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▶ オーストラリアン ニュークリア サイエンス アンド テクノロジー オーガニゼーションの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】圧縮撮像方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   G01T 7/00 20060101AFI20230314BHJP
   G01T 1/164 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
G01T7/00 B
G01T1/164 C
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020521916
(86)(22)【出願日】2018-10-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-24
(86)【国際出願番号】 AU2018051144
(87)【国際公開番号】W WO2019075531
(87)【国際公開日】2019-04-25
【審査請求日】2021-08-05
(31)【優先権主張番号】2017904259
(32)【優先日】2017-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】500461941
【氏名又は名称】オーストラリアン ニュークリア サイエンス アンド テクノロジー オーガニゼーション
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100169823
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 雄郎
(72)【発明者】
【氏名】デイビッド ボードマン
(72)【発明者】
【氏名】マシュー グエネット
(72)【発明者】
【氏名】アリソン フリン
(72)【発明者】
【氏名】アダム サーバット
(72)【発明者】
【氏名】ラクラン シャルティエ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイデン イルター
(72)【発明者】
【氏名】デール プロコポヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ジェフ ワット
【審査官】藤本 加代子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-500962(JP,A)
【文献】特開2005-321390(JP,A)
【文献】特表2017-522543(JP,A)
【文献】三村 和史,圧縮センシング -疎情報の再構成とそのアルゴリズム-,数理解析研究所講究録,第1803巻,日本,京都大学,2012年08月,第26-56頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01T 1/00-7/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入射する放射の圧縮センシング測定を行うに当たり用いるマスクであって、
入射する関心事の放射の強度を変調する材料で形成された本体を具え、
前記本体は複数のマスク開口領域を有し、該マスク開口領域の各々はマスク開口位置のパターン及び少なくとも1つのマスク開口部を具え、該マスク開口部は、それぞれの前記マスク開口領域の他の部分に比べて高い前記放射の透過率を可能にし、相対的な該透過率は、前記圧縮センシングの測定値からの画像の再構成を可能にするのに十分な値であり、
前記マスクは1つ以上の回転対称軸を有し、前記マスク開口領域は該回転対称軸について回転対称であり、
前記マスク開口部は、前記マスクを前記1つ以上の回転対称軸の周りに回転させた後に対称性をもたらす形状を有し、
それぞれの前記マスク開口領域の回転によって生成されるセンシング行列の相互コヒーレンスが1未満であるマスク。
【請求項2】
前記相互コヒーレンスがμ(φ)で表され、
【数1】
であり、ここにφは前記センシング行列のM×N2行を含む行列であり、M回の圧縮センシング測定及びN2画素の画像から生じ、φi及びφjはφの列である、請求項1に記載のマスク。
【請求項3】
前記相互コヒーレンスがμ(φ)で表され、
【数2】
であり、ここにφは前記センシング行列のM×N2行を含む行列であり、M回の圧縮センシング測定及びN2画素の画像から生じ、φi及びφjはφの列である、請求項1に記載のマスク。
【請求項4】
前記センシング行列の前記相互コヒーレンスが最小化された相互コヒーレンスである、請求項1~3のいずれかに記載のマスク。
【請求項5】
前記マスクが、(i)立方体または他のプラトンの立体であり、あるいは(ii)切頂二十面体または他のアルキメデスの立体であり、あるいは(iii)円筒形である、請求項1~4のいずれかに記載のマスク。
【請求項6】
前記マスクが球形である、請求項1~4のいずれかに記載のマスク。
【請求項7】
入射する放射の圧縮センシング測定を行うための検出器であって、
請求項1~6のいずれかに記載のマスクと、
前記マスク内にあり、前記入射する放射に感応する1つ以上の放射センサと、
前記マスクを、前記1つ以上の回転対称軸のうちの少なくとも1つの周りに回転させるための駆動装置と
を具えている検出器。
【請求項8】
複数の放射センサ、及び該放射センサを互いに遮蔽するように配置された放射シールドを具えている、請求項7に記載の検出器。
【請求項9】
請求項7または8に記載の検出器で圧縮センシング測定を行うステップを含む放射検出方法。
【請求項10】
請求項1~6のいずれかに記載のマスクと、
前記マスク内にあり、入射する放射に感応する1つ以上の放射センサと、
前記マスクを、前記1つ以上の回転対称軸の周りに回転させるための駆動装置と
を具えている撮像システム。
【請求項11】
複数の放射センサ、及び該放射センサを互いに遮蔽するように配置された放射シールドを具えている、請求項10に記載の撮像システム。
【請求項12】
請求項10または11に記載の撮像システムで撮像するステップを含む撮像方法。
【請求項13】
前記撮像システムの視野または該視野の一部分の光学像及び/または赤外線画像を作成するステップと、
前記光学像及び/または前記赤外線画像と、前記撮像システムで生成した画像とをオーバーレイするステップと
を含む、請求項12に記載の撮像方法。
【請求項14】
原子炉の廃炉、放射の安全性の監視または検査、放射性廃棄物の特性評価、安全監視または防衛監視、医療撮像、放射線治療、粒子線治療、ガンマ線天文学、X線天文学、荷電粒子加速器ビームにおける、あるいはビームを含む放射におけるミスアライメントのリモート特性評価またはリモート検出、または国境警備の方法であって、
請求項9に記載の放射検出方法または請求項12に記載の撮像方法を含む方法。
【請求項15】
原子炉の廃炉、放射の安全性の監視または検査、放射性廃棄物の特性評価、安全監視または防衛監視、医療撮像、放射線治療、粒子線治療、ガンマ線天文学、X線天文学、荷電粒子加速器ビームにおける、あるいはビームを含む放射におけるミスアライメントのリモート特性評価またはリモート検出、または国境警備用のシステムであって、
請求項7に記載の検出器または請求項10に記載の撮像システムを具えているシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、オーストラリア国特許出願題2017904259号、2017年10月20日出願の出願日及び優先日による優先権を主張し、その内容は参照することによって本明細書に含める。
【0002】
発明の分野
本発明は、放射能源または放射性物質のガンマ線撮像における特定(但し、決して排他的でない)用途向けの圧縮撮像方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
国際公開第2015/176115号(特許文献1)は、ガンマ線放射のような入射する放射の圧縮センシング用のマスク装置を開示している。このマスク装置は1つ以上の符号化されたマスクを具え、これらのマスクの各々は、入射する放射の強度を変調する材料の本体を有する。これらのマスクは複数のマスク開口領域を有し、これらのマスク開口領域は、圧縮センシング測定を可能にするのに十分な、上記1つ以上の符号化されたマスクの他の部分に比べて高い放射の透過率を可能にする。特許文献1は、例えば、球形、半球形、または円筒形マスクの入れ子になった対、及び半球形マスク内に入れ子になった球形マスクを示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2015/176115号
【非特許文献】
【0005】
【文献】D. L. Donohue, “Compressed sensing”, IEEE Trans. Inf. Theory 52 (2006), 1289-1306
【文献】E. J. Candes, J. Romberg, T. Tao, “Robust Uncertainty Principles: Exact Signal Recognition from Highly Incomplete Frequency Information”, IEEE Trans. Inf. Theory, 52 (2006), 489-509
【文献】Daubechies, M. Defrise, C. D. Mol, “An interactive thresholding algorism for linear inverse problems with a sparsity constraint”, Communications on pure and applied mathematics, 57 (2004), 1413-1457
【文献】M. A. T. Figueiredo, R. D. Nowak, S. J. Wright, “Gradient Projection for Sparse Reconstruction: Application to Compressed Sensing and Other Inverse Problems”, IEEE Journal of Selected Topics in Signal Processing 1 (2007), 586-597
【文献】D. L. Donoho, “For most large underdetermined systems of equations, the minimal 11-norm solution is also the sparsest solution”, Commun. Pure Appl. Math., 59(6) (2006), 797-829
【文献】D. L. Donoho, “For most large underdetermined systems of equations, the minimal 11-norm near-solution approximates the sparsest near-solution”, Commun. Pure Appl. Math., 59(7) (2006), 907-934
【文献】D. L. Donoho and J. Tanner, “Sparse nonnegative solution of underdetermined linear equations by linear programming”, Proc. Nat. Acad. Sci., 102(27) (2005), 9446-9431
【文献】D. L. Donoho and J. Tanner, “Observed universality of phase transitions in high-dimensional geometry, with implications for modern data analysis and signal processing”, Phil. Trans. R. Soc. A., 367(1906) (2009), 4273-4293
【文献】H. Monajemi, S. Jafarpour, and M. Gavish, Stat. 330/CME 362 Collaboration and D. L. Donoho, “Deterministic matrices matching the compressed sensing phase transitions of Gaussian random matrices”, Proc. Nat. Acad. Sci., 110(2013), 1181-1186
【文献】M. E. Lopes, “Unknown Sparsity in Compressed Sensing: Denoising and Inference”, IEEE Transactions on Information Theory, 62(9) (2016), 5145-5166
【文献】M. E. Lopes, “Estimating unknown sparsity in compressed sensing”, Proc. 30th International Conference on Machine Learning, (2013), 217-225
【文献】N. Hurley and S. Rickard, “Comparing measures of sparsity”, IEEE Transactions on Information Theory, 55(10) (2009), 4723-4741
【文献】S. Rickard and M. Fallon, “The Gini index of speech”, in Proc. Conf. Inf. Sci. Syst., Princeton, NJ, 2004
【文献】C. Gini, “Measurement of inequality of incomes”, Economic Journal, 31(1921), 124-126
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の広い態様によれば、入射する放射の圧縮センシング用のマスクが提供され、このマスクは:
(例えば、入射する放射を減衰させることによって、あるいは入射する放射の少なくとも一部を散乱させることにより)入射する関心事の放射の強度を変調する材料で形成された本体を具え;
この本体は(複数の面、または複数の面の複数の部分のような)複数のマスク開口領域を有し、各マスク開口領域は少なくとも1つのマスク開口部(または窓)を具え、このマスク開口部は、それぞれのマスク開口領域の他の部分に比べて高い放射の透過率を可能にし、この相対的な透過率は、圧縮センシングの測定値の再構成を可能にするのに十分であり;
上記マスクは1つ以上の回転対称軸を有し、マスク開口領域はこれらの回転対称軸について回転対称であり;
マスク開口部は、上記1つ以上の回転対称軸の周りに回転させた後に対称性をもたらす形状を有し;
それぞれのマスク開口領域の回転によって生成されるセンシング行列(マトリクス)の相互コヒーレンスは1未満である。
【0007】
マスク開口部(即ち、開口領域における「開いた」場所)は、(マスク本体または他のものの)材料の一部をまだ含むが、開口領域における「閉じた」場所よりも高い放射の透過率を与える点で開口部を構成することは明らかである。このことは、開口領域における「閉じた」場所を閉じる材料と同じ材料を、但しより薄く設けることによって、あるいは、入射する放射に対してより透過率の高い異なる材料を設けることによって実現することができる。こうした好適例では、上記開口部をガラス窓に例えることができ、即ち、少なくとも部分的に透過性である。しかし、他の好適例では、何らかの材料を省略または除去することによって上記マスク開口部を提供することができる(「ガラス入りでない窓」を参照)。本明細書では、両者を「開口部」、あるいは開口領域における「開いた」場所と称する。
【0008】
従って、1つ以上の(一般に複数の)回転対称軸を有する幾何学的形状は、既存の方法に対する利点を提供する。種々の好適例では、単一のマスクしか必要とせず、撮像は全方向に行うことができる(即ち、事実上の4πまたは全方向撮像)。単一のマスクは、撮像装置の製造のためのコスト節減及びシステム重量の低減を暗に意味する。
【0009】
上記相互コヒーレンスはμ(φ)で表すことができ、ここに:
【数1】
であり、ここにφはセンシング行列のM×N2行を含む行列であり、M回の測定及びN2画素(ピクセル)の画像から生じる。
【0010】
その代わりに、上記相互コヒーレンスはμ(φ)で表すことができ、ここに:
【数2】
であり、ここにφはセンシング行列のM×N2行を含む行列であり、M回の測定及びN2画素の画像から生じ、φi及びφjはφの列である。
【0011】
1つの好適例では、上記センシング行列の相互コヒーレンスが最小化された相互コヒーレンスであり、即ち、適切な技術によって最小化されている。
【0012】
上記マスクは、(3つの回転対称軸を有する)立方体とすることができ、あるいは他のプラトンの立体(即ち、四面体、八面体、十二面体、または二十面体)とすることができる。その代わりに、上記マスクは切頂二十面体または他のアルキメデスの立体(即ち、2種類以上の正多角形の面を有する立体)とすることができる。実際に、1つの好適例では、上記マスクが球形であり、上記マスクが1つ以上の回転対称軸を有し、上記マスク開口領域がこの回転対称軸について対称であるように、上記マスク開口領域が規定される。
【0013】
本発明の第2の広い態様によれば、入射する放射の圧縮センシング用の検出器が提供され、この検出器は:
上述した第1の態様によるマスクと;
このマスク内にあり、入射する放射に感応する1つ以上の放射センサと;
上記マスクを、上記1つ以上の回転対称軸のうちの少なくとも1つの周りに回転させるための駆動装置とを具えている。
【0014】
1つの好適例では、上記検出器が、複数の放射センサ、及びこれらの放射センサを互いに遮蔽(シールド)するように配置された放射シールド(遮蔽板)を具えている。
【0015】
この態様によれば放射検出方法も提供され、この方法は、この態様による検出器で圧縮センシング測定を行うステップを含む。
【0016】
この態様は、入射する放射の圧縮センシング用の撮像システムも提供し、この撮像システムは:
上述した第1の態様によるマスクと;
このマスク内にあり、入射する放射に感応する1つ以上の放射センサと;
上記マスクを、上記1つ以上の回転対称軸のうちの少なくとも1つの周りに回転させるための駆動装置とを具えている。
【0017】
この撮像システムは、複数の放射センサ、及びこれらの放射センサを互いに遮蔽するように配置された放射シールドを具えることができる。
【0018】
この撮像システムは、1つ以上の光学カメラ及び/または赤外線カメラを具えることができる。
【0019】
この態様によれば撮像方法も提供され、この撮像方法は、第2の態様の撮像システムで撮像するステップを含む。
【0020】
この撮像方法は、上記撮像システムの視野またはその一部分の光学像及び/または赤外線画像(赤外像)を作成するステップと、この光学像及び/または赤外線画像と、上記撮像システムで生成した画像とをオーバーレイ(重ね合わせ)するステップとをさらに含むことができる。
【0021】
第3の広い態様によれば、本発明は、原子炉の廃炉、放射の安全性の監視または検査、放射性廃棄物の特性評価、安全監視または防衛監視、医療撮像、放射線治療、粒子線治療、ガンマ線天文学、X線天文学、荷電粒子加速器ビームにおける、あるいはビームを含む放射におけるミスアライメント(位置ずれ)のリモート(遠隔)特性評価またはリモート検出、または国境警備の方法を提供し、この方法は、第2の広い態様による放射検出方法または撮像方法を含む。
【0022】
この態様によれば、本発明は、原子炉の廃炉、放射の安全性の監視または検査、放射性廃棄物の特性評価、安全監視または防衛監視、医療撮像、放射線治療、粒子線治療、ガンマ線天文学、X線天文学、荷電粒子加速器ビームにおける、あるいはビームを含む放射におけるミスアライメントのリモート特性評価またはリモート検出、または国境警備用のシステムも提供し、このシステムは、第2の広い態様による検出器または撮像システムを具えている。
【0023】
なお、上記の本発明の各態様の種々の個別の特徴のいずれも、あるいは特許請求の範囲を含む本明細書中に記載する種々の個別の特徴のいずれも、適宜かつ所望通りに組み合わせることができる。それに加えて、開示する実施形態中に開示する複数の構成要素を適宜組み合わせることによって種々の実施形態を提供することができる。例えば、一部の構成要素は開示する実施形態から除外することができる。さらに、異なる実施形態の構成要素どうしを適宜組み合わせることができる。
【0024】
本発明をより確かにするために、実施形態を一例として添付した図面を参照しながら以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態による放射撮像システムの概略図である。
図2図2A及び2Bは、本発明の一実施形態による図1のシステムのマスクの概略図であり、入射する放射の圧縮センシングに用いる。
図3】本発明の一実施形態による切頂二十面体マスクの概略図であり、入射する放射の圧縮センシングに用いる。
図4】本発明の一実施形態による円筒形マスクの概略図であり、入射する放射の圧縮センシングに用いる。
図5図1の撮像システム内で(切頂二十面体マスクのような)マスクを支持する好適なジンバルの図である。
図6】互いに遮蔽された複数の放射センサを有する複数のセンサ配列の概略図であり、図1の放射撮像システム内で使用される。
図7図7A、7B、及び7Cは、図1の実施形態による撮像システムで測定した点線源の像を再構成した図であり、それぞれ、マスク開口部のサイズ以下のセンサで測定したもの、マスク開口部のサイズよりも大きいセンサで測定したもの、及びマスク開口部のサイズよりも大きいセンサで測定したものであるが、圧縮センシングの再構成中または再構成後にPSFによるボケを除去したものである。
図8図8A~8Cは、それぞれ図7A~7Cの像を陰画で複製して明瞭にした図である。
図9図9A及び9Bは、図1の撮像システムの画像レスポンスの差を放射点線源の異なる位置について示す図であり、図9Aは、点線源(ドット)が開口部の中心にある際の像のPSF/ボケ(グレー)を示し、図9Bは、点線源(ドット)が開口部の隅にある際の像のPSF/ボケ(グレー)を示す。
図10図1の撮像システムが用いるファイ行列集合体についての位相遷移図である。
図11図11A及び11Bは、本発明の一実施形態による、適応測定プロセスの制御に当たり行列及び位相図の情報を用いることができる方法を示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
実施形態の説明
図1は、本発明の一実施形態による放射撮像システム10の概略図である。撮像システム10は検出器12を含み、検出器12自体は、関連する読出し電子回路を有する1つ以上の放射センサ14(本実施形態ではガンマ線放射に感応する)と、センサ14を包囲して入射する放射(本例ではガンマ線放射)の圧縮センシングを促進するマスク16と、撮像システム10の全視野をカバーするか、回転させて全視野をカバーすることができる1つ以上の(本例では4つの)光学カメラ及び/または赤外線カメラと、距離情報取得部(図示せず)とを含み、距離情報取得部は、例えば、局所的環境に関する距離情報を提供するための、1つ以上のレーザー距離計(例えば、LIDAR(light detection and ranging:光の検出と測距))、構造化光カメラ、超音波カメラ、または立体カメラを具えている。
【0027】
放射センサ14はマスク16の内側に装着され、本例ではマスク16の内側に取り付けられたロッド(図示せず)で装着されている。このロッドは、マスク16の回転軸(以下に説明するように、一般に最も内側の軸)と一致して、センサ信号ケーブル及び電源ケーブルの回転を最小にすることが望ましい。こうした信号は、検出器12からこうしたケーブルで、またはロッド自体(複合ロッドとすることができる)に沿って、あるいは無線で伝送することができる。また、こうしたロッドを用い、こうしたロッドが減衰材料製である場合、このロッドは、マスク16の内側の、開口領域における閉じた場所に固定されるように配置されることが望ましい。
【0028】
本例では、マスク16の本体が略立方体の形状であり、その各面がマスク開口領域を構成する。各マスク開口領域(または本例では面)は複数の開口位置を具え、その各々を「開」(窓または開口部と称することができるが、一部の例では何らかの減衰材料を有することもできる)または「閉」にすることができる。本例では、マスク16を1面当たり4×4個の開口位置付きで示しているが、以下に説明するように、他の開口位置の数を用いることができる。それぞれのマスク開口領域における、「開」として記述する開口位置は、他の(または閉の)開口位置に比べて、入射する放射の高い透過率を可能にする。上記相対的な透過率が圧縮センシングの測定値の再構成を可能にするのに十分であるものとすれば、開及び閉の開口位置は共に、入射する放射の少なくとも一部を透過させること、及び/または入射する放射を減衰させることができる。
【0029】
撮像システム10は、ガンマ線放射を主に検出するように構成されているが、他の実施形態では、放射センサ及びマスクを、他の形態の放射の圧縮センシング、あるいは実際には複数形態の放射のセンシング用に構成することができることは明らかである。このことは、複数種類の放射(例えば中性子及びガンマ線)に感応する1つ以上のセンサを用いることによって、あるいは異なる放射線感受性を有する複数のセンサを用いることによって実現することができる。同様に、入射する関心事の放射の種類に応じて選択した異なる透過/減衰特性を有するマスクが用いられる。
【0030】
撮像システム10は動き制御システム20を含み、動き制御システム20は、マスク16の動き(本例では、回転)を制御するための、1つ、2つ、3つ以上の(本例では3つの)ステッパモータ、マルチターン(複数回転)エンコーダ、及びモータドライバを含んで、回転対称性の全範囲を用いることができる。撮像システム10は、制御信号をカメラ18へ送信し、画像データをカメラから受信するための画像データ及び制御チャネル22、及び放射センサ14からの出力信号を受信して処理するプリアンプ(前置増幅器)24、増幅器、及び集積されたADC(analog-to-digital converter:アナログ-デジタル変換器)/MCA(multi-channel analyzer:多チャネル分析器)も含む。
【0031】
撮像システム10はコンピュータシステム(システム10内に埋め込むこともシステム10の外部にあることもできる)を含み、このコンピュータシステムは、コントローラ30(カメラ18からの画像データ及び放射センサ14からの処理された出力信号を受信して操作する)及びユーザ・インタフェース32(エキスパート用及び非エキスパート用のグラフィカル・ユーザ・インタフェースを含む)を具えて、データ及び画像の取得を制御し、動き制御システム、従ってマスク16の動きを制御し、データを分析し、圧縮センシングの測定値を再構成し、放射と光学像/赤外線画像とのオーバーレイを生成し、放射性核種の識別及び定量化を実行する。コントローラ30は、ユーザ・インタフェース32を介して撮像システム10を制御するためにも用いられる。
【0032】
撮像システム10は電源も含み、この電源は、動き制御システム20、検出器12、カメラ18、距離情報取得部、及びコンピュータシステムに電力を供給する。
【0033】
より具体的には、コントローラ30はプロセッサ34及びメモリ36を含む。プロセッサ34はいくつかの構成要素を実現し、これらの構成要素は、ユーザ・インタフェース32の表示を制御するための表示コントローラ、関心領域(ROI:region of interest)モジュール、関心領域カウンタ、動き制御システム20を制御するためのモータ・コントローラ、強度測定装置、オーバーレイ装置、スペクトル取得装置、スパース(希薄、疎)性測定装置、ピーク探索装置、センサ14で収集した放射スペクトルの分析用の多変量統計分析装置(例えば、主成分分析及びフィッシャー線形判別分析を用いる)、及び測定時間及び測定回数を測定基準から決定するための適応測定装置を含み、これらの測定基準は、スパース性測定の測定基準、平均二乗誤差(MSE:Mean Square Error)の測定基準、及び圧縮センシングの位相遷移データを含む。プロセッサ34は、圧縮センシングの測定値を再構成するように構成された圧縮センシング再構成装置も実現する。さらに、図1では、プリアンプ24、増幅器26、及びADC/MCA28を別個の構成要素として示しているが、これらの1つ以上がコンピュータシステムの内部に存在することができ、あるいは、これらの1つ以上をコントローラ30によって実現することができることは明らかである。
【0034】
メモリ36は、デフォルトのシステム・パラメータ、位相図(以下に説明する)、基準スペクトル(ピーク探索装置が、取得したスペクトル中のピークを識別するために用いる)、及び取得したスペクトル及び画像(それぞれ、センサ14及びカメラ18によって収集した)を記憶する。
【0035】
任意で、撮像システム10は、検出器12またはマスク16の全体上に配置されるか配置可能であり、関心事の放射の種類に対して透明である防水または防塵ケース(図示せず)を含むことができる。
【0036】
図2Aは、マスク16’(マスク16の変形例)の概略図である。明らかなように、マスク16’は6つの面3の形式の6つのマスク開口領域、及び3つの回転対称軸x、y、zを有する。マスク16’は、この図に示すように、面3当たり4つの開口位置を有し;各開口位置は開口部を含むことも含まないこともできるが、面3毎に少なくとも1つの開口部が存在するべきである。本例では、このことは合計24個のマスク開口位置を与える。図2A中の異なる陰影は、マスク16’の各面3内の各開口位置の「閉」(低透過率)または開(高透過率)の状態を表し-暗いほど低い透過率を意味する。図2Bは、面当たり4つの開口位置を有する例による、マスク16’の他の、但しより詳細な概略図である。
【0037】
1.回転対称性
システム10のマスク16の幾何学的形状は、マスク16内に配置された(マスク16のおよその中心に配置されることが望ましい)1つ以上の検出器が、周囲のシーン(光景)または環境の異なる線形投影を見ることに制約を与え、マスク16は、マスク16の回転対称軸x、y、zの周りに回転される。これらの軸x、y、z毎に、面3の各々を90°にわたって連続して回転させて、4つの別個の配向を生じさせることができ、このことは、合計72通りの異なる発生可能なマスクパターンを与える。全体的なマスクパターンは、ファイ行列と基底との間の最低のコヒーレンスをもたらすように選定することが望ましい。ファイ行列(またはセンシング行列)は、上記連続したマスク回転の各々の後に生成されるマスクパターン全体の各々の行列表現である。ファイ行列の各行は1つのマスクパターン全体であり、各列は各マスク開口位置を表す。ファイ行列の値は、特定の開口位置の開/閉状態(または透過率のレベル)を表す。基底は信号をサンプリングしている領域を表す。
【0038】
代案の実施形態では、マスク16の各面3をさらに分割することができ、これにより、各面は-例えば-面当たり3×3=9個の開口部(合計9×6=54個のマスク開口位置を与える)、面当たり4×4=16個の開口部(合計16×6=96個のマスク開口位置を与える)、または面当たり5×5=25個の開口部(合計25×6=150個のマスク開口位置を与える)を有する。従って、一般に、n×n個の開口位置の正方形アレイを有する立方体のマスクはn×n×6個のマスク開口位置を有し、ここにn=1、2、3、...である(が、開口位置は正方形アレイとして配列する必要はなく、他の配列も許容される)。開口位置の数が大きいほど、マスクを使用する撮像システム30の角度分解能がより小さくなる。
【0039】
他のマスクの幾何学的形状の、同等の分析を行うことができる。例えば、8つの均一な面、及びn×n個の開口位置の正方形アレイを有する八面体の形状のマスクは、n×n×8個のマスク開口位置を有する。八面体の三角形の各面を満たすように開口位置が配列され、これにより、例えば各開口位置自体が三角形であり、等しいサイズである場合、各面はn×n個、またはその倍数個(例えば、4、16、64、...倍の)の三角形の開口位置を有することができ、ここにn≧2である。
【0040】
上記マスクは、1つ以上の回転対称軸を有する任意の形状に合わせることができる。他の実施形態によれば、上記撮像システムが、図3に概略的に示すような切頂二十面体を含む。図3は切頂二十面体のマスク40の概略図であり、六角形42及び五角形44を三角形の開口位置46に再分割することができることを示し、開口位置46は開(減衰材料で満たされていない)または閉(減衰材料で満たされている)にすることができ-さらに所望通りに分割される。直線48は、60本の回転対称軸のうちの3つを示す。
【0041】
特定の実施形態では、切頂二十面体のパターンを球体上に設ける。他のマスク形状は、十二面体、ピラミッド形、及び球形を含むことができるが、それらに限定されない。一部の実施形態は、マスク開口位置の数以上の個数の可能なマスクパターンを有する。このことは、スパース性の低い画像に必要となり得る十分なサンプリングをもたらすが、スパース画像については、マスク開口部の数よりも少数の可能なマスクパターンを有しても機能する。マスク開口部の数よりも多数の可能なマスクパターンを有することの利点は、画像をオーバーサンプリングすることができることにあり、このことは一部の用途において画像品質(画質)における利点をもたらすことができる。
【0042】
マスク開口部の形状は、円形、正方形、三角形、菱形、または回転後に対称性をもたらす他のあらゆる形状とすることができる。即ち、マスクを回転させると、(例えば)六角形のマスク位置が他の六角形のマスク位置まで回転し、-例えば-五角形のマスク位置までではない。
【0043】
図4は、本発明の一実施形態による、入射する放射の圧縮センシング用のマスク50の概略図であり、マスク50は円筒(または複数の平面を具えた疑似円筒)形式であり、開口位置の単一行、及び1つの回転対称軸のみを有する。可能な測定回数は、マスク50の列または開口位置の数に等しく、各列またはマスク位置は開52または閉54のいずれかである。マスク50を有する撮像システムは、一次元の画像しか生成することができない。しかし、単一行の円筒形マスク及び検出システムを複数個積層させて、二次元画像を生成することができる。
【0044】
マスク16はジンバルによって支持してジンバル内に配置することができる。図5は切頂二十面体マスク62を支持するのに適したジンバル60の例の図である。特定の変形例では、ジンバル60及び/または動き制御システム20がマスク内に含まれ、これによりマスクの配向及び動きがマスク内から制御される。それに加えて、ジンバルを用いる実施形態では、動き制御システム20またはプロセッサ34のモータ・コントローラを、2以上の自由度を用いる際に不所望なジンバルロックを防止するように構成することができる。
【0045】
他の実施形態では、撮像システム10が複数(例えば、2つ、3つ、または4つ)の検出器を含み、これらの検出器はマスク内で互いに遮蔽され、これにより各々がFOV(field-of-view:視野)の異なる領域を見る。図6は、こうしたセンサ配列70の概略図であり、ここでは4つのセンサ72がマスク76内で十字形の放射吸収シールド74によって互いのFOVから遮蔽される。図示する例では、マスク76が円形の断面を有するが、この技術は他のマスク形状で用いることもできる。
【0046】
本例では、センサ72の各々が最大でFOVの四分の一を見る。一般に、n個のセンサでは、センサの各々が最大でFOVの1/nを見る。内部シールド74は、単一の検出器がFOVの残り四分の三からの信号を見ない(あるいは最小限見る)ことを保証するように構成されている。コンプトン(Compton)カメラを用いて、シールド材の使用を必要としない電子コリメーションの形成を行うことができる。
【0047】
代案の方法は、図6のように複数のセンサを用いるがシールドなしである。こうした構成では(半導体検出器とシンチレータ検出器との複合検出器のような)センサを用い、これらのセンサは相互作用の深さの情報を提供し、従って入射する放射の方向を測定するために用いることができる。例えば、低エネルギーの光子はこうしたセンサの表面付近で相互作用し、従って撮像システムは、放射がセンサの反対側から来ていないものと判定するように構成することができる。システムの元の対称性を維持するように配置された複数のセンサを用いることができる。元の対称性を維持しない複数のセンサは、この非対称性が正確にモデル化され画像再構成プロセスにおいて説明される限り使用することができる。
【0048】
一般に、本発明の実施形態による撮像システムにおいて使用されるマスク、センサ、及びモータのそれぞれの数の間にはトレードオフ(二律背反)が存在する。
【0049】
これらの実施形態による、マスク14、40、50、76についてのファイ行列を生成するために用いるファイ行列生成方法は次のステップを含む:
1)マスク形状の頂点を生成するステップ
2)これらの頂点から形状面及び/またはマスク開口部(開または閉の孔)を規定するステップ
3)x、y、zの回転行列、及び回転させる角度を規定するステップ
4)所望の回転行列により頂点を増分的に回転させて、すべての回転の組合せを生成するステップ
5)新たな面の位置を元の配向の面と比較するステップ
6)異なる回転の全体にわたって、元の面の値のマップを作成するステップであって、この場合、元の面の値は、マスク開口部の透過率値と相関があるステップ
7)センシング(ファイ)行列を生成するステップ
8)ファイ行列内の面の値を、関連するマスク開口部の透過率値に設定するステップ。
【0050】
2.圧縮センシング
圧縮センシング測定プロセスは式1によって記述することができる:
y=φx+ε (1)
ここに、yは測定値のM×1ベクトルであり、xはN2画素の画像のN2×1ベクトルであり、φはM×N2行のセンシング行列を含み、εはノイズ項である。この測定プロセスは、比較的大型の検出器におけるブラー(blur:ぶれ、ぼけ)項も含み、こうした検出器については、式1は次式のようになる:
y=φBx+ε (2)
【0051】
ブラー項Bは、システムの点広がり関数(PSF:point spread function)を効果的に表現し、線源面の開口部(またはサブアパーチャ(副開口))位置の各々における点線源に対するシステム応答を測定することにより(実験的に、あるいはシミュレーションにより)決定することができる。
【0052】
異なる基底(例えばウェーブレット)で動作する際に、式1または2においてx=φsをxに代入することができ、ここにφはN2×N2の基底変換逆行列であり、sは変換係数のN2×1ベクトルである。
【0053】
再構成された画像は、凸最適化問題min||x||1を解くことにより見出され、y=φxなる制約を受け、この問題は、情報yに整合する最小のL1ノルムを有する係数を有するオブジェクトxを探索する(非特許文献1、2)。
【0054】
導入部で説明した最小化問題の異なる定式化に対するスパース解を見出すための非常に多数のアルゴリズムが提案されている。これらの回復アルゴリズムは一般に次の3つの主なグループに分類される:凸アルゴリズム、欲張り(グリーディ(greedy))アルゴリズム、及び組合せアルゴリズム。測定中のノイズの存在下では、凸最適化問題は次式のように書くことができる:
【数3】
ここに、τは目的関数の2項間の相対的な重み付けを示す。目的関数の第1項は誤差(エラー)項であり、解と観測値との差を見ており、データの整合性を強化する。第2項はスパース性であり、L1ノルム正則化項を含み、xの小成分を0になるように仕向け、これによりスパース解を促進する。両項は共に、取得したデータに整合する圧縮性の解を見出すことを追求する。
【0055】
画像を
【数4】
回のランダムな測定から高い確率で再構成することができることは、以前から示され、ここにcは小さい定数であり、Kは信号内のスパース性のレベル(0でない数)である(非特許文献1、2)。従って、信号の情報内容に比例するレート(速度)で信号をサンプリングすることができる。
【0056】
センシング行列の制限等長性(RIP:Restricted Isometry Property)を決定することはNP(nondeterministic polynomial:非決定性多項式)困難であり、従って、圧縮システムについて計算することは(マスクパターンの品質を評価するために用いられてはいるが)非実際的である。センシング行列の相互コヒーレンス性μ(φ)は、マスク設計におけるインコヒーレンス(incoherence:非干渉)性を評価するためのメカニズムを提供する:
【数5】
【0057】
上記の相互コヒーレンスは、ファイ行列の列間の最悪の類似性の尺度を提供する。ここで、ファイ行列の各列は、特定の開口位置の開/閉状態(または透過率)を表す。全測定回数を通して、任意の2つのマスク開口位置が同時に開及び閉である場合、これらの開口位置はコヒーレントであるものと考えられ、他の開口部のうちの1つの中に放射源が存在したか否かを言うことはできない。マスク設計は、低いコヒーレンスを有するように最適化することが望ましい。何万個(またはそれ以上)ものランダムなマスクパターンを生成し、式(5)を用いて各パターンのコヒーレンスを評価することができる。最低のコヒーレンスを有するマスクパターンが、最良の品質及び最速の再構成性能を有する。最低のコヒーレンスのマスクは、より少ない回数の測定を用いた正確な画像の再構成を可能にする。相互コヒーレンスは、ファイ行列と基底(即ち、ウェーブレット)との類似性の度合いを見ることもできる。低コヒーレンスのマスクパターンを生成する他の方法は、最適化関数を生成することを含むことができ、この最適化関数は低コヒーレンスのマスクパターンを解として出力する。他のマスクパターンは、アダマール(Hadamard)パターン、あるいはファイ行列における小さいコヒーレンス値を生成することが知られている他のパターンを含むことができる。
【0058】
上記の凸最適化問題を解決するための多数のアルゴリズムが存在し、これらは、反復的閾値法、及びスパース再構成用の勾配投影(GPSR:Gradient Projection for Sparse Reconstruction)を含む(非特許文献3、4)。GPSR再構成アルゴリズムは、勾配投影アルゴリズムを用いて式(1)を解き、本明細書中で用いる方法である、というのは、他のいくつかの再構成方法よりも優れていることが示されているからである(非特許文献4)。
【0059】
圧縮センシングの利点は、ラスター走査、ピンホールカメラ、及び符号化開口のような従来の撮像技術に比べると、画像を生成するために必要な測定がより少ない回数であることにある。圧縮ガンマ線撮像技術は、非常に良好な/高い信号対ノイズ比を有する画像を生成することもできる。
【0060】
3.異なる波長及び粒子用の検出器/多センサ/ゲイン安定性
上述したように、センサ14は、ガンマ線検出器、中性子検出器、UV(ultraviolet:紫外線)検出器、ガンマ線/中性子両用検出器、EM(electromagnetic:電磁波)スペクトルの任意部分または任意粒子用の検出器/受信機、多波長の撮像を行うことができる検出器の任意の組合せ(即ち、ガンマ線/中性子検出器の周りに隙間なく配置された複数のUV検出器)とすることができる。本発明の実施形態によれば、関心事の放射の種類を検出するあらゆる検出器14を用いることができる。焦点を結ぶことができる波長用には、レンズを追加的にマスク内(例えば、マスクの中心)に設けることができ、このレンズは、入射する光を、マスク内の他のいずれかの位置にあるセンサ上に焦点を結ぶように集光させる。こうしたレンズは、システムの視野(FOV)全体からの光、及びFOVの一部分だけからの光を焦点に集光させるために必要になり得る。
【0061】
説明する構成の利点は、低コストで位置に感応しないセンサを用いることができることにある。しかし、本発明の実施形態では、位置に感応するセンサアレイを用いることもできる。他の利点は、従来のガンマ線スペクトロメータ(分光計)のセンサの標準的な配列を、(円筒形、立方体、平行六面体、平面、半球形、球形のセンサのような)撮像システム10と共に用いることができることにある。従って、潜在的ユーザは、既存の無指向性のスペクトロメータを撮像システム10と共に用いて撮像能力を提供することができる。ガンマ線撮像に用いられるセンサは、NaI、LaBr、SrI2、CLYC(Cs2LiYCl6:Ce)、CLLBC(Cs2LiLa(Br,Cl)6:Ce)、CsI、CeBr、LSO(Lu2SiO5:Ce))、LYSO(YSO(Y2SiO5)+LSO)、BGO(Bi4Ce3O12)、PbW、PVT(ポリビニルトルエン)、GM(Geiger-Muller:ガイガーミュラー)管、HPGE(high-purity germanium:高純度ゲルマニウム)、CdZnTe、CdTe、HgI2、CdMnTe、ダイヤモンド、液体シンチレータ、TlBr、ガス検出器を含むことができるが、それらに限定されない。これらのシンチレータ検出器は、従来の高電子増倍管(PMT:Photomultiplier Tube)またはシリコン高電子増倍管(SiPM)に結合することができる。CLYC、CLLBC、CdTe、及びCdZnTeのような検出器は、ガンマ線/中性子両方の検出用に用いることができる。
【0062】
SiPMを用いるシンチレータ検出器は、耐久性、適度なコスト、小さい物理的サイズ、良好な分解能、及び(何十ボルトのオーダーの)低バイアス電圧での動作という大きな利点を有する。しかし、これらのシンチレータの光出力は、マイナス%/℃のレベルで温度に大きく依存し、このことは、関心事の精度領域を維持する必要がある際に、周囲温度変化によるピークシフトが大きな問題になることを意味する。こうした検出システムの信号出力はバイアス電圧の強(ストロング)関数である。温度センサを上記センサに近接して用いることによって、温度に比例して増減されるアナログ電圧を用いて、検出器に印加するバイアス電圧に正の温度係数を与えることができ、この増減は、結果的なバイアス電圧の正の温度依存性が、検出器材料の負の温度依存性を正確に補償するように決定する。こうした方法は、温度の変化中にゲイン安定性をもたらす。
【0063】
異なるセンサゲイン安定化方法を用いることもでき:これらの方法は:シンチレータ検出器におけるLED(light emitting diode:発光ダイオード)安定化、埋め込み放射源を用いること、動作温度範囲全体にわたってセンサ応答を較正すること、センサを一定温度に維持すること、またはゲイン安定化のための他のあらゆる方法を含む。
【0064】
本実施形態は、マスクの外部にある(GM管、シリコンセンサ、またはあらゆる種類の前述した検出器のような)センサを含むことができ、従って、その検出信号の強度はマスクの回転に影響されない。こうした実施形態は、上記システムが、マスク内のセンサに対する放射電磁界のあらゆる時間依存性の変化を補償することを可能にし、こうした変化は補償しなければ再構成プロセスの妨げとなる。
【0065】
4.大型検出器及びデコンボリューション
上記開口部のサイズ以下の感応領域のセンサを有する撮像システム10によって実験的に生成した再構成画像を図7Aに示す。線源位置は1つの開口部からの視野の中心に入る。一部の用途は、短い測定時間、従って高い感度を必要とする。こうした用途は、通関手続地における貿易の流れを撮像すること、及び医用画像用途を含むことができるが、それらに限定されない。感度の増加は、センサ体積の増加及びそれに対応するマスク形状の増大により成し遂げることができる。しかし、マスク形状の増大を伴わずにセンサ体積を増加させること、即ち、単一のマスク開口部のサイズよりも大きいセンサを有することが有利であり得る。開口部のサイズよりも大きいセンサを有することによって、複数の開口部において放射源が観測される。実験的に得られたこの効果の例を図7Bに示し、ここでは中央のセンサが、点放射源位置の視点から見れば3×3個の開口部をカバーしている。検出されるシステム・カウント数の増加は、放射源から見てセンサが占める立体角の増加、及び(より大型のセンサはすべての次元の寸法がより大きいものと仮定すれば)より厚いセンサによる減衰の増加により生じる。
【0066】
画像デコンボリューション(deconvolution)プロセスが発生することができる多数の方法が存在する。第1に、ブラー関数を撮像システムのセンシング行列に含めることができる。このことは、圧縮センシング画像の再構成及びデブラー(deblur)/デコンボリューションが共に同時に発生することを可能にする。他の利点は、比較的低レベルの放射に対して画像を取得することができることにある。この方法の不都合な面は、センシング行列のコヒーレンスを劣化させ得ることにあり、撮像プロセスが、より多数回の測定、再構成アルゴリズムにおけるより多数回のやり取り、及びより長い再構成時間を必要とし得る。
【0067】
第2のやり方は、上記圧縮センシング方法によりブラー画像を直接再構成して、リチャードソン-ルーシー(Richardson-Lucy)法、最尤推定-期待値最大化、または他の何らかの方法によりPSFのデコンボリューションを別個に実行することを含む。この方法の欠点は、点線源が今度は比較的小さいスパース応答(上記に挙げた例ではK=1ではなくK=9)を有することにあり、このことはより多数回の測定を必要とする。
【0068】
第3のやり方は、圧縮デコンボリューション法を用いることを含み、圧縮デコンボリューション法は式3の目的関数における他の項を利用し、再構成がデブラー・ステップを含むように仕向ける。これらの方法のいずれもの結果的な効果は、図7Cの画像のような画像を生成することにあり、この画像は図7Aに示す小さい画像と同様であるが、画像アーティファクト/ブラーがデブラー画像中に幾分存在し得る。
【0069】
(なお、図8A~8Cは、図7A~7Cの画像を、但し明瞭にするために陰画で再現している。)
【0070】
より大型のセンサを用いるほど、反直感的に、検出される応答における非対称性により、より高い角度分解能を得ることを可能にすることができる。開口部の視野内にある放射源位置は、最近隣の開口部に対して異なるように寄与する。例えば、図9A及び9Bに、点放射源の異なる位置における異なる画像応答を示す。図9Aは、点放射源(ドット)が開口部の中心にある際の、画像のPSF/ブラー(グレー色)を示すのに対し、図9Bは、点放射源(ドット)が開口部の隅(コーナー)にある際の、画像のPSF/ブラー(グレー色)を示す。
【0071】
図9Bの12個の部分的に陰影の付いた画素は、これらの画素が、全体に陰影の付いた画素と同数のカウント数を有さないことを反映している。こうした検出器の応答または点広がり関数(PSF)は、放射線輸送シミュレーション・ソフトウェア(即ち、Geant4(登録商標))を用いて測定またはシミュレーションをすることができる。
【0072】
5.マスク
上記マスクは先細り(テーパー付き)開口部を有することが有利であり得るが、必ずしもそうである必要はない。特許文献1の二重マスク法は、マスク装置が先細り開口部を用いて開口部毎に一致したFOVを維持することを開示しているが、このことは本発明の単一マスクの方法では必須ではない。
【0073】
説明したように、マスクの閉じた開口位置は入射する放射を変調する。この変調は、入射する信号の減衰により、あるいは入射する信号を散乱させることにより発生させることができる。例えば、ガンマ線を減衰させるためには、タングステン及び鉛のような高密度で高原子番号の材料が必要である。低原子番号の材料は、より大きな散乱断面積を有し、従ってコンプトン散乱の相互作用により、入射する信号を変調することができる。中性子については、上記マスク材料は高い中性子断面積を有するはずである。中性子マスク材料は、ホウ素、カドミウム、及び水素含有量の高い材料を含むことができるが、それらに限定されない。
【0074】
上記マスクは、閉じた開口位置が異なる検出素子である能動型マスクであるものと考えることができる。こうした能動型マスクを、1つ以上の中心のセンサ14と共に用いて、圧縮ガンマ線画像及びコンプトン・ガンマ線画像を共に生成することができる。この場合については、上記の能動型マスク及び中心の検出器は、コンプトン散乱の運動学を用いてガンマ線の原点を位置決めする。
【0075】
6.システムの構造化可能性
撮像システム10の設計の利点は、システムを再構成することを可能にすることにある。例えば、異なる角度分解能を必要とする用途向けには、より高分解能またはより低分解能のマスク16に置き換えることができる。動作線量率の要求に応じて、異なるサイズのセンサ14に置き換えることができる。例えば、動作線量率が高いほど、より小型のセンサ14を用いることができる。
【0076】
7.異なる基準
異なる画像シナリオが、異なる基準においてより良好に機能することができる。用いることができる基準は:正準、ウェーブレット、カーブレット(curvelet)、ディスクリート(離散)コサイン変換、フーリエ、またはあらゆる辞書学習基準を含む。用いる基準は、前述したあらゆる領域の任意の組合せ、あるいは本例では言及していない追加的な基準とすることができる。辞書学習基準は、学習させることができ、目前の問題にとって最適にすることができる。いくつかの異なる基準(領域)を並列的に用いることによって、測定値の集合を再構成することができる。このことは、エンドユーザまたはインテリジェント・ソフトウェアが最良の再構成画像を選ぶことを可能にするという利点を有することができる。基準の選定は測定プロセス中に変更することができる。より複雑な、あるいはより複雑でないシーン(光景)については、上記基準はオン・ザ・フライ(on-the-fly)で変更することができ、従って最適な基準を用いることを可能にする。
【0077】
8.サブアパーチャ・マスクの動き
画像の角度分解能の増加は、(図示する実施形態及び他の実施形態では)個別の開口部の大きさに相当する角度未満の角度だけマスク16を回転させることによって実現することができる。(それぞれの回転軸の周りの)各開口部を隣接する2つの同一の開口部と考えることによって、そして各マスクを開口部の半分のステップで回転させることによって、角度分解能を倍増させることができる。分解能を増加させることは、開口部の半分のステップによって倍増させることに限定されず;単一の開口部の四分の一に相当する角度ステップによって分解能の4倍増を実現することができる。このことは、モータの分解能が許容する任意の分数の移動量だけマスク16を回転させることによって、任意の小さい角度分解能に効果的に拡張させることができる。
【0078】
9.自動化(位相遷移のシミュレーション、スパース性尺度、画質尺度)
実際の用途では、撮像システム10で測定中のシーン信号のスパース性の知識をユーザが持たないことがある。システム10は、スパース性のレベルを決定して測定プロセスを制御するように構成されている。この場合、測定プロセスは必要な測定回数及び測定時間である。撮像システム10の性能のシミュレーションを、測定データ及び再構成プロセスを監視する尺度の数と共に用いて、測定プロセスを予測して制御することができる。以下に、圧縮撮像のシミュレーションについての詳細及び使用することができる尺度の一部を提供する。
【0079】
a.位相遷移のシミュレーション
ガウス測定行列については、Donoho及びTannerが位相遷移の存在を以前に示しており、0から1までの良好な信号回復の確率の急変を表す(非特許文献5、6、7)。Donoho及びTannerは、その後に普遍性の仮説を確立し、この仮説は、ランダム行列の多数の族が、L1最小化により再構成した際にガウス集合体と同じ位相遷移挙動も示すことを述べている(非特許文献8)。位相遷移は位相図上に表示され、図10に示す例があり、この例はファイ行列集合体についての位相遷移図である。正軸体関数も黒い破線の曲線として重ね表示している。図10の縦軸ρ=k/nはスパース性関数を表し、ここにkは0でない値の個数であり、nは直線的測定の回数である。横軸δ=n/Nはアンダーサンプリングの比率(サンプリングの間引き率)を表し、ここにNは初期の信号長である。遷移ゾーンの幅はNに比例するように示してあり、ゾーンの幅はN→∞になるに連れて0に向かう傾向がある(非特許文献9)。図10に示す重ね表示した破線の曲線が上記の正軸体関数であり:この凸多面体は組合せ形状に由来し、良好な回復における位相遷移のおよその位置を示すように見える。
【0080】
位相図を作成する方法は、Monajemi他(非特許文献9)に近い方法に従う。初期の信号の長さは、マスク内の開口部の数を表す。その後に、0<ρ≦1なる制約を受けるnとkの組合せのみに、サンプリングが必要になる。ρ>1(即ち、k>n)であるあらゆる状況については、元の画像を正確に再構成することが決してできないので、この制約を強いられる。k=1:Nなる値毎に、k個の0でない要素を有する信号をランダムに発生し、CS技術を用いて、この信号をn=1:256なる測定回数を用いて正確に再構成することを試みた。すべてのk,nの組合せの100回の試行についてこの再構成プロセスを反復し、再構成に成功した回数を記録した。再構成した信号と元の信号との相対誤差がある閾値(例えば0.5)未満である場合に、信号の回復が成功であるものと考え、さもなければ失敗であるものと考える。相対誤差については次式を用いた:
【数6】
ここに、x0は元の信号であり、x1は再構成した信号であり、||x||1はL1ノルムであり、||x||2はL2ノルムである。
【0081】
次に、k,nの組合せ毎に、再構成に成功した回数を試行の合計回数と比較した値を計算し、この値は位相図上の1つのデータ点に対応する。
【0082】
上記撮像システムのファイ行列についての結果的な位相図は、所定の信号のスパース性について信号を正確に再構成するために必要な測定回数を与える。位相図を、信号強度、信号ノイズのレベル、検出器の形状、及び用いた基準(即ち、ウェーブレットまたはカーブレット)のような種々の異なる動作条件について計算して、メモリ36に記憶することができる。従って、撮像システム10について以前に作成した位相図の集合を分析することによって、時間の100%なる特定のスパース性の値を有する信号を正確に再構成するために必要な測定回数に上限を設定することができる。
【0083】
b.スパース性の測定尺度
元の信号の予備知識なしに(プロセッサ34のスパース性測定装置によって)信号のスパース性を測定する方法の開発は、大きな価値がある。スパース性を測定するために開発されている1つの方法は、次式の使用による:
【数7】
この式は、0でない任意のxについて1≦s(x)≦Nを常に満足する。式7中のノルム||x||αは次式のように定義される:
【数8】
【0084】
ノイズなしでは、||x||0(L0ノルム)がスパース性を計算するために理想的な量である、というのは、信号中の0でない値の個数を大きさに関係なく単にカウントするからである。しかし、このことは、L0ノルムがノイズに対して非常に不安定であることになり、従って、現実世界では実際に役に立たない(非特許文献10、11)。式1は、元の信号中のノイズの存在に対して安定なままであることによってこうした破綻を解決し、従ってスパース性の価値ある尺度を提供する。
【0085】
式7はエントロピーベースのスパース性尺度の族の特別な場合であり(非特許文献10)、一般化形式の式は次式のように与えられる:
【数9】
ここに、パラメータαは、スパース性を計算する際に信号中の小さい値(即ち、ノイズ)に与える重み付けの量を支配する。αの値が増加するに連れて、小さい値に与える重み付けの量が減少する(非特許文献10)。
【0086】
信号のスパース性を測定するための代案の方法は、ジニ(Gini)指数を用いることによる(非特許文献12、13、14)。ジニ指数は、初期には経済における富の不平等の尺度として導入された(非特許文献14)が、スパース性の意味でのこの指数の有用性も以前に示されている(非特許文献12、13)。ジニ指数の式は次式によって与えられる:
【数10】
ここに、データxは昇順、即ちx1≦x2≦x3≦・・・≦xNでなければならない。
【0087】
本実施形態は、上述したスパース性測定尺度のうちの1つ、あるいは測定信号中のスパース性を測定または推定することができる他の何らかの尺度を用いる。本実施形態は、式(9)を用いることができ、αは3に設定し、このことは、すべてのスパース性及びノイズのレベルにわたるこの式の安定性及び実績による。本発明の方法は、各回の測定後にスパース性のレベルを測定/推定し、この値を測定回数の関数として追跡する。スパース性測定尺度の収束を監視することは、スパース性の推定値を与える信頼水準を提供することができる。その後のスパース性推定値の小さい変化は、正確なスパース性推定値に達したことを示すことができる。
【0088】
c.MSE尺度
この尺度を用いて、再構成した画像の平均二乗誤差(MSE:mean square error)のコンボリューションを、測定進行の回数として追跡して、直近の画像の解と直近を除いた画像の解との間の、及び/または 直近の解から直近の測定値のうちのいくつかとの間のMSEを追跡する。このことは、さらなる測定により追加的な情報が収集されるに連れて画像の解が変化する大きさについての情報を効果的に提供する。MSE尺度を用いて、現在の解と前回の解との間の平均二乗誤差が特定閾値を下回った際に、正しい解に達したことの尤度、従って信頼度を決定することができる。
【0089】
d.流れ図
図11A及び11Bに流れ図80を示し、流れ図80は、本発明の実施形態による適応測定プロセスの制御において、尺度及び位相図の情報を用いることができる方法を示す。
【0090】
図11A及び11Bを参照すれば、ステップ82で、プロセッサ34はデフォルトの測定時間及び測定回数をメモリ36から読み出して、所定のROIまたはユーザ定義のROIのいずれかをインポートする(取り込む)。次に、正式な処理を開始する。
【0091】
ステップ84では、スペクトル取得装置の制御下でスペクトルを取得し、-ステップ86では-ピーク探索装置及びROIカウンタが、それぞれピーク識別を実行し、ROIカウントレート(計数率)を測定する。ステップ88では、前のステップからのスペクトル出力(実際のスペクトル、ピーク識別、ROIカウントレート、総カウント数、総カウントレート、及びROIの総カウント数を含む)をメモリ36に保存し、ステップ90では、プロセッサ34の強度測定装置が変調信号強度を測定する。
【0092】
ステップ92では、プロセッサ34のスパース性測定装置がスパース性を測定し、ステップ94では、適切な位相図情報をメモリ36からインポートする。ステップ96では、プロセッサ34の適応測定装置が最小限必要な測定回数及び測定時間を決定し、-ステップ98では-前にインポートした最小限必要な測定回数及び測定時間のデフォルト値を更新する。
【0093】
ステップ100では、現在の測定回数が予測回数よりも大きいか否かを判定する。大きくなければ、ステップ102で処理を継続し、ステップ102ではマスクを回転させる。次に、ステップ84で処理を継続する。
【0094】
ステップ100で、現在の測定回数が予測回数よりも多いものと判定した場合、ステップ104で処理を継続し、ステップ104では、MSE尺度が正しい解を意味するか否かを判定する。意味しなければ、マスクを回転させるステップ102で処理を継続して、ステップ84で継続する。
【0095】
ステップ104でMSE尺度が正しい解を意味するものと判定した場合、ステップ106で処理を継続し、ステップ106ではこの解をユーザ・インタフェース32に対して表示する。ステップ108では、ユーザは測定を継続するべきであるか否かを示すように促進される。測定を継続するべきであることをユーザが示した場合、マスクを回転させるステップ102で処理を継続し、次にステップ84で処理を継続する。ステップ108で処理を継続するべきでないことをユーザが示した場合、プロセスを終了する。
【産業上の利用可能性】
【0096】
10.本発明の用途
用途は:原子力産業(例えば、廃炉の特性評価活動、安全監視/検査、廃棄物特性評価)、防衛、国家安全保障(ナショナル・セキュリティ)、第一応答者の用途、健康産業(例えば、医用画像、放射安全監視、放射線治療、粒子線治療)、ガンマ線/X線天文学、あらゆる安全監視/検査/放射線防護(被曝管理)活動、荷電粒子加速器ビーム、または放射を誘導し得る他のあらゆるビーム、あるいは放射線放出を行うあらゆる設備におけるミスアライメント(位置ずれ)の遠隔特性評価/検出を含むことができるが、それらに限定されない。
【0097】
参考文献
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14.C. Gini, “Measurement of inequality of incomes”, Economic Journal, 31(1921), 124-126
【0098】
本発明の範囲内の変更は、当業者が容易に実行することができる。従って、本発明は以上で例として説明した特定実施形態に限定されないことは明らかである。
【0099】
以下の特許請求の範囲、及び以上の本発明の説明では、明確な文言または必要な暗示により特に断りのある場合を除いて、「具える」、または「具えている」のようなその変形は包含的な意味に用い、即ち、記載した特徴の存在を明記するために用いるが、本発明の種々の実施形態におけるさらなる特徴の存在または追加を排除しない。
【0100】
さらに、本明細書中の従来技術の参照は、こうした従来技術があらゆる国において共通の一般的知識の一部を形成するか形成したことを暗に意味することを意図していない。
図1
図2
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図4
図5
図6
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図10
図11