(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】操縦可能医用デバイスのための磁気コネクタ
(51)【国際特許分類】
A61B 34/30 20160101AFI20230314BHJP
A61B 17/94 20060101ALI20230314BHJP
A61M 25/082 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
A61B34/30
A61B17/94
A61M25/082 500
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021112465
(22)【出願日】2021-07-07
【審査請求日】2021-11-19
(32)【優先日】2020-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-08-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596130705
【氏名又は名称】キヤノン ユーエスエイ,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CANON U.S.A.,INC
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】ハウバート ザカリー ハミルトン
【審査官】山口 賢一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/059722(WO,A1)
【文献】特開2007-029274(JP,A)
【文献】特表2019-511260(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0325817(US,A1)
【文献】特開2020-099300(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 34/30
A61M 25/01
A61B 17/94
A61M 25/082
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長
カテーテル本体であって、
ツールチャネルとして機能する管状開口と、前記管状開口を実質的に囲むように前記細長
カテーテル本体の壁に沿って配置された
ワイヤコンジットとして機能する複数のチャネルとを有し、また、操縦可能
遠位セクション及び非操縦可能
近位セクションを有する、細長
カテーテル本体と、
前記細長カテーテル本体の前記壁に沿ってワイヤコンジット内に配置され
る駆動ワイヤと、
前記操縦可能遠位セクションを操作するために、前記駆動ワイヤに作動力を付加するように構成された
少なくとも1つのモータ又はアクチュエータを含むアクチュエータユニットと、
前記
モータ又はアクチュエータを前記駆動ワイヤに磁気的に結合するように構成された磁気コネクタと、
前記磁気コネクタの結合状態を決定し、前記磁気コネクタの前記結合状態に従って前記
モータ又はアクチュエータを制御するように構成されたコントローラと、
を備える、ロボット操縦可能医用装置であって、
前記磁気コネクタは、少なくとも1つの磁石を介して互いに磁気的に接続可能であるカテーテル側シャフト及びアクチュエータ側シャフトを有し、前記駆動ワイヤの一端には前記カテーテル側シャフトが取り付けられ、前記駆動ワイヤの他端は、前記細長カテーテル本体の前記操縦可能遠位セクションに固定され、前記アクチュエータ側シャフトは前記モータ又はアクチュエータに取り付けられ、
前記アクチュエータ
側シャフトが前記
カテーテル側シャフトに磁気的に結合されている前記磁気コネクタの第1の結合状態において、前記コントローラは、前記細長
カテーテル本体の前記操縦可能
遠位セクションを操作するために、前記
モータ又はアクチュエータ
に前記アクチュエータ側シャフトを第1の並進運動で移動させて、前記駆動ワイヤに沿って前記作動力を伝達し、
前記アクチュエータ
側シャフトが前記
カテーテル側シャフトから磁気的に切り離されている前記磁気コネクタの第2の結合状態において、前記コントローラは、前記
モータ又はアクチュエータ
に前記アクチュエータ側シャフトを
前記第1の並進運動とは逆の第2の並進運動で移動させて、前記アクチュエータ
側シャフトを前記
カテーテル側シャフトに磁気的に再結合する、
装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの磁石は、前記アクチュエータ側シャフト及び/又は前記カテーテル側シャフトに設けられ、
前記カテーテル側シャフトは、前記駆動ワイヤに機械的に取り付けられ、前記アクチュエータ側シャフトは、前記
モータ又はアクチュエータに機械的に取り付けられる、
請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記駆動ワイヤに付加された前記作動力を検出するように構成されたセンサを更に備え、
前記センサによって検出された前記作動力の所定の値に基づいて、前記コントローラは、前記磁気コネクタの前記結合状態を決定する、
請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記カテーテル側シャフト及び/又は前記アクチュエータ側シャフトは、前記駆動ワイヤに付加された前記作動力の所定の値で、前記少なくとも1つの磁石から切り離されるように構成される、
請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記作動力は、引張力、圧縮力及びトルクのうちの1つ以上を含む、
請求項3に記載の装置。
【請求項6】
前記
モータ又はアクチュエータによって前記駆動ワイヤに加えられた前記作動力が、所定の引張値よりも大きい引張力であるとき、前記磁気コネクタは、引張分離により、前記第1の結合状態から前記第2の結合状態へ変化し、
前記コントローラは、前記
モータ又はアクチュエータに、前記駆動ワイヤに向かう直線方向に前記アクチュエータ側シャフトを移動させて、前記アクチュエータ
側シャフトを前記
カテーテル側シャフトに磁気的に再結合する、
請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記
モータ又はアクチュエータによって前記駆動ワイヤに加えられた前記作動力が、前記所定の値よりも大きい圧縮力であるとき、前記磁気コネクタは、圧縮分離により、前記第1の結合状態から前記第2の結合状態へ変化し、
圧縮分離が生じると、前記コントローラは、前記
モータ又はアクチュエータに、
前記圧縮力とは逆の引張力を付加させて、前記アクチュエータ
側シャフトを前記
カテーテル側シャフトに磁気的に再結合する、
請求項5に記載の装置。
【請求項8】
前記
モータ又はアクチュエータによって前記駆動ワイヤに加えられた前記作動力が、所定の値よりも大きいトルクであるとき、前記磁気コネクタは、横方向又は回転方向の分離により、前記第1の結合状態から前記第2の結合状態へ変化する、
請求項5に記載の装置。
【請求項9】
前記磁気コネクタは、円筒形ハブに取り囲まれた第1の磁石及び第2の磁石を含み、
前記磁気コネクタの前記第1の結合状態において、前記第2の磁石は、前記カテーテル側シャフトに磁気的に結合され、前記第1の磁石は、前記アクチュエータ側シャフトに機械的に取り付けられるとともに、前記円筒形ハブに磁気的に結合される、
請求項2に記載の装置。
【請求項10】
前記
モータ又はアクチュエータによって前記駆動ワイヤに加えられた前記作動力が、所定の引張値よりも大きい引張力であるとき、前記磁気コネクタは、引張分離により、前記第1の結合状態から前記第2の結合状態へ変化し、
前記磁気コネクタの前記第2の結合状態において、前記コントローラは、前記
モータ又はアクチュエータに、前記第1の磁石及び前記第2の磁石のうちの1つ以上を前記引張力とは逆の方向に移動させて、前記アクチュエータ
側シャフトを前記
カテーテル側シャフトと磁気的に再結合する、
請求項9に記載の装置。
【請求項11】
前記
モータ又はアクチュエータによって前記駆動ワイヤに加えられた前記作動力が、所定の引張値よりも大きい引張力であるとき、前記磁気コネクタは、引張分離により、前記第1の結合状態から前記第2の結合状態へ変化し、
引張分離が生じると、前記駆動ワイヤは、前記引張力の方向とは逆の直線方向に移動し、
前記引張分離が生じると、前記コントローラは、前記
モータ又はアクチュエータに、前記駆動ワイヤに向かう直線方向に前記第1の磁石と前記第2の磁石の両方を移動させて、前記アクチュエータ
側シャフトを前記
カテーテル側シャフトに磁気的に再結合する、
請求項9に記載の装置。
【請求項12】
前記
モータ又はアクチュエータによって前記駆動ワイヤに加えられた前記作動力が、所定の圧縮値よりも大きい圧縮力であるとき、前記磁気コネクタは、圧縮分離により、前記第1の結合状態から前記第2の結合状態へ変化し、
前記磁気コネクタの前記第2の結合状態において、前記コントローラは、前記
モータ又はアクチュエータに、前記第1の磁石のみを前記圧縮力とは逆の直線方向に移動させ
るように前記圧縮力とは逆の引張力を付加させて、前記アクチュエータ
側シャフトを前記
カテーテル側シャフトに磁気的に再結合する、
請求項9に記載の装置。
【請求項13】
前記第1の磁石は、前記円筒形ハブに磁気的に結合するように構成された径方向分極レアアース磁石であり、前記第2の磁石は、前記カテーテル側シャフトと磁気的に結合するように構成された軸方向分極レアアース磁石である、
請求項9に記載の装置。
【請求項14】
前記少なくとも1つの磁石は、前記アクチュエータ側シャフトに設けられた単一の永久磁石であり、
前記単一の永久磁石は、前記アクチュエータ側シャフトに固定して取り付けられた円筒形の磁石又は円盤形の磁石であり、
前記単一の永久磁石は、軸方向分極磁石である、
請求項2に記載の装置。
【請求項15】
前記磁気コネクタを含む複数の磁気コネクタと、
前記駆動ワイヤを含む複数の駆動ワイヤと、
前記アクチュエータユニット
に含まれる複数の
モータ又はアクチュエータと、
前記複数の磁気コネクタ及び前
記アクチュエータユニットの前記複数の
モータ又はアクチュエータを少なくとも部分的に取り囲むように構成されたハウジングを有するコネクタハブと、
を更に備え、
前記複数の磁気コネクタ
の各々は、
互いに磁気的に結合するように構成され
たアクチュエータ側シャフト及びカテーテル側シャフトを含む、
請求項1に記載の装置。
【請求項16】
前記コネクタハブの前記ハウジングは、多方向キー溝及び1つ以上のロック位置を含む円筒形ハウジングであり、
前記磁気コネクタの前記第1の結合状態において、前記ハウジングは、前記複数の
モータ又はアクチュエータにおける前記アクチュエータ側シャフトが、前記複数の駆動ワイヤ
に取り付けられた前記カテーテル側シャフトと位置合せ及び磁気結合されるように、第1のロック位置で前記コネクタハブに対して前記細長
カテーテル本体をロックし、
前記磁気コネクタの前記第2の結合状態において
、前記細長
カテーテル本体が前記コネクタハブに機械的に接続されたままで、前記複数の
モータ又はアクチュエータにおける前記アクチュエータ側シャフトが、前記複数の駆動ワイヤ
に取り付けられた前記カテーテル側シャフトから磁気的に切り離されるように、
前記ハウジングは、第2のロック位置で前記コネクタハブに対して前記細長
カテーテル本体をロックする、
請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記円筒形ハウジングの前記多方向キー溝は、複数の接続状態において前記コネクタハブに対する前記細長
カテーテル本体の機械的接続を可能にするように構成され、
第1の接続状態では、前記複数のアクチュエータ
側シャフトと前記複数の
カテーテル側シャフトの間の干渉が最小となるように、前記細長
カテーテル本体は、前記多方向キー溝により、直線方向に前記コネクタハブ内に誘導され、
第2の接続状態では、前記複数のアクチュエータ
側シャフトと前記複数の
カテーテル側シャフトが前記複数の磁気コネクタによって互いに磁気結合されるように、前記細長
カテーテル本体は、前記多方向キー溝により、前記コネクタハブに関して第1の回転方向に誘導され、
第3の接続状態では、前記細長
カテーテル本体が前記コネクタハブに機械的に接続されたままで、前記複数のアクチュエータ
側シャフトと前記複数の
カテーテル側シャフトが互いに磁気的に切り離されるように、前記細長
カテーテル本体は、前記多方向キー溝により、前記コネクタハブに関して前記第1の回転方向とは逆の第2の回転方向に誘導される、
請求項15に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本願は、米国仮出願第63/062211号及び米国仮出願第63/062313号(どちらも2020年8月6日出願)に対する優先権を主張し、上記出願の開示は、参照により全体として本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して、操縦可能医用デバイスに関する。より詳細には、本開示は、駆動ワイヤのロボット作動に基づいて曲げ動作を実行可能なロボット操縦可能医用デバイスの様々な実施形態を例示する。操縦可能医用デバイスは、管腔内の蛇行進路を通って進むように構成されたインターベンション用の医用ツール及び器具(内視鏡やカテーテル等)に適用可能である。
【背景技術】
【0003】
医療用の操縦可能ロボットは、駆動ワイヤを利用して、操縦可能なカテーテルや内視鏡その他の手術器具の形状を操作する。駆動ワイヤを作動させるために、駆動ワイヤに作動力を提供するアクチュエータやモータ等の駆動機構が存在する。駆動機構は、駆動ワイヤとアクチュエータ又はモータとの間にある種の接続を必要とする。現在の技術では、駆動ワイヤをアクチュエータ又はモータに接続するために、クラッチやラッチ、ウェッジ等の様々な機械的ロック機構が利用される。
【0004】
上記技術の例は、米国第2007/0232856号、米国特許第6858005号、第9629688号、第10292760号及び第10722296号等の多くの特許文献及び非特許文献に記載されている。このようなロボット制御器具(カテーテルや内視鏡)のほとんどは、器具の先端の形状を操作するために、駆動ワイヤ(腱又は腱ワイヤとも呼ばれる)を押したり引いたりすることに依存している。操縦可能カテーテルには、カテーテル本体の様々なセクションを操作して複雑な形状を可能にする、多数の駆動ワイヤが含まれることがある。多くの場合、駆動ワイヤを含むカテーテル部分は滅菌されて使い捨てであるが、駆動機構又はアクチュエータは、使い捨てではなく、潜在的に非滅菌である資本設備の一部である。したがって、操縦可能カテーテルを使用するたびに、ユーザが、個々の駆動ワイヤの各々をその対応するアクチュエータに接続する必要がある。このプロセスはユーザにとって面倒なものであり、カテーテルの無菌状態を無効にするおそれがあり、また、ユーザがミスをして、1本以上のワイヤをアクチュエータに適切にロックすることができず、それにより、誤動作や器具及び/又は患者への潜在的な損傷を引き起こすおそれがある。このような問題に対処するために、わずかな動きで複数の駆動ワイヤを1つ以上の力発生器(アクチュエータ)と機械的に係合する機械的コネクタアセンブリが提案されている。例えば、米国特許第10105036号を参照されたい。
【0005】
上記の特許第10105036号に開示されているような機械的アセンブリは、典型的には、過度の引く力があった場合に分離(breakaway)がなくツールが損傷する可能性があるポイントに、ツールとアクチュエータを一緒にしっかりとロックする。より具体的には、ロボット操縦可能カテーテルでは、動作中に生じる高い引張り力又は圧縮力が原因で、駆動ワイヤが折れ、かつ/又は破砕するおそれがある。駆動ワイヤが先端でねじれ、カテーテルの壁を破り、器具に損傷を与え、かつ/又は患者に危害を加えるおそれがある圧縮力の下での故障は、特に重大である。カテーテルは、患者露出を最小限に抑えられるように機械的接合ハブで故障するように設計することができるが、駆動ワイヤは回復不能な損傷を受けることになり、カテーテルを交換する必要が生じることになる。駆動ワイヤの故障を回避する方法としては、塑性変形することなく高ひずみを受けられる超弾性ニチノールワイヤを利用することが挙げられる。また、一部のカテーテル設計では、座屈/ねじれが問題にならないように、プルオンリーモーションを利用する。
【0006】
ロボット作動器具の分野では、分離安全性を備えた特定の機械的接続は、例えば特許文献の米国特許第8337783号、第8251084号及び第9114540号と、付与前特許文献の米国第2011/0018663号から知られている。しかしながら、これらの文献は、複数の駆動ワイヤによるロボットカテーテルの作動とは無関係であるので、圧縮性の分離と、アクチュエータと手術器具の駆動機構との間の分離を防止することができない。
【0007】
したがって、分離安全性が改善されたコネクタアセンブリを備えたロボット操縦可能カテーテルが必要である。
【発明の概要】
【0008】
本開示の少なくとも1つの実施形態によれば、複数の磁気コネクタにより、カテーテル本体とアクチュエータの間の迅速な接続を確立するように構成された装置が提供される。1回の動作で、複数の独立したアクチュエータと駆動ワイヤの間で接続が成される。このような接続を形成するために、ラッチング等の追加の動作は必要ない。
【0009】
本明細書に開示される様々な実施形態によれば、ロボット操縦可能医用装置は、以下を備える:細長体(100)であって、管状開口(105)と、管状開口(105)を実質的に囲むように細長体の壁に沿って配置された複数のチャネル(104)とを有し、また、操縦可能セクション(103)及び非操縦可能セクション(102)を有する、細長体;少なくとも1つのチャネル(104)内に配置されるとともに、細長体(100)の操縦可能セクション(103)を操作するように構成された駆動ワイヤ(110);各チャネル(104)内に配置された駆動ワイヤ(110)に作動力を付加するように構成されたアクチュエータユニット(310);少なくとも1つの磁石を介して、アクチュエータユニット(310)を駆動ワイヤ(110)に磁気的に結合するように構成された磁気コネクタ(510);及び、磁気コネクタ(510)の結合状態を決定し、磁気コネクタの結合状態に従ってアクチュエータユニット(310)を制御するように構成されたコントローラ(320)。
【0010】
磁気コネクタ510は、磁気的に結合された1組のシャフトを有する磁気ヒューズとして機能する。磁気ヒューズは、それぞれシャフトに取り付けられた2つのプランジャを有する円筒形ハブ(611)(円筒形ハブの各側に1つのプランジャ)と、2つの磁気分離ポイントとを備える。磁気ヒューズの2つの分離ポイントは、双方向の分離力のためのヒューズを提供する。磁気ヒューズにより、2つのシャフトに加えられた圧縮力の下で分離が発生し、これにより、ワイヤのねじれや断裂を防止することができる。また、磁気ヒューズにより、2つのシャフトに加えられた引張力の下で分離が発生し、これにより、駆動ワイヤの塑性変形及び/又は破砕を防止することができる。磁気ヒューズは、再結合後に通常の動作に戻るように構成される。磁気ヒューズは、力のフィードバック又は他の同様の技術を利用して、解放を感知し、再係合ルーチンを開始する。
【0011】
本開示のこれら及び他の目的、特徴及び利点は、本開示の例示の実施形態の以下の詳細な説明を添付の図面及び提供された特許請求の範囲と併せて読むと、明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本開示の目的、特徴及び利点の完全な理解は、本開示の例示の実施形態を示す添付の図と併せて解釈すると、以下の詳細な説明から、当業者に対して明らかになるであろう。図中、同様の参照文字は、本開示全体を通して同様の部分を示す。
【0013】
【
図1】
図1Aは、本開示の一実施形態に係る、連続体ロボットシステムの全体構造を示す図である。
図1Bは、操縦可能器具100をアクチュエータシステム300にインタフェース接続するための電気機械接続及び磁気コネクタをより詳細に示す図である。
【
図2】
図2は、複数の磁気コネクタ510から成る接続ハブ500の例示の実施形態を示す図である。
【
図3】
図3は、複数のアクチュエータ310を複数の駆動ワイヤ110に嵌合するための単一ステップ接続動作の例を示す、接続ハブ500の断面図である。
【
図4】
図4は、第1の実施形態に係る、駆動ワイヤ110をアクチュエータ310に磁気的に接続するように構成された磁気コネクタ510の特定のコンポーネント及び力を示す図である。
【
図5】
図5は、磁気コネクタ510の軸方向分極(axially poled)磁石の磁界を示すグラフであり、磁界は、2次元の静磁気有限要素解析を用いて計算された。
【
図6】
図6は、本開示の別の実施形態に係る、分離特徴を備えた例示の磁気コネクタ610を示す図である。
【
図7】
図7Aと
図7Bは、それぞれ、本開示の更に別の実施形態に係る、磁気ヒューズとして構成された磁気コネクタの圧縮分離と引張分離の特徴を示す図である。
【
図8】
図8Aと
図8Bは、それぞれ、磁気ヒューズとして構成された磁気コネクタの第1の例の斜視図と断面図である。
【
図9】
図9Aと
図9Bは、それぞれ、磁気ヒューズとして構成された磁気コネクタの第2の例の斜視図と断面図である。
【
図10-1】
図10Aは、本開示の別の実施形態に係る磁気コネクタハブ500の様々な図である。
【
図11】
図11は、本開示に係る、連続体ロボットシステム1000のアクチュエータシステム300による操縦可能器具100の分離及び再結合の制御を実施するための例示のプロセスを示す図である。
【
図12】
図12は、本開示に係る、ステップ1210の再取付けアルゴリズムを実施するための例示のプロセスを示す図である。
【
図13】
図13は、患者の医療処置でのシステム1000の例示の使用事例シナリオを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
様々な実施形態が更に詳細に説明される前に、本開示は特定の実施形態に限定されないことを理解されたい。また、当然のことながら、本明細書において用いられる用語は、例示の実施形態を説明する目的のものにすぎず、限定することを意図するものではない。
【0015】
図全体を通して、別段の記載がない限り、同じ参照番号及び文字は、例示される実施形態の同様の特徴、要素、コンポーネント又は部分を示すために用いられる。更に、同封の図を参照して本開示を詳細に説明するが、それは、例示の実施形態に関連してなされる。添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の真の範囲及び主旨から逸脱することなく、説明される例示の実施形態に対して変更及び修正を行うことができることが意図される。図面はいくつかの可能な構成及びアプローチを表すが、図面は必ずしも縮尺どおりではなく、本開示の特定の態様をより分かりやすく図示及び説明するために、特定の特徴が誇張、削除又は部分的に切断される場合がある。本明細書に記載の説明は、網羅的であること、そうでなければ、図面に示され以下の詳細な説明に開示される正確な形態及び構成に特許請求の範囲を限定又は制限することを意図するものではない。
【0016】
当業者には当然のことながら、一般に、本明細書、特に添付の特許請求の範囲(例えば添付の特許請求の範囲の本文)で使用される用語は、概して、“オープン”な用語として意図されている(例えば、「含む(including)」という用語は「含むが、これに限定されない」と解釈されるべきであり、「有する」という用語は「少なくとも有する」と解釈されるべきであり、「含む(includes)」は「含むが、これに限定されない」と解釈されるべきである、等)。更に、当業者には当然のことながら、導入された請求項記載の具体的な数字が意図されている場合、そのような意図は特許請求の範囲に明示的に記載され、また、そのような記載がない場合、そのような意図は存在しない。例えば、理解の助けとして、以下の添付の特許請求の範囲は、請求項記載を導入するために、「少なくとも1つの」や「1つ以上の」という導入句の使用を含む場合がある。ただし、そのような語句の使用は、同じ請求項に「1つ以上の」又は「少なくとも1つの」との導入句と、“a”又は“an”等の不定冠詞とが含まれている場合でも、不定冠詞“a”又は“an”による請求項記載の導入により、そのような導入された請求項記載を含む特定の請求項が、そのような記載を1つだけ含む請求項に限定されることを意味すると解釈されるべきではない(例えば、“a”及び/又は“an”は、典型的には、「少なくとも1つの」又は「1つ以上の」を意味すると解釈されるべきである)。請求項記載を導入するために使用される定冠詞の使用についても、同じことが言える。
【0017】
更に、導入された請求項記載の具体的な数字が明示的に記載されている場合であっても、当業者には当然のことながら、そのような記載は、典型的には、少なくとも記載された数を意味すると解釈されるべきである(例えば、他の修飾語を伴わずに「2つの記載」とだけ記載される場合、典型的には、少なくとも2つの記載、又は2つ以上の記載を意味する)。更に、「A、B及びC等のうちの少なくとも1つ」に類似した規定が使用される場合、概して、そのような構文は、当業者が該規定を理解し得るという意味で意図されている(例えば、「A、B及びCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、A単独で、B単独で、C単独で、AとBを併せて、AとCを併せて、BとCを併せて、かつ/又は、A、B及びCを併せて有するシステム等を含み得る)。「A、B又はC等のうちの少なくとも1つ」に類似した規定が使用される場合、概して、そのような構文は、当業者が該規定を理解し得るという意味で意図されている(例えば、「A、B又はCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、A単独で、B単独で、C単独で、AとBを併せて、AとCを併せて、BとCを併せて、かつ/又は、A、B及びCを併せて有するシステム等を含み得る)。更に、当業者には当然のことながら、典型的には、離接語、及び/又は2つ以上の代替用語を表す語句(明細書、特許請求の範囲、又は図面のいずれにおいても)は、文脈上別段の指示がない限り、該用語の一方、該用語のいずれか、又は該用語の両方を含む可能性を企図するものと理解されるべきである。例えば、「A又はB」という表現は、典型的には、「A」又は「B」又は「A及びB」の可能性を含むと理解される。
【0018】
本明細書において、特徴又は要素が別の特徴又は要素の「上」にあるとして言及されるとき、それは、当該他の特徴又は要素の直上に存在してよく、又は、介在する特徴及び/又は要素も存在してよい。対照的に、特徴又は要素が別の特徴又は要素の「直上」にあるとして言及されるとき、介在する特徴又は要素は存在しない。また、当然のことながら、特徴又は要素が別の特徴又は要素に「接続される」、「取り付けられる」、「結合される」等として言及されるとき、それは、当該他の特徴に直接的に接続されてよく、取り付けられてよく、又は結合されてよく、又は、介在する特徴又は要素が存在してもよい。対照的に、特徴又は要素が別の特徴又は要素に「直接的に接続される」、「直接的に取り付けられる」又は「直接的に結合される」として言及されるとき、介在する特徴又は要素は存在しない。一実施形態に関して説明又は図示したが、一実施形態においてそのように説明又は図示された特徴及び要素は、他の実施形態に適用することができる。また、当業者であれば理解できるように、別の特徴に「隣接」して配置されている構造又は特徴への言及は、当該隣接する特徴にオーバーラップするかその下にある部分をもつ場合がある。
【0019】
本明細書では、様々な要素、コンポーネント、領域、部品及び/又は部分を説明するために、第1、第2、第3等の用語が使用される場合がある。当然のことながら、これらの要素、コンポーネント、領域、部品及び/又は部分はこれらの指定の用語によって限定されない。これらの指定の用語は、ある要素、コンポーネント、領域、部品又は部分を別の領域、部品又は部分から区別するためにのみ使用されている。よって、後述する第1の要素、コンポーネント、領域、部品又は部分は、単に区別を目的として、しかし限定をすることなく、また、構造的又は機能的な意味から逸脱することなく、第2の要素、コンポーネント、領域、部品又は部分と呼ぶことができる。
【0020】
本明細書において用いられる場合、単数形は、文脈上明確に別段の指示がない限り、複数形も含むことを意図している。更に、当然のことながら、「含む」、「備える」、「成る」という用語は、本明細書及び特許請求の範囲において用いられる場合、記載の特徴、整数、ステップ、動作、要素及び/又はコンポーネントの存在を指定するが、明示的に記載されていない1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、コンポーネント及び/又はそれらのグループの存在又は追加を排除するものではない。更に、本開示では、「~から成る」という移行句は、クレームで指定されていないいかなる要素、ステップ又はコンポーネントも除外する。更に、留意すべきこととして、一部のクレーム又はクレームの一部の特徴は、任意の要素を除外するように起草される場合があり、このようなクレームは、クレーム要素の記載に関連して「単独で」、「~のみ」等の排他的な用語を使用する場合があり、又は、「否定的な」限定を使用する場合がある。
【0021】
本明細書で使用される「約」又は「およそ」という用語は、例えば10%以内、5%以内又はそれ未満を意味する。一部の実施形態では、「約」という用語は、測定誤差内を意味することがある。これに関して、説明され又はクレームされる際に、用語が明示的に表示されていなくても、全ての数値は「約」又は「およそ」という語が前置されているかのように読まれてよい。「約」又は「およそ」という語句は、大きさ及び/又は位置を記述するとき、記載の値及び/又は位置が値及び/又は位置の妥当な予想範囲内にあることを示すために使用されることがある。例えば、数値は、記述された値(又は値の範囲)の±0.1%、記述された値(又は値の範囲)の±1%、記述された値(又は値の範囲)の±2%、記述された値(又は値の範囲)の±5%、記述された値(又は値の範囲)の±10%等である値を含み得る。本明細書に記載されている場合、あらゆる数値範囲は、具体的に別段の記載がない限り、終了値を含むことを意図しており、そこに属する全ての部分範囲を含む。本明細書で用いられる場合、「実質的に」という用語は、意図された目的に悪影響を及ぼさない、記述子からの逸脱を許容することを意味する。例えば、測定値の限定に由来する逸脱、製造公差内の差異、又は5%未満の変動は、実質的に同じ範囲内にあると見なすことができる。指定された記述子は、絶対値(例えば、実質的に球形、実質的に垂直、実質的に同心等)又は相対語(例えば、実質的に類似、実質的に同じ等)であり得る。
【0022】
具体的に別段の記載がない限り、以下の開示から明らかであるように、本開示を通して、「処理する」、「コンピュータで計算する」、「計算する」、「決定する」、「表示する」等の用語を用いた議論は、コンピュータシステム、又は同様の電子コンピューティングデバイス、又は、コンピュータシステムのレジスタ及びメモリ内の物理(電子)量として表されるデータを操作し、同様にコンピュータシステムのメモリ又はレジスタ又は他のそのような情報の記憶、伝送又は表示用のデバイス内の物理量として表される他のデータに変換するデータ処理デバイスの、動作及びプロセスを指すものと理解される。本明細書に記載されているか、若しくは添付の特許請求の範囲に記載されているコンピュータ動作又は電子動作は、文脈上別段の指示がない限り、一般に、任意の順序で実行することができる。また、様々な動作フロー図が順番に提示されているが、当然のことながら、各種動作は、図示又は特許請求されている順序以外の順序で実行することができ、或いは、動作を同時に実行することができる。そのような代替の順序付けの例としては、文脈上別段の指示がない限り、重複、インターリーブ、中断、再順序付け、増分、準備、補足、同時、逆、又は他の変形の順序付けが挙げられる。更に、「~に応答して」、「~に応えて」、「~に関連して」、「~に基づいて」等の用語、又は他の同様の過去形容詞は、文脈上別段の指示がない限り、通常、そのような変形を除外することを意図していない。
【0023】
本開示は、概して医療機器に関し、分光装置(例えば内視鏡)、光干渉断層法(OCT)装置、又はそのような装置の組合せ(例えばマルチモダリティ光プローブ)に適用可能である光プローブの実施形態を例示する。光プローブ及びその部分の実施形態を、三次元空間におけるそれらの状態に関して説明する。本明細書で用いられる場合、「位置」という用語は、3次元空間における物体又は物体の一部の位置(例えばデカルトX、Y、Z座標に沿った3自由度の並進自由度)を指し、「向き」という用語は、物体又は物体の一部の回転配置(回転の3自由度―例えばロール、ピッチ、ヨー)を指し、「姿勢」という用語は、少なくとも1つの並進自由度にある物体又は物体の一部の位置と、少なくとも1つの回転自由度にある物体又は一部の物体の向きとを指し(合計で最大6つの自由度)、「形状」という用語は、物体の長尺体に沿って測定された一連の姿勢、位置及び/又は方向を指す。
【0024】
医療機器の分野において既知であるように、「近位」及び「遠位」という用語は、ユーザから手術部位又は診断部位まで延びる器具の端部の操作に関して用いられる。これに関して、「近位」という用語は、器具のユーザに近い部分(例えばハンドル)を指し、「遠位」という用語は、ユーザから離れており外科部位又は診断部位に近い器具の部分(先端)を指す。更に、当然のことながら、便宜上簡潔にするために、本明細書では、図面に関して「垂直」、「平行」、「上」、「下」等の空間用語が用いられる場合がある。ただし、手術器具は多くの向きと位置で使用されるものであり、これらの用語は限定的かつ/又は絶対的であることを意図していない。
【0025】
本明細書で用いられる場合、「カテーテル」との用語は、概して、広範囲の医療機能を実行するために、狭い開口を通して体腔(例えば血管)の中に挿入されるように設計された、医療グレードの材料から作られる軟性の薄い管状器具を指す。より具体的な「光学カテーテル」との用語は、医療グレード材料から作られた保護シース内に配置され光学イメージング機能をもつ1つ以上の軟性の光伝導ファイバの細長い束を含む医用器具を指す。光学カテーテルの特定の例は、シース、コイル、プロテクタ及び光学プローブを備える光ファイバカテーテルである。一部の用途では、カテーテルは、シースと同様に機能する「ガイドカテーテル」を含み得る。
【0026】
本明細書で用いられる場合、「内視鏡」との用語は、光学プローブによって導かれる光を用いて体腔又は臓器の内部を観察する、硬性又は軟性の医用器具を指す。内視鏡が自然開口を通して挿入される医療処置は、内視鏡検査と呼ばれる。専用の内視鏡は、気管支鏡(口)、S状結腸鏡(直腸)、膀胱鏡(膀胱)、腎臓鏡(腎臓)、気管支鏡(気管支)、咽頭鏡(咽頭)、耳鏡(耳)、関節鏡(関節)、腹腔鏡(腹部)及び消化管内視鏡等、一般に、内視鏡の使用方法や使用場所にちなんで名付けられる。
【0027】
本開示では、「光ファイバ」又は単に「ファイバ」等の用語は、全反射として知られる効果によって一端から他端に光を伝導することができる、細長い軟性の光伝導管を指す。「導光コンポーネント」又は「導波管」との用語も、光ファイバを指す場合があり、又は光ファイバの機能をもつ場合がある。「ファイバ」との用語は、1つ以上の光伝導ファイバを指す場合がある。光ファイバは、一般に透明で均質なコアをもち、それを通して光が誘導され、また、コアは均質なクラッディングによって囲まれている。コアの屈折率は、クラッディングの屈折率よりも大きい。設計上の選択に応じて、一部のファイバは、コアを囲む複数のクラッディングをもつことができる。
【0028】
本開示の一部の実施形態は、低侵襲外科(MIS)処置における用途のためのロボット制御可能な内視鏡又はカテーテルの改善を対象としている。MIS処置は、小さな切開部又は自然開口から患者の体内に挿入される、長くて硬性又は軟性の手術器具の使用を伴う。今日、周知の内視鏡処置には、診断と治療の両方の目的において様々なものがある。MIS内視鏡検査にロボット駆動カテーテルを使用することの重要な側面は、カテーテルがその駆動機構に接続されるたびに、個々の駆動ワイヤの各々がその対応するアクチュエータ又はモータに正しく効率的に接続されなければならないということである。
【0029】
<
図1A~
図1B:操縦可能医用器具のシステム構成及び動作>
図1A及び
図1Bに関して、連続体ロボットシステム1000によって制御される操縦可能器具100の全体構造及び動作原理を説明する。本明細書で用いられる場合、操縦可能器具100は、遠隔アクチュエータの駆動機構によってロボット操作できる複数の操縦可能セクションを有する操縦可能なカテーテル又は内視鏡を指す。ロボットシステム1000は、内視鏡プローブの少なくとも一部の連続的に湾曲した形状をとるとともに、蛇のように曲がりくねった経路に沿って内視鏡プローブを長手方向に動かすように構成された、連続体又はマルチセグメントの操縦可能器具100を含むことができる。
【0030】
図1Aは、本開示の一実施形態に係る、連続体ロボットシステム1000の全体構造を示す。システム1000は、コンピュータシステム400(例えばシステムコンソール)と、ロボットアクチュエータシステム300と、コネクタハブ又はハンドル200を介してアクチュエータシステム300に接続された操縦可能器具100とを含む。操縦可能器具100では、近位端から遠位端への順番で、軟性であるが非操縦可能であり得る近位セクション102と、連続的に湾曲した形状を形成するように操縦可能である遠位セクション103とが、長手方向軸Axに沿って配置されている。遠位の操縦可能セクション103は、複数の湾曲セグメント1、2、3、…Nを含む。これらの湾曲セグメントは、直列に接続されたリング状のコンポーネントによって形成される。これらの湾曲セグメントのうちの1つ以上を同時に作動させて、必要な用途に応じて操縦可能器具100を曲げて形状を制御することができる。
図1Aは、例示的な例として、元の(非作動)位置に対して角度βだけ下向きに曲げられた操縦可能セクション103の一部(点線で描かれている)を示す。角度βは、カテーテル軸(Ax)に対するy-z平面内の角度を与え、一方、第2の角度(図示なし)は、カテーテル軸Axの周りのx-y平面内の器具の動きを表すことができる。これに関して、カテーテルの先端は、軸Axの周りのx-y平面上で全360度にわたって、そしてy-z平面上で最大約90度まで、回転することができる。y-z平面上で90度を超える角度は、カテーテル先端のループにつながる。
【0031】
操縦可能器具100は、具体的な用途に応じて患者の臓器に到達するのに十分な長さをもつ、医療グレードの操縦可能なスリーブ又はシースである。操縦可能器具100は、接続ハブ又はハンドル200を介して駆動機構に結合されるとともに駆動機構によって制御される細長い管状体を形成する。x-y-zデカルト座標系で表した場合、操縦可能器具100の管状体は、x-y平面に展開する管状断面を有し、また、x-y平面に垂直なz軸に沿って展開する長手方向軸Axを有する。言い換えれば、操縦可能器具100の遠位端は、z方向に向いており、小さな切開部又は自然開口部のいずれかを通して患者の体の部位に挿入するのに適した構成又は寸法を有する。
【0032】
アクチュエータシステム300は、概してコントローラ320及びアクチュエータユニット311(駆動機構)を含む。コントローラ320は、当業者に既知である適切なソフトウェア、ファームウェア及び周辺ハードウェアとともに、比例・積分・微分(PID)コントローラ又は他のデジタルシグナルプロセッサ(DSP)を含んでよい。PID又はDSPベースのコントローラは、概して専用の集積回路であるが、DSP機能は、他の回路によって、例えばフィールドプログラマブルゲートアレイチップ(FPGA)又はコンピュータプロセッサを用いることによって、実装することもできる。したがって、一部の実施形態では、アクチュエータシステム300は、ネットワーク接続425を介してコンピュータシステム400に接続することができる。マイクロプロセッサ又は中央処理装置(CPU)410によって動作されるコントローラ又はコンピュータシステム400は、適切なソフトウェア、ファームウェア及び周辺ハードウェアとともに、本開示の他の部分で説明されるように、連続体ロボットシステム1000の機能を制御する。他の機能のうち、コンピュータシステム400は、外科医又は他のユーザに、操縦可能器具100とインタラクトし遠隔操作するために、画像表示デバイス420(LCDやOLEDのディスプレイ等)と、タッチスクリーンを備えたグラフィカルユーザインタフェース(GUI)422とを提供することができる。代替又は追加として、アクチュエータシステム300及び/又はハンドル200は、ポータブルゲームパッドコントローラ等のハンドヘルドコントローラ(図示なし)に接続することができる。
【0033】
アクチュエータユニット311は、器具100の作動及び操縦に必要な複数の駆動ワイヤ110と同数の複数のモータ又はアクチュエータ310(310a,310b,…310m)を含む。実施形態によれば、9個の個々のモータ又はアクチュエータ310が、対応する9本の駆動ワイヤ110に作動力(圧縮力又は引張力)を与える。全ての駆動ワイヤ110は、その近位端で、個々のモータ又はアクチュエータ310に結合される。駆動ワイヤ110は、金属ワイヤ、例えばピアノタイプワイヤ、ステンレス鋼ワイヤ又はニッケル-チタン合金(ニチノール)ワイヤであってよい。本開示では、アクチュエータのタイプはいかなる具体的な構造にも限定されず、直流(DC)モータ、リニアインダクティブモータ、超音波モータ等のいずれかを用いて、各駆動ワイヤ110を長手方向又は軸方向(長手方向軸Axに平行な方向)に移動させる(動かす)ことができる。DCモータの場合、回転運動から線形運動への変換が必要である。このために、典型的には、親ねじ又はボールねじ機構が用いられる。超音波や直接駆動アクチュエータ等の他の代替手段の方が有利な場合がある。超音波モータとリニアインダクティブモータの利点は、これらが両方ともリニアアクチュエータであり、機械的な変換を必要としないことである。超音波モータ又はリニアインダクティブモータは、ギアや中間機構なしで、駆動ワイヤを直接駆動することができる。このようなアクチュエータで駆動ワイヤを駆動する利点は、摩擦その他の非線形性が低減されることである(例えば、親ねじ機構での機械的なスロップを回避する)。
【0034】
また、ロボットアクチュエータシステム300は、1つ以上のセンサ304(センサシステム)を含み、かつ/又はそれに接続される。センサ304は、駆動機構(モータやアクチュエータ310等)に対する各駆動ワイヤ110の物理的接続を検出することができる。センサ304は、各駆動ワイヤ110のひずみセンサ及び/又は位置センサを含むことができる。これらのセンサ304は、各駆動ワイヤ110を作動するためにアクチュエータ310によって加えられた圧縮力及び/又は引張力を検出及び/又は測定するのに役立つ。本開示では、アクチュエータ310からの力を駆動ワイヤ110へ伝えるために磁気コネクタ510が用いられるので、センサ304は、磁気コネクタ510内の磁束の量(又は大きさ)を検出できる磁気センサ(ホール効果センサ等)を更に含んでよい。センサ304は、コントローラ320に動作可能に接続され、駆動ワイヤ110に加えられている圧縮力又は引張力の量(曲げ力)に対応する信号305を出力する。センサ304がホール効果センサである実施形態では、出力信号305は、磁束の量又は大きさに対応することができる。また、センサ304は、処置中の任意の時点で、作動された各駆動ワイヤ110の変位の動きの量(距離)に対応する信号305を出力することもできる。各駆動ワイヤ110のセンサ304(ひずみセンサ、位置センサ及び/又は磁界センサ)からの出力信号305は、フィードバック制御ループ325により各アクチュエータ310及び駆動ワイヤ110を個別に制御するために、コントローラ320にフィードバックされる。このように、各駆動ワイヤ110は、患者の生体構造の管腔内経路を通して器具100をナビゲートするために適切なシャフト誘導を実施するように、能動的に制御することができる。
【0035】
接続ハブ又はハンドル200は、操縦可能器具100とアクチュエータシステム300の間の電気機械的相互接続を提供するのに役立つ、様々な機械コンポーネント、電子コンポーネント、電気コンポーネント及び光学コンポーネントを含んでよい。例えば、ハンドル200は、機械接続、電気接続及び/又は光学接続と、操縦可能器具100をアクチュエータシステム300とインタフェース接続するためのデータ/デジタル取得(DAQ)システムとを提供することができる。また、ハンドル200は、アクセスポート250と、1つ以上の機械ダイヤル又はノブ252と、ユーザインタフェース254とを提供することができる。1つ以上の制御ホイール又はノブ252を用いて、操縦可能セクション103の個々のセグメントを1つ以上の方向に手動で曲げることができる。アクセスポート250は、小型鉗子や針、電気焼灼用器具等のツールを、ツールチャネル105において挿入及び引抜きするために用いられる。ハンドル200は、操縦可能器具100を直線方向Lに動かすためのロボット支持プラットフォーム600(例えばリニアステージ601)に取付け可能である。コントローラシステム300は、ハンドル200及び/又は追加の接続205(ケーブル束等)を介して、支持プラットフォーム600及び/又はリニアステージ601に制御信号を送る。
【0036】
ユーザインタフェース254の一部として、ハンドル200は、ロボット操縦可能器具100の動作状態をユーザに提供するために、1つ又は複数の発光ダイオード(LED)を含んでよい。一実施形態では、LEDは、例えば、それぞれ正常動作(緑色の光)と異常動作(赤色の光)を示すための異なる光の色を含んでよい。或いは、LEDは、例えばある種の異常動作を示すために、点滅するコードを含んでよい。更に、ユーザインタフェース254は、緊急時に手動で操縦可能器具100の作動を停止するために、緊急オン/オフスイッチを含んでよい。
【0037】
図1Bは、例示の操縦可能器具100の関連部品をより詳細に示す。操縦可能器具100は、スリーブ又はシースとも呼ばれる細長い軟性シャフト(細長体)を有する。シースの長さに沿って、長手方向軸Axに沿って(平行に)近位端から遠位端まで延びるチャネルが存在する。このようなチャネルのうち、シースは、シースに沿って(典型的には、中に)延びる1つ以上の管状開口105と、シースの壁に沿って(典型的には、壁内に)延びる複数のワイヤコンジット104とを含んでよい。1つ以上の管状開口105は、アクセスポート250から操縦可能セクション103の遠位端まで送達される医用ツール(エンドエフェクタ)のアクセスを可能にするツールチャネルとして機能する。また、管状開口105は、液体又は気体の物質(例えば空気や水)を標的エリアに送り又は回収するために、或いは、光ファイバ及び/又は電線を通すために、用いることができる。更に、1つ以上のチャネル105は、医用イメージングデバイス180(内視鏡カメラやファイバベースのイメージングプローブ等)のうちの1つ以上を挿入するために用いることができる。内視鏡カメラの例としては、内視鏡の先端に配置されたミニチュアCMOSセンサ及び照明器を備えたカメラ等の、チップ・オン・ティップ(COT)カメラが挙げられるが、これに限定されない。ファイバベースのイメージングプローブの例としては、近赤外自家蛍光(NIRAF)イメージングプローブ、スペクトル符号化内視鏡(SEE)プローブ、血管内超音波検査(IVUS)プローブ、光干渉断層撮影(OCT)イメージングプローブ、又はこのようなデバイスの2つ以上の組合せを備えたプローブが挙げられるが、これらに限定されない。
【0038】
操縦可能器具100は、器具の遠位端の近く(作動距離)に位置する目的の標的エリアに到達するように、1つ又は複数の湾曲カーブを伴う管腔内標的エリアへの柔軟なアクセスを提供するように構成される。望ましくは、操縦可能器具100は、ねじり剛性及び長手方向の剛性を保つことが可能であるので、ユーザは、制御ノブ252、アクチュエータシステム300及び/又はコンピュータシステム400から器具100の遠位端を遠隔操縦することによって、シースの遠位端に位置するエンドエフェクタ及び/又はイメージングデバイスを制御することができる。そのような操縦可能機能を提供するために、操縦可能器具100は、シースの壁に沿う(典型的には、壁内の)ワイヤコンジット104の内側に配置された複数の駆動ワイヤ110によって作動する。駆動ワイヤ110の一部は、ワイヤアンカー114を用いてシースの遠位端に固定され、他の駆動ワイヤ110は、ワイヤアンカー113を用いて、遠位端から所定の距離に固定することができる。一部の実施形態では、操縦可能器具100は、1つ以上の支持ワイヤ111(腱ワイヤ)を含んでよい。支持ワイヤ又は腱ワイヤ111は、操縦可能セクションの一部の場所では任意であってよいが、典型的には、ワイヤアンカー115によってシースの遠位端に固定され、また、ハンドル200の支持部211(例えばシャシ、メカニカルスプリング等)に対して機械的に接地(固定して取付け)されてよい。
【0039】
例示の一実施形態では、6本の駆動ワイヤ110を備えた操縦可能器具100において、2組の駆動ワイヤ110(すなわち4本の駆動ワイヤ)が、ワイヤアンカー113によってシースの中央部に(例えば1つ以上の変曲点107に)固定されてよく、別の1組の駆動ワイヤ110(2本の駆動ワイヤ)は、ワイヤアンカー114によってシースの遠位端に固定することができる。このように、操縦可能器具100は、3組の拮抗する駆動ワイヤ110によって制御される少なくとも2つの(すなわち、2つより多い)操縦可能セクションを有することができ、各ワイヤは、別個のワイヤコンジット104を通って延びる。一実施形態によれば、操縦可能器具100において、3箇所に駆動ワイヤ110が固定され、2箇所に支持ワイヤ111が固定されてよい。最も遠位のアンカーポイントには、3本の駆動ワイヤ110と3本の支持ワイヤ111がある。「中間」のアンカーポイントには、3本の駆動ワイヤがあり、支持ワイヤはない。そして、最も近位のアンカーポイントには、3本の駆動ワイヤと3本の支持ワイヤがある。
【0040】
ワイヤコンジット104は、シースの少なくとも1つのセグメント又はセクションの操縦(曲げ又はひねり)に用いられる駆動ワイヤ110の固定及び/又は通過を可能にする。更に、少なくとも一部のワイヤコンジット104を用いて、1つ以上の電気ケーブル112を通すことができる。電気ケーブル112は、操縦可能セクション103又はその内部に配置された電子デバイスと、器具の近位端の外側に位置する信号処理回路との間で、電気的接続を確立するように構成される。例えば、電気ケーブル112を用いて、ハンドル200に位置する第1の電気端子212に1つ以上の電磁(EM)センサ190を接続することができる。一部の実施形態では、管状開口105を用いて、同様にハンドル200に位置する第2の電気端子213にイメージングデバイス180を接続できる追加の電気ケーブル112を通すこともできる。
【0041】
器具100の近位端では、ハンドル200は、操縦可能器具100とアクチュエータシステム300の間の機械的リンク及び電気機械的インタフェースを提供するように構成される。本開示によれば、ハンドル200は、複数の磁気コネクタ510(駆動ワイヤ110の各々に対して1つの接続)を提供するので、アクチュエータユニット311のアクチュエータ310は、各駆動ワイヤ110を機械的に作動させることができる。各磁気コネクタ510は、(信号305に基づいて)コントローラ320についてフィードバックループ325を作り出すように、1つ以上のセンサ304と動作可能に接続されている。コントローラ320は、各駆動ワイヤ110に加えられた駆動力に基づいて、各駆動ワイヤ110の動作(動き)を電子的に制御するために用いられる。「駆動力」は、操縦可能器具100を作動させるために駆動ワイヤに付加される引張力、圧縮力及び/又はねじり力のうちの1つ以上として理解される。一部の実施形態では、「曲げ力」という用語は、操縦可能器具100の少なくとも1つのセグメントを曲げるために駆動ワイヤに付加される引張力又は圧縮力として理解される。
【0042】
<
図2:磁気コネクタハブ>
前述したように、駆動ワイヤ110を作動させるためには、モータやアクチュエータ310等の駆動機構がなければならないが、これには、駆動機構と各駆動ワイヤとの間の電気機械的接続等のある種の接続が必要となる。
図2は、本開示に係る、接続ハブ500に配置された複数の磁気コネクタ510によって実装される電気機械的接続ハブの例示の実施形態を示す。
【0043】
図1A及び
図1Bに示されるように、システム1000の全体構造には、操縦可能器具100に駆動力を与えるアクチュエータシステム300が必要となる。操縦可能器具100は、少なくとも1つの湾曲セクションを有し、また、湾曲セクションを操作するために押し/引き運動に依存する駆動ワイヤ110(制御ワイヤ)を介して駆動力を受け取る。接続ハブ(例えばハンドル200に配置される)により、アクチュエータシステムは、個々の駆動ワイヤを操作することができる。
【0044】
図2は、本開示に係る接続ハブ500の例示の実施形態を示す。この実施形態によれば、接続ハブ500は、円筒形ハウジング504の中心軸の周りに配置された複数の磁気コネクタ510(510a、510b、510c等)を含む。円筒形ハウジング504は、アクチュエータシステムのアクチュエータ側に設けられ、磁気コネクタ510を囲むように機能する。各磁気コネクタ510は、1つのアクチュエータ310をカテーテル駆動ワイヤ110のうちの1本に磁気的に結合するように構成される。操縦可能器具100の近位端と接続ハブ500との間の機械的接続を容易にするために、ハウジング504はキー溝501を含み、操縦可能器具100は誘導ピン502を含む。操縦可能器具100の近位端がスライドしてハウジング504内に入ると、誘導ピン502はキー溝501に沿って進み、複数の磁気コネクタ510は、アクチュエータユニット311の複数のアクチュエータ310a、310b、310c、310d等を操縦可能器具100の複数のカテーテル駆動ワイヤ110a、110b、110c、110d等に磁気的に結合する。
【0045】
図3は、操縦可能器具100の近位端から遠位端に向かう方向に、
図2の線A-Aに沿って取られた接続ハブ500の断面図を示す。これは、
図3に示される断面
図A-Aがアクチュエータ側からカテーテル側への方向に見られるということに類似する。複数の駆動ワイヤ110及びアクチュエータ310(この例ではそれぞれ9つ)は、ツールチャネル105を囲むように、ピッチ半径(Pr)で器具の中心軸Axの周りに円形に配置されている。接続ハブ500を介して駆動ワイヤ110を対応するアクチュエータ310に取り付ける操作は、「挿入及びねじり」運動を実行するユーザの単一の動作によって、完了することができる。具体的には、接続プロセス中、ユーザは、まず、適切な位置合せのために誘導機構(キー溝501及び誘導ピン502等)を利用して、操縦可能器具100(カテーテル、内視鏡、又はツールの有無に関わらず操縦可能シース)の近位端を、接続ハブ500のハウジング504に挿入する(
図2参照)。この時点で、操縦可能器具100をハウジング504に直線的に挿入した後、アクチュエータ310及び磁気コネクタ510は、まだ駆動ワイヤ110と位置合せされていない(
図3参照)。最大挿入深さに達すると、ユーザは、矢印520の方向にねじり運動を実行し、アクチュエータ310を対応する駆動ワイヤ110に位置合わせし、接続ハブ500をロック位置に位置付ける。ロック位置では、ロック503(例えば、ばね仕掛けのビーム/ノブ)が開口505と整列するか、或いは開口505に嵌って、偶発的な解放を防止する。
【0046】
次に、コントローラ320(又はCPU410)は、ユーザが手動接続を実行したことを感知し、係合手順を開始する。ここで、アクチュエータ310が前方に(z方向に)動き、各磁気コネクタ510を介して各アクチュエータ310と対応する駆動ワイヤ110との間で磁気結合が生じる。切断する際は、ユーザは、ロック503を引いてピン502を解放し、操縦可能器具100の本体をねじって引くことによって接続とは逆のことを行う。取外しプロセスでは、コントローラによる手順は必要ない。ユーザが操縦可能器具をねじってアクチュエータ機構から引き抜くとすぐに、磁気接続が切断され、センサ304は、アクチュエータシステム300と操縦可能器具100の間の通信を停止する。
【0047】
別の実施形態によれば、器具100が接続ハブ500から取り外されることなく、磁気結合のみが閾値力で分離する。閾値力は、選択した磁石のサイズと強度によって決まる。これは、カテーテル本体の駆動ワイヤ110のうちの少なくとも1つが過度の曲げ力を受けたときに、磁気分離によってカテーテル/ツール及び/又は患者への損傷が防止されるという点で、独自の特徴である。これは、安全機構を追加し、患者及び/又は操縦可能器具を保護するのに役立つので、磁気結合の重要な特徴である。更に、結合は磁気的であるので、結合には剛性があり、よって、駆動ワイヤのバックラッシュやたるみを防ぐことができる。磁気接続は電気誘導を必要とせず、各磁石は個別のケーシングにそれぞれ封入されているので、磁気結合は、カテーテルの移動中の任意の時点で切断することができるので、簡易な取外しや緊急切断に有利である。これが機能するのは、カテーテルとアクチュエータユニット間の接続及び切断のためのハブねじり機構が、駆動ワイヤアクチュエータ機構と分かれているからである。駆動ワイヤのスライドが、間隔を理由に、隣接するアクチュエータのスライドと干渉する可能性のあるシナリオは、存在しない。
【0048】
<
図3:単一動作接続>
特定の一実施形態では、例えば
図2に示されるように、9個の磁気コネクタ510によって磁気的に結合された9個のアクチュエータ310と9本のカテーテル駆動ワイヤ110が存在する。結合は、作動方向に約20ニュートン(N)の力で分離する。アクチュエータを駆動ワイヤに接続するためには、アクチュエータ側に、全てのアクチュエータを最後部の位置(ホーム位置)に移動するように命令する必要があり、そうしないと、接続が機能しない場合がある。アクチュエータが最後部の位置にない場合、アクチュエータは駆動ワイヤよりも前方の位置にあるので、駆動ワイヤのスライドに干渉する可能性がある。したがって、ねじり係合動作中、アクチュエータのスライドは、駆動ワイヤのスライドに対して最も後方の位置に配置される必要がある。ユーザがカテーテル本体をロック位置に挿入してねじると、アクチュエータ310は、前方に移動するようにコントローラ320によって命令され、次いで、磁気結合が係合する。アクチュエータ機構を駆動ワイヤ110から切断する際には、トルクが付加され、各磁気コネクタ510の磁石515が、
図3に示される位置まで横方向(径方向)にスライドする。本明細書で用いられる場合、「トルク」は、軸又はピボットポイントを中心とした物体のねじれ又は回転を生成する、或いは生成する傾向がある力として理解される。この場合、アクチュエータ機構を駆動ワイヤ110から切断するのに必要なトルクは、ユーザによって手動で付加されてもよいし、或いは、トルク機構(一定量の張力又は圧力でトルクを付加するように構成されたばね仕掛けのカム又はピン等)によって自動的に付加されてもよい。
【0049】
<
図4:磁気コネクタ及び作動力>
図4は、磁気コネクタ510の例示の実施形態と、対応するアクチュエータ310によって単一の駆動ワイヤ110を動作させるために磁気コネクタ510に加えられる作動力522及び除去力521の方向とを示す。具体的には、
図4に示されるように、作動力(押す力、又は引く力)522の方向は、器具100及び/又は駆動ワイヤ110の長さ方向に実質的に平行である。一方、(磁気接合を解放するための)除去力521の方向は、駆動ワイヤ110の長さ方向に実質的に垂直(横方向)である。前述したように、アクチュエータ機構を駆動ワイヤ110から切断するために、各アクチュエータ(310a、310b、310c、…310m)をホーム位置に位置付けることができ、次いで、ユーザによって手動で、或いはアクチュエータ310によってトルクが付加され、各磁気コネクタ510の磁石は、
図3に示される位置まで横方向にスライドする。
【0050】
したがって、各磁気コネクタ510が、ワイヤ動作の精度に影響を与えることなく、また、作動中の引張力又は圧縮力に影響を与えることなく(すなわち、たるみを生じることなく)、作動力522及び除去力521に耐えられる適切なコンポーネントでできていることが重要である。そのために、各磁気コネクタ510は、カテーテル側軸受スリーブ511、カテーテル側シャフト512、カテーテル側スチールキャッチ513、可塑性キャップ514、リング状又は円盤状又は円筒状の軸方向分極レアアース磁石515、アクチュエータ側スチールキャッチ516、アクチュエータ側シャフト517及びアクチュエータ側軸受スリーブ518を含む。ここで、留意すべきこととして、カテーテル側スチールキャッチ513は、任意の透磁材料(例えば鉄材料)から形成することができ、また、駆動ワイヤ110の一部であるか、或いは駆動ワイヤ110に直接接続される。同様に、アクチュエータ側スチールキャッチ516は、アクチュエータ310の一部であるか、或いはアクチュエータ310に直接接続される。
【0051】
“軸方向”分極磁石は、標的の前面に実質的に垂直に磁界が分布するように、N-S極指定によって定義された方向で軸方向に分極されるとともに、その磁気双極子が結果として当該表面に実質的に垂直になる磁石システムと理解される。磁界の入口/出口面(標的に面する)は、その中で、標的前面に実質的に平行である。磁界の“軸方向”成分とは、磁界を基準にして考慮される空間点に最も近い前面点において、標的前面に垂直な成分、或いは、標的前面が非平面である場合は標的前面の接平面に垂直な成分と理解される。
【0052】
磁石515は、レアアース材料(ネオジム-鉄-ホウ素(NdFeB)等)やその他の類似の材料から形成されてよく、1つ又は複数の磁石が、内径上に共通極があるとともに、外径上に共通極があるように配置されてよい。磁石部材515の磁界の概略図は、参照番号523によって表されている。
【0053】
可塑性キャップ514は、磁石515を固定し、また、アクチュエータ側の横方向分離のための低摩擦表面を提供する。可塑性キャップ514は、成形された半硬質塑性材料(ナイロン等)から形成されてよく、アクチュエータ側スチールキャッチ516の端面、又はカテーテル側スチールキャッチ513の端面、又はその両方に適用される。少なくとも1つの実施形態では、可塑性キャップ514は、以下の寸法、すなわち約8mm~12mmの外径(OD)及び0.05~1.00mmの厚さを有してよく、また、ナイロン、HDPE、PTFE、PP等の材料で作られてよい。可塑性キャップ514の厚さを変更することにより、特定のニーズ又は要件を満たすように分離力を微調整することができる。このようにして、カテーテルの設計に合わせて分離力を簡単に変更することができる。例えば、分離力は、所望の曲げを得るために必要な引く/押す力よりも大きくなければならないが、カテーテルの折れ/ねじれの力よりは小さくなければならない。一実施形態によれば、磁石515は、磁気コネクタ510のアクチュエータ側にのみ設けられ、カテーテル側には設けられない。カテーテル側に磁石515を設けない理由のひとつは、カテーテルが使い捨てであり得るということである。カテーテル本体から切り離されると、磁石515は、非磁性材料のカバー又はシースによって保護することができ、この場合、ツールが取り付けられていないときに異物が磁界に引き付けられないように、磁石は埋め込まれる。カバーは、カテーテルが接続ハブ500から取り除かれた直後にカバーがスライドするか、さもなければ磁石を取り囲むように、自動閉鎖機構を用いて設計することができる。磁気引力がユーザに害を及ぼすおそれがあるので、これは重要な安全機能である。
【0054】
<
図5:磁気係合及び解放>
図5は、
図4に示される磁気コネクタ510の単一の磁石515による磁界523のグラフ(磁束密度プロット)を示す。1つ以上の実施形態によれば、磁界523による係合力は、2次元の静磁気有限要素解析を用いて計算された。
図4に示される例示の実施形態では、永久磁石部材515とカテーテル側スチールキャッチ513の間の磁気引力により、アクチュエータ側スチールキャッチ516をカテーテル側スチールキャッチ513から分離又は引き離すために20N超の引張力を必要とするかなりの力の引力が提供される。一部の実施形態では、スチールキャッチ部材513及び516を分離するために引力が必要とするのは、20Nよりも大きい場合もあるし、小さい場合もある。しかしながら、スチールキャッチ部材513及び516が軸方向引張力の結果として分離された後、当然のことながら、磁気引力がカテーテル側スチールキャッチ513をアクチュエータ側スチールキャッチ516に向かって引き戻すので、磁石515によってもたらされる磁気結合力により、小さな力(又はわずかな動き)でスチールキャッチ部材を再接続する便利な手段が可能となる。20Nの係合力を達成するには、直径5/16インチの円筒形の軸方向分極磁石が必要であると決定された。12Nの係合力を達成するには、直径1/4インチの円筒形の軸方向分極磁石が必要であると決定された。12N又は20Nの係合力に必要な磁束を用いる場合、磁気コネクタ510の別の重要な設計上の特徴は、磁界が他のアクチュエータ又は潜在的な外部干渉の付近に入る磁束飽和が存在しないことである。この保護は、磁束の周りに、各単一コネクタ510の外側の磁束密度が0.1テスラ未満になるように磁路のループを閉じるスチールループを作成することによって得られる。これを達成するために、一実施形態によれば、20Nの接続ハブ500は12mmの全体直径を必要とし、12Nの接続ハブ500は10mmの全体直径を必要とする。
【0055】
横方向の除去力521(磁気結合を分離するため)を計算するには、可塑性キャップ514の材料(例えば、PTFEとスチールの場合は約0.05~0.2)とスチールキャッチ516の材料の間の摩擦係数を知る必要がある。本発明者によって解釈されたプロトタイプのデバイスによれば、可塑性キャップ514とスチールキャッチ516の間の摩擦係数の結果は、およそ0.2であった。したがって、コネクタハブ500のアクチュエータ310の数と、アクチュエータのピッチ半径(接触面とねじり回転の中心との間の距離)が与えられると、必要な最小除去トルクを計算することも可能である。トルクは、クランプ力(磁気結合力)と、摩擦係数と、ピッチ半径と、アクチュエータの数とを乗算することによって計算することができる。20Nのクランプ力と、0.2の摩擦係数と、30mmのピッチ半径と、9個のアクチュエータの場合、およそ1N×mの除去トルクが得られるであろう。
【0056】
図1A~
図1Bに関して前述したように、センサ304は、各アクチュエータ310に力フィードバック信号305を提供して、少なくとも1つの駆動ワイヤ110が対応するアクチュエータ310から解放されたときを感知することができる。コントローラ320は、アクチュエータと駆動ワイヤの間の再取付けを開始するための適切なアルゴリズムを用いてプログラムすることができる。接続ハブ500の設計は、力フィードバックを利用して、磁気コネクタを介してアクチュエータ310と駆動ワイヤ110の間の初期磁気接続を行う、較正又はホーミングアルゴリズムを用いてよい。リニアベアリングを用いて横方向の力を吸収できるので、損傷の原因となるカテーテル駆動ワイヤへの移動がない。リニアベアリングは、摺動シャフトスタイル、リサーキュレーティングボールウェイ、又は同様のリニアベアリング技術であってよい。リニアベアリングの機能は、ある方向への動きを可能にしながら、別の方向への動きを制限することである。そのために、リニアベアリングは、横方向(ねじれ方向)に剛性がありながら、所望の運動方向(この場合は駆動ワイヤの押す又は引く方向)に自由に移動することができる。したがって、除去トルクからの力は、カテーテルワイヤではなく、ベアリング機構に伝達される。リサーキュレーティングボールウェイの場合、可動部分と固定部分の間に硬化鋼ボールベアリングがある。ボールベアリングは、所望の動きの方向に回転し、横方向の力に抵抗する。各磁気コネクタ510の可塑性キャップ514は、カテーテル側シャフトとアクチュエータ側シャフトの間のわずかなずれを許容するコンプライアンス性を有する。代替の実施形態は、ずれの問題に対処するために、別個の結合機構を利用することができる。例えば、完全に位置合せされていない2つの可動シャフトの接続を可能にする市販の結合コンポーネントを使用することができる。このタイプの結合機構は、運動方向に剛性があり、可動部品間の剛性のある移動を可能にするが、他の方向には柔軟性があり、ずれによる動的変位を許容する。
【0057】
カテーテルの摩擦と、カテーテル本体の様々なセクションを曲げるのに必要な固有の力により、アクチュエータがカテーテルに接続されるときに必ずアクチュエータが受ける最小の力が存在する。力のフィードバックの読取り値が特定の閾値を下回ると、係合ルーチンが実行されて、駆動ワイヤが再係合される。ルーチンは、フィードバック力の急上昇を読み取るまでアクチュエータをゆっくりと前進させることにより、接続を確保する。
【0058】
<
図6~
図7:磁気分離>
前述したように、カテーテル駆動ワイヤ110は、動作中に受けた高い駆動力(引張力及び/又は圧縮力)が原因で故障する(折れる、かつ/又は砕ける)おそれがある。本開示の少なくとも1つの実施形態によれば、接続ハブ500は、駆動機構と駆動ワイヤ110の間の接続に対して分離安全性特徴を形成する磁気ヒューズとして機能することができる。
【0059】
一般に、操縦可能器具100の挿入中又は引戻し中のいずれかにおいて、体腔の中心線は、操縦可能器具の能動制御中に従うべき所望の軌道である。そのため、誘導型のカテーテル又は内視鏡等の従来の操縦可能器具は、操縦可能器具の軟性シャフトを強制的に所望の軌道に保つことを目的として、シャフト誘導の様々な概念を実現しようと試みてきた。文献米国2007/0135803(あらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる)によって記載された一例では、操縦可能器具は管腔を通って前進し、センサは、シャフトガイドの挿入深さと、ユーザ制御の操縦可能先端部の角形成とを測定して、軌道情報を取得する。軌道情報は、システムのメモリに記憶される。挿入深さを少し前進させた後、新しい形状が所望の軌道に厳密に一致するように器具のセグメントを調整する(回転させる、又は曲げる)ことにより、操縦可能器具の形状が修正される。このプロセスは、器具の先端が標的エリアに到達するまで繰り返される。ただし、ほとんどの操縦可能医用器具には、所望の軌道をたどるために、周囲の生体構造からの支持が依然として必要である。特に、操縦可能器具に外乱(外力)が加えられたときは、操縦可能器具の湾曲セクション又は先端が患者の生体構造に引っ掛かり、適切なナビゲーションを妨げるおそれがあるので、操縦可能器具を所望の軌道上に維持することは困難である。同様に、操縦可能器具の引戻し中は、誘導システムは一般に非アクティブであり、これにより、操縦可能器具は制御されていない(パッシブ)状態にある。しかしながら、操縦可能器具が患者の生体構造に接触するおそれがあり、これにより、器具にいくらかの曲げ力がかかり、患者に対して不快感及び/又は痛みを生じるおそれがある。
【0060】
本開示によれば、磁気コネクタハブ500は、挿入手順中に最大動作力よりも大きく故障力よりも小さい駆動力で解放される磁気的に結合されたシャフトから成る磁気ヒューズとして、構成することができる。更に、磁気的に結合されたシャフトは、引抜き手順中に所定量の曲げ力を検出した後に、解放することができる。
図4に示される実施形態によれば、磁気結合の分離は、駆動ワイヤ110が受ける大きな曲げ力、例えば、操縦可能器具100が体腔の蛇行経路に沿ってスタックする原因となる外力の下で、発生する。
【0061】
別の実施形態によれば、磁気分離には、圧縮力と引張力の両方で機能する2段階の設計が含まれる。引張力が最大動作力を超える場合、磁気結合が分離して、操縦可能器具がコンプライアントになることができる。その後、磁気結合は、プログラムされたアルゴリズムに基づいて、アクチュエータの動きによって簡単に再係合することができる。引張解放(過度の引張力による磁気解放)の場合、アクチュエータ310は前方に(カテーテルの遠位端に向かって)移動して、駆動ワイヤ110と再係合し、圧縮解放(過度の圧縮力による磁気解放)の場合、アクチュエータは後方に(カテーテルの近位端から離れて)移動する。一部の実施形態では、力のフィードバックを用いて、摩擦又は曲げに起因する特定のレベルの動的な力で、解放及び/又は再係合を引き起こすことができる。例えば、解放後、力が動作力を下回ったとき、コントローラは、再係合するとともに通常動作を再開するためのアルゴリズムを開始する。
【0062】
図6は、圧縮分離と引張分離の両方の安全性を提供するように構成された磁気ヒューズとして機能できる磁気コネクタ610の実施形態を示す。
図6に示されるように、磁気コネクタ610は、2つの磁気結合セクション(1つは圧縮用、1つは引張用)を含む。2つの結合セクションは、前の実施形態と同様に、両方とも接続ハブ500のアクチュエータ側に設けることができる。ただし、代替の実施形態では、2つの磁気結合セクションは器具側(すなわちカテーテル側)に設けられてよい。更なる実施形態では、2つの磁気結合セクションは、アクチュエータ側と器具側に分けて設けられてもよい(すなわち、各側に1つの結合セクション)。
【0063】
図6に示される実施形態では、磁気コネクタ610は、カテーテル側シャフト512、カテーテル側スチールキャッチ513、可塑性キャップ514、アクチュエータ側シャフト517及び第1の磁石515を含み、これらは全て、
図4を参照して説明された同じ要素と同様である。磁気コネクタ610は、更に、円筒形ハブ611、摺動プランジャ612、第2の磁石615及び磁石エンクロージャ614を含む。これらの要素は、圧縮分離セクション及び引張分離セクションを形成するように配置される。圧縮分離セクションは、摺動プランジャ612に接着されるとともにアクチュエータ側シャフト517に機械的に接続された磁石515(第1の磁石)を含む。圧縮分離セクションは、円筒形ハブ611の円筒形空間613(空の空間)の中で長手方向に動く(スライドする)ことができる。引張分離セクションは、円筒形ハブ611に固定して接着されたその磁石エンクロージャ614に囲まれた磁石615(第2の磁石)を含む。したがって、圧縮分離磁石515は、円筒ハブ611内でプランジャ612と一緒に動くことができ、引張分離磁石615は、円筒形ハブ611に直接接着される。
【0064】
圧縮分離セクションでは、その動作状態において、磁石515は、円筒形ハブ611の強磁性壁に向かって磁気引力を生成し、それにより、第1の平面P1で、プランジャ612を円筒形ハブ611に対してクランプする。磁石515とハブ611の間のプランジャ壁の厚さT1を変えることにより、圧縮分離の分離力を微調整することができる。引張分離セクションでは、同様に、磁石615が強磁性材料で作られた磁気エンクロージャ614に囲まれているので、磁石615及びそのエンクロージャ614は、第2の平面P2でハブ611に固定して取り付けられる。磁石エンクロージャ614は、ハブ611に対して直接嵌合し、磁石615は、エンクロージャ614によって形成されたポケットに埋め込まれる。磁石エンクロージャ614によって形成されるこのポケットの深さを増大させること(すなわち、磁石615と平面P2の間のエアギャップT2を増大させること)により、引張分離の分離力を微調整することができる。
【0065】
一部の用途では、引張と圧縮で異なる分離力にすることが有用である場合がある。例えば、駆動ワイヤのねじれ故障モードは、引張力よりも低い力で発生する可能性があるので、より小さな圧縮分離力が望ましい場合がある。更に、過度の圧縮力によるねじれ故障は、例えば、カテーテル先端が管腔内の生体構造の壁に引っ掛かり、アクチュエータが駆動ワイヤを圧縮し(押し)続ける場合、患者の健康に対してより重大な結果をもたらすおそれがある。対照的に、引張力(引く力)に起因する故障には、駆動ワイヤの塑性変形及び座屈の故障モードがあり、これは通常、より高い力で発生する。特に、駆動ワイヤがニチノール等の塑性変形に対する耐性が高い柔軟な材料でできている場合、引張力に起因する故障は、圧縮力の故障よりもはるかに高くなる可能性がある。
【0066】
図6に示される実施形態の有利な設計特徴は、磁界が他のアクチュエータの付近に入るか、又は潜在的に外部干渉を生成する磁束飽和がないことである。
図6の挿入
図Bは、第1の磁石515の磁界のグラフ表示を示す。これは、磁石の周りに、モジュールの外側の磁束密度が0.1テスラ未満になるように磁路のループを閉じるスチールループを作成することによって、達成される。更に、少なくとも一部の実施形態では、第1の磁石515は、径方向に分極されている(径方向分極:radial poled)か、或いは直径方向に分極されている。“径方向分極”磁石は、標的前面に実質的に平行に分極された磁石システムとして理解される。すなわち、この磁石システムの磁気双極子は、標的前面に実質的に平行に配置され、また、磁界がそれぞれ当該標的前面に対して実質的に垂直に出入りするのは、それらの極出口(又は入口)面からである。磁界の“径方向”成分は、磁界を基準にして考慮される空間点に最も近い前面点において、標的前面に平行な成分、或いは、標的前面が非平面である場合は標的前面の接平面に平行な成分と理解される。少なくとも1つの実施形態によれば、追加の利点は、磁気分離(磁気ヒューズ)が、使い捨てカテーテル自体ではなく、アクチュエータ側に存在することが好ましいということである。
【0067】
図7Aと
図7Bは、それぞれ圧縮分離と引張分離を図式的に示す。
図7Aに示されるように、圧縮分離は、カテーテル側シャフト512とアクチュエータ側シャフト517の間の機械的連結部に対して過剰な圧縮力710があるときに生じる。この場合、圧縮力710が第1の磁石515の磁界によって生成される力を超える(圧縮力が所定の圧縮値よりも大きくなる)と、摺動プランジャ612は、円筒ハブ611内で、操縦可能器具100の遠位端に向かう(すなわち、駆動ワイヤに向かう)方向720に距離D1だけ進む。これにより、駆動ワイヤ110とアクチュエータ310の間の圧縮力が解放(分離)される。円筒ハブ611に対する摺動プランジャ612の移動距離D1は、カテーテル自体の移動よりも大きくなければならない。これは、プランジャ612がハブ611の反対側に衝突して、損傷(バックラッシュによる)を引き起こすおそれがないようにするためである。
【0068】
一方、
図7Bに示されるように、引張分離は、アクチュエータ側シャフト517とカテーテル側シャフト512の間の機械的連結部に対して過剰な引張力730(引く力)があるときに生じる。この場合、引張力730が第2の磁石615の磁界によって生じた力(所定の引張値)を超えると、円筒ハブ611全体が、カテーテル側シャフト512及びスチールキャッチ513から切り離される。駆動ワイヤ110は過剰な引張(引く力)を受けているので、磁気結合が分離すると、カテーテル側シャフト512は、円筒形ハブ611から離れる方向740に距離D2だけ進んで、過剰な引張力730を解放する。
【0069】
圧縮分離又は引張分離のいずれかが発生すると、システムのコントローラは、力のフィードバックを用いて再取付けルーチンを開始し、オーバートラベルの発生を防止する。ただし、留意すべきこととして、追加情報がないと、コントローラは、引張分離と圧縮分離の違いを区別することができないであろう。したがって、一解決策は、力のフィードバックが力のスパイクを示すまで、再係合を前後に移動させることである。別の解決策は、物理的な近接センサを用いて、プランジャが係合しているかどうかを読み取ることである。これは、磁石からの磁界を読み取るために平面P1及びP2に設けられたホール効果センサを用いて行うことができる。どのタイプの分離が発生したかを決定するための更なる解決策は、分離が発生する曲げ力の閾値レベルを設定することである。前述したように、一般に、患者の安全性の観点から、引張力よりも低い閾値レベルで圧縮力下の分離作用をトリガすることが、より有利である。これらのパラメータは、システムのメモリに事前にプログラム(事前に保存)することができるので、コントローラは、分離の原因となった力を、事前に保存された閾値パラメータと比較することができる。これは、圧縮分離セクションと引張分離セクションに異なる強度の磁石を用いるによって行うことができる。
【0070】
<
図8~
図9:磁気コネクタのタイプ>
図8Aと
図8Bは、それぞれ、磁気コネクタの第1の例の斜視図と断面図を示す。第1の例によれば、磁気コネクタは、例えば接着剤や溶接によってアクチュエータ側シャフト517に接続された円筒形磁石515を用いる。したがって、本開示の実施形態は、接続ハブ500に複数の円筒形磁石515を利用する。円筒形磁石515の使用により、単位面積あたり最大の結合力が生じる。
【0071】
図9Aと
図9Bは、それぞれ、磁気コネクタの第2の例の斜視図と断面図を示す。第2の例によれば、磁気コネクタは、機械的拘束(クランプや圧入、ボルト締め等)によってアクチュエータ側シャフト517に接続されたリング状磁石515を用いる。したがって、本開示の第2の実施形態は、接着剤とは対照的に、クランプによる機械的拘束を可能にし得る複数のリング状磁石を利用する。この設計により、磁石とアクチュエータの間の接続がより安全になるが、磁性材料が少ないので、第1の例と比較して、単位面積あたりの力がわずかに小さくなる場合がある。
【0072】
<
図10A~
図10E:低力係合を有する磁気コネクタ>
図10A、
図10B、
図10C、
図10D及び
図10Eは、本開示の別の実施形態に係る磁気コネクタハブ500の様々な図を示す。前述の実施形態では、ユーザは、操縦可能カテーテルシース100の近位端を磁気コネクタハブ500に挿入してねじることにより、単一動作接続を実行する。
図2及び
図3に示される磁気コネクタハブ500の前の実施形態において、ユーザがカテーテルシース100をハブ500に挿入し、それを矢印520の時計回り方向に回転させる場合、磁気係合力が潜在的に強すぎて、意図せずにカテーテル先端に動きを伝達する可能性がある。更に、係合後、ユーザがカテーテルシースを磁気コネクタハブ500から瞬間的に解放したい場合、ユーザがまずシースを反時計回り方向に回転させ、次に、カテーテルシースがすぐにハブ500から切り離される(取り外される)。
図10A~
図10Eに示される実施形態は、ねじり運動の前に部分的な低力係合が発生する磁気コネクタハブ500を提供する。この代替の実施形態を用いる場合、係合プロセスは以下のステップを含む:(1)アクチュエータを初期係合位置に戻す(これは、受動的に(例えばユーザによって手動で)実行されてもよいし、ソフトウェアシステムによって能動的に実行されてもよい);(2)磁石515と駆動ワイヤ110との間にわずかな干渉が存在するところまで、ガイドを通してカテーテルを挿入する(これにより、カテーテルがホーム位置に自動的に位置合せされる。この位置では、係合力は最小~<1Nである);(3)カテーテルが完全に係合するロック位置まで時計回りに回転する(>15N分離);(4)緊急解放の場合は、押してロック解除し、カテーテルを反時計回りに回転させて完全に解放し、これにより、カテーテルハブがアクチュエータハブに取り付けられたまま、カテーテル駆動ワイヤが自由になる。言い換えれば、
図10A~
図10Eに示される実施形態によれば、解放プロセス中、アクチュエータが駆動ワイヤから磁気的に切り離された後でも、カテーテルはハブ500に物理的に接続及びロックされたままであることができる。
【0073】
図10Aは、操縦可能器具100がない状態の磁気コネクタハブ500の斜視図を示す。
図10Bは、本実施形態に係る、磁気結合の前に操縦可能器具100(操縦可能カテーテルシース)の近位端に接続された磁気コネクタハブ500の斜視図を示す。
図10Aに示されるように、この実施形態では、コネクタハブ500は、システム1000のアクチュエータ側のハンドル200に取り付けられるか又は一体化された円筒形ハウジング504を含む。ハウジング504は、操縦可能器具100の近位端の外径を受け入れるように構成された内径(ID)をもつように寸法が決められている。複数の磁気コネクタ510は、
図2及び
図3に示されたのと同様に、ハブ500の内側に、ハブの中心軸の周りに所定のピッチ半径で配置される。各磁気コネクタ510は、アクチュエータ側の磁石510と、カテーテル側のスチールキャッチ513とを含み、これは、
図4に示された磁気コネクタ500の数個(この場合は9個)の配置と同様である。
【0074】
本実施形態では、操縦可能器具100の近位端は誘導ピン102及び付勢ロック103を含み、これらは両方とも、
図2及び
図3に示される同じコンポーネントに機能が類似する。磁気コネクタハブ500のハウジング504は、操縦可能器具100のピン102を誘導するためのキー溝501と、コネクタハブ500に関して所定の回転位置に操縦可能器具100をロックするための複数の開口(505A、505B)とを含む。具体的には、ハウジング504は、付勢ロック503のロックフック506と係合するように構成された第1の開口505A及び第2の開口505Bを含む。
図10Bに示されるように、アクチュエータにカテーテルを接続するために、操縦可能器具100の近位端は、矢印519の方向に直線的に挿入され、その後、矢印520によって示される時計回り方向に回転される(ねじられる)。
【0075】
図10Cは、本実施形態に係る取付けプロセスの更なる詳細を示す。
図10B及び
図10Cに示されるように、操縦可能器具100は、まず、矢印519の方向にコネクタハブ500内に挿入され、誘導ピン102は、キー溝501の第1の部分に沿って前進する。
図10Bに示される位置では、付勢ロック503のロックフック506は、第1の開口505A又は第2の開口505Bのいずれともまだ係合しない。更に、
図10Cに示されるように、磁石515は、対応するスチールキャッチ513とまだ完全には位置合せされない。
図10B及び
図10Cに示される取付け位置では、スチールキャッチャー513と磁石515の間にわずかな干渉しか存在しない。しかしながら、この最小干渉の位置では、約1ニュートン以下(~<1N)の最小係合力により、各スチールキャッチャー513と磁石515が自動的に位置合せされ、それにより、カテーテルがホーム位置に位置付けられる。
【0076】
図10D及び
図10Eは、カテーテルがコネクタハブ500に物理的に取り付けられたままである間の(例えば、緊急の目的での)磁気的切離しのプロセスを示す。
図10Dは、操縦可能器具100の近位端がコネクタハブ500に完全に取り付けられている第1のロック位置を示し、ここでは、各磁気コネクタ510のスチールキャッチャー513及び磁石515は、位置合せされ、磁気的に結合する。
図10Dは、カテーテルが矢印520の方向に、第1のロック位置まで時計回りに回転された後の位置を示し、ここでは、ハブ全体の磁気結合力が>15Nである(すなわち、全ての磁石515を対応するスチールキャッチャー513から磁気的に切り離すために、15Nよりも大きい分離力が必要となる)。この結合プロセスにおいて、カテーテル100の誘導ピン102は、時計回り方向にハウジング504のキー溝501に従い、付勢ロック503により、ロックフック506が第1の開口505Aと係合して、ハウジング504に関して第1のロック位置(ロック位置1)に操縦可能器具100をロックする。この第1のロック位置は、カテーテルがアクチュエータに取り付けられており、全ての磁石515が対応するスチールキャッチャー513と位置合せ及び磁気結合されているときに、発生する。
【0077】
カテーテルをコネクタハブ500から物理的に取り外すことなく、磁気接続を切り離す必要がある場合、ユーザは、付勢ロック203を押して、ロックフック506を第1の開口506Aから解放してから、器具100を反時計回り方に回転させることができる。このように、
図10Eに示されるように、誘導ピン102は、キー溝501に沿って反時計回り方向に動き、ロックフック506は、第2の開口505Bと係合して、カテーテルを第2のロック位置(ロック位置2)に位置付ける。第2のロック位置では、各磁気コネクタ510の磁気結合は、器具100をコネクタハブ500から解放することなく、切り離される。キー溝501の設計は、カテーテルをコネクタハブ500から機械的に解放することなく磁気コネクタ510を磁気的に切り離す可能性を生む重要な側面である。そのために、
図10B、
図10D及び
図10Eに示されるように、キー溝501は、コネクタハブ500に対する複数の接続状態に操縦可能器具100を置くように構成された多方向キー溝である。一実施形態では、キー溝501は、“T”字型キー溝であり、誘導ピン502を最初に長さ方向に(“T”の長さに沿って)動かした後、時計回り及び/又は反時計回りに(“T”の幅に沿って)動かすことができる。
【0078】
<
図11~
図12:分離及び再結合の制御アルゴリズム>
図11は、本開示に係る、連続体ロボットシステム1000のコントローラによる操縦可能器具100の分離及び再結合の制御を実施するための例示のプロセスを示す。少なくとも1つの実施形態によれば、コントローラ320及び/又はCPU410は、例えば、過剰な作動力が少なくとも1つの駆動ワイヤに付加されたときに、操縦可能器具に最大の柔軟性を提供するように作動力が最小化される(ゼロに近付ける)ように、操縦可能器具100を制御し、駆動ワイヤ110を作動させるための作動力は、挿入中及び引戻し(引抜き)中に操縦可能器具が作動しているかに関係なく連続的にモニタリングされ、駆動ワイヤ110は、過剰な圧縮力又は引張力が付加されたときに自由に分離及び並進して、コンプライアントになることができる。
【0079】
図11のワークフローは、操縦可能器具100が能動的に制御されるモードにあると仮定しており、ステップ1202では、アクチュエータシステム300(
図1A参照)が、既に進行中の器具ナビゲーションを制御する。すなわち、ステップ1202において、システム300は、アクチュエータ310と駆動ワイヤ110が互いに磁気コネクタ(1510又は1610)によって磁気結合されているカテーテル挿入時又は引戻し(引抜き)時のいずれかで、操縦器具100のナビゲーションをモニタリングする。ステップ1204では、システム300は、センサから信号を読み取る。すなわち、システムは、ひずみ又は位置センサ304からの信号を読み取る。一部の実施形態では、駆動ワイヤ110の近位端(例えば各磁気コネクタの1つ以上の磁石の近く)に、ひずみ、位置及び/又はホール効果センサ304を設けることができる。更に、操縦可能器具100の遠位端に、位置及び/又は向きセンサ(例えばEMセンサ190)が設けられてもよい。このようなセンサのうちの1つ以上(例えば
図1Bのセンサ304又はセンサ190)を用いて、操縦可能器具100に付加されている作動力を示す信号を得ることができる。ステップ1206において、アクチュエータシステム300は、センサ304からの信号を連続的にモニタリングして、アクチュエータ310と駆動ワイヤ110が切り離されたかどうかを決定する。
図7A及び
図7Bの実施形態に示されるように、磁気コネクタ610は、圧縮分離又は引張分離によって切り離すことができる。
【0080】
ステップ1206において、少なくとも1つの駆動ワイヤ110が故障点に近い作動力を受けている場合、磁気コネクタは、アクチュエータと駆動ワイヤの間の磁気接合を切り離し(分離する)(ステップ1206でYES)、フローはステップ1208へ進む。一方、作動力が動作閾値内にある場合、アクチュエータと駆動ワイヤは、磁気コネクタによって磁気結合したままであり(ステップ1206でNO)、ループは繰り返す。
【0081】
ステップ1208において、アクチュエータと駆動ワイヤが切り離されたと決定した後、アクチュエータシステム300は、操縦可能器具100のナビゲーションをすぐに停止する。すなわち、ステップ1208において、コントローラ320は、作動力の付加を停止する(例えば、アクチュエータ又はモータを停止することにより)。次いで、ステップ1210において、アクチュエータシステム300は、アクチュエータ310と駆動ワイヤ110を再取り付けするためのアルゴリズムを開始する。ステップ1212において、アクチュエータシステム300は、アクチュエータ310と駆動ワイヤ110が互いに取り付けられたかどうかを決定する。アクチュエータと駆動ワイヤの互いに対する再取付けが成功した場合(1212でYES)、フローはステップ1202に戻って、器具ナビゲーションを続ける。しかしながら、アクチュエータと駆動ワイヤが互いに再取り付けされなかった場合(1212でNO)、アクチュエータシステム300は、故障があると決定してよく、ステップ1214においてユーザに警告を発することができる。
【0082】
ステップ1206では、磁気コネクタのうちの1つ以上の状態に基づいて、切離しが検出される。例えば曲げ力が故障点付近にあることにより、少なくとも1つの磁気コネクタが切り離された場合(ステップ1212でYES)、アクチュエータシステム300は、器具及び/又は患者に対する潜在的な損傷を防止するために、器具ナビゲーションを停止する(ステップ1208)。
【0083】
図12は、ステップ1210の再取付けアルゴリズムを実施するための例示のプロセスを示す。
図12のプロセスは、アクチュエータ310と駆動ワイヤ100が磁気コネクタによって切り離されたときに、ステップ1302から始まる。ステップ1304において、アクチュエータシステム300は、分離のタイプを考慮する。すなわち、ステップ1304において、アクチュエータシステム300は、ステップ1206の分離事象の切離しの直前の、システムのメモリに保存されている情報を参照してよい。本開示の他の箇所で説明されたように、システムは、分離が過剰な圧縮力(
図7A)によって生じたのか、又は過剰な引張力(
図7B)によって生じたのかを決定することができる。したがって、分離のタイプが圧縮分離である場合、フローはステップ1306へ進み、コントローラ320は、アクチュエータ310を駆動ワイヤ110から離れる方向に後退させる(ステップ1307)。具体的には、
図7Aに示されるように、過剰な圧縮力710により、磁石515及びプランジャ612は円筒形ハブ611の内側に移動されるので、アクチュエータを駆動ワイヤに再取り付けするには、アクチュエータは、アクチュエータ側シャフト517を矢印710とは逆の方向に引く必要がある。分離のタイプが引張分離である場合、フローはステップ1308へ進み、コントローラ320は、アクチュエータ310を駆動ワイヤ110に向かう方向に前進させる(ステップ1309)。具体的には、
図7Bに示されるように、過剰な引張力730により、磁石615及び円筒形ハブ611はカテーテル側シャフト512から切り離されるので、アクチュエータを駆動ワイヤに再取り付けするには、アクチュエータは、アクチュエータ側シャフト517及び円筒形ハブ611全体を矢印730とは逆の方向に押す必要がある。
【0084】
引き続き
図12を参照すると、再取付けの際、アクチュエータ310を駆動ワイヤに対して過度に速く、或いは過度に遠くに駆動することを回避するために、再取付けプロセスは漸進的に実行することが有利であろう。したがって、ステップ1310において、アクチュエータシステム300は、アクチュエータ310と駆動ワイヤ110が磁気的に再結合されたとシステムが決定するまで、連続的かつ漸進的に再取付けループを繰り返す。磁気再結合が確認されると、フローはステップ1312へ進み、システムに器具ナビゲーションを続行させる。
【0085】
前述したように、特定の実施形態では、アクチュエータシステム300は、分離のタイプを決定するように構成されなくてもよい。アクチュエータシステム300がアクチュエータと駆動ワイヤが切り離されたと決定したが、システムが分離のタイプを知らない場合、コントローラ320は、力のフィードバックが力のスパイクを示すまで、まずアクチュエータを一方向に動かしてから、他の(逆の)方向に動かすことにより、
図12の再取付けプロセスを漸進的に実行することができる。力のスパイクが検出されると、コントローラは、力のスパイクが検出された方向に従って、アクチュエータの駆動を続行することができる。本開示の他の箇所で述べたように、駆動ワイヤ110に対するアクチュエータ310の再取付け又は再結合は、1つ以上のセンサ304及びフィードバック信号305によって提供される力のフィードバック制御に基づいて、モニタリングすることができる。別の解決策は、物理的な近接センサを用いて、磁気コネクタのプランジャが再係合されたかどうかを読み取ることである。これは、磁石からの磁界を読み取るホール効果センサを用いて行うことができる。
【0086】
前述の開示は、少なくとも以下の有利な特徴を提供する。
【0087】
接続は磁気によるものなので、手動のラッチングを必要としない。また、ユーザの単一の動きで、多くのモジュールを取り付けることもできる。また、本設計によって分離機能が形成されるので、独自性がある。これは、過度の力を受けたときにカテーテル/ツール及び/又は患者に対する損傷を防止するので、重要な特徴である。これは、安全要素を追加し、患者を保護するのに役立つ。また、分離が発生した場合、カテーテルを損傷することなく簡単に再係合することができ、通常の操作を再開することができる。また、動作のどの時点でも、接続を切断することができる。
【0088】
本開示の別の利点は、従来技術の文書とは異なり、複数の個別の接続が同時に行われることである。関連する先行技術には、単純な動作で複数の接続を行うことを可能にする特徴は含まれない。本開示の別の利点は、接続が静的ではなく動的であり、接続モジュールに沿った軸方向の動きが可能であることである。また、関連技術における接続の失敗は漏れにつながるが、本開示は、動作の自動再開を可能にする。
【0089】
更に、カテーテルとアクチュエータの間の接続は、磁気的に形成される。接続を形成するために、ラッチング等の追加の動作は必要ない。1回の動作で、複数の独立したアクチュエータ間で接続が成される。これは、ユーザによる挿入とねじりの動きによって完了することができる。次に、コントローラによって係合ルーチンが操作されて、磁気結合が完了する。分離は、かなりの力の下で発生し、安全機構として許容される。アクチュエータの移動のどの位置でも、接続を切断することができる。これにより、電源がオフの状況での切断が可能となる。
【0090】
本開示は、圧縮及び引張の分離並びにその後のそれらの再取付けを可能にするので、関連技術に勝る追加の利点を有する。従来の磁気分離は引張分離のみを可能にするので、引張及び圧縮の分離を提供する能力は、さもないと患者に害を及ぼすおそれのある駆動ワイヤのねじれ及び断裂を防ぐことができるので、安全性の観点から非常に有利である。
【0091】
また、本開示で説明される磁気コネクタは、アクチュエータを、操縦可能器具の本体ではなく、作動機構(腱又は駆動ワイヤ)に直接結合する。このように、磁気コネクタは、腱又は駆動ワイヤを故障から保護する。従来の磁気分離技術は、器具の本体を故障から保護することを目的とするが、駆動ワイヤや腱自体等の作動機構は保護しない。従来の分離技術がロボット操縦可能カテーテルに適用された場合、そのような技術は、カテーテル本体とアクチュエータの間に分離を生じさせるだけであり、操作されている駆動ワイヤとアクチュエータとの間に分離を提供しないので、ねじれを防止することができない。
【0092】
<
図13:例示の使用事例シナリオ>
ロボット医用システム1000の使用事例シナリオによれば、
図13に示されるように、患者20に対する処置中、ディスプレイ420の画面422により、ユーザ10(例えば医師)に、新しいカテーテル100をロボットプラットフォーム600に接続するように促すことができる。この場合、安全上の理由から、ユーザ10はまず、コンピュータ又はコンソール400からの直流(DC)電圧を介した電気信号を用いて、磁気接続ハブ500を消磁することができる。次に、ユーザは、単一の“スライド及びねじり”の動きにより、磁気接続ハブ500を介して、新しいカテーテル100をハンドル200に接続する。接続は、カテーテルの長さ方向に実質的に平行な直線方向のスライド運動と、時計回り(CW)又は反時計回り(CCW)方向のいずれかのねじり運動(回転)とを含んでよい。或いは、接続は線形運動(スライド運動)のみを含んでよく、この場合、カテーテルの近位端は、隆起や溝等の機械的ガイドに沿って直線的に移動して、アクチュエータユニット(モータ)と新しいカテーテルの駆動ワイヤとの間の同軸アライメントを確保する。磁気接続ハブ500に対するカテーテルの直線的係合のみの場合、
図2に示されるのと同じロック機構を用いて、カテーテルを所定の位置にロックすることができる。
【0093】
新しいカテーテル100が接続されると、システム1000は、画面422、キーボード又は他のシステムユーザインタフェース(UI)を介してカテーテル接続を確認するように、ユーザ10に促すことができる。新しいカテーテルの接続がユーザによって確認されると、接続ハブ500の磁気機構がDC電圧を介して磁化され、また、モータ(アクチュエータ)及び駆動ワイヤは、一斉に移動して、カテーテルの曲げ及びナビゲーション動作を制御することができる。手順が完了すると、ユーザは、画面、キーボード又は他のUIを介して、手順が完了したことをシステムに伝えることができる。システム1000はカテーテル100の動作を停止し、また、カテーテル100が取り外される前に、システム1000は、DC電圧を介して磁気接続ハブ500を消磁する。次に、システム画面422は、接続ハブ500からのカテーテルの取外しが安全に完了できることを、ユーザに通知することができる。ここで、留意すべきこととして、磁気接続ハブ500の電圧制御されたアクティブ化及び非アクティブ化は、接続ハブと周囲の医用デバイス及び/又は金属器具との磁気的相互作用を回避するための安全手順として、実施することができる。ただし、磁気ヒューズ510を介して対応するアクチュエータに磁気的に結合された個々の駆動ワイヤの機械的作動は、電圧を必要とせずに成される。
【0094】
説明に言及する際、開示する例を完全に理解できるようするために、具体的な詳細が記載される。他の例では、本開示を不必要に長くしないように、周知の方法、手順、コンポーネント及び回路は、詳細には説明されない。本明細書において別段の定義がされない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する。本発明の広さは、本明細書によって限定されるのではなく、むしろ、採用される特許請求の範囲の用語の平易な意味によってのみ限定される。
【0095】
本明細書に開示される様々な実施形態によれば、ロボット操縦可能医用装置は以下を備える:細長体(100)であって、管状開口(105)と、管状開口(105)を実質的に囲むように細長体の壁に沿って配置された複数のチャネル(104)とを有し、また、操縦可能セクション(103)及び非操縦可能セクション(102)を有する、細長体;各チャネル(104)内に配置されるとともに、細長体(100)の操縦可能セクション(103)を操作するように構成された駆動ワイヤ(110);各チャネル(104)内に配置された駆動ワイヤ(110)に作動力を付加するように構成されたアクチュエータユニット(310);少なくとも1つの磁石を介して、アクチュエータユニット(310)を駆動ワイヤ(110)に磁気的に結合するように構成された磁気コネクタ(510);及び、磁気コネクタ(510)の結合状態を決定し、磁気コネクタの結合状態に従ってアクチュエータユニット(310)を制御するように構成されたコントローラ(320)。
【0096】
磁気コネクタ510は、磁気的に結合された1組のシャフトを有する磁気ヒューズとして機能する。磁気ヒューズは、それぞれシャフトに取り付けられた2つのプランジャ(円筒形ハブの各側に1つ)を有する円筒形ハブ611と、2つの磁気分離ポイントとを備える。磁気ヒューズの2つの分離ポイントは、双方向の分離力のためのヒューズを提供し有する。磁気ヒューズにより、2つのシャフトに加えられた圧縮力の下で分離が発生し、これにより、ワイヤのねじれや断裂を防止することができる。磁気ヒューズにより、2つのシャフトに加えられた引張力の下で分離が発生し、これにより、駆動ワイヤの塑性変形及び/又は破砕を防止することができる。磁気ヒューズは、再結合後に通常の動作に戻るように構成される。磁気ヒューズは、力のフィードバック又は他の同様の技術を利用して、解放を感知し、再係合ルーチンを開始する。
【0097】
図面に示された例示の実施形態を説明する際、分かりやすくするために、具体的な専門用語が使用される。しかしながら、本特許明細書の開示はそのように選択された具体的な専門用語に限定されることを意図するものではなく、当然ながら、具体的な要素の各々は、同様に動作する技術的な均等物を全て含む。
【0098】
本開示は、例示の実施形態を参照して説明されたが、当然のことながら、本開示は、開示された例示の実施形態に限定されない。以下の特許請求の範囲は、そのような変更並びに均等の構造及び機能を全て包含するように、最も広い解釈が与えられるべきである。