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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】希土類異方性ボンド磁性粉の作製方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 41/02 20060101AFI20230314BHJP
   H01F 1/057 20060101ALI20230314BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20230314BHJP
【FI】
H01F41/02 G
H01F1/057 110
H01F1/057 180
B22F1/00 Y
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020182628
(22)【出願日】2020-10-30
(65)【公開番号】P2021077883
(43)【公開日】2021-05-20
【審査請求日】2020-10-30
(31)【優先権主張番号】201911076252.1
(32)【優先日】2019-11-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】515330421
【氏名又は名称】有研稀土新材料股▲フン▼有限公司
(73)【特許権者】
【識別番号】519229622
【氏名又は名称】有研稀土高技術有限公司
【氏名又は名称原語表記】GRIREM HI-TECH CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】North of Gushan South Road And East Of Happiness Road,Hi-tech industrial zone,Yanjiao Town,Sanhe City, Langfang City, Hebei 065200, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】羅 陽
(72)【発明者】
【氏名】王 子龍
(72)【発明者】
【氏名】楊 遠飛
(72)【発明者】
【氏名】胡 州
(72)【発明者】
【氏名】于 敦波
(72)【発明者】
【氏名】謝 佳君
(72)【発明者】
【氏名】廖 一帆
(72)【発明者】
【氏名】王 仲凱
【審査官】工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2004/003245(WO,A1)
【文献】国際公開第2004/064085(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/070827(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/070847(WO,A1)
【文献】特開2018-90892(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F1/057
H01F41/02
B22F1/00-1/18
B22F9/04
C22C1/10
C22C38/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
RTBHを主成分とする原料粉末を作製し、ここで、前記RはPrとNd、又はNdであり、TはFeを含有する遷移金属である、ステップ1と、
前記原料粉末にLa又はCeの水素化物及び銅粉を添加して、混合物を作製するステップ2と、
前記混合物を雰囲気拡散熱処理して、希土類異方性ボンド磁性粉を得るステップ3と、
を含むことを特徴とする、希土類異方性ボンド磁性粉の作製方法。
【請求項2】
ステップ1では、前記原料粉末の平均粒度D50がdであり、80μm≦d≦120μmであることを特徴とする、請求項1に記載の作製方法。
【請求項3】
ステップ1では、前記Rの含有量に占める原料粉末の重量割合は28.9wt%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の作製方法。
【請求項4】
ステップ2では、前記添加するLaまたはCeの水素化物に占める原料粉末の重量割合は5wt%以下であることを特徴とする、請求項1に記載の作製方法。
【請求項5】
ステップ2では、前記添加する銅粉に占めるLaまたはCeの水素化物の重量割合がtであり、25wt%≦t≦100wt%であることを特徴とする、請求項1に記載の作製方法。
【請求項6】
ステップ2では、前記銅粉の平均粒度D50は10μm未満であることを特徴とする、請求項1に記載の作製方法。
【請求項7】
ステップ3では、前記雰囲気拡散熱処理は水素含有雰囲気での熱処理又は真空熱処理を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の作製方法。
【請求項8】
前記水素含有雰囲気での熱処理の条件は、水素ガス圧≦1kPa、焼鈍温度がT2であり、700℃≦T2≦900℃、焼鈍時間がt1であり、20min≦t1≦180minであることを特徴とする、請求項7に記載の作製方法。
【請求項9】
前記真空熱処理の条件は、真空度≦5Pa、焼鈍温度がT2であり、700℃≦T2≦900℃、焼鈍時間がt1であり、20min≦t1≦180minであることを特徴とする、請求項7に記載の作製方法。
【請求項10】
ステップ3では、前記希土類異方性ボンド磁性粉の平均粒度D50がDであり、80μm≦D≦120μmであることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の作製方法。
【請求項11】
ステップ3では、前記希土類異方性ボンド磁性粉は粒界相及びR14B磁性相の結晶粒を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の作製方法。
【請求項12】
前記粒界相中のLaの含有量とR14B磁性相中のLaの含有量との比率は5より大きく、前記粒界相中のCeの含有量とR14B磁性相中のCeの含有量との比率は5より大きいことを特徴とする、請求項11に記載の作製方法。
【請求項13】
前記粒界相中のCuの含有量とR14B磁性相中のCuの含有量との比率は10より大きいことを特徴とする、請求項11に記載の作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性材料の分野に関し、具体的には、希土類異方性ボンド磁性粉の作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ネオジム・鉄・ボロンボンド永久磁石材料に用いられる磁性粉は、主に、等方性と異方性の2種類に分けられる。現在、等方性ネオジム・鉄・ボロン磁性粉は、メルトラピッドクエンチ法で作製されるものであり、最大磁気エネルギー積は12-16MGOeであり、これにより作製される等方性ネオジム・鉄・ボロンボンド磁石の最大磁気エネルギー積は12MGOe以下である。一方、異方性ネオジム・鉄・ボロンボンド磁性粉は、一般的に、HDDR(即ち、水素化-不均化-脱水素-再結合)法で作製されるものであり、その微細構造の特殊性、即ち微細な結晶粒(200-500nm)が[001]磁化容易軸の方向への平行配列により、最大磁気エネルギー積が等方性ボンド磁性粉の2-3倍にもなり、モールディング又は射出成形プロセスにより、モーターデバイスの小型化、軽量化、及び精密化の発展動向に対応した高性能の異方性ボンド磁石を作製できるため、高性能の異方性磁性粉末の市場需要はますます急務となっている。
【0003】
しかしながら、HDDR磁性粉から作製したネオジム・鉄・ボロンボンド磁石には、耐熱性が不十分である問題がある。例えば、自動車のように高温に晒される用途では、磁石の耐熱性が低いと、不可逆的な減磁の発生の可能性が高くなる。そのため、HDDR磁性粉は、その耐熱性を十分に向上させれば、自動車などの分野に使用されることが可能になり、その適用範囲が広くなる。
【0004】
異方性磁性粉の耐熱性を向上させる、即ち高温での減磁の可能性を低減させるには、高温での磁性粉の保磁力を上げなければならず、主に、異方性磁性粉自体の保磁力(室温保磁力)を高めることで、それに応じて、温度係数が変化しなくても、その高温保磁力が向上する方法と、異方性磁性粉の温度係数を高めることで、それに応じて、室温保磁力が変化しなくても、その高温保磁力が向上する方法と、2つの方法がある。
【0005】
現在、主に前者の方法、即ち、異方性磁性粉自体の保磁力を高めることで耐熱性を向上させる方法が使用されている。磁性粉自体の保磁力を高めるには、主に、Tb、Dyなどの中・重希土類元素を直接添加する方法と、粒界拡散によって中・重希土類元素又は低融点合金元素を添加する方法と、2つの方法がある。前者の場合、重希土類の添加により、間違いなく生産コストの大幅の上昇を招き、希少な重希土類の戦略的資源を消耗し、生産コストが大幅に上がるだけではなく、Tb、DyとFe原子との間の反強磁性結合作用により、磁石の残留磁気及び磁気エネルギー積も低下してしまい、後者の場合、粒界拡散工程の追加により、拡散源の作製、粉末の混合、及び拡散熱処理などの追加のステップが必要になることで、生産プロセスが複雑になり、加工コストも上がってしまう。
【0006】
例えば、CN107424694Aには、少なくともNdとCuの供給源となる拡散原料と異方性磁石原料を混合し、拡散工程を行い、高保磁力の異方性磁性粉を得ることが開示されているが、この発明では、生産プロセスが複雑であり、加工コストが高く、また、豊富に存在する希土類元素La、Ceについては何ら記載されていない。CN1345073Aでは、粒界拡散により、中・重希土類元素(Dy、Tb、Nd、Prのいずれか1以上)が粒界相に取り込まれ、保磁力が顕著に向上するとともに、生産コストも大幅に上昇する。
【0007】
したがって、重希土類を含まない高保磁力の希土類異方性ボンド磁性粉の開発は、現在の研究の焦点となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、希土類異方性ボンド磁性粉の保磁力を高めるだけではなく、生産コストも低減できる希土類異方性ボンド磁性粉の作製方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明は、
(1)RTBH(ここで、前記RはNd又はPr/Ndであり、TはFeを含有する遷移金属である)を主成分とする原料粉末を作製するステップと、
(2)前記原料粉末にLa/Ce水素化物及び銅粉を加えて、混合物を作製するステップと、
(3)前記混合物を拡散熱処理して、希土類異方性ボンド磁性粉を得るステップと、
を含む希土類異方性ボンド磁性粉の作製方法を提供する。
【0010】
ネオジム・鉄・ボロンは、主相NdFe14Bと粒界相からなる。ネオジム・鉄・ボロンボンド磁性粉では、その粒界相の含有量及び非磁性の程度が直接保磁力の強さに影響する。
【0011】
本発明では、異方性ネオジム・鉄・ボロン磁性粉と、La/Ce水素化物と、銅粉を混合した後、粒界拡散を行うことにより、豊富に存在する希土類元素であるLa、Ce及び銅元素が粒界相に取り込まれ、粒界相の幅を拡げるとともに、粒界相の磁性を効果的に低下させ、その交換脱結合作用を高めて、磁性粉の保磁力を高める。
【0012】
このため、本発明では、豊富に存在する希土類La/Ceを使用することにより、中・重希土類Dy/Tb/Pr/Ndを使用しなくても、依然として異方性磁性粉の保磁力を効果的に高めて、その耐熱性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の上記解決手段は、選択された、豊富に存在する希土類元素であるLa、Ceは、埋蔵量が高く、安価であり、Dy、Tb、Nd、Prなどの中・重希土類元素の添加に比較して、同様の保磁力の向上効果を達成するとともに、コストを顕著に削減することができ、安価で豊富に存在する希土類の有効利用が可能になる、という有利な技術的効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施例1で作製したRTBHを主成分とする原料粉末の低拡大倍率での組織構造図である。
図2】実施例1で作製したRTBHを主成分とする原料粉末の高拡大倍率での組織構造図である。
図3】実施例4で作製した希土類異方性ボンド磁性粉の低拡大倍率での組織構造図である。
図4】実施例4で作製した希土類異方性ボンド磁性粉の高拡大倍率での組織構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の目的、解決手段、及び利点をより明確にするために、以下、具体的な実施形態及び図面を参照しながら、本発明をさらに詳細に説明する。これらの説明は例示的なものに過ぎず、本発明の範囲を限定することを意図するものではないことを理解されたい。なお、以下の説明では、本発明の概念を不必要に曖昧にしないため、公知の構造及び技術の説明は省略する。
【0016】
本発明は、
(1)RTBH(ここで、前記RはNd又はPr/Ndであり、TはFeを含有する遷移金属である)を主成分とする原料粉末を作製するステップと、
(2)前記原料粉末にLa/Ce水素化物及び銅粉を加えて、混合物を作製するステップと、
(3)前記混合物を雰囲気拡散熱処理して、希土類異方性ボンド磁性粉を得るステップと、
を含む希土類異方性ボンド磁性粉の作製方法を提供する。
【0017】
本発明において、RTBHを主成分とする原料粉末は、以下のステップを有するHDDR法で作製される。
【0018】
a.水素吸蔵不均化段階:RTBH系合金を回転式気固反応炉に入れて、水素ガス圧0-0.1MPaで760-860℃まで加熱し、その後、水素ガス圧を20-100kPaに維持し、1h-4h保温して水素吸蔵不均化段階の処理を完了する。
b.低速脱水素再結合段階:水素吸蔵不均化段階の終了後、炉内温度を800-900℃に維持し、炉内水素ガス圧を1-10kPaに調整し、10-60分間保温・保圧して低速脱水素再結合段階の処理を完了する。
c.完全脱水素段階:低速脱水素再結合段階の終了後、水素ガス圧を1Pa以下まで急速に真空引きして、完全脱水素段階を完了する。
d.冷却段階:完全脱水素段階の終了後、室温まで冷却し、RTBHを主成分とする原料粉末を得る。
【0019】
本発明のステップ(1)では、原料粉末の重量を基準として、前記Rの含有量は≦28.9wt%であり、粒界相が結晶粒の境界に沿って均一に分布し、主相の結晶粒を取り囲むことにより、隣接する結晶粒が磁気的に分断され、消磁交換結合作用を効果的に発揮させる。好ましくは、前記Rの含有量は26.68~28.9wt%であり、例えば、Rの含有量は28.9wt%、28.5wt%、28.0wt%、27.5wt%、27wt%、26.68wt%、及びこれらの値におけるいずれか2つによって構成される範囲における任意の値であってもよい。
【0020】
本発明のステップ(1)では、前記原料粉末の平均粒度D50は80-120μmである。
【0021】
本発明では、La/Ce水素化物は粒界拡散元素として、ステップ(3)の熱処理中において、La/Ce元素が粒界相に取り込まれる。
【0022】
本発明のステップ(2)では、原料粉末の重量を基準として、前記La/Ce水素化物の添加割合は5wt%以下であり、好ましくは0.5~5wt%であり、例えば、0.5wt%、1.0wt%、1.5wt%、2.0wt%、2.5wt%、3.0wt%、3.5wt%、4.0wt%、4.5wt%、5.0wt%、及びこれらの値におけるいずれか2つによって構成される範囲における任意の値であってもよい。
【0023】
本発明では、銅粉は、主にLa/Ce水素化物の融点を低下させて、熱処理中に必要な粒界相を溶融させる温度を効果的に低減するために用いられる。
【0024】
本発明のステップ(2)では、La/Ce水素化物の重量を基準として、前記銅粉の添加割合は25~100wt%である。
【0025】
本発明のステップ(2)では、前記銅粉の平均粒度D50が10μm未満であることは、銅粉が好適に粒界相に拡散することに有利である。
【0026】
本発明では、雰囲気拡散熱処理中、液体に溶融した粒界相が拡散通路になり、豊富に存在する希土類元素であるLa、Ce及び銅元素がRTBHを主成分とする原料粉末の表面から原料粉末の内部まで拡散し粒界相に入り込むのに有利であり、粒界相の幅を拡げるとともに、粒界相の磁性を効果的に低下させ、その交換脱結合作用を高めて、RTBHを主成分とする原料粉末の保磁力を高める。
【0027】
本発明のステップ(3)では、好ましい一実施形態において、前記雰囲気拡散熱処理は水素含有雰囲気での熱処理又は真空熱処理を含む。
【0028】
好ましくは、前記水素含有雰囲気での熱処理の条件は、水素ガス圧≦1kPa、焼鈍温度700-900℃、焼鈍時間20-180minを含む。
【0029】
好ましくは、前記真空処理の条件は、真空度≦5Pa、焼鈍温度700-900℃、焼鈍時間20-180minを含む。
【0030】
本発明のステップ(3)では、前記希土類異方性ボンド磁性粉の平均粒度D50は80-120μmである。
【0031】
本発明のステップ(3)では、前記希土類異方性ボンド磁性粉は粒界相及びR14B磁性相の結晶粒を含む。
【0032】
好ましくは、希土類異方性ボンド磁性粉において、前記粒界相中のLa/Ceの含有量とR14B磁性相中のLa/Ceの含有量との比率は5より大きい。この場合、La/Ce元素は主に粒界相に集中し、R14B磁性相中の含有量が少なく、これにより、残留磁気を顕著に低下させることなく、効果的に粒界相の幅を拡げ、粒界相の磁性を低下させ、保磁力を高めることができる。
【0033】
好ましくは、希土類異方性ボンド磁性粉において、前記粒界相中のCuの含有量とR14B磁性相中のCuの含有量との比率は10より大きい。この場合、Cu元素は主に粒界相に集中し、R14B磁性相中の含有量が少なく、これにより、残留磁気を顕著に低下させることなく、効果的に粒界相の幅を拡げ、粒界相の磁性を低下させ、保磁力を高めることができる。
【0034】
以下、実施例により本発明を詳細に説明する。以下の実施例では、
粒度分布試験のパラメーターは、PSA-レーザ粒度分析計により測定され、
保磁力のパラメーターは、磁気性能測定計により測定され、
最大磁気エネルギー積は、磁気性能測定計により測定され、
残留磁気は、磁気性能測定計により測定される。
【0035】
特に説明しない限り、使用される原料はすべて市販品である。
【0036】
実施例1
NdFeBHを主成分とする原料粉末は、以下のステップを有するHDDR法で作製されたものである。
【0037】
(1)水素吸蔵不均化段階:NdFeBH系合金を回転式気固反応炉に入れ、水素ガス圧0.1MPaで800℃まで加熱し、その後、水素ガス圧を50kPaに維持し、2h保温して水素吸蔵不均化段階の処理を完了した。
【0038】
(2)低速脱水素再結合段階:水素吸蔵不均化段階の終了後、炉内温度を800℃に維持し、炉内水素ガス圧を5kPaに調整し、30分間保温・保圧して低速脱水素再結合段階の処理を完了した。
【0039】
(3)完全脱水素段階:低速脱水素再結合段階の終了後、水素ガス圧を1Pa以下まで急速に真空引きして、完全脱水素段階を完了した。
【0040】
(4)冷却段階:完全脱水素段階の終了後、室温まで冷却し、NdFeBHを主成分とする原料粉末を得た。その低拡大倍率での組織構造図及び高拡大倍率での組織構造図を図1及び図2に示す。図1において、本体は等軸状のNdFe14B結晶粒であり、結晶粒の間に分布する白い相は粒界相であり、図2は透過型電子顕微鏡で撮影された高解像度図であり、図における2つの明確な領域は隣接する2つのNdFe14B結晶粒であり、その隣接する領域は厚さ2nmの粒界相である。
【0041】
実施例2
PrNdFeBHを主成分とする原料粉末は、以下のステップを有するHDDR法で作製されたものである。
【0042】
(1)水素吸蔵不均化段階:NdFeBH系合金を回転式気固反応炉に入れ、水素ガス圧0.05MPaで760℃まで加熱し、その後、水素ガス圧を30kPaに維持し、4h保温して水素吸蔵不均化段階の処理を完了した。
【0043】
(2)低速脱水素再結合段階:水素吸蔵不均化段階の終了後、炉内温度を900℃に維持し、炉内水素ガス圧を3kPaに調整し、60分間保温・保圧して低速脱水素再結合段階の処理を完了した。
【0044】
(3)完全脱水素段階:低速脱水素再結合段階の終了後、水素ガス圧を1Pa以下まで急速に真空引きして、完全脱水素段階を完了した。
【0045】
(4)冷却段階:完全脱水素段階の終了後、室温まで冷却し、PrNdFeBHを主成分とする原料粉末を得た。
【0046】
実施例3
希土類異方性ボンド磁性粉の作製方法は、以下のステップを含む。
【0047】
(1)実施例1で作製されたNdFeBHを主成分とする原料粉末に、0.5wt%のLa/Ce水素化物及び0.125wt%の銅粉を加えて混合物を作製した。
【0048】
(2)水素含有雰囲気で、水素ガス圧0.6kPa、焼鈍温度700℃、焼鈍時間20minで、前記混合物を熱処理して、希土類異方性ボンド磁性粉を得た。
【0049】
実施例4
希土類異方性ボンド磁性粉の作製方法は、以下のステップを含む。
【0050】
(1)実施例2で作製されたPrNdFeBHを主成分とする原料粉末に、5.0wt%のLa/Ce水素化物及び1.25wt%の銅粉を加えて混合物を作製した。
【0051】
(2)真空度を5Paに維持して、焼鈍温度700℃、焼鈍時間180minで、前記混合物を真空熱処理して、希土類異方性ボンド磁性粉を得た。作製された希土類異方性ボンド磁性粉の低拡大倍率での組織構造図及び高拡大倍率での組織構造図をそれぞれ図3及び図4に示す。図3において、本体は等軸状のNdFe14B結晶粒であり、結晶粒の間に分布する白い相は粒界相であり、図4は透過型電子顕微鏡で撮影された高解像度図であり、図における2つの明確な領域は隣接する2つのNdFe14B結晶粒であり、その隣接する領域は厚さ5nm程度の粒界相である。
【0052】
実施例5
希土類異方性ボンド磁性粉の作製方法は、以下のステップを含む。
【0053】
(1)実施例2で作製されたNdFeBHを主成分とする原料粉末に、3.0wt%のLa/Ce水素化物及び3.0wt%の銅粉を加えて混合物を作製した。
【0054】
(2)水素含有雰囲気で、水素ガス圧0.5kPa、焼鈍温度800℃、焼鈍時間60minで、前記混合物を熱処理して希土類異方性ボンド磁性粉を得た。
【0055】
実施例6
【0056】
5wt%のLa/Ce水素化物及び1.25wt%の銅粉を加えて混合物を作製したこと以外は、実施例4の方法に従って、希土類異方性ボンド磁性粉を作製した。
【0057】
実施例7
5.0wt%のLa/Ce水素化物及び5.0wt%の銅粉を加えて混合物を作製したこと以外は、実施例4の方法に従って、希土類異方性ボンド磁性粉を作製した。
【0058】
実施例8
4.0wt%のLa/Ce水素化物及び2.0wt%の銅粉を加えて混合物を作製したこと以外は、実施例4の方法に従って、希土類異方性ボンド磁性粉を作製した。
【0059】
比較例1
実施例3で作製された希土類異方性ボンド磁性粉と化学組成が完全に同一の希土類合金を用いて、実施例1の方法に従って希土類異方性ボンド磁性粉を作製した。
【0060】
比較例2
実施例4で作製された希土類異方性ボンド磁性粉と化学組成が完全に同一の希土類合金を用いて、実施例1の方法に従って希土類異方性ボンド磁性粉を作製した。
【0061】
比較例3
実施例5で作製された希土類異方性ボンド磁性粉と化学組成が完全に同一である希土類合金を用いて、実施例1の方法に従って希土類異方性ボンド磁性粉を作製した。
【0062】
試験例
実施例1-2で作製されたRTBHを主成分とする原料粉末の平均粒度D50、保磁力、最大磁気エネルギー積、及び残留磁気をそれぞれ試験し、その結果を表1に示す。実施例3-8及び比較例1-3で作製された希土類異方性ボンド磁性粉の平均粒度D50、保磁力、最大磁気エネルギー積、及び残留磁気をそれぞれ試験し、その結果を表1に示す。試験中、磁性粉を磁場に配向させる必要があり、その配向が完全であることを確保するために、配向磁場は30kOe以上であり、この場合、磁性粉の磁化容易方向が外部磁場の方向に沿って平行に配列した。
【0063】
<表1>
【0064】
表1の結果から分かるように、本発明の実施例では、HDDR法で作製された異方性磁性粉の原料粉末に基づいて、La/Ce水素化物及びCu粉を加えて熱処理することで、残留磁気を顕著に低下させることなく、磁性粉の保磁力を効果的に向上させた。これにより、残留磁気、保磁力、及び最大磁気エネルギー積の高い磁性粉が作製された。比較例1-3と比較して、同等の化学組成を前提として、本発明の実施例3-8で作製された磁性粉は高い磁気性能を有し、効果が顕著である。
上述したように、本発明は、保磁力を高めながらコストを低減できる希土類異方性ボンド磁性粉の作製方法を保護することを目的とする。
【0065】
本発明の上述した具体的な実施形態は、本発明の原理を例示的に説明又は解釈するためのものに過ぎず、本発明の限定を構成するものではないことを理解されたい。したがって、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく実施されたいかなる変化、同等の置換、改良なども、本発明の保護範囲内に含まれるべきである。なお、本発明の添付の請求項は、添付の特許請求の範囲及び境界、又はそのような範囲及び境界と同等な形にあるすべての変更及び変形例をカバーすることが意図されている。
図1
図2
図3
図4