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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】運転支援システム及び通信装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/09 20060101AFI20230314BHJP
   G08G 1/097 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
G08G1/09 F
G08G1/09 D
G08G1/097 A
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022066858
(22)【出願日】2022-04-14
(62)【分割の表示】P 2016252745の分割
【原出願日】2016-12-27
(65)【公開番号】P2022087274
(43)【公開日】2022-06-09
【審査請求日】2022-04-14
(73)【特許権者】
【識別番号】390010054
【氏名又は名称】コイト電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 悟
(72)【発明者】
【氏名】肥田 祐一
(72)【発明者】
【氏名】金子 英起
【審査官】久保田 創
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0187701(US,A1)
【文献】特開2008-027024(JP,A)
【文献】特開平05-325094(JP,A)
【文献】特開2009-252066(JP,A)
【文献】特開2016-035783(JP,A)
【文献】特開2012-168716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/09
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交通管制センターに接続されていない、系統制御方式あるいは単独制御方式の信号機であって、対象とする少なくとも1つの信号機と、
前記信号機の制御設定情報を記憶する記憶部と、前記信号機に関する信号情報を運転支援情報として送信することが可能な通信部と、前記信号機の異常の有無を判定し、前記異常が無いときは前記信号情報を前記運転支援情報として継続的に送信するための第1の制御信号を生成し、前記異常が有ったときは前記信号情報に代わる代替情報を前記運転支援情報として送信するための第2の制御信号を生成する信号生成部と、を有する第1の通信装置と
を具備する運転支援システムであって、
前記信号機は、車両の走行方向に沿って配置された複数の信号機を含み、
前記記憶部は、前記複数の信号機の制御設定情報をそれぞれ記憶し、
前記第1の通信装置は、前記複数の信号機よりも前記車両の進行方向上流側に設置され、前記複数の信号機に関する信号情報を前記運転支援情報として継続的に送信し、前記複数の信号機の少なくとも1つの異常を判定したときは当該異常に係る信号機に関する信号情報に代わる代替情報を前記運転支援情報として送信する
運転支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の運転支援システムであって、
前記複数の信号機は、前記複数の信号機各々の制御状態を表す状態通知を前記第1の通信装置へ送信する送信部を有し、
前記信号生成部は、前記状態通知に基づいて前記複数の信号機各々について異常の有無を判定する
運転支援システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の運転支援システムであって、
前記第1の通信装置は、前記代替情報として、前記異常に係る信号機に関する信号情報の提供サービスを停止することを報知する情報を送信する
運転支援システム。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1つに記載の運転支援システムであって、
前記信号機を通過した車両から車両情報を受信し、受信した前記車両情報を前記第1の通信装置へ送信する第2の通信装置をさらに具備し、
前記第1の通信装置は、前記第2の通信装置から送信された前記車両情報を前記記憶部に記憶する
運転支援システム。
【請求項5】
交通管制センターに接続されていない、系統制御方式あるいは単独制御方式の信号機の制御設定情報を記憶する記憶部と、
前記信号機に関する信号情報を運転支援情報として送信することが可能なビーコンと、
前記信号機の異常の有無を判定し、前記異常が無いときは前記信号情報を前記運転支援情報として継続的に送信するための第1の制御信号を生成し、前記異常が有ったときは前記信号情報に代わる代替情報を前記運転支援情報として送信するための第2の制御信号を生成する信号生成部と、を有する第1の通信装置と
を具備する通信装置であって、
前記信号機は、車両の走行方向に沿って配置された複数の信号機を含み、
前記記憶部は、前記複数の信号機の制御設定情報をそれぞれ記憶し、
前記第1の通信装置は、前記複数の信号機よりも前記車両の進行方向上流側に設置され、前記複数の信号機に関する信号情報を前記運転支援情報として継続的に送信し、前記複数の信号機の少なくとも1つの異常を判定したときは当該異常に係る信号機に関する信号情報に代わる代替情報を前記運転支援情報として送信する
通信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非管制エリアの信号機を対象とした運転支援システム及び通信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、プローブデータを利用して安全運転支援やエコドライブ支援に役立つ交通パラメータを提供する運転支援システムの開発が進められている(例えば特許文献1参照)。運転支援システムは、光ビーコンから取得した信号情報と自車の位置や速度の情報を用いて、車載器が交通状況や運転シーンに応じた適正な速度や情報の提供を行う。
【0003】
信号機の制御には、管制センターに接続された管制エリア内の複数の信号機を交通量等に応じて算出された信号情報を用いて可変的に制御する集中制御方式と、管制センターに接続されていない管制エリア外(非管制エリア内)の信号機を予め登録された信号情報で固定的に制御する非集中制御方式とに区分される。非集中制御方式はさらに、特定路線の複数の信号機が相互に連携した系統制御方式と、それ以外の単独制御方式とに区分される。
【0004】
集中制御方式での運転支援システムにおいて、管制センターは、各信号機の実行情報(路線信号制御実行情報)を収集し、収集した実行情報に基づいて信号機の信号情報を算出する。管制センターは、予め設定してある各信号機の位置情報と算出された信号情報とにより路線信号情報を作成し、作成した路線信号情報を光ビーコンに定周期(例えば1分)で登録する。管制センターは、光ビーコンから収集したプローブ情報を基に、管制エリア内の交通状況(渋滞の有無など)を判定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第4858380号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、都心部等の管制エリアを中心に運転支援システムの普及が進められているが、非管制エリアの信号機にも同様な信号情報の提供サービスが望まれる。しかしながら、非管制エリアの信号機を対象とした運転支援システムを構築する場合、管理センターが介在しないため、一部の信号機に生じた異常を把握することができない。その結果、適切な信号情報を提供することができないという問題がある。
【0007】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、非管制エリアの信号機を対象とした適切な信号情報の提供を可能とする運転支援システム及び通信装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る運転支援システムは、対象とする少なくとも1つの信号機と、第1の通信装置とを具備する。
上記第1の通信装置は、記憶部と、通信部と、信号生成部とを有する。上記記憶部は、上記信号機の制御設定情報を記憶する。上記通信部は、上記信号機に関する信号情報を運転支援情報として送信することが可能に構成される。上記信号生成部は、上記信号機の異常の有無を判定し、上記異常が無いときは上記信号情報を上記運転支援情報として継続的に送信するための第1の制御信号を生成し、上記異常が有ったときは上記信号情報に代わる代替情報を上記運転支援情報として送信するための第2の制御信号を生成する。
【0009】
上記運転支援システムにおいて、第1の通信装置は、対象とする信号機の異常の有無を判定し、異常が無いときは上記信号機に関する信号情報を運転支援情報として通信部を介して継続的に送信し、異常が有ったときは上記信号情報に代わる代替情報を上記運転支援情報として通信部を介して送信する。これにより、非管制エリアの信号機を対象とした適切な信号情報の提供が可能となる。
【0010】
上記信号機は、車両の走行方向に沿って配置された複数の信号機を含んでもよい。この場合、上記記憶部は、上記複数の信号機の制御設定情報をそれぞれ記憶する。上記第1の通信装置は、上記複数の信号機に関する信号情報を上記運転支援情報として継続的に送信し、上記複数の信号機の少なくとも1つの異常を判定したときは当該異常に係る信号機に関する信号情報に代わる代替情報を上記運転支援情報として送信する。
これにより、いずれかの信号機に異常が生じた場合において、異常の無い信号機については当該信号機の信号情報が運転支援情報として継続的に送信され、異常が有る信号機については信号情報に代わる代替情報が運転支援情報として送信される。
【0011】
上記複数の信号機は、上記複数の信号機各々の制御状態を表す状態通知を上記第1の通信装置へ送信する送信部を有してもよい。この場合、上記信号生成部は、上記状態通知に基づいて上記複数の信号機各々について異常の有無を判定する。
【0012】
上記第1の通信装置は、上記代替情報として、上記異常に係る信号機に関する信号情報の提供サービスを停止することを報知する情報を送信するように構成されてもよい。
【0013】
上記運転支援システムは、第2の通信装置をさらに具備してもよい。上記第2の通信装置は、上記信号機を通過した車両から車両情報を受信し、受信した上記車両情報を上記第1の通信装置へ送信する。この場合、上記第1の通信装置は、上記第2の通信装置から送信された上記車両情報を上記記憶部に記憶する。
記憶部に記憶された車両情報は、対象とする信号機が設置された路線の交通状況の分析等に用いることが可能となる。
【0014】
本発明の一形態に係る通信装置は、記憶部と、ビーコンと、信号生成部とを具備する。
上記記憶部は、対象とする信号機の制御設定情報を記憶する。
上記ビーコンは、上記信号機に関する信号情報を運転支援情報として送信することが可能に構成される。
上記信号生成部は、上記信号機の異常の有無を判定し、上記異常が無いときは上記信号情報を上記運転支援情報として継続的に送信するための第1の制御信号を生成し、上記異常が有ったときは上記信号情報に代わる代替情報を上記運転支援情報として送信するための第2の制御信号を生成する。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、非管制エリアの信号機を対象とした適切な信号情報の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の第1の実施形態における運転支援システムの構成を示す概略図である。
図2】上記運転支援システムを構成する信号機の構成を示すブロック図である。
図3】上記運転支援システムを構成する通信装置の構成を示すブロック図である。
図4】上記通信装置の処理手順の一例を示すフローチャートである。
図5】本発明の第2の実施形態に係る運転支援システムの構成を示す概略図である。
図6】上記運転支援システムを用いたプローブ情報の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0018】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の一実施形態における運転支援システムの構成を示す概略図である。
【0019】
[全体構成]
本実施形態の運転支援システム100は、信号機10(11~13)と、通信装置21(第1の通信装置)とを備える。
運転支援システム100は、交通管制センターに接続されていない非管制エリアにおける所定路線の信号情報(路線信号情報)を、当該路線を走行する車両5(ドライバ)へ提供するサービスを実行する。以下、その詳細について説明する。
【0020】
[信号機]
本実施形態の運転支援システム100では、図1において東西方向に延びる路線R10上の複数の交差点にそれぞれ設置された複数の信号機10(11,12,13)が対象とされる。本実施形態の運転支援システム100は、路線R10を走行する車両(ドライバ)に対して信号機10(11~13)に関する信号情報を含む運転支援情報が提供される。
【0021】
図1に示すように、信号機11~13は、路線R10と路線R11~13との交差点にそれぞれ設置される。これら信号機11~13は、交通管制センターに接続されていない、系統制御方式あるいは単独制御方式の信号機として構成される。信号機11~13の少なくとも1つは交差点以外の場所(例えば、歩行者用の横断路等)に設置されてもよい。
【0022】
なお、ここでは、路線R10を西(W)から東(E)へ向かって走行する車両5のための信号機のみを示し、他の信号機(反対路線や路線R11~R13の信号機)の図示は省略するが、これら他の信号機についても同様な運転支援システムが構築可能である。
【0023】
信号機10(11~13)の数は図示する3基に限られず、1基、2基、あるいは4基以上であってもよい。信号機10間の平均距離(信号機11~13の設置間隔)も特に限定されず、例えば150メートル~300メートルとされる。
【0024】
信号機10(11~13)は、基本的には同一の構成を有し、典型的には、3色灯(赤、黄、青)の交通信号灯で構成される。信号機10(11~13)には図示しない右折信号(矢印信号)が付加されていてもよい。後述するように、各信号機11~13は相互に無線により通信可能に構成されるとともに、通信装置21とも無線により通信可能に構成される。
【0025】
図2は、信号機10の構成を示すブロック図である。
【0026】
図2に示すように、信号機10は、信号灯器101と、信号灯器101を点灯制御する制御部102と、信号機10に関する制御情報を記憶するメモリ103と、信号機10間で後述する状態通知を送受信する近距離通信部104と、GPS(Global Positioning System)モジュール105とを有する。
【0027】
制御部102は、メモリ103に格納された制御設定情報に基づいて、GPSモジュール105で取得された時刻情報に同期して、信号灯器101の点灯やその切り替えを制御する。制御設定情報とは、典型的には、当該信号機10の定数(以下、信号機定数ともいう)をいう。信号機定数には、階梯表、サイクル、スプリット、オフセット、時限表、感応秒数などが含まれる。メモリ103にはさらに、制御部102に所定の動作を実行させる制御プログラムや制御パラメータ等が格納される。なお、GPSモジュール105に代えて、電波時計等が採用されてもよい。
【0028】
一方、各信号機10の制御部102は、信号灯器101の点灯制御が上記制御設定情報に基づいて適正に実行されているかどうかを判断し、その判断結果(制御状態)を表す状態通知を生成する。制御部102は、近距離通信部104を制御して、生成した状態通知を通信装置21へ送信する。通信装置21は、後述するように、これら状態通知に基づいて信号機10(11~13)についての異常の有無を判定する。
【0029】
ここで、信号機10についての異常とは、典型的には、故障等による動作異常あるいは動作不良が挙げられる。また、停電による信号機10そのものの動作不能も含まれる。この場合、制御部102による異常通知の生成も不能になるため、後述するように異常通知の受信不良を理由として通信装置21で当該信号機10の異常が判定される。
【0030】
また、ある信号機の定数が、例えば夜間等、特定の時間帯で閃光動作(赤点滅又は黄点滅)を実行するように設定されている場合において、当該時間帯は適切な運転支援サービスが困難になるため、当該信号機については異常と判定されてもよい。なおこれに限られず、当該時間帯においては当該信号機が閃光動作中であることを表す信号情報が路線信号情報として含まれてもよい。
【0031】
さらに、例えば信号機10の少なくとも1つに押しボタン式等の歩行者横断用信号灯が併設されている場合において、当該信号灯の作動によって当該信号機10の動作に変更が生じたときにも「異常」を示す状態通知が生成、送信されてもよい。
【0032】
各信号機10は、各々の状態通知を通信装置21へ直接送信するように構成されてもよいし、他の信号機10を経由して通信装置21へ送信するように構成されてもよい。この場合、近距離通信部104は、状態通知を通信装置21へ送信する送信部として機能する他、他の信号機10から状態通知を受信する受信部として機能する。
【0033】
例えば、信号機11は自身の状態通知を通信装置21へ直接送信するが、信号機12は信号機11を経由して自身の状態通知を通信装置21へ送信し、信号機13は信号機12,11を経由して自身の状態通知を通信装置21へ送信する。この場合、例えば信号機11は、自身の状態通知とともに他の信号機12,13の状態通知をも通信装置21へ送信することになる。これにより、各信号機10の通信距離が短くなり、近距離通信部104を低コストに構成することができる。
【0034】
[通信装置]
通信装置21は、信号機10(11~13)が設置される路線R10の路側又は路上であって、最上流に位置する信号機11の上流側に設置される。通信装置21は、主として、路線R10を西方向から東方向へ(図1において左方から右方へ)走行する車両5に各信号機11~13に関する信号情報を含む運転支援情報を送信する。
【0035】
図3は、通信装置21の構成を示すブロック図である。同図に示すように、通信装置21は、光ビーコン210と、光ビーコン210を制御する制御装置211とを有する。
【0036】
光ビーコン210は、制御装置211からの制御信号に基づいて所定の運転支援情報を送信する通信部として構成される。光ビーコン210は、図示せずとも、赤外線等の所定波長の光信号を送信可能な通信ユニット、当該通信ユニットを制御するコントローラ等を有する。本実施形態では、光ビーコン210として、車両5の車載器との双方向通信機能と車両感知機能とを備えた高度化光ビーコンが用いられる。なおこれ以外に、光ビーコン210は、電波ビーコン等の他の通信機器が採用されてもよい。
【0037】
車両5は、光ビーコン210からの送信情報を受信可能な車載器(図示略)を備える。この車載器は、GPS衛星との間で通信を行い、所定の周期ごとに、時刻情報や、車両5の位置情報等を取得し、プローブ情報(走行情報)として記憶する。車載器は、プローブ情報を光ビーコン210へ送信することが可能に構成される。
【0038】
制御装置211は、信号生成部212と、メモリ213と、近距離通信部214と、GPSモジュール215とを有する。制御装置211は、通信装置21の一部として構成されるが、通信装置21とは別に構成されてもよい。
【0039】
メモリ213は、典型的には不揮発性の半導体メモリで構成される。メモリ213には、信号機11~13の制御設定情報(信号機定数)や位置情報(以下、これらを総称して基本設定情報ともいう)が予め格納されている。メモリ213は、各信号機11~13の基本設定情報を記憶する記憶部として構成される。
【0040】
メモリ213にはまた、信号生成部212に所定の動作を実行させる制御プログラムや制御パラメータ等が格納される。メモリ213はさらに、近距離通信部214を介して受信した各信号機11~13からの状態通知を一時的に記憶するように構成される。
【0041】
近距離通信部214は、信号機11と無線により通信可能な通信モジュールを含む。近距離通信部214は、信号機11~13の状態通知を、例えば信号機11を介して受信する。GPSモジュール215は、各信号機11~13と光ビーコン210との時刻の同期をとるためのものである。なお、GPSモジュール215に代えて、電波時計等が採用されてもよい。
【0042】
信号生成部212は、典型的には、CPU/MPUを含むコンピュータで構成され、メモリ213に格納された各信号機11~13の基本設定情報を基に、各信号機11~13に関する信号情報を含む運転支援情報を光ビーコン210から継続的に送信するための制御信号(以下、第1の制御信号という)を生成するように構成される。
【0043】
上記信号情報としては、典型的には、各信号機11~13の位置に関する情報のほか、各信号機11~13の信号機定数を基に計算した車両5の通過時における各信号機11~15の灯色に関する情報を含む。これにより、車両5の運転者に対して、信号通過支援、赤信号減速支援、発進遅れ防止支援等の各種の運転支援情報を提供することが可能となる。
【0044】
信号生成部212はさらに、各信号機11~13から送信された状態通知に基づき、各信号機11~13についての異常の有無を判定するように構成される。信号生成部212は、各信号機11~13について異常が無いと判定したときは第1の制御信号を生成する。一方、信号生成部212は、信号機11~13のいずれかに異常が有ると判定したときは、当該異常に係る信号機に関する信号情報に代わる代替情報を運転支援情報として光ビーコン210から送信するための制御信号(以下、第2の制御信号という)を生成するように構成される。各信号機11~13の異常の有無の判定は、所定時間毎に行われるが、常時行われてもよい。
【0045】
上記代替情報としては、典型的には、異常に係る信号機の信号支援情報の提供サービスを停止することを報知する情報を含む。具体的には、当該異常に係る信号機に関する信号情報の提供サービスが無効であること(サービス提供外であること)を示す情報、当該異常に係る信号機については実際の信号標識に従うように運転者に注意を喚起する情報等が該当する。
【0046】
[運転支援システムの動作]
続いて、信号生成部212の詳細について、本実施形態の運転支援システム100の動作とともに説明する。
【0047】
図4は、信号生成部212の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【0048】
まず、信号生成部212は、メモリ213から各信号機11~13の基本設定情報を取り込み、GPSモジュール215を用いて光ビーコン210と時刻同期させる(ステップ101,102)。これにより、光ビーコン210から送信される信号機11~13に関する信号情報の確度が高まり、適切な運転支援サービスを実行することができる。
【0049】
続いて、信号生成部212は、前回の処理から所定時間が経過したか否かを判定する(ステップ103)。上記所定時間は、信号機11~13の異常判定を実行する時間に相当し、例えば、数秒~数十時間の範囲で適宜設定可能であり、好ましくは、信号生成のタイミング(例えば1分あるいは1サイクル)に設定される。初回実行時は、後述する路線信号情報生成ステップ(ステップ104)に移行する。
【0050】
路線信号情報生成ステップでは、各信号機11~13の基本設定情報に基づいて、光ビーコン210から近傍の車両(信号機11より上流側の車両)5に向けて送信される路線信号情報が生成される。路線信号情報は、対象とする信号機11~13に関する信号情報を含む信号情報であり、ここでは、対象とするすべての信号機11~13に関する信号情報を含む。
【0051】
信号情報は、上述のように、各信号機11~13の位置に関する情報のほか、各信号機11~13の信号機定数を基に計算した車両5の通過時における各信号機11~15の灯色に関する情報を含む。これにより、走行する車両5に対しては、信号通過支援や赤信号減速支援等の運転支援情報を提供することが可能となる。また、信号機11の手前で停車している車両5に対しては、発進遅れ防止支援や青開始時刻等の各種の運転支援情報を提供することが可能となる。
【0052】
続いて、信号生成部212は、対象とする信号機11~13についての異常の有無を判定する(ステップ105)。すべての信号機11~13について異常が無いと判定した場合、信号生成部212は、生成した路線信号情報を第1の制御信号として光ビーコン210に登録する(ステップ107)。これにより、登録された路線信号情報が運転支援情報として光ビーコン210から送信する。当該運転支援情報は、典型的には、数秒間隔で光ビーコン210から送信される。
【0053】
続いて、信号生成部212による信号機11~13の異常判定について説明する。
【0054】
信号生成部212は、近距離通信部214を介して受信した信号機11~13に関する状態通知を取り込む(ステップ108)。これら状態通知は、リアルタイムで受信した情報だけに限らず、前回異常判定した後に新たに受信した状態通知であってメモリ213に一時的に格納しておいた情報であってもよい。
【0055】
続いて、信号生成部212は、所定の一定時間内にすべての信号機11~13に関する状態通知を取得できたかどうかを判定する(ステップ109)。ここでは、当該一定時間内に取得できなかった状態通知についてはその状態通知を送信する信号機が何等かの異常(停電、故障)が生じたと判断される。
【0056】
なお、上記一定時間は適宜設定可能であり、ステップ103における所定時間と同じ時間であってもよいし、これよりも短い時間であってもよく、例えば1分である。
【0057】
一方、上記一定時間内にすべての信号機11~13に関する状態通知が取得できたときは、各状態通知を基に各信号機11~13の異常を判断する(ステップ110)。上述のように状態通知には、信号機11~13の制御状態を示す情報がそれぞれ含まれているため、当該情報を基に各信号機11~13についての異常の有無が個別的に判断される。
【0058】
信号生成部212は、上述のステップ109又は110において何れかの信号機に異常が有ると判定した場合、異常と判定された信号機についての信号情報に代わる代替情報を含む第2の制御信号を生成する(ステップ106)。これにより、光ビーコン210に登録される路線信号情報のうち、異常に係る信号機に関する信号情報が上記代替情報に置き換えられる(ステップ107)。これにより、運転支援情報の中に上記異常に係る信号機に関する信号情報の提供サービスが停止される。
【0059】
なお、上記代替情報を受信した車両5は、例えば、当該異常に係る信号機に関する信号情報がサービス提供外であることを示す表示や音声を車内のディスプレイやスピーカを介してドライバへ報知する。これにより、車両5のドライバに当該異常に係る信号機に関する信号情報についてはサービス提供外であることを認識することができる。
【0060】
信号生成部212は、上述の処理を繰り返し実行することにより、対象とする何れかの信号機11~13について異常が確認されるまで、同一の路線信号情報が光ビーコン210から継続的に送信される。また、何れかの信号機について異常が確認されると、当該異常に係る信号機についての信号情報の送信サービスは停止されるため、車両5のドライバへの意図しない誤った路線信号情報の提供が回避される。
【0061】
以上のように本実施形態によれば、管制センターを介在させることなく車両5へ有意かつ適正な路線信号情報を提供することが可能となるので、非管制エリアにおいて適切な運転支援サービスを実現することができる。
【0062】
また本実施形態によれば、対象とする信号機10(11~13)及び通信装置21を管制センターに接続することなく運転支援システムを構築することができるため、システム構築コストの低減を図ることができる。
【0063】
<第2の実施形態>
図5は、本発明の第2の実施形態に係る運転支援システムの構成を示す概略図である。以下、第1の実施形態と異なる構成について主に説明し、第1の実施形態と同様の構成については同様の符号を付しその説明を省略または簡略化する。
【0064】
本実施形態の運転支援システム200は、信号機10(11~13)と、第1の通信装置31と、第2の通信装置32とを備える。第1の通信装置31は、第1の実施形態における通信装置21と同様の構成を有するため、ここではその説明は省略する。すなわち、本実施形態の運転支援システム200は、第2の通信装置32を備える点で第1の実施形態と異なる。
【0065】
第2の通信装置32は、信号機10(11~13)が設置される路線R10の路側又は路上であって、最下流に位置する信号機13の下流側(流出側)に設置される。第2の通信装置32は、信号機13を通過した車両5からプローブ情報(車両走行軌跡情報)を受信し、受信したプローブ情報を第1の通信装置31へ送信することが可能に構成される。
【0066】
プローブ情報には、車両5が実際に走行した位置や時刻、速度などの情報が含まれる。そして、このプローブ情報を収集することで、例えば車両5が信号機11から信号機13を通過するまでの所要時間や平均速度、信号待ち時間等を取得でき、これにより路線R10の交通状況(渋滞の有無、信号の待ち回数など)を把握することが可能となる。本実施形態では、第2の通信装置32で取得した車両5のプローブ情報を第1の通信装置31へ転送し、第1の通信装置31の記憶部(メモリ213、図3参照)に当該プローブ情報を一定期間蓄積し、後述する分析評価が可能となるように構成される。
【0067】
第2の通信装置32は、典型的には光ビーコン、高度化光ビーコンで構成されるが、電波ビーコン等の他の通信機器で構成されてもよい。第2の通信装置32は、図示せずとも、車両5の車載器からプローブ情報を受信可能な通信ユニット、受信したプローブ情報を一時的に格納するメモリ、受信したプローブ情報を第1の通信装置31へ無線送信する送信部、当該通信ユニットを制御するコントローラ等を有する。
【0068】
上記送信部は、受信した車両5に関するプローブ情報を直接、第1の通信装置31へ送信することが可能に構成されてもよいが、本実施形態では、信号機13,12,11を順次介して第1の通信装置31へ当該プローブ情報を送信するように構成される。つまり、信号機11~13の各近距離通信部104(図2参照)は、第2の通信装置32において受信したプローブ情報を各信号機11~13の状態通知と共に第1の通信装置31へ向けて送信することが可能に構成される。これにより、上記送信部の通信距離が短くなるため、信号機11~13と同様に、送信部の低コスト化が可能となる。
【0069】
各信号機11~13を介してのプローブ情報の送信は、各々の状態通知の送信タイミングとは異なるタイミングで実行されてもよい。例えば、数時間ごと、数日ごと、数か月ごとの長期の送信間隔でプローブ情報が第1の通信装置31へ送信されてもよい。第1の通信装置31は、受信したプローブ情報をメモリ213へ蓄積する。なお、メモリ213以外の他の記憶装置がプローブ情報の蓄積用として別途設けられてもよい。
【0070】
本実施形態の運転支点システム200において、第1の通信装置31は、第1の実施形態と同様な処理手順(図4参照)で車両5に対する運転支援サービスが提供される。
一方、本実施形態ではさらに、第2の通信装置32によって取得された車両5のプローブ情報に基づく、信号機11~13の定数の評価工程を有する。
【0071】
図6は、蓄積されたプローブ情報の処理手順の一例を示すフローチャートである。同図において、手順41は、第1の通信装置31による処理であり、手順42は、第1の通信装置31に接続された外部コンピュータによる処理である。
【0072】
第1の通信装置31(特に、図3における制御装置211)は、近距離通信部214を介して第2の通信装置32から送信された車両5のプローブ情報を取り込み、これをメモリ213に格納する(ステップ201,202)。
【0073】
メモリ213に蓄積されたプローブ情報は、定期的に(例えば、第1の通信装置31のメンテナンス時に)外部コンピュータに回収される。外部コンピュータには有線又は無線で接続される。外部コンピュータはノート型PC等の携帯型情報端末でもよいし、管理サーバ等であってもよい。外部コンピュータは、対象信号機(信号機11~13)の基本設定情報と第1の通信装置31から回収したプローブ情報とを基に、信号機定数を評価し、再設定が必要な場合は更新する(ステップ301~303)。
【0074】
信号機定数評価(ステップ302)においては、信号機11~13が設置された路線R10の渋滞の有無、信号待ち回数等の交通状況がプローブ情報を基に評価される。渋滞等が発生していなければ、信号機定数の変更の必要がないため引き続き現在の信号機定数で各々の信号機11~13が制御される。一方、特定の時間で渋滞が発生し、あるいは信号待ち時間が特段に長い区間がある等、一部の信号機の定数を見直す必要があると評価された場合は、これらの問題を解消する信号値定数を各信号機11~13について再設定し、登録する。
【0075】
本実施形態の運転支援システム200によれば、上述の第1の実施の形態と同様の作用効果を得ることができるとともに、対象とする信号機11~13の設置路線の交通状況を事後的に分析、評価することができる。これにより、非管制エリアの適正な交通状況を維持することができる。
【0076】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0077】
例えば以上の実施形態では、路線R10の信号情報を含む運転支援サービスを提供するように構成されたが、路線R10以外の他の路線(例えば路線R11~R13)の交通状況等も同時に提供するように構成されてもよい。
【0078】
また、以上の実施形態では複数の信号機11~13を対象とした運転支援サービスを提供するように構成されたが、対象とする信号機は1つでもよい。例えば、対象とする信号機を車内から視認できない場所(例えばカーブの手前や登坂路の途中)等に当該信号機の信号情報を送信する通信装置を設置することで、当該通信装置を上記信号機の予告灯として機能させることができる。
【符号の説明】
【0079】
10,11,12,13…信号機
21…通信部
31…第1の通信装置
32…第2の通信装置
100,200…運転支援システム
101…信号灯器
102…制御部
103…メモリ
104…近距離通信部
210…光ビーコン
211…制御装置
212…信号生成部
213…メモリ
214…近距離通信部
215…GPSモジュール
図1
図2
図3
図4
図5
図6