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特許7244487ステロイド系誘導体FXRアゴニストの結晶又は非晶質、その製造方法及び使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】ステロイド系誘導体FXRアゴニストの結晶又は非晶質、その製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
   C07J 43/00 20060101AFI20230314BHJP
   A61K 31/58 20060101ALI20230314BHJP
   A61P 3/06 20060101ALI20230314BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20230314BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20230314BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20230314BHJP
   A61P 13/02 20060101ALI20230314BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20230314BHJP
   A61P 3/04 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
C07J43/00 CSP
A61K31/58
A61P3/06
A61P3/10
A61P9/10 101
A61P1/16
A61P13/02
A61P13/08
A61P3/04
【請求項の数】 40
(21)【出願番号】P 2020504099
(86)(22)【出願日】2018-07-26
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-09-17
(86)【国際出願番号】 CN2018097161
(87)【国際公開番号】W WO2019020068
(87)【国際公開日】2019-01-31
【審査請求日】2021-07-20
(31)【優先権主張番号】201710619423.5
(32)【優先日】2017-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】516089784
【氏名又は名称】チア タイ ティエンチン ファーマシューティカル グループ カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】Chia Tai Tianqing Pharmaceutical Group Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】No.369 Yuzhou South Rd.,Lianyungang,Jiangsu 222062 China
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リ,シャオリン
(72)【発明者】
【氏名】シャオ,フアリン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ペン
(72)【発明者】
【氏名】ヘ,ハイン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ウェイドン
【審査官】早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/129125(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/020067(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07J 43/00
A61K 31/58
A61P 3/06
A61P 3/10
A61P 9/10
A61P 1/16
A61P 13/02
A61P 13/08
A61P 3/04
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線回折パターンは、2θが5.95°、10.10°、15.14°、18.83°、20.23°の回折ピークを有し、ただし、2θの誤差範囲は±0.2°であることを特徴とする、以下の式Iに示す化合物の結晶A。
【化1】
【請求項2】
X線回折パターンは、2θが5.95°、7.95°、10.10°、13.32°、15.14°、15.85°、18.83°、20.23°の回折ピークを有し、ただし、2θの誤差範囲は±0.2°であることを特徴とする、請求項1に記載の結晶A。
【請求項3】
X線回折パターンは、2θが5.95°、7.95°、10.10°、13.32°、14.17°、15.14°、15.85°、18.83°、19.18°、20.23°、24.69°の回折ピークを有し、ただし、2θの誤差範囲は±0.2°であることを特徴とする、請求項1に記載の結晶A。
【請求項4】
前記結晶AはHO分子を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の結晶A。
【請求項5】
式Iの化合物に対する前記HO分子の当量比は、0.1~2.0eqから選択される、ことを特徴とする請求項に記載の結晶A。
【請求項6】
式Iの化合物に対する前記H O分子の当量比は、0.2~0.8eqから選択される、ことを特徴とする請求項5に記載の結晶A。
【請求項7】
X線回折パターンは、2θが5.9°、10.1°、15.1°、18.8°、20.2°の回折ピークを有し、ただし、2θの誤差範囲は±0.3°である、ことを特徴とする以下の式Iに示す化合物の結晶A。
【化2】
【請求項8】
X線回折パターンは、2θが5.9°、7.9°、10.1°、13.3°、15.1°、15.8°、18.8°、20.2°の回折ピークを有し、ただし、2θの誤差範囲は±0.3°である、ことを特徴とする請求項7に記載の結晶A。
【請求項9】
X線回折パターンは、2θが5.9°、7.9°、10.1°、13.3°、14.1°、15.1°、15.8°、18.8°、19.1°、20.2°、24.6°の回折ピークを有し、ただし、2θの誤差範囲は±0.3°である、ことを特徴とする請求項7に記載の結晶A。
【請求項10】
前記結晶AはHO分子を含む、ことを特徴とする請求項に記載の結晶A。
【請求項11】
式Iの化合物に対する前記HO分子の当量比は、0.1~2.0eqから選択される、ことを特徴とする請求項10に記載の結晶A。
【請求項12】
式Iの化合物に対する前記H O分子の当量比は、0.2~0.8eqから選択される、ことを特徴とする請求項11に記載の結晶A。
【請求項13】
水、又は水を含む混合溶媒から選択される結晶溶媒に式Iに示す化合物を懸濁/溶解して撹拌する、ステップ1)と、
濾過し、そして任意選択的に洗浄する及び/又は乾燥させる、ステップ2)とを含む、請求項1又は請求項に記載の式Iに示す化合物の結晶Aの製造方法。
【請求項14】
前記水を含む混合溶媒における非水溶媒は、水相溶性の有機溶媒から選択される、ことを特徴とする請求項13に記載の製造方法。
【請求項15】
前記水相溶性の有機溶媒は、C 1-4 アルコール、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル又はDMFから選択される、ことを特徴とする請求項14に記載の製造方法。
【請求項16】
X線回折パターンは、2θが6.21°、9.77°、10.71°、12.33°、13.04°の回折ピークを有し、ただし、2θの誤差範囲は±0.2°である、ことを特徴とする以下の式Iに示す化合物の結晶B。
【化3】
【請求項17】
X線回折パターンは、2θが6.21°、9.49°、9.77°、10.71°、12.33°、13.04°、14.29°、15.13°の回折ピークを有し、ただし、2θの誤差範囲は±0.2°である、ことを特徴とする請求項16に記載の結晶B。
【請求項18】
X線回折パターンは、2θが6.21°、9.00°、9.77°、10.71°、12.33°、13.04°、14.29°、14.72°、15.13°、15.59°の回折ピークを有し、ただし、2θの誤差範囲は±0.2°である、ことを特徴とする請求項16に記載の結晶B。
【請求項19】
前記結晶Bは酢酸エチル分子を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の結晶B。
【請求項20】
式Iの化合物に対する前記酢酸エチル分子の当量比は、0.1~0.5eqから選択される、ことを特徴とする請求項1に記載の結晶B。
【請求項21】
式Iの化合物に対する前記酢酸エチル分子の当量比は、0.2~0.4eqから選択される、ことを特徴とする請求項20に記載の結晶B。
【請求項22】
X線回折パターンは、2θが6.2°、9.7°、10.7°、12.3°、13.0°の回折ピークを有し、ただし、2θの誤差範囲は±0.3°である、ことを特徴とする以下の式Iに示す化合物の結晶B。
【化4】
【請求項23】
X線回折パターンは、2θが6.2°、9.4°、9.7°、10.7°、12.3°、13.0°、14.2°、15.1°の回折ピークを有し、ただし、2θの誤差範囲は±0.3°である、ことを特徴とする請求項22に記載の結晶B。
【請求項24】
X線回折パターンは、2θが6.2°、9.0°、9.4°、9.7°、10.7°、12.3°、13.0°、14.2°、14.7°、15.1°、15.5°の回折ピークを有し、ただし、2θの誤差範囲は±0.3°である、ことを特徴とする請求項22に記載の結晶B。
【請求項25】
前記結晶Bは酢酸エチル分子を含む、ことを特徴とする請求項22に記載の結晶B。
【請求項26】
式Iの化合物に対する前記酢酸エチル分子の当量比は、0.1~0.5eqから選択される、ことを特徴とする請求項25に記載の結晶B。
【請求項27】
式Iの化合物に対する前記酢酸エチル分子の当量比は、0.2~0.4eqから選択される、ことを特徴とする請求項26に記載の結晶B。
【請求項28】
式Iに示す化合物を酢酸エチルに懸濁/溶解する、ステップ1)と、
晶析させ、そして任意選択的に濾過し、洗浄する及び/又は乾燥させる、ステップ2)とを含む、ことを特徴とする請求項1又は請求項22に記載の式Iに示す化合物の結晶Bの製造方法。
【請求項29】
以下の式Iに示す化合物の固体非晶質物質。
【化5】
【請求項30】
メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、テトラヒドロフラン、アセトン、DMF又はこれらの混合溶媒から選択される無水溶媒において製造される、ことを特徴とする請求項29に記載の固体非晶質物質。
【請求項31】
メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、テトラヒドロフラン、アセトン、DMF又はこれらの混合溶媒から選択される無水溶媒に式Iに示す化合物を溶解する、ステップ1)と、
冷却して固体を析出させる又は溶媒を完全に蒸発し、そして任意選択的に濾過し、洗浄する及び/又は乾燥させる、ステップ2)とを含む、ことを特徴とする請求項29に記載の式Iに示す化合物の固体非晶質物質の製造方法。
【請求項32】
前記溶媒はエタノール又はイソプロパノールから選択される、ことを特徴とする請求項31に記載の製造方法。
【請求項33】
有効量の、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の式Iに示す化合物の結晶A、又は請求項~請求項12のいずれか1項に記載の式Iに示す化合物の結晶Aを含む、ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項34】
有効量の、請求項16~請求項21のいずれか1項に記載の式Iに示す化合物の結晶B、又は請求項22~請求項27のいずれか1項に記載の式Iに示す化合物の結晶Bを含む、ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項35】
有効量の、請求項29又は請求項30に記載の式Iに示す化合物の固体非晶質物質を含
む、ことを特徴とする医薬組成物。
【請求項36】
ファルネソイドX受容体に関連する各種疾患と症状の治療又は予防に用いることを特徴とする請求項33~請求項35のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項37】
ファルネソイドX受容体に関連する各種の疾患と症状の治療又は予防のための医薬を製造するための、請求項1~請求項のいずれか1項に記載の式Iに示す化合物の結晶A、又は請求項~請求項12のいずれか1項に記載の式Iに示す化合物の結晶Aの使用。
【請求項38】
ファルネソイドX受容体に関連する各種の疾患と症状の治療又は予防のための医薬を製造するための、請求項16~請求項21のいずれか1項に記載の式Iに示す化合物の結晶B、又は請求項22~請求項27のいずれか1項に記載の式Iに示す化合物の結晶Bの使用。
【請求項39】
ファルネソイドX受容体に関連する各種の疾患と症状の治療又は予防のための医薬を製造するための、請求項29又は請求項30に記載の式Iに示す化合物の固体非晶質物質の使用。
【請求項40】
前記ファルネソイドX受容体に関連する各種疾患と症状は、非アルコール性脂肪性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎、原発性胆汁性肝硬変、胆汁うっ滞性肝疾患、慢性肝疾患、C型肝炎感染、アルコール性肝疾患、肝線維化、原発性硬化性胆管炎、胆石、胆道閉鎖症、下部尿路症状と良性前立腺過形成(BPH)、尿路結石、肥満、2型糖尿病、アテローム性動脈硬化、動脈硬化症、高コレステロール血症、高脂血症が誘発する又は高コレステロール血症と高脂血症が誘発する肝機能障害を含む、ことを特徴とする請求項37~請求項39のいずれか1項に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、医薬品化学分野に関し、具体的に、ステロイド系誘導体FXRアゴニストの結晶又は非晶質に関し、当該結晶又は非晶質の結晶組成物、医薬組成物、及びそれらの医薬品としての使用を含む。
【背景技術】
【0002】
ファルネソイドX受容体(FXR)はラット肝臓cDNAライブラリーに同定されたオーファン核内受容体であり(BM. Forman,et al.,Cell 81:687-693(1995))、昆虫脱皮ホ
ルモン受容体と密接に関係する。FXRはステロイド、レチノイド、甲状腺ホルモン受容体を含むリガンド-活性化転写因子核内受容体ファミリーのメンバーである(DJ.Mangelsdorf,et al.,Cell 83:841-850(1995))。ノーザンブロッティング及びインサイチュ分析
によって、肝臓、腸、腎臓及び副腎におけるFXRの大量発現が確認された(BM. Forman,et al.,Cell 81:687-693(1995)、W. Seol,et al.,Mol. Endocrinnol,9:72-85(1995))。FXRは9-シス型レチノイン酸受容体(RXR)とヘテロ二量体を形成してDNAと結合する。FXR/RXRヘテロ二量体はAG(G/T)TCAを共有する2コピーの核内受容体ハーフサイトからなる成分と優先的に結合して、逆方向の反復を形成して単一ヌクレオチドによって分離される(IR-1モチーフ)(BM. Forman,et al.,Cell 81:687-693(1995))。しかしながら、これらの化合物はマウス及びヒトのFXRを活性化できない
ため、内因性FXRリガンドが自然由来であるかどうかは決定できない。一部の自然発生したコール酸は生理的濃度でFXRとの結合後に活性化させる(国際出願第0037077(A1)号、2000年6月29日公表))。従って、FXRリガンドとしてのコール酸はケノデオキシコール酸(CDCA)、デオキシコール酸(DCA)、リトコール酸(LCA)、これらのコール酸のタウリンとグリシン共役物を含む。
【発明の概要】
【0003】
本願の一つの態様は、式Iに示す化合物の結晶Aを提供し、
【化1】
結晶AのX線回折(XRPD)パターンは、2θが5.95°、10.10°、15.14°、18.83°、20.23°の回折ピークを有し、典型的には、2θが5.95°、7.95°、10.10°、13.32°、15.14°、15.85°、18.83°、20.23°の回折ピークを有し、より典型的には、2θが5.95°、7.95°、10.10°、13.32°、14.17°、15.14°、15.85°、18.83°、19.18°、20.23°、24.69°の回折ピークを有し、さらに典型的には、2θが5.95°、7.95°、10.10°、13.32°、14.17°、14.58°、15.14°、15.85°、18.25°、18.83°、19.18°、20.23°、24.69°、25.81°の回折ピークを有し、ただし、2θの誤差範囲は±0.2°である。
【0004】
本願のいくつかの実施形態において、結晶AのX線回折(XRPD)パターンは、2θ
が5.9°、10.1°、15.1°、18.8°、20.2°の回折ピークを有し、典型的には、2θが5.9°、7.9°、10.1°、13.3°、15.1°、15.8°、18.8°、20.2°を有し、より典型的には、2θが5.9°、7.9°、10.1°、13.3°、14.1°、15.1°、15.8°、18.8°、19.1°、20.2°、24.6°の回折ピークを有し、さらに典型的には、2θが5.9°、7.9°、10.1°、13.3°、14.1°、14.5°、15.1°、15.8°、18.2°、18.8°、19.1°、20.2°、24.6°、25.8°の回折ピークを有し、ただし、2θの誤差範囲は±0.3°であり、好ましくは±0.2°である。
【0005】
本願のいくつかの実施形態において、本願に係る結晶AのX線回折ピークは、次に示す特徴を有する。
【表1】
ただし、2θの誤差範囲は±0.3°であり、好ましくは±0.2°である。
【0006】
本願のいくつかの実施形態において、前記結晶AのX線回折パターンは図1に示すとおりである。
【0007】
本願のいくつかの実施形態において、前記結晶AのDSCパターンは図2に示すとおりである。
【0008】
本願のいくつかの実施形態において、前記結晶AのTGAパターンは図3に示すとおりである。
【0009】
本願のいくつかの実施形態において、本願に係る結晶Aの別のX線回折ピークは、次に示す特徴を有する。
【表2】
ただし、2θの誤差範囲は±0.3°であり、好ましくは±0.2°である。
【0010】
本願のいくつかの実施形態において、前記結晶Aの別のX線回折パターンは、図4に示すとおりである。
【0011】
本願のいくつかの実施形態において、前記結晶Aの別のDSCパターンは、図5に示すとおりである。
【0012】
本願のいくつかの実施形態において、前記結晶Aの別のTGAパターンは、図6に示すとおりである。
【0013】
本願のいくつかの実施形態において、前記結晶AはHO分子を含み、式Iの化合物に対するHO分子の当量比(モル量で計算)は、0.1~2.0eqから選択される。いくつかの実施形態において、好ましくは0.1~1.0eq、0.2~0.8eq、0.3~0.7eq又は0.4~0.6eqである。いくつかの実施形態において、好ましくは0.1eq、0.2eq、0.3eq、0.4eq、0.5eq、0.6eq、0.7eq、0.8eq、0.9eq、1.0eq、1.1eq、1.2eq、1.3eq、1.4eq、1.5eq、1.6eq、1.7eq、1.8eq、1.9eq又は2.0eqであるか、前記任意の2つの数値からなる範囲から選択され、例えば、0.2~0.8eq、0.3~0.7eq、0.4~0.6eq、0.6~1.0eq、0.7~0.8eq、0.8~1.2eq、0.9~1.1eq、1.3~1.7eq、1.4~1.6eq、0.4~1.8eq、0.6~1.4eq又は0.8~1.2eqから選択される。
【0014】
さらに、本願は結晶Aの製造方法を提供し、当該方法は以下のステップ1)と、2)とを含む。
1)水、又は水を含む混合溶媒から選択される結晶溶媒に式Iに示す化合物を懸濁/溶解して、攪拌する。
2)濾過し、そして任意選択的に洗浄する且つ/又は乾燥させる。
【0015】
本願のいくつかの実施形態において、前記結晶Aの製造方法において、前記水を含む混
合溶媒における非水溶媒は、水相溶性の有機溶媒から選択される。好ましくは、前記水相溶性の有機溶媒はC1-4アルコール、テトラヒドロフラン、アセトン、アセトニトリル又はDMFから選択され、好ましくはメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール又はt-ブタノールから選択され、より好ましくはエタノールに選択される。
【0016】
本願のいくつかの実施形態において、前記結晶Aの製造方法において、水を含む混合溶媒における水相溶性の有機溶媒と水は、任意の可能な比率であってもよい。いくつかの実施形態において、体積量で計算すると、前記水相溶性の有機溶媒と水の比率は、0.1:1~10:1から選択され、好ましくは0.2:1~8:1、0.4:1~6:1、0.5:1~5:1、0.6:1~3:1又は0.8:1~2:1から選択される。
【0017】
本願のいくつかの実施形態において、前記結晶Aの製造方法において、結晶溶媒の使用量は比較的広い範囲から選択できる。いくつかの実施形態において、式Iに示す化合物1gに対応する結晶溶媒の使用量(体積単位mLで計算)は、0.1mL~100mLから選択され、好ましくは1mL~50mLから選択され、より好ましくは2mL~20mLから選択される。
【0018】
本願のいくつかの実施形態において、前記結晶Aの製造方法において、結晶時の反応温度は、比較的広い範囲から選択できる。いくつかの実施形態において、ステップ1)は、10~80℃の範囲から選択される温度で行われ、好ましくは20~60℃で行われ、より好ましくは25~50℃行われる。
【0019】
さらに、本願は、式Iに示す化合物を含む結晶Aの結晶組成物を提供する。本願のいくつかの実施形態において、式Iに示す化合物の結晶Aは結晶組成物の重量の50%以上を占め、好ましくは80%以上を占め、より好ましくは90%以上を占め、さらに好ましくは95%以上を占める。
【0020】
さらに、本願は式Iに示す化合物の結晶Aを含む医薬組成物を提供し、当該医薬組成物は有効量の式Iに示す化合物の結晶A、又は式Iに示す化合物の結晶Aを含む結晶組成物を含む。また、当該医薬組成物は薬学的に許容される担体、賦形剤及び/又は媒体を含むか、又は含まなくてもよい。
【0021】
さらに、本願はファルネソイドX受容体に関連する各種の疾患と症状の治療又は予防のための医薬を製造するための、式Iに示す化合物の結晶A、又は上記結晶組成物又は上記医薬組成物の使用を提供する。
【0022】
さらに、本願は、適用対象の哺乳類に対する治療有効量の上記式Iに示す化合物の結晶A、又は上記結晶組成物又は上記医薬組成物の投与を含む、ファルネソイドX受容体に関連する各種の疾患と症状の治療もしくは予防方法、又は使用を提供する。
【0023】
さらに、本願はファルネソイドX受容体に関連する各種の疾患と症状の治療又は予防のための上記式Iに示す化合物の結晶A、又は上記結晶組成物、又は上記医薬組成物を提供する。
【0024】
本願のもう一つの態様は、式Iに示す化合物の結晶Bを提供し、
【化2】
結晶BのX線回折(XRPD)パターンは、2θが6.21°、9.77°、10.71°、12.33°、13.04°の回折ピークを有し、典型的には、2θが6.21°、9.49°、9.77°、10.71°、12.33°、13.04°、14.29°、15.13°の回折ピークを有し、より典型的には、2θが6.21°、9.00°、9.77°、10.71°、12.33°、13.04°、14.29°、14.72°、15.13°、15.59°の回折ピークを有し、さらに典型的には、2θが6.21°、9.00°、9.77°、10.71°、12.33°、13.04°、14.29°、14.72°、15.13°、15.59°、18.14°、20.09°、21.41°の回折ピークを有し、ただし、2θの誤差範囲は±0.2°である。
【0025】
本願のいくつかの実施形態において、結晶BのX線回折(XRPD)パターンは、2θが6.2°、9.7°、10.7°、12.3°、13.0°の回折ピークを有し、典型的には、2θが6.2°、9.4°、9.7°、10.7°、12.3°、13.0°、14.2°、15.1°の回折ピークを有し、より典型的には、2θが6.2°、9.0°、9.4°、9.7°、10.7°、12.3°、13.0°、14.2°、14.7°、15.1°、15.5°の回折ピークを有し、さらに典型的には、2θが6.2°、9.0°、9.4°、9.7°、10.7°、12.3°、13.0°、14.2°、14.7°、15.1°、15.5°、18.1°、20.0°、21.4°の回折ピークを有し、ただし、2θの誤差範囲は±0.3°であり、好ましくは±0.2°である。
【0026】
本願のいくつかの実施形態において、本願に係る結晶BのX線回折ピークは、次に示す特徴を有する。
【表3】
ただし、2θの誤差範囲は±0.3°であり、好ましくは±0.2°である。
【0027】
本願のいくつかの実施形態において、前記結晶BのX線回折パターンは、図7に示すとおりである。
【0028】
本願のいくつかの実施形態において、前記結晶BのDSCパターンは、図8に示すとおりである。
【0029】
本願のいくつかの実施形態において、前記結晶BのTGAパターンは、図9に示すとおりである。
【0030】
本願のいくつかの実施形態において、前記結晶Bは酢酸エチル分子を含み、式Iの化合物に対する酢酸エチル分子の当量比(モル量で計算)は0.1~0.5eqから選択され、好ましくは0.2~0.4eqから選択され、より好ましくは0.25~0.35eqから選択され、さらに好ましくは0.25eq、0.26eq、0.27eq、0.28eq、0.29eq、0.30eq、0.31eq、0.32eq、0.33eq、0.34eq又は0.35eqから選択される。
【0031】
さらに、本願は結晶Bの製造方法を提供し、当該方法は以下のステップ1)と、2)とを含む。
1)式Iに示す化合物を酢酸エチルに懸濁/溶解する。
2)析晶させ、そして任意選択的に濾過し、洗浄する且つ/又は乾燥させる。
【0032】
本願のいくつかの実施形態において、前記結晶Bの製造方法において、結晶溶媒の使用量は比較的広い範囲から選択できる。いくつかの実施形態において、式Iに示す化合物1gに対応する結晶溶媒の使用量(体積単位mLで計算)は、0.1mL~100mLから選択され、好ましくは1mL~50mLから選択され、より好ましくは2mL~20mLから選択される。
【0033】
さらに、本願は式Iに示す化合物の結晶Bを含む結晶組成物を提供する。本願のいくつ
かの実施形態において、式Iに示す化合物の結晶Bは結晶組成物の重量の50%以上を占め、好ましくは80%以上を占め、より好ましくは90%以上を占め、さらに好ましくは95%以上を占める。
【0034】
さらに、本願は式Iに示す化合物の結晶Bを含む医薬組成物を提供し、当該医薬組成物は有効量の式Iに示す化合物の結晶B、又は式Iに示す化合物の結晶Bを含む結晶組成物を含む。また、当該医薬組成物は薬学的に許容される担体、賦形剤及び/又は媒体を含むか、又は含まなくてもよい。
【0035】
さらに、本願はファルネソイドX受容体に関連する各種の疾患と症状の治療又は予防のための医薬を製造するための、式Iに示す化合物の結晶B、又は上記結晶組成物又は上記医薬組成物の使用を提供する。
【0036】
さらに、本願は、適用対象の哺乳類に対する治療有効量の上記式Iに示す化合物の結晶B、又は上記結晶組成物、又は上記医薬組成物の投与を含むファルネソイドX受容体に関連する各種の疾患と症状の治療もしくは予防方法又は使用を提供する。
【0037】
さらに、本願はファルネソイドX受容体に関連する各種の疾患と症状の治療又は予防のための上記式Iに示す化合物の結晶B、又は上記結晶組成物、又は上記医薬組成物を提供する。
【0038】
本願のもう一つの態様は、式Iに示す化合物の固体非晶質を提供する。
【化3】
【0039】
本願のいくつかの実施形態において、前記式Iに示す化合物の固体非晶質のXRPDには、典型的な回折ピークがなく、図10に記載のとおりであってもよい。
【0040】
本願のいくつかの実施形態において、前記式Iに示す化合物の固体非晶質のMDSCパターンは、図11に示すとおりである。
【0041】
本願のいくつかの実施形態において、前記式Iに示す化合物の固体非晶質のTGAパターンは、図12に示すとおりである。
【0042】
本願のいくつかの実施形態において、前記式Iに示す化合物の固体非晶質は、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、イソブタノール、t-ブタノール、テトラヒドロフラン、アセトン、DMF又はこれらの混合溶媒から選択される無水溶媒において製造される。いくつかの実施形態において、好ましくは、前記溶媒はエタノール又はイソプロパノールから選択される。
【0043】
さらに、本願は式Iに示す化合物の固体非晶質の製造方法を提供し、当該方法は、以下のステップ1)と、2)とを含む。
1)メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール
、イソブタノール、t-ブタノール、テトラヒドロフラン、アセトン、DMF又はこれらの混合溶媒から選択される無水溶媒に式Iに示す化合物を溶解する。
2)冷却して固体を析出させる又は溶媒を完全に蒸発し、そして任意選択的に濾過し、洗浄する且つ/又は乾燥させる。
【0044】
本願のいくつかの実施形態において、前記式Iに示す化合物の固体非晶質の製造方法のステップ1)において、好ましくは、前記溶媒はエタノール又はイソプロパノールである。
【0045】
本願のいくつかの実施形態において、前記式Iに示す化合物の固体非晶質の製造方法において、前記溶媒の使用量は比較的広い範囲から選択できる。いくつかの実施形態において、式Iに示す化合物1gに対する前記溶媒の使用量(体積単位mLで計算)は0.1mL~100mLから選択され、好ましくは1mL~50mLから選択され、より好ましくは2mL~20mLから選択される。
【0046】
さらに、本願は式Iに示す化合物の固体非晶質を含む医薬組成物を提供し、当該医薬組成物は有効量の式Iに示す化合物の固体非晶質を含む。また、当該医薬組成物は薬学的に許容される担体、賦形剤及び/又は媒体を含むか、又は含まなくてもよい。
【0047】
さらに、本願はファルネソイドX受容体に関連する各種の疾患と症状の治療又は予防のための医薬を製造するための、式Iに示す化合物の固体非晶質又は上記医薬組成物の使用を提供する。
【0048】
さらに、本願は適用対象の哺乳類に対する治療有効量の上記式Iに示す化合物の固体非晶質又は上記医薬組成物の投与を含むファルネソイドX受容体に関連する各種の疾患と症状の治もしくは予防方法又は使用を提供する。
【0049】
本願において、前記ファルネソイドX受容体に関連する各種疾患と症状は、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、原発性胆汁性肝硬変(PBC)、胆汁うっ滞性肝疾患、慢性肝疾患、C型肝炎感染、アルコール性肝疾患、肝線維化、原発性硬化性胆管炎(PSC)、胆石、胆道閉鎖症、下部尿路症状と良性前立腺過形成(BPH)、尿路結石、肥満症、2型糖尿病、アテローム性動脈硬化、動脈硬化症、高コレステロール血症、高脂血症が誘発する又は高コレステロール血症と高脂血症が誘発する肝機能障害を含む。
【0050】
本願において、X線回折パターンは下記の事項にて測定される。装置:Bruker D8 ADVANCE X線回折装置;方法:ターゲット:Cu:K-α;波長λ=1.54179Å;管電圧Voltage:40kV;発散スリット:0.60mm;検出器スリット:10.50mm;発散制限スリット:7.10mm;管電流:40mA;走査範囲:4°~40°;走査速度:1ステップ0.12秒、1ステップ0.02°;試料トレイ回転数:15rpm。
【0051】
なお、X線回折パターンにおいて、結晶化合物から得た回折パターンは、特定の結晶形に対して特徴的なものであり、そのバンド(特に小さい角度において)の相対強度は結晶条件、粒径及び他の測定条件の差異による優先配向効果によって変化する可能性がある。そのため、回折ピークの相対強度に対応する結晶形は特徴的なものではなく、既知の結晶形と同一のものであるかどうかを判断する際、ピークの相対強度ではなく相対位置に注目すべきである。また、任意の確定された結晶形において、ピークの位置に微小な誤差が存在し得ることは、結晶学の分野では周知された事実である。例えば、試料の分析時における温度の変化、試料の移動、又は装置の標定などにより、ピークの位置は移動する可能性
があり、2θ値の測定誤差は約±0.3°又は±0.2°になる可能性もある。従って、各種の結晶形構造を決定する際、この誤差も考慮に含めるべきである。XRPDパターンにおいて、通常2θ角又は面間隔dでピーク位置を表す。両者にはd=λ/2sinθという簡単な変換関係がある。ここで、dは面間隔、λは入射X線の波長、θは回折角である。同一種類の化合物の同一種類の結晶形の場合、そのXRPDパターンにおけるピーク位置は全体的に類似性を有し、相対強度の誤差が大きいという可能性がある。なお、混合物を同定する際、含有量の低減などの要素により回折線の一部欠失が生じる可能性があるが、このような場合、高純度の試料に観察された全てのバンドではなく、1つのバンドだけで結晶が同定されるという可能性がある。本分野で周知のように、当該ピーク相対強度(I%)はピーク高さ(Height)に基づいて算出できる、又はピーク面積(Area)に基づいて算出できる。本願において、典型的には、ピーク高さ(Height)に基づいて算出する。
【0052】
本願において、示差走査熱量測定(DSC)は下記の事項にて行われる。装置:TA Q2000示差走査熱量計。方法:試料(1mg以内)をDSCアルミニウム製試料パンに入れて、50mL/分Nの条件において、10℃/分(又は5℃/分)の昇温速度で、試料を30℃(室温)から300℃(又は350℃)に加熱するように測定する。
【0053】
本願において、温度変調示差走査熱量測定(MDSC)は、下記の事項にて行われる。装置:TA Q2000示差走査熱量計。方法:試料(2mg以内)をDSCアルミニウム製試料パンに入れて、在50mL/分Nの条件において、2℃/分の昇温速度、昇温幅2℃、周期60秒で、試料を0℃から200℃に加熱するように測定する。
【0054】
なお、DSCは、結晶構造の変化又は結晶融解により結晶が熱を吸収又は放出する場合の温度差を測定するために利用される。同一種類の化合物の同一種類の結晶形の場合、連続的に分析する過程で、温度差及び融点誤差は、典型的に約5℃以内にある。一つの化合物が特定のDSCピーク又は融点を有するというのは、当該DSCピーク又は融点±5℃を指す。DSCは異なる結晶形を識別するための補助的な方法として利用できる。特定の結晶形は、当該温度差によって特徴的に認識できる。
【0055】
本願において、熱重量分析(TGA)は下記事項にて行われる。装置:TA Q5000熱重量分析計。方法:試料(2~5mg)をTGA用白金製試料パンに入れて、25mL/分Nの条件において、10℃/分の昇温速度で、試料を室温から300℃に、又は重量が20%減少するまで加熱するように測定する。
【0056】
なお、医薬の結晶形を製造する際、医薬分子が溶媒分子と接触する過程で、外部条件と内部要因により溶媒分子と化合物分子が共晶を形成して固体物質の中に残留される状況は避けられにくく、これによって溶媒和物が形成される。具体的には、定比溶媒和物及び不定比溶媒和物を含む。当該溶媒和物も本発明の範囲に含まれる。
【0057】
本願において、結晶に溶媒分子が含まれる場合、式Iの化合物に対する溶媒分子の当量比(モル量で計算)でこれを表す。例えば、式Iの化合物に対するHO分子の当量比(モル量で計算)が0.1~2.0eqから選択される場合、当該結晶において、式Iの化合物とHO分子のモル量の比は1:0.1~2.0から選択されることを指す。
【0058】
本願において、用語「医薬組成物」とは、本願化合物と、本分野で一般的に使用される生理活性化合物を生物体(例えば、ヒト)に輸送するための担体、賦形剤及び/又は媒体とからなる1種以上の製剤を指す。医薬組成物は、生物体に対する本願化合物の投与を容易にするためのものである。
【0059】
用語「担体」は、細胞又は組織への特定化合物の導入を容易にするための化合物として定義される。例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)は、特定の有機化合物を生物体の細胞又は組織に投与しやすいようにできるため、通常担体として使用される。
【0060】
「薬学的に許容される担体」は、国家薬品管理機関によって使用の許可を与えられたヒト又は家畜に使用可能な賦活剤、賦形剤、流動化剤、甘味剤、希釈剤、防腐剤、染料/着色剤、調味剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、安定化剤、等張化剤、溶媒又は乳化剤を含むが、これらに限定されない。
【0061】
「治療有効量」とは、本願化合物の量を指す。哺乳類、好ましくはヒトに投与される場合、次に定義されたように、哺乳類、好ましくはヒトにおけるウイルス感染の治療を実現できる。「治療有効量」に係る本願化合物の量は、化合物、疾患の状態又はその程度、投与方式及び治療対象の哺乳類の年齢に応じて異なっているが、当業者がその知識又は本発明に記載の内容によって决定してもよい。
【0062】
本願で使用される溶媒はいずれも市販品であり、さらに精製せずにそのまま使用できる。反応は一般的に不活性窒素ガスにおいて、無水溶媒の中で行われる。
【発明の効果】
【0063】
本願に係る式Iに示す化合物の結晶A及び結晶Bは、純度が高い、結晶度が高い、安定性に優れる、吸湿性が低い等の利点を有する。本願に係る式Iに示す化合物の固体非晶質は、吸湿が低いという利点を有する。また、本願に係る式Iに示す化合物結晶A、結晶B及び固体非晶質の製造方法は操作しやすく、溶媒が安価なもので入手しやすく、結晶化のための条件が穏やかであるため、産業化された生産に適する。
【図面の簡単な説明】
【0064】
図1図1は、式Iに示す化合物の結晶A(実施例2の方法1)のXRPDパターンである。
図2図2は、式Iに示す化合物の結晶A(実施例2の方法1)のDSCパターンである。
図3図3は、式Iに示す化合物の結晶A(実施例2の方法1)のTGAパターンである。
図4図4は、式Iに示す化合物の結晶A(実施例2の方法2)のXRPDパターンである。
図5図5は、式Iに示す化合物の結晶A(実施例2の方法2)のDSCパターンである。
図6図6は、式Iに示す化合物の結晶A(実施例2の方法2)のTGAパターンである。
図7図7は、式Iに示す化合物の結晶BのXRPDパターンである。
図8図8は、式Iに示す化合物の結晶BのDSCパターンである。
図9図9は、式Iに示す化合物の結晶BのTGAパターンである。
図10図10は、式Iに示す化合物の固体非晶質のXRPDパターンである。
図11図11は、式Iに示す化合物の固体非晶質のMDSCパターンである。
図12図12は、式Iに示す化合物の固体非晶質のTGAパターンである。
【実施例
【0065】
以下記載の実施例は、本願に係る技術的解決手段に関する、さらなる非限定的詳細な説明である。本発明の範囲を限定するためのものではなく、本発明に係る例示的な説明と典型的例に過ぎない。本願で使用される溶媒、試薬及び原料等はいずれも市販されている化学用又は分析用の製品である。
【0066】
実施例1 式Iの化合物の製造
ステップ1-1 式3の化合物の製造
【化4】
25℃で、メタノール(33L)を50L反応器に加え、基質2(3.330kg、8.23mol)を反応器に加えて、p-トルエンスルホン酸一水和物(156.6g、0.823mol)を加え、反応液を60℃に加熱して、当該温度で12時間攪拌した。TLCによって反応を監視して、原料が消失したことが示され、HPLCによって約100%の産物が生成したことが示された。反応液を室温に冷却して、飽和炭酸水素ナトリウム溶液でpH値を約9に調節して、溶液を遠心脱水して粗生成物を得て、酢酸エチル(30L)で粗生成物を溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液(9L)と、水(9L)と、飽和食塩水(9L)とを順に使用して洗浄した。有機相を遠心脱水して製品を得た。産物の性状は褐色の油状液体である。
【0067】
H NMR(400MHz,CDCl)δ3.66(s,3H),3.61-3.49(m,1H),2.74-2.66(m,1H),2.48-2.33(m,2H),2.24-2.15(m,1H),2.07-1.61(m,13H),1.54-1.40(m,3H),1.31-1.07(m,6H),1.02-0.77(m,9H),0.69(s,3H)。
【0068】
ステップ1-2 式4の化合物の製造
【化5】
ジクロロメタン(30L)で式3の化合物(3100g)を溶解して、イミダゾール(529.4g)と、トリエチルアミン(786.8g)とを順に加え、反応器内で冷却した(内部温度は5℃)。当該温度でTBDPSCl(2140g)を徐々に滴下し、滴下する過程で温度が10℃を超えないように注意し、滴下完了後に室温で反応液を攪拌して16時間反応させた。TLCによって原料が完全に反応したことが示されると、反応液に水15Lを徐々に滴下して、反応をクエンチした。静置して、反応液が分層すると、下層のジクロロメタン相を取り出して、飽和食塩水(10L)でジクロロメタン相を洗浄し、有機相を濃縮させて産物を得た。産物の性状は褐色の油状液体である。
【0069】
H NMR(400MHz,CDCl)δ7.69-7.63(m,4H),7.
45-7.34(m,6H),3.77(br t,J=6.1Hz,1H),3.69(s,3H),3.54-3.44(m,1H),2.57(q,J=6.1Hz,1H),2.46(br dd,J=3.0,14.6Hz,1H),2.36-2.21(m,2H),2.08-1.67(m,9H),1.62-1.17(m,12H),1.12-0.87(m,14H),0.70-0.62(m,6H)。
【0070】
ステップ1-3 式5の化合物の製造
【化6】
15℃で、テトラヒドロフラン(10L)を50L反応器に加え、Nで保護して反応器にLiAlH(235g、6.2mol)を加えて、反応液を内部温度が5℃になるまで冷却した。テトラヒドロフランで式4の化合物(2.04kg)を溶解して、LiAlHのテトラヒドロフラン溶液に徐々に滴下して、約2時間30分で滴下を完了した。15℃で反応液を2時間攪拌し、TLCによって反応を監視して、原料が消失したことが示された。反応液にHO(235mL)を徐々に滴下して反応をクエンチして、さらにテトラヒドロフラン溶液(20L)を加え、15%NaOH溶液(235mL)を反応液に徐々に滴下えして、12時間攪拌した。反応液を濾過して、ジクロロメタン(3L)でフィルターケーキを洗浄して、濾液を遠心脱水して、油状物質を得た。DCM(15L)で油状物質を溶解して、水(5L)及び飽和食塩水(5L)で有機相をそれぞれ1回洗浄し、濾液を遠心脱水して、白色固体(1.8kg)を得た。反応液を室温(約16℃)に冷却して、飽和炭酸水素ナトリウム溶液でpH値を約9に調節し、溶液を(少量が残るように)遠心脱水して粗生成物を得て、酢酸エチル(30L)で粗生成物を溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム溶液(9L)と、水(9L)と、飽和食塩水(9L)とで順に洗浄した。有機相を遠心脱水して製品を得た。産物の性状は褐色の油状液体である。
【0071】
H NMR(400MHz,CDCl)δ7.64-7.58(m,4H),7.37-7.25(m,6H),3.68-3.52(m,3H),3.38-3.28(m,1H),1.91-1.03(m,25H),1.02-0.93(m,11H),0.88(d,J=6.5Hz,3H),0.72-0.64(m,6H),0.57(s,3H)。
【0072】
ステップ1-4 式6の化合物の製造
【化7】
式5の化合物(3.52kg、5.58mol)の無水ジクロロメタン(35L)溶液にイミダゾール(1.14kg、16.73mol)を加えた。5℃で、反応系にクロロトリメチルシラン(1770mL、13.95mol)を滴下して、2時間で滴下を完了
した。15℃で反応系を3時間攪拌した。TLCによって反応がほぼ完了したことを検出した。15℃で反応系に水10Lを加えて、攪拌し、分液した。水10Lと、飽和食塩水10Lとを順に使用してそれぞれ有機相を1回洗浄した。
【0073】
有機相を約5Lに濃縮させて、溶液にエタノール30Lを加えた。15℃で、溶液に炭酸カリウム(1.93kg、13.95mol)を加えた。15℃で反応系を14時間攪拌した。TLCによって反応がほぼ完了したことを検出した。反応液を濾過して、ジクロロメタン3Lでフィルターケーキをリンスした。濾液を濃縮させて、油状物質を得た。ジクロロメタン20Lで油状物質を溶解して、水10Lと、飽和食塩水10Lとを順に使用してそれぞれ1回洗浄した。無水硫酸ナトリウム3kgで有機相を乾燥させて、濾過した。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(100~200メッシュ、230mm×800mm)によって精製し、n-ヘプタン:酢酸エチル=30:1~20:1にて溶出した。目的化合物6を得た(3.20kg、純度87%)。
【0074】
H NMR(400MHz,CDCl):δ7.77-7.64(m,4H),7.45-7.32(m,6H),3.78-3.56(m,3H),3.43-3.31(m,1H),1.98-1.13(m,24H),1.07(s,9H),0.97(d,J=6.5Hz,3H),0.83-0.74(m,4H),0.68-0.55(m,6H),0.17-0.05(m,9H)。
【0075】
ステップ1-5 式8の化合物の製造
【化8】
反応器に式6の化合物(2498.0g、3.10mol)を加えて、THF(12.5L)で溶解し、内部温度を5~10℃に制限して、徐々にt-BuONa(614.2g、6.20mol)を加え、約40分間で加え終えたら、10分間攪拌して、20~23℃に昇温して1時間30分攪拌して、5~10℃に冷却した。内部温度を保持して、反応液に式7の化合物のTHF溶液(12.5L、6.20moL、1073.1g)を滴下して、60℃に昇温した。1時間30分攪拌して、TLC及びHPLCによって完全に反応したことが検出されると、20℃に冷却した。水25Lを加えてクエンチし、酢酸エチルで(25L×2)抽出して、有機相を合わせて、飽和食塩水で(25L×3)洗浄した。遠心脱水して油状の粗生成物を得た。粗生成物をアセトン2.5Lに溶解して、3つの10L三口フラスコに合計で6.6×3Lのメタノールを加えた。内部温度を-10~-15℃に制限して、粗生成物溶液を徐々に滴下して、攪拌すると、大量の固体が析出した。濾過し、メタノール3.0Lでフィルターケーキを洗浄して、黄色の固体を得た(乾燥されていない)。黄色固体にメタノール18.0Lを加えて、一晩スラリー化させた。濾過して、メタノール3.0Lでフィルターケーキを洗浄して、黄色の固体を得て(乾燥されていない)、黄色固体にメタノール18.0Lを加え、一晩スラリー化させて濾過した。メタノール2.0Lでフィルターケーキを洗浄した。24時間真空乾燥させて、黄色固体2522.0g、すなわち式8の化合物を得た(2522.0g、収率90%、純度92.9%)。
【0076】
H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ=8.25(d,J=2.0Hz,1H),7.73(d,J=2.0Hz,1H),7.63-7.51(m,4H),
7.33-7.21(m,6H),4.48-4.27(m,2H),3.50(s,1H),3.31-3.18(m,1H),1.98-1.03(m,27H),0.95(s,9H),0.73-0.64(m,4H),0.58-0.46(m,6H),0.00(s,9H)。
【0077】
ステップ2-2 式9の化合物の製造
【化9】
反応器(20L)に式8の化合物(2520.0g、2.79mol)と、EtOH(13.0L)とを加え、攪拌して溶解させ、内部温度を10℃以内に制限して、NaOH(2232.0g、55.8mol)の水溶液(13.0L)を数回に分けて加えた。温度を105℃に上げ、2.8時間攪拌した。TLC及びHPLCによって完全に反応した
ことが検出されると、反応液を10℃に冷却して、2時間静置し、底部に固体が析出した。上清から19.5Lを除去して、反応液に水39.0Lを加えて、内部温度を12℃に制限して、36時間攪拌した。濾過して、水6.0Lと、アセトニトリル6.0Lとで固体を洗浄して、アセトニトリル10.0Lで2時間スラリー化させて、濾過すると、固体を得た。アセトン12.0Lで16時間スラリー化させ、濾過して、固体を得た。アセトン12.0Lで再度16時間スラリー化させた。濾過して、製品を乾燥させて、白色固体2332.3gの式9の化合物を得た。(2332.3g、収率94.7%、純度99.7%)。
【0078】
H NMR(400MHz,メタノール-d)δ=8.48(d,J=2.0Hz,1H),8.07(d,J=2.0Hz,1H),7.55(br dd,J=6.5,12.5Hz,4H),7.41-7.11(m,6H),4.52-4.15(m,2H),3.54(br s,1H),3.34-3.22(m,1H),2.04-1.14(m,28H),0.93(s,9H),0.69(s,4H),0.60-0.43(m,6H),0.00(s,9H)。
【0079】
ステップ2-3 式Iの化合物の製造
【化10】
反応器(50L)に式9の化合物(2330.3g、2.65mmol)を加え、THF(24.0L)を加えて溶解させた。内部温度を10℃に制限して、濃HCl(10.0L、120.00mol)を徐々に滴下して、2時間で13℃に昇温させて(室温)で90時間攪拌した。TLCによって検出して、8~10℃で水酸化ナトリウム溶液75L(6000g)を徐々に滴下してpHを10に調節し、半時間攪拌してメチルt-ブチルエーテルで(30L×4)抽出し、濃HCl(3000mL)でpHを5に調節して、酢
酸エチルで(30L×2)抽出し、水で有機相を(30L×4)洗浄し、有機相を濃縮させて、産物1350gを得た。酢酸エチル2.0Lとn-ヘプタン5.0Lの混合溶媒で当該産物を一晩スラリー化させ、濾過して、産物1280gを得た。酢酸エチル9.0Lを加えて加熱して(80℃)清澄化させた後、徐々に室温(10℃)に冷却して、式Iの化合物1222gを得た。
【0080】
H NMR(400MHz,メタノール-d)δ=8.69(d,J=2.0Hz,1H),8.23(d,J=2.0Hz,1H),4.67-4.30(m,2H),3.67(br s,1H),3.34-3.22(m,1H),2.10-1.11(m,25H),1.09-0.97(m,3H),0.96-0.86(m,6H),0.73(s,3H)。
【0081】
当該ステップで得た産物は、式Iに示す化合物の結晶Bである。その典型的なXRPDパターン、DSCパターン、TGAパターンはそれぞれ図7図8図9に示すとおりである。
【0082】
実施例2 式Iに示す化合物の結晶A
方法1:
式Iの化合物58gをエタノール(225mL)と水(175mL)の混合溶媒に懸濁させて、45℃で18時間攪拌して、大量の白色固体が生成すると、濾過して、フィルターケーキを乾燥させて産物48gを得た。
【0083】
方法2:
式Iの化合物200mgを水(2mL)に加えて懸濁液を調製して、40℃で1日半攪拌した後、温度を50℃に調整して引き続き1日攪拌し、試料を遠心分離して30℃の真空乾燥器に入れて乾燥させて産物を得た。
【0084】
式Iの化合物の結晶Aの典型的なXRPDパターン、DSCパターン、TGAパターンはそれぞれ図1図2図3に示すとおりである(実施例2の方法1)。
【0085】
式Iの化合物の結晶Aの別の典型的なXRPDパターン、DSCパターン、TGAパターンはそれぞれ図4図5図6に示すとおりである(実施例2の方法2)。
【0086】
実施例3 式Iに示す化合物の固体非晶質
式Iの化合物122gを無水エタノール(500mL)に溶解して、15℃で30分間攪拌し、溶液を加熱して清澄化させた後、遠心脱水して、オイルポンプで吸引して固体の重量が変わらなくなると、白色固体119gを得た。
【0087】
式Iに示す化合物の固体非晶質の典型的なXRPDパターンは図8に示すとおりである。
【0088】
実験例1 結晶Aの固体の安定性試験
1)40℃(開放)、2)60℃(開放)、3)室温/92.5%RH(開放)、4)室温/75%RH(開放)、5)40℃/75%RH(開放)、6)60℃/75%RH(開放)といった条件における結晶Aの固体の安定性を調べた。前記室温は20~30℃から選択された。
【0089】
適量の結晶A試料を秤量してガラス試料瓶の底部に置いて、薄く広げた。上記条件において設置された試料は、いずれもアルミ箔で瓶口を密封し、試料が外部空気と充分に接触するように、アルミ箔に小さな穴を開けた。5日目、10日目にサンプルを採取してXR
PD検出を行い、検出結果を0日の初期検出結果と比較すると、いずれも結晶形試料は変化しなかった結果であった。
【0090】
実験例2 結晶Bの固体の安定性試験
1)室温/92.5%RH(開放)、2)室温/75%RH(開放)、3)40℃/75%RH(開放)、4)60℃/75%RH(開放)といった条件における結晶Bの固体の安定性を調べた。前記室温は20~30℃から選択された。
【0091】
適量の結晶B試料を秤量してガラス試料瓶の底部に置いて、薄く広げた。上記条件において設置された試料は、いずれもアルミ箔で瓶口を密封し、試料が外部空気と充分に接触するように、アルミ箔に小さな穴を開けた。5日目、10日目にサンプルを採取してXRPD検出を行い、検出結果を0日の初期検出結果と比較すると、いずれも結晶形試料は変化しなかった結果であった。
【0092】
実験例3 式Iに示す化合物の固体非晶質固体の安定性試験
1)室温/75%RH(開放)、2)40℃/75%RH(開放)、3)60℃/75%RH(開放)といった条件における式Iに示す化合物の固体非晶質固体の安定性を調べた。前記室温は20~30℃から選択された。
【0093】
適量の非晶質試料を秤量して、それぞれ異なる仕様のガラス試料瓶の底部に置いて、薄く広げた。上記条件において設置された試料は、いずれもアルミ箔で瓶口を密封し、試料が外部空気と充分に接触するように、アルミ箔に小さな穴を開けた。10日目、1か月後にサンプルを採取して検出を行い、検出結果を0日の初期検出結果と比較した。XRPD検出結果では、試料に明らかな変化がないことが確認された。
【0094】
実験例4 吸湿性実験
下記の方法と条件で、結晶A及び式Iに示す化合物の固体非晶質に対し動的水蒸気吸着測定(Dynamic Vapor Sorption、DVS)分析を行った。試料(10~15mg)を秤量して試料トレイに入れる。装置型番:SMS DVS Advantage動的水蒸気吸着測定装置、温度:25℃、平衡:dm/dt=0.01%/分(最短:10分間、最長:180分間)、乾燥:0%RHで120分間乾燥、RH(%)測定勾配:10%、RH(%)測定勾配範囲:0%~90%~0%。次のように吸湿性を分類している。
【0095】
【表4】
【0096】
結果により、1)結晶Aは25±1℃及び80±2%RHにおける吸湿による重量増加が0.835%であり、やや吸湿性があること、2)式Iに示す化合物の固体非晶質は2
5±1℃及び80±2%RHにおける吸湿による重量増加が1.775%であり、やや吸湿性があることが判明した。
【0097】
実験例5:インビトロアッセイ
FXR生化学実験
実験目的:
化学増幅型ルミネッセンスプロキシミティホモジニアスアッセイ(alphascreen)により化合物のFXR結合反応に対する活性化作用を検出する。
【0098】
実験材料:
1.タンパク質:グルタチオン-S-転移酵素で標識されたFXRヒトタンパク質(インビトロジェン社提供)
2.共活性化因子:ビオチンで標識されたステロイド受容体補助因子(アナスペック社提供)
3.検出試薬:化学増幅型ルミネッセンスプロキシミティホモジニアスアッセイ(alphascreen)検出キット(パーキンエルマー社提供)
【0099】
実験方法:
1.化合物の希釈:被験化合物の40μMのDMSO溶液を調製して、化合物を3倍希釈して10の濃度を設定した。参照化合物の400μMのDMSO溶液を調製して、1.5倍希釈して10の濃度を設定した。希釈されたDMSO溶液を各ウェル150nLで384マイクロプレートのウェルに加えた。
【0100】
2.グルタチオン-S-転移酵素で標識されたFXRヒトタンパク質及びビオチンで標識されたステロイド受容体補助因子をそれぞれ、濃度0.4nM及び濃度30nMの混合溶液として調製した。各ウェル15μLで384マイクロプレートのウェルに加えた。室温で1時間インキュベートした。
【0101】
4.化学増幅型ルミネッセンスプロキシミティホモジニアスアッセイ(alphascreen)検出キット内の受容体ビーズ混合液を125倍希釈して、各ウェル7.5μLで384マイクロプレートのウェルに加えた。実験過程において暗所条件で操作した。室温で1時間インキュベートした。
【0102】
5.化学増幅型ルミネッセンスプロキシミティホモジニアスアッセイ(alphascreen)検出キット内の供与体ビーズ混合液を125倍希釈して、各ウェル7.5μLで384マイクロプレートのウェルに加えた。実験過程において暗所条件で操作した。室温で1時間インキュベートした。
【0103】
6.EC50測定:Envisionプレートリーダーを使用して波長680nmにて励起させ、520~620nmにおける吸収信号を読み取った。
【0104】
7.データ分析:Prism 5.0でデータを分析して、化合物の活性化作用EC50値を算出した。化合物の最大信号値と参照化合物の最大信号値との比値を、化合物の活性化効力パーセンテージ(Efficacy)とした。
【0105】
FXR細胞実験
実験目的:
β-ラクタマーゼレポーター遺伝子を利用して化合物の細胞機能活性に対する影響を検出する。
【0106】
実験材料:
1.細胞株:FXR HEK 293T DA
2.細胞培地:DMEM培地に10%血清及びペニシリン/ストレプトマイシン(1×)添加
3.検出試薬:GeneBLAzer(登録商標)レポーター遺伝子検出キット(インビトロジェン社提供)
【0107】
実験方法:
1.化合物の希釈:被験化合物の100μMのDMSO溶液を調製して、化合物を3倍希釈して10の濃度を設定した。参照化合物の100μMのDMSO溶液を調製して、1.3倍希釈して10の濃度を設定した。希釈されたDMSO溶液を各ウェル200nLで384マイクロプレートのウェルに加えた。
【0108】
2.細胞接種:FXR HEK 293T DA細胞を蘇生させて、培地で再懸濁させ、密度が5×10個/mLになるように希釈して、各ウェル40μLで384マイクロプレートのウェルに加えた。
【0109】
3. 37℃と5%COの条件において、384マイクロプレートを16時間培養した。
【0110】
4.1mMのLiveBLAzer(登録商標)-FRET B/G(CCF4-AM)基質6μLをB溶液60μL及びC溶液934μLと混合させて、各ウェル8μLで384マイクロプレートのウェルに加えた。
【0111】
5.室温下の暗所条件で、384マイクロプレートを2時間インキュベートした。
【0112】
6.EC50測定:Envisionプレートリーダーを使用して波長409nmにて励起させ、460nm及び530nmにおける吸収信号を読み取った。
【0113】
7.データ分析:Prism 5.0でデータを分析して、化合物の活性化作用EC50値を算出した。被験化合物の最大信号値と参照化合物(ケノデオキシコール酸、CDCA)の最大信号値との比値を、化合物の活性化効力パーセンテージ(Efficacy)とした。
【0114】
【表5】
【0115】
結論:本願化合物はFXR受容体に対し顕著なアゴニスト作用を有し、細胞レベルにおいてもFXR受容体に対して比較的顕著なアゴニスト作用を有する。
【0116】
実験例6:インビボアッセイ
単独投与マウスの薬物動態学研究:
C57BL/6J雄マウス12匹を、1群6匹でランダムに2群に分けた。群1は静脈投与群として、2mg/kg、2mL/kg尾静脈注射投与した(溶媒は10%HPbC
D水溶液で、医薬の溶解度が好ましくない場合は、共溶媒を加える)。群2は経口投与群として、10mg/kg、10mL/kg胃内投与した(溶媒は0.5%HPMC水溶液)。静脉投与群は投与後0.083、0.25、0.5、1、2、4、6、8、24時間に血漿試料を採取した(K-EDTAで抗凝固)。経口投与群は投与後0.25、0.5、1、2、4、6、8、24時間に血漿試料を採取した。各群の6匹の動物に対し、同一の時刻には3匹の血液サンプルを採取し、1回目の3匹の採取と2回目の3匹の採取は交互に実施した。LC-MS/MSを利用して血漿試料分析を行った。血漿濃度と時間の関係性を示すグラスをプロットし、Phoenix WinNonlin 6.3でPKパラメータを算出した。
【0117】
【表6】
【0118】
結論:表2に示すように、同一用量の経口投与後、式Iの化合物の最高血中濃度は参照化合物オベチコール酸を上回り、血中濃度時間曲線下面積も参照化合物オベチコール酸を上回っている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12