ち、第1位置領域演算部304は、回転抵抗体16の回転位置が目標回転速度から定まる位置と一致するための位置の領域の値を算出する。
【0047】
第1逆変換部305は、第1力領域演算部303によって算出された力及び第1位置領域演算部304によって算出された位置の領域の値を回転用アクチュエータへの入力の領域の値(電流の指令値等)に変換する。
回転用アクチュエータ制御部306は、第1逆変換部305によって変換された回転用アクチュエータへの入力の領域の値に基づいて、回転用アクチュエータの制御信号を出力する。
【0048】
[推進制御部400の機能的構成]
次に、推進制御部400の詳細な機能的構成について説明する。
図4は、推進制御部400の詳細な機能的構成を示すブロック図である。
図4に示すように、推進制御部400は、推進位置取得部401と、第2座標変換部402と、第2力領域演算部403と、第2位置領域演算部404と、第2逆変換部405と、推進用アクチュエータ制御部406と、を備えている。
【0049】
推進位置取得部401は、回転抵抗体16の推進位置に関する情報を逐次取得する。回転抵抗体16の推進位置に関する情報としては、掘削方向における現在の位置を取得することができる他、掘削方向における現在の速度、現在の加速度等を取得することとしてもよい。
第2座標変換部402は、推進目標設定部200によって設定された目標推力及び回転抵抗体16の掘削方向における現在の位置を入力として、式(6)に基づく座標変換を実行する。なお、回転抵抗体(ロッド)16の推力は、回転抵抗体16の掘削方向における現在の位置(加速度)から算出することができ、回転抵抗体16の推力と推進用アクチュエータの回転トルクτとは互いに換算可能なパラメータであるため、式(6)においては推進用アクチュエータの回転トルクτが入力として用いられる。
【0050】
第2力領域演算部403は、第2座標変換部402における座標変換の結果に基づいて、力の領域における演算を実行する。本実施形態において、第2力領域演算部403は、式(6)で座標変換された力領域の状態値が、制御目標値(ここではゼロ)となるための力の領域の値を算出する。
第2位置領域演算部404は、第2座標変換部402における座標変換の結果に基づいて、位置の領域における演算を実行する。本実施形態において、回転抵抗体16の推進動作は、設定された推力と一致するよう制御されるため、掘削方向における位置については、システムが許容する範囲内で、推力を目標推力と一致させるための任意の値が算出される。
【0051】
第2逆変換部405は、第2力領域演算部403によって算出された力及び第2位置領域演算部404によって算出された位置の領域の値を推進用アクチュエータへの入力の領域の値(電流の指令値等)に変換する。
推進用アクチュエータ制御部406は、第2逆変換部405によって変換された推進用アクチュエータへの入力の領域の値に基づいて、推進用アクチュエータの制御信号を出力する。
【0052】
[動作]
次に、土層調査装置1の動作を説明する。
図5は、土層調査装置1の制御装置50が実行する土層調査処理の流れを示すフローチャートである。
土層調査処理は、土層調査装置1において、土層調査処理の実行を指示する操作が行われることに対応して開始される。
【0053】
ステップS1において、回転目標設定部100は、調査者の入力操作に従って、回転抵抗体16の目標回転速度を設定する。また、推進目標設定部200は、調査者の入力操作に従って、回転抵抗体16の目標推力を設定する。
ステップS2において、回転制御部300は、回転目標設定部100によって設定された目標回転速度(一定の回転速度)及び回転抵抗体16の現在の角度(位置)を入力として、式(5)に基づく座標変換を行い、回転抵抗体16の角度及び回転トルクを逐次算出することにより、回転抵抗体16の回転動作を制御する。また、推進制御部400は、推進目標設定部200によって設定された目標推力及び回転抵抗体16の現在の推力(アクチュエータの現在の出力トルク)を入力として、式(5)に基づく座標変換を行い、回転抵抗体16の位置(掘削方向の位置)及び推力(アクチュエータの出力)を逐次算出することにより、回転抵抗体16の推進動作を制御する。
【0054】
ステップS3において、測定結果取得部500は、回転抵抗体16が土層から受ける反力(または土層の性質を把握できる他のパラメータ)を取得し、取得した反力を半導体メモリ等からなる記憶部に記憶する。また、測定結果取得部500は、記憶した反力に基づいて、土層の性質を表す各種パラメータ(粘度、水分特性等)を算出し、算出したパラメータを記憶部に記憶する。
【0055】
ステップS4において、状態判定部600は、測定結果取得部500によって取得された反力(または算出されたパラメータ)に基づいて、土層の状態に変化があるか否かを判定する。
土層の状態に変化がない場合、ステップS4においてNOと判定されて、処理はステップS7に移行する。
一方、土層の状態に変化がある場合、ステップS4においてYESと判定されて、処理はステップS5に移行する。
【0056】
ステップS5において、状態判定部600は、回転制御部300に対し、目標回転速度を周期変化する回転速度に変更するための指示信号を出力する。これにより、回転制御部300は、回転抵抗体16の回転速度を一時的に周期変化させる。
ステップS6において、測定結果取得部500は、回転抵抗体16が土層から受ける反力(または土層の性質を把握できる他のパラメータ)を取得し、取得した反力を半導体メモリ等からなる記憶部に記憶する。また、測定結果取得部500は、記憶した反力に基づいて、土層の性質を表す各種パラメータ(粘度、水分特性等)を算出し、算出したパラメータを記憶部に記憶する。
【0057】
ステップS7において、制御装置50は、土層調査処理の終了が指示されたか否か(停止ボタンが操作されたか否か等)を判定する。
土層調査処理の終了が指示されていない場合、ステップS7においてNOと判定されて、処理はステップS2に移行する。
一方、土層調査処理の終了が指示された場合、ステップS7においてYESと判定されて、土層調査処理は終了となる。
【0058】
このような処理により、土層調査装置1においては、回転抵抗体16の回転(回転速度等)及び推力(土層に対する押圧力等)が制御され、土層からの反力が加わる状況においても、回転抵抗体16の回転及び推力の正確な制御が図られる。
そのため、土層の掘削時に回転抵抗体16が土層から受ける反力をより正確に取得できることから、取得された反力を解析することで、土層の性質をより正確に把握することができる。
即ち、本発明に係る土層調査装置に1よれば、土層をより正確に測定することが可能となる。
【0059】
本土層調査方法によって、ロッド15を回転させるトルクの値は、例えば図6に示すように検出される。図6に示すように、ロッド15を一定の回転速度で回転させるトルク値は、一定ではなく変動する。このトルク値の変動の様子は、土層の成分に応じて異なってくると考えられる。具体的には、検出されたトルクの最大値と最小値との比であるトルク変動係数と、土層の最大粒径との間には相関があり、土層の最大粒径が大きいほどトルク変動係数が増加すると考えられる。このため、ロッド15の土層への押し付け力を一定に保った状態でロッド15を回転させるトルク値の変動を検出することにより、トルク変動係数に基づいて土層の最大粒径を予測することができ、予測された土層の最大粒径から土層の成分を予測することができる。
【0060】
また、本土層調査方法によって、ロッド15を押し付ける推力の値とロッド15を回転させるトルクの値との関係から、土層の内部摩擦角を予測することができる。つまり、ロッド15を押し付ける推力の大きさを変化させ、各々の推力の値において所定の一定の回転速度でロッド15を回転させるトルクの値を検出することにより、図7に示すように、調査対象の土層毎に推力とトルクとの関係を得ることができる。この得られた推力値とトルク値との関係から、土層の内部摩擦角を予測することができる。
【0061】
本発明の実施形態に係る土層調査装置1においては、上述のように、制御装置50の制御により、回転抵抗体16が土層に押し付けられる力を一定にすることができる。このため、回転抵抗体16が土層から受ける抵抗トルクを正確に検出することができる。
【0062】
このように、本発明の実施形態に係る土層調査装置1、土層調査装置1の制御装置50、土層調査装置1の制御方法、及び土層調査方法によれば、試験試料の採取を必要とすることなく土層の調査を行うことができる。
【0063】
上述の本発明の実施形態に係る土層調査装置1において、操作部30において設定された操作情報は、ロッド15の回転速度の基準値としてロッド15を一定の回転速度で回転させるようにする情報を有しているとしたが、操作情報は、これに限られない。例えば、操作情報は、ロッド15の回転速度の基準値として、ロッド15の回転速度が所定の周期で変化するようにロッド15を回転させるようにする情報を有していてもよい。例えば、ロッド15の回転速度が、三角関数の周期で変化するようにする操作情報を操作部30が有していてもよい。このように、ロッド15の回転速度が所定の周期で変化するようにロッド15を回転させるようにすることにより、調査対象の土層の粘土を調査することができる。
【0064】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記本発明の実施形態に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含む。また、上述した課題及び効果の少なくとも一部を奏するように、各構成を適宜選択的に組み合わせてもよい。例えば、上記実施形態における、各構成要素の形状等の形態は、本発明の具体的使用態様によって適宜変更され得る。
【0065】
また、上述の実施形態において、特許第6382203号公報に記載された位置・力制御方法を応用して制御を行う場合を例に挙げて説明したが、制御方法はこれに限られない。即ち、本発明を実施する場合、回転抵抗体16の回転速度を目標回転速度に制御しつつ、必要な回転トルクを与えることができ、回転抵抗体16の推力を目標推力に制御しつつ、必要な速度を与えることができるものであれば、他の制御方法を用いることも可能である。
【0066】
本発明に係る土層調査装置、土層調査装置の制御装置、土層調査装置の制御方法、及び土層調査方法は、本発明に係る土層調査装置を上述のように調査対象の土層に設置して行う土層調査のみではなく、機械に取り付けられて用いられてもよい。本発明に係る土層調査装置、土層調査装置の制御装置、土層調査装置の制御方法、及び土層調査方法は、例えば、土層を調査するロボットに適用されてもよく、掘削機に適用されてもよい。掘削機に適用される場合は、例えば、シールドチャンバー内の土砂の性状を検出するために、本発明に係る土層調査装置、土層調査装置の制御装置、土層調査装置の制御方法、及び土層調査方法は用いられ、検出結果は例えば加泥材や気泡の注入管理に使用される。
【0067】
また、回転抵抗体16は、基体部16aを有しておらず、羽根部16bのみを有していてもよい。また、回転抵抗体16は羽根部16bを有していなくてもよく、この場合、基体部16aのロッド15との接続部とは反対側の端面は、土層から抵抗を受けるような形状や性状(表面粗さ等)に形成されている。
【0068】
また、上述の実施形態における制御装置50の処理は、ハードウェア及びソフトウェアのいずれにより実行させることも可能である。即ち、上述の処理を実行できる機能が制御装置50に備えられていればよく、この機能を実現するためにどのような機能構成及びハードウェア構成とするかは上述の例に限定されない。上述の処理をソフトウェアにより実行させる場合には、そのソフトウェアを構成するプログラムが、コンピュータにネットワークや記憶媒体からインストールされる。
【0069】
プログラムを記憶する記憶媒体は、配布可能なリムーバブルメディア、あるいは、制御装置50に予め組み込まれた記憶媒体等で構成される。リムーバブルメディアは、例えば、フラッシュメモリ、磁気ディスク、光ディスク、または光磁気ディスク等により構成される。光ディスクは、例えば、CD-ROM(Compact Disk-Read Only Memory),DVD(Digital Versatile Disk),Blu-ray Disc(登録商標)等により構成される。光磁気ディスクは、MD(Mini-Disk)等により構成される。また、制御装置50本体に予め組み込まれた記憶媒体は、例えば、プログラムが記憶されているROMやハードディスク等で構成される。
【符号の説明】
【0070】
1…土層調査装置、10…作業部、11…作業部材、12…作業部材駆動部、13…回転駆動部(トルク発生部)、13a…出力軸、13b…接続部材、14…推進駆動部(推力発生部)、14a…可動部材、14b…アクチュエータ、14c…可動子、14d…軸、15…ロッド、15a…先端、15b…後端、16…回転抵抗体、16a…基体部、16b…羽根部、17…保持部材、17a…カバー、17b…貫通孔、20…位置検出部、21…推進位置検出部、22…回転位置検出部、30…操作部、50…制御装置、100…回転目標設定部、200…推進目標設定部、300…回転制御部、301…回転位置取得部、302…第1座標変換部、303…第1力領域演算部、304…第1位置領域演算部、305…第1逆変換部、306…回転用アクチュエータ制御部、400…推進制御部、401…推進位置取得部、402…第2座標変換部、403…第2力領域演算部、404…第2位置領域演算部、405…第2逆変換部、406…推進用アクチュエータ制御部、500…測定結果取得部、600…状態判定部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7