(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】蒸発燃料処理装置
(51)【国際特許分類】
F02M 25/08 20060101AFI20230314BHJP
B01D 53/04 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
F02M25/08 311D
F02M25/08 311E
B01D53/04 111
(21)【出願番号】P 2021017416
(22)【出願日】2021-02-05
【審査請求日】2022-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】中川 卓也
(72)【発明者】
【氏名】細井 雅仁
(72)【発明者】
【氏名】伊奈 珠未
【審査官】北村 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-307300(JP,A)
【文献】特開平05-015722(JP,A)
【文献】特開平06-074108(JP,A)
【文献】特開2014-043836(JP,A)
【文献】特開2013-151875(JP,A)
【文献】実開平06-080846(JP,U)
【文献】特開2013-217243(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0320806(US,A1)
【文献】特開2015-057551(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 25/08
B01D 53/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料タンクから発生した蒸発燃料を吸着及び脱離する蒸発燃料処理装置であって、
前記蒸発燃料が通る流路の端に設けられた、前記蒸発燃料を取り込むよう構成されたチャージポート、及び、前記蒸発燃料を排出するように構成されたパージポートと、
前記流路における、前記チャージポート及び前記パージポートが設けられている端と反対側の端に設けられ、大気に開放された大気ポートと、
前記流路に沿って設けられた第1吸着室と、
前記第1吸着室
への前記蒸発燃料の流入方向に沿って直列的に前記第1吸着室と接続し、前記大気ポートが設けられた第2吸着室と、
前記チャージポート及び前記パージポートが設けられた第3吸着室と、
前記第1吸着室内に設けられた、前記蒸発燃料を吸着する第1吸着層と、
前記第2吸着室内に設けられた、前記蒸発燃料を吸着する第2吸着層と、
前記第3吸着室内に設けられた、前記蒸発燃料を吸着する第3吸着層と、
を備え、
前記第2吸着層における、前記第2吸着層を前記蒸発燃料が流れる方向
である第2方向に垂直な断面積が、前記第1吸着層における、前記第1吸着層を前記蒸発燃料が流れる方向
である第1方向に垂直な断面積よりも大きい、蒸発燃料処理装置。
【請求項2】
前記第2吸着層における前記第2方向の長さは、前記第1吸着層における前記第1方向の長さ、及び、前記第3吸着層における前記蒸発燃料が流れる方向である第3方向の長さ、のいずれよりも短い、請求項1に記載の蒸発燃料処理装置。
【請求項3】
前記第2吸着層における前記第2方向に垂直な断面と同じ面積の真円の直径を、前記第2吸着層における前記第2方向で平均した値である相当直径について、
前記相当直径に対する、前記第2吸着層の前記第2方向の長さの比は、0.6以下である、請求項1に記載の蒸発燃料処理装置。
【請求項4】
前記第1吸着層における前記第1方向に垂直な断面と同じ面積の真円の直径を、前記第1吸着層における前記第1方向で平均した値である第1相当直径と、
前記第2吸着層における前記第2方向に垂直な断面と同じ面積の真円の直径を、前記第2吸着層における前記第2方向で平均した値である第2相当直径と、
前記第3吸着層における前記蒸発燃料が流れる方向である第3方向に垂直な断面と同じ面積の真円の直径を、前記第3吸着層における前記第3方向で平均した値である第3相当直径と、
について、
前記第2相当直径に対する、前記第2吸着層における前記第2方向の長さの比は、前記第1相当直径に対する、前記第1吸着層における前記第1方向の長さの比、及び、前記第3相当直径に対する、前記第3吸着層における前記第3方向の長さの比、のいずれよりも小さい、請求項1に記載の蒸発燃料処理装置。
【請求項5】
前記第3吸着層において前記蒸発燃料が流れる方向である第3方向に垂直な断面積は、前記第1吸着層における前記第1方向に垂直な断面積、及び、前記第2吸着層における前記第2方向に垂直な断面積、のいずれよりも大きい、請求項1に記載の蒸発燃料処理装置。
【請求項6】
前記第3吸着層の容積は、前記第1吸着層の容積と前記第2吸着層の容積との合計よりも大きい、請求項1に記載の蒸発燃料処理装置。
【請求項7】
前記第2方向は、
前記第1方向と交差する、請求項1
から請求項6までのいずれか一項に記載の蒸発燃料処理装置。
【請求項8】
前記第2吸着室は、
前記第2方向に沿って前記第2吸着層よりも前記第1吸着室に通ずる側に、空間を有する、請求項1
から請求項7までのいずれか一項に記載の蒸発燃料処理装置。
【請求項9】
前記空間は、前記蒸発燃料処理装置を車両に搭載した場合において、前記第2吸着室内の下側に位置する、請求項
8に記載の蒸発燃料処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蒸発燃料処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両には、燃料タンクから発生した蒸発燃料が大気中に放出されることを抑制する蒸発燃料処理装置が搭載されている。蒸発燃料処理装置は、蒸発燃料を取り込むよう構成されたチャージポートと、蒸発燃料を排出するように構成されたパージポートと、大気に開放された大気ポートと、蒸発燃料が通る流路を形成する複数の吸着室と、を備える。チャージポート及びパージポートは、蒸発燃料が通る流路の端に設けられており、大気ポートは、チャージポート及びパージポートが設けられている端と反対側の端に設けられている。複数の吸着室内には、それぞれ、蒸発燃料を吸着するための吸着層が設けられている。蒸発燃料処理装置は、チャージポートを介して取り込まれた蒸発燃料を蓄積すると共に、蓄積した蒸発燃料を、大気ポートから取り込まれた空気によりパージポートを介して内燃機関に排出する。
【0003】
このような蒸発燃料処理装置として、特許文献1には、大気ポート側の吸着室が、隣接する吸着室の通路断面積よりも小さい通路断面積で形成された装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
大気ポート側の吸着室を、隣接する吸着室の通路断面積よりも小さい通路断面積で形成する場合、大気ポート側の吸着室の流路が狭くなることから、蒸発燃料の流入時における通気抵抗が高くなる傾向にある。
【0006】
本開示の一局面は、通気抵抗が低減された蒸発燃料処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、燃料タンクから発生した蒸発燃料を吸着及び脱離する蒸発燃料処理装置であって、チャージポートと、パージポートと、大気ポートと、第1吸着室と、第2吸着室と、第1吸着層と、第2吸着層と、を備える。チャージポート及びパージポートは、蒸発燃料が通る流路の端に設けられる。チャージポートは、蒸発燃料を取り込むよう構成される。パージポートは、蒸発燃料を排出するように構成される。大気ポートは、流路における、チャージポート及びパージポートが設けられている端と反対側の端に設けられ、大気に開放される。第1吸着室は、流路に沿って設けられる。第2吸着室は、第1吸着室に接続し、流路に沿って第1吸着室よりも大気ポート側に設けられる。第1吸着層は、第1吸着室内に設けられ、蒸発燃料を吸着する。第2吸着層は、第2吸着室内に設けられ、蒸発燃料を吸着する。第2吸着層における、第2吸着層を蒸発燃料が流れる方向に垂直な断面積が、第1吸着層における、第1吸着層を蒸発燃料が流れる方向に垂直な断面積よりも大きい。
【0008】
このような構成によれば、蒸発燃料処理装置の通気抵抗が低減される。
本開示の一態様では、第2吸着層を蒸発燃料が流れる方向は、第1吸着層を蒸発燃料が流れる方向と交差してもよい。このような構成であっても、第2吸着室の突出幅を抑えることができる。
【0009】
本開示の一態様では、第2吸着室は、第2吸着層を蒸発燃料が流れる方向に沿って第2吸着層よりも第1吸着室に通ずる側に、空間を有してもよい。このような構成によれば、蒸発燃料の大気側への放出を遅延させることができる。
【0010】
本開示の一態様では、空間は、蒸発燃料処理装置を車両に搭載した場合において、第2吸着室内の下側に位置してもよい。蒸発燃料の大気側への放出をより遅延させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態に係る蒸発燃料処理装置の模式断面図である。
【
図2】第1実施形態に係る蒸発燃料処理装置の模式斜視図である。
【
図3】第1実施形態に係る蒸発燃料処理装置における第2吸着室付近の模式断面図である。
【
図4】第2実施形態に係る蒸発燃料処理装置の模式斜視図である。
【
図5】第2実施形態に係る蒸発燃料処理装置における第2吸着室付近の模式断面図である。
【
図6】第3実施形態に係る蒸発燃料処理装置の模式斜視図である。
【
図7】他の実施形態に係る蒸発燃料処理装置の模式斜視図である。
【
図8】他の実施形態に係る蒸発燃料処理装置における第2吸着室付近の模式断面図である。
【
図9】底側の仕切り部材が別の形状を有する場合を示す図である。
【
図10】蓋側の仕切り部材がスプリングを有する場合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1に示す蒸発燃料処理装置1は、燃料タンクから発生した蒸発燃料を吸着及び脱離する装置である。
【0013】
蒸発燃料処理装置1は、チャージポート2と、パージポート3と、大気ポート4と、複数の吸着室10,20,30と、接続通路5と、を備える。
チャージポート2は、配管によって車両の燃料タンクに接続されている。チャージポート2は、燃料タンクから発生した蒸発燃料を蒸発燃料処理装置1内に取り込むよう構成されている。
【0014】
パージポート3は、不図示のパージ弁を介して内燃機関の吸気管に接続されている。パージポート3は、蒸発燃料を排出し、内燃機関に供給するように構成されている。
大気ポート4は、大気に開放されている。大気ポート4は、蒸発燃料を取り除いた空気を大気中に放出するように構成されている。また、大気ポート4は、空気を取り込むことで、蒸発燃料処理装置1内に吸着された蒸発燃料を脱離するように構成されている。
【0015】
チャージポート2及びパージポート3は、蒸発燃料処理装置1内を蒸発燃料が通る流路Pの端に設けられている。一方、大気ポート4は、流路Pにおける、チャージポート2及びパージポート3が設けられている端と反対側の端に設けられている。
【0016】
蒸発燃料処理装置1は、複数の吸着室として、第1吸着室10と、第2吸着室20と、第3吸着室30と、を備える。複数の吸着室は、流路Pに沿って大気ポート4側から順に、第2吸着室20、第1吸着室10、及び第3吸着室30の順に設けられている。第2吸着室20には、上述の大気ポート4が設けられている。第3吸着室30には、上述のチャージポート2及びパージポート3が設けられている。
【0017】
第1吸着室10と第3吸着室30とは、接続通路5を介して接続されている。燃料タンクからの蒸発燃料の流入時において、第3吸着室30へ流入した蒸発燃料は、接続通路5で折り返すことにより、第3吸着室30への蒸発燃料の流入方向Cとは逆の方向に向かうように第1吸着室10へ流入する。第1吸着室10と第2吸着室20とは、第1吸着室10への蒸発燃料の流入方向Aに沿って直列的に配置されおり、第2吸着室20への蒸発燃料の流入方向Bは、第1吸着室10への蒸発燃料の流入方向Aに沿っている。そのため、第1吸着室10、第2吸着室20、第3吸着室30、及び接続通路5によって形成される流路Pは、略U字状である。
【0018】
第3吸着室30は、複数の吸着室のうち最も容積が大きい主室である。第3吸着室30内には、蒸発燃料を吸着する第3吸着層31が設けられている。第3吸着層31は、充填された吸着材により形成されている。吸着材としては、例えば、活性炭が挙げられる。活性炭としては、例えば、粒状活性炭、ハニカム形状に成形されたもの、繊維状活性炭を用いてシート状、直方体状、円柱状、多角柱状等に成形したもの等が挙げられる。
【0019】
一方、第1吸着室10及び第2吸着室20は、いずれも、主室である第3吸着室30よりも容積が小さい副室である。
第1吸着室10内には、蒸発燃料を吸着する第1吸着層11が設けられている。また、第2吸着室20内には、蒸発燃料を吸着する第2吸着層21が設けられている。第1吸着層11及び第2吸着層21は、充填された吸着材により形成されている。吸着材は、第3吸着層31の吸着材として挙げたものと同様である。
【0020】
第2吸着室20は、
図3に示すように、上述の第2吸着層21と、ケース22と、蓋23と、ケース側支柱24と、蓋側支柱25と、仕切り部材26,27と、を備える。
ケース22は、第2吸着室20を形成する外枠である。ケース22は、第1吸着室10を形成する外枠と一体となっている。蓋23は、ケース22における開口を閉じるように構成される。ケース22と蓋23とは溶着される。
【0021】
ケース側支柱24は、第2吸着室20において、大気ポート4側を上側とした場合の底面から立設し、第2吸着層21を、仕切り部材26を介して支持する支柱である。仕切り部材26は、フィルタ、グリッド等により構成される。グリッドとは、蒸発燃料の通路となる不図示の複数の孔が形成された板状の部材である。
【0022】
蓋側支柱25は、蓋23から立設し、第2吸着層21を、仕切り部材27を介して支持する支柱である。仕切り部材27は、仕切り部材26と同様である。
第2吸着室20内には、第2吸着層21を蒸発燃料が流れる方向Fに沿って第2吸着層21よりも第1吸着室10に通ずる側に、空間28が形成されている。第1吸着室10に通ずる側とは、大気ポート4に通ずる側と反対側である。
【0023】
図2に示すように、第2吸着層21は、第2吸着室20内において、直方体状の第2吸着層21における最も広い面が、第1吸着層11を蒸発燃料が流れる方向Eと交差するように、具体的には略直交するように配置されている。そして、
図3に示すように、第2吸着層21を蒸発燃料が流れる方向Fは、第1吸着層11を蒸発燃料が流れる方向Eに沿っている。また、第2吸着層21における、第2吸着層21を蒸発燃料が流れる方向Fに垂直な断面積は、第1吸着層11における、第1吸着層11を蒸発燃料が流れる方向Eに垂直な断面積よりも大きい。
【0024】
なお、ここでいう略直交とは、実質的に直交しているという意味である。例えば、直方体状の第2吸着層21における最も広い面が、第1吸着層11を蒸発燃料が流れる方向Eと垂直な面に対して、5°以下の角度で傾斜していてもよい。以下同様である。
【0025】
第2吸着層21において、第2吸着層21を蒸発燃料が流れる方向Fと垂直な断面における相当直径D[mm]に対する、蒸発燃料が流れる方向Fの長さL[mm]の比L/Dは、0.6以下が好ましい。なお、「蒸発燃料が流れる方向Fと垂直な断面における相当直径D」とは、第2吸着層21において蒸発燃料が流れる方向Fと垂直な断面Sと同じ面積の真円の直径(D=(S/π)1/2×2)を、第2吸着層21において蒸発燃料が流れる方向Fで平均した値を意味する。L/Dが0.6以下であると、大気ポート4から空気を取り込んで蒸発燃料を脱離させる時に、第2吸着室20に吸着していた蒸発燃料が、短時間で第1吸着室10側へ流れきるため、第2吸着室20内に残存する蒸発燃料の量を抑えることができる。
【0026】
[1-2.効果]
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)第2吸着層21における、第2吸着層21を蒸発燃料が流れる方向Fに垂直な断面積は、第1吸着層11における、第1吸着層11を蒸発燃料が流れる方向Eに垂直な断面積よりも大きいため、第2吸着層21を通る蒸発燃料の通気抵抗が低減される。そのため、蒸発燃料処理装置1全体の通気抵抗が低減される。
【0027】
また、
図3に示すように、第1吸着層11から第2吸着層21へ向かう蒸発燃料が広がるように拡散するため、蒸発燃料の大気側への放出を遅延させつつ、蒸発燃料処理装置1の通気抵抗を低減することができる。蒸発燃料の大気側への放出が遅延されるため、第2吸着層21における蒸発燃料が流れる方向Fの長さを短くしたとしても、長時間の駐車時に外気温の変化によって発生する蒸発燃料(DBL(Diurnal Breathing Loss))を抑えることができる。
【0028】
(1b)第2吸着室20は、第2吸着層21を蒸発燃料が流れる方向Fに沿って第2吸着層21よりも第1吸着室10に通ずる側に、空間28を有する。これにより、第2吸着室20へ流入する蒸発燃料が、空間28において、第2吸着層21を蒸発燃料が流れる方向Eに垂直な断面に沿って広がるように拡散するため、第1吸着層11と第2吸着層21との間に空間28がない場合と比較して、蒸発燃料の大気側への放出を遅延させることができる。特に、空間28が、蒸発燃料処理装置1を車両に搭載した場合において、第2吸着室20内の下側に位置する場合には、蒸発燃料が空間28内にとどまりやすくなるため、蒸発燃料の大気側への放出をより遅延させることができる。
【0029】
[2.第2実施形態]
[1-1.構成]
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同様の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0030】
図4に示す蒸発燃料処理装置100は、第1実施形態の蒸発燃料処理装置1と、第2吸着室40内の蒸発燃料の流れが異なる。
第2吸着層41は、第2吸着室40内において、直方体状の第2吸着層41における最も広い面が、第3吸着室30と、第1吸着室10及び第2吸着室20とが並ぶ方向Gに交差するように、具体的には略直交するように配置されている。そして、第2吸着層41を蒸発燃料が流れる方向Fが、第1吸着層11を蒸発燃料が流れる方向Eと交差、具体的には略直交し、かつ、第3吸着室30と、第1吸着室10及び第2吸着室40とが並ぶ方向Gに沿っている。なお、第1実施形態と同様に、第2吸着層41における、第2吸着層41を蒸発燃料が流れる方向Fに垂直な断面積は、第1吸着層11における、第1吸着層11を蒸発燃料が流れる方向Eに垂直な断面積よりも大きい。
【0031】
第2吸着室40は、
図5に示すように、第2吸着層41と、ケース42と、蓋43と、ケース側支柱44と、蓋側支柱45と、仕切り部材46,47と、を備える。
ケース42は、第2吸着室40を形成する外枠である。ケース42は、第1吸着室10を形成する外枠と一体となっている。蓋43は、ケース42の開口を閉じるように構成される。ケース42と蓋43とは溶着される。
【0032】
ケース側支柱44は、第2吸着室40において、第3吸着室30側の面から立設し、第2吸着層41を、仕切り部材46を介して支持する支柱である。仕切り部材46は、第1実施形態における仕切り部材26,27と同様である。
【0033】
蓋側支柱45は、蓋43から立設し、第2吸着層41を、仕切り部材47を介して支持する支柱である。仕切り部材47は、第1実施形態における仕切り部材26,27と同様である。
【0034】
第2吸着室40内には、第2吸着層41を蒸発燃料が流れる方向Fに沿って第2吸着層41よりも第1吸着室10に通ずる側に、空間48が形成されている。空間48における第1吸着室10との接続口49側の部分は、接続口49よりも大きく構成されている。言い換えれば、第2吸着層41が第2吸着室40内の接続口49と重ならない位置にある。
【0035】
[2-1.効果]
以上詳述した第2実施形態によれば、第1実施形態の(1a)の効果に加えて、以下の効果が得られる。
【0036】
第2吸着室40は、第2吸着層41を蒸発燃料が流れる方向Fに沿って第2吸着層41よりも第1吸着室10に通ずる側に、空間48を有する。これにより、蒸発燃料が、空間48において、第2吸着室40へ流入する方向の奥へ広がるように拡散するため、第1吸着層11と第2吸着層21との間に空間48がない場合と比較して、蒸発燃料の大気側への放出を遅延させつつ、蒸発燃料処理装置100の通気抵抗を低減することができる。特に、空間48が、蒸発燃料処理装置100を車両に搭載した場合において、第2吸着室40内の下側に位置する場合には、蒸発燃料が空間48内にとどまりやすくなるため、蒸発燃料の大気側への放出をより遅延させることができる。
【0037】
[3.第3実施形態]
[3-1.構成]
第3実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同様の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0038】
図6に示す蒸発燃料処理装置200は、第1実施形態に係る蒸発燃料処理装置1及び第2実施形態に係る蒸発燃料処理装置100と、第2吸着室50内の蒸発燃料の流れが異なる。
【0039】
第2吸着層51は、第2吸着室50内において、直方体状の第2吸着層51における最も広い面が、第1吸着層11を蒸発燃料が流れる方向E、及び、第3吸着室30と第1吸着室10及び第2吸着室40とが並ぶ方向Gに沿うように、具体的には略平行になるように、配置されている。そして、第2吸着層51を蒸発燃料が流れる方向Fが、第1吸着層11を蒸発燃料が流れる方向Eと交差、具体的には略直交し、かつ、第3吸着室30と第1吸着室10及び第2吸着室20とが並ぶ方向Gと交差、具体的には略直交する。なお、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、第2吸着層51における、第2吸着層51を蒸発燃料が流れる方向Fに垂直な断面積は、第1吸着層11における、第1吸着層11を蒸発燃料が流れる方向Eに垂直な断面積よりも大きい。
【0040】
[3-2.効果]
以上詳述した第3実施形態によれば、第1実施形態の(1a)、及び第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0041】
なお、上記第1実施形態~第3実施形態に示したように、第2吸着層における、第2吸着層を蒸発燃料が流れる方向に垂直な断面積が、第1吸着層における、第1吸着層を蒸発燃料が流れる方向に垂直な断面積よりも大きい構成によれば、大気ポートが伸びる向きが異なる様々なレイアウトに対応しやすくなる。第2吸着層における、第2吸着層を蒸発燃料が流れる方向に垂直な断面積が、第1吸着層における、第1吸着層を蒸発燃料が流れる方向に垂直な断面積よりも小さい場合には、所望の吸着量を確保するために、第2吸着層における、第2吸着層を蒸発燃料が流れる方向の長さを比較的長くする必要がある。その結果、第2吸着室における大気ポートが伸びる向きを、第1実施形態に示した向きから例えば第2実施形態及び第3実施形態に示した向きに変更しようとすると、第2吸着室が大幅に突出してしまう。これに対し、第2吸着層における、第2吸着層を蒸発燃料が流れる方向に垂直な断面積が、第1吸着層における、第1吸着層11を蒸発燃料が流れる方向に垂直な断面積よりも大きい構成によれば、第2吸着室の突出幅を抑えることができる。そのため、大気ポートが伸びる向きが異なる様々な配管のレイアウトであっても、蒸発燃料処理装置をコンパクトにすることができる。また、コンパクト化することにより、空いたスペースに、蒸発燃料処理装置に付属する周辺部品、例えば、リークチェック用の部品、バルブ等を配置することも可能である。
【0042】
[4.第4実施形態]
第4実施形態は、基本的な構成は第2実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同様の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0043】
図7に示す蒸発燃料処理装置300では、蒸発燃料処理装置300の外枠を形成する外側ケース301の内部に、第2吸着室60を形成する内側ケース62が装着されている。
【0044】
図7に示すように、第2吸着層61は、第2実施形態と同様に、第2吸着室60内において、直方体状の第2吸着層61における最も広い面が、第3吸着室30と、第1吸着室10及び第2吸着室20とが並ぶ方向Gに交差するように、具体的には略直交するように配置されている。そして、第2吸着層61を蒸発燃料が流れる方向Fが、第1吸着層11を蒸発燃料が流れる方向Eと交差、具体的には略直交し、かつ、第3吸着室30と、第1吸着室10及び第2吸着室20とが並ぶ方向Gに沿っている。なお、第1実施形態~第3実施形態と同様に、第2吸着層61における、第2吸着層61を蒸発燃料が流れる方向Fに垂直な断面積は、第1吸着層11における、第1吸着層11を蒸発燃料が流れる方向Eに垂直な断面積よりも大きい。
【0045】
図8に示すように、第2吸着室60は、第2吸着層61と、内側ケース62と、2つの仕切り部材63,64と、を備える。
内側ケース62は、ケース本体65と、蓋66と、ケース側支柱67と、蓋側支柱68と、を備える。蓋66は、ケース本体65の開口を閉じるように構成される。ケース本体65と蓋66とは溶着される。
【0046】
ケース本体65における、第1吸着室10側の面には、第1吸着室10に通ずるスリット69が形成されている。スリット69は、
図8における奥行き方向に伸びる形状を有する。
【0047】
また、ケース本体65における、大気ポート4側の面には、大気ポート4に通ずるスリット70が形成されている。スリット70は、スリット69と同様に、
図8における奥行き方向に伸びる形状を有する。
【0048】
ケース側支柱67は、第2吸着室60において、蓋66を上側とした場合の底面から立設し、第2吸着層61を、仕切り部材63を介して支持する支柱である。蓋側支柱68は、蓋66から立設し、第2吸着層61を、仕切り部材64を介して支持する支柱である。
【0049】
第2吸着室60内には、第2吸着層61を蒸発燃料が流れる方向Fに沿って第2吸着層61よりも第1吸着室10に通ずる側に、空間71が形成されている。
[4-2.効果]
以上詳述した第4実施形態によれば、第1実施形態の(1a)、並びに第2実施形態と同様の効果が得られる。
【0050】
また、第4実施形態によれば、第2吸着室20の容積等が異なる内側ケース62を適宜製造して装着することにより、外側ケース301の設計を変更することなく、仕様が異なる蒸発燃料処理装置300を容易に作り分けることができる。
【0051】
[5.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0052】
(5a)第2吸着室における第2吸着層の支持方法は、上述した実施形態に限定されない。例えば、
図9に示すように、第1実施形態におけるケース側支柱24の代わりに、脚80aを有する仕切り部材80によって第2吸着層を支持してもよい。また、
図10に示すように、第1実施形態における蓋側支柱25の代わりに、スプリング81で第2吸着層を支持してもよい。これらのことは第2実施形態~第4実施形態でも同様である。
【0053】
(5b)上記第2実施形態及び第3実施形態では、第2吸着層61を蒸発燃料が流れる方向Fが、第1吸着層11を蒸発燃料が流れる方向Eに略直交しているが、第2吸着層61を蒸発燃料が流れる方向Fと、第1吸着層11を蒸発燃料が流れる方向Eとが交差する角度はこれに限定されない。例えば、当該角度が、15°、45°等であってもよい。
【0054】
(5c)第2吸着層の形状は、上記実施形態で示した直方体状に限定されない。例えば、第2吸着層の形状は、円柱状、多角柱状等であってもよい。また、第2吸着層自体の形状も特に限定されず、直方体状、円柱状、多角柱状等であってもよい。
【0055】
(5d)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【符号の説明】
【0056】
1,100,200,300…蒸発燃料処理装置、2…チャージポート、3…パージポート、4…大気ポート、10…第1吸着室、11…第1吸着層、20,40,50,60…第2吸着室、21,41,51,61…第2吸着層、28,48,71…空間、30…第3吸着室、31…第3吸着層、P…流路。