(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】ピット蓋受け部材及びピット形成方法
(51)【国際特許分類】
E04B 5/43 20060101AFI20230314BHJP
H02G 9/04 20060101ALI20230314BHJP
E03C 1/12 20060101ALN20230314BHJP
【FI】
E04B5/43 Z
H02G9/04
E03C1/12 A
(21)【出願番号】P 2019061642
(22)【出願日】2019-03-27
【審査請求日】2022-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】永田 正道
【審査官】家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-146580(JP,A)
【文献】特開昭58-047862(JP,A)
【文献】実開昭56-000787(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 5/43
E04B 1/64
E04G 15/06
H02G 9/04
E03C 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面を覆うピット蓋を支持する段差を備えたピットをコンクリートで形成するためのピット蓋受け部材であって、
前記床面となる位置に固定され、第1角部を有する第1角部材と、
前記第1角部材より所定距離下方に離間して固定され、第2角部を有する第2角部材と、
断面視して前記段差を形成するように前記第2角部が前記第1角部に対して水平方向に離間するように前記第1角部材と前記第2角部材とをオフセットして連結する連結部材と、を備えることを特徴とする、
ピット蓋受け部材。
【請求項2】
前記連結部材は、前記第1角部材の下方に所定距離離間して前記第2角部材を位置決めするように板状に形成された本体部と、
前記本体部の上方において段差部を有し、前記第1角部材に取り付けられる第1固定部と、
前記本体部の下方において水平方向に突出し、前記第2角部材に取り付けられる第2固定部と、を備えることを特徴とする、
請求項1に記載のピット蓋受け部材。
【請求項3】
前記段差部は、前記連結部材が前記第1角部材に取り付けられた際に前記第1角部材の鉛直面と前記本体部が同一面となるように形成されていることを特徴とする、請求項2に記載のピット蓋受け部材。
【請求項4】
床面を覆うピット蓋を支持する段差を備えたピットを第1角部材、第2角部材、及び連結部材を用いてコンクリートで形成するためのピット形成方法であって、
前記ピットを形成するための型枠用の板状体における前記床面となる位置に、前記段差を形成するための矩形断面に形成された棒状体を取り付ける工程と、
第1角部を有する前記第1角部材
を前記棒状体に固定する工程と、
前記第1角部材の下方において前記連結部材を前記棒状体に固定する工程と、
前記連結部材の下方に第2角部を有する前記第2角部材を固定することにより、前記第2角部が前記第1角部より所定距離下方に離間すると共に、前記第1角部に対して水平方向に離間するように前記第2角部をオフセットするように位置決めする工程と、
位置決めされた前記第2角部材を前記板状体に固定する工程と、
前記板状体と前記第1角部材と前記第2角部材とにより形成された領域にコンクリートを打設する工程と、を備えることを特徴とする、
ピット形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床面に溝状のピットを形成するためのピット蓋受け部材及びピット形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
排水目的やケーブル類を収納するために床面より下方に窪んだ溝状のピットが形成される。ピットの開口部は、ピット蓋で覆われる。この開口部には、ピット蓋を支持するための段差が床面近傍にピットの長手方向に沿って延在するように形成される。
【0003】
従来、ピットを形成する方法は、型枠を設置する行程と、ピット蓋を支持するための段差部分に設けられる金属製の部材が取り付けられる部分に空間を形成するように床コンクリートを打設する工程と、上記空間から露出するようにコンクリート打設前に予め設置された金属部材に、ピット蓋を支持するための支持部材を溶接する工程と、コンクリートと支持部材との間の隙間をモルタルで充填する工程とを備えていた。このような施工方法によれば、コンクリートの型枠を設置する工程と、金物を取り付ける工程と、左官埋めをする工程等の多くの工程が必要となりコストがかかると共に、床が打放し仕上げの場合にモルタルとコンクリートと間に境界線ができて美観性が損なわれるという課題がある。
【0004】
モルタルとコンクリートとの間の境界線が出ないようにピット蓋受け用の段差を有するピットを形成するために、例えば、特許文献1に記載された技術が知られている。特許文献1には、地面上に、プレキャストコンクリートブロックを、溝又はピットの壁を形成するように複数連続して設置する工程と、プレキャストコンクリートブロックの上部に設けられた金具にピット蓋を受けるための段差が形成されたグレーチング枠を溶接する工程と、プレキャストコンクリートブロックの外側にコンクリートを所定高さまで打設して床を形成する工程とを備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された技術によれば、プレキャストコンクリートブロックやグレーチング枠をピットやピット蓋の厚さに応じて形成する必要があり、汎用性が低下する。
【0007】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、構成を簡略化して汎用性を高めると共に、施工後の美観性を向上させることができるピット蓋受け部材及びピット形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達するために、本発明は、床面を覆うピット蓋を支持する段差を備えたピットをコンクリートで形成するためのピット蓋受け部材であって、前記床面となる位置に固定され、第1角部を有する第1角部材と、前記第1角部材より所定距離下方に離間して固定され、第2角部を有する第2角部材と、断面視して前記段差を形成するように前記第2角部が前記第1角部に対して水平方向に離間するように前記第1角部材と前記第2角部材とをオフセットして連結する連結部材と、を備えることを特徴とするピット蓋受け部材である。
【0009】
本発明によれば、連結部材が第1角部材と第2角部材とをピット蓋を受けるための段差が形成されるように所定の位置関係で連結するため、コンクリート打設時にピット蓋受け部材を型枠に簡便に取り付けることができ、施工性を向上させることができる。
【0010】
また、本発明は、前記連結部材が前記第1角部材の下方に所定距離離間して前記第2角部材を位置決めするように板状に形成された本体部と、前記本体部の上方において段差部を有し、前記第1角部材に取り付けられる第1固定部と、前記本体部の下方において水平方向に突出し、前記第2角部材に取り付けられる第2固定部と、を備えるように構成されていてもよい。
【0011】
本発明によれば、連結部材で第1角部材と第2角部材とを固定することにより第2角部材が第1角部材の下方に所定の位置関係で位置決めすることができる。
【0012】
また、本発明は、前記段差部は、前記連結部材が前記第1角部材に取り付けられた際に前記第1角部材の鉛直面と前記本体部が同一面となるように形成されているように構成されていてもよい。
【0013】
本発明によれば、ピット蓋受け部材がコンクリートに打ち込まれてピットが形成された際に本体部と第1角部材の鉛直面とコンクリートで形成された面とが同一面となり、美観性が向上する。
【0014】
本発明は、床面を覆うピット蓋を支持する段差を備えたピットをコンクリートで形成するためのピット形成方法であって、第1角部を有する第1角部材を、前記ピットを形成するための型枠用の板状体に矩形断面に形成された棒状体を介して前記床面となる位置に固定する工程と、前記第1角部材に合わせて連結部材を前記板状体に固定する工程と、前記連結部材に合わせて第2角部を有する第2角部材を前記第1角部より所定距離下方に離間すると共に前記第1角部に対して水平方向に離間するように前記第2角部をオフセットするように位置決めする工程と、位置決めされた前記第2角部材を前記板状体に固定する工程と、前記板状体と前記第1角部材と前記第2角部材とにより形成された空間にコンクリートを打設する工程と、を備えることを特徴とする、ピット形成方法である。
【0015】
本発明によれば、連結部材、第1角部材、及び第2角部材の寸法を変更することで、ピット蓋の厚さや形状に合わせて任意の寸法のピット蓋受け用の段差を形成することができ、汎用性を高めることができる。また、本発明によれば、連結部材、第1角部材、及び第2角部材がコンクリートに打ち込まれてそのままピット蓋受け用の段差として形成されるため、モルタルを充填する等の工程を廃止し美観性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、構成を簡略化して汎用性を高めると共に、施工後の美観性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係るピット蓋受け部材の構成を示す斜視図である。
【
図2】ピット蓋受けが形成されたピットの施工方法を示す断面図である。
【
図3】ピット蓋受け部材によりピット蓋受けが形成されたピットの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係るピット蓋受け部材及びピット形成方法の実施形態について説明する。ピット蓋受け部材は、コンクリート打設時の型枠に予め取り付けられ、床面を覆うピット蓋を支持するための段差を形成する部材である。以下の説明では、ピット蓋受け部材の短手の断面を見る方向(図のx軸方向)を断面視すると記載する。
【0019】
図1に示されるように、ピット蓋受け部材1は、床面側に取り付けられる第1角部材2と、第1角部材2から下方に離間して取り付けられた第2角部材10とを備える。
【0020】
第1角部材2は、L断面に形成されたアングル部材である。第1角部材2は、例えば、押し出しにより形成されている。第1角部材2は、逆L断面となるように配置されている。第1角部材2は、帯状に形成された水平板3と水平板の一端から下方に垂下して帯状に形成された鉛直板4とを備える。
【0021】
水平板3と鉛直板4との接続部の表側には、略直角の第1角部5が形成されている。第1角部5は、ピット蓋受け部材1がコンクリートに打ち込まれた後、ピット蓋を支持するための段差を形成する枠の一部となる。水平板3と鉛直板4との接続部の裏側には、斜め下方向に突出して複数の鋼棒Bが固定されている。鋼棒Bは、水平板3と鉛直板4との接続部に溶接やロウ付け等で固定されている。鋼棒Bは、例えば、鉄筋が所定の長さに切断されて形成されている。
【0022】
鋼棒Bは、コンクリート内に打ち込まれ、ピット蓋受け部材1がコンクリートから脱落することを防止するアンカーとして機能する。第1角部材2の下方には第2角部材10が後述の連結部材20を介して固定されている。
【0023】
第2角部材10は、第1角部材2と同様の構成を有するL断面に形成されたアングル部材である。第2角部材10は、逆L断面となるように配置されている。第2角部材10は、帯状に形成され水平面を有する水平板11と水平板11の一端から下方に垂下して帯状に形成されて鉛直面を有する鉛直板12とを備える。水平板11と鉛直板12との接続部の表側には、略直角の第2角部13が形成されている。第2角部13は、ピット蓋受け部材1がコンクリートに打ち込まれた後、ピット蓋を支持するための段差を形成する枠の一部となる。水平板11と鉛直板12との接続部の裏側には、斜め下方向に突出して複数の鋼棒Bが取り付けられている。第1角部材2と第2角部材10とは、複数の連結部材20により連結されている。
【0024】
連結部材20は、第1角部材2と第2角部材10とをピット蓋を支持するための段差を形成するように位置決めして固定するための部材である。連結部材20は、第1角部材2と第2角部材10とを所定距離離間させるよう矩形の板状に形成された本体部21を備える。本体部21の表面21aは、鉛直板4の表面4a(鉛直面)と同一面となるように配置される。これにより、ピット蓋受け部材1がコンクリートに打ち込まれてピットが形成された際に本体部21と第1角部材2の表面4aとコンクリートで形成された面とが同一面となり、美観性が向上する。
【0025】
本体部21の上部には、第1角部材2を配置するための第1固定部22が設けられている。第1固定部22は、鉛直板4の裏面4bに配置されている。第1固定部22と鉛直板4とは、スポット溶接やロウ付け等で予め固定されていてもよいし、後述のようにコンクリートの打設時に第1角部材2と共に釘GでコンクリートパネルPに固定されてもよい。第1固定部22には、本体部21の表面21aと鉛直板4の表面4aとを同一面に位置決めするための段差部22aが形成されている。
【0026】
本体部21の下部には、第2角部材10を固定するための第2固定部23が設けられている。第2固定部23は、本体部21の下部から表面21a側の水平方向に突出して形成されている。第2固定部23は、本体部21の下方が折り曲げられて形成されている。第2固定部23は、水平板11を支持するように水平板11の下面11bに配置されている。第2固定部23と水平板11とは、スポット溶接やロウ付け等で予め固定されてもよいし、後述のようにコンクリートの打設時に釘GでコンクリートパネルPに固定されてもよい。
【0027】
連結部材20により、断面視して第1角部5と第2角部13とは、鉛直方向に所定距離離間すると共に水平方向に所定距離離間して配置されている。これにより、鉛直板4の表面4aと水平板11の上面11aとによりピット蓋を支持するための段差Sが形成されている。ピット蓋の厚さに応じて本体部21の鉛直方向の長さを変更することにより、任意の高さ有する段差Sを形成することができる。
【0028】
次に、ピット蓋受け部材1を適用して施工されるピット形成方法について説明する。
【0029】
図2に示されるように、ピットを形成する位置に型枠用の一対のコンクリートパネルP(板状体)が設置される。対向する一対のコンクリートパネルPの表面側には、ピットと略同一の空間Uが形成される。コンクリートパネルPの上端は、床面Eと一致するように配置される。コンクリートパネルPの裏面側の上部には、ピット蓋受け部材1が取り付けられる。コンクリートパネルPの裏面側の上部には、段差Sの空間を埋めるための矩形断面に形成された棒状のベニヤ板F(棒状体)がコンクリートパネルPの上端に沿って固定される。コンクリートパネルPとベニヤ板Fとは、コンクリートパネルPの表面側から打たれたステンレス製の釘Gで固定される。
【0030】
ベニヤ板Fの裏面側には、第1角部5を有する第1角部材2がコンクリートパネルPにベニヤ板Fを介して床面Eとなる位置に釘Gで固定される。第1角部材2に合わせて連結部材20がコンクリートパネルPに釘Gで固定される。連結部材20に合わせて第2角部材10が第1角部5より所定距離下方に離間すると共に第1角部5に対して水平方向に離間するように第2角部13をオフセットするように位置決めされる。位置決めされた第2角部材10がコンクリートパネルPに釘Gで固定される。このとき、第2角部材10は、ベニヤ板Fの下面と当接してコンクリートパネルPに釘Gで固定される。
【0031】
ピット蓋受け部材1の下方には、コンクリートパネルPの表面側にサポート用のパイプHが水平方向に沿って上下に2列並置されて固定部材Qを介して固定される。コンクリートパネルPと、ピット蓋受け部材1とにより形成された領域Rにコンクリートが打設される。コンクリートの打設時にトランシット等の測量機器を用いて空間Uが測量され、パイプHの位置を調整することにより、空間Uの通りが修正される。
【0032】
上記各工程を経てコンクリートが固化した後、コンクリートパネルP、ベニヤ板F、固定部材Q、及びパイプHが外される。ピット蓋受け部材1から突出した釘は、切断されて断面がグラインダー等を用いて研磨される。
【0033】
図3に示されるように、ピット蓋受け部材1により、ピット蓋を受ける段差Sが形成されたピットVが形成される。
【0034】
上述したようにピット蓋受け部材1によれば、構成を簡略化すると共に、汎用性を高めてピット蓋を受ける段差Sが形成されたピットVを形成することができる。また、ピット蓋受け部材1によれば、手間のかかる作業を排し、工程を短縮することができる。また、ピット蓋受け部材1によれば、コンクリート打設時に型枠に取り付けられ、型枠を外した際にそのままピット蓋受け用の段差が形成されるので美観性が向上する。
【0035】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記の一実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば、ピット蓋受け部材1は、ピット蓋受けを形成するだけでなく、段差が必要な他のコンクリート構造物の構築に適用してもよい。
【符号の説明】
【0036】
1 ピット蓋受け部材
2 第1角部材
3 水平板
4 鉛直板
5 第1角部
10 第2角部材
11 水平板
12 鉛直板
13 第2角部
20 連結部材
21 本体部
22 第1固定部
23 第2固定部
B 鋼棒
E 床面
F ベニヤ板
G 釘
H パイプ
P コンクリートパネル
Q 固定部材
R 領域
S 段差
U 空間
V ピット