(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】足場つなぎアンカーの取付構造
(51)【国際特許分類】
E04G 5/04 20060101AFI20230314BHJP
【FI】
E04G5/04 D
(21)【出願番号】P 2019229839
(22)【出願日】2019-12-20
【審査請求日】2022-01-07
(73)【特許権者】
【識別番号】307042385
【氏名又は名称】ミサワホーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】榎本 章宏
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-240560(JP,A)
【文献】実開平04-036048(JP,U)
【文献】特開2015-048671(JP,A)
【文献】実開昭61-052032(JP,U)
【文献】特開平09-067927(JP,A)
【文献】特開2000-027429(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の躯体と、
複数の外壁材からなり、前記躯体の外側を覆う外壁と、
基端部が前記躯体に支持されるとともに、先端部が前記外壁の目地から露出するアンカーと、
前記外壁材と前記アンカーとの間を充填するシーリング材と、を備え、
前記アンカーの先端面は、前記外壁材の外側表面と面一又は前記外側表面よりも外側へ出ており、
前記外壁における、前記先端部の周囲の部位は、前記外側表面よりも内側へ窪んだ座彫り部となっており、
前記シーリング材は、前記先端部の側周面と前記座彫り部における前記側周面と対向する面との間を、前記先端面よりも外側へ出ないように充填して
おり、
前記外壁は、それぞれ矩形に形成されるとともに、前記外側表面に行列状に取り付けられた複数のタイルを備え、かつ、隣り合う前記複数のタイル同士間に前記目地が形成されており、
前記目地には前記アンカーが設けられて露出している露出箇所があり、
前記アンカーの前記先端面は、前記タイルの表面と面一又は前記タイルの表面よりも外側へ出ており、
前記複数のタイルのうち、前記アンカーが露出している前記目地の前記露出箇所に接するタイルは、前記アンカー側の部位が切り欠かれていて、前記アンカーとの間に間隔が空いた状態となっていることを特徴とする足場つなぎアンカーの取付構造。
【請求項2】
請求項1に記載の足場つなぎアンカーの取付構造において、
前記目地は、前記外壁材と前記外壁材との間に設けられる第一の目地と、前記タイルと前記タイルとの間に設けられ前記第一の目地と直交する方向へ延びる第二の目地と、
を有しており、
前記第一の目地と前記第二の目地との交点が前記露出箇所とされていて、前記アンカーの前記先端面は、前記第一の目地と前記第二の目地との交点において露出していることを特徴とする足場つなぎアンカーの取付構造。
【請求項3】
請求項
2に記載の足場つなぎアンカーの取付構造において、
前記複数のタイルのうち、前記目地の前記露出箇所である前記第一の目地と前記第二の目地との交点に接するタイルの、前記交点側の角は斜めに切り欠かれていることを特徴とする足場つなぎアンカーの取付構造。
【請求項4】
請求項1から請求項3
のいずれか一項に記載の足場つなぎアンカーの取付構造において、
前記先端部には雌ネジが形成されており、
前記雌ネジに螺合する雄ネジ部と、前記雄ネジ部の外側の端部に設けられ前記先端面の少なくとも一部を遮蔽する遮蔽部と、を有し、前記アンカーに対して着脱可能な蓋を備えることを特徴とする足場つなぎアンカーの取付構造。
【請求項5】
請求項
4に記載の足場つなぎアンカーの取付構造において、
前記蓋は、作業用足場とは異なる器具を支持する器具支持部を有していることを特徴とする足場つなぎアンカーの取付構造。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の足場つなぎアンカーの取付構造において、
前記アンカーは、
前記躯体における前記外側表面と直交する接合面に接合された第一の接合部と、前記第一の接合部における外側の端部から前記接合面が向く方向へ延びる第二の接合部と、を有する支持部と、
前記第二の接合部の外側の表面に接合された被支持部と、
前記被支持部から前記外側表面へ向かって延びる本体と、を有していることを特徴とする足場つなぎアンカーの取付構造。
【請求項7】
請求項6に記載の足場つなぎアンカーの取付構造において、
前記被支持部における、前記第一の接合部から離れた方の端部には、内側へ向かって延びるとともに、前記第二の接合部における前記第一の接合部から離れた方の端に係合する係合部が形成されていることを特徴とする足場つなぎアンカーの取付構造。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の足場つなぎアンカーの取付構造において、
前記建物は、
バルコニーが設けられていない第一の外壁面と、
前記バルコニーが設けられた第二の外壁面と、を有し、
前記先端部は、前記第一の外壁面において露出していることを特徴とする足場つなぎアンカーの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、足場つなぎアンカーの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
マンション等の比較的長寿命かつ高層の建物に対しては、外壁のメンテナンスを定期的に行う必要がある。
メンテナンスを行う際には、外壁の高い個所にも手が届くよう、建物の周囲に作業用の足場を組むことになる。また、その際、足場の倒壊を防ぐため、建物に取り付けられたアンカーに足場を固定することになる。
従来は、メンテナンスを行う度に、建物に穴をあけてアンカーを取り付け、作業後は埋め戻していた(一度きりしか使用しなかった)が、近年、例えば特許文献1,2に記載されたような、繰り返し再利用可能な足場つなぎアンカーが提案されるようになった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平09-067927号公報
【文献】特許第2995149号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の再利用可能な足場つなぎアンカーは、外壁材との間の防水が十分ではなく、次のメンテナンスまでにアンカーが錆びてしまったり、雨水が外壁材の内側まで浸入してしまったりすることがあった。
また、従来の再利用可能な足場つなぎアンカーにおいて、こうした雨水の浸入に対処するには、アンカーの開口部を閉塞部材で閉塞し、更にその表面をモルタル等の外装材で埋めるしかなかった。このため、再利用する度に、表面の外装材を除去する手間がかかっていた。
【0005】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、建物の外壁に設けられる再利用可能な足場つなぎアンカーの取付構造において、外壁材とアンカーとの間に雨水を浸入しにくくするとともに、アンカーを容易に再利用できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、例えば
図1~3に示すように、
建物100の躯体1と、
複数の外壁材21からなり、前記躯体1の外側を覆う外壁2と、
基端部31が前記躯体1に支持されるとともに、先端部332が前記外壁2の目地22
(25)から露出するアンカー3と、
前記外壁材21と前記アンカー3との間を充填するシーリング材4と、を備え、
前記アンカー3の先端面332aは、前記外壁材21の外側表面211aと面一又は前記外側表面211aよりも外側へ出ており、
前記外壁2における、前記先端部332の周囲の部位は、前記外側表面211aよりも内側へ窪んだ座彫り部2bとなっており、
前記シーリング材4は、前記先端部332の側周面332cと前記座彫り部2bにおける前記側周面332cと対向する面2cとの間を、前記先端面332aよりも外側へ出ないように充填して
おり、
前記外壁2は、それぞれ矩形に形成されるとともに、前記外側表面211aに行列状に取り付けられた複数のタイル24を備え、かつ、隣り合う前記複数のタイル24同士間に前記目地22(25)が形成されており、
前記目地22(25)には前記アンカー3が設けられて露出している露出箇所があり、
前記アンカー3の前記先端面332aは、前記タイル24の表面と面一又は前記タイル24の表面よりも外側へ出ており、
前記複数のタイル24のうち、前記アンカー3が露出している前記目地22(25)の前記露出箇所に接するタイル24は、前記アンカー3側の部位が切り欠かれていて、前記アンカー3との間に間隔が空いた状態となっていることを特徴とする足場つなぎアンカーの取付構造100aである。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、先端部332の側周面332cと座彫り部2bにおける側周面332cと対向する面2cとの間に設けられるシーリング材4が、外壁材21とアンカー3との間への雨水の浸入を規制する。また、シーリング材4がアンカー3の先端面332aよりも外側へ出ないため、アンカー3の先端面332aが、アンカー3の不使用時もシーリング材4等によって遮蔽されることなく露出し続ける(いつでも使える状態となっている)。このため、外壁材21とアンカー3との間に雨水を浸入しにくくするとともに、アンカー3を容易に再利用することができる。
さらに、外壁面2aの見栄えを良くすることができる。また、タイル24を外壁材に取り付ける際、先端面332aがタイル24と重なる位置で露出する場合に比べてタイル24の取り付けを容易に行うことができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、例えば
図1~3,5に示すように、
請求項1に記載の足場つなぎアンカーの取付構造100aにおいて、
前記目地22は、前記外壁材21と前記外壁材21との間に設けられる第一の目地22と、前記タイル24と前記タイル24との間に設けられ前記第一の目地22と直交する方向へ延びる第二の目地25と、
を有しており、
前記第一の目地22と前記第二の目地25との交点が前記露出箇所とされていて、前記アンカー3の前記先端面322aは、前記第一の目地22と前記第二の目地25との交点において露出していることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、例えば図1~3,5に示すように、
請求項2に記載の足場つなぎアンカーの取付構造において、
前記複数のタイル24のうち、前記目地22,25の前記露出箇所である前記第一の目地22と前記第二の目地25との交点に接するタイル24の、前記交点側の角は斜めに切り欠かれていることを特徴とする。
【0009】
請求項2,3に記載の発明によれば、外壁面2aの見栄えを良くすることができる。また、タイル24を外壁材に取り付ける際、交点に接するタイル24の角を少し削るだけで済むため、先端面332aがタイル24と重なる位置で露出する場合に比べてタイル24の取り付けを容易に行うことができる。
【0010】
請求項
4に記載の発明は、例えば
図1~4に示すように、
請求項1
から請求項
3のいずれか一項に記載の足場つなぎアンカーの取付構造100aにおいて、
前記先端部332には雌ネジ332bが形成されており、
前記雌ネジ332bに螺合する雄ネジ部61と、前記雄ネジ部61の外側の端部に設けられ前記先端面332aの少なくとも一部を遮蔽する遮蔽部62と、を有し、前記アンカー3に対して着脱可能なキャップ6を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明によれば、雄ネジ部61が雌ネジ332bに螺合して雌ネジ332bの中が閉塞されるとともに、遮蔽部62が雌ネジ332bの開口部のある先端面332aの少なくとも一部を遮蔽するため、雌ネジ332bが雨水で錆びてしまうのを防ぐことができる。
【0014】
請求項5に記載の発明は、例えば
図6に示すように、
請求項
4に記載の足場つなぎアンカーの取付構造100aにおいて、
前記キャップ6は、作業用足場とは異なる器具7を支持する器具支持部63を有していることを特徴とする。
【0015】
請求項5に記載の発明によれば、作業用足場を接続しないときであっても、作業用足場とは異なる器具7として、例えば看板を取り付ける等して、アンカー3を活用することができる。
【0016】
請求項6に記載の発明は、例えば
図1,4~6に示すように、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の足場つなぎアンカーの取付構造100aにおいて、
前記アンカー3は、
前記躯体1における前記外側表面211aと直交する接合面11cに接合された第一の接合部31aと、前記第一の接合部31aにおける外側の端部から前記接合面11cが向く方向へ延びる第二の接合部31bと、を有する支持部31と、
前記第二の接合部31bの外側の表面に接合された被支持部32と、
前記被支持部32から前記外側表面へ向かって延びる本体33と、を有していることを特徴とする。
【0017】
請求項6に記載の発明によれば、アンカー3が支持部31と被支持部32とに分かれているため、躯体1に支持部31を取り付けた後、被支持部32を第二の接合部31bの外側の表面に沿って移動させて(位置決めして)、所望の位置となったところで接合することができるため、取付構造100aの設置位置の調節を容易に行うことができる。
【0018】
請求項7に記載の発明は、例えば
図1,4,6に示すように、
請求項6に記載の足場つなぎアンカーの取付構造100aにおいて、
前記被支持部32における、前記第一の接合部31aから離れた方の端部には、内側へ向かって延びるとともに、前記第二の接合部31bにおける前記第一の接合部31aから離れた方の端に係合する係合部321aが形成されていることを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の発明によれば、係合部321aが第二の接合部31bに引っかかるため、被支持部32及び本体33を外れにくくすることができる。
【0020】
請求項8に記載の発明は、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の足場つなぎアンカーの取付構造100aにおいて、
前記建物100は、
バルコニーが設けられていない第一の外壁面101と、
前記バルコニーが設けられた第二の外壁面と、を有し、
前記先端部332は、前記第一の外壁面101において露出していることを特徴とする。
【0021】
請求項8に記載の発明によれば、アンカー3を用いる以外に足場を固定することが困難な第一の外壁面101だけに限られる(バルコニーを有する第二の外壁面のメンテナンスは、バルコニーに足場を固定すればよい)ため、建物100の見栄えの低下を最小限に抑えることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、外壁材とアンカーとの間に雨水を浸入しにくくするとともに、アンカーを容易に再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本実施形態に係る足場つなぎアンカーの取付構造を備える建物の一部を示す断面図(
図2のI-I´断面図)である。
【
図2】同実施形態に係る建物100の一部を示す正面図である。
【
図3】同実施形態に係る足場つなぎアンカーの取付構造の一部を拡大した断面図である。
【
図4】同実施形態に係るアンカーの取付構造が備えるアンカーを示す分解斜視図である。
【
図5】施工途中の足場つなぎアンカーの取付構造を示す平面図である。
【
図6】本実施形態の変形例に係る足場つなぎアンカーの取付構造を備える建物の一部を示す断面図である。
【
図7】
図1,3のアンカーの取付構造を施工する際に用いられる冶具を示す斜視図である。
【
図8】
図7の冶具を用いた施工の様子を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0025】
〔1.建物〕
まず、本発明の実施形態に係る足場つなぎアンカーの取付構造(以下取付構造100a)を備える建物100の概略構成について説明する。
図1は建物100の一部を示す断面図(
図2のI-I´断面図)、
図2は建物100の一部を示す正面図である。
【0026】
建物100は、
図1に示すように、躯体1と、外壁2と、取付構造100aと、を備えている。
本実施形態に係る建物100は、比較的高層の住宅用建物(例えばマンション)となっており、
図2に示す第一の外壁面101と、図示しない第二の外壁面と、を有している。
第一の外壁面101には、バルコニーが設けられていない。
第二の外壁面には、図示しないバルコニーが設けられている。
【0027】
(1-1.躯体)
躯体1は、図示しない複数の柱と、
図1に示す複数の梁11と、を有している。
本実施形態に係る梁11は、H型鋼となっており、ウェブ11aと、フランジ11bと、を有している。
【0028】
(1-2.外壁)
外壁2は、躯体1の外側(側方、
図1における左側)を覆っている。
また、外壁2は、複数の外壁材21と、第一の目地22と、を有している。
また、本実施形態に係る外壁2は、下地材23と、タイル24と、第二の目地25と、を更に有している。
【0029】
本実施形態に係る外壁材21は、本体211と、固定部212と、を有している。
本体211は、パネル状に形成されている。
本実施形態に係る本体211は、軽量気泡コンクリート(ALC)等の材料で形成されているが、他の材料で形成されていてもよい。
固定部212は、本体211の内側表面に設けられ、躯体1又は躯体1に設けられた図示しないブラケットを挟んでボルト止めすることが可能に構成されている。
【0030】
第一の目地22は、
図2に示したように、隣り合う外壁材21と外壁材21との間の間隙を充填している。
なお、
図2には、第一の目地22として、鉛直方向に並ぶ外壁材21と外壁材21との間に設けられた水平方向に延びるものを例示したが、第一の目地22には、水平方向に並ぶ外壁材21と外壁材21との間に設けられた鉛直方向に延びるものも存在する。
【0031】
下地材23は、外壁材21にタイル24を貼り付けるためのもので、外壁材21の外側表面211a全体に塗布されている。
【0032】
複数のタイル24は、それぞれ矩形に形成されるとともに、外壁材21の外側表面211aに行列状に取り付けられている。
本実施形態に係るタイル24は、下地材23によって固着されている。
【0033】
第二の目地25は、隣り合うタイル24とタイル24との間の間隙を充填している。
上述したように、本実施形態に係る複数のタイル24は、行列状をなしているため、本実施形態に係る第二の目地25は、格子状をなしている。
【0034】
(1-3.足場つなぎアンカーの取付構造)
取付構造100aは、
図1に示したように、アンカー3やシーリング材4を備えている。
アンカー3は、基端部31が躯体1に支持されるとともに、先端部332が外壁2の目地22から露出している。
また、シーリング材4は、外壁材21とアンカー3との間を充填している。
この取付構造100aの詳細については後述する。
【0035】
〔2.足場つなぎアンカーの取付構造の詳細〕
次に、上記建物100が備える取付構造100aの詳細について説明する。
図3は
図1の一部の拡大図、
図4はアンカー3を示す分解斜視図、
図5は施工途中の足場つなぎアンカーの取付構造を示す平面図である。
【0036】
建物100の一部である取付構造100aは、躯体1の一部と、外壁2の一部と、の他、
図3に示すように、アンカー3と、シーリング材4と、を備えている。
また、本実施形態に係る取付構造100aは、バックアップ材5と、キャップ6と、を更に備えている。
【0037】
(2-1.アンカー)
アンカー3は、
図4に示すように、支持部31と、被支持部32と、本体33と、を有している。
【0038】
支持部31は、アンカー3の基端部をなす部材である
また、支持部31は、第一の接合部31aと、第二の接合部31bと、を有している。
第一の接合部31aは、
図1に示したように、躯体1における、外側表面211aと直交する接合面に接合されている。
第二の接合部31bは、第一の接合部31aにおける外側の端部から躯体1の接合面11cが向く方向へ延びている。
なお、
図1には、外側表面211aと直交する接合面11cとして、梁11の上面を例示したが、柱の側面(
図1の紙面と平行な面)が接合面であってもよい。
また、支持部31は、外壁材21を固定するためのブラケットを兼ねていてもよい。
【0039】
本実施形態に係る被支持部32は、
図4に示したように、本体321と、ナット部322と、を有している。
【0040】
本体321は、第二の接合部31bの外側の表面に接合されている。
本実施形態に係る本体321は、
図5に示すように、外壁材21の固定部121と重ならない位置において接合されている。
また、本体321における、支持部31の第一の接合部31aから離れた方の端部には、
図4に示したように、内側へ向かって延びるとともに、支持部31の第二の接合部31bにおける第一の接合部31aから離れた方の端に係合する係合部321aが形成されている。
本実施形態に係る係合部321aは、本体321の端部を曲げることにより形成されている。
この係合部321aが形成されることにより、係合部321aが第二の接合部31bに引っかかるため、被支持部32及び本体33を外れにくくすることができる。
【0041】
ナット部322は、本体321の外側の表面に設けられている。
ナット部322には、雌ネジ322aが形成されている。
【0042】
本体33は、
図1,5に示したように、被支持部32から外壁2の外壁面2aへ向かって延びている。
また、本体33は、中間部331と、先端部332と、を有している。
【0043】
中間部331の基端部には、雄ネジ331aが形成されており、被支持部32の雌ネジ322aに螺合している。
中間部331は、
図1に示したように、隣り合う(
図1においては、鉛直方向に隣り合う)外壁材21と外壁材21とに挟まれている。
【0044】
アンカー3の先端部でもある、本体33の先端部332は、建物100における、バルコニーが設けられていない第一の外壁面101において露出している。
このようにすれば、アンカー3を用いる以外に足場を固定することが困難な第一の外壁面101だけに限られる(バルコニーを有する第二の外壁面のメンテナンスは、バルコニーに足場を固定すればよい)ため、建物100の見栄えの低下を最小限に抑えることができる。
本実施形態に係る先端部332は、
図1,3,4に示したように、中間部331よりも太くなっている。
【0045】
アンカー3の先端面でもある本体33の先端面332aは、
図3に示したように、外壁2の外壁面2aと面一又は外壁面2aよりも外側へ出ている。
上述したように、本実施形態に係る外壁2は、タイル24を有しているため、本実施形態に係る先端面332aは、タイル24の表面と面一又はタイル24の表面よりも外側へ出ている。
また、先端面332aは、
図2に示したように、外壁2における、第一の目地22と、タイル24とタイル24との間に設けられ第一の目地22と直交する方向へ延びる第二の目地25と、の交点において露出している。このため、外壁面2aの見栄えを良くすることができる。
本実施形態に係る先端部332には、雌ネジ332bが形成されている。
【0046】
(2-2.外壁)
外壁2における、アンカー3の先端部332の周囲の部位は、外壁材21の外側表面211aよりも内側へ窪んだ座彫り部2bとなっている。
本実施形態に係る座彫り部2bをその深さ方向から見たときの形状は円形となっている。
なお、座彫り部2bを深さ方向から見たときの形状は円形以外(例えば矩形、ひし形等)であってもよい。
本実施形態に係る座彫り部2bは、外壁材21及び第一の目地22にのみ形成されている。
すなわち、タイル24及び第二の目地25には、座彫り部2bが形成されていないため、本実施形態に係る座彫り部2bは、視認不能となっている。
【0047】
本実施形態に係るタイル24のうち、アンカー3の(第一の目地22と第二の目地25との交点)に接する角は、
図2に示したように切り欠かれている。
【0048】
(2-3.シーリング材)
シーリング材4は、
図3に示したように、アンカー3の先端部332の側周面332cと、外壁材21の座彫り部2bにおける側周面332cと対向する面2cと、の間の空間を、アンカー3の先端面332aよりも外側へ出ないように充填している。
【0049】
(2-4.バックアップ材)
バックアップ材5は、施工途中の(硬化する前の)シーリング材4が、外壁材21における座彫り部2bよりも奥へ入り込むのを防ぐためのもので、アンカー3の先端部332の側周面332cと、外壁材21の座彫り部2bにおける側周面332cと対向する面2cと、の間であって、シーリング材4の内側の表面と、外壁材21の座彫り部2bにおけるシーリング材4の内側の表面と対向する面2dとの間の空間を充填している。
【0050】
(2-5.キャップ)
キャップ6は、雄ネジ部61と、遮蔽部62と、を有している。
雄ネジ部61は、アンカー3の雌ネジ332bに螺合している。
遮蔽部62は、雄ネジ部61の外側の端部に設けられ先端面332aの少なくとも一部を遮蔽している。
なお、雄ネジ部61はアンカー3の雌ネジ332bに接着はされていない。すなわち、キャップ6は、アンカー3に対して着脱可能となっている。
このキャップ6を備えることにより、雄ネジ部61が雌ネジ332bに螺合して雌ネジ332bの中が閉塞されるとともに、遮蔽部62が雌ネジ332bの開口部のある先端面332aの少なくとも一部を遮蔽するため、雌ネジ332bが雨水で錆びてしまうのを防ぐことができる。
【0051】
なお、キャップ6は、アンカー3の先端面332aと遮蔽部の間に介在するパッキンや、雄ネジ部61とアンカー3の雌ネジ332bとの間に介在するシールテープ等を備えていてもよい。
このようにすれば、雨水が雌ネジ332bの中に入り込むことをより一層防ぐことができる。
【0052】
また、遮蔽部62は、外側表面211aに固着されたタイル24(第一のタイル)と同形状をなし、雄ネジ部61がアンカー3の雌ネジ332bに螺合することで外壁材21の外側表面211aに取り付けられる第二のタイルとなっていてもよい。
このようにすれば、アンカー3にキャップ6を取り付けたときに、アンカー3が遮蔽部62に完全に遮蔽されるとともに、アンカー3が取り付けられていない周囲の外壁面2aと見分けがつかなくなるため、アンカー3による見栄えの低下を防ぐことができる。
【0053】
また、キャップ6は、
図6に示すように、作業用足場とは異なる器具7を支持する器具支持部63を有していてもよい。
このようにすれば、作業用足場を接続しないときであっても、器具7として、例えば看板を取り付ける等して、アンカー3を活用することができる。
なお、取付構造100aは、
図6に示したように、一つの建物100に複数設けられていてもよい。その場合、各取付構造100aに、器具支持部63を有するキャップ6を用いることにより、器具7を複数個所で支持するようになっていてもよい。このようにすれば、器具7をより強固に支持することができる。
【0054】
〔3.足場つなぎアンカー取付構造の施工方法〕
次に、上記取付構造100aの施工方法について説明する。
図7は取付構造100aを施工する際に用いられる冶具8を示す斜視図、
図8は冶具8を用いた施工の様子を示す図である。
【0055】
まず、組みあがった躯体1に、躯体1における前記外側表面と直交する接合面にアンカー3の支持部31を接合する。
本実施形態に係る施工方法においては、支持部31の第一の接合部31aを梁11のフランジ11bの上面に溶接する。
【0056】
支持部31を取り付けた後、取付構造100aの下部をなす下側の外壁材21を躯体1に取り付ける。
なお、可能であれば、下側の外壁材21の取り付けを、支持部31の取り付けの前に又は支持部31の取り付けと並行して行ってもよい。
【0057】
下側の外壁材21を取り付けた後は、アンカー3の被支持部32を、支持部31に接合する。
本実施形態に係る施工方法においては、まず、被支持部32の位置決めを行う。具体的には、被支持部32が外壁材21の固定部212と重ならない位置であって、アンカー3の先端面332aが第一の目地22と第二の目地25の交点と重なることになる位置に被支持部32を移動させる。
位置決めが済んだら、被支持部32の内側の表面を、支持部31の第二の接合部31bに溶接する。
アンカー3が支持部31と被支持部32とに分かれているため、躯体1に支持部31を取り付けた後、被支持部32を第二の接合部31bの外側の表面に沿って移動させて(位置決めして)、所望の位置となったところで接合することができるため、取付構造100aの設置位置の調節を容易に行うことができる。
被支持部32を支持部31に溶接した後、被支持部32に本体33を取り付ける。これにより、躯体1へのアンカー3の取り付けが完了する。
【0058】
アンカー3を取り付けた後、上側の外壁材21を取り付け、目地材を用いて第一の目地22を形成する。
上側の外壁材21が取り付けられると、アンカー3の中間部331が上下の外壁材21に挟み込まれ、より強固に固定される。
【0059】
第一の目地22を形成した後は、座彫り部2bを形成する。
本実施形態に係る施工方法においては、冶具8とホールソー9を用いて座彫り部2bを形成する。
本実施形態に係る冶具8は、
図7に示すように、本体81と、ガイド部82と、取っ手83と、を有している。
本体81は、外壁材21の外側表面211aに当接する平板状となっている。本体81には、直径がホールソー9よりもやや大きい円孔81aが形成されている。
ガイド部82は、円筒状をなし、本体81に、円孔81aを囲むように取り付けられている。
取っ手83は、施工時に作業者が冶具8を押さえるためのもので、本体81のガイド部82が取り付けられた側の面に設けられている。
【0060】
この冶具8を、円孔81aの中心と、アンカー3の先端面332aの中心とが一致するように配置し、取っ手を握って冶具8を押さえつける。
そして、
図8に示すように、ホールソー9をガイド部82の中で回転させながら、外壁材21及び第一の目地22に押し当てていく。すると、外壁材21及び第一の目地22がくり抜かれ、座彫り部2bが形成される。
なお、深さ方向から見たときの座彫り部2bの形状を円形以外の形状とする場合には、冶具8を用いずに、ノミ等の工具を用いて形成することになる。
【0061】
座彫り部2bを形成した後は、座彫り部2bの奥にバックアップ材5を取り付け、次いで、座彫り部2bの中にシーリング材4を充填する。
本実施形態に係る施工方法においては、シーリング材4を、外壁材21の外側表面211aを超えない程度に充填する。
【0062】
シーリング材4が硬化した後は、外壁材21の外側表面211aに、下地材23を塗布し、タイル24を取り付けるとともに、タイル24とタイル24との間に第二の目地25を形成する。
アンカー3周囲のタイル24は、そのまま取り付けてもよいし、必要に応じてアンカー3と接することになる角を切り欠いてもよい。
このように、アンカー3を第一の目地22と第二の目地25との交点となる位置に配置したことで、タイル24を外壁材に取り付ける際、タイル24を削らなくて済む又は交点に接するタイル24の角を少し削るだけで済むため、先端面332aがタイル24と重なる位置で露出する場合に比べてタイル24の取り付けを容易に行うことができる。
【0063】
〔4.効果〕
以上説明してきた本実施形態に係る取付構造100aによれば、先端部332の側周面332cと座彫り部2bにおける側周面332cと対向する面2cとの間に設けられるシーリング材4が、外壁材21とアンカー3との間への雨水の浸入を規制する。
また、シーリング材4がアンカー3の先端面332aよりも外側へ出ないため、アンカー3の先端面332aが、アンカー3の不使用時もシーリング材4等によって遮蔽されることなく露出し続ける(いつでも使える状態となっている)。
このため、外壁材21とアンカー3との間に雨水を浸入しにくくするとともに、アンカー3を容易に再利用することができる。
【符号の説明】
【0064】
100 建物
100a 足場つなぎアンカーの取付構造
101 第一の外壁面
1 躯体
11 梁
11a ウェブ
11b フランジ
2 外壁
2a 外壁面
2b 座彫り部
2c アンカーの側周面と対向する面
2d シーリング材の内側の表面と対向する面
21 外壁材
211 本体
211a 外側表面
212 固定部
22 第一の目地
22 目地
23 下地材
24 タイル
25 第二の目地
3 アンカー
31 支持部(アンカーの基端部)
31a 第一の接合部
31b 第二の接合部
32 被支持部
321 本体
321a 係合部
322 ナット部
322a 雌ネジ
33 本体
331 中間部
332 先端部(アンカーの先端部)
332a 先端面
332b 雌ネジ
332c 側周面
4 シーリング材
5 バックアップ材
6 キャップ
61 雄ネジ部
62 遮蔽部
63 器具支持部
7 作業用足場とは異なる器具
8 冶具
81 本体
81a 円孔
82 ガイド部
83 取っ手
9 ホールソー