(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】Ly6Kを阻害する化合物およびそれらを使用する方法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/473 20060101AFI20230314BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20230314BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230314BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20230314BHJP
C07D 219/10 20060101ALN20230314BHJP
C07C 39/367 20060101ALN20230314BHJP
【FI】
A61K31/473
A61K31/05
A61P43/00 105
A61P35/00
C07D219/10
C07C39/367
(21)【出願番号】P 2020525903
(86)(22)【出願日】2018-11-09
(86)【国際出願番号】 US2018060121
(87)【国際公開番号】W WO2019094788
(87)【国際公開日】2019-05-16
【審査請求日】2021-10-29
(32)【優先日】2017-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】510244570
【氏名又は名称】ザ ヘンリー エム.ジャクソン ファンデーション フォー ザ アドバンスメント オブ ミリタリー メディシン,インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】ウパディヤイ, ギータ
【審査官】小路 杏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2010/019680(WO,A1)
【文献】Denny, W. A. et al.,Potential antitumor agents. 36. Quantitative relationships between experimental antitumor activity, toxicity, and structure for the general class of 9-anilinoacridine antitumor agents,Journal of Medicinal Chemistry,1982年,25(3),276-315
【文献】Denny, W. A. et al.,Potential antitumor agents. 32. Role of agent base strength in the quantitative structure-antitumor relationships for 4'-(9-acridinylamino)methanesulfonanilide analogs,Journal of Medicinal Chemistry,1979年,22(12),1453-1460
【文献】Klopman, G. and Macina, O. T.,Computer-automated structure evaluation of antileukemic 9-anilinoacridines,Molecular Pharmacology,1987年,31(4),457-476
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体において、Ly6Kにより媒介される障害を処置することにおける使用のための薬剤であって、前記薬剤は、
【化15】
の化合物、またはその薬学的に許容される塩を含み、
前記障害が、トリプルネガティブ乳がん、間葉系乳がん、基底乳がん、または免疫調節性乳がんである、
薬剤。
【請求項2】
前記薬剤が
、
式
【化18】
の化合物、またはその薬学的に許容される塩
との組み合わせである、請求項
1に記載の使用のための薬剤。
【請求項3】
前記障害が、トリプルネガティブ乳がんである、請求項
1または2に記載の使用のための薬剤
。
【請求項4】
前記使用が、前記被験体への追加の活性剤の投与をさらに含む、請求項
1~3のいずれか一項に記載の使用のための薬剤
。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年11月9日に出願された米国仮特許出願第62/583,998号の利益を主張し、その全容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、国立がん研究所(National Cancer Institute)により授与された認可番号CA175862の下で政府援助を受けて行われた。政府は、本発明における一定の権利を有する。
【0003】
本技術は、Ly6Kを阻害する化合物、ならびにそのような化合物を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
トリプルネガティブ乳がん(TNBC)は、高度に不均質の疾患であり、複数のサブタイプから構成される1。TNBC患者は、最悪の転帰に苦慮し、エストロゲン受容体(ER)陽性およびヒト上皮成長受容体(human epidermal growth receptor)2(Her 2)陽性の乳がんを有する患者と比較して、治療的選択肢がほとんどない3。
【0005】
ホルモン療法または抗Her2療法などの標的化療法は、TNBCに対して機能しない1。免疫療法は、がん治療にパラダイムシフトをもたらしたけれども、TNBCにおけるその効果はわずかであった2。TNBCは、より若い女性に発症し、乳がんサブタイプの間で最悪の全生存率を有する3。TNBCを処置するための新規な、有効かつ安全な手法を特定し、開発することが緊急に必要とされている。
【0006】
免疫チェックポイントタンパク質PD-L1は、TNBCにおいて増加し、その発現の増加は、腫瘍免疫エスケープの一因となっている4、5。TGFβシグナル伝達は、腫瘍進行の免疫および非免疫の関連経路の両方を活性化する、がんにおける別の重要な拠点となっている6、7。しかしながら、多くの正常な組織におけるTGFβシグナル伝達およびPD-L1の広範囲な発現および重要な機能のために、それらは治療介入に対して問題をはらむ標的となっている。
本技術は、これらおよび当技術分野における他の欠損を克服することを対象とする。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【文献】LehmannおよびPietenpol、Breast(2015)24(補遺2)S36~40
【文献】Nandaら、Journal of Clinical Oncology(2016)34、2460~2467
【文献】Amirikiaら、Cancer(2011)117、2747~2753
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本技術の第1の態様は:
(a)式I:
【化1】
[式中:
【化2】
は、単結合または二重結合であり;
R
1は、-C
1~8アルキル、-C
3~8シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、-フェニレン-NH
2、および-C
1~4アルキレン-NH
2からなる群より選択され;
R
2は、H、-C
1~3アルキル、および-C(O)-C
1~5アルキルからなる群より選択され;
R
3は、-C
1~6アルキルまたは-C
1~3アルキレン-OHであり;
R
4は、Hまたは-C
1~6アルキルであり;
R
5は、H、-C
1~3アルキル、-NO
2、-O-C
1~3アルキル、ハロゲン、-NR
2、および-C(O)-ORからなる群より選択され、各Rは、独立してHまたは-C
1~4アルキルであり;
R
6は、H、-C
1~4アルキル、-NR
2、-NO
2、-O-C
1~3アルキル、ハロゲン、および-C(O)-ORからなる群より選択され、各Rは、独立してHまたは-C
1~4アルキルであり;
R
7は、H、-C
1~4アルキル、-C
1~3アルキレン-SH、-CN、-CF
3、-NR
2、-NO
2、-N=N
+=N
-、-NH-N=N
+-C
1~3アルキル、-NH-C(O)-C
1~3アルキル、-NH-C(O)-O-C
1~3アルキル、-OR、-SR、-S-C
1~3アルキレン-SH、-S(O
2)-C
1~3アルキル、-NH-SO
2-C
1~3アルキル、およびハロゲンからなる群より選択され、各Rは、独立してHまたは-C
1~4アルキルであり;
R
8は、H、-C
1~3アルキル、-C
1~3アルキレン-C(O)-NH
2、-CN、-C-NR
2、-O-C
1~3アルキル、ハロゲン、およびフェニルからなる群より選択され、各Rは、独立してHまたは-C
1~4アルキルであり;
R
9は、H、-C
1~3アルキル、-C
1~3アルキレン-C(O)-NH
2、-CN、-C-NR
2、-O-C
1~3アルキル、ハロゲン、およびフェニルからなる群より選択され、各Rは、独立してHまたは-C
1~4アルキルであり;
R
10は、H、-C
1~4アルキル、-C
1~3アルキレン-SH、-CN、-CF
3、-NR
2、-NO
2、-N=N
+=N
-、-NH-N=N
+-C
1~3アルキル、-NH-C(O)-C
1~3アルキル、-NH-C(O)-O-C
1~3アルキル、-OR、-SR、-S-C
1~3アルキレン-SH、-S(O
2)-C
1~3アルキル、-NH-SO
2-C
1~3アルキル、およびハロゲンからなる群より選択され、各Rは、独立してHまたは-C
1~4アルキルであり;
R
11は、H、-C
1~4アルキル、-NR
2、-NO
2、-O-C
1~3アルキル、ハロゲン、および-C(O)-ORからなる群より選択され、各Rは、独立してHまたは-C
1~4アルキルであり;
R
12は、H、-C
1~3アルキル、-NO
2、-O-C
1~3アルキル、ハロゲン、-NR
2、および-C(O)-ORからなる群より選択され、各Rは、独立してHまたはC
1~4アルキルであり;
Xは、-C(R
13,R
14)-、-N(R
15)-、-O-、および-S-からなる群より選択され:
R
13およびR
14の一方は存在しないかもしくはHであり、他方は、H、-C
1~3アルキル、-C
1~3アルキレン-ハロゲン、および-CF
3からなる群より選択されるか;またはR
13およびR
14は、一緒になって=Oを形成し;
R
15は、存在しないかまたはH、-C
1~3アルキル、-C
1~3アルキレン-ハロゲン、および-CF
3からなる群より選択される]の化合物またはその塩;および
(b)式II:
【化3】
[式中:
R
1、R
2、R
3、R
4、およびR
5のうちの1つは、ハロゲンであり、その他は、独立してH、-C
1~4アルキル、-OH、および-O-C
1~3アルキルからなる群より選択され;
R
6およびR
10は、独立してH、-C
1~3アルキル、-OH、-O-C
1~3アルキル、-SR、-NR
2、およびハロゲンからなる群より選択され、各Rは、独立してHまたは-C
1~4アルキルであり;
R
7およびR
9は、独立してH、-C
1~3アルキル、-O-C
1~3アルキル、-NR
2、およびハロゲンからなる群より選択され、各Rは、独立してHまたは-C
1~4アルキルであり;
R
8は、H、-C
1~6アルキル、-OH、-O-C
1~3アルキル、-SR、-CF
3、-CN、-NR
2、-C(O)-OR、およびハロゲンからなる群より選択され、各Rは、独立してHまたは-C
1~4アルキルであり;
Xは、-C(R
11R
12)-、-N(R
13)-、-O-、および-S-からなる群より選択され:
R
11およびR
12の一方はHであり、他方は、H、-C
1~3アルキル、-C
1~3アルキレン-ハロゲン、および-CF
3からなる群より選択されるか;
またはR
11およびR
12は、一緒になって=Oを形成し;
R
13は、H、-C
1~3アルキル、-C
1~3アルキレン-ハロゲン、および-CF
3からなる群より選択される]の化合物
からなる群より選択される化合物(またはその薬学的に許容される塩、エステル、エノールエーテル、エノールエステル、溶媒和物もしくは水和物)に関する。
【0009】
本技術の第2の態様は、細胞中のLy6Kタンパク質の活性を阻害する方法に関し、前記方法は、細胞と薬剤を、細胞中のLy6Kタンパク質の活性を阻害するのに有効な条件下で接触させることを含み、薬剤は、本技術の第1の態様に基づく化合物(またはその薬学的に許容される塩、エステル、エノールエーテル、エノールエステル、溶媒和物もしくは水和物)である。
【0010】
本技術の第3の態様は、細胞の遊走、コロニー形成、および/または増殖を減少させる方法に関し、前記方法は、細胞と薬剤を、細胞の遊走、コロニー形成、および/または増殖を減少させるのに有効な条件下で接触させることを含み、薬剤は、本技術の第1の態様に基づく化合物(またはその薬学的に許容される塩、エステル、エノールエーテル、エノールエステル、溶媒和物もしくは水和物)である。
【0011】
本技術の第4の態様は、細胞中の遺伝子の発現をモジュレートする方法に関し、前記方法は、細胞と薬剤を、細胞中の遺伝子の発現をモジュレートするのに有効な条件下で接触させることを含み、薬剤は、本技術の第1の態様に基づく化合物(またはその薬学的に許容される塩、エステル、エノールエーテル、エノールエステル、溶媒和物もしくは水和物)であり、遺伝子は、PD-L1、ABCC3、ABCG2、FGF-7、NANOG、PSCA、CD34、2EB1、E-カドヘリン、およびN-カドヘリンからなる群より選択される。
【0012】
本技術の第5の態様は、被験体におけるがんに対する免疫応答の抑制を低減する方法に関し、前記方法は、被験体におけるがんに対する免疫応答の抑制を低減するのに有効な条件下で、被験体に薬剤を投与することを含み、薬剤は、本技術の第1の態様に基づく化合物(またはその薬学的に許容される塩、エステル、エノールエーテル、エノールエステル、溶媒和物もしくは水和物)である。
【0013】
本技術の第6の態様は、被験体におけるがんの腫瘍化成長を減少させる方法に関し、前記方法は、被験体におけるがんの腫瘍化成長を減少させるのに有効な条件下で、被験体に薬剤を投与することを含み、薬剤は、本技術の第1の態様に基づく化合物(またはその薬学的に許容される塩、エステル、エノールエーテル、エノールエステル、溶媒和物もしくは水和物)である。
【0014】
本技術の第7の態様は、被験体において、Ly6Kタンパク質により媒介される障害を処置または防止する方法に関し、前記方法は、障害を処置または防止するのに有効な条件下で、被験体に薬剤を投与することを含み、薬剤は、本技術の第1の態様に基づく化合物(またはその薬学的に許容される塩、エステル、エノールエーテル、エノールエステル、溶媒和物もしくは水和物)である。
【0015】
本発明者らは、がん組織中で選択的に発現する、TGFβシグナル伝達および腫瘍進行の強力な活性化因子としての細胞表面タンパク質Ly6Kを同定した。Ly6Kレベルは、TNBCの80%で増加し、mRNA発現の増加は、TNBCにおける生存転帰不良に関連する8。
【0016】
本発明者らは、Ly6Kが、in vivo腫瘍成長に必要とされ、かつLy6Kが、TGFβシグナル伝達および上皮間葉転換を活性化することを示した9。Ly6Kはまた、がん細胞中のIFNγ誘導性のPD-L1の過剰発現にも必要とされる9。重要なことに、本発明者らは、Ly6Kのノックダウンまたは薬理学的阻害が、TNBC細胞中のPD-L1発現を阻害することを見出した。さらに最近では、本発明者らは、Ly6Kの2つの小分子バインダー、NSC243928およびNSC11150を同定し、これらは、例えば、同系マウスにおけるTGFβシグナル伝達、PD-L1発現および腫瘍成長の活性化のような、Ly6Kの生物活性の多数の異なる側面を阻害する。
【0017】
これらの観察に基づいて、本発明者らは、Ly6Kが、TGFβおよびPD-L1経路の活性化を介して腫瘍進行に重要な役割を果たし、かつ小分子阻害剤によるLy6K標的化が、がん細胞中のTGFβシグナル伝達およびPD-L1経路の組織特異的阻害をもたらすことを見出す。本発明者らの発見は、Ly6Kが、TGFβシグナル伝達を増強することにより腫瘍進行および免疫監視の抑制をもたらし、Ly6Kが、チェックポイントタンパク質PD-L1の上方制御により腫瘍免疫エスケープをもたらし、かつLy6Kが、小分子を使用して標的とされ、TGFβおよびPD-L1経路における免疫エスケープおよび腫瘍進行を阻害することができることを示している。
【0018】
本発明者らは、TNBC細胞系、臨床試料、同系および異種移植の腫瘍モデルを使用して、Ly6Kが、TGFβおよびPD-L1シグナル伝達の増加に重要な役割を果たしていることを示す。その組織特異的発現およびその腫瘍進行経路の強力な活性化により、Ly6Kは治療介入の魅力的な標的となる。本発明者らはここで初めて、Ly6Kの下流のTGFβおよびPD-L1経路を効率的に阻害する、Ly6Kの2つの小分子バインダーを示す。本出願は、抗TGFβおよびPD-L1発現の阻害のための新規な治療標的を定義することにより、TNBCの処置のための、標的化免疫療法のための化合物および方法を提供する。
【0019】
本技術は、以下の図を参照することによって、より良く理解することができる。図は、単独でまたは他の特色と組み合わせて使用され得るある特定の特色を例証するための単なる例示であり、本技術は、示した実施形態に限定されるべきではない。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、TNBCにおけるLy6K発現を示す。Oncomineデータ解析を実施して、(A)がんゲノムアトラスデータセットを使用して正常な乳房組織と比較した、乳がんにおけるLy6KのmRNA発現の増加、(B)Curtisデータセット10を使用して、非TNBCに対するTNBCにおけるmRNA発現の増加を可視化した。2試料T検定、p<0.05 有意。(C)Ly6K発現の増加は、予後ソフトウエアツールProGgene V2
11により可視化した、TNBC(データセットID:GSE19783)における生存不良と有意に関連する。遺伝子発現中央値を分岐点として使用して、試料を、遺伝子高発現群および遺伝子低発現群に分ける。生存データおよび連続発現変数を使用して、ライブラリー生存の関数「coxph」を使用して、コックス比例ハザードモデルに適合させることにより、生存解析を行う。ハザード比(HR)およびログランクp値を、適合モデルから取得する。予後プロットを作成するために、高発現および低発現のカテゴリー変数を生存データと共に使用する。同じRライブラリーの関数「survfit」を使用して、プロットを作製する。p=0.0005を伴うHR、ハザード比、p<0.05を有意と考える。上のライン:Ly6K低発現を伴うTNBC;下のライン:Ly6K高発現を伴うTNBC。(D)絶対的Ly6K mRNA発現を、Lehmanらにより記載されたTNBCサブタイプ
12において定量化した。TNBC患者の関連GEOデータセット(HGU133 Plus 2.0アレイ)を、ロバストマルチ平均RMA法およびcombatを使用して修正したバッチを使用して正規化した。パッケージoligo、svaおよびlimmaを使用して、Rで解析を行った。n=組織試料の数。ウェルチ2試料T検定を適用してp値を決定し、p<0.05を有意と考える。(F)「ヒトタンパク質アトラス」における公開情報では、ヒト正常組織のパネルにおいて、親和性リガンドHPA017770(Sigma)としてPrEST-抗原を使用してアフィニティ精製された、確認済みのLy6K抗体、ウサギポリクローナルを使用した、IHCの定量化を示している。IHC標識化の強度はY軸に示され、X軸は、試験された臓器の名称を示す。挿入図では、Ly6K抗体を使用した正常な精巣および乳房からのIHC画像が示されている。(G)表は、Leeら、2013年
13から採用され、これは、精製された免疫細胞中のLy6DおよびLy6E遺伝子のmRNA発現を示す。Ly6KのmRNA発現は、免疫細胞において検出されなかった。
【0021】
【
図2】
図2は、Ly6Kが、TGFβシグナル伝達に必要とされることを示す。Ly6Kに対するshRNA(Ly6K sh1、Ly6K sh2)または標的化しない対照shRNA(Vector)のレンチウイルス粒子は、MDA-MB-231において安定して形質導入された
7。(A)Ly6KのmRNAレベルを示すqRT-PCRアッセイでは、
**はp<0.005を示す、両側スチューデントT検定。(B)Ly6Kに関するウェスタンブロット解析。(C)リン酸化Smad2/3タンパク質および総Smad2/3タンパク質に関するウェスタンブロット解析。(D)示された細胞を血清枯渇させ、10ng/mlのTGFβ1で30分間刺激した。血清枯渇細胞は、検出可能なリン酸化Smadタンパク質を示さなかった。30分間のTGFβ1刺激により、リン酸化Smad2/3、Smad1/5が誘導された。qRT-PCRプライマーおよび抗体を記載する
7。(E)TGFβ1、(F)GDF10のmRNAレベルに関するTaqMan遺伝子発現アッセイを使用するqRT-PCR解析では、
**は、p<0.005を示す、両側スチューデントT検定。(G)Oncomineを使用して、Curtisデータセット
1を使用した、非TNBC臨床症例に対するTNBC臨床症例における、示された遺伝子のmRNAレベルの同時発現を評価した。n=患者数。p値は、Oncomineソフトウェアにより算出された行内のp値を示す。最大発現の遺伝子を赤いバーで示し、最小発現の遺伝子を青いバーで示す。(H)Ly6Kは、腫瘍細胞成長および免疫抑制の増加のために、TGFβシグナル伝達に影響を及ぼし得る。
【0022】
【
図3】
図3は、Ly6Kが、IFNγ/PD-L1経路に必要とされることを示す。(A)示された細胞を、100ng/mlのIFNγを用いる終夜の処置の前に、血清枯渇させた。細胞は、固定前に抗-PD-L1 BV540抗体またはアイソタイプ対照抗体で標識され、PD-L1タンパク質の細胞表面発現を評価した。高PD-L1細胞のパーセンテージを、3回の異なる実験から棒グラフにプロットし、両側スチューデントT検定に供し、p<0.05を有意と考える。(B)示されたタンパク質に関するウェスタンブロット解析。(C)PD-L1の増加をもたらすIFNγ/Stat1経路に対する、Ly6Kの仮定された影響。
【0023】
【
図4】
図4は、Ly6Kが、同系の乳房腫瘍モデルにおける腫瘍成長に必要とされることを示す。(A)スクランブルshRNA(Con)およびLy6Kノックダウン(Ly6K sh)細胞中のmRNAレベルに関するTaqMAn遺伝子発現アッセイを使用したqRT-PCR解析。(B)ウェスタンブロット解析(細胞シグナル伝達抗体)。(C)4T1モデルに関して、Balb/cマウスにおいて20K細胞/部位、およびE0771に関して、C57BL/6同系マウスにおいて500K細胞/部位を、皮下注射により、下部乳房脂肪パッドに移植した(細胞系の対当たりのマウスの数 10)。腫瘍測定を、ノギスを使用して実施した。腫瘍体積を、式1/2×長さ×(幅×幅)を使用して算出した。両側スチューデントT検定において、
**は、p<0.001を示し、NS=有意でない(p>0.05)。
【0024】
【
図5】
図5は、in vivo腫瘍成長に対する小分子の影響を示す。(A)NCIデータに示された用量の生理食塩水中のNSC243928を、腹腔内経路(i.p.)により、9日間毎日、L12白血病細胞を有するB1DF同系マウスに与えた。各群は6匹のマウスを有する。マウスを、薬物処置後の30日間、モニターした。処置/対照(%)は、治療利益を表す。(B-C)50~70mm3の腫瘍を有する4T1マウスを、NSC243928(B)またはNSC11150(C)で、2日毎に、生理食塩水中の示された用量で処置した。
**は、両側スチューデントT検定において、p<0.005を表す。各群は10匹のマウスを有する。腫瘍測定を、
図4Cに示すように行った。
【0025】
【
図6】
図6は、Hs578t(左のパネル)における示されたタンパク質に関するウェスタンブロット(WB)解析を示す(Ly6KのためのレンチウイルスshRNA(Ly6K sh)および標的化しない対照shRNA(con))。MDA-MB-231(右のパネル)では、Ly6K CRISPR/Cas9プラスミドおよび対照CRISPR/Cas9(それぞれ、Santa cruz、cat#sc404264、sc-418922)は、製造業者の指示に基づいた。3つのクローンを、WBにより解析した。
【0026】
【
図7】
図7は、Ly6Kが、TGFβ受容体複合体と相互作用し、それをさらに安定化して、Smad2/3のリン酸化を誘導し得ることを示す。
【0027】
【
図8】
図8は、Ly6K(UniProt.org)のタンパク質構造を示す。
【0028】
【
図9】
図9は、細胞周期に対するLy6Kの影響を示す。示された細胞は、終夜、血清枯渇させた。次に、細胞を、10%の血清培地で4または24時間刺激した。未処置細胞を、血清枯渇の最後に(0時間)収集した。PI標識化をフローサイトメトリー細胞周期解析のために実施した。細胞のパーセンテージを着色ボックス内に示す(各時間点に関して上方から下方へ:S期、G2期、G1期)。グラフは、3回の独立した実験のうちの1回を示す。両側スチューデントT検定、p<0.005 有意、p>0.05 有意でない(NS)。
【0029】
【
図10】
図10は、IFNγ経路におけるLy6Kの役割を示す。
【0030】
【
図11-1】
図11は、Ly6Kの小分子バインダーを示す。(A)Ly6E、Ly6DおよびLy6Kの成熟型を、pET24a N末端Hisタグベクター(Epoch Biosciences)にクローン化し;BL21DE E.coliにおいて発現させ;精製組換えタンパク質を、バッチ精製法を使用するヒスチジンカラムを使用して、500mMイミダゾールPBS中で溶離し、PBS中で透析して調製した。5μlの溶離液を、15%のSDS-PAGEに流し、単一バンドの予期されるサイズのタンパク質の純度を示した。(B)NSC243928の構造。(G)NSC11150の構造。(C~F;H~K)代表的な表面プラズモン共鳴(SPR)センサーグラムは、X軸上に時間およびY軸上にSPR結合応答を示す。Ly6Kは、NSC243928(C)およびNSC11150(H)に対して用量依存的に結合応答を示す。Ly6E(E、J)およびLy6D(F、K)は、NSC243928およびNSC11150に対して結合応答を示さず;(D)は、化合物濃度に対してプロットされた定常状態応答値(黒い点)およびKD値を決定するための実験データに対する単純非線形双曲線適合(赤い線)を示し、Ly6Kに結合しているNSC243928に関するKD値は1.9μΜ±0.5である、Chi
2 T検定、p=.00365。NSC11150に対応するデータを、対応する下のパネルに示す。(I)Ly6Kに対するNSC11150のKD=1.6μΜ±0.5、Chi
2 T検定、p=.00507。
【
図11-2】
図11は、Ly6Kの小分子バインダーを示す。(A)Ly6E、Ly6DおよびLy6Kの成熟型を、pET24a N末端Hisタグベクター(Epoch Biosciences)にクローン化し;BL21DE E.coliにおいて発現させ;精製組換えタンパク質を、バッチ精製法を使用するヒスチジンカラムを使用して、500mMイミダゾールPBS中で溶離し、PBS中で透析して調製した。5μlの溶離液を、15%のSDS-PAGEに流し、単一バンドの予期されるサイズのタンパク質の純度を示した。(B)NSC243928の構造。(G)NSC11150の構造。(C~F;H~K)代表的な表面プラズモン共鳴(SPR)センサーグラムは、X軸上に時間およびY軸上にSPR結合応答を示す。Ly6Kは、NSC243928(C)およびNSC11150(H)に対して用量依存的に結合応答を示す。Ly6E(E、J)およびLy6D(F、K)は、NSC243928およびNSC11150に対して結合応答を示さず;(D)は、化合物濃度に対してプロットされた定常状態応答値(黒い点)およびKD値を決定するための実験データに対する単純非線形双曲線適合(赤い線)を示し、Ly6Kに結合しているNSC243928に関するKD値は1.9μΜ±0.5である、Chi
2 T検定、p=.00365。NSC11150に対応するデータを、対応する下のパネルに示す。(I)Ly6Kに対するNSC11150のKD=1.6μΜ±0.5、Chi
2 T検定、p=.00507。
【0031】
【
図12】
図12は、Ly6Kの小分子バインダーの効果を示す。(A)示された細胞を播種し、終夜、付着させ、次に2μΜの薬物で72時間処置した。細胞力価アッセイを実施して、細胞成長を測定した。(B)細胞を血清枯渇させ、2μΜの薬物と共に100ng/mlのIFNγで処置した。PD-L1を、
図3Aに示すように、生細胞において測定した(zombie live-dead染色を使用)。グラフを、3回の実験からプロットした。(C、D)示された細胞を付着させ、終夜、血清枯渇させ、次に、ΤGFβ(C)またはIFNγ(D)で、2μΜの薬物の存在下で30分間処置し、ウェスタンブロット解析を実施した。両側スチューデントT検定において、
***は、p<0.0005を表し、NS=有意でない。
【0032】
【
図13】
図13は、Ly6K成熟タンパク質の相同性モデル化を示す。(A)タンパク質の骨格、(B)Ly6ファミリーのタンパク質におけるアミノ酸保存を伴う表面図(青-保存残基、赤-可変残基)、(C)N末端近くの結合部位1。対応する120°回転により、Ly6KのC-末端5の近位にある結合部位2が明らかになる。
【0033】
【
図14】
図14は、Ly6Kの小分子バインダーの機構を示す。(A~B)部位1で結合している、NSC11150に結合しているLy6K(A)および部位2で結合している、NSC243928に結合しているLy6K(B)、リボンで示す(左のパネル)および表面モデル(右のパネル)。Swiss dockを使用した結合予測。結合に関与するアミノ酸の正体を示す。(C)両方の分子とLy6Kとの結合を示す表面図。(D)本発明者らが取り組んでいる仮説は、Ly6Kが、2つの構造的に異なる分子を介して標的化され、免疫チェックポイントタンパク質およびΤGFβシグナル伝達を制御し得るということである。
【0034】
【
図15】
図15は、Ly6Kと小分子NSC243928(4’-(9-アクリジニルアミノ)-3’-メトキシエタンスルホンアニリドメタンスルホネート)の間の結合相互作用の概略モデルを示す。
【0035】
【
図16】
図16は、Ly6Kと小分子NSC11150(4-(4-クロロベンジル)ベンゼン-1,3-ジオール)の間の結合相互作用の概略モデルを示す。
【0036】
【
図17】
図17は、Ly6K結合小分子が、腫瘍成長に対する免疫を誘導することを示す。個々の小分子を用いた、同系のC57B1/6モデルにおけるE0771腫瘍の処置により腫瘍成長は低減し、一方、2つの小分子を用いた併用処置により腫瘍成長は完全に除去された。腫瘍消失の後に、処置を停止した。3週間後、治癒したマウスを、腫瘍成長に対する完全な、永続的な保護を伴い、E0771細胞を用いて再チャレンジした。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下の詳細な説明は、いかなる当業者も主題技術を利用することを可能にするために示される。説明を目的として、本発明の全体的理解をもたらすために、特定の用語が明示される。しかしながら、これらの特定の詳細が、本技術を実施するために必要とされないことが当業者には明らかであろう。特定の適用の記載は、代表例としてのみ提供される。本技術は、示される実施形態に限定されることを意図するものではなく、本明細書に開示される原理および特色と一致した、最も広い可能な範囲と一致されるべきである。本発明の所与の態様、特色、またはパラメーターに対する優先および選択肢は、文脈よりそうでない旨が示されない限り、本発明の全ての他の態様、特色、およびパラメーターに対する任意のおよび全ての優先および選択肢と組み合わせて開示されていると考えられるべきである。
【0038】
本技術は、Ly6Kを阻害する化合物に関する。
【0039】
「Ly6K」は、リンパ球抗原6ファミリーメンバーKタンパク質を指す。好適なLy6Kタンパク質には、ヒトLy6K(例えば、ジェンバンク受託番号AAI17145.1、これは、その全容が参照により本明細書に組み込まれる)およびヒトLy6Kの非ヒト相同体が含まれる。非ヒト相同体は、構造的にかつ機能的にヒトLy6Kと同様であるタンパク質を指す。相同体は、例えば、他の霊長類(例えば、Pan troglodytes(チンパンジー)、Pongo abelii(オランウータン)、Macaca mulatto(アカゲザル)、ゴリラ)およびげっ歯類(例えば、マウス、ラット)において同定されている。
【0040】
ヒトLy6Kの相同体にはまた、例えば、ヒトLy6Kのアミノ酸配列と少なくとも約80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一であるアミノ酸配列を含むタンパク質も含まれる。本明細書で使用される同一性百分率は、別のアミノ酸配列に対する1つのアミノ酸(または核酸)配列の比較を指し、アミノ酸(または核酸)の一致によりスコア化される。同一性百分率は、2つの配列からの統計的に有意な数のアミノ酸(または核酸)を比較し、同一の2つのアミノ酸(または核酸)がある位置に存在する場合、一致をスコア化することにより決定される。同一性百分率は、当業者に公知でかつ使用されている種々のアライメントアルゴリズムのいずれかにより算出することができる。
【0041】
化合物
本技術の化合物は、式Iおよび式IIの、Ly6K阻害剤(またはその薬学的に許容される塩、エステル、エノールエーテル、エノールエステル、溶媒和物もしくは水和物)を含む(表1を参照されたい)。
【表1-1】
【表1-2】
【0042】
式Iの化合物は、NSC243928およびその類似体を含む。式IIの化合物は、NSC11150およびその類似体を含む。
図15および16は、これらの化合物とLy6K上のそれらの結合部位の間の相互作用に基づいて、それぞれ、式IおよびII内の、NSC243928(
図15)およびNSC11150(
図16)の類似体を作製する理論的根拠を示す。矢印は結合相互作用に関与しないと考えられる原子を表し;化合物が、その活性を維持しながら、これらの位置でかなりの変形を許容することができることが予測される。
【0043】
用語「アルキル」とは、脂肪族の飽和または不飽和の炭化水素基を意味し、直鎖または分岐で鎖中に約1~約8個の炭素原子を有してもよい。分岐とは、メチル、エチルまたはプロピルなどの1つまたは複数の低級アルキル基が、線状アルキル鎖に付着していることを意味する。アルキル基の例としては、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、t-ブチル、n-ペンチル、および3-ペンチルが挙げられる。用語「アルキレン」とは、本明細書に定義されるアルキルの2価の対応物を意味する。
【0044】
用語「シクロアルキル」は、非芳香族の飽和または不飽和の単環式または多環式の環系を指し、3~6個の炭素原子を含有してもよく;少なくとも1つの二重結合を含んでもよい。シクロアルキル基の例としては、限定されることなく、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、anti-ビシクロプロパン、およびsyn-ビシクロプロパンが挙げられる。
【0045】
用語「アリール」は、6~19個の炭素原子を含有する芳香族の単環式または多環式の環系を指し、環系は、必要に応じて置換されていてもよい。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、アズレニル、フェナントレニル、アントラセニル、フルオレニル、ピレニル、トリフェニレニル、クリセニル、およびナフタセニルなどの基が挙げられるが、これらに限定されない。少なくとも1つの実施形態では、アリールは、6~9個の炭素原子を含有する単環式の環系である。
【0046】
用語「ヘテロシクリル」は、炭素原子ならびに窒素、酸素および硫黄からなる群より選択される1から5個のヘテロ原子からなる、安定な3~18員環ラジカルを指す。本技術の目的上、ヘテロシクリルラジカルは、単環式、または多環式の環系であり得、これらは縮合環、架橋環、またはスピロ環系を含み得;ヘテロシクリルラジカル中の窒素、炭素、または硫黄原子は、必要に応じて酸化され得;窒素原子は必要に応じて四級化され得;環ラジカルは、部分的にまたは完全に飽和されていてもよい。そのようなヘテロシクリルラジカルの例には、限定されることなく、アゼピニル、アゾカニル、ピラニル、ジオキサニル、ジチアニル、1,3-ジオキソラニル、テトラヒドロフリル、ジヒドロピロリジニル、デカヒドロイソキノリル、イミダゾリジニル、イソチアゾリジニル、イソオキサゾリジニル、モルホリニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロイソインドリル、2-オキソピペラジニル、2-オキソピペリジニル、2-オキソピロリジニル、2-オキソアゼピニル、オキサゾリジニル、オキシラニル、ピペリジニル、ピペラジニル、4-ピペリドニル、ピロリジニル、ピラゾリジニル、チアゾリジニル、テトラヒドロピラニル、チアモルホリニル、チアモルホリニルスルホキシド、およびチアモルホリニルスルホンが含まれる。少なくとも1つの実施形態では、ヘテロシクリルは、3~9個の炭素原子を含有する単環ラジカルである。
【0047】
用語「ヘテロアリール」は、炭素原子ならびに窒素、酸素、および硫黄からなる群より選択される1から5個のヘテロ原子からなる芳香族環ラジカルを指す。本発明の目的上、ヘテロアリールは、単環式または多環式の環系であってもよく;ヘテロアリール環中の窒素、炭素、および硫黄原子は、必要に応じて酸化され得;窒素は必要に応じて四級化され得る。ヘテロアリール基の例には、限定されることなく、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、フリル、チオフェニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、トリアジニル、チエノピロリル、フロピロリル、インドリル、アザインドリル、イソインドリル、インドリニル、インドリジニル、インダゾリル、ベンゾイミダゾリル、イミダゾピリジニル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾオキサジアゾリル、ベンゾチアゾリル、ピラゾロピリジニル、トリアゾロピリジニル、チエノピリジニル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾフリル(benzofuyl)、ベンゾチオフェニル、キノリニル、イソキノリニル、テトラヒドロキノリル、テトラヒドロイソキノリル、シンノリニル、キナゾリニル、キノリジリニル、フタラジニル、ベンゾトリアジニル、クロメニル、ナフチリジニル、アクリジニル、フェナンジニル、フェノチアジニル、フェノキサジニル、プテリジニル、およびプリニルが含まれる。少なくとも1つの実施形態では、ヘテロアリールは、6~19個の環原子を含有する単環式または多環式の環系である。少なくとも1つの実施形態では、ヘテロアリールは、6~9個の環原子を含有する単環式の環系である。
【0048】
さらなる複素環およびヘテロアリールは、COMPREHENSIVE HETEROCYCLIC CHEMISTRY: THE STRUCTURE, REACTIONS, SYNTHESIS AND USE OF HETEROCYCLIC COMPOUNDS Vol. 1-8 (Alan R. Katritzky et al. eds., 1st ed. 1984)に記載されており、これは、その全容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0049】
用語「ハロ」または「ハロゲン」とは、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードを意味する。
【0050】
本技術の化合物(またはその薬学的に許容される塩、エステル、エノールエーテル、エノールエステル、溶媒和物もしくは水和物)は、必要に応じて修飾され、タグを含むことができる。「タグ」には、本明細書で使用される場合、化合物(すなわち、本技術の化合物、以下に記載される化合物-グルタミナーゼGLS1タンパク質コンジュゲート、以下に記載されるコンジュゲートされた化合物/阻害剤、および/または以下に記載されるコンジュゲートされたグルタミナーゼGLS1タンパク質)の検出、定量化、単離、および/または精製を容易にする任意の標識化部分が含まれる。小分子を修飾してタグを含ませる方法は、当技術分野で周知である。例えば、クリックケミストリー(例えば、Sharplessらに対する米国特許第7,375,234号を参照されたい、これは、その全容が参照により本明細書に組み込まれる)は、タグを化合物に付着させるために使用され得る。
【0051】
好適なタグには、精製タグ、放射性標識もしくは蛍光標識、酵素タグ、補欠分子族、発光物質、生物発光物質、陽電子放出金属、非放射性常磁性金属イオン、ならびに放射測定、比色分析、蛍光定量、サイズ分離、もしくは沈殿手段、または他の当技術分野で公知の手段による、検出および/もしくは測定に好適な任意の他のシグナルを含む標識が含まれる。
【0052】
マルトース結合タンパク質(MBP-)、ポリヒスチジン(His6-)、またはグルタチオン-S-転移酵素(GST-)などであるが、これらに限定されない精製タグは、化合物の精製または分離を補助し得るが、後に除去され、すなわち、回収に続いて化合物から切断することができる。プロテアーゼ特異的切断部位を使用して、精製タグの除去を容易にすることができる。所望の生成物をさらに精製して、切断した精製タグを除去することができる。
【0053】
他の好適なタグには、125I、123I、131I、111In、112In、113In、115In、99TC、213Bi、14C、51Cr、153Gd、159Gd、68Ga、67Ga、68Ge、166Ho、140La、177Lu、54Mn、99Mo、103Pd、32P、142Pr、149Pm、186Re、188Re、105Rh、97Ru、153Sm、47Sc、75Se、85Sr、35S、201Ti、113Sn、117Sn、3H、133Xe、169Yb、175Yb、90Y、および65Znなどの放射性標識が含まれる。化合物を放射性標識化する方法は、当技術分野で公知であり、Srinivasanらに対する米国特許第5,830,431号に記載されており、これは、その全容が参照により本明細書に組み込まれる。放射能は、シンチレーションカウンターまたはオートラジオグラフィーを使用して検出されかつ定量化される。さらなる例には、様々な陽電子断層撮影を使用する陽電子放出金属、および非放射性常磁性金属イオンが含まれる。
【0054】
あるいは、化合物を、蛍光タグにコンジュゲートすることができる。好適な蛍光タグには、限定されることなく、キレート(ユウロピウムキレート)、フルオレセインおよびその誘導体、ローダミンおよびその誘導体、ダンシル、リサミン、フィコエリトリン、テキサスレッド、およびウンベリフェロンが含まれる。蛍光標識は、CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY (Coligen et al. eds., 1991)に開示される技術を使用して化合物にコンジュゲートすることができ、これは、その全容が参照により本明細書に組み込まれる。蛍光は、蛍光計を使用して検出されかつ定量化することができる。
【0055】
酵素タグは、一般に、発色性基質の化学的変化を触媒し、これは様々な技術を使用して測定することができる。例えば、酵素は、基質における色変化を触媒し得、これは分光光度的に測定することができる。あるいは、酵素は、基質の蛍光または化学発光を変化させ得る。好適な酵素タグの例には、ルシフェラーゼ(例えば、ホタルルシフェラーゼおよび細菌ルシフェラーゼ;例えば、米国特許第4,737,456号、Wengらを参照されたい、これは、その全容が参照により本明細書に組み込まれる)、ルシフェリン、2,3-ジヒドロフタラジンジオン、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、ウレアーゼ、ペルオキシダーゼ(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ)、アルカリホスファターゼ、β-ガラクトシダーゼ、グルコアミラーゼ、リゾチーム、糖オキシダーゼ(例えば、グルコースオキシダーゼ、ガラクトースオキシダーゼ、およびグルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ)、複素環オキシダーゼ(例えば、ウリカーゼおよびキサンチンオキシダーゼ)、ラクトペルオキシダーゼ、ミクロペルオキシダーゼなどが含まれる。酵素をタンパク質およびペプチドにコンジュゲートする技術は、O'Sullivan et al., Methods for the Preparation of Enzyme - Antibody Conjugates for Use in Enzyme Immunoassay, in METHODS IN ENZYMOLOGY 147-66 (Langone et al. eds., 1981)に記載されており、これは、その全容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0056】
補欠分子族複合体には、ストレプトアビジン/ビオチンおよびアビジン/ビオチンが含まれるが、これらに限定されない。あるいは、化合物は、ルミノール、ルシフェラーゼ、ルシフェリン、およびエクオリンが含まれるが、これらに限定されない発光物質または生物発光物質にコンジュゲートすることができる。
【0057】
本技術の化合物(またはその薬学的に許容される塩、エステル、エノールエーテル、エノールエステル、溶媒和物もしくは水和物)は、必要に応じて修飾することができ、繊維性の試験片、カラム、マルチウェルマイクロリットルプレート、試験管、またはビーズなどの固体表面への付着を含む。小分子をそのような表面に付着させる方法は、共有結合(例えば、前記のようにクリックケミストリーを介する)と同様に、抗体-抗原パートナー、相補的核酸の使用を通した非共有結合などを含み、当技術分野で周知である。
【0058】
薬学的に許容される塩には、アミン塩、例えば、N、N’-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、アンモニア、ジエタノールアミンおよび他のヒドロキシアルキルアミン、エチレンジアミン、N-メチルグルカミン、プロカイン、N-ベンジルフェネチルアミン、1-パラ-クロロベンジル-2-ピロリジン-1’-イルメチル-ベンゾイミダゾール、ジエチルアミンおよび他のアルキルアミン、ピペラジン、ならびにトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンなどであるが、これらに限定されず;アルカリ金属塩、例えば、リチウム、カリウム、およびナトリウムなどの塩であるが、これらに限定されず;アルカリ土類金属塩、例えば、バリウム、カルシウム、およびマグネシウムなどの塩であるが、これらに限定されず;遷移金属塩、例えば、亜鉛などの塩であるが、これらに限定されず;ならびに他の金属塩、例えば、リン酸水素ナトリウムおよびリン酸二ナトリウムなどであるが、これらに限定されない塩が含まれるが、これらに限定されず;また鉱酸の塩、例えば、塩酸塩および硫酸塩などであるが、これらに限定されず;ならびに有機酸の塩、例えば、酢酸塩、乳酸塩、リンゴ酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、コハク酸塩、酪酸塩、吉草酸塩およびフマル酸塩などであるが、これらに限定されない塩も含まれるが、これらに限定されない。薬学的に許容されるエステルには、カルボン酸、リン酸、ホスフィン酸、スルホン酸、スルフィン酸、およびボロン酸が含まれるが、これらに限定されない酸性基の、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキルおよびヘテロシクリルのエステルが含まれるが、これらに限定されない。薬学的に許容されるエノールエーテルには、式C=C(OR)の誘導体[式中、Rは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、またはヘテロシクリルである]が含まれるが、これらに限定されない。薬学的に許容されるエノールエステルには、式C=C(OC(O)R)の誘導体[式中、Rは、水素、アルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、シクロアルキル、またはヘテロシクリルである]が含まれるが、これらに限定されない。薬学的に許容される溶媒和物および水和物は、化合物と、1つもしくは複数の溶媒もしくは水分子、または1~約100、もしくは1~約10、もしくは1~約2、3もしくは4の溶媒もしくは水分子との複合体である。
【0059】
Ly6K阻害化合物は、化合物(またはその薬学的に許容される塩、エステル、エノールエーテル、エノールエステル、溶媒和物もしくは水和物)を含む医薬組成物の形態で投与されてもよい。医薬組成物は、本技術の化合物および薬学的に許容される担体、ならびに必要に応じて、以下で論じられる1つまたは複数の追加の活性剤を含むことができる。
【0060】
本発明に基づく化合物を投与するのに好適な様々な製剤を調製するための手順が記載してある、非常に多くの標準的な参照文献が入手可能である。可能性がある製剤および調製の例は、例えば、HANDBOOK OF PHARMACEUTICAL EXCIPIENTS (American Pharmaceutical Association, current edition)、PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS: TABLETS (Lieberman et al. eds., Marcel Dekker, Inc., pubs., current edition)、およびREMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES 1553-93 (Arthur Osol ed., current edition)に含まれ、これらは、その全容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0061】
液剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤およびエリキシル剤を調製するのに好適な任意の薬学的に許容される液体担体が、医薬組成物に利用されてもよい。化合物は、水、有機溶媒、または薬学的に許容される油もしくは脂肪、またはこれらの混合物などの薬学的に許容される液体担体中に、溶解されるかまたは懸濁化され得る。液体組成物は、可溶化剤、乳化剤、緩衝剤、防腐剤、甘味料、矯味矯臭剤、懸濁化剤、増粘剤、着色剤、粘度調整剤、安定剤、浸透圧調整剤(osmo-regulator)、賦形剤などの他の好適な医薬添加物を含有してもよい。経口投与および非経口投与に好適な液体担体の例には、水(詳細には、例えば、セルロース誘導体、好ましくはナトリウムカルボキシメチルセルロース溶液のような上記の添加剤を含有する)、アルコール(一価アルコールおよび多価アルコール、例えばグリコールを含む)もしくはそれらの誘導体、または油(例えば、分画されたココナッツ油およびラッカセイ油)が含まれる。非経口投与では、担体は、オレイン酸エチルまたはミリスチン酸イソプロピルなどの油性エステルであってもよい。
【0062】
任意の特定の患者用の具体的な用量レベルは、利用される具体的な化合物の活性、年齢、体重、全体的な健康状態、性別、食事、投与時間、投与経路、排泄率、薬物組合せおよび治療を受けている特定の疾患の重症度を含む種々の要因に依存することが理解されよう。
【0063】
方法
用語「阻害する」または「阻害すること」とは、Ly6Kタンパク質の活性を阻害すること、TGF-βΙ、SMAD2/3、IFΝγもしくはStat1シグナル伝達を阻害すること、SMAD2/3もしくはStat1のリン酸化を阻害すること、またはPD-L1発現の阻害に適用される場合、活性/シグナル伝達/リン酸化/発現を抑制し、減少させ、減じるか、または低下させることを意味する。全ての場合に、阻害は部分的または完全であり得る。
【0064】
用語「モジュレートすること」とは、遺伝子の発現をいう場合、発現を増加または減少させることを意味し、転写、翻訳、および/または翻訳後プロセシングをモジュレートすることを含む。少なくとも1つの実施形態では、発現のモジュレートとは、産生されるmRNAの量を増加または減少させることを意味する。少なくとも1つの実施形態では、発現のモジュレートとは、産生される成熟タンパク質の量を増加または減少させることを意味する。
【0065】
用語「処置」または「処置すること」とは、疾患または障害の1つまたは複数の症状が、好転させる(ameliorate)かまたはそうでなければ有益に変化させる、任意の手法を意味する。処置はまた、Ly6Kにより媒介される疾患または障害を処置するための使用などの、本明細書の組成物の任意の薬学的使用も包含する。Ly6Kにより媒介される障害には、Ly6Kが過剰発現するか、かつ/または過剰活性である障害が含まれる。好適な障害には、限定されることなく、がんが含まれる。
【0066】
Ly6K発現が、少なくとも乳がん、膀胱がん、脳がん、中枢神経系のがん、腎がん、肺がん、卵巣がん、胃がん、結腸直腸がん、子宮頸がん(cervical cancer)、頭頸部がん、食道がん、および膵がんにおいて、それらの正常な対応物と比較して、有意に増加していることが示された(例えば、Luo et al., Oncotarget 7(10): 11165-93 (2016); Al Hossiny et al., Cancer Res. 76(11): 3376-86 (2016)、これらのそれぞれは、その全容が参照により本明細書に組み込まれる)。Ly6K高発現はまた、少なくとも乳がん、膀胱がん、脳がん、中枢神経系のがん、腎がん、肺がん、卵巣がん、胃がん、結腸直腸がん、子宮頸がん、頭頸部がん、食道がん、および膵がんにおいて、臨床転帰不良と有意に相関していることも示された(例えば、Luo et al., Oncotarget 7(10): 11165-93 (2016); Al Hossiny et al., Cancer Res. 76(11): 3376-86 (2016)、これらのそれぞれは、その全容が参照により本明細書に組み込まれる)。Ly6Kはまた、トリプルネガティブ乳がんにおいてもより高度に発現し、間葉系、基底、および免疫調節性のサブタイプが最も高い発現を示す(例えば、以下の実施例を参照されたい)。
【0067】
細胞と1つまたは複数の化合物を接触させることを含む方法を対象とする本技術の全ての態様では、接触させることは、当業者に明らかな方法を使用して行うことができ、in vitro、ex vivo、またはin vivoで行うことができる。
【0068】
本発明の化合物は、標的とされる細胞/組織/臓器に直接送達されてもよい。さらにおよび/または代替的に、化合物は、標的とされる組織、臓器、または細胞までの化合物の移動(および/またはそれらによる取込み)を容易にする1つまたは複数の薬剤と共に、標的とされていない領域に投与されてもよい。当業者に明らかであるように、化合物自体が修飾されて、標的とされる組織、臓器、または細胞までのその輸送を、血液脳関門を横切るその輸送を含んで、容易にし;かつ/または標的細胞によるその取込み(例えば、細胞膜を横切るその輸送)を容易にすることができる。
【0069】
in vivo投与は、上述のように、被験体への全身投与を介するか、または罹患した組織、臓器、および/または細胞への標的化投与を介するかのいずれかで達成することができる。典型的には、治療剤(すなわち、Ly6K阻害化合物)は、治療剤(複数可)を標的細胞、組織、または臓器まで送達するビヒクル中で患者に投与される。典型的には、治療剤は、上述のものなどの医薬製剤として投与される。
【0070】
化合物は、例えば、静脈内注射、筋肉内注射、皮下注射、腹腔内注射、局所的適用、舌下、関節腔内(関節の中へ)、皮内、頬側、眼部(眼内を含む)、鼻腔内(カニューレの使用を含む)により、または他の経路により投与することができる。化合物は、経口的に、例えば、所定の量の有効成分を含有する錠剤もしくはカシェ剤、ゲル剤、ペレット、ペースト剤、シロップ、ボーラス、舐剤、スラリー、カプセル剤、散剤、顆粒剤として、水性液体もしくは非水性液体中の液剤もしくは懸濁剤として、水中油型液体エマルジョンもしくは油中水型液体エマルジョンとして、ミセル製剤を介して(例えば、WO97/11682を参照されたい、これは、その全容が参照により本明細書に組み込まれる)、リポソーム製剤を介して(例えば、欧州特許第736299号、WO99/59550、およびWO97/13500を参照されたい、これらは、その全容が参照により本明細書に組み込まれる)、その全容が参照により本明細書に組み込まれるWO03/094886に記載される製剤を介して、またはいくつかの他の形態で投与することができる。化合物はまた、経皮的に(すなわち、リザーバー型もしくはマトリクス型のパッチ、マイクロニードル、熱穿孔(thermal poration)、皮下針、イオン導入、電気穿孔、超音波もしくは他の形態のソノフォレーシス、ジェット注射、または任意の前述の方法の組合せで(例えば、Prausnitz et al., Nature Reviews Drug Discovery 3:115 (2004)、これは、その全容が参照により本明細書に組み込まれる)投与することもできる。化合物は、局部的に、例えば、傷害部位において、傷ついた血管まで投与することができる。化合物は、ステント上にコーティングすることができる。化合物は、米国特許出願公開第20020061336号に記載されるヒドロゲル粒子製剤を使用して、高速経皮粒子注射技術を使用して投与することができ、これは、その全容が参照により本明細書に組み込まれる。追加の粒子製剤は、WO00/45792、WO00/53160、およびWO02/19989に記載され、これらは、その全容が参照により本明細書に組み込まれる。プラスターおよび吸収促進剤ジメチルイソソルビドを含有する経皮製剤の例は、WO89/04179に見出すことができ、これは、その全容が参照により本明細書に組み込まれる。WO96/11705は、その全容が参照により本明細書に組み込まれ、経皮投与に好適な製剤を提供する。
【0071】
エアゾール剤としての使用のために、溶液または懸濁液中の化合物は、加圧式エアゾール容器中に、好適な噴霧体と共に、例えば、プロパン、ブタン、またはイソブタンのような炭化水素噴霧体を従来のアジュバントとパッケージ化されてもよい。化合物はまた、非加圧式形態で投与されてもよい。
【0072】
送達デバイスの例としては、限定されることなく、ネブライザー、アトマイザー、リポソーム(能動的および受動的な薬物送達技術の両方を含む)(Wang & Huang, Proc. Nat'l Acad. Sci. USA 84:7851-55 (1987); Bangham et al., J. Mol. Biol. 13:238-52 (1965);米国特許第5,653,996号、Hsu;米国特許第5,643,599号、Leeら;米国特許第5,885,613号、Hollandら;米国特許第5,631,237号、DzauおよびKaneda;米国特許第5,059,421号、Loughreyら; Wolff et al., Biochim. Biophys. Acta 802:259-73 (1984)、これらのそれぞれは、その全容が参照により本明細書に組み込まれる)、経皮パッチ、インプラント、植込み型または注射用のタンパク質デポー組成物、およびシリンジが挙げられる。また、当業者に公知の他の送達系を利用して、in vivoで所望の臓器、組織、または細胞に化合物の所望の送達を達成することもできる。
【0073】
接触させること(in vivo投与を含む)は、必要とされるだけ頻繁に、かつ所望の効果をもたらすのに好適な持続期間、行うことができる。例えば、接触させることは1回または複数回行うことができ、in vivo投与を単回の持続放出投薬製剤で、または複数回(例えば、毎日)用量で行うことができる。
【0074】
投与される量は、当然のことながら、特定の状態および処置レジメンに応じて変化する。所望の効果を得るのに必要とされる量/用量は、薬剤、製剤、細胞型、培養条件(ex vivo実施形態に関して)、処置が所望される持続期間、および、in vivo実施形態に関して、薬剤が投与される個体に応じて変化し得る。
【0075】
有効量は、当業者により経験的に決定され得る。例えば、これには、種々の量の化合物を培養中の細胞に投与し、所望の結果を得るのに有効な濃度を算出するアッセイが含まれ得る。in vivo投与用の有効量の決定はまた、種々の用量の薬剤を培養中の細胞に投与し、in vivoで必要とされる濃度を算出するために、所望の結果を達成するのに有効な薬剤の濃度を決定するin vitroアッセイも含まれ得る。有効量は、in vivo動物研究に基づいてもよい。
【0076】
化合物は、単独で、または上述のような医薬製剤の有効成分として、投与することができる。本発明の化合物は、有効成分が実質的に純粋である形態で投与することができる。
【0077】
治療用化合物の投与が、疾患または障害に対して有効な治療レジメンである被験体または患者は、好ましくはヒトであるが、臨床試験またはスクリーニングまたは活性実験の文脈における実験動物を含む、任意の動物であり得る。したがって、当業者に容易に理解できるように、本発明の方法、化合物および組成物は、任意の動物に、詳細には哺乳動物、そして霊長類(例えば、ヒト、チンパンジー、ゴリラ、オランウータン、アカゲザル)、飼育動物、例えば、ネコ(ferine)(例えば、ネコ)またはイヌ(canine)(例えば、イヌ)の被験体、農場動物、例えば、ウシ(bovine)(例えば、ウシ)、ウマ(equine)(例えば、ウマ)、ヤギ(caprine)(例えば、ヤギ)、ヒツジ(ovine)(例えば、ヒツジ)、およびブタ(porcine)(例えば、ブタ)の被験体などであるが、これらに限定されず、野生または非飼育動物(野生であるかまたは動物園におけるかのいずれか)、研究動物、例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、ヤギ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ラクダ、ラマ、サル、ゼブラフィッシュなど、鳥類、例えば、ニワトリ、シチメンチョウ、鳴禽類などが含まれるが、これらに限定されない動物に、すなわち、獣医学的使用のための投与に特に適している。
【0078】
現在の文献は、Ly6Kが、精子形成を除く正常な細胞機能に必要とされないことを示している。したがって、一部の実施形態では、被験体は、Ly6K阻害剤を投与した結果として男性生殖能に有害な影響を与えることが懸念されることがない集団、例えば女性または精管切除された、かつ/もしくは生殖不能な男性から選択される。
【0079】
本技術のこれらの態様は、以下の実施例によりさらに例証される。本出願の全体を通して引用された全ての参考文献は、図および実施例を含み、その全容が参照により本明細書に組み込まれる。
【実施例】
【0080】
以下の実施例は、本技術の実施形態を例示するために提供されるが、決してその範囲を限定することを意図するものではない。
【0081】
(実施例1 トリプルネガティブ乳がんのTGFβおよび免疫エスケープ経路におけるLy6Kの役割)
本出願は、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)の処置のための、TGFβシグナル伝達およびPD-L1タンパク質発現を阻害するためのLy6K-標的化戦略を提供する。ホルモン療法または抗Her2療法などの標的化療法は、TNBCに対して有効ではない1。免疫療法は、がん治療にパラダイムシフトをもたらしたけれども、TNBCにおけるその効果は良くてもわずかなものであった2。TNBCは、より若い女性に発症し、乳がんサブタイプの間で最悪の全生存率を有する3。本出願は、TNBCを処置するための新規な、有効かつ安全な手法を特定し、開発するという緊急の必要性を満たすものである。
【0082】
トリプルネガティブ乳がんにおける最近の発見は、免疫チェックポイントタンパク質PD-L1がTNBCで増加し、その発現の増加が腫瘍免疫エスケープの一因となっていることを示唆している4、5。TGFβシグナル伝達は、腫瘍進行の免疫および非免疫の関連経路の両方を活性化する、がんにおける別の重要な拠点となっている6、7。しかしながら、多くの正常な組織におけるTGFβシグナル伝達およびPD-L1の広範囲な発現および重要な機能のために、それらは治療介入に対して問題をはらむ標的となっている。本発明者らの実験室は、がん組織中で選択的に発現する、TGFβシグナル伝達および腫瘍進行の強力な活性化因子としての細胞表面タンパク質Ly6Kを同定した。Ly6Kレベルは、80%のTNBCで増加し、mRNA発現の増加は、TNBCにおける生存転帰不良に関連する8。本発明者らは、Ly6Kが、in vivo腫瘍成長に必要とされ、かつLy6Kが、TGFβシグナル伝達および上皮間葉転換を活性化することを示した9。Ly6Kはまた、がん細胞中のIFNγ誘導性のPD-L1の過剰発現にも必要とされる9。重要なことに、本発明者らは、Ly6Kのノックダウンまたは薬理学的阻害が、TNBC細胞中のPD-L1発現を阻害することを見出し、かつ、Ly6Kの2つの小分子バインダー、NSC243928およびNSC11150を同定し、これらは、例えば、同系マウスにおけるTGFβシグナル伝達、PD-L1発現および腫瘍成長の活性化のような、Ly6Kの生物活性の多数の異なる側面を阻害する。
【0083】
これらの観察に基づいて、本発明者らは、Ly6Kが、TGFβおよびPD-L1経路の活性化を介して腫瘍進行に重要な役割を果たしていることに注目し、かつ驚いたことに、小分子阻害剤によるLy6K標的化が、がん細胞中のTGFβシグナル伝達およびPD-L1経路の組織特異的阻害をもたらすことを見出した(図式1)。
【化4】
理論に束縛されることは望まないが、本発明者らは、Ly6Kが、TGFβシグナル伝達を増強することにより腫瘍進行および免疫監視の抑制をもたらし、Ly6Kが、チェックポイントタンパク質PD-L1の上方制御により腫瘍免疫エスケープをもたらし、かつLy6Kが、小分子を使用して標的化され、TGFβおよびPD-L1経路における免疫エスケープおよび腫瘍進行を阻害することができることを示唆する。
【0084】
Ly6Kが、TGFβおよびPD-L1シグナル伝達の増加に重要な役割を果たしているという観察が、TNBC細胞系、臨床試料、同系および異種移植の腫瘍モデルを使用して実証された。その組織特異的発現およびその腫瘍進行経路の強力な活性化により、Ly6Kは治療介入の魅力的な標的となる。本発明者らはここで初めて、Ly6Kの下流のTGFβおよびPD-L1経路を効率的に阻害する、Ly6Kの2つの小分子バインダーを示す。本出願は、抗TGFβおよびPD-L1発現の阻害のための新規な治療標的を定義することにより、TNBCの処置のための標的化免疫療法を提供する。
【0085】
Ly6Kは、トリプルネガティブ乳がん(TNBC)における転帰不良のマーカーであり、妥当な治療標的である。TNBCは、高度に不均質の疾患であり、複数のサブタイプから構成される
1。TNBC患者は、最悪の転帰に苦慮し、エストロゲン受容体(ER)陽性およびヒト上皮成長受容体2(Her 2)陽性の乳がんを有する患者と比較して、治療的選択肢がほとんどない
3。したがって、この疾患に対する新規な標的化処置を開発することが緊急に必要とされている。本発明者らは、TNBC症例の80%では、Ly6Kのタンパク質発現が増加していることを報告した
9。タンパク質発現パターンと一致して、TNBCにおいて、非TNBCと比較して、Ly6KのmRNA発現もまた増加した(
図1A、B)。本発明者らは、Ly6KのmRNA発現の増加が、乳がんおよび他の固形悪性疾患における転帰不良に関連することを実証する130の臨床研究の生物情報学解析を公表した
8。
【0086】
新しい解析はまた、Ly6KのmRNA発現の増加が、TNBCにおける転帰不良とも関連付けられることを示している(基底サブタイプ、他のサブタイプに関してデータは利用可能ではない)(
図1C)。Ly6KのmRNA発現がTNBCの異なるサブタイプに関連するかどうかを試験するために、本発明者らは、様々なTNBCサブタイプの大量の遺伝子発現データセットを使用した
10。本発明者らはメタ解析を実施して、組み込んだアレイ対照を使用して正規化シグナル強度により定義された、スケール0(検出不能)から12(最高強度)までにおけるLy6Kの絶対的mRNA発現レベルを決定した。Ly6KのmRNAレベルは、管腔アンドロゲン受容体(LAR)のTNBCにおけるより、基底様(BL)、免疫調節系(IM)、間葉系(M)においてより高いことが見出された。さらなる解析は、関連する細胞系モデルを使用して、Ly6Kの最高レベルを発現するTNBCサブタイプ、すなわちBL、IMおよびMに集中している(
図ID)。正常組織のパネルの中で、Ly6Kのタンパク質発現は、精巣に限定されることが見出された(The Human Protein Atlas)
11、12(
図1F)。正常組織においてLy6Kタンパク質発現が存在しないことは、TNBCにおいてまた増加しているLy6EおよびLy6Dとは反対に、さらなる研究のためにLy6K遺伝子を選択する重要な判断基準であった
8。Ly6EおよびLy6Dは、正常な肝臓および骨髄において高いmRNAおよびタンパク質発現を有し、造血において重要な役割を果たす
13(
図1G)。精巣におけるLy6Kの正常な機能は、精子形成に関連する
14。現在の文献は、Ly6Kが、精子形成を除く正常な細胞機能に必要とされないことを示唆している。したがって、Ly6Kの標的化に集中した今後の治療的手法は、女性のTNBC患者において最小限の毒性を有するはずであることは妥当と考えられる。Ly6Kの発現増加は、膀胱がん、胃がん、頭頸部がん、および卵巣がんで十分に立証されており、そのため、Ly6Kに向けた治療的戦略は、複数のがんタイプに適用され得る
8、15~17。
【0087】
Ly6Kは、TGFβシグナル伝達の増加に必要とされる。TGFβシグナル伝達の増加は、持続的な腫瘍進行に必要とされる
6、18。細胞内のTGFβシグナル伝達は、上皮間葉転換を誘導し、がん細胞中の細胞周期進行、増殖、遊走および治療耐性を増加させる
19~21。細胞外のTGFβシグナル伝達は、T細胞の細胞溶解機能を抑制し、抑制性の制御性T細胞を増大させ、NK細胞の抗腫瘍機能を阻害し、樹状細胞機能の阻害および腫瘍促進活性を有するM2-型マクロファージの促進により、腫瘍免疫エスケープを推進する
22~25。TGFβ1は、強力な免疫抑制サイトカインであり、腫瘍微小環境においてがん細胞を含む複数の細胞型により分泌され、乳がんにおける生存転帰不良に関連する
21、25~27。本発明者らは、Ly6Kが、TNBC細胞中の内在性またはリガンド刺激性のTGFβ/Smadシグナル伝達および上皮間葉転換(EMT)に必要とされることをこれまで詳細に示してきた
9。
図2A~Dは、本発明者らの主要なデータの一部を要約している
9(
図2A~D)。本発明者らの新しいデータは、Ly6Kが、がん細胞中のTGFβ1リガンドの転写上方制御の上流であることを示している(
図2E)。これまでに、本発明者らは、Ly6A/Sca-1が、腫瘍抑制因子サイトカインGDF10の転写抑制に必要とされることを見出したが
28;しかしながら、Ly6Kは、GDF10のmRNAの発現に影響を及ぼさなかった(
図2F)。上に要約したように、現在の文献は、TGFβシグナル伝達とがん免疫応答の間の直接的なつながりを示唆している。したがって、本発明者らは、Ly6Kが、TNBC臨床症例における免疫調節性遺伝子発現シグネチャーと相関しているかどうかを試験した。Oncomine解析は、Ly6Kが、TNBCにおいて非TNBCに対して、炎症性サイトカインTGFβ1/2、Bmp2、CXCL10、IFNγ;免疫調節性タンパク質PD1、PDL1、CTLA4、CD80、CD25、IDO1と有意に同時発現することを示した(
図2G)。現在の文献はまた、TNBCでは、がん細胞の免疫エスケープに関連する遺伝子の発現が増加していることも示す
29。これらの症例は、免疫治療に、より良好に応答するはずであると議論されてきたが、しかしながら、TNBC症例は、これまでのところ免疫治療に対して限られた応答を示した
2、30、31。抗TGFβ1療法は、微小環境における腫瘍免疫応答および腫瘍細胞に対する直接的効果を誘導することが示されてきた
32。残念ながら、TGFβシグナル伝達を標的化する現在の治療は、TGFβ受容体および/またはSmadエフェクター分子の直接標的化に集中しており、このことは、正常な細胞機能に必要とされるTGFβシグナル伝達の起こり得る損失に起因して起きる重度の副作用に潜む原因であり得る
33~36。したがって、がん特異的な抗TGFβ1治療に対する重要な必要性がある。本発明者らは、ここに、Ly6K発現増加を伴うTNBCにおける免疫エスケープ、炎症表現型、腫瘍成長およびTGFβシグナル伝達を調査するためのヒト化PDXモデルを含むマウス腫瘍モデルにおいて、小分子NSC243928が、Ly6K依存的にTGFβシグナル伝達を阻害する(以下に記載)ことを示す。Ly6Kを標的化することにより、TNBCにおけるTGFβ関連の免疫抑制(外因性)および腫瘍細胞成長(内因性)(
図2H)が、制限され得る。
【0088】
Ly6Kは、がん細胞中の免疫チェックポイントタンパク質PD-L1の増加に必要とされる。
図2Gに示すように、Ly6Kは、PD-L1(最後の行から5番目)を含む、腫瘍免疫応答を阻害する遺伝子と同時発現する。PD-L1は、がん細胞において高度に発現するタンパク質であり、がん細胞に対するT-細胞媒介性細胞傷害の非活性化に重要な役割を果たす
5、37。がん細胞中のPD-L1発現は、T-細胞およびナチュラルキラー細胞により産生されるIFNγを含む複数出現する経路により制御される
38。JAKキナーゼによるStat1のリン酸化は、IFNγ刺激後のPD-L1の転写活性化における主要なステップであり得る
39。Ly6KおよびPD-L1の同時発現の性質を探究するために、本発明者らは、対照細胞およびLy6Kノックダウン細胞をIFNγで処置し、PD-L1発現を評価した。本発明者らは、Ly6Kノックダウンが、IFNγ刺激細胞中のPD-L1タンパク質発現の低減をもたらすことを見出した。未処置細胞では差異は見られなかった
9(
図3A)。本発明者らは、Ly6Kのノックダウンが、Stat1リン酸化を消失させるが、総Stat1タンパク質レベルには影響を及ぼさないことを見出した(
図3B)。したがって、これらの結果から、Ly6K誘導性のがん進行が、PD-L1発現に対するその影響に少なくとも部分的に起因し、かつ小分子NSC11150によるLy6Kの標的化が、Ly6K-IFNγ/PD-L1シグナル伝達を阻害すると考えられる。PD-L1媒介性の免疫エスケープにおけるLy6Kおよびその小分子バインダーNSC11150の役割(
図3C)は、本開示においてさらに解明される。
【0089】
Ly6Kは、複数のマウスモデルにおけるin Vivo腫瘍成長に必要とされる。本発明者らは、Ly6K発現が、免疫無防備状態のヌードマウスにおけるMDA-MB-231の異種移植腫瘍モデルにおける腫瘍進行に必要とされることを見出した
9。ヌードマウスは、障害のある免疫系を有するため、本発明者らは、免疫関連の腫瘍成長機構およびTGFβシグナル伝達を研究するために広く使用される4T1(Balb/c起源)マウスを使用して、十分に研究された同系の乳房腫瘍マウスモデルにおける腫瘍成長に対するLy6Kの影響を試験することを決定した
40~42。本発明者らは、がん免疫療法研究およびTGFβシグナル伝達に広く使用される、第2の同系の乳房腫瘍モデル-E0771(C57BL/6起源)を使用した
43、44。本発明者らは、レンチウイルスの標的化しないshRNAおよびマウスLy6KのshRNAを使用して対照のならびにLy6Kノックダウンの4T1およびE0771細胞を作製した。Ly6Kノックダウン細胞は、対照細胞と比較して、Ly6KのmRNAレベルの有意な低減を示した。マウスのLy6E、Ly6DおよびLy6A(Sca-1)のmRNA発現は、ノックダウンにより影響を受けなかった(
図4A)。Ly6Kノックダウン細胞はまた、Ly6Kのタンパク質レベルの有意な低減も示した。加えて、Ly6Kノックダウン細胞は、Smad2/3リン酸化の消失を示した(
図4B)。Ly6Kノックダウン細胞は、同遺伝子系の腫瘍移植を起こさなかった(
図4C)。これらの結果は、Ly6Kが、非免疫および免疫の関連する腫瘍成長の機構に有意な影響を与え得ることを示している。
【0090】
小分子によるLy6Kシグナル伝達の阻害は実行可能である。本発明者らは、表面プラズモン共鳴を使用して、Ly6Kの小分子バインダーを同定した。Developmental Therapeutic Program(DTP、NCI)から得た、2000の小分子のパネルをスクリーニングした。本発明者らは、Ly6Kに特異的に結合することができるが、Ly6EにもLy6Dにも結合を示さない5つの小分子を発見した(KD範囲:1~10μM)。これら5つの分子を、細胞死、TGFβ1/Smad2/3リン酸化、IFNγ/Stat1リン酸化およびPD-L1タンパク質発現を誘導する能力に関してさらに試験した。バイオアッセイおよび構造的可撓性における特異性および選択性に基づいて、NSC243928およびNSC11150をさらなる研究のために選択し、これらは綿密な研究に必要とされる今後の改変を可能にする(
図11に記載)。小分子NSC243928は、1955年から1975年の間に使用された標準的モデルである、BDF1同系マウスにおけるL1210白血病モデルに関するNCIによるin vivo抗腫瘍スクリーニングにこれまで使用されてきた。この腫瘍モデルにおける平均生存は、2~3週間である。NSC243928を用いた処置により、生存上の利益は、用量依存的に30%から100%まで増加した。薬物は、10mg/kg/i.p.処置までは有毒ではないと分かっていたが、しかしながら、詳細なデータは公表されていなかった(
図5A)。NSC11150は、in-vivoまたはin-vitroの抗腫瘍スクリーニングでの試験はされていなかった。興味深いことに、NSC11150は、口腔衛生製品の有効成分として、抗微生物性および抗細菌性の薬剤として使用されてきた(ID:EP0693919、EP0696449)。本発明者らは、驚いたことに、NSC243928およびNSC11150(5mg/kg/i.p.50~70mm
3の腫瘍確立後、週2回)は、同系マウスモデルにおける4T1乳房腫瘍成長も抑制できることを見出した(
図5B、C)。以下で論じられるように、NSC243928およびNSC11150は、Ly6K依存的にTGFβおよびPD-L1経路を阻害し、これらの化合物の新規な活性の機構的基礎を示している(
図11、12を参照されたい)。これらの実験は、Ly6Kの小分子標的化が、機能的意義を有し、潜在的にがん処置においてより良好な転帰をもたらすという原理の証拠を提供する。
【0091】
Ly6Kは、TNBC細胞系、臨床試料、ならびに同系および異種移植の腫瘍モデルを使用して本明細書に示されるように、TGFβおよびPD-L1シグナル伝達の増加に重要な役割を果たす。その組織特異的発現およびその腫瘍進行経路の強力な活性化により、Ly6Kは治療介入の魅力的な標的となる。
【0092】
したがって、本発明者らは、がん細胞に特異的に発現し、かつ正常細胞の発現は精巣に限定される細胞表面タンパク質であるLy6Kが、乳がん、卵巣がん、肺がん、胃がん、頭頸部がん、膀胱がんおよび結腸がんの臨床転帰不良に関連する新規なバイオマーカーであることを見出した。
【0093】
Ly6Kはまた、がんにおけるTGFβおよびEMT経路の増強因子でもあることも見出されている。
【0094】
本発明者らはまた、驚いたことに、Ly6Kの結合を介してTGFβシグナル伝達を阻害する公知の構造の分子に関する新規な活性と同様に、Ly6Kの結合を介して免疫チェックポイントタンパク質PD-L1を阻害する公知の構造の分子に関する新規な活性も見出した。
【0095】
したがって、本開示は、抗TGFβおよびPD-L1発現の阻害のための新規な治療標的を定義する。
【0096】
TNBC細胞系:トリプルネガティブ乳がん(「TNBC」)細胞系は、それらの遺伝子発現シグネチャーに基づいて、異なるTNBCサブタイプに割り当てられてきた
10。全ての試験されたTNBC細胞系は、Ly6Kの発現増加を示した
9。間葉系、基底、および免疫調節性のTNBCサブタイプは、最も高いLy6K発現を有する。本発明者らは、MDA-MB-231細胞
9のTNBC細胞においてshRNAレンチウイルス技術を使用して安定なLy6Kノックダウン細胞の作製に成功し、かつ同一の方法を使用して、対照細胞およびLy6KノックダウンHS578t Ly6Kノックダウン細胞を作製した(
図6、左のパネル)。本発明者らは、MDA-MB-231細胞から3つのLy6K CRISPRクローンを開発し、検証した(
図6、右のパネル)。CRISPRを介したLy6KのDNA欠失は、Smad2/3のリン酸化の消失をもたらした(
図6)。
【0097】
理論に束縛されることは望まないが、Ly6Kが、TNBCにおけるTGFβシグナル伝達を増強することにより、腫瘍進行および免疫監視の抑制を増加させるようである。
【0098】
TGFβ受容体複合体の形成に対するLy6Kの影響:Ly6Kは、内在性およびTGFβ1リガンド刺激性のSmad2/3リン酸化に必要とされる(
図7)。それらのリガンドによる活性化時に、TGFβ受容体I(TβRI)およびTGFβ受容体II(TβRII)は複合体を形成し、次にSmad2/3のリン酸化を誘導することができる。リン酸化されたSmad2/3タンパク質は、Smad4に結合し、続いて核にトランスロケーションし、TGFβ応答性遺伝子の転写を誘導することができる。
【0099】
Ly6K媒介性のTGFβ1シグナル伝達のグリコシル化および脂質化:N末端上の1~17アミノ酸残基およびC-末端残基139~141は切断され、成熟Ly6Kタンパク質を形成する。18~138残基の成熟Ly6Kタンパク質は、グリコシル化(N20)および脂質化(G138)部位を有する(
図8)。グリコシル化および脂質化は、重要な翻訳後修飾であり、タンパク質機能にとって重要であることが示され、かつ腫瘍形成において変化することが多い
45~49。
【0100】
Ly6K/TGFβ軸および腫瘍細胞成長に対するその影響:TGFβは、細胞周期チェックポイント制御、G1/S移行、アポトーシスおよびオートファジーを含む、がん細胞の進行に対して複数の影響を及ぼす
51、52。本発明者らは、Ly6Kが、血清枯渇後のG1/S移行に必要とされることを見出した(G0/G1ブロック)。対照細胞は、G1期における細胞のパーセンテージの着実な減少およびS期細胞における増加を示した。Ly6Kノックダウン細胞は、停滞G1期およびS期の細胞を示した(
図9)。
【0101】
IFNγ経路におけるLy6K:Ly6Kは、TNBC細胞中のIFNγ誘導性のStat1/3リン酸化ならびにPD-L1 mRNAおよびタンパク質の発現に必要とされる(
図10)。IFNγは、T-細胞により分泌され、がん細胞およびマクロファージにおけるPD-L1発現を増加させる
54、55。IFNγは、IFNγ受容体I(IFNγR1)と結合してそのダイマー化を誘導し、次いで、ダイマー化したIFNγR1は、ダイマー化したIFNγRIIと会合することができる。次に、複合体は、JAK1およびJAK2の活性化を可能にし、細胞内空間で露出したStat1ドッキング部位に至る。チロシンリン酸化されたStat1は、この複合体から解離し、ホモダイマーを形成する。このホモダイマーは核内にトランスロケーションし、PD-L1などのIFNγ応答性遺伝子の転写を誘導する
4、56。
【0102】
IFNγ受容体レベルの安定化に対するLy6Kの影響:Ly6Kは、GPIアンカー型タンパク質であり、細胞表面に位置する。このクラスのタンパク質は、受容体媒介性のシグナル変換経路および膜トラフィッキングに関与する脂質ラフト中に濃縮し得る12、13。Ly6Kは、細胞表面上のIFNγR1/2の適切な局在化に必要とされ得る。
【0103】
IFNγ誘導性のPD-L1発現におけるLy6K:がん細胞中のLy6Kは、IFNγ誘導性のPD-L1発現を増加させる代替経路に関与し得、これは、IFNγのIFNγR1/2との結合、続くStat3のリン酸化という古典的シグナル伝達カスケードを回避し得る。
【0104】
Ly6K修飾およびIFNγシグナル伝達におけるその役割:細胞表面のLy6Kは、IFNγ受容体複合体の安定性およびStat1のリン酸化に必要とされ得、これはPD-L1の発現増加をもたらす。
【0105】
腫瘍退縮におけるLy6Kの小分子バインダーの効果:本発明者らは、表面プラズモン共鳴アッセイを、Biacore T100を使用して、精製ヒトLy6Kタンパク質をCM5チップの表面に固定化し、2000の化合物を含有する小分子ライブラリー(Developmental Therapeutics Program、NCI)で結合をスクリーニングすることにより実施した。分子の最初のスクリーニングを、1または10μMの化合物で、溶解度に基づいて実施した。本発明者らは、実際の結合最大値(RUactual)と理論上の結合最大値(RUtheor)を比較するモデルを使用した。0.9~1.0の間であるRUactualのRUtheorに対する比は結合を示唆しており、対応する化合物を「ヒット」と考えた。次に、ヒット(RUactualがRUtheorに対して0.7~2.0)は、医薬品化学者チームにより見直され、構造的可能性があるものをさらなる研究用に選択した。選択された分子を、Ly6ファミリーの他のメンバー、すなわちLy6EおよびLy6Dとの結合に関して試験した。選択された化合物のうちの5つが、Ly6Kとの特異的結合を示した。NSC1150を、化合物のタグ付けおよびさらなる改善に必要とされる構造的修飾に好適であるその構造により、リードヒット化合物としてさらなる解析用に選択した。
図11A~Kを参照されたい。
【0106】
Ly6K結合小分子は、Ly6K/TGFβおよびLy6K/IFNγシグナル伝達を妨害する。NSC243928は、対照MDA-MB-231細胞の成長を減じたが、Ly6Kノックダウン細胞ではその活性を消失した。NSC11150は、2μMで細胞死に対して有意な効果を示さなかった(
図12A)。NSC11150は、対照細胞およびLy6Kノックダウン細胞の両方において、1ΟΟμMで細胞死を誘導した(図示せず)。NSC11150を用いた処置は、対照細胞ではPD-L1発現の阻害をもたらし、一方、NSC243928は、PD-L1タンパク質発現に有意な効果を示さなかった(
図12B)。NSC243928は、TGFβ1誘導性のSmad2/3のリン酸化を阻害し;NSC11150は、TGFβ1/Smad2/3シグナル伝達に効果がなかった(
図12C)。NSC11150は、IFNγ誘導性のStat1のリン酸化を阻害し;NSC243928は、IFNγ/Stat1シグナル伝達に効果がなかった(
図12D)。これらのデータは、本発明者らが、細胞成長、TGFβ1/Smad2/3シグナル伝達におけるNSC243928の新規な活性、ならびにPD-L1タンパク質発現およびIFNγ/Stat1シグナル伝達におけるNSC11150の新規な活性を同定したことを示唆している。
【0107】
NSC243928およびNSC11150は、Ly6K上に異なる結合ポケットを有する。ヒトLy6Kタンパク質(Uniprot id-Q17RY6)の相同性モデル化を、I-TASSERおよび鋳型としてヒトLYNX1(PDB code:2L03)の構造を使用して実施した
57。LYNX1の残基1~121は、Ly6Kの成熟型を構成する残基18~138に対応する。-1.62のCスコア、0.52±0.150の推定TMスコアを伴う最良のLy6Kモデルを、立体的衝突に起因して、C-末端上の12のアミノ酸を取り除くように修飾した。残基18~126を含むLys6Kモデルを、ドッキング研究用に使用した。NSC243928およびNSC11150とLy6Kモデルとのドッキングを、SwissDock
58で「自動モード」を使用して実施して、可能性のある結合ポケットを同定した。このモデル化により、Ly6Kタンパク質上の2つの可能性のある結合部位が明らかにされた。
図13A~Cを参照されたい。NSC11150に対する「FullFitness」パラメーターにより判断して、最良の予測されたポーズのおよそ10%が、結合部位1に対応した。同時に、NSC243928に対する最良のポーズの約5%が、結合部位2に対応した。
図14A~Dを参照されたい。
【0108】
NSC243928およびNSC11150に関する最大耐用量(MTD)の決定:予備実験では、本発明者らは、NSC243928およびNSC11150に関して、5mg/kg/ip用量において認識できる毒性を伴わない治療利益を認めた。
【0109】
(実施例2 小分子阻害剤とLy6Kの間の結合相互作用の評価)
Ly6Kと小分子阻害剤NSC243928の間の結合相互作用を評価した。
図15に示すように、疎水性接触が、NSC243928とLy6Kの間の相互作用に最も重要な役割を果たすと考えられる。アクリジニルアミノ基は、Phe35、Phe62、Val64およびTyr95の側鎖と広範囲にわたる接触を形成する。同時に、Ile52およびAla54の側鎖は、フェニル基の近傍にあると予測される。本発明者らのモデルはまた、AsplおよびLys97が、スルホアニリド部分との相互作用に関与する、可能性のある候補であることも示唆している。
【0110】
Ly6Kと小分子阻害剤NSC11150の間の結合相互作用もまた評価した。
図16に示すように、炭素1に付着しているヒドロキシル基は、2つの水素結合に関与する。第1の水素結合は、化合物とAsp10の側鎖カルボキシル基からの酸素の間に形成され、第2の水素結合は、Cys98の主鎖からの窒素原子を含む。NSC11150と密接な接触を形成するいくつかのアミノ酸がある。例えば、Asn3、Gln8、Prol1、Ala74およびGlu76は、大部分の相互作用をもたらす結合部位1の一部を形成している。
【0111】
(実施例3 Ly6Kの小分子バインダーは、腫瘍化成長を阻害しかつ免疫を誘導する。)
本発明者らは、これまで、Ly6遺伝子ファミリーのメンバー、すなわちLy6E、Ly6D、Ly6HおよびLy6Kが、複数の型のヒト固形がんに発現し、これらの遺伝子の発現増加が転帰不良に関連することを示してきた(Luo et al., Oncotarget 7(10): 11165-93 (2016)、これは、その全容が参照により本明細書に組み込まれる)。本発明者らはまた、Ly6KおよびLy6Eが、in vivo腫瘍成長および抗腫瘍免疫応答に必要とされることも見出した(Al Hossiny et al., Cancer Res. 76(11): 3376-86 (2016)、これは、その全容が参照により本明細書に組み込まれる)。Ly6Kは、そのがん細胞特異的発現により魅力的な標的であり;Ly6Kの正常臓器発現は精巣に限定される。本発明者らは、表面プラズモン共鳴技術を使用して、Ly6Kの2つの小分子バインダーを同定した。これらの分子は、Ly6Kに対して強い結合を示した(kd範囲1~2μM)が、Ly6EおよびLy6Dに対しては示さなかった。小分子処置の併用は、MDA-MB-231細胞中のTGFβシグナル伝達の低減およびPDL1発現の低減をもたらした。相同性モデル化は、2つの小分子が、成熟Ly6Kタンパク質のN末端およびC末端にそれぞれ結合することを示した。個々の小分子を用いた、同系のC57B1/6モデルにおけるE0771腫瘍の処置により、腫瘍成長は低減し、一方、2つの小分子を用いた併用処置により、腫瘍成長は完全に除去された(
図17)。腫瘍消失の後に、処置を停止した。3週間後、治癒したマウスを、E0771細胞を用いて再チャレンジしたが、腫瘍成長に対して完全かつ永続的に保護された。これらの結果は、Ly6K阻害剤が抗腫瘍特性を有し、宿主保護的抗腫瘍免疫を誘導することを示唆している。本発明者らのデータは、新規なバイオマーカーLy6Kを、Ly6Kの高発現を伴う複数の腫瘍タイプにおける治療標的および免疫調節物質として意味付ける。
【化5】
【化6】
【化7】
【0112】
好ましい実施形態を本明細書に詳細に示しかつ記載してきたが、本発明の趣旨から逸脱することなく、様々な改変、追加、代用などを行うことができ、したがって、これらは、以下の特許請求の範囲に定義する本発明の範囲内であると考えられることは当業者に明らかであろう。
一実施形態において、例えば、以下の項目が提供される。
(項目1)
(a)式I
【化8】
の化合物またはその塩であって、式中:
【化9】
は、単結合または二重結合であり;
R
1
は、-C
1~8
アルキル、-C
3~8
シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、ヘテロアリール、-フェニレン-NH
2
、および-C
1~4
アルキレン-NH
2
からなる群より選択され;
R
2
は、H、-C
1~3
アルキル、および-C(O)-C
1~5
アルキルからなる群より選択され;
R
3
は、-C
1~6
アルキルまたは-C
1~3
アルキレン-OHであり;
R
4
は、Hまたは-C
1~6
アルキルであり;
R
5
は、H、-C
1~3
アルキル、-NO
2
、-O-C
1~3
アルキル、ハロゲン、-NR
2
、および-C(O)-ORからなる群より選択され、各Rは、独立してHまたは-C
1~4
アルキルであり;
R
6
は、H、-C
1~4
アルキル、-NR
2
、-NO
2
、-O-C
1~3
アルキル、ハロゲン、および-C(O)-ORからなる群より選択され、各Rは、独立してHまたは-C
1~4
アルキルであり;
R
7
は、H、-C
1~4
アルキル、-C
1~3
アルキレン-SH、-CN、-CF
3
、-NR
2
、-NO
2
、-N=N
+
=N
-
、-NH-N=N
+
-C
1~3
アルキル、-NH-C(O)-C
1~3
アルキル、-NH-C(O)-O-C
1~3
アルキル、-OR、-SR、-S-C
1~3
アルキレン-SH、-S(O
2
)-C
1~3
アルキル、-NH-SO
2
-C
1~3
アルキル、およびハロゲンからなる群より選択され、各Rは、独立してHまたは-C
1~4
アルキルであり;
R
8
は、H、-C
1~3
アルキル、-C
1~3
アルキレン-C(O)-NH
2
、-CN、-C-NR
2
、-O-C
1~3
アルキル、ハロゲン、およびフェニルからなる群より選択され、各Rは、独立してHまたは-C
1~4
アルキルであり;
R
9
は、H、-C
1~3
アルキル、-C
1~3
アルキレン-C(O)-NH
2
、-CN、-C-NR
2
、-O-C
1~3
アルキル、ハロゲン、およびフェニルからなる群より選択され、各Rは、独立してHまたは-C
1~4
アルキルであり;
R
10
は、H、-C
1~4
アルキル、-C
1~3
アルキレン-SH、-CN、-CF
3
、-NR
2
、-NO
2
、-N=N
+
=N
-
、-NH-N=N
+
-C
1~3
アルキル、-NH-C(O)-C
1~3
アルキル、-NH-C(O)-O-C
1~3
アルキル、-OR、-SR、-S-C
1~3
アルキレン-SH、-S(O
2
)-C
1~3
アルキル、-NH-SO
2
-C
1~3
アルキル、およびハロゲンからなる群より選択され、各Rは、独立してHまたは-C
1~4
アルキルであり;
R
11
は、H、-C
1~4
アルキル、-NR
2
、-NO
2
、-O-C
1~3
アルキル、ハロゲン、および-C(O)-ORからなる群より選択され、各Rは、独立してHまたは-C
1~4
アルキルであり;
R
12
は、H、-C
1~3
アルキル、-NO
2
、-O-C
1~3
アルキル、ハロゲン、-NR
2
、および-C(O)-ORからなる群より選択され、各Rは、独立してHまたはC
1~4
アルキルであり;
Xは、-C(R
13
,R
14
)-、-N(R
15
)-、-O-、および-S-からなる群より選択され:
R
13
およびR
14
の一方は存在しないかもしくはHであり、他方は、H、-C
1~3
アルキル、-C
1~3
アルキレン-ハロゲン、および-CF
3
からなる群より選択されるか;またはR
13
およびR
14
は、一緒になって=Oを形成し;
R
15
は、存在しないかまたはH、-C
1~3
アルキル、-C
1~3
アルキレン-ハロゲン、および-CF
3
からなる群より選択される、
式Iの化合物またはその塩;ならびに
(b)式II:
【化10】
の化合物であって、式中:
R
1
、R
2
、R
3
、R
4
、およびR
5
のうちの1つは、ハロゲンであり、その他は、独立してH、-C
1~4
アルキル、-OH、および-O-C
1~3
アルキルからなる群より選択され;
R
6
およびR
10
は、独立してH、-C
1~3
アルキル、-OH、-O-C
1~3
アルキル、-SR、-NR
2
、およびハロゲンからなる群より選択され、各Rは、独立してHまたは-C
1~4
アルキルであり;
R
7
およびR
9
は、独立してH、-C
1~3
アルキル、-O-C
1~3
アルキル、-NR
2
、およびハロゲンからなる群より選択され、各Rは、独立してHまたは-C
1~4
アルキルであり;
R
8
は、H、-C
1~6
アルキル、-OH、-O-C
1~3
アルキル、-SR、-CF
3
、-CN、-NR
2
、-C(O)-OR、およびハロゲンからなる群より選択され、各Rは、独立してHまたは-C
1~4
アルキルであり;
Xは、-C(R
11
R
12
)-、-N(R
13
)-、-O-、および-S-からなる群より選択され:
R
11
およびR
12
の一方はHであり、他方は、H、-C
1~3
アルキル、-C
1~3
アルキレン-ハロゲン、および-CF
3
からなる群より選択されるか;またはR
11
およびR
12
は、一緒になって=Oを形成し;
R
13
は、H、-C
1~3
アルキル、-C
1~3
アルキレン-ハロゲン、および-CF
3
からなる群より選択される、
式IIの化合物
からなる群より選択される化合物(またはその薬学的に許容される塩、エステル、エノールエーテル、エノールエステル、溶媒和物もしくは水和物)。
(項目2)
式Iの化合物またはその塩である、項目1に記載の化合物(またはその薬学的に許容される塩、エステル、エノールエーテル、エノールエステル、溶媒和物もしくは水和物)。
(項目3)
(a)
【化11】
が、単結合または二重結合であり;
R
1
が、-C
1~8
アルキル、-C
3~8
シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、およびヘテロアリールからなる群より選択され;
R
2
が、Hまたは-C
1~3
アルキルであり;
R
3
が、-C
1~6
アルキルまたは-C
1~3
アルキレン-OHであり;
R
4
が、Hまたは-C
1~6
アルキルであり;
R
5
が、H、-C
1~3
アルキル、-NO
2
、-O-C
1~3
アルキル、ハロゲン、-NR
2
、および-C(O)-ORからなる群より選択され、各Rが、独立してHまたは-C
1~4
アルキルであり;
R
6
が、H、-C
1~4
アルキル、-NR
2
、-NO
2
、-O-C
1~3
アルキル、ハロゲン、および-C(O)-ORからなる群より選択され、各Rが、独立してHまたは-C
1~4
アルキルであり;
R
7
が、H、-C
1~4
アルキル、-C
1~3
アルキレン-SH、-CN、-CF
3
、-NR
2
、-NO
2
、-OR、-SR、およびハロゲンからなる群より選択され、各Rが、独立してHまたは-C
1~4
アルキルであり;
R
8
が、H、-C
1~3
アルキル、-CN、-O-C
1~3
アルキル、ハロゲン、およびフェニルからなる群より選択され、各Rが、独立してHまたは-C
1~4
アルキルであり;
R
9
が、H、-C
1~3
アルキル、-CN、-O-C
1~3
アルキル、ハロゲン、およびフェニルからなる群より選択され、各Rが、独立してHまたは-C
1~4
アルキルであり;
R
10
が、H、-C
1~4
アルキル、-C
1~3
アルキレン-SH、-CN、-CF
3
、-NR
2
、-NO
2
、-OR、-SR、およびハロゲンからなる群より選択され、各Rが、独立してHまたはC
1~4
アルキルであり;
R
11
が、H、-C
1~4
アルキル、-NR
2
、-NO
2
、-O-C
1~3
アルキル、ハロゲン、および-C(O)-ORからなる群より選択され、各Rが、独立してHまたは-C
1~4
アルキルであり;
R
12
が、H、-C
1~3
アルキル、-NO
2
、-O-C
1~3
アルキル、ハロゲン、-NR
2
、および-C(O)-ORからなる群より選択され、各Rが、独立してHまたはC
1~4
アルキルであり;
Xが、-C(R
13
,R
14
)-、-N(R
15
)-、-O-、および-S-からなる群より選択され:
R
13
およびR
14
の一方が存在しないかもしくはHであり、他方が、H、-C
1~3
アルキル、-C
1~3
アルキレン-ハロゲン、および-CF
3
からなる群より選択されるか;またはR
13
およびR
14
が、一緒になって=Oを形成し;
R
15
が、存在しないかまたはH、-C
1~3
アルキル、-C
1~3
アルキレン-ハロゲン、および-CF
3
からなる群より選択され;
(b)
【化12】
が、単結合または二重結合であり;
R
1
が、-C
1~8
アルキル、-C
3~8
シクロアルキル、アリール、ヘテロシクリル、およびヘテロアリールからなる群より選択され;
R
2
、R
4
、R
5
、R
9
、R
10
、R
11
、およびR
12
が、それぞれ独立してHまたは-C
1~3
アルキル(例えば、H)であり;
R
3
が、-C
1~6
アルキルまたは-C
1~3
アルキレン-OHであり;
R
6
が、H、-C
1~4
アルキル、-NR
2
、-NO
2
、-O-C
1~3
アルキル、ハロゲン、および-C(O)-ORからなる群より選択され、各Rが、独立してHまたは-C
1~4
アルキルであり;
R
7
が、H、-C
1~4
アルキル、-C
1~3
アルキレン-SH、-CN、-CF
3
、-NR
2
、-NO
2
、-OR、-SR、およびハロゲンからなる群より選択され、各Rが、独立してHまたは-C
1~4
アルキルであり;
R
8
が、H、-C
1~3
アルキル、-CN、-O-C
1~3
アルキル、ハロゲン、およびフェニルからなる群より選択され、各Rが、独立してHまたは-C
1~4
アルキルであり;
Xが、-C(R
13
,R
14
)-、-N(R
15
)-、-O-、および-S-からなる群より選択され:
R
13
およびR
14
の一方が存在しないかもしくはHであり、他方が、H、-C
1~3
アルキル、-C
1~3
アルキレン-ハロゲン、および-CF
3
からなる群より選択されるか;またはR
13
およびR
14
が、一緒になって=Oを形成し;
R
15
が、存在しないかまたはH、-C
1~3
アルキル、-C
1~3
アルキレン-ハロゲン、および-CF
3
からなる群より選択され;
(c)
【化13】
が、二重結合であり;
R
1
が、-C
1~8
アルキル(例えば、-C
1~4
アルキル、例えば、エチル)であり;
R
2
、R
4
、R
5
、R
8
、R
9
、R
10
、R
11
、およびR
12
が、それぞれ独立してHまたは-C
1~3
アルキル(例えば、H)であり;
R
3
が、-C
1~6
アルキル(例えば、-C
1~3
アルキル、例えば、メチル)であり;
R
6
およびR
7
が、それぞれ独立してHまたは-C
1~4
アルキル(例えば、H)であり;
Xが、-N(R
15
)-であり、R
15
が、存在しない;あるいは
(d)
【化14】
が、二重結合であり;
R
1
が、-C
1~8
アルキル(例えば、-C
1~4
アルキル、例えば、エチル)であり;
R
2
、R
4
、R
5
、R
9
、R
10
、R
11
、およびR
12
が、それぞれHであり;
R
3
が、-C
1~6
アルキル(例えば、-C
1~3
アルキル、例えば、メチル)であり;
R
6
およびR
7
が、それぞれ独立してHまたは-C
1~4
アルキル(例えば、H)であり;
R
8
が、Hまたは-C
1~3
アルキル(例えば、H)であり;
Xが、-N(R
15
)-であり、R
15
が、存在しない、
項目2に記載の化合物(またはその薬学的に許容される塩、エステル、エノールエーテル、エノールエステル、溶媒和物もしくは水和物)。
(項目4)
式Iの化合物のアルキルスルホン酸塩(例えば、メタンスルホン酸塩)である、項目1~3のいずれか一項に記載の化合物(またはその薬学的に許容される塩、エステル、エノールエーテル、エノールエステル、溶媒和物もしくは水和物)。
(項目5)
NSC243928である、項目1~4のいずれか一項に記載の化合物(またはその薬学的に許容される塩、エステル、エノールエーテル、エノールエステル、溶媒和物もしくは水和物)。
(項目6)
式IIの化合物である、項目1に記載の化合物(またはその薬学的に許容される塩、エステル、エノールエーテル、エノールエステル、溶媒和物もしくは水和物)。
(項目7)
(a)
R
1
、R
2
、およびR
3
のうちの1つが、ハロゲンであり、その他が、独立してH、-C
1~4
アルキル、-OH、および-O-C
1~3
アルキルからなる群より選択され;
R
4
およびR
5
が、それぞれ独立してHまたは-C
1~4
アルキルであり;
R
6
が、-ORであり、Rが、Hまたは-C
1~3
アルキルであり;
R
7
、R
9
、およびR
10
が、それぞれ独立してHまたは-C
1~3
アルキルであり;
R
8
が、-OHまたは-O-C
1~3
アルキルであり;
Xが、-C(R
11
R
12
)-、-N(R
13
)-、-O-、および-S-からなる群より選択され:
R
11
およびR
12
の一方がHであり、他方が、H、-C
1~3
アルキル、-C
1~3
アルキレン-ハロゲン、および-CF
3
からなる群より選択されるか;またはR
11
およびR
12
が、一緒になって=Oを形成し;
R
13
が、H、-C
1~3
アルキル、-C
1~3
アルキレン-ハロゲン、および-CF
3
からなる群より選択され;
(b)
R
1
およびR
2
が、それぞれ独立してH、-C
1~4
アルキル、-OH、および-O-C
1~3
アルキルからなる群より選択され;
R
3
がハロゲンであり;
R
4
およびR
5
が、それぞれ独立してHまたは-C
1~4
アルキルであり;
R
6
が、-ORであり、Rが、Hまたは-C
1~3
アルキルであり;
R
7
、R
9
、およびR
10
が、それぞれ独立してHまたは-C
1~3
アルキルであり;
R
8
が、-OHまたは-O-C
1~3
アルキルであり;
Xが、-C(R
11
R
12
)-、-N(R
13
)-、-O-、および-S-からなる群より選択され;
R
11
およびR
12
の一方がHであり、他方が、H、-C
1~3
アルキル、-C
1~3
アルキレン-ハロゲン、および-CF
3
からなる群より選択されるか;またはR
11
およびR
12
が、一緒になって=Oを形成し;
R
13
が、H、-C
1~3
アルキル、-C
1~3
アルキレン-ハロゲン、および-CF
3
からなる群より選択され;
(c)
R
1
およびR
2
が、それぞれ独立してHまたは-C
1~4
アルキル(例えば、H)であり;
R
3
が、ハロゲン(例えば、Cl)であり;
R
4
、R
5
、R
7
、R
9
、およびR
10
が、それぞれHであり;
R
6
が、-O-C
1~3
アルキル(例えば、-O-CH
3
)であり;
R
8
が、-OHであり;
Xが、-C(R
11
R
12
)-であり、
R
11
およびR
12
の一方がHであり、他方が、H、-C
1~3
アルキル、-C
1~3
アルキレン-ハロゲン、および-CF
3
からなる群より選択されるか;またはR
11
およびR
12
が、一緒になって=Oを形成し;あるいは
(d)
R
1
およびR
2
が、それぞれ独立してHまたは-C
1~4
アルキル(例えば、H)であり;
R
3
が、ハロゲン(例えば、Cl)であり;
R
4
、R
5
、R
7
、R
9
、およびR
10
が、それぞれHであり;
R
6
が、-OHであり;
R
8
が、-OHであり;
Xが、-C(R
11
R
12
)-であり、
R
11
およびR
12
の一方がHであり、他方が、H、-C
1~3
アルキル、-C
1~3
アルキレン-ハロゲン、および-CF
3
からなる群より選択されるか;またはR
11
およびR
12
が、一緒になって=Oを形成する、
項目1または6に記載の化合物(またはその薬学的に許容される塩、エステル、エノールエーテル、エノールエステル、溶媒和物もしくは水和物)。
(項目8)
NSC11150である、項目1、6または7のいずれか一項に記載の化合物(またはその薬学的に許容される塩、エステル、エノールエーテル、エノールエステル、溶媒和物もしくは水和物)。
(項目9)
細胞中のLy6Kタンパク質の活性を阻害する方法であって:
前記細胞と薬剤を、前記細胞中のLy6Kタンパク質の活性を阻害するのに有効な条件下で接触させることを含み、前記薬剤が、項目1~8のいずれか一項に記載の化合物(またはその薬学的に許容される塩、エステル、エノールエーテル、エノールエステル、溶媒和物もしくは水和物)である、方法。
(項目10)
前記薬剤が、項目2~5のいずれか一項に記載の化合物(またはその薬学的に許容される塩、エステル、エノールエーテル、エノールエステル、溶媒和物もしくは水和物)であり、前記阻害することが、前記細胞中のTGF-βΙシグナル伝達を阻害することおよび/または前記細胞中のSMAD2/3シグナル伝達を阻害することおよび/または前記細胞中のSMAD2/3リン酸化を阻害することを含む、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記薬剤が、項目6または7に記載の化合物(またはその薬学的に許容される塩、エステル、エノールエーテル、エノールエステル、溶媒和物もしくは水和物)であり、前記阻害することが、前記細胞中のPD-L1発現を阻害することおよび/または前記細胞中のIFNγシグナル伝達を阻害することおよび/または前記細胞中のStat1シグナル伝達を阻害することおよび/または前記細胞中のStat1リン酸化を阻害することを含む、項目9に記載の方法。
(項目12)
細胞の遊走、コロニー形成、および/または増殖を減少させる方法であって:
前記細胞と薬剤を、前記細胞の遊走、コロニー形成、および/または増殖を減少させるのに有効な条件下で接触させることを含み、前記薬剤が、項目1~8のいずれか一項に記載の化合物(またはその薬学的に許容される塩、エステル、エノールエーテル、エノールエステル、溶媒和物もしくは水和物)である、方法。
(項目13)
細胞中の遺伝子の発現をモジュレートする方法であって:
前記細胞と薬剤を、前記細胞中の遺伝子の発現をモジュレートするのに有効な条件下で接触させることを含み、前記薬剤が、項目1~8のいずれか一項に記載の化合物(またはその薬学的に許容される塩、エステル、エノールエーテル、エノールエステル、溶媒和物もしくは水和物)であり、前記遺伝子が、PD-L1、ABCC3、ABCG2、FGF-7、NANOG、PSCA、CD34、2EB1、E-カドヘリン、およびN-カドヘリンからなる群より選択される、方法。
(項目14)
前記細胞が、Ly6Kタンパク質を過剰発現する、項目9~13のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記細胞が、哺乳動物細胞である、項目9~14のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記細胞が、霊長類(例えば、ヒト、チンパンジー、オランウータン、アカゲザル、ゴリラ)細胞、またはげっ歯類(例えば、マウス、ラット)細胞である、項目9~15のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
前記細胞が、がん細胞である、項目9~16のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記細胞が、乳がん細胞、膀胱がん細胞、脳がん細胞、中枢神経系のがん細胞、腎がん細胞、肺がん細胞、卵巣がん細胞、胃がん細胞、結腸直腸がん細胞、子宮頸がん細胞、頭頸部がん細胞、食道がん細胞、および膵がん細胞からなる群より選択される、項目9~17のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記細胞が、乳がん細胞である、項目9~18のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記細胞が、トリプルネガティブ乳がん細胞、間葉系乳がん細胞、基底乳がん細胞、および/または免疫調節性乳がん細胞である、項目9~19のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
前記接触させることが、in vitroで行われる、項目9~20のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記接触させることが、ex vivoで行われる、項目9~20のいずれか一項に記載の方法。
(項目23)
前記接触させることが、in vivoで行われる、項目9~20のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記化合物が、式Iの化合物またはその塩である、項目9および12~23のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記化合物が、NSC243928である、項目9および12~24のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記化合物が、式IIの化合物である、項目9および12~23のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
前記化合物が、NSC11150である、項目9、12~23、および26のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
前記細胞と、(a)式Iの化合物(またはその薬学的に許容される塩、エステル、エノールエーテル、エノールエステル、溶媒和物もしくは水和物)またはその塩および(b)式IIの化合物(またはその薬学的に許容される塩、エステル、エノールエーテル、エノールエステル、溶媒和物もしくは水和物)を接触させることを含む、項目9および12~23のいずれか一項に記載の方法。
(項目29)
被験体におけるがんに対する免疫応答の抑制を低減する方法であって:
前記被験体におけるがんに対する免疫応答の抑制を低減するのに有効な条件下で、前記被験体に薬剤を投与することを含み、前記薬剤が、項目1~8のいずれか一項に記載の化合物(またはその薬学的に許容される塩、エステル、エノールエーテル、エノールエステル、溶媒和物もしくは水和物)である、方法。
(項目30)
被験体におけるがんの腫瘍化成長を減少させる方法であって:
前記被験体におけるがんの腫瘍化成長を減少させるのに有効な条件下で、前記被験体に薬剤を投与することを含み、前記薬剤が、項目1~8のいずれか一項に記載の化合物(またはその薬学的に許容される塩、エステル、エノールエーテル、エノールエステル、溶媒和物もしくは水和物)である、方法。
(項目31)
前記減少させることが、コロニー形成を低減すること、転移を低減すること、および/または細胞遊走を低減することを含む、項目30に記載の方法。
(項目32)
被験体において、Ly6Kタンパク質により媒介される障害を処置または防止する方法であって:
前記障害を処置または防止するのに有効な条件下で、前記被験体に薬剤を投与することを含み、前記薬剤は、項目1~8のいずれか一項に記載の化合物(またはその薬学的に許容される塩、エステル、エノールエーテル、エノールエステル、溶媒和物もしくは水和物)である、方法。
(項目33)
前記障害が、Ly6Kタンパク質の過剰発現により媒介される、項目32に記載の方法。
(項目34)
前記処置または防止することが、前記被験体における腫瘍成長を除去することおよび/または前記被験体における宿主保護的抗腫瘍免疫を誘導することを含む、項目32または33に記載の方法。
(項目35)
前記障害が、がんである、項目32~34のいずれか一項に記載の方法。
(項目36)
前記がんが、乳がん、膀胱がん、脳がん、中枢神経系のがん、腎がん、肺がん、卵巣がん、胃がん、結腸直腸がん、子宮頸がん、頭頸部がん、食道がん、および膵がんからなる群より選択される、項目29~31および35のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
前記がんが、乳がんである、項目29~31、35、および36のいずれか一項に記載の方法。
(項目38)
前記がんが、トリプルネガティブ乳がん、間葉系乳がん、基底乳がん、および/または免疫調節性乳がんである、項目29~31および35~37のいずれか一項に記載の方法。
(項目39)
前記被験体が、哺乳動物被験体である、項目29~38のいずれか一項に記載の方法。
(項目40)
前記被験体が、霊長類(例えば、ヒト、Pan sp.(例えば、チンパンジー)、Pongo sp.(例えば、オランウータン)、Macaca sp.(例えば、アカゲザル)、Gorilla sp.)またはげっ歯類(例えば、Mus sp.(例えば、マウス)、Rattus sp.(ラット))である、項目29~39のいずれか一項に記載の方法。
(項目41)
前記被験体が、女性である、項目29~40のいずれか一項に記載の方法。
(項目42)
前記被験体が、男性である、項目29~40のいずれか一項に記載の方法。
(項目43)
前記男性が、精管切除されたかまたは生殖不能である、項目29~40および42のいずれか一項に記載の方法。
(項目44)
前記化合物が、式Iの化合物またはその塩である、項目29~43のいずれか一項に記載の方法。
(項目45)
前記化合物が、NSC243928である、項目29~44のいずれか一項に記載の方法。
(項目46)
前記化合物が、式IIの化合物である、項目29~43のいずれか一項に記載の方法。
(項目47)
前記化合物が、NSC11150である、項目29~43および46のいずれか一項に記載の方法。
(項目48)
前記被験体に、式Iの化合物(またはその薬学的に許容される塩、エステル、エノールエーテル、エノールエステル、溶媒和物もしくは水和物)および式IIの化合物(またはその薬学的に許容される塩、エステル、エノールエーテル、エノールエステル、溶媒和物もしくは水和物)を投与することを含む、項目29~43のいずれか一項に記載の方法。