(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-03-14
(45)【発行日】2023-03-23
(54)【発明の名称】輸液ポンプ
(51)【国際特許分類】
A61M 5/142 20060101AFI20230315BHJP
F04B 43/12 20060101ALI20230315BHJP
A61M 5/168 20060101ALI20230315BHJP
【FI】
A61M5/142 502
F04B43/12 C
A61M5/168 500
(21)【出願番号】P 2019024068
(22)【出願日】2019-02-14
【審査請求日】2021-12-03
(73)【特許権者】
【識別番号】505227043
【氏名又は名称】野村ユニソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002697
【氏名又は名称】めぶき弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100104709
【氏名又は名称】松尾 誠剛
(72)【発明者】
【氏名】篠原 亨
【審査官】田中 玲子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-214793(JP,A)
【文献】特表2014-531556(JP,A)
【文献】特開平02-004382(JP,A)
【文献】特開平11-137682(JP,A)
【文献】特開2004-033545(JP,A)
【文献】特開2005-094920(JP,A)
【文献】特開2004-024476(JP,A)
【文献】特開平05-084296(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/142
F04B 43/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するチューブの閉塞点を上流側から下流側に順次移動させながら輸液するペリスタルティック式の輸液ポンプであって、
前記チューブに沿って輸液方向に配列され、それぞれが独立して前記チューブの閉塞及び解放を順次繰り返して輸液する複数の第1圧電アクチュエータユニットと、
前記第1圧電アクチュエータユニットよりも下流側に配置され、前記チューブを閉塞する又は前記チューブの流路にオリフィスを形成する第2圧電アクチュエータユニットと、
を有し、
前記第1圧電アクチュエータユニットは、前記チューブに向かってチューブ押圧部材を進退させる第1圧電アクチュエータと、前記チューブを挟んで前記第1圧電アクチュエータに対向して配列され前記チューブに向かってチューブ押圧ブロックを進退させる第2圧電アクチュエータと、を有し、
複数の前記第1圧電アクチュエータ各々の変位方向端部には、前記第1圧電アクチュエータの変位方向に対して直交する方向に変位する変位部を有する第3圧電アクチュエータが固定され、
前記変位部には前記チューブ押圧部材が固定されており、前記第3圧電アクチュエータは、前記チューブ押圧部材の一つが前記チューブを閉塞し、閉塞点よりも下流側の前記第1圧電アクチュエータユニットが前記チューブを解放し始めると同時に前記チューブ押圧部材を輸液方向に移動させるように制御される、
ことを特徴とする輸液ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載の輸液ポンプにおいて、
複数の前記第1圧電アクチュエータユニットのうち、最下流に配置される前記第1圧電アクチュエータユニットが前記チューブを解放するときの加速度は、上流側の第1圧電アクチュエータユニットが前記チューブを閉塞するときの加速度よりも大きい、
ことを特徴とする輸液ポンプ。
【請求項3】
請求項1に記載の輸液ポンプにおいて、
前記第1圧電アクチュエータ、前記第2圧電アクチュエータ及び前記第3圧電アクチュエータは、電圧を印加することによって伸長する積層型の圧電素子と、前記圧電素子が伸長する際に伸長方向に対して垂直方向、かつ前記圧電素子から離れる方向に伸長量を拡大する第1変位拡大機構と、を有し、
前記第1変位拡大機構は、前記圧電素子の伸縮方向両端部を固定する固定部、前記固定部両側から前記圧電素子の表裏両面側に延在する梁部及び前記梁部の長さ方向中央部に設けられて前記圧電素子の伸縮動作に連動して伸縮方向に対して垂直方向に移動する変位部を有している、
ことを特徴とする輸液ポンプ。
【請求項4】
請求項1に記載の輸液ポンプにおいて、
前記チューブ押圧部材は、前記チューブ側の先端部に前記チューブを押圧して輸液方向に移動する際に転動するローラを有している、
ことを特徴とする輸液ポンプ。
【請求項5】
請求項1に記載の輸液ポンプにおいて、
前記第2圧電アクチュエータユニットは、前記チューブに向かってチューブ押圧部を変位させる第4圧電アクチュエータと、前記チューブを挟んで前記第4圧電アクチュエータに対向して配列されて前記チューブに向かって前記チューブ押圧部を変位させる第5圧電アクチュエータと、を有している、
ことを特徴とする輸液ポンプ。
【請求項6】
請求項5に記載の輸液ポンプにおいて、
前記第4圧電アクチュエータ及び前記第5圧電アクチュエータは、電圧を印加することによって伸長する積層型の圧電素子と、前記圧電素子が縮小する際に縮小方向に対して垂直方向、かつ前記圧電素子から離れる方向に縮小量を拡大する第2変位拡大機構と、を有し、
前記第2変位拡大機構は、前記圧電素子の伸縮方向両端部を固定する固定部、前記固定部両側から前記圧電素子の表裏両面側に延在する梁部及び前記梁部の長さ方向中央部に設けられて前記圧電素子の伸縮に連動して伸縮方向に対して垂直方向に移動する変位部を有している、
ことを特徴とする輸液ポンプ。
【請求項7】
請求項
3に記載の輸液ポンプにおいて、
前記第1変位拡大機
構は、非磁性の薄板材料によって一体で成形されている、
ことを特徴とする輸液ポンプ。
【請求項8】
請求項6に記載の輸液ポンプにおいて、
前記第2変位拡大機構は、非磁性の薄板材料によって一体で成形されている、
ことを特徴とする輸液ポンプ。
【請求項9】
請求項1に記載の輸液ポンプにおいて、
前記第2圧電アクチュエータユニットの下流側に単位時間当たりの輸液量を測定する流量センサをさらに有し、
前記流量センサは、測定結果に基づき複数の前記第1圧電アクチュエータユニットそれぞれの閉塞及び解放の速度並びに駆動ストロークを制御し、かつ前記第2圧電アクチュエータの駆動ストロークを制御するフィードバック手段を有している、
ことを特徴とする輸液ポンプ。
【請求項10】
請求項1に記載の輸液ポンプにおいて、
前記第1圧電アクチュエータユニットより上流側に配置される気泡センサ、流量センサ及び前記第2圧電アクチュエータユニットと前記流量センサとの間に配設される閉塞センサ並びにフリーフロー防止クランプをさらに有し、
前記気泡センサ、前記閉塞センサ、前記フリーフロー防止クランプ及び前記流量センサは、非磁性材料で構成されている、
ことを特徴とする輸液ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、輸液ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、各種液体を輸液する装置としてペリスタルティック式の輸液ポンプがある。ペリスタルティック式の輸液ポンプは、可撓性を有するチューブの閉塞点を上流側から下流側に向かって順次移動させて輸液するというものである。ペリスタルティック式の輸液ポンプとしては、複数のフィンガーの進退動作による蠕動運動によって輸液する輸液ポンプ、複数のチューブローラの移動によって輸液する輸液ポンプなどがある。これらの輸液ポンプは、チューブの流路断面積と閉塞点の移動速度によって輸液量が規定されるものである。
【0003】
ペリスタルティック式の輸液ポンプは、多種多様な液体を輸液することが可能であることから、1台の輸液ポンプで要求輸液量や使用態様(使用目的や使用場所など)に柔軟に対応可能であることが望まれる。例えば、医療用の輸液ポンプとして使用する場合においては、薬液によって単位時間当たりの輸液量を切り換えることがある。このため医療現場においては、薬液或いは投与量によって輸液量を容易に切り換えることが可能であり、かつ輸液量の高精度な管理が可能な輸液ポンプが求められている。また、設置場所(使用場所)を選ばない輸液ポンプが求められている。直近においては、磁気共鳴画像診断装置(MR装置又はMRI装置という)の近くで使用可能な輸液ポンプが望まれている。
【0004】
特許文献1には、輸液用のチューブに沿って配置される複数のフィンガー及びこのフィンガーをチューブに向かって位相が異なる複数の偏心カムを蠕動運動させるポンプ機構と、偏心カムを回転させるモータとを有し、フィンガーによって上流側から下流側に向かって閉塞点を順次移動して輸液する輸液ポンプが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、上記特許文献1と同様なポンプ機構を有し、フィンガーの蠕動運動の駆動源として超音波モータを使用した輸液ポンプが開示されている。この輸液ポンプは、超音波モータを使用し、センサを含めた構成部品として非磁性なものを採用することによって、MRI室内やMRI装置の近傍において使用可能であるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2015-181550号公報
【文献】特開2004-24476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した特許文献1及び特許文献2は共に、複数のフィンガーを偏心カムによって蠕動運動させる構成であることから、輸液量を大流量と小流量とに切換える際には、輸液量に合わせてモータの回転速度を制御すること、或いはチューブの流路断面積を切り換えることになる。例えば、輸液量を0.1ml/h~1200ml/hというような広い輸液レンジに対応するモータの回転制御は出力トルクを考慮すると困難であり、微小輸液量0.1ml/hを実現するためには、1時間に蠕動運動を1サイクルだけ実行するというような非輸液時間が長い間歇的な輸液にならざるを得ず、例えば医療用として使用する輸液ポンプなどの場合には薬液の種類によっては適さないことがある。
【0008】
また、チューブの流路断面積を変える場合には、フィンガーのストロークを輸液量に対応して変えなければならないが、ポンプ機構の変更規模が大きくなり、輸液量に対応した輸液ポンプを用意しなければならないという課題がある。
【0009】
さらに、特許文献1及び特許文献2に記載の輸液ポンプは共に、複数の各フィンガーの進退速度は、カムシャフトの回転速度によって律せられていることから、最下流側のフィンガーがチューブを解放する際に液体がチューブ内を逆流して脈流が発生することがある。脈流が発生すると輸液量が不安定になる虞がある。
【0010】
そこで、本発明は、上記課題の少なくとも一つを解決するためになされたもので、大量輸液から微小輸液まで自在に切換えることが可能であり、かつ脈流の発生を抑えることが可能であり、さらに、MRI装置の近くでも使用可能な輸液ポンプを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
[1]本発明の輸液ポンプは、可撓性を有するチューブの閉塞点を上流側から下流側に順次移動させながら輸液するペリスタルティック式の輸液ポンプであって、前記チューブに沿って輸液方向に配列され、それぞれが独立して前記チューブの閉塞及び解放を順次繰り返して輸液する複数の第1圧電アクチュータユニットと、前記第1圧電アクチェータユニットよりも下流側に配置され、前記チューブを閉塞する又は前記チューブの流路にオリフィスを形成する第2圧電アクチュエータユニットと、を有していることを特徴とする。
【0012】
圧電アクチュエータは、印加する電圧をON/OFFすることによって伸縮する圧電素子を駆動源とするアクチュエータである。第1圧電アクチュエータユニット及び第2圧電アクチュエータユニットは、印加電圧によって駆動ストローク(圧電素子の伸縮量)を自在に制御することが可能である。第1圧電アクチュエータユニットの駆動ストロークを大きくし、チューブの閉塞及び解放の繰り返し速度(蠕動運動の速度)を上げれば輸液量を増加させることが可能となる。また、ストローク開始位置を印加電圧の中位(中間電圧)にすれば駆動ストロークを小さくすることができる。すなわちチューブの解放量を小さくし、閉塞及び解放の繰り返し速度を下げれば輸液量を極めて減少させることが可能となる。なお、オリフィスとは、チューブの流路断面積を部分的に小さくすることをさす。
【0013】
一方、第2圧電アクチュエータユニットはチューブの流路にオリフィスを形成して流路断面積を任意に変更できることから、上記第1圧電アクチュエータユニットと協働して流量を切り換えることが可能となり、所望の輸液量に調整することが可能となる。また、下流側の流路にオリフィスを形成すれば、最下流側の第1圧電アクチュエータユニットがチューブを解放した際のチューブの解放部が負圧になることで発生する逆流に起因する脈流を抑制することが可能となる。脈流を抑制すれば、輸液量に変動が少ない安定的な輸液が可能となる。また、第2圧電アクチュエータユニットによってチューブを閉塞すれば、全ての第1圧電アクチュエータユニットがチューブを解放する際(電圧をOFFにしたとき)に意図しない輸液を停止できる。さらに、第1圧電アクチュエータユニット及び第2圧電アクチュエータユニットは、駆動源を圧電素子とすることによって、DCモータ、ACモータなどとは異なり非磁性材料で構成することが可能である。
【0014】
従って、本発明の輸液ポンプによれば、大量輸液から微小輸液まで自在に切換えることが可能であり、かつ脈流の発生を抑えることが可能であり、さらに、MRI装置の近くでも使用可能となる。
【0015】
[2]本発明の輸液ポンプにおいては、前記第1圧電アクチュエータユニットは、前記チューブに向かってチューブ押圧部材を進退させる第1圧電アクチュエータと、前記チューブを挟んで前記第1圧電アクチュエータに対向して配列され前記チューブに向かってチューブ押圧ブロックを進退させる第2圧電アクチュエータと、を有していることが好ましい。
【0016】
前述した従来技術のカムによるフィンガーの蠕動運動に比べて圧電素子自体の伸縮量は小さい。そこで、チューブを閉塞する際に第1圧電アクチュエータと第2圧電アクチュエータとを駆動してチューブを挟むように押圧すれば、第1圧電アクチュエータが1個のときの駆動ストロークに対して両者の駆動ストロークの和の駆動ストロークが得られる。
【0017】
[3]本発明の輸液ポンプにおいては、複数の前記第1圧電アクチュエータ各々の変位方向端部には、前記第1圧電アクチュエータの変位方向に対して直交する方向に変位する変位部を有する第3圧電アクチュエータが固定され、前記変位部には前記チューブ押圧部材が固定されており、前記第3アクチュエータは、前記チューブ押圧部材の一つが前記チューブを閉塞し、かつ閉塞点よりも下流側の前記第1圧電アクチュータユニットが前記チューブを解放し始めると同時に前記チューブ押圧部材を輸液方向に移動させるように制御されることが好ましい。
【0018】
第1圧電アクチュエータの変位方向はチューブに垂直な方向であり、第3圧電アクチュエータの変位方向はチューブの延長方向、つまり輸液方向である。第1圧電アクチェータは、第3圧電アクチュータを介してチューブ押圧部材によってチューブを閉塞又は解放するする。チューブの閉塞点より下流側の第1圧電アクチュータユニットがチューブを解放し始めると同時に、第3圧電アクチュエータを駆動してチューブ押圧部材の閉塞点を下流側に移動させる。このようにすれば、チューブを解放する際のチューブの容積増加分を補えることから下流側からの逆流を阻止して逆流に起因する脈流を抑制することが可能となる。ここでの「同時」には、厳密な意味での同時の他、実用的な範囲内で時間のずれがある場合も含まれる。
【0019】
[4]本発明の輸液ポンプにおいては、複数の前記第1圧電アクチュエータユニットのうち、最下流に配置される前記第1圧電アクチュエータユニットが前記チューブを解放するときの加速度は、上流側の第1圧電アクチュエータユニットが前記チューブを閉塞するときの加速度よりも大きいことが好ましい。
【0020】
第1圧電アクチュエータにおいては、チューブを閉塞又は解放するときの加速度は印加電圧の変化率によって制御することができる。そこで、最下流に配置される第1圧電アクチュエータユニットがチューブを解放するときの加速度を、上流側の第1圧電アクチュエータユニットがチューブを閉塞するときの加速度よりも大きくすれば、上流側からの輸液圧力が下流側からの逆流圧力よりも高くなり下流側からの逆流を抑制できる。このため逆流に起因する脈流を抑制することが可能となる。
【0021】
[5]本発明の輸液ポンプにおいては、前記第1圧電アクチュエータ、前記第2圧電アクチュエータ及び前記第3圧電アクチュエータは、電圧を印加することによって伸長する積層型の圧電素子と、前記圧電素子が伸長する際に伸長方向に対して垂直方向、かつ前記圧電素子から離れる方向に伸長量を拡大する第1変位拡大機構と、を有し、前記第1変位拡大機構は、前記圧電素子の伸縮方向両端部を固定する固定部、前記固定部両側から前記圧電素子の表裏両面側に延在する梁部及び前記梁部の長さ方向中央部に設けられて前記圧電素子の伸縮動作に連動して伸縮方向に対して垂直方向に移動する変位部を有していることが好ましい。
【0022】
圧電素子は印加電圧によって伸縮量を高精度に制御することが可能であるが、前述したように圧電素子自体の伸縮量は小さい。そこで、第1変位拡大機構によって圧電素子の変位量を拡大することによってチューブの閉塞から解放に係る所定の駆動ストロークを確保することが可能となる。変位部は、圧電素子の表裏両面側に配置されるので圧電素子に対して2方向に移動することになることから、一方を固定すれば他方の変位量は一方の変位量の2倍となる。なお、第1圧電アクチュエータ及び第2圧電アクチュエータは、電圧OFFのときにチューブを解放し電圧ONのときにチューブを閉塞する、いわゆるノーマルオープン制御を行う。一方、第3圧電アクチュエータは、電圧ONのときにチューブを閉塞した状態で上流側から下流側にチューブ押圧部材を移動させ、電圧OFFのときに第1圧電アクチュエータの戻りに連動して初期位置に復帰する。
【0023】
[6]本発明の輸液ポンプにおいては、前記チューブ押圧部材は、前記チューブ側の先端部に前記チューブを押圧して輸液方向に移動する際に転動するローラを有していることが好ましい。
【0024】
第3圧電アクチュエータに固定されるチューブ押圧部材は、閉塞点を移動しつつチューブをしごくように輸液する。この際、ローラが転動することによってチューブに損傷を与えることを最小限に抑え耐久性を高めることが可能となる。
【0025】
[7]本発明の輸液ポンプにおいては、前記第2圧電アクチェータユニットは、前記チューブに向かってチューブ押圧部を変位させる第4圧電アクチュエータと、前記チューブを挟んで前記第4圧電アクチュエータに対向して配列されて前記チューブに向かって前記チューブ押圧部を変位させる第5圧電アクチュエータと、を有していることが好ましい。
【0026】
前述した従来技術のカムによるフィンガーの蠕動運動に比べて圧電素子自体の駆動ストロークは小さい。そこで、チューブを閉塞する際に第4圧電アクチュエータと第5圧電アクチュエータとを駆動しチューブを挟み込むように押圧すれば、第4圧電アクチュエータが1個のときの駆動ストロークに対して両者の駆動ストロークの和の駆動ストロークが得られる。
【0027】
[8]本発明の輸液ポンプにおいては、前記第4圧電アクチュエータ及び前記第5圧電アクチュエータは、電圧を印加することによって伸長する積層型の圧電素子と、前記圧電素子が縮小する際に縮小方向に対して垂直、かつ前記圧電素子から離れる方向に縮小量を拡大する第2変位拡大機構と、を有し、前記第2変位拡大機構は、前記圧電素子の伸縮方向両端部を固定する固定部、前記固定部両側から前記圧電素子の表裏両面側に延在する梁部及び前記梁部の長さ方向中央部に設けられて前記圧電素子の伸縮に連動して伸縮方向に対して垂直方向に移動する変位部を有していることが好ましい。
【0028】
積層型の圧電素子は印加電圧によって伸縮量を高精度に制御することが可能であるが、圧電素子自体の伸縮量(伸長量)は小さい。そこで、第2変位拡大機構によって圧電素子の変位量を拡大することによってチューブの閉塞及び解放に係る所定の駆動ストロークを確保することが可能となる。変位部は、圧電素子の表裏両面側に配置されるので圧電素子に対して2方向に移動することになることから、一方を固定すれば他方の変位量は一方の変位量の2倍となる。なお、第4圧電アクチュエータ及び第5圧電アクチュエータは、電圧ONのときにチューブを閉塞し、電圧OFFのときにチューブを解放する、いわゆるノーマルクローズ制御を行う。なお、第2変位拡大機構は、変位部が固定部よりも圧電素子から凸となる略パンタグラフ状の形状となる。
【0029】
[9]本発明の輸液ポンプにおいては、前記第1変位拡大機構又は前記第2変位拡大機構は、非磁性の薄板材料によって一体で成形されていることが好ましい。
【0030】
非磁性材料としては、例えば、炭素繊維強化樹脂や非磁性金属などがあり、圧電素子の伸縮に対する応答性が高い材料から選択される。第1圧電アクチュエータユニット及び第2圧電アクチュエータユニットが非磁性材料で構成されることによってMRI装置の近くにおいても輸液ポンプを使用することが可能となる。
【0031】
[10]本発明の輸液ポンプにおいては、前記第2圧電アクチュエータユニットの下流側に単位時間当たりの輸液量を測定する流量センサをさらに有し、前記流量センサは、測定結果に基づき複数の前記第1圧電アクチュエータユニットそれぞれの閉塞及び解放の速度並びに駆動ストロークを制御し、かつ前記第2圧電アクチュエータの駆動ストロークを制御するフィードバック手段を有していることが好ましい。
【0032】
前述したように、第1圧電アクチュエータユニットは、蠕動運動の速度及び駆動ストローク(チューブの解放量)を制御することによって輸液量を自在に調整することが可能である。一方、第2圧電アクチュエータは流路断面積を切り換えることによって第1圧電アクチュエータユニットの駆動と協働して輸液量を調整することが可能である。そこで、流量センサによって実際の単位時間当たりの輸液量を測定し、この測定結果に基づき第1圧電アクチュエータユニット及び第2圧電アクチュエータユニットを制御することによって所望の単位時間当たりの輸液量を高精度に管理することが可能となる。なお、圧電素子は応答性が高く、フィードバックデータに対して即応することできる。フィードバック手段としては、CPUなどの制御部である。
【0033】
[11]本発明の輸液ポンプにおいては、前記第1圧電アクチュエータユニットより上流側に配置される気泡センサ、流量センサ及び前記第2圧電アクチュエータユニットと前記流量センサの間に配設される閉塞センサ並びにフリーフロー防止クランプをさらに有し、前記気泡センサ、前記閉塞センサ、前記フリーフロー防止クランプ及び流量センサは、非磁性材料で構成されていることが好ましい。
【0034】
気泡センサは、チューブ内に規定以上の気泡が発生したことを検知した場合に警報を出す。閉塞センサは、稼働時にチューブが閉塞したことを検知して警報を出したり、稼働停止させたりする。また、フリーフロー防止クランプは、稼働停止時(故障や電源の電圧低下などを含む)に制御されない輸液を防止する。また、気泡センサ、閉塞センサ及びフリーフロー防止クランプは、前述した第1圧電アクチュエータユニット及び第2圧電アクチュエータユニットと共に非磁性であるからMRI室内やMRI装置の近くで使用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】輸液ポンプ1の全体構成を模式的に示す構成説明図である。
【
図2】輸液ポンプ1のシステム構成を示すブロック図である。
【
図4】
図3の図示左方側から見たポンプ機構40の構成を示す平面図である。
【
図5】
図3の下流側から見た第1圧電アクチュエータユニット5Aの構成を拡大して示す図である。
【
図6】第1圧電アクチュエータ30、第2圧電アクチュエータ31における圧電素子36の伸長量ΔLと変位部58,59の変位量ΔHの関係を説明するために示す図である。
【
図7】
図3の下流側から見た第2圧電アクチュエータユニット6の構成を拡大して示す図である。
【
図8】
図7に示す第2圧電アクチュエータユニット6のチューブ押圧部48,49を拡大して示す図である。
【
図9】輸液ポンプ1の稼働開始時の初期動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、本発明の実施の形態に係る輸液ポンプ1について、
図1~
図12を参照して説明する。以下に説明する輸液ポンプ1は、様々な種類の液体を輸液することが可能であり、例えば医療用に使用する輸液ポンプにおいては輸液対象の液体は薬液である。
【0037】
[輸液ポンプ1の概略全体構成]
図1は、輸液ポンプ1の全体構成を模式的に示す構成説明図である。なお、
図1は、各構成要素の形状は簡略して図示しており各構成要素の配置を説明する図である。輸液ポンプ1は、輸液パック2及び点滴筒3を介して滴下された液体を可撓性を有するチューブ4に導入し上流側から下流側にチューブ4を順次閉塞と解放を繰り返しながら輸液するペリスタルティック式の輸液ポンプである。
図1では、輸液方向を矢印で示している。輸液ポンプ1は、チューブ4に沿って上流側から下流側に配列される第1圧電アクチュエータユニット5A,5B,5C,5D,5Eと、第1圧電アクチュエータユニット5Eよりも下流側に配置される第2圧電アクチュエータユニット6と、を有している。なお、第1圧電アクチュエータユニット5A~5Eを総称して第1圧電アクチュエータユニット5と記載する。
【0038】
第1圧電アクチュエータユニット5は、
図1に示す例においては、5ユニットで構成さているが、5ユニットより少なくしても5ユニットより多くしてもよい。第1圧電アクチュエータユニット5A~5Eは、上流側から下流側に向かってチューブ4の閉塞及び解放を順次繰り返して輸液する。第1圧電アクチュータユニット5A~5Eのいずれかがチューブ4を閉塞した位置を閉塞点とする。すなわち、輸液ポンプ1は、チューブ4の閉塞点を輸液方向の上流側から下流側に順次移動しながら輸液するものである。
【0039】
第2圧電アクチュエータユニット6は、チューブ4を閉塞する又はチューブ4の流路にオリフィスを形成する。第2圧電アクチュエータユニット6がチューブ4を閉塞していれば、第1圧電アクチュエータユニット5がチューブ4を解放した状態(電圧が印加されない状態)において輸液を停止する機能を有する。さらに、第2圧電アクチュエータユニット6は、チューブ4にオリフィスを形成して流路断面積を切り換える機能を有している。
【0040】
輸液ポンプ1は、点滴筒3と第1圧電アクチュエータユニット5との間に配置される気泡センサ7と、第2圧電アクチュエータユニット6よりも下流側に配置される閉塞センサ8、フリーフロー防止クランプ9及び流量センサ10を有している。気泡センサ7は、チューブ4内に気泡があることを検出する光電式のセンサである。閉塞センサ8は、チューブ4の流路が閉塞されたことを検出する圧力センサであって、上流側でチューブ4が閉塞されると輸液がストップすることから圧力が低下し、下流側でチューブ4が閉塞されると圧力が上昇することを検出する。フリーフロー防止クランプ9は、稼働停止時(故障や電源の電圧低下などを含む)に制御されない輸液を防止する着脱式のクランプである。気泡センサ7、閉塞センサ8及びフリーフロー防止クランプ9は、非磁性材料で構成されている。
【0041】
流量センサ10は、単位時間当たりの輸液量を測定するものであり、流量センサ10としては輸液速度を直接検出するもの、輸液に伴う微細な発熱変化を検出するもの或いは圧力センサなどがある。輸液ポンプ1は、単位時間当たりの輸液量を高精度に制御することが可能であるが、輸液経路において流体抵抗の増減或いは温度変化などによって輸液量が変動することが考えられる。そこで流量センサ10で実際の輸液量を検出し、輸液量を増加させるか減少させるかを判定し、第1圧電アクチェータユニット5にフィードバックし、輸液量を高精度に制御する。このことについては、
図2を参照して説明する。気泡センサ7、第1圧電アクチュエータユニット5、閉塞センサ8及びフリーフロー防止クランプ9は、輸液ポンプ本体11に格納され、流量センサ10は、輸液ポンプ本体11の外部に配置される。
【0042】
次に、第1圧電アクチュエータユニット5及び第2圧電アクチュエータユニット6の概略構成について
図1を参照して説明する。前述したように、第1圧電アクチュエータユニット5は、それぞれが同じ構成の第1圧電アクチュエータユニット5A~5Eの5ユニットで構成されている。第1圧電アクチュエータユニット5は、第1圧電アクチュエータ30、第2圧電アクチュエータ31及び第3圧電アクチュエータ32で構成される。第1圧電アクチュエータ30と第2圧電アクチュエータ31とは同じ構成であり、チューブ4を挟んで対向するように配置される。第3圧電アクチュエータ32は、第1圧電アクチュエータ30に固定されている(
図3参照)。
【0043】
第1圧電アクチュエータ30と第2圧電アクチュエータ31の各々は、チューブ4に向かって進退(変位)するようにD/Aコンバータ16(
図2参照)によって制御される。また、第3圧電アクチュエータ32はチューブ押圧部材としてのローラ39を有しており、第1圧電アクチュエータ30の進退運動に追従すると共に、ローラ39を輸液方向に移動させる機能を有する。第1圧電アクチュエータユニット5のさらなる詳しい構成については、
図3及び
図4を参照して説明する。なお、第1圧電アクチュエータ30と第2圧電アクチュエータ31とは、同期して駆動することも独立して駆動することも可能である。
【0044】
第2圧電アクチェータユニット6は、第4圧電アクチュエータ34と第5圧電アクチュエータ35とで構成されている。
図1に示すように、第4圧電アクチュエータ34と第5圧電アクチュエータ35とは、チューブ4を挟んで対向して配置され、互いにチューブ4に向かってチューブ押圧部48,49を進退させる。第2圧電アクチュエータユニット6のさらに詳しい構成については、
図7及び
図8を参照して説明する。図示は省略するが、輸液ポンプ本体部11はベース部と扉部を有している。例えば、
図1において、チューブ4から図示右方側がベース部であり、図示左方側が扉部である。第1圧電アクチュエータ30、第3圧電アクチュエータ32及び第4圧電アクチュエータ34は扉部側に配置されており、第2圧電アクチュエータ31及び第5圧電アクチュエータ35はベース部側に配置されている。扉部とベース部とはヒンジで連結される。輸液ポンプ1は、ベース部に扉部を閉めたときに輸液ポンプとしての機能を発揮するように構成されている。次に輸液ポンプ1のシステム構成について
図2を参照して説明する。
【0045】
図2は、輸液ポンプ1のシステム構成を示すブロック図である。
図1も参照しながら説明する。
図2に示すように、輸液ポンプ1は、駆動制御、検出制御、入力制御、表示制御及び電源制御など輸液ポンプ1の全体を制御する制御部(M-CPU)15を有している。輸液ポンプ1は、前述した第1圧電アクチュエータユニット5及び第2圧電アクチュエータユニット6の駆動を制御するD/Aコンバータ16、エネルギー源としてのリチウムイオン電池17及び蓄電コントローラ18を有している。エネルギー源としては、商用電源を使用することが可能となっており電圧を制御するための電源ユニット19をさらに有している。蓄電コントローラ18と電源ユニット19とは、人為的に切替えたり自動的に切替えたりすることが可能であって、共に制御部15によって出力電圧が制御される。
【0046】
D/Aコンバータ16は、制御部15の命令に従い第1圧電アクチュエータユニット5及び第2圧電アクチュエータユニット6の駆動を制御する。第1圧電アクチュエータユニット5においては、第1圧電アクチュエータユニット5A~5Eそれぞれの駆動タイミング、駆動ストローク、駆動速度及び加速度が制御される。具体的には、第1圧電アクチュエータユニット5A~5Eにおいては、第1圧電アクチュエータ30及び第2圧電アクチュエータ31の印加電圧及び周波数を制御し、第3圧電アクチュエータ32の駆動タイミング、印加電圧及び周波数を制御する。第2圧電アクチュエータユニット6においては、第4圧電アクチュエータ34及び第5圧電アクチュエータ35の駆動タイミング、印加電圧及び周波数を制御する。印加電圧とは、圧電素子36に印加される電圧である。
【0047】
輸液ポンプ1は、表示モニター20、レシピ入力部21及び音声出力部22を有している。表示モニター20は、輸液ポンプ1の使用対象者のデータ、駆動条件(レシピという)及び駆動状態を表示する液晶表示デバイスや有機EL表示デバイスなどである。レシピ入力部21は、医療従事者が使用対象者のデータ及び駆動条件などのレシピを入力する入力装置である。レシピ入力は、PCやスマートホンなどの端末から入力するようにしてもよい。入力されたレシピは表示モニター20に表示される。なお、表示モニター20をタッチパネル構成としてレシピ入力部21と兼用できるような構成としてもよい。音声出力部22は、気泡センサ7、閉塞センサ8或いは流量センサ10が予め設定されている規定範囲を外れたことを検出した際に音声やブザーなどで警報を発する。従って、音声出力部22に替えてランプ表示などにすることが可能である。制御部15は、流量センサ10から入力される実際の流量測定データに基づきD/Aコンバータ16によって第1圧電アクチュエータユニット5の駆動制御を行うフィードバック手段としての機能を有している。輸液ポンプ1は、流量センサ10の流量測定データに基づき輸液量を高精度に管理することが可能となっている。
【0048】
扉開閉センサ23は、扉部の開閉状態を検出する。扉部がベース部に完全に閉められたことを検出して初めて輸液ポンプ1が稼働可能となり、扉部が開いていることを検出したときには輸液ポンプ1を稼働禁止とする。この制御は制御部15が司る。なお、制御部15には、第1圧電アクチュエータユニット5及び第2圧電アクチュエータユニット6の駆動方法に関わるプログラムなどを格納する格納する記憶回路、流量センサ10の測定結果と設定値とを比較する比較部、及びその比較値との差を演算して駆動方法を選択する演算部を有している。
【0049】
[ポンプ機構40の構成]
図3は、ポンプ機構40の構成を示す正面図、
図4は、
図3の図示左方側から見たポンプ機構40の構成を示す平面図である。なお、
図3及び
図4において太い矢印が輸液方向を表している。
図3及び
図4に示すように、ポンプ機構40は、第1圧電アクチュエータユニット5と第2圧電アクチュエータユニット6とから構成される。第1圧電アクチュエータユニット5は、上流側から順に配列される第1圧電アクチュエータユニット5A~5Eの5ユニットで構成されている。第1圧電アクチュエータユニット5A~5Eは同じ構成であって、それぞれが第1圧電アクチュエータ30、第2圧電アクチュエータ31及び第3圧電アクチュエータ32で構成されている。第1圧電アクチュエータ30は、圧電素子36と非磁性の薄板材料で形成される第1変位拡大機構37(詳しくは、
図5参照)とから構成されていて第1圧電アクチュエータ30には、L型フレーム38を介して第3圧電アクチュエータ32の一方の変位部が固定されている。
【0050】
L型フレーム38の一辺が第1圧電アクチュエータ30に固定され、直角方向に曲げられた他の1辺に第3圧電アクチュエータ32の一方の変位部が固定される。従って、第3圧電アクチュエータ32は、第1圧電アクチュータ30によってチューブ4に向かって進退される。第3圧電アクチュエータ32は、圧電素子36と第1変位拡大機構37とで構成されている。第3圧電アクチュエータ32のL型フレーム38との固定端の反対側の変位部にはローラ支持部材33が固定されていて、ローラ支持部材33のチューブ4側先端にはチューブ押圧部材としてのローラ39が回転可能に取付けられている。
【0051】
第2圧電アクチュータ31は、圧電素子36と第1変位拡大機構37とで構成されている。第2圧電アクチュータ31には、第1変位拡大機構37のチューブ4側の変位部にチューブ押圧部材としてのチューブ押圧ブロック41が固定されている。
【0052】
第1圧電アクチュエータ30、第2圧電アクチュエータ31及び第3圧電アクチュエータ32は、それぞれ圧電素子36及び第1変位拡大機構37の構成は同じであるが、第2圧電アクチェータ31には変位部にチューブ押圧ブロック41が固定されており、第3圧電アクチュエータ32には変位部にローラ支持部材33を介してローラ39が固定されている。また、第1圧電アクチュエータ30の変位部にはL型フレーム38が固定されていることが他の各圧電アクチェータとの相違点である。
【0053】
図3及び
図4に示すように、第1圧電アクチュエータ30においては、圧電素子36は長さ方向が輸液方向に対して垂直方向になるように配置され、圧電素子36が長さ方向に伸縮すると、伸縮方向に対して垂直方向に第3圧電アクチュエータ32を介してローラ39をチューブ4に向かって進退させる。第2圧電アクチュエータ31は、第1圧電アクチュエータ30と同じ姿勢で配置されており、圧電素子36が長さ方向に伸縮すると、チューブ押圧ブロック41をチューブ4に向かって進退させる。第3圧電アクチュエータ32においては、圧電素子36が長さ方向に伸長すると、ローラ39を上流側から下流側に移動させるように第1圧電アクチュエータ30に固定されている。第1圧電アクチュエータ30と第2圧電アクチュエータ31とを逆方向に進退させることによってチューブ4を閉塞又は解放することが可能となっている。
【0054】
図3に示すように、第1圧電アクチェータ30は一方の変位部が扉部ベースフレーム42に固定され、他方の変位部にはL字フレーム38を介してローラ39を備えた第3圧電アクチュエータ32が固定されている。第2圧電アクチュエータ31は一方の変位部がベース部フレーム43に固定され、他方の変位部にはチューブ押圧ブロック41が固定されている。ローラ39及びチューブ押圧ブロック41が可動端となる第1圧電アクチュエータユニット5のさらなる詳細な構成については、
図5を参照して後述する。
【0055】
第2アクチュエータユニット6は、第4圧電アクチュエータ44及び第5圧電アクチュエータ45で構成されている。第4圧電アクチュエータ44は、圧電素子36と非磁性の薄板材料で形成される第2変位拡大機構46とから構成されている。第4圧電アクチュエータ44は、一方の変位部がベース台部47を介して扉部ベースフレーム42に固定され、チューブ4側の変位部にはチューブ押圧部材としてのチューブ押圧部48が固定されている。一方、第5圧電アクチュエータ45は、第4圧電アクチュエータ44と同じ構成であり圧電素子36と第2変位拡大機構46とで構成されている。第5圧電アクチュエータ45は、一方の変位部がベース部フレーム43に固定され、チューブ4側の変位部にはチューブ押圧部材としてのチューブ押圧部49が固定されている。
【0056】
図3に示すように、チューブ押圧部48,49は互いに対向して配置される。第2アクチュエータユニット6においては、圧電素子36は長さ方向が輸液方向に対して垂直方向になるように配置され、圧電素子36が長さ方向に伸縮すると、伸縮方向に対して垂直方向にチューブ押圧部48,49をチューブ4に向かって進退させる。すなわち、チューブ押圧部48,49が可動端となる。第2圧電アクチュエータユニット6のさらなる詳細な構成については、
図7を参照して説明する。
【0057】
図5は、
図3の下流側から見た第1圧電アクチュエータユニット5Aの構成を拡大して示す図である。なお、紙面の奥方向が上流側であり、手前方向が下流側である。圧電素子36は、四角柱の積層型圧電素子であって電圧印加によって長さ方向に伸長し、電圧を0Vにすると元の長さに戻るものである。第1圧電アクチュエータユニット5A~5Eは同じ構成であるから第1圧電アクチュエータユニット5Aを例示して説明する。前述したように、第1圧電アクチュエータユニット5Aは、第1圧電アクチュエータ30、第2圧電アクチュエータ31及び第3圧電アクチュエータ32で構成されている。第1圧電アクチュエータ30は、圧電素子36と第1変位拡大機構37とで構成されている。
【0058】
圧電素子36は、長さ方向両端部が第1変位拡大機能37に接着剤などで固定される。第1変位拡大機構37は、圧電素子36の伸縮方向両端部を固定する固定部55,55と、固定部55,55の両側から圧電素子36の表面36a側及び裏面36b側の両方に延在する梁部56,57とで構成される。梁部56,57各々の長さ方向中央部には、圧電素子36の外側方向に変位部58,59突設されている。第1変位拡大機構37は、変位部58,59の間の距離が固定部55の高さ寸法よりも狭くなる形状をしている。圧電素子36が伸長すると変位部58,59は圧電素子36の表面36a及び裏面36bから垂直方向に離れる方向に変位し、変位部58は扉部ベースフレーム42に固定されていることから固定端となり、自由端である変位部59にL型フレーム38を介して固定されている第3圧電アクチュエータ32をチューブ4に向かって移動する。
【0059】
第3圧電アクチュエータ32は、第1圧電アクチュエータ30を圧電素子36の中心軸Cを中心に90度回転した姿勢でL型フレーム38に固定されている(
図3参照)。従って、第3圧電アクチュエータ32においては、圧電素子36は電圧を印加すると長さ方向に伸長し、ローラ39を上流側から下流側に移動させる(
図3参照)。
【0060】
第2圧電アクチュエータ31は、第1圧電アクチュエータ30及び第3圧電アクチュエータ32と同じように圧電素子36及び第1変位拡大機構37で構成されている。圧電素子36が伸長すると変位部58,59は圧電素子36から垂直方向に離れる方向に変位する。第2圧電アクチュエータ31においては、変位部58はベース部フレーム43に固定されていることから、変位部59に固定されているチューブ押圧ブロック41はチューブ4に向かって移動する。第1変位拡大機構37は、圧電素子36の伸長量を、伸長方向に対して垂直方向に拡大する機能を有している。このことについて
図6を参照して説明する。
【0061】
図6は、第1圧電アクチュエータ30、第2圧電アクチュエータ31における圧電素子36の伸長量ΔLと変位部58,59の変位量ΔHの関係を説明するために示す図である。
図6に示すグラフは、変位部58の計算上の変位量を表している。なお、圧電素子36の長さの1/2をL、梁部56のLに対応する長さをSと表す。計算例としては、L=30mm、S=30.075mmとした。グラフは、横軸が圧電素子36の伸長量(ΔLμm)を表しており、縦軸は変位部58の変位量(ΔHμm)を表している。なお、第1変位拡大機構37は、非磁性材料で形成されており、非磁性材料としては、例えば、炭素繊維強化樹脂や非磁性金属などがある。
図6においては、圧電素子36の伸縮に対する応答性が高く、軽量で機械的強度が高い炭素繊維強化樹脂を例にして説明する。なお、第3圧電アクチュエータ32においても、伸長量ΔLと変位量ΔHの関係は第1圧電アクチュエータ30及び第2圧電アクチュエータ31と同じように説明できる。
【0062】
本例においては、圧電素子36の伸長に伴い変位部58は圧電素子36から離れる方向に変位する。圧電素子36が0から1.5μm伸びると変位量(ΔH)は700μm、圧電素子36が21μm伸びると変位量(ΔH)は1300μmとなる。グラフに示すΔLが1.5μm以上の範囲においては、ΔHは、ΔLに対してほぼ直線的に変化する。第1変位拡大機構37による拡大率は、ΔLが1.5μm~21μmの範囲で圧電素子36の伸長量ΔLに対して約30倍である。変位部59は、変位部58とは逆方向に同じ変位量で変位する。従って、変位部58が扉部ベースフレーム42に固定されているため、変位部59はチューブ4に向かって固定部である扉部ベースフレーム42からはΔHの2倍の変位量が得られる。
【0063】
一方、第2圧電アクチュエータ31においては、第1圧電アクチュエータ30と同じ構成を有しており、
図4に示したように変位部59がベース部フレーム43に固定されていることから第1圧電アクチュエータ30と同じ条件で駆動すれば、変位部58はチューブ4に向かって固定部であるベース部フレーム43からはΔHの2倍の変位量が得られる。ΔHの2倍の変位量、すなわち、チューブ押圧部材であるチューブ押圧ブロック41のストロークはΔHの2倍となる。従って、同じ印加電圧で駆動すれば、第1圧電アクチュエータ30と第2圧電アクチュエータ31との総ストロークはΔHの4倍となり、総ストロークの範囲内の直径を有するチューブにおいて輸液することが可能となる。
【0064】
積層型圧電素子は、印加電圧によって伸長量が変化し、その伸長量は印加電圧にほぼ比例する。従って、使用対象のチューブ外径及び所望の単位時間当たりの輸液量から第1圧電アクチュエータ30及び第2圧電アクチュエータ31の総ストロークを決定し、この総ストロークを得るための圧電素子36の伸長量を算出して印加電圧を制御すれば輸液量を自在に制御することが可能となる。すなわち、チューブ4を完全に開放する総ストロークで駆動すれば大量輸液が可能となり、解放量を抑えた中間電圧で駆動すれば連続輸液に近い輸液間隔で微小輸液が可能となる。従って、要求される単位時間当たりの輸液量を自在に制御することが可能となる。制御部15は、圧電素子36の伸長量ΔL、変位量ΔH及び印加電圧の関係をテーブルとしてプログラムしておき、適切な印加電圧で圧電アクチュエータユニット5A~5Eを制御する。なお、第1圧電アクチュエータ30及び第2圧電アクチュエータ31は、同期駆動させることも、独立して駆動することが可能であり、輸液量に対応して適切な駆動条件を選択することができる。
【0065】
第3圧電アクチュエータ32においては、第1圧電アクチュエータ30と同じ構成であり、独立して駆動することができることから印加電圧と印加タイミングを制御すれば、ローラ39を適切なタイミング及びストロークで輸液方向に沿って移動させることができる。すなわち、ローラ39の閉塞点P(
図8以降参照)から下流側の第1圧電アクチュエータユニット5の一つがチューブ4を解放する際に閉塞時に押しのけた液体の容積分を供給するよう制御する。
【0066】
続いて、第2圧電アクチュエータユニット6について
図7及び
図8を参照して説明する。
【0067】
図7は、
図3の下流側から見た第2圧電アクチュエータユニット6の構成を拡大して示す図である。なお、紙面の奥方向が上流側であり、手前方向が下流側である。第2圧電アクチュエータユニット6は、第4圧電アクチュエータ44、第5圧電アクチュエータ45で構成されている。第4圧電アクチュエータ44は、圧電素子36と第2変位拡大機構46とで構成されている。圧電素子36は、長さ方向両端部が第2変位拡大機能46に接着剤などで固定される。第2変位拡大機構46は、圧電素子36の伸縮方向両端部を固定する固定部63,63と、固定部両側から圧電素子36の表面36a側及び裏面36b側に延在する梁部64,65で構成されている。梁部64,65各々の中央部には、圧電素子36に対して外側方向に突設される突起部が設けられており、この突起部を圧電素子36が伸縮する際の変位部66,67とする。
【0068】
第2変位拡大機構46は、梁部64,65の長さ方向中央部の間隔が両端部よりも広くなる略パンタグラフ形状をしている。圧電素子36が伸長すると変位部66,67は圧電素子36の表面36a及び裏面36bから垂直方向に離れる方向に変位する。変位部66は、ベース台部47を介して扉部ベースフレーム42に固定されていることから固定端となり、自由端である変位部67にチューブ押圧部48が固定されている。このような構成によって変位部67はチューブ4に向かって進退する。
図7に示す圧電素子36は、印加電圧を0Vにしたときに圧電素子36が縮小しチューブ押圧部材48がチューブ4を閉塞する方向に変位した状態を表している。
【0069】
第5圧電アクチュエータ45は、第4圧電アクチュエータ44と同じ構成の圧電素子36及び第2変位拡大機構46で構成されている。変位部67はベース部フレーム43に固定されていることから、変位部66はチューブ4に向かって変位する。
図7は、第4圧電アクチュエータ44及び第5圧電アクチュエータ45両方の圧電素子36の印加電圧を0Vにしたときに圧電素子36が縮小しチューブ押圧部材48,49がチューブ4を閉塞した状態を表している。第4圧電アクチュエータ44及び第5圧電アクチュエータ45両方の圧電素子36に電圧を印加すると圧電素子36は伸長し、チューブ押圧部48,49がチューブ4から離れる方向に移動してチューブ4を解放する。
【0070】
第2変位拡大機構46は、前述した第1変位拡大機構37に対して形状が異なるものの同じ拡大作用で説明することが可能であるから詳細な説明は省略する。なお、第2圧電アクチュエータユニット6は、第1圧電アクチュエータユニット5に対して独立して駆動制御することが可能となっている。制御部15は、圧電素子36の伸長量ΔL、変位拡大量ΔH及び印加電圧の関係をテーブルとしてプログラムし、適切な印加電圧で第2圧電アクチュエータユニット6を制御する。なお、第4圧電アクチュエータ44及び第5圧電アクチュエータ45は、同期して駆動するようにしても独立して駆動するようにしてもよく、輸液量に対応して適切な駆動条件を選択することができる。
【0071】
第4圧電アクチェータ44はチューブ4側の変位部67にチューブ押圧部48を有し、第5圧電アクチュエータ45はチューブ4側の変位部66にチューブ押圧部49を有している。次に、チューブ押圧部48,49の形状について
図8を参照して説明する。
【0072】
図8は、
図7に示す第2圧電アクチュエータユニット6のチューブ押圧部48,49を拡大して示す図である。なお、
図8は、チューブ押圧部48,49以外は簡略化して表しており、
図7との共通部には
図7と同じ符号を付している。チューブ押圧部48及びチューブ押圧部49には、各々同じ形状の突起部50,51が対向するように形成されている。突起部50,51は、円弧で丸められた頂部52,53を有している。この頂部52,53がチューブ4を閉塞する位置を閉塞点Pとする。なお、輸液方向を矢印で示している。
図8に示すようにチューブ4を閉塞から全解放する間の中間の流路が形成された部分をオリフィスという。そこで、第2圧電アクチュエータユニット6をオリフィス形成ユニットと呼ぶことがある。第2圧電アクチュエータユニット6は、チューブ4を閉塞して輸液を止める機能及びチューブ4の流路断面積を変えて輸液量を調整する機能を有している。
【0073】
図8に示すように、閉塞点Pよりも上流側の斜面で形成される上流側開口部54aの開口長さD1は、下流側開口部54bの開口長さD2よりも長く設定している。頂部52,54をこのように形成すれば、閉塞点Pより上流側においてチューブ4は緩やかに変形して流体抵抗が小さくなり、下流側においてチューブ4は急激に変形することから下流側から上流側に向かう流体抵抗が大きくなる。従って、オリフィスを形成することと、頂部52,54をこのよう形状にすることとによって逆流を抑制し、逆流に起因する脈流を抑制することが可能となる。
【0074】
[輸液ポンプ1の駆動方法]
輸液ポンプ1の駆動方法は複数ある。そのうちから3つの方法を例にあげて
図9~
図12を参照して説明する。なお、以下に説明する図は模式化して表す動作説明図である。
図9~
図12においては、第1圧電アクチュエータユニット5A~5Eのチューブ押圧部材であるローラ39の動作方向を矢印で表している。まず、稼働開始時の初期動作について
図9を参照して説明する。
図9~
図12に示す矢印は、各チューブ押圧部材の動作方向を表している。
【0075】
図9は、輸液ポンプ1の稼働開始時の初期動作を説明する図である。
図9においては、輸液方向を左方側から右方側とし、輸液動作をする第1圧電アクチュエータユニット5A~5Eの動作とオリフィスを形成する第2圧電アクチュエータユニットの動作とを図示している。例えば、第1圧電アクチュエータユニット5A~5Eにおいては、第1圧電アクチュエータ30と第2圧電アクチュエータ31とが同期して動作するものして第1圧電アクチュエータユニット5の動作として説明する。一方、第2圧電アクチュエータユニット6においても、第4圧電アクチュエータ44と第5圧電アクチュエータとが同期して動作するものとして第2圧電アクチュエータユニット6の動作として説明する。なお、
図9~
図12においては、ローラ39がチューブ4を完全に開放する位置を下死点B、チューブ4を閉塞する位置を上死点T、下死点Bと上死点Tとの任意の中間位置を中間点Mとする。
【0076】
第1圧電アクチュエータユニット5A~5Eは、電圧ONで上死点T、電圧OFFで下死点B、下死点Bと上死点Tとの任意の中間電圧において中間点Mとなるように制御される。第2圧電アクチュエータユニット6は、電圧OFFで上死点T、電圧ONで下死点B、下死点Bと上死点Tとの任意の中間電圧において中間点Mとなるように制御される。初期動作においては、第3圧電アクチュエータ32は駆動しない。
【0077】
稼働開始時においては、まず、チューブ4に液体を充填させる動作を行う。
図9(a)に示すように、第2圧電アクチュエータユニット6は上死点Tにあってチューブ4を閉塞する。第1圧電アクチュエータユニット5A~5Eは下死点Bにある状態で、第2圧電アクチュエータユニット6から上流側に液体が充填された状態となる。第1圧電アクチュエータユニット5A~5Eは電圧OFF,第2圧電アクチュエータユニット6は電源OFFの状態である。
【0078】
続いて、
図9(b)に示す工程に移行する。第2圧電アクチュエータユニット6は中間点Mでチューブ4を解放し、第1圧電アクチュエータユニット5A~5Eは上死点Tに同時に移動する。すなわち、第1圧電アクチュエータユニット5A~5Eのチューブ押圧範囲の液体が輸液される。第1圧電アクチュエータユニット5A~5Eは電源ON,第2圧電アクチュエータユニット6は中間電圧が印加される。以降、第1圧電アクチェータユニット5A~5Eを
図9(c)~(f)の順に駆動する。
図9(b)においては、第2圧電アクチュエータユニット6が中間点Mにある例を示しているが、所望の単位時間当たりの輸液量の設定値によって第2圧電アクチュエータユニット6においてチューブ4の流路断面積が調整される。
【0079】
図9(c)は、第1圧電アクチュエータユニット5Aを上死点Tから下死点Bまで駆動する工程を示し、
図9(d)は、第1圧電アクチュエータユニット5A,5Bを上死点Tから下死点Bまで駆動する工程を示している。
図9(e)は、第1圧電アクチュエータユニット5A~5Cを上死点Tから下死点Bまで駆動する工程、
図9(f)は、第1圧電アクチュエータユニット5Dを上死点Tから下死点Bまで駆動し、第1圧電アクチュエータユニット5Aを下死点Bから上死点Tまで移動させる工程を示している。
図9(b)~(f)に示す初期動作においては、第1圧電アクチュエータユニット5Eは、常に上死点Tにあることから輸液されない。初期動作の間に、気泡センサ7、閉塞センサ8及び流量センサ10をモニタリングし自律的に輸液を開始する。
【0080】
図10は、輸液動作の第1例を説明する図である。なお、第1例は、第3圧電アクチュエータ32を駆動しない動作方法である。輸液動作は、
図9(f)に示した初期動作から自律的にスタートする。
図9(f)に示す工程では、第1圧電アクチュエータユニット5A,5Eが上死点Tにあって両者がチューブ4を閉塞し、両者の間に液体が充填される。
図10(a)に示す工程では、第1圧電アクチュエータユニット5Eがチューブ4の解放を開始し、第1圧電アクチュエータユニット5Aがチューブ4を閉塞した状態で第1圧電アクチュエータユニット5Bがチューブ4の閉塞を開始して輸液を開始する。続いて、
図10(b)に示す工程では、第1圧電アクチュエータユニット5Bがチューブ4を閉塞した状態で、第1圧電アクチュエータユニット5Aがチューブ4を解放し始め、第1圧電アクチュエータユニット5Cが閉塞し始めることで輸液が継続する。続いて、
図10(c)に示す工程では、第1圧電アクチュエータユニット5Cがチューブ4を閉塞した状態で、第1圧電アクチュエータユニット5Bがチューブ4を解放し始め、第1圧電アクチュエータユニット5Dがチューブ4を閉塞し始めることで輸液は継続する。
【0081】
続いて、
図10(d)に示す工程では、第1圧電アクチュエータユニット5Dがチューブ4を閉塞した状態で、第1圧電アクチュエータユニット5Cがチューブ4を解放し始め、第1圧電アクチュエータユニット5Eがチューブ4を閉塞し始めて輸液を継続する。続いて、
図10(e)に示す工程では、第1圧電アクチュエータユニット5Eがチューブ4を閉塞し、第1圧電アクチュエータユニット5Dがチューブ4を解放し始めると同時に第1圧電アクチュエータユニット5Aがチューブ4を閉塞し始める。第1圧電アクチュータユニット5Eが中間点Mから上死点に移動する間に輸液は継続する。
図10(a)~
図10(e)の工程において、閉塞点Pを上流側から下流側に移動させることによって輸液することが可能となっている。なお、
図10(f)は、前述した
図9(f)と同じ状態になることから、
図10(a)~
図10(e)の工程を輸液1サイクルとし、これを繰り返して輸液を継続する。輸液ポンプ1の停止信号が入力された時には、一旦、
図9(a)の状態に復帰し輸液を停止する。
【0082】
なお、第1圧電アクチェータユニット5は、上死点T(チューブ閉塞位置)から下死点B(チューブ解放)へ移行させる際、或いは下死点Bから上死点Tへ移行する際に圧電素子36に印加する電圧は、例えば、10Vから0V、或いは0Vから10Vというように一気に変化させるのではなく徐々に変化させる。例えば、圧電素子36を10Hz駆動したとして、通常の輸液動作において、解放時に加速度を25m/s2、閉塞時に加速度を25m/s2となるように印加電圧を制御するものとする。そこで、最終段の第1圧電アクチュエータユニット5Eが上死点Tから下死点Bに移行する際の加速度を35m/s2とし、第1圧電アクチュエータユニット5A~5Dよりも高い加速度で駆動すれば、閉塞点Pの上流側において第1圧電アクチュエータユニット5A~5Dのいずれかがチューブ4を閉塞又は中間点Mにあること或いは移動途中の場合、閉塞点Pの上流側の圧力が下流側の圧力よりも高くなること、最終段の閉塞点Pが瞬間的に解放されることなどから下流側からの逆流を阻止できる。従って、逆流に起因する脈流の発生を抑制し安定輸液が可能となる。
【0083】
次に、輸液動作の第2例について
図11を参照して説明する。なお、
図9において説明した初期動作は共通であり説明を省略する。第2例は、最上流側の第1圧電アクチュエータユニット5Aがチューブ4を閉塞するときに第3圧電アクチュエータ32を駆動する輸液動作である。
図11においては、輸液方向を左方側から右方側とする。
【0084】
図11は、輸液動作の第2例を説明する図である。
図11は、前述した
図10との相違個所のみを記載している。第2例における輸液動作は、初期動作の
図9(f)に示した状態から自律的にスタートする。
図9(f)に示す工程においては、第1圧電アクチュエータユニット5A,5Eが上死点Tにあり、両者がチューブ4を閉塞し、両者の間に液体が充填される。
図11(a)に示す工程においては、第1例(
図10参照)と同様に、第1圧電アクチュエータユニット5Eがチューブ4の解放を開始し、第1圧電アクチュエータユニット5Aがチューブ4を閉塞した状態で第1圧電アクチュエータユニット5Bが閉塞し始めて輸液を開始する。
【0085】
第1圧電アクチュエータユニット5Eがチューブ4の解放を開始すると同時に、第1圧電アクチュエータユニット5Aは第3圧電アクチュエータ32を駆動して、ローラ39がチューブ4を閉塞した状態で輸液方向に移動する。すなわち、ローラ39を下流方向に移動させることによって第1圧電アクチュエータユニット5Eが閉塞していたときの容積分の液体を供給する。このようにすれば、第1圧電アクチュエータユニット5Eがチューブ4を閉塞するときに押しのけた分の液体を上流側から供給することによって、下流側からの逆流を阻止できる。従って、逆流に起因する脈流の発生を抑制し安定輸液が可能となる。
【0086】
続いて、
図11(b)に示すように、第1圧電アクチュエータユニット5Bがチューブ4を閉塞し、第1圧電アクチュエータユニット5Aがチューブ4を解放し始め、第1圧電アクチュエータユニット5Cがチューブ4を閉塞し始める。第1圧電アクチュエータユニット5Aにおいては、チューブ4の解放動作と連動して第3圧電アクチュエータ32の印加電圧をOFFにして、ローラ39を駆動前の位置に復帰させる。以降の輸液動作は、
図10(c)~
図10(f)と同じであり、閉塞点Pを上流側から下流側に順次移動させて輸液を継続する。
【0087】
次に、輸液動作の第3例について
図12を参照して説明する。なお、
図9において説明した初期動作は共通であり説明は省略するが、第3例においては
図9(e)に示す動作までを初期動作とし、以降の動作を輸液動作とする。なお、第3例は、閉塞点Pの次の下流側の第1圧電アクチュエータユニットがチューブ4を解放し始めるタイミングで閉塞点Pを有する第1圧電アクチュエータユニットの第3圧電アクチュエータ32を駆動して閉塞点Pを下流方向に移動させ輸液動作である。
図12においては、輸液方向を左方側から右方側とする。
【0088】
図12は、輸液動作の第3例を説明する図である。第3例に係る輸液動作は、初期動作の
図9(e)に示した状態から自律的にスタートする。
図9(e)に示す工程では、第1圧電アクチュエータユニット5D,5Eが上死点Tにあり、両者がチューブ4を閉塞する。
図12(a)に示す工程では、第1圧アクチュータユニット5Eがチューブ4を解放し始めると同時にチューブ4を閉塞している第1圧電アクチュエータユニット5Dに固定されている第3圧電アクチュエータ32を駆動し、ローラ39(閉塞点P)を下流方向に移動する。閉塞点Pの下流側の第1圧電アクチュエータユニット5Eがチューブ4を解放すると、チューブ4を閉塞していたときの容積分の一部が上流側に逆流しようとする。そこで、閉塞点Pを輸液方向に移動させることによって逆流を阻止することが可能となり、逆流に起因する脈流の発生を抑制することが可能となる。
【0089】
図12(b)に示す工程では、第1圧電アクチュエータユニット5Cがチューブ4を閉塞し、第1圧電アクチュエータユニット5D,5Eがチューブ4を解放する。第1圧電アクチュエータユニット5Cは、第1圧電アクチュエータユニット5Dがチューブ4を解放し始めるタイミングでローラ39(閉塞点P)を輸液方向に移動する。
【0090】
図12(c)の工程では、第1圧電アクチュエータユニット5Bがチューブ4を閉塞し、第1圧電アクチュエータユニット5C,5D,5Eがチューブ4を解放する。第1圧電アクチュエータユニット5Bは、第1圧電アクチュエータユニット5Cがチューブ4を解放し始めるタイミングでローラ39(閉塞点P)を輸液方向に移動する。
【0091】
図12(d)に示す工程では、第1圧電アクチュエータユニット5Aがチューブ4を閉塞し、第1圧電アクチュエータユニット5B,5C,5D,5Eがチューブ4を解放する。第1圧電アクチュエータユニット5Aは、第1圧電アクチュエータユニット5Bがチューブ4を解放し始めるタイミングでローラ39(閉塞点P)を輸液方向に移動する。
【0092】
図12(e)に示す工程では、第1圧電アクチュエータユニット5Aがチューブ4を解放し始め、第1圧電アクチュエータユニット5Bがチューブ4を閉塞し、第1圧電アクチュエータ5Cがチューブ4を閉塞し始める。第1圧電アクチュエータユニット5D,5Eはチューブ4を解放している。閉塞点Pより下流の各第1圧電アクチュエータユニット5C~5Eは、解放状態或いは閉塞途中なのでローラ39(閉塞点P)は移動させない。
【0093】
図12(f)に示す工程では、第1圧電アクチュエータユニット5A,5Bがチューブ4を解放し、第1圧電アクチュエータユニット5Cがチューブ4を閉塞する。第1圧電アクチュエータユニット5Dは閉塞し始め、第1圧電アクチュエータユニット5Eはチューブ4を解放している状態である。閉塞点Pより下流の第1圧電アクチュエータユニット5D,5Eは、閉塞途中或いは解放しているのでローラ39(閉塞点P)は移動させない。
【0094】
図12(g)に示す工程では、第1圧電アクチュエータユニット5B,5Cがチューブ4を解放し或いは解放し始め、第1圧電アクチュエータユニット5Dがチューブ4を閉塞する。第1圧電アクチュエータユニット5Aはチューブ4を解放し、第1圧電アクチュエータユニットEはチューブ4を閉塞する途中である。閉塞点Pより下流の各第1圧電アクチュエータユニット5Eは閉塞途中なのでローラ39(閉塞点P)は移動させない。なお、
図12(h)は、前述した初期動作の
図9(e)の輸液動作に復帰した状態を表しているので説明を省略する。
【0095】
以上説明した輸液動作の第3例は、
図12(a)~
図12(d)に示すような閉塞点Pの次の下流側の第1圧電アクチュエータユニットがチューブ4を解放し始めるタイミングで閉塞点Pを下流方向に移動させ輸液動作である。
図12(e)~
図12(h)に示す輸液動作においては、閉塞点Pより下流側にチューブ4を解放し始める第1圧電アクチュエータユニットはないので第3圧電アクチュエータ32は駆動しない。このように、閉塞点Pの下流側の第1圧電アクチュエータユニットがチューブ4を解放し始めるタイミングで第3圧電アクチュエータ32を駆動してローラ39(閉塞点P)を下流側に移動させることによって逆流を阻止し、逆流に起因する脈流の発生を抑制することが可能となる。
【0096】
なお、第1例、第2例及び第3例は、輸液ポンプ1の駆動方法の一例であって、どの駆動方法を採用するかは予め制御部15に格納されているプログラムから選択することが可能である。すなわち、第1圧電アクチュエータユニット5A~5Eの駆動タイミング、駆動ストローク及び第2圧電アクチュエータユニット6の閉塞及びオリフィスサイズ(オリフィス部の流路断面積)などを設定する。例えば、5通りの駆動方をプログラムしておき液体の種類や輸液方法に適切な駆動方法を選択することが可能である。
【0097】
以上に説明したチューブ4を解放するということは、各第1圧電アクチュエータユニットを下死点まで移動してチューブ4の流路断面積を最大にすることである。しかし、本実施の形態におけるポンプ機構40は、第1圧電アクチュエータユニット5A~5Eのチューブ解放を任意の中間点Mに制御することが可能である。すなわち、チューブ4の流路断面積を自在に設定することが可能であるから、第1圧電アクチュータユニット5A~5Eの蠕動運動速度が同じであっても単位時間当たりの輸液量を少なくすることが可能となる。さらに、第1圧電アクチュータユニット5A~5Eの蠕動運動速度を遅くすることを組み合わせれば微小輸液が可能となる。従来技術においては、輸液量を0.1ml/h~1200ml/hというような広い輸液レンジに対応するモータの回転制御は出力トルクを考慮すると困難であり、微小輸液量0.1ml/hというような微小輸液を実現するためには、1時間に蠕動運動を1サイクルだけ実行するというような非輸液時間が長い間歇的な輸液になる。例えば、輸液ポンプ1を医療用として使用する場合には、薬液の種類によっては連続的な微小輸液が要求されることがある。そこで、中間電圧で第1圧電アクチュエータユニット5を駆動すれば、連続的な微小輸液を実現できる。
【0098】
以上説明した輸液ポンプ1は、チューブ4に沿って輸液方向に配列され、それぞれが独立してチューブ4の閉塞及び解放を順次繰り返して輸液する複数の第1圧電アクチュータユニット5と、第1圧電アクチェータユニット5よりも下流側に配置され、チューブ4を閉塞又はチューブ4の流路にオリフィスを形成する第2圧電アクチュエータユニット6と、を有している。
【0099】
第1圧電アクチュエータユニット5及び第2圧電アクチュエータユニット6は、印加電圧によって圧電素子36の伸縮量を自在に制御することが可能である。第1圧電アクチュエータユニット5の駆動ストローク(変位部58,59の変位量)を大きくし、チューブ4の閉塞及び解放の繰り返し速度(蠕動運動速度)を上げれば輸液量を増加させることが可能となる。また、印加電圧を最大ストロークの際の印加電圧に対して中間電圧にすれば駆動ストロークを小さく、すなわちチューブ4の解放量を小さくし、閉塞及び解放の繰り返し速度を下げれば微小輸液量とすることができる。従って、輸液ポンプ1は、第1圧電アクチュエータ30及び第2圧電アクチュエータ31の総駆動ストロークの範囲内であれば自在に輸液量を制御することが可能となる。
【0100】
第2圧電アクチュエータユニット6はチューブ4の流路にオリフィスを形成して流路断面積を任意に変更できることから、第1圧電アクチュエータユニット5の駆動ストローク及び蠕動運動速度を組み合わせて所望の輸液量に調整することが可能となる。また、下流側の流路にオリフィスを形成すれば、最下流側の第1圧電アクチュエータユニット5Aがチューブを解放した際のチューブの解放部が負圧になることで発生する逆流に起因する脈流を抑制することが可能となる。脈流を抑制すれば、輸液量に変動がない安定的な輸液が可能となる。また、第2圧電アクチュエータユニット6によってチューブ4を閉塞すれば、第1圧電アクチュエータユニット5がチューブ4を解放する際に意図しない輸液を停止できる。さらに、第1圧電アクチュエータユニット5及び第2圧電アクチュエータユニット6は、駆動源を圧電素子36とすることによって、DCモータ、ACモータなどとは異なり非磁性材料で構成することが可能である。
【0101】
従って、輸液ポンプ1は、大量輸液から微小輸液まで自在に切換えることが可能であり、かつ脈流の発生を抑えることが可能であり、さらに、MRI装置の近くでも使用可能となる。
【0102】
第1圧電アクチュエータユニット5は、チューブ4に向かってチューブ押圧部材であるローラ39を進退させる第1圧電アクチュエータ30と、チューブ4を挟んで第1圧電アクチュエータ30に対向して配列されてチューブ4に向かってチューブ押圧ブロック41を進退させる第2圧電アクチュエータ31と、を有している。
【0103】
前述した従来技術のカムによるフィンガーの蠕動運動に比べて圧電素子36自体の伸縮量は小さい。そこで、チューブ4を閉塞する際に第1圧電アクチュエータ30と第2圧電アクチュエータ31とを駆動しチューブ4を挟むように押圧すれば、第1圧電アクチュエータ30が1個のとの駆動ストロークに対して両者の駆動ストロークの和の駆動ストロークが得られる。すなわち、チューブ4を解放する際の流路断面積を大きくすることが可能となる。従って、第1圧電アクチュエータ30及び第2圧電アクチュエータ31の総駆動ストロークの範囲内で大量輸液から微小量輸液を実現できる。
【0104】
また、第1圧電アクチュエータユニット5には、複数の第1圧電アクチュエータ30各々の変位方向端部に第1圧電アクチュエータ30の変位方向に対して直交する方向に変位する変位部58,59を有する第3圧電アクチュエータ32が固定されている。変位部59にはチューブ押圧部材であるローラ39が固定されており、第3圧電アクチュエータ32はローラ39の一つがチューブ4を閉塞し、かつ閉塞点Pよりも下流側の第1圧電アクチュータユニットがチューブ4を解放し始めると同時に、ローラ39(閉塞点P)を輸液方向に移動させるように制御される。
【0105】
第1圧電アクチュエータ30の変位部58,59の変位方向はチューブ5に垂直な方向であり、第3圧電アクチュエータ32の変位部58,59の変位方向はチューブ4の延長方向、つまり輸液方向である。第1圧電アクチェータ30は、第3圧電アクチュータ32を介してチローラ39によってチューブ4を押圧する。チューブ4の閉塞点Pより下流側の第1圧電アクチュータユニットがチューブ4を解放し始めると同時に、第3圧電アクチュエータ32を駆動してローラ39の閉塞点Pを下流側に移動させる。このようにすれば、チューブ4を解放する際のチューブ4の容積増加分を補えることから下流側からの逆流を阻止して逆流に起因する脈流を抑制することが可能となる。
【0106】
また、第1圧電アクチュエータユニット5A~5Eのうち、最下流に配置される第1圧電アクチュエータユニットがチューブ4を解放するときの加速度は、上流側の第1圧電アクチュエータユニットがチューブ4を閉塞するときの加速度よりも大きい。
【0107】
圧電素子36を駆動源とする第1圧電アクチュエータ30及び第2圧電アクチュエータ31は、チューブ4を閉塞又は解放するときの加速度は1ストロークの内の印加電圧の変化率によって制御することができる。そこで、最下流に配置される第1圧電アクチュエータユニット5Eがチューブ4を解放するときの加速度を、上流側の第1圧電アクチュエータユニット5A~5Dがチューブ4を閉塞するときの加速度よりも大きくすれば、上流側からの輸液圧力が下流側からの逆流圧力よりも高くなり下流側からの逆流を阻止できる。このため逆流に起因する脈流を抑制することが可能となる。
【0108】
また、第1圧電アクチュエータ30、第2圧電アクチュエータ31及び第3圧電アクチュエータ32は、電圧を印加することによって伸長する積層型の圧電素子36と、圧電素子36が伸長する際に伸長方向に対して垂直方向、かつ圧電素子36から離れる方向に伸長量を拡大する第1変位拡大機構37とを有している。第1変位拡大機構37は、圧電素子36の伸縮方向両端部を固定する固定部55,55、固定部55,55の両側から圧電素子36の表面36a及び裏面36bの両面側に延在する梁部56,57及び梁部56,57の長さ方向中央部に設けられて圧電素子36の伸縮動作に連動して伸縮方向に対して垂直方向に移動する変位部58,59を有している。
【0109】
積層型の圧電素子36は印加電圧によって伸縮量を高精度に制御することが可能であるが、前述したように圧電素子36自体の伸縮量は小さい。そこで、第1変位拡大機構37によって圧電素子36の変位量を拡大することによってチューブ4の閉塞から解放に係る駆動ストロークを確保することが可能となる。変位部58,59は、圧電素子36の表裏両面側に配置されるので圧電素子36に対して2方向に移動することになることから、変位部58を固定端とすれば変位部59の変位量は片側だけに対して2倍となる。そして、第1圧電アクチュエータ30と第2圧電アクチュエータ31との2方向からチューブ4を閉塞したり解放したりすることから総ストロークは4倍にすることが可能となる。従って、この総ストロークの範囲内であれば、大量輸液から微小輸液を実現することが可能となる。
【0110】
また、第3圧電アクチュエータ32は、チューブ押圧部材としてチューブ4側の先端部にチューブ4を押圧して輸液方向に移動する際に転動するローラ39を有している。第3圧電アクチュエータに固定されるチューブ押圧部材は、閉塞点を移動しつつチューブをしごくように輸液する。この際、ローラ39が転動することによってチューブ4に損傷を与えることを最小限に抑え耐久性を高めることが可能となる。
【0111】
第2圧電アクチェータユニット6は、チューブ4に向かってチューブ押圧部48を進退させる第4圧電アクチュエータ34と、チューブ4を挟んで第4圧電アクチュエータに対向して配列されて第4圧電アクチュエータ34に同期してチューブ4に向かってチューブ押圧部49を進退させる第5圧電アクチュエータ45とを有している。
【0112】
前述した従来技術のカムによるフィンガーの蠕動運動に比べて圧電素子自体の駆動ストロークは小さい。そこで、チューブ4を閉塞する際に第4圧電アクチュエータ44と第5圧電アクチュエータ45とをチューブ4を挟み込むように押圧すれば、第4圧電アクチュエータ44が1個のときの駆動ストロークに対して両者の駆動ストロークの和の駆動ストロークが得られる。言い換えれば、チューブ4を解放する際の流路断面積を大きくすることが可能となる。従って、第4圧電アクチュエータ44と第5圧電アクチュエータ45との駆動ストロークの和の範囲内で大量輸液から微小輸液を実現することが可能となる。
【0113】
また、第4圧電アクチュエータ44及び45第5圧電アクチュエータは、電圧を印加することによって伸長する積層型の圧電素子36と、圧電素子36が縮小する際に縮小方向に対して垂直、かつ圧電素子から離れる方向に縮小量を拡大する第2変位拡大機構46と、を有し、第2変位拡大機構46は、圧電素子36の伸縮方向両端部を固定する固定部63,63、固定部両側から圧電素子36の表面36a、裏両36bの両面側に延在する梁部64,65及び梁部64,65の長さ方向中央部に設けられて圧電素子の伸縮に連動して移動する変位部66,67を有している。
【0114】
積層型の圧電素子36は印加電圧によって伸縮量を高精度に制御することが可能であるが、圧電素子63自体の伸縮量(伸長量)は小さい。そこで、第2変位拡大機構46によって圧電素子36の変位量を拡大することによってチューブ4の閉塞及び解放に係る所定の駆動ストロークを確保することが可能となる。変位部66,67は、圧電素子36の表裏両面側に配置されるので圧電素子36に対して2方向に移動することになることから、一方の変位部を固定端とすれば他方の変位部の変位量は片側だけに対して2倍となる。そして、第4圧電アクチュエータ44と第2圧電アクチュエータ45との2方向からチューブ4を閉塞したり解放したりすることから総ストロークは4倍にすることが可能となる。従って、この総ストロークの範囲内であれば、大量輸液から微小輸液を実現することが可能となる。
【0115】
また、第1変位拡大機構37及び第2変位拡大機構46は、非磁性の薄板材料によって一体で成形される。実施の形態で例示した炭素繊維強化樹脂は、炭素繊維を樹脂含浸したものであり軽量で弾性を有し機械的強度が高いことから圧電素子36の伸縮に対する応答性が高く非磁性である。従って、炭素繊維強化樹脂で第1変位拡大機構37及び第2変位拡大機構46を形成すれば、第1圧電アクチュエータユニット5及び第2圧電アクチュエータユニット6を非磁性材料で構成することができ、MRI装置室内やMRI装置の近くにおいても輸液ポンプ1を使用することが可能となる。
【0116】
輸液ポンプ1においては、第2圧電アクチュエータユニット6の下流側に単位時間当たりの輸液量を測定する流量センサ10をさらに有し、流量センサ10は、測定結果に基づき複数の第1圧電アクチュエータユニット5それぞれの閉塞及び解放の速度並びに駆動ストロークを制御し、かつ第2圧電アクチュエータ6の駆動ストロークを制御するフィードバック手段を有している。
【0117】
前述したように、第1圧電アクチュエータユニット5は、蠕動運動の速度及び駆動ストローク(チューブ4の解放量)を制御することによって輸液量を自在に調整することが可能である。一方、第2圧電アクチュエータ6は流路断面積を切り換えることによって第1圧電アクチュエータユニット5の駆動と協働して輸液量を調整することが可能となる。そこで、流量センサ10によって実際の単位時間当たりの輸液量を測定し、この測定結果に基づき第1圧電アクチュエータユニット5及び第2圧電アクチュエータユニットを制御することによって所望の輸液量を高精度に管理することが可能となる。なお、圧電素子36は応答性が高く、フィードバックデータ対して即応することできる。
【0118】
輸液ポンプ1は、第1圧電アクチュエータユニット5より上流側に配置される気泡センサ7、第2圧電アクチュエータユニット6と流量センサ10の間に配設される閉塞センサ8及びフリーフロー防止クランプ9をさらに有し、気泡センサ7、閉塞センサ8、フリーフロー防止クランプ9及び流量センサ10は、非磁性材料で構成される。
【0119】
気泡センサ7は、チューブ4内に規定以上の気泡が発生したことを検知した場合に警報を出す。閉塞センサ8は、稼働時にチューブ4が閉塞したことを検知して警報を出したり、稼働停止させたりする。また、フリーフロー防止クランプ9は、稼働停止時(故障や電源の電圧低下などを含む)に制御されない輸液を防止することができる。また、気泡センサ7、閉塞センサ8及びフリーフロー防止クランプ9は、した第1圧電アクチュエータユニット5及び第2圧電アクチュエータユニット6と共に非磁性としていることからMRI室内やMRI装置の近くで使用することが可能となる。
【符号の説明】
【0120】
1…輸液ポンプ、4…チューブ、5,5A,5B,5C,5D,5E…第1圧電アクチュエータユニット、6…第2圧電アクチュエータユニット、7…気泡センサ、8…閉塞センサ、9…フリーフロー防止クランプ、10…流量センサ、15…制御部(フィードバック手段)、30…第1圧電アクチュエータ、31…第2圧電アクチュエータ、32…第3圧電アクチュエータ、34…第4圧電アクチュエータ、35…第5圧電アクチュエータ、36…圧電素子、36a…表面、36b…裏面、37…第1変位拡大機構、39…ローラ、40…ポンプ機構、41…チューブ押圧ブロック、43…ベース部フレーム、44…第4圧電アクチュエータ、45…第5圧電アクチュエータ、46…第2変位拡大機構、48,49…チューブ押圧部、55,63…固定部、56,57,64,65…梁部、58,59,64,65…変位部、P…閉塞点