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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-13
(45)【発行日】2023-03-22
(54)【発明の名称】コイル素子
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20230314BHJP
   H01F 5/00 20060101ALI20230314BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20230314BHJP
   H01F 27/24 20060101ALI20230314BHJP
【FI】
H01F37/00 C
H01F37/00 A
H01F5/00 G
H01F5/00 R
H01F27/28 M
H01F27/24 J
H01F27/24 E
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2022511220
(86)(22)【出願日】2021-05-04
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-28
(86)【国際出願番号】 EP2021061659
(87)【国際公開番号】W WO2021239403
(87)【国際公開日】2021-12-02
【審査請求日】2022-02-21
(31)【優先権主張番号】102020114516.0
(32)【優先日】2020-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】300002160
【氏名又は名称】ティーディーケイ・エレクトロニクス・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】TDK ELECTRONICS AG
【住所又は居所原語表記】Rosenheimer Strasse 141e, 81671 Muenchen, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002664
【氏名又は名称】弁理士法人相原国際知財事務所
(72)【発明者】
【氏名】シュリーヴェ, ヨルン
(72)【発明者】
【氏名】ヴェーバー, シュテファン
【審査官】古河 雅輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-160058(JP,A)
【文献】特開平5-135971(JP,A)
【文献】特開2007-88559(JP,A)
【文献】特開平9-98045(JP,A)
【文献】特開2005-102167(JP,A)
【文献】特開2005-192035(JP,A)
【文献】特開2016-39322(JP,A)
【文献】特開2005-318263(JP,A)
【文献】特開2015-204406(JP,A)
【文献】登録実用新案第3019334(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 5/00- 5/06
H01F 17/00-21/12
H01F 27/00
H01F 27/02
H01F 27/06
H01F 27/08
H01F 27/23-27/32
H01F 27/36
H01F 27/42
H01F 30/00-38/12
H01F 38/16
H01F 38/42
H01F 41/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイル素子(100)であって、
第1のコア要素(1)と、
前記第1のコア要素の巻線支持部(11)の周りに配置された、巻線軸(20)を有する第1の巻線体(2)と、
を有し、
前記第1の巻線体は第1の箔導体要素(21)を有し、前記第1の箔導体要素は、積層方向(S)に沿って上下に積み重ねられ、互いに電気的に絶縁して配置された複数の導体箔(22)を有し、
前記積層方向は、前記巻線軸に対して平行であり、
前記第1の巻線体は、前記巻線軸の周りに、前記第1の箔導体要素の複数の巻線を、螺旋状に有する、コイル素子(100)。
【請求項2】
積層方向において、前記導体箔の間に電気絶縁材料(23)が配置されており、当該電気絶縁材料は、前記積層方向に沿って前記導体箔より小さな厚さを有する、請求項1に記載のコイル素子。
【請求項3】
前記導体箔の各々は、金属バンドによって形成される、請求項1又は2に記載のコイル素子。
【請求項4】
前記第1の箔導体要素の積み重ねられた前記導体箔は、互いに並列に接続されている、請求項1~3のいずれか1項に記載のコイル素子。
【請求項5】
前記第1の巻線体の巻線の間に、磁性材料(3)が配置されている、請求項1~4のいずれか1項に記載のコイル素子。
【請求項6】
前記磁性材料は、前記第1のコア要素の透磁率以下の透磁率を有する、請求項5に記載のコイル素子。
【請求項7】
前記磁性材料は、10以上100以下の透磁率を有する、請求項5又は6に記載のコイル素子。
【請求項8】
前記磁性材料は、前記積層方向に沿って、前記積層方向に沿った前記第1の箔導体要素の高さよりも大きな高さを有する、請求項5~7のいずれか1項に記載のコイル素子。
【請求項9】
前記磁性材料は、前記第1の箔導体要素と共に前記巻線支持部の周りに巻かれた、磁気バンド(31)によって形成されている、請求項5~8のいずれか1項に記載のコイル素子。
【請求項10】
前記第1の箔導体要素は、前記磁性材料内に埋め込まれている、請求項5~8のいずれか1項に記載のコイル素子。
【請求項11】
前記第1の箔導体要素は、前記積層方向に対して平行な側面(24)を有し、前記磁性材料は、前記第1の箔導体要素の前記側面の上に塗布されている、請求項10に記載のコイル素子。
【請求項12】
前記第1のコア要素はウェブ状の部分(14)を有し、当該ウェブ状の部分は、前記磁性材料を形成すると共に、前記第1の箔導体要素の前記巻線の間に配置されている、請求項5~8のいずれか1項に記載のコイル素子。
【請求項13】
前記第1のコア要素は、ポットコア又はEコアを有する、請求項1~12のいずれか1項に記載のコイル素子。
【請求項14】
第2のコア要素(1’)及び第2の巻線体(2’)を有し、前記第1及び第2の巻線体は、互いに直列に接続されている、請求項1~13のいずれか1項に記載のコイル素子。
【請求項15】
前記第2の巻線体を伴う前記第2のコア要素は、前記第1の巻線体を伴う前記第1のコア要素の上に、鏡面対称に配置されている、請求項14に記載のコイル素子。
【請求項16】
前記第1及び第2のコア要素は同様に設計されており、前記第1及び第2の巻線体は同様に設計されている、請求項14又は15に記載のコイル素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
コイル素子が提示される。
【背景技術】
【0002】
例えば電力変換器のコイル及びチョークにおいて、交流損失は、上昇するクロック周波数の故に、設計にとってますます決定的な要因となっている。交流巻線損失の故に、高い出力及び同時に高い周波数においては、最適化の可能性は限定されている。これまで、そのような用途には、大抵の場合、撚り線又は平角銅線が使用されてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特定の実施形態の少なくとも1つの課題は、コイル素子を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、独立請求項による主題によって解決される。当該主題の有利な実施形態及び発展形態の特徴は、従属請求項において述べられ、更に以下の記載及び図面から明らかになる。
【0005】
少なくとも1つの実施形態によれば、コイル素子は、少なくとも1つのコア要素と、少なくとも1つの巻線体とを有する。特に、コイル素子は、少なくとも1つの第1のコア要素と、少なくとも1つの第1の巻線体とを有することができる。
【0006】
更なる実施形態によれば、第1の巻線体は、第1の箔導体要素を有する。第1の箔導体要素は、上下に積み重ねられた複数の導体箔を有する。第1の箔導体要素は、特に、少なくとも10個の、又は好ましくは少なくとも20個の、又は特に好ましくは少なくとも50個の、導体箔を有することができる。例えば、第1箔導体要素は、100個の積み重ねられた導体箔を有する。重なり合う導体箔の配置方向は、積層方向とも呼ぶことができる。したがって、第1の箔導体要素の導体箔は、積層方向に沿って重なり合って配置されている。導体箔の各々は、帯状に形成することができ、長さ、幅及び厚さを有することができる。長さは、特に好ましくは幅よりも大きく、幅は、特に好ましくは厚さよりも大きい。積層方向は、長さ及び幅に対して垂直に、かつ、厚さの方向に対して平行に向けられており、その結果、第1の箔導体要素は、少なくとも全ての導体箔の厚さの合計に相当する、積層方向における高さを有する。特に好ましくは、導体箔の各々は、特に好ましくは銅を含むか又はそれから成る金属バンドを有するか又はそれから形成されている。
【0007】
更なる実施形態によれば、第1のコア要素は巻線支持部を有する。第1の巻線体は、巻線支持部の周りに配置されており、巻線軸を有する。換言すれば、第1の箔導体要素は、第1のコア要素の巻線支持部の周りに巻かれており、それにより、巻線軸が確定される。巻線軸に沿った方向は、ここ及び以下において、垂直軸と呼ぶこともできる。巻線軸に対して垂直な方向は、水平方向と呼ぶこともできる。第1の巻線体は、特に、巻線軸の周りに、第1の箔導体要素の複数の巻線と共に、螺旋状に配置されている。換言すれば、第1の巻線体は、巻線軸の周りに、第1の箔導体要素の複数の巻線を、螺旋状に有する。巻線支持部の周りの第1の箔導体要素の各回転が、ここでは1つの巻線を形成することができる。
【0008】
更なる実施形態によれば、積層方向は、巻線軸に対して平行である。換言すれば、導体箔は、巻線軸の方向に沿って、したがって垂直方向に、重なり合って配置されている。したがって、導体箔の厚さによって定められる方向は、巻線軸に対して平行である。導体箔は、導体箔の長さ及び幅に対して平行な水平面内で、巻線軸の周りを螺旋状に延びている。すなわち、箔導体の長手方向、したがって第1の箔導体要素の長手方向は、巻線軸の周りに、したがって巻線支持部の周りに、螺旋状に延びている。第1の箔導体要素の記載された構成及び配置により、第1の巻線体のために第1のコア要素内に設けられた巻線チャンバの角部に至るまで、第1の箔導体要素を配置することができる。巻線支持部は、螺旋状に巻かれた第1の箔導体要素の中心に配置されており、コア要素のいわゆる芯と呼ぶこともできる。
【0009】
特に好ましくは、巻線支持部は、垂直方向において、すなわち巻線軸に対して平行な方向において、第1の箔導体要素よりも大きな高さを有する。更に、巻線支持部は、垂直方向において、空隙に隣接することができる。第2のコア要素及び第2の巻線体を有する、以下で記載される鏡面対称な配置においては中央領域とも呼ばれ得る、空隙に隣接する領域を、空いたままにすることにより、空隙における漂遊磁界を低減するか又は回避することさえできる。
【0010】
更に、第1の箔導体要素の導体箔は、互いに電気的に絶縁されている。このために、電気絶縁材料を導体箔の間に配置することができる。特に好ましくは、電気絶縁材料は、導体箔よりも小さな厚さ、例えば10倍以上小さい厚さを有する。電気絶縁材料は、例えば、導体箔と交互に重なり合って配置された電気絶縁プラスチック箔帯によって形成することができる。更に、電気絶縁プラスチック材料を有する導体箔は、幅方向及び厚さ方向において、部分的に又は完全に変形させることができる。このために、導体箔は、例えば電気絶縁性合成塗料でコーティングすることができる。第1の箔導体要素の積み重ねられた導体箔は、好ましくは、互いに並列に接続されている。
【0011】
更なる実施形態によれば、第1の巻線体の巻線間に、磁性材料が配置されている。特に好ましくは、直に隣接する巻線の間に、磁性材料が配置されている。好ましくは、磁性材料は、第1のコア要素の透磁率以下の透磁率を有する。特に好ましくは、磁性材料は、10以上100以下の透磁率を有する。
【0012】
例えば、磁性材料は、磁気テープとも呼ぶことができる磁気バンドによって形成され、当該磁気バンドは、第1の箔導体要素と共に、巻線支持部の周りに巻かれている。磁気バンドは、例えば、支持材料を形成するプラスチック材料を含むことができ、当該支持材料の内部及び/又は上には、フェライト系及び/又は鉄系の粒子、粉末粒子及び/又はナノ微結晶が、配置されている。更に、第1の箔導体要素は、磁性材料内に埋め込むことができる。一例として、例えばフェライト系及び/又は鉄系の粒子、粉末粒子及び/又はナノ微結晶が含まれているプラスチック材料によって形成された磁気塗料を、このために使用することができる。第1の箔導体要素は、積層方向に対して平行な、特に幅方向に対して垂直な側面を有することができ、当該側面上には磁性材料が塗布されている。代替的に又は付加的に、第1のコア要素はウェブ状の部分を有することができ、当該ウェブ状の部分は、磁性材料を形成すると共に、第1の箔導体要素の巻線の間に配置されている。換言すれば、第1のコア要素は、巻線支持部の周りを螺旋状に延びるチャネルを有することができ、当該チャネル内には、第1の箔導体要素が、好ましくは完全に埋没して、配置されている。
【0013】
更なる実施形態によれば、磁性材料は、積層方向に沿って、したがって垂直方向において、第1の箔導体要素の高さ以上の高さを有する。特に好ましくは、磁性材料は、垂直方向における第1の箔導体要素の高さよりも大きな、垂直方向における高さを有する。換言すれば、磁性材料は、垂直方向において第1の箔導体要素よりも高く、したがって垂直方向において第1の箔導体要素を超えることができる。
【0014】
更なる実施形態によれば、第1のコア要素は磁性コア材料を有する。例えば、第1のコア要素は、フェライト系磁性材料を含む。代替的に又は付加的に、コア要素は、Ni-Fe-Mo、Ni-Fe、Fe-Si-Al及びFe-Siから選択される1つ以上の材料をベースとする磁性材料を含むか又はそれから成ることができる。例えば、コア要素は、Fe:Si:Alの混合比が85:9:6であるFe-Si-Alを、含むか又はそれから成る。センダストという名称でも知られているそのような材料は、高い透磁率、小さな磁気損失及び良好な温度安定性を有する、軟磁性の材料である。更に、コア要素は、6.5%のSi混合物を含有するFe-Si含むことができる。Mega Fluxという名称でも知られているそのような材料は、とりわけ、他の材料と比較して高い磁束密度及び高い温度安定性を特徴とする。第1のコア要素用の磁性材料は、例えば粉末形態で製造することができ、焼結によってコア要素のための所望の形状にすることができる。
【0015】
第1のコア要素は、例えば、ポットコア又はEコアを有することができるか、又はそれらであることができる。更に、他の又は類似のコア形状、例えば平面コア又はERコアも可能である。更に、コイル素子は、例えば、更なるコア要素を有することができ、当該更なるコア要素は、例えばIコアとして又はディスク状に形成されており、第1のコア要素と共に磁気回路を形成することができるよう、第1のコア要素の上に配置することができる。
【0016】
特に好ましくは、コイル素子は、第1のコア要素及び第1の巻線体に加えて、第2のコア要素及び第2の巻線体を有する。第1のコア要素1及び第1の巻線体についての上述した実施形態及び特徴は、第2のコア要素及び第2の巻線体に、同様に当てはまる。したがって、第2の巻線体は、特に、第2の箔導体要素を有することができ、当該第2の箔導体要素は、第1の箔導体要素について記載した特徴のうちの1つ以上を有する。更に、第2の巻線体の巻線間に磁性材料を配置することができ、当該磁性材料は、第1のコア要素及び第1の巻線体に関連して記載した磁性材料の1つ以上の特徴を有することができる。特に好ましくは、第1及び第2のコア要素は、同様の設計とすることができる。更に、特に好ましくは、第1及び第2の巻線体は、同様の設計とすることができる。第1及び第2の巻線体は、好ましくは、互いに直列に接続されている。
【0017】
第2の巻線体を伴う第2のコア要素は、第1の巻線体を伴う第1のコア要素の上に配置することができる。特に、2つのコア要素は、第1及び第2の巻線体が互いに向き合って配置されるように、重なり合って配置することができる。特に好ましくは、第2の巻線体を伴う第2のコア要素は、第1の巻線体を伴う第1のコア要素の上に、鏡面対称に配置することができる。
【0018】
ここに記載されるコイル素子において、特に好ましい実施形態によれば、特に少なくとも1つの箔導体要素がコア要素に関連して使用され(すなわち、厚さ方向において電気的に絶縁された状態で互いに組み合わされた複数の導体箔を有する少なくとも1つの積層体)、導体箔は、特に好ましくは、互いに並列に接続されることができる。箔導体要素は、積層方向に対して平行な巻線軸の周りで、コア要素の巻線支持部の周りに巻かれている。そのような導体要素は、この構成においては、巻線チャンバの角部に至るまで、コア要素内に配置することができる。例えば、箔導体要素と並行して巻線支持部の周りに巻かれる磁気テープのような磁性材料を、上述のように付加的に使用することにより、磁界ガイド(Feldfuehrung)を改善することができる。上述したように、磁気テープに代えて、箔導体要素は、磁性材料内に埋め込むことができ、又は、例えば、コア要素の螺旋状のウェブによって形成することができる別個の磁性材料を、磁界ガイドとして巻線の間に配置することができる。更なる特に好ましい特徴は、上述したように、空隙における漂遊磁界を低減又は回避するために、空隙において中央領域を空いたままにしておくこと、及び、例えばポットコア又はEコアのようなコア要素形状を使用する可能性であり得る。
【0019】
特に好ましくは、少なくともいくつかの実施形態によるコイル素子によって、実質的に同じ寸法を有する従来のコイル設計と比較して、適度な技術的労力で、損失を低減することが可能であり得る。ここに記載されたコイル素子の場合、特に好ましくは、交流損失を、従来のコイル技術と比較して著しく低減することができる。それにより、既知のコイルの場合よりも高い周波数での使用も、可能にすることができる。
【0020】
更なる利点,有利な実施形態及び発展形態が、以下において図面と関連して記載される実施例から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1A】一実施例によるコイル素子の概略図である。
図1B】一実施例によるコイル素子の概略図である。
図1C】一実施例によるコイル素子の概略図である。
図2】更なる実施例によるコイル素子の概略図である。
図3A】更なる実施例によるコイル素子の概略図である。
図3B】更なる実施例によるコイル素子の概略図である。
図4A】更なる実施例によるコイル素子の概略図である。
図4B】更なる実施例によるコイル素子の概略図である。
図5】更なる実施例によるコイル素子の箔導体要素の一部の概略図である。
図6】更なる実施例によるコイル素子の一部の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
実施例及び図面において、同一の、同様の、又は、同等に機能する要素には、それぞれ同一の参照符号が付されている可能性がある。図示された要素及びそれらの互いの大きさの比率は縮尺どおりではなく、むしろ、例えば層、部品、部材及び領域のような個々の要素は、より良好な図示の可能性及び/又はより良好な理解のために、誇張して大きく示されている可能性がある。
【0023】
図1A~1Cと関連して、コア要素1及び巻線体2を備えるコイル素子100が示されている。以下の実施例を考慮して、コア要素1及び巻線体2は、第1のコア要素1及び第1の巻線体2と呼ばれる。図1Aには、コイル素子100の概略断面図が示されている。第1の巻線体2は、第1の箔導体要素21を有する。図1Bには、第1の箔導体要素21の一部分の概略図が示されている。図1Cには、代替的な実施例よる第1の箔導体要素21の一部分の概略図が示されている。特に断らない限り、以下の説明は、図1A~1Cに同様に適用される。
【0024】
第1の箔導体要素21は、図1B及び1Cにおいて認識し得るように、上下に積み重ねられた複数の導体箔22を有する。第1の箔導体要素21は、特に、少なくとも10個の、又は好ましくは少なくとも20個の、又は特に好ましくは少なくとも50個の、導体箔22を有することができる。特に好ましい実施例では、第1の箔導体要素21は、例えば100個の積み重ねられた導体箔22を有する。導体箔が重なり合って配置される方向は、積層方向Sと呼ばれ、図1A~1Cにそれぞれ示されている。
【0025】
第1の箔導体要素21の導体箔22の各々は、帯状に形成されており、図1Bに示されているように、積層方向Sに対して垂直な幅Bと、積層方向Sに対して平行な厚さDとを有する。更に、導体箔22の各々は、幅B及び厚さDに対して垂直な長手方向に沿った長さを有し、当該長さは、それぞれ導体箔22の最大の広がりを特徴付ける。したがって、長さは幅Bよりも大きく、幅Bは厚さDよりも大きい。図示された実施例では、導体箔22の各々は、銅帯によって形成されている。代替的に、他の金属材料も可能である。
【0026】
第1の箔導体要素21の導体箔22は、互いに電気的に絶縁されて配置されている。このために、特に好ましくは導体箔22の厚さDよりも小さな厚さdを有する、電気絶縁材料23が、導体箔22の間に配置されている。例えば、D/d≦10である。電気絶縁材料23は、例えば、導体箔22と交互に重なり合って配置された電気絶縁プラスチック箔帯によって形成することができる。
【0027】
第1の箔導体要素21を製造するために、例えば、銅箔とプラスチック箔を交互に上下に積み重ね、固定又は積層し、必要に応じて所望の形状に切断することができる。更に、例えば、所望の層数に相当する巻数で銅箔及びプラスチック箔をローラに巻き付け、固定し、ローラから取り外す際に平坦な積層体が製造され得るよう切断することも、可能である。更に、3次元印刷法も考えられる。図1Cに示されているように、導体箔22を、それぞれ電気絶縁材料23としての例えば電気絶縁合成塗料で被覆し、上下に積み重ねることもできる。
【0028】
第1の箔導体要素21は、図1Aに示された高さHを有し、当該高さHは、少なくとも全ての導体箔22の厚さDの合計に、特に導体箔22及びその間の電気絶縁材料23の厚さD及びdの合計に、相当する。例えば、電気絶縁材料23としての電気絶縁塗料の場合、電気絶縁材料の厚さdは、導体箔22の厚さDと比較して無視可能でさえある。第1の箔導体要素21の幅Bは、実質的に導体箔22の幅Bに相当する。図1B及び1Cに示されているように、第1の箔導体要素21は、幅方向において側面24によって境界付けられ、当該側面24は、製造方法に応じて、図1Cに示されているように、電気絶縁材料23で覆われることができる。
【0029】
例えば、第1の箔導体要素21のために100個の導体箔22を使用することができ、それらは、第1の箔導体要素21において、それぞれ150μmの厚さ及び1~2mmの範囲の幅を有し、その結果、第1の箔導体要素21は、この場合、例えば約15mmの高さ及び前述の幅を有することができる。これに代えて、用途に応じて、より大きな寸法及びより小さな寸法も可能である。特に、記載されたコイル素子は、個々の構成要素の寸法が容易にスケーリング可能であり、特定のサイズに限定されないことを、特徴とすることができる。
【0030】
第1の箔導体要素21の積み重ねられた導体箔22は、長手方向の始めと終わりにおいて、互いに並列に接続されているが、そのような配線及び電気接続は、明瞭性のために示されていない。
【0031】
第1のコア要素1は、例えば、ポットコア又はEコアを有することができるか、又はそれらであることができる。それに代えて、他の又は類似のコア形状、例えば平面コア又はERコアも可能である。更に、コイル素子100は、例えば、更なるコア要素を有することができ、当該更なるコア要素は、例えばIコアとして又はディスク状に形成されており、第1のコア要素1と共に磁気回路を形成し得るよう、第1のコア要素1の上に配置することができる。
【0032】
例えば、第1のコア要素1は、フェライト系磁性材料を含む。更に、他の材料、例えば、Ni-Fe-Mo、Ni-Fe、Fe-Si-Al及びFe-Siから選択される1つ以上をベースとする材料も可能である。例えば、コア要素1は、一般的な部分に記載された材料センダスト又はMega Fluxを含むか又はそれらから成る。
【0033】
第1のコア要素1は、巻線支持部11を有する。第1の巻線体2は、巻線支持部11の周りに配置されており、図1Aに示された巻線軸20を有する。第1の箔導体要素21は、第1のコア要素1の巻線支持部11の周りに螺旋状に巻かれており、それにより、巻線軸20が確定される。したがって、巻線支持部11は、螺旋状に巻かれた第1の箔導体要素21の中心に配置されており、コア要素1のいわゆる芯と呼ぶこともできる。巻線軸20に沿った方向は、垂直軸と呼ぶこともできる。巻線軸20に対して垂直な方向は、水平方向と呼ぶこともできる。したがって、第1の巻線体2を貫く水平断面に対応する断面では、第1の巻線体2が、第1の箔導体要素21の複数の巻線を伴って螺旋状に、巻線軸20の周りに配置されていることが、認識され得るであろう。それに応じて、第1の巻線体2は、巻線軸20の周りに、第1の箔導体要素21の複数の巻線を有する。巻線支持部11の周りの第1の箔導体要素21の各回転が、ここでは1つの巻線を形成する。図1Aの断面図において、隣接する巻線は、明瞭性のために間隔を空けて示されている。これに代えて、巻線を互いに直に隣接して配置することもできる。これは、特に、第1の箔導体要素21の側面24が電気絶縁材料で覆われている場合に、可能であり得る。これに代えて、隣接する巻線が電気絶縁箔によって電気的に互いに分離されるよう、電気絶縁箔を第1の箔導体要素21と共に巻線支持部11の周りに巻き付けることも、可能であり得る。
【0034】
図1Aにおいて認識し得るように、積層方向Sは、巻線軸20に対して平行に延びている。換言すれば、導体箔22は、巻線軸20の方向に沿って、したがって垂直方向に、重なり合って配置されている。したがって、導体箔22の厚さDによって設定される方向は、巻線軸20に対して平行である。導体箔22は、導体箔22の長さ及び幅に対して平行な水平面内で、巻線軸20の周りを螺旋状に延びている。
【0035】
第1のコア要素1は、更に、巻線支持部11と共に巻線チャンバ13を規定する縁部12を有し、当該巻線チャンバ13内に第1の巻線体2が配置されている。例えばポットコア又はEコアとしての第1のコア要素1の設計に応じて、縁部12は、第1の巻線体2を、水平面内で完全に又は少なくとも部分的に取り囲むことができる。第1の箔導体要素21の記載された構成及び配置により、第1の巻線体2のために第1のコア要素1内に設けられた巻線チャンバ13の角部に至るまで、第1の箔導体要素21を配置することができる。
【0036】
図1Aに更に示されているように、巻線支持部11は、垂直方向、すなわち巻線軸20に対して平行な方向において、第1の箔導体要素21よりも、したがって第1の巻線体2よりも、大きな高さを有することができる。更に、巻線支持部11は、垂直方向において、縁部12よりも小さな高さを有することができる。したがって、第1のコア要素1が更なるコア要素によって覆われる場合、巻線支持部11の上方に垂直方向の空隙が形成され得る。巻線支持部11のうち空隙に隣接する領域を空いたままにすることにより、幾何学的形状に応じて、空隙における漂遊磁界を低減すること又は回避することさえもが、可能であり得る。
【0037】
図2には、第1のコア要素1及び第1の巻線体2に加えて、第2のコア要素1'及び第2の巻線体2'を有するコイル素子100の更なる実施例が、示されている。第1のコア要素1及び第1の巻線体2について上述した特徴は、第2のコア要素1’及び第2の巻線体2’に、同様に当てはまる。特に好ましくは、第1及び第2のコア要素1、1’は、図示されているように、同様に設計され得る。したがって、第2の巻線体2’は、第1の箔導体要素21と同様に設計された第2の箔導体要素21’を有する。第1及び第2の巻線体2、2’、したがって第1及び第2の箔導体要素21、21’は、好ましくは、互いに直列に接続されている。
【0038】
第2の巻線体2’を伴う第2のコア要素1’は、第1の巻線体2を伴う第1のコア要素1の上に、第1及び第2の巻線体2、2’が互いに対向して配置されるよう、配置されている。容易に認識し得るように、第2の巻線体2’を伴う第2のコア要素1’は、第1の巻線体2を伴う第1のコア要素1の上に、積層方向Sに沿って鏡面対称に配置されており、第1及び第2のコア要素1、1’の縁部12、12’は、互いに支持し合うことができる。
【0039】
第1及び第2のコア要素1、1’の巻線支持部11、11’の間には、それぞれの縁部12、12’と比較して小さな巻線支持部11、11’の高さに起因して、空隙4が形成されている。巻線体2、2’が、更に、巻線支持部11、11’よりも小さな高さを有することにより、各巻線支持部11、1’は、空いたままの領域を有する。前の実施例に関連して説明したように、中央領域とも呼ばれ得る、巻線支持部11、11’のうち空隙4にそれぞれ隣接する領域を、空いたままにすることにより、空隙4における漂遊磁界を低減し又は回避することさえできる。
【0040】
図3A及び3B並びに図4A及び4Bには、それぞれ、断面図及び3次元図で(図4Bでは、より良好に理解し得るよう切り開かれている)、図1A~1C及び図2と関連して示された実施例の変形例である、コイル素子100の更なる実施例が示されている。純然たる例示として、図3A~4Bのコア要素は、ポットコアとして形成されている。これに代えて、上述したように、他のコア形状も可能である。
【0041】
前の実施例と比較して、図3A及び3B並びに図4A及び4Bに示された実施例では、第1の巻線体2又は第1及び第2の巻線体2、2’の巻線の間に、それぞれ磁性材料3が配置されている。特に好ましくは、図示されているように、直に隣接する巻線の間に、磁性材料3が配置されている。好ましくは、磁性材料3は、第1のコア要素1又は第1及び第2のコア要素1、1’の透磁率以下の透磁率を有する。特に好ましくは、磁性材料3は、10以上100以下の透磁率を有する。
【0042】
図3A~4Bに示された実施例では、磁性材料3は、それぞれ、磁気テープとも呼ばれ得る磁気バンド31によって形成され、当該磁気バンドは、それぞれの箔導体要素21、21’と共に、それぞれの巻線支持部11、11’の周りに巻かれている。磁気バンド31は、例えば、プラスチック支持体を形成するプラスチック材料を含むことができ、当該プラスチック材料の内部及び/又は上には、フェライト系及び/又は鉄系の粒子、粉末粒子及び/又はナノ微結晶が、埋め込まれているか又は配置されている。
【0043】
磁性材料3は、垂直方向において、すなわち積層方向Sに沿って、それぞれの箔導体要素21、21’の高さ以上の高さを有する。特に好ましくは、磁性材料3は、垂直方向において、それぞれの箔導体要素21、21’の垂直方向の高さよりも大きな高さを有し、その結果、磁性材料3は、垂直方向において、それぞれの箔導体要素21、21’よりも高く、したがって、垂直方向において箔導体要素21、21’を超えている。
【0044】
それぞれの箔導体要素21、21’の巻線に対して平行な磁性材料3を使用することにより、磁界誘導が改善され得る。シミュレーションによって、例えば、図4に示されたコイル素子100が、巻線間に磁性材料を使用することができない通常の撚り線ベースの巻線体が使用された、対応するコア要素及び寸法を有する従来のコイル設計と比較して、明らかに小さな交流巻線損失を有することを、示すことができる。
【0045】
図3B及び4Bに示されているように、それぞれのコア要素1、1’の開口を通じて外部に案内される箔導体要素21、21’の一部は、電気接続部を形成することができる。これに代えて、他の電気接続部を設けることもできる。
【0046】
磁性材料3としての磁気バンドに代えて、第1の箔導体要素21又は第1及び第2の箔導体要素21、21’を、磁性材料3内にそれぞれ埋め込むことができる。第1の箔導体要素21の一部に基づいて図5に例示的に示されているように、例えばフェライト系及び/又は鉄系の粒子、粉末粒子及び/又はナノ微結晶が含まれたプラスチック材料によって形成された磁気塗料32を、このために使用することができる。このために、磁性材料3は、好ましくは、コア要素の巻線支持部に巻き付けられる前に、側面24上に塗布されることができる。
【0047】
図6の第1の巻線体2を伴う第1のコア要素1の一部に示されているように、更なる実施例による第1のコア要素1は、磁性材料3を形成し、第1の箔導体要素21の巻線間に配置されるウェブ状の部分14を有することもできる。換言すれば、第1のコア要素1は、巻線支持部11の周りを螺旋状に延びるチャネルを有することができ、当該チャネル内には、第1の箔導体要素21が、好ましくは完全に埋没して配置されている。第2のコア要素1’を有するコイル素子100の場合、図4A及び4Bに示されているように、第2のコア要素1’は、対応するウェブ状の部分、したがって対応する螺旋状のチャネルを有することができ、当該チャネル内には第2の箔導体要素が配置されている。
【0048】
図面に関連して記載された特徴及び実施例は、全ての組み合わせが明示的に記載されていなくても、更なる実施例に従って互いに組み合わせることができる。更に、図面に関連して記載された実施例は、代替的に又は付加的に、一般的な部分の記載による更なる特徴を有することができる。
【0049】
本発明は、実施例を参照した記載によって、これらに限定されない。むしろ、本発明は、全ての新しい特徴、及び、特に特許請求の範囲における全ての特徴の組み合わせを含む全ての特徴の組み合わせを、たとえ当該特徴又は組み合わせ自体が特許請求の範囲又は実施例において明示的に提示されていない場合であっても、含む。
【符号の説明】
【0050】
1、1’ コア要素
2、2’ 巻線体
3 磁性材料
4 空隙
11、11’ 巻線支持部
12、12’ 縁部
13 巻線チャンバ
14 ウェブ状の部分
20 巻線軸
21、21’ 箔導体要素
22 導体箔
23 電気絶縁材料
24 側面
31 磁気バンド
32 磁気塗料
100 コイル素子
B 幅
d 厚さ
D 厚さ
H 高さ
S 積層方向
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6