(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
F26B 5/04 20060101AFI20230314BHJP
F26B 3/28 20060101ALI20230314BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
F26B5/04
F26B3/28
H01L21/68 N
(21)【出願番号】P 2019233851
(22)【出願日】2019-12-25
【審査請求日】2021-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100105935
【氏名又は名称】振角 正一
(74)【代理人】
【識別番号】100136836
【氏名又は名称】大西 一正
(72)【発明者】
【氏名】平井 孝典
【審査官】杉山 健一
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2007-0038476(KR,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0006009(KR,A)
【文献】特開2017-083140(JP,A)
【文献】特開2018-040512(JP,A)
【文献】特開2003-168643(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0102396(US,A1)
【文献】特開2006-339485(JP,A)
【文献】特開平11-297654(JP,A)
【文献】特開2000-307235(JP,A)
【文献】特開2016-051877(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0073415(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F26B 5/04
F26B 3/28
H01L 21/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を加熱しその周囲空間を減圧して前記基板の主面に形成された塗布膜を乾燥させる基板処理装置において、
前記基板を水平姿勢で収容可能な処理空間を有するチャンバと、
前記処理空間内で、前記基板の下面に当接して前記基板を下方から支持する支持部と、
前記支持部に支持された前記基板の上面に部分的に当接して前記基板の反りを矯正する矯正部材と、
前記処理空間内で、前記支持部に支持された前記基板の下面を加熱する
第1の加熱部と、
前記処理空間外から前記チャンバの底部を加熱することで前記基板の周縁部を加熱する第2の加熱部と、
前記処理空間を減圧する減圧部と
を備える基板処理装置。
【請求項2】
前記
第1の加熱部は、上面が前記基板と同じまたはこれよりも大きな平面サイズを有し所定温度に昇温制御されるホットプレートを有し、
前記支持部は、前記基板を前記ホットプレートの前記上面に対し所定のギャップを隔てて対向させる、
請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
矩形の前記基板を処理対象とする請求項1または2に記載の基板処理装置であって、
前記第2の加熱部は、前記基板の4つの頂点それぞれに対応する4つの発熱体を有し、前記発熱体の各々は、前記チャンバの底部の下面のうち対応する前記頂点の直下位置とその周辺領域とをカバーするように配置される、基板処理装置。
【請求項4】
矩形の前記基板を処理対象とする請求項1または2に記載の基板処理装置であって、
前記第2の加熱部は、前記チャンバの底部の下面のうち前記基板の周縁部の直下位置とその周辺領域とをカバーするように配置された矩形環状のヒータを有する、基板処理装置。
【請求項5】
前記支持部は、前記基板を支持しながら昇降移動する請求項1ないし4のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項6】
前記チャンバは、前記支持部および前記
第1の加熱部が設けられた下側ユニットと、前記矯正部材が設けられた上側ユニットとを有し、
前記上側ユニットと前記下側ユニットとが係合して前記下側ユニットの上部を前記上側ユニットが閉塞することにより前記処理空間を形成し、
前記上側ユニットと前記下側ユニットとが係合すると、前記矯正部材の下端は、前記支持部に支持される前記基板の上面の鉛直方向位置に対応する高さに位置決めされる、
請求項1ないし5のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記上側ユニットと前記下側ユニットとが係合したときの前記矯正部材の下端の鉛直方向を調整する調整機構を備える請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記矯正部材は、前記基板の上面周縁部に当接する請求項1ないし7のいずれかに記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記矯正部材は、平面視において、前記基板のうち前記支持部により支持される領域よりも外側で前記基板に当接する請求項8に記載の基板処理装置。
【請求項10】
基板を加熱しその周囲空間を減圧して前記基板の主面に形成された塗布膜を乾燥させる基板処理方法において、
前記基板を加熱する
第1の加熱部が内部の処理空間に配置されたチャンバ内で、前記基板の下面に支持部を当接させて、前記
第1の加熱部の上方に、かつ前記
第1の加熱部から所定のギャップを隔てて前記基板を支持し、
第2の加熱部が、前記処理空間外から前記チャンバの底部を加熱して前記基板の周縁部を加熱し、
前記支持部に支持される前記基板の上面に部分的に
矯正部材を当接させて前記基板の反りを矯正し、
前記処理空間を減圧し、前記
第1の加熱部および前記第2の加熱部により前記基板を加熱して前記塗布膜を乾燥させる、基板処理方法。
【請求項11】
前記
第1の加熱部は、上面が前記基板と同じまたはこれよりも大きな平面サイズを有し所定温度に昇温制御されるホットプレートを有し、前記支持部は、前記基板を前記ホットプレートの前記上面に対し前記ギャップを隔てて対向させる請求項10または11に記載の基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、基板に形成された塗布膜を乾燥させる基板処理装置および基板処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスのひとつとして、基板表面に塗布液を塗布して塗布膜を形成し、これを乾燥させることで基板表面にレジスト膜や保護膜等の機能膜を形成する処理がある。このような乾燥処理としてはこれまで、塗布膜が形成された基板の周囲空間を減圧して溶媒成分を揮発させる減圧乾燥処理と、減圧処理後の基板を加熱して塗布膜を完全に乾燥させる加熱乾燥処理とがそれぞれ専用の装置で行われるのが一般的であった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような従来技術には、装置間で基板を搬送する必要があり処理時間の短縮を図れないこと、および、装置の占有面積が大きくなる等の解決すべき課題があった。これらの課題に対して、本願出願人は、1つの装置で減圧乾燥処理と加熱乾燥処理とを実行することが可能な技術を先に開示している(特許文献2参照)。
【0004】
この装置においては、塗布膜が形成された基板を内部空間を減圧可能なチャンバ内で水平姿勢に保持し、内部空間を減圧し、さらにチャンバ内に設けられたランプヒータで基板を加熱することにより、塗布膜を乾燥させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-105524号公報
【文献】特許第5089288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、この種の処理に供される基板の大型化が進んでいる。これに伴って基板の反りが生じやすくなり、均一な加熱処理が難しくなっている。特に、近年、ウェーハレベルパッケージ(WLP;Wafer Level Packaging)やパネルレベルパッケージ(PLP;Panel Level Packaging)といった製造形態で製造される半導体パッケージでは、ガラス基板上に複数の半導体チップやチップ間の配線などが多層に組み合わされており、それらの熱収縮率や熱膨張率の相違量は単にレジスト層などを積層した半導体基板よりも大きくなっている。そのため、基板の反りが顕著なものとなっている。
【0007】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、減圧および加熱を伴う乾燥処理を、反りを含んだ基板に対しても良好に実行することのできる基板処理技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の一態様は、基板を加熱しその周囲空間を減圧して前記基板の主面に形成された塗布膜を乾燥させる基板処理装置において、上記目的を達成するため、前記基板を水平姿勢で収容可能な処理空間を有するチャンバと、前記処理空間内で、前記基板の下面に当接して前記基板を下方から支持する支持部と、前記支持部に支持された前記基板の上面に部分的に当接して前記基板の反りを矯正する矯正部材と、前記処理空間内で、前記支持部に支持された前記基板の下面を加熱する第1の加熱部と、前記処理空間外から前記チャンバの底部を加熱することで前記基板の周縁部を加熱する第2の加熱部と、前記処理空間を減圧する減圧部とを備えている。
【0009】
また、この発明の他の一の態様は、基板を加熱しその周囲空間を減圧して前記基板の主面に形成された塗布膜を乾燥させる基板処理方法において、上記目的を達成するため、前記基板を加熱する第1の加熱部が内部の処理空間に配置されたチャンバ内で、前記基板の下面に支持部を当接させて、前記第1の加熱部の上方に、かつ前記第1の加熱部から所定のギャップを隔てて前記基板を支持し、第2の加熱部が、前記処理空間外から前記チャンバの底部を加熱して前記基板の周縁部を加熱し、前記支持部に支持される前記基板の上面に部分的に矯正部材を当接させて前記基板の反りを矯正し、前記処理空間を減圧し、前記第1の加熱部および前記第2の加熱部により前記基板を加熱して前記塗布膜を乾燥させる。
【0010】
基板をその下面側から加熱する構成においては、基板に反りがあると均一な加熱がなされず、乾燥後の塗布膜の品質にばらつきを生じるおそれがある。上記のように構成された発明では、支持部により下面側から支持される基板の上面に矯正部材が当接することで、基板が上下両面から保持され、基板に反りがある場合にはその反りが矯正される。このため、反りがある基板であっても、基板表面の塗布膜への加熱ムラを抑えて、塗布膜の乾燥を良好に行うことが可能である。また、中央部に比して温度が低くなりがちな基板の周縁部について、第2の加熱部で加熱することにより中央部との温度差を解消することができる。第2の加熱部は処理空間外からチャンバ底部を加熱するものであるため、第1の加熱部との間で温度制御が干渉し温度分布が不安定となるのを回避することができる。
【発明の効果】
【0011】
以上のように、本発明では、矯正部材が基板の上面に当接することで反りを矯正することができる。このため、反りを含んだ基板に対しても、減圧および加熱を伴う乾燥処理を良好に実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明に係る基板処理装置の一実施形態を示す図である。
【
図2】チャンバへの基板の搬入時における各部の動作を示す図である。
【
図3】リフトピンおよび矯正ピンの配置を示す図である。
【
図5】基板処理装置による加熱減圧乾燥処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明に係る基板処理装置の一実施形態を示す図である。より具体的には、
図1は本発明の一実施形態である基板処理装置1の主要部の構成を示す断面図と、それらに対する制御系のブロック図とを組み合わせた図である。なお、以下の各図において装置各部の配置関係を明確にするために、
図1に示すように右手系XYZ直交座標を設定する。この座標系で示されるXY平面が水平方向を表し、Z方向が鉛直方向を表す。特に(-Z)方向が鉛直下向き方向を表す。
【0014】
この基板処理装置1は、例えばパネルレベルパッケージ(PLP;Panel Level Package)の製造工程の一部に適用可能なものである。具体的には、基板処理装置1は、表面に処理液による塗布膜Fが形成された基板Sを塗布膜Fが未乾燥の状態で受け入れ、基板Sを加熱するとともに周囲空間を減圧することで、塗布膜中の溶媒成分を揮発させて塗布膜を乾燥、硬化させる処理を実行する。以下では、このような基板処理を「加熱減圧乾燥処理」と称する。
【0015】
基板Sとしては例えば、平面視で矩形状を有し、その表面上に半導体チップや配線などが積層された半導体パッケージ用ガラス基板を適用可能である。また、塗布膜Fとしては、例えばフォトレジスト膜である。なお、基板の材質や塗布膜の種類については、これに限定されるものではなく、また例えば半導体パッケージ以外の半導体デバイスの製造に用いられる基板を処理対象とするものであってもよい。
【0016】
基板処理装置1は、主たる構成としてチャンバ10、排気部50および制御部90を備えている。チャンバ10は、上面Saに塗布膜Fが形成された基板Sをその内部に受け入れて所定の処理を行う。排気部50はチャンバ10の内部空間に接続されて、チャンバ内部空間を排気する。制御部90は、CPU(Central Processing Unit)91を備えており、CPU91が所定の制御プログラムを実行することで装置各部の動作を制御し、以下に説明する各種の処理を実現する。なお、
図1における点線矢印は、制御部90から装置各部への制御信号の流れを示している。
【0017】
チャンバ10は、基板Sの周囲を減圧するための処理空間SPを形成するとともに、処理によって揮発した気体成分が周囲へ飛散するのを防止し、また加熱される基板Sの周囲を覆うことで熱の放散を抑制しエネルギー効率を高める機能を有する。これらの目的のために、チャンバ10は、カバー部11と底板部12とがシール部材13を介して組み合わされた箱型構造となっている。より具体的には、下方が開口した空洞を有するカバー部11が、略平板形状の底板部12の上部を閉塞することにより、カバー部11と底板部12との間に処理空間SPが形成される。カバー部11および底板部12は、例えばステンレス鋼またはアルミニウム等の金属材料により形成される。また、シール部材13はゴム等の弾性材料により形成される。
【0018】
カバー部11は図示しない支持機構によって鉛直方向(Z方向)に昇降可能に支持されており、制御部90に設けられたチャンバ駆動部93が、カバー部11をZ方向に昇降させる。これにより、チャンバ10が開閉される。具体的には、チャンバ駆動部93により、カバー部11が
図1に示す下部位置に位置決めされた状態でチャンバ10は閉塞され、内部に処理空間SPが形成される。一方、チャンバ駆動部93によりカバー部11が上方へ移動することで、カバー部11と底板部12とが離隔され、処理空間SPは外部空間に開放される。カバー部11の閉状態で基板Sに対する処理が実行される一方、閉状態では基板Sの出し入れや内部部品に対するメンテナンス作業等を行うことが可能となる。
【0019】
チャンバ10の底板部12には、ホットプレート20が設けられている。ホットプレート20は、平面視において上面が基板Sとほぼ同じ、またはこれより少し大きいサイズとなった平板状部材である。ホットプレート20の内部には、ホットプレート20を昇温させる熱源として図示しないヒータが内蔵されている。このヒータを他の熱源と区別するため、以下では「内部ヒータ」と称することとする。ホットプレート20は、図示しない支持部材により底板部12の上面から上方に離隔した状態で支持されている。これにより、ホットプレート20と底板部12との間の熱的分離が図られている。内部ヒータに対して制御部90の内部ヒータ制御部94から電力が供給されることでヒータが昇温し、ホットプレート20が加熱される。内部ヒータ制御部94は、CPU91からの制御指令に応じて、ホットプレート20の上面21が所定の温度になるよう内部ヒータを制御する。これによって、ホットプレート20からの輻射熱によって基板Sが均一に加熱される。
【0020】
基板処理装置1には、ホットプレート20と外部の搬送ロボットとの間での基板Sの受け渡しをスムーズに行うために、昇降機構30が設けられている。具体的には、チャンバ10の底板部12およびホットプレート20には鉛直方向Zに延びる貫通孔が複数設けられており、それらの貫通孔の各々にリフトピン32が挿通されている。各リフトピン32の下端は昇降部材33に固定されている。昇降部材33は制御部90のリフトピン駆動部92により上下方向に昇降自在に支持されている。CPU91からの昇降指令に応じてリフトピン駆動部92が作動して昇降部材33を昇降させる。これによって各リフトピン32が一体的に昇降し、リフトピン32は、その上端がホットプレート20の上面21よりも上方に突出する上部位置と、上端がホットプレート20の上面21よりも下方に退避した下部位置との間で移動する。
【0021】
図1はリフトピンが下部位置にある状態を示しており、この状態ではリフトピン32の上端はホットプレート20の上面21からわずかに上方へ突出している。このため、基板Sは、その下面Sbがホットプレート20の上面21と微小なギャップを隔てた状態で水平姿勢に支持される。なお、このようにリフトピン32によって支持される態様に代えて、基板Sがホットプレート20の上面21に設けられた突起部によって支持される構成とすることも可能である。この場合、リフトピン32はさらに下方に位置し基板Sから離間した状態であってよい。
【0022】
ホットプレート20の上面21からの輻射熱によって基板Sが加熱される。基板Sの下面Sbとホットプレート20の上面21との間にギャップを設けることで、ホットプレート20から基板Sへの熱移動は伝導ではなく主として輻射により行われることになる。こうすることで、ホットプレート20上での温度ムラに起因して生じ得る基板Sへの加熱ムラを抑制することができる。その結果、基板Sに形成された塗布膜Fを均一に加熱して均質な膜を形成することが可能となる。
【0023】
処理対象物として搬入される基板Sは平面状態を維持しているとは限らず、撓みや反りを有している場合がある。例えば互いに熱膨張率の異なる機能層が積層された基板Sでは、処理の過程でそれらが伸縮することに起因して生じた反りが残留したまま搬入されてくる場合がある。
【0024】
このような基板Sの反りは、ホットプレート20との間におけるギャップ変動の原因となり、熱源との距離のばらつきが塗布膜Fの加熱ムラ、ひいては膜質のばらつきを引き起こすおそれがある。そこで、このような基板Sの反りを矯正し平面状態に近づけるために、この基板処理装置1には矯正機構40が設けられている。
【0025】
矯正機構40は、カバー部11の内側天井面111に、複数の矯正ピン41がそれぞれ調整ナット42を介して取り付けられた構造を有している。基板Sに反りがある場合、カバー部11の閉状態で矯正ピン41が基板Sの上面Saに上方から当接することにより、反りが矯正される。ここでの「矯正」は、基板Sを厳密な意味での平坦な状態にすることではなく、ホットプレート20とのギャップのばらつきを加熱ムラが生じない程度にまで抑えることを目的とするものである。そのため全ての矯正ピン41が基板Sに当接している必要は必ずしもない。
【0026】
調整ナット42に螺合される矯正ピン41のねじ込み量を個別に調整することで、各矯正ピン41の下端の鉛直方向位置を変更することが可能である。これにより、各矯正ピン41下端のZ方向位置を揃えることができ、また種々の厚さの基板Sに対し適切な矯正を施すことが可能になる。
【0027】
チャンバ10の底板部12には、排気用貫通孔121およびパージ用貫通孔122が設けられている。このうち排気用貫通孔121には、排気部50の排気用配管51が接続されている。また、パージ用貫通孔122には、排気部50のパージ用配管52が接続されている。排気用配管51は、排気用バルブ53およびポンプ54を介して図示しない排気ラインに接続されている。また、パージ用配管52は、パージ用バルブ55を介して図示しないパージ用ガス源に接続されている。
【0028】
排気部50は制御部90の雰囲気制御部97により制御される。具体的には、雰囲気制御部97からの制御信号に応じて排気用バルブ53およびポンプ54が作動することで、チャンバ10内の気体が排気され、処理空間SPが減圧される。また、雰囲気制御部97からの制御信号に応じてパージ用バルブ53が作動することで、外部のガス源からパージ用ガスが処理空間SPに導入される。このように、雰囲気制御部97からの制御信号に応じて排気部50が作動することで、処理空間SP内の雰囲気が制御される。
【0029】
カバー部11の上面112には上部ヒータ16が設けられている。上部ヒータ16は、制御部90の上部ヒータ制御部96からの電力供給を受けて昇温し、カバー部11の天板を加熱する。必要に応じカバー部11を加熱しておくことで、塗布膜Fから揮発した成分が冷たいカバー部11に触れて析出し基板Sに落下するのを防止することができる。
【0030】
また、底板部12の下面には下部ヒータ15が取り付けられている。下部ヒータ15は、制御部90の下部ヒータ制御部95からの電力供給を受けて昇温し、底板部12を加熱する。詳しくは後述するが、下部ヒータ15は、底板部12を介して基板Sの周縁部を下方から補助的に加熱することで、基板Sの温度ムラを低減する機能を有するものである。
【0031】
図2はチャンバへの基板の搬入時における各部の動作を模式的に示す図である。前述したように、この基板処理装置1では、チャンバ10を構成するカバー部11が上方へ退避した状態で外部から基板Sを受け入れることができる。具体的には、
図2(a)に示すように、チャンバ駆動部93がカバー部11を上方に移動させることで、カバー部11と底板部12とを上下方向に大きく離隔させることができる。
【0032】
この状態で、側方から基板Sの搬入を受け付けることができる。すなわち、基板Sが、外部の搬送ロボットに設けられたハンドHに載置された状態で、カバー部11と底板部12との隙間を通して基板処理装置1に搬入されてくる。このとき、ハンドHとの干渉を避けるために、リフトピン32は下部位置に下降していることが好ましい。
【0033】
基板Sが所定位置まで移送された段階で、
図2(b)に示すように、リフトピン32が上昇することで基板Sの下面Sbに当接し、これによりハンドHからリフトピン32へ基板Sが受け渡される。受け渡し後、ハンドHが側方へ退避し、
図2(b)に示すように、リフトピン32が下部位置まで下降することで、基板Sがホットプレート20に対し所定のギャップを隔てた状態で水平支持される。
【0034】
この状態から、
図2(c)に矢印で示すようにカバー部11が下降してくることによって、
図1に示すように、カバー部11と底板部12とがシール部材13を介して結合されることで処理空間SPが閉塞された状態が出現する。このとき、基板Sの上面Saの高さに応じて調整された矯正ピン41が基板Sに当接することにより、基板Sの反りが矯正される。また、上記と逆の動作により、チャンバ10から基板Sを搬出することが可能である。
【0035】
図3はリフトピンおよび矯正ピンの配置を示す図である。
図3(a)は平面視における基板Sとリフトピン32および矯正ピン41との位置関係を示している。より具体的には、水平姿勢で支持される基板Sに対し下面側からリフトピン32が当接する位置が白丸印で示されている。また、基板Sの上面側から矯正ピン41が当接する位置がハッチング付きの丸印で示されている。この図に示すように、複数のリフトピン32は、基板Sによる荷重を分散させつつ基板Sを支持するために、一定ピッチで分散配置されている。一方、このようにリフトピン32が配置された領域Rpよりも外側に、複数の矯正ピン41が一定ピッチで配列されている。したがって、矯正ピン41はリフトピン32が当接する位置よりも外側で基板Sに当接する。なお、領域Rpにおけるリフトピン32の配置および領域Rpの外側における矯正ピン41の配置は、この例に限定されるものではない。
【0036】
上記のようにする理由は以下の通りである。本実施形態の基板処理装置1で処理に供される基板Sは、例えばガラス基板の上面に半導体回路等のデバイスが積層されたものである。このような基板では、各材料の熱膨張率の違いに起因して、
図3(b)に示すように基板Sの周縁部が上向きに反り返り、基板Sが全体として下に凸の曲面をなしているケースが多く見られる。
【0037】
このような場合、リフトピン32により下方から基板Sを支持するだけでは、基板Sの反りが維持され、結果として、ホットプレート20との間のギャップが基板Sの周縁部において中央部よりも大きくなる。このことは、基板Sの周縁部において、熱源であるホットプレート20との距離が大きくなり加熱が不十分になるという不具合を引き起こす。リフトピン32により下方から支持される領域Rpよりも外側において矯正ピン42が基板Sの上面に当接することで、
図3(b)に点線で示したように、基板Sの周縁部における反りを上方から押さえて基板Sを平面状態に近づけることが可能となる。
【0038】
前述した特許文献1に記載の技術のように、塗布膜を事前に減圧することで溶剤成分を部分的に揮発させた状態で行う加熱乾燥処理では、塗布膜の硬化がある程度進行しているため、このような加熱ムラが完全乾燥後の塗布膜の品質に与える影響は比較的小さい。一方、本実施形態のように、塗布膜が未乾燥の状態で基板を受け入れる加熱減圧乾燥処理においては、液状の塗布膜に対しムラのある加熱が行われることによる膜質のばらつきはより大きくなる。そのため、基板Sの反りを矯正することで加熱ムラを低減するための上記のような方策は特に効果的である。
【0039】
基板Sの周縁部における加熱不足を解消することを目的として、本実施形態の基板処理装置1ではさらに、チャンバ10の底板部12に下部ヒータ15(
図1)を配置している。下部ヒータ15は、底板部12を加熱することで、ホットプレート20内の内部ヒータによる基板Sの加熱に加え、補助的に基板Sを加熱しようとするものである。
【0040】
内部ヒータの発熱によりホットプレート20を昇温させる場合、ホットプレート20の中央部に比して、特に熱が外部へ逃げやすい周縁部で温度が十分に上がらないことがあり得る。そのため、基板Sの全域においてホットプレート20との距離を一定に保つことができたとしても、基板Sの周縁部で十分な加熱が得られないという加熱ムラが生じ得る。基板Sが矩形である場合、特にその四隅の近傍において加熱不足が生じやすい。
【0041】
ホットプレート20上で温度検出点を増やしたりヒータの発熱パターンを工夫したりすることによる改善の余地があるが、制御点同士の干渉によって却って温度が安定しないということも起こり得る。この問題に対応するために、この基板処理装置1では、基板Sの周縁部を選択的に加熱することで中央部との温度差を解消する下部ヒータ15が用いられている。
【0042】
図4は下部ヒータの配置例を示す図である。
図4(a)および
図4(b)に示すように、下部ヒータ15は、底板部12の下面のうち、その上方に配置される基板Sの周縁部に対応する位置に配置されている。具体的には、
図4(a)に示す例においては、下部ヒータ15は、4つの発熱体15a~15dを有しており、それぞれの発熱体15a~15dは、基板Sの4つの頂点に対応して、各頂点の直下位置およびその周辺領域をカバーするように配置されている。一方、
図4(b)に示す例では、基板Sの周縁部に当たる4つの辺の直下位置を含む周辺領域をカバーするように、矩形環状に形成された下部ヒータ15が設けられている。
【0043】
これらの構成では、必要に応じて下部ヒータ15に通電することにより、基板Sの中央部に比して温度が低くなりがちである基板Sの周縁部を、下部ヒータ15により温められた底板部12からの輻射熱によって直接的に、あるいは該輻射熱によりホットプレート20の周縁部が温められることによって間接的に加熱することが可能である。こうすることで、基板Sの全域において塗布膜Fの乾燥を均一に進行させることができ、乾燥後の塗布膜Fの品質を一様かつ良好なものとすることが可能となる。
【0044】
下部ヒータ15から発生するパーティクル等の汚染物質が基板Sに付着するのを防止するために、下部ヒータ15は基板Sよりも下方に配置されることが望ましい。このことは内部ヒータについても同様であるが、基板Sの加熱主体である内部ヒータ(具体的にはこれを内蔵するホットプレート20)についてはチャンバ10内で基板Sと近接させて配置することが必要である。
【0045】
一方、下部ヒータ15は基板Sの周縁部のみを補助的に加熱するものであるため、基板Sに近接して配置する必要はない。この実施形態のように、チャンバ10の外側、例えば底板部12の下面に設けることも可能である。このようにホットプレート20と下部ヒータ15とを離隔配置することで、それぞれの温度制御が干渉して却って温度分布が不安定になるのを未然に防止することが可能である。ただし、十分な加熱効果を得るために、下部ヒータ15の設定目標温度は内部ヒータのそれよりも高くすることが望ましい。
【0046】
図5はこの基板処理装置による加熱減圧乾燥処理の流れを示すフローチャートである。この処理は、制御部90のCPU91が予め準備された制御プログラムを実行して装置各部に所定の動作を行わせることにより実現される。予め、ホットプレート20が所定の温度に昇温されている(ステップS101)。また、上部ヒータ16および下部ヒータ15においても、必要に応じた昇温制御がなされる。
【0047】
そして、リフトピン32が下部位置に位置決めされ、カバー部11が上方に移動し開状態とされて(ステップS102)、基板Sの受け入れが可能な状態となる。この状態で、外部の搬送ロボットにより未処理の(すなわち未乾燥の塗布膜Fを担持した)基板Sが搬入され、リフトピン32が上部位置へ上昇することで、搬送ロボットのハンドHから基板Sを受け取る(ステップS103)。なお、基板Sの搬入および搬出は搬送ロボットによるものに限定されず、水平姿勢での搬送が可能な適宜の搬送機構を用いた任意の方法であってよい。
【0048】
搬送ロボットが退避しリフトピン32が下部位置へ下降することで(ステップS104)、基板Sは処理のための位置、つまり予め昇温されたホットプレート20から所定のギャップを隔てた上方位置に位置決めされる。さらにカバー部11が下降して処理空間SPを閉塞するとともに、カバー部11に取り付けられた矯正ピン41が基板Sの上面Saに当接して押圧することにより、基板Sの反りを矯正する(ステップS105)。
【0049】
次に、排気部50が作動して処理空間SPを減圧する(ステップS106)。基板Sが収容された処理空間SPを減圧することで、加熱と相俟って塗布膜F中の溶剤成分の揮発が促進され、塗布膜Fの乾燥が進行する。このとき、下部ヒータ15が基板Sの周縁部を加熱することにより、基板S上で均一に乾燥を進行させることができる。
【0050】
基板Sの加熱および周囲空間の減圧を所定時間継続して実行した後(ステップS107)、排気部50が排気を停止し、代わってパージ用ガスを導入することで(ステップS108)、処理空間SPの減圧状態は解除される。そして、カバー部11が上方に移動することで処理空間SP内の基板Sが外部空間に開放され(ステップS109)、リフトピン32が上昇して基板Sをホットプレート20から上方に退避させてから(ステップS110)、外部の搬送ロボットを受け入れることにより乾燥処理後の基板Sが外部へ搬出される(ステップS111)。
【0051】
処理すべき次の基板Sがある場合には(ステップS112においてYES)、ステップS102に戻って新たな基板Sを受け入れて上記と同様の処理が行われる。一方、新たな基板Sがなければ(ステップS112においてNO)、所定の終了動作を経て処理を終了させることができる。
【0052】
以上のように、本実施形態の基板処理装置1は、未乾燥の塗布膜Fが形成された基板Sをチャンバ10内に受け入れて、チャンバ10内で塗布膜Fに対し加熱減圧乾燥処理を実行する。この場合において、基板Sの下面Sb側にリフトピン32を当接させる一方、上面Sa側に矯正ピン41を当接させることにより、基板Sの反りを矯正し平面状態に近づけることができる。これにより、基板Sが局所的にホットプレート20から離間することによる加熱ムラに起因する、乾燥後の塗布膜Fの品質ばらつきを小さくすることが可能である。
【0053】
また、基板Sの下方に、基板Sの周縁部を補助的に加熱する下部ヒータ15が設けられているため、基板Sの周縁部と中央部との間で温度差が生じるのを抑制し、加熱ムラに起因する塗布膜Fの品質ばらつきをさらに低減することが可能となる。
【0054】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば上記実施形態では、基板Sの中央部の領域Rpに16本のリフトピン32を配置する一方、その外側を取り囲むように16本の矯正ピン41を配置している。しかしながら、これらの配置はその一例を示したものであり、配置についてはこれ以外にも適宜改変して適用することが可能である。
【0055】
また、上記実施形態の矯正ピン41は、リフトピン32よりも外側で基板Sに当接する。しかしながら、これに限定されるものではなく、例えば最外側のリフトピンと同じ位置で、つまり領域Rpの外縁に対応する位置で基板に当接するように、矯正ピンが配置されてもよい。
【0056】
また、上記実施形態のリフトピン32および矯正ピン41はいずれも、小さな先端部が基板Sに当接する構造を有するものである。しかしながら、基板Sを支持するために下面に当接する部材および反りを矯正するために上面に当接する部材の少なくとも一方が、例えば棒状あるいは平板状を有しピン状の部材よりも広い面積で基板に当接するものであってもよい。
【0057】
また、上記実施形態におけるチャンバ10は、平板状の底板部12の上部を、下側が開口するカバー部11により覆うことで処理空間SPを形成するものである。これに代えて、例えば上部が開口する箱型の筐体の上部を平板状のカバー部材が閉塞する構造であってもよい。
【0058】
また、上記実施形態における上部ヒータ16および下部ヒータ15については、必要に応じて通電されればよく、これらの少なくとも一方を使用しない乾燥処理も実施可能である。
【0059】
また、上記実施形態は矩形基板を処理対象とするものであり、ホットプレートの形状やリフトピン、矯正ピンの配置も矩形基板を前提とするものとなっている。しかしながら、本発明の適用対象となる基板は矩形のものに限定されない。例えば円形基板や外周に凹凸のある異形基板であっても、各部の形状や配置を適宜改変することにより、同様の処理を実行することが可能である。
【0060】
以上説明したように、この実施形態の基板処理装置1においては、リフトピン32が本発明の「支持部」として機能し、矯正ピン41が本発明の「矯正部材」として機能している。また、ホットプレート20が本発明の「加熱部」として機能する一方、下部ヒータ15が「第2加熱部」として機能している。また、排気部50が本発明の「減圧部」として機能している。また、カバー部11が本発明の「上側ユニット」に相当する一方、底板部12が「下側ユニット」に相当し、これらが一体として本発明の「チャンバ」を形成している。さらに、調整ナット42が、本発明の「調整機構」として機能している。
【0061】
以上、具体的な実施形態を例示して説明してきたように、本発明において、加熱部は、上面が基板と同じまたはこれよりも大きな平面サイズを有し所定温度に昇温制御されるホットプレートを有し、基板をホットプレートの上面に対し所定のギャップを隔てて対向させる構成であってもよい。このような構成によれば、昇温制御されたホットプレートからの輻射熱により、基板Sを均一に加熱することができる。
【0062】
また例えば、チャンバ内で支持された基板よりも低い位置に、基板の周縁部を加熱する第2加熱部が設けられてもよい。このような構成によれば、中央部に比べて温度が低くなりやすい基板の周縁部を第2加熱部で加熱することで、中央部との温度差を解消し均一な乾燥処理を実行することが可能となる。
【0063】
この場合において、第2加熱部は、チャンバの底部を加熱するものであってもよい。このような構成によれば、基板を直接的に加熱する加熱部から遠ざけて第2加熱部を配置し、第2加熱部はチャンバの底部を介して間接的に基板を加熱することとなる。このことは、両加熱部における温度制御が互いに干渉して基板における温度分布が却って複雑になったり不安定になったりするのを防止することができる。
【0064】
また例えば、支持部が基板を支持しながら昇降移動する構成であってもよい。このような構成によれば、加熱部に対する基板の距離を変更することができるため、例えばチャンバに対する基板の搬入および搬出のための作業を容易にすることができる。
【0065】
また例えば、チャンバは、支持部および加熱部が設けられた下側ユニットと、矯正部材が設けられた上側ユニットとを有し、上側ユニットと下側ユニットとが係合して下側ユニットの上部を上側ユニットが閉塞することにより処理空間を形成するものであり、さらに、上側ユニットと下側ユニットとが係合すると、矯正部材の下端が支持部に支持される基板の上面の鉛直方向位置に対応する高さに位置決めされる構成であってもよい。このような構成によれば、上側ユニットと下側ユニットとが係合して処理空間を形成する動作自体が、矯正部材によって基板を押さえ反りを矯正する動作を兼ねることになり、処理時間を短くすることができる。
【0066】
この場合において、上側ユニットと下側ユニットとが係合したときの矯正部材の下端の鉛直方向を調整する調整機構がさらに設けられてもよい。これにより、厚さが異なる基板に対して同じ装置で処理を行うことが可能になる。言い換えれば、この調整機構を備えることにより基板処理装置は種々の厚さの基板に対応することが可能となる。
【0067】
また例えば、矯正部材は、基板の上面周縁部に当接する構成であってもよい。より具体的には、矯正部材は、平面視において、基板のうち支持部により支持される領域よりも外側で基板に当接するものであってもよい。このような構成によれば、周縁部が上向きに反り返った基板を平坦に矯正することができる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
この発明は、表面に塗布液を塗布してこれを乾燥させることで基板表面に塗布膜の層を形成する基板処理プロセス全般に適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
1 基板処理装置
10 チャンバ
11 カバー部(上側ユニット)
12 底板部(下側ユニット)
15 下部ヒータ(第2加熱部)
20 ホットプレート(加熱部)
32 リフトピン(支持部)
41 矯正ピン(矯正部材)
42 調整ナット(調整機構)
50 排気部(減圧部)
F 塗布膜
S 基板
SP 処理空間