(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】珪窒化バナジウム膜被覆部材の製造方法および珪窒化バナジウム膜被覆部材
(51)【国際特許分類】
C23C 16/02 20060101AFI20230314BHJP
C23C 16/30 20060101ALI20230314BHJP
C23C 16/50 20060101ALI20230314BHJP
B21D 37/01 20060101ALN20230314BHJP
B21J 13/02 20060101ALN20230314BHJP
B23B 27/14 20060101ALN20230314BHJP
【FI】
C23C16/02
C23C16/30
C23C16/50
B21D37/01
B21J13/02 L
B23B27/14 A
(21)【出願番号】P 2019141080
(22)【出願日】2019-07-31
【審査請求日】2022-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】306039120
【氏名又は名称】DOWAサーモテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101557
【氏名又は名称】萩原 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(74)【代理人】
【識別番号】100187849
【氏名又は名称】齊藤 隆史
(72)【発明者】
【氏名】羽深 智
(72)【発明者】
【氏名】松岡 宏之
【審査官】森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-145461(JP,A)
【文献】国際公開第2001/034867(WO,A1)
【文献】特開昭62-294160(JP,A)
【文献】特開2008-308759(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107740053(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00 - 16/56
B21D 37/01
B21J 13/02
B23B 27/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素ガスと水素ガスの分圧比(窒素分圧/水素分圧)が1.0以上、下記(1)式で求められる総エネルギー密度が50000~140000[kJ/m
2]の条件で鋼材にプラズマ窒化処理を行い該鋼材に窒化層を形成し、
鋼材に形成された前記窒化層の上に珪窒化バナジウム膜を形成する、珪窒化バナジウム膜被覆部材の製造方法。
電圧[V]×電流[A]×プラズマ窒化処理時間[s]/(陰極表面積[m
2]×1000)・・・(1)
電圧:陽極側の電極部材と陰極側の電極部材間に印加される電圧
電流:前記電圧により生じる電流
陰極表面積:陰極側の電極部材の表面積と、前記陰極側の電極部材に電気的に接続される、チャンバー内にある部材の表面積との合計値
【請求項2】
下記(2)式で求められる前記プラズマ窒化処理時の電力密度が6500~13000[W/m
2]である、請求項1に記載の珪窒化バナジウム膜被覆部材の製造方法。
電圧[V]×電流[A]/陰極表面積[m
2]・・・(2)
【請求項3】
プラズマCVD法を用いて前記珪窒化バナジウム膜を形成する、請求項1または2に記載の珪窒化バナジウム膜被覆部材の製造方法。
【請求項4】
表面に窒化層を有する鋼材と、
前記窒化層の上に形成された珪窒化バナジウム膜と、を備え、
表面粗さRzjisが1.0μm以下であり、
スクラッチ試験における臨界荷重が70N以上である、珪窒化バナジウム膜被覆部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋼材に珪窒化バナジウム膜が被覆された珪窒化バナジウム膜被覆部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プレス成形用の金型や切削工具、歯切工具、鍛造工具、自動車部品等の表面に対し、膜硬度が高く潤滑性に富む、バナジウム系膜を形成することが知られている。バナジウム系膜には、例えば窒化バナジウム膜(VN膜)や炭化バナジウム膜(VC膜)、炭窒化バナジウム膜(VCN膜)、珪窒化バナジウム膜(VSiN膜)等があり、特許文献1には、鋼材の表面に珪窒化バナジウム膜が形成された珪窒化バナジウム膜被覆部材が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の珪窒化バナジウム膜被覆部材を製造する際には、鋼材表面に珪窒化バナジウム膜を形成する前に鋼材のプラズマ窒化処理が行われている。鋼材のプラズマ窒化処理により鋼材と珪窒化バナジウム膜の密着性を向上させることができるが、本発明者らが検討した結果、鋼材のプラズマ窒化処理を長い時間行うと、鋼材の窒化が進む一方で鋼材表面が粗くなることがわかった。そのような表面が粗い鋼材の上に珪窒化バナジウム膜を形成すると、珪窒化バナジウム膜の表面もまた粗くなる。表面が粗い珪窒化バナジウム膜の被覆部材が例えば金型として用いられる場合、被成形材と金型表面との摩擦力が大きいために金型表面と被成形材が凝着する場合があり、珪窒化バナジウム膜が一部剥離する等により金型の寿命が短くなる問題が生じることがわかった。このため、珪窒化バナジウム膜被覆部材を製造する際には、鋼材のプラズマ窒化処理により鋼材と珪窒化バナジウム膜の密着性を向上させると共に、鋼材の表面粗さを小さくして珪窒化バナジウム膜の表面粗さを小さくすることが好ましい。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、鋼材と珪窒化バナジウム膜の高い密着性と、珪窒化バナジウム膜の低表面粗さとを両立させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明の一態様は、珪窒化バナジウム膜被覆部材の製造方法であって、窒素ガスと水素ガスの分圧比(窒素分圧/水素分圧)が1.0以上、下記(1)式で求められる総エネルギー密度が50000~140000[kJ/m2]の条件で鋼材にプラズマ窒化処理を行い該鋼材に窒化層を形成し、鋼材に形成された前記窒化層の上に珪窒化バナジウム膜を形成することを特徴としている。
電圧[V]×電流[A]×プラズマ窒化処理時間[s]/(陰極表面積[m2]×1000)・・・(1)
電圧:陽極側の電極部材と陰極側の電極部材間に印加される電圧
電流:前記電圧により生じる電流
陰極表面積:陰極側の電極部材の表面積と、前記陰極側の電極部材に電気的に接続される、チャンバー内にある部材の表面積の合計値
【0007】
なお、本発明におけるプラズマ窒化処理とは、窒素ガスおよび水素ガスをプラズマ化させて鋼材の表面に窒化層を形成する処理である。
【0008】
別の観点による本発明の一態様は、珪窒化バナジウム膜被覆部材であって、表面に窒化層を有する鋼材と、前記窒化層の上に形成された珪窒化バナジウム膜と、を備え、表面粗さRzjisが1.0μm以下であり、スクラッチ試験における臨界荷重が70N以上であることを特徴としている。
【0009】
なお、本発明における“珪窒化バナジウム膜被覆部材”は、鋼材の表面に珪窒化バナジウム膜が形成されることによって、鋼材の表面が珪窒化バナジウム膜で覆われた部材である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、鋼材と珪窒化バナジウム膜の高い密着性と、珪窒化バナジウム膜の低表面粗さとを両立させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係る珪窒化バナジウム膜被覆部材の概略構成を示す図である。
【
図3】Duty比の定義を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0013】
図1は、本実施形態の珪窒化バナジウム膜被覆部材1の概略構成を示す図である。本実施形態の珪窒化バナジウム膜被覆部材1は、鋼材2と、鋼材2の表面に形成された窒化層2aと、窒化層2aの上に形成された珪窒化バナジウム膜3で構成されている。
【0014】
鋼材2の種類は特に限定されず、珪窒化バナジウム膜被覆部材1の用途に応じて適した鋼種が用いられる。例えばSKD11、DC53、またはSKH51等のいわゆる冷間工具鋼、冷間金型用鋼(冷間ダイス鋼)または高速度工具鋼(ハイス鋼)等が採用され得る。
【0015】
窒化層2aは、化合物層および拡散層の少なくともいずれか一方からなる層であり、鋼材2の窒化処理を行うことで形成される。窒化層2aの厚さ(窒化深さ)は特に限定されず、鋼材2の窒化が進行していればよい。窒化層2aの厚さは例えば0.5μm以上である。また、窒化層2aの厚さを厚くするためには、プラズマ窒化工程における処理時間を長くする必要があるため、生産性を考慮すると、窒化層2aの厚さは例えば300μm以下である。なお、“窒化層2aの厚さ”とは、窒化層2aが化合物層のみで構成されている場合には、その化合物層の厚さのことであり、窒化層2aが拡散層のみで構成されている場合には、その拡散層の厚さのことであり、窒化層2aが化合物層と拡散層で構成されている場合には、化合物層の厚さと拡散層の厚さの合計値のことである。また、窒化層2aの厚さは、JIS G 0562の規定に従い、鋼材2の切断面についての硬さ試験や、鋼材2の切断面を腐食させて、その切断面を金属顕微鏡で観察することで測定される。
【0016】
珪窒化バナジウム膜3とは、バナジウム元素濃度、珪素元素濃度および窒素元素濃度の合計が90at%以上で且つ、窒素元素濃度が25~60at%となる膜である。バナジウム元素濃度、珪素元素濃度および窒素元素濃度の組成比や膜厚は、珪窒化バナジウム膜被覆部材1に要求される特性に応じて適宜変更される。なお、珪窒化バナジウム膜3の組成比については、a=バナジウム元素濃度[at%]/(バナジウム元素濃度[at%]+珪素元素濃度[at%]+窒素元素濃度[at%])、b=珪素元素濃度[at%]/(バナジウム元素濃度[at%]+珪素元素濃度[at%]+窒素元素濃度[at%])としたときに0.30≦a/b≦1.7を満たすことが好ましい。0.30≦a/b≦1.7を満たすと、珪窒化バナジウム膜3の硬度を向上させることができる。a/bの好ましい下限値は0.4である。a/bの好ましい上限値は1.5であり、更に好ましい上限値は1.3である。c=窒素元素濃度[at%]/(バナジウム元素濃度[at%]+珪素元素濃度[at%]+窒素元素濃度[at%])が0.25~0.60であることが好ましい。また、珪窒化バナジウム膜3の膜厚は0.5~4μmであることが好ましい。また、珪窒化バナジウム膜3は、例えば2300HV以上の硬度を有している。
【0017】
(表面粗さRzjis)
珪窒化バナジウム膜被覆部材1は、JIS B 0601-2001に準拠して測定された表面粗さRzjisが1.0μm以下の部材である。このような表面粗さRzjisが1.0μm以下の珪窒化バナジウム膜被覆部材1が例えば金型として用いられた際には、金型と被成形材との摩擦力が小さくなり、金型と被成形材の凝着の発生を抑えることができる。
【0018】
(スクラッチ試験における臨界荷重)
珪窒化バナジウム膜被覆部材1は、スクラッチ試験における臨界荷重が70N以上の部材である。臨界荷重が70N以上の珪窒化バナジウム膜被覆部材1は、鋼材と珪窒化バナジウム膜の密着性が高く、珪窒化バナジウム膜が鋼材から剥離しにくい。なお、スクラッチ試験における臨界荷重の測定方法は後述の実施例で説明する。
【0019】
以上のような、表面粗さRzjisが1.0μm以下で、スクラッチ試験における臨界荷重が70N以上の珪窒化バナジウム膜被覆部材1は、鋼材2と珪窒化バナジウム膜3の密着性と、珪窒化バナジウム膜3の低表面粗さが両立した部材である。このような珪窒化バナジウム膜被覆部材1は、相手部材(珪窒化バナジウム膜被覆部材1が金型の場合は被成形材)との摩擦力が小さくなり、摩擦力が大きいことに起因する不具合の発生を抑えることができる。
【0020】
次に、珪窒化バナジウム膜被覆部材1の製造方法について説明する。
【0021】
本実施形態においては、鋼材2のプラズマ窒化処理により鋼材2の表面に窒化層2aを形成し、その後にプラズマ化学蒸着法(いわゆるプラズマCVD法)により窒化層2aの上に珪窒化バナジウム膜3を形成する。なお、珪窒化バナジウム膜3の成膜方法はプラズマCVD法に限定されないが、鋼材2の窒化をプラズマ窒化処理で行う場合には、珪窒化バナジウム膜3の成膜はプラズマCVD法で行うことが好ましい。これにより、鋼材2の窒化と、珪窒化バナジウム膜3の成膜を同一のプラズマ処理装置で行うことができ、別々の装置を使用する場合と比較して、効率良く珪窒化バナジウム膜被覆部材1を製造することができる。
【0022】
図2はプラズマ処理装置の一例を示す図である。プラズマ処理装置10は、鋼材2が搬入されるチャンバー11と、陽極側の電極部材12と、陰極側の電極部材13と、パルス電源14とを備えている。チャンバー11の上部には原料ガスが供給されるガス供給管15が接続され、チャンバー11の下部にはチャンバー11内のガスを排気するガス排気管16が接続されている。ガス排気管16には真空ポンプ(不図示)が設けられている。陰極側の電極部材13は鋼材2を支持する支持台としての役割も有しており、チャンバー11内に搬入された鋼材2は陰極側の電極部材13上に載置される。また、チャンバー11の内部にはヒーター(不図示)が設けられており、ヒーターでチャンバー11内の雰囲気温度が調節されることで鋼材2の温度が調節される。
【0023】
なお、プラズマ処理装置10の構成は本実施形態で説明したものに限定されない。例えばパルス電源14に代えて高周波電源を用いてもよいし、原料ガスを供給するシャワーヘッドを設け、それを陽極として用いてもよい。また、ヒーターを設けずにグロー電流のみで鋼材2を加熱してもよい。すなわち、プラズマ処理装置10は、チャンバー11内に供給される原料ガスをプラズマ化することが可能な構造であればよい。
【0024】
<成膜処理準備>
まず、チャンバー11に鋼材2を搬入して所定位置に鋼材2をセットする。その後、チャンバー11内の圧力を例えば10Pa以下となるように真空排気を行う。このときチャンバー11内の温度は室温程度となっている。続いて、ヒーター(不図示)を作動させて鋼材2のベーキング処理を行う。その後、一度ヒーターの電源を切り、プラズマ処理装置10を放置する。
【0025】
<加熱工程>
次に、チャンバー11内に少量の水素ガスを供給し、再度ヒーターを作動させる。この加熱工程では鋼材2の温度をプラズマ処理温度近傍まで昇温させる。チャンバー11内の圧力は例えば100Pa程度に維持される。
【0026】
<プラズマ処理工程>
(水素プラズマ工程)
本実施形態においては鋼材2のプラズマ窒化処理に先立って水素ガスのプラズマ化を行う。具体的には、加熱工程で供給されていた水素ガスを引き続き供給した状態でパルス電源14を作動させる。これにより、電極間において水素ガスがプラズマ化する。このようにして生成された水素ラジカルにより鋼材表面の酸化膜が還元され、鋼材表面がクリーニングされる。なお、パルス電源14はチャンバー11内に供給されるガスがプラズマ化するように電圧や周波数,Duty比等が適宜設定されている。Duty比は、
図3に示すように1周期あたりの電圧印加時間で定義され、Duty比[%]=100×印加時間(ON time)/{印加時間(ON time)+印加停止時間(OFF time)}で算出される。
【0027】
(プラズマ窒化工程)
水素ガスをプラズマ化した後、水素ガスを供給しているチャンバー11内にさらに窒素ガスおよびアルゴンガスを供給する。これにより、水素ガス、窒素ガスおよびアルゴンガスのプラズマが生成され、鋼材2のプラズマ窒化処理が行われる。これにより、鋼材2の表面から窒素が侵入し、鋼材2の表面に窒化層2aが形成される。珪窒化バナジウム膜3は、プラズマ窒化処理で形成される窒化物と同様に窒素を含んでいることから、鋼材2の表面に窒化層2aが存在することで、鋼材2と珪窒化バナジウム膜3の化学的な相性の改善や格子の不整合の解消がなされる。これによって鋼材2と珪窒化バナジウム膜3との密着性が向上する。なお、アルゴンガスの供給は必須ではないが、アルゴンイオンは他の分子をイオン化することによってプラズマの安定化やイオン密度の向上に寄与するため、必要に応じてアルゴンガスを供給することが好ましい。アルゴンガスを供給する場合は、水素ガス流量と窒素ガス流量の合計値の1/10以下にすることが好ましい。
【0028】
表面粗さが小さい珪窒化バナジウム膜被覆部材1を製造するためには、このプラズマ窒化処理時にチャンバー11内に供給される窒素ガスと水素ガスの分圧比(窒素分圧/水素分圧)が1.0以上である必要がある。分圧比が1.0未満であると、時間あたりの鋼材2への窒素拡散量が少なくなり、十分な密着性を確保できる程度に窒素を拡散させるためには、窒化処理時間を長くする必要がある。窒化処理に時間がかかると、鋼材2の表面が粗くなり、鋼材2の上に形成される珪窒化バナジウム膜3の表面も粗くなってしまう。分圧比の上限は特に限定されないが、密着性向上の観点からは、鋼材2の表面に鉄窒化化合物層が好ましいことから、分圧比の上限は3.0以下であることが好ましい。
【0029】
また、プラズマ窒化処理時における総エネルギー密度は、50000~140000[kJ/m2]である必要がある。総エネルギー密度が上記範囲内にあることで、鋼材2と珪窒化バナジウム膜3の密着性の向上と低表面粗さを両立させやすくなる。本明細書における“総エネルギー密度[kJ/m2]”は、下記(1)式で算出される。
電圧[V]×電流[A]×プラズマ窒化処理時間[s]/(陰極表面積[m2]×1000)・・・(1)
【0030】
“電圧[V]”は、陽極側の電極部材12と陰極側の電極部材13間に印加されるパルス電源14の設定電圧である。“電流[A]”は、陽極側の電極部材12と陰極側の電極部材13間に電圧が印加されたときに生じる電流であり、パルス電源14に表示される電流値を用いてプラズマ窒化工程内における(最大電流+最小電流)/2で算出される。“プラズマ窒化処理時間[s]”は、プラズマ窒化処理に費やされる時間であり、窒素ガスの供給を開始してから、珪窒化バナジウム膜3の形成工程におけるバナジウム塩化物ガスまたはシラン源ガスの供給を開始するまでの時間である。“陰極表面積[m
2]”は、陰極側の電極部材13の表面積と、陰極側の電極部材13に電気的に接続される、チャンバー11内に存在する部材の表面積との合計値である。例えば
図2に示される本実施形態のプラズマ処理装置10においては、陰極側の電極部材13に鋼材2が載置されているため、通電時には陰極側の電極部材13を介して鋼材2にも電圧が印加され、陰極側の電極部材13と鋼材2は電気的に接続される。このため、本実施形態のプラズマ処理装置10においては、鋼材2が、“陰極側の電極部材13に電気的に接続される、チャンバー11内の部材”に相当し、陰極表面積は、陰極側の電極部材13の表面積と、鋼材2の表面積の合計値である。なお、電気的に接続される部材同士の接触面の面積については、陰極表面積には含めないものとする。また、鋼材2を治具(図示せず)にセットし、治具を陰極側の電極部材13に載置してプラズマ窒化処理を行う場合には、陰極側の電極部材13と、治具と、鋼材とが電気的に接続される。この場合、陰極側の電極部材13と治具の接触面の面積および治具と鋼材2の接触面の面積を除いた、陰極側の電極部材13の表面積と、治具の表面積と、鋼材2の表面積の合計値が陰極表面積である。
【0031】
プラズマ窒化工程において、窒素ガスと水素ガスの分圧比が1.0以上、総エネルギー密度が50000~140000[kJ/m2]となる条件で窒化処理を行うと、プラズマ化した窒素イオンが鋼材2との衝突後に、鋼材2中に窒素が侵入しやすくなるため、鋼材2の窒化が十分に進みながらも、鋼材2の表面が粗くなることが抑制されるようになる。
【0032】
なお、プラズマ窒化処理時の電力密度は、6500~13000[W/m2]であることが好ましい。“電力密度[W/m2]”は、下記(2)式で算出される。
電圧[V]×電流[A]/陰極表面積[m2]・・・(2)
【0033】
電力密度が6500[W/m2]以上である場合には、鋼材2に窒素が拡散しやすくなり、プラズマ窒化処理の時間を短くすることができる。その結果、鋼材2の表面粗さを小さくしやすくなる。電力密度が13000[W/m2]以下である場合には、鋼材2の表面に鉄窒化化合物層が形成されにくくなり、珪窒化バナジウム膜3との密着性が向上しやすくなる。なお、6500W/m2以上の電力密度範囲は、一般的なプラズマ窒化工程における電力密度に比べ非常に高い電力密度範囲である。
【0034】
プラズマ窒化工程においては、チャンバー11内の雰囲気温度は350~650℃であることが好ましく、400~550℃であることがより好ましい。チャンバー11内の雰囲気温度は、プラズマ条件に応じてヒーター設定温度が調節されることで変更される。プラズマ窒化工程におけるパルス電源14の電圧は、1000~2500Vであることが好ましい。パルス電源14の電圧は、1400V以上であることがより好ましい。また、パルス電源14の電圧は、2000V以下であることがより好ましい。チャンバー11内の圧力は例えば50~200Paに設定される。また、パルス電源14を用いる場合のDuty比は5~95%であることが好ましい。プラズマ窒化処理時間は、例えば5400~14400秒である。
【0035】
(珪窒化バナジウム膜形成工程)
鋼材2の表面に窒化層2aが形成された後、チャンバー11内にバナジウム源ガスとしてのバナジウム塩化物ガスとシラン源ガスをさらに供給する。これにより、チャンバー11内に水素ガスと、窒素ガスと、アルゴンガスと、バナジウム塩化物ガスと、シラン源ガスが供給された状態となる。チャンバー11内の圧力は例えば50~200Paに設定される。
【0036】
バナジウム塩化物ガスとしては、例えば四塩化バナジウム(VCl4)ガス、三塩化酸化バナジウム(VOCl3)ガスが用いられる。なお、ガスを構成する元素の数が少なく、珪窒化バナジウム膜3中の不純物を取り除くのが容易になるという観点からは、四塩化バナジウムガスを用いることが好ましい。また、四塩化バナジウムガスは、入手が容易で、常温において液体であり、ガスとしての供給が容易な点でも好ましい。
【0037】
シラン源ガスは、例えば四塩化珪素ガス、三塩化シランガス、二塩化シランガス、塩化シランガス、シラン、四フッ化珪素等のシラン系ガスが用いられる。ここで例示されるガスは単独で供給しても良いし、1種以上のガスを混合して供給しても良い。また、これらのガスの中では、水素プラズマによって容易に塩素原子を取り去ることができ、熱的に安定し、かつプラズマ中でのみ分解する四塩化珪素(SiCl4)ガスを用いることが好ましい。
【0038】
バナジウム塩化物ガスの分圧および水素ガスの分圧は、珪窒化バナジウム膜3中に含まれるバナジウム量に影響を与えるため、バナジウム塩化物ガスの分圧および水素ガスの分圧の少なくともいずれか一方を調節することで、珪窒化バナジウム膜3中のバナジウム量を変えることができる。シラン源ガスの分圧は、珪窒化バナジウム膜3中に含まれる珪素量に影響を与えるため、シラン源ガスの分圧を調節することで珪窒化バナジウム膜3中の珪素量を変えることができる。窒素ガスの分圧は、珪窒化バナジウム膜3中に含まれる窒素量に影響を与えるため、窒素ガスの分圧を調節することで珪窒化バナジウム膜3中の窒素量を変えることができる。
【0039】
珪窒化バナジウム膜3の形成工程における電圧は700~2000Vであることが好ましい。また、珪窒化バナジウム膜3の形成工程におけるチャンバー11内の雰囲気温度は450~550℃であることが好ましい。チャンバー11内の雰囲気温度を高くすれば、珪窒化バナジウム膜3中のバナジウム量を増加させることができる。
【0040】
チャンバー11内にバナジウム塩化物ガスおよびシラン源ガスが供給されることで電極間においてバナジウム塩化物ガスおよびシラン源ガスがプラズマ化し、既にプラズマ化している窒素と共に、バナジウムと珪素が、鋼材2の表面に吸着されていく。その結果、鋼材2の窒化層2aの上に珪窒化バナジウム膜3が形成され、珪窒化バナジウム膜被覆部材1が製造される。
【0041】
なお、珪窒化バナジウム膜3の形成時にバナジウム源ガスとしてバナジウム塩化物ガスを用いると、珪窒化バナジウム膜3中には、窒素、バナジウムおよび珪素を除く残部として必然的に塩素が含まれる。一方、原料ガスに含まれる水素ガスは塩素と結合しやすいことから、本実施形態のように原料ガスに水素ガスが含まれる場合には、バナジウム塩化物ガスから発生する塩素が水素と結合して系外に排出されやすくなる。これにより、珪窒化バナジウム膜3への塩素の混入を抑えることができる。プラズマ処理中の水素ガスの流量は、バナジウム塩化物ガスの流量に対して25倍以上であることが好ましい。なお、珪窒化バナジウム膜3の残部としては塩素以外にも不可避的不純物が含まれ得る。
【0042】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【実施例】
【0043】
鋼材に窒化層を形成し、窒化層の上に珪窒化バナジウム膜を形成した試験片を用いて各種評価を実施した。試験片用の鋼材は次の手順で作製される。まず、SKH51からなるφ22の丸棒に焼入れおよび焼き戻し処理を施す。次に、焼き戻し処理が施された丸棒を6~7mm間隔で切断する。そして、切断された丸棒の表面を鏡面研磨し、これを試験片用の鋼材として使用した。このときの鏡面研磨した面の表面粗さRzjisは、0.066μmであった。なお、珪窒化バナジウム膜は、鋼材の鏡面研磨した側の面に形成される。また、成膜装置は
図2に示す構造のものが使用され、電源はパルス電源が用いられている。
【0044】
≪実施例1≫
実施例1の試験片の作製方法について説明する。以降の説明における水素ガス、窒素ガス、アルゴンガス、四塩化バナジウムガスおよび四塩化珪素ガスの流量は0℃、1atmにおける体積流量である。
【0045】
<成膜処理準備>
まず、成膜装置のチャンバー内に試験片用の鋼材をセットし、30分間チャンバー内を真空引きし、チャンバー内の圧力を10Pa以下まで小さくする。このとき、ヒーターは作動させない。なお、ヒーターはチャンバーの内部に設けられており、チャンバー内の雰囲気温度はシース熱電対で測定している。続いて、ヒーターの設定温度を200℃とし、10分間鋼材のベーキング処理を行う。その後、ヒーターの電源を切り、30分間成膜装置を放置してチャンバー内を冷却する。
【0046】
<加熱工程>
次に、チャンバー内に100ml/minの流量で水素ガスを供給し、排気量を調節してチャンバー内の圧力を100Paとする。そして、ヒーターの設定温度を440℃とし、30分間鋼材を加熱する。この加熱工程により鋼材の温度をプラズマ処理温度近傍まで昇温させる。
【0047】
<プラズマ処理工程>
(水素プラズマ工程)
次に、電圧:800V,周波数:25kHz,Duty比:30%,ユニポーラ出力形式でパルス電源を作動させる。これにより、チャンバー内の電極間において水素ガスがプラズマ化し、水素ラジカルにより鋼材表面のクリーニングを行う。
【0048】
(プラズマ窒化工程)
その後、水素ガスの流量を40ml/minに下げると共にチャンバー内に窒素ガスおよびアルゴンガスを供給する。本工程においては、窒素ガスの流量を80ml/minとし、アルゴンガスの流量を2ml/minとする。このとき、チャンバー内の全圧は排気量が調節されることで58Paに維持される。実施例1における窒素分圧と水素分圧の分圧比(窒素分圧/水素分圧)は2.0である。その後、パルス電源の電圧を1800Vに上げる。ここでパルス電源の電圧が上げられることによって電極間では水素ガス、窒素ガスおよびアルゴンガスがプラズマ化した状態となる。これにより、鋼材の表面から窒素が侵入し、鋼材の表面に窒化層が形成される。実施例1における窒化処理時間は120分であり、電流は1.22Aであり、電力密度は9247W/m2であり、総エネルギー密度は66578kJ/m2である。また、本工程におけるパルス電源の周波数は25kHz、Duty比は30%であり、前述の水素プラズマ工程と同様である。
【0049】
(珪窒化バナジウム膜形成工程)
続いて、プラズマCVD法によって、窒化層が形成された鋼材の表面に珪窒化バナジウム膜を形成する。本工程においては、チャンバー内の圧力を58Pa、ヒーターの設置温度を540℃、水素ガスの流量を98ml/min、窒素ガスの流量を77ml/min、アルゴンガスの流量を3ml/min、四塩化バナジウムガスの流量を4.5ml/min、四塩化珪素ガスの流量を5.0ml/min、パルス電源の電圧を1400V、周波数を25kHz、Duty比を5.9%に設定してプラズマ処理を実施する。本工程により四塩化バナジウムガスがバナジウムと塩素に分解され、四塩化珪素ガスが珪素と塩素に分解される。そして、プラズマ化した珪素、バナジウム、および窒素が鋼材に吸着することにより、鋼材表面の窒化層の上に珪窒化バナジウム膜が形成されていく。この状態を6時間維持する。以上の工程を経て、珪窒化バナジウム膜が被覆された実施例1の試験片が作製された。この試験片を用いて下記の評価を実施した。
【0050】
<膜厚測定>
珪窒化バナジウム膜の膜厚は、試験片を垂直に切断して切断面を鏡面研磨した後、金属顕微鏡の倍率を1000倍として切断面を観察し、観察した画像情報に基づいて算出することで測定する。
【0051】
<表面粗さ>
表面粗さ測定には、3Dレーザー顕微鏡(キーエンス社製VK-X120)を用いた。対物レンズの倍率を50倍として、0.2mm×1.2mmのレーザー顕微鏡像を取得したのち、顕微鏡付属のマルチファイル解析アプリケーションの複数線粗さ計測機能により試験片の表面粗さを測定した。そして、試験片の長辺方向に15本のラインプロファイルを取得し、それぞれのラインプロファイルから得られた表面粗さを平均することで、試験片の表面粗さRzjisを得た。なお、表面粗さの測定は、試験片の中心位置からφ10mmの領域内で行った。
【0052】
<スクラッチ試験>
スクラッチ試験機(csm社製 Revetest)を用い、鋼材と珪窒化バナジウム膜の密着性を評価した。スクラッチ試験は、先端曲率100μmの円錐形ダイヤモンド圧子を用い、最小荷重1N、最大荷重100N、荷重速度100N/分、スクラッチ速度5mm/分、スクラッチ距離5mmにて実施された。そして、圧子と試験片の接触箇所周辺の珪窒化バナジウム膜が破壊されたときの荷重、すなわち鋼材から珪窒化バナジウム膜が剥離したときの荷重である臨界荷重を測定し、この臨界荷重に基づいて珪窒化バナジウム膜の密着性を評価した。スクラッチ試験における臨界荷重が大きいほど、鋼材から珪窒化バナジウム膜が剥離しにくく、鋼材と珪窒化バナジウム膜の密着性が高いことを示す。なお、珪窒化バナジウム膜の膜厚が0.5~4.0μmの範囲内であれば、膜厚の違いに起因するスクラッチ試験結果のばらつきが無視できるほどに小さくなる。また、スクラッチ試験は、試験片の中心位置からφ10mmの領域内で行った。
【0053】
<硬度測定>
硬度測定は、Fischer Instruments製のFISCHER SCOPE(登録商標)H100Cを用いたナノインデンテーション法により実施する。具体的には、最大押し込み荷重を10mNとして試験片にバーコビッチ圧子を押し込み、連続的に押し込み深さを計測する。得られた押し込み深さの計測データからフィッシャー・インストルメンツ社製のソフトウエアである「商品名:WIN-HCU(登録商標)」を用いて、マルテンス硬さ、マルテンス硬さから換算されるビッカース硬さを算出する。算出されたビッカース硬さは測定装置の画面に表示され、この数値を測定点における膜の硬度として扱う。本実施例では各試験片表面の任意の20点のビッカース硬さを求め、得られた硬度の平均値を膜の硬度として記録する。なお、試験片に圧子を押し込む際には、圧子の最大押し込み深さの約10倍まで押し込み荷重が伝播する場合がある。このため、押し込み荷重の伝播が試験片の鋼材に到達してしまうと、硬度測定の結果に鋼材の影響が含まれてしまう場合がある。したがって、純粋な硬質膜の硬度を測定するためには、「硬質膜の膜厚>圧子の最大押し込み深さ×10」を満たす必要がある。
【0054】
<珪窒化バナジウム膜の組成分析>
試験片の珪窒化バナジウム膜の組成を分析した。分析条件は次の通りである。
EPMA:日本電子株式会社製JXA-8530F
測定モード:半定量分析
加速電圧:15kV
照射電流:1.0×10-7A
ビーム形状:スポット
ビーム径設定値:0
分光結晶:LDE6H, TAP, LDE5H, PETH, LIFH, LDE1H
【0055】
また、次の条件で実施例2および比較例1、2の試験片を作製し、各試験片について実施例1と同様の評価を実施した。
【0056】
≪実施例2≫
プラズマ窒化工程において、電流が1.24A、電力密度が9398W/m2、総エネルギー密度が101498kJ/m2、窒化処理時間が180分であることを除き、実施例1と同様の条件で試験片を作製した。
【0057】
≪比較例1≫
プラズマ窒化工程において、電流が1.16A、電力密度が8792W/m2、総エネルギー密度が31651kJ/m2、窒化処理時間が60分であることを除き、実施例1と同様の条件で試験片を作製した。
【0058】
≪比較例2≫
プラズマ窒化工程において、窒素分圧と水素分圧の分圧比(窒素分圧/水素分圧)が0.5、電流が0.64A、電力密度が4851W/m2、総エネルギー密度が87318kJ/m2、窒化処理時間が300分であることを除き、実施例1と同様の条件で試験片が作製された。
【0059】
以上の実施例1~2および比較例1~2の試験片を作製する際のプラズマ窒化条件を下記表1に示す。また、各試験片の表面粗さRzjisの測定結果およびスクラッチ試験における臨界荷重の測定結果を下記表1に示す。
【0060】
【0061】
実施例1~2および比較例1の試験片は、表面粗さRzjisが1.0μm以下であり、表面粗さが小さかった。一方、比較例2の試験片は、表面粗さRzjisが1.0μmを大きく超えていた。比較例2のような表面が粗い珪窒化バナジウム膜を有する部材が例えば金型として用いられると、金型と被成形材の間の過大な摩擦力により金型と被成形材が凝着するおそれがある。
【0062】
鋼材と珪窒化バナジウム膜の密着性向上の観点からは、スクラッチ試験における臨界荷重が70N以上であることが好ましい。上記表1の通り、実施例1~2の試験片は、いずれもスクラッチ試験における臨界荷重が70N以上となっており、高い密着性を示している。
【0063】
以上の結果から、実施例1~2の試験片は、低い表面粗さと高い密着性が高いレベルで両立した部材であると言える。そして、上記表1の結果によれば、そのような部材を得るためには、窒素ガスと水素ガスの分圧比が1.0以上、総エネルギー密度が50000~140000[kJ/m2]の条件でプラズマ窒化処理を行うことが求められる。なお、実施例1~2および比較例1~2における珪窒化バナジウム膜の硬度、膜厚、および組成は下記表2の通りである。珪窒化バナジウム膜形成工程の成膜条件は全ての実施例および比較例において同一の条件であるため、各例ともに下記表2の珪窒化バナジウム膜が形成されている。
【0064】
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、金型や工具、例えば歯車のような自動車部品等に対する硬質膜の被覆処理に利用することができる。すなわち、本発明に係る珪窒化バナジウム膜被覆部材は、例えば金型や工具、自動車部品として用いられる。
【符号の説明】
【0066】
1 珪窒化バナジウム膜被覆部材
2 鋼材
2a 窒化層
3 珪窒化バナジウム膜
10 プラズマ処理装置
11 チャンバー
12 陽極側の電極部材
13 陰極側の電極部材
14 パルス電源
15 ガス供給管
16 ガス排気管