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特許7244486制御システムが配設されたインホイール電動モータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】制御システムが配設されたインホイール電動モータ
(51)【国際特許分類】
   H02K 11/33 20160101AFI20230314BHJP
   B60K 7/00 20060101ALI20230314BHJP
   H02K 11/225 20160101ALI20230314BHJP
   H02K 7/14 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
H02K11/33
B60K7/00
H02K11/225
H02K7/14 C
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2020502634
(86)(22)【出願日】2018-07-20
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-03
(86)【国際出願番号】 NL2018050507
(87)【国際公開番号】W WO2019017791
(87)【国際公開日】2019-01-24
【審査請求日】2021-07-20
(31)【優先権主張番号】2019303
(32)【優先日】2017-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】505335968
【氏名又は名称】エー-トラクション ユーロペ ベスローテン フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】E-TRACTION EUROPE B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン セヴェンター,ティモシー
【審査官】中島 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-116546(JP,A)
【文献】特表2003-520733(JP,A)
【文献】特表平08-511490(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/00- 7/20
H02K 11/00-11/40
B60K 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両側(2)にコネクタスタブ(33)と、
前記コネクタスタブ(33)に接続された円筒形中空ステータボディ(31)と、
外面にステータ巻線が装備されたステータ(30)と、
前記ステータ(30)を同軸に包囲し回転軸(R)周りで回転可能な円筒形ロータボディ(60)と、
前記ステータ(30)上のステータ巻線に給電するためのパワーエレクトロニクスデバイス(42)と、
前記ステータ(30)に対する前記円筒形ロータボディ(60)の角度位置を検出するように構成された角度位置検出器(81)と
を備えたインホイール電動モータ(4)であって、
前記コネクタスタブ(33)には、前記パワーエレクトロニクスデバイス(42)に結合するために配置された支持体が配設され、
前記パワーエレクトロニクスデバイス(42)が、前記中空ステータボディ(31)内部で前記支持体に取り付けられ、
前記円筒形ロータボディ(60)が道路側(3)に円筒形開口部(92)を有し、前記円筒形開口部(92)が前記回転軸(R)と同軸とされ、
前記角度位置検出器(81)が、前記中空ステータボディ(31)内部に取り付けられ前記円筒形ロータボディ(60)に結合された角度位置センサ(93)を備え、かつ、
前記角度位置検出器(81)が、前記パワーエレクトロニクスデバイス(42)に、前記パワーエレクトロニクスデバイス(42)の前記道路側(3)で前記回転軸(R)と同軸に取り付けられている
ことを特徴とするインホイール電動モータ。
【請求項2】
前記角度位置検出器(81)が、前記円筒形ロータボディ(60)の前記円筒形開口部(92)内に取付け板(95)によって取り付けられている、請求項1に記載のインホイール電動モータ。
【請求項3】
前記取付け板(95)が、前記角度位置センサ(93)に、前記回転軸(R)と同軸な枢軸(96)によって接続されている、請求項2に記載のインホイール電動モータ。
【請求項4】
前記枢軸(96)がフレキシブルロッドを含む請求項3に記載のインホイール電動モータ。
【請求項5】
前記角度位置センサ(93)には前記枢軸(96)に接続する可撓性カップリングが装備されている、請求項3に記載のインホイール電動モータ。
【請求項6】
前記枢軸(96)が一対の軸要素(96A,96B)を備え、一方の軸要素が前記角度位置センサ(93)に接続され、他方の軸要素が前記取付け板(95)に接続され、その取付け板(95)に前記軸要素がそれらの界面で可撓性ジョイント(96D)によって結合される、請求項5に記載のインホイール電動モータ。
【請求項7】
前記取付け板(95)が前記円筒形開口部(92)と同一平面上にある、請求項2ないし6のいずれか一項に記載のインホイール電動モータ。
【請求項8】
前記可撓性ジョイント(96D)が弾性材料で具現化される、請求項6に記載のインホイール電動モータ。
【請求項9】
前記可撓性ジョイント(96D)が周方向に高い剛性を有するように構成されている、請求項8に記載のインホイール電動モータ。
【請求項10】
電動モータ(4)に給電するためのパワーエレクトロニクスデバイス(42)であって、
前記電動モータ(4)が、円筒形の中空ステータボディ(31)と、前記ステータボディ(31)の外面にステータ巻線が装備されたステータ(30)と、前記ステータ(30)を、前記電動モータ(4)の回転軸(R)の周りで回転させるように同軸に包囲する円筒形ロータボディ(60)とを備え、
前記円筒形ロータボディ(60)が、前記回転軸(R)と同軸とされた円筒形開口部(92)を有し、
前記パワーエレクトロニクスデバイス(42)が、前記ステータ巻線に給電するための電子素子と、前記ステータ(30)に対する前記円筒形ロータボディ(60)の角度位置を検出するように構成された角度位置検出器(81)とを備え、
前記角度位置検出器(81)が、前記パワーエレクトロニクスデバイス(42)に取り付けられて、前記円筒形ロータボディ(60)に前記回転軸(R)と同軸に取り付けるように配置された取付け板(95)を介して前記円筒形ロータボディ(60)と回転可能に結合するように配置された角度位置センサ(93)を備え、
前記パワーエレクトロニクスデバイス(42)が前記中空ステータボディ(31)の前記円筒形開口部(92)内に取り付けられたときに、該パワーエレクトロニクスデバイス(42)が道路側(3)と車両側(2)とを有し、前記角度位置検出器(81)が該パワーエレクトロニクスデバイス(42)に、該パワーエレクトロニクスデバイス(42)の前記道路側(3)で前記回転軸(R)と同軸に取り付けられている
ことを特徴とするパワーエレクトロニクスデバイス。
【請求項11】
前記取付け板(95)が、前記回転軸(R)と同軸な枢軸(96)によって前記角度位置センサ(93)に接続されている、請求項10に記載のパワーエレクトロニクスデバイス。
【請求項12】
前記電子素子が収容されるケーシング(100)を備えた、請求項11に記載のパワーエレクトロニクスデバイス。
【請求項13】
前記枢軸(96)が一対の軸要素を備え、一方の軸要素が前記角度位置センサ(93)に接続され、他方の軸要素が前記取付け板(95)に接続され、前記取付け板(95)に、前記軸要素がそれらの界面で、可撓性ジョイントによって結合される、請求項11または12に記載のパワーエレクトロニクスデバイス。
【請求項14】
パワーエレクトロニクスデバイス(42)と角度位置センサ(93)とをインホイール電動モータ(4)に組み付ける方法であって、
前記電動モータ(4)が、車両側(2)にコネクタスタブ(33)と、前記コネクタスタブ(33)に接続された円筒形中空ステータボディ(31)と、外面にステータ巻線が装備されたステータ(30)と、前記ステータ(30)を同軸に包囲し前記電動モータの回転軸(R)の周りで回転可能な円筒形ロータボディ(60)と、前記ステータ巻線に給電するための前記パワーエレクトロニクスデバイス(42)と、前記ステータ(30)に対する前記ロータボディ(60)の角度位置を検出するように構成された角度位置検出器(81)を備え、
前記角度位置検出器(81)が、前記パワーエレクトロニクスデバイス(42)に取り付けられて、前記ロータボディ(60)の円筒形開口部(92)内に取り付けられた取付け板(95)によって前記ロータボディ(60)と結合された前記角度位置センサ(93)を備え、前記方法が、
前記パワーエレクトロニクスデバイス(42)に結合するように配置された、前記中空ステータボディ(31)内へと延出する支持体を前記コネクタスタブ(33)に配設することと、
前記円筒形ロータボディ(60)に回転軸(R)と同軸である円筒形開口部(92)を道路側(3)に配設することと、
前記角度位置センサ(93)を備えた前記角度位置検出器(81)を前記パワーエレクトロニクスデバイス(42)に取り付けた状態で、前記パワーエレクトロニクスデバイス(42)を前記道路側(3)の前記円筒形開口部(92)を介して前記中空ステータボディ(31)内部の前記支持体に取り付けることと、
前記ロータボディ(60)の前記円筒形開口部内に前記取付け板(95)を取り付け、前記回転軸(R)と同軸な枢軸(96)を介して前記取付け板(95)を前記角度位置センサ(93)に接続することによって前記角度位置センサ(93)を前記ロータボディ(60)に結合すること
とを含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項1ないし9のいずれか一項に記載のインホイール電動モータ(4)を備えた車両のホイールの駆動アセンブリ(1)であって、前記モータ(4)がステータ部(30)とロータ部(60)とを備え、前記ステータ部とロータ部とが回転軸(R)に対して同軸であり、かつ、前記ロータ部と前記ステータ部とが両方とも、前記ホイール内に少なくとも部分的に配置されるように適合されていることを特徴とする駆動アセンブリ(1)。
【請求項16】
請求項10ないし13のいずれか一項に記載のパワーエレクトロニクスデバイス(42)が配設されたインホイール電動モータ(4)を備えた車両のホイールの駆動アセンブリ(1)であって、前記電動モータ(4)がステータ部(30)とロータ部(60)とを備え、前記ステータ部と前記ロータ部とが回転軸(R)に対して同軸であり、前記ロータ部と前記ステータ部とが両方とも、前記ホイール内に少なくとも部分的に配置されるように適合されていることを特徴とする駆動アセンブリ(1)。
【請求項17】
インホイール電動モータ(4)を備えた車両のホイールの駆動アセンブリ(1)であって、
前記インホイール電動モータ(4)が、
車両側(2)にコネクタスタブ(33)と、
前記コネクタスタブ(33)に接続された円筒形中空ステータボディ(31)と、
外面にステータ巻線が装備されたステータ(30)と、
前記ステータ(30)を同軸に包囲し前記インホイール電動モータ(4)の回転軸(R)の周りで回転可能な円筒形ロータボディ(60)と、
前記ステータ巻線に給電するためのパワーエレクトロニクスデバイス(42)と、
前記ステータ(30)に対する前記ロータボディ(60)の角度位置を検出するように構成された角度位置検出器(81)とを備え、
前記角度位置検出器(81)が、前記パワーエレクトロニクスデバイス(42)に取り付けられていて、前記ロータボディ(60)の円筒形開口部(92)内に取り付けられた取付け板(95)によって前記ロータボディ(60)と結合された、角度位置センサ(93)を備え、
前記コネクタスタブ(33)には、前記パワーエレクトロニクスデバイス(42)に結合するように配置された、前記中空ステータボディ(31)内へと延出する支持体が配設され、
前記円筒形ロータボディ(60)には、回転軸(R)と同軸とされた円筒形開口部(92)が道路側(3)に配設され、
前記角度位置センサ(93)を備えた前記角度位置検出器(81)が前記パワーエレクトロニクスデバイス(42)に取り付けられた状態で、前記パワーエレクトロニクスデバイス(42)が、前記道路側(3)の前記円筒形開口部(92)を介して前記中空ステータボディ(31)内部における前記支持体に取り付けられ、
前記取付け板(95)が前記ロータボディ(60)の前記円筒形開口部(92)内に取り付けられるとともに該取付け板(95)が前記回転軸(R)と同軸な枢軸(96)を介して前記角度位置センサ(93)に接続されることにより、前記角度位置センサ(93)が前記ロータボディ(60)に結合され、かつ、
前記ロータボディ(60)と前記円筒形中空ステータボディ(31)とが両方とも、前記ホイール内に少なくとも部分的に配置されるように適合されている
ことを特徴とする駆動アセンブリ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御システムが配設されたインホイール電動モータに関する。また、本発明はそのようなインホイール電動モータの製造方法に関する。さらに、本発明は、そのような電動モータを備えた車両のホイールの駆動アセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
そのようなインホイール電動モータは、特許文献1から既知であり、1輪以上のタイヤを担持するホイールのリムにロータが結合されているインホイール電動モータを備えた電気自動車を記載している。ステータは、ホイールサスペンションシステムを介して車両のフレームに取り付けられている。この既知のインホイールモータは、モータの電磁石が、中間歯車なしでリムとタイヤを直接駆動するダイレクトドライブホイールの一部である。こうして、重量と空間が省かれ、駆動装置内の構成要素の数が極減される。
【0003】
インホイールモータによって生成されるトルクは、ロータとステータの間の磁束搬送面に依存し、ロータ半径の二次関数である。ロータ磁石は、大きいロータ半径を可能な限り大きくするように、ステータの周りに可能な限り外側に離して配置され、モータ設計は、タイヤに最大パワーとトルクを供給するために、ロータとステータの間の隙間を極減するべく最適化される。ロータとステータの間の隙間の幅は他方では、走行状態中にホイールへの機械的衝撃を吸収するために十分なほど大きくなるように設計される。
【0004】
ステータの巻線は、ステータ内に配置されたパワーエレクトロニクスによって給電され、そのパワーエレクトロニクスは、車両の電源システム、例えば電池パックおよび/または発電機からの電気エネルギーを、電動モータによる使用に適したAC電流に変換する。そのようなパワーエレクトロニクスは典型的にパワーエレクトロニクス、例えば特許文献2に記載のようなIGBT電流モジュールと電流調整器を備えている。パワーエレクトロニクスを用いて、ステータの巻線に供給される電流および/または電圧を制御することで、ステータによって生成される磁束の磁場ベクトルが制御され、電動モータは所望のトルクおよび/または回転速度で動作する。パワーエレクトロニクスをステータ内に一体化することで、パワーエレクトロニクスから電磁石にわたるバスバーの長さを短く保つことができ、それは、例えば700Vまたはそれ以上で300Aになり得るような電動モータを動作させるために一般的に必要な高電流および高電圧の損失を極減するという見地から非常に望ましい。
【0005】
インホイール駆動アセンブリは、ロータに車両の可動部品が全く付いていない、および/またはロータ内に車両の可動部品が延出していない実質的に自蔵個別のモジュールとして実現され得る。ロータによって画定される内部空間は好ましくは実質的に閉鎖されて、車両の制動システムによって、および/または道路によって放出される塵芥および/または磨耗粒子等の異物粒子の、前記内部への侵入を防止する。
【0006】
インホイール駆動アセンブリは、駆動アセンブリの車両側を車両フレームに接続することによって様々な位置で車両に取り付けられてよい。タイヤを取り付けるためのリムが、好ましくはロータの実質的に円筒形の外面でロータに装着されてよい。
【0007】
特許文献2から、ステータ巻線内部に配置され、パワーモジュール、電流調整器およびベクトルジェネレータを備えたインホイールモータの電子的制御が既知である。ベクトルジェネレータは、中心軸の周りに取り付けられ、ロータの角度を決定するように適合され、電流調整器に制御信号を供給するエンコーダまたはレゾルバを備えている。動作および制御エレクトロニクスが、締結部材の収容空間内に収容され、カバープレートによって外界から封鎖されており、カバープレートには、それによってインホイールモータが車両に取り付けられる取付けフランジが配設されている。
【0008】
特許文献3では、ディスク上の磁性リングが中央ロータに取り付けられているブラシレスモータの電動モータ制御が示されている。ホールセンサが角度位置を測定し、コントローラを介してステータコイルを正弦波電流波形で駆動する。
【0009】
しかしながら、従来技術のインホイール電動モータでは、ステータに対するロータの角度位置を測定するための位置センサの設置は、位置センサを含むパワーエレクトロニクスが電動モータ内部に隠されているため、或る程度の複雑な位置合わせ操作を要する。
【0010】
さらに、従来技術のインホイール電動モータでは、ホイール軸との位置センサの位置合わせが衝撃や振動によって影響され得るため、角度位置の検出が使用中に邪魔される可能性がある。使用中に、衝撃や振動は、ステータ巻線に対するロータ磁石の角度位置を変えることがあり、それは位置ずれにつながり、それが最終的にステータにおける磁場のタイミングに影響する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第2013/025096号パンフレット
【文献】欧州特許第1252034号明細書
【文献】米国特許第6,731,032号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、従来技術からの問題のうち1つ以上を克服または軽減することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この目的は、インホイール電動モータによって達成され、そのインホイール電動モータは、車両側にコネクタスタブと、コネクタスタブに接続された円筒形の中空ステータボディを備えるとともに外面にステータ巻線が装備されたステータを備え、さらに、ステータを同軸に包囲し回転軸の周りで回転可能な円筒形のロータボディを備え、電動モータはさらに、ステータ上のステータ巻線に給電するためのパワーエレクトロニクスデバイスと、ステータに対するロータボディの角度位置の検出器を備え、コネクタスタブには、パワーエレクトロニクスデバイスに結合するように配置された支持体が配設され、パワーエレクトロニクスデバイスは、中空ステータボディの内部で支持体に取り付けられ、円筒形ロータボディは道路側に円筒形開口部を有し、開口部は回転軸と同軸であり、角度位置検出器は、中空ステータボディの内側に取り付けられロータボディに結合された角度位置センサを備え、角度位置検出器はパワーエレクトロニクスデバイスの道路側で、回転軸と同軸にパワーエレクトロニクスデバイスに取り付けられている。コネクタスタブと、インホイール電動モータのステータとロータが車両に取り付けられると、パワーエレクトロニクスデバイスは次に、パワーエレクトロニクスデバイスを開口部に挿入することによって中空ステータボディ内に取り付けられることができ、その後、角度位置検出器は、インホイールモータの道路側からロータに便利に接続され得る。こうして、インホイールモータの設置が助長され、パワーエレクトロニクスならびに角度位置検出器は、車両からコネクタスタブ、ステータおよび/またはロータを取り外す必要なくアクセスされ得る。
【0014】
一実施形態では、パワーエレクトロニクスデバイスはケーシングを備え、その中にパワーエレクトロニクスは、車両の電源システムからの電気的エネルギーを、インホイール電動モータでの使用に適したAC形態に変換する、IGBTなどの構成要素を備えている。
【0015】
一実施形態では、角度位置検出器は、取付け板によってロータボディの円筒形開口部内に取り付けられている。例えば、取付け板は、道路側でロータの円筒形開口部内に固定されてよく、そのとき検出器の一部は円筒形開口部内に配置されて取付け板に接続されているのに対し、検出器の別の部分はパワーエレクトロニクスデバイスに取り付けられている。
【0016】
一実施形態では、取付け板は、回転軸と実質的に同軸である、枢動車軸と呼ばれることもある枢軸によって位置センサに接続されている。
【0017】
一実施形態では、枢軸はフレキシブルロッドを備えている。ロッドの可撓性は、ステータに対するロータの回転軸の位置における多少の位置ずれに関する或る程度の許容度を提供する。そのような位置ずれは、インホイールモータの組み立て中の不正確さによって生じたもの、および/または、例えばホイールが路面のバンプを越えて走行した場合のロータへの負荷の変動によるものであり得る。
【0018】
一実施形態では、位置センサには、枢軸に接続する可撓性カップリングが装備されている。これは、ステータに対するロータの回転軸の位置におけるわずかな位置ずれに対する或る程度の許容度をも提供する。さらに、この可撓性カップリングは、道路側でのロータの円筒形開口内での取付け板の配置を容易にする。
【0019】
一実施形態では、枢軸は一対の軸要素を備え、一方の軸要素は位置センサに接続され、他方の軸要素は取付け板に接続され、その取付け板に、軸要素はその界面で可撓性ジョイントによって結合される。
【0020】
一実施形態では、取付け板は円筒形開口部と同一平面上にある。
【0021】
一実施形態では、可撓性ジョイントは、例えばシリコーンゴムまたは他種の合成ゴムなどの弾性材料を含むか、またはそのような弾性材料で具現化される。そのような材料は、典型的に、ステータに対するロータの回転軸の位置における、頻出するわずかな位置ずれに耐えることもでき、高疲労耐性を有し得る。可撓性ジョイントは好ましくは周方向に高い剛性を有するように構成され、例えば、その結果、ジョイントの2つの端部がジョイントの長手方向に沿って互いに対して並進移動され得る距離が、例えば、長手方向に対して垂直な方向に曲げることによって2つの端部が互いに対して変位され得る距離よりも小さくなる。
【0022】
一態様により、本発明は電動モータに給電するためのパワーエレクトロニクスデバイスを提供し、電動モータは、円筒形の中空ステータボディを備えたステータを備え、そのステータボディの外面にステータ巻線が装備され、また、ステータを、電動モータ回転軸の周りで回転させるように同軸に包囲する円筒形のロータボディを備え、パワーエレクトロニクスデバイスは、ステータ巻線に給電するための電子素子と、ステータに対するロータボディの角度位置の検出器を備え、角度位置検出器は、パワーエレクトロニクスデバイスに取り付けられて、ロータボディを回転軸と同軸に取り付けるように配置された取付け板を介してロータボディと回転可能に結合するように配置された角度位置センサを備えている。
【0023】
パワーエレクトロニクスデバイスと検出器はこのように中空ステータボディに一緒に挿入されることができ、その間、ロータに接続されるべき検出器の部分は、道路側からアクセス可能な状態を保つ。検出器の、ロータへの接続はこうして助長される。一般に、パワーエレクトロニクスデバイスが中空ステータボディ内部に取り付けられて中空ステータボディの開口部が道路側でロータのカバープレートによって実質的に覆われると、取付け板は検出器に装着され、またロータに装着される。
【0024】
一実施形態では、取付け板は、回転軸と同軸な枢軸によって位置センサに接続される。
【0025】
一実施形態では、パワーエレクトロニクスデバイスは、電子素子が収容されるケーシングを備えている。ケーシングは電子素子を外部の影響から保護する。電子素子は好ましくは、車両の電源システムからの電気的エネルギーを、電動モータによる使用に適したAC形態に変換するように適合されている。
【0026】
一実施形態では、パワーエレクトロニクスデバイスは、中空ステータボディに取り付けられたときに道路側と車両側を有し、角度位置検出器はパワーエレクトロニクスデバイスの道路側に取り付けられる。これは、パワーエレクトロニクスが中空ステータボディに取り付けられた後で検出器が道路側からロータに便利に接続されることを可能にする。
【0027】
一実施形態では、枢軸は一対の軸要素を備え、一方の軸要素は位置センサに接続され、他方の軸要素は取付け板に接続され、その取付け板に、軸要素はその界面で可撓性ジョイントによって結合される。
【0028】
一態様により、本発明は、パワーエレクトロニクスデバイスと角度位置センサをインホイール電動モータに組み付ける方法を提供し、電動モータは、車両側にコネクタスタブと、コネクタスタブに接続された円筒形の中空ステータボディを備えるとともに外面にステータ巻線が装備されたステータを備え、さらに、ステータを同軸に包囲し電動モータの回転軸の周りで回転可能な円筒形のロータボディを備え、電動モータはさらに、ステータ巻線に給電するためのパワーエレクトロニクスデバイスと、ステータに対するロータボディの角度位置の検出器を備え、角度位置検出器は、パワーエレクトロニクスデバイスに取り付けられて、ロータボディの円筒形開口部内に取り付けられた板によってロータボディと結合された角度位置センサを備え、方法は、
パワーエレクトロニクスデバイスに結合するように配置された支持体をコネクタスタブに配設し、
円筒形ロータボディに円筒形開口部を道路側に配設し、円筒形開口部は回転軸と同軸であり、
角度位置センサを備えた角度位置検出器をパワーエレクトロニクスデバイスに取り付けた状態で、パワーエレクトロニクスデバイスを道路側の円筒形開口部を介して中空ステータボディ内部の支持体に取り付け、
ロータボディの円筒形開口部内に板を取り付け、回転軸と同軸の枢軸を介して取付け板を位置センサに接続することによって角度位置センサをロータボディに結合することを含む。
【0029】
さらに、本発明は、上記のインホイール電動モータか、または、上記の方法によって製造されたインホイール電動モータのいずれかを備えた車両のホイールの駆動アセンブリに関し、ロータ部とステータ部は両方とも、ホイール内に少なくとも部分的に配置されるように適合されている。
【0030】
有利な実施形態はさらに、従属請求項によって定義される。
【0031】
本発明を、その例証的実施形態を示す図面を参照して以下により詳細に説明する。図面は例証的目的のみを意図したものであり、発明概念の限定を意図したものではない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1A】本発明で使用する駆動アセンブリの断面図である。
図1B】本発明で使用する駆動アセンブリの破断等角図である。
図1C】本発明で使用する駆動アセンブリの断面の図である。
図2】本発明の一実施形態によるインホイール電動モータの詳細断面図である。
図3】本発明の一実施形態によるパワーエレクトロニクスデバイスのケーシングの詳細斜視図である。
図4】本発明の一実施形態による軸センサとロータボディのカップリングの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1Aは、本発明で使用する駆動アセンブリ1の断面図を示す。駆動アセンブリは、周りにロータ60を配置する外面32を有する中空ステータボディ31を備えたステータ30を備えている。駆動アセンブリはさらに、駆動アセンブリを車両の車軸に装着するためにアセンブリ1の車両側2に配置されたコネクタスタブ33を備えている。コネクタスタブ33は、ロータ60内に配置され、ロータ60の外周面63の外側にあるスタブ33の部分36よりも大きい直径を有するフランジ35を介してステータボディ34に固定接続されている。回転軸R周りでのロータ60の回転運動を支持するために車両側ベアリング52が配設され、それを介してロータは車両側でスタブ33上に支持される。道路側3では、ロータは道路側ベアリング54を介してステータボディ31上に回転可能に支持される。
【0034】
複数の永久磁石61がロータ60の内周面62上に装着され、ステータ30の電磁石41の巻線の周りで回転可能である。電磁石41はステータボディ31上に固定されて、永久磁石61と、電磁石41によって生成される磁束との間の相互作用によってロータの回転を駆動する。ステータ30とロータ60は、ホイールの、回転軸R周りでの回転を直接駆動するように適合された電動モータを形成する。
【0035】
ロータ60は、それぞれその車両側2とその道路側3に横端部72,73を有する実質的に円筒形のロータボディ71を備えている。両横端部72,73は、道路からの、または、車両の制動システムによって放出される塵芥および磨耗粒子などの異物粒子が中空ロータ60の内部に侵入することを防止するために実質的に閉鎖されている。ロータの車両側は、回転軸Rに対して横断方向に延在するサイドプレート74によって、またカバープレート75によって実質的に閉鎖されている。サイドプレート74とカバープレート75にはそれぞれ、コネクタスタブ33の部分34がそれを介して延出する開口部が配設されている。サイドプレート74は車両側ベアリング52を支持するのに対し、カバープレート75はサイドプレート74に装着されてベアリング51を、それらの側方車両側2で覆い、それを介して部分34が延出する開口部77を備えている。カバープレート75は、開口部77の内周縁79とシャフト34の外周の間に配置されたシャフトシール78とともに、異物粒子が車両側ベアリング52を損傷することを防止する。さらに、カバープレート75とシャフトシール78は、粒子が電磁石41に干渉する可能性がある車両側2からそのような粒子がロータの内部5に侵入することを実質的に防止する。
【0036】
ステータボディ31の内側に配置された道路側ベアリング54は、道路側3では着脱自在な第2のカバープレート80によって覆われている。
【0037】
電磁石41の巻線を制御し電磁石41の巻線に給電するために、パワーエレクトロニクス42を保持するケーシング100が中空ステータボディ31内部に配置されている。パワーエレクトロニクス42は、車両の電源システム、例えば電池パックおよび/または発電機からの電気エネルギーを、電動モータによる使用に適したAC形態に変換するための、IGBTなどの構成要素を備えている。ステータ巻線に対するロータの角度位置を検出する検出器81は、ロータの角度位置を示す角度位置信号をパワーエレクトロニクスに提供して、ステータ巻線への交流電流が、ロータの磁界と一致した位相で供給されるようにする。これについては、図2および3を参照してより詳細に説明する。
【0038】
パワーエレクトロニクスデバイス42に給電するための給電線43a,43bが、ロータ60の外部から、コネクタスタブ33内の、貫通孔を備えた通路44を通って、パワーエレクトロニクスに通る。
【0039】
パワーエレクトロニクス42のケーシング100は、ヘッド、すなわち、コネクタスタブ33のフランジ35によって具現化される支持体上に取り付けられている。道路側での円筒形ロータボディ71の開口部90の直径は、パワーエレクトロニクス42のケーシングの断面より大きい。円筒形ロータボディ71内の開口部90を封鎖する着脱自在な第2のカバープレート80は、パワーエレクトロニクス42が、道路側3で円筒形ロータボディ71内の開口部からケーシングを挿入することによって取り付けられ得ることを可能にする。さらに、着脱自在な第2のカバープレート80は、パワーエレクトロニクスデバイス42のケーシング100を位置決めしてロックし、また、必要に応じパワーエレクトロニクス42に比較的容易にアクセスすることを可能にする。取り付け位置において、第2のカバープレートはロータに固定され、ロータと連動して回転する。
【0040】
図1Bは、図1Aの駆動アセンブリの部分破断等角図を示すが、この図では、中空ステータボディ31と角度位置検出器81を見やすくするために、第2のカバープレート80も道路側ベアリング54も図示していない。
【0041】
図1Cは、本発明で使用するホイール駆動アセンブリの断面図を示す。ホイール駆動アセンブリは、インホイール電動モータ4と、リム82と1輪以上のタイヤ84を備えている。
【0042】
インホイール電動モータ4はステータ部30とロータ部60を備えている。ステータ部 30は、車両のシャーシの一部であるコネクタスタブ33に結合されている。
【0043】
リム82はロータ部30の外周に配置されている。リム82は、従来技術で知られるようなボルト接続によってロータ部に装着され得る。
【0044】
リム82に1輪以上のタイヤ84が取り付けられる。ロータ部60とステータ部30は両方ともホイール内に少なくとも部分的に配置される。
【0045】
図2および3は、角度位置センサ81の詳細をそれぞれ断面図と斜視図で示す。
【0046】
着脱自在な第2のカバープレートに、回転軸Rと同軸の円形開口部92が配設されている。
【0047】
角度位置検出器81は、ステータ60、すなわちステータ巻線の位置に対するロータ30の角度位置を測定するために配設されている。
【0048】
角度位置検出器は、角度位置センサ93と動力伝達デバイス94を備えている。角度位置センサ93は、中空ステータボディ31内で固定位置にあるパワーエレクトロニクス42のケーシング100に取り付けられる。角度位置センサ93と、パワーエレクトロニクスデバイス42内のコントローラエレクトロニクス(図示せず)の間に電気的接続(図示せず)が配設されている。
【0049】
動力伝達デバイス94は、ステータ側での角度位置センサ93とロータ30の間の回転可能な接続を提供するように適合されている。
【0050】
動力伝達デバイス94は取付け板95と動力伝達軸96を備えている。取付け板95は、着脱自在な第2のカバープレート80の円形開口部92内に取り付けられるように適合されている。動力伝達軸96は、取付け板95を角度位置センサ93に回転可能に接続する枢軸である。枢軸はインホイール電動モータ4の回転軸Rと同軸に位置決めされる。こうして、ロータ60の回転は、枢軸96とロータの第2のカバープレート80に装着された取付け板95との接続を介して角度位置センサ93に伝達される。
【0051】
別の実施形態では、枢軸96は可撓性軸要素、例えば弾性材料製の軸要素として配置される。
【0052】
枢軸96の可撓性または弾性は、ロータ60の側3から生じる衝撃または振動を吸収または緩衝することを可能にして、角度位置センサ93および/またはパワーエレクトロニクス 42(のケーシング100)へのこれらの衝撃または振動の伝播を防止する。周方向における剛性により、角度位置検出器81の可撓軸96は、検出器81の可撓軸96がホイール回転軸Rと厳密に位置合わせされていなくても、回転の正確な伝達を維持する。
【0053】
図4は、角度位置センサ93とロータボディの間のカップリングの断面を示す。カップリングは、一対の軸要素96A,96Bを備えた動力伝達軸(枢軸)96を備えている。一方の軸要素96Aは角度位置センサに対して近位であり、角度位置センサの回転軸に接続する。他方の軸要素96Bは角度位置センサに対して遠位であり、ロータボディに結合された取付け板95に接続する。
【0054】
2つの軸要素96A,96Bは、それらの界面96Cで互いに接続される。界面96Cに弾性ジョイント96Dが配設され、弾性ジョイント96Dは、動力伝達軸の方向に可撓性であり、一方の軸要素96Aの回転軸と他方の軸要素96Bの回転軸の位置ずれがある場合に動力伝達軸の屈曲を可能にする。その弾性により、弾性ジョイント96Dは動作中の衝撃と振動による屈曲を補償できる。周方向に沿って、弾性ジョイント96Dは高い剛性を有するように構成され、それによって軸要素間の回転の伝達が、ホイールによって生成される衝撃または振動による変動によって実質的に邪魔されないようにする。
【0055】
本発明を、好ましい実施形態を参照して説明してきた。先行する詳細な説明を読み理解すれば、自明な修正と変更を他者でも想達するであろう。本発明ではそのような修正と変更を、それらが添付の特許請求の範囲内にある限り、全て含めると解釈することを意図している。
【符号の説明】
【0056】
1 駆動アセンブリ
2 車両側
3 道路側
4 インホイール電動モータ
30 ステータ
31 ステータボディ
33 コネクタスタブ
34 シャフト
35 フランジ
41 電磁石
42 パワーエレクトロニクスデバイス
51、52、54 ベアリング
60 ロータ
71 ロータボディ
74 サイドプレート
75 カバープレート
80 第2のカバープレート
81 角度位置検出器
92 開口部
93 角度位置センサ
95 取付け板
96 枢軸
100 ケーシング
R 回転軸
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4