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特許7244531導体要素用モールドを用いたプリント回路基板の製造方法
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  • 特許-導体要素用モールドを用いたプリント回路基板の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】導体要素用モールドを用いたプリント回路基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/20 20060101AFI20230314BHJP
   H05K 3/46 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
H05K3/20 Z
H05K3/46 N
H05K3/46 G
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020548764
(86)(22)【出願日】2019-03-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2019055991
(87)【国際公開番号】W WO2019175090
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-11-05
(31)【優先権主張番号】102018203715.9
(32)【優先日】2018-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】202018106030.9
(32)【優先日】2018-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】507248321
【氏名又は名称】ユマテック ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【弁理士】
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100218604
【弁理士】
【氏名又は名称】池本 理絵
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルフェル,マルクス
【審査官】柴垣 宙央
(56)【参考文献】
【文献】特公昭50-034224(JP,B1)
【文献】特表2016-540379(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/20
H05K 3/46
H01C 1/028
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント回路基板(1)の接続ポイント(1d)間に延びる少なくとも1つの導体要素(2)を含むプリント回路基板(1)を以下の順序で製造する方法であって、
a.ステップA:導体要素(2)のための少なくとも1つのレセプタクル(3c)を有するモールド(3)を提供し、
b.ステップB:前記モールド(3)の前記レセプタクル(3c)内に導体要素(2)を配置し、
c.ステップC:前記モールド(3)の前記レセプタクル(3c)に配置された前記導体要素(2)を、予定する前記接続ポイント(1d)の位置で導電性シート状要素(5)に接続し、
d.ステップD:前記導体要素(2)を前記モールド(3)から取り外し、前記導電性シート状要素(5)に接続された前記導体要素(2)を絶縁体(4,7)に埋め込み、
e.ステップE:前記導電性シート状要素(5)から前記接続ポイント(1d)を形成する
ステップを含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
ステップAが、
a.サブステップA1:平面状の第1の面(3a)と、導体要素(2)のための少なくとも1つのレセプタクル(3c)とを有するモールド(3)を提供し、前記レセプタクル(3c)は、前記モールド(3)の前記第1の面(3a)に向かって開口しており、
b.サブステップA2:前記モールド(3)の前記第1の面(3a)が、少なくとも部分的にまたは完全に、水平面内に延びるように前記モールド(3)を配置する
サブステップのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、
ステップBが、
a.サブステップB1:少なくとも2つの接続部(2c)を有する導体要素(2)を提供し、
b.サブステップB2:前記モールド(3)が延びる平面に対して相対的に、前記レセプタクル(3c)内に収容されるように、前記導体要素(2)を前記レセプタクル(3c)内に配置し、
c.サブステップB3:前記接続部(2c)を備えた前記導体要素(2)の第1の面(2a)が前記モールド(3)の第1の面(3a)と面一であり、前記接続部(2c)が前記モールド(3)の前記第1の面(3a)を超えて突出するように、前記導体要素(2)を前記レセプタクル(3c)内に配置し、
d.サブステップB4:絶縁体(4)を前記モールド(3)の前記第1の面(3a)に配置する
サブステップのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の方法であって、
ステップCが、
a.サブステップC0:前記モールド(3)の前記レセプタクル(3c)内に配置された前記導体要素(2)を、非導電性の材料からなる少なくとも1つの接続部(2c)を介して、前記導電性シート状要素(5)に接続し、
b.サブステップC1:導電性シート状要素(5)を、前記モールド(3)の第1の面(3a)上に配置し、
c.サブステップC2:前記導体要素(2)と前記導電性シート状要素(5)との間の導電性接続を確立するために使用される接続工具の第1の電極(6a)を、前記モールド(3)の前記第1の面(3a)に配置し、
d.サブステップC3:前記導体要素(2)と前記導電性シート状要素(5)との間の導電性接続を確立するために使用される前記接続工具の第2の電極(6b)を、前記モールド(3)の第2の面(3b)に配置し、
e.サブステップC4:前記第1の電極(6a)と前記第2の電極(6b)との間に接触圧を加え、
f.サブステップC5:前記第1の電極(6a)と前記第2の電極(6b)との間に電流を流し、
g.サブステップC6:必要な作用温度に達するまで前記接続部(2c)を加熱して、拡散により、または固相で、前記接続部(2c)の材料を溶融および固化させることにより、前記導体要素(2)と前記導電性シート状要素(5)とが前記接続部(2c)を介して不可分に接続されるようにし、
h.サブステップC7:前記導電性シート状要素(5)の第1の面(5a)から前記第1の電極(6a)を取り外し、
i.サブステップC8:前記導体要素(2)の第2の面(2b)から前記第2の電極(6b)を取り外し、前記第2の電極(6b)を前記モールド(3)の開口部(3d)から取り外し、
j.サブステップC9:少なくとも1つの基準ポイントを前記導電性シート状要素(5)に配置する
サブステップのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の方法であって、
ステップDが、
a.サブステップD1:前記導電性シート状要素(5)の第2の面(5b)に絶縁体(4,7)を配置し、前記第2の面は前記導体要素(2)に接続されており、
b.サブステップD2:前記導電性シート状要素(5)の方向で前記絶縁体(7)に圧力を加え、熱を加えることにより、前記絶縁体(7)が前記導体要素(2)の輪郭に適応し、
c.サブステップD3:前記導電性シート状要素(5)とは反対側の前記絶縁体(4,7)を、前記プリント回路基板(1)の平面的な下面(1b)を形成するように平滑化し、
d.サブステップD4:前記絶縁体(4,7)を硬化させる
サブステップのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の方法であって、
ステップEが、
a.サブステップE0:前記導体要素(2)と前記導電性シート状要素(5)とを少なくとも電気的に接続する少なくとも1つの接触ポイント(1fおよび1g)を配置し、
b.サブステップE1:前記導電性シート状要素(5)の周囲の部分を局所的に除去することによって、前記接続ポイント(1d)を形成し、
c.サブステップE2:前記導電性シート状要素(5)の周囲の部分を局所的に除去することによって、導体経路(1e)を形成する
サブステップのうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、方法。
【請求項7】
リント回路基板(1)を製造するためのモールド(3)であって、前記モールド(3)の第1の面(3a)に設けられた導体要素(2)のための少なくとも1つのレセプタクル(3c)と、前記モールド(3)の第2の面(3b)に設けられた少なくとも1つの開口部(3d)とを含み、前記開口部(3d)は、前記レセプタクル(3c)と接続し、接続工具(6b)を挿入するために使用される、モールド。
【請求項8】
リント回路基板(1)を製造するためのキットであって、請求項に記載のモールドと、レセプタクル(3c)内に配置されるように適合された少なくとも1つの導体要素(2)と、開口部(3d)内に挿入されるように適合された少なくとも1つの接続工具(6b)とを含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント回路基板の接続ポイント間に延びる少なくとも1つの導体要素を含むプリント回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
このタイプの方法の1つは、欧州特許出願公開第1842402号明細書により知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】欧州特許出願公開第1842402号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
既知の方法では、導線を銅箔に溶接し、絶縁体でプレスする。
今日の製造精度の需要を考慮すると、導体要素および接続ポイントの位置および向きを正確に測定する必要がある。特に、量産工程で問題のタイプのプリント回路基板を生産する場合、測定を繰り返すことで生産工程が遅れ、生産性が低下してしまう。
【0005】
これらの考察を基礎として、本発明の目的は、既知の方法の生産性を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、請求項1に記載の方法によって達成される。
プリント回路基板の接続ポイント間に延びる少なくとも1つの導体要素を含むプリント回路基板を製造するための本明細書に開示された方法は、以下のステップを含む。
- ステップA:導体要素のための少なくとも1つのレセプタクルを有するモールドを提供する。
- ステップB:前記モールドの前記レセプタクル内に導体要素を配置する。
- ステップC:前記モールドの前記レセプタクルに配置された前記導体要素を、予定する前記接続ポイントの位置で導電性シート状要素に接続する。
- ステップD:前記導電性シート状要素に接続された前記導体要素を絶縁体に埋め込む。
- ステップE:前記導電性シート状要素から前記接続ポイントを形成する。
【0007】
モールドを使用することで、モールド内でのレセプタクルの相互の位置および向きが正確に規定されるため、複数の導体要素の相対的な向きを正確に決定することができる。従来の方法とは異なり、導電性シート状要素への接続のために個々の導体要素を個別に測定する必要はなく、提供されたそれぞれのレセプタクルにそれらを配置することで十分である。そして、導電性シート状要素をモールドに対して相対的に固定するだけでよいので、導電性シート状要素に対して、すべての導体要素および接続ポイントの位置も正確に規定される。導体要素と導電性シート状要素との接続は、導体要素がモールド内に配置された状態で確立されているため、導体要素の相互の移動は不可能である。導体要素と導電性シート状要素との間の接続を確立するための個々の測定手順が不要であるという事実により、接続ポイント間に延びる少なくとも1つの導体要素を含むプリント回路基板を製造するための方法の生産性を大幅に向上させることができる。
【0008】
ステップAが以下のサブステップのうちの少なくとも1つを含む場合に有利であり得る。
- サブステップA1:好ましくは平面状の第1の面と、導体要素のための少なくとも1つのレセプタクルとを有するモールドを提供し、前記レセプタクルは、前記モールドの前記第1の面に向かって開口している。
- サブステップA2:前記モールドの前記第1の面が、少なくとも部分的にまたは完全に、水平面内に延びるように前記モールドを配置する。
【0009】
サブステップA1/A2におけるモールドの水平方向への配置により、モールドのレセプタクル内での導体要素の位置決めと、後続の処理ステップとが容易になる。
【0010】
また一方で、ステップBが以下のサブステップのうちの少なくとも1つを構成する場合にも意味をなし得る。
- サブステップB1:少なくとも2つの接続部を有する導体要素であって、当該接続部が好ましくは前記導体要素の同じ面および/または異なる端部に配置されるおよび/または取り付けられている、導体要素を提供する。
- サブステップB2:前記モールドが延びる平面に対して相対的に、前記導体要素が好ましくは形状に適合した方法でおよび/または遊びがなく前記レセプタクル内に収容されるように、前記導体要素を前記レセプタクル内に配置し、前記導体要素は好ましくは前記モールドが延びる平面に対して平行に配向されるようにする。
- サブステップB3:前記接続部を備えた前記導体要素の面が前記モールドの前記第1の面と面一であり、前記接続部が前記モールドの前記第1の面を超えて突出するように、前記導体要素を前記レセプタクル内に配置する。
- サブステップB4:絶縁体、好ましくは絶縁体シート状要素であって、好ましくは前記接続部の位置および場合によっては形状に適合した開口部を有する絶縁体シート状要素を、前記絶縁体シート状要素の第2の面が前記モールドの前記第1の面および前記モールドの前記レセプタクル内に収容された前記導体要素の前記第1の面に面するように、前記モールドの前記第1の面に配置し、特に好ましくは前記接続部の上面が前記絶縁体シート状要素の第1の面と面一になるようにする。
【0011】
サブステップB1は、導体要素と導電性シート状要素との接続を容易にする。特に、接続部が取り付けられる導体要素の面が平面である場合に有用であることが判明した。これは、例えば、導体要素が、一例としてコイルから取り出され、適切な長さに切断された矩形の導線である場合に達成することができる。コイルの元々のうねりのため、矩形の導線が直線に沿って正確に伸びない場合がある。両端に引張力を加えることで、導体要素を真っ直ぐにすることができる。また、導体要素を真っ直ぐにするための他の技術を使用してもよい。
【0012】
接続部は、例えば銀の板状体、または導体要素と導電性シート状要素との間に永続的な導電性接続を確立することができる他の適切な接続部材である。あるいは、接続部はまた、導体要素と導電性シート状要素との間に永久的で純粋に機械的な接続を確立することができる、非導電性の接続部材から構成されてもよい。この目的のために、接続材は溶接可能であり得る。
【0013】
接続部が適用されたとき、導体要素は、適切な長さに引き出され、好ましくはモールド内のそれぞれのレセプタクルに正確に適合する適切な形状を与えられることができる。
【0014】
サブステップB2では、導体要素がそれぞれのレセプタクル内で移動することが防止されるため、モールドが延びる平面内での導体要素の相対的な位置および向きを相互に固定することに関して有利である。
【0015】
サブステップB3では、導体要素は、モールドが延びる平面に垂直な方向にも配置され得る。
【0016】
サブステップB4では、導体要素を絶縁体に完全に埋め込むのに有用であることが証明されている。従来の方法では、導体要素と導電性シート状要素が接続された後、絶縁体を隙間に押し込む必要があるという問題点があった。導体要素と導電性シート状要素との間の接続が確立されている場合、この隙間にアクセスすることは困難である。サブステップB4において、例えば、既成の開口部を有するプリプレグマットは、その下側がモールドの上面と導体要素の上面に面するように接続部の位置に配置されてもよく、一方、接続部はプリプレグマットの上面と面一になるように配置されてもよい。この場合、プリプレグマットの各開口部は、形状を規定しており、その後の溶接工程において、そこに収容された接続部の材料が妨げられずに広がることを防止する。したがって、予定する接続ポイントの位置以外での導体要素と導電性シート状要素との意図しない接触をさらに防止することができる。好ましくは、既成の絶縁体シート状要素が使用され、その結果、絶縁体シート状要素を個別に適合させる必要がなく、方法の生産性をさらに向上させることができる。開口部は、例えば、マスクを使用して打ち抜いてもよい。
【0017】
また一方で、ステップCが以下のサブステップのうちの少なくとも1つを構成する場合にも有用である。
- サブステップC0:前記モールドの前記レセプタクル内に配置された前記導体要素を、非導電性の、好ましくは溶接可能な材料からなる少なくとも1つの接続部を介して、好ましくは圧接によって、前記導電性シート状要素に接続する。
- サブステップC1:導電性シート状要素を、前記モールドの前記第1の面、好ましくは前記絶縁体シート状要素の前記第1の面上に配置し、より好ましくは、前記導電性シート状要素が前記絶縁体シート状要素の前記第1の面および/または前記接続部に面するように配置する。
- サブステップC2:前記導体要素と前記導電性シート状要素との間の導電性接続を確立するために使用される接続工具の第1の電極を、好ましくは、前記第1の電極が前記導電性シート状要素の前記第1の面に接触するように、前記モールドの前記第1の面に配置する。
- サブステップC3:前記導体要素と前記導電性シート状要素との間の導電性接続を確立するために使用される前記接続工具の第2の電極を、好ましくは、前記第2の電極が前記モールド内の開口部を貫通し、前記導体要素の第2の面と接触するように、前記モールドの第2の面に配置する。
- サブステップC4:前記第1の電極と前記第2の電極との間に接触圧を加える。
- サブステップC5:前記第1の電極と前記第2の電極との間に電流を流す。
- サブステップC6:必要な作用温度に達するまで前記接続部を加熱して、好ましくは、前記電極間の力の作用下で、拡散により、または固相で、好ましくは溶接により、前記接続部の材料を溶融および固化させることにより、前記導体要素と前記導電性シート状要素とが前記接続部を介して不可分に接続されるようにする。
- サブステップC7:前記導電性シート状要素の前記第1の面から前記第1の電極を取り外す。
- サブステップC8:前記第2の電極を前記導体要素の前記第2の面から取り外し、前記第2の電極を前記モールドの前記開口部から取り外す。
- サブステップC9:好ましくは、少なくとも1つの開口部を生成することによって、少なくとも1つの基準ポイントを前記導電性シート状要素に配置する。
【0018】
サブステップC0により、導体要素と導電性シート状要素との間に永久的で純粋に機械的な接続を確立することができる。
【0019】
サブステップC1は、プリント回路基板の平面的で均一な層構造に関して有利である。好ましくは、導電性シート状要素の既成のブランクが使用され、その結果、導電性シート状要素を個別に切断する必要がなく、方法の生産性をさらに向上させることができる。
【0020】
サブステップC2は、第2の電極によって後から加えられる接触圧に対して第1の電極の形態のカウンターベアリングを提供する。
【0021】
サブステップC3は、導体要素が導電性シート状要素に接続されることになる各接続部に対する第2の電極の正確な配置に関して有利である。
【0022】
サブステップC4~C8は、抵抗溶接によって導体要素と導電性シート状要素との間の接続を確立することに関して有利である。
【0023】
また一方で、ステップDが以下のサブステップのうちの少なくとも1つを構成する場合にも有用である。
- サブステップD1:前記導体要素を前記モールドから取り外す。
- サブステップD2:前記導電性シート状要素の前記第2の面に絶縁体を配置し、前記第2の面は前記導体要素に接続されており、好ましくは、前記導電性シート状要素の前記第2の面に配置された前記絶縁体シート状要素の前記第2の面に、好ましくは、塊として、または絶縁体シート状要素の形態で、特に好ましくは、前記絶縁体が、予定する前記接続ポイントの位置を除いて前記導体要素を完全に取り囲むように配置する。
- サブステップD3:前記導電性シート状要素の方向で前記絶縁体に圧力を加え、場合によっては熱を加えることにより、前記絶縁体が前記導体要素の輪郭に適応し、場合によっては既に存在する絶縁体に接続する。
- サブステップD4:前記導電性シート状要素とは反対側の前記絶縁体を、前記プリント回路基板の平面的な下面を形成するように平滑化する。
- サブステップD5:前記絶縁体を硬化させる。
【0024】
サブステップD1は、導体要素を、後続の絶縁体の配置のためにアクセス可能な状態にする。導体要素と導電性シート状要素との接続が確立された後、これらの要素の相対的な位置および向きが固定されるので、モールドはもはや必要ではなく、取り外すことができる。
【0025】
サブステップD2では、導体要素を絶縁体にほぼ完全に埋め込む。好ましくは、既成の絶縁体シート状要素を使用することで、絶縁体の個別の適用を省くことができ、方法の生産性をさらに向上させることができる。また、絶縁体シート状要素は、各導体要素に適した受容手段を有し得る。
【0026】
サブステップD3およびD4は、好ましくは、圧力および温度の影響下においてプレス機で行われる。
【0027】
ステップEが以下のサブステップのうちの少なくとも1つを構成する場合、有用であることが証明され得る。
- サブステップE0:前記導体要素と前記導電性シート状要素とを少なくとも電気的に接続する少なくとも1つの接触ポイントを配置する。
- サブステップE1:前記導電性シート状要素の周囲の部分を、好ましくはエッチングによって局所的に除去することによって、前記接続ポイントを形成する。
- サブステップE2:前記導電性シート状要素の周囲の部分を、好ましくはエッチングによって局所的に除去することによって、少なくとも1つの導体経路を形成する。
【0028】
- サブステップE0は、導体要素から導電性シート状要素への追加の電気的接続を可能にし、そこから、サブステップE1およびE2において導体パターンが生成され、および/または外部部品への追加の電気的接続を可能にする。したがって、接続ポイントは、純粋に機械的な接続として使用することができる。
【0029】
サブステップE1およびE2は、接続ポイント間に延びる導体要素に加えて、プリント回路基板の表面上に複雑な導体パターンを生成することを可能にする。好ましくは、接続ポイントおよび/または導体経路は、以前に作成された参照マーキングに基づいて作成される。
【0030】
本発明のさらなる態様は、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法によって製造されたプリント回路基板に関する。上述した利点が適用される。
【0031】
本発明のさらに別の態様は、プリント回路基板、好ましくは請求項7に記載のプリント回路基板、好ましくは請求項1から6のいずれか1項に記載の方法によるプリント回路基板を製造するためのモールドに関するものであり、前記モールドの第1の面に設けられた前記導体要素のための少なくとも1つのレセプタクルと、前記モールドの第2の面に設けられた少なくとも1つの開口部とを含み、前記開口部は、前記レセプタクルと接続し、接続工具を挿入するために使用される。上述した利点が適用される。
【0032】
本発明のさらなる態様は、プリント回路基板、好ましくは請求項7に記載のプリント回路基板、好ましくは請求項1から6のいずれか1項に記載の方法によるプリント回路基板を製造するためのキットに関するものであり、キットは、請求項8に記載のモールドと、レセプタクル内に配置されるように適合された少なくとも1つの導体要素と、開口部内に挿入されるように適合された少なくとも1つの接続工具とを含む。キットは、相互に適合し、プリント回路基板を製造するために使用される構成要素と工具を備えて構成される。
【0033】
用語および定義
モールド
本発明の意味の範囲内のモールドは、プリント回路基板を製造するために使用される補助具である。この目的のために、モールドは、導体要素のための少なくとも1つのレセプタクルを含む。
【0034】
モールドは、以下の特徴のうちの少なくとも1つを有し得る。
- モールドは、誘電体または電気絶縁体、例えば、エポキシ樹脂およびガラス繊維織物からなる複合材料で構成されている。
- モールドは板状に構成されている。
- モールドは、実質的に一平面内に延びている。
- モールドは、好ましくは平面である上面から構成されている。
- モールドは、好ましくは平面である下側から構成されている。
- モールドの上面および下面は互いに平行である。
- モールドの厚さは1~5mm、好ましくは1.5~3mm、より好ましくは2mmある。
- モールドは、多角形、好ましくは長方形または正方形の外形を有する。
- モールドのレセプタクルは、導体要素の外側の輪郭と一致する内側の輪郭を有している。
- モールドのレセプタクルは、導体要素の内側の輪郭と一致する外側の輪郭を有している。
- レセプタクルの深さは、導体要素の高さ/厚さに適合している。
- モールドには、導体要素ごとに別個のレセプタクルがある。
- レセプタクルは、モールドの第1の面からモールド内に延びている。
- レセプタクルは、好ましくはフライス加工によって、モールドの第1の面からモールドに組み込まれる。
- モールドの第1の面は、モールドの上面を規定する。
- レセプタクルの深さは、50~1000μmの範囲であり、好ましくは100~500μmの範囲であり、より好ましくは300~400μmの範囲であり、特に好ましくは350μmである。
- モールドは、通路として構成され、レセプタクルと接続する少なくとも1つの開口部を有し、この開口部は、モールドの第2の面から工具を挿入するために使用される。
- 通路は、モールドが延びる平面に対して実質的に垂直に延びている。
- 通路は、モールドの第2の面から各レセプタクル内に延びている。
- 各レセプタクルは、通路として構成された少なくとも1つの開口部、好ましくはそれぞれ通路として構成され、好ましくはレセプタクルの異なる端部に配置された2つの開口部と関連付けられている。
【0035】
プリント回路基板
本発明の意味の範囲内のプリント回路基板は、電子部品のキャリアである。プリント回路基板は、例えば、電子部品を機械的に固定したり、電気的に接続したりするために使用される。ほとんど全ての電子機器は、1つまたは複数のプリント回路基板を備えている。プリント回路基板は、回路基板、基板、またはプリント回路と呼ばれることもあり、英語でPrinted Circuit Board(PCB)として知られているものに対応する。
【0036】
プリント回路基板は、好ましくは、以下の特徴のうちの少なくとも1つを有する。
- プリント回路基板は、1層または複数の層、好ましくは複数の同一の層を含む。
- プリント回路基板は、EP1 842 402 A2に基づいたプリント回路基板である。
- プリント回路基板は、DE 10 2011 102 484 A1に基づいたプリント回路基板である。
- プリント回路基板は、DE 10 2013 223 143 A1に基づいたプリント回路基板である。
- プリント回路基板は、一平面内に延びている。
- プリント回路基板は上面と下面が平行になっている。
- プリント回路基板の上面には、少なくとも2つの接続ポイントが設けられている。
- プリント回路基板の上面には、少なくとも1つの導体経路が設けられている。
- プリント回路基板には、少なくとも1つの導体要素が埋め込まれており、導体要素は、接続ポイントを除いて絶縁体に埋め込まれている。
【0037】
導体要素
本発明の意味の範囲内の導体要素は、有線通信工学および有線高周波工学の分野において、電気エネルギーおよび/または熱を輸送するための物体および/または信号を伝送するための物体である。導体要素は、電気回路または電源システムの一部であってもよく、したがって、電源と消費者を接続し得る。輸送のために、電子は導体電流として導体要素を流れる。低電圧降下と低輸送損失をそれぞれ実現するためには、導体は高い導電性を有する必要があり、そのためにはいくつかの金属が特に適している。導体の断面積は、好ましくは、許容電流密度に対して構成されている。
【0038】
導体要素は、好ましくは、以下の特徴のうちの少なくとも1つを有する。
- 導体要素は導線であり、好ましくは断面が円形の丸線、または断面が矩形の角線であり、好ましくは、導線はその長さ全体にわたって断面が一定である。導体要素は、好ましくは、EP1 842 402 A2に基づいた導線である。
導体要素は、好ましくは、DE 10 2011 102 484 A1に基づいた成形部材である。成形部材は、例えば以下の特徴を有し得る:
o 成形部材は、実質的に一平面内に延びている。
o 成形部材は金属製であり、好ましくは銅製である。
o 成形部材は、少なくとも部分的に凹状の外形、および/または、少なくとも部分的に凸状の外形を含む。
o 成形部材は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、プリント回路基板に埋め込まれている。
o プリント回路基板の上面と成形部材の上面は、実質的に相互に平行になるように設置されている。
o 成形部材は、好ましくは、パンチング、エロージョン、切断、より好ましくはウォータージェット切断によって、板状のワークピースから分離される。
o 成形部材は、10から2000μmの範囲、好ましくは100から1000μmの範囲、より好ましくは200から500μmの範囲の厚さを有する。
o 成形部材の長さおよび/または幅は、成形部材の厚さおよび/またはプリント回路基板の厚さの少なくとも5倍、好ましくは少なくとも10倍、より好ましくは少なくとも20倍、さらに好ましくは少なくとも50倍、最も好ましくは少なくとも100倍である。
o 成形部材は、実質的に矩形の断面を有する。
o 成形部材の断面形状は、成形部材の幅および/または長さ全体にわたって一定ではない。
o 成形部材の厚さは、その全領域にわたって一定である。
o 成形部材は、1つ、2つ、3つまたはそれ以上の湾曲面で湾曲している。
o 成形部材は、絶縁体から少なくとも部分的に突出している。
o 成形部材は、押出加工では製造できない、または製造されない。
o 成形部材は、少なくとも1つの凹部を含み、これは、成形部材の1つの端面から開始して成形部材に組み込まれる。当該凹部は、好ましくは、少なくとも部分的に、絶縁体で満たされている。
o 成形部材は、成形部材の上面、下面または端面から部分的に成形部材内に延びる少なくとも1つの開口部を含み、開口部は、好ましくは、少なくともその口の領域において、円形、楕円形、多角形、好ましくは三角形、四角形、五角形、より好ましくは長方形または正方形の輪郭を有し、開口部は、好ましくは、実質的に溝形状であり、直線または曲線に沿って連続的または非連続的に延びており、この直線は、特に好ましくは、少なくとも部分的に、成形部材の端面に平行に延びており、開口部は、特に好ましくは、少なくとも部分的に、絶縁体で満たされている。
o 成形部材は、成形部材を横方向に、好ましくは垂直方向に、成形部材の上面、下面または端面に延びる少なくとも1つの開口部を含み、開口部は、好ましくは、円形、楕円形、多角形、より好ましくは三角形、四角形、五角形、長方形または正方形の輪郭を有し、開口部は、好ましくは、実質的にスロット形状であり、直線または曲線に沿って連続的または非連続的に延びており、この直線は、特に好ましくは、少なくとも部分的に、成形部材の端面に平行に延びており、開口部は、特に好ましくは、少なくとも部分的に、絶縁体で満たされている。
o 成形部材は、原則的にL型、T型、H型、S型、O型、E型、F型、X型、Y型、Z型、C型、U型またはΩ型である。
o 複数の成形部材は、同一平面内に、または異なる平面内に、好ましくは回路基板内の平行な複数の平面内に配置されている。
【0039】
- 導体要素は抵抗器であり、好ましくは精密抵抗器であり、より好ましくはDE 10 2013 223 143 A1に基づいた精密抵抗器である。精密抵抗器は、以下の特徴を有し得る:
o 精密抵抗器の抵抗値は、0.1~300mOhmの範囲、好ましくは1~100mOhmの範囲である。
o 精密抵抗器の変動は、±5%以下、好ましくは±2%以下、より好ましくは±1%以下である。
o 20~60℃の温度範囲における精密抵抗器の電気抵抗の温度係数は、0.1ppm/K~200ppm/Kの範囲であり、好ましくは0.5ppm/K~100ppm/Kの範囲であり、より好ましくは1ppm/K~50ppm/Kの範囲である。
o 精密抵抗器は金属からなり、好ましくは、銅(Cu)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、スズ(Sn)のうちの少なくとも1つの元素であり、より好ましくは、銅(Cu)、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、スズ(Sn)のうちの少なくとも1つの元素を含む合金からなり、例えば、マンガニン、ゼラニンまたはイサオームである。
- 導体要素は接続ポイントに接触する。
- 導体要素は、接続ポイントの少なくとも1つに、好ましくはすべての接続ポイントに、導電性および/または機械的方法で接続されている。
- 導体要素は、接続ポイントに溶接されている。
- 導体要素は、少なくとも大部分、好ましくは完全に、プリント回路基板に埋め込まれている。
- 導体要素の上面および/または下面および/または少なくとも1つの端面、好ましくは導体要素のすべての端面は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、絶縁体で覆われている。
- 導体要素の上面および/または下面および/または少なくとも1つの端面は、少なくとも部分的に、好ましくは完全に、隣接する絶縁体の層の上面および/または下面および/または少なくとも1つの端面と面一になるように延びている。
- プリント回路基板および導体要素の上面および/または下面および/またはそれぞれの端面の少なくとも1つは、相互に平行に配置されている。
- 導体要素および導電性シート状要素の上面および/または下面および/またはそれぞれの端面の少なくとも1つは、相互に平行に配置されている。
- 導体要素は、押出工程で製造可能であるか、または製造される。
- 導体要素はフラットワイヤとして構成される。
- 導体要素は、実質的に一平面内に延びている。
- 導体要素は、矩形の断面を有し、好ましくは、より大きな寸法を有する断面の側面は、プリント回路基板の表面に向けられている。
- 導体要素は、10~2000μmの範囲、好ましくは50~1000μmの範囲、より好ましくは100~500μmの範囲の厚さを有する。
- 導体要素は、導電体を含むか、または導電体からなる。
- 導体要素は、複合材料またはハイブリッド材料を含むか、または複合材料またはハイブリッド材料からなり、この材料の一方の部分が導電性で他方の部分が電気絶縁性である。
- 導体要素は金属、好ましくは銅を含むか、または金属、好ましくは銅からなる。
- 導体要素は、少なくとも1つの接続部を含み、好ましくは、導体要素とは異なる材料、好ましくは硬質はんだ、特に好ましくは銀からなる。接続部は、好ましくは、物質対物質結合、例えば溶接によって、導体要素に接続される。接続部は、例えば板状体の形態で構成される。
- 導体要素は、絶縁体との接続性を向上させるために、接着剤を含む。
- 導体要素は、絶縁体との接続性を向上させるために、粗面化された表面を含み、好ましくは、当該表面は以下の特徴を有する:
o 導体要素の表面は、導体要素が絶縁体と接触する前に、好ましくはステップBの前および/またはステップCの前に、少なくとも部分的に粗面化される。
o 導体要素の表面は化学エッチングによって粗くされ、化学エッチングは、好ましくは、導体要素の材料をエッチングする液体に導体要素を浸すか、またはそのような液体を導体要素にスプレーすることによって実施される。
o 導体要素の表面は、機械的処理、例えばサンドブラスト、または当該表面に高圧で軽石粉や石英粉を吹き付けることによって粗面化される。
【0040】
絶縁体
本発明の意味の範囲内の絶縁体とは、非導電体、すなわち、極めて低い、したがって無視できるほどの電気伝導性しか有さない材料のことである。絶縁体は、電気工学において、充電部への電流の流れを制限するために使用される。絶縁体は、好ましくは可塑性または流動性のある状態で適用され、目的の形状をとった後に硬化される。絶縁体は、例として、塊として、またはプリプレグマットとして適用することができる。プリプレグマットは、内部凝集力を提供し、既存の基本構造を既に提供している布の層で構成され、布の層は、流動性または可塑性の樹脂で含浸されており、形状の適応を可能にする。
【0041】
導電性シート状要素または箔
本発明の意味の範囲内の導電性シート状要素は、導電体からなるシートなどの平面要素である。
【0042】
導電性シート状要素は、好ましくは、以下の特徴のうちの少なくとも1つを有する。
- 導電性シート状要素は、導電体を含むか、または導電体からなる。
- 導電性シート状要素は、金属、好ましくは銅を含むか、または金属、好ましくは銅からなる。
- 導電性シート状要素は、箔として構成されている。
- 導電性シート状要素の厚さは、10から1000μmの範囲、好ましくは15から200μmの範囲であり、より好ましくは18から105μmの範囲であり、特に好ましくは35μmである。
【0043】
本発明の他の好ましいさらなる発展は、本明細書に開示された特徴の組み合わせから生じる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
図1】(a)は、導体要素を配置するための複数のレセプタクルを含むモールドの斜視図であり、(b)は、1つのレセプタクルを縦断面で示し、1つのレセプタクルをそれぞれの通路の開口部を通る横断面で示した概略的な断面図である。
図2】表面のそれぞれの端部に対応する接続部を有する導体要素の斜視図であり、導体要素は、矩形の断面積を有する導線として構成されている。
図3】(a)は、図1(b)に示すモールドの概略的な断面図である。(b)は、図1bおよび3aに示されたモールドと、図2に示された2つの導体要素からなる配置を概略的な断面図で示しており、導体要素は、それぞれ、縦断面および横断面で示されたモールドのレセプタクル内に配置されており、導体要素の上面がモールドの上面と面一になり、導体要素の上面を越えて突出した接続部がモールドの上面を越えて突出するように配置されている。(c)は、図3bに従った配置を示しており、接続部が突出するモールドの上側には、接続部の位置および形状に適合した複数の開口部を含むプリプレグマットの形態の絶縁体シート状要素が配置されており、接続部の上側が絶縁体シート状要素の上側と一平面内で面一になるように配置されている。(d)は、図3cに従った配置を示しており、一平面内で接続部の上面と面一に配置された絶縁体シート状要素の上面に、導電性シート状要素が追加的に配置されている。(e)は、図3dに従った配置を示しており、接続される導体要素の各接続部は、モールドの異なる側にある導体要素と導電性シート状要素との間に導電性接続を確立するための2つのそれぞれの接触電極をその上に配置しており、下面に設けられたそれぞれの接触電極は、通路として構成され、モールドの下面に設けられた開口部を通って、それぞれのレセプタクル内に収容された導体要素まで延びており、それによって、当該接触電極が接続されるべき導体要素に直接接触できるようになっている。
図4】本発明によって開示された方法に従って製造されたプリント回路基板を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は概略的な断面図である。
図5】本発明によるプリント回路基板の製造に用いられる方法のフローチャートである。
図6】本発明によって開示された方法に従って製造されたプリント回路基板のさらなる実施形態を示す図であり、(a)は斜視図、(b)は概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
以下、本発明の好ましい第1実施形態について、同封した図1図5を参照して詳細に説明する。
【0046】
プリント回路基板1を製造するためのモールド3が、図1の(a)に示す斜視図に示されている。モールドは、矩形の導線として構成された合計6つの導体要素2のための合計6つのレセプタクル3cを含む。各レセプタクル3cは、実質的に長方形の形状をした空洞を含み、この空洞は、モールド3の第1の面3aに向かって開口しており、この面を上面と呼ぶことにする。下面と呼ばれるモールドの第2の面3bから始まって、それぞれの通路として構成された2つの開口部3dが、それぞれのレセプタクル3cの中に延びている。モールド3の第1および第2の面3a,3bは、互いに反対側を向き、平行な平面内に延びている。モールド3は、異なる構成の導体要素2のための異なるレセプタクル3cを有し得る。これらの異なるレセプタクル3cは、モールド3の異なる面3a,3bに配置され得る。モールド3は、例えば電気的に絶縁性の材料、例えばFR4(エポキシ樹脂とガラス繊維織物からなる複合基板)で作られている。レセプタクル3cは、例えば、モールド3の第1の面3aからフライス加工により製造される。通路として構成される開口部3dは、好ましくは、レセプタクル3cが形成されたときに、例えば穴あけ加工によって製造される。
【0047】
図1の(b)は、本発明による方法を説明するための、プリント回路基板1を製造するためのモールド3の概略的かつ簡略化された断面図である。このモールド3は、モールド3の異なる端部に沿って延びる2つのレセプタクル3cのみを含み、端部は互いに垂直に配置されている。レセプタクル3cがどのようにしてモールドの第1の面3aに向かって開き、通路として構成された開口部3dがどのようにしてモールド3の第2の面3bからそれぞれのレセプタクル3cで終端するかを見ることができる。開口部3dは、モールド3の第2の面3bに向かって漏斗状に広がっていてもよく、これにより、工具6bをより容易に挿入することができる。
【0048】
図2は、断面積が矩形の平行六面体の導線2として構成され、図1に示したモールドの各レセプタクル3cに適合するように構成された導体要素2を斜視図で示している。平行六面体の導体要素2の2つの最も大きな表面は、導体要素2の上面2aと下面2bを規定している。長方形または板状の接続部2cは、導体要素2の上面2aの両端の端部に、例えば溶接されて配置される。レセプタクル3c内に収容された状態では、導体要素2の上面2aは、モールド3の上面3aと一平面内に延びていてそれと面一であり、接続部2cは、モールド3の上面3aを超えて突出している。図2の表現から外れ、導体要素2は、異なる形状を有していてもよい。特に、導体要素2は、例えば、成形部材、丸線、または精密抵抗器であってもよい。この場合、レセプタクル3cは、通常、それに応じて適合させる必要がある。
【0049】
プリント回路基板1の接続ポイント1dの間に延びる少なくとも1つの導体要素2を含むプリント回路基板1を製造するために使用される本発明による方法であって、以下、特に図3を参照して説明すると、以下のステップを含む。
【0050】
ステップA:導体要素2のための少なくとも1つのレセプタクル3cを有するモールド3を提供する。
【0051】
サブステップA1は、図1(b)に示すモールド3を提供することを含む。
【0052】
図3(b)に示すように、モールド3は、モールド3の上面(第1の面)3aが水平面内に延びるように配置されている(サブステップA2)。
【0053】
ステップB:モールド3のレセプタクル3cに導体要素2を配置する。
【0054】
サブステップB1は、導体要素2を提供することを含む。本実施形態では、図2に示すように、各導体要素2は、それぞれの端部において上面に配置された接続部2cを有する平行六面体の導線2として構成されている。
【0055】
図3(b)に示すように、各導体要素2は、モールド3が延びる平面に対して平行に配置され、モールド3が延びる平面に対して遊びなく、ほぼフォームフィットした状態でレセプタクル3c内に収容されるように、レセプタクル3c内に配置されている(サブステップB2)。
【0056】
その後、各導体要素2は、接続部2cを備えた導体要素2の面2aがモールド3の上面(第1の面)3aと実質的に面一になり、接続部2cのみがモールド3の上面(第1の面)3aを越えて突出するように、それぞれのレセプタクル3cに挿入される(サブステップB3)。
【0057】
図3(c)に示すように、接続部2cの位置および場合によっては形状に適合した開口部4cを有する絶縁体シート状要素4が、例えば開口部を備えたプリプレグマットの形態で、モールド3の第1の面3a上に配置されてもよい。このようにして、接続部2cを除いた各導体要素は、絶縁体で完全に覆われ、したがって、周囲から完全に電気的に切り離され得る。絶縁体シート状要素4の下面(第2の面)4bは、好ましくは、モールド3の上面(第1の面)3a上に、また、モールド3のレセプタクル3c内に収容された導体要素2の上面(第1の面)2a上に、好ましくは面するように配置されており、接続部2cの上面は、絶縁体シート状要素4の上面(第1の面)4aと面一になっている(サブステップB4)。
【0058】
ステップC:モールド3のレセプタクル3c内に配置された導体要素2を、予定する接続ポイント1dの位置で導電性シート状要素5に接続する。
【0059】
まず、モールド3の上面(第1の面)3aに、例えば銅箔の形態の導電性シート状要素5を配置し、絶縁体シート状要素4の上面(第1の面)4aおよびこれと面一である接続部2cを完全に覆うようにする(サブステップC1)。このように、導電性シート状要素5を絶縁体シート状要素4の上面(第1の面)4aに押し当てることにより、空気の混入をなくすことができる。
【0060】
その後、導体要素2と導電性シート状要素5との間の導電性接続は、予定する接続ポイント1dの位置で接続部2cを介して確立される。これは、例えば、溶接、特に抵抗溶接、超音波溶接、またはろう付けなどによって行われる。
【0061】
例示的に説明された抵抗溶接工程において、抵抗溶接工具の第1の電極6aは、第1の電極の6aが導電性シート状要素5の上面(第1の面)5aに接触するように、モールド3の上面(第1の面)3a上に配置される。第1の電極6aの位置は、ここでは、予定する接続ポイント1dの位置と、接続部2cの位置とにそれぞれ適合される(サブステップC2)。
【0062】
その後、第2の電極6bがモールド3の下面(第2の面)3bの開口部3dを貫通して導体要素2の第2の面2bに接触するように、モールド3の下面(第2の面)3bに接続工具の第2の電極6bを配置する(サブステップC3)。
【0063】
これに続いて、第1の電極6aと第2の電極6bとの間に接触圧を加え(サブステップC4)、その間に電流を流し(サブステップC5)、その電流により各接続部2cを加熱する。ここで、各接続部2cは、必要な作業温度に達するまで加熱され、それにより、導体要素2と導電性シート状要素5とが、力の作用下で接続部2cを介して溶接し、拡散または固相で接続部2cの材料を溶融/固化させることにより、不可分に接続される(サブステップC6)。
【0064】
その後、電極6a,6bが除去される(サブステップC7,C8)。
【0065】
ステップD:導電性シート状要素5に接続された導体要素2を絶縁体4,7に埋め込む。
【0066】
まず、導体要素2をモールド3から取り出す(サブステップ(D1))。
【0067】
これに続いて、絶縁体7が、成形可能な状態で、プリプレグマット等の絶縁体シート状要素7の形態で、導電性シート状要素5の下面(第2の面)5b上に配置され、この下面が導体要素2に接続されている。その際、絶縁体7は、好ましくは、導電性シート状要素5の下面(第2の面)5b上に既に配置されている絶縁体シート状要素4の下面(第2の面)4bに接続されている。ただし、絶縁体7は、流動性のある塊として塗布されていてもよい。好ましくは、絶縁体7は、予定する接続ポイント1cの位置を除いて、導体要素2を完全に取り囲むように配置され(サブステップD2)、それにより、導体要素2をほぼ完全に埋め込む。
【0068】
導電性シート状要素5の方向で絶縁体4,7へ圧力および場合によっては熱を任意に加えることにより、絶縁体4,7が導体要素2をその輪郭に近いところで取り囲むようにすることができる(サブステップD3)。導体要素2と導電性シート状要素5との間に絶縁体シート状要素4が既に存在している場合には、後に適用される絶縁体シート状要素7へ圧力および場合によっては熱を加えることは、2つの絶縁体シート状要素4,7の間の接続を改善することができる。
【0069】
これは、例えばプレス機で行われる。その際、絶縁体4,7は、プリント回路基板1の平面的な下面1bを形成するように、導電性シート状要素5とは反対側に面する側で平滑化されて(サブステップD4)、硬化される(サブステップD5)。
【0070】
ステップE:導電性シート状要素5から接続ポイント1dを形成する。
【0071】
ステップDが終了すると、プリント回路基板1の表面は、導電性シート状要素5で完全に覆われ、このとき、導体要素2はプリント回路基板1の内側に延在し、絶縁体4,7に埋め込まれている。
【0072】
導体要素2が接続部2cを介して導電性シート状要素5に接続される、予定する接続ポイント1dの位置では、導電性シート状要素5の周囲の部分を局所的に除去することによって、接続ポイント1cがここで形成される(サブステップE1)。これは、好ましくはエッチングによって達成される。
【0073】
信号伝送の目的のために、例えば、導電性シート状要素5の周囲の部分を局所的に除去することによって、導体経路も形成することができる。また、これは、好ましくは、エッチングによって達成される(サブステップE2)。導体経路1eは、好ましくは、少なくとも1つの接続ポイント1dに導電的に接続される。
【0074】
図4は、図1に示すモールド3を用いて製造されたプリント回路基板1を、斜視図(a)および概略断面図(b)で示したものである。このプリント回路基板1は、外形が実質的に矩形であり、かつ平行六面体形状を有している。平行六面体の導体要素2は、プリント回路基板1の上面1aに配置され、銅箔(5)から例えばエッチングによって形成された2つの接続ポイント1dの間に延びており、接続ポイント1dの位置を除いて完全に絶縁体1d(4,7)に埋め込まれている。
【0075】
図4(b)に従った概略断面図では、プリント回路基板1の構造設計を明確に見ることができる。プリント回路基板1の上面1aは、ステップB(サブステップB4)でモールド3の上面に配置された第1の絶縁体シート状要素4によって規定されている。プリント回路基板1の下面1bは、導体要素をほぼ完全に絶縁体1cに埋め込むために、接続部2cを介して導体要素2と導電性シート状要素5との接続が確立された後に、第1の絶縁体シート状要素4の下面に配置された第2の絶縁体シート状要素7によって規定される。プリント回路基板1の上面1aに配置された接続ポイント1dおよび導体経路1eは、ステップC(サブステップC1)で第1の絶縁体シート状要素4の上面に配置された導電性シート状要素5の材料で形成されている。
【0076】
以下では、別の実施形態について、同封した図6を参照して詳細に説明する。
【0077】
図6もまた、図1に示すモールド3を用いて製造されたプリント回路基板1を、斜視図(a)および概略断面図(b)で示している。このプリント回路基板1は、第1実施形態に従ったプリント回路基板1と実質的に同じ構造設計を有する。したがって、同一の特徴は、同様の参照符号を付して提供される。第2の実施形態によるプリント回路基板1は、やはり矩形の輪郭および平行六面体の形状を有する。また、第2実施形態の場合には、平行六面体の導体要素2は、プリント回路基板1の上面1aの上側に配置された2つの接続ポイント1dの間に延びている。
【0078】
接続ポイント1dが導電性シート状要素5と導体要素2との機械的および電気的接続を提供する第1の実施形態とは対照的に、第2の実施形態における接続ポイント1dは、実質的に純粋に機械的接続を提供する。したがって、接続ポイント1dは、特に、導電性シート状要素5に接続されている導体要素2が絶縁体4,7に埋め込まれている間に、導電性シート状要素5を導体要素2に構造的に接続する機能を有する(ステップD)。導電性シート状要素5は非常に薄い要素であり、したがって非常に容易に変形することができる。導電性シート状要素5が接続ポイント1dを介して導体要素2に接続されていることにより、例えば絶縁体4,7を配置するためのプレス工程(ステップD)の間の導電性シート状要素5の変形および/または変位を低減することができ、好ましくは防止することができる。このようにして、高い製造精度を達成することができる。
【0079】
これによれば、導電性シート状要素5と導体要素2との間の接続(ステップC)は、必ずしも電気的性質を有する必要はない。例えば、接続部2cは、非導電性の接続部材で構成されていてもよい。接続部材は、物質同士の結合を達成するために、好ましくは溶接可能である。非導電性材料の場合、接続は、例えば圧力溶接によって実現されてもよい。
【0080】
また、第2実施形態の場合も、ステップDのプレス工程の後、すなわち機械的負荷が加わった後に、導電性シート状要素5から接続ポイント1dを形成する(ステップE)。その際、接続ポイント1dは、図6(a),(b)に示すように、少なくとも導電性シート状要素5からの導体経路1eに対して電気的に絶縁されている。したがって、第1実施形態の場合と同様に、接続ポイント1dは、完成したプリント回路基板1の導体経路1eには電気的に接続されていない。接続ポイント1dは、もはや電気的な機能を持たず、ステップDのプレス中における機械的支持として機能するだけなので、接続ポイント1dを完全にエッチングすることも可能である。導体経路1eと導体要素2と可能性のある外部構成要素との間の電気的接続は、別の方法ステップで導入される接触ポイント1f,1gを介して確立される。これらの接触ポイント1f,1gは、図6(a),図6(b)に示すように、その内周面に、好ましくは金属、より好ましくは銅で設けられた導電層1gを備えた孔1fが、導体要素2と導体経路1eとの接触を確立する場合には、例えばスルーホールめっきによって形成されてもよい。孔1fは、例えば、導体経路1eと導体要素2との間の電気的接続を確実にするために、一方の側の導体経路1eおよび他方の側の導体要素2まで、その内面に沿って銅メッキされていてもよい。接触ポイント1fおよび1gは、ステップE0で配置されることができ、ここで、孔1fは、完全な導電性シート状要素5が予定する接続ポイント1dにおいて導体要素2に接続された状態で配置されてもよい。これにより、接触ポイント1fおよび1gの配置における機械的負荷を、予定する接続ポイント1dを介して吸収することができ、高い製造精度を実現することができる。その後にのみ、前述したように接続ポイント1dが形成される。好ましくは、接触ポイント1fおよび1gは、予定する接続ポイント1dの近傍に配置される。
【0081】
さらに、導体要素2は、接触ポイント1fおよび1gの間の区間では電気的に導電性を有し、接触ポイント1fおよび1gと予定する接続ポイント1dとの間の区間では電気的に絶縁性を有するハイブリッド材料または複合材料を含み得る。このようにして暗電流を防止することができる。
【0082】
安定した機械的支持を提供するために、プリント回路基板1は、好ましくは、導電性シート状要素5の領域の中心が位置する領域にまたがる少なくとも3つの接続ポイント1dをその上に設けている。このようにすれば、導電性シート状要素5が確実に所定の位置に保持されることが保証され得る。
【0083】
機能の分離により、それに従って、予定する接続ポイント1dが例えばプレス時に純粋に機械的な接続を確保し、接触ポイント1gおよび1fが電気的な接続を確保して、接触ポイント1gおよび1fが接続ポイント1dにおいて起こり得る不具合によって損なわれることを防止することができる。
【0084】
第1の実施形態と第2の実施形態とは、互いに組み合わせることができる。プリント回路基板1の個々の接続ポイント1dは、したがって、完全にエッチングされてもよいし、電気的に絶縁されてもよく、導体経路1eと導体要素2と可能であれば外部の構成要素との間の電気的接続を確立するために追加の接触ポイント1fおよび1gが設けられてもよく、第1の実施形態の場合と同様に、プリント回路基板1の他の接続ポイント1dは、導体経路1eと導体要素2とを電気的に接続してもよい。
【符号の説明】
【0085】
1…プリント回路基板
1a…プリント回路基板の上面
1b…プリント回路基板の下面
1c…絶縁体
1d…接続ポイント
1e…導体経路
1f…接触ポイントの孔
1g…接触ポイントの導電層
2…導体要素
2a…導体要素の上面
2b…導体要素の下面
2c…接続部
3…モールド
3a…モールドの上面
3b…モールドの下面
3c…レセプタクル
3d…通路/開口部
4…絶縁体(電気絶縁性のシート状要素または絶縁体シート状要素)
4a…絶縁体シート状要素の上面
4b…絶縁体シート状要素の下面
4c…通路/開口部
5…導電性シート状要素
5a…導電性シート状要素の上面
5b…導電性シート状要素の下面
6a…接続工具の電極(上)
6b…接続工具の電極(下)
7…絶縁体(電気絶縁性のシート状要素または絶縁体シート状要素)
図1
図2
図3
図4
図5
図6