(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】インナーバルコニーに吹き込む風の勢いを減衰させる方法及び吹き込む風の勢いを減衰させたインナーバルコニー
(51)【国際特許分類】
E04H 1/02 20060101AFI20230314BHJP
【FI】
E04H1/02
(21)【出願番号】P 2022082204
(22)【出願日】2022-05-19
【審査請求日】2022-05-19
(73)【特許権者】
【識別番号】592040826
【氏名又は名称】住友不動産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108327
【氏名又は名称】石井 良和
(72)【発明者】
【氏名】和泉沢 忠晴
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 英司
(72)【発明者】
【氏名】正岡 信彦
【審査官】沖原 有里奈
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-144890(JP,A)
【文献】特開2015-203292(JP,A)
【文献】特開2002-339454(JP,A)
【文献】特開2014-88667(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04H 1/00-1/14
E04H 3/00-4/16
E04B 1/00-1/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インナーバルコニーの開口面が建築物の外壁に対して90度近傍の角度となるように建築物の外壁面に凹部を形成して緩衝領域とし、この緩衝領域を外界とインナーバルコニーの間に介在させ、風がインナーバルコニーに直接吹き込まず、緩衝領域を経由してインナーバルコニーに吹き込むようにすることによってインナーバルコニーに吹き込む風の勢いを減衰させる方法。
【請求項2】
インナーバルコニーに直接風が吹き込むことを防止するため、インナーバルコニーの開口面が建築物の外壁に対して90度近傍の角度となるように建築物の外壁面に凹部を形成して緩衝領域とし、この緩衝領域を外界とインナーバルコニーの間に介在させることによって、風がインナーバルコニーに直接吹き込まず、緩衝領域を経由してインナーバルコニーに吹き込むようにしてあり、風向を変換させることによって風の勢いを弱め、家具や調度品、及び備品等に害が及ぶことを防止したインナーバルコニー。
【請求項3】
請求項2において、緩衝領域に風向を変更させる斜壁を介在させてあるインナーバルコニー。
【請求項4】
請求項3において、斜壁は穴あき版または格子状板のいずれかであるインナーバルコニー。
【請求項5】
請求項2~4のいずれかにおいて、インナーバルコニーが緩衝領域に面する部分に開閉可能なサッシが設けてあるインナーバルコニー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インナーバルコニーに関するものであり、特に強風が吹き込む可能性が高い高層階に設けるのが好適であって、強風時であっても、インナーバルコニー内部に強風がダイレクトに吹き込むことがなく、比較的静穏なオープンエアの雰囲気を楽しむことができるインナーバルコニーを提供するものである。
【背景技術】
【0002】
インナーバルコニーは、降雨時においても洗濯物を干すことができ、また、直射日光が遮られることから紫外線が遮蔽されるので直射日光を浴びることなく過ごすことが可能である。
【0003】
また、インナーバルコニーを利用して居間を拡張することが可能であり、居間に大きな開口を設け、インナーバルコニーを隣接させて配置することによってリビングを広く感じさせることができ、更に、外気に通ずるインナーバルコニーを通して外光や風を居間の内部に導入することも可能であり、居間を開放感のある空間とすることが可能である。
【0004】
また、インナーバルコニーのスペースは半屋外の場所となるので、自然に換気がおこなわれ、臭いがこもることもなく、臭いが気になるバーベキューなどをする際も、調理はインナーバルコニー、食事は室内というように利用することが可能であるなどリビングルームの使用態様を広げることができるというメリットがある。
【0005】
インナーバルコニーは外気に直接触れることができる空間であって好ましいものではあるが、一方でビル風の影響の大きな地区の建築物や、高層建築物の高層階となると吹き込む風が強くなり、強風時にはインナーバルコニーに滞在することができず、荒天時には折角の空間を利用できず、外気の雰囲気を楽しむことができない。
また、強風が吹き込んでインナーバルコニー内に配備した家具や調度品が吹き飛ばされてしまうなど好ましくないことが発生することがある。
【0006】
インナーバルコニーの特徴は、雨を凌ぐ屋根の役目をする天井が存在するという点でもあり、天候の影響を受けることなくまた、紫外線の直射を浴びるということもないというメリットを享受できると共に外気に面しながら家の中にいる時と同じ居心地でいられるという点がインナーバルコニーのメリットである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2005-690974号公報
【文献】特開2000-320161号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のインナーバルコニーを高層の集合住宅に設けた場合の一例を
図3に示す。インナーバルコニー1a、1bは別個の住戸A、Bに属するものであり、インナーバルコニー1a、1bにはそれぞれリビングルーム2a、2bが隣接して配置してある。インナーバルコニー1a、1bの外壁面と同一面となる部分には手摺5が設けてあって外気に面しており、各住戸A、Bのインナーバルコニー1a、1b内において外気に触れることが可能である。
【0009】
矢印で示す風Wは、インナーバルコニー1a、1bに直接吹き込むことになり、外気に直接触れることができる空間であって天気が静穏な時には外気を楽しむことができるが、荒天の場合において、直接風が吹き込むことから静穏な外気の雰囲気を楽しむ場としては風が強すぎる場合があり、強風時にはインナーバルコニー1a、1bを休養の場として、または、リラックスする場として使用することが難しくなる。
【0010】
また、特に高層階ほど風速が高いものとなるので強風が吹き込んでインナーバルコニー内に配備した家具や調度品が吹き飛ばされてしまう恐れがあり、突風によって高価な調度品等や壁面及び家屋に傷をつけるなどの好ましくないことが発生することがある。
【0011】
本発明は、強風が吹き込む可能性が高い場所に設けるインナーバルコニーにおいて、風の影響を受けないようにしようとするものであり、好ましくない強風の影響を軽減することを目的としたインナーバルコニーを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
インナーバルコニーの開口面3に風が直接吹き込むことがないようにするものであり、インナーバルコニーの開口面3が建築物の外壁に対して90度近傍の角度となるように、建築物の外壁面に凹部を形成して緩衝空間を介在させることによって風がインナーバルコニーに直接吹き込むことがないようにし、風が緩衝空間を経由するようにすると共に風向を変換させることによってインナーバルコニーに吹き込む風の勢いを減衰させ、家具や調度品、更には備品等が風によって吹き飛ばされたり、または倒されたりして損傷を受けることを防止し、また、強風がインナーバルコニーに直接吹き込むことを抑止して穏やかな雰囲気のインナーバルコニーとなるようにし、インナーバルコニーがもたらすメリットを強風などの荒天時であっても享受できるようにしたものである。
【発明の効果】
【0013】
インナーバルコニーの開口部3が、建築物の外壁に対して90度近傍の角度となるように外壁面に凹部(窪み)を形成した緩衝空間が設けてあるので、インナーバルコニーに吹き込む風は緩衝空間を経由し、また、外から直接インナーバルコニーに吹き込むのではなく、風向が変更されてインナーバルコニーに向かうので、インナーバルコニーに到達するまでに風の勢いは減勢されており、調度品等が風に吹き倒されるのを抑止することが可能となる。
【0014】
従って、強風時においてもインナーバルコニー内において、猛烈な台風の来襲時を除いて外気の雰囲気を楽しむことができることになり、ある程度の荒天時においてもインナーバルコニーにおいて静穏な雰囲気で過ごすことが可能となる。
【0015】
また、インナーバルコニーに強風が直接吹き込まず、減勢された空気流が流れ込むので、インナーバルコニー内に置いてある設備・備品及び置物が強風で吹き飛ばされたり、転倒・移動させられたりすることがなく、破損に至るということも防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明のインナーバルコニーの実施例の平面図。
【
図2】本発明のインナーバルコニーの他の実施例の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
実施例1
本発明を
図1及び
図2の実施例に基づいて説明する。
図1は、集合住宅の一部を示すものであり、住戸Aと住戸Bの部分を示している。
【0018】
図1に示す住戸A、住戸Bのインナーバルコニー1a、1bが、
図3の従来のインナーバルコニーと異なる点は、本発明のインナーバルコニー1a、1bは、建物の外壁面にはインナーバルコニー1a、1bの開口部3が直接的には形成されておらず、外壁面には風を減勢するための凹部(窪み)が風の緩衝領域4a、4bとして形成してあり、この緩衝領域4a、4bをインナーバルコニー1a、1bに吹き込む風の減勢に利用するようにした点である。
【0019】
風が、この凹部からなる緩衝領域4a、4bを経由してインナーバルコニー1a、1bに吹き込むようにすることによって、インナーバルコニー1a、1bに到達したときの風向は外界における風向きからほぼ角度90度変更されてインナーバルコニー1a、1bに吹き込むことになる。したがって、風の方向が変更されることによって風のエネルギーは減勢されるので、外気が直接インナーバルコニー1a,1bに吹き込む場合より比較的穏やかにインナーバルコニー1a、1bに流入することになり、風が直接吹き込む場合に比較してインナーバルコニー1a、1bの内部は比較的穏やかな状態となり、強風の場合であっても備品の転倒・破損等が防止されることになる。
【0020】
外壁に形成した凹部の緩衝領域4b内には風向をインナーバルコニー1bの方向に導くガイド壁などは設けていないが、住戸Aのインナーバルコニー1aにおいては、緩衝領域4aに斜壁5aが設けてあって、緩衝領域4aに吹きこんだ風が斜壁5aによってインナーバルコニー1aに風向きが誘導されるようにしてある。この斜壁5aを穴あき板や、スリット付きのものにすることによって、吹き込んだ風の勢いを弱めるようにしてもよい。
【0021】
インナーバルコニー1a、1bの緩衝領域4a、4bに面する箇所には手摺5が設けてあって、安全に外気に直接触れることが可能である。インナーバルコニー1a、1bが緩衝領域4a、4bに面する部分の手摺5の上部には図示しない上部サッシを設けることもできる。
また、サッシは、上部サッシに限定されるものでなく、開閉可能なサッシとしてもよく、サッシを開けることによって外気をインナーバルコニーに導入することができるようにするなど、環境に応じて適宜な態様とすることができる。
【0022】
図2に示す実施例2のインナーバルコニー1a、1bは、
図1の実施例と基本的には同じであって、風向を変えて風の勢いを弱め、インナーバルコニー1a、1bに到達したときには強風が、弱められて爽やかな風に変わっているようにするという点では同じである。
図2の本発明の実施例は、建築物の外壁面を斜めにして山形の外壁面としたものであり、インナーバルコニー1bの面積を大きくとれるようにしたものであり、インナーバルコニー1a、1bに流入する風の勢いを減勢するという点では、実施例1と変わりがない。
【符号の説明】
【0023】
1a、1b インナーバルコニー
2a、2b 居間
3 開口(開口面)
4a、4b 緩衝領域
5 手摺
5a 斜壁
A、B 住戸
W 吹き込む風
【要約】
【課題】高層ビルなどにおいて、インナーバルコニーに強風が直接吹き込むのを防ぎ、勢いを減衰させた風がインナーバルコニーに吹き込むようにする。
【解決手段】
インナーバルコニーの開口面から風が直接内部に吹き込むことがないようにするためにインナーバルコニーの開口面が建築物の外壁に対して90度近傍の角度となるように、建築物の外壁面に凹部を設けて緩衝空間を介在させることによって、風の経路が直接インナーバルコニーに吹き込まず、緩衝空間を経由させることによって風の勢いを弱め、家具や調度品、更には備品等に害が及ぶことを防止し、強風の直接的な吹き込みのないインナーバルコニーとし、インナーバルコニーがもたらすメリットを享受できるようにしたものである。
【選択図】
図1