(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】冠動脈疾患のリスク判定
(51)【国際特許分類】
A61B 7/04 20060101AFI20230314BHJP
A61B 5/02 20060101ALI20230314BHJP
A61B 10/00 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
A61B7/04 Q
A61B5/02 350
A61B10/00 K
(21)【出願番号】P 2020523408
(86)(22)【出願日】2018-10-25
(86)【国際出願番号】 EP2018079263
(87)【国際公開番号】W WO2019081630
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-10-05
(32)【優先日】2017-10-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】518445056
【氏名又は名称】アカリックス アー/エス
【氏名又は名称原語表記】ACARIX A/S
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100186716
【氏名又は名称】真能 清志
(72)【発明者】
【氏名】サミュエル エミル シュミット
【審査官】門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-504192(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0228094(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0157273(US,A1)
【文献】Simon Winther et al.,Diagnosing coronary artery disease by sound analysis from coronary stenosis induced turbulent blood flow: diagnostic performance in patients with stable angina pectoris,The international Journal of Cardiobascular Imaging,2016年,32,pp.235-245,DOI :10.1007/s10554-015-0753-4
【文献】榊原有作 外7名,冠動脈疾患における心拍変動スペクトル呼吸性成分の低下:冠動脈硬化重症度の非観血的指標,心電図,日本,1989年,Vol.9, No.1,pp.133-139,DOI:https://doi.org/10.5105/jse.9.133
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 7/04
A61B 5/00
A61B 5/02
A61B 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
人の冠動脈疾患(CAD)のリスクを示すための、電子聴診器または冠動脈疾患(CAD)のリスクを示すためのシステムによって実行される方法であって、
人の胸部に配置されたマイクロフォンによって記録された複数の心拍をカバーする音声記録を取得するステップ(100)と、
前記音声記録内の複数の心音(S)を識別するステップ(200)と、
各セグメントが心臓サイクルの少なくとも一部をカバーする、複数のセグメントを、前記複数の心音(S)に基づく音声記録から取得するステップ(300)と、
前記複数のセグメントのうちの第1の数のセグメントの拡張期における期間の第1の周波数窓の信号強度に基づいて、周波数パワー測定値(FPM)を決定するステップ(400)と、
前記複数の心音(S)および前記複数のセグメントに基づいて、第4の心音の振幅(S4Amp)を決定するステップ(500)と、
前記複数の心音(S)に基づいて、心拍変動(HRV)の指標を決定するステップ(600)と、
前記周波数パワー測定値(FPM)、前記第4の心音の振幅(S4Amp)、および前記心拍変動(HRV)の指標に基づいて、冠動脈疾患(CAD)のリスクの指標を決定するステップ(700)と、
を含
み、
前記周波数パワー測定値(FPM)を決定するステップは、更に、拡張期における期間の第2の周波数窓の信号強度に基づいており、前記第2の周波数窓は、前記第1の周波数窓の高域カットオフを超える低域カットオフを有し、前記周波数パワー測定値(FPM)を決定するステップ(400)に、
前記第1の数のセグメントの第1の周波数窓におけるエネルギーの合計に基づいて、第1の合計を決定するステップ(408)と、
前記第1の数のセグメントの第2の周波数窓におけるエネルギーの合計に基づいて、第2の合計を決定するステップ(410)と、
前記第1の合計と前記第2の合計との間の比率(FPR)、または前記第1の合計および前記第2の合計の相対的な大きさに基づいて、前記周波数パワー測定値(FPM)を決定するステップ(412)と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記第1の周波数窓は、20~40Hzの範囲、または30Hzの低域カットオフを有し、前記第1の周波数窓は、80~100Hzの範囲、または90Hzの高域カットオフを有し、前記第2の周波数窓は、180~220Hzの範囲、または200Hzの低域カットオフを有し、前記第2の周波数窓は、250~800Hzの範囲、280~320Hzの範囲、または300Hzの高域カットオフを有する、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
人の冠動脈疾患(CAD)のリスクを示すための、電子聴診器または冠動脈疾患(CAD)のリスクを示すためのシステムによって実行される方法であって、
人の胸部に配置されたマイクロフォンによって記録された複数の心拍をカバーする音声記録を取得するステップ(100)と、
前記音声記録内の複数の心音(S)を識別するステップ(200)と、
各セグメントが心臓サイクルの少なくとも一部をカバーする、複数のセグメントを、前記複数の心音(S)に基づく音声記録から取得するステップ(300)と、
前記複数のセグメントのうちの第1の数のセグメントの拡張期における期間の第1の周波数窓の信号強度に基づいて、周波数パワー測定値(FPM)を決定するステップ(400)と、
前記複数の心音(S)および前記複数のセグメントに基づいて、第4の心音の振幅(S4Amp)を決定するステップ(500)と、
前記複数の心音(S)に基づいて、心拍変動(HRV)の指標を決定するステップ(600)と、
前記周波数パワー測定値(FPM)、前記第4の心音の振幅(S4Amp)、および前記心拍変動(HRV)の指標に基づいて、冠動脈疾患(CAD)のリスクの指標を決定するステップ(700)と、
を含み、
前記複数の心音(S)は複数の第2の特定の心音(SS2)を含み、周波数パワー測定値(FPM)を決定するステップ(400)に、
前記セグメント内の前記第2の特定の心音(SS2)に対する前記第1の数のセグメントのそれぞれの拡張期における期間の時間的位置を決定するステップ(402)を含み、前記第2の特定の心音(SS2)が大動脈弁閉鎖(AC)に関連する前記第2の心音(S2)であり、前記第2の心音(S2)の時間的位置が前記第2の心音(S2)の開始またはピークに対応しており、
前記期間の時間的位置を決定するステップ(408)に、
前記第1の数のセグメントのそれぞれにおける第2の心音(S2)の時間的位置を決定するステップ(404)と、
各セグメントの拡張期における期間を、前記セグメントの第2の心音(S2)の時間的位置の後に、160~190ミリ秒後、または175ミリ秒後に開始し、かつ前記セグメントの第2の心音(S2)の時間的位置の後に、430~470ミリ秒前、または450ミリ秒前に終了する期間として決定するステップ(406)と、
を含む
、方法。
【請求項4】
人の冠動脈疾患(CAD)のリスクを示すための、電子聴診器または冠動脈疾患(CAD)のリスクを示すためのシステムによって実行される方法であって、
人の胸部に配置されたマイクロフォンによって記録された複数の心拍をカバーする音声記録を取得するステップ(100)と、
前記音声記録内の複数の心音(S)を識別するステップ(200)と、
各セグメントが心臓サイクルの少なくとも一部をカバーする、複数のセグメントを、前記複数の心音(S)に基づく音声記録から取得するステップ(300)と、
前記複数のセグメントのうちの第1の数のセグメントの拡張期における期間の第1の周波数窓の信号強度に基づいて、周波数パワー測定値(FPM)を決定するステップ(400)と、
前記複数の心音(S)および前記複数のセグメントに基づいて、第4の心音の振幅(S4Amp)を決定するステップ(500)と、
前記複数の心音(S)に基づいて、心拍変動(HRV)の指標を決定するステップ(600)と、
前記周波数パワー測定値(FPM)、前記第4の心音の振幅(S4Amp)、および前記心拍変動(HRV)の指標に基づいて、冠動脈疾患(CAD)のリスクの指標を決定するステップ(700)と、
を含み、
前記複数の心音(S)は複数の第3の特定の心音(SS3)を含み、前記第4の心音の振幅(S4Amp)を決定するステップ(500)に、
前記複数の第3の特定の心音(SS3)に基づいて、前記複数のセグメントの第2の数のセグメントを整列するステップ(502)と、
前記整列された第2の数のセグメントに基づいて、平均セグメントを計算するステップ(504)と、
前記平均セグメントにおける第4の心音(S4)のエネルギーに基づいて、前記第4の心音の振幅(S4Amp)を決定するステップ(506)と、
を含む
、方法。
【請求項5】
前記第3の特定の心音(SS3)は、僧帽弁閉鎖(MC)に関連する前記第1の心音(S1)であり、
前記第4の心音の振幅(S4Amp)を決定するステップ(500)は、
平均セグメントにおける前記第1の心音(S1)の時間的位置を決定するステップ(508)と、
前記第1の心音(S1)の時間的位置の前に、100~140ミリ秒の範囲、または120ミリ秒で開始し、かつ前記第1の心音(S1)の時間位置の前に、20~10ミリ秒の範囲、または15ミリ秒で終了する、前記平均セグメントにおける第4の心音(S4)の期間を決定するステップ(510)と、
前記第4の心音(S4)の期間のエネルギーに基づいて、前記第4の心音の振幅(S4Amp)を決定するステップ(512)と、
を含み、
前記第1の心音(S1)の時間的位置は、前記第1の心音(S1)の開始またはピークに対応する、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
人の冠動脈疾患(CAD)のリスクを示すための、電子聴診器または冠動脈疾患(CAD)のリスクを示すためのシステムによって実行される方法であって、
人の胸部に配置されたマイクロフォンによって記録された複数の心拍をカバーする音声記録を取得するステップ(100)と、
前記音声記録内の複数の心音(S)を識別するステップ(200)と、
各セグメントが心臓サイクルの少なくとも一部をカバーする、複数のセグメントを、前記複数の心音(S)に基づく音声記録から取得するステップ(300)と、
前記複数のセグメントのうちの第1の数のセグメントの拡張期における期間の第1の周波数窓の信号強度に基づいて、周波数パワー測定値(FPM)を決定するステップ(400)と、
前記複数の心音(S)および前記複数のセグメントに基づいて、第4の心音の振幅(S4Amp)を決定するステップ(500)と、
前記複数の心音(S)に基づいて、心拍変動(HRV)の指標を決定するステップ(600)と、
前記周波数パワー測定値(FPM)、前記第4の心音の振幅(S4Amp)、および前記心拍変動(HRV)の指標に基づいて、冠動脈疾患(CAD)のリスクの指標を決定するステップ(700)と、
を含み、
前記心拍変動(HRV)の指標を決定するステップ(600)は、
前記複数の心音(S)のうちの複数の第4の特定の心音(SS4)の時間的位置を決定するステップ(602)と、
各心拍持続時間(HBD)が、2つの連続する第4の特定の心音(SS4)の時間的位置の間の時間である、複数の心拍持続時間(HBD)を決定するステップ(604)と、
前記複数の心拍持続時間(HBD)の変動に基づいて、前記心拍変動(HRV)の指標を決定するステップ(606)と、
を含む
、方法。
【請求項7】
前記複数の第4の特定の心音(SS4)のうちの第4の特定の心音(SS4)の時間的位置が、前記第4の特定の心音(SS4)の開始またはピークに対応する、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の第4の特定の心音(SS4)はそれぞれ、前記僧帽弁閉鎖(MC)に関連する前記第1の心音(S1)である、請求項
6または
7に記載の方法。
【請求項9】
人の冠動脈疾患(CAD)のリスクを示すための、電子聴診器または冠動脈疾患(CAD)のリスクを示すためのシステムによって実行される方法であって、
人の胸部に配置されたマイクロフォンによって記録された複数の心拍をカバーする音声記録を取得するステップ(100)と、
前記音声記録内の複数の心音(S)を識別するステップ(200)と、
各セグメントが心臓サイクルの少なくとも一部をカバーする、複数のセグメントを、前記複数の心音(S)に基づく音声記録から取得するステップ(300)と、
前記複数のセグメントのうちの第1の数のセグメントの拡張期における期間の第1の周波数窓の信号強度に基づいて、周波数パワー測定値(FPM)を決定するステップ(400)と、
前記複数の心音(S)および前記複数のセグメントに基づいて、第4の心音の振幅(S4Amp)を決定するステップ(500)と、
前記複数の心音(S)に基づいて、心拍変動(HRV)の指標を決定するステップ(600)と、
前記周波数パワー測定値(FPM)、前記第4の心音の振幅(S4Amp)、および前記心拍変動(HRV)の指標に基づいて、冠動脈疾患(CAD)のリスクの指標を決定するステップ(700)と、
を含み、
前記心拍変動(HRV)の指標を決定するステップ(600)は、
前記複数の心拍の少なくとも一部をカバーする音声記録の期間の第3の周波数窓であって、2Hz未満、または1Hz未満の高域カットオフを有する前記第3の周波数窓の信号強度を決定するステップ(610)と、
前記第3の周波数窓の信号強度に基づいて、前記心拍変動(HRV)の指標を決定するステップ(614)と
を含み、
前記第3の周波数窓が、0.001Hzを超える低域カットオフを有する
、方法。
【請求項10】
前記第3の周波数窓は、0.001~0.005Hzの範囲、または0.003Hzの低域カットオフ、および0.02~0.06の範囲、または0.04Hzの高域カットオフ、または0.02~0.06Hzの範囲、または0.04Hzの低域カットオフ、および0.1~0.2の範囲、または0.15Hzの高域カットオフ、または0.1~0.2Hzの範囲、または0.15Hzの低域カットオフ、および0.3~0.5の範囲、または0.4Hzの高域カットオフを有する、請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記心拍変動(HRV)の指標を決定するステップ(600)に、
前記音声記録の期間における第4の周波数窓であって、2Hz未満、または1Hz未満の高域カットオフを有し、かつ前記第3の周波数窓にオーバーラップしない、または部分的にオーバーラップする前記第4の周波数窓の信号強度を決定するステップ(612)を含み、
前記心拍変動(HRV)の指標を決定するステップ(614)は、更に、前記第4の周波数窓の信号強度に基づき、
前記第4の周波数窓は、0.001Hzを超える低域カットオフを有する、請求項
9または
10に記載の方法。
【請求項12】
冠動脈疾患(CAD)のリスクの指標を決定するステップは、更に、前記周波数パワー測定値(FPM)、前記第4の心音の振幅(S4Amp)、および前記心拍変動(HRV)の指標を含む訓練された線形判別分析(LDA)に基づく、請求項1~
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
人の冠動脈疾患(CAD)のリスクを示すシステムであって、
人の心臓から音声を取得するために人の胸部に配置されるように構成されたマイクロフォンと、
前記マイクロフォンに動作可能に接続され、かつ請求項1~
12のいずれか一項に記載の方法を実行するように構成されたプロセッサと
を含む、システム。
【請求項14】
人の心臓から音声を取得するために人の胸部に配置されるように構成されたマイクロフォンと、前記マイクロフォンに動作可能に接続されたプロセッサとを含むシステムで使用されるコンピュータプログラム製品であって、前記システムのプロセッサによって実行されると、前記プロセッサに請求項1~
12のいずれか一項に記載の方法を実行させるように構成されたプログラムコード命令を含む、コンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
提案される技術は、概して、冠動脈疾患(CAD)の疑いを診断する分野に関し、特に、非侵襲性の冠動脈疾患(CAD)のリスクを示すためのデバイスまたは装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冠動脈疾患(CAD)の疑いの診断には、かなりの医療財源が必要である。今日、一般的に侵襲的冠動脈造影(ICA)が使用されているが、費用がかかり、かつ合併症のリスクがある。CADの診断に利用可能な非侵襲的な技術がある。例えば、音センサ技術、アナリティクス能力、およびデータフィルタリングにおける最近の進歩により、音響検出を使用して、閉塞性CADに起因する冠動脈内の乱流を診断できるようになった。そのような音響ベースの技術は、非侵襲的であり、放射線がなく、かつ経済的に有利である。通常、これらは、低~中程度のリスク集団の主要なリスク層別化に使用可能である。従って、これらの技術の精度の向上は、日常の診療において非常に重要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
提案された技術は、上述したニーズを満たすこと、特に、CADの疑いを診断するための音響ベースの技術の診断精度を改善することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
提案される技術の第1の態様において、少なくとも主要な目的は、人の冠動脈疾患(CAD)のリスクを示す方法によって達成される。この方法は、複数の心拍をカバーする音声記録を取得するステップと、音声記録内の複数の心音(S)を識別するステップと、各セグメントが心臓サイクルの少なくとも一部をカバーする、複数のセグメントを複数の心音(S)に基づく音声記録から取得するステップと、を含む。本方法は、更に、複数のセグメントのうちの第1の数のセグメントの拡張期における期間の第1の周波数窓の信号強度に基づいて、周波数パワー測定値(FPM)を決定するステップと、複数の心音(S)および複数のセグメントに基づいて、第4の心音の振幅(S4Amp)を決定するステップと、を含む。
【0005】
ここで、第1の周波数窓の信号強度は、第1の周波数窓の振幅または第1の周波数窓のエネルギーを包含すると理解され、また、拡張期における期間は、拡張期における間隔を包含すると理解される。この方法は、更に、周波数パワー測定値(FPM)および第4の心音の振幅(S4Amp)に基づいて、冠動脈疾患(CAD)のリスクの指標を決定するステップを含む。この方法は、更に、複数の心音(S)に基づいて心拍変動(HRV)の指標を決定するステップを含み、冠動脈疾患(CAD)のリスクの指標を決定するステップは、更に、心拍変動(HRV)の指標に基づき得る。
【0006】
提案された技術の第1の態様による方法は、電子聴診器または冠動脈疾患(CAD)のリスクを示すためのシステムによって実行することができる。音声記録は、マイクロフォンによって取得することができ、残りのステップまたは他のステップは、プロセッサによって実行することができる。
【0007】
第2の態様によれば、上記の目的は、人の冠動脈疾患(CAD)のリスクを示すためのシステムによって達成される。このシステムは、人の心臓から音声を取得するために人の胸部に配置されるように構成されたマイクロフォンと、マイクロフォンに動作可能に接続されており、第1の態様による方法を実行するように構成されたプロセッサとを備える。
【0008】
第2の態様によれば、上記の目的は、人の心臓から音声を取得するために人の胸部に配置されるように構成されたマイクロフォンと、マイクロフォンに動作可能に接続されたプロセッサとを含むシステムにおいて使用されるコンピュータプログラム製品によって達成される。コンピュータプログラム製品は、システムのプロセッサによって実行されると、プロセッサに第1の態様による方法を実行させるように構成されたプログラムコード命令を含む。
【0009】
ここで、マイクロフォンは、音声記録を取得するのに適したトランスデューサを包含すると理解される。
【0010】
提案される技術の代替案では、周波数パワー測定値(FPM)および第4の心音の振幅(S4Amp)のうちの一方だけが決定され、冠動脈疾患(CAD)のリスクの指標の決定に使用される。例えば、冠動脈疾患(CAD)のリスクの指標の決定は、周波数パワー測定値(FPM)または第4の心音の振幅(S4Amp)と、心拍変動(HRV)の指標とに基づいてもよい。
【0011】
音声記録のセグメンテーションに関連する多数の特性が、提案された技術に対して有利であることが判明している。
【0012】
複数の心音(S)は、複数の第1の特定の心音(SS1)を含むことができ、音声記録から複数のセグメントを取得するステップは、複数の第1の特定の心音(SS1)に基づいて、音声記録を複数のセグメントに分割するステップを含み得る。各セグメントは完全な心臓サイクルをカバーしてもよい。
【0013】
複数の第1の特定の心音(SS1)は、それぞれが大動脈弁閉鎖(AC)に関連している第2の心音(S2)を含むことができる。複数のセグメントは、それぞれが少なくとも第2の心音(S2)および単一の心拍の後続の拡張期をカバーする、第1の数のセグメントを含むことができる。複数の第1の特定の心音(SS1)は、それぞれが僧帽弁閉鎖(MC)に関連する、第1の心音(S1)を含むことができる。複数のセグメントは、それぞれが心室壁の膨張の弾性限界に関連する少なくとも第4の心音(S4)および単一の心拍の後続の第1の心音(S1)をカバーする、第2の数のセグメントを含むことができる。
【0014】
周波数パワー測定値(FPM)に関連する多数の特性が有利であり、提案された技術の精度向上に貢献していることが判明している。
【0015】
周波数パワー測定値(FPM)を決定するステップは、更に、各セグメントの拡張期における期間または間隔の第2の周波数窓の信号強度に基づいてもよく、第2の周波数窓は、第1の周波数窓の高域カットオフを超える低域カットオフを有する。ここで、第2の周波数窓の信号強度は、第2の周波数窓における振幅または第2の周波数窓のエネルギーを包含すると理解される。周波数パワー測定値(FPM)を決定するステップは、更に、第1の数のセグメントの第1の周波数窓におけるエネルギーの合計に基づいて第1の合計を決定するステップと、第1の数のセグメントの第2の周波数窓におけるエネルギーの合計に基づいて第2の合計を決定するステップとを含む。ここで、合計は平均を含むと理解される。次に、周波数パワー測定値(FPM)の決定は、第1の合計と第2の合計との間の比率(FPR)、または第1の合計および第2の合計の相対的な大きさに基づいてもよい。
【0016】
第1の周波数窓は、20~40Hzの範囲、または30Hzの低域カットオフを有し得る。付加的または代替的に、第1の周波数窓は、80~100Hzの範囲、または90Hzの高域カットオフを有し得る。第2の周波数窓は、180~220Hzの範囲、または200Hzの低域カットオフを有し得る。付加的または代替的に、第2の周波数窓は、250~800Hzの範囲、280~320Hzの範囲、または300Hzの高域カットオフを有し得る。
【0017】
複数の心音(S)は、複数の第2の特定の心音(SS2)を含むことができ、周波数パワー測定値(FPM)を決定するステップは、セグメント内の第2の特定の心音(SS2)に対する第1の数のセグメントのそれぞれの拡張期における期間の時間的位置を決定するステップを含む。第2の特定の心音(SS2)は、大動脈弁閉鎖(AC)に関連する第2の心音(S2)であり得る。第2の心音(S2)の時間的位置は、第2の心音(S2)の開始またはピークに対応し得る。
【0018】
期間または間隔の時間的位置を決定するステップは、第1の数のセグメントのそれぞれにおける第2の心音(S2)の時間的位置を決定するステップと、各セグメントの拡張期における期間または間隔を、セグメントの第2の心音(S2)の時間的位置の後に、160~190ミリ秒後、または175ミリ秒後に開始し、かつセグメントの第2の心音(S2)の時間的位置の後に、430~470ミリ秒前、または450ミリ秒前に終了する期間または間隔として決定するステップと、を含むことができる。
【0019】
第4の心音の振幅(S4Amp)に関連する多くの特性が有利であり、かつ提案された技術の改善された精度に寄与することが判明している。
【0020】
複数の心音(S)は、複数の第3の特定の心音(SS3)を含むことができ、第4の心音の振幅(S4Amp)を決定するステップは、複数の第3の特定の心音(SS3)に基づいて、複数のセグメントの第2の数のセグメントを整列するステップと、整列された第2の数のセグメントに基づいて平均セグメントを計算するステップと、平均セグメントにおける第4の心音(S4)のエネルギーに基づいて、第4の心音の振幅(S4Amp)を決定するステップと、を含み得る。ここで、平均セグメントは、セグメントの合計を包含すると理解され、また、第4の心音(S4)のエネルギーは、第4の心音(S4)での信号強度または第4の心音(S4)のピーク振幅を包含すると理解される。
【0021】
第3の特定の心音(SS3)は、僧帽弁閉鎖(MC)に関連する第1の心音(S1)であり得る。第4の心音の振幅(S4Amp)を決定するステップは、平均セグメントにおける第1の心音(S1)の時間的位置を決定するステップと、第1の心音(S1)の時間的位置の前に、100~140ミリ秒の範囲、または120ミリ秒で開始し、かつ第1の心音(S1)の時間的位置の前に、20~10ミリ秒の範囲、または15ミリ秒で終了する、平均セグメントにおける第4の心音の期間または間隔を決定するステップと、第4の心音の期間または間隔のエネルギー、または第4の心音の期間または間隔での信号強度、または第4の心音の期間または間隔のピーク振幅に基づいて、第4の心音の振幅(S4Amp)を決定するステップと、を含み得る。ここで、第4の心音の期間または間隔のエネルギーは、第4の心音期間での信号強度、または第4の心音期間のピーク振幅を包含すると理解される。
【0022】
第1の心音(S1)の時間的位置は、第1の心音(S1)の開始またはピークに対応し得る。
【0023】
心拍変動(HRV)の指標を決定するための2つの異なるアプローチが有利であり、かつ提案された技術の精度の向上に貢献していることが判明している。
【0024】
第1の手法では、心拍変動(HRV)の指標を決定するステップは、複数の心音(S)のうちの複数の第4の特定の心音(SS4)の時間的位置を決定するステップと、各心拍持続時間(HBD)が、2つの連続する第4の特定の心音(SS4)の時間的位置の間の時間または差異である、複数の心拍持続時間(HBD)を決定するステップと、複数の心拍持続時間(HBD)の変動に基づいて心拍変動(HRV)の指標を決定するステップと、を含み得る。ここで、複数の心拍持続時間(HBD)の変動は、複数の心拍持続時間(HBD)の分散または標準偏差を包含すると理解される。
【0025】
複数の第4の特定の心音(SS4)のうちの第4の特定の心音(SS4)の時間的位置は、第4の特定の心音(SS4)の開始またはピークに対応し得る。複数の第4の特定の心音(SS4)はそれぞれ、僧帽弁閉鎖(MC)に関連する第1の心音(S1)であり得る。
【0026】
第2の手法では、心拍変動(HRV)の指標を決定するステップは、複数の心拍の少なくとも一部をカバーする音声記録の期間または間隔の第3の周波数窓であって、2Hz未満または1Hz未満の高域カットオフを有する第3の周波数窓の信号強度を決定するステップと、第3の周波数窓の信号強度に基づいて、心拍変動(HRV)の指標を決定するステップとを含み得る。ここで、第3の周波数窓の信号強度は、第3の周波数窓における振幅または第3の周波数窓のエネルギーを包含すると理解される。
【0027】
第3の周波数窓は、0.001Hzを超える低域カットオフを有し得る。付加的または代替的に、第3の周波数窓は、0.001~0.005Hzの範囲、または0.003Hzの低域カットオフ、および0.02~0.06の範囲、または0.04Hzの高域カットオフ、または0.02~0.06Hzの範囲、または0.04Hzの低域カットオフ、および0.1~0.2の範囲、または0.15Hzの高域カットオフ、または0.1~0.2Hzの範囲、または0.15Hzの低域カットオフ、および0.3~0.5の範囲、または0.4Hzの高域カットオフを有し得る。
【0028】
心拍変動(HRV)の指標を決定するステップは、更に、音声記録の期間または間隔における第4の周波数窓であって、2Hz未満、または1Hz未満の高域カットオフを有し、かつ第3の周波数窓にオーバーラップしない、または部分的にオーバーラップする第4の周波数窓の信号強度を決定するステップを含むことができる。また、心拍変動(HRV)の指標を決定するステップは、更に、第4の周波数窓の信号強度に基づくことができる。ここで、第4の周波数窓の信号強度は、第4の周波数窓における振幅または第4の周波数窓のエネルギーを包含すると理解される。
【0029】
第4の周波数窓は、0.001Hzを超える低域カットオフを有する。付加的または代替的に、第4の周波数窓は、0.001~0.005Hzの範囲、または0.003Hzの低域カットオフ、および0.02~0.06の範囲、または0.04Hzの高域カットオフ、または0.02~0.06Hzの範囲、または0.04Hzの低域カットオフ、および0.1~0.2の範囲、または0.15Hzの高域カットオフ、または0.1~0.2Hz、または0.15Hzの低域カットオフ、および0.3~0.5の範囲、または0.4Hzの高域カットオフを有し得る。
【0030】
実際のリスク指標を決定するための有利な手法が特定されている。冠動脈疾患(CAD)のリスクの指標を決定するステップは、更に、周波数パワー測定値(FPM)および第4の心音の振幅(S4Amp)を含む訓練された線形判別分析(LDA)に基づいてもよい。訓練された線形判別分析(LDA)は、更に、心拍変動(HRV)の指標を含み得る。
【0031】
提案された技術の更なる利点および特性は、以下の実施形態の詳細な説明から明白になるであろう。
【0032】
提案された技術の上述した、並びに他の特徴および利点のより完全な理解は、添付の図面と併せて実施形態の以下の説明から明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】提案されたシステムの一実施形態の概略図である。
【
図2】提案された方法の一実施形態を示す概略的なフローチャートである。
【
図3】セグメンテーションを取得するためのステップの一実施形態を示す概略的なフローチャートである。
【
図4】周波数パワー測定値(FPM)を決定するためのステップの一実施形態を示す概略的なフローチャートである。
【
図5】第4の心音の振幅(S4Amp)を決定するためのステップの一実施形態を示す概略的なフローチャートである。
【
図6a】心拍変動(HRV)の指標を決定するためのステップの一実施形態を示す概略的なフローチャートである。
【
図6b】心拍変動(HRV)の指標を決定するためのステップの代替的な実施形態を示す概略的なフローチャートである。
【
図7】典型的な平均セグメントの一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、人18の冠動脈疾患(CAD)のリスクを示すためのシステム12の一実施形態を概略的に示す。システム12は、人18の心臓から音声を取得するために人18の胸部16に配置可能なマイクロフォン14を有する。プロセッサ20は、マイクロフォン14に接続されている。プロセッサ20は、マイクロフォン14から受信した信号を記憶することができる一時的メモリ22を有し、その信号によってプログラムコード命令を実行することができる。システム12は、マイクロフォン14を支持するサポート26と、プロセッサ20を収容するハウジング28とを有する。システム12は、プロセッサ20のためのプログラムコード命令を格納する非一時的メモリ24も有する。例えば、システム12は、全体としてスマートフォンの一体部品であることができ、または、マイクロフォン14およびサポート26を除く全ての部分が、スマートフォンの一部を形成することができる。一実施形態では、マイクロフォン14は、スマートフォンの一体型マイクロフォンである。
【0035】
システム12の一実施形態では、システム12は、プロセッサ20に動作可能に接続されたインジケータ30を更に有する。インジケータ30は、例えば、数値等のCADのリスクを示すプロセッサ20からの出力情報を表示可能なLCDディスプレイ等を有することができる。
【0036】
非一時的メモリ24内のプログラムコード命令は、プロセッサ20に
図2に示される方法を実行させる。マイクロフォン14は、人18の胸部16に配置され、信号を記録する。このようにして、人の胸部に配置されたマイクロフォンによって記録された複数の心拍をカバーする音声記録が取得される100。一実施形態では、信号は最初にデータベースに格納され、その後プロセッサによってデータベースから読み出される。
【0037】
続いて、持続時間に依存する隠れマルコフモデルに基づいて、複数の心音(S)が音声記録内にて識別される200。
【0038】
複数の心音(S)は、僧帽弁閉鎖(MC)によって生成される第1の心音(S1)の形態で複数の第1の特定の心音(SS1)を含む。次に、
図3に示されているように、音声記録を第1の心音(S1)に基づいて複数のセグメントに分割する302ことによって、それぞれが完全な心臓サイクルの一部をカバーする、複数のセグメントが音声記録から取得される300。セグメンテーションは、公知の持続時間に依存する隠れマルコフモデルを使用して実行され、複数のセグメントは、第1の心音(S1)、第2の心音(S2)、拡張期、および収縮期を個別にカバーする期間を含む。
【0039】
本方法の次のステップでは、周波数パワー測定値(FPM)が決定され(400)、
図4に詳細が示されている。複数の心音(S)は、大動脈弁閉鎖(AC)によって生成される第2の心音(S2)の形態で、複数の第2の特定の心音(SS2)を含む。最初に、各セグメントにおける期間の時間的位置が決定される402。これは、第2の心音(S2)を含むセグメント内の第2の心音(S2)の時間的位置を決定する404ことによって実行され、ここで、時間的位置は、各セグメントにおける第2の心音(S2)である。これに続いて、セグメントの第2の心音(S2)の時間的位置の後から175ミリ秒後に開始し、かつセグメントの第2の心音(S2)の時間的位置の後から450ミリ秒前に終了する間隔として期間を決定する406。このようにして、各セグメントの拡張期における期間が決定される。
【0040】
各セグメントについて第1の合計が決定され408、ここで、第1の合計は、セグメントの上述した期間の第1の周波数窓におけるエネルギーの合計である。第1の周波数窓は、30Hzの低域カットオフおよび90Hzの高域カットオフを有する。同様に、各セグメントについて第2の合計が決定され410、ここで、第2の合計は、セグメントの上述した期間の第2の周波数窓におけるエネルギーの合計である。第2の周波数窓は、200Hzの低域カットオフおよび300Hzの高域カットオフを有する。次に、周波数パワー測定値(FPR)が、第1の合計と第2の合計との間の比率に基づいて決定される412。
【0041】
一実施形態では、上記は、期間を、周波数パワースペクトルを提供するフーリエ変換にかけられる128ミリ秒の75%オーバーラップしているサブウィンドウに分割することによって達成される。周波数パワースペクトルの平方根が計算され、次に各サブウィンドウの平均スペクトルが推定される。中間スペクトルは、セグメント全体の中間スペクトルを計算することによって推定される。次に、周波数パワー測定値(FPR)が、30~90Hz帯域の振幅の合計と200~300Hz帯域の振幅の合計との間の比率として決定される。
【0042】
要約すると、周波数パワー測定値(FPM)は、拡張期における期間の第1の周波数窓および第2の周波数窓の信号強度に基づいて決定され400、ここで、第2の周波数窓は、第1の周波数窓の高域カットオフを超える低域カットオフを有する。
【0043】
本方法の次のステップでは、第4の心音の振幅(S4Amp)が決定され500、これは
図5に詳細に示されている。複数の心音(S)は、僧帽弁閉鎖(MC)によって生成される第1の心音(S1)の形態で、複数の第3の特定の心音(SS3)を含む。第1の心音(S1)を含むセグメントは、第1の心音(S1)の開始に基づいて整列される502。これらのセグメントは、先行する第4の心音(S4)も含む。一実施形態では、整列は、他の全ての拍動に対する遅れを推定するための各心拍の相互相関を含む大まかな整列と、他の心音に対する遅れの平均に従った各拍動の変化とに基づく。それは、更に、中央心拍に対する各心拍の相互相関と、中央心拍に対する遅れに従った各心拍の変化とを含む微調整に基づく。
【0044】
平均セグメントは、整列されたセグメントに基づいて計算される504。次に、かくして整列から効果的に認識される第1の心音(S1)の開始である、平均セグメント内の第1の心音(S1)の時間的位置が決定される508。平均セグメント内の第4の心音期間は、第1の心音(S1)の時間的位置の120ミリ秒前に開始し、かつ第1の心音(S1)の時間的位置の15ミリ秒前に終了する期間として決定される510。次に、第4の心音の振幅(S4Amp)が、第4の心音期間のピーク振幅に基づいて決定される512。これは、エネルギーが振幅に関係している故に、平均セグメントにおける第4の心音(S4)のエネルギーに基づいて、第4の心音の振幅(S4Amp)が効果的に決定された506ことを意味する。第4の心音期間32、第1の心音(S1)の開始34、および第4の心音(S4)のピーク振幅36は、
図7に示す平均セグメント38に示されている。
【0045】
本方法の次のステップでは、心拍変動(HRV)の指標が決定され600、これは
図6aに詳細に示されている。複数の心音(S)は、僧帽弁閉鎖(MC)によって生成される第1の心音(S1)の形態で、複数の第4の特定の心音(SS4)を含む。第1の心音(S1)のそれぞれの時間的位置は、第1の心音(S1)の開始として決定される。複数の心拍持続時間(HBD)は、連続する第1の心音(S1)の時間的位置の間の持続時間として決定される。次に、心拍変動(HRV)の指標が、残りの心拍持続時間(HBD)の標準偏差として決定される606。これは、心拍変動(HRV)の指標が複数の心音(S)に基づいて効果的に決定されたことを意味する。
【0046】
代替的な実施形態として、心拍変動(HRV)を決定するステップ600が
図6bに示されている。60を超える心拍をカバーする音声記録の期間における、0.003Hz~0.04Hzの範囲の第3の周波数窓におけるエネルギーが決定される610。一実施形態では、第3の周波数窓は、0.04Hz~0.15Hzの範囲である。更に、同じ期間の0.15Hz~0.4Hzの範囲の第4の周波数窓におけるエネルギーが決定される612。
【0047】
一実施形態では、上記は、複数の心音(S)から取得される、心拍の全ての隣接する第1の心音(S1)間の分離が同じになるように期間をリサンプリングし、リサンプリングされた期間のフーリエ変換によって周波数パワースペクトルを生成することによって達成される。次に、0.003Hz~0.04Hzの間、および0.15Hz~0.4Hzの間のエネルギーが、周波数パワースペクトルから決定される。次に、心拍変動(HRV)の指標が、0.003Hz~0.04Hzの周波数窓のエネルギーと、0.15Hz~0.4Hzの周波数窓との間の比率として決定される614。事実上、これは、心拍変動(HRV)の指標が、第3の周波数窓および第4の周波数窓の信号強度に基づいて決定されたこと614、および複数の心音(S)に基づいて決定されたこと600を意味する。
【0048】
本方法の次のステップでは、決定された周波数パワー測定値(FPM)、決定された第4の心音の振幅(S4Amp)、および決定された心拍変動(HRV)の指標に基づいて、冠動脈疾患(CAD)のリスクの指標が決定される700。これは、訓練された線形判別分析(LDA)で決定された測定値を使用して達成される。
【0049】
コンセプトの証明
722人の非CAD被験者および153人のCAD被験者を含む研究において、提案された技術の一実施形態を採用した。受信者動作曲線(ROC)を生成し、曲線下面積(AUC)を決定した。結果が表1に示されており、心拍変動(HRV)により曲線下面積(AUC)が約1.1%向上することが示されている。心拍変動(HRV)が、提案された技術によって達成される音響スコアにおいて重要な分類性能を有すると結論付けることができる。更なる音響に由来する測定値が使用された場合、分類性能が改善され得ることが想定される。
【0050】