(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】レーザエンボス用ポリエステルフィルム及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/36 20060101AFI20230314BHJP
B32B 38/06 20060101ALI20230314BHJP
B29C 59/16 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
B32B27/36
B32B38/06
B29C59/16
(21)【出願番号】P 2021067053
(22)【出願日】2021-04-12
【審査請求日】2021-04-12
(32)【優先日】2020-07-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(73)【特許権者】
【識別番号】501296612
【氏名又は名称】南亞塑膠工業股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】NAN YA PLASTICS CORPORATION
【住所又は居所原語表記】NO.201,TUNG HWA N.RD.,TAIPEI,TAIWAN
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】楊 文政
(72)【発明者】
【氏名】廖 ▲徳▼超
(72)【発明者】
【氏名】蕭 嘉▲彦▼
(72)【発明者】
【氏名】▲鄭▼ 文瑞
【審査官】松浦 裕介
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-110515(JP,A)
【文献】特開2011-256328(JP,A)
【文献】特開2013-202940(JP,A)
【文献】特開平10-193488(JP,A)
【文献】国際公開第2004/058495(WO,A1)
【文献】特開2003-320632(JP,A)
【文献】特開2012-096410(JP,A)
【文献】特開2004-156041(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2010-0008011(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0082496(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC B32B 1/00 - 43/00
B29C 48/00 - 48/96
B29C 53/00 - 53/84
B29C 57/00 - 59/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ペットボトルチップ由来の回収ポリエステル材料で作製されるレーザエンボス用ポリエステルフィルムであって、前記レーザエンボス用ポリエステルフィルムは、
基材層、及び前記基材層の少なくとも一面に設置される表皮層を備え、
前記表皮層は、第1のポリエステル組成物で形成され、
前記第1のポリエステル組成物は、物理的再生ポリエステル樹脂及び化学的再生ポリエステル樹脂を含み、前記物理的再生ポリエステル樹脂及び前記化学的再生ポリエステル樹脂は、それぞれ、再生ポリエチレンテレフタレートを主成分として形成され、前記第1のポリエステル組成物の総重量を100重量%としたときに、前記物理的再生ポリエステル樹脂の含有量は50~95重量%であり、前記化学的再生ポリエステル樹脂の含有量は1~40重量%であり、前記物理的再生ポリエステル樹脂及び前記化学的再生ポリエステル樹脂の総含有量は51~100重量%であり、
前記化学的再生ポリエステル樹脂は、化学的再生ポリエステルチップで形成され、前記化学的再生ポリエステルチップは、化学的再生通常ポリエステルチップ、化学的再生静電気密着ポリエステルチップ、及び化学的再生変性ポリエステルチップを含み、前記化学的再生変性ポリエステルチップは、再生ポリエチレンテレフタレートを主成分として形成されるとともに、1,4-ブタンジオール、イソフタル酸、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ペンタンジオール、イソペンチルジオール、アジピン酸、及び1,4-シクロヘキサンジメタノールの中から選ばれる少なくとも一種の残基を含み、
前記化学的再生変性ポリエステルチップの総重量を100重量%としたときに、前記化学的再生変性ポリエステルチップは、0~60重量%の1,4-ブタンジオール残基、0~20重量%のイソフタル酸残基、0~20重量%のネオペンチルグリコール残基、0~60重量%の2-メチル-1,3-プロパンジオール残基、0~20重量%のペンタンジオール残基、0~20重量%のイソペンチルジオール残基、0~20重量%のアジピン酸残基、及び0~20重量%の1,4-シクロヘキサンジメタノール残基の中から選ばれる少なくとも一種の残基から構成され、それによって、前記表皮層の融点を190℃~240℃にする、ことを特徴とするレーザエンボス用ポリエステルフィルム。
【請求項2】
前記物理的再生ポリエステル樹脂における環状オリゴマーの濃度は、前記化学的再生ポリエステル樹脂における環状オリゴマーの濃度よりも低い、請求項
1に記載のレーザエンボス用ポリエステルフィルム。
【請求項3】
前記表皮層は、0.0003~2重量%の結晶核剤を含有する、請求項1に記載のレーザエンボス用ポリエステルフィルム。
【請求項4】
前記表皮層の厚さは、前記レーザエンボス用ポリエステルフィルムの総厚さの5%~40%であり、前記レーザエンボス用ポリエステルフィルムの総厚さは8μm~350μmである、請求項1に記載のレーザエンボス用ポリエステルフィルム。
【請求項5】
前記第1のポリエステル組成物の総重量を100重量%としたときに、前記第1のポリエステル組成物は0.5~5重量%のイソフタル酸を含む、請求項1に記載のレーザエンボス用ポリエステルフィルム。
【請求項6】
前記第1のポリエステル組成物の総重量を100重量%としたときに、前記第1のポリエステル組成物は1~25重量%のバイオマス誘導材料を含み、前記第1のポリエステル組成物中の全炭素原子に対して、前記第1のポリエステル組成物中のC
14の含有量は0.2~5重量%である、請求項1に記載のレーザエンボス用ポリエステルフィルム。
【請求項7】
前記第1のポリエステル組成物の総重量を100重量%としたときに、前記第1のポリエステル組成物は0.0003~0.04重量%の金属触媒を含み、前記金属触媒は、アンチモン、ゲルマニウム、チタン、又はそれらの任意の組み合わせである、請求項1に記載のレーザエンボス用ポリエステルフィルム。
【請求項8】
前記基材層は、第2のポリエステル組成物で形成され、前記第2のポリエステル組成物は、再生ポリエチレンテレフタレートを主成分として含み、前記第2のポリエステル組成物は物理的再生ポリエステル樹脂及び化学的再生ポリエステル樹脂を含み、前記物理的再生ポリエステル樹脂及び前記化学的再生ポリエステル樹脂は、それぞれ、再生ポリエチレンテレフタレートを主成分として形成され、前記第2のポリエステル組成物の総重量を100重量%としたときに、前記物理的再生ポリエステル樹脂の含有量は50~95重量%であり、前記化学的再生ポリエステル樹脂の含有量は1~40重量%であり、前記物理的再生ポリエステル樹脂及び前記化学的再生ポリエステル樹脂の総含有量は5
1~100重量%である、請求項1に記載のレーザエンボス用ポリエステルフィルム。
【請求項9】
ペットボトルチップ由来の回収ポリエステル材料を提供するステップと、
一部分の前記回収ポリエステル材料を物理的再生し、物理的再生通常ポリエステルチップを含む物理的再生ポリエステルチップを得るステップと、
他部分の前記回収ポリエステル材料を化学的再生し、化学的再生通常ポリエステルチップ及び
化学的静電気密着ポリエステルチッ
プを得るステップと、
前記回収ポリエステル材料を再生することによって得られた
化学的再生変性ポリエステルチップ、前記物理的再生ポリエステルチップ、
前記化学的再生通常ポリエステルチップ及び前記化学的静電気密着ポリエステルチップを混合し、原料混合物を形成するステップと、
前記原料混合物を、融点が190℃~240℃の表皮層に形成するステップと、
前記表皮層に基材層を形成し、レーザエンボス用ポリエステルフィルムを得るステップと、を含むレーザエンボス用ポリエステルフィルムの製造方法であって、
前記表皮層に含まれた前記物理的再生ポリエステルチップの含有量は50~95重量%であり、前記化学的再生変性ポリエステルチップ、前記化学的再生通常ポリエステルチップ及び前記化学的静電気密着ポリエステルチップの総含有量は1~40重量%であり、前記物理的再生ポリエステルチップ、前記化学的再生変性ポリエステルチップ、前記化学的再生通常ポリエステルチップ及び前記化学的静電気密着ポリエステルチップの総含有量は51~100重量%であり、
前記化学的再生変性ポリエステルチップを作製するステップは、
前記回収ポリエステル材料を解重合し、第1のオリゴマー混合物を得るステップと、
前記第1のオリゴマー混合物に、1,4-ブタンジオール、イソフタル酸、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ペンタンジオール、イソペンチルジオール、アジピン酸、及び1,4-シクロヘキサンジメタノールの中から選ばれる少なくとも一種を添加し、第2のオリゴマー混合物を形成するステップと、
前記第2のオリゴマー混合物を再重合し、前記化学的再生変性ポリエステルチップを得るステップと、を含み、
前記化学的再生変性ポリエステルチップは、再生ポリエチレンテレフタレートを主成分として形成されるとともに、1,4-ブタンジオール、イソフタル酸、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ペンタンジオール、イソペンチルジオール、アジピン酸、及び1,4-シクロヘキサンジメタノールの中から選ばれる少なくとも一種の残基を有し、
前記化学的再生変性ポリエステルチップの総重量を100重量%としたときに、前記化学的再生変性ポリエステルチップは、0~60重量%の1,4-ブタンジオール残基、0~20重量%のイソフタル酸残基、0~20重量%のネオペンチルグリコール残基、0~60重量%の2-メチル-1,3-プロパンジオール残基、0~20重量%のペンタンジオール残基、0~20重量%のイソペンチルジオール残基、0~20重量%のアジピン酸残基、及び0~20重量%の1,4-シクロヘキサンジメタノール残基の中から選ばれる少なくとも一種の残基から構成されることを特徴とするレーザエンボス用ポリエステルフィルムの製造方法。
【請求項10】
ペットボトルチップ由来の回収ポリエステル材料を提供するステップと、
一部分の前記回収ポリエステル材料を物理的再生し、物理的再生通常ポリエステルチップを含む物理的再生ポリエステルチップを得るステップと、
他部分の前記回収ポリエステル材料を化学的再生し、化学的再生通常ポリエステルチップ及び
化学的静電気密着ポリエステルチッ
プを得るステップと、
前記回収ポリエステル材料を化学的再生することによって得られた
化学的再生変性ポリエステルチップ、
前記物理的再生ポリエステルチップ、
前記化学的再生通常ポリエステルチップ及び前記化学的静電気密着ポリエステルチップを混合し、原料混合物を形成するステップと、
前記物理的再生ポリエステルチップ
、前記化学的再生通常ポリエステルチップ及び前記化学的静電気密着ポリエステルチップを混合し、基材を形成するステップと、
前記原料混合物及び前記基材を共押出し、前記原料混合物で形成される表皮層、及び前記基材で形成される基材層を含むレーザエンボス用ポリエステルフィルムを得るステップと、を含むレーザエンボス用ポリエステルフィルムの製造方法であって、
前記表皮層に含まれた前記物理的再生ポリエステルチップの含有量は50~95重量%であり、前記化学的再生変性ポリエステルチップ、前記化学的再生通常ポリエステルチップ及び前記化学的静電気密着ポリエステルチップの総含有量は1~40重量%であり、前記物理的再生ポリエステルチップ、前記化学的再生変性ポリエステルチップ、前記化学的再生通常ポリエステルチップ及び前記化学的静電気密着ポリエステルチップの総含有量は51~100重量%であり、
前記化学的再生変性ポリエステルチップを作製するステップは、
前記回収ポリエステル材料を解重合し、第1のオリゴマー混合物を得るステップと、
前記第1のオリゴマー混合物に、1,4-ブタンジオール、イソフタル酸、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ペンタンジオール、イソペンチルジオール、アジピン酸、及び1,4-シクロヘキサンジメタノールの中から選ばれる少なくとも一種を添加し、第2のオリゴマー混合物を形成するステップと、
前記第2のオリゴマー混合物を再重合し、前記化学的再生変性ポリエステルチップを得るステップと、を含み、
前記化学的再生変性ポリエステルチップは、再生ポリエチレンテレフタレートを主成分として形成されるとともに、1,4-ブタンジオール、イソフタル酸、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ペンタンジオール、イソペンチルジオール、アジピン酸、及び1,4-シクロヘキサンジメタノールの中から選ばれる少なくとも一種の残基を有し、
前記化学的再生変性ポリエステルチップの総重量を100重量%としたときに、前記化学的再生変性ポリエステルチップは、0~60重量%の1,4-ブタンジオール残基、0~20重量%のイソフタル酸残基、0~20重量%のネオペンチルグリコール残基、0~60重量%の2-メチル-1,3-プロパンジオール残基、0~20重量%のペンタンジオール残基、0~20重量%のイソペンチルジオール残基、0~20重量%のアジピン酸残基、及び0~20重量%の1,4-シクロヘキサンジメタノール残基の中から選ばれる少なくとも一種の残基から構成され、
前記表皮層の融点は190℃~240℃である、ことを特徴とするレーザエンボス用ポリエステルフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザエンボス用ポリエステルフィルム及びその製造方法に関し、特に、回収ポリエステルを用いて作製されるレーザエンボス用ポリエステルフィルム及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プラスチックの使用量が大幅に増加したため、大量のプラスチックごみが発生している。プラスチックは分解が難しいため、回収及び回収後の処理が格別に重要である。
【0003】
回収プラスチックにおいては、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)が多く、PET回収プラスチックの含有量は全回収プラスチックの約52.4%を占める。このような大量のPET回収プラスチックに対し、当業者はPET回収プラスチックの処理方法の開発に注力しなければならない。
【0004】
従来技術において、PET回収方法としては、物理(機械)の方法によってPETを回収する方法が最もよく見られる。まず、洗浄されたPET回収プラスチックをフレークに裁断して高温で溶かし、次いで押出機によって押出し、PET回収ペレット(又はr-PETと称される)を作製する。
【0005】
環境を配慮しながら、PET製品における回収PETペレットの含有率を多くするためには、品質の高い回収PETペレットを大量に使用する必要がある。業界では、今は、物理的方法によってPETを回収することが多いが、作製される回収ペレットには、製造過程において、滑剤、静電気密着剤などの機能性成分を添加することができない。そのため、他にPETバージンペレット(virgin PET resin)を使用し、前記機能性成分を添加しなければならない。
【0006】
しかし、PETバージンペレットを添加すると、PET製品におけるPET回収ペレットの使用率は低下する。すなわち、従来技術ではPET回収ペレットのみで新しいPET製品を製造することができない。PET回収ペレットの使用率が低下すると、環境ラベルの使用基準に合わず、環境ラベルを使用できない恐れがある。また、PET製品の製造過程において使用されるPETバージンペレットは、使用後は処理する必要があるため、回収再利用の問題が再度発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする技術的問題は、従来技術の不足に対し、レーザエンボス用ポリエステルフィルム及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した技術的問題を解決するために、本発明が採用する技術的手段はレーザエンボス用ポリエステルフィルムを提供することである。前記レーザエンボス用ポリエステルフィルムは回収ポリエステル材料で作製され、レーザエンボス用ポリエステルフィルムは、基材層、及び基材層の少なくとも一面に設置される表皮層を備える。表皮層は、第1のポリエステル組成物で形成され、第1のポリエステル組成物は、再生ポリエチレンテレフタレートを主成分として含むとともに、1,4-ブタンジオール(1,4-butanediol)、イソフタル酸(isophthalic acid)、ネオペンチルグリコール(neopentyl glycol)、2-メチル-1,3-プロパンジオール(2-methyl-1,3-propanediol)、ペンタンジオール(pentanediol)、イソペンチルジオール(isopentyldiol)、アジピン酸(adipic acid)、及び1,4-シクロヘキサンジメタノール(1,4-cyclohexanedimethanol)の中から選ばれる少なくとも一種の成分を含み、それによって、表皮層の融点を190℃~240℃にする。
【0009】
一部の実施形態において、第1のポリエステル組成物は、物理的再生ポリエステル樹脂及び化学的再生ポリエステル樹脂を含み、物理的再生ポリエステル樹脂及び化学的再生ポリエステル樹脂は、それぞれ、再生ポリエチレンテレフタレートを主成分として形成され、第1のポリエステル組成物の総重量を100重量%としたときに、物理的再生ポリエステル樹脂の含有量は50~95重量%であり、化学的再生ポリエステル樹脂の含有量は1~40重量%であり、物理的再生ポリエステル樹脂及び化学的再生ポリエステル樹脂の総含有量は50~100重量%である。
【0010】
一部の実施形態において、化学的再生ポリエステル樹脂は、化学的再生ポリエステルチップで形成され、化学的再生ポリエステルチップは、化学的再生通常ポリエステルチップ、化学的再生静電気密着ポリエステルチップ、及び化学的再生変性ポリエステルチップを含み、なかでも、化学的再生変性ポリエステルチップは、再生ポリエチレンテレフタレートを主成分として形成されるとともに、1,4-ブタンジオール、イソフタル酸、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ペンタンジオール、イソペンチルジオール、アジピン酸、及び1,4-シクロヘキサンジメタノールの中から選ばれる少なくとも一種の残基を含む。
【0011】
一部の実施形態において、化学的再生変性ポリエステルチップの総重量を100重量%としたときに、化学的再生変性ポリエステルチップは、0~60重量%の1,4-ブタンジオール残基、0~20重量%のイソフタル酸残基、0~20重量%のネオペンチルグリコール残基、0~60重量%の2-メチル-1,3-プロパンジオール残基、0~20重量%のペンタンジオール残基、0~20重量%のイソペンチルジオール残基、0~20重量%のアジピン酸残基、及び0~20重量%の1,4-シクロヘキサンジメタノール残基の中から選ばれる少なく一種の残基から構成される。
【0012】
一部の実施形態において、物理的再生ポリエステル樹脂における環状オリゴマーの濃度は、化学的再生ポリエステル樹脂における環状オリゴマーの濃度よりも低い。
【0013】
一部の実施形態において、表皮層は、0.0003~2重量%の結晶核剤を含有する。
【0014】
一部の実施形態において、表皮層の厚さは、レーザエンボス用ポリエステルフィルムの総厚さの5%~40%を占め、レーザエンボス用ポリエステルフィルムの総厚さは8μm~350μmである。
【0015】
一部の実施形態において、第1のポリエステル組成物の総重量を100重量%としたときに、第1のポリエステル組成物は0.5~5重量%のイソフタル酸を含む。
【0016】
一部の実施形態において、第1のポリエステル組成物の総重量を100重量%としたときに、第1のポリエステル組成物は1~25重量%のバイオマス誘導材料を含み、前記第1のポリエステル組成物中の全炭素原子に対して、前記第1のポリエステル組成物中のC14の含有量は0.2~5重量%である。
【0017】
一部の実施形態において、第1のポリエステル組成物の総重量を100重量%としたときに、第1のポリエステル組成物は0.0003~0.04重量%の金属触媒を含み、金属触媒は、アンチモン、ゲルマニウム、チタン、又はそれらの任意の組み合わせである。
【0018】
一部の実施形態において、基材層は、第2のポリエステル組成物で形成され、第2のポリエステル組成物は、再生ポリエチレンテレフタレートを主成分として含み、第2のポリエステル組成物は物理的再生ポリエステル樹脂及び化学的再生ポリエステル樹脂を含み、物理的再生ポリエステル樹脂及び化学的再生ポリエステル樹脂は、それぞれ、再生ポリエチレンテレフタレートを主成分として形成され、第2のポリエステル組成物の総重量を100重量%としたときに、物理的再生ポリエステル樹脂の含有量は50~95重量%であり、化学的再生ポリエステル樹脂の含有量は1~40重量%であり、物理的再生ポリエステル樹脂及び化学的再生ポリエステル樹脂の総含有量は50~100重量%である。
【0019】
上述した技術的問題を解決するために、本発明が採用する別の技術的手段はレーザエンボス用ポリエステルフィルムの製造方法を提供することである。前記レーザエンボス用ポリエステルフィルムの製造方法は、回収ポリエステル材料を提供するステップと、一部分の回収ポリエステル材料を物理的再生し、物理的再生通常ポリエステルチップを含む物理的再生ポリエステルチップを得るステップと、他部分の回収ポリエステル材料を化学的再生し、化学的再生通常ポリエステルチップ及び静電気密着ポリエステルチップを含む化学的再生ポリエステルチップを得るステップと、回収ポリエステル材料を再生することによって得られた変性ポリエステルチップ、物理的再生ポリエステルチップ、及び化学的再生ポリエステルチップを混合し、原料混合物を形成するステップと、原料混合物を、融点が190℃~240℃の表皮層に形成するステップと、表皮層に基材層を形成し、レーザエンボス用ポリエステルフィルムを得るステップと、を含む。なかでも、変性ポリエステルチップは、再生ポリエチレンテレフタレートを主成分として含むとともに、1,4-ブタンジオール、イソフタル酸、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ペンタンジオール、イソペンチルジオール、アジピン酸、及び1,4-シクロヘキサンジメタノールの中から選ばれる少なくとも一種の成分を含む。
【0020】
一部の実施形態において、変性ポリエステルチップは、化学的再生変性ポリエステルチップであり、化学的再生変性ポリエステルチップを作製するステップは、回収ポリエステル材料を解重合し、第1のオリゴマー混合物を得るステップと、第1のオリゴマー混合物に、1,4-ブタンジオール、イソフタル酸、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ペンタンジオール、イソペンチルジオール、アジピン酸、及び1,4-シクロヘキサンジメタノールの中から選ばれる少なくとも一種を添加し、第2のオリゴマー混合物を得るステップと、第2のオリゴマー混合物を再重合し、化学的再生変性ポリエステルチップを得るステップと、を含む。なかでも、化学的再生変性ポリエステルチップは、再生ポリエチレンテレフタレートを主成分として形成されるとともに、1,4-ブタンジオール、イソフタル酸、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ペンタンジオール、イソペンチルジオール、アジピン酸、及び1,4-シクロヘキサンジメタノールの中から選ばれる少なくとも一種の残基を有する。
【0021】
上述した技術的問題を解決するために、本発明が採用するもう一つの別の技術的手段はレーザエンボス用ポリエステルフィルムの製造方法を提供することである。前記レーザエンボス用ポリエステルフィルムの製造方法は、回収ポリエステル材料を提供するステップと、一部分の回収ポリエステル材料を物理的再生し、物理的再生通常ポリエステルチップを含む物理的再生ポリエステルチップを得るステップと、他部分の回収ポリエステル材料を化学的再生し、化学的再生通常ポリエステルチップ及び静電気密着ポリエステルチップを含む化学的再生ポリエステルチップを得るステップと、回収ポリエステル材料を化学的再生することによって得られた変性ポリエステルチップ、物理的再生ポリエステルチップ、及び化学的再生ポリエステルチップを混合し、原料混合物を形成するステップと、物理的再生ポリエステルチップ及び化学的再生ポリエステルチップを混合し、基材を形成するステップと、原料混合物及び基材を共押出し、原料混合物で形成され、融点が190℃~240℃の表皮層、及び基材で形成される基材層を含むレーザエンボス用ポリエステルフィルムを得るステップと、を含む。なかでも、変性ポリエステルチップは、再生ポリエチレンテレフタレートを主成分として含むとともに、1,4-ブタンジオール、イソフタル酸、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ペンタンジオール、イソペンチルジオール、アジピン酸、及び1,4-シクロヘキサンジメタノールの中から選ばれる少なくとも一種の成分を含む。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一つの有利な効果としては、本発明が提供するレーザエンボス用ポリエステルフィルム及びその製造方法は、「第1のポリエステル組成物は、再生ポリエチレンテレフタレートを主成分として含むとともに、1,4-ブタンジオール、イソフタル酸、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ペンタンジオール、イソペンチルジオール、アジピン酸、及び1,4-シクロヘキサンジメタノールの中から選ばれる少なくとも一種の成分を含む」という技術的手段によって、レーザエンボス用ポリエステルフィルム1における回収ポリエステル材料の含有量を高められる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係るレーザエンボス用ポリエステルフィルムを示す側面模式図である。
【
図2】本発明の第1の実施形態に係るレーザエンボス用ポリエステルフィルムを示す使用状態模式図である。
【
図3】本発明の第2の実施形態に係るレーザエンボス用ポリエステルフィルムを示す側面模式図である。
【
図4】本発明の第3の実施形態に係るレーザエンボス用ポリエステルフィルムを示す側面模式図である。
【
図5】本発明のレーザエンボス用ポリエステルフィルムの製造方法を示すステップ流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の特徴及び技術内容をより良く理解するために、本発明に係る詳細な説明と図面を参照するが、提供される図面は、参照と説明のためのものに過ぎず、本発明を制限するためのものではない。
【0025】
以下、所定の具体的な実施態様によって本発明が開示する「レーザエンボス用ポリエステルフィルム及びその製造方法」に係る実施形態を説明し、当業者は、本明細書に開示された内容に基づいて本発明の利点と効果を理解することができる。本発明は、他の異なる具体的な実施態様によって実行又は適用でき、本明細書における各細部についても、異なる観点と用途に基づいて、本発明の構想から逸脱しない限り、各種の修正と変更を行うことができる。また、事前に説明するように、本発明の添付図面は、簡単な模式的説明であり、実際の寸法に基づいて描かれたものではない。以下の実施形態に基づいて本発明に係る技術内容を更に詳細に説明するが、開示される内容は本発明の保護範囲を制限するためのものではない。また、本願で使用される用語「又は」は、実際の状況に応じて、関連して挙げられる項目におけるいずれか1つ又は複数の組み合わせを含む可能性がある。
[第1の実施形態]
【0026】
図1を参照されたい。図面に示すように、本発明の第1の実施形態は、レーザエンボス用ポリエステルフィルム1を提供する。レーザエンボス用ポリエステルフィルム1は、基材層11及び表皮層12を備える。
【0027】
基材層11は可撓性を有する。基材層11は第1の表面111、及び第2の表面112を有し、表皮層12は基材層11における第1の表面111に設置され、表皮層12は易エンボス層(embossed layer)である。また、基材層11における第2の表面112に対しては選択的にコロナ処理(corona treatment)を施すことができる。
【0028】
本実施形態において、レーザエンボス用ポリエステルフィルムの総厚さは8μm~350μmであり、表皮層12の厚さは、レーザエンボス用ポリエステルフィルムの総厚さの5%~40%を占める。
【0029】
図2を参照されたい。図面に示すように、使用する際は、レーザー彫刻によって金属版Mに立体エンボスパターンP1を形成し、レーザエンボス用ポリエステルフィルム1における表皮層12に該金属版Mを押し付け、さらに、ニーズを応じて金属版Mを所定の温度(例えば、200℃)まで加熱し、表皮層12に該立体エンボスパターンP1の凹凸形状が反転した凹凸形状を有する別の立体エンボスパターンP2を形成する。しかし、上述した細節は本実施形態が提供する可能な実施態様に過ぎず、本発明を限定するためのものではない。
【0030】
基材層11はポリエステル組成物で形成され、ポリエステル組成物は再生ポリエチレンテレフタレートを主成分として含むとともに、ポリエステル組成物は物理的再生ポリエステル樹脂及び化学的再生ポリエステル樹脂を含み、物理的再生ポリエステル樹脂及び化学的再生ポリエステル樹脂は、それぞれ、再生ポリエチレンテレフタレートを主成分として形成される。
【0031】
基材層11を形成するポリエステル組成物において、ポリエステル組成物の総重量を100重量%としたときに、物理的再生ポリエステル樹脂の含有量は50~95重量%であり、化学的再生ポリエステル樹脂の含有量は1~40重量%であり、物理的再生ポリエステル樹脂及び化学的再生ポリエステル樹脂の総含有量は50~100重量%である。
【0032】
表皮層12はポリエステル組成物で形成され、ポリエステル組成物は再生ポリエチレンテレフタレートを主成分として含むとともに、ポリエステル組成物は物理的再生ポリエステル樹脂及び化学的再生ポリエステル樹脂を含み、物理的再生ポリエステル樹脂及び化学的再生ポリエステル樹脂は、それぞれ、再生ポリエチレンテレフタレートを主成分として形成される。
【0033】
表皮層12を形成するポリエステル組成物において、ポリエステル組成物の総重量を100重量%としたときに、物理的再生ポリエステル樹脂の含有量は50~95重量%であり、化学的再生ポリエステル樹脂の含有量は1~40重量%であり、物理的再生ポリエステル樹脂及び化学的再生ポリエステル樹脂の総含有量は50~100重量%である。表皮層12を形成するポリエステル組成物のガラス転移温度(Tg)は45℃~60℃であり、融点(Tm)は190℃~240℃である。
【0034】
表皮層12を形成するポリエステル組成物は変性剤を含み、変性剤は1,4-ブタンジオール、イソフタル酸、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ペンタンジオール、イソペンチルジオール、アジピン酸、及び1,4-シクロヘキサンジメタノールの中から選ばれる少なくとも一種を含む。変性剤を添加することで、ポリエステル組成物の融点を下げることができ、それによって、表皮層12は優れた加工性を有するとともに、エンボスプロセス(embossing process)に適用される。
【0035】
表皮層12の耐熱性及び加工性を高めるために、表皮層12は0.0003~2重量%の結晶核剤を含有してもよい。結晶核剤は、鉱物材料、金属酸化物、ケイ素化合物、有機酸又は無機酸の金属塩、芳香族リン酸エステル金属塩、ポリオール誘導体、スルフィミド化合物、ガラス粉末、金属粉末、又はそれらの任意の組み合わせである。結晶核剤は結晶化度を高めることにより、表皮層12の耐熱性を改善することができる。なお、結晶核剤は、結晶の成長を促進し、結晶のサイズを微細化し、大きい球晶が生成されることを防止できるとともに、フィルム面が脆化することを防止することができる。
【0036】
鉱物材料の具体例としては、グラファイト、タルク、及びカオリンが挙げられる。金属酸化物の具体例としては、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、及び酸化マグネシウムが挙げられる。ケイ素化合物の具体例としては、酸化ケイ素、ケイ酸カルシウム、及びケイ酸マグネシウムが挙げられる。有機酸又は無機酸の金属塩の具体例としては、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、安息香酸ナトリウム、及びp-tert-ブチル安息香酸アルミニウム(aluminium p-tert-butylbenzoate)が挙げられる。リン酸エステル金属塩としては、芳香族リン酸エステル金属塩が挙げられる。ポリオール誘導体としては、ジベンジリデンソルビトールが挙げられる。耐熱性の観点から、結晶核剤は無機材料であることが好ましい。
【0037】
上記に続いて、基材層11及び表皮層12は、それぞれ、ポリエステル組成物で形成され、上記ポリエステル組成物は、それぞれ、物理的再生ポリエステル樹脂及び化学的再生ポリエステル樹脂を含む。注意すべきことは、基材層11を形成するポリエステル組成物、及び表皮層12を形成するポリエステル組成物は、互いに同様であってもよく、同様でなくてもよい。
【0038】
本発明は、物理的再生ポリエステル樹脂及び化学的再生ポリエステル樹脂を混用することにより、基材層11及び表皮層12における回収ポリエステル材料の使用率を大幅に上げることができる。また、他にバージンポリエステルチップを添加しない状態でも、物理的再生ポリエステル樹脂のみを使用する際に発生する、不純物が多いという従来の問題も起こらない。
【0039】
更に言えば、上述した物理的再生ポリエステル樹脂は、一種、又は多種の物理的再生ポリエステルチップで形成され、物理的再生ポリエステルチップは、再生ポリエチレンテレフタレートを主成分として形成される。上述した化学的再生ポリエステル樹脂は、一種又は多種の化学的再生ポリエステルチップで形成され、化学的再生ポリエステルチップは再生ポリエチレンテレフタレートを主成分として形成される。物理的再生ポリエステルチップ及び化学的再生ポリエステルチップの製造方法は後述する。
【0040】
図5に示すように、本発明は、レーザエンボス用ポリエステルフィルムの製造方法を提供する。レーザエンボス用ポリエステルフィルムの製造方法は以下のステップを含む:回収ポリエステル材料を提供する(ステップS1)、一部分の回収ポリエステル材料を物理的再生し、物理的再生ポリエステルチップを得る(ステップS2)、他部分の回収ポリエステル材料を化学的再生し、化学的再生ポリエステルチップを得る(ステップS3)、変性ポリエステルチップ、物理的再生ポリエステルチップ、及び化学的再生ポリエステルチップを混合し、原料混合物を形成する(ステップS4)。物理的再生ポリエステルチップ及び化学的再生ポリエステルチップを混合し、基材を形成する(ステップS5)、原料混合物及び基材を共押出し、レーザエンボス用ポリエステルフィルムを得る(ステップS6)。上記物理的再生ポリエステルチップは再生ポリエチレンテレフタレートを主成分として形成される。上記化学的再生ポリエステルチップは再生ポリエチレンテレフタレートを主成分として形成される。上記変性ポリエステルチップは回収ポリエステル材料を再生することによって得られ、上記変性ポリエステルチップは、再生ポリエチレンテレフタレートを主成分として含むとともに、1,4-ブタンジオール、イソフタル酸、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ペンタンジオール、イソペンチルジオール、アジピン酸、及び1,4-シクロヘキサンジメタノールの中から選ばれる少なくとも一種の成分を含む。
【0041】
ステップS1において、回収ポリエステル材料は回収されたペットボトルチップに由来する。ペットボトルチップの主な材料はポリエステルであり、一般的に言えば、ポリエステルはジオールユニット及び二塩基酸ユニットが重縮合することによって形成される。回収されたペットボトルチップにおいて、ジオールユニットは、石油由来のエチレングリコール、又はバイオマス由来のエチレングリコールを含む可能性がある。そのため、基材層11及び表皮層12を形成するポリエステル組成物において、ポリエステル組成物の総重量を100重量%としたときに、ポリエステル組成物は1~25重量%のバイオマス誘導材料を含むとともに、ポリエステル組成物中の全炭素原子に対して、ポリエステル組成物中のC14の含有量は0.2~5重量%である。
【0042】
回収ポリエステル材料はイソフタル酸成分を含む可能性があるため、基材層11及び表皮層12を形成するポリエステル組成物もイソフタル酸を含む可能性がある。ポリエステル組成物の総重量を100重量%としたときに、ポリエステル組成物は0.5~5重量%のイソフタル酸を含む。
【0043】
回収ポリエステル材料は金属触媒成分を含むため、基材層11及び表皮層12を形成するポリエステル組成物も金属触媒を含む可能性がある。第1のポリエステル組成物の総重量を100重量%としたときに、第1のポリエステル組成物は0.0003~0.04重量%の金属触媒を含み、金属触媒はアンチモン、ゲルマニウム、チタン、及びそれらを組み合わせてなるものからなる群から選ばれる。
【0044】
ステップS2において、物理的再生は以下のステップを含む:回収ポリエステル材料(例えば、ペットボトルチップ)を裁断し、裁断後のチップを溶融して溶融混合物を形成し、次いで、単軸又は二軸押出機で造粒すれば、物理的再生ポリエステルチップを得ることができる。
【0045】
本実施形態において、物理的再生ポリエステルチップ(physically regenerated polyester masterbatches)は、物理的再生通常ポリエステルチップを含んでもよい。本願で使用される用語「物理的再生通常ポリエステルチップ」とは、物理的再生によって作製されるポリエステルチップのことを指し、上記物理的再生の過程においては他の機能性添加剤を添加しない。本実施形態において、物理的再生通常ポリエステルチップは再生ポリエチレンテレフタレートを主成分として形成される。
【0046】
また、物理的再生の過程において、溶融混合物に、異なる機能性添加剤、例えば、滑剤、色料及び艶消し剤を添加してもよい。それによって、順に、物理的再生滑剤ポリエステルチップ、物理的再生色料ポリエステルチップ、又は物理的再生艶消し剤ポリエステルチップを作製できる。注意すべきことは、物理的再生滑剤ポリエステルチップ、物理的再生色料ポリエステルチップ、及び物理的再生艶消し剤ポリエステルチップは、それぞれ、再生ポリエチレンテレフタレートを主成分として形成される。
【0047】
ステップS3においては、化学的再生は以下のステップを含む:回収ポリエステル材料(例えば、ペットボトルチップ)を裁断し、裁断後のチップを化学解重合液に入れ、ポリエステルの分子鎖を切断し、分子鎖がより短いポリエステルモノマー(例えば、ジオールユニット及び二塩基酸ユニット)、及びオリゴマー(例えば、環状オリゴマー)を得ることにより、オリゴマー混合物を形成する。次いで、分離精製でオリゴマー混合物を単離し、オリゴマー混合物を再重合することにより、化学的再生ポリエステルチップを得る。本実施形態において、化学的再生通常ポリエステルチップは、再生ポリエチレンテレフタレートを主成分として形成される。
【0048】
本実施形態において、化学解重合液は、例えば、水、メタノール、エタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、又はそれらを組み合わせてなるものの溶液であってもよいが、本発明はこれに制限されない。実際に応用する際、水はポリエステルに対し加水分解反応を起こすことができ、メタノール、エタノール、エチレングリコール、及びジエチレングリコールはポリエステルに対し加アルコール分解反応を起こすことができる。好ましい一実施形態において、化学解重合液はエチレングリコールを含む。
【0049】
本実施形態において、化学的再生ポリエステルチップは、化学的再生通常ポリエステルチップ、及び化学的再生静電気密着ポリエステルチップを含む。本願で使用される用語「化学的再生通常ポリエステルチップ」とは、化学的再生の過程において、オリゴマー混合物に他の機能性添加剤を添加せず、直接的に再重合することによって得られるもののことを指す。本実施形態において、化学的再生通常ポリエステルチップは再生ポリエチレンテレフタレートを主成分として形成される。本願で使用される用語「化学的再生静電気密着ポリエステルチップ」とは、オリゴマー混合物に静電気密着添加剤(pinning additive)を添加してから、再重合することによって得られるもののことを指す。本実施形態において、化学的再生静電気密着チップは、再生ポリエチレンテレフタレートを主成分として含むとともに、静電気密着添加剤を含む。
【0050】
説明しておきたいことは、本願で使用される用語「静電気密着」とは、導電率を増加させる又は抵抗を減少させる物質の用途のことを指す。本願で使用される用語「静電気密着添加剤」とは、導電率を増加させる又は抵抗を減少させる物質のことを指す。
【0051】
静電気密着添加剤は金属塩であり、金属塩は水素化ナトリウム、水素化カリウム、又は脂肪族カルボン酸を含む金属塩であってもよい。脂肪族カルボン酸を含む金属塩において、脂肪族カルボン酸の分子構造は2~30個の炭素原子を有する。例えば、前記脂肪族カルボン酸(金属塩の形態において)はモノカルボン酸及び二塩基酸を含み、例えば、酢酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、又はセバシン酸であってもよい。本実施形態において、脂肪族カルボン酸は酢酸であることが好ましい。更に言えば、金属塩の金属成分は、例えば、アルカリ金属又はアルカリ土類金属であってもよい。また、金属塩は、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、マンガン塩、亜鉛塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、又はアルミニウム塩であってもよい。本実施形態において、金属塩は、マグネシウム塩又はリチウム塩であることが好ましい。なかでも、マグネシウム塩は、例えば、酢酸マグネシウム(Mg(CH3COO)2)であってもよく、リチウム塩は、例えば、酢酸リチウム(CH3COOLi)であってもよいが、本発明はこれに制限されない。
【0052】
また、化学的再生の過程において、オリゴマー混合物に、上述した機能性添加剤(例えば、滑剤、色料、及び艶消し剤)を添加してもよい。それによって、オリゴマー混合物を再重合すると、順に、化学的再生滑剤ポリエステルチップ、化学的再生色料ポリエステルチップ、及び化学的再生艶消し剤ポリエステルチップを作製することができる。注意すべきことは、化学的再生滑剤ポリエステルチップ、化学的再生色料ポリエステルチップ、及び化学的再生艶消し剤ポリエステルチップは、それぞれ、再生ポリエチレンテレフタレートを主成分として形成される。
【0053】
ステップS4において、変性ポリエステルチップは化学的再生によって、回収ポリエステル材料で作製される。すなわち、変性ポリエステルチップは化学的再生変性ポリエステルチップである。
【0054】
化学的再生変性ポリエステルチップの作製ステップは、回収ポリエステル材料を解重合し、第1のオリゴマー混合物を得るステップと、第1のオリゴマー混合物に、1,4-ブタンジオール、イソフタル酸、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ペンタンジオール、イソペンチルジオール、アジピン酸、及び1,4-シクロヘキサンジメタノールの中から選ばれる少なくとも一種を添加し、第2のオリゴマー混合物を得るステップと、第2のオリゴマー混合物を再重合し、化学的再生変性ポリエステルチップを得るステップと、を含む。
【0055】
化学的再生変性ポリエステルチップは、再生ポリエチレンテレフタレートを主成分として含み、1,4-ブタンジオール、イソフタル酸、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ペンタンジオール、イソペンチルジオール、アジピン酸、及び1,4-シクロヘキサンジメタノールの中から選ばれる少なくとも一種の残基を含む。化学的再生変性ポリエステルチップの総重量を100重量%としたときに、化学的再生変性ポリエステルチップは、0~60重量%の1,4-ブタンジオール残基、0~20重量%のイソフタル酸残基、0~20重量%のネオペンチルグリコール残基、0~60重量%の2-メチル-1,3-プロパンジオール残基、0~20重量%のペンタンジオール残基、0~20重量%のイソペンチルジオール残基、0~20重量%のアジピン酸残基、及び0~20重量%の1,4-シクロヘキサンジメタノール残基の中から選ばれる少なく一種を含む。
【0056】
本願で使用される用語「 「残基(residue)」とは、化学反応の結果において、特定の化合物から誘導される基又はユニットのことを指す。例えて言えば、「二塩基酸成分の残基」とは、エステル化(esterification)反応、又は重縮合(polycondensation)反応によって合成されたポリエステル、又は共重合ポリエステルにおける、二塩基酸成分から誘導される基のことを指し、「ジオール成分の残基」とは、エステル化(esterification)反応、又は重縮合(polycondensation)反応によって合成されたポリエステル、又は共重合ポリエステルにおける、ジオール成分から誘導される基のことを指す。
【0057】
ステップS5において、ステップS1で作製される物理的再生ポリエステルチップ、及びステップS2で作製される化学的再生ポリエステルチップを混合して基材を形成し、基材は基材層11を形成するために使用されることができる。それによって、本発明のレーザエンボス用ポリエステルフィルム1は、高使用率の回収ポリエステルを有する。他の実施形態において、基材層11は、他の市販のポリエステル材料であってもよい。
【0058】
ステップS6において、ステップS4における原料混合物、及びステップS5における基材を共押出することによって、レーザエンボス用ポリエステルフィルムを形成し、レーザエンボス用ポリエステルフィルムは、基材で形成される基材層11、及び原料混合物で形成される表皮層12を含む。他の実施形態において、レーザエンボス用ポリエステルフィルムを作製する方法は、共押出に限らず、基材層11及び表皮層12をそれぞれ形成してから、表皮層12を基材層11に設置してもよい。
[第2の実施形態]
【0059】
図3を参照されたい。図面に示すように、本発明の第2の実施形態はレーザエンボス用ポリエステルフィルム1を提供する。レーザエンボス用ポリエステルフィルム1は基材層11、表皮層12、及び別の表皮層13を含む。基材層11は第1の表面111、及び第2の表面112を含み、表皮層12は基材層11における第1の表面111に設置され、別の表皮層13は基材層11における第2の表面112に設置される。表皮層12、及び別の表皮層13は、それぞれ、易エンボス層であり、使用する際、表皮層12、及び別の表皮層13に、それぞれ、立体エンボスパターン(未図示)を形成してもよく、表皮層12における立体エンボスパターンと、別の表皮層13における立体エンボスパターンとは、同様であってもよく、同様でなくてもよい。
【0060】
第2の実施形態における、基材層11、表皮層12、及び別の表皮層13を形成する材料と、第1の実施形態における、基材層11、及び表皮層12を形成する材料とは、同様であってもよいため、ここで説明を省略する。
[第3の実施形態]
【0061】
図4を参照されたい。図面に示すように、本発明の第3の実施形態はレーザエンボス用ポリエステルフィルム1を提供する。第3の実施形態に係るレーザエンボス用ポリエステルフィルム1と、第2の実施形態に係るレーザエンボス用ポリエステルフィルム1とは近似しており、その相違点としては、第3の実施形態における基材層11は互いに積み重ねられる第1の基材層11a及び第2の基材層11bを含み、第1の基材層11aの組成と、第2の基材層11bの組成とは同様であってもよく、同様でなくてもよく、例えば、第1の基材層11aと、第2の基材層11bとは、異なるポリエステルで形成されてもよく、もしくは、第1の基材層11aが含む機能性添加剤と、第2の基材層11bが含む機能性添加剤とは異なってもよい。
[実施形態による有利な効果]
【0062】
本発明の一つの有利な効果としては、本発明が提供するレーザエンボス用ポリエステルフィルム及びその製造方法は、「第1のポリエステル組成物は、再生ポリエチレンテレフタレートを主成分として含むとともに、1,4-ブタンジオール、イソフタル酸、ネオペンチルグリコール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、ペンタンジオール、イソペンチルジオール、アジピン酸、及び1,4-シクロヘキサンジメタノールの中から選ばれる少なくとも一種の成分を含む」という技術的手段によって、レーザエンボス用ポリエステルフィルム1における回収ポリエステル材料の含有量を高められる。
【0063】
以上に開示される内容は、好ましい本発明の実施形態に過ぎず、発明の範囲を限定することを意図していない。そのため、本発明の明細書及び図面でなされた均等的な技術の変形は、全て本発明の請求の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0064】
1、1a、1b:レーザエンボス用ポリエステルフィルム
11:基材層
111:第1の表面
112:第2の表面
11a:第1の基材層
11b:第2の基材層
12:表皮層
13:別の表皮層
M:金属版
P1:立体エンボスパターン
P2:別の立体エンボスパターン