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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】電子機器
(51)【国際特許分類】
   G06F 1/16 20060101AFI20230314BHJP
   H05K 5/02 20060101ALI20230314BHJP
   H05K 5/03 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
G06F1/16 312Z
G06F1/16 312E
G06F1/16 312L
H05K5/02 J
H05K5/03 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021198468
(22)【出願日】2021-12-07
【審査請求日】2021-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】505205731
【氏名又は名称】レノボ・シンガポール・プライベート・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 雅人
(72)【発明者】
【氏名】柳澤 恒徳
(72)【発明者】
【氏名】秋山 紗良
【審査官】石川 亮
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-183482(JP,A)
【文献】特開2020-190819(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0040940(US,A1)
【文献】特開2019-56790(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 1/16
H05K 5/02
H05K 5/03
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面にキーボードを備える扁平形状の本体筐体と、
前記本体筐体に対してヒンジによって回動可能に連結された扁平形状のディスプレイ筐体と、
を有する電子機器であって、
前記本体筐体は、
側面の少なくとも一部を構成し金属材の金属側面部と、
内部で少なくとも一部が前記金属側面部に沿って設けられるアンテナと、
前記アンテナの上部に設けられる電波透過性材の電波ウインドと、
を有し、
前記ディスプレイ筐体は、
正面に設けられたディスプレイと、
前記ディスプレイの背面側を覆う背面カバーと、
前記背面カバーの端部から正面に突出して前記ディスプレイの側方を覆っている金属材の側面カバーと、
前記側面カバーの突出端からさらに正面に突出し、前記本体筐体の上面と前記ディスプレイ筐体の正面とを重ね合わせたときに、少なくとも前記金属側面部のうち前記アンテナが沿っているアンテナ側方範囲の上面に当接する電波透過材のベゼルと、
を有する
ことを特徴とする電子機器。
【請求項2】
請求項1に記載の電子機器において、
前記本体筐体の側面の一部を形成し、前記アンテナと接続されているフレームアンテナと、
前記本体筐体の側面で、前記金属側面部と前記フレームアンテナとを仕切る絶縁板と、
を有し、
前記フレームアンテナと前記絶縁板との第1境界、および前記金属側面部と前記絶縁板との第2境界はそれぞれ直線である
ことを特徴とする電子機器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電子機器において、
前記ベゼルは樹脂であり、側面カバーに対してモールド加工によって一体的に形成されている
ことを特徴とする電子機器。
【請求項4】
請求項3に記載の電子機器において、
前記側面カバーの正面側突出端には延在方向に沿った溝が形成されており、
前記ベゼルは一部が前記溝に嵌り込んでいる
ことを特徴とする電子機器。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の電子機器において、
前記金属側面部および前記側面カバーは、前記ベゼルの一部と前記アンテナの一部とを結ぶ直線を避ける位置に配置されている
ことを特徴とする電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上面にキーボードを備える扁平形状の本体筐体と、正面にディスプレイを備えて本体筐体に対してヒンジによって回動可能に連結された扁平形状のディスプレイ筐体とを有する電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
ノートブック型パーソナルコンピュータ(ノート型PC)のような電子機器は、上面にキーボードを備える扁平形状の本体筐体と、該本体筐体に対してヒンジによって回動可能に連結された扁平形状のディスプレイ筐体とを有している。本体筐体にはキーボードやマザーボードなどが設けられ、ディスプレイ筐体の正面にはディスプレイが設けられて背面には背面カバーが設けられている。
【0003】
ディスプレイ筐体におけるディスプレイの周囲にはベゼルが設けられる。ベゼルはディスプレイの表示面よりやや突出している。特許文献1に記載の電子機器ではこのベゼルの突出部がクッション部材で形成されている。このようなクッション部材は本体筐体の上カバーに当接しても該上カバーを傷つけ、または塗膜を剥がすことがない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-56790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような電子機器では本体筐体に通信用のアンテナが設けられることがある。本体筐体の上カバーを電波透過材で形成すると、アンテナの送受信のための電波は上カバーを通過することができて好適である。
【0006】
ノート型PCの用途としてディスプレイ筐体のディスプレイとは別の外部ディスプレイを接続して表示させることがある。この場合、ディスプレイ筐体のディスプレイは必ずしも表示させる必要はないため、本体筐体の上面に対してディスプレイ筐体の正面を重ね合わせて閉じた状態(以下、クローズ状態ともいう。)にしておくこともある。本体筐体における側面およびディスプレイ筐体における背面カバーは金属などの電波遮蔽材で形成されることがある。その場合、ディスプレイ筐体を本体筐体に対して重ね合わせるとアンテナは上方および側方が電波遮蔽材で覆われることになり、電波の送受信が困難になる。
【0007】
一方、特許文献1におけるベゼルのクッション部材が電波透過材であれば、クローズ状態でもその部分から電波の送受信は可能とも考えられる。しかしながら、アンテナと電波透過材のベゼルとの位置関係が適正でなければ、電波はいずれかの電波遮蔽材で遮蔽されてしまい電波の送受信は困難となり、送信電力や受信感度を上げる必要が生じる。
【0008】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、本体筐体の上面に対してディスプレイ筐体の正面を重ね合わせて閉じた状態であってもアンテナの送受信を好適に行うことができる電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の態様に係る電子機器は、上面にキーボードを備える扁平形状の本体筐体と、前記本体筐体に対してヒンジによって回動可能に連結された扁平形状のディスプレイ筐体と、を有する電子機器であって、前記本体筐体は、側面の少なくとも一部を構成し金属材の金属側面部と、内部で少なくとも一部が前記金属側面部に沿って設けられるアンテナと、前記アンテナの上部に設けられる電波透過性材の電波ウインドと、を有し、前記ディスプレイ筐体は、正面に設けられたディスプレイと、前記ディスプレイの背面側を覆う背面カバーと、前記背面カバーの端部から正面に突出して前記ディスプレイの側方を覆っている金属材の側面カバーと、前記側面カバーの突出端からさらに正面に突出し、前記本体筐体の上面と前記ディスプレイ筐体の正面とを重ね合わせたときに、少なくとも前記金属側面部のうち前記アンテナが沿っているアンテナ側方範囲の上面に当接する電波透過材のベゼルと、を有する。これにより、本体筐体の上面に対してディスプレイ筐体の正面を重ね合わせて閉じた状態であってもアンテナの送受信を好適に行うことができる。
【0010】
前記本体筐体の側面の一部を形成し、前記アンテナと接続されているフレームアンテナと、前記本体筐体の側面で、前記金属側面部と前記フレームアンテナとを仕切る絶縁板と、を有し、前記フレームアンテナと前記絶縁板との第1境界、および前記金属側面部と前記絶縁板との第2境界はそれぞれ直線であってもよい。このように第1境界および第2境界を直線とすることにより好適な外観が得られる。
【0011】
前記ベゼルは樹脂であり、側面カバーに対してモールド加工によって一体的に形成されていてもよい。これにより、ベゼルは側面カバーに確実に固定される。
【0012】
前記側面カバーの正面側突出端には延在方向に沿った溝が形成されており、前記ベゼルは一部が前記溝に嵌り込んでいてもよい。これにより、ベゼルは側面カバーに対して一層確実に固定される。
【0013】
前記金属側面部および前記側面カバーは、前記ベゼルの一部と前記アンテナの一部とを結ぶ直線を避ける位置に配置されていてもよい。これにより、アンテナによる送受信性能が一層向上する。
【発明の効果】
【0014】
本発明の上記態様によれば、電波透過性材のベゼルが金属側面部のうちアンテナが沿って設けられているアンテナ側方範囲にあり、しかも側面カバーの突出端からさらに正面に突出していることから、アンテナの送受信にかかる電波は該ベゼルを通過可能であり、本体筐体の上面に対してディスプレイ筐体の正面を重ね合わせて閉じた状態であってもアンテナの送受信を好適に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の実施形態にかかる電子機器の平面図である。
図2図2は、本体筐体の前方部分を拡大した平面図である。
図3図3は、本体筐体の内部構造を模式的に示す底面図である。
図4図4は、電子機器の前方左隅部の拡大斜視図である。
図5図5は、図2におけるV~V線視による断面正面図である。
図6図6は、図2におけるVI~VI線視による断面正面図である。
図7図7は、ベゼルおよびその周辺部の断面正面図である。
図8図8は、変形例にかかるベゼルおよびその周辺部の断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明にかかる電子機器の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0017】
図1は、本発明の実施形態にかかる電子機器10を上から見下ろした図である。電子機器10としてクラムシェル型のノート型PCを例示する。電子機器10は、筐体12,14間が0度姿勢(図4参照)と最大角度姿勢との間で回動可能である。図1の電子機器10は、ヒンジ16によってディスプレイ筐体14を本体筐体12から開いて使用形態として示している。図2は、本体筐体12の前方部分を拡大した平面図である。図2ではパームレストガラス30を省略している。
【0018】
図1に示すように、電子機器10は、キーボード26を有する本体筐体12と、ディスプレイ18を有するディスプレイ18とを備える。ディスプレイ18は、本体筐体12の後端部に対して左右一対のヒンジ16,16を介して回動可能に連結されている。ディスプレイ18は薄型でありその枠体は細い。ディスプレイ18は、例えば液晶ディスプレイである。ヒンジ16は、後側面12eに沿って配置されている。
【0019】
以下、図1に示す使用形態とされた電子機器10のディスプレイ18を正面から視認する方向を基準とし、本体筐体12について手前側を前、奥側を後、厚み方向を上下、幅方向を左右と呼んで説明する。また、本体筐体12やこれに搭載される各部品について、本体筐体12を平面的に見た状態で、外周側よりも中央側を内側、中央側よりも外周側を外側と呼んで説明する。ディスプレイ筐体14については、ディスプレイ18の表示面側を正面、ディスプレイ18の裏側を背面と呼ぶ。なお、これらの方向は説明の便宜上のものである。従って、製品での各部品の配置や設置姿勢等により、例えば上記の上下方向や左右方向が反転することもある。
【0020】
本体筐体12は、扁平な平面視で矩形の箱体である。本体筐体12は、上面12aの大部分を形成する上カバー20と、下面12bを形成する下カバー22とを有する。本体筐体12の左右側面12c、前側面12dおよび後側面12eの大部分は、上カバー20の四周縁部から起立した壁部によって形成されている。上カバー20および下カバー22の大部分は、例えばアルミニウム、マグネシウム等の金属材やカーボン材などの電波遮蔽材で構成されているが、電波ウインド24は樹脂等の電波透過材で構成されている。
【0021】
上面12aの前方左右両端には略L字形状の電波ウインド24,24(図2参照)が設けられている。電波ウインド24は樹脂材で形成されており、電波透過性がある。上面12aのうち後方部分で左右ほぼ全幅に亘ってキーボード26が設けられている。上面12aのうち前方の略中央部にはタッチパッド28が設けられている。上面12aのうちタッチパッド28の両側部分はパームレストガラス30で覆われており、上カバー20と電波ウインド24との境界部は目立たなくなっている。
【0022】
パームレストガラス30によれば好適な外観が得られる。また、パームレストガラス30は電波ウインド24と同様に電波透過性がある。パームレストガラス30が設けられる箇所はガラスに限定されず、電波を透過する他の素材であってもよい。例えば、樹脂やセラミックス、木材や植物の繊維、レザーなどといった生物由来素材などでも良い。また、このような単一の素材だけではなく、樹脂にガラス繊維を添加した樹脂や、樹脂に植物の薄板などを貼り付けたような複合物であっても良い。
【0023】
ディスプレイ筐体14は、本体筐体12よりも薄い扁平な平面視で矩形の箱体である。ディスプレイ18は、ディスプレイ筐体14の正面14aに設けられている。ディスプレイ筐体14は、背面14bを形成する背面カバー34を有する。背面カバー34はディスプレイの背面側を覆っている。ディスプレイ筐体14の前後左右の側面カバー36は、背面カバー34の四周縁部から起立した壁部によって形成されている。つまり、側面カバー36は、背面カバー34の端部から正面に突出してディスプレイ18の側方を覆っている。背面カバー34と側面カバー36は、例えばマグネシウムやアルミニウム等の金属材やカーボン材であり、一体構成となっている。側面カバー36の正面側突出端36a(図7参照)からは、ベゼル38がさらに正面に向かって突出して設けられている。ベゼル38についてはさらに後述する。
【0024】
ディスプレイ18は、正面14aに臨んで映像を表示するディスプレイ部18aと、タッチ操作のためのタッチパネル部18bと、を有する。ディスプレイ部18aは、例えば有機EL(OLED:Organic Light Emitting Diode)や液晶で構成される。タッチパネル部18bは省略されてもよい。
【0025】
図3は、本体筐体12の内部構造を模式的に示す底面図であり、下カバー22を取り外して本体筐体12内を上カバー20の内面側から見た図である。図3に示すように、本体筐体12の内部には、電子回路基板40と、バッテリ42と、左右一対のアンテナ44,44とが収納されている。電子回路基板40は、電子機器10のマザーボードである。電子回路基板40は、例えばCPU40a、電源回路40b、メモリ40c等の各種電子部品が実装されたPCB(プリント基板)である。本体筐体12の内部には、さらに、図示しない冷却モジュール、SSD(Solid State Drive),ハードディスク装置等が収納されている。
【0026】
左右のアンテナ44はそれぞれ薄板の略L字形状であり、左右側面12cに沿った側方部分44aと、前側面12dに沿った前方部分44bとを有する。左右のアンテナ44は薄くしかも隅部に設けられていることから、レイアウト上で他の部品の配置自由度に与える影響が小さい。側方部分44aは、前側面12d近傍からキーボード26の前端までの距離の半分程度まで延在している。前方部分44bは、左右側面12c近傍からタッチパッド28の端部近傍まで延在している。アンテナ44の幅Dは、例えば0.5~2.0cm程度である。
【0027】
図4は、電子機器10の前方左隅部の拡大斜視図である。図4の電子機器10は本体筐体12とディスプレイ筐体14とがクローズ状態となっている。本体筐体12の隅部にはフレームアンテナ46が設けられている。フレームアンテナ46は本体筐体12の左右両端に一対設けられている。フレームアンテナ46は例えばマグネシウムやアルミニウム等の金属材で構成されている。一対のアンテナ44および一対のフレームアンテナ46は、それぞれほぼ左右対称構造となっているため、以下の説明は左側のアンテナ44およびフレームアンテナ46を例にして説明する。
【0028】
フレームアンテナ46は、本体筐体12の隅部に沿った略L字形状であり、左右側面12cの一部を形成する側方部分46aと、前側面12dの一部を形成する前方部分46bとを有する。L字形状であるフレームアンテナ46はアンテナ特性的に有利と考えられている。電子機器10では、フレームアンテナ46と電波ウインド24とが設けられていることにより各種の帯域の通信を行うことができる。
【0029】
フレームアンテナ46における側方部分46aの後方には幅の狭い側方樹脂片(絶縁板)48が隣接して設けられている。側方樹脂片48は左右側面12cの一部を形成している。フレームアンテナ46における前方部分46bの中央寄りには幅の狭い前方樹脂片(絶縁板)50が隣接して設けられている。前方樹脂片50は前側面12dの一部を形成している。側方樹脂片48および前方樹脂片50は電波ウインド24の一部として形成されている。
【0030】
左右側面12cにおける側方樹脂片48の後方は上カバー20と一体の金属側面部52によって形成されている。前側面12dにおける前方樹脂片50よりも中央寄りの部分は上カバー20と一体の金属側面部54によって形成されている。金属側面部52,54は、上カバー20の端部から正面に向かって突出するように形成されている。側方樹脂片48は側方部分46aと金属側面部52とを絶縁している。前方樹脂片50は前方部分46bと金属側面部54とを絶縁している。
【0031】
側方樹脂片48および前方樹脂片50は、それぞれ側方から見て横幅が狭く、やや縦長の矩形となっている。つまり、側方樹脂片48とフレームアンテナ46との境界線(第1境界)48a、および側方樹脂片48と金属側面部52との境界線(第2境界)48bは平行で縦方向の直線となっている。
【0032】
図3に戻り、フレームアンテナ46の前方部分46bの左右方向長さはアンテナ44の前方部分44bとほぼ等しい。一方、側方部分46aの前後方向長さはアンテナ44の側方部分44aよりも短くなっている。このようなフレームアンテナ46の形状は、主に本体筐体12の内部構造に基づいている。つまり、バッテリ42やスピーカなどの部品がある中でうまく配置できる形状にあわせてアンテナ46の形状を設定している。
【0033】
図5は、図2におけるV~V線視による断面正面図である。図6は、図2におけるVI~VI線視による断面正面図である。ただし、図5図6では、図2で省略されているディスプレイ筐体14およびパームレストガラス30も併せて図示している。図5の符号29は脚部である。
【0034】
図5に示すように、アンテナ44は本体筐体12内における比較的高い位置で、電波ウインド24の直下に配置されており、主として電波ウインド24およびパームレストガラス30を介して上方に電波を送信し、上方から電波を受信するのに好適である。パームレストガラス30は粘着テープ56によって上カバー20および電波ウインド24に固定されている。この部分における電波ウインド24の端部24aはL字形状となっており、フレームアンテナ46の側方部分46aに対して当接して支持している。
【0035】
フレームアンテナ46は内側に延在するアーム46c(図2も参照)を有している。アーム46cは2つあり、一方は側方部分46aから左右方向に延在しており、他方は前方部分46bから後方に延在している。アーム46cは電波ウインド24の上面に接して延在している。アーム46cの先端には雌ねじ部46dが設けられている。雌ねじ部46dは、電波ウインド24に形成された孔24bから下方に突出している。雌ねじ部46dは、アンテナ44に形成された取付部44cに対してねじ57によって固定されている。これにより、フレームアンテナ46はアンテナ44の一部として作用して電波の送受信に寄与する。フレームアンテナ46は主として側方に電波を送信し、側方から電波を受信するのに好適である。
【0036】
図6図2に示すように、この部分における電波ウインド24の端部24bは金属側面部52に対して噛合構造となって固定されている。
【0037】
図7は、ベゼル38およびその周辺部の断面正面図である。上記のように、側面カバー36の正面側突出端36aからは、ベゼル38がさらに正面に向かって突出して設けられている。ベゼル38は樹脂材であり電波透過性を有する。
【0038】
側面カバー36は、背面カバー34の底面から高さH1に亘って正面に突出しており、ディスプレイ18の側面を適度な範囲にわたって覆うとおもに、ベゼル38の高さH2が適度な高さだけ確保されている。
【0039】
ベゼル38は、正面側突出端36aの全幅に沿って設けられる固定部38aと、該固定部38aの外周側縁部から正面に向かって突出している突出部38bとを有する。固定部38aと突出部38bとは略L字形状となっている。突出部38bと側面カバー36は外周面が一致している。突出部38bの突出端は円弧形状になっている。
【0040】
側面カバー36の正面側突出端36aには延在方向(図5の紙面に対して垂直に交差する方向)に沿った溝36bが形成されている。溝36bは正面側突出端36aの略中央に形成されている。溝36bは、例えば矩形に形成されている。固定部38aは、溝36bに嵌合している溝嵌合部38cを有する。ベゼル38は側面カバー36に対して一体のモールド成型によって構成されており、ベゼル38と側面カバー36とは強固に固定されている。ベゼル38と正面側突出端36aとは接着などの固定手段で固定されていてもよい。
【0041】
また、ベゼル38と側面カバー36とは、固定部38aと正面側突出端36aとの部分、および溝36bと溝嵌合部38cとの部分にわたって適度に広い面積で固定されており、固定強度が強い。溝36bに溝嵌合部38cが嵌合している形状のため、ベゼル38は左右にずれることがなく、しかも正面側に抜けにくくなっている。そのため、ベゼル38の幅は、正面側突出端36aの幅Wに合わせれば足り、側面カバー36の内周側側面または外周側側面にまで延在させて固定させる必要がなく、狭幅形状となる。
【0042】
固定部38aと突出部38bとは略L字形状となっていることから、L字の窪み部にディスプレイ18の一部を配置させることができる。固定部38aは一定の高さH3が確保されていて、特段の薄肉箇所がないため十分な強度が確保されている。
【0043】
クローズ状態のとき、突出部38bの先端は本体筐体12における上カバー20の上面に当接するようになっている。ベゼル38は樹脂材(クッション材を含む)で構成されており、上カバー20に当接しても該上カバー20を傷つけ、または塗膜を剥がすことがない。突出部38bはディスプレイ18の正面よりもやや突出していて、クローズ状態のとき、ディスプレイ18が上カバー20の上面に当接することがない。
【0044】
ベゼル38は、本実施例では、ディスプレイ18の回りを覆うように、ディスプレイ筐体14における3つの縁(左右縁および上縁)にわたって設けられている。そして、突出部38bが上カバー20の3つの縁に沿って当接するため、局所的に圧力を加えることがない。ディスプレイ筐体14における下縁は、ヒンジ16などの構造物があるためベゼル38とは異なる枠体が設けられているが、設計条件によってはベゼル38および突出部38bをディスプレイ筐体14における四周にわたって設けてもよい。また、設計条件によりベゼル38および突出部38bをディスプレイ筐体14左右縁だけに設けるなどしてもよい。
【0045】
ところで、クローズ状態では、電波ウインド24が金属材の背面カバー34で覆われてしまうことからアンテナ44は上方に対して電波の送受信性能が低下する。
【0046】
そのため、本実施の形態にかかる電子機器10では、電波透過材であるベゼル38が側方に対してのアンテナ44による電波の送受信を補完するようになっている。すなわち、図6に示すように、本体筐体12に収納されているアンテナ44の送受信電波は、電波ウインド24およびアンテナ44を通過し、さらにベゼル38を通って側方に到達し得る。このため、電子機器10ではクローズ状態であっても好適な送受信性能が得られる。特に、金属側面部52および側面カバー36は、ベゼル38の少なくとも一部分とアンテナ44の少なくとも一部分とを結ぶ直線Lを避ける位置に配置されていると、電波が直線的に入射・出射されることになり、送受信性能が向上する。
【0047】
仮に、このようなベゼル38による電波透過の作用がない場合には、アンテナ44の側方部分44aの近傍における金属側面部52の一部を電波透過のために切り欠いて、図4の仮想線で示すような樹脂などの電波透過補助ウインド58を設け、または側方樹脂片48の一部を後方向に延長する延長部60を設けるなどの対策が必要となり、構造が複雑になり、しかもユーザに違和感を与える外観となる。また実用上では、電波透過補助ウインド58は単純な矩形ではなく、金属側面部52に対する係合部を設ける必要もあり一層複雑な形状になり得る。このため、これらの境界線を目立たなくさせるためには塗材などで埋める必要があり、工程数の増加、コストアップ、および塗材の分だけ寸法が大きくなってしまう。
【0048】
これに対して本実施の形態にかかる電子機器10では、上記のとおり、側方樹脂片48は単純な縦の平行直線で仕切られているだけのシンプルな形状とすることが可能になる。すなわち、左右側面12cおよび前側面12dは、側方樹脂片48および前方樹脂片50の部分で縦の平行直線で仕切られているだけのシンプルな構成であり、ユーザに対して特段の違和感を与えることがない。
【0049】
そのため、これらの仕切り線部分は塗材などで埋める必要はない。つまり、左右側面12cおよび前側面12dは塗装が不要であり、本体筐体12は塗膜分だけ左右方向および前後方向の寸法を小さくすることができる。外観上の観点から金属側面部52,54は表面処理(アルマイト処理など)をしてもよい。また、境界線48a,48b(図4参照)は直線であることが好ましいが、必ずしも上下方向の線にする必要はなく、デザイン的観点によってはいずれか一方または両方を傾斜線としてもよい。
【0050】
本体筐体12とディスプレイ筐体14とのクローズ時にアンテナ44の電波送受信を担保・補完するという目的からは、ベゼル38は、少なくとも金属側面部52のうちアンテナ44が沿って設けられているアンテナ側方範囲A(図2参照)の上面に当接する位置に設けられていればよい。
【0051】
なお、アンテナ44にかかる送受信の電波は側方に対して側方樹脂片48を通過し得る。しかし、電子機器10においては側方に対してベゼル38を電波が通過するように構成されていることから、側方樹脂片48は過度に大きい面積にする必要はなく、フレームアンテナ46と金属側面部52とを絶縁するだけの幅があれば足り、左右側面12cがシンプルな外観になって好適である。
【0052】
図8は、変形例にかかるベゼル38Aおよびその周辺部の断面正面図である。ベゼル38Aは、上記のベゼル38の変形例である。ベゼル38Aでは、上記の溝嵌合部38cに相当する突起38Aaが内周側端から背面側に突出している。これに対して、側面カバー36の正面側突出端36aには突起38Aaが嵌り込む凹部36cが形成されている。このようなベゼル38Aは、上記のベゼル38よりも簡易な形状となる。
【0053】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。
【符号の説明】
【0054】
10 電子機器
12 本体筐体
14 ディスプレイ筐体
16 ヒンジ
18 ディスプレイ
24 電波ウインド
26 キーボード
30 パームレストガラス
34 背面カバー
36 側面カバー
36a 正面側突出端
36b 溝
38,38A ベゼル
38a 固定部
38b 突出部
38c 溝嵌合部
44 アンテナ
44a 側方部分
44b 前方部分
46 フレームアンテナ
48 側方樹脂片
50 前方樹脂片
52,54 金属側面部
【要約】
【課題】本体筐体の上面に対してディスプレイ筐体の正面を重ね合わせて閉じた状態であってもアンテナの送受信を好適に行うことのできる電子機器。
【解決手段】本体筐体12は、側面の少なくとも一部を構成する金属側面部52と、内部で少なくとも一部が金属側面部に沿って設けられるアンテナ44と、アンテナ44の上部に設けられる電波ウインド24とを有する。ディスプレイ筐体14は、ディスプレイ18の背面側を覆う背面カバー34と、背面カバー34の端部から正面に突出してディスプレイ18の側方を覆っている金属材の側面カバー36と、側面カバー36の突出端からさらに正面に突出し、少なくとも金属側面部52のうちアンテナ44が沿って設けられている範囲の上面に当接する樹脂材のベゼル38とを有する。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8