(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】HDL上昇剤又はHDL模倣剤を用いた治療に対する応答性を予測するための遺伝マーカー
(51)【国際特許分類】
A61K 31/167 20060101AFI20230314BHJP
C12Q 1/6827 20180101ALI20230314BHJP
C12Q 1/6837 20180101ALI20230314BHJP
A61P 3/00 20060101ALI20230314BHJP
A61P 3/04 20060101ALI20230314BHJP
A61P 3/06 20060101ALI20230314BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20230314BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20230314BHJP
A61P 9/02 20060101ALI20230314BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20230314BHJP
A61P 9/12 20060101ALI20230314BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230314BHJP
C12Q 1/68 20180101ALI20230314BHJP
C12Q 1/6883 20180101ALN20230314BHJP
【FI】
A61K31/167
C12Q1/6827 Z
C12Q1/6837 Z
A61P3/00
A61P3/04
A61P3/06
A61P3/10
A61P9/00
A61P9/02
A61P9/10
A61P9/12
A61P43/00 105
A61P43/00 111
C12Q1/68 ZNA
C12Q1/6883 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021042828
(22)【出願日】2021-03-16
(62)【分割の表示】P 2017504647の分割
【原出願日】2015-07-27
【審査請求日】2021-04-14
(32)【優先日】2014-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】デュベ,マリー-ピエール
(72)【発明者】
【氏名】タルディフ,ジャン-クロード
【審査官】石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-505714(JP,A)
【文献】Lancet,2011年,Vol. 378,p. 1547-1559
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00-31/80
C12Q 1/00- 3/00
A61P 1/00-43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験体におけるHDL上昇のための医薬の製造におけるダルセトラピブの使用であって、被験体は、rs11647778に改善された応答遺伝子型を有することが同定されており、rs11647778での改善された応答遺伝子型が、遺伝子型rs11647778/CC又はrs11647778/CGであ
り、被験体が、ヒトである、使用。
【請求項2】
rs11647778での改善された応答遺伝子型が、遺伝子型rs11647778/CCである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
被験体が、被験体のADCY9遺伝子中の1つ以上のさらなる部位で1つ以上のさらなる改善された応答遺伝子型を有することも同定されている、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
被験体のADCY9遺伝子中のさらなる部位が、rs1967309、rs12595857、rs2239310、rs11647828、rs8049452、rs12935810、rs74702385、rs17136707、rs8061182、rs111590482、rs4786454、rs2283497、rs2531967、rs3730119、rs12599911、rs12920508、rs2531971及びrs2238448の1つ以上である、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
1つ以上のさらなる応答遺伝子型が、rs1967309/AA、rs1967309/AG、rs12595857/GG、rs12595857/AG、rs111590482/AG、rs111590482/GG、rs12935810/GG、rs11647828/GG、rs17136707/GG、rs17136707/AG、rs2239310/GG、rs2239310/AG、rs2283497/AA、rs2283497/CA、rs2531967/AA、rs2531967/GA、rs3730119/AA、rs3730119/GA、rs12920508/CG、rs12920508/GG、rs2531971/AC、rs2531971/AA、rs12599911/GT、rs12599911/GG、rs2238448/TC、rs2238448/TT、rs4786454/AA、rs4786454/GA、rs74702385/GA、rs74702385/AA、rs8049452/GG、rs8049452/GA、rs8061182/AG、及びrs8061182/AAの1つ以上である、請求項3に記載の使用。
【請求項6】
1つ以上のさらなる改善された応答遺伝子型が、rs1967309/AAである、請求項3に記載の使用。
【請求項7】
1つ以上のさらなる改善された応答遺伝子型が、rs2238448/TTである、請求項3に記載の使用。
【請求項8】
1つ以上のさらなる改善された応答遺伝子型が、rs2238448/TT及びrs1967309/AAである、請求項3に記載の使用。
【請求項9】
ダルセトラピブが、1日当たり100mg~1800mgの用量で被験体に投与される、請求項1に記載の使用。
【請求項10】
ダルセトラピブが、1日当たり300mg~900mgの用量で被験体に投与される、請求項1に記載の使用。
【請求項11】
ダルセトラピブが、1日当たり600mgの用量で被験体に投与される、請求項1に記載の使用。
【請求項12】
被験体が、心血管障害を有する、請求項1に記載の使用。
【請求項13】
心血管障害が、
急性冠症候群(ACS)、アテローム動脈硬化症、末梢血管疾患、脂質異常症、高ベータリポタンパク質血症、低アルファリポタンパク質血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、家族性高コレステロール血症、狭心症、虚血、心臓虚血、脳卒中、心筋梗塞、再灌流傷害、血管形成後再狭窄(angioplastic restenosis)、高血圧、冠動脈心疾患、冠動脈疾患、高脂血症、高リポタンパク質血症(hyperlipidoproteinemia)、糖尿病の血管合併症、肥満の血管合併症、又は内毒素血症の血管合併症である、請求項12に記載の使用。
【請求項14】
上昇するHDLが、被験体における心血管イベントのリスクを減少させる、請求項1に記載の使用。
【請求項15】
心血管イベントが、心血管疾患、死、蘇生後の心停止、非致死性の心筋梗塞(MI)、非致死性の虚血性脳卒中、不安定狭心症、又は予期せぬ冠血行再建である、請求項
14に記載の使用。
【請求項16】
被験体におけるHDL上昇のためのダルセトラピブを含む医薬組成物であって、被験体は、rs11647778に改善された応答遺伝子型を有することが同定されており、rs11647778での改善された応答遺伝子型は、遺伝子型rs11647778/CC又はrs11647778/CGであ
り、被験体が、ヒトである、医薬組成物。
【請求項17】
rs11647778での改善された応答遺伝子型が、遺伝子型rs11647778/CCである、請求項
16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
被験体は、被験体のADCY9遺伝子中の1つ以上のさらなる部位で1つ以上のさらなる改善された応答遺伝子型を有することも同定されている、請求項
16に記載の医薬組成物。
【請求項19】
被験体のADCY9遺伝子中のさらなる部位が、rs1967309、rs12595857、rs2239310、rs11647828、rs8049452、rs12935810、rs74702385、rs17136707、rs8061182、rs111590482、rs4786454、rs2283497、rs2531967、rs3730119、rs12599911、rs12920508、rs2531971、及びrs2238448である、請求項
18に記載の医薬組成物。
【請求項20】
1つ以上のさらなる応答遺伝子型が、rs12595857/GG、rs12595857/AG、rs111590482/AG、rs111590482/GG、rs12935810/GG、rs11647828/GG、rs17136707/GG、rs17136707/AG、rs2239310/GG、rs2239310/AG、rs2283497/AA、rs2283497/CA、rs2531967/AA、rs2531967/GA、rs3730119/AA、rs3730119/GA、rs12920508/CG、rs12920508/GG、rs2531971/AC、rs2531971/AA、rs12599911/GT、rs12599911/GG、rs2238448/TC、rs2238448/TT、rs4786454/AA、rs4786454/GA、rs74702385/GA、rs74702385/AA、rs8049452/GG、rs8049452/GA、rs8061182/AG、及びrs8061182/AAの1つ以上である、請求項
18に記載の医薬組成物。
【請求項21】
1つ以上のさらなる改善された応答遺伝子型が、rs1967309/AAである、請求項
18に記載の医薬組成物。
【請求項22】
1つ以上のさらなる改善された応答遺伝子型が、rs2238448/TTである、請求項
18に記載の医薬組成物。
【請求項23】
1つ以上のさらなる改善された応答遺伝子型が、rs2238448/TT及びrs1967309/AAである、請求項
18に記載の医薬組成物。
【請求項24】
ダルセトラピブが、1日当たり100mg~1800mgの用量で被験体に投与される、請求項
16に記載の医薬組成物。
【請求項25】
ダルセトラピブが、1日当たり300mg~900mgの用量で被験体に投与される、請求項
16に記載の医薬組成物。
【請求項26】
ダルセトラピブが、1日当たり600mgの用量で被験体に投与される、請求項
16に記載の医薬組成物。
【請求項27】
被験体が、心血管障害を有する、請求項
16に記載の医薬組成物。
【請求項28】
心血管障害が、
急性冠症候群(ACS)、アテローム動脈硬化症、末梢血管疾患、脂質異常症、高ベータリポタンパク質血症、低アルファリポタンパク質血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、家族性高コレステロール血症、狭心症、虚血、心臓虚血、脳卒中、心筋梗塞、再灌流傷害、血管形成後再狭窄(angioplastic restenosis)、高血圧、冠動脈心疾患、冠動脈疾患、高脂血症、高リポタンパク質血症(hyperlipidoproteinemia)、糖尿病の血管合併症、肥満の血管合併症、又は内毒素血症の血管合併症である、請求項27に記載の医薬組成物。
【請求項29】
上昇するHDLが、被験体における心血管イベントのリスクを減少させる、請求項
16に記載の医薬組成物。
【請求項30】
心血管イベントが、心血管疾患、死、蘇生後の心停止、非致死性の心筋梗塞(MI)、非致死性の虚血性脳卒中、不安定狭心症、又は予期せぬ冠血行再建である、請求項
29に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、心血管障害を有する被験体の治療又は予防に関する。
【0002】
20年前、画一的な処置は、非常に優れた「ブロックバスター」薬へと至る、採用されたアプローチであった。今日、ヒトゲノムの配列決定及び分子プロファイリング技術の進歩に伴って、薬剤開発へのアプローチは、より層別化又は個別化されたアプローチを採用している。これらの進歩は、個体を、特定の疾患のリスクがある、特定の処置に応答する、特定の処置に応答しない又は処置されたときに有害事象の高いリスクがある部分集団へ分類することをますます可能にしている。そのような遺伝子検査は、診断、予後及び処置の選択を通知するために使用され得る。数多くの研究が、遺伝子型と薬物療法に対する応答との間の関係を示している。このアプローチは、過去数年間にわたり、特に数多くの個別化医療アプローチがうまく開発されかつ臨床転帰の大きな改善が提供されている腫瘍学において、広く受け入れられている。
【0003】
心血管障害では、特定の治療的介入のための遺伝子型による集団の層別化は、限られている。本発明の目的の1つは、心血管障害を患う集団が異なる挙動を取る恐れがあること及びその結果として特定の処置に対して異なる応答を起こし得ることを実証することである。LDLの低下は、心血管疾患の管理において重要な治療戦略である。実際、クレストール(Crestor)、リピトール(Lipitor)、プラバコール(Pravachol)及びゾカール(Zocar)などのLDLを低下させるスタチン系薬物は、広く使用されており、最も処方されている薬物の1つである。ここしばらく、HDLを増加させることもまた心血管疾患の治療に役立ち得ると一般に受け入れられている。ナイアシン並びにトルセトラピブ、アナセトラピブ、エバセトラピブ及びダルセトラピブなどのCETP阻害剤を含むいくつかのHDL上昇薬が開発されている。
【0004】
血漿脂質輸送タンパク質とも呼ばれるコレステリルエステル輸送タンパク質(CETP)は、いくつかの組織内で合成されるが主に肝臓内で合成される、疎水性糖タンパク質である。CETPは、全ての血漿リポタンパク質粒子間でコレステリルエステル及びトリグリセリドの双方向輸送を促進する。血漿リポタンパク質に及ぼすCETP活性の効果についての最初の証拠は、CETPの遺伝的欠損を有する人々における観察によって提供された。最初のCETP突然変異が、顕著に上昇したHDL-Cの原因として1989年に日本で同定された。CETP欠損に関連する10個の突然変異がアジア人において、1個が白人において同定された。日本において、HDL-Cレベル>100mg/dLを有する被験体の57%がCETP遺伝子の突然変異を有することが見いだされた。加えて、75~100mg/dLの間のHDL-Cレベルを有する日本人の37%がCETP遺伝子の突然変異を有する。その後、抗CETP抗体で処置された動物の研究は、CETP阻害がHDL-Cの濃度の実質的な増加をもたらしたことを示した。CETP欠損患者及び抗CETP抗体で処置されたウサギにおけるこれらの観察に一致して、CETP阻害薬を用いたヒトの処置がHDLコレステロール及びアポA-I(HDL中の主要アポリポタンパク質)の濃度を増加させることが見いだされている。ヒト突然変異の研究を含む数多くの疫学的研究は、CETP活性の変動の効果を冠動脈心疾患リスクと関連付けている(Hirano, K.I. Yamishita, S. and Matsuzawa Y. (2000) Curr. Opin. Lipido. 11(4), 389-396)。
【0005】
アテローム動脈硬化症、並びに冠動脈心疾患(CHD)、脳卒中及び末梢血管疾患を含むその臨床的結果は、世界的に保健医療システムにとって大きな負担となっている。CETPを阻害する薬物(CETP阻害剤)は、ここしばらく、アテローム動脈硬化症を治療又は防止するために有用であろうという期待の下に開発中である。ダルセトラピブ、トルセトラピブ、アナセトラピブ、エバセトラピブ、BAY 60-5521及びその他を含むCETP阻害薬の多数のクラスは、ヒトにおいてHDLを増加させ、LDLを減少させること、並びにアテローム動脈硬化症及び心血管疾患を処置するための治療効果を有することが示されている(表1)。
【0006】
【0007】
しかしながら、これらの薬物が全ての患者に安全でかつ効果的ではないかもしれないという証拠がある。アトルバスタチン単独で処置された患者と比較して、トルセトラピブ及びアトルバスタチンが同時に投与された患者の死亡発生が原因で、トルセトラピブの臨床試験は第III相で終了された。ダルセトラピブの臨床試験も第III相で停止されたが、この場合はスタチン単独に比べた有効性の欠如が原因である。さらなるCETP阻害剤が、依然として臨床試験及びより開発初期で探究されている。より良好な有効性を提供するCETP阻害剤を使用した一般的な処置戦略では、低下したオフターゲット効果が臨床的に有益であろう。CETP阻害剤に対する応答を予測するためのかつCETP阻害剤の投与に関連する有害事象のリスクを評価するための、バイオマーカー、方法及びアプローチに対するニーズがある。
【0008】
CETP阻害剤は、アテローム動脈硬化症、末梢血管疾患、脂質異常症、高ベータリポタンパク質血症、低アルファリポタンパク質血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、家族性高コレステロール血症、心血管障害、狭心症、虚血、心臓虚血、脳卒中、心筋梗塞、再灌流傷害、血管形成後再狭窄(angioplastic restenosis)、高血圧、及び糖尿病、肥満又は内毒素血症の血管合併症の治療及び/又は予防に有用である。
【0009】
臨床試験は、医薬品を用いた処置に対する患者の応答がしばしば不均一であることを示している。薬物開発、臨床開発及び個体又は患者の部分集団に対する薬物の治療的影響を改善することに対して緊急のニーズがある。一塩基多型(SNP)は、特定の医薬製剤を用いた治療に最も適した患者を同定するために使用され得る(これは、しばしば「ファーマコゲノミクス」と呼ばれる)。同様に、SNPを使用して、患者が毒性副作用を発症する可能性の増加又は患者が処置に応答しない可能性によって、患者をある処置から除外することができる。また、ファーマコゲノミクスを薬学研究に使用して、薬物の開発及び選択プロセスを援助することもできる。Linder et al, Clinical Chemistry 43:254 (1997); Marshall, Nature Biotechnology 15: 1249 (1997); 国際特許出願 WO 97/40462, Spectra Biomedical; 及び Schafer et al , Nature Biotechnology 16:3 (1998)。
【0010】
ダルセトラピブの死亡率及び罹患率試験(dal-OUTCOMES)は、急性冠症候群(ACS)のため最近入院した安定CHD患者における、二重盲検ランダム化プラセボ対照並行群間多施設試験であった。この試験は、CETP阻害を通してHDL-Cのレベルを上昇させることによって、CETP阻害が最近発症したACS患者における再発性心血管イベントのリスクを低下させるという仮説を検証するために実施された。適格な患者を、患者が安定化すること及び計画された血行再建手順の完了を可能にするために、約4~6週間の単純盲検プラセボ導入期間に入れた。導入期間の終わりに、安定な状態の適格な患者を、ACSに対する証拠に基づいた医療に加えて、1:1の比で600mgのダルセトラピブ又はプラセボにランダム化した。ダルセトラピブは、コレステロール-エステル輸送タンパク質(CETP)の阻害剤である。ダルセトラピブは、いくつかの動物種及びヒトにおいてCETP活性の用量依存的減少及びHDL-Cレベルの増加を誘導することが示されている。異なるアプローチによってCETP活性を減少させることは、いくつかの動物モデルにおいて抗アテローム動脈硬化作用を実証した。この試験は、効果がないという理由からDSMBによって2012年5月に中断された。dal-OUTCOMES試験は、心血管疾患の進行に関係する予想外の観察をもたらした。HDL-cの顕著な増加にもかかわらず、処置を受けている患者は、心血管イベントの有意な低減を示すことなく、その試験は終了された。
【0011】
dal-OUTCOMES試験の終了後、試験を受けた患者の部分集団がダルセトラピブに対して異なる応答を示すこと及びダルセトラピブが患者の部分集団において有意な治療効果を有している可能性があるという仮説が立てられた。ダルセトラピブの応答における個体間変動を研究するために、並びに患者の層別化及び処置の選択のためのダルセトラピブ又は他のCETP阻害剤に対する治療応答を予測するための遺伝マーカーを同定するために、dal-OUTCOMES試験集団のファーマコゲノミクス研究が実施された。
【0012】
本発明は、HDL上昇剤又はHDL模倣剤を用いた、特にCETP阻害剤/モジュレーターを用いた処置から恩恵を受けることができる個体を選択するための、遺伝子型決定法、試薬及び組成物を提供し、特に、ここでは、個体は、心血管障害を有する。本発明はまた、心血管障害を有する患者を処置する方法であって、HDL上昇剤又はHDL模倣剤を用いた、特にCETP阻害剤/モジュレーターを用いた処置から恩恵を受け得る患者の遺伝子型決定及び選択を含む方法を提供する。驚くべきことに、dal-OUTCOMESの患者コホートのファーマコゲノミクス研究は、ダルセトラピブに対する個体の応答に関連する、並びにHDL上昇剤又はHDL模倣剤(特に、CETP阻害剤/モジュレーター)に対する治療応答を予測する及びHDL上昇剤又はHDL模倣剤(特に、CETP阻害剤/モジュレーター)を用いて患者を処置する上で有用である、一塩基多型(SNP)、遺伝マーカーを見いだした。
【0013】
本発明は、さらに、心血管障害を治療又は防止するための方法であって、その必要性のある被験体に心血管障害を治療又は防止するのに効果的な量のHDL上昇剤又はHDL模倣剤を投与することを含む方法を提供し、ここで、被験体は、被験体のADCY9遺伝子中のrs11647778に多型を有する。いくつかの実施態様において、被験体は、rs11647778にCCの遺伝子型を有する。ある実施態様において、HDL上昇剤又はHDL模倣剤は、ナイアシン、フィブラート類、グリタゾン、ダルセトラピブ、アナセトラピブ、エバセトラピブ、DEZ-001、ATH-03、DRL-17822(Dr. Reddy’s)、DLBS-1449、RVX-208、CSL-112、CER-001又はApoA1-Milnanoである。
【0014】
本発明の遺伝子型決定法において検出される遺伝マーカーは、16番染色体上のアデニル酸シクラーゼ9型(ADCY9)遺伝子中に生じる20個のSNP:rs11647778及び場合によりrs1967309、rs12595857、rs2239310、rs11647828、rs8049452、rs12935810、rs74702385、rs17136707、rs8061182、rs111590482、rs4786454、rs2283497、rs2531967、rs3730119、rs2531971、rs2238448、rs12599911、rs12920508又はrs13337675、特にrs11647778又はrs1967309(この両者は、一緒に強い連鎖不平衡にあり(r2=0.79)、そして、HDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害剤/モジュレーターに対する応答と強く関連する)を含む。
【0015】
本発明の他の遺伝子マーカーは、rs11647778若しくはrs1967309と連鎖不平衡にあるか又は統計学的P<0.05で臨床イベントとの関連シグナルを提供するかのいずれかであるADCY9遺伝子中のSNPであって、rs11647778又はrs1967309の有用な代替バイオマーカーを提供し得るADCY9遺伝子中のSNPを含む。1つの実施態様において、rs11647778又はrs1967309との連鎖不平衡が受け継がれたSNPからなる代替バイオマーカーが検出され、rs11647778又はrs1967309の遺伝子型が推測される。
【0016】
本発明は、患者を遺伝子型決定する方法及び/又はHDL上昇薬、特にCETP阻害剤を用いて患者を処置する方法に関する。特定の実施態様において、本方法は、患者のrs11647778における遺伝子型を評価することを含む。rs11647778における3種の遺伝子型:CC、CG及びGGは、HDL上昇薬、特にCETP阻害剤に対する個体の応答の予測因子である。これらの中で、CC遺伝子型は、HDL上昇薬で処置された患者において改善された治療応答に関連し、CG遺伝子型は、部分応答に関連し、そして、GG遺伝子型は、応答の欠如(非応答)に関連する。本発明のために:CC遺伝子型を保有する患者は、HDL上昇薬を用いた処置から恩恵を受けることができ;CG遺伝子型を保有する患者は、HDL上昇薬を用いた処置から恩恵を受けることができ、そして、GG遺伝子型を保有する患者は、HDL上昇薬を用いた処置から恩恵を受けることができない。rs11647778における2種の遺伝子型CC及びCGは、心血管障害を有する患者において、CETP阻害剤、特にダルセトラピブに対して治療応答を示す。特に、rs11647778についてのCC遺伝子型は、心血管障害を有する患者において、CETP阻害剤、特にダルセトラピブに対するより大きな治療応答の指標となる。
【0017】
本発明は、多型又は遺伝子変異体を含有する核酸分子、これらの核酸分子によってコードされる変異体タンパク質、多型核酸分子を検出するための試薬、並びに当該核酸分子及びタンパク質を使用する方法及びそれらの検出のための試薬(例えば、本発明の遺伝子型決定法における使用のためのプライマー及びプローブ)を使用する方法に関する。
【0018】
1つの実施態様において、本発明は、本発明の遺伝子変異体を検出する方法及びこれらの方法における使用のためのプローブ又はプライマーなどの検出試薬を提供する。
【0019】
本発明は、具体的には、HDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害剤/モジュレーターに対する治療応答に関連する遺伝マーカー、及び本発明の遺伝子変異体を含有する合成核酸分子(DNA及びRNA分子を含む)を提供する。本発明は、さらに、そのような遺伝子変異体を含有する核酸分子によってコードされる変異体タンパク質、コードされる変異体タンパク質に対する抗体、新規遺伝子変異体又はSNP情報を含有するコンピューターベースのシステム及びデータ格納システム、試験試料中のこれらのSNPを検出する方法、本発明の遺伝子変異体の1つ以上の存在若しくは不在又は1つ以上のコードされる変異体産物(例えば、変異体mRNA転写物又は変異体タンパク質)の検出に基づいた、HDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害剤/モジュレーターが投与された場合に治療的に応答する個体を同定する方法、並びに本発明の遺伝子変異体の1つ以上を保有する心血管疾患を有する個体を処置する方法を提供する。
【0020】
本発明の例示的な実施態様は、さらに、治療計画を選択又は策定するための方法(例えば、HDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害剤/モジュレーターの処置を個体に施すか否かを決定するための方法)を提供する。
【0021】
本発明の様々な実施態様はまた、個体の遺伝子型に基づいてHDL上昇剤又はHDL模倣剤(特に、CETP阻害剤/モジュレーター)が治療的に投与され得る個体を選択するための方法、及び個体の遺伝子型に基づいてHDL上昇剤又はHDL模倣剤(特に、CETP阻害剤/モジュレーター)の臨床試験へ参加させるのために個体を選択する(例えば、それらの遺伝子型に基づいて、特にそれらの遺伝子型がrs11647778においてCC、rs2238448においてTT、及び/又はrs1967309においてAAであるとき、処置に対して正の応答をする可能性が最も高い個体を試験に参加させるために選択する、及び/又は正の応答をする可能性がなさそうな個体を試験から除外する)ための方法、又は正の応答をする可能性がなさそうな個体を、彼らに利益を与え得る代替薬の臨床試験へ参加させるために選択するための方法を提供する。
【0022】
本発明の核酸分子は、宿主細胞において変異体タンパク質を産生させるために、発現ベクターに挿入され得る。したがって、本発明はまた、本発明のSNP含有核酸分子を含むベクター、当該ベクターを含有する遺伝子改変宿主細胞、及びそのような宿主細胞を使用して組換え変異体タンパク質を発現させるための方法を提供する。別の特定の実施態様において、宿主細胞、SNP含有核酸分子、及び/又は変異体タンパク質は、HDL上昇剤又はHDL模倣剤(特に、CETP阻害剤/モジュレーター)である治療剤をスクリーニング又は同定するための方法においてターゲットとして使用され得る。
【0023】
ダルセトラピブに対する改善された応答を同定するための又は患者における心血管疾患を治療若しくは防止するための本明細書において提供される方法において決定/評価され得るADCY9の例示的なSNPは、突然変異が、配列番号2 1、19及び21に示すように、それぞれ識別子rs12595857、rs1967309、rs2238448及びrs11647778を有する一塩基多型としても公知である、4,062,592、4,065,583、4,059,439及び4,051,380位(ゲノムアセンブリGRCh37.p5)においてヌクレオチド配列の変化をもたらすSNPである。
【0024】
本発明は、HDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害剤/モジュレーターを用いた処置が心血管障害を有する患者に利益を与え得る可能性の増加の予測因子である遺伝子多型の同定に基づくものである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】:SNP rs1967309は、CETP阻害剤ダルセトラピブで処置された患者における、心血管イベント(冠動脈心疾患死、蘇生後の心停止、非致死性の心筋梗塞、非致死性の虚血性脳卒中、不安定狭心症又は予期せぬ冠血行再建)の低下に強く関連する。この図は、dal-OUTCOMES試験のダルセトラピブ群由来の患者のゲノムワイド関連解析の結果を示す。Aは、16番染色体上のADCY9遺伝子領域に強いシグナルを有するマンハッタン(Manhattan)プロットの結果を示す。各ドットは、マイナーアレル頻度>0.05を有するSNPの関連についてのP値であって、処置の間の心血管イベントの出現についてコックス(Cox)比例ハザードモデルを用いて試験して、性別及び遺伝的祖先についての5個の主成分について調整したP値を表す。Bは、P<10
-6を有する6個のインピュテーションされたSNPと共に、ADCY9領域中の一塩基多型についての結果を示す。x軸は、16番染色体上のADCY9遺伝子のゲノム位置を示す。左側のy軸は、ロジスティック回帰モデルフレームワークにおいてインピュテーション確率を加重した心血管イベントと無イベントの間の比較のためのP値の負のlog
10を示す。右側のy軸は、組換え価を示す。連鎖不平衡度は、HapMapからの参照CEU試料から推定されるとおりのr
2に応じたグレースケール勾配で表示される。
【
図2】:ダルセトラピブ及びプラセボ処置群別々の試験終了までの、ADCY9遺伝子中のrs1967309遺伝子型毎の心血管イベント(dal-OUTCOMESの主要複合イベント又は予期せぬ冠血行再建)の頻度。イベントのパーセンテージを95%CIで報告する。
【
図3】:ダルセトラピブ処置群及びプラセボ群について別々に、ADCY9遺伝子中のrs1967309SNPにおける3種の遺伝子型(GG、AG、AA)によって層別化した、心血管イベント(dal-OUTCOMESの主要複合イベント又は予期せぬ冠血行再建)の累積発生率。
【
図4】:ダルセトラピブ処置の24ヵ月間の遺伝子型による脂質レベルの変化を示す。パネルA.ダルセトラピブ群についてのADCY9 SNP rs1967309の遺伝子型群毎のベースラインから1ヶ月までの脂質値の変化の平均±SE(mg/dL)。P値は、脂質の変化と遺伝子型の間の単変量統計について示される。パネルB.ダルセトラピブ群中の患者についてのdal-Outcomes試験の経過観察期間中のLDLコレステロールの絶対値についての平均±95%CI。多変量混合回帰モデルについてのP値。
【
図5】:dal-Outcomesの遺伝子試験からの6297人の個体並びに1000のゲノムデータセットからの83人のCEU創始者、186人のJPT-CHB及び88人のYRI創始者についての76,854個のSNPからの最初の2次元(C1、C2)を示す多次元尺度構成法(MDS)プロット。データセットから除外した436個の民族学的外れ値(ethnic outliers)(+で示す)があり、分析用に保持したdal-Outcomes試料を示す。
【
図6】:dal-Outcomesの遺伝子試験からの6297人の個体並びに1000のゲノムデータセットからの83人のCEU創始者、186人のJPT-CHB及び88人のYRI創始者についての76,854個のSNPからの主成分分析からの最初の10個の成分によって説明されるゲノム変動のプロット。
【
図7】:MAF≧0.05を有するSNPのゲノムワイド関連についての帰無仮説下の予想値に対する観察された-log
10(P値)の分位数(Quantile-quantile)(QQ)プロット。斜線領域は、帰無仮説下での分布の2.5パーセンタイル及び97.5パーセンタイルを計算することによって形成された95%集中バンド(concentration band)である。ドットは、ダルセトラピブ群における参加者の心血管イベントの出現までの時間のコックス比例ハザードモデルからの順位付きP値を性別及び遺伝的祖先についての5個の主成分について調整したものを表す。観察されたゲノムインフレーション因子は、1.01であった。
【
図8】:r
2値を示すADCY9遺伝子中の27個の遺伝子型決定したSNPの連鎖不平衡、信頼区間法を使用して計算した連鎖不平衡ブロックを黒色で示し、D’統計値を赤の影で示す。dal-Outcomes試験からの5686人の白人における連鎖不平衡。
【
図9】:r
2値を示すADCY9遺伝子中の27個の遺伝子型決定したSNPの連鎖不平衡、信頼区間法を使用して計算した連鎖不平衡ブロックを黒色で示し、D’統計値を赤の影で示す。dal-Plaque-2試験の386人の参加者における連鎖不平衡。
【
図10】:PLINKソフトウェアを用いてロジスティック回帰フレームワーク内のインピュテーションされたSNPの投与量データを使用して試験して、性別及び遺伝的祖先についての5個の主成分について調整した、dal-Outcomesダルセトラピブ群におけるイベント(主要複合エンドポイント)を有する遺伝子変異体についての関連のマンハッタンプロット。
【0026】
本発明の様々な特徴及び実施態様が本明細書に開示されるが、関連する技術分野の当業者であれば、提供される教示に基づいて、本発明の他の特徴、改変及び等価物が明らかとなろう。記載される本発明は、提供される実施例及び実施態様に限定されず、様々な代替物、等価物が当業者によって認識されるだろう。本明細書において使用されるとおり、単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈が明らかに別のことを指示しない限り複数形を含む。例えば、「a」細胞(cell)は、「(複数の)細胞(cells)」も含む。
【0027】
用語「約」は、言及された数字表示と併せて使用される場合、言及された数字表示±(プラス又はマイナス)その言及された数字表示の10%以下を意味する。例えば、「約100」は、90~110を意味する。
【0028】
「アレル」は、所与の遺伝子の任意の1つ以上の選択的形態として定義される。二倍体細胞又は生物において、アレル対のメンバー(すなわち、所与の遺伝子の2つのアレル)は、相同染色体対上の対応する位置(遺伝子座)を占有し、これらのアレルが遺伝的に同一ならば、その細胞又は生物は、特定の遺伝子に関して「ホモ接合性」であると言われるが、遺伝的に異なるならば、その細胞又は生物は、「ヘテロ接合性」であると言われる。
【0029】
「遺伝子」は、特異的な機能的産物をコードする特定の染色体上の特定位置にあるヌクレオチドの秩序化配列であり、コード領域近くの非翻訳配列及び非転写配列を含み得る。そのような非コード配列は、配列の転写及び翻訳に必要な調節配列又はイントロンなどを含有し得るか、又は今までのところ対象となるSNPの出現を超えてそれらに起因する任意の機能を有し得る。
【0030】
「遺伝子型決定」は、個体がゲノム中の1つ以上の位置で保有する遺伝情報の決定を指す。例えば、遺伝子型決定は、単一のSNPについて個体がどの1つ以上のアレルを保有するかの決定、又は複数のSNPについて個体がどの1つ以上のアレルを保有するかの決定を含み得る。例えば、rs1967309において、ヌクレオチドは、ある個体においてA、他の個体においてGであり得る。その位置にAを有する個体は、Aアレルを有し、Gを有する個体はGアレルを有する。二倍体生物において、個体は、多型性位置を含有する配列の2コピーを有し、それによって、その個体は、Aアレル及びGアレル、又は代替的に、Aアレルの2コピー若しくはGアレルの2コピーを有し得る。Gアレルの2コピーを有する個体は、Gアレルに関してホモ接合性であり、Aアレルの2コピーを有する個体は、Aアレルに関してホモ接合性であり、各アレルの1コピーを有する個体は、ヘテロ接合性である。アレルは、しばしば、Aアレル(しばしばメジャーアレル)及びBアレル(しばしばマイナーアレル)と呼ばれる。遺伝子型は、AA(ホモ接合性A)、BB(ホモ接合性B)又はAB(ヘテロ接合性)であり得る。遺伝子型決定法は、一般に、AA、BB又はABとしての試料の同定を提供する。
【0031】
用語「~を含む(comprising)」は、組成物及び方法が、列挙された要素を含むが、他の要素を除外しないことを意味することが意図される。
【0032】
「HDL上昇剤又はHDL模倣剤」は、以下のメカニズムのいずれか1つによってHDLレベルを増加させる化合物を指す:CETP阻害/モジュレーション、PPARアゴニズム、LXRアゴニズム、HM74アゴニズム(ナイアシンレセプター)、甲状腺刺激ホルモンレセプターアゴニズム、リパーゼ及びHDLの異化の阻害剤、ApoA1誘導因子、HDL動脈硬化抑制(athero-protective)活性の少なくとも1つを提供する化合物、例えば、細胞性脂質流出(コレステロール及び/又はリン脂質)を増加させる化合物、抗酸化活性を有する化合物及び抗炎症活性を有する化合物。特に、HDL模倣剤は、ApoA1及びApoA1誘導体(apoA1 Milano、ApoA1 Parisなど)並びに他の類似体、ApoA1及び/又はApoAIIとリン脂質などの適切な脂質とを含有する再構成型HDL、両親媒性リポタンパク質のApoE、誘導体、類似体及びペプチド模倣体である。「HDL上昇剤又はHDL模倣剤」の例は、ナイアシン、フィブラート類、グリタゾン、ダルセトラピブ、アナセトラピブ、エバセトラピブ、DEZ-001(以前は、TA-8995として公知)(Mitsubishi Tanabe Pharma)、ATH-03(Affris)、DRL-17822(Dr. Reddy’s)、DLBS-1449(Dexa Medica)、RVX-208(Resverlogix)、CSL-112(Cls Behring)、CER-001(Cerenis)、ApoA1-Milnano(Medicine Company)である。「HDL上昇剤又はHDL模倣剤」の特定の例は、ナイアシン、フィブラート類、グリタゾン、ダルセトラピブ、アナセトラピブ、エバセトラピブ、トルセトラピブ、好ましくはナイアシン、フィブラート類、グリタゾン、ダルセトラピブ、アナセトラピブ又はエバセトラピブである。より特定すると、HDL上昇剤又は模倣剤は、CETP阻害剤/モジュレーターから選択される。CETP阻害剤/モジュレーターの例は、ダルセトラピブ、アナセトラピブ、エバセトラピブ、DEZ-001(以前は、TA-8995として公知)(Mitsubishi Tanabe Pharma)、ATH-03(Affris)、DRL-17822(Dr. Reddy’s)、DLBS-1449(Dexa Medica)である。より特定すると、CETP阻害剤/モジュレーターの例は、ダルセトラピブ、アナセトラピブ、エバセトラピブ及びトルセトラピブ、好ましくはダルセトラピブ、アナセトラピブ及びエバセトラピブである。最も特定すると、本発明に係るHDL上昇剤又は模倣剤は、CETP阻害剤/モジュレーターを指し、とりわけCETP阻害剤/モジュレーターがダルセトラピブである場合である。
【0033】
「CETP阻害剤/モジュレーター」は、CETPを阻害すること及び/又はCETPポリペプチドに結合後にCETPポリペプチドのコンフォメーション変化を誘導することによってCETP活性を減少させる化合物を指す(標準的な輸送アッセイによって評価)。CETPポリペプチドのCETPコンフォメーション変化は、CETP活性がHDL粒子の間を進行することを可能にし、発生期のプレベータHDL形成の産生を増加させることによってそのリサイクリング/代謝回転を増加させる。好ましくは、CETP阻害剤/モジュレーターは、CETPポリペプチドのシステイン13に結合するであろう全ての化合物を指す。より好ましくは、「CETP阻害剤/モジュレーター」は、S-[2-[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシルカルボニルアミノ]-フェニル]2-メチルチオプロピオナート、1-(2-エチル-ブチル)-シクロヘキサンカルボン酸(2-メルカプト-フェニル)-アミド及び/又はビス[2-[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシルカルボニルアミノ]フェニル]ジスルフィドから選択される。最も好ましくは、「CETP阻害剤/モジュレーター」は、プロドラッグとしてのS-[2-[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシルカルボニルアミノ]-フェニル]2-メチルチオプロピオナートであるか又はその活性代謝物としての1-(2-エチル-ブチル)-シクロヘキサンカルボン酸(2-メルカプト-フェニル)-アミドである。
【0034】
「アナセトラピブ」は、MK0859、CAS875446-37-0又は式(X
A):
【化1】
で示される化合物としても公知の((4S,5R)-5-[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]-3-{[4’-フルオロ-2’-メトキシ-5’-(プロパン-2-イル)-4-(トリフルオロメチル)[1,1’-ビフェニル]-2-イル]メチル}-4-メチル-I,3-オキサゾリジン-2-オン)を指す。
【0035】
アナセトラピブ並びに該化合物を製造及び使用する方法は、WO2006/014413、WO2006/014357、WO2007005572に記載されている。
【0036】
「エバカトラピブ(Evacatrapib)」は、LY2484595、CAS1186486-62-3又は式(X
B):
【化2】
で示される化合物としても公知のtrans-4-({(5S)-5-[{[3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル]メチル}(2-メチル-2H-テトラゾール-5-イル)アミノ]-7,9-ジメチル-2,3,4,5-テトラヒドロ-1H-ベンゾアゼピン-1-イル}メチル)シクロヘキサンカルボン酸を指す。
【0037】
エバセトラピブ並びに該化合物を製造及び使用する方法は、WO2011002696に記載されている。
【0038】
「トルセトラピブ」は、CP-529,414、CAS262352-17-0又は式(X
C):
【化3】
で示される化合物としても公知の(2R,4S)-4-[(3,5-ビストリフルオロメチルベンジル)メトキシカルボニルアミノ]-2-エチル-6-トリフルオロメチル-3,4-ジヒドロ-2H-キノリン-1-カルボン酸エチルエステルを指す。
【0039】
トルセトラピブ並びに該化合物を製造及び使用する方法は、WO0017164又はWO0140190に記載されている。
【0040】
「BAY 60-5521」は、CAS893409-49-9又は式(X
D):
【化4】
で示される化合物としても公知の(5S)-5-キノリノール、4-シクロヘキシル-2-シクロペンチル-3-[(S)-フルオロ[4-(トリフルオロメチル)フェニル]メチル]-5,6,7,8-テトラヒドロ-7,7-ジメチル-を指す。
【0041】
BAY 60-5521並びに該化合物を製造及び使用する方法は、WO2006063828に記載されている。
【0042】
「処置」は、治療的処置と予防手段又は防止手段の両方を指す。処置を必要とする者は、すでに障害を有する者及び障害が防止又は遅延されるべき者を含む。
【0043】
用語「多型」、「多型部位」、「多型性部位」又は「一塩基多型部位」(SNP部位)又は「一塩基多型」は、集団内で変動する遺伝子配列中の位置を指す。多型は、最もレアな形態の存在が突然変異だけでは説明できないような頻度で、集団において2種以上の形態の遺伝子又は遺伝子「アレル」内の位置が出現することである。好ましい多型性部位は、少なくとも2つのアレルを有する。意味は、多型性アレルが宿主にある程度の表現型変動性を付与するということである。多型は、遺伝子のコード領域と非コード領域の両方に出現し得る。多型は、単一ヌクレオチド部位に出現し得るか、又は挿入若しくは欠失を伴い得る。そのような多型の位置は、遺伝子中、染色体上若しくはその転写物(transcriptor)上のヌクレオチド位置によって、ヌクレオチド多型によって変化されるアミノ酸によって同定され得る。個々の多型はまた、当業者に公知の固有の識別子(「参照SNP」、「refSNP」又は「rs#」)が割り当てられ、例えばNCBIウェブサイトで入手可能なヌクレオチド配列変異の一塩基多型データベース(dbSNP)で使用される。
【0044】
用語「連鎖不平衡」又は「連鎖不平衡にある」又は「LD」は、個体の集団におけるアレルの非ランダムな関連を指し、言い換えると、それは、特定の多型性形態と偶然から予想されるよりも高い頻度で異なる染色体位置にある別の多型性形態との優先的な分離である。反対に、予想される頻度で同時出現するアレルは、「連鎖平衡」にあると言われる。
【0045】
接頭語の「rs」は、NCBIのSNPデータベース http://www.ncbi.nlm.nih.gov/snp/?term に見いだされるデータベース中のSNPを指す。「rs」番号は、NCBIのrsSNP ID形式である。
【0046】
用語「試料」は、細胞、組織試料又は体液を含む、患者又は個体から採取された任意の生物学的試料を含む。例えば、試料は、皮膚試料、頬細胞試料、唾液又は血液細胞を含み得る。試料は、非限定的に、単一細胞、複数の細胞、細胞フラグメント、体液の一部分、全血、血小板、血清、血漿、赤血球、白血球、内皮細胞、組織生検材料、滑液及びリンパ液を含むことができる。特に、「試料」は、血液細胞を指す。
【0047】
用語「治療剤」は、心血管障害を治療又は防止することができる薬剤を指す。本明細書に使用されるとおりの「心血管障害を治療又は防止することができる」薬剤は、心血管障害のヒト及び/又は細胞若しくは動物モデルにおいて心血管障害を治療及び/又は防止することができる分子を指す。
【0048】
本明細書に使用されるとおりの「改善された応答多型」、「改善された応答遺伝子型」又は「応答性遺伝子型」は、被験体がHDL上昇剤又はHDL模倣剤の投与に対してより小さく応答することを予測するアレル変異体又は遺伝子型又は多型(例えば、rs11647778/CG又はrs11647778/GG)と比較した、被験体がHDL上昇剤又はHDL模倣剤を用いた処置に治療的に応答して恩恵を受けることを予測する(これは、心血管イベント数の減少によって測定され得る)、本明細書に記載されるとおりのADCY9遺伝子内の1つ以上の多型性部位におけるアレル変異体又は遺伝子型(例えば、rs11647778/CC)を指す。「低減した応答」、「部分応答」、「非応答」又は「治療有効性の欠如」は、「改善された応答遺伝子型」を有する被験体に比べた、心血管イベント数の相対的増加によって測定され得る。あるいは、「改善された応答」、「応答者」又は「治療有効性」は、HDL上昇剤又はHDL模倣剤に対する「非応答」又は「部分応答」に関連する多型を保有する被験体に比べた、心血管イベント数の相対的減少によって測定され得る。特に、rs11647778/CC及び場合によりrs12595857/GG、rs1967309/AA、rs111590482/AG、rs111590482/GG、rs11647828/GG、rs12935810/GG、rs17136707/GG、rs2239310/GG、rs2283497/AA、rs2531967/AA、rs3730119/AA、rs4786454/AA、rs74702385/GA、rs74702385/AA、rs8049452/GG、rs8061182/AA及びrs2238448/TTは、改善された応答遺伝子型である。より特定すると、rs11647778/CC及び場合によりrs1967309/AA、及びrs2238448/TTは、改善された応答遺伝子型である。最も特定すると、rs11647778/CC及びrs1967309/AAは、改善された応答遺伝子型である。
【0049】
本明細書に使用されるとおりの「心血管イベント」は、心血管死、非致死性の心筋梗塞(MI)、虚血起源の非致死性脳卒中、不安定狭心症及び冠血行再建のための入院を指す。
【0050】
本明細書に使用されるとおりの「オリゴヌクレオチド」は、多様な長さの核酸又はポリヌクレオチドである。そのようなオリゴヌクレオチドは、特異的核酸の検出及び/又は増幅のためのプローブ、プライマーとして、並びにマイクロアレイ(アレイ)の製造に有用であり得る。そのようなDNA又はRNA鎖は、不溶性支持体に連結され得る成長鎖への活性化モノマーの連続付加(5’-3’又は3’-5’)によって合成され得る。その後の個別の使用のために、又は例えばアレイにおける不溶性支持体の一部としてオリゴヌクレオチドを合成するために、数多くの方法が当技術分野において公知である(BERNFIELD MR. and ROTTMAN FM. J. Biol. Chem. (1967) 242(18):4134-43; SULSTON J. et al. PNAS (1968) 60(2):409-415; GILLAM S. et al. NucleicAcidRes. (1975) 2(5):613-624; BONORA GM. et al. NucleicAcidRes.(1990) 18(11):3155-9; LASHKARI DA. et al. PNAS (1995) 92(17):7912-5; MCGALL G. et al. PNAS (1996) 93(24): 13555-60; ALBERT TJ. et al. Nucleic Acid Res. (2003) 31(7): e35; GAO X. et al. Biopolymers (2004) 73(5):579-96; 及び MOORCROFT MJ. et al. Nucleic Acid Res. (2005) 33(8): e75)。一般に、オリゴヌクレオチドは、使用されている方法に応じて、多様な条件下で、活性化モノマー及び保護されたモノマーの段階的付加を通して合成される。その後、特異的保護基を除去することでさらなる伸長が可能となり、その後及び合成が完了した後に、全ての保護基を除去することができ、そのオリゴヌクレオチドは、所望により完全鎖の精製のためにその固体支持体から除去される。
【0051】
用語「遺伝子型」は、通常、1つの遺伝子又は少数の遺伝子又は特定の状況に関連する遺伝子領域(すなわち、特定の表現型の原因となる遺伝子座)に関する生物の遺伝子構成を指す。特に、例えばrs1967309 SNPの可能な遺伝子型である遺伝子型AA、AG、又はGGなどの、遺伝子中の所与の位置でのアレルの特異的組み合わせ。
【0052】
「表現型」は、生物の観察可能な性質として定義される。表2、3、4及び5は、ADCY9 SNPと、HDL上昇剤又はHDL模倣剤を用いた心血管障害の処置に対する応答性の指標を表す値との遺伝子型の相関を示す。
【0053】
本明細書に使用されるとおりの用語「バイオマーカー」は、特定の変異体アレル(SNPなどの多型性部位)又は野生型アレルの配列特性を指す。バイオマーカーはまた、特定の変異体又は野生型アレルによってコードされるペプチド又はエピトープを指す。
【0054】
本明細書に使用されるとおりの用語「代替マーカー」は、本発明の改善された応答遺伝子型、特にrs11647778/CCと連鎖不平衡で存在するSNPを含む遺伝子変異体を指す。
【0055】
本明細書に使用されるとおりの用語「遺伝マーカー」は、HDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害剤/モジュレーターに対する応答に関連する、特定の遺伝子の多型性部位の変異体を指す。特に、本明細書に使用されるとおりの「遺伝マーカー」は、HDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害剤/モジュレーターに対する応答に関連する、ADCY9遺伝子中の多型性部位の変異体を表す。
【0056】
rs11647778における3種の遺伝子型:CC、CG及びGGは、HDL上昇薬、特にCETP阻害剤に対する個体の応答の予測因子である。これらの中で、CC遺伝子型は、HDL上昇薬に対する患者における改善された治療応答に関連し、CG遺伝子型は、部分応答に関連し、そして、GG遺伝子型は、応答の欠如(非応答)に関連する。本発明のために:CC遺伝子型を保有する患者は、HDL上昇薬を用いた処置から恩恵を受けることができ;CG遺伝子型を保有する患者は、HDL上昇薬を用いた処置から恩恵を受けることができ、そして、GG遺伝子型を保有する患者は、HDL上昇薬を用いた処置から恩恵を受けることができない。心血管障害を有する患者中のrs11647778におけるCC及びCG遺伝子型は、CETP阻害剤、特にダルセトラピブに対して治療応答を示す。特に、心血管障害を有する患者中のrs11647778におけるCC遺伝子型は、CETP阻害剤、特にダルセトラピブに対するより大きな治療応答の指標となる。
【0057】
rs2238448における3種の遺伝子型:TT、TC及びCCは、HDL上昇薬、特にCETP阻害剤に対する個体の応答の予測因子である。これらの3種の遺伝子型の中で、TT遺伝子型は、HDL上昇薬で処置された患者における改善された治療応答に関連するが、CC遺伝子型は、応答の欠如(非応答)に関連する。TC遺伝子型を保有する患者は、この遺伝子型が部分応答に関連するので、HDL上昇薬を用いた処置から恩恵を受けることができる。本発明のために:TT又はCT遺伝子型を保有する患者は、HDL上昇薬を用いた処置から恩恵を受けることができ、CC遺伝子型を保有する患者は、HDL上昇薬を用いた処置から恩恵を受けることができない。心血管障害を有する患者のrs2238448におけるTT遺伝子型は、他の遺伝子型と比較して、CETP阻害剤、特にダルセトラピブに対するより大きな治療応答を示す。
【0058】
本明細書に記載されるある方法では、1つ以上のバイオマーカーを使用して、HDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害剤/モジュレーターを用いた処置から恩恵を受けるだろう個体を同定又は選択する。本発明における使用のためのSNPバイオマーカーは、処置に対する治療応答(R)又は処置に対する非応答(NR)のいずれかの指標となることができる。表2は、多型性部位rs1967309に存在する、dal-Outcomesコホートで観察された遺伝子型を示すが、それらは、ダルセトラピブ又はHDL上昇剤又はHDL模倣剤、特に他のCETP阻害剤/モジュレーターに対する応答を予測するためのバイオマーカーとして使用され得る。表4は、多型性部位rs11647778に存在する、dal-Outcomes及びdal-Plaque-2コホートで観察された遺伝子型を示すが、それらは、ダルセトラピブ又はHDL上昇剤又はHDL模倣剤、特に他のCETP阻害剤/モジュレーターに対する応答を予測するためのバイオマーカーとして使用され得る。表2~5に示される各遺伝子型は、単独で、又は他の多型性部位での遺伝子型と組み合わせて、HDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害薬/モジュレーターに対する応答を予測するためのバイオマーカーとして使用され得る。
【0059】
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
Rs11647778、rs1967309及びrs12595857は、ADCY9遺伝子発現に対して調節活性を有することに一致する領域中のADCY9遺伝子のイントロン(非コード)領域に位置する。
【0064】
本明細書に記載されるある方法では、HDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害剤/モジュレーターを用いた処置に対して治療的に応答するだろう個体が、本発明の遺伝子型決定法を使用する処置のために同定及び選択される。特に、rs11647778/CC及び場合により以下の改善された応答遺伝子型:rs12595857/GG、rs1967309/AA、rs111590482/AG、rs111590482/GG、rs11647828/GG、rs12935810/GG、rs17136707/GG、rs2239310/GG、rs2283497/AA、rs2531967/AA、rs3730119/AA、rs4786454/AA、rs74702385/GA、rs74702385/AA、rs8049452/GG、rs8061182/AA、rs2238448/TTの1つ以上を保有する患者が、本発明の方法における処置のために選択される。より特定すると、rs11647778/CC及び場合によりrs12595857/GG、rs2238448/TT及び/又はrs1967309/AA遺伝子型を保有する患者が、本発明の方法における処置のために選択され:最も特定すると、rs11647778/CC及びrs1967309/AA遺伝子型を保有する患者が、本発明の方法における処置のために選択される。
【0065】
別の実施態様において、本発明は、HDL上昇剤又はHDL模倣剤から恩恵を受けている被験体を同定するための方法であって、ADCY9遺伝子中の多型性部位の1つ以上における前記被験体の遺伝子型を決定すること(例えば、遺伝子型決定)を含む方法を提供する。
【0066】
別の実施態様において、本発明は、HDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害剤に対する個体の応答性を決定するための方法であって、本明細書に開示されるプライマー又はプローブの1つ以上を使用して、rs11647778及び場合によりrs1967309、rs12595857、rs2239310、rs11647828、rs8049452、rs12935810、rs74702385、rs17136707、rs8061182、rs111590482、rs4786454、rs2283497、rs2531967、rs3730119、rs13337675、rs12920508、rs12599911、rs2531971又はrs2238448の1つ以上における前記被験体の遺伝子型を決定すること(例えば、遺伝子型決定)を含む方法を提供する。
【0067】
別の実施態様において、本発明は、HDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害剤に対する個体の応答性を決定するための方法であって、本明細書に開示されるプライマー又はプローブの1つ以上を使用して、rs11647778及び場合によりrs1967309、rs12595857、rs2239310、rs11647828、rs8049452、rs12935810、rs74702385、rs17136707、rs8061182、rs111590482、rs4786454、rs2283497、rs2531967又はrs3730119、rs13337675の1つ以上における前記被験体の遺伝子型を決定すること(例えば、遺伝子型決定)を含む方法を提供する。
【0068】
特定の実施態様において、本発明は、多型性部位がrs11647778及び場合により以下:rs1967309、rs12595857、rs2239310、rs11647828、rs8049452、rs12935810、rs74702385、rs17136707、rs8061182、rs111590482、rs4786454、rs2283497、rs2531967、rs3730119、rs13337675、rs12920508、rs12599911、rs2531971又はrs2238448なる群より選択される部位の1つ以上を含む、特定すると多型性部位がrs2239310、rs11647828、rs8049452、rs12935810、rs74702385、rs17136707、rs8061182、rs111590482、rs4786454、rs2283497、rs2531967、rs3730119及びrs13337675からなる群より選択される、より特定すると多型性部位がrs11647778及び場合によりrs1967309又はrs12595857である、より特定すると多型性部位がrs11647778及び場合によりrs1967309である、特に対応する遺伝子型がCC及びAAをそれぞれ含む、本明細書に記載される方法を提供する。
【0069】
特定の実施態様において、本発明は、少なくとも1つの多型性部位がrs11647778及び場合により以下:rs1967309、rs12595857、rs2239310、rs11647828、rs8049452、rs12935810、rs74702385、rs17136707、rs8061182、rs111590482、rs4786454、rs2283497、rs2531967、rs3730119、rs13337675、rs12920508、rs12599911、rs2531971又はrs2238448からなる群より選択される1つ以上の多型性部位である、特定すると場合により多型性部位がrs2239310、rs11647828、rs8049452、rs12935810、rs74702385、rs17136707、rs8061182、rs111590482、rs4786454、rs2283497、rs2531967、rs3730119及びrs13337675からなる群より選択される、より特定すると場合による多型性部位がrs1967309又はrs12595857である、より特定すると場合による多型性部位がrs1967309である、1つ以上の多型性部位の遺伝子型決定の方法を提供する。
【0070】
特定の実施態様において、本発明は、rs11647778/CC及び場合によりrs12595857/GG、rs1967309/AA、rs111590482/AG、rs111590482/GG、rs11647828/GG、rs12935810/GG、rs17136707/GG、rs2239310/GG、rs2283497/AA、rs2531967/AA、rs3730119/AA、rs4786454/AA、rs74702385/GA、rs74702385/AA、rs8049452/GG、rs8061182/AA又はrs2238448/TTの1つ以上を保有する被験体が、HDL上昇剤又はHDL模倣剤を用いた処置から恩恵を受ける方法であって、特定するとHDL上昇剤又はHDL模倣剤がCETP阻害剤/モジュレーターである、より特定するとHDL上昇剤又はHDL模倣剤がS-(2-{[1-(2-エチル-ブチル)-シクロヘキサンカルボニル]-アミノ}-フェニル)エステルである方法を提供する。特定の実施態様において、本発明は、HDL上昇剤又はHDL模倣剤が前記被験体に投与される方法を提供する。
【0071】
特定の実施態様において、本発明は、rs11647778/CC及び場合によりrs12595857/GG、rs1967309/AA、rs111590482/AG、rs111590482/GG、rs11647828/GG、rs12935810/GG、rs17136707/GG、rs2239310/GG、rs2283497/AA、rs2531967/AA、rs3730119/AA、rs4786454/AA、rs74702385/GA、rs74702385/AA、rs8049452/GG、rs8061182/AA又はrs2238448/TTの1つ以上を保有する被験体がHDL上昇剤又はHDL模倣剤を用いて処置される方法であって、特定するとHDL上昇剤又はHDL模倣剤がCETP阻害剤/モジュレーターである、より特定するとHDL上昇剤又はHDL模倣剤がS-(2-{[1-(2-エチル-ブチル)-シクロヘキサンカルボニル]-アミノ}-フェニル)エステルである方法を提供する。
【0072】
特定の実施態様において、本発明は、rs11647778/CC及び場合によりrs12595857/GG、rs1967309/AA、rs111590482/AG、rs111590482/GG、rs11647828/GG、rs12935810/GG、rs17136707/GG、rs2239310/GG、rs2283497/AA、rs2531967/AA、rs3730119/AA、rs4786454/AA、rs74702385/GA、rs74702385/AA、rs8049452/GG、rs8061182/AA又はrs2238448/TTの1つ以上を保有する被験体にHDL上昇剤又はHDL模倣剤が投与される方法であって、特定するとHDL上昇剤又はHDL模倣剤がCETP阻害剤/モジュレーターである、より特定するとHDL上昇剤又はHDL模倣剤がS-(2-{[1-(2-エチル-ブチル)-シクロヘキサンカルボニル]-アミノ}-フェニル)エステルである方法を提供する。
【0073】
特定の実施態様において、本発明は、被験体が心血管障害を有し、特に、心血管障害が、哺乳動物におけるアテローム動脈硬化症、末梢血管疾患、脂質異常症、高ベータリポタンパク質血症、低アルファリポタンパク質血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、家族性高コレステロール血症、狭心症、虚血、心臓虚血、脳卒中、心筋梗塞、再灌流傷害、血管形成後再狭窄、高血圧、及び糖尿病、肥満又は内毒素血症の血管合併症からなる群より選択される、より特定すると心血管障害が、心血管疾患、冠動脈心疾患、冠動脈疾患、低アルファリポタンパク質血症、高ベータリポタンパク質血症、高コレステロール血症、高脂血症、アテローム動脈硬化症、高血圧、高トリグリセリド血症、高リポタンパク質血症(hyperlipidoproteinemia)、末梢血管疾患、狭心症、虚血及び心筋梗塞からなる群より選択される方法を提供する。
【0074】
別の実施態様において、本発明は、その必要性のある被験体における心血管障害を治療又は防止する方法であって、以下を含む方法を提供する:
(a)rs11647778及び場合により以下の部位:rs1967309、rs12595857、rs2239310、rs11647828、rs8049452、rs12935810、rs74702385、rs17136707、rs8061182、rs111590482、rs4786454、rs2283497、rs2531967、rs3730119、rs13337675、rs12920508、rs12599911、rs2531971又はrs2238448の1つ以上において改善された応答遺伝子型を有する被験体を選択すること;
(b)前記被験体にHDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害剤/モジュレーターを投与すること。
【0075】
別の実施態様において、本発明は、その必要性のある被験体における心血管障害を治療又は防止する方法であって、以下を含む方法を提供する:
(a)rs11647778及び場合により以下の部位:rs1967309、rs12595857、rs2239310、rs11647828、rs8049452、rs12935810、rs74702385、rs17136707、rs8061182、rs111590482、rs4786454、rs2283497、rs2531967、rs3730119、rs13337675の1つ以上において改善された応答遺伝子型を有する被験体を選択すること;
(b)前記被験体にHDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害剤/モジュレーターを投与すること。
【0076】
特定の実施態様において、本発明は、その必要性のある被験体における心血管障害を処置する方法であって、以下を含む方法を提供する:
(a)rs11647778及び場合によりrs1967309及び/又はrs2238448において改善された応答多型を有する被験体、特に、rs11647778においてCC遺伝子型、rs1967309においてAA遺伝子型及びrs2238448においてTT遺伝子型を有する被験体を選択すること;
(b)前記被験体にHDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害剤/モジュレーターを投与すること。
【0077】
特定の実施態様において、本発明は、その必要性のある被験体における心血管障害を治療又は防止する方法であって、以下を含む方法を提供する:
(a)rs11647778及び場合によりrs1967309において改善された応答多型を有する被験体、特に、rs11647778におけるCC遺伝子型及びrs1967309におけるAA遺伝子型を有する被験体を選択すること;
(b)前記被験体にHDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害剤/モジュレーターを投与すること。
【0078】
別の実施態様において、本発明は、その必要性のある被験体における心血管障害を治療又は防止する方法であって、以下を含む方法を提供する:
(a)rs11647778及び場合により以下の部位:rs1967309、rs12595857、rs2239310、rs11647828、rs8049452、rs12935810、rs74702385、rs17136707、rs8061182、rs111590482、rs4786454、rs2283497、rs2531967、rs3730119、rs13337675、rs12920508、rs12599911、rs2531971又はrs2238448の1つ以上において被験体を遺伝子型決定すること;
(b)前記被験体にHDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害剤/モジュレーターを投与すること。
【0079】
別の実施態様において、本発明は、その必要性のある被験体における心血管障害を治療又は防止する方法であって、以下を含む方法を提供する:
(a)rs11647778及び場合により以下の部位:rs1967309、rs12595857、rs2239310、rs11647828、rs8049452、rs12935810、rs74702385、rs17136707、rs8061182、rs111590482、rs4786454、rs2283497、rs2531967、rs3730119、rs13337675の1つ以上において被験体を遺伝子型決定すること;
(b)前記被験体にHDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害剤/モジュレーターを投与すること。
【0080】
本発明はまた、以下を含む、患者を治療又は防止する方法を提供する:
a.遺伝マーカーrs11647778/CC並びに場合によりrs12595857/GG、rs1967309/AA、rs111590482/AG、rs111590482/GG、rs11647828/GG、rs12935810/GG、rs17136707/GG、rs2239310/GG、rs2283497/AA、rs2531967/AA、rs3730119/AA、rs4786454/AA、rs74702385/GA、rs74702385/AA、rs8049452/GG及びrs8061182/AAからなる群より選択される1つ以上の遺伝マーカーの存在について患者試料を分析すること、及び
b.前記遺伝マーカーの1つ以を保有する患者に、HDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害剤/モジュレーターを投与すること。
【0081】
本発明はまた、以下を含む、患者を処置する方法を提供する:
a.遺伝マーカーrs11647778/CC並びに場合によりrs12595857/GG、rs1967309/AA、rs111590482/AG、rs111590482/GG、rs11647828/GG、rs12935810/GG、rs17136707/GG、rs2239310/GG、rs2283497/AA、rs2531967/AA、rs3730119/AA;、rs4786454/AA、rs74702385/GA、rs74702385/AArs8049452/GG及びrs8061182/AAからなる群より選択される1つ以上の遺伝マーカーの存在について患者試料を分析すること、及び
b.前記遺伝マーカーの1つ以上を保有する患者に、HDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害剤/モジュレーターを投与すること。
【0082】
特定の実施態様において、本発明は、遺伝子型がrs11647778並びに場合によりrs1967309及びrs12595857から選択される1つ以上の部位で決定される方法を提供する。
【0083】
特定の実施態様において、本発明は、以下を含む、HDL上昇薬に対する個体の応答性を決定する方法を提供する:
a.遺伝物質を含む試料を個体から得ること;
b.試料をプローブ又はプライマーなどの試薬と接触させて、試薬と表10から選択される遺伝マーカーとの間に複合体を形成すること;
c.複合体を検出して、試料に関連するデータセットを得ること、及び
d.データセットを解析して、遺伝マーカーの存在又は不在を決定すること。
【0084】
特定の実施態様において、本発明は、以下を含む、心血管疾患の1つ以上の症状を有する患者におけるHDL上昇薬に対する応答性を決定する方法を提供する:
a.遺伝物質を含む試料を患者から得ること;
b.遺伝物質をプローブ又はプライマーセットなどの試薬と接触させて、試薬と表10から選択される遺伝マーカーとの間に複合体を形成すること;
c.複合体を検出して、試料に関連するデータセットを得ること;
d.データセットを解析して、遺伝マーカーの存在又は不在を決定すること;及び
e.HDL上昇薬を受ける候補として1つ以上の遺伝マーカーを有する患者を同定すること。
【0085】
提供された遺伝子型決定法において形成された試薬(プローブ又はプライマーなど)と遺伝マーカーとの間の複合体は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)又はDNA配列決定のいずれかによって形成され得る。そのような方法は、本明細書に記載されており、当業者に周知である。
【0086】
本発明は、rs11647778/CC、rs12595857/GG;rs1967309/AA;rs111590482/AG;rs111590482/GG;rs11647828/GG;rs12935810/GG;rs17136707/GG;rs2239310/GG;rs2283497/AA;rs2531967/AA;rs3730119/AA;rs4786454/AA;rs74702385/GA;rs74702385/AA;rs8049452/GG;rs11647778/CG、rs8061182/AA;rs1967309/GA、rs12595857/AG、rs13337675/AG、rs13337675/GG、rs17136707/AG、rs2239310/AG、rs2283497/CA、rs2531967/GA、rs3730119/GA、rs4786454/GA、rs8049452/GA、rs8061182/AG、rs12595857/GG、rs1967309/AA、rs111590482/AG、rs111590482/GG、rs11647828/GG、rs12935810/GG、rs17136707/GG、rs2239310/GG、rs2283497/AA、rs2531967/AA、rs3730119/AA、rs4786454/AA、rs74702385/GA、rs74702385/AA、rs8049452/GG、rs8061182/AA、rs12935810/GA、rs12935810/AA、rs11647828/AA、rs2531967/GG、rs3730119/GG、rs2239310/AA、rs12595857/AA、rs111590482/AA、rs74702385/GG、rs11647778/GG、rs1967309/GG、rs2283497/CC、rs8061182/GG、rs17136707/AA、rs2238448/TT、rs2238448/TC、rs2238448/CC、rs8049452/AA、rs4786454/GG、rs13337675/AA及びrs11647828/AG、好ましくはrs11647778から選択される遺伝マーカーを遺伝子型決定するための試薬(プローブ又はプライマーなど)、特にプライマー又はプローブを提供する。
【0087】
特定の実施態様において、プライマーは、15~30ヌクレオチド長であるDNA鎖を含み、高ストリンジェンシー条件下でrs11647778、rs1967309、rs12595857、rs2239310、rs11647828、rs8049452、rs12935810、rs74702385、rs17136707、rs8061182、rs111590482、rs4786454、rs2283497、rs2531967、rs3730119、rs13337675、rs12920508、rs12599911、rs2531971又はrs2238448に隣接する16番染色体領域にハイブリダイズする。
【0088】
特定の実施態様において、プライマーは、15~30ヌクレオチド長であるDNA鎖を含み、高ストリンジェンシー条件下でrs11647778に隣接する16番染色体領域にハイブリダイズする。
【0089】
特定の実施態様において、プライマーは、15~30ヌクレオチド長であるDNA鎖を含み、高ストリンジェンシー条件下でrs11647778、rs1967309、rs12595857、rs2239310、rs11647828、rs8049452、rs12935810、rs74702385、rs17136707、rs8061182、rs111590482、rs4786454、rs2283497、rs2531967、rs3730119、rs2238448又はrs13337675に隣接する16番染色体領域にハイブリダイズする。
【0090】
特定の実施態様において、プライマーは、15~30ヌクレオチド長であるDNA鎖を含み、高ストリンジェンシー条件下でrs11647778に隣接する16番染色体領域にハイブリダイズする。
【0091】
別の実施態様において、試薬は、15~30ヌクレオチド長であるDNA鎖を含むプライマーであり、高ストリンジェンシー条件下でrs11647778、rs1967309、rs12595857、rs2239310、rs11647828、rs8049452、rs12935810、rs74702385、rs17136707、rs8061182、rs111590482、rs4786454、rs2283497、rs2531967、rs3730119、rs13337675、rs12920508、rs12599911、rs2531971又はrs2238448と重複する16番染色体領域にハイブリダイズする。
【0092】
別の実施態様において、試薬は、15~30ヌクレオチド長であるDNA鎖を含むプライマーであり、高ストリンジェンシー条件下でrs11647778と重複する16番染色体領域にハイブリダイズする。
【0093】
別の実施態様において、試薬は、15~30ヌクレオチド長であるDNA鎖を含むプライマーであり、高ストリンジェンシー条件下でrs11647778、rs1967309、rs12595857、rs2239310、rs11647828、rs8049452、rs12935810、rs74702385、rs17136707、rs8061182、rs111590482、rs4786454、rs2283497、rs2531967、rs3730119、rs2238448又はrs13337675と重複する16番染色体領域にハイブリダイズする。
【0094】
別の実施態様において、試薬は、15~30ヌクレオチド長であるDNA鎖を含むプライマーであり、高ストリンジェンシー条件下でrs11647778と重複する16番染色体領域にハイブリダイズする。
【0095】
別の実施態様において、プローブは、15~30ヌクレオチド長である核酸であり、高ストリンジェンシー条件下でrs11647778、rs1967309、rs12595857、rs2239310、rs11647828、rs8049452、rs12935810、rs74702385、rs17136707、rs8061182、rs111590482、rs4786454、rs2283497、rs2531967、rs3730119、rs13337675、rs12920508、rs12599911、rs2531971又はrs2238448と重複する16番染色体領域にハイブリダイズする。
【0096】
別の実施態様において、プローブは、15~30ヌクレオチド長である核酸であり、高ストリンジェンシー条件下でrs11647778と重複する16番染色体領域にハイブリダイズする。
【0097】
別の実施態様において、プローブは、15~30ヌクレオチド長である核酸であり、高ストリンジェンシー条件下でrs11647778、rs1967309、rs12595857、rs2239310、rs11647828、rs8049452、rs12935810、rs74702385、rs17136707、rs8061182、rs111590482、rs4786454、rs2283497、rs2531967、rs3730119、rs2238448又はrs13337675と重複する16番染色体領域にハイブリダイズする。
【0098】
別の実施態様において、プローブは、15~30ヌクレオチド長である核酸であり、高ストリンジェンシー条件下でrs11647778と重複する16番染色体領域にハイブリダイズする。
【0099】
別の実施態様において、プローブは、15~30ヌクレオチド長である核酸であり、高ストリンジェンシー条件下で配列番号1~配列番号21から選択されるオリゴヌクレオチドにハイブリダイズする。
【0100】
別の実施態様において、プローブは、15~30ヌクレオチド長である核酸であり、高ストリンジェンシー条件下で配列番号21の配列を有するオリゴヌクレオチドにハイブリダイズする。
【0101】
別の実施態様において、プローブは、15~30ヌクレオチド長である核酸であり、高ストリンジェンシー条件下で配列番号19の配列を有するオリゴヌクレオチドにハイブリダイズする。
【0102】
特定の実施態様において、本発明は、HDL上昇剤又はHDL模倣剤がCETP阻害剤/モジュレーター、特に、HDL上昇剤又はHDL模倣剤がS-(2-{[1-(2-エチル-ブチル)-シクロヘキサンカルボニル]-アミノ}-フェニル)エステルである方法を提供する。
【0103】
さらに別の実施態様において、本発明は、その必要性のある被験体における心血管障害の治療又は防止のための医薬の製造におけるHDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害剤/モジュレーターの使用を提供し、ここで、被験体は、rs11647778及び場合により以下の部位:rs1967309、rs12595857、rs2239310、rs11647828、rs8049452、rs12935810、rs74702385、rs17136707、rs8061182、rs111590482、rs4786454、rs2283497、rs2531967、rs3730119、rs2238448又はrs13337675の1つ以上において改善された応答遺伝子型を有する。
【0104】
特定の実施態様において、本発明は、被験体がrs11647778において改善された応答多型を有する、本明細書に定義されるとおりの使用を提供する。
【0105】
別の実施態様において、本発明は、その必要性のある被験体における心血管障害の治療又は防止における使用のためのHDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害剤/モジュレーターを提供し、ここで、被験体は、遺伝マーカーrs11647778/CC並びに場合によりrs12595857/GG;rs1967309/AA;rs111590482/AG;rs111590482/GG;rs11647828/GG;rs12935810/GG;rs17136707/GG;rs2239310/GG;rs2283497/AA;rs2531967/AA;rs3730119/AA;rs4786454/AA;rs74702385/GA;rs74702385/AA;rs8049452/GG;rs8061182/AA;rs1967309/GA、rs12595857/AG、rs13337675/AG、rs13337675/GG、rs17136707/AG、rs2239310/AG、rs2283497/CA、rs2531967/GA、rs3730119/GA、rs4786454/GA、rs8049452/GA、rs8061182/AG、rs12595857/GG、rs1967309/AA、rs111590482/AG、rs111590482/GG、rs11647828/GG、rs12935810/GG、rs17136707/GG、rs2239310/GG、rs2283497/AA、rs2531967/AA、rs3730119/AA、rs4786454/AA、rs74702385/GA、rs74702385/AA、rs8049452/GG、rs8061182/AA、rs12935810/GA、rs12935810/AA、rs11647828/AA、rs2531967/GG、rs3730119/GG、rs2239310/AA、rs12595857/AA、rs111590482/AA、rs74702385/GG、rs1967309/GG、rs2283497/CC、rs8061182/GG、rs17136707/AA、rs8049452/AA、rs4786454/GG、rs13337675/AA、rs2238448/TT及びrs11647828/AGから選択される1つ以上の遺伝マーカーを保有する。
【0106】
別の実施態様において、本発明は、心血管障害を治療又は防止するための方法であって、その必要性のある被験体に治療有効量のHDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害剤/モジュレーターを投与することを含む方法を提供し、ここで、被験体は、rs11647778並びに場合により以下の部位:rs1967309、rs12595857、rs2239310、rs11647828、rs8049452、rs12935810、rs74702385、rs17136707、rs8061182、rs111590482、rs4786454、rs2283497、rs2531967、rs3730119、rs2238448及びrs13337675の1つ以上において改善された応答遺伝子型を有する。
【0107】
別の実施態様において、本発明は、心血管障害を治療又は防止するための方法であって、その必要性のある被験体に心血管障害を治療又は防止するために効果的な量のHDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害剤/モジュレーターを投与することを含む方法を提供し、ここで、被験体は、rs11647778並びに場合により以下の部位:rs1967309、rs12595857、rs2239310、rs11647828、rs8049452、rs12935810、rs74702385、rs17136707、rs8061182、rs111590482、rs4786454、rs2283497、rs2531967、rs3730119、rs2238448及びrs13337675の1つ以上において改善された応答遺伝子型を有する。
【0108】
別の実施態様において、本発明は、心血管障害を治療又は防止するための方法であって、rs11647778及び場合により以下の部位:rs1967309、rs12595857、rs2239310、rs11647828、rs8049452、rs12935810、rs74702385、rs17136707、rs8061182、rs111590482、rs4786454、rs2283497、rs2531967、rs3730119、rs13337675、rs2238448の1つ以上において改善された応答遺伝子型を有する被験体に治療有効量のHDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害剤/モジュレーターを投与することを含む方法を提供する。
【0109】
別の実施態様において、本発明は、心血管障害を治療又は防止するための方法であって、rs11647778及び場合により以下の部位:rs1967309、rs12595857、rs2239310、rs11647828、rs8049452、rs12935810、rs74702385、rs17136707、rs8061182、rs111590482、rs4786454、rs2283497、rs2531967、rs3730119、rs13337675、rs2238448の1つ以上において改善された応答遺伝子型を有する被験体に心血管障害を治療又は防止するために効果的な量のHDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害剤/モジュレーターを投与することを含む方法を提供する。
【0110】
特定の実施態様において、本発明は、心血管障害を処置するための方法であって、その必要性のある患者に治療有効量のHDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害剤/モジュレーターを投与することを含む方法を提供し、ここで、処置される被験体は、改善された応答遺伝子型を有し、その遺伝子型はrs11647778/CC並びに場合によりrs12595857/GG、rs1967309/AA、rs111590482/AG、rs111590482/GG、rs11647828/GG、rs12935810/GG、rs17136707/GG、rs2239310/GG、rs2283497/AA、rs2531967/AA、rs3730119/AA;rs4786454/AA、rs74702385/GA、rs74702385/AA、rs8049452/GG及び/又はrs8061182/AAである。
【0111】
特定の実施態様において、本発明は、心血管障害を治療又は防止するための方法であって、その必要性のある被験体に心血管障害を治療又は防止するために効果的な量のHDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害剤/モジュレーターを投与することを含む方法を提供し、ここで、被験体は、遺伝子型rs11647778/CC並びに場合によりrs12595857/GG、rs1967309/AA、rs111590482/AG、rs111590482/GG、rs11647828/GG、rs12935810/GG、rs17136707/GG、rs2239310/GG、rs2283497/AA、rs2531967/AA、rs3730119/AA、rs4786454/AA、rs74702385/GA、rs74702385/AA、rs8049452/GG、rs2238448/TT及び/又はrs8061182/AAを保有する。
【0112】
別の実施態様において、本発明は、心血管障害を治療又は防止するための方法であって、rs11647778/CC並びに場合によりrs12595857/GG、rs1967309/AA、rs111590482/AG、rs111590482/GG、rs11647828/GG、rs12935810/GG、rs17136707/GG、rs2239310/GG、rs2283497/AA、rs2531967/AA、rs3730119/AA、rs4786454/AA、rs74702385/GA、rs74702385/AA、rs8049452/GG及び/又はrs8061182/AAにおいて改善された応答遺伝子型を有する被験体に治療有効量のHDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害剤/モジュレーターを投与することを含む方法を提供する。
【0113】
別の実施態様において、本発明は、心血管障害を治療又は防止するための方法であって、遺伝子型rs11647778/CC並びに場合によりrs12595857/GG、rs1967309/AA、rs111590482/AG、rs111590482/GG、rs11647828/GG、rs12935810/GG、rs17136707/GG、rs2239310/GG、rs2283497/AA、rs2531967/AA、rs3730119/AA、rs4786454/AA、rs74702385/GA、rs74702385/AA、rs8049452/GG、rs2238448/TT及び/又はrs8061182/AAを有する被験体に心血管障害を治療又は防止するために効果的な量のHDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害剤/モジュレーターを投与することを含む方法を提供する。
【0114】
別の実施態様において、本発明は、心血管障害を治療又は防止するための方法であって、その必要性のある被験体に治療有効量のHDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害剤/モジュレーターを投与することを含む方法を提供し、ここで、処置される被験体は、rs11647778及び場合によりrs1967309、rs2238448又はrs12595857において改善された応答遺伝子型を有する。
【0115】
別の実施態様において、本発明は、心血管障害を治療又は防止するための方法であって、その必要性のある被験体に心血管障害を治療又は防止するために効果的な量のHDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害剤/モジュレーターを投与することを含む方法を提供し、ここで、被験体は、rs11647778及び場合によりrs1967309、rs2238448又はrs12595857において改善された応答遺伝子型を有する。
【0116】
別の実施態様において、本発明は、心血管障害を治療又は防止するための方法であって、rs11647778及び場合によりrs1967309、rs2238448又はrs12595857において改善された応答遺伝子型を有する被験体に治療有効量のHDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害剤/モジュレーターを投与することを含む方法を提供する。
【0117】
別の実施態様において、本発明は、心血管障害を治療又は防止するための方法であって、rs11647778及び場合によりrs1967309、rs2238448又はrs12595857において改善された応答遺伝子型を有する被験体に心血管障害を治療又は防止するために効果的な量のHDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害剤/モジュレーターを投与することを含む方法を提供する。
【0118】
別の実施態様において、本発明は、心血管障害を治療又は防止するための方法であって、その必要性のある被験体に治療有効量のHDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害剤/モジュレーターを投与することを含む方法を提供し、ここで、処置される被験体は、rs11647778及び場合によりrs1967309において改善された応答遺伝子型を有する。
【0119】
別の実施態様において、本発明は、心血管障害を治療又は防止するための方法であって、その必要性のある被験体に心血管障害を治療又は防止するために効果的な量のHDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害剤/モジュレーターを投与することを含む方法を提供し、ここで、被験体は、rs11647778及び場合によりrs1967309において改善された応答遺伝子型を有する。
【0120】
別の実施態様において、本発明は、心血管障害を治療又は防止するための方法であって、rs11647778及び場合によりrs1967309において改善された応答遺伝子型を有する被験体に治療有効量のHDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害剤/モジュレーターを投与することを含む方法を提供する。
【0121】
別の実施態様において、本発明は、心血管障害を治療又は防止するための方法であって、rs11647778及び場合によりrs1967309において改善された応答遺伝子型を有する被験体に心血管障害を治療又は防止するために効果的な量のHDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害剤/モジュレーターを投与することを含む方法を提供する。
【0122】
特定の実施態様において、本発明は、心血管障害の治療又は防止における使用のためのHDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害剤/モジュレーターを提供し、ここで、処置される被験体は、rs11647778において改善された応答遺伝子型を保有する。
【0123】
特定の実施態様において、本発明は、改善された応答遺伝子型がCCである、本明細書に定義されるとおりのHDL上昇剤又はHDL模倣剤を提供する。
【0124】
特定の実施態様において、本発明は、被験体における心血管障害の治療又は防止における使用のためのHDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害剤/モジュレーターを提供し、ここで、被験体は、rs11647778において改善された応答遺伝子型を保有する。特定の実施態様において、本発明は、rs11647778における改善された応答遺伝子型がCCである、本明細書に定義されるとおりのHDL上昇剤又はHDL模倣剤を提供する。
【0125】
特定の実施態様において、本発明は、心血管障害が、哺乳動物におけるアテローム動脈硬化症、末梢血管疾患、脂質異常症、高ベータリポタンパク質血症、低アルファリポタンパク質血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、家族性高コレステロール血症、狭心症、虚血、心臓虚血、脳卒中、心筋梗塞、再灌流傷害、血管形成後再狭窄、高血圧、及び糖尿病、肥満又は内毒素血症の血管合併症からなる群より選択される、本明細書に記載されるとおりのHDL上昇剤又はHDL模倣剤を提供する。
【0126】
特定の実施態様において、本発明は、心血管障害が、心血管疾患、冠動脈心疾患、冠動脈疾患、低アルファリポタンパク質血症、高ベータリポタンパク質血症、高コレステロール血症、高脂血症、アテローム動脈硬化症、高血圧、高トリグリセリド血症、高リポタンパク質血症、末梢血管疾患、狭心症、虚血又は心筋梗塞である、本明細書に記載されるとおりのHDL上昇剤又はHDL模倣剤を提供する。
【0127】
特定の実施態様において、本発明は、HDL上昇剤又は模倣剤が、HDL上昇剤、特定するとCETP阻害剤/モジュレーター、より特定するとS-(2-{[1-(2-エチル-ブチル)-シクロヘキサンカルボニル]-アミノ}-フェニル)エステルである、本明細書に記載されるとおりのHDL上昇剤又はHDL模倣剤を提供する。
【0128】
別の実施態様において、本発明は、遺伝子型rs11647778/CC及び場合によりrs12595857/GG、rs1967309/AA、rs111590482/AG、rs111590482/GG、rs11647828/GG、rs12935810/GG、rs17136707/GG、rs2239310/GG、rs2283497/AA、rs2531967/AA、rs3730119/AA、rs4786454/AA、rs74702385/GA、rs74702385/AA、rs8049452/GG、rs2238448/TT又はrs8061182/AAを有する、より特定すると遺伝子型がrs11647778/CC及び場合によりrs1967309/AAである、その必要性のある被験体における心血管障害を治療又は防止するためのS-(2-{[1-(2-エチル-ブチル)-シクロヘキサンカルボニル]-アミノ}-フェニル)エステルを提供する。
【0129】
別の実施態様において、本発明は、改善された応答遺伝子型を保有する、特に遺伝子型がrs11647778/CC及び場合によりrs12595857/GG、rs1967309/AA、rs111590482/AG、rs111590482/GG、rs11647828/GG、rs12935810/GG、rs17136707/GG、rs2239310/GG、rs2283497/AA、rs2531967/AA、rs3730119/AA、rs4786454/AA、rs74702385/GA、rs74702385/AA、rs8049452/GG又はrs8061182/AAである、より特定すると遺伝子型がrs11647778/CC及び場合によりrs1967309/AAである、心血管障害を有する患者を治療又は防止するためのS-(2-{[1-(2-エチル-ブチル)-シクロヘキサンカルボニル]-アミノ}-フェニル)エステルを提供する。
【0130】
特定の実施態様において、本発明は、心血管障害が、哺乳動物におけるアテローム動脈硬化症、末梢血管疾患、脂質異常症、高ベータリポタンパク質血症、低アルファリポタンパク質血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、家族性高コレステロール血症、狭心症、虚血、心臓虚血、脳卒中、心筋梗塞、再灌流傷害、血管形成後再狭窄、高血圧、及び糖尿病、肥満又は内毒素血症の血管合併症からなる群より選択される、改善された応答遺伝子型を保有する心血管障害を有する患者を治療又は防止するためのS-(2-{[1-(2-エチル-ブチル)-シクロヘキサンカルボニル]-アミノ}-フェニル)エステルを提供する。
【0131】
特定の実施態様において、本発明は、心血管障害が、アテローム動脈硬化症、末梢血管疾患、脂質異常症、高ベータリポタンパク質血症、低アルファリポタンパク質血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、家族性高コレステロール血症、狭心症、虚血、心臓虚血、脳卒中、心筋梗塞、再灌流傷害、血管形成後再狭窄、高血圧、及び糖尿病、肥満又は内毒素血症の血管合併症である、改善された応答遺伝子型を有するその必要性のある被験体における心血管障害を治療又は防止するためのS-(2-{[1-(2-エチル-ブチル)-シクロヘキサンカルボニル]-アミノ}-フェニル)エステルを提供する。
【0132】
特定の実施態様において、本発明は、心血管障害が、心血管疾患、冠動脈心疾患、冠動脈疾患、低アルファリポタンパク質血症、高ベータリポタンパク質血症、高コレステロール血症、高脂血症、アテローム動脈硬化症、高血圧、高トリグリセリド血症、高リポタンパク質血症、末梢血管疾患、狭心症、虚血及び心筋梗塞からなる群より選択される、改善された応答遺伝子型を保有する心血管障害を有する患者を治療又は防止するためのS-(2-{[1-(2-エチル-ブチル)-シクロヘキサンカルボニル]-アミノ}-フェニル)エステルを提供する。
【0133】
特定の実施態様において、本発明は、心血管障害が、心血管疾患、冠動脈心疾患、冠動脈疾患、低アルファリポタンパク質血症、高ベータリポタンパク質血症、高コレステロール血症、高脂血症、アテローム動脈硬化症、高血圧、高トリグリセリド血症、高リポタンパク質血症、末梢血管疾患、狭心症、虚血又は心筋梗塞である、改善された応答遺伝子型を有するその必要性のある被験体における心血管障害を治療又は防止するためのS-(2-{[1-(2-エチル-ブチル)-シクロヘキサンカルボニル]-アミノ}-フェニル)エステルを提供する。
【0134】
別の実施態様において、本発明は、心血管疾患と診断された又はその1つ以上の症状を有する患者がHDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害剤/モジュレーターを用いた処置から恩恵を受ける可能性が高いか否かを予測する方法であって、前記患者から得られた試料を、rs11647778/CC、rs12595857/GG、rs1967309/AA、rs111590482/AG、rs111590482/GG、rs11647828/GG、rs12935810/GG、rs17136707/GG、rs2239310/GG、rs2283497/AA、rs2531967/AA、rs3730119/AA、rs4786454/AA、rs74702385/GA、rs74702385/AA、rs8049452/GG、rs2238448/TT又はrs8061182/AAから選択されるアデニル酸シクラーゼ9型遺伝子(ADCY9)中の遺伝マーカーについてスクリーニングすることを含む方法を提供し、ここで、遺伝マーカーの存在は、患者がHDL上昇剤又はHDL模倣剤を用いた前記処置から恩恵を受ける可能性が高いことを示す。特定の実施態様において、スクリーニングされる遺伝マーカーは、rs11647778/CC並びに場合によりrs12595857/GG、rs2238448/TT及び/又はrs1967309/AAである。より特定すると、スクリーニングされる遺伝マーカーは、rs11647778/CC及び場合によりrs1967309/AAである。
【0135】
別の実施態様において、本発明は、心血管障害患者が、HDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害剤/モジュレーターを用いた処置から恩恵を受ける可能性が高いか否かを予測する方法であって、前記患者から単離された試料を、rs11647778/CC、rs12595857/GG、rs1967309/AA、rs111590482/AG、rs111590482/GG、rs11647828/GG、rs12935810/GG、rs17136707/GG、rs2239310/GG、rs2283497/AA、rs2531967/AA、rs3730119/AA、rs4786454/AA、rs74702385/GA、rs74702385/AA、rs8049452/GG、rs8061182/AAから選択されるアデニル酸シクラーゼ9型遺伝子(ADCY9)中の遺伝マーカーについてスクリーニングすることを含む方法を提供し、ここで、患者は、HDL上昇剤又はHDL模倣剤を用いた前記処置から恩恵を受ける可能性が高い。特定の実施態様において、選択される遺伝マーカーは、rs11647778/CCであり、場合によりrs12595857/GG;rs1967309/AAから選択される。より特定すると、選択される遺伝マーカーは、rs11647778/CC及び場合によりrs1967309/AAである。
【0136】
さらなる実施態様において、本発明は、HDL上昇剤又はHDL模倣剤に対して応答する可能性のある患者を選択する方法であって、以下を含む方法を提供する:
(a)心血管障害と診断された又はその1つ以上の症状を有する患者由来の試料中のrs11647778における遺伝子型を決定すること、及び
(b)HDL上昇剤又はHDL模倣剤に対して応答する可能性がより高いとして遺伝子型CCを有する患者を選択すること。
【0137】
なおさらなる実施態様において、本方法は、rs1967309及び/又はrs2238448における遺伝子型を決定すること、並びにHDL上昇剤又はHDL模倣剤に対して応答する可能性があるとしてrs1967309における遺伝子型AA及び/又はrs2238448における遺伝子型TTを有する患者を選択することをさらに含む。ある実施態様において、本方法は、HDL上昇剤又はHDL模倣剤(例えば、ダルセトラピブ)を選択された患者に投与することをさらに含む。
【0138】
さらなる実施態様において、本発明は、HDL上昇剤又はHDL模倣剤を含む治療に対して応答する可能性があるとして心血管障害を有する患者を選択する方法であって、以下を含む方法を提供する:
(a)患者由来の試料中のrs11647778におけるCC遺伝子型を検出すること、
(b)CC遺伝子型を有するrs11647778が患者由来の試料中で検出された場合、HDL上昇剤又はHDL模倣剤を含む治療に対して応答する可能性がより高いとして患者を選択すること。
【0139】
なおさらなる実施態様において、本発明は、HDL上昇剤又はHDL模倣剤を含む治療に対して応答する可能性があるとして心血管障害を有する患者を選択する方法であって、以下を含む方法を提供する:
(a)患者由来の試料中のrs11647778におけるCC遺伝子型及びrs1967309におけるAA遺伝子型を検出すること、
(b)CCを有するrs11647778及びAA遺伝子型を有するrs1967309が患者由来の試料中で検出された場合、HDL上昇剤又はHDL模倣剤を含む治療に対して応答する可能性がより高いとして患者を選択すること。
【0140】
特定の実施態様において、本発明は、参照試料中のrs11647778におけるCC遺伝子型の存在(本発明に係るHDL上昇剤又はHDL模倣剤を用いた治療の前)が、患者がHDL上昇剤又はHDL模倣剤を用いた治療に対して応答する可能性がより高いことを示す、本明細書に記載される方法を提供する。
【0141】
特定の実施態様において、本発明は、参照試料中のrs11647778におけるCC遺伝子型及びrs1967309におけるAA遺伝子型の存在が、患者がHDL上昇剤又はHDL模倣剤を用いた治療に対して応答する可能性がより高いことを示す、本明細書に記載される方法を提供する。
【0142】
特定の実施態様において、本発明は、c)HDL上昇剤又はHDL模倣剤を含む治療を選択することをさらに含む、本明細書に記載される方法を提供する。
【0143】
特定の実施態様において、本発明は、患者由来の試料中のrs11647778における遺伝子型を決定することが、試料をrs11647778配列に結合する遺伝子型特異的試薬(例えば、プライマー及び/又はプローブ)と接触させて、それによって試薬とrs11647778配列との間に複合体を形成すること、及び形成された複合体を検出して、それによってrs11647778における遺伝子型を決定することを含む、本明細書に記載される方法を提供する。
【0144】
HDL上昇剤又はHDL模倣剤に対するヒト患者における臨床応答の予後を決定するための方法であって、多型部位が前記HDL上昇剤又は模倣剤に対する遅延した、部分的最適以下の又は欠如した臨床応答に関連する、患者のADCY9遺伝子中の少なくとも1つの多型の存在を決定することを含み、少なくとも1つの多型部位がrs11647778である、方法。
【0145】
HDL上昇剤又はHDL模倣剤に対するヒト患者における臨床応答の予後を決定するための方法であって、多型部位が前記HDL上昇剤又は模倣剤に対する遅延した、部分的最適以下の又は欠如した臨床応答に関連する、患者のADCY9遺伝子中の少なくとも1つの多型の存在を決定することを含み、少なくとも2つの多型部位がrs11647778及びrs1967309である、方法。
【0146】
別の実施態様において、本発明は、HDL上昇剤又はHDL模倣剤に対するヒト患者における臨床応答の予後を決定するための方法であって、多型部位が前記HDL上昇剤又は模倣剤に対する遅延した、部分的最適以下の又は欠如した臨床応答に関連する、患者のADCY9遺伝子中の少なくとも1つの多型部位の遺伝子型を決定することを含む方法を提供する。1つの実施態様において、多型部位は、rs11647778であり、GG遺伝子型は、前記HDL上昇剤又は模倣剤に対する遅延した、部分的最適以下の又は欠如した臨床応答の指標となる。別の実施態様において、多型部位は、rs1967309であり、GG遺伝子型は、前記HDL上昇剤又は模倣剤に対する遅延した、部分的最適以下の又は欠如した臨床応答の指標となる。別の実施態様において、多型部位は、rs2238448であり、CC遺伝子型は、前記HDL上昇剤又は模倣剤に対する遅延した、部分的最適以下の又は欠如した臨床応答の指標となる。
【0147】
特定の実施態様において、本発明は、多型が遺伝子型決定解析によって決定される、本明細書に記載される方法を提供する。
【0148】
特定の実施態様において、本発明は、遺伝子型決定解析が、マイクロアレイ分析又は質量分光分析又は多型特異的プライマー及び/若しくはプローブの使用、特にプライマー伸長反応を含む、本明細書に記載される方法を提供する。
【0149】
特定の実施態様において、本発明は、HDL上昇剤又はHDL模倣剤が、HDL上昇剤、特にCETP阻害剤/モジュレーター、より特定するとS-(2-{[1-(2-エチル-ブチル)-シクロヘキサンカルボニル]-アミノ}-フェニル)エステルである、本明細書に記載される方法を提供する。
【0150】
特定の実施態様において、「CETP阻害剤/モジュレーター」は、S-[2-([[1-(2-エチルブチル)-シクロヘキシル]-カルボニル]アミノ)フェニル]2-メチルプロパンチオアート、ダルセトラピブ又は式I:
【化5】
で示される化合物としても公知のチオイソ酪酸S-(2-{[1-(2-エチル-ブチル)-シクロヘキサンカルボニル]-アミノ}-フェニル)エステルである。
【0151】
S-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル]2-メチルプロパンチオアートは、ヒト(de Grooth et al., Circulation, 105, 2159-2165 (2002) )及びウサギ(Shinkai et al., J. Med. Chem., 43, 3566-3572 (2000); Kobayashi et al., Atherosclerosis, 162, 131-135 (2002); and Okamoto et al., Nature, 406 (13), 203-207 (2000) )におけるCETP活性の阻害剤であることが示されている。S-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル]2-メチルプロパンチオアートは、ヒト(de Grooth et al.、前記)及びウサギ(Shinkai et al.、前記;Kobayashi et al.、前記;Okamoto et al.、前記)において血漿HDLコレステロールを増加させることが示されている。さらに、S-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル]2-メチルプロパンチオアートは、ヒト(de Grooth et al.、前記)及びウサギ(Okamoto et al.、前記)においてLDLコレステロールを減少させることが示されている。S-[2-([[1-(2-エチルブチル)シクロヘキシル]カルボニル]アミノ)フェニル]2-メチルプロパンチオアート、並びに該化合物を製造及び使用する方法は、EP1020439, Shinkai et al., J. Med. Chem. 43:3566-3572 (2000) 又はWO 2007/051714、WO 2008/074677若しくはWO2011/000793に記載されている。
【0152】
好ましい実施態様において、CETP阻害剤/モジュレーター(例えば、式Iで示される化合物)は、結晶形態又は無定形形態の、又はより好ましくは結晶形態の固体である。特定の実施態様において、S-[2-([[1-(2-エチルブチル)-シクロヘキシル]-カルボニル]アミノ)フェニル]2-メチルプロパンチオアートは、WO2012/069087に開示されているとおり、結晶形態Aである。形態Aは、約7.9°、8.5°、11.7°、12.7°、17.1°、18.0°、18.5°、20.2°、22.1°、24.7°±0.2°にピークを有する粉末X線回折パターンによって、特定すると回折角2θが7.9°、11.7°、17.1°、18.5°(±0.2°)で観察されるXRPDピークによって特徴付けられる。
【0153】
当技術分野において公知でありかつ本発明において有用である他のCETP阻害剤は、エバセトラピブ、アナセトラピブ及びトルセトラピブ、特定するとエバセトラピブ及びアナセトラピブを含む。
【0154】
したがって、本発明は、哺乳動物における心血管障害の治療又は防止のための方法であって、哺乳動物(好ましくは、その必要性のある哺乳動物)に治療有効量の医薬組成物を投与することを含む方法を提供する。哺乳動物は、好ましくは、ヒト(すなわち、男性又は女性)である。ヒトは、任意の人種(例えば、白人又は東洋人)であることができる。
【0155】
心血管障害は、特定すると、アテローム動脈硬化症、末梢血管疾患、脂質異常症、高ベータリポタンパク質血症、低アルファリポタンパク質血症、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、家族性高コレステロール血症、狭心症、虚血、心臓虚血、脳卒中、心筋梗塞、再灌流傷害、血管形成後再狭窄、高血圧、及び糖尿病、肥満又は内毒素血症の血管合併症である。より特定すると、心血管障害は、心血管疾患、冠動脈心疾患、冠動脈疾患、低アルファリポタンパク質血症、高ベータリポタンパク質血症、高コレステロール血症、高脂血症、アテローム動脈硬化症、高血圧、高トリグリセリド血症、高リポタンパク質血症、末梢血管疾患、狭心症、虚血又は心筋梗塞である。
【0156】
本発明のある実施態様において、被験体又は患者には、100mg~600mgのS-[2-([[1-(2-エチルブチル)-シクロヘキシル]-カルボニル]アミノ)フェニル]2-メチルプロパンチオアートが投与される。特に、被験体又は患者には、150mg~450mgのS-[2-([[1-(2-エチルブチル)-シクロヘキシル]-カルボニル]アミノ)フェニル]2-メチルプロパンチオアートが投与される。より特定すると、被験体又は患者には、250mg~350mgのS-[2-([[1-(2-エチルブチル)-シクロヘキシル]-カルボニル]アミノ)フェニル]2-メチルプロパンチオアートが投与される。最も特定すると、被験体又は患者には、250mg~350mgのS-[2-([[1-(2-エチルブチル)-シクロヘキシル]-カルボニル]アミノ)フェニル]2-メチルプロパンチオアートが投与される。
【0157】
本発明の別の実施態様において、小児への使用のため、被験体には、25mg~300mgのS-[2-([[1-(2-エチルブチル)-シクロヘキシル]-カルボニル]アミノ)フェニル]2-メチルプロパンチオアートが投与される。特に、小児への使用のため、被験体には、75mg~150mgのS-[2-([[1-(2-エチルブチル)-シクロヘキシル]-カルボニル]アミノ)フェニル]2-メチルプロパンチオアートが投与される。
【0158】
CETP阻害剤は、任意の好適な投薬量で哺乳動物に投与され得る(例えば、治療有効量を達成するために)。例えば、患者への投与のための治療有効量のS-[2-([[1-(2-エチルブチル)-シクロヘキシル]-カルボニル]アミノ)フェニル]2-メチルプロパンチオアートの好適な用量は、1日当たり約100mg~約1800mgの間である。望ましい用量は、好ましくは1日当たり約300mg~約900mgである。好ましい用量は、1日当たり約600mgである。
【0159】
遺伝子型決定法
DNA試料の特定の遺伝子型の同定は、当業者に周知の多数の方法のいずれかによって実施され得る。例えば、多型の同定は、アレルをクローニングすること及び当技術分野において周知の技術を使用してそれを配列決定することによって達成され得る。代替的に、遺伝子配列を、例えばPCRを使用して、ゲノムDNAから増幅させ、その産物を配列決定することができる。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)、ライゲーション連鎖反応(LCR)又はライゲーション増幅及び自己持続配列複製法などの増幅法を含む、被験体のDNAを単離して所与の遺伝マーカーについて分析するための数多くの方法が当技術分野において公知である。所与の遺伝子座における突然変異について患者のDNAを分析するためのいくつかの非限定的な方法を後述する。
【0160】
DNAマイクロアレイ技術、例えば、DNAチップデバイス及びハイスループットスクリーニング適用のための高密度マイクロアレイ並びに低密度マイクロアレイが使用され得る。マイクロアレイの作製方法は、当技術分野において公知であり、様々なインクジェット及びマイクロジェット沈着又はスポッティング技術及びプロセス、インサイチュー又はオンチップフォトリソグラフオリゴヌクレオチド合成プロセス、並びに電子DNAプローブアドレッシングプロセスを含む。DNAマイクロアレイハイブリダイゼーション適用は、遺伝子発現解析並びに点突然変異、一塩基多型(SNP)及び短反復配列(STR)についての遺伝子型決定の領域にうまく適用されている。追加的な方法は、干渉性RNAマイクロアレイ、並びにマイクロアレイとレーザー捕捉顕微解剖(LCM)、比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)及びクロマチン免疫沈降(ChiP)などの他の方法との組み合わせを含む。例えば、He et al. (2007) Adv. Exp. Med. Biol. 593: 117-133 及び Heller (2002) Annu. Rev. Biomed. Eng. 4: 129-153 を参照されたい。他の方法は、PCR、xMAP、インベーダーアッセイ法、質量分光分析法及びピロシーケンシングを含む(Wang et al. (2007) Microarray Technology and Cancer Gene Profiling Vol 593 of book series Advances in Experimental Medicine and Biology, pub. Springer New York)。
【0161】
別の検出法は、多型性部位と重複しかつ多型性領域周辺の約5、又は10、又は20、又は25、又は30のヌクレオチドを有するプローブを使用した、アレル特異的ハイブリダイゼーションである。例えば、関心対象のアレル変異体又は遺伝マーカーに特異的にハイブリダイズできるいくつかのプローブを、固相支持体、例えば「チップ」に付着させる。オリゴヌクレオチドプローブを、リソグラフィーを含む多様なプロセスによって固体支持体に結合させることができる。「DNAプローブアレイ」とも呼ばれる、オリゴヌクレオチドを含むこれらのチップを使用した突然変異検出分析は、例えば、Cronin et al. (1996) Human Mutation 7 ’:244 に記載されている。
【0162】
他の検出法では、アレル変異体を同定する前に遺伝子の少なくとも一部を最初に増幅させる必要がある。増幅は、例えば、PCR及び/若しくはLCR又は当技術分野において周知の他の方法によって実施され得る。
【0163】
いくつかの場合では、被験体由来のDNA中の特異的アレルの存在は、制限酵素分析によって示され得る。例えば、特異的ヌクレオチド多型は、別のアレル変異体のヌクレオチド配列に不在の制限部位を含むヌクレオチド配列を生じ得る。
【0164】
さらなる実施態様において、切断剤(ヌクレアーゼ、ヒドロキシルアミン又は四酸化オスミウムなど、及びピペリジンを用いる)からの保護を使用して、RNA/RNA、DNA/DNA、又はRNA/DNAヘテロ二重鎖中のミスマッチ塩基を検出することができる(例えば、Myers et al. (1985) Science 230: 1242 を参照されたい)。一般に、「ミスマッチ切断」の技術は、遺伝子のアレル変異体のヌクレオチド配列を含む、場合により標識されているプローブ(例えば、RNA又はDNA)を、組織試料から得られた試料核酸とハイブリダイズさせることによって形成される二重鎖を提供することによって開始する。二本鎖を形成している二重鎖は、対照鎖と試料鎖との間の塩基対ミスマッチから形成された二重鎖などの二重鎖の一本鎖領域を切断する薬剤で処理される。例えば、ミスマッチ領域を酵素的に消化するために、RNA/DNA二重鎖はRNaseで処理され得、DNA/DNAハイブリッドはSIヌクレアーゼで処理され得る。代替的に、ミスマッチ領域を消化するために、DNA/DNA又はRNA/DNA二重鎖のいずれかは、ヒドロキシルアミン又は四酸化オスミウム及びピペリジンで処理され得る。次に、ミスマッチ領域の消化後に、結果として生じた物質は、変性ポリアクリルアミドゲル上でサイズに応じて分離されて、対照核酸及び試料核酸が同一のヌクレオチド配列を有するか否か、又はどのヌクレオチドでこれらが異なるかが決定される。例えば、米国特許第6,455,249号; Cotton et al. (1988) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:4397; Saleeba et al. (1992) Meth.Enzymol. 217:286-295 を参照されたい。
【0165】
特定のアレル変異体を同定するために、電気泳動移動度の変化を使用することもできる。例えば、一本鎖コンフォメーション多型(SSCP)を使用して突然変異型核酸と野生型核酸との間の電気泳動移動度の差を検出することができる(Orita et al. (1989) Proc Natl. Acad. Sci USA 86:2766; Cotton (1993) Mutat. Res. 285: 125-144 及び Hayashi (1992) Genet. Anal. Tech. Appl. 9:73-79)。試料核酸及び対照核酸の一本鎖DNAフラグメントを変性して、復元させることが可能である。一本鎖核酸の二次構造は、配列に応じて変動する;結果として生じた電気泳動移動度の変化は、一塩基変化であっても検出可能にする。DNAフラグメントは、標識プローブを用いて標識又は検出され得る。アッセイの感度は、二次構造が配列変化に対してより感受性であるRNA(DNAよりも)を使用することによって増強され得る。別の好ましい実施態様において、対象の方法は、ヘテロ二重鎖分析を利用して、二本鎖を形成しているヘテロ二重鎖分子を電気泳動移動度の変化に基づき分離する(Keen et al. (1991) Trends Genet. 7:5)。
【0166】
アレル変異体又は遺伝マーカーの同一性はまた、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法(DGGE)を使用してアッセイされる、濃度勾配のある変性剤を含有するポリアクリルアミドゲル中の多型性領域を含む核酸の移動を分析することによって得られ得る(Myers et al. (1985) Nature 313:495)。DGGEが分析法として使用される場合、DNAは、例えば、PCRによって約40bpの高融点GCリッチDNAのGCクランプを付加することによって、完全に変性しないように改変される。さらなる一実施態様において、対照DNAと試料DNAの移動度の差を同定するために、変性剤の勾配の代わりに温度勾配が使用される(Rosenbaum and Reissner (1987) Biophys. Chem. 265: 1275)。
【0167】
2つの核酸間の少なくとも1つのヌクレオチドの差を検出するための技術の例は、限定されないが、選択的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション、選択的増幅又は選択的プライマー伸長を含む。例えば、公知の多型性ヌクレオチドが中心に配置されているオリゴヌクレオチドプローブ(アレル特異的プローブ)を調製し、次に、完全なマッチが見られる場合にのみハイブリダイゼーションを可能にする条件下でターゲットDNAにハイブリダイズさせることができる(Saiki et al. (1986) Nature 324: 163); Saiki et al. (1989) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 86:6230)。そのようなアレル特異的オリゴヌクレオチドハイブリダイゼーション技術は、遺伝子の多型性領域中のヌクレオチド変化を検出するために使用される。例えば、特異的アレル変異体のヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドプローブをハイブリダイゼーション用メンブレンに付着させ、次に、このメンブレンを標識試料核酸とハイブリダイズさせる。ハイブリダイゼーションシグナルの分析は、その後、試料核酸のヌクレオチドの同一性を明らかする。
【0168】
代替的に、選択的PCR増幅に依存するアレル特異的増幅技術が、本発明に関連して使用され得る。特異的増幅のためのプライマーとして使用されるオリゴヌクレオチドは、関心対象のアレル変異体を分子の中心に保有するか(その結果、増幅は差次的ハイブリダイゼーションに依存する)(Gibbs et al. (1989) Nucl. Acids Res. 17:2437-2448)又は一方のプライマーの3’最末端に保有することができ、後者の場合、適切な条件下でミスマッチがポリメラーゼ伸長を防止又は低減させ得る(Prossner (1993) Tibtech11 :238 and Newton et al. (1989) Nucl. Acids Res. 17:2503)。この技術は、PRobe Oligo Base Extensionにちなんで「PROBE」とも呼ばれる。加えて、切断ベースの検出を生み出すために、突然変異の領域中に新規な制限部位を導入することが望ましい場合がある(Gasparini et al. (1992) Mol. Cell. Probes 6: 1)。
【0169】
別の実施態様において、アレル変異体又は遺伝マーカーの同定は、例えば、米国特許第4,998,617号及び Laridegren, U. et al. Science 241 : 1077-1080 (1988) に記載されているような、オリゴヌクレオチドライゲーションアッセイ(OLA)を使用して実施される。OLAプロトコールは、ターゲットの一本鎖の隣接配列にハイブリダイズできるように設計されている2つのオリゴヌクレオチドプローブを使用する。オリゴヌクレオチドの一方は、分離マーカーに連結、例えばビオチン化され、もう一方は、検出可能に標識される。正確な相補的配列がターゲット分子中に見つかる場合、オリゴヌクレオチドは、それらの末端が隣接し、ライゲーションの基質を生み出すように、ハイブリダイズする。次に、ライゲーションは、アビジン又は別のビオチンリガンドを使用して標識オリゴヌクレオチドが回収されることを可能にする。Nickerson, D. A.等は、PCR及びOLAの特質を組み合わせた核酸検出アッセイを記載している(Nickerson, D. A. et al. (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:8923-8927)。この方法では、PCRを使用して、ターゲットDNAの指数的増幅を達成し、次に、OLAを用いてターゲットDNAが検出される。Tobe et al. (1996) Nucleic AcidsRes. 24: 3728 に記載されているようなOLA法の変法では、各アレル特異的プライマーは、固有のハプテン、すなわちジゴキシゲイン(digoxigein)及びフルオレセインを用いて標識され、各OLA反応は、レポーター酵素で標識されたハプテン特異的抗体を使用して検出される。
【0170】
本発明は、ADCY9中の一塩基多型(SNP)を検出するための方法を提供する。一塩基多型は、不変配列の領域によってフランキングされるので、それらの分析は、単一の変異体ヌクレオチドの同一性の決定だけを必要とし、各患者について完全な遺伝子配列を決定する必要はない。SNPの解析を容易にするために、いくつかの方法が開発されている。
【0171】
単一塩基多型は、例えば米国特許第4,656,127号に開示されているように、特殊化されたエキソヌクレアーゼ耐性ヌクレオチドを使用することによって検出され得る。該方法によれば、多型性部位の直接3’側のアレル配列に相補的なプライマーを、特定の動物又はヒトから得られたターゲット分子にハイブリダイズさせることが可能である。ターゲット分子上の多型性部位が、存在する特定のエキソヌクレアーゼ耐性ヌクレオチド誘導体に相補的なヌクレオチドを含有するならば、その誘導体は、ハイブリダイズされたプライマーの末端に組み入れられる。そのような組み入れは、プライマーをエキソヌクレアーゼに耐性にし、それによってその検出が可能となる。試料のエキソヌクレアーゼ耐性誘導体の同一性は公知であるので、プライマーがエキソヌクレアーゼに耐性になったという知見は、ターゲット分子の多型性部位に存在するヌクレオチドが、この反応に使用されたヌクレオチド誘導体のヌクレオチドに相補的であったことを明らかにする。この方法は、多量の外来配列データの決定を必要としないという利点を有する。
【0172】
溶液ベースの方法もまた、多型性部位のヌクレオチドの同一性を決定するために使用され得る(WO 91/02087)。上記のように、多型性部位の直接3’側のアレル配列に相補的なプライマーが採用される。この方法は、標識ジデオキシヌクレオチド誘導体を使用してその部位のヌクレオチドの同一性を決定し、このヌクレオチドは、多型性部位のヌクレオチドに相補的であれば、プライマーの末端に組み入れられるようになる。
【0173】
代替法は、WO 92/15712に記載されている。この方法は、標識ターミネーターと、多型性部位の3’側配列に相補的なプライマーとの混合物を使用する。したがって、組み入れられた標識ターミネーターは、評価されるターゲット分子の多型性部位に存在するヌクレオチドによって決定され、そのヌクレオチドに相補的である。この方法は、通常、プライマー又はターゲット分子が固相に固定化されている不均一相アッセイである。
【0174】
DNA中の多型性部位をアッセイするための多くの他のプライマーガイド化ヌクレオチド組み入れ手順が記載されている(Komher, J. S. et al. (1989) Nucl. Acids. Res. 17:7779-7784; Sokolov, B. P. (1990) Nucl. AcidsRes. 18:3671; Syvanen, A.-C, et al. (1990) Genomics 8:684-692; Kuppuswamy, M. N. et al. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88: 1143-1147; Prezant, T. R. et al. (1992) Hum. Mutat. 1 : 159-164; Ugozzoli, L. et al. (1992) GATA 9: 107-112; Nyren, P. et al. (1993) Anal.Biochem. 208: 171-175)。これらの方法は、全て、多型性部位で塩基を識別するために標識デオキシヌクレオチドの組み入れに依存している。
【0175】
さらに、遺伝子若しくは遺伝子産物の変化又は多型変異体を検出するための上記方法のいずれかは、処置又は治療の経過を監視するために使用され得ると理解される。
【0176】
本明細書に記載される方法は、例えば、遺伝子型決定のために、例えば、ADCY9遺伝子中に存在する遺伝マーカーを分析するために好都合に使用され得る少なくとも1つのプローブ、プライマー核酸又は試薬を含む、下記のような予めパッケージされた診断キットを利用することによって実施され、個体が、HDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害剤/モジュレーターを含むHDL上昇剤又は模倣剤を用いた処置から恩恵を受ける可能性が高いか否かが決定され得る。特に、遺伝マーカーは、本明細書に記載されるとおりである。
【0177】
ADCY9遺伝子中に存在する遺伝マーカーを遺伝子型決定するための試薬としての使用のための本発明のプライマー又はプローブは、rs11647778、rs1967309、rs12595857、rs2239310、rs11647828、rs8049452、rs12935810、rs74702385、rs17136707、rs8061182、rs111590482、rs4786454、rs2283497、rs2531967、rs3730119、rs2238448及びrs13337675から選択される1つ以上のSNP、好ましくはrs11647778に隣接する又はそれを包含する好ましくは12~30のヌクレオチドの、ADCY9遺伝子内の連続配列に相補的でありかつそれにハイブリダイズする合成ヌクレオチド配列を含む。別の態様において、プライマーは、100以下のヌクレオチド、ある態様において、12~50のヌクレオチド又は12~30のヌクレオチドを含む。プライマーは、連続配列又は連続ヌクレオチド配列の相補体と少なくとも70%同一であり、好ましくは少なくとも80%同一であり、より好ましくは少なくとも90%同一である。本発明のプライマー又はプローブは、好ましくは、配列番号1~21から選択される配列に相補的な、特に配列番号1、19又は21の配列に相補的なヌクレオチド15~20の領域を含む、15~50のヌクレオチド長である。プローブ又はプライマーと配列番号1~21との間の相補性度は、100%、95%、90%、85%、80%又は75%であり得る。
【0178】
遺伝子アレル又は遺伝マーカー「に特異的な」プローブ及びプライマーを含むオリゴヌクレオチドは、遺伝子の多型性領域に結合するか、又は遺伝子の多型性領域に隣接して結合するかのいずれかである。増幅のためのプライマーとして使用されるべきオリゴヌクレオチドについて、プライマーは、それらが多型性領域を含むポリヌクレオチドを産生させるために使用されるのに十分に近接しているならば、隣接している。1つの実施態様において、オリゴヌクレオチドは、それらが約1~2kb以内、例えば多型から1kb未満で結合するならば、隣接している。特異的オリゴヌクレオチドは、配列にハイブリダイズすることができ、好適な条件下では、一つのヌクレオチドが異なる配列に結合しない。
【0179】
プローブとして又はプライマーとして使用される、本発明のオリゴヌクレオチドは、検出可能に標識され得る。標識は、直接的(例えば、蛍光標識について)又は間接的のいずれかで検出され得る。間接的検出は、ビオチン-アビジン相互作用、抗体結合などを含む、当業者に公知の任意の検出法を含むことができる。蛍光標識オリゴヌクレオチドはまた、クエンチング分子を含有することができる。オリゴヌクレオチドは、表面に結合され得る。いくつかの実施態様において、表面はシリカ又はガラスである。いくつかの実施態様において、表面は金属電極である。
【0180】
プローブは、試料の遺伝子型を直接決定するために使用され得るか、又は増幅と同時に若しくは増幅後に使用され得る。用語「プローブ」は、天然若しくは組換え一本鎖若しくは二本鎖核酸又は化学合成された核酸を含む。これらは、ニックトランスレーション、Klenowフィルイン反応、PCR又は当技術分野において公知の他の方法によって標識され得る。本発明のプローブ、それらの調製及び/又は標識は、前記のSambrook et al. (1989) に記載されている。プローブは、本発明の多型性領域を含有する核酸への選択的ハイブリダイゼーションに適した任意の長さのポリヌクレオチドであることができる。使用されるプローブの長さは、部分的に、使用されるアッセイの性質及び採用されるハイブリダイゼーション条件に依存する。
【0181】
標識プローブもまた、多型の増幅に関連して使用され得る(Holland et al. (1991) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 88:7276-7280)。米国特許第5,210,015号は、PCRの間の増幅産物のリアルタイム測定を提供するための蛍光ベースのアプローチを記載している。そのようなアプローチは、存在する二本鎖DNAの量を示すために挿入色素(臭化エチジウムなど)を採用するか、又は蛍光クエンチャーペアを含有するプローブ(「TaqMan(登録商標)」アプローチとも呼ばれる)を採用しており、後者の場合、プローブは、増幅の間に切断されて蛍光分子を放出し、その濃度は、存在する二本鎖DNAの量に比例する。増幅の間、プローブは、ターゲット配列にハイブリダイズするとポリメラーゼのヌクレアーゼ活性によって消化されて、蛍光分子をクエンチャー分子から分離させ、それによってレポーター分子から蛍光を出現させる。TaqMan(登録商標)アプローチは、多型を含有するターゲットポリヌクレオチドの領域に特異的にアニーリングするレポーター分子-クエンチャー分子ペアを含有するプローブを使用する。
【0182】
プローブは、「遺伝子チップ」としての使用のために表面に固着され得る。そのような遺伝子チップは、当業者に公知の多数の技術によって遺伝子変異を検出するために使用され得る。一つの技術では、オリゴヌクレオチドは、米国特許第6,025,136号及び第6,018,041号に概要されているようなハイブリダイゼーションアプローチによる配列決定によってDNA配列を決定するために遺伝子チップ上に整列される。本発明のプローブはまた、遺伝子配列の蛍光検出のために使用され得る。そのような技術は、例えば米国特許に記載されている。本発明のプローブはまた、遺伝子配列の蛍光検出のために使用され得る。そのような技術は、例えば、米国特許第5,968,740号及び第5,858,659号に記載されている。プローブはまた、米国特許第5,952,172号及びKelley, S. O. et al. (1999) Nucl. Acids Res. 27:4830-4837 によって記載されているような核酸配列の電気化学的検出のために電極表面に固着され得る。本発明のSNPを検出するための1つ以上のプローブ(表2、3、4、5又は10、特に表4)は、チップに固着され得、そのようなデバイスは、HDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害剤/モジュレーターに対する応答を予測するため及び心血管疾患を有する個体のための有効な処置を選択するために使用され得る。本発明のSNPを検出するためのプローブは、HDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害剤/モジュレーターに対する応答を予測すること以外の使用のために、多様な他のプローブと共にチップ上に含められ得ると考えられる。
【0183】
追加的に、プローブ又はプライマーとして使用される合成オリゴヌクレオチドは、より安定になるように改変され得る。改変される例示的な核酸分子は、DNAのホスホルアミダート、オスホチオアート及びメチルホスホナート類似体などの非荷電結合を含む(米国特許第5,176,996号;第5,264,564号及び第5,256,775号も参照されたい)。本発明のプライマー及びプローブは、例えば、標識メチル化、ペンダント部分(例えば、ポリペプチド)、インターカレーター(例えば、アクリジン、ソラレン)、キレート剤、アルキル化剤及び改変された結合(例えば、α-アノマー性核酸)などのヌクレオチド間改変を含むことができる。また、水素結合形成、及びヌクレオチド骨格におけるリン酸結合の代わりとなるペプチド結合を含む他の化学的相互作用によって指定の配列に結合する能力においてヌクレオチド酸(nucleotide acid)分子を模倣する合成分子も含まれる。
【0184】
本発明は、本明細書に記載される天然オリゴヌクレオチドであるADCY9遺伝子の遺伝子マーカーに高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする合成オリゴヌクレオチド分子、プライマー及びプローブに関する。オリゴヌクレオチドは、高ストリンジェンシー条件下で特異的ハイブリダイゼーションにより検出及び/又は単離され得る。「高ストリンジェンシー条件」は、当技術分野において公知であり、第1のオリゴヌクレオチドと第2のオリゴヌクレオチドとの間に高い相補性度がある場合、第1のオリゴヌクレオチドの第2のオリゴヌクレオチドへの特異的ハイブリダイゼーションを可能にする。本明細書に開示される遺伝子型決定法について、この相補性度は、80%~100%の間、好ましくは90%~100%の間である。
【0185】
本発明のSNPはまた、データベースに存在する全ゲノム配列データなどの既存のデータから検出され得る。本発明は、CETP阻害剤に対する患者の応答を予測してそれよって前記患者を処置する、すなわち応答者である患者をCETP阻害剤で処置するための遺伝子型を決定するために、ゲノムデータを問い合わせるコンピューター実装方法を提供する。
【0186】
遺伝子型決定法、処置の選択又は処置方法における使用のための試料核酸は、被験体の任意の細胞型又は組織から得られ得る。例えば、被験体の体液、試料(例えば、血液)は、公知の技術によって得られ得る。代替的に、核酸検査が乾燥した試料(例えば、毛髪又は皮膚)に実施され得る。より特定すると、遺伝子型決定法、処置の選択又は処置方法のための試料核酸は、血液細胞型から得られる。
【0187】
本明細書に記載される発明は、rs11647778及び場合によりrs1967309、rs2238448又はrs12595857におけるADCY9遺伝子上に存在するアレル、又は位置chr16:4049365~chr16:4077178に及ぶ(アセンブリGRCh37/hg19)
図8及び9に表示するようなこれらのSNPと連鎖不平衡にある任意の他の遺伝子変異体を決定及び同定するために有用な方法及び試薬に関する。特に、本発明はまた、rs11647778及び場合によりrs1967309、rs12595857、rs2239310、rs11647828、rs8049452、rs12935810、rs74702385、rs17136707、rs8061182、rs111590482、rs4786454、rs2283497、rs2531967、rs3730119、rs13337675、rs2238448における、より特定するとrs11647778並びに場合によりrs1967309及び/又はrs12595857における、最も特定するとrs11647778及び場合によりrs1967309におけるADCY9遺伝子中に存在するアレルを決定及び同定するための方法及び試薬に関する。
【0188】
本明細書に示すように、本発明はまた、ADCY9遺伝子中に存在する1つ以上の遺伝マーカーを検出することを含む処置選択方法を提供する。いくつかの実施態様において、本方法は、ADCY9の多型性領域に相補的なヌクレオチド配列を含むプローブ又はプライマーを使用する。したがって、本発明は、本発明の遺伝子型決定法を実施するためのプローブ及びプライマーを含むキットを提供する。
【0189】
いくつかの実施態様において、本発明は、心血管障害を有する患者が、HDL上昇剤又はHDL模倣剤、特にCETP阻害剤/モジュレーターを用いた処置から恩恵を受ける可能性が高いか否かを決定するために有用なキットを提供する。そのようなキットは、本明細書に記載される1つ以上の試薬、特にプライマー又はプローブ、及び使用説明書を含有する。ほんの一例として、本発明はまた、心血管障害を有する患者がチオイソ酪酸S-(2-{[1-(2-エチル-ブチル)-シクロヘキサンカルボニル]-アミノ}-フェニル)エステルを用いた処置から恩恵を受ける可能性が高いか否かを決定するために有用なキットであって、ADCY9 rs11647778 SNPにおけるCC多型及び場合によりADCY9 rs1967309 SNPにおけるAA多型に特異的な第一のオリゴヌクレオチド及び第二のオリゴヌクレオチドを含むキットを提供する。
【0190】
本キットは、ADCY9の多型性領域に特異的にハイブリダイズできる少なくとも1つのプローブ又はプライマー、及び使用説明書を含むことができる。本キットは、上記核酸の少なくとも1つを含むことができる。ADCY9の少なくとも一部を増幅するために有用なキットは、一般に、少なくとも一方がアレル変異体配列にハイブリダイズできる2つのプライマーを含む。そのようなキットは、例えば、蛍光検出による、電気化学的検出による又は他の検出による遺伝子型の検出に好適である。
【0191】
本発明のなお他のキットは、アッセイを実施するために有用な少なくとも1つの試薬を含む。例えば、本キットは、酵素を含むことができる。代替的に、本キットは、緩衝剤又は任意の他の有用な試薬を含むことができる。
【0192】
本キットは、ADCY9の多型性領域における被験体の遺伝子型を決定するための本明細書に記載される陽性対照、陰性対照、試薬、プライマー、配列決定マーカー、プローブ及び抗体の全て又は一部を含むことができる。
【0193】
以下の例は、単に本発明の実施を例示することを意図するものであり、限定として提供されるものではない。
【0194】
本発明は、以下のヌクレオチド配列及びアミノ酸配列を参照する:
【0195】
本明細書に提供される配列は、NCBIデータベースから入手可能であり、www.ncbi.nlm.nih.gov/sites/entrez?db=gene から検索することができる;これらの配列はまた、注釈及び改変された配列を参照する。本発明はまた、本明細書に提供される簡潔な配列の相同配列及び変異体が使用される技術及び方法を提供する。好ましくは、そのような「変異体」は遺伝子変異体である。NCB1データベースから、ホモサピエンス(homo sapiens)アデニル酸シクラーゼ9型(ACDY9)をコードするヌクレオチド配列が入手可能である。
【0196】
ホモサピエンスアデニル酸シクラーゼ9型(ADCY9)、16番染色体上のRefSeqGene
NCBI参照配列:NCBIアクセッションナンバーNG_011434.1
ホモサピエンス16番染色体ゲノムコンティグ、GRCh37.p10 Primary Assembly
NCBI参照配列:NCBIアクセッションナンバーNT_010393.16
【0197】
ホモサピエンスACDY9遺伝子のイントロン配列、「rs」表記を付記したSNP、アレル及び対応する配列番号表記を、表6、7及び8に開示する。多型は太字で括弧に入れて明示する。
【0198】
【0199】
【0200】
【0201】
実施例1
Dal-OUTCOMES試験(NC20971)は、急性冠症候群(ACS)のため最近入院した患者におけるCETP阻害剤ダルセトラピブの安全性及び有効性を評価するための二重盲検ランダム化プラセボ対照並行群間多施設第III相試験であった。中間解析の時点で、当該試験には、2つの処置群:プラセボ(患者7933人)及びダルセトラピブ(1日600mg;患者7938人)に振り分けられた、ランダム化された患者15871人を含めた。当該試験は、プラセボ群に比べてダルセトラピブ群では、主要有効性評価項目でのイベント率の低下の証拠を示さなかった。dal-OUTCOMES試験の詳細は、G. Schwartz et al., N. Engl. J. Med.367;22, 2012 に見いだすことができる。
【0202】
dal-Outcomes患者は、急性心筋虚血の症状、新規若しくは新規と推定される心電図上の虚血性異常、又は画像診断での生存心筋の喪失を伴い、心筋バイオマーカーの上昇によって特徴付けられる急性冠症候群での入院の4~12週間後に募集された。心筋バイオマーカーの上昇のない患者は、急性心筋虚血の症状が新規又は新規と推定される心電図変化及び閉塞性冠動脈疾患の追加の証拠を伴った場合に、参加適格者であった(Schwartz GG et al. Am Heart J 2009;158:896-901 e3)。経皮的冠動脈インターベンションに関連する心筋梗塞を有した患者もまた適格者であった。全ての患者は、スタチン(忍容性が認められる場合)及び食事療法(diet)による1デシリットル当たり100mg(1リットル当たり2.6mmol)以下のLDLコレステロールレベルをターゲットとする個別プログラムに従った。特異的スタチン系薬剤は特定されず、患者はLDLコレステロール値に基づいて除外されなかった。1デシリットル当たり400mg(1リットル当たり4.5mmol)以上の血清トリグリセリドレベルを有する患者を除外した(Schwartz GG et al. N Engl J Med 2012;367:2089-99)。dal-Outcomes試験への適格参加者を、患者が安定化すること及び計画された血行再建手順の完了を可能にするために、約4~6週間の単純盲検プラセボ導入期間に入れた。導入期間の終わりに、安定な状態にある適格患者を、急性冠症候群用の根拠に基づく医療に加えて、1:1の比でダルセトラピブ600mg又はプラセボにランダム化した。心血管イベントは、独立の臨床評価項目委員会によって判定された。ファーマコゲノミクス試験のために、2008年4月~2010年7月にかけて14ヵ国の461ヵ所で6338人の患者が募集され、患者はdal-OUTCOMES試験の遺伝子試験に参加するために書面によるインフォームドコンセントを提出した。DNAを全血から抽出した。ゲノムデータクリーンアップ後に、5749人の白人患者由来の試料をディスカバリーゲノムワイド関連解析(GWAS)に使用した。
【0203】
遺伝子型決定
2,567,845の遺伝子変異体を含むIllumina Infinium HumanOmni2.5Exome-8v1_A BeadChip(Illumina, San Diego, California)を、dal-OUTCOMES試験への5749人の白人参加者のディスカバリーGWASに使用した。IMPUTE2を使用してアデニル酸シクラーゼ9型(ADCY9)遺伝子の上流及び下流の5個の遺伝子を含む16番染色体領域(CHR16:3,400,000~4,600,000)をインピュテーションし、99.76%の平均完了率(average completion rate)での分析について17,764の変異体が提供された。Sequenomパネルを、dal-OUTCOMESにおいて同定されたADCY9遺伝子中のインピュテーションされた一塩基多型(SNP)の確認に使用し、dal-PLAQUE-2試験で検定した(ディスカバリーGWASからのP値<0.05を有する20個のSNPを含む)。
【0204】
QiaSymphony DNAミディキットバージョン1.1(Qiagen, Garstilgweg, Switzerland)を使用して1mlの全血からDNAを抽出し、QuantiFluor(商標)dsDNA System(Promega, Madison, WI)を使用して平均濃度91.5ng/μL及び平均収量18.3μgで定量化した。DNA試料の97.9%は、25ng/μLを超える濃度を有した。アガロースゲル電気泳動は、分解の兆候のない高品質のDNAを確認した。DNAを50ng/μLに対して正規化した。
【0205】
ゲノムワイド関連解析(GWAS)-ゲノムワイド遺伝子型決定を、200ngのゲノムDNAを使用し、Beaulieu-Saucier Pharmacogenomics Centre(Montreal, Canada)のGLP環境内で実施した。2,567,845のゲノムマーカーを含むIllumina Infinium HumanOmni2.5Exome-8v1_A BeadChip(Illumina, San Diego, CA)を使用し、製造業者の仕様書に従って処理した。このチップは、Exome Chip Consortiumを通して同定された200,000超のエクソーム変異体を含む。残りのBeadChipの内容は、多様な世界の人種について最大限に情報提供できるように設計された1000 Genome ProjectからのレアSNPとコモンSNPのミックスである。Illumina iScan Readerを使用して、各BeadChipをスキャンし、分析した。GenTrain 2.0クラスターアルゴリズムを備えるIllumina’s GenomeStudioバージョン2011.1を用いて、ノーコール(No-Call)閾値0.15を使用し、マニュアルクラスター調整を行わずに、製造業者のIllumina HumanOmni25Exome-8v1_Aクラスターファイルを使用して、スキャン後の画像を解析した。データが入手可能になると、類似のサイズの3分割された遺伝子型データファイルが作成された。
【0206】
Sequenom-単一のSequenomパネルを設計し、HapMap DNA試料を使用して検証した。パネルには、以下に従って選択されたADCY9遺伝子中の27個のSNPを含めた:ディスカバリーGWASにおいてP値≦0.05(n=15)、インピュテーションによるP値<10-6(n=6;1つは開発中に失敗)、予測された調節機能(n=5;1つは低MAFのため除外)、又は文献(n=4;1つは生産中に失敗)。Sequenom MassArray Maldi-TOF System(Sequenom, La Jolla, CA)を、Sequenom's Typer 4.0.22 Softwareで使用した。オートクラスターを使用して各プレートをクラスター化し、必要に応じて手動で修正した。各遺伝子型決定プレートにおいて対照として使用された2つのCoriell Institute DNA試料(NA11993及びNA07357)は、全てのプレートリプリケートに対して100%の一致及び1000 Genomes and HapMap参照データベース中の対応するSNPについての予想と100%の遺伝子型コールの一致を示した。GWAS及びSequenomパネルの両方で遺伝子型決定された17個のSNPは、99.95%の平均遺伝子型一致を提供し(最小:99.41、最大:100.00%)、以前にインピュテーションされた11個のSNPは、最も可能性の高い遺伝子型(インピュテーション確率>0.8)で99.75の平均遺伝子型一致を提供した(最小:98.48、最大:99.96)。
【0207】
ゲノム品質チェック
Dal-OutcomesディスカバリーGWAS。GenomeStudioによって生成されたPLINK形式の3つの遺伝子型決定ファイルを組み合わせ、これをバイナリーPLINK形式に変換した。GenomeStudio Finalレポートファイルを使用して、ジェンダープロット、LRR及びBAFグラフィックを生成した。PyGenClean(Lemieux Perreault LP et al. Bioinformatics 2013;29:1704-5)及びPLINKバージョン1.07を、品質チェック(QC)及び遺伝子データクリーンアッププロセスに使用した。遺伝子型決定実験は、68個のDNA試料のプレートで構成した。プレート毎に、2つの対照、4個の予め選択された試料(NA11993、NA11992、NA10860及びNA12763)毎の1個のCoriell DNA及び4個の予め選択された試料からの1個の内部DNA対照があった。Coriell試料のペアワイズ一致は、0.999807~0.999958の範囲であった。4個の内部対照のペアワイズ一致は、0.99976~0.99995の範囲であった。1000 Genomesデータからの予想とCoriell遺伝子型の比較は、0.996028~0.997783の範囲の一致を提供した。
【0208】
詳細な遺伝子データクリーンアップ工程を表9に提示する。2組のSNPを、一致、完了率、アレルコール及びMAFについて評価した。異なるアレルコール又は異なるMAFを有するSNPを保持した。同一のSNPと一致したSNPを統合した。試料及びSNPについての遺伝子型決定完了率を98%に設定した。遺伝子型決定プレートバイアス(DNA試料を希釈するために使用した96ウェルプレートに基づく)を有するSNPにフラグを付けたが、遺伝的祖先の影響が除外できないためこれを除去しなかった。ペアワイズ同型性(identity-by-state)(IBD)を使用して、近い血縁関係のチェックを行った。関係付けられたペア及び試料2組の1つを除く全てのペアメンバー(IBS2*比>0.80)にフラグを付け、非相関SNP(r
2<0.1)の選択に基づきこれを取り除いた。ペアワイズIBS行列を距離尺度として使用して、多次元尺度構成法(MDS)によって試料と試料の外れ値の間の隠れた関係性を確認した。HapMap CEU、JPT-CHB、及びYRIデータの遺伝子型を含む、各被験体の最初の2つのMDS成分をプロットした(創始者個体のみを確保)。主な白人クラスターからの外れ値にフラグを付け、k近傍法によって除去した(
図5)。EIGENSOFTスイートのsmartpcaプログラム(バージョン3.0)を使用して、スクリープロット(scree plot)及び累積の説明済み分散(cumulative explained variance)を計算した。使用したオプションは、numoutlieriter(外れ値除去の反復の最大数)が0(ターンオフ)及びaltnormstyle(正規化式)=NOであった(Price AL Nat Genet 2006;38:904-9)(
図6)。
【0209】
インピュテーション
ADCY9の上流及び下流の5個の遺伝子を含む16番染色体領域(CHR16:3,401,847~4,598,558;NCBI build GRCh37)を、Linux(登録商標)上のプログラムIMPUTE2(バージョン2.3.0)及びGTOOL(バージョン0.7.0)を使用し、1096の遺伝子型決定したSNP及び5749のdal-Outcomes白人試料を用いてインピュテーションを行った(Howie BN et Al. PLoS Genet 2009;5:e1000529)。鎖の整列を、非A/T及びC/GのSNPを位置に従って自動的にフリッピングすることによって解明した。不明瞭なA/T及びC/GのSNPは喪失したと考え、インピュテーションを行った。Impute2 reference package ALL_1000G_phase1integrated_v3_chr16_imputeをインピュテーションに使用した。本発明者等は、1遺伝子型当たり及び1個体当たりのインピュテーションが行われた遺伝子型の確率について0.80のカットオフと98%以上の完了率を使用した。99.76%の平均完了率での分析について17,764の変異体が残った。
【0210】
1,223,798の分析されたコモンSNPの中で、ゲノムワイドな有意性を有する単一領域が、ダルセトラピブ群におけるコックス比例ハザードモデリングによって心血管イベントに関連することが見いだされ、16番染色体上のADCY9遺伝子中のSNP:rs1967309(P=2.41×10
-8)が同定された(
図1A)。この位置における遺伝子変異体は、0.41のマイナーアレル頻度を有し、1つのアレル(A)の相加的遺伝子効果は、ダルセトラピブ群における心血管イベントについてHR=0.65(95%CI 0.56、0.76)を有する(表12a)。rs1967309と連鎖不平衡にあり、関連について低いが裏付けとなる証拠を提供する隣接SNPは、共通の再結合ブロックに位置した(
図1B)。この領域におけるインピュテーションは、P<10
-6の6個を含む、P<10
-5のADCY9遺伝子中の9個の追加のSNPを同定した(
図10)。36,268のSKAT遺伝子セットにおいて分析された835,255のレアSNPはどれも追跡調査についての有意な閾値をパスしなかった。
【0211】
プラセボ群単独においてはrs1967309について検出可能な遺伝子効果はなかった(コックス比例ハザード、HR=0.92;P=0.25)(表12b)。処置群毎の遺伝子間相互作用項(gene-by-treatment arm interaction term)は、統計的な相互作用(P=0.0014;ベータ:-0.340)の指標であった。ダルセトラピブ群における遺伝子型による層別化は、rs1967309におけるマイナーアレルに関するホモ接合体(AA)及びヘテロ接合体(AG)が、参照GGホモ接合体と比較して、それぞれ心血管イベントについてHR=0.40(95%CI 0.28、0.57)及びHR=0.68(95%CI 0.55、0.84)を有することを示す(
図3)。rs1967309においてホモ接合性遺伝子型AAを有する患者のみを考慮すると(n=961)、プラセボと比較してダルセトラピブでは、冠動脈心疾患死、蘇生後の心停止、非致死性の心筋梗塞、非致死性の虚血性脳卒中、不安定狭心症又は予期せぬ冠血行再建の予め特定された複合エンドポイントの39%の低下があった(HR=0.61;95%CI 0.41、0.92)。冠血行再建が主要エンドポイントから除去された場合に同様の結果が観察された(HR=0.60;95%CI 0.35、1.02)。rs1967309においてホモ接合性遺伝子型GGを有する患者のみを考慮した場合(n=1984)、プラセボに対比してダルセトラピブを用いた処置では心血管イベントの27%の増加があった(HR=1.27;95%CI 1.02、1.58)。ヘテロ接合性保有者は、中間の応答を有していた(n=2796;HR=0.94;95%CI 0.77、1.16)。Sequenom技術によってADCY9遺伝子中の27個のSNPを遺伝子型決定することによって結果を確認した(表10)。
【0212】
合計8個の多型(遺伝子型決定した又はインピュテーションを行った)は、dal OUTCOMES試験のファーマコゲノミクス研究からの5749人の患者のディスカバリーコホートにおいて、冠動脈心疾患死、蘇生後の心停止、非致死性の心筋梗塞、非致死性の虚血性脳卒中、虚血の客観的証拠を有する不安定狭心症又は冠血行再建の予め特定された主要複合エンドポイントとの10-6未満のP値に関連した。このディスカバリーゲノムワイド解析では、ADCY9遺伝子中のこれらの8個のSNPの2個は、5×10-8未満のP値に関連していた。多型性ヌクレオチドrs1967309については、AA遺伝子型(マイナー又はコモンでないアレル)を有する患者は、プラセボと比較してダルセトラピブを用いて処置した場合に心血管イベントの39%の低下の恩恵を受けたが、GG遺伝子型(メジャーアレル)を有する患者は27%のリスクの増加を被った。AG遺伝子型を有するヘテロ接合性患者は、中間の応答を有した。これらの結果は、プラセボ群においてではなくダルセトラピブでのみ観察され、臨床イベントとの関連において多型と試験群(ダルセトラピブ対プラセボ)との間に統計的な相互作用があったことからADCY9遺伝子との関係性を高めた。ハザード比は、冠血行再建が分析から除去され、総合的なdal-OUTCOMES試験(冠動脈心疾患、蘇生後の心停止、非致死性の心筋梗塞、非致死性の虚血性脳卒中又は不安定狭心症)の主要複合エンドポイントとの直接比較を提供した場合に同様であった。全ての8個の多型は、強い連鎖不平衡(r2>0.77)にあり、これはADCY9遺伝子のこの領域がダルセトラピブに対する臨床応答を決定するという想定を一層高めた。
【0213】
血漿脂質
rs1967309 SNPの遺伝子型は、dal-OUTCOMESにおいてダルセトラピブによって誘導される脂質の経時変化に有意に関連した。単変量統計を使用して、遺伝子型は、1ヵ月での総コレステロール変化に関連した(P=0.0001;性別及び遺伝的祖先を制御した場合P=0.004):GG遺伝子型保有者は、AG(12.9±30.3)保有者及びAA(13.8±24.0)保有者と比較してより小さい増加(10.0±23.3mg/dl)を有していた。この効果は、プラセボ群においては観察されなかった。ダルセトラピブ処置の1ヵ月後のLDL-コレステロール変化について同様の結果が観察された:変化は、rs1967309のGG、AG及びAA遺伝子型保有者において、それぞれ-2.0±20.0、-1.0±20.0及び+0.6±21.0mg/dlであった(単変量P=0.003;調整済みP=0.006)。ダルセトラピブ処置期間の間、GG保有者は、全体的にわずかに低いLDL-コレステロールレベルを有した(調整済みP=0.048;反復測定分析、
図4)。
【0214】
【0215】
【0216】
【0217】
【0218】
実施例2
dal-PLAQUE-2試験(Tardif JC et al、Circulation Cardiovascular imaging 2011;4:319-33)は、冠動脈疾患及びBモード超音波診断によって評価したところ総頸動脈の遠位壁中に少なくとも0.65mmの頸動脈内膜中膜厚の証拠を有する患者における、アテローム動脈硬化症の進行に及ぼすダルセトラピブの効果を評価するために設計された第3b相多施設二重盲検ランダム化プラセボ対照並行群間試験であった。合計931人の患者を、1日当たりダルセトラピブ600mg又は釣り合う用量のプラセボを24ヵ月の意図する処置期間受けるようにランダム化した。しかしながら、この試験は、dal OUTCOMESの終了と同時に時期を早めて終了した(後者は、効果がないという理由から)。患者は、12ヵ月の追跡頚動脈撮像に戻すまで試験薬治療を続けた。ベースライン、6ヵ月目及び12ヵ月目での頸動脈Bモード超音波記録を、Montreal Heart Instituteのコア研究所で中心的に分析した。内膜中膜複合体厚(IMT)を総頸動脈の遠位壁で分析した。自動エッジ検出ソフトウェア(Carotid Analyzer, Medical Imaging Applications, Coralville, Iowa)を使用して、総頚動脈の長さ10mmの断片を連続検査で分析した。遺伝子試験に同意したdal-PLAQUE-2試験中の411人の参加者の中で、386人をベースライン、6ヵ月及び12ヵ月で画像測定した(ダルセトラピブ群及びプラセボ群にそれぞれ194人及び192人)。DNAを全血から抽出した。研究プロトコールは、関連する治験審査委員会(institutional review boards)又は倫理委員会(ethics committees)によって承認され、全てのヒトの参加者は書面によるインフォームドコンセントを提出した。
【0219】
dal-Plaque-2試験における頚動脈撮像検査の中央分析
全ての取得した頸動脈超音波記録は、Montreal Heart Instituteのコア研究所で、医師によって監督された熟練技術者によって分析された。画像は、試験処置への無作為割り当てに先立ち、品質並びに適格者の組み入れ及び除外基準に適合させる必要があった。頸動脈内膜中膜厚の分析方法には、ベースライン研究と追跡研究の平行観察を含めた。
【0220】
頸動脈壁断片を、最長の可能な断片上の血液と血管構造の間の界面を見るために、動脈画像の水平面表示で超音波ビームに対して垂直な縦断面図で評価した。総頚動脈の末端の部位を、ベースライン研究と追跡研究において同等な長さの断片を再配置及び分析する際の目印として使用した。内膜中膜複合体厚を左右の総頸動脈の遠位壁上で分析し、測定の変動を減少させた。左右の総頸動脈の平均内膜中膜複合体厚値の平均を使用した。一致した10mmの長さの総頚動脈の断片を、頚動脈分岐部近位の5mmから開始して、連続検査で分析した(ベースライン、6ヵ月及び12ヵ月)。エッジ検出ソフトウェアCarotid Analyzer(Medical Imaging Applications LLC, Coralville, Iowa)を使用し、自動オプションを使用して内膜中膜複合体厚を分析した。2セットの頸動脈境界を同定した:1つ目の中膜-外膜境界は、読み取り者が決定及び検証した。必要な場合は、それらの位置を正確な位置まで半自動的に修正した。これらの境界が認められたら、指針として中膜-外膜境界を使用して、内腔-内膜境界を自動的に検出した。内膜中膜複合体厚のループ化されたシーケンスからのフレームを読み取り用に選択し、必要な場合は低品質の外れ値フレームを分析から除外した。
【0221】
Sequenomによる遺伝子型決定のために選択された27個のSNPの中で、ADCY9遺伝子中の20個のSNPは、ディスカバリーコホートにおいてP<0.05を有した。本発明者等は、ダルセトラピブ群(n=194)において処置の6ヵ月及び12ヵ月後に得られた画像データを利用することによって関連についての裏付けとなる証拠を得るために、dal-PLAQUE-2試験においてこれらのSNPとの関連について試験した。20個のSNPの内10個は、dal-PLAQUE-2においてIMT測定値との関連を提供した(P<0.05、表13)。特に、マーカーrs2238448(rs1967309と連鎖不平衡にあった(r2=0.80))は、dal-plaque-2においてIMTと関連し(P=0.009)、dal-OUTCOMESにおいてイベントと関連した(P=8.88×10-8;HR=0.67、95%CI 0.58、0.78)。ダルセトラピブを用いた処置の12ヵ月後、IMTの変化は、rs2238448(P=0.009)において、マイナーアレル(TT)のホモ接合体保有者では-0.027±0.079mm、ヘテロ接合体については0.000±0.048mm、そしてコモンアレル(CC)のホモ接合性保有者については+0.009±0.038mmであった。この効果は、6ヵ月目に現れた。全ての20個のSNPは、dal-OUTCOMES試験において心血管リスクの低下を示した遺伝子型群と一致して、IMTの減少を表示した(表13)。遺伝子型決定したSNPのどれもプラセボ群において関連を示さなかった(全てP>0.05)。rs2531967の処置毎の遺伝子間相互作用項だけが、おそらくは小さい試料サイズのために、dal-PLAQUE-2において有意に達した(P=0.024)。SNP rs1967309は、dal-PLAQUE-2においては有意に達しなかったが(P=0.114)、IMTの低下は、rs2238448と類似の大きさであり、dal-OUTCOMESにおける知見と一致した。ダルセトラピブを用いた処置の12ヵ月後、IMTの変化は、rs1967309において、AAホモ接合体では-0.021±0.083mm、ヘテロ接合体については-0.001±0.048mm、そしてGGホモ接合体については+0.005±0.042mmであった。
【0222】
【0223】
実施例1と実施例2の両方についての統計分析
JMP Genomics ソフトウェアバージョン6.1を使用してゲノムワイド関連解析を実施した。有意な結果をSASソフトウェア(v.9.3)(SAS Institute Inc., Cary, NC, USA)で検証した。自由度1の相加的遺伝子検定を使用し、そこでマイナーアレルのカウントに従って遺伝子型を0、1又は2として符号化した。共変量の存在下、相加的遺伝子検定についてのP値を、
【数1】
のように共変量について調整する;式中、rは、イベントを有する確率であり、相加的遺伝子検定下の帰無仮説(null)(H
0)は、b
1=0である。コックス比例ハザード回帰モデルを使用して、処置群とプラセボ群の両方の試料を使用し、log(イベント率)~遺伝子型+処置群+遺伝子型*処置群+性別+主成分に従って、処置毎の遺伝子間相互作用について試験した。GWASディスカバリーモデルには、性別及び遺伝的祖先についての5個の主成分の調整を含めた。両方の処置群由来の試料を使用してMAFを算出した。レア変異体(MAF<0.05)を、共変量を含みかつパラメーターa
1(1に設定)及びa
2(25に設定)を用いたベータ重み関数を使用したsequence kernel association test(SKAT)(Wu MC et al, Am J Hum Genet 2011;89:82-93)を使用して、遺伝子内で一緒に分析した。2つの遺伝子間に位置付けられた変異体を別個のセットとして分析した。
【0224】
dal-Plaque-2集団について、反復測定分析のための混合回帰モデルをSASソフトウェアで検定した。dal-Plaque-2で試験したエンドポイントは、共変量としてベースライン測定値を使用した、6ヵ月及び12ヵ月の来院時の総頸動脈のIMT測定値の平均であった。Sequenomパネルで遺伝子型決定した27個のSNPの多重検定のための有意な閾値の調整は、選択されたSNPの高度に相関した性質のために実施しなかった。参照として、dal-Outcomes集団の試料を使用し、Gao et al, Genet Epidemiol 2008;32:361-9 の方法を使用して独立検定の数(Meff)をMeff=8に推定した。
【0225】
連鎖不平衡プロット(
図8及び9)について、Haploview(バージョン4.2)(Barrett JC et al. Bioinformatics 2005;21:263-5)を使用して、D’値の色熱(colour heat)プロットと共に、連鎖不平衡r
2値をペアワイズ行列プロットで表示した。連鎖不平衡のブロックを、[0.70、0.98]、強い再結合についての上側信頼限界を0.9、インフォーマティブ比較における強いLDのフラクションを≧0.95に設定した信頼区間法を使用して組み立てた。
【配列表】