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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】燃料電池システムおよびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/04746 20160101AFI20230314BHJP
   H01M 8/04089 20160101ALI20230314BHJP
   H01M 8/04537 20160101ALI20230314BHJP
【FI】
H01M8/04746
H01M8/04089
H01M8/04537
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019200239
(22)【出願日】2019-11-01
(65)【公開番号】P2021072266
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100124372
【弁理士】
【氏名又は名称】山ノ井 傑
(74)【代理人】
【識別番号】100213654
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 晃樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 彩香
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-009518(JP,A)
【文献】特開2004-207133(JP,A)
【文献】特開2002-170585(JP,A)
【文献】国際公開第2013/157488(WO,A1)
【文献】特開2005-025961(JP,A)
【文献】特開2006-164626(JP,A)
【文献】特開2010-009966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/04-8/0668
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素と酸素とを用いて電気を発生させる燃料電池スタックと、
前記燃料電池スタックに酸素含有ガスを供給するガス供給部と、
前記燃料電池スタックと前記ガス供給部との間に設けられ、前記燃料電池スタックに供給される前記酸素含有ガスの流量を調整する流量調整部と、
所定の流量の前記酸素含有ガスを供給するように前記ガス供給部を制御するとともに、前記燃料電池スタックに要求される要求発電量に基づいて、前記流量調整部を制御する制御部と、
を備え
前記流量調整部は、前記ガス供給部よりも高速で前記酸素含有ガスの流量を調整可能である、燃料電池システム。
【請求項2】
前記燃料電池スタックから出力される出力発電量を検出する発電量検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記出力発電量に基づいて、前記流量調整部を制御する、請求項1に記載の燃料電池システム。
【請求項3】
前記出力発電量は、前記燃料電池スタックから出力される電流の値である、請求項2に記載の燃料電池システム。
【請求項4】
前記制御部は、
前記出力発電量が所定の閾値以上である場合、第1流量の前記酸素含有ガスを前記燃料電池スタックに供給するように前記流量調整部を制御し、
前記出力発電量が前記所定の閾値よりも低い場合、前記第1流量よりも少ない第2流量の前記酸素含有ガスを前記燃料電池スタックに供給するように前記流量調整部を制御する、請求項2または請求項3に記載の燃料電池システム。
【請求項5】
前記流量調整部は、
前記ガス供給部から供給される前記酸素含有ガスを前記燃料電池スタックに流す第1流路部と、
前記第1流路部から分岐して、前記酸素含有ガスの一部を前記燃料電池スタック以外に流す第2流路部と、
前記第2流路部上に設けられ、前記酸素含有ガスの流量が調整可能な第1調整弁と、
を有し、
前記制御部は、前記要求発電量に基づいて、前記第1調整弁を制御する、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項6】
前記流量調整部は、
複数の前記第2流路部と、
それぞれの前記第2流路部上に設けられる複数の前記第1調整弁と、
を有し、
前記制御部は、前記要求発電量に基づいて、複数の前記第1調整弁を制御する、請求項に記載の燃料電池システム。
【請求項7】
前記流量調整部は、
前記ガス供給部から供給される前記酸素含有ガスを、前記燃料電池スタックに分岐して流す第3流路部および第4流路部と、
前記第4流路部上に設けられ、通過する前記酸素含有ガスに圧力損失を生じさせる圧力損失部と、
前記第3流路部上に設けられ、前記酸素含有ガスの流量が調整可能な第2調整弁と、
を有し、
前記制御部は、前記要求発電量に基づいて、前記第2調整弁を制御する、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項8】
前記流量調整部は、前記第4流路部上に設けられ、前記酸素含有ガスの流量が調整可能な第3調整弁をさらに備え、
前記制御部は、前記要求発電量に基づいて、前記第2調整弁および前記第3調整弁を制御する、請求項に記載の燃料電池システム。
【請求項9】
前記流量調整部は、
複数の前記第4流路部と、
それぞれの前記第4流路部上に設けられる複数の圧力損失部と、
それぞれの前記第4流路部上に設けられ、前記酸素含有ガスの流量が調整可能な1つまたは複数の第3調整弁と、
を有し、
前記制御部は、前記要求発電量に基づいて、前記第2調整弁、および、1つまたは複数の前記第3調整弁を制御する、請求項に記載の燃料電池システム。
【請求項10】
前記所定の流量は、前記燃料電池スタックの発電量が最大になる前記酸素含有ガスの流量である、請求項1から請求項のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項11】
前記制御部は、略一定の流量の前記酸素含有ガスを供給するように前記ガス供給部を制御する、請求項1から請求項10のいずれか一項に記載の燃料電池システム。
【請求項12】
水素と酸素とを用いて電気を発生させる燃料電池スタックと、
前記燃料電池スタックに酸素含有ガスを供給するガス供給部と、
を備える燃料電池システムの制御方法であって、
所定の流量の前記酸素含有ガスを供給するように前記ガス供給部を制御部により制御し、
前記燃料電池スタックと前記ガス供給部との間に設けられ、前記燃料電池スタックに供給される前記酸素含有ガスの流量を調整する流量調整部を、前記燃料電池スタックに要求される要求発電量に基づいて、前記制御部により制御する、
ことを具備し、
前記流量調整部は、前記ガス供給部よりも高速で前記酸素含有ガスの流量を調整可能である、燃料電池システムの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明による実施形態は、燃料電池システムおよびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料ガスの有している化学エネルギーを直接電気に変換するシステムとして、燃料電池システムが知られている。この燃料電池システム内の燃料電池は、燃料である水素と酸化剤である酸素とを電気化学的に反応させて直接電気を取り出すものである。燃料電池システムが発電するためには、十分な燃料と十分な空気(酸素)が必要であり、その必要量は電池電流に比例する。
【0003】
通常の系統連系運転時には、指定された負荷上昇レートに従って出力が上昇するため、電池電流の上昇はそれ以上の速さにはならない。一方、自立運転時には外部の負荷によって瞬時に発電出力を変化させる必要があり、電池電流が急激に上昇する可能性がある。
【0004】
しかしながら、空気をカソードに送り込むブロワは系統連系中の安定運転を目的として時定数の大きいものを使用している場合、自立運転中の電池電流の上昇に追従せずに空気が不足して発電を継続できない可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2019-29108号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明による実施形態は、自立運転中における発電量の変化の追従遅れを抑制することができる燃料電池システムおよびその制御方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本実施形態による燃料電池システムは、燃料電池スタックと、ガス供給部と、流量調整部と、制御部と、を備える。燃料電池スタックは、水素と酸素とを用いて電気を発生させる。ガス供給部は、燃料電池スタックに酸素含有ガスを供給する。流量調整部は、燃料電池スタックとガス供給部との間に設けられ、燃料電池スタックに供給される酸素含有ガスの流量を調整する。制御部は、所定の流量の酸素含有ガスを供給するようにガス供給部を制御するとともに、燃料電池スタックに要求される要求発電量に基づいて、流量調整部を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態による燃料電池システムの構成を示すブロック図。
図2】第1実施形態による燃料電池システムの動作を示すフロー図。
図3】変形例1による燃料電池システムの構成を示すブロック図。
図4】第2実施形態による燃料電池システムの構成を示すブロック図。
図5】変形例2による燃料電池システムの構成を示すブロック図。
図6】変形例3による燃料電池システムの構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態を説明する。本実施形態は、本発明を限定するものではない。図面は模式的または概念的なものであり、各部分の比率などは、必ずしも現実のものと同一とは限らない。明細書と図面において、既出の図面に関して前述したものと同様の要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
【0010】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態による燃料電池システム100の構成を示すブロック図である。
【0011】
燃料電池システム100は、燃料電池スタック1と、電源装置2と、ブロワ3と、流量調整部4と、電流計5と、制御装置6と、を備える。燃料電池システム100は、例えば、純水素燃料電池システムである。
【0012】
燃料電池スタック1は、水素と酸素とを用いて電気を発生させる。燃料電池スタック1は、アノード電極(燃料極)1aと、カソード電極(空気極)1bと、を備えている。また、燃料電池スタック1は、燃料ガスの供給源から燃料ガスとして水素を供給され、ブロワ3から空気を供給される。水素は、水素供給系を介してアノード電極1aに供給され、空気は、空気供給系を介してカソード電極1bに供給される。燃料電池スタック1は、水素を空気中の酸素と反応させて水を生成し、この反応により電気を発生させる。この電気は、直流電流として燃料電池スタック1から出力される。燃料電池スタック1は、アノード電極1aに供給された水素の残りをアノード排気として排出し、カソード電極1bに供給された空気の残りをカソード排気として排出する。例えば、アノード排気はアノード電極1aに再び供給され、カソード排気は燃料電池システム100の外部に排出される。
【0013】
電源装置2は、燃料電池スタック1のアノード電極1aおよびカソード電極1bに電流取り出し線により接続されており、燃料電池スタック1から電流取り出し線を介して直流電流を取り出す。また、電源装置2は、発電された直流の電気を交流の電気へと変換し、電力系統200または自立負荷300に送電する。電源装置2は、燃料電池システム100が電力系統200に接続された系統連系運転と、燃料電池システム100が自立負荷300に接続された自立運転と、を切り替える。電源装置2は、例えば、電力系統200の状態を監視して、系統連系運転と自立運転とを切り替える。尚、以下では、特に断りのない限り、自立運転時について説明する。
【0014】
ガス供給部としてのブロワ3は、カソード電極1b(燃料電池スタック1)に酸素含有ガスを供給する。酸素含有ガスは、例えば、窒素や酸素を含む空気等である。ブロワ3は、制御装置6により制御される。
【0015】
尚、アノード電極1aに供給される水素は、例えば、所定の圧力になるように調整される。この場合、反応により水素が消費されると、所定の圧力を維持するように、水素がアノード電極1aに供給される。従って、図1に示す例では、水素を送り込むブロワ等は設けられていない。また、水素の供給源は、例えば、水素貯蔵タンクである。水素貯蔵タンクは、燃料電池システム100の内部にあってもよく、外部にあってもよい。
【0016】
流量調整部4は、燃料電池スタック1とブロワ3との間に設けられ、燃料電池スタック1に供給される空気の流量を調整する。また、流量調整部4は、分岐部41と、第1流路部41aと、第2流路部41bと、第1調整弁42と、を有する。
【0017】
分岐部41は、ブロワ3と接続する第1流路部41a上に設けられ、第1流路部41aから第2流路部41bに分岐させる。
【0018】
第1流路部41aは、ブロワ3から供給される酸素を燃料電池スタック1に流す。第1流路部41aは、カソード電極1bに接続されている。第1流路部41aは、例えば、ガス管である。
【0019】
第2流路部41bは、第1流路部41aから分岐して、空気の一部を燃料電池スタック1以外に流す。すなわち、第2流路部41bは、第1流路部41aを流れる空気の一部を燃料電池スタック1に流さないようにする。第2流路部41bを通過する空気は、例えば、大気開放される。また、第2流路部41bを通過する空気は、カソード電極1bを通過した空気と合流してもよい。第2流路部41bは、例えば、第1流路部41aと同様のガス管でよい。尚、第1流路部41aから分流される空気の量を調整するため、第2流路部41bの接続先が負圧になっていてもよく、第2流路部41bのガス管の径が変更されてもよい。
【0020】
第1調整弁42は、第2流路部41b上に設けられ、空気の流量が調整可能である。第1調整弁42は、制御装置6により制御される。以下では、特に断りのない限り、第1調整弁42は、開閉可能な弁とする。この場合、第1調整弁42は、ON/OFFのようにデジタル式で調整される。第1調整弁42は、例えば、電磁弁等の高応答速度で動作可能な弁である。第1調整弁42は、開閉により、空気を通過させ、または、空気の通過を遮断する。
【0021】
ブロワ3は、空気を供給し、例えば、100L/minの空気を供給する。第1調整弁42が閉じている場合、空気は第2流路部41bを通過しない。例えば、第1流路部41aには100L/minの空気が流れ、第2流路部41bには空気は流れない。一方、第1調整弁42が開いている場合、空気の一部は第2流路部41bを通過する。例えば、分岐部41通過後の第1流路部41aには60L/minの空気が流れ、第2流路部41bには40L/minの空気が流れる。従って、流量調整部4は、第1調整弁42を開くことにより、燃料電池スタック1に供給される空気の流量を100L/minから60L/minに減少させる。また、流量調整部4は、第1調整弁42を閉じることにより、燃料電池スタック1に供給される空気の流量を60L/minから100L/minに増加させる。
【0022】
発電量検出部としての電流計5は、燃料電池スタック1から出力される出力発電量を検出する。より詳細には、出力発電量は、燃料電池スタック1から出力される電流の値である。電流計5は、例えば、電流取り出し線に設置されており、燃料電池スタック1から出力される電流の値を計測する。図1に示す例では、電流計5は、アノード電極1aと電源装置2との間に設けられる。尚、電流計5は、出力側、すなわち、自立負荷300と電源装置2との間に設けられてもよい。しかし、より正確な発電量を得るため、電流計5は燃料電池スタック1と電源装置2との間に設けられることが好ましい。また、電流計5は、検出した電流値を制御装置6に送る。
【0023】
制御装置6は、図1の燃料電池システム100の種々の動作を制御する。制御装置6の例は、プロセッサ、制御回路、コンピュータなどである。制御装置6は、例えば、燃料電池スタック1の発電動作を制御したり、燃料電池システム100の状態を示す情報を表示、保存、発信するなど、燃料電池システム100に関する種々の情報を出力したりする。この情報は、燃料電池システム100内の機器に出力してもよいし、燃料電池システム100外の機器に出力してもよい。
【0024】
制御装置6は、設定部6aと、制御部6bと、を有する。
【0025】
設定部6aは、燃料電池システム100の動作制御に必要な設定値を設定する。設定値は、例えば、自立運転時における、ブロワ3の流量(出力)や、燃料電池スタック1に供給される空気の流量、流量調整部4による流量の切り替えを行うための電流値等が含まれる。設定値は、例えば、燃料電池スタック1ごとに変更されてもよい。設定部6aは、例えば、設定値が予め記憶された記憶装置(図示せず)から設定値を読み出してもよく、作業者から設定値を受け付けてもよい。
【0026】
制御部6bは、所定の流量の空気を供給するようにブロワ3を制御するとともに、燃料電池スタック1に要求される要求発電量に基づいて、流量調整部4を制御する。所定の流量は、例えば、燃料電池スタック1の発電量が最大になる酸素の流量である。所定の流量は、例えば、100L/minである。より詳細には、制御部6bは、要求発電量に基づいて、第1調整弁42(の開閉)を制御する。
【0027】
また、制御部6bは、出力発電量に基づいて、流量調整部4を制御する。すなわち、要求発電量を出力発電量(電流値)としてもよい。これは、電源装置2によって取り出される電流は、自立負荷300の負荷の大きさに比例するためである。従って、制御部6bは、電流計5が検出する電流値を流量調整部4の制御に用いる。
【0028】
系統連系運転時において、制御部6bは、第1調整弁42を閉じて、ブロワ3の流量を制御する。制御部6bは、例えば、指定された負荷上昇レートに従って、空気の供給量を変化させるようにブロワ3を制御する。一方、自立運転時では、制御部6bは、上記のように、ブロワ3の流量を略一定にして、電流値に基づいて第1調整弁42の開閉で流量を調整する。また、流量調整部4は、例えば、ブロワ3よりも高速で空気の流量を調整可能である。すなわち、第1調整弁42は、高応答速度で動作する。これにより、自立運転中における発電量の変化の追従遅れを抑制することができる。
【0029】
次に、燃料電池システム100の制御方法について説明する。
【0030】
図2は、第1実施形態による燃料電池システム100の動作を示すフロー図である。尚、燃料電池システム100は、自立運転時の状態である。
【0031】
まず、設定部6aは、所定の閾値、第1流量および第2流量を設定する。所定の閾値は、流量調整部4により流量を切り替えるための電流値の閾値である。第1流量および第2流量は、燃料電池スタック1に供給される空気の流量の設定値である。第1流量は、第1調整弁42が閉じている場合における流量である。第2流量は、第1流量よりも低く、第1調整弁42が開いている場合における流量である。第1流量および第2流量は、例えば、上記のように、それぞれ100L/minおよび60L/minである。設定部6aは、例えば、所定の閾値、第1流量および第2流量を記憶装置から読み出す。
【0032】
次に、ブロワ3は、発電量が最大になる流量の空気を燃料電池スタック1に供給する(S20)。制御部6bは、例えば、ブロワ3に制御信号を送る。ブロワ3は、例えば、100L/minの酸素を供給する。次に、電流計5は、燃料電池スタック1から出力される電流を検出する(S30)。次に、制御部6bは、電流値が所定の閾値以上か否かを判定する(S40)。
【0033】
電流値が所定の閾値以上である場合(ステップS40のYES)、流量調整部4は、燃料電池スタック1に第1流量(100L/min)の空気が供給されるように流量を調整する(S50)。すなわち、制御部6bは、電流値(出力発電量)が所定の閾値以上である場合、第1流量の空気を燃料電池スタック1に供給するように流量調整部4を制御する。
【0034】
電流値が所定の閾値以上である場合、自立負荷300の負荷が大きく、燃料電池スタック1から多くの電流が取り出される。この場合、空気の供給量が少ないと、電池電流の上昇に追従せずに空気が不足して、発電が継続できない可能性がある。そこで、制御部6bは、第1調整弁42を閉じるように制御する。これにより、第1流量(100L/min)の空気を燃料電池スタック1に供給することができる。また、100L/minは、燃料電池スタック1の発電量が最大になる酸素の流量でもある。従って、流量調整部4は、必要な発電量が大きくなっても、安定して運転を継続させることができるように、十分な量の空気を供給する。尚、ステップS50において流量調整部4がすでに第1流量の空気を供給している場合、流量調整部4は、空気の供給を継続すればよい。
【0035】
一方、電流値が所定の閾値よりも低い場合(ステップS40のNO)、流量調整部4は、燃料電池スタック1に第2流量(60L/min)の空気が供給されるように流量を調整する(S60)。すなわち、制御部6bは、出力発電量が所定の閾値よりも低い場合、第1流量よりも少ない第2流量の空気を燃料電池スタック1に供給するように流量調整部4を制御する。
【0036】
電流値が所定の閾値より低い場合、自立負荷300の負荷が小さく、燃料電池スタック1から取り出される電流は少ない。燃料電池スタック1は、通常、反応によって高温(例えば、約70℃~約90℃)になってしまう。従って、燃料電池システム100では、例えば、水を循環させて高温の燃料電池スタック1を冷却する。また、燃料電池スタック1の反応により生成される水も、回収されて冷却水として利用される。さらに、カソード排気中には揮発した冷却水が含まれ、水蒸気を凝縮させることによっても、水を回収することができる。しかし、大量の空気が継続して供給されると、冷却水および生成される水が揮発しやすくなり、また、流速が高くカソード排気からの水回収が困難になる。従って、冷却水が不足してしまう可能性がある。そこで、制御部6bは、自立負荷300の負荷が小さい場合、燃料電池スタック1への空気の供給量を減少させる。これにより、冷却水の減少を抑制することができる。尚、ステップS60において流量調整部4がすでに第2流量の空気を供給している場合、流量調整部4は、空気の供給を継続すればよい。
【0037】
ステップS50またはステップ60の後、再びステップS30、S40が実行される。ステップS30~S60は、例えば、所定の周期で繰り返し実行される。所定の周期は、例えば、自立負荷300の負荷の変動に追従するように設定されればよい。
【0038】
以上のように、第1実施形態によれば、流量調整部4は、燃料電池スタック1とブロワ3との間に設けられ、燃料電池スタック1に供給される空気の流量を調整する。また、制御部6bは、所定の流量の酸素を供給するようにブロワ3を制御するとともに、燃料電池スタック1に要求される要求発電量に基づいて、流量調整部4を制御する。通常の系統連系運転時では、指定された負荷上昇レートに従って出力が上昇するため、電池電流の上昇はそれ以上の速さにはならない。一方、自立運転時では、接続される負荷(自立負荷300)によって瞬時に発電出力を変化させる必要があり、電池電流が急激に上昇する可能性がある。第1実施形態では、流量調整部4により空気の流量を調整することができる。これにより、系統連系運転中の安定運転を目的として時定数の大きいブロワ3が用いられる場合であっても、自立運転中の必要な発電量の変化に対応することができる。この結果、自立運転中における発電量の変化の追従遅れを抑制することができる。また、ブロワ3の性能によらず、発電量の変化の追従遅れを抑制することができる。
【0039】
もし、流量調整部4による流量の調整が行われない場合、自立運転中の最大出力相当の空気を燃料電池スタック1に流し続ける必要がある。しかし、この場合、図2のステップS60において説明したように、冷却水が不足する可能性がある。すなわち、揮発する水の量が回収される水の量よりも大きくなってしまい、燃料電池システム100が水自立不全となってしまう。水自立は、回収される水の量が揮発する水の量以上であり、外部からの冷却水の補給が不要な状態である。水自立不全になると、例えば、燃料電池スタック1の破損や寿命劣化等につながる可能性がある。従って、冷却水の量を監視する必要がある。
【0040】
これに対し、第1実施形態では、必要な発電量に応じて燃料電池スタック1に供給される空気の流量が調整される。従って、冷却水の過剰な揮発を抑制することができ、水自立不全を抑制することができる。
【0041】
また、所定の流量は、燃料電池スタック1の発電量が最大になるために必要な流量である。上記のように、流量調整部4は、ブロワ3から供給される空気の流量を減少させる。従って、流量調整部4により調整可能な流量の範囲を広くすることができる。
【0042】
また、制御部6bは、略一定の流量の空気を供給するようにブロワ3を制御する。略一定の流量は、例えば、所定の流量から或る程度の範囲内の流量であればよい。すなわち、ブロワ3の流量の変動が少ないことが好ましい。これにより、燃料電池スタック1に供給される空気の流量をより安定化させることができる。
【0043】
尚、第1調整弁42は、デジタル式の弁に限られない。例えば、第1調整弁42は、アナログ式の弁であってもよい。すなわち、例えば、第1調整弁42の流路面積の調整により、開度が調整されてもよい。この場合、燃料電池スタック1に供給される空気の流量を任意に、また、段階的に調整することができる。
【0044】
(変形例1)
図3は、変形例1による燃料電池システム100の構成を示すブロック図である。第1実施形態の変形例1は、第1流路部41aが複数に分岐される点で、第1実施形態と異なる。
【0045】
流量調整部4は、複数の分岐部41と、複数の第2流路部41bと、複数の第1調整弁42と、を有する。複数の第1調整弁42は、それぞれの第2流路部41b上に設けられる。図3に示す例では、分岐部41および第2流路部41bは、第1流路部41aに沿って設けられる。尚、1つの分岐部41から分岐するように複数の第2流路部41bが設けられてもよい。
【0046】
図3に示す例では、2つの第2流路部41bおよび2つの第1調整弁42が設けられている。ブロワ3は、例えば、100L/minの空気を供給する。例えば、2つの第1調整弁42が閉じている場合、燃料電池スタック1に100L/minの空気が供給される。また、1つの第2調整弁45が開いている場合、開いている第1調整弁42に対応する第2流路部41bに40L/minの空気が通過する。従って、燃料電池スタック1に60L/minの空気が供給される。また、2つの第1調整弁42が開いている場合、2つの第2流路部41bにそれぞれ40L/minの空気が通過する。従って、燃料電池スタック1に20L/minの空気が供給される。
【0047】
制御部6bは、要求発電量に基づいて、複数の第1調整弁42(の開閉)を制御する。
【0048】
変形例1による燃料電池システム100のその他の構成は、第1実施形態による燃料電池システム100の対応する構成と同様であるため、その詳細な説明を省略する。
【0049】
上記のように、流量調整部4は、複数の第1調整弁42の開閉により、100L/min、60L/min、20L/minの3段階で燃料電池スタック1に供給される空気の流量を調整することができる。従って、電流値の所定の閾値が2つ設定される。2つの所定の閾値を、例えば、第1閾値および第1閾値より低い第2閾値とする。例えば、電流値が第1閾値以上である場合、制御部6bは、2つの第1調整弁42を閉じる。この場合、燃料電池スタック1に100L/minの空気が供給される。電流値が第1閾値より低く、第2閾値以上である場合、制御部6bは、一方の第1調整弁42を開け、他方の第1調整弁42を閉じる。この場合、燃料電池スタック1に60L/minの空気が供給される。電流値が第2閾値よりも低い場合、制御部6bは、2つの第1調整弁42を開ける。この場合、燃料電池スタック1に20L/minの空気が供給される。尚、さらに複数の第2流路部41bおよび第1調整弁42が設けられる場合も同様である。
【0050】
このように、変形例では、複数の第1調整弁42の開閉により、燃料電池スタック1に供給される空気の流量を段階的に変化させることができる。この場合、所定の閾値は、複数設定される。また、所定の閾値に対応するように、第1流量および第2流量も複数設定されればよい。
【0051】
尚、それぞれの第1調整弁42が開くことにより減少する空気の流量は、異なっていてもよい。
【0052】
変形例1による燃料電池システム100は、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。また、変形例1では、燃料電池スタック1に供給される空気の流量を、さらに段階的に調整することができる。
【0053】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態による燃料電池システム100の構成を示すブロック図である。第2実施形態は、圧力損失により流量を減少させる点で、第1実施形態と異なる。
【0054】
流量調整部4は、分岐部43と、第3流路部43aと、第4流路部43bと、圧損要素44と、第2調整弁45と、を有する。
【0055】
分岐部43は、ブロワ3と接続し、第3流路部43aと、第4流路部43bと、に分岐させる。
【0056】
第3流路部43aおよび第4流路部43bは、ブロワ3から供給される空気を、燃料電池スタック1に分岐して流す。第3流路部43aおよび第4流路部43bは、例えば、第1流路部41aと同様のガス管でよい。
【0057】
圧力損失部としての圧損要素44は、第4流路部43b上に設けられ、通過する空気に圧力損失を生じさせる。圧損要素44は、ブロワ3により加圧された空気の圧力を圧力損失により減少させる。すなわち、圧損要素44の下流側の空気の圧力が減少し、流量が減少する。この結果、ブロワ3を通過する空気の流量および燃料電池スタック1に流入する空気の流量が減少する。圧損要素44は、例えば、配管の流路面積を小さくすればよく、絞り、弁、オリフィスの少なくとも1つである。また、圧損要素44は、例えば、手動で流路面積を変更する等、外部から圧力損失の高低を調整可能であってもよい。
【0058】
第2調整弁45は、第3流路部43a上に設けられ、空気の流量が調整可能である。第2調整弁45は、制御装置6により制御される。第2調整弁45は、例えば、第1調整弁42と同様の弁でよい。
【0059】
ブロワ3は、例えば、最大流量100L/minの空気を供給するように、100%の出力で空気を供給する。尚、実際にブロワ3を通過する空気の流量は、配管の圧力損失(配管抵抗)によって変化する。第2調整弁45が開いている場合、圧力損失の低い第3流路部43aでは、圧損要素44が設けられる第4流路部43bよりも流量が大きくなる。第3流路部43aおよび第4流路部43bにおける流量の和が、燃料電池スタック1に供給される空気の流量になる。従って、例えば、ブロワ3は100L/minの空気を供給し、燃料電池スタック1には100L/minの空気が供給される。一方、第2調整弁45が閉じている場合、空気は圧損要素44を有する第4流路部43bのみを通過する。従って、例えば、ブロワ3は30L/minの空気を供給し、燃料電池スタック1には30L/minの空気が供給される。従って、第2調整弁45の開閉によって、ブロワ3から燃料電池スタック1までの圧力損失(配管抵抗)が変化し、ブロワ3から供給される空気の流量が変化する。
【0060】
制御部6bは、要求発電量に基づいて、第2調整弁45(の開閉)を制御する。
【0061】
系統連系運転時において、制御部6bは、第2調整弁45を開き、ブロワ3の流量を制御する。一方、自立運転時では、制御部6bは、上記のように、ブロワ3の出力(流量)を略一定にして、電流値に基づいて第2調整弁45の開閉で流量を制御する。
【0062】
第2実施形態による燃料電池システム100のその他の構成は、第1実施形態による燃料電池システム100の対応する構成と同様であるため、その詳細な説明を省略する。
【0063】
例えば、電流値が所定の閾値以上である場合、制御部6bは、第2調整弁45を開ける。この場合、燃料電池スタック1に100L/min(第1流量)の空気が供給される。電流値が所定の閾値よりも低い場合、制御部6bは、第2調整弁45を閉じる。この場合、燃料電池スタック1に30L/min(第2流量)の空気が供給される。
【0064】
第2実施形態による燃料電池システム100は、第1実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0065】
(変形例2)
図5は、変形例2による燃料電池システム100の構成を示すブロック図である。第2実施形態の変形例2は、第3調整弁46が設けられる点で、第2実施形態と異なる。
【0066】
流量調整部4は、第3調整弁46をさらに備える。第3調整弁46は、第4流路部43b上に設けられ、空気の流量が調整可能である。第3調整弁46は、制御装置6により制御される。第3調整弁46は、例えば、第1調整弁42と同様の弁でよい。
【0067】
制御部6bは、要求発電量に基づいて、第2調整弁45および第3調整弁46(の開閉)を制御する。
【0068】
変形例2による燃料電池システム100のその他の構成は、第2実施形態による燃料電池システム100の対応する構成と同様であるため、その詳細な説明を省略する。
【0069】
変形例2では、制御部6bは、第2調整弁45が開いている場合に、さらに第3調整弁46の開閉を制御することができる。すなわち、制御部6bは、空気が第3流路部43aのみを通過させるようにすることができる。従って、変形例1において説明したように、3段階と段階的に流量を調整することができる。尚、第2調整弁45が閉じている場合、制御部6bは、空気の供給が止まらないように第3調整弁46を開く。
【0070】
尚、系統連系運転時では、第3調整弁46の開閉は、いずれでもよい。
【0071】
変形例2による燃料電池システム100は、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。また、変形例2では、燃料電池スタック1に供給される空気の流量を、さらに段階的に調整することができる。
【0072】
(変形例3)
図6は、変形例2による燃料電池システム100の構成を示すブロック図である。第2実施形態の変形例3は、第4流路部43bが複数設けられる点で、第2実施形態と異なる。
【0073】
流量調整部4は、複数の分岐部43と、複数の第4流路部43bと、複数の圧損要素44と、1つまたは複数の第3調整弁46と、を有する。複数の圧損要素44は、それぞれの第4流路部43b上に設けられる。第3調整弁46は、変形例2による第3調整弁46と同様である。図6に示す例では、第4流路部43bからさらに分岐するように、分岐部43および第4流路部43bが設けられる。尚、1つの分岐部43から複数の第4流路部43bが設けられてもよい。また、圧損要素44ごとの圧力損失の高さは、異なっていてもよい。
【0074】
1つまたは複数の第3調整弁46は、それぞれの第4流路部43b上に設けられ、空気の流量が調整可能である。図6に示す例では、第4流路部43bと同数である2つの第3調整弁46が設けられている。しかし、第3調整弁46は、1つであってもよい。
【0075】
図6に示す例では、2つの第4流路部43bおよび2つの第2調整弁45が設けられている。ブロワ3は、例えば、100%の出力で空気を供給する。例えば、第2調整弁45および2つの第3調整弁46が開いている場合、燃料電池スタック1に100L/minの空気が供給される。いずれかの弁が閉じると、燃料電池スタック1に供給される空気の流量は減少する。尚、配管の圧力損失が高いほど、通過する空気の流量が小さいため、弁が閉じる際における全体の流量の減少は小さくなる。
【0076】
制御部6bは、要求発電量に基づいて、第2調整弁45、および、1つまたは複数の第3調整弁46(の開閉)を制御する。
【0077】
変形例3では、弁の開いている数によって、燃料電池スタック1に供給される空気の流量を調整することができる。従って、変形例1において説明したように、段階的に流量を調整することができる。尚、さらに複数の第4流路部43bおよび第3調整弁46が設けられる場合も同様である。
【0078】
変形例3による燃料電池システム100のその他の構成は、第2実施形態による燃料電池システム100の対応する構成と同様であるため、その詳細な説明を省略する。
【0079】
制御部6bは、変形例1において説明したように、複数の所定の閾値により、第2調整弁45および第3調整弁46を制御すればよい。
【0080】
変形例3による燃料電池システム100は、第2実施形態と同様の効果を得ることができる。また、変形例3では、燃料電池スタック1に供給される空気の流量を、さらに段階的に調整することができる。
【0081】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0082】
100 燃料電池システム、1 燃料電池スタック、3 ブロワ、4 流量調整部、41a 第1流路部、41b 第2流路部、42 第1調整弁、43a 第3流路部、43b 第4流路部、44 圧損要素、45 第2調整弁、46 第3調整弁、5 電流計、6b 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6