(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】Wee-1キナーゼ阻害剤として有用なピリミドピリミジノン
(51)【国際特許分類】
C07D 487/04 20060101AFI20230314BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230314BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20230314BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230314BHJP
A61K 31/519 20060101ALI20230314BHJP
A61P 35/02 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
C07D487/04 148
C07D487/04 CSP
A61P35/00
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K31/519
A61P35/02
A61P43/00 111
(21)【出願番号】P 2019548963
(86)(22)【出願日】2018-03-12
(86)【国際出願番号】 GB2018050620
(87)【国際公開番号】W WO2018162932
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2021-03-11
(32)【優先日】2017-03-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】508362789
【氏名又は名称】アルマック・ディスカバリー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Almac Discovery Limited
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヒューイット,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】バーカンプ,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ウィルキンソン,アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】ミエル,ユーグ
(72)【発明者】
【氏名】オダウド,コリン
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-500335(JP,A)
【文献】特表2016-516763(JP,A)
【文献】特表2015-511245(JP,A)
【文献】特表2012-511501(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 487/04
A61P 35/00
A61K 45/00
A61P 43/00
A61K 31/519
A61P 35/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
を有する化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはN-オキシド誘導体。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはN-オキシド誘導体、及び少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項3】
1種以上のさらなる医薬活性剤を含む、請求項2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
療法に使用される、請求項1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはN-オキシド誘導
体。
【請求項5】
医薬として使用される、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはN-オキシド誘導
体。
【請求項6】
がんの治療又は予防に使用される、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはN-オキシド誘導
体。
【請求項7】
がんを治療又は予防するための医薬の製造のための、請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはN-オキシド誘導
体の使用。
【請求項8】
請求項1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはN-オキシド誘導
体を含む、ヒト又は動物の患者におけるがんを治療又は予防するための医薬。
【請求項9】
療法に使用される、請求項2又は3に記載の医薬組成物。
【請求項10】
医薬として使用される、請求項2若しくは3に記載の医薬組成物。
【請求項11】
がんの治療又は予防に使用される、請求項2若しくは3に記載の医薬組成物。
【請求項12】
がんを治療又は予防するための医薬の製造のための、請求項2若しくは3に記載の医薬組成物の使用。
【請求項13】
請求項2若しくは請求項3に記載の医薬組成物を含む、ヒト又は動物の患者におけるがんを治療又は予防するための医薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Wee-1キナーゼの活性の阻害剤として有用な化合物に関する。本発明はまた、この化合物を含む医薬組成物、並びにこの化合物をがんの治療に使用する方法及びがんを治療する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞は日々絶えず脅威にさらされており、その結果DNA内に多数の損傷が生成する。これらの損傷は修復されないと突然変異又は細胞死に至る可能性があり、したがって損傷が検出され、修復されてDNAの完全性を維持するのを確実にする複雑なシグナル伝達網が存在する。
【0003】
ゲノムの完全性を維持する上で鍵となる一連の事象は、DNAの傷害の検出から開始される。細胞周期のチェックポイントは、細胞を有糸分裂へと進ませる前に細胞周期を停止し、損傷の修復を可能にするように設計されている。
【0004】
2つの重要なチェックポイントが確認されており、1つはG1期の終わりにあり、2つめはG2にあって、協力してあらゆる損傷が確実に同定され修復されるように働く。ヒトのがんの約50%で、G1チェックポイントは腫瘍抑制遺伝子TP53にある変異のために機能していない。しかし、G2チェックポイントは変異することがほとんどなく、しばしばがん細胞で活性化されることが見出されている。がん細胞はこれを利用してDNA傷害物質及び放射線を含む治療法に対する耐性を付与する。
【0005】
3種のキナーゼ、すなわちChk1、Chk2及びWee-1がG2チェックポイントの重要なレギュレーターとして同定されている。これらのキナーゼに対する阻害剤が現在臨床試験で評価されている。
【0006】
Wee-1は、cdc2/サイクリンBキナーゼ複合体のリン酸化を触媒することによりG2/Mチェックポイントで有糸分裂への参入を負に調節する核内チロシンキナーゼである。リン酸化はチロシン-15残基で起こり、cdc2/サイクリンB複合体の不活性化につながり、最終的に有糸分裂を抑制する。Wee-1の機能は、報告されているChk1及び2によるWee-1の活性化と同様に、セリン-216でのcdc25のリン酸化及び不活性化によるChk1及びChk2の機能と密接に関連している(Ashwell, 2012, DNA Repair in Cancer Therapy, DOI: 10.1016/B978-0-12-384999-1.10010-1)。
【0007】
Wee-1はChkファミリーの下流であり、損傷が検出されると細胞が有糸分裂に参入するのを防止するので、チェックポイントシグナル伝達カスケードの重大な成分である(Do et al., Cell Cycle 2013 12 (19) 3159-3164)。
【0008】
代謝拮抗物質、プラチナ製剤、トポイソメラーゼ阻害剤及びアルキル化剤を含む一般に投与される抗がん性化合物はDNA傷害を誘発する。しかし、その効果は過度の毒性、耐性及び腫瘍選択性の欠如のために限定されている。これらの作用物質と併用して腫瘍細胞内でDNA修復を選択的に抑制するように作用する化合物は極めて有益であると予想される。腫瘍抑制遺伝子TP53は腫瘍細胞株で一般に変異するので、G2チェックポイントを無効にするWee-1キナーゼ阻害剤の投与はDNA傷害物質に対する増大した感受性をもたらし得る。この可能性は、Wee-1活性のサイレンシングがG2停止の無効化のためにHeLa細胞をドキソルビシンに対して感受性にするのに充分であったとして報告されていた。それに反して、正常な乳房上皮では、十分に有能なp53タンパク質のために、Wee-1機能の除去はドキソルビシン単独と比較してほとんど追加の効果がなかった(Wang et al.,2004, Cancer Biology and Therapy, 3(3), 305-313)。
【0009】
腫瘍抑制遺伝子TP53に変異を持つ細胞株は、Wee-1小分子阻害剤と同時投与されたときDNA傷害物質に対して増大した感受性を有していたことが報告されている。小分子阻害剤をゲムシタビン、5-フルオロウラシル、カルボプラチン、シスプラチン(Hirai et al 2010, Cancer Biology & Therapy 9:7, 514-522)、シタラビン(Tibes et al., 2012, Blood, 119(12), 2863-2872)、Chk-1阻害剤(Carrasa et al., 2012 Cell Cycle 1:11(13):2507-2517、Russell et al., 2013 Cancer Res. 15; 73 (2) 776-784)及びSrc阻害剤(Cozzi et al., 2012, Cell Cycle 11(5), 1029-1039)と組み合わせたときの相乗的なin vitro及びin vivo効果が報告されている。TP53状態とは無関係の単剤アポトーシス効果が、肉腫細胞株及び患者由来の肉腫試料で報告されており(Kreahling et al., 2012, Mol. Cancer Ther., 11(1), 174-182)、in vivoのがん細胞株のパネルで効果が立証されている(Guertin et al., 2013 Mol Cancer Ther., 12 (8) 1442-1452)。
【0010】
放射線照射は、DNA傷害の誘発を介して、G2で細胞を停止させ、DNA修復のための時間を与えるcdc2のTyr15及びThr14残基のリン酸化を増大し、放射線抵抗性の表現型をもたらすことが知られている。小分子阻害剤によるWee-1活性の阻害は(Wang et al., 2004, Cancer Biology and Therapy 3(3), 305-313)、(Caretti et al., 2013 Mol. Cancer Ther. 12 (2) 141-150)、CDC2リン酸化、G2チェックポイントの無効化及び放射線増感の低下に至り、その効果はp53突然変異細胞株でより明白である。
【0011】
Wee-1の過剰発現は悪い臨床成績と相関があることが黒色腫で報告されており(Magnussen et al., 2012 PLoS One 7; (6)e38254)、バイオマーカーとして、及び標的療法として重要な役割を有する可能性があることを示している。
【0012】
キナーゼ阻害効果、例えばWee-1キナーゼ阻害効果を有する化合物は、国際公開第2007/126122号、米国特許出願公開第2010/0063024号、欧州特許出願公開第2,213,673号、国際公開第2008/133866号、米国特許出願公開第2007/0254892号、国際公開第2012/161812号、国際公開第2013/126656号、米国特許出願公開第2013/0102590号、国際公開第2013/059485号及び国際公開第2013/013031号に記載されている。
【0013】
国際公開第2010/067886号、国際公開第2010/067888号、米国特許出願公開第2011/0135601号、欧州特許出願公開第2,168,966号、国際公開第2005/090344号、米国特許出願公開第2009/0048277号及びBioorg. Med. Chem. Lett., 2005, 15, 1931-1935は、キナーゼ阻害効果を有するジヒドロピリミドピリミジン、ピリドピリミジノン及びピリドピリミジン誘導体のような様々な化合物を記載している。特に、国際公開第2005/090344号の化合物はタンパク質キナーゼ阻害剤、特にSrcファミリーのチロシンキナーゼ阻害剤としての活性を示すとされている。Bioorg. Med. Chem. Lett., 2005, 15, p1931-1935に記載されている化合物はWee-1より10~100倍強力なc-Srcの阻害剤であるとされており、6-フェニル環上の置換基の変動はこの好ましさを著しく変えることはない。5-アルキル置換された類似体は一般にWee-1選択的であるが、結合能が損なわれるとされている。
【0014】
国際公開第2013/013031号は、Wee-1のようなキナーゼを阻害するために有用で、がんのような疾患を治療する方法において有用であるとされるWee-1キナーゼのピリダジノ[4,5-d]ピリミジン-(6H)-オン阻害剤を記載している。国際公開第2013/013031号の化合物は環のカルボニル基に対して「3位」に窒素原子を有している。
【0015】
米国特許出願公開第2013/0018045号はWee-1のようなキナーゼを阻害するのに有用な様々な三環式スルホンアミド化合物及びがんのような疾患を治療する方法を記載している。米国特許出願公開第2013/0018045号の化合物は環上の「1位」にスルホンアミド基を有しており、「3及び4位」の原子は縮合したアリール又はヘテロアリール環(「A」)の一部を形成する。
【0016】
国際公開第2015/092431号は、Wee-1キナーゼの活性の阻害剤として有用な化合物、これらの化合物を含む医薬組成物、及びがんの治療におけるこれらの化合物の使用に関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】国際公開第2007/126122号
【文献】米国特許出願公開第2010/0063024号
【文献】欧州特許出願公開第2,213,673号
【文献】国際公開第2008/133866号
【文献】米国特許出願公開第2007/0254892号
【文献】国際公開第2012/161812号
【文献】国際公開第2013/126656号
【文献】米国特許出願公開第2013/0102590号
【文献】国際公開第2013/059485号
【文献】国際公開第2013/013031号
【文献】国際公開第2010/067886号
【文献】国際公開第2010/067888号
【文献】米国特許出願公開第2011/0135601号
【文献】欧州特許出願公開第2,168,966号
【文献】国際公開第2005/090344号
【文献】米国特許出願公開第2009/0048277号
【文献】米国特許出願公開第2013/0018045号
【文献】国際公開第2015/092431号
【非特許文献】
【0018】
【文献】Ashwell, 2012, DNA Repair in Cancer Therapy, DOI: 10.1016/B978-0-12-384999-1.10010-1
【文献】Do et al., Cell Cycle 2013 12 (19) 3159-3164
【文献】Wang et al.,2004, Cancer Biology and Therapy, 3(3), 305-313
【文献】Hirai et al 2010, Cancer Biology & Therapy 9:7, 514-522
【文献】Tibes et al., 2012, Blood, 119(12), 2863-2872
【文献】Carrasa et al., 2012 Cell Cycle 1:11(13):2507-2517
【文献】Russell et al., 2013 Cancer Res. 15; 73 (2) 776-784
【文献】Cozzi et al., 2012, Cell Cycle 11(5), 1029-1039
【文献】Kreahling et al., 2012, Mol. Cancer Ther., 11(1), 174-182
【文献】Guertin et al., 2013 Mol Cancer Ther., 12 (8) 1442-1452
【文献】Caretti et al., 2013 Mol. Cancer Ther. 12 (2) 141-150
【文献】Magnussen et al., 2012 PLoS One 7; (6)e38254
【文献】Bioorg. Med. Chem. Lett., 2005, 15, 1931-1935
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明の1つの目的は、従来技術の欠点の少なくとも幾つかを克服すること、又は商業的に有用な代替物を提供することである。
【0020】
本発明のさらなる目的は、公知の化合物又は組成物と比較して高まった又は同様なキナーゼ-阻害効果を有する化合物を提供することである。
【0021】
本発明のさらなる目的は、公知の化合物又は組成物と比較して、改善されたpCDC2能を有する化合物を提供することである。
【0022】
本発明のさらなる目的は、公知の化合物又は組成物と比較して、改善された又は匹敵する動的溶解度を有する化合物を提供することである。
【0023】
本発明のさらなる目的は、公知の化合物又は組成物と比較して、改善された又は匹敵する透過性を有する化合物を提供することである。
【0024】
本発明のさらなる目的は、公知の化合物又は組成物と比較して、改善された代謝安定性を有する化合物を提供することである。
【0025】
本発明のさらなる目的は、公知の化合物又は組成物と比較して経口投与後の高まった又は同様な血漿及び/又は腫瘍曝露を有する化合物を提供することである。
【0026】
本発明のさらなる目的は、公知の化合物又は組成物と比較して高まった又は同様な生物学的利用能を有する化合物を提供することである。
【0027】
本発明のさらなる目的は、脳腫瘍及び転移を標的とするために、公知の化合物又は組成物と比較して高まった又は同様な脳浸透を有する化合物を提供することである。
【0028】
本発明のさらなる目的は、公知の化合物又は組成物と比較して反応性代謝産物のリスクを低減した化合物を提供することである。
【0029】
本発明のさらなる目的は、公知の化合物又は組成物と比較して、CYP3Aファミリーの酵素により代謝される併用薬との相互作用のリスクを低減した化合物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0030】
第1の態様において本発明は、式(I):
【化1】
の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはN-オキシド誘導体を提供する。
【0031】
本明細書中に定義されている各々の態様又は実施形態は、そうではないことが明示されない限り、任意の他の態様又は実施形態と組み合わせることができる。特に、好ましい又は有利であるとして示されているあらゆる特徴が、好ましい又は有利であるとして示されている1つ以上の他の任意の特徴と組み合わせることができる。
【0032】
第2の態様において本発明は、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはN-オキシド誘導体、及び少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物を提供する。
【0033】
第3の態様において本発明は、治療に使用するための、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはN-オキシド誘導体、又は本明細書に記載されている医薬組成物を提供する。
【0034】
第4の態様において本発明は、医薬として使用される、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはN-オキシド誘導体、又は本明細書に記載されている医薬組成物を提供する。
【0035】
第5の態様において本発明は、がんの治療又は予防に使用される、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはN-オキシド誘導体、又は本明細書に記載されている医薬組成物を提供する。
【0036】
第6の態様において本発明は、がんを治療又は予防するための医薬の製造のための、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはN-オキシド誘導体、又は本明細書に記載されている医薬組成物の使用を提供する。
【0037】
第7の態様において本発明は、式(I)の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはN-オキシド誘導体、又は本明細書に記載されている医薬組成物の有効量をそれを必要とする患者に投与することを含む、ヒト又は動物の患者のがんを治療又は予防する方法を提供する。
【0038】
本発明に係る化合物の他の好ましい実施形態は本明細書を通じて、特に実施例で明らかになる。
【0039】
本発明者は、驚くべきことに、本発明の化合物が、公知の化合物又は組成物と比較して改善された又は同様なキナーゼ-阻害効果を示すことを見出した。特に、本発明の化合物は、好ましいことに、公知の化合物又は組成物と比較して改善された又は同様なWee-1キナーゼ-阻害効果を示す。
【0040】
本発明者は、驚くべきことに、本発明の化合物が、公知の化合物又は組成物と比較して改善された又は同様なpCDC2能を示すことを見出した。
【0041】
本発明者は、驚くべきことに、本発明の化合物が、公知の化合物又は組成物と比較して改善された又は同様な動的溶解度を示すことを見出した。
【0042】
本発明者は、驚くべきことに、本発明の化合物が、公知の化合物又は組成物と比較して改善された又は同様な透過性を示すことを見出した。
【0043】
本発明者は、驚くべきことに、本発明の化合物が、公知の化合物又は組成物と比較して改善された又は同様な代謝安定性を示すことを見出した。
【0044】
本発明者は、驚くべきことに、本発明の化合物が、公知の化合物又は組成物と比較して経口投与後の高まった又は同様な曝露を示すことを見出した。
【0045】
本発明者は、驚くべきことに、本発明の化合物が、公知の化合物又は組成物と比較して高まった又は同様な生物学的利用能を示すことを見出した。
【0046】
本発明者は、驚くべきことに、本明細書に記載されている化合物が、従来技術で知られているものと比較して秀でた物理化学的性質を示し得ることを見出した。
【0047】
理論により縛られることは望まないが、本発明の化合物は、その特異的な化学構造に起因して、上述の有利な効果を示す傾向があると考えられる。
【発明を実施するための形態】
【0048】
本明細書中で他に定義されない限り、本発明に関連して使用される科学及び技術用語は当業者により一般に理解されている意味を有する。これらの用語の意味及び範囲は明らかなはずであるが、何らかの潜在的な曖昧さがある場合には、本明細書中に与えられる定義があらゆる辞書又は付帯的な定義に優先する。
【0049】
本発明の化合物は互変異性を有し得る。各々の互変異性型は本発明の範囲内に入ることが意図されている。
【0050】
さらに、本発明の化合物はプロドラッグとして提供され得る。プロドラッグは、一般に、in vivoで、1つの形態から本明細書に記載されている薬物の活性形態に変換される。例えば、プロドラッグは、-N-H基を、加水分解の際に-NHを与える加水分解可能な基で保護することにより形成され得る。
【0051】
さらに、本明細書に記載されている元素は普遍的な同位体であっても普遍的な同位体以外の同位体であってもよいものと理解される。例えば、1種以上の水素原子は1H、2H(重水素)又は3H(三重水素)であり得る。
【0052】
本発明の化合物は、好ましいことに、その無水形態又はその脱溶媒和形態下でその遊離の塩基として存在するが、その薬学的に許容される塩の形態で、又は共結晶として、又は溶媒和物としても提供され得る。例えば、プロトン化されたアミン基を有する化合物が提供され得る。
【0053】
用語「薬学的に許容される塩」は、酸の塩基への添加により形成されるイオン性化合物を指す。この用語は、当業界で患者と接触して、例えばin vivoで使用するのに適していると考えられるような塩を指し、薬学的に許容される塩は一般にその非毒性、非刺激特性のために選択される。
【0054】
用語「共結晶」は、非イオン性の相互作用を含み得る多成分分子結晶を指す。
【0055】
薬学的に許容される塩及び共結晶は、イオン交換クロマトグラフィーにより、又は遊離の塩基若しくは酸性形態の化合物を化学量論量若しくは過剰の所望の塩形成性無機若しくは有機の酸若しくは塩基と1種以上の適切な溶媒中で反応させることにより、又はその化合物を、共結晶を形成することができる別の薬学的に許容される化合物と混合することにより、調製することができる。
【0056】
一般に患者と接触して使用するのに適していることが当業界で知られている塩には、無機及び/又は有機酸に由来する塩、例えば、臭化水素酸塩、塩化水素酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、硝酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシル酸塩、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩及び酒石酸塩が包含される。これらは、ナトリウム、カリウム、カルシウム及びマグネシウムのようなアルカリ及びアルカリ土類金属、並びにアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウムに基づく陽イオンを含み得る。好ましくは、適切な塩は塩酸塩又はクエン酸塩である。さらに、適切な薬学的に許容される塩を概観している多くの文献源(例えばIUPACにより発行された医薬品の塩のハンドブック)が参照される。
【0057】
本発明者は、本発明の化合物が、制限されることはないが、がん、特に(制限されることはないが)腫瘍抑制遺伝子TP53の不活性化に関連するがんを始めとする、障害のある細胞増殖に関連する医学的状態の治療に有用であることを発見した。化合物は、合成的又は状況的致死関係を利用する単剤として、並びに増大した複製ストレスに対する高まった感受性及び損傷した細胞周期進行を有するがんを含む疾患で、有用性及び活性を有し得る。本発明に係るWee1阻害剤はまた、遺伝毒性物質、放射線療法、標的化物質、及び制限されることはないが、免疫チェックポイント阻害剤を始めとする免疫調節物質との併用を含む併用療法で使用することもできる。
【0058】
例えば、がんには、噴門がん、肺がん、胃腸がん、泌尿生殖器がん、肝臓がん、骨がん、神経系がん、婦人科がん、血液がん、皮膚がん及び副腎がん、並びに、副腎腫瘍、胆管、膀胱、血液、骨及び結合組織、脳及び中枢神経系、乳房、子宮頸部、結腸及び直腸(結腸直腸)、子宮内膜、食道、胆嚢、頭部及び頸部、ホジキンリンパ腫、下咽頭、腎臓、喉頭部、白血病、肝臓、肺、リンパ腫、縦隔腫瘍、黒色腫(悪性黒色腫)、中皮腫、多発性骨髄腫、鼻腔、上咽頭、神経内分泌腫瘍、非ホジキンリンパ腫、口腔、食道、口咽頭、卵巣、膵臓、副鼻腔、副甲状腺、陰茎、脳下垂体腫瘍、前立腺、唾液腺、肉腫、皮膚、脊椎、胃、精巣、甲状腺、尿道、子宮、膣及び外陰部等のがんが包含される。好ましくは、がんは、結腸及び直腸(結腸直腸)がん、頭部及び頸部がん、肺がん、食道がん、卵巣がん並びに膵臓がんから選択される。より好ましくは、がんは結腸及び直腸(結腸直腸)がんである。或いは、好ましくは、がんは肺がん、より好ましくは非小細胞肺がんである。
【0059】
本発明の化合物はまた、上に記載した疾患、特にがんを治療する際に有用な医薬を製造するのにも有用である。
【0060】
本発明はさらに、本発明の化合物の有効量をそれを必要とする哺乳動物、好ましくはヒトに投与することを含む、Wee-1活性を阻害する方法に関する。
【0061】
本発明の化合物は、標準的な医薬品慣行に従って、単独で、又は薬学的に許容される担体、賦形剤又は希釈剤と組み合わせて医薬組成物として、ヒトを含む哺乳動物に投与し得る。化合物は、経口で、又は静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、直腸及び局所の投与経路を含めて非経口で投与することができる。
【0062】
本発明はまた、がんの治療における、第2の又はさらなる薬物と組み合わせた本発明の化合物の使用をその範囲内に含む。第2の又はさらなる薬物は、がんの治療において当業界で既に知られている薬物でよい。
【0063】
本発明はまた、放射線療法のステップを含む治療計画における本発明の化合物の使用も含む。放射線療法はx-線、γ-線、中性子、α-粒子、プロトン又は電子ビーム照射による治療の通常の方法でよい。本発明に含まれる化合物の同時投与は放射線療法の増強に至ることができ、したがって放射線増感剤として分類される。
【0064】
特に、がんはしばしば治療に耐性になる。耐性の発生は、例えばDNA傷害物質、放射線療法又は任意の他の形態の治療剤及び療法に耐性であることが知られているがんにおいて、本発明の化合物を含む薬物の組合せの投与によって遅延又は克服され得る。
【0065】
例えば、本発明の化合物と組み合わせて使用することができる薬物は、本発明の化合物が標的とする同じ又は類似の生物学的経路を標的とすることができるか、或いは異なる又は関係のない経路に作用することができる。
【0066】
治療しようとする疾患に応じて、様々な組合せ相手、例えば遺伝毒性物質、標的化物質及び免疫調節物質を本発明の化合物と共に同時投与することができる。第2の活性な成分としては、制限されることはないが、シクロホスファミド、イホスファミド、チオテパ、メルファラン、クロロエチルニトロソ尿素及びベンダムスチンを含むアルキル化剤、シスプラチン、オキサリプラチン、カルボプラチン及びサトラプラチンを含む白金誘導体、ビンカアルカロイド(ビンクリスチン、ビノレルビン及びビンブラスチン)、タキサン(パクリタキセル、ドセタキセル)、エポチロン並びにオーロラ及びポロ様キナーゼを含む有糸分裂キナーゼの阻害剤を含む抗有糸分裂剤、アントラサイクリン、エピポドフィロトキシン、カンプトセシン及びカンプトセシンの類似体を含むトポイソメラーゼ阻害剤、5-フルオロウラシル、カペシタビン、シタラビン、ゲムシタビン、6-メルカプトプリン、6-チオグアニン、フルダラビン、メトトレキセート及びペメトレキセドを含む代謝拮抗物質、標的療法、例えばイマチニブ、ゲフィチニブ、ソラフェニブ、スニチニブ、エルロチニブ、ダサチニブ、及びラパチニブを含むタンパク質キナーゼ阻害剤、ボルテゾミブを含むプロテアソーム阻害剤、バルプロエート及びSAHAを含むヒストンデアセチラーゼ阻害剤、CDK4/6、CDC7、CHK1及びCHK2を含む細胞周期及びチェックポイント阻害剤、制限されることはないが、PARP、DNA-PK、ATM、ATRの阻害剤を含むDNA修復調節物質、ベバシズマブを含む抗血管新生薬、トラスツズマブ、リツキシマブ、アレムツズマブ、トシツモマブ、セツキシマブ、パニツムマブを含むモノクローナル抗体、ゲムツズマブオゾガマイシン、イブリツモマブチウキセタンを含むモノクローナル抗体のコンジュゲート、抗エストロゲン(タモキシフェン、ラロキシフェン、アナストロゾール、レトロゾール、エキセメスタン)抗アンドロゲン(フルタミド、ビカルタミド)、黄体形成ホルモン類似体又はアンタゴニストを含むホルモン療法、ルタセラを含むペプチド受容体放射性核種療法、抗PD1又は抗PDL1、及びIDO阻害剤を含む免疫療法を挙げることができる。
【0067】
併用療法に関して、本発明の化合物は、上述したいずれかのような1種以上の標準的な治療薬と別々に、順次、同時に、一緒に投与してもよいし、又は年代順にずらしてもよい。
【0068】
本発明は、式(I):
【化2】
の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはN-オキシド誘導体を提供する。
【0069】
好ましくは、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはN-オキシド誘導体、及び少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤が提供される。
【0070】
適切な薬学的に許容される賦形剤は当業者には公知であると予想される。例えば、脂肪、水、生理食塩水、アルコール(例えば、エタノール)、グリセロール、ポリオール、水性グルコース溶液、増量剤、崩壊剤、結合剤、潤滑剤、湿潤剤、安定剤、乳化剤、分散剤、保存剤、甘味料、着色剤、調味剤又は芳香剤、濃縮剤、希釈剤、緩衝物質、溶媒又は可溶化剤、保存効果を得るための化学薬品、浸透圧を変化させるための塩、コーティング剤又は酸化防止剤、ラクトース若しくはグルコースのような糖類、トウモロコシ、コムギ若しくはコメのデンプン、ステアリン酸のような脂肪酸、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム若しくは無水リン酸カルシウムのような無機塩、ポリビニルピロリドン若しくはポリアルキレングリコールのような合成ポリマー、ステアリルアルコール若しくはベンジルアルコールのようなアルコール、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース若しくはヒドロキシプロピルメチルセルロースのような合成セルロース誘導体、並びにゼラチン、タルク、植物油及びアラビアゴムのような他の常用される添加剤である。
【0071】
好ましくは、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはN-オキシド誘導体、及び少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物が提供される。
【0072】
好ましくは、1種以上のさらなる医薬活性剤を含む、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはN-オキシド誘導体を含む医薬組成物が提供される。好ましくは、幾つかの実施形態において、医薬組成物は、例えば本明細書に記載されている併用療法として抗がん剤をさらに含む。そのような実施形態において、適切な抗がん剤は、遺伝毒性物質、標的化物質及び免疫調節物質の1種以上であり得る。
【0073】
好ましくは、治療に使用するための、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはN-オキシド誘導体、又は本明細書に記載されている医薬組成物が提供される。
【0074】
好ましくは、医薬として使用される、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはN-オキシド誘導体、又は本明細書に記載されている医薬組成物が提供される。
【0075】
好ましくは、がんを治療又は予防するのに使用される、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはN-オキシド誘導体、又は本明細書に記載されている医薬組成物が提供される。好ましくは、がんは、結腸及び直腸(結腸直腸)がん、頭部及び頸部がん、肺がん、食道がん、卵巣がん並びに膵臓がんから選択される。より好ましくは、がんは結腸及び直腸(結腸直腸)がんである。或いは、好ましくは、がんは肺がん、より好ましくは非小細胞肺がんである。
【0076】
好ましくは、がんを治療又は予防するための医薬の製造のための、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはN-オキシド誘導体、又は本明細書に記載されている医薬組成物の使用が提供される。好ましくは、がんは、結腸及び直腸(結腸直腸)がん、頭部及び頸部がん、肺がん、食道がん、卵巣がん並びに膵臓がんから選択される。より好ましくは、がんは結腸及び直腸(結腸直腸)がんである。或いは、好ましくは、がんは肺がん、より好ましくは非小細胞肺がんである。
【0077】
好ましくは、式(I)の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはN-オキシド誘導体、又は本明細書に記載されている医薬組成物の有効量を、それを必要とする患者に投与することを含む、ヒト又は動物の患者におけるがんを治療又は予防する方法が提供される。好ましくは、がんは、結腸及び直腸(結腸直腸)がん、頭部及び頸部がん、肺がん、食道がん、卵巣がん並びに膵臓がんから選択される。より好ましくは、がんは結腸及び直腸(結腸直腸)がんである。或いは、好ましくは、がんは肺がん、より好ましくは非小細胞肺がんである。
【0078】
好ましくは、本発明の化合物は、約0.1nM~約1nMのWee-1キナーゼに対するIC50値を有する。Wee-1キナーゼに対する化合物のIC50値を決定する方法は国際公開第2015/092431号に記載されている(350~351頁参照)。
【0079】
本開示又はその好ましい実施形態の要素を導入する際、冠詞「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」及び「前記」は前記要素が1以上存在することを意味するものである。用語「含む」、「包含する」及び「有する」は包括的であり、列挙した要素以外の追加の要素が存在し得ることを意味している。
【0080】
上記した詳細な記載は説明及び例示のために提供されており、添付の特許請求の範囲を限定する意図はない。本明細書に例示した現在好ましい実施形態における多くの変形が当業者には明らかであり、添付の特許請求の範囲及びその等価な範囲内に入る。
【0081】
実験セクション
略語
aq:水性、dba:ジベンジリデンアセトン、DCM:ジクロロメタン、DIPEA:ジイソプロピルエチルアミン(ヒューニッヒ塩基)、DMF:N,N-ジメチルホルムアミド、DMF:N,N-ジメチルホルムアミドジメチルアセタール、dppf:1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン、EtOAc:酢酸エチル、ESI:エレクトロスプレーイオン化、h:時間、HPLC:高圧液体クロマトグラフィー、LC:液体クロマトグラフィー、LCMS:液体クロマトグラフィー質量分析、M:モル濃度、m/z:質量電荷比、mCPBA:3-クロロ過安息香酸、MeOH:メタノール、min:分、MS:質量分析、NMR:核磁気共鳴、RT:保持時間、RB:丸底、RT:室温、SOP:標準操作手順、SM:出発物質、TFA:トリフルオロ酢酸、THF:テトラヒドロフラン、TLC:薄層クロマトグラフィー。
【0082】
一般実験条件
溶媒及び試薬
反応において使用した一般的な有機溶媒(例えばTHF、DMF、DCM、IPA及びメタノール)は、Sure/Seal(商標)ボトルに入れたSigma-Aldrich(登録商標)からの無水として購入し、窒素下で適切に取り扱った。Elga PURELAB Option-Qを使用して、水を脱イオン化した。使用(すなわち後処理手順及び精製に使用)した他の全ての溶媒は、一般にHPLCグレードであり、様々な商業的供給源から供給されたままで使用した。別段の記載がない限り、使用した全ての出発物質は商業的供給業者から購入し、供給されたままで使用した。
【0083】
フラッシュクロマトグラフィー
フラッシュクロマトグラフィーによる化合物の精製は、Biotage Isolera Fourシステムを使用して行った。別段の記載がない限り、Biotage KP-Sil SNAPカートリッジカラム(10~340g)を、化合物の極性(TLC分析により決定された)に応じて、記載した溶媒系及び適切な溶媒勾配と共に使用した。より高極性で塩基性の化合物の場合には、Biotage KP-NH SNAPカートリッジカラム(11g)を使用した。
【0084】
NMR分光法
1H NMRスペクトルは、Bruker Avance(500MHz)分光計又はBruker Avance(400MHz)分光計を使用して周囲温度で記録した。全ての化学シフト(δ)はppmで表す。残留溶媒シグナルを内部標準として使用し、特徴的な溶媒ピークをJ.Org.Chem.、1997、62、p7512~7515に概説されている基準データに修正し、そうでない場合には、NMR溶媒がテトラメチルシランを含有し、これを内部標準として使用した。
【0085】
高圧液体クロマトグラフィー
保持時間(RT)及び関連する質量イオンを測定するための液体クロマトグラフィー質量分析(LCMS)実験を、以下の方法の1つを使用して実施した。
【0086】
方法A:システムは、UVダイオードアレイ検出器及びオートサンプラーを備えるAgilent Technologies 1290 Infinity LCシステムに連結したAgilent Technologies 6140単一四重極質量分析計からなる。分析計は、陽イオンモード及び陰イオンモードで動作するマルチモードイオン化源(エレクトロスプレーイオン化及び大気圧化学イオン化)からなる。LCMS実験は、以下の条件を使用して、提出された各試料に対して実施した:LCカラム:40℃に維持したZorbax Eclipse Plus C18 RRHD 1.8ミクロン 50×2.1mm。移動相:A)水中0.1%(v/v)ギ酸、B)アセトニトリル中0.1%(v/v)ギ酸。
【0087】
【0088】
方法B:システムは、UVダイオードアレイ検出器及びオートサンプラーを備えるAgilent Technologies 1290 Infinity LCシステムに連結したAgilent Technologies 6130四重極質量分析計からなる。分析計は、陽イオンモード及び陰イオンモードで動作するエレクトロスプレーイオン化源からなる。LCMS実験は、以下の条件を使用して、提出された各試料に対して実施した:LCカラム:40℃に維持したAgilent Eclipse Plus C18 RRHD 1.8ミクロン 50×2.1mm。移動相:A)水中0.1%(v/v)ギ酸、B)アセトニトリル中0.1%(v/v)ギ酸。
【0089】
【0090】
中間体1:tert-ブチル4-(4-アミノ-2-メチルフェニル)ピペリジン-1-カルボキシレート:
【0091】
【化3】
ステップ1:tert-ブチル4-(2-メチル-4-ニトロフェニル)-5,6-ジヒドロピリジン-1(2H)-カルボキシレート:
1-ブロモ-2-メチル-4-ニトロベンゼン(123g、0.572mol)及びN-tert-ブチル4-(4,4,5,5-テトラメチル-1,3,2-ジオキサボロラン-2-イル)-5,6-ジヒドロピリジン-1(2H)-カルボキシレート(177g、0.571mmol)を1,4-ジオキサン(2.5L)に溶解した。3M炭酸ナトリウム溶液(570mL、1.71mol)を添加し、混合物を脱気し、窒素雰囲気下に置いた。PdCl
2(dppf)ジクロロメタン付加物(9.3g、0.011mol)を添加し、混合物を100℃で終夜加熱した。混合物を水で希釈し、酢酸エチルで抽出した(1Lで3回)。合わせた有機抽出物を飽和食塩水で洗浄し、MgSO
4で乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。残留物をフラッシュクロマトグラフィー(0~50%EtOAc/hex)により精製して、154g(94.5%)の表題化合物を黄色がかった結晶として得た。
【0092】
ステップ2:tert-ブチル4-(4-アミノ-2-メチルフェニル)ピペリジン-1-カルボキシレート:
tert-ブチル4-(2-メチル-4-ニトロフェニル)-5,6-ジヒドロピリジン-1(2H)-カルボキシレート(130g、0.408mol)を、5LのParr反応ボトルを使用してメタノール(3.5L)に溶解した。混合物を脱気した後、Pd/C(10%)(13g)を添加し、懸濁液を55psiの水素圧下室温で終夜振盪した。混合物をCelite(商標)のパッドに通して濾過し、濾液を減圧下で濃縮して、117g(98.7%)の表題化合物を薄ベージュ色の固体として得た。
【0093】
分析データは、米国特許出願公開第2007/0254892号に記載されている実施例37ステップ4と一致する。
【実施例】
【0094】
以下の限定することのない実施例は本発明をさらに例証する。
【0095】
[実施例1]
3-(2,6-ジクロロフェニル)-1-メチル-7-((3-メチル-4-(1-メチルピペリジン-4-イル)フェニル)アミノ)-2,3-ジヒドロピリミド[4,5-d]ピリミジン-4(1H)-オン:
【0096】
【化4】
ステップ1:4-クロロ-N-(2,6-ジクロロフェニル)-2-(メチルチオ)ピリミジン-5-カルボキサミド:
CH
2Cl
2(400mL)中の2,6-ジクロロアニリン(41.02g、253mmol)及びピリジン(25.03g、316mmol)の溶液に、CH
2Cl
2(400mL)中の4-クロロ-2-(メチルチオ)ピリミジン-5-カルボニルクロリド(56.5g、253mmol)の溶液を0℃で滴下添加した。反応混合物を室温で2日間撹拌し、溶媒を真空中で蒸発させ、残った残留物を水で2回洗浄し、続いて10%HCl水溶液及び水で洗浄した。粗生成物をEtOHからの再結晶により精製して、67.7g(76.7%)の表題化合物を白色の固体として得た。LCMS (方法B): R
T = 1.53分, m/z = 348/350 [M+H]
+.
【0097】
ステップ2:N-(2,6-ジクロロフェニル)-4-(メチルアミノ)-2-(メチルチオ)ピリミジン-5-カルボキサミド:
THF(1L)中の4-クロロ-N-(2,6-ジクロロフェニル)-2-(メチルチオ)ピリミジン-5-カルボキサミド(70g、201mmol)の溶液に、MeNH2の溶液(水中40%、46.74g、603mmol)を0℃で添加した。得られた反応混合物を室温で終夜撹拌し、溶媒を真空中で蒸発させた。残った残留物を水で2回洗浄し、乾燥させて、68.35g(99%)の表題化合物を白色の固体として得た。LCMS (方法A): RT = 1.21分, m/z = 343/345 [M+H]+.
【0098】
ステップ3:3-(2,6-ジクロロフェニル)-1-メチル-7-(メチルチオ)-2,3-ジヒドロピリミド[4,5-d]ピリミジン-4(1H)-オン:
N-(2,6-ジクロロフェニル)-4-(メチルアミノ)-2-(メチルチオ)ピリミジン-5-カルボキサミド(131g、382mmol)を、5LのRBフラスコを使用して無水アセトニトリル(1.5L)中に懸濁させ、炭酸セシウム(203.3g、1190mmol)、続いてジブロモメタン(132.7g、763mmol)を添加した。混合物を撹拌しながら80℃に7日間加熱し、得られた混合物を濾過した。残留物を2回に分けて熱アセトニトリル(200mL)で洗浄し、合わせた濾液を真空中で濃縮した。粗生成物をMeCNからの結晶化により精製して、59.6g(44%)の表題化合物を淡黄色の固体として得た。LCMS (方法A): RT = 1.26分, m/z = 355/357 [M+H]+.
【0099】
ステップ4:tert-ブチル4-(4-((6-(2,6-ジクロロフェニル)-8-メチル-5-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロピリミド[4,5-d]ピリミジン-2-イル)アミノ)-2-メチルフェニル)ピペリジン-1-カルボキシレート:
DCM(440mL)中の6-(2,6-ジクロロフェニル)-8-メチル-2-メチルスルファニル-7H-ピリミド[4,5-d]ピリミジン-5-オン(10.0g、28mmol)に、DCM(75mL)中の3-クロロ過安息香酸(7.63g、31mmol)の溶液を室温で入れ、反応物を2時間撹拌した。反応混合物に、Na2S2O3水溶液を添加し、層を、相分離器を使用して分離した。有機層を濃縮乾固し、tert-ブチル4-(4-アミノ-2-メチルフェニル)ピペリジン-1-カルボキシレート(8.17g、28mmol)及び2-プロパノール(625mL)を残留物に添加した。次いで、反応物を95℃で終夜加熱した。反応物を濃縮し、残留物をフラッシュクロマトグラフィー(Biotage 340g KP-Sil、シクロヘキサン中10~45%EtOAc)により精製して、表題化合物(11.13g、66%)を白色の固体として得た。LCMS (方法A): RT 1.86分, m/z = 597/599 [M+H]+
【0100】
ステップ5:3-(2,6-ジクロロフェニル)-1-メチル-7-((3-メチル-4-(ピペリジン-4-イル)フェニル)アミノ)-2,3-ジヒドロピリミド[4,5-d]ピリミジン-4(1H)-オン塩酸塩:
tert-ブチル4-[4-[[6-(2,6-ジクロロフェニル)-8-メチル-5-オキソ-7H-ピリミド[4,5-d]ピリミジン-2-イル]アミノ]-2-メチル-フェニル]ピペリジン-1-カルボキシレート(7.0g、11.7mmol)をDCM(300mL)に溶解し、ジオキサン中4N HCl(35mL、140mmol)を添加し、混合物を室温で終夜撹拌した。固体を、焼結漏斗に通した濾過により収集し、DCMで洗浄し、焼結物上で乾燥させて、表題化合物(6.3g、定量的収率)を得た。LCMS (方法A): RT 0.80分, m/z = 497/499 [M+H]+
【0101】
ステップ6:3-(2,6-ジクロロフェニル)-1-メチル-7-((3-メチル-4-(1-メチルピペリジン-4-イル)フェニル)アミノ)-2,3-ジヒドロピリミド[4,5-d]ピリミジン-4(1H)-オン:
アセトニトリル(90mL)中の6-(2,6-ジクロロフェニル)-8-メチル-2-[3-メチル-4-(4-ピペリジル)アニリノ]-7H-ピリミド[4,5-d]ピリミジン-5-オン塩酸塩(6.77g、12.7mmol)の懸濁液に、メタノール(20mL)及び37%ホルムアルデヒド水溶液(12.76mL、63.4mmol)を添加した。得られた溶液を0℃に冷却し、トリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(13.44g、63.4mmol)を少量ずつ添加した。反応物を0℃で1時間撹拌し、その後、溶媒を真空中で濃縮した。残留物をDCMに溶かし、2M Na2CO3水溶液、水及び飽和食塩水で洗浄し、その後、二相混合物を相分離器に通過させ、得られた有機相を濃縮して、固体を得た。酢酸エチルから再結晶して、表題化合物(3.83g、59%)を白色の固体として得た。LCMS (方法A): RT 0.70分, m/z = 511/513 [M+H]+. 1H NMR (500 MHz, DMSO-d6): δ 9.75 (br s, 1H), 8.47 (s, 1H), 7.65 (d, 2H), 7.52-7.62 (m, 2H), 7.46-7.51 (m, 1H), 7.14 (d, 1H), 4.98 (s, 2H), 3.12 (s, 3H), 2.79-2.91 (m, 2H), 2.55-2.62 (m, 1H), 2.28 (s, 3H), 2.20 (s, 3H), 1.93-2.03 (m, 2H), 1.58-1.68 (m, 4H).
【0102】
比較例1:3-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-1-メチル-7-((3-メチル-4-(1-メチルピペリジン-4-イル)フェニル)アミノ)-2,3-ジヒドロピリミド[4,5-d]ピリミジン-4(1H)-オン:
【0103】
【化5】
ステップ1:4-クロロ-N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-(メチルチオ)ピリミジン-5-カルボキサミド:
2-クロロ-6-メチルアニリン(14g、62.8mmol)を実施例1ステップ1に従って変換して、その結果表題化合物(10g、30.5mmol、48%)を白色の固体として得た。LCMS (方法A): R
T = 1.28分, m/z = 328/330 [M+H]
+.
【0104】
ステップ2:N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-4-(メチルアミノ)-2-(メチルチオ)ピリミジン-5-カルボキサミド:
4-クロロ-N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-2-(メチルチオ)ピリミジン-5-カルボキサミド(7g、21.33mmol)を実施例1ステップ2に従って変換して、その結果表題化合物(6g、18.59mmol、87%)をオフホワイト色の固体として得た。LCMS (方法A): RT = 1.22分, m/z = 323/325 [M+H]+.分析データは、国際公開第2015/092431号に記載されている実施例92、ステップ1と一致する。
【0105】
ステップ3:3-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-1-メチル-7-(メチルチオ)-2,3-ジヒドロピリミド[4,5-d]ピリミジン-4(1H)-オン:
N-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-4-(メチルアミノ)-2-(メチルチオ)ピリミジン-5-カルボキサミド(6g、18.59mmol)を実施例1ステップ2に従って変換して、その結果表題化合物(2.9g、8.66mmol、47%)をオフホワイト色の固体として得た。LCMS (方法A): RT = 1.25分, m/z = 335/337 [M+H]+.分析データは、国際公開第2015/092431号に記載されている実施例92、ステップ2と一致する。
【0106】
ステップ4:tert-ブチル4-(4-((6-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-8-メチル-5-オキソ-5,6,7,8-テトラヒドロピリミド[4,5-d]ピリミジン-2-イル)アミノ)-2-メチルフェニル)ピペリジン-1-カルボキシレート:
3-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-1-メチル-7-(メチルチオ)-2,3-ジヒドロピリミド[4,5-d]ピリミジン-4(1H)-オン(150mg、0.45mmol)をDCM(6mL)に溶解し、mCPBA(121mg、0.49mmol)を添加した。反応混合物を室温で30分間撹拌した。反応混合物をDCMで10mLに希釈し、チオ硫酸塩水溶液で洗浄した。有機層を分離し、乾燥させ(無水MgSO4)、溶媒を減圧下で蒸発させた。残留物を2-プロパノール(6mL)中に懸濁させ、tert-ブチル4-(4-アミノ-2-メチルフェニル)ピペリジン-1-カルボキシレート(130mg、0.45mmol)を添加した。反応混合物を90℃で終夜撹拌した。揮発物を蒸発させ、生成物をフラッシュクロマトグラフィー(シクロヘキサン中20~80%EtOAc)により精製して、表題化合物を透明な油状物(206mg、80%)として得た。LCMS (方法B): RT = 1.80分, m/z = 577 [M+H]+.
【0107】
ステップ5:3-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-1-メチル-7-((3-メチル-4-(ピペリジン-4-イル)フェニル)アミノ)-2,3-ジヒドロピリミド[4,5-d]ピリミジン-4(1H)-オン塩酸塩:
tert-ブチル4-[4-[[6-(2-クロロ-6-メチル-フェニル)-8-メチル-5-オキソ-7H-ピリミド[4,5-d]ピリミジン-2-イル]アミノ]-2-メチル-フェニル]ピペリジン-1-カルボキシレート(206mg、0.36mmol)をDCM(4mL)に溶解し、TFA(2mL)を添加した。反応混合物を室温で30分間撹拌した。揮発物を減圧下で蒸発させ、残留物をDCM(2mL)に溶解し、SCX-2-カートリッジ(5g、使用前にカラムをDCMで溶出した)上に装填した。カートリッジをDCM中20%MeOHで洗浄し、所望の化合物をDCM中20%7N NH3 MeOHで溶出した。生成物を含有する画分を減圧下で蒸発させて、表題化合物を白色の固体(138mg、81%)として得た。LCMS (方法A): RT = 0.80分, m/z = 477 [M+H]+.
【0108】
ステップ6:3-(2-クロロ-6-メチルフェニル)-1-メチル-7-((3-メチル-4-(1-メチルピペリジン-4-イル)フェニル)アミノ)-2,3-ジヒドロピリミド[4,5-d]ピリミジン-4(1H)-オン:
6-(2-クロロ-6-メチル-フェニル)-8-メチル-2-[3-メチル-4-(4-ピペリジル)アニリノ]-7H-ピリミド[4,5-d]ピリミジン-5-オン(70mg、0.15mmol)をMeCN(3mL)/MeOH(1mL)混合物に溶解し、37%ホルムアルデヒド水溶液(0.11mL、1.47mmol)、続いてトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウム(311mg、1.47mmol)を添加した。反応混合物を室温で終夜撹拌した。揮発物を減圧下で蒸発させ、残留物をDCM/1M NaOH(5mL/5mL)に溶解した。有機層を分離し、水相をDCM(2×5mL)で抽出した。有機抽出物を合わせ、乾燥させ(無水K2CO3)、減圧下で蒸発させた。生成物を凍結乾燥して(MeOH/MeCN/水)、表題化合物を白色の固体(58mg、80%)として得た。LCMS (方法B): RT = 0.79分, m/z = 491 [M+H]+. 1H NMR (500 MHz, DMSO-d6) δ 9.70 (s, 1H), 8.45 (s, 1H), 7.63 - 7.52 (m, 2H), 7.48 - 7.41 (m, 1H), 7.38 - 7.28 (m, 2H), 7.13 (d, 1H), 4.98 - 4.86 (m, 2H), 3.11 (s, 3H), 2.87 (d, 2H), 2.62 - 2.53 (m, 1H), 2.27 (s, 3H), 2.26 (s, 3H), 2.19 (s, 3H), 2.03 - 1.92 (m, 2H), 1.70 - 1.56 (m, 4H).
【0109】
本発明の化合物と従来技術の化合物及び他の化合物との比較:
実施例1に記載されている化合物の、Wee-1キナーゼ阻害効果(Wee-1 IC50値)、細胞内でのWee-1能(pCDC2値)、動的溶解度、caco-2細胞内での透過性(Caco-2 Papp値)、静脈内投与後のラットにおけるin vivoの血漿クリアランス(CL値)及び排出半減期(T1/2値)、経口投与後のラットにおける血漿曝露(AUC値)、ラットにおける経口生物学的利用能(F%値)、健康なマウスにおける脳血漿濃度比、腫瘍を有するマウスにおける腫瘍:血漿濃度比、in-vivoのCYP3A4/5時間依存性阻害(CYP3A4/5 IC50シフト値)並びにヒト肝細胞内での反応性代謝産物の検出を試験した。比較化合物も同じ試験を使用して試験した。Wee-1キナーゼ阻害効果、細胞内でのWee-1能、及び動的溶解度を決定するのに用いる試験方法は、国際公開第2015/092431号(350~358頁参照)に教示されているものと同じとした。用いる他の試験方法は、以下の通りとした:
i.pH6.5(比較例6についてはpH7.4)でのCaco-2透過性の決定は、標準的なプロトコール及びSOPを使用してCyprotex Ltdで行った。
ii.実施例1並びに比較例6及び165での雄性Sprague-Dawleyラットにおける薬物動態パラメーター(CL/T1/2/AUC/F%)の決定は、標準的なプロトコール及びSOPを使用してAxis BioServices Ltdで行った。投与は次の通りとした:単回経口用量5mg/kg、単回静脈内用量1mg/kg。
iii.比較例18での雄性Sprague-Dawleyラットにおける薬物動態パラメーター(CL/T1/2/AUC/F%)の決定は、標準的なプロトコール及びSOPを使用してBioDuroで行った。投与は次の通りとした:経口投与5mg/kg、静脈内投与1mg/kg
iv.健康なマウスにおける脳:血漿濃度比の決定は、標準的なプロトコール及びSOPを使用してBioduro Inc.(実施例1)及びAxis Bioservices Ltd(比較例18)で行った。投与は次の通りとした:30mg/kg、1日1回、7日間の反復経口用量。濃度は、7日目の投与後4時間の時点で測定した。
v.腫瘍を有するマウスにおける腫瘍:血漿濃度比の決定は、標準的なプロトコール及びSOPを使用してAxis Bioservices Ltdで行った。投与は次の通りとした:30mg/kgの単回経口用量。
vi.CYP3A4/5時間依存性阻害(CYP3A4/5 IC50シフト値)の決定は、標準的なプロトコール及びSOPを使用してCyprotex Ltdで行った。in-vitro試験系はプールされたヒト肝ミクロソームとし、NADPH有り及び無しの30分プレインキュベーションステップを、IC50シフトを観察するために含めた。
vii.反応性代謝産物の形成の決定は、標準的なプロトコール及びSOPを使用してAdmescope Ltdで行った。in-vitro試験系はヒト肝細胞とし、インキュベーションの持続時間は2時間とし、代謝産物分析の技術はLC-MS/MSとした。
【0110】
実施例1に記載されている化合物は、溶液(pH7.4のバッファーでDMSO中)中で改善された化学的安定性を提供する。これはまた、絶食状態模擬胃液(FaSSGF)中で改善された溶解度も示す。
【0111】
データを以下の表1a及び1bに示す:
【0112】
【0113】
【0114】
表1aは、本発明の化合物が、国際公開第2015/092431号の実施例18、95、165、178及び183、並びに比較例1と比較して、高まったWee-1キナーゼ阻害効果、細胞内での高まったWee-1能、高まった若しくは同様な動的溶解度、高まった若しくは同様な透過性、ラットにおける高まったin vivo代謝安定性、ラットにおける高まった曝露及び/又はラットにおける高まった生物学的利用能を示すことを示している。
本発明は、以下の実施形態を包含する。
(実施形態1)
式(I):
【化6】
を有する化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはN-オキシド誘導体。
(実施形態2)
実施形態1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはN-オキシド誘導体、及び少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤。
(実施形態3)
実施形態1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはN-オキシド誘導体、及び少なくとも1種の薬学的に許容される賦形剤を含む医薬組成物。
(実施形態4)
1種以上のさらなる医薬活性剤を含む、実施形態3に記載の医薬組成物。
(実施形態5)
療法に使用される、実施形態1に記載の化合物又はその薬学的に許容される塩若しくはN-オキシド誘導体、又は実施形態3又は4に記載の医薬組成物。
(実施形態6)
医薬として使用される、実施形態1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはN-オキシド誘導体、又は実施形態3若しくは4に記載の医薬組成物。
(実施形態7)
がんの治療又は予防に使用される、実施形態1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはN-オキシド誘導体、又は実施形態3若しくは4に記載の医薬組成物。
(実施形態8)
がんを治療又は予防するための医薬の製造のための、実施形態1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはN-オキシド誘導体、又は実施形態3若しくは4に記載の医薬組成物の使用。
(実施形態9)
実施形態1に記載の化合物、又はその薬学的に許容される塩若しくはN-オキシド誘導体、又は実施形態3若しくは実施形態4に記載の医薬組成物の有効量を、それを必要とする患者に投与することを含む、ヒト又は動物の患者におけるがんを治療又は予防する方法。