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  • 特許-半導体モジュール用外部端子 図1
  • 特許-半導体モジュール用外部端子 図2
  • 特許-半導体モジュール用外部端子 図3
  • 特許-半導体モジュール用外部端子 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】半導体モジュール用外部端子
(51)【国際特許分類】
   H01L 25/07 20060101AFI20230314BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20230314BHJP
   H01R 12/71 20110101ALI20230314BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20230314BHJP
   H05K 1/18 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
H01L25/04 C
H01R12/71
H01L23/12 K
H05K1/18 F
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019079866
(22)【出願日】2019-04-19
(65)【公開番号】P2020178060
(43)【公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-03-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000144393
【氏名又は名称】株式会社三社電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】弁理士法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 寛子
【審査官】平林 雅行
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-073782(JP,A)
【文献】特開2013-187437(JP,A)
【文献】特開2015-201505(JP,A)
【文献】特開2003-115337(JP,A)
【文献】特開2013-140862(JP,A)
【文献】特開2019-009183(JP,A)
【文献】特開昭59-110146(JP,A)
【文献】特開2015-046416(JP,A)
【文献】国際公開第2017/122471(WO,A1)
【文献】特許第2720009(JP,B2)
【文献】特開2008-205329(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/54
H01L 23/00-23/04
H01L 23/06-23/31
H01L 23/48
H01L 25/00-25/07
H01L 25/10-25/11
H01L 25/16-25/18
H01R 12/00-12/91
H01R 24/00-24/86
H05K 1/18
H02M 7/42-7/98
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体モジュール内に配置される基板に対し垂直に半田付けされる外部端子において、
前記基板に半田付けされる底部と、
前記底部から垂直に折り曲げられた端子本体部と、を備え
前記端子本体部は、前記端子本体部の一部であり前記底部から垂直方向に折り曲げられた部分である第1垂直片を有しており、
前記第1垂直片には、前記底部直上の左端部側に第1溝部、右端部側に第2溝部が形成されており、前記第1溝部と前記第2溝部は前記端子本体部を垂直方向に通過する中心線に対して水平方向に非対称であることを特徴とする半導体モジュール用外部端子。
【請求項2】
前記第1溝部と前記第2溝部は、それぞれの水平方向の長さが異なっている、請求項1記載の半導体モジュール用外部端子。
【請求項3】
前記端子本体部は、前記第1溝部と前記第2溝部の上方の左端部側に第3溝部、右端部側に第4溝部を有し、前記第3溝部と前記第4溝部は前記中心線に対して非対称である、請求項1記載の半導体モジュール用外部端子。
【請求項4】
前記第3溝部と前記第4溝部は、それぞれの水平方向の長さが異なっている、請求項3記載の半導体モジュール用外部端子。
【請求項5】
前記第3溝部と前記第4溝部は、それぞれの垂直方向の位置が異なっている、請求項4記載の半導体モジュール用外部端子。
【請求項6】
前記第1溝部と前記第3溝部は、それぞれの水平方向の長さが異なっている、請求項3~請求項5のいずれかに記載の半導体モジュール用外部端子。
【請求項7】
前記第2溝部と前記第4溝部は、それぞれの水平方向の長さが異なっている、請求項3~請求項6のいずれかに記載の半導体モジュール用外部端子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体モジュールに使用される外部端子に関し、特に大電力用半導体モジュールに適した外部端子に関する。
【背景技術】
【0002】
大電力用半導体モジュールでは、基板の温度上昇により基板に応力が生じると、熱応力(曲げ応力やせん断応力)によって半田の剥がれやクラックの問題が生じる。特に、長方形状の基板の長手方向に外部端子が半田付けされている場合には、基板の長手方向への曲げが生じやすくなるため、外部端子が半田付けされる底部において半田クラックが生じやすくなる。また、外部端子は、その端子本体部が熱膨張率の小さいエポキシ樹脂などの封止材で固定されるため、封止材の熱膨張差により外部端子の底部に位置する半田付け部は不均等な応力がかかりさらに熱応力の影響を受けやすい。
【0003】
すなわち、大電力用半導体モジュールの信頼性を確保するためには、外部端子の半田付け部に生じる熱応力の分散が課題となる。
【0004】
上記課題を解決するために、従来は、端子にスリットを形成した構造が提案されている(特許文献1)。この端子では、半田付け部に対し基板から熱応力が加えられたときにスリットが曲がるようにして応力緩和を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平6-21603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に示される端子では、基板3からの熱応力の分布が複雑に変遷する場合、十分に応力緩和を図ることができない。この原因は、端子本体部の左右の曲げ強度やせん断強度が同じであるため、基板に半田付けされる底部から端子本体部に拡散する応力を効果的に吸収することができず、それにより端子本体部が変形しないからである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、端子本体部の左右の曲げ強度やせん断強度を変えることで、端子本体部を変形しやすくする半導体モジュール用外部端子を提供することを目的とする。
【0008】
この発明の半導体モジュール用外部端子は、半田付けされる底部と、前記底部から垂直に折り曲げられた板状の端子本体部と、を備える。
【0009】
前記端子本体部は、前記底部からの折り曲げ部の直上の左端部側に第1溝部、右端部側に第2溝部を有し、前記第1溝部と前記第2溝部は前記端子本体部を垂直方向に通過する中心線に対して非対称である。
【0010】
この発明の実施態様では、前記第1溝部と前記第2溝部は、それぞれの水平方向の長さが異なっている。
【0011】
この発明の他の実施態様は、第3溝部と第4溝部とを備える。これらの第3溝部と第4溝部も前記端子本体部を垂直方向に通過する中心線に対して非対称である。
【発明の効果】
【0012】
この発明では、第1溝部と第2溝部は、半田付けされる底部からの折り曲げ部の直上に設けられているため、底部に集中している応力は第1溝部と第2溝部の影響を受けて端子本体部が変形しやすくなる。また、第1溝部と第2溝部は、端子本体部を垂直方向に通過する中心線に対して非対称であるため、端子本体部は応力に対してさらに変形しやすくなる。これにより、底部に集中している応力は端子本体部の変形によって吸収され、底部において半田割れやクラックが生じることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】この発明の実施形態である半導体モジュールの斜視図である。
図2】半導体モジュールの上面図である。
図3】外部端子4の左斜視図である。
図4】外部端子4の上面図(同図(A))、正面図(同図(B))、底面図(同図(C))、右側面図(同図(D))である。
図5】第2の実施形態に係る外部端子の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1はこの発明の実施形態である半導体モジュールの斜視図である。図2は、前記半導体モジュールの上面図である。
【0015】
この半導体モジュールは、金属導体のベース板1と、ベース板1上に取り付けられた樹脂製のケース2と、ケース2内に収納されたセラミック基板(以下、基板と称する)3とを備えている。
【0016】
基板3は、図示しない複数の半導体素子、回路部品等を実装し、基板3の上下端部および右側端部には、外部接続用の7個の外部端子4(4a~4g)が半田接続されている。実際には、基板3は複数のセラミック基板に銅板を直接接合したDCB(Direct Copper Bond)基板で構成され、図2の右側に位置する3個の外部端子4c~4eは長方形のDCB基板30の長手方向に一列に配置されている。他の外部端子4a、4b、4f、4gは、図示していない他のDCB基板の短手方向に配置されている。
【0017】
7個の外部端子4(4a~4g)は、すべて同一形状であり、板状の金属製導体を所定の形状に打ち抜いたのち、折り曲げ加工を行うことによって形成される。図1図2では、7個の外部端子4(4a~4g)の上端部は折り曲げられていないが、底部が半田付けされてケース内が樹脂封止されたのちに折り曲げられる。以下、外部端子4(4a~4g)を外部端子4と称し、一つの外部端子4について説明する。
【0018】
図3は、外部端子4の左斜視図である。
【0019】
外部端子4は、基板3に半田付けされる底部40と、底部40から垂直方向に折り曲げられた第1垂直片41と、垂直片41から水平方向に折り曲げられた水平片42と、水平片42から垂直方向に折り曲げられた第2垂直片43とで構成される。端子本体部44は、第1垂直片41と、水平片42と、第2垂直片43とで構成している。
【0020】
端子本体部44の第1垂直片41には、底部40からの折り曲げ部の直上の左端部側に第1溝部45、右端部側に第2溝部46が形成されている。また、第1溝部45と第2溝部46の上方であって、第2垂直片43の下端部の左端部側に第3溝部47、右端部側に第4溝部48が形成されている。
【0021】
端子本体部44の第2垂直片43の略中央位置には、折り曲げ部49が形成されている。端子本体部44の上部には、端子をケーブルやブスバーにネジ止めするための接続用孔50が形成されている。第2垂直片43の折り曲げ部49よりやや下方には、その両端部に位置合わせ用突起51、52が形成されている。第2垂直片43の位置合わせ用突起51、52よりやや下方には、第2垂直片43の中央部に固定用アンカー孔53が形成されている。これらの位置合わせ用突起51、52をケース2に引っ掛けてケース2の所定の箇所で位置合わせする。そして、外部端子4を基板3に半田付けする。そして封止材をケース2に注入すると、アンカー孔53にも封止材が入り込み、端子本体部44が封止材内に固定される。
【0022】
図4は、外部端子4の上面図(同図(A))、正面図(同図(B))、底面図(同図(C))、右側面図(同図(D))である。
【0023】
底部40からの折り曲げ部の直上の左端部側に設けられている第1溝部45と、右端部側に設けられている第2溝部46とは、端子本体部を垂直方向に通過する中心線Xに対して水平方向に非対称である。すなわち、図4では、第1溝部45の長さL1<第2溝部46の長さL2である。
【0024】
第1溝部45と第2溝部46とを底部40の直上、すなわち、底部40に接して設けていること、および、L1<L2であることから、外部端子4は底部40に生じる熱応力に対し左右にアンバランスな状態で応力吸収する。この結果、底部40の熱応力に対し、外部端子4の第1垂直片41が左右に変形しやすくなり、より応力吸収をするように挙動する。実験によれば、L1=L2とするよりも、L1<L2とすることで、熱応力に対するアンバランスな状態となり、応力吸収が大きくなって底部40の半田クラックが生じにくくなった。さらに、第1溝部45と第2溝部46とを底部40の直上に形成しているため、この効果がより顕著に観測された。
【0025】
本実施形態では、熱応力に対する左右のさらなるアンバランスな状態を形成するため、第3溝部47と第4溝部48を設けている。第3溝部47と第4溝部48は、第2垂直片43の下端部に設けられ、その位置は、第1溝部45と第2溝部46の上方である。第3溝部47は第2垂直片43の左端部側、第4溝部48は垂直片43の右端部側に設けられている。第3溝部47の長さL4は、第1溝部L1の長さL1と同じである。また、第3溝部47と第4溝部48は、中心線Xに対して水平方向に非対称である。すなわち、図4では、第3溝部47の長さL4(=L1)>第4溝部48の長さL3である。
【0026】
第3溝部47と第4溝部48も、第1溝部45と第2溝部46と同様に、底部40に生じる熱応力に対してアンバランスな状態を形成する。したがって、底部40の熱応力に対し、外部端子の端子本体部44が左右により変形しやすくなる。ここで、第1溝部45と第2溝部46との組、或いは第3溝部47と第4溝部48との組のいずれか一組のみ形成しても、熱応力に対してアンバランスな状態を形成できる。また、第1溝部45と第2溝部46と、第3溝部47と第4溝部48の両方を設ける場合、それらの各溝部の長さは、アンバランスな状態を形成することが可能な任意の長さに設定できる。例えば、L1>L2とL3>L4の組み合わせ、L1>L2とL3<L4の組み合わせが可能である。また、これらの組み合わせにおいて、L1とL4の関係を、L1>L4またはL1<L4とすることが可能である。これらの組み合わせでは、L1またはL2の長い方の溝部Lxと、L3またはL4の長い方の溝部Lyとを、中心線Xに対して左側に配置しても良いし、または、中心線Xに対して右側に配置しても良い。他の例として、Lxを中心線Xに対して左側に配置し、Lyを中心線Xに対して右側に配置することも出来る。いずれの場合も、熱応力に対してアンバランスな状態を形成できる。
【0027】
また、第2垂直片43は封止材で固定されるため、第3溝部47と第4溝部48は、端子本体部44が左右により変形しやすくなるように挙動する。
【0028】
以上の構成により、基板3の高温状態が継続し、又は熱サイクルが繰り返されて、外部端子4の底部40に大きな熱応力が生じても、この熱応力は端子本体部44、本例では第1垂直片41と第2垂直片43の両方或いはいずれか一方が変形することで吸収される。これにより、底部40を固定している半田付け部にクラックが生じることを防止できる。
【0029】
以上の効果は、少なくとも第1溝部45、第2溝部46を中心線Xに対して非対称とすることで得られる。また、同効果は外部端子4c~4eにおいて顕著である。この理由は、外部端子4c~4eは長方形状のDCB基板30の長手方向の側部に一列に配置されているからである。長方形状のDCB基板30は熱により長手方向に撓みやすくなるが、これにより、外部端子4c~4eは他の外部端子よりも相対的に熱応力がかかりやすくなると推定される。
【0030】
次に、他の実施形態について説明する。
【0031】
図5は、第2の実施形態に係る外部端子の正面図である。
【0032】
第3溝部47と第4溝部48は、それぞれの垂直方向の位置が異なっている。その他は図4と同様である。第3溝部47と第4溝部48の長さは同一であっても異なっていても良い。
【0033】
これにより、第1溝部45と第2溝部46は、中心線Xに対して非対称であり、第3溝部47と第4溝部48も、中心線Xに対して非対称である。
【0034】
なお、外部端子4は、位置合わせ用突起51、52をケース2に引っ掛けて基板内部の所定の箇所で位置決めした後、底部40を半田付けする。その後ゲル状封止材で半田付け部が覆われるようにケース2内を封止し、さらにその上からエポキシ封止材でケース2内を封止する。このとき、エポキシ封止材がアンカー孔53にも入り込んで固化し、端子本体部44が封止材中に固定される。
【符号の説明】
【0035】
1-ベース板
2-ケース
3-基板
4-外部端子
45-第1溝部
46-第2溝部
47-第3溝部
48-第4溝部
X-中心線
図1
図2
図3
図4
図5