(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】ホーニングツールおよびホーニング加工方法
(51)【国際特許分類】
B24B 33/08 20060101AFI20230314BHJP
B24B 33/02 20060101ALI20230314BHJP
B24B 55/02 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
B24B33/08
B24B33/02
B24B55/02 Z
(21)【出願番号】P 2021536658
(86)(22)【出願日】2020-06-22
(86)【国際出願番号】 JP2020024381
(87)【国際公開番号】W WO2021019956
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2021-12-23
(31)【優先権主張番号】P 2019137472
(32)【優先日】2019-07-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390003665
【氏名又は名称】株式会社日進製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100174388
【氏名又は名称】龍竹 史朗
(72)【発明者】
【氏名】大垣 文雄
(72)【発明者】
【氏名】荻 和孝
【審査官】山村 和人
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-187682(JP,A)
【文献】実開昭56-48460(JP,U)
【文献】特開平1-177926(JP,A)
【文献】特開2012-86516(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 33/08
B24B 33/02
B24B 55/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホーニング加工装置の回転主軸の先端部に取り付けられ、ワークの加工孔の内面をホーニング加工するホーニングツールであって、
研削面を有する研削部と、
長尺の筒状の第1部位と、長尺の筒状であり前記第1部位の一端部に連続するとともに前記研削部が挿通される窓部が設けられた第2部位と、長尺の筒状であり前記第1部位の他端部に連続するとともに前記回転主軸の先端部に固定される第3部位と、を有するツール本体と、
長尺の筒状であり、前記ツール本体の前記第1部位に外嵌される外筒と、
棒状であり前記ツール本体の内側に挿通される拡張ロッドと、を備え、
前記ツール本体と前記外筒との少なくとも一方は、前記ツール本体の外壁と前記外筒の内壁との間に形成された隙間に流入される研削液を前記第2部位の外側へ排出する排出部を有し、
前記外筒の外径寸法は、前記第2部位の外径寸法以下である、
ホーニングツール。
【請求項2】
前記排出部は、前記第1部位における前記第2部位側の一端部に形成された第1溝と、前記第2部位の前記第1部位側に形成され前記第1溝と前記窓部とに連通する第2溝と、を有する、
請求項1に記載のホーニングツール。
【請求項3】
前記排出部は、前記外筒の前記第2部位側の一端部に形成された切欠部を有する、
請求項1または2に記載のホーニングツール。
【請求項4】
前記外筒は、前記外筒の内側へ前記研削液を流入させる流入孔を有する、
請求項1から3のいずれか1項に記載のホーニングツール。
【請求項5】
前記ツール本体に着脱自在に装着され、前記外筒の前記第2部位側とは反対側の他端部を保持する保持部材を更に備える、
請求項1から4のいずれか1項に記載のホーニングツール。
【請求項6】
研削面を有する研削部と、長尺の筒状の第1部位と長尺の筒状であり前記第1部位の一端部に連続するとともに前記研削部が挿通される窓部が設けられた第2部位と長尺の筒状であり前記第1部位の他端部に連続するとともにホーニング加工装置の回転主軸の先端部に固定される第3部位とを有するツール本体と、長尺の筒状であり、前記ツール本体の前記第1部位に外嵌される外筒と、棒状であり前記ツール本体の内側に挿通される拡張ロッドと、を備え、前記ツール本体と前記外筒との少なくとも一方は、前記ツール本体の外壁と前記外筒の内壁との間に形成された隙間に流入される研削液を前記第2部位の外側へ排出する排出部を有し、前記外筒の外径寸法が、前記第2部位の外径寸法以下であるホーニングツールを用いたホーニング加工方法であって、
前記排出部から前記研削液が排出され続けている状態で、前記第2部位および前記外筒の前記第1部位側の一端部を、ワークの加工孔の内側に配置し前記加工孔の内壁へ前記研削液を供給する工程を含む、
ホーニング加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホーニングツールおよびホーニング加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
研削加工では、水または研削液を使用して、ワークの加工部分の潤滑性を向上させたり加工部分と刃具との摩擦により発生する熱を冷却したりすることにより、加工精度の向上、研削部の刃具の損耗の抑制等を図るいわゆる湿式加工が多く採用されている。ホーニング加工においてもこの湿式加工が採用されることが多い。但し、ワークの加工孔の内壁を研削加工する場合、加工孔とホーニングツールとの間に生じる隙間が小さいため、この隙間へ研削液を十分に供給することが難しい。
【0003】
これに対して、押圧軸体の内部に研削液供給路が形成されたホーニングツールが提案されている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されたホーニングツールの場合、ホーニングツールの構造が複雑になり、特に、小径の加工孔を加工するためにホーニングツールの外径を小さくする場合、研削液供給路の作り込みが難しくなる。このため、外径の小径化が難しかった。また、ホーニングツールの内部に研削液供給路が形成されている分、ホーニングツール自体の強度が低下してしまう虞がある。
【0006】
本発明は、上記事由に鑑みてなされたものであり、外径を小径化できるとともにホーニングツールの強度低下を回避できるホーニングツールおよびホーニング加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係るホーニングツールは、
ホーニング加工装置の回転主軸の先端部に取り付けられ、ワークの加工孔の内面をホーニング加工するホーニングツールであって、
研削面を有する研削部と、
長尺の筒状の第1部位と、長尺の筒状であり前記第1部位の一端部に連続するとともに前記研削部が挿通される窓部が設けられた第2部位と、長尺の筒状であり前記第1部位の他端部に連続するとともに前記回転主軸の先端部に固定される第3部位と、を有するツール本体と、
長尺の筒状であり、前記ツール本体の前記第1部位に外嵌される外筒と、
棒状であり前記ツール本体の内側に挿通される拡張ロッドと、を備え、
前記ツール本体と前記外筒との少なくとも一方は、前記ツール本体の外壁と前記外筒の内壁との間に形成された隙間に流入される研削液を前記第2部位の外側へ排出する排出部を有し、
前記外筒の外径寸法は、前記第2部位の外径寸法以下である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ツール本体と外筒との少なくとも一方が、ツール本体の外壁と外筒の内壁との間に形成された隙間に流入される研削液をツール本体の第2部位の外側へ排出する排出部を有する。そして、ツール本体の外筒の外径寸法が、第2部位の外径寸法以下である。これにより、ツール本体の外壁と外筒との間に形成される隙間が、研削液をツール本体の第2部位の外側へ供給する研削液供給路として機能するため、外径を小型化することができると共に、ホーニングツールの強度を低下させることなく、加工孔とホーニングツールとの間に生じる隙間に研削液を供給できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態に係るホーニング加工装置の概略図である。
【
図2】実施の形態に係るホーニング加工装置の一部を示す断面図である。
【
図3】実施の形態に係るホーニングツールの斜視図である。
【
図4】実施の形態に係るホーニングツールの分解斜視図である。
【
図5A】実施の形態に係るホーニングツールの一部を示す分解斜視図である。
【
図5B】実施の形態に係るホーニングツールの一部を示す斜視図である。
【
図6】実施の形態に係るホーニングツールの一部を示す側面図である。
【
図7A】実施の形態に係るホーニング加工方法を説明するための模式図であり、ホーニングツールをワークの加工孔の内側へ挿入する前の状態を示す図である。
【
図7B】実施の形態に係るホーニング加工方法を説明するための模式図であり、ホーニングツールをワークの加工孔の内側へ挿入した状態を示す図である。
【
図8A】比較例1に係るホーニング加工装置の一部を示す断面図である。
【
図8B】比較例2に係るホーニング加工装置の一部を示す断面図である。
【
図9A】変形例に係るホーニングツールの一部を示す斜視図である。
【
図9B】変形例に係るホーニングツールの一部を示す側面図である。
【
図10A】変形例に係るホーニングツールの一部を示す斜視図である。
【
図10B】変形例に係るホーニングツールの一部を示す側面図である。
【
図11A】変形例に係るホーニングツールの一部を示す斜視図である。
【
図11B】変形例に係るホーニングツールの一部を示す側面図である。
【
図12A】変形例に係るホーニングツールの一部を示す斜視図である。
【
図12B】変形例に係るホーニングツールの一部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態に係るホーニングツールについて、図面を参照しながら説明する。本実施の形態に係るホーニングツールは、ホーニング加工装置の回転主軸の先端部に取り付けられ、ワークの加工孔の内面をホーニング加工するものである。ホーニングツールは、研削面を有する研削部と、ツール本体と、外筒と、拡張ロッドと、を備える。ツール本体は、長尺の筒状の第1部位と、長尺の筒状であり第1部位の一端部に連続するとともに研削部が挿通される窓部が設けられた第2部位と、長尺の筒状であり第1部位の他端部に連続するとともに回転主軸の先端部に固定される第3部位と、を有する。外筒は、長尺の筒状であり、ツール本体の前記第1部位に外嵌される。拡張ロッドは、棒状でありツール本体の内側に挿通される。そして、ツール本体と外筒との少なくとも一方は、ツール本体の外壁と外筒の内壁との間に形成された隙間に流入される研削液をツール本体の第2部位の外側へ排出する排出部を有する。また、外筒の外径寸法は、前述の第2部位の外径寸法に比べて小さい。
【0011】
図1に示すように、本実施の形態に係るホーニング加工装置100は、ワークWの加工孔Whの内壁Waを加工するものであり、ホーニングツール1と、回転主軸2と、回転駆動部5と、往復駆動部4と、拡張駆動部6と、機体3と、接続部材10と、研削液供給部9と、を備える。
図1では、ワークWが、その加工孔Whの中心軸J10と回転主軸2の中心軸J0とが一致する姿勢で配置されている。回転主軸2は、機体3に支持され中心軸J0周りに回転可能となっている。回転駆動部5は、回転主軸2を回転させる。往復駆動部4は、回転主軸2を鉛直方向に往復移動させる。拡張駆動部6は、後述する拡張ロッド11を介して研削部13を拡張移動させる。機体3は、回転主軸2とともに、回転駆動部5、往復駆動部4および拡張駆動部6を支持する。研削液供給部9は、
図2に示すように、研削液供給路91aを有する。また、接続部材10は、研削液供給部9と後述する保持部材18とを接続するためのものであり、一部に研削液供給部9から供給される研削液を保持部材18へ供給するための研削液供給路10aを有する。そして、研削液供給部9は、研削液供給路91a、10aを通じて、研削液を保持部材18へ供給する。なお、
図2におけるZ軸方向は、後述するツール本体12の筒軸J1方向および拡張ロッド11の中心軸J2方向と一致しているものとする。
【0012】
ホーニングツール1は、
図3に示すように、研削部13と、ツール本体12と、外筒17と、拡張ロッド11と、保持部材18と、を備える。ツール本体12は、その上端部側がアダプタ(図示せず)を介して回転主軸2に装着されている。研削部13は、
図4および
図5Aに示すように、2つの長尺の砥石131と、砥石131が結合された長尺の砥石台132と、を有する。砥石131は、例えば微小なダイヤモンド砥粒、CBN砥粒等が結合材料により結合されたものである。砥石台132は、例えばアルミニウム、鋼等の金属またはエポキシ樹脂、フェノ-ル樹脂等の樹脂材料から形成されている。研削部13は、砥石131の一部でありワークWの加工孔Whの内壁Waに沿った研削面13aと、研削面13aとは反対側に設けられ研削面13aに対して傾斜した砥石台132の一部である第1テーパ面13bと、砥石台132同士が互いに干渉することを防止する窪み部13cと、を有する。
【0013】
ツール本体12は、長尺の筒状の第1部位121と、長尺の筒状であり研削部13が挿通されるスリット状の窓部122aが設けられた第2部位122と、長尺の筒状であり回転主軸2の先端部、即ち、-Z方向側の端部に固定される第3部位123と、を有する。ここで、第1部位121、第2部位122および第3部位123それぞれの筒軸は、ツール本体12全体の筒軸J1に一致している。第2部位122は、第1部位121の-Z方向側の一端部に連続し、第3部位123は、第1部位121の+Z方向側の他端部に連続している。また、第1部位121の外壁には、第1部位121の長手方向に沿って延在する平坦部121aが形成されている。第3部位123の+Z方向側の端部には、ツール本体12に対して拡張ロッド11が回転することを防止するとともに拡張ロッド11のZ軸方向の移動を制限するためのガイドピン201が挿通される貫通孔123aが設けられている。ここで、貫通孔123aは、第3部位123の+Z方向側の端部における第3部位123の筒軸を挟んで対向する2箇所に設けられている。また、拡張ロッド11には、Z軸方向に直交する方向に貫通する規制孔(図示せず)が設けられている。そして、ガイドピン201は、第3部位123の2箇所に設けられた貫通孔123aの一方と拡張ロッド11の規制孔と他方の貫通孔123aとを貫くように設けられている。これにより、拡張ロッド11のZ軸方向の移動範囲をガイドピン201が規制孔内を移動できる範囲に制限する。更に、
図2に示すように、研削部13が、第1テーパ面13bが-Z方向側へ向かうほど筒軸J1に近づく姿勢で第1テーパ面13b側がツール本体12の内側に配置されるように、第2部位122の窓部122aに挿通されている。また、ツール本体12の内側には、拡張ロッド11の+Z方向への移動範囲を規制するための段部12fが設けられていてもよい。
【0014】
第1部位121の-Z方向側の端部には、
図5Aに示すように、細長の溝121cが形成されている。この溝121cは、平坦部121aから第1部位121の-Z方向側の端縁まで延在する第1溝である。また、第2部位122の第1部位121側、即ち、+Z方向側には、溝122cが形成されている。この溝122cは、溝121cと窓部122aとに連通する第2溝である。また、第2部位122の外壁における窓部122aに隣接する部位には、第2部位122の+Z方向側の端縁から-Z方向に向かって延在する溝122dが形成されている。また、第2部位122における-Z方向側の端部は、-Z方向に向かうにつれて縮径している。これにより、ホーニングツール1をワークWの加工孔Whへ挿入する際、ツール本体12の-Z方向側の端部が、ワークWの加工孔Whの内側へ案内され、加工孔Whへ円滑に挿入される。
【0015】
拡張ロッド11は、
図4に示すように、長尺の棒状であり、ツール本体12の内側に挿通される。また、拡張ロッド11は、-Z方向側に向かうほど長手方向に沿った中心軸J2に近づくように傾斜した第2テーパ面11aを有する。拡張ロッド11は、前述の拡張駆動部6に接続され、拡張駆動部6によりZ軸方向に沿って移動される。第2テーパ面11aは、拡張ロッド11の中心軸J2周りに4つ設けられている。また、拡張ロッド11は、ツール本体12の内側に挿通された状態で拡張ロッド11の+Z方向への移動範囲を制限するための移動制限部11cを有してもよい。拡張ロッド11は、ツール本体12の内側において移動制限部11cがツール本体12の段部12fよりも-Z方向側に位置するようにツール本体12内に挿入されている。そして、例えば拡張ロッド11が+Z方向へ移動して移動制限部11cの+Z方向側の端部が段部12fに当接した状態になると、拡張ロッド11の+Z方向への移動が規制される。そして、拡張ロッド11は、
図2に示すように、第2テーパ面11aが研削部13の第1テーパ面13bに面接触するようにツール本体12の内側に挿通されている。ここで、拡張ロッド11が-Z方向へ移動すると、研削部13が外側へ押し出される。一方、拡張ロッド11が+Z方向へ移動すると、第1テーパ面13bと第2テーパ面11aとが例えば潤滑油を介在した状態で面接触していることに起因して、研削部13がツール本体12の内側へ引き戻される。本実施の形態では、第2テーパ面11aが中心軸J2周りの周方向において等間隔に設けた例について説明するが、これに限らず、第2テーパ面11aが等間隔でなくてもよい。
【0016】
外筒17は、
図3および
図4に示すように、長尺の円筒状であり、ツール本体12の第1部位121に外嵌される。そして、
図2に示すように、ツール本体12の外壁の平坦部121aと外筒17の内壁との間には、研削液供給部9から研削液が流入する隙間S1が形成されている。ここで、ツール本体12の平坦部121aと外筒17の内壁との間の隙間S1に流入した研削液は、溝121cを通じて溝122cへ流入する。そして、溝122cに流入した研削液は、
図5Bの矢印AR11に示すように、ツール本体12の第2部位122の外側へ排出される。即ち、溝121c、122cは、それぞれ、ツール本体12の平坦部121aと外筒17との間の隙間S1に流入した研削液をツール本体12の第2部位122の外側へ排出する排出部を構成している。
【0017】
また、外筒17は、
図4に示すように、外筒17の内側へ研削液を流入させる平面視円形の流入孔17bを有する。更に、外筒17は、外筒17のツール本体12の第2部位122側、即ち、-Z方向側の一端部に形成された切欠部17aを有する。そして、この切欠部17aが、
図5Bの矢印AR12に示すように、ツール本体12と外筒17との間の隙間に流入した研削液を第2部位122以外の領域へ排出する排出部を構成する。なお、切欠部17aから排出される研削液の一部は、ツール本体12の第2部位122の外壁に形成された溝122dを通じて第2部位122の外側へも供給される。また、
図6に示すように、ツール本体12の筒軸J1方向から見たときに、外筒17の外径寸法、即ち、外筒17の直径D2は、第2部位122の外径寸法、即ち、第2部位122の直径D1に比べて小さい。
【0018】
保持部材18は、ツール本体12に着脱自在に装着され、外筒17の第2部位122側とは反対側、即ち、+Z方向側の他端部を保持する。保持部材18は、
図3および
図4に示すように、円筒状であり、筒軸方向における中央部の外壁に凹部18cが形成されている。また、保持部材18の凹部18cの底部から保持部材18の内側まで貫通する複数の貫通孔18aが貫設されている。また、
図2に示すように、保持部材18の内壁には、複数の貫通孔18a全てに連通し貫通孔18aから流出する研削液を受けるための環状の受け溝18fが形成されている。更に、保持部材18の+Z方向側の端部には、保持部材18をツール本体12に固定するための螺子202が螺着される螺子孔18bが設けられている。螺子202の先端部は、窪み121bに嵌入されている。そして、保持部材18は、ツール本体12および外筒17の径方向において外筒17の流入孔17bと保持部材18の内側に形成された受け溝18fとが互いに重なる姿勢で、螺子202によりツール本体12に固定されている。また、保持部材18の内側には、外筒17の+Z方向側の端部が嵌入される段部18dが設けられている。そして、研削液供給部9は、矢印AR1に示すように、研削液供給路91aから保持部材18の貫通孔18aおよび外筒17の流入孔17bを通じて、ツール本体12の外壁と外筒17の内壁との間の隙間S1へ研削液を流入させる。
【0019】
次に、本実施の形態に係るホーニングツール1を使用したホーニング加工方法について、
図5B、
図7Aおよび
図7Bを参照しながら説明する。まず、
図5Bの矢印AR11、AR12に示すように、ツール本体12の第2部位122の溝122cおよび外筒17の切欠部17aから研削液を排出し続けながら、
図7Aに示すように、ホーニングツール1を、ワークWの加工孔Whに近づける工程を行う。なお、
図7Aおよび
図7Bでは、溝122cおよび切欠部17aの図示を省略している。次に、
図7Bに示すように、第2部位122の溝122cおよび外筒17の切欠部17aから研削液が排出され続けている状態で、ツール本体12の第2部位122および外筒17の-Z方向側の一端部を、ワークWの加工孔Whの内側に配置し、加工孔Whの内壁Waへ研削液を供給する工程を行う。この工程で、第2部位122をワークWの加工孔Whの中心軸方向へ往復移動させることにより、ワークWの加工孔Whの内壁Wa全体に研削液を十分に供給することができる。
【0020】
次に、本実施の形態に係るホーニングツール1の特徴について、比較例1、2と比較しながら説明する。
図8Aに示すように、比較例1に係るホーニングツール8001は、研削部13と、ツール本体8012と、拡張ロッド8011と、ツール本体8012をその長手方向に沿った中心軸周りに回転自在に支持する支持部材8018と、を備える。支持部材8018は、研削液供給部8009の研削液供給路8091aに連通する流入孔8012aと、流入孔8012aから流入する研削液を研削部13側へ排出する排出路8012bと、を有する。そして、矢印AR81に示すように研削液供給部8009の研削液供給路8091aから流入孔8018aを通じて排出路8018bに流入した研削液は、矢印AR82に示すように、支持部材8018からワークWに向かって排出される。この比較例1に係るホーニングツール8001は、それを長手方向に沿った中心軸周りに回転させて使用する場合、遠心力により研削液が飛散してしまい、研削液をワークWの加工孔Whに十分に到達させることができない虞がある。
【0021】
また、
図8Bに示すように、比較例2に係るホーニングツール9001は、研削部13と、ツール本体9012と、拡張ロッド9011と、ツール本体9012を長手方向に沿った中心軸周りに回転自在に支持する支持部材9018と、を備える。そして、ツール本体9012には、研削液供給部9009の研削液供給路9091aに連通する流入孔9012aが設けられている。そして、矢印AR91に示すように研削液供給部9009の研削液供給路9091aから流入孔9012aを通じて排出路8012bに流入した研削液は、矢印AR92に示すように、ツール本体9012の内側を通って研削部13の研削面側とは反対側の領域へ排出される。この比較例2に係るホーニングツール9001では、研削液を研削部13近傍まで飛散することなく供給することができる。しかしながら、研削液が研削部13の研削面側とは反対側の領域へ供給されるため、矢印AR93に示すように、研削液の供給圧力により研削部13に対してツール本体9012の径方向へ力が作用する。従って、ツール本体9012に研削部13がツール本体9012から離脱しないようにツール本体12の外側から研削部13を押さえる構造を設ける必要があり、ツール本体9012の小径化が難しくなる虞がある。
【0022】
これに対して、本実施の形態に係るホーニングツール1では、
図2に示すように、研削液を、ツール本体12の溝122cを通じて第2部位122の外側へ供給する。これにより、研削部13に対してツール本体12の径方向への力が作用することが抑制されているので、ツール本体12の小径化を図ることができる。
【0023】
以上説明したように、本実施の形態に係るホーニングツール1では、ツール本体12が、ツール本体12の平坦部121aと外筒17の内壁との間に形成された隙間S1に流入される研削液をツール本体12の第2部位122の外側へ排出する溝122cを有する。そして、ツール本体12の筒軸J1方向から見たときに、外筒17の直径D2が、第2部位122の直径D1に比べて小さい。これにより、ツール本体12の外壁と外筒17との間に形成される隙間S1が、研削液をツール本体12の第2部位122の外側へ供給する研削液供給路として機能するため、ホーニングツール1の外径を小型化することができると共に、ホーニングツール1の強度を低下させることなく、加工孔Whとホーニングツール1との間に生じる隙間に研削液を供給できる。
【0024】
また、本実施の形態に係るホーニングツール1によれば、ツール本体12の溝122cから研削液が排出され続けている状態で、ツール本体12の第2部位122および外筒17の-Z方向側の一端部を、ワークWの加工孔Whの内側に配置して加工孔Whの内壁Waへ研削液を供給することができる。従って、ワークWの加工孔Whの内側へ十分な量の研削液を供給できる。また、ツール本体12の第2部位122をワークWの加工孔Whに対向する位置全体に配置することができるので、研削部13を加工孔Whの中心軸方向における全体に当接させることができる。従って、加工孔Whの加工精度を高めることができる。
【0025】
更に、また、本実施の形態に係るホーニングツール1は、ツール本体12の第2部位122における-Z方向側の一端部に形成された溝121cを有し、溝122cは、第2部位122の+Z方向側に形成され、溝121cと第2部位122の窓部122aとに連通している。これにより、ツール本体12の平坦部121aと外筒17の内壁との間の隙間S1に流入した研削液を、溝122cを通じて、溝122cへ効率良く供給することができる。従って、ワークWの加工孔Whの内側へ十分な量の研削液を供給し易くなるという利点がある。
【0026】
また、本実施の形態に係る外筒17は、その-Z方向側の一端部に形成された切欠部17aを有する。これにより、
図3のように砥石131が摩耗して突出し、溝122cを閉塞した場合であっても、ツール本体12の平坦部121aと外筒17の内壁との間の隙間S1に流入した研削液を、ツール本体12の第2部位122の外側以外の領域へ供給することができる。従って、研削液を、ワークWの加工孔Whの内壁Waへ効率良く供給できるという利点がある。
【0027】
更に、本実施の形態に係る外筒17は、外筒17の内側へ研削液を流入させる流入孔17bを有する。これにより、研削液をツール本体12の平坦部121aと外筒17の内壁との間の隙間S1へ効率良く流入させることができるので、ツール本体12の溝122cまたは外筒17の切欠部17aから十分な量の研削液を排出させることができる。
【0028】
また、本実施の形態に係るホーニングツール1は、ツール本体12に着脱自在に装着され、外筒17の+Z方向側の端部を保持する保持部材18を備える。これにより、保持部材18をツール本体12から外すだけで、外筒17をツール本体12から離脱させることができるので、外筒17の交換が容易になるという利点がある。
【0029】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は前述の実施の形態の構成に限定されるものではない。例えば、
図9Aおよび
図9Bに示すように、研削部2013が、1つの長尺の砥石131と、砥石131が結合された長尺の砥石台132と、を有するものであってもよい。なお、
図9Aおよび
図9Bにおいて、実施の形態に係るホーニングツール1と同様の構成については
図5Bおよび
図6と同一の符号を付している。この場合、
図9Aの矢印AR21に示すように、溝122cから窓部122aへ排出される研削液が、窓部122aの内側におけるツール本体12の筒軸J1に直交する方向で隣り合う領域へ効率良く供給される。本構成によれば、砥石131の近傍全体に亘って十分な量の研削液を供給することができる。
【0030】
実施の形態では、ツール本体12の第2部位122が溝122cを有する例について説明した。但し、第2部位122の形状はこれに限定されない。例えば
図10Aおよび
図10Bに示すようなツール本体3012と外筒3017とを備えるホーニングツール3001であってもよい。なお、
図10Aおよび
図10Bにおいて、実施の形態に係るホーニングツール1と同様の構成については
図5Bおよび
図6と同一の符号を付している。ここで、第2部位3122の外壁には、その+Z方向側の端縁から-Z方向に向かって延在する溝3122dが形成されている。そして、溝3122d内における-Z方向側の端部には、第2部位3122の+Z方向側の端縁から溝3122dに沿って延在するスリット3122cが形成されている。また、外筒3017は、その-Z方向側の端部から-Z方向側へ延出する延出片3017aを有する。ここで、外筒3017は、その延出片3017aが第2部位3122のスリット3122cの一部を覆うように配置されている。また、第2部位3122における-Z方向側の端部は、-Z方向に向かうにつれて縮径している。そして、
図10Aの矢印AR31に示すように、ツール本体3012の外壁と外筒3017の内壁との間の隙間から第2部位3122の内側へ排出された研削液が、スリット3122cと延出片3017aとの間の隙間から溝3122dへ流出する。なお、
図10Bに示すように、ツール本体3012の筒軸J1方向から見たときに、外筒3017の直径D2は、ツール本体3012の第2部位3122の直径D1よりも小さい。
【0031】
或いは、例えば
図11Aおよび
図11Bに示すようなツール本体4012と外筒4017とを備えるホーニングツール4001であってもよい。なお、
図11Aおよび
図11Bにおいて、実施の形態に係るホーニングツール1と同様の構成については、
図5Bおよび
図6と同一の符号を付している。ここで、第2部位4122の外壁における窓部4122aに隣接する部位には、第2部位4122の+Z方向側の端縁から-Z方向に向かって延在する溝122dが形成されている。また、第2部位4122の外壁における窓部4122aと溝122dとの間には、ツール本体4012の筒軸J1方向に沿って切り欠かれた凹部4122eが形成されている。また、第2部位4122における-Z方向側の端部は、-Z方向に向かうにつれて縮径している。
図11Aの矢印AR41に示すように、ツール本体4012の外壁と外筒4017の内壁との間の隙間に流入した研削液が、第2部位4122の溝122dと外筒4017との間の隙間から溝122d内へ排出される。そして、第2部位4122の溝122dへ排出された研削液は、矢印AR42に示すように、凹部4122eを通じて窓部4122a側へ流出する。なお、
図11Bに示すように、ツール本体4012の筒軸J1方向から見たときに、外筒4017の直径D2は、ツール本体4012の第2部位4122の直径D1よりも小さい。
【0032】
また、例えば
図12Aおよび
図12Bに示すようなツール本体5012と外筒4017とを備えるホーニングツール5001であってもよい。なお、
図10Aおよび
図10Bにおいて、実施の形態に係るホーニングツール1と同様の構成については、
図5Bおよび
図6と同一の符号を付している。また、
図12Aおよび
図12Bにおいて、前述の
図10Aおよび
図10Bを用いて説明したホーニングツール4001と同様の構成については、
図11Aおよび
図11Bと同一の符号を付している。ここで、第2部位4122の外壁における窓部4122aに隣接する部位には、第2部位5122の長手方向に沿って3つの貫通孔5122fが貫設されている。また、第2部位5122における-Z方向側の端部は、-Z方向に向かうにつれて縮径しており、外壁に4つの溝5122gが形成されていてもよい。そして、
図12Aの矢印AR51に示すように、ツール本体4012の外壁と外筒4017の内壁との間の隙間から第2部位5122の内側へ流入した研削液が、第2部位5122に貫設された貫通孔5122fを通じて第2部位5122の外側へ排出される。なお、
図12Bに示すように、ツール本体5012の筒軸J1方向から見たときに、外筒4017の直径D2は、ツール本体5012の第2部位4122の直径D1よりも小さい。
【0033】
これらの構成によれば、砥石131の近傍全体に亘って十分な量の研削液を供給することができる。
【0034】
実施の形態では、拡張ロッド11が、長尺の棒状であり、先端側、即ち、-Z方向側に向かうほど長手方向に沿った中心軸J2に近づくように傾斜した第2テーパ面11aを有する例について説明した。但し、拡張ロッドの形状はこれに限定されない。例えば、拡張ロッドが、長尺の棒状であり、基端側、即ち、+Z方向側に向かうほど長手方向に沿った中心軸J2に近づくように傾斜した第2テーパ面を有するものであってもよい。
【0035】
以上、本発明の実施の形態および変形例について説明したが、本発明はこれらに限定されるものではない。本発明は、実施の形態および変形例が適宜組み合わされたもの、それに適宜変更が加えられたものを含む。
【0036】
本出願は、2019年7月26日に出願された日本国特許出願特願2019-137472号に基づく。本明細書中に日本国特許出願特願2019-137472号の明細書、特許請求の範囲および図面全体を参照として取り込むものとする。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、加工孔が比較的小径のワークについてホーニング加工を実施するホーニング加工装置に装着されるホーニングツールとして好適である。
【符号の説明】
【0038】
1,2001,3001,4001,5001:ホーニングツール、2:回転主軸、3:機体、4:往復駆動部、5:回転駆動部、6:拡張駆動部、9:研削液供給部、10:接続部材、10a,91a:研削液供給路、11:拡張ロッド、11a:第2テーパ面、11c:移動規制部、12,3012,4012,5012:ツール本体、12f,18d:段部、13,2013:研削部、13a:研削面、13b:第1テーパ面、13c:窪み部、17,3017,4017:外筒、17a:切欠部、17b:流入孔、18:保持部材、18a,123a,5122f:貫通孔、18b:螺子孔、18c,4122e:凹部、18f:受け溝、100:ホーニング加工装置、121:第1部位、121a:平坦部、121b:窪み、121c,122c,122d,3122d,5122g:溝、122,3122,4122,5122:第2部位、122a,4122a:窓部、123:第3部位、131:砥石、132:砥石台、201:ガイドピン、202:螺子、3017a:延出片、3122c:スリット、J1:筒軸、J0,J2,J10:中心軸、S1:隙間、W:ワーク、Wa:内壁、Wh:加工孔